特許拒絶査定不服審判
2023-007591
バッテリー安全性試験装置及び方法
- 審判番号
- 2023-007591
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-536701
- 請求日
- 2023年05月10日
- 審決日
- 2025年07月31日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
- 【請求人代理人】飯田 雅人
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 岡田 吉美
- 審判官 南川 泰裕
- 分類
- P18 .536-WZ (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-536701「バッテリー安全性試験装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日国際公開、WO2020/190009、令和 4年 2月16日国内公表、特表2022-514967〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)3月17日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年3月19、韓国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 6月22日 :翻訳文の提出
令和4年 6月24日付け:拒絶理由通知書
同年10月 3日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年 1月10日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
同月16日 :手続補正書(方式)の提出
(請求の理由の補正)
令和6年 6月 6日付け:拒絶理由通知書
同年 9月10日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月20日付け:審尋
令和7年 3月24日 :回答書の提出
以下、当審において令和6年6月6日付けで通知した拒絶理由通知書を「当審拒絶理由通知書」という。
また、以下、令和6年9月10日に提出した意見書を単に「意見書」という。
2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年9月10日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は当合議体が付したものであり、検討の焦点となる構成である。
「 バッテリーの正極又は負極のうち1つに一端が電流センサーを介して連結され、電子式スイッチ素子に他端が直接的に連結される1つの機械式スイッチ素子、
前記機械式スイッチ素子に一端が直接的に連結され、前記バッテリーの正極又は負極のうち他の1つに他端が連結される1つの前記電子式スイッチ素子、
前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記バッテリーの電圧を測定する電圧センサー、及び
前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記バッテリーの電流を測定する前記電流センサー
を含むバッテリー安全性試験装置において、
前記機械式スイッチ素子がオン状態となった後、前記電子式スイッチ素子がオン状態となり、
前記バッテリー安全性試験装置は、前記バッテリーと前記電子式スイッチ素子との間に可変抵抗器をさらに含み、前記可変抵抗器の一端は前記バッテリーの正極又は負極のうち他の1つに直接的に連結しており、前記可変抵抗器の他端は、前記電子式スイッチ素子に直接的に連結しており、
前記バッテリー安全性試験装置は、
前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記電圧センサー及び前記電流センサーで測定された値を用いて前記バッテリーの電圧及び電流波形を算出する波形算出部、及び
前記波形算出部で算出された前記電圧及び前記電流波形を用いて前記バッテリーの安全性を判断する判読部
をさらに含み、
前記電流波形は、チャタリング現象による歪みを有していないピーク部分を備え、
前記機械式スイッチ素子をオン状態にさせるための外部信号を前記機械式スイッチ素子の制御端に受信すると、前記機械式スイッチ素子はオン状態となる、バッテリー安全性試験装置。」
<参考図(図1)>
[図:0001430362000001.jpg]
3 当審拒絶理由通知書、意見書、審尋及び回答書の内容
(1) 当審拒絶理由通知書の内容
当審において令和6年6月6日付けで通知した拒絶の理由のうち、理由1(実施可能要件違反)についての拒絶の理由の要旨は、次のとおりである。
拒絶の理由1(実施可能要件違反)
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
記
ア 本願発明は、「前記波形算出部で算出された前記電圧及び前記電流波形を用いて前記バッテリーの安全性を判断する判読部」を含むものであり、この「判読部」の行う判断には「前記電圧及び前記電流波形」のみを用いて「前記バッテリーの安全性を判断する」ことを含むものと認められる。
この点について、本願明細書の発明の詳細な説明(段落【0057】)には、次の記載がある。
「【0057】
判読部306は、波形算出部304で算出された電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する。バッテリーの短絡電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する方法は、公知の技術であって、当業者であれば容易に分かるので、具体的な説明は省略する。」
イ しかしながら、請求人が本願の明細書中で具体的な公知例を示さなかった「バッテリーの短絡電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する方法」は、周知であると認められない。例えば、先に令和4年6月24日付けの拒絶理由通知書において周知技術を示す文献として引用した引用文献3(堀田 剛,リチウムイオン電池の安全性試験結果,平成29年電気学会全国大会講演論文集(第7分冊),2017年,52-53頁)のFig.1,2及びその説明において例示されているように、電池の外部短絡試験において電圧及び電流の時間変化(波形)を観察することは当業者が通常その実施を検討する範囲内の事項であるとしても、それにより「前記電圧及び前記電流波形」のみを用いて「前記バッテリーの安全性を判断する」ことをどのようにして実現できるのかは不明である。
発明の詳細な説明におけるほかの記載を含め検討しても、本願発明の「前記波形算出部で算出された前記電圧及び前記電流波形を用いて前記バッテリーの安全性を判断する判読部」を具体的にどのようにして実現できるのかを当業者が理解するために必要な事項が記載されているとはいえない。
ウ 以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
(2) 意見書の内容
意見書において、請求人は次のとおり主張している。
「 これに対して、審判請求人は、2つの参考文献、つまり、「インピーダンス分光法を用いたリチウムイオン電池のオンライン状態監視」についての学術論文(参考文献1)及び米国特許第6526361号公報(参考文献2)を提示します。
これらの参考文献は、本願の優先日の前に公開されています。参考文献1は、2017年に公開されており、参考文献2は2003年に公開されています。
参考文献1である「インピーダンス分光法を用いたリチウムイオン電池のオンライン状態監視」についての学術論文において、第1頁には、波形によるバッテリーの診断が一般的な方法であることを示す関連情報が記載されています。
さらに、参考文献2である米国特許第6526361号公報において、第17頁、第19頁、及び第21頁~第23頁には、波形によるバッテリーの診断が一般的な方法であることを示す関連情報が記載されています。
それ故に、これらの参考文献によれば、電圧及び電流の波形を使用してバッテリーの安全性を判断するとの特徴は、周知技術であり、この構成は当業者によって容易に実施されることができます。
従いまして、上記の主張により、審判長殿御指摘の実施可能要件違反は上記の主張により解消されたと思料致します。」
(3) 審尋の内容
当審において、令和6年12月20日付けで次の審尋をした。
「本願の特許請求の範囲及び明細書の記載内容に関し、以下の(1)~(2)の審尋事項に対して、具体的かつ明確に説明してください。
(1) 意見書について
ア 先の令和6年6月6日付け拒絶理由通知書において、当合議体は理由1(実施可能要件違反)として、本願の発明の詳細な説明の記載によっては、「電圧波形」及び「電流波形」のみを用いて「バッテリーの安全性を判断する」ことをどのようにして実現できるのかが不明である旨の拒絶の理由を通知しました。
イ これに対し、審判請求人は令和6年9月10日に提出した意見書において、参考文献1及び2を提示して、電圧波形及び電流波形を使用してバッテリーの安全性を判断することは周知技術である旨の主張を行っています。
ウ しかしながら、当該意見書においては前記周知技術が具体的にどのようなものであるのかについての説明は何らされていないため、具体的にどのような技術事項を指して周知であると主張しているのかが不明であって、前記拒絶の理由が解消されたとは認められません。
エ 周知技術であると主張する技術事項が、電圧波形及び電流波形をどのように用いてバッテリーの安全性を判断するものであるのかを、具体的かつ詳細に、またその技術事項が周知であるとする根拠と共に説明してください。
(2) 参考文献について
ア 前記意見書において提示された参考文献1及び2について、意見書では、関連情報が記載されているページが指摘されているのみであって、その具体的な内容については何ら説明されておらず、各参考文献に記載されているどのような技術事項を引いて主張しているのかが不明です。また、各参考文献の日本語訳も添付されていないため、請求人が各参考文献の内容をどのようなものと理解して主張しようとしているのかも不明です。
イ 各参考文献に記載されているどのような技術事項を用いて主張しているのかが明確となるように、その内容を具体的かつ詳細に説明してください。
また、少なくとも前記主張に用いようとする部分については、必ず各参考文献の日本語訳を添付してください。」
(4) 回答書の内容
請求人は、前記(3)の審尋対する回答書において、次のとおり回答した。
「〔2〕回答
(1)参考文献1
参考文献1は、電流、電圧に基づいたEIS技術を用いてバッテリの状態を判断する内容を開示しており、審判官合意体殿が要求する「電圧波形」または「電流波形」を用いてバッテリをモニタリングする内容を提供することは難しいと思料致します。
(2)参考文献2
参考文献2の図9~図13には、時間軸に対する電圧が開示されています。
特に、参考文献2の図11及び図12には、電圧の波形に区別された良好なバッテリと不良なバッテリとが開示されています。
例えば、参考文献2の第10欄の第19行目~第23行目には、「Turning now to the graphic data shown in FIGS. 11 and 12, these show the voltage/time plots for not only the FET gate or control voltages, but also the battery responses for good and bad batteries. FIG. 11 shows the microload result and FIG. 12 shows the microcharge result.(日本語訳:次に、図11および図12に示すグラフィックデータに目を向けると、これらは、FETゲート電圧または制御電圧だけでなく、良品および不良品のバッテリー応答に関する電圧/時間プロットも示している。図11は微小負荷の結果を示し、図12はマイクロチャージの結果を示す。)」と記載されています。
さらに、参考文献2の第10欄の第24行目~第29行目には、「FIG. 11 shows the effect of 5 microload cycles, these being accomplished within somewhat under 0.45 seconds (for all 5) with intermediate recovery periods of approximately three quarters of 0.1 seconds ie 0.075 seconds. Each individual load transient has a duration of approximately one quarter of 0.1 seconds ie 0.025 seconds.(日本語訳:図11は5回の微小負荷サイクルの効果を示しており、これらは0.1秒の約4分の3、すなわち0.075秒の中間回復期間を挟んで(5回とも)0.45秒弱で達成される。個々の負荷過渡現象は0.1秒の約4分の1、つまり0.025秒の持続時間を持つ。)」と記載されています。
さらに、参考文献2の第10欄の第30行目~第36行目には、「The gate voltages for the tests show an increase from about 4 volts to about 6 volts from tests A to C and then remain constant. The corresponding five voltage drops for the plot 90 of a bad battery show characteristic significant drops at A and B with corresponding relatively steady-state profiles at C, D and E of which the amplitude and saw tooth profiles are characteristic.(日本語訳:試験のゲート電圧は、試験AからCにかけて約4ボルトから約6ボルトまで上昇し、その後一定に保たれる。不良バッテリのプロット90に対応する5つの電圧降下は、AとBで特徴的な著しい降下を示し、C、D、Eで対応する比較的定常状態のプロファイルを示し、その振幅と鋸歯状のプロファイルが特徴的である。)」と記載されています。
さらに、参考文献2の第10欄の第37行目~第41行目には、「In the plot 92 of a corresponding good battery the substantially reduced voltage dips and the correspondingly modified profiles of the dip and intermediate voltages provide the clear basis for a corresponding classification accordingly.(日本語訳:対応する良好電池のプロット92において、大幅に減少した電圧ディップ、及びディップ電圧と中間電圧の相応に変化したプロファイルは、対応する分類の明確な根拠となる。)」と記載されています。
さらに、参考文献2の第10欄の第42行目~第48行目には、「In FIG. 12 which corresponds to FIG. 11 but shows a sequence of three microcharge cycles or steps labelled F, G and H, the indications of the microcharge parameters in terms of the FET gate voltages and transient time intervals correspond very much to those of FIG. 11 and therefore require no further comment.(日本語訳:図11に対応するが、F、GおよびHとラベル付けされた3つのマイクロチャージサイクルまたはステップのシーケンスを示す図12において、FETゲート電圧および過渡時間間隔の観点からのマイクロチャージパラメータの表示は、図11のものと非常によく対応しており、したがって、これ以上のコメントは必要ない。)」と記載されています。
さらに、参考文献2の第10欄の第49行目~第53行目には、「The battery responses in FIG. 12 for bad battery 90 and good battery 92 are readily distinguished in terms of the markedly enhanced resultant battery voltage step-up in the case of bad battery 90, as against the corresponding modest or almost negligible voltage shift for good battery 92.(日本語訳:図12における不良バッテリ90と良好バッテリ92のバッテリ応答は、良好バッテリ92の対応する控えめな電圧シフトまたはほとんど無視できる電圧シフトに対して、不良バッテリ90の場合、結果として生じるバッテリ電圧ステップ
アップが著しく強化されるという点で、容易に区別される。)」と記載されています。
従いまして、審査官殿御指摘は解消されたと思料致します。」
(3)参考文献3
審判請求人は、この回答書に参考文献3をさらに添付致します。
参考文献3の段落〔0047〕及び図7などを参照すると、参考文献3はバッテリが異常状態に達する前にバッテリの状態を検出する技術であって、検出用交流波形をバッテリに印加し、これに応答して得られる応答電流波形を複数の周期にわたって積分し、積分の結果が時間によって増加するのか否かに基づいてバッテリ特性の正常または異常を判断する技術を開示します。
参考文献3の段落〔0047〕には、「したがって、この発散程度を基準にして、電池10の正常状態か異常状態か、その程度も含めて判断することが可能になる。例えば、積分範囲の周期を設定し、その設定周期に渡る発散程度について致命異常閾値と、異常前閾値とを定める、そして、積分値波形がゼロを通るように収束するときは正常状態とし、積分値波形がゼロを通るようには収束しないが発散程度としては異常前閾値以下のときは、正常ではないが異常に至る前の注意状態であるとし、発散程度が異常前閾値を超え、致命異常閾値以下のときは異常状態あるいは劣化状態であるとし、発散程度が致命異常閾値を超えるときは、電池10が致命的な異常状態あるいは致命的な劣化状態であるとすることができる。この判断工程は、制御部70の電池特性判断モジュール78の機能によって実行される。」と記載されています。」
4 当審の判断
(1) 当審の判断の概要
以下に詳細に検討するように、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、「前記波形算出部で算出された前記電圧及び前記電流波形のみを用いて前記バッテリーの安全性を判断する」ことについて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できる程度に記載されていないため、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本願は、発明の詳細な説明の記載が、本願発明について、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
(2) 実施可能要件の判断基準と本件へ当てはめた場合の論点
ア 実施可能要件の判断基準
明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明は、具体的な構成等の必要な情報を開示することにより、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に記載されていることを要するものである。
イ 実施可能要件の判断基準を本件へ当てはめた場合の論点
本願発明は、単に「安全性試験」に用いられる装置であるというだけではなく、「前記波形算出部で算出された前記電圧及び前記電流波形を用いて前記バッテリーの安全性を判断する判読部」という構成(以下「電圧・電流波形による安全性判断の構成」という。)を含むことが特定されている。
以下、「電圧・電流波形による安全性判断の構成」について、明細書の発明の詳細な説明が、具体的な構成等の必要な情報を開示することにより、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に記載されているか否かについて検討する。
(3) 本願明細書の発明の詳細な説明及び図面における開示
本願明細書の発明の詳細な説明及び図面(以下「発明の詳細な説明等」という。)には、次のように記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものである。また、図面を参照して実施の形態等を詳細に説明する箇所については、当該図面を明細書において初めて実質的に説明される箇所の直後に掲載した。
(ア) 【0002】~【0019】
「【0002】
本発明は、バッテリー安全性試験装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、二次電池に対する研究と開発が活発になされている。ここで、二次電池は充放電可能な電池であって、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などと最近のリチウムイオン電池をいずれも含む意味である。二次電池のうちリチウムイオン電池は、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べてエネルギー密度が遥かに高いという長所がある。また、リチウムイオン電池は、小型、軽量に製作することができるので、移動機器の電源として用いられる。また、リチウムイオン電池は、電気自動車の電源として使用範囲が拡張され、次世代のエネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。
【0004】
また、二次電池は、一般的に複数個のバッテリーセルが直列及び/又は並列に連結されたバッテリーモジュールを含むバッテリーパックとして用いられる。そして、バッテリーパックは、バッテリー管理システムにより状態及び動作が管理及び制御される。
【0005】
このようなリチウムイオン電池を用いるのにおいて、発火事故が発生する可能性があるので、リチウムイオン電池の使用時に安全性に対する検査が必須である。このような安全性検査としては、過充電試験、外部短絡試験、放電試験、内部短絡試験などがある。
【0006】
外部短絡試験の場合には、バッテリーの両端を短絡させた際の破裂発火有無を評価する。このとき、外部短絡試験のための外部短絡回路の構成時に機械式接点リレーを適用する。このような機械式接点リレーは、マグネットを用いた物理的スイッチなので、機械式接点リレー開閉時に回路に対する反応速度が遅いという短所がある。また、機械式接点リレーの接点連結段階で電気的ノイズ、すなわち、チャタリング現象が発生する。チャタリング現象とは、スイッチやリレーなどの接点が開閉されるとき、振動が発生する現象である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、外部短絡試験回路を構成する際に機械式接点リレーの使用によるチャタリング現象を除去することにより、外部短絡時に発生するバッテリー電流波形に対する正確な測定及び分析を行うことをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置であって、バッテリーの正極又は負極のうち1つに一端が連結され、電子式スイッチ素子に他端が連結される機械式スイッチ素子、前記機械式スイッチ素子に一端が連結され、前記バッテリーの正極又は負極のうち他の1つに他端が連結される前記電子式スイッチ素子、前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記バッテリーの電圧を測定する電圧センサー、及び前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記バッテリーの電流を測定する電流センサーを含む。
【0009】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置は、前記機械式スイッチ素子がオン状態となった後、前記電子式スイッチ素子がオン状態となる。
【0010】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置は、前記バッテリーと前記電子式スイッチ素子との間に可変抵抗器をさらに含む。
【0011】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置は、前記機械式スイッチ素子を駆動するためのDC電力源をさらに含み、前記機械式スイッチ素子は、マグネットリレー(magnetic Relay)である。
【0012】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置は、前記電子式スイッチ素子を駆動するためのゲート回路をさらに含み、前記電子式スイッチ素子は、サイリスタ、MOSFET、及びIGBTのうち何れか1つである。
【0013】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置は、前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記電圧センサー及び前記電流センサーで測定された値を用いて前記バッテリーの電圧及び電流波形を算出する波形算出部、及び前記波形算出部で算出された前記電圧及び前記電流波形を用いて前記バッテリーの安全性を判断する判読部をさらに含む。
【0014】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置において、前記電流センサーは、CT(Current Transfer)センサーである。
【0015】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験方法は、バッテリーの正極又は負極のうち1つに一端が連結され、電子式スイッチ素子に他端が連結される機械式スイッチ素子、前記機械式スイッチ素子に一端が連結され、前記バッテリーの正極又は負極のうち他の1つに他端が連結される前記電子式スイッチ素子、前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記バッテリーの電圧を測定する電圧センサー、及び前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記バッテリーの電流を測定する電流センサーを含むバッテリー安全性試験装置により行われるバッテリー安全性試験方法であって、電源が印加されると前記機械式スイッチ素子がオン状態となる段階、前記機械式スイッチ素子がオン状態となった後、前記電子式スイッチ素子がオン状態となる段階、及び前記機械式スイッチ素子及び前記電子式スイッチ素子がオン状態となった後、前記バッテリーの両端の電圧及び電流を測定する段階を含む。
【0016】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験方法において、前記機械式スイッチ素子は、マグネットリレー(magnetic Relay)である。
【0017】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験方法において、前記電子式スイッチ素子は、サイリスタ、MOSFET、及びIGBTのうち何れか1つである。
【0018】
本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験方法は、測定された前記バッテリーの両端の電圧及び電流を用いて前記バッテリーの電圧及び電流波形を算出する段階、及び前記算出されたバッテリーの前記電圧及び前記電流波形を用いて前記バッテリーの安全性を判断する段階をさらに含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、外部短絡試験回路を構成する際に機械式接点リレーとともに電子式スイッチ素子を用いることにより、チャタリング現象を除去して外部短絡時に発生するバッテリー電流波形に対する正確な測定及び分析を行うことができるという効果がある。」
(イ) 【0024】~【0032】、【図1】
「【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置10の構成を示す図である。」
「【図1】
[図:0001430362000002.jpg]
」
「【0025】
バッテリー安全性試験装置10は、バッテリー20の両端に連結されてバッテリー20の安全性を試験する装置であって、電流測定部100、電圧測定部102、波形算出部104、判読部106、機械式スイッチ素子108、電源部110、電子式スイッチ素子112、及びゲート回路114を含む。
【0026】
電流測定部100は、バッテリー20の電流を測定する。電流測定部100は、電流センサーで具現されてよく、例えば、CT(current transformer)センサーであってよい。電流測定部100は、機械式スイッチ素子108がオン状態となり電子式スイッチ素子112がオン状態となった後に、バッテリー短絡回路が短絡状態となり電流を測定することができる。電流測定部100により測定されたバッテリー短絡電流値は、波形算出部104に伝送される。この際、電流測定部100は、CTセンサーの代りに、例えば、シャント抵抗を用いて電流を測定することもできる。
【0027】
電圧測定部102は、電圧センサーに具現されてよく、バッテリー20の両端の電圧を測定する。電圧測定部102は、機械式スイッチ素子108がオン状態となり電子式スイッチ素子112がオン状態となった後に、バッテリー短絡回路が短絡である状態で電圧を測定する。電圧測定部102により測定されたバッテリー電圧値は、波形算出部104に伝送される。
【0028】
波形算出部104は、機械式スイッチ素子108及び電子式スイッチ素子112がオン状態となった後に、電流測定部100から測定されたバッテリー20の短絡電流値を用いてバッテリー20の短絡電流波形を算出する。また、波形算出部104は、機械式スイッチ素子108及び電子式スイッチ素子112がオン状態となった後に、電圧測定部102から測定された電圧値を用いてバッテリー20の電圧波形を算出する。
【0029】
判読部106は、波形算出部104で算出された電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する。
【0030】
機械式スイッチ素子108の一端は、バッテリー20の正極又は負極のうち1つに電気的に連結され、他端は電子式スイッチ素子112に電気的に連結される。また、機械式スイッチ素子108の一端は電流測定部100に連結されてよい。但し、機械式スイッチ素子108は、オン状態となったとき短絡回路を構成することができる位置であればどこでも構わない。また、機械式スイッチ素子108は、電圧が印加されると、機械式接点が連結される。電圧は、機械式スイッチ素子108の制御端に機械式スイッチ素子108をオンさせる外部信号を受信すると、直流電源部110から接点連結のための電圧が印加される。機械式スイッチ素子108は、例えば、マグネットリレー(Magnetic Relay)であってよい。
【0031】
電子式スイッチ素子112の一端は機械式スイッチ素子108に電気的に連結され、他端はバッテリー20の正極又は負極のうち他の1つに連結される。但し、電子式スイッチ素子112は、オン状態となったとき短絡回路を構成することができる位置であればどこでも構わない。また、電子式スイッチ素子112は、例えば、サイリスタ、MOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のうち何れか1つであってよい。サイリスタは、pnpn接合の4層構造の半導体素子の総称であるところ、一般的にはSCRと呼ばれる逆阻止三端子サイリスタを称し、シリコン制御整流素子をいう。また、MOSFETは、金属酸化膜半導体の電界効果トランジスタであって、ゲート-ソース間の電圧が閾値電圧を超えるとスイッチオン状態となる。ICBTは、電力用半導体の一種であって、動作速度が早く、電力の損失が少ない。電子式スイッチ素子112は、前記機械式スイッチ素子108がオン状態となった後に、ゲート回路114から電圧が印加されてオン状態となる。
【0032】
ゲート回路114は、外部から制御信号を受信して電子式スイッチ素子112に電圧を印加する。」
(ウ) 【0033】~【0039】、【図2a】
「【0033】
図2aは、従来のバッテリー安全性試験装置の簡略な回路図である。」
「【図2a】
[図:0001430362000003.jpg]
」
「【0034】
バッテリー201の一端には、電流測定部211(CTセンサー)が連結される。バッテリー201の両端には、電圧測定器213が連結される。また、バッテリー201の他端には、可変抵抗203の一端が連結される。可変抵抗203の抵抗値は、例えば、5~95mΩである。可変抵抗203の他端には、機械式スイッチ素子205の一端が連結される。可変抵抗203は、外部抵抗条件の設定のための抵抗である。
【0035】
また、機械式スイッチ素子205の他端は、電流測定部211が連結される。一方、機械式スイッチ素子205は、互いに直列連結されたスイッチ209及び直流電源207と並列連結されている。スイッチ209が外部から受信されたスイッチオン信号によりオン状態となると、機械式スイッチ素子205に電圧が印加されてオン状態となる。ここで、機械式スイッチ素子は、例えば、マグネットリレーである。
【0036】
このような機械式スイッチ素子205は、電圧が印加されるのに応じて機械的な接点を連結するところ、この反応速度が遅い。また、機械式スイッチ素子に電圧が印加されて機械的な接点が連結されるとき、物理的な連結による振動が発生せざるを得ないという短所がある。このような振動により、短絡回路の具現時に測定されたバッテリー短絡電流波形にチャタリング現象が発生する。チャタリング現象は、スイッチやリレー接点が開閉されるときに発生する振動による現象である。このようにバッテリー短絡電流波形によりバッテリー安全性のための正確な分析が困難であるという短所があった。
【0037】
次いで、前記機械式スイッチ素子205に電圧が印加されてオン状態となると、短絡回路が構成され、バッテリー電流が導通するようになる。CTセンサー211は、バッテリー電流を測定する。CTセンサー211で測定されたバッテリー電流値は、オシロスコープに伝送される。オシロスコープは、伝送されたバッテリー電流値を用いてバッテリー電流波形を算出する。
【0038】
また、電圧測定器213は、バッテリー電圧を測定する。電圧測定器213は、測定されたバッテリー電圧値をオシロスコープに伝送する。オシロスコープに伝送されたバッテリー電圧値を用いてバッテリー電圧波形を算出する。
【0039】
オシロスコープで算出されたバッテリー電流波形と電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する。但し、先に言及したとおり、機械式スイッチ素子205の開閉時に発生する振動によりチャタリング現象が発生して正確なバッテリーの安全性を判断しにくい。このような点を補完するために、本発明の一実施形態では電子式スイッチ素子を追加した。具体的な説明は後述する。」
(エ) 【0040】~【0047】、【図2b】
「【0040】
図2bは、本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験装置の回路図である。」
「【図2b】
[図:0001430362000004.jpg]
」
「【0041】
バッテリー200の一端には、CTセンサー212が連結される。バッテリー200の両端には、電圧測定器214が連結される。また、バッテリー200の他端には、可変抵抗202の一端が連結される。可変抵抗202の抵抗値は、例えば、5~95mΩである。但し、このような可変抵抗202の抵抗値は例示的なものであって、バッテリー200の仕様によりその範囲を異ならせることができるはずである。可変抵抗202の他端には、機械式スイッチ素子206の一端が連結される。すなわち、可変抵抗202は、外部抵抗条件の設定のための抵抗であって、バッテリー200と電子式スイッチ素子204との間に連結されてよい。
【0042】
また、機械式スイッチ素子206の他端は、CTセンサー212に連結される。一方、機械式スイッチ素子206は、スイッチ209と直流電源207と直列連結されている。スイッチ209が外部から受信されたスイッチオン信号によりオン状態となると、機械式スイッチ素子206に電圧が印加されてオン状態となる。ここで、機械式スイッチ素子206は、例えば、マグネットリレーである。これに限定されず、本発明の構成として代替することができる全ての公知の機械式スイッチ素子が用いられてよい。
【0043】
本発明の一実施形態は、機械式スイッチ素子206に直列連結される電子式スイッチ素子204をさらに含む。電子式スイッチ素子204は、例えば、サイリスタ、MOSFET又はIGBTであってよい。機械式スイッチ素子206がオンとなった後、電子式スイッチ素子204はゲート回路から電圧が印加されてオン状態となる。
【0044】
機械式スイッチ素子206及び電子式スイッチ素子204が全てオン状態となると、バッテリー短絡回路に電流が流れる。バッテリー短絡回路に流れる電流をCTセンサー212が測定してオシロスコープに伝送する。
【0045】
また、機械式スイッチ素子206及び電子式スイッチ素子204が全てオン状態となると、電圧測定器214はバッテリーの両端の電圧を測定する。電圧測定器214により測定されたバッテリーの両端の電圧値は、オシロスコープに伝送される。
【0046】
オシロスコープに伝送されたバッテリーの両端の電圧値と電流値を用いて電圧波形又は電流波形を算出する。
【0047】
算出された電圧波形又は電流波形を用いて当該バッテリーの安全性が判断される。」
(オ) 【0048】~【0051】、【図2c】
「【0048】
図2cは、電子式スイッチ素子に電圧を印加するゲート回路の一具現形態を示す図である。」
「【図2c】
[図:0001430362000005.jpg]
」
「【0049】
ゲート回路221は、電子式スイッチ素子駆動電源220、第1抵抗222、駆動スイッチ素子223、第2抵抗224、キャパシタ226を含む。
【0050】
電子式スイッチ素子駆動電源220は、直流電源であって、例えば、12V又は24Vであってよい。駆動スイッチ素子223がオン状態となるときに電子式スイッチ素子駆動電源220から電子式スイッチ素子228に電圧が印加される。
【0051】
電子式スイッチ素子駆動電源220の一端に第1抵抗222の一端が電気的に連結され、第1抵抗222の他端は第2抵抗224の一端とキャパシタ226の一端が連結され、ローパスフィルターを形成する。第1抵抗222、第2抵抗224及びキャパシタ226はローパスフィルターであって、高周波成分を除去する機能を行う。但し、ゲート回路221に含まれるフィルターは、図2cに示された構成だけでなく、受動素子R、L、Cを用いて多様に変更可能である。」
(カ) 【0052】~【0059】、【図3】
「【0052】
図3は、本発明の他の実施形態に係るバッテリー安全性試験装置30の簡略な構成を示す図である。」
「【図3】
[図:0001430362000006.jpg]
」
「【0053】
バッテリー安全性試験装置30は、電流測定部300、電圧測定部302、波形算出部304、判読部306、電子式スイッチ素子308及びゲート回路310を含む。
【0054】
電流測定部300は、バッテリー20の電流を測定する。電流測定部300は、電流センサーで具現されてよく、例えば、CTセンサーであってよい。電流測定部300は、電子式スイッチ素子308がオン状態となった後に、バッテリー短絡回路が短絡状態となり電流を測定することができる。電流測定部300により測定されたバッテリー短絡電流値は、波形算出部304に伝送される。このときに、電流測定部300は、CTセンサーの代りにシャント抵抗を用いて電流を測定してもよい。
【0055】
電圧測定部302は、電圧センサーに具現されてよく、バッテリー20の両端の電圧を測定する。電圧測定部302は、電子式スイッチ素子308がオン状態となった後にバッテリーの両端の電圧を測定する。電圧測定部302により測定されたバッテリー電圧値は、波形算出部304に伝送される。
【0056】
波形算出部304は、機械式スイッチ素子108及び電子式スイッチ素子112がオン状態となった後に、電流測定部300から測定されたバッテリー20の短絡電流値を用いてバッテリー20の短絡電流波形を算出する。また、波形算出部304は、機械式スイッチ素子108及び電子式スイッチ素子112がオン状態となった後に、電圧測定部302から測定された電圧値を用いてバッテリー20の短絡電圧波形を算出する。
【0057】
判読部306は、波形算出部304で算出された電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する。バッテリーの短絡電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する方法は、公知の技術であって、当業者であれば容易に分かるので、具体的な説明は省略する。 【0058】
電子式スイッチ素子308の一端は電流測定部300に電気的に連結され、他端はバッテリーの正極又は負極のうち何れか1つに電気的に連結される。但し、電子式スイッチ素子308は、オン状態となったとき短絡回路を構成することができる位置であればどこでも構わない。また、電子式スイッチ素子308は、例えば、サイリスタ、MOSFET、IGBTのうち何れか1つであってよい。
【0059】
ゲート回路310は、外部から制御信号を受信して電子式スイッチ素子308に電圧を印加する。」
(キ) 【0060】~【0066】、【図4】
「【0060】
図4は、本発明の他の実施形態に係るバッテリー安全性試験装置の回路図である。」
「【図4】
[図:0001430362000007.jpg]
」
「 【0061】
バッテリー400の一端には、CTセンサー406が連結される。また、バッテリー400の両端には、電圧測定器408が連結される。また、バッテリー400の正極又は負極のうち何れか1つに可変抵抗402の一端が電気的に連結される。可変抵抗値は、例えば、5~95mΩである。但し、このような可変抵抗402の抵抗値は例示的なものであって、バッテリー200の仕様によりその範囲を異ならせることができるはずである。可変抵抗は、外部抵抗条件の設定のための抵抗であって、バッテリー400と電子式スイッチ素子404との間に連結されてよい。
【0062】
また、電子式スイッチ素子404の他端は、CTセンサー406と連結される。一方、外部制御信号によりゲート回路から電圧が印加されると、電子式スイッチ素子404はオン状態となる。この実施形態で使用可能な電子式スイッチ素子404は、ゲート電圧の印加可否によりオン/オフが可能なMOSFET又はIGBTであってよい。
【0063】
電子式スイッチ素子404が全てオン状態となると、バッテリー短絡回路に電流が流れる。バッテリー短絡回路に流れる電流をCTセンサー406が測定してオシロスコープに伝送する。
【0064】
また、電子式スイッチ素子404が全てオン状態となると、電圧測定器408はバッテリーの両端の電圧を測定する。電圧測定器408により測定されたバッテリーの両端の電圧値は、オシロスコープに伝送される。
【0065】
オシロスコープは、伝送されたバッテリーの両端の電圧値及び電流値を用いて電圧波形又は電流波形を算出する。
【0066】
算出された電圧波形又は電流波形を用いて当該バッテリーの安全性が判断される。バッテリーの短絡電流波形又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する方法は、公知の技術であって、当業者であれば容易に分かるので、具体的な説明は省略する。」
(ク) 【0067】~【0070】、【図5a】、【図5b】
「【0067】
図5aには、従来の技術に係るバッテリー安全性検査装置により算出されたバッテリー短絡電流波形が示される。」
「【図5a】
[図:0001430362000008.jpg]
」
「【0068】
図2aに示されたバッテリー安全性試験装置で算出されたバッテリー短絡電流波形は、チャタリング現象により短絡電流波形のピーク部分が歪んでいる。
【0069】
図5bには、本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性検査装置により算出されたバッテリー短絡電流波形が示される。」
「【図5b】
[図:0001430362000009.jpg]
」
「【0070】
図5aに示された電流波形とは異なり、図2bに示された本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性検査装置により算出されたバッテリー短絡電流波形は、チャタリング現象が除去されて電流波形のピーク部分が歪んでいなかった。よって、短絡電流波形を用いたバッテリー安全性試験をより正確に行うことができる。」
(ケ) 【0071】~【0077】、【図6】
「【0071】
図6は、本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性試験方法のフローチャートである。構成は、図1を参照して説明する。」
「【図6】
[図:0001430362000010.jpg]
」
「【0072】
一端がバッテリー20の正極又は負極のうち何れか1つに電気的に連結され、他端が電子式スイッチ素子112に電気的に連結されている機械式スイッチ素子108に電源部110から電源が印加されると、機械式スイッチ素子108がオン状態となる。すなわち、機械式スイッチ素子108に電源が印加されてオン状態となる(S600)。
【0073】
機械式スイッチ素子108は、例えば、マグネットリレーであってよい。
【0074】
機械式スイッチ素子がオン状態となった後に、ゲート回路により電圧が印加されて電子式スイッチ素子がオン状態となる(S602)。ここで、電子式スイッチ素子112の一端は機械式スイッチ素子108と連結され、他端はバッテリー20の正極又は負極のうち何れか1つに連結される。但し、電子式スイッチ素子112は、オン状態となったとき短絡回路を構成することができる位置であればどこでも構わない。また、電子式スイッチ素子112は、例えば、サイリスタ、MOSFET、IGBTのうち何れか1つであってよい。また、ゲート回路114は、外部から制御信号を受信して電子式スイッチ素子112に電圧を印加する。
【0075】
機械式スイッチ素子108及び電子式スイッチ素子112がオン状態となった後、電流測定部100がバッテリー短絡電流を測定する。また、機械式スイッチ素子108及び電子式スイッチ素子112がオン状態となった後、バッテリー電圧を電圧測定部102が測定する(S604)。
【0076】
電流測定部100により測定されたバッテリー短絡電流値は、波形算出部104に伝送され、電圧測定部102により測定されたバッテリー電圧値も波形算出部104に伝送される。波形算出部104は、受信したバッテリー短絡電流値及び電圧値を用いてバッテリー電流波形又は電圧波形を算出する。算出された電流波形又は電圧波形は、判読部106に伝送する。
【0077】
判読部106は、受信したバッテリー短絡電流波形と電圧波形を用いてバッテリー安全性を判断する(S606)。」
(4) 電圧・電流波形による安全性判断の構成についての検討
ア 「電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成」
本願発明は、前記電圧・電流波形による安全性判断の構成を含むところ、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参照すると、前記(3)において摘記して示したとおり、発明の詳細な説明の記載においては、安全性を判断する際に用いるパラメータとしては、「電流波形」と「電圧波形」のみが記載されており、それ以外のもの、例えば、バッテリーの温度や発火有無の確認などは記載も示唆もされていない。
そうすると、本願発明の電圧・電流波形による安全性判断の構成としては、「前記波形算出部で算出された前記電圧及び前記電流波形のみを用いて前記バッテリーの安全性を判断する判読部」(以下「電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成」という。)を意味するか、又は少なくともこの構成を含むものといえる。
イ 発明の詳細な説明の開示内容
(ア) 前記電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成について、発明の詳細な説明の記載を参照すると、次の記載があるのみである。
a 「判読部106は、波形算出部104で算出された電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する。」(【0029】)
b 「 オシロスコープで算出されたバッテリー電流波形と電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する。」(【0039】)
c 「算出された電圧波形又は電流波形を用いて当該バッテリーの安全性が判断される。」(【0047】)
d 「判読部306は、波形算出部304で算出された電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する。バッテリーの短絡電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する方法は、公知の技術であって、当業者であれば容易に分かるので、具体的な説明は省略する。」(【0057】)
e 「算出された電圧波形又は電流波形を用いて当該バッテリーの安全性が判断される。バッテリーの短絡電流波形又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する方法は、公知の技術であって、当業者であれば容易に分かるので、具体的な説明は省略する。」(【0066】)
f 「図5aに示された電流波形とは異なり、図2bに示された本発明の一実施形態に係るバッテリー安全性検査装置により算出されたバッテリー短絡電流波形は、チャタリング現象が除去されて電流波形のピーク部分が歪んでいなかった。よって、短絡電流波形を用いたバッテリー安全性試験をより正確に行うことができる。」(【0070】)
g 「判読部106は、受信したバッテリー短絡電流波形と電圧波形を用いてバッテリー安全性を判断する(S606)。」(【0077】)
(イ) すなわち、発明の詳細な説明には、前記電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成については、前記電圧・電流波形を具体的にどのように解析して、これらの解析結果から具体的にどのように安全性の判断をするのか、何ら記載されていない。
ウ バッテリーの安全試験についての技術常識
(ア) 電池類の安全性試験については、例えば日本産業規格(JIS)の「C8712:2015」「ポータブル機器用二次電池(密閉型小型二次電池)の安全性」において次のように規定されている。
「7.3.2 外部短絡
単電池及び組電池の外部短絡試験は,次による。
a) 要求事項 正極端子と負極端子との短絡によって,発火又は破裂を引き起こさない。
b) 試験2個の単電池又は2組の組電池を,それぞれ20±5℃及び55±5℃の周囲温度の中に放置する。
単電池又は組電池を,正極端子及び負極端子を総計80±20mΩの外部抵抗に接続して短絡させる。単電池又は組電池は24時間を経過するか,又は電池容器の温度が最高温度から最大温度上昇幅(最高温度と周囲温度との差)の20%低下するか,そのいずれかになるまで放置する。
c) 判定基準 発火又は破裂があってはならない。」
(イ) このように、「電池類の安全性試験には、発火及び破裂の有無の確認が要求されること」は、技術常識(以下「技術常識A」という。)である。
この点に関しては、本願明細書の段落【0006】においても背景技術の説明として、「外部短絡試験の場合には、バッテリーの両端を短絡させた際の破裂発火有無を評価する。」と記載されており、本願請求人も自認するものといえる。
エ 請求人の主張の検討
(ア) 参考文献1について
a 意見書において、請求人は、参考文献1として、「Sean Moore et al, Online Condition Monitoring of Lithium-Ion Batteries Using Impedance Spectroscopy, 2017 IEEE」を提示し、その第1頁には、波形によるバッテリーの診断が一般的な方法であることを示す関連情報が記載されていることを根拠の一つとして、電圧及び電流の波形を使用してバッテリーの安全性を判断するとの特徴は、周知技術であり、この構成は当業者によって容易に実施されることができる旨主張している。
b その後、審尋に対する回答書において、請求人は、「参考文献1は、電流、電圧に基づいたEIS技術を用いてバッテリの状態を判断する内容を開示しており、審判官合意体殿が要求する「電圧波形」または「電流波形」を用いてバッテリをモニタリングする内容を提供することは難しいと思料致します。」と回答しており、前記aの意見書の主張は採用できない。
(イ) 参考文献2について
a 意見書において、請求人は、参考文献2として、米国特許第6526361号公報を提示し、第17頁、第19頁、及び第21頁~第23頁には、波形によるバッテリーの診断が一般的な方法であることを示す関連情報が記載されていることを根拠の一つとして、電圧及び電流の波形を使用してバッテリーの安全性を判断するとの特徴は、周知技術であり、この構成は当業者によって容易に実施されることができる旨主張している。
b 審尋に対する回答書において、請求人は、参考文献2には、次のことが記載されていると主張する。
(a) 図9~図13には、時間軸に対する電圧が開示され、特に図11及び図12には、電圧の波形に区別された良好なバッテリと不良なバッテリとが開示されている。
(b) 例えば、第10欄の第19行目~第23行目には、「図11および図12に示すグラフィックデータに目を向けると、これらは、FETゲート電圧または制御電圧だけでなく、良品および不良品のバッテリー応答に関する電圧/時間プロットも示している。図11は微小負荷の結果を示し、図12はマイクロチャージの結果を示す。」(日本語訳)と記載されている。
(c) さらに、第10欄の第24行目~第29行目には、「図11は5回の微小負荷サイクルの効果を示しており、これらは0.1秒の約4分の3、すなわち0.075秒の中間回復期間を挟んで(5回とも)0.45秒弱で達成される。個々の負荷過渡現象は0.1秒の約4分の1、つまり0.025秒の持続時間を持つ。」(日本語訳)と記載されている。
(d) さらに、第10欄の第30行目~第36行目には、「試験のゲート電圧は、試験AからCにかけて約4ボルトから約6ボルトまで上昇し、その後一定に保たれる。不良バッテリのプロット90に対応する5つの電圧降下は、AとBで特徴的な著しい降下を示し、C、D、Eで対応する比較的定常状態のプロファイルを示し、その振幅と鋸歯状のプロファイルが特徴的である。」(日本語訳)と記載されている。
(e) さらに、第10欄の第37行目~第41行目には、「対応する良好電池のプロット92において、大幅に減少した電圧ディップ、及びディップ電圧と中間電圧の相応に変化したプロファイルは、対応する分類の明確な根拠となる。」(日本語訳)と記載されている。
(f) さらに、第10欄の第42行目~第48行目には、「図11に対応するが、F、GおよびHとラベル付けされた3つのマイクロチャージサイクルまたはステップのシーケンスを示す図12において、FETゲート電圧および過渡時間間隔の観点からのマイクロチャージパラメータの表示は、図11のものと非常によく対応しており、したがって、これ以上のコメントは必要ない。」(日本語訳)と記載されている。
(g) さらに、第10欄の第49行目~第53行目には、「図12における不良バッテリ90と良好バッテリ92のバッテリ応答は、良好バッテリ92の対応する控えめな電圧シフトまたはほとんど無視できる電圧シフトに対して、不良バッテリ90の場合、結果として生じるバッテリ電圧ステップアップが著しく強化されるという点で、容易に区別される。」(日本語訳)と記載されている。
c 請求人の主張について検討すると、参考文献2は、次の記載がある。
(a) タイトル
「Battery testing and classification」(バッテリー検査及び分類)
(b) 第1欄3~4行
「This invention relates to a method and apparatus for testing and classification of automotive and other batteries.」(本発明は、自動車用電池等の電池の検査及び分類のための方法及び装置に関する。)」
(c) 第7欄33~39行
「It is expected that it will be possible to cause the system to be capable of distinguishing between different modes of battery failure within the above-mentioned ”bad-unserviceable” battery classification. Thus, for example, a battery may be regarded as worn out after a long length of service due to parasitic and gassing irreversible reactions, or the battery may have been damaged in some way.」(システムに、上述の「不良-使用不能」バッテリ分類内のバッテリ故障の異なるモードを区別させることが可能であることが予想される。したがって、例えば、電池は、寄生反応およびガス発生不可逆反応に起因して長期間の使用後に損耗したと見なされ得るか、又は、電池は何らかの方法で損傷を受けている可能性がある。)
(d) 第11欄29~33行に
「Operation of this simple embodiment proceeds generally in accordance with matters described above, but with the simplification represented by use of a reduced number of battery categories such as simply ”good/good discharged/bad.”」(この単純な実施形態の動作は、概して上述の事項に従って進行するが、単純に「良好/良好な放電/不良」などの低減された数のバッテリカテゴリの使用によって表される単純化を伴う。)
d 前記bの引用個所、前記cの摘記事項及び参考文献2のそのほかの記載を見ても、参考文献2で開示されている発明は、バッテリーの損耗の状況を判断するものであるから、技術常識Aに照らして、バッテリーの安全性試験に関するものでないことは明らかである。また、参考文献2においては、電圧に基づく判断は行っているものの、電圧及び電流に基づく判断を行っているとはいえない。
e したがって、参考文献2を根拠として、「電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成」が周知技術であるとも、従来知られた技術であるとも認めることはできない。
(ウ) 参考文献3について
a 審判請求人は、回答書において、参考文献3として、特開2010-216995号公報を更に提示し、次の(a)及び(b)に示す主張をしている。
(a) 参考文献3の段落〔0047〕及び図7などを参照すると、参考文献3はバッテリが異常状態に達する前にバッテリの状態を検出する技術であって、検出用交流波形をバッテリに印加し、これに応答して得られる応答電流波形を複数の周期にわたって積分し、積分の結果が時間によって増加するのか否かに基づいてバッテリ特性の正常又は異常を判断する技術を開示する。
(b) 参考文献3の段落〔0047〕には、「したがって、この発散程度を基準にして、電池10の正常状態か異常状態か、その程度も含めて判断することが可能になる。例えば、積分範囲の周期を設定し、その設定周期に渡る発散程度について致命異常閾値と、異常前閾値とを定める、そして、積分値波形がゼロを通るように収束するときは正常状態とし、積分値波形がゼロを通るようには収束しないが発散程度としては異常前閾値以下のときは、正常ではないが異常に至る前の注意状態であるとし、発散程度が異常前閾値を超え、致命異常閾値以下のときは異常状態あるいは劣化状態であるとし、発散程度が致命異常閾値を超えるときは、電池10が致命的な異常状態あるいは致命的な劣化状態であるとすることができる。この判断工程は、制御部70の電池特性判断モジュール78の機能によって実行される。」と記載されている。
b(a) 本願発明は、外部短絡試験における機械的接点リレーの使用によるチャタリング現象を除去して、外部短絡時に発生するバッテリー電流波形に対する正確な測定・分析を行うことを課題にしていることを踏まえると、バッテリーの両端を短絡させた際に瞬間的あるいは突発的に生じるバッテリーの短絡電流波形又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断しようとするものである。
(b) これに対して、参考文献3に開示された「電池特性判断方法及び電池特性判断装置」の発明は、前記a(a)で請求人が説示するように、「検出用交流波形をバッテリに印加し、これに応答して得られる応答電流波形を複数の周期にわたって積分し、積分の結果が時間によって増加するのか否かに基づいてバッテリ特性の正常又は異常を判断する」というものであるところ、より詳細に説明すると、正弦波のように予め波形が時間の関数として確定した対称波形の電流又は電圧の信号を入力として、異常がある場合にはその応答波形に非対称が現れ、これを積分することにより検知するものであって、入力は連続的なものであり、瞬間的あるいは突発的なものではない。
(c) したがって、本願発明と参考文献3の測定対象は全く異なるものであるから、参考文献3が本願発明にいうところの「電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成」を示す文献であるとは認められない。
c さらに、次の(a)及び(b)に摘記した参考文献3の【0043】や【0047】に記載されているように、参考文献3は電池の異常状態や劣化状態を検出するものであるから、前記技術常識Aに照らして、このような特性の検出が安全性試験に関するものでないことは明らかである。
(a) 「【0043】
上記のように、一般的に、電池10は、酸化反応の反応抵抗と還元反応の反応抵抗とはほぼ等しくなるように設計されているはずであるので、酸化側反応抵抗Roxと還元側反応抵抗Rredとが明らかに異なる状態は、電池10が異常状態にあるか、異常の前の状態にあることになる。このことが、図6で示されるように、正弦波に対する応答波形の信号84の非対称性で検出できることになる。」
(b) 「【0047】
したがって、この発散程度を基準にして、電池10の正常状態か異常状態か、その程度も含めて判断することが可能になる。例えば、積分範囲の周期を設定し、その設定周期に渡る発散程度について致命異常閾値と、異常前閾値とを定める、そして、積分値波形がゼロを通るように収束するときは正常状態とし、積分値波形がゼロを通るようには収束しないが発散程度としては異常前閾値以下のときは、正常ではないが異常に至る前の注意状態であるとし、発散程度が異常前閾値を超え、致命異常閾値以下のときは異常状態あるいは劣化状態であるとし、発散程度が致命異常閾値を超えるときは、電池10が致命的な異常状態あるいは致命的な劣化状態であるとすることができる。この判断工程は、制御部70の電池特性判断モジュール78の機能によって実行される。」
d 以上のとおりであるから、参考文献3を根拠として、「電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成」が周知技術であるとも、従来知られた技術であるとも、認めることはできない。
(エ) 請求人の主張についてのまとめ
以上検討のとおり、請求人が提示した参考文献1~3のいずれも「電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成」が周知技術であることを示すものではない。
したがって、「電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成」は周知技術であるとは認めることができない。
さらに明細書の【0057】の「バッテリーの短絡電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する方法は、公知の技術であって、当業者であれば容易に分かるので、具体的な説明は省略する。」との主張には、裏付ける事実を認めることができない。
(5) 検討のまとめ
ア 電圧・電流波形による安全性判断の構成について、本願の発明の詳細な説明等では「算出された電圧波形又は電流波形を用いて当該バッテリーの安全性が判断される。」(段落【0047】)という程度の抽象的な記載にとどまっており、「電圧波形」及び「電流波形」を具体的にどのように解析して、安全性を具体的にどのように判断するかについては記載も示唆もされていない。
イ 請求人の主張を検討しても、「電圧・電流波形のみによる安全性判断の構成」は周知技術であると認めることができない。
ウ さらに明細書の【0057】の「バッテリーの短絡電流波形及び/又は電圧波形を用いてバッテリーの安全性を判断する方法は、公知の技術であって、当業者であれば容易に分かるので、具体的な説明は省略する。」との主張には、裏付ける事実を認めることができない。
エ そうすると、電圧・電流波形による安全性判断の構成は、本願明細書の発明の詳細な説明等に具体的な記載はなく、それが周知技術であるとも認められないから、それをどのように具現化して実施するかについては、当業者にとって自明なことではないといわざるを得ない。
オ したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び優先日前の技術常識に基づいては、当業者は、電圧・電流波形による安全性判断の構成を含む本願発明を、過度の試行錯誤を要することなく実施することができるとはいえない。
カ よって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
5 むすび
以上検討のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、請求項1に係る発明について、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-007591