特許拒絶査定不服審判
2023-008424
バッテリ保護回路およびこれを含むバッテリ装置
- 審判番号
- 2023-008424
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-139848
- 請求日
- 2023年05月23日
- 審決日
- 2024年01月05日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三星エスディアイ株式会社
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 稲葉 崇
- 分類
- P18 .537-Z (H02J) / P18 .536-Z (H02J) / P18 .561-Z (H02J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-139848「バッテリ保護回路およびこれを含むバッテリ装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 3月11日出願公開、特開2022- 41967〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年8月30日(パリ条約による優先権主張 2020年(令和2年)8月31日 大韓民国)の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年 8月 1日付け 拒絶理由通知書
11月 7日 意見書・手続補正書
令和 5年 1月 4日付け 拒絶査定
5月23日 審判請求書・手続補正書
6月27日 前置報告書
7月13日 上申書
10月17日 電話応対
11月 8日 上申書
以下では、令和5年1月4日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年5月23日の手続補正書による補正を「本件補正」といい、同年11月8日の上申書を単に「上申書」という。
また、以下では、令和4年11月7日の手続補正書による補正を「前回補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正後の明細書【0058】の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付した。
「【0058】
バッテリ装置10の外部端子200にはノイズ、例えば、人の手によって低電圧が入力される。この時、入力される電圧をB(V)とし、検出回路部351のトランジスタQ1の降伏電圧をVth(Q1)とする。そうすると、ノードN2の電圧、すなわち、トランジスタQ1のゲートに印加される電圧は{B(V)-Vz(ZD2)}×R2÷(R2+R1)である。」
2 本件補正による新規事項追加の有無
以下では数式を短くするために、外部端子200に入力される電圧をB(明細書における「B(V)」)、ツェナーダイオードZD2での電圧降下をVZD2で表す。
また、以下では「ノードN2の電圧」すなわち「トランジスタQ1のゲートに印加される電圧」を「ゲート電圧」という。
本件補正後の明細書によれば、ゲート電圧は、
(B-VZD2)×R2÷(R2+R1) …(式1)
である。
ゲート電圧が式1で表されることが、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるか否かについて、以下、判断する。
(1)当初明細書等の【0058】の記載は次のとおりである。なお、下線は強調のために当審で付した。
「【0058】
バッテリ装置10の外部端子200にはノイズ、例えば、人の手によって低電圧が入力される。この時、入力される電圧をB(V)とし、検出回路部351のトランジスタQ1の降伏電圧をVth(Q1)とする。そうすると、ノードN2の電圧、すなわち、トランジスタQ1のゲートに印加される電圧は{B(V)-Vz(ZD2)}×R1÷(R2+R1)である。」
上記記載によれば、ゲート電圧は、
(B-VZD2)×R1÷(R2+R1) …(式2)
で表され、本件補正後における式1とは異なる。
(2)当初明細書等の図3は、次に掲げるとおりである。
[図:0001411013000001.jpg]
ア 当初明細書等を参照しても、ゲート電圧がどこを基準電圧としての電圧なのかは不明である。
一般に、電子回路の節点の電圧は、グラウンド電位(接地電位)を基準に記述されることが多い。
そこで、グラウンド電位を基準として、図3の回路のゲート電圧を計算すると、以下のとおりである。
抵抗R1、抵抗R2及びツェナーダイオードZD2を通ってグラウンドに流れる電流をIとすると、電流Iは次式で与えられる。
I=(B-VZD2)÷(R1+R2)
よって、抵抗R2での電圧降下VR2は、以下の式で表される。
VR2=R2×I
=(B-VZD2)×R2÷(R1+R2)
グラウンド電位を基準としたノードN2の電圧をVN2で表すと、VN2は、抵抗R2での電圧降下VR2とツェナーダイオードZD2でのVZD2との和となるから、
VN2=(B-VZD2)×R2÷(R1+R2)+VZD2
=(VZD2×R1+B×R2)÷(R1+R2) …(式3)
で表される。VN2を表す式3は、本件補正後の明細書に示される式1とは異なる。
イ 図3では、その素子記号からトランジスタQ1はPチャネルMOSFETであると解され、PチャネルMOSFETのオンオフは、ソース電位を基準としたゲートの電圧(以下「VGS」で表す。)によって決まるから、ゲート電圧はVGSのことであるとの解釈もあり得る。
そこで、トランジスタQ1のゲート電圧を、ソース電位を基準に計算する。
グラウンド電位を基準としたソース電位はBであり、グラウンド電位を基準としたトランジスタQ1のゲート電圧は前記アで計算したVN2であるから、トランジスタQ1のソース電位を基準としたトランジスタQ1のゲート電圧VGSは、
VGS=VN2-B
=(VZD2×R1+B×R2)÷(R1+R2)-B
=(VZD2×R1-B×R1)÷(R1+R2)
=(VZD2-B)×R1÷(R1+R2) …(式4)
となり、VGSを表す式4は、本件補正後の明細書に示される式1とは異なる。
(3)当初明細書等のその他の部分を参照しても、ゲート電圧の解釈として前記(1)の式2並びに前記(2)の式3及び式4以外の解釈を導くことができないから、当初明細書等のすべての記載を総合しても、ゲート電圧が式1で表されることは導くことができない。
(4)請求人は、「トランジスタ(Q1)のゲートに印加される電圧は抵抗(R1)にかかる電圧となるので、数式「{B(V)-Vz(ZD2)}xR1÷(R2+R1)」が適切な数式です。」(上申書2頁)と主張するが、該主張の数式は本件補正後の【0058】の式1とは異なっているため、該主張は本件補正と前提を異にしている。
よって、請求人の主張は採用できない。
3 本件補正の適否
前記2のとおり、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではないから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項各号の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は前記第2のとおり却下された。よって、本願の明細書及び特許請求の範囲は、前回補正によって補正されたものである。
そして、本願の特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の請求項1、3及び4に記載された次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
外部端子に電圧が入力されると、ウェイクアップ信号を出力する検出回路部と、
前記外部端子に並列に接続される電圧分配部と、
前記検出回路部からウェイクアップ信号を受信すると、前記電圧分配部から分配電圧を入力し、過電圧判断信号を出力する制御部と、
ANDゲート及びインバータを含み、前記インバータは前記電圧分配部から分配された電圧の入力を受けて前記ANDゲートにインバータ出力信号を伝達し、前記ANDゲートは前記過電圧判断信号及び前記インバータ出力信号の入力を受けてスイッチング制御信号を出力するロジック部と、
前記スイッチング制御信号によってバッテリモジュールおよび外部端子の連結を制御するスイッチング部と、を含む、バッテリ保護回路。
【請求項2】(省略)
【請求項3】
前記検出回路部は、前記外部端子とグラウンドとの間に直列に連結されている第1抵抗、第2抵抗、および第2ダイオード、前記第1抵抗と前記第2抵抗との接続点と前記外部端子の間に連結された第1ダイオード、前記外部端子と前記制御部との間に連結され、前記接続点の電圧で制御されるトランジスタを含む、請求項1に記載のバッテリ保護回路。
【請求項4】
前記トランジスタは、前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧が前記トランジスタのしきい値電圧より高い場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達する、請求項3に記載のバッテリ保護回路。」
第4 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
請求項4及び5の「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」との記載が、具体的にどの点を基準としたときの接続点の電圧を意味するのかが不明確である。
さらに、請求項4及び5の「トランジスタ」は、図3の「トランジスタQ1」に対応するものと認められるが、図3のトランジスタQ1は、その記号からみて、Pチャンネルトランジスタであり、Pチャンネルトランジスタは、ソース電位を基準としてゲートに印加される電圧が、しきい値電圧Vthよりも低い場合にオンし、しきい値電圧よりも高い場合にオフするものであるから、請求項4の「前記トランジスタは、前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧が前記トランジスタのしきい値電圧より高い場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達する」との記載や、請求項5の「前記トランジスタは、前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧が前記トランジスタのしきい値電圧より低い場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達しない」との記載と明らかに整合しない。
また、請求項9及び10についても、同様のことがいえる。
2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
理由1のとおり、「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」との記載が具体的にどの点を基準としたときの接続点の電圧であるのかが不明である(どのように解しても、発明の詳細な説明の【0058】の記載と整合しない)。
また、請求項9及び10についても、同様のことがいえる。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項4及び5並びに9及び10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
第5 原査定の拒絶の理由についての判断
原査定の拒絶の理由のうち、明確性要件についての理由は、本願発明の「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」の不明確性と、本願発明のトランジスタの動作の不明確性の2つの理由からなっている。また、原査定の実施可能要件についての拒絶の理由は、「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」の不明確性と軌を一にする。これを踏まえて、以下、判断する。
1 接続点の電圧の不明確性について
本願発明の「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」すなわちゲート電圧の明確性について、以下、判断する。
(1)特許請求の範囲の記載
本願発明の「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」(請求項4)は、ゲート電圧のことであると解されるが、特許請求の範囲全体を参照しても、ゲート電圧がどの電位を基準としての電圧なのかが特定されていないため、特許請求の範囲の記載からは、前記電圧が不明確である。
(2)明細書及び図面の記載
前記(1)のとおりであるので、ゲート電圧がどの電位を基準としての電圧なのかを解釈するために、明細書及び図面の記載を参照する。
本件補正前の明細書【0058】及び図3は、それぞれ当初明細書等の【0058】及び図3と同じであるから、前記第2[理由]2と同様であり、【0058】の記載によればゲート電圧は式2で表され、図3によればグラウンド電位を基準としたゲート電圧VN2は式3で、ソース電位を基準としたゲート電圧VGSは式4で表され、明細書及び図面のその他の箇所を参照しても、式2~式4以外の解釈は導くことができない。
そして、式2~式4は相異なる式であり、整合しない。加えて、式2と式4とは正負の符号が逆であって、式4がソース電位を基準としたゲート電圧であることに鑑みれば、式2はゲート電位を基準としたソース電圧を表すものと解される。そうすると、式2が表すのはゲート電圧ではなくソース電圧と解されることになるが、【0058】の文章は式2がゲート電圧を表す旨の文章となっており、整合しない。
結局のところ、明細書及び図面を参照しても、ゲート電圧すなわち「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」が、どの電位を基準とした電圧であるのかについて、整合的に理解することができない。
(3)接続点の電圧の不明確性についての小括
前記(1)及び(2)のとおりであるから、本願発明の「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」は不明確である。
よって、「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」との記載を含む請求項4に係る発明は、明確ではない。
2 トランジスタの動作の不明確性について
トランジスタの動作の不明確性について、以下、判断する。
(1)特許請求の範囲の記載
本願発明は、「前記トランジスタは、前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧が前記トランジスタのしきい値電圧より高い場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達する」(請求項4)ものであるから、特許請求の範囲の記載によれば、トランジスタのゲート電圧がしきい値よりも高い場合は、ウェイクアップ信号を伝達するために、トランジスタがオンとなると解釈され、トランジスタの動作は、一見、明確である。
(2)明細書及び図面の記載
他方、図3の回路は、明細書及び図面において、トランジスタQ1の具体的動作を把握できる唯一の実施形態であるから、本願発明は図3の実施形態を当然に包含すると解される。
本願発明の「トランジスタ」は、図3のトランジスタQ1のことであると解され、前記第2[理由]2(2)イのとおり、トランジスタQ1はPチャネルMOSFETであると解される。
そうすると、トランジスタQ1のしきい値電圧をVthで表せば、トランジスタQ1は、VGS<Vthのときにオンし、VGS≧Vthのときにオフとなる。すなわち、ゲート電圧がしきい値電圧より高い場合は、トランジスタQ1はオフとなると解釈される。
上記解釈は、前記(1)の解釈と整合しない。
(3)トランジスタの動作の不明確性についての小括
前記(1)及び(2)によれば、特許請求の範囲の記載と、明細書及び図面の記載との双方を参照すると、本願発明が図3に示される実施形態を包含しているのか排除しているのかが不明であるため、「前記トランジスタは、前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧が前記トランジスタのしきい値電圧より高い場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達する」との記載を含む請求項4に係る発明は、明確ではない。
3 実施可能要件について
前記1のとおり、本願発明の「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」は、明細書及び図面と整合しないため、本願の発明の詳細な説明は、「前記第1抵抗と前記第2抵抗との前記接続点の電圧」との記載を含む請求項4に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとは認められない。
4 請求人の主張について
請求人は、当初明細書等では「トランジスタQ1のゲートに印加される電圧は{B(V)-Vz(ZD2)}×R1÷(R2+R1)である。」(【0058】)と記載し、当該記載を本件補正において「トランジスタQ1のゲートに印加される電圧は{B(V)-Vz(ZD2)}×R2÷(R2+R1)である。」と補正し、さらに上申書において「トランジスタQ1のゲートに印加される電圧は{B(V)-Vz(ZD2)}×R1÷(R2+R1)である。」に戻す用意があることを主張する。(下線は強調のために当審で付した。以下同様。)
加えて、請求項4の記載について、当初明細書等では「前記トランジスタは、前記第1抵抗と前記第2抵抗とのノードの電圧が前記トランジスタの降伏電圧より高い場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達する」と記載し、当該記載を前回補正において「前記トランジスタは、前記第1抵抗と前記第2抵抗とのノードの電圧が前記トランジスタのしきい値電圧より高い場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達する」と補正し、本件補正において「前記トランジスタは、前記第1抵抗と前記第2抵抗とのノードの電圧が前記トランジスタのしきい値電圧より小さい場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達する」と補正し、さらに上申書において「前記トランジスタは、前記ゲートの電圧が前記トランジスタのしきい値電圧より低い場合、前記制御部にウェイクアップ信号を伝達する」とする用意があることを主張する。
さらには、【0059】に記載について、当初明細書等では「トランジスタQ1の降伏電圧Vth(Q1)がノードN2の電圧より大きい場合、すなわち、外部端子200に入力された電圧が設定された低電圧レベルの電圧値より高い場合、トランジスタQ1はターンオンされて」と記載し、前回補正において「トランジスタQ1の降伏電圧Vth(Q1)がノードN2の電圧より小さい場合、すなわち、外部端子200に入力された電圧が設定された低電圧レベルの電圧値より高い場合、トランジスタQ1はターンオンされて」と補正し、本件補正において「トランジスタQ1の降伏電圧Vth(Q1)がノードN2の電圧より大きい場合、すなわち、外部端子200に入力された電圧が設定された低電圧レベルの電圧値より高い場合、トランジスタQ1はターンオンされて」に戻している。
また、前回補正と同日付けの意見書においては「すなわち、図3のトランジスタはNチャンネルトランジスタであり」(4頁)と主張し、本件補正と同日付けの審判請求書においては「また、本願の図3の記載通りに、図3のトランジスタQ1を「Pチャンネルトランジスタ」として」(5頁)と主張する。
このように、請求人は、出願から上申書に至るまでの審査及び審判の手続において、明細書等の記載及び主張を一貫性なく次々と変えている。このように請求人が本願について首尾一貫した手続をできないことは、本願の特許請求の範囲、明細書及び図面の記載が、請求人自らにとってさえ、不明確であることの証左といえる。
以上によれば請求人の主張は採用に足るものと評価し難いが、念のため、請求人の主張について、以下、検討する。
(1)請求人は、「図3のトランジスタはNチャンネルトランジスタであり、トランジスタQ1のしきい値電圧Vth(Q1)がノードN2の電圧よりも小さい場合にドレインからソースに電圧が流れ、制御部に電流が入力されることを明確に致しました。」(前回補正と同日の意見書4頁)と主張する。
しかしながら、図3のトランジスタの素子記号を見る限り、トランジスタはPチャネルMOSFETであると解される。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(2)請求人の審判請求書における主張は、本件補正を前提としたものであるが、前記第2のとおり本件補正は却下されているから、審判請求書における請求人の主張は採用できない。
(3)請求人は、「トランジスタ(Q1)のゲートに印加される電圧は抵抗(R1)にかかる電圧となるので、数式「{B(V)-Vz(ZD2)}xR1÷(R2+R1)」が適切な数式です。」(上申書2頁)と主張する。
しかしながら、上申書で主張する数式は、要するに、式2(前記第2[理由]2(1))であるが、前記1(2)に示したように、式2はゲート電位を基準としたソース電圧を表すものであって、ゲートの電圧ではない。
よって、請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
前記第5のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項4の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないので、特許法36条6項2号の規定に違反し、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないため、同条4項1号の規定に違反する。
したがって、他の請求項の記載について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-008424