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特許拒絶査定不服審判

2023-011139

アーク検出装置

審判番号
2023-011139
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-009018
請求日
2023年07月04日
審決日
2025年07月15日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社GSユアサ
  • 【請求人代理人】堀 城之
審判長/審判官
  • 審判長 濱野 隆
  • 審判官 岡田 吉美
  • 審判官 小島 寛史
分類
P18 .536-Z (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019- 9018「アーク検出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月 6日出願公開、特開2020-118521〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、平成31年1月23日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和4年11月14日付け:拒絶理由通知書 令和5年 3月17日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (4月18日 :原査定の謄本の送達) 同年 7月 4日 :審判請求書の提出 令和6年 8月30日付け:審尋 同年11月 1日 :回答書の提出 同年12月 4日付け:審尋 請求人は、令和6年12月4日付けの審尋に対して回答しなかった。 2 本願発明 (1) 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年3月17日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「 【請求項1】 スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流を用いて直列に接続された複数の負荷を駆動するシステムで発生するアークを検出するアーク検出装置であって、 前記出力電流を監視する出力電流監視用変流器の2次出力線に設けられ、前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させるアーク検出用変流器と、 前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部と、を具備し、 前記アーク検出用変流器は、アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されていることを特徴とするアーク検出装置。」 (2) 明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面の記載は次に示すとおりである。なお、図面を参照して本願発明の実施の形態を詳細に説明する箇所については、明細書で最初に説明されるところの直後に当該図面を掲載した。また、下線は当合議体による。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、アーク放電を検出するアーク検出装置に関する。 【背景技術】 【0002】 導体の断線や接続不良等によっても発生するアーク放電を検出する装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1では、接点アークを特徴づけるパターンでライン電圧又は負荷電流上の高周波雑音を監視することで、接点アークの存在に応答して出力を生成している。また、特許文献2では、電流センサーによって検出した信号は帯域フィルタを通過させ、リセット可能な積分器に入力し、積分器の出力に基づいてアーク発生を検出している。 (例えば、特許文献2参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特表平08-502818号公報 【特許文献2】特開2003-139814号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、航空灯火システムのように定電流を用いて直列に接続された複数の灯火(負荷)を駆動しなければならないシステムには、従来技術を適用することが困難である。すなわち、高周波スイッチングの電力変換器は、高周波スイッチングの電力変換器で構成され、出力電流は、正弦波状にされ、高周波成分が重畳されているため、アーク放電が発生した際に生じる高周波高周波成分数成分のみを抽出することが困難であった。 【0005】 本発明の目的は、従来技術の上記問題を解決し、スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流からアーク放電が発生した際に生じる高周波成分のみを抽出することができるアーク検出装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明のアーク検出装置は、スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流を用いて直列に接続された複数の負荷を駆動するシステムで発生するアークを検出するアーク検出装置であって、前記出力電流を監視する出力電流監視用変流器の2次出力線に設けられ、前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させるアーク検出用変流器と、前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部と、を具備し、前記アーク検出用変流器は、アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されていることを特徴とする。 【発明の効果】 【0007】 本発明によれば、スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させることができるため、スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流からアーク放電が発生した際に生じる高周波成分のみを抽出することができるという効果を奏する。 【図面の簡単な説明】 【0008】 【図1】本発明に係るアーク検出装置が設けられた航空灯火システムの構成を示す図である。 【図2】図1に示すアーク検出用変流器の構成を示す斜視図である。 【発明を実施するための形態】 【0009】 以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。 【0010】 本実施の形態のアーク検出装置10は、定電流を用いて直列に接続された複数の負荷を駆動するシステム、例えば、図1に示す航空灯火システム1に備えられる。」 「【図1】 [図:0001427185000001.jpg] 」 「【0011】 航空灯火システム1は、商用交流電源などの外部交流電源ACに電気的に接続された定電流交流電源装置2と、定電流交流電源装置2に直列に接続された複数の灯器3とを備えている。 【0012】 定電流交流電源装置2は、外部交流電源ACをコンバータにより交流から直流に変換し、高周波スイッチング素子を使用した電力変換器であるインバータにより直流から交流に変換し、高電圧の定電流を航空灯火の負荷である灯器3に出力電流として供給する。定電流交流電源装置2から出力される出力電流は、正弦波状で、高周波スイッチングに伴う高周波成分が重畳されている。 【0013】 定電流交流電源装置2からの出力電流が流れる電力線4は、閉ループを形成され、灯器3の台数分のトランス5が直列接続されている。トランス5は、灯器3への電源供給用トランスであり、2次側に灯器3が接続される。 【0014】 灯器3の接続には、プラグが用いられ、プラグが抜けかかると、プラグ間でアーク放電が発生し、正弦波状の出力電流にアーク放電に起因する高周波成分が重畳される。 【0015】 そこで、アーク検出装置10は、アーク放電に起因する高周波成分を定電流交流電源装置2の出力電流から検出することで、アーク放電を検出する 【0016】 アーク検出装置10は、アーク検出用変流器CT3と、高速ウインドウコンパレータ11と、パルス引延し回路12と、マイコン6とで構成される。 【0017】 なお、電力線4は、出力電流を監視する出力電流監視用変流器CT1を通して配線されている。そして、出力電流監視用変流器CT1の2次出力線7は、出力電流計測用変流器CT2を通して配線され、出力電流計測用変流器CT2の出力がマイコン6に入力されている。これにより、マイコン6は、過電流等の出力電流の異常を検出することができる。 【0018】 アーク検出用変流器CT3は、図2に示すように、トロイダルコア20と、トロイダルコア20に2次出力線21とで構成され、高周波成分のみが出力される高周波変流器(サーチコイル)として機能し、高周波電流信号の一次導関数を発生させる。」 「【図2】 [図:0001427185000002.jpg] 」 「【0019】 トロイダルコア20の中空部には、出力電流監視用変流器CT1の2次出力線7が貫通され、2次出力線21は、トロイダルコア20に50ターン以上巻き回されている。これにより、アーク検出用変流器CT3の2次出力線21からは、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)が除去又は減衰された高周波電流信号が出力される。 【0020】 高速ウインドウコンパレータ11は、アーク検出用変流器CT3から出力される高周波電流信号を基準電圧と比較し、高周波電流信号が基準電圧以上になると、ハイレベルとなる出力パルスをアーク検出信号として出力する。すなわち、高速ウインドウコンパレータ11は、アーク放電に起因する高周波成分を抽出可能な応答時間を有している。なお、アーク検出用変流器CT3から出力される高周波電流信号は、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)が除去又は減衰されている。従って、高速ウインドウコンパレータ11では、アーク放電に起因する高周波成分のみを検出してアーク検出信号として出力することができる。 【0021】 パルス引延し回路12は、高速ウインドウコンパレータ11からの出力パルスであるアーク検出信号をマイコン6のサンプリング間隔以上に引延してマイコン6に入力する。 【0022】 マイコン6は、アーク検出信号の入力を監視し、アーク検出信号が入力される毎、すなわちアークに起因する高周波成分が検出される毎にカウンター(初期値=0)の値をカウントアップする。そして、マイコン6は、カウントアップしたカウンターの値が予め設定された閾値に到達すると、アークの発生を検出し、図示しない出力部(ランプやブザー)からアーク警告を出力する。また、マイコン6は、アーク検出信号の入力、すなわちアークに起因する高周波成分の検出が所定時間ない場合、カウンターの値をカウントダウンさせることで、アークの誤検出を防止している。 【0023】 以上説明したように、本実施の形態によれば、スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流を用いて直列に接続された複数の負荷を駆動する航空灯火システム1で発生するアークを検出するアーク検出装置10であって、定電流交流電源装置2からの出力電流を監視する出力電流監視用変流器CT1の2次出力線7に設けられ、定電流交流電源装置2でのスイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させるアーク検出用変流器CT3と、アーク検出用変流器CT3の2次出力線21から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部(高速ウインドウコンパレータ11、パルス引延し回路12、マイコン6)とを備えている。 この構成により、スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させることができるため、スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流からアーク放電が発生した際に生じる高周波成分のみを抽出することができる。 【0024】 さらに、本実施の形態において、アーク検出用変流器CT3は、中空部に出力電流監視用変流器CT1の2次出力線7が貫通されたトロイダルコア20を具備し、アーク検出用変流器CT3の2次出力線21は、トロイダルコア20に50回以上巻き回されている。 この構成により、簡単な構成でスイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させることができる。 【0025】 さらに、本実施の形態において、マイコン6は、高速ウインドウコンパレータ11によってアークに起因する高周波成分が検出される毎に、カウンターの値をカウントアップすると共に、高速ウインドウコンパレータ11によってアークに起因する高周波成分の検出が所定時間ない場合、カウンターの値をカウントダウンし、カウンターの値が予め設定された閾値に到達すると、アークの発生を検出する。 この構成により、アークの誤検出を防止し、アークの発生を正確に検出することができる。 【0026】 以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。 【符号の説明】 【0027】 1 航空灯火システム 2 定電流交流電源装置 3 灯器 4 電力線 5 トランス 6 マイコン 7 2次出力線 10 アーク検出装置 11 高速ウインドウコンパレータ 12 パルス引延し回路 20 トロイダルコア 21 2次出力線 CT1 出力電流監視用変流器 CT2 出力電流計測用変流器 CT3 アーク検出用変流器」 3 原査定における拒絶の理由の内容 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由(実施可能要件違反)の概要は、次のとおりである。なお、合議体により下線を引いたところがある。 (実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1に係る発明は、 「スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流を用いて直列に接続された複数の負荷を駆動するシステムで発生するアークを検出するアーク検出装置であって、 前記出力電流を監視する出力電流監視用変流器の2次出力線に設けられ、前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させるアーク検出用変流器と、 前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部と、を具備し、 前記アーク検出用変流器は、アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されていることを特徴とするアーク検出装置。」 である。 しかしながら、 上記請求項1に係る発明の「「前記出力電流を監視する出力電流監視用変流器の2次出力線に設けられ、前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させるアーク検出用変流器と、前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部と、を具備し」なる構成について検討するに、 本願の明細書等には、 「定電流交流電源装置2は、外部交流電源ACをコンバータにより交流から直流に変換し、高周波スイッチング素子を使用した電力変換器であるインバータにより直流から交流に変換し、高電圧の定電流を航空灯火の負荷である灯器3に出力電流として供給する。定電流交流電源装置2から出力される出力電流は、正弦波状で、高周波スイッチングに伴う高周波成分が重畳されている。」([0012]参照。)、 「灯器3の接続には、プラグが用いられ、プラグが抜けかかると、プラグ間でアーク放電が発生し、正弦波状の出力電流にアーク放電に起因する高周波成分が重畳される。」([0014]参照。)、 「アーク検出用変流器CT3は、図2に示すように、トロイダルコア20と、トロイダルコア20に2次出力線21とで構成され、高周波成分のみが出力される高周波変流器(サーチコイル)として機能し、高周波電流信号の一次導関数を発生させる。トロイダルコア20の中空部には、出力電流監視用変流器CT1の2次出力線7が貫通され、2次出力線21は、トロイダルコア20に50ターン以上巻き回されている。これにより、出力電流監視用変流器CT1の2次出力線7からは、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)が除去又は減衰された高周波電流信号が出力される。高速ウインドウコンパレータ11は、アーク検出用変流器CT3から出力される高周波電流信号を基準電圧と比較し、高周波電流信号が基準電圧以上になると、ハイレベルとなる出力パルスをアーク検出信号として出力する。すなわち、高速ウインドウコンパレータ11は、アーク放電に起因する高周波成分を抽出可能な応答時間を有している。なお、アーク検出用変流器CT3から出力される高周波電流信号は、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)が除去又は減衰されている。従って、高速ウインドウコンパレータ11では、アーク放電に起因する高周波成分のみを検出してアーク検出信号として出力することができる。」([0018]-[0020]参照。)と記載されており、 「高周波スイッチング素子を使用した電力変換器であるインバータ」においては、通常、「スイッチングに伴う高周波成分」であるところの、当該インバータのスイッチング周波数以上の周波数を有する高周波成分が含まれるものと解されるところ(技術常識による判断である。)、 上記当初明細書等の記載によれば、「アーク検出用変流器CT3から出力される高周波電流信号」においては、「外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)が除去又は減衰されている」とされているのみであり、「外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)」を「除去又は減衰」することにより、いかにして、「前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させる」のか、不明である。 そして、「前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部」なるものを実現するには、「前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号」には、「アークを検出する」ための周波数成分(「正弦波状の出力電流」に重畳されている「アーク放電に起因する高周波成分」と解される。)が含まれている必要があり、そのためには、「アーク検出用変流器」においては、当該「アーク放電に起因する高周波成分」は「除去又は減衰」されてはならないが、「前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させ」、一方では、「アーク放電に起因する高周波成分」は「除去又は減衰」されないような特性を有する「アーク検出用変流器」をいかにして実現するのかも、また不明である。 したがって、明細書等の記載によっても、技術常識を参酌しても、上記請求項1に係る発明の「前記出力電流を監視する出力電流監視用変流器の2次出力線に設けられ、前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させるアーク検出用変流器と、前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部と、を具備し」なる構成をいかにして実現するのか、わからない。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 次に、意見書における出願人の主張 『補正後の請求項1において、「アーク検出用変流器」は、「アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されている」ことを明確にしました。 これにより、請求項1に対する拒絶理由1は、解消されたものと思料いたします。』 について検討する。 上記補正により、「アーク検出用変流器」が「アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されている」ことは明確になったかもしれない。 しかしながら、当該補正により、どのようにして、上記請求項1に係る発明の「前記出力電流を監視する出力電流監視用変流器の2次出力線に設けられ、前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させるアーク検出用変流器と、前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部と、を具備し」なる構成の実現が可能であることが明確となるのか、明らかではないし、また、その説明がされたわけでもない。 したがって、上記補正によっても、請求項1に対する拒絶理由1は、解消されたとまではいえない。 よって、出願人の主張は、上記拒絶の理由を覆すのに足りない。 4 審判手続における請求人の主張と審尋及び回答書の内容 (1) 審判請求書における請求人の主張 請求人は、審判請求書において、次のアからウに示す主張をしている。 ア 変流器について 変流器は、1次巻線に印加した電圧Ei(または電流)を、磁性材のコアの中で磁束に変換し、2次出力線から電圧Eo(または電流)に再度変換して取り出すものである。 トランスの1次巻線に印加した電圧は、式(1)で表せる。 Φ=B・S=Ei・T・109/N ・・・ (1) ここで、磁束:Φ(wb)、磁束密度:B(mT)、コアの断面積:S(mm2)、1次巻線に印加した電圧:Ei(V)、印加時間:T(sec)、巻数:N(t)、単位系の比例定数:109である。 参考図 [図:0001427185000003.jpg] 参考図(A)に示すような1t:100tの変流器を考え、抵抗R=10(Ω)とすると、抵抗両端の電圧Vrは、式(2)となる。 Vr=10Ω・0.1A=1V ・・・ (2) 変流器の磁性材の飽和磁束密度を1000mT(テスラ)、コアの断面積Sを10mm2とすると、印可時間Tは、式(1)を用いて式(3)で求めることができる。 T=B・N・S/(E・109) =1000・100・10/(1・109) =1(msec) ・・・ (3) 実際に流れる電流は正弦波となるが、説明を簡単にするため、duty50(%)の矩形波を印加したとする。式(3)より、矩形波の周波数は、印可時間が1(msec)であるため、1周期では2(msec)となり、500(Hz)になる。 この条件でより低い周波数を印加した場合は、最大磁束密度を超えるため、コアが飽和する。したがって、参考図(B)のように印加周波数が低下すると出力電圧Eoが低下する特性となる。 [図:0001427185000004.jpg] 以上より、コアの断面積や巻数によって周波数特性を設計することにより、変流器は、2次出力線に所望の周波数以下を出力しない、言い換えると所望周波数以上を出力すること(高域通過フィルタ)が可能となる。 イ 「アーク検出用変流器」について 「アーク検出用変流器」は、「前記出力電流を監視する出力電流監視用変流器の2次出力線に設けられ、前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させ」、「アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されている」。 すなわち、「アーク検出用変流器」は、「出力電流監視用変流器」と共に、周波数特性を適切に設計することで、高域通過フィルタとして使用する。例えば、参考図(C)に示すような周波数特性に設計された「出力電流監視用変流器」で基本周波数成分(50/60Hz)を、参考図(D)に示すような周波数特性に設計された「アーク検出用変流器」で、スイッチング周波数成分(10kHz)を除去し、基本周波数成分及びスイッチング周波数成分よりも周波数が高いアーク放電の周波数成のみを切り分けている。 [図:0001427185000005.jpg] ウ むすび したがって、「前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させる」ためには、「アーク検出用変流器」の周波数特性を適切に設計すればよく、請求項1に係る発明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものある。 (2) 令和6年 8月30日付け審尋の内容 令和6年 8月30日付けで審尋した内容は、次のとおり。 「 この審判事件について、下記の点に対する回答書を、この審尋の発送の日から60日以内に提出してください。 記 1 審尋事項1について 後記(2)アに示す請求項1の記載及び後記(2)イに示す明細書の発明の詳細な説明の記載からの抜粋を参酌すると、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、「アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されている」「アーク検出用変流器」を具備し、当該構成により、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2の例えば、10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるところ、このような周波数特性を有する変流器を合議体は発見しておりません。 (外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)が減衰されるが、10KHz成分は減衰されない変流器が、現時点において販売されていることは承知しております。) つきましては、次の(1)に示す審尋事項について、回答お願いいたします。 (1) 審尋事項1 ア 審尋事項1-1 請求人におかれましては、特許法36条4項1号が規定する実施可能要件の立証責任が請求人にあることを踏まえ、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2の例えば、10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する変流器の入手先(製造元及び型番等の情報)及び周波数特性を示す情報の提供をお願いします。 イ 審尋事項1-2 その上で、本願の出願時において、このような周波数特性を有する変流器が入手可能であったことを立証してください。 (2) 請求項1及び明細書の発明の詳細な説明の記載からの抜粋 ア 請求項1の記載 「 【請求項1】 スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流を用いて直列に接続された複数の負荷を駆動するシステムで発生するアークを検出するアーク検出装置であって、 前記出力電流を監視する出力電流監視用変流器の2次出力線に設けられ、前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させるアーク検出用変流器と、 前記アーク検出用変流器の2次出力線から出力される高周波電流信号に基づいてアークを検出するアーク検出部と、を具備し、 前記アーク検出用変流器は、アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されていることを特徴とするアーク検出装置。」(下線は合議体による。) イ 明細書の発明の詳細な説明の記載からの抜粋 「 【0019】 トロイダルコア20の中空部には、出力電流監視用変流器CT1の2次出力線7が貫通され、2次出力線21は、トロイダルコア20に50ターン以上巻き回されている。これにより、出力電流監視用変流器CT1の2次出力線7からは、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)が除去又は減衰された高周波電流信号が出力される。 【0020】 高速ウインドウコンパレータ11は、アーク検出用変流器CT3から出力される高周波電流信号を基準電圧と比較し、高周波電流信号が基準電圧以上になると、ハイレベルとなる出力パルスをアーク検出信号として出力する。すなわち、高速ウインドウコンパレータ11は、アーク放電に起因する高周波成分を抽出可能な応答時間を有している。なお、アーク検出用変流器CT3から出力される高周波電流信号は、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)が除去又は減衰されている。従って、高速ウインドウコンパレータ11では、アーク放電に起因する高周波成分のみを検出してアーク検出信号として出力することができる。」(下線は合議体による。) 2 審尋事項2について 前記1の審尋事項1について回答できない場合、次の審尋事項2について回答をお願いします。 (1) 審尋事項2 ア 審尋事項2-1 次の(2)に摘記した審判請求書の記載からの抜粋に示す請求人の説明は、あまりにも省略が多くて理解できません。 つきましては、「変流器CT3」の諸元や飽和特性などの物性を明らかにした上で、どうして、「外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2の例えば、10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する変流器」を構成することができるのかについて、順を追ってゆっくりと丁寧に、そして、具体的、明確かつ十分に説明してください。 イ 審尋事項2-1 その上で、どうして本願の出願時において、当業者が実際に製造することができるといえるのかについて、説明してください。 (2) 審判請求書の記載からの抜粋 「 (b)変流器について 変流器は、1次巻線に印加した電圧Ei(または電流)を、磁性材のコアの中で磁束に変換し、2次出力線から電圧Eo(または電流)に再度変換して取り出すものである。 トランスの1次巻線に印加した電圧は、式(1)で表せる。 Φ=B・S=Ei・T・109/N ・・・ (1) ここで、磁束:Φ(wb)、磁束密度:B(mT)、コアの断面積:S(mm2)、1次巻線に印加した電圧:Ei(V)、印加時間:T(sec)、巻数:N(t)、単位系の比例定数:109である。 参考図(A)に示すような1t:100tの変流器を考え、抵抗R=10(Ω)とすると、抵抗両端の電圧Vrは、式(2)となる。 Vr=10Ω・0.1A=1V ・・・ (2) 変流器の磁性材の飽和磁束密度を1000mT(テスラ)、コアの断面積Sを10mm2とすると、印可時間Tは、式(1)を用いて式(3)で求めることができる。 T=B・N・S/(E・109) =1000・100・10/(1・109) =1(msec) ・・・ (3) 実際に流れる電流は正弦波となるが、説明を簡単にするため、duty50(%)の矩形波を印加したとする。式(3)より、矩形波の周波数は、印可時間が1(msec)であるため、1周期では2(msec)となり、500(Hz)になる。 この条件でより低い周波数を印加した場合は、最大磁束密度を超えるため、コアが飽和する。したがって、参考図(B)のように印加周波数が低下すると出力電圧Eoが低下する特性となる。 以上より、コアの断面積や巻数によって周波数特性を設計することにより、変流器は、2次出力線に所望の周波数以下を出力しない、言い換えると所望周波数以上を出力すること(高域通過フィルタ)が可能となる。」 「参考図 [図:0001427185000006.jpg] [図:0001427185000007.jpg] 」 (3) 令和6年11月1日に提出された回答書の内容 令和6年11月1日に提出された回答書による回答の内容は次のとおり。 「1.審尋事項1について 「外部交流電源(50Hz等)の基本周波数成分及び定電流交流電源装置のスイッチング周波数成分(10kHz等)が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する変流器の具体的な情報」については、以下の通りです。 本願発明におけるアーク検出用変流器は、補正後の請求項1に記載されたような「アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されている」構成を具備しますが、これは、電流測定用のカレントトランス(CT)の一態様です。 また、補正後の請求項1においては、「前記スイッチングに伴う高周波成分を除去又は減衰させる(アーク検出用変流器)」とされていますが、段落番号0018に記載されるように、アーク検出用変流器は、「高周波成分のみが出力される高周波変流器」(審判請求書3頁20行に記載の高域通過フィルタ:ハイパスフィルタ)として機能します。これは、段落番号0019に記載されるように、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、定電流交流電源装置のスイッチング周波数(例えば10KHz)よりも、アーク放電に起因する成分は高い周波数成分をもつため、アーク放電に起因する高周波成分よりも低い周波数成分を、アーク検出用変流器で除去又は減衰させることによって、アーク放電に起因する成分が検出しやすくなるためです。 このため、このアーク検出用変流器においては、ハイパスフィルタとなる周波数特性が特に重要となります。 2019年1月23日(本件出願日)時点で購入可能であったCTの仕様書として、例えば以下の3つがあります。 (1)CTL-28-S90-05Z-1R1 https://www.u-rd.com/products/CTL-28-S90-05Z-1R1_tab1.html#detail_tab (2)CTL-58-S100-2F-1KR5 https://www.u-rd.com/products/CTL-58-S100-2F-1KR5_tab1.html 以上、株式会社ユー・アール・ディー (3)TCT-2504 https://kyoritsutech.com/wp-content/themes/kyoritsu/pdf/27_TCT_2504.pdf 以上、株式会社協立テクノロジー これらにおいては、審判請求書(令和5年7月4日)の参考図(B)~(D)に対応した周波数特性、すなわち、高周波域のみを透過させるハイパスフィルタとしての特性が実現されています。 参考図1は、このうち、上記の(2)の周波数特性であり、これは、審判請求書の参考図(D)に近い特性となっています。 【参考図1】 [図:0001427185000008.jpg] このように、審判請求書の参考図(D)のようなハイパスフィルタとしての周波数特性をもつCTを適宜得ることができることは周知であり、例えば特開2002-58254号公報の段落番号0019にも同様の内容が記載されています。 2.審尋事項2について 「どのようにして外部交流電源(50Hz等)の基本周波数成分及び定電流交流電源装置のスイッチング周波数成分(10kHz等)が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する変流器を構成することができるのか」については、以下の通りです。 前記のように、審判請求書の参考図(D)に対応した周波数特性をもつトランスを用いることによって、「アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号」(正確には「アーク放電に起因する高周波成分が他の成分よりも強調された高周波電流信号」)が得られることが明らかですが、この点についての実験結果を以下に説明致します。 ここでは、CT3のトロイダルコイルとして東邦亜鉛(株)製の品名HKBS-14D0180-1120RPS2を用い、「アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されている」構成にて実験を行いました。CT3の正確な周波数特性は得られていませんが、ハイパスフィルタとしては確実に機能しています。このCT3を用いた場合における、以下の参考図2(本願明細書の図1に対応)における3箇所(A:CT3の入力側、B:CT3の出力側、C:高速ウィンドウコンパレータの出力側)の波形を、参考図3に示します。 【参考図2】 [図:0001427185000009.jpg] 【参考図3】 [図:0001427185000010.jpg] 参考図3の結果より、低周波成分(50Hz)が顕著であるAに対し、CT3通過後のB、あるいは更に高速ウィンドウコンパレータ通過後のCにおいては、この低周波成分が除去され、アーク放電に起因する成分がパルスとして認識できることが明らかです。このため、同様の周波数特性を有するアーク検出用変流器を用いることによって、同様の出力を得ることができることが明らかです。 3.むすび 審判官殿ご指摘の点につきましては上記の通りです。更に、必要、可能であれば、特許請求の範囲を限定する補正をする準備がございます。 審判請求人としては、本回答書あるいは上記の補正によって拒絶理由は解消すると考えますので、再度ご審理いただきたくお願い申し上げます。更に、必要、可能であれば、特許請求の範囲を限定する補正をする準備もございます。 拒絶査定の取消審決を賜りますようよろしくお願い申し上げます。」 (4) 令和6年12月4日付け審尋の内容 令和6年11月1日に提出された回答書の内容は不適切なものであったため、令和6年12月4日付けで次を内容とする審尋をした。 「 この審判事件について、下記の点に対する回答書を、この審尋の発送の日から60日以内に提出してください。 記 審判合議体は、令和6年8月30日付けの審尋に対する請求人からの回答を検討しましたが、回答として不十分なものであるとの心証を有しており、以下の審尋事項1~3について更に審尋します。 請求人におかれましては、誠実に、かつ、具体的、明確かつ十分に御説明をお願いいたします。 なお、以下では、符号の混同を防ぐ必要があるときは、令和6年8月30日付けの審尋における審尋事項を「前回審尋事項」といい、この審尋における審尋事項を「今回審尋事項」ということがあります。 1 審尋事項1について (1) 前回審尋事項1の内容と請求人の回答 前回審尋事項1は、次のアのとおりであるところ、請求人は、後記イのとおり回答しています。 ア 前回審尋事項1の内容 (ア) 前回審尋事項1-1 10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する変流器の入手先(製造元及び型番等の情報)及び周波数特性を示す情報の提供をお願いします。 (イ) 前回審尋事項1-2 その上で、本願の出願時において、このような周波数特性を有する変流器が入手可能であったことを立証してください。 イ 回答書における請求人の回答内容 「2019年1月23日(本件出願日)時点で購入可能であったCTの仕様書として、例えば以下の3つがあります。 (1)CTL-28-S90-05Z-1R1 https://www.u-rd.com/products/CTL-28-S90-05Z-1R1_tab1.html#detail_tab (2)CTL-58-S100-2F-1KR5 https://www.u-rd.com/products/CTL-58-S100-2F-1KR5_tab1.html 以上、株式会社ユー・アール・ディー (3)TCT-2504 https://kyoritsutech.com/wp-content/themes/kyoritsu/pdf/27_TCT_2504.pdf 以上、株式会社協立テクノロジー これらにおいては、審判請求書(令和5年7月4日)の参考図(B)~(D)に対応した周波数特性、すなわち、高周波域のみを透過させるハイパスフィルタとしての特性が実現されています。 参考図1は、このうち、上記の(2)の周波数特性であり、これは、審判請求書の参考図(D)に近い特性となっています。 【参考図1】 [図:0001427185000011.jpg] このように、審判請求書の参考図(D)のようなハイパスフィルタとしての周波数特性をもつCTを適宜得ることができることは周知であり、例えば特開2002-58254号公報の段落番号0019にも同様の内容が記載されています。」 (2) 今回審尋事項1 ア 今回審尋事項1-1 請求人が提示した「(1)CTL-28-S90-05Z-1R1」の周波数特性は、次の図に示すとおりです。 参考図では、10KHz(f=104Hz)の周波数はほとんど減衰していません。 [図:0001427185000012.jpg] 上記の図では、10KHzすなわち104Hzにおいては出力電圧はほとんど低下していません。 どうして「10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する」といえるのでしょうか。 請求人におかれましては、誠実に、かつ、具体的、明確かつ十分に御説明をお願いいたします。 イ 今回審尋事項1-2 請求人が提示した「(2)CTL-58-S100-2F-1KR5」の周波数特性である前記【参考図1】においては、4×106Hz付近において出力電圧のピークがあり、それより高い周波数については5×106Hz付近までしか曲線が図示されていませんが、出力電圧が低下していることが認めらます。 したがって、「(2)CTL-58-S100-2F-1KR5」はハイパスフィルタではないと存じます。 どうして、「10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有するハイパスフィルタ」の情報の提供をしたことになるのか、請求人におかれましては、誠実に、かつ、具体的、明確かつ十分に御説明をお願いいたします。 ウ 今回審尋事項1-3 請求人が提示された「(3)TCT-2504」については、「周波数範囲 150kHz ~ 30MHz」と説明があるのみで、10KHzの周波数がどの程度減衰するのか理解できません。 しっかりと、周波数特性を示していただくなどして、どうして、「10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有するハイパスフィルタ」の情報の提供をしたことになるのか、請求人におかれましては、誠実に、かつ、具体的、明確かつ十分に御説明をお願いいたします。 エ 今回審尋事項1-4 特開2002-58254号公報の【0019】等においては、次の<特開2002-58254号公報からの抜粋>に示すとおり記載されています。 この記載からどうして「10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する」ものが入手可能だったことの証明になるのでしょうか。 請求人におかれましては、誠実に、かつ、具体的、明確かつ十分に御説明をお願いいたします。 <特開2002-58254号公報からの抜粋> 「【0019】図3に請求項3の位置にACCTを取り付けた場合の実施例を示し、図4にACCTの特性を示す。汎用カレントトランス(ACCT)は50/60Hz専用に設計されているためモータ電流が低周波数f1以下ではカレントトランスのコアが飽和しその出力信号は使用できない。しかしコンプレッサは機能上ある周波数以上の運転周波数で運転しなければ性能が発揮できないので制御上最低周波数をリミットできる。この最低条件でACCTによる検出が可能であれば電流検出器として使用可能である。」 「【図3】 [図:0001427185000013.jpg] 」 「【図4】 [図:0001427185000014.jpg] 」 2 審尋事項2について (1) 前回審尋事項の内容と請求人の回答 前回審尋事項2は、次のアのとおりであるところ、請求人は、後記イのとおり回答しています。 ア 前回審尋事項2の内容 (ア) 前回審尋事項2-1 変流器について、審判請求書における請求人の説明は、あまりにも省略が多くて理解できません。 つきましては、「変流器CT3」の諸元や飽和特性などの物性を明らかにした上で、どうして、「外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)、及び定電流交流電源装置2の例えば、10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する変流器」を構成することができるのかについて、順を追ってゆっくりと丁寧に、そして、具体的、明確かつ十分に説明してください。 (イ) 前回審尋事項2-2 その上で、どうして本願の出願時において、当業者が実際に製造することができるといえるのかについて、説明してください。 イ 回答書における請求人の回答内容 請求人は回答書において、次のとおり説明してます。 「ここでは、CT3のトロイダルコイルとして東邦亜鉛(株)製の品名HKBS-14D0180-1120RPS2を用い、「アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されている」構成にて実験を行いました。CT3の正確な周波数特性は得られていませんが、ハイパスフィルタとしては確実に機能しています。このCT3を用いた場合における、以下の参考図2(本願明細書の図1に対応)における3箇所(A:CT3の入力側、B:CT3の出力側、C:高速ウィンドウコンパレータの出力側)の波形を、参考図3に示します。 【参考図2】 [図:0001427185000015.jpg] 【参考図3】 [図:0001427185000016.jpg] 参考図3の結果より、低周波成分(50Hz)が顕著であるAに対し、CT3通過後のB、あるいは更に高速ウィンドウコンパレータ通過後のCにおいては、この低周波成分が除去され、アーク放電に起因する成分がパルスとして認識できることが明らかです。このため、同様の周波数特性を有するアーク検出用変流器を用いることによって、同様の出力を得ることができることが明らかです。」 (2) 今回審尋事項2 ア 今回審尋事項2-1 【参考図3】のものは、縦軸と横軸が不明であり、図が不鮮明です。 縦軸と横軸の値が正確に分かり、図が鮮明であるものを提出してください。 イ 今回審尋事項2-2 【参考図3】のものは、CT3通過後のBにおいて50Hzの成分が除去されているとしても、CT3通過後のBにおいて「10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られるという周波数特性を有する」のか不明です。 請求人におかれましては、誠実に、かつ、具体的、明確かつ十分に御説明をお願いいたします。 ウ 今回審尋事項2-3 「東邦亜鉛(株)製の品名HKBS-14D0180-1120RPS2」のトロイダルコイルの周波数特性の御提供をお願いします。 エ 今回審尋事項2-4 「東邦亜鉛(株)製の品名HKBS-14D0180-1120RPS2」のトロイダルコイルが本願の出願前に入手可能であったことを証明してください。 3 審尋事項3について (1) 審尋事項3 前回審尋事項2-1においても指摘しましたが、次の(2)の<審判請求書の記載からの抜粋)に摘記した事項に示す請求人の説明は、あまりにも省略が多くて、どのように式が導出されるのか等が不明であり、論旨を正確に理解することができません。 請求人は、この点に関し、回答書において式の導出過程を何ら説明されていません。 つきましては、審尋事項3として改めて審尋しますので、例えば加筆補足説明するなどして修正し、各式がどのように導出されるのかを、大学の教養課程を修了した理工系の学生が理解できる程度の丁寧さをもって、論理の飛躍をすることなく、順を追ってゆっくりと丁寧に、御説明ください。 誠実な御対応を期待しております。 (2) 審判請求書の記載からの抜粋 「(b)変流器について 変流器は、1次巻線に印加した電圧Ei(または電流)を、磁性材のコアの中で磁束に変換し、2次出力線から電圧Eo(または電流)に再度変換して取り出すものである。 トランスの1次巻線に印加した電圧は、式(1)で表せる。 Φ=B・S=Ei・T・109/N ・・・ (1) ここで、磁束:Φ(wb)、磁束密度:B(mT)、コアの断面積:S(mm2)、1次巻線に印加した電圧:Ei(V)、印加時間:T(sec)、巻数:N(t)、単位系の比例定数:109である。 参考図(A)に示すような1t:100tの変流器を考え、抵抗R=10(Ω)とすると、抵抗両端の電圧Vrは、式(2)となる。 Vr=10Ω・0.1A=1V ・・・ (2) 変流器の磁性材の飽和磁束密度を1000mT(テスラ)、コアの断面積Sを10mm2とすると、印可時間Tは、式(1)を用いて式(3)で求めることができる。 T=B・N・S/(E・109) =1000・100・10/(1・109) =1(msec) ・・・ (3) 実際に流れる電流は正弦波となるが、説明を簡単にするため、duty50(%)の矩形波を印加したとする。式(3)より、矩形波の周波数は、印可時間が1(msec)であるため、1周期では2(msec)となり、500(Hz)になる。 この条件でより低い周波数を印加した場合は、最大磁束密度を超えるため、コアが飽和する。したがって、参考図(B)のように印加周波数が低下すると出力電圧Eoが低下する特性となる。 以上より、コアの断面積や巻数によって周波数特性を設計することにより、変流器は、2次出力線に所望の周波数以下を出力しない、言い換えると所望周波数以上を出力すること(高域通過フィルタ)が可能となる。」 「参考図 [図:0001427185000017.jpg] [図:0001427185000018.jpg] 」 5 当審の判断 (1) 本願明細書の発明の詳細な説明の【0004】及び【0005】等を参照すると、本願発明が解決しようとする課題は、従来技術においては、高周波スイッチングの電力変換器は、高周波スイッチングの電力変換器で構成され、出力電流は、正弦波状にされ、高周波成分が重畳されているため、アーク放電が発生した際に生じる高周波成分のみを抽出することが困難であったところ、かかる従来技術の上記問題を解決し、スイッチングに伴う高周波成分が重畳された正弦波状の出力電流からアーク放電が発生した際に生じる高周波成分のみを抽出することができるアーク検出装置を提供することにあると認められる。 (2) そして、明細書の段落【0020】の記載を参照すると、アーク検出用変流器CT3から出力される高周波電流信号は、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)及び定電流交流電源装置2のスイッチング周波数(例えば、10KHz成分)が除去又は減衰され、高速ウインドウコンパレータ11では、アーク放電に起因する高周波成分のみを検出してアーク検出信号として出力することができる旨説明されている。 (3) 本願発明においては、「アーク検出用2次出力線が巻き回され、中空部に前記出力電流監視用変流器の2次出力線が貫通されている」「アーク検出用変流器」を具備し、当該構成により、外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)及び定電流交流電源装置2の10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られることとなるところ、このようなものが具体的にどのように製造又は入手されるのか、発明の詳細な説明には記載が全くない。 (4) そこで、合議体は、職権調査したところ、「外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)が減衰されるが、10KHz成分は減衰されない変流器が、現時点において販売されていること」は、承知したものの、「外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)及び定電流交流電源装置2の10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られる」という周波数特性を有する変流器については、合議体は発見できなかった。 (5) このため、合議体は2回にわたり審尋を行い、「外部交流電源ACの基本周波数成分(50/60Hz)及び定電流交流電源装置2の10KHzのスイッチング周波数成分が除去又は減衰され、アーク放電に起因する高周波成分のみからなる高周波電流信号の出力が得られる」という周波数特性を有する変流器」をどのように入手することができるのか回答を求めたが、当該要請を満たす回答は請求人から提供されなかった。 (6) かかる状況では、特許法36条4項1号の実施可能要件の証明責任が請求人にあることも踏まえると、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本願発明を実施することができる程度に本願明細書の発明の詳細な説明が記載されているとは認められないから、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明について、特許法36条4項1号の実施可能要件を満たしているとは認められない。 6 むすび 以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が請求項1に係る発明について特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-011139

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