特許拒絶査定不服審判
2023-007189
管理システム、管理方法および管理プログラム
- 審判番号
- 2023-007189
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-142517
- 請求日
- 2023年05月01日
- 審決日
- 2023年12月25日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社富士通エフサス
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 渡邊 聡
- 審判官 松尾 俊介
- 審判官 相崎 裕恒
- 分類
- P18 .121-Z (G06Q) / P18 .113-Z (G06Q) / P18 .537-Z (G06Q) / P18 .561-Z (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-142517「管理システム、管理方法および管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年11月 4日出願公開、特開2022-168095〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月26日の特許出願である特願2018-57606号の一部を令和3年6月14日に新たな特許出願とした特願2021-98519号の一部を、令和4年9月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 9月28日 拒絶理由通知書(起案日)
令和 4年11月21日 意見書、手続補正書の提出
令和 5年 2月13日 拒絶査定(起案日)
令和 5年 5月 1日 審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年5月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年5月1日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 令和5年5月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すものとして、当審において付した。)
「【請求項1】
情報処理端末におけるログインおよびログオフを検知する検知部と、
前記検知部による検知内容に基づき、ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間を算出する算出部と、
前記累計時間が、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する前記情報処理端末の使用時間の上限を超える場合に、前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させると共に、月末において、1か月間の使用時間の累計時間から、前記労働時間制又は業務内容に応じて設定される総労働時間を減算した推定時間外労働時間を算出して出力する表示制御部と、
を備えることを特徴とする管理システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年11月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
情報処理端末におけるログインおよびログオフを検知する検知部と、
前記検知部による検知内容に基づき、ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間を算出する算出部と、
前記累計時間と、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する前記情報処理端末の使用時間の上限とを基にして、前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする管理システム。」
(3)本件補正は、請求項1の「前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させる」「表示制御部」が、該「実行させる」条件を「前記累計時間が、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する前記情報処理端末の使用時間の上限を超える場合」とする旨を追加し(以下「補正事項1」という。)、さらに、該「表示制御部」が「月末において、1か月間の使用時間の累計時間から、前記労働時間制又は業務内容に応じて設定される総労働時間を減算した推定時間外労働時間を算出して出力する」旨を追加することで、「表示制御部」の機能を「・・・前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させると共に、・・・推定時間外労働時間を算出して出力する」との機能に変更する(以下[補正事項2]という。)ものである。
2 本件補正の適否
以下、補正事項2について、本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に適合するか否かについて検討する。
(1)ア 「前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させる」「表示制御部」(本件補正の前後において共通する技術的事項)について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)における、これに対応する記載は、次のとおりである。(下線は、当審において付した。)
「【0038】
図3は、タイミング記憶部112が記憶する情報の構成の一例を示す図である。図3の例では、「労働時間制」に対応付けて、「第1の所定タイミング」、「第1の所定期間」、「第1の所定時間」、「抑止処理」が記憶される。また、図3の例では、「労働時間制」に対応付けて、「第2の所定タイミング」、「第2の所定期間」、「第2の所定時間」が記憶される。なお、タイミングに関する情報は、「労働時間制」および「ユーザID」に対応付けて記憶するようにしてもよい。この場合、同じ「労働時間制」が適用される複数のユーザ各々について異なるタイミングを設定するようにしてもよい。このように構成すれば、たとえば、同じ裁量労働制が適用されるユーザであっても、管理システム1は、異なる内容の労働パターンを各ユーザに適用して柔軟に管理することができる。
【0039】
たとえば、図3の例では、「労働時間制、A」に対応付けて、「第1の所定タイミング、30分毎」、「第1の所定期間、月始めから」、「第1の所定時間、170時間」、「抑止処理、PU+SD」が記憶される。これは、「A」という労働時間制が適用されるユーザについて、クライアント20がログイン中は30分毎に、月始めからのクライアント20の使用時間が累積労働時間として制御部120により算出されることを示す。また、算出された累積労働時間が170時間に達すると、制御部120により抑止処理が実行されることを示す。たとえば、抑止処理として、警告表示、強制シャットダウン、強制ログオフ等が実行できる。図3の例では、警告を表示するポップアップ画面が表示された(Pop Up:PU)後、強制シャットダウン(Shut Down:SD)が実行される。
【0040】
また、たとえば、図3の例では、「労働時間制、B」に対応付けて、「第1の所定タイミング、終業時刻」、「第1の所定期間、月始めから」、「第1の所定時間、150時間」、「抑止処理、PU」が記憶される。これは、労働時間制「B」が適用されるユーザについては、終業時刻になると、月初めからその時点までの累積労働時間が制御部120により算出されることを示す。また、算出された累積労働時間が150時間に達すると、制御部120により抑止処理としてポップアップ(PU)画面の表示が実行されることを示す。」
「【0056】
抑止部122は、第1の所定タイミングにおいて、算出部121が算出した第1の所定期間の労働時間が第1の所定時間を超えるか否かを判定する。そして、抑止部122は、第1の所定期間の労働時間が第1の所定期間を超えると判定した場合に抑止処理を実行する。他方、第1の所定期間の労働時間は第1の所定期間を超えないと判定した場合には、抑止部122は抑止処理を実行しない。」
「【0069】
抑止部223は、管理サーバ10の抑止部122からの指示に応じて、クライアント20の抑止処理を実行する。たとえば、抑止部223は、クライアント20の入出力部240、たとえばモニタ上にポップアップ画面を表示する。また、たとえば、抑止部223は、クライアント20を強制的にシャットダウンする。また、たとえば、抑止部223は、クライアント20を強制的にログオフさせる。
【0070】
申請部224は、クライアント20から勤怠管理システム30への労務に関する申請を送信し、申請結果を受信する。たとえば、抑止部223は、申請画面へのリンクを含むポップアップ画面を表示する。ユーザがリンクをクリックすると申請画面がクライアント20上に表示される。ユーザが申請画面上で行う入力は申請部224により受信され、勤怠管理システム30に送信される。時間外勤務申請を行うための処理の詳細は特に限定されない。」
「【0080】
[管理システム1における管理処理のおおまかな流れの一例]
図6は、実施形態にかかる管理システム1における管理処理の大まかな流れの一例を示す図である。まず、第1の検知部221および第2の検知部222がクライアント20上におけるログイン操作、ログオフ操作、入力部を介した操作入力を検知する(検知処理、ステップS41)。第1の検知部221および第2の検知部222が検知した操作および操作の日時は管理サーバ10に送信される。そして、管理サーバ10の算出部121は、送信された操作および日時に基づき、操作入力が継続していたとみなすことができる時間すなわち労働時間を算出する(第1の算出処理、ステップS42)。抑止部122は、算出された労働時間に基づき抑止処理を実行する(ステップS43)。また、算出部121は、時間外労働時間を推定するために、第2の算出処理を実行する(ステップS44)。そして、推定部123は、第2の算出処理により算出された労働時間に基づきクライアント20を使用するユーザの推定時間外労働時間を算出する(推定処理、ステップS45)。推定時間外労働時間は、記憶部110に記憶される。そして、表示制御部124は、表示リクエストに応じて、レポートを表示する(表示処理、ステップS46)。これが管理システム1における管理処理のおおまかな流れの一例である。
・・・
【0082】
[抑止処理および推定処理の流れの一例]
図8は、実施形態にかかる管理システム1における抑止処理および推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。管理処理は、図7に示す検知処理と平行して実行される。
【0083】
まず、管理サーバ10の算出部121は、タイミング記憶部112に記憶される第1の所定タイミングがくると、労働時間記憶部111を参照して、第1の所定期間中のユーザの労働時間を算出する(ステップS61)。たとえば、第1の所定タイミングが30分毎ある場合、算出部121は、クライアント20がログイン中は30分毎に、労働時間記憶部111を参照し、ログイン操作およびログオフ操作、操作入力があった時間に基づき、第1の所定期間中の労働時間を算出する。労働時間を算出するための算出処理(図9、12参照)については後述する。算出部121は、算出した労働時間を抑止部122に渡す。
【0084】
抑止部122は、算出部121が算出した第1の所定期間中の労働時間と第1の所定時間とを比較し、第1の所定期間の労働時間が第1の所定時間を超えるか否かを判定する(ステップS62)。第1の所定期間の労働時間が第1の所定時間を超えると判定した場合(ステップS62、Yes)、抑止部122は抑止処理を実行する(ステップS63)。他方、第1の所定期間の労働時間が第1の所定時間を超えないと判定した場合(ステップS62、No)、抑止部122は処理を算出部121に返す。」
「【0099】
また、抑止処理の内容も、労働時間制、労働者の役職や業務内容に応じて異なる抑止処理が実行されるようにしてもよい。また、抑止処理においてポップアップ画面を表示する際に、ユーザの累積労働時間や労働してよい上限である制限時間等を表示するようにしてもよい。図15は、ポップアップ画面の一例である。図15に示すように、ユーザ名や、ログイン時刻、ログオフ時刻、累積労働時間、制限時間等をポップアップ画面に表示できる。また、ポップアップ画面から労働時間の延長申請に容易に移動できるようにポップアップ画面をデザインすることができる(図15の「申請」ボタン参照)。」
イ まず、本件補正後の特許請求の範囲には、
「前記検知部による検知内容に基づき、ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間を算出する算出部と、
前記累計時間が、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する前記情報処理端末の使用時間の上限を超える場合に、前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させると共に、月末において、1か月間の使用時間の累計時間から、前記労働時間制又は業務内容に応じて設定される総労働時間を減算した推定時間外労働時間を算出して出力する表示制御部と」と記載されているから、請求項1の「表示制御部」は、「算出部」を含まない構成である。
ウ そして、上記アの記載によれば、管理サーバの「抑止部122」が「警告表示、強制シャットダウン、強制ログオフ等」の「実行」である管理サーバの「抑止処理」を行うとともに、クライアントの「抑止部223」が管理サーバ10の抑止部122からの指示に応じてクライアントの「抑止処理」の「実行」を行う。さらに「抑止部223は、クライアント20の入出力部240、たとえばモニタ上にポップアップ画面を表示する」ことから、「抑止処理」の実行として表示の制御を行うものともいえる。
このことから、請求項1の「前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させる」「表示制御部」は、「抑止部122」及び「抑止部223」が担う機能を上位概念とし、これを「表示制御部」という機能手段として示したものである。
なお、当初明細書等には、「表示制御部124」及び「表示制御部225」が記載されているものの、これらは「抑止部122」及び「抑止部223」と異なるものとされており、上記アの記載からみて、管理サーバ及びクライアントのいずれにおける「抑止処理」の「実行」にも関与していない。このことを踏まえれば、請求項1の「表示制御部」が当初明細書等に記載された「表示制御部124」及び「表示制御部225」を上位概念化したものではないことは、明らかである。
さらに、上記イのとおり、請求項1の「表示制御部」は「算出部」を含まず、当初明細書等に記載された「算出部121」の機能を含むものでないことも、明らかである。
以上のことから、当審は、本件補正後の特許請求の範囲に記載された「表示制御部」は、発明の詳細な説明に記載された「抑止部122」及び「抑止部223」を上位概念化した手段であると認定して以下検討する。
(2)ア 本件補正により補正された請求項1(以下、「補正後請求項1」という。)の「月末において、1か月間の使用時間の累計時間から、前記労働時間制又は業務内容に応じて設定される総労働時間を減算した推定時間外労働時間を算出して出力する」ことについて、これに対応する記載は、上記(1)アの記載には示されておらず、当初明細書等における、「抑止部122」及び「抑止部223」は、「月末において、1か月間の使用時間の累計時間から、前記労働時間制又は業務内容に応じて設定される総労働時間を減算した推定時間外労働時間を算出して出力する」ものとされていない。
イ また、「月末において、1か月間の使用時間の累計時間から、前記労働時間制又は業務内容に応じて設定される総労働時間を減算した推定時間外労働時間を算出して出力する」ことに関連して、当初明細書等には、以下のとおりの記載がある。(下線は、当審において付した。)
「【0041】
また、たとえば、図3の例では、「労働時間制、A」に対応付けて、「第2の所定タイミング」、「第2の所定期間」、「第2の所定時間」が記憶される。これは、労働時間制「A」が適用されるユーザについては、月末になると、その月の累積労働時間が制御部120により算出されることを示す。また、累積労働時間が160時間を超える分が、推定時間外勤務時間として制御部120により算出されることを示す。」
「【0055】
また、算出部121は、第2の所定タイミング(図3参照)がくると、第2の所定期間中の総労働時間を算出する。第2の所定タイミングにおける算出部121の処理は第1の所定タイミングにおける算出処理と同様である。算出部121が算出する労働時間は、ユーザによるクライアント20の使用時間である。」
「【0057】
推定部123は、第2の所定タイミングにおいて、算出部121が算出した第2の所定期間の労働時間と第2の所定時間との比較に基づき、ユーザの推定時間外労働時間を算出する。管理サーバ10は、制度上は「勤務時間」の概念が存在しない裁量労働制が適用されるユーザや、管理監督者も管理対象とする。このため、管理サーバ10は、制度上は「時間外労働」や「勤務時間」という概念が存在しないユーザについても、一定の条件に合致する労働時間を推定時間外労働時間として算出する。」
「【0058】
推定部123はたとえば、算出した労働時間が第2の所定時間を超える分を推定時間外労働時間として出力する。また、推定部123は、推定時間外労働時間を記憶部110に記憶する(図示せず)。」
「【0059】
表示制御部124は、算出部121の処理の結果得られる労働時間(クライアント使用時間)、勤怠管理システム30から取得される労働時間(申告時間)に応じて、レポートを表示する画面の表示制御を実行する。表示制御部124は、たとえば、ユーザ入力に応じて、図5A乃至図5Cに示す画面を表示する。なお、表示制御部124が制御する画面は、管理サーバ10およびクライアント20のいずれにおいて表示してもよい。また、表示制御部124が制御する画面は、他のユーザ端末等で表示できるようにしてもよい。」
「【0060】
[クライアント20の構成および機能の一例]
クライアント20は、記憶部210、制御部220、通信部230および入出力部240を備える。」
「【0066】
制御部220は、第1の検知部221、第2の検知部222、抑止部223、申請部224、表示制御部225を有する。」
「【0071】
表示制御部225は、管理サーバ10の表示制御部124からの指示に応じて、表示部(入出力部240)におけるレポートの表示を制御する。」
「【0085】
次に、算出部121は、第2の所定タイミングに到達したか否かを判定する(ステップS64)。たとえば、算出部121は、月末に達したか否かを判定する。そして、算出部121は第2の所定タイミングに到達していない、と判定した場合(ステップS64、No)、ステップS61に戻って処理を繰り返す。他方、算出部121は第2の所定タイミングに到達した、と判定した場合(ステップS64、Yes)、第2の所定期間中の労働時間を算出する(ステップS65)。そして、算出部121は算出した労働時間を推定部123に渡す。推定部123は、算出部121が算出した労働時間と、第2の所定時間とを比較し、労働時間が第2の所定時間を超える分を推定時間外労働時間として算出する(ステップS66)。そして、推定部123は、算出した推定時間外労働時間を、ユーザID等と対応付けて記憶部110に記憶する(ステップS67)。これで抑止処理および推定処理が終了する。」
「【0098】
(変形例)
上記実施形態において、第1の所定タイミング、第1の所定期間、第1の所定時間は労働時間制に応じて柔軟に設定することができる。たとえば、フレックスタイム制が適用される労働者と、裁量労働制が適用される労働者の各々について、業務の内容や役職に応じて第1の所定時間を変えることができる。また、第1の所定タイミングを複数設けて、1週間おきに累積労働時間をチェックできるように管理システム1を構成してもよい。また、第2の所定タイミング、第2の所定期間、第2の所定時間についても、労働時間制に応じて同様に柔軟に設定することができる。」
「
[図:0001407647000001.jpg]
」
ウ 上記イの記載によると、当初明細書等には、
算出部121は、第2の所定タイミングに到達したか否かを判定し、たとえば月末に達したか否かを判定し(【0085】)、第2の所定タイミングに達したと判定した場合に第2の所定期間中のユーザによるクライアント20の使用時間である労働時間を算出し(【0055】、【0085】)、第2の所定期間は一例においては1月であり(【図3】)、
推定部123は、算出部121が算出した労働時間と第2の所定時間とを比較し、労働時間が第2の所定時間を超える分を推定時間外労働時間として算出し(【0085】)、第1の所定時間は異なる労働時間制が適用される労働者の各々について業務の内容や役職に応じて変えることができ、第2の所定時間についても、労働時間制に応じて同様に柔軟に設定することができ(【0098】)、
管理サーバ10の表示制御部124は、レポートを表示する画面の表示制御を実行し(【0059】、【0071】)、管理サーバ10の表示制御部124からの指示に応じて、クライアント20の制御部220が有する表示制御部225は、レポートの表示を制御する(【0060】、【0066】、【0071】)、ことが記載されており、この「推定部123」は、「抑止部122」及び「抑止部223」とは異なるものとして記載されている。
つまり、月末に達したと判定した場合に1月中の労働時間が第2の所定時間を超える分を推定時間外労働時間として算出する処理は、「推定部123」における「推定処理」として記載されており、「抑止部122」及び「抑止部223」における「抑止処理」として(あるいは「抑止処理」の一部として)記載されていない。むしろ、「抑止処理」のタイミングが「第1の所定のタイミング」であり、「推定処理」はこれと異なる「第2の所定のタイミング」とされていることからも、「抑止処理」と「推定処理」とは異なる処理であって、両者の処理を組み合わせた処理手段を採用することや、当該組み合わせた処理手段によって実現できる機能等について当初明細書等に記載も示唆もなく、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において自明な事項ともいえない。
(3)さらに、「情報処理端末」の「使用時間」は、「抑止処理」において「労働時間」として扱う際の考慮と「推定処理」において「労働時間」として扱う際の考慮が必ずしも同じでないことが明らかである。
すなわち、「抑止処理」の局面では、「労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する前記情報処理端末の使用時間の上限」は、「情報処理端末」における「ログオフ」を「検知」する「検知部」による検知内容に基づく「ユーザ」による「情報処理端末」の「使用時間」の「上限」として設定されるものであって、抑止処理の種類(「強制シャットダウン」、「強制ログオフ」、「警告表示」)に応じて設定されるものとされていない。これに対し、抑止処理として「警告表示」が行われた後の時間は「使用時間」に含まれる一方、「強制シャットダウン」及び「強制ログオフ」のいずれかが行われた後の時間は、「使用時間」に含まれ得ないことが明らかであり、このことから、「推定処理」の局面では、抑止処理が実行されたか否かや実行された抑止処理の種類に応じて「労働時間制又は業務内容に応じて設定される総労働時間」を「減算」した時間に「労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する前記情報処理端末の使用時間の上限」を超えた分が含まれるか否かが異なり得ることから、「推定処理」の局面において「情報処理端末」の「使用時間」を「労働時間」として扱う際の考慮は、「抑止処理」の局面における考慮と同じとは限らない。当初明細書等には、「情報処理端末」の「使用時間」を「抑止処理」及び「推定処理」について「労働時間」として扱う際の考慮が記載されておらず、特に、「抑止処理」と「推定処理」のいずれにおいても「情報処理端末」の「使用時間」を「労働時間」として扱うために必要となる技術的事項、が記載されていない。
このことにも照らせば、「検知部」による検知内容に基づく「ユーザ」による「情報処理端末」の「使用時間」を用いて、「・・・前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させると共に、・・・推定時間外労働時間を算出して出力する」ことは、当初明細書等において記載されていないし、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において自明な事項ともいえない。
(4)以上を踏まえれば、補正事項2による請求項1の「・・・前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させると共に、・・・推定時間外労働時間を算出して出力する」「表示制御部」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項であり、本件補正は、この点で、新たな技術的事項を導入するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明1について
令和5年5月1日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明7」という。)は、令和4年11月21日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定(令和5年2月13日付け拒絶査定)の理由は、令和4年9月28日付け拒絶理由通知における理由2~4であって、その理由4のうちの主たる引用文献を引用文献2とした拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
この出願の請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献3に例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献2.特開2013-167925号公報
引用文献3.特開2003-323533号公報(周知技術を示す文献)
第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は所定の労働基準に違反する前に従業員等に警告を行い労働基準の遵守を促す労務管理システムおよび労務管理用携帯端末に関する。」
「【0011】
図1ないし図3に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は労務管理システムで、労務管理システム1は従業員の出社日時、退社日時、外出日時、出張等の勤怠情報を労務管理装置2に入力する入力手段3と、該入力手段3で入力された従業員の勤怠情報を蓄積する前記労務管理装置に備えられた記憶装置4と、該記憶装置4に蓄積された従業員の勤怠情報から従業員の現在の労働情報を算出する労働情報算出手段5と、該労働情報算出手段5で算出された労働情報が、労働基準に違反しないように設定された所定のアラート条件に該当するか判定する判定手段6と、該判定手段6で判定された判定結果、労働情報を送信する送信手段7と、該送信手段7により送信された情報を受信し表示することができる携帯端末8より構成されている。」
「【0012】
入力手段3は、出社日時、退社日時、休憩時間開始、休憩時間終了、外出日時、出張等の勤怠情報を労務管理装置2に入力し、記憶装置4に蓄積させるものである。入力方法としては、非接触IC、ICカード、二次元コード等に従業員の情報を記録したID9を用いて出社、退社等の情報にタイムスタンプを付与した状態で入力する方法や、タブレット、キーボード、タッチパネル等の入力端末10でそれらの情報を入力する方法等が想定される。具体的には、通常の出社、退社時間の管理はID9を用いて入力し、出張や外出先からの直帰等の情報は入力端末10でそれらの情報を入力する等が想定される。出張や外出、直帰等の情報は、社外から入力端末10でネットワーク11を介して入力してもよいし、出社した際にそれらの情報を会社に備えられた入力端末10から入力してもよい。
記憶装置4には、従業員ごとにその従業員の勤怠情報、氏名や社員番号等の個人情報およびアラート条件、判定の基準となる労働基準が記録されている。」
「【0013】
労働情報算出手段5は、労務管理装置2にインストールされたプログラムで、記憶装置4に蓄積された勤怠情報から、従業員の単位期間あたりの労働時間(1日、1週間、1ヶ月、1年等)、休憩時間、単位期間あたりの時間外労働時間、休日取得状況等(以下、労働情報とする)を算出する。」
「【0014】
判定手段6は、労務管理装置2にインストールされたプログラムで、前記記憶装置4に記録されたアラート条件および算出された労働情報から、その従業員がアラート条件に該当しているか、及びその従業員の労働状態を判定する。前記アラート条件は、労働基準に違反しないように設定されており、労働基準法等の労働基準が改正された場合には、アラート条件や判定の基準は見直される。アラート条件は労働基準に違反するまでに段階的に設定することが望ましい。アラート条件を段階的に設定することで、労働基準の遵守をより促すことができる。」
「【0016】
なお、労働状態とは労働情報を算出し、労働基準と照合して得られるもので、具体例としては、単位期間あたりの労働時間残余、休憩取得時時刻、休憩取得時刻までの残り時間、休憩時間残余、単位期間あたりの時間外労働時間残余、休日取得期限等である。
判定が終了すると送信手段7は判定結果(労働状態、およびアラート条件に該当する場合にはアラート)および労働情報(単位期間あたりの労働時間、休憩時間、単位期間あたりの時間外労働時間、休日取得状況等の累積時間)を携帯端末8に送信する。例えば、アラート条件に該当しない場合には、労働状態を判定結果として送信する。また、アラート条件に該当する場合には、アラート及び労働状態を判定結果として送信する。判定結果の送受信は、社内LANやネットワーク11等を介して行われる。」
「【0018】
なお、本実施の形態において労働情報算出手段5や判定手段6は、労務管理装置1にインストールされているが、一般的な記憶装置を有するコンピュータにインターフェイスを介してこれらの手段を有する機器をに外付けで接続し、労務管理装置2としてもよい。
携帯端末8は送信手段7が送信した情報を受信手段12で受信し、それを表示部13に表示する。なお、携帯端末8は判定結果を表示する機能のみを有するものでもよいし、スマートフォン、タブレットPCのような多機能携帯端末でもよい。」
「【0019】
本発明の労務管理装置2における労働情報の算出および判定の全体的なフローについて図2に示すフローチャートに従って説明する。」
「【0020】
入力手段3により出社した状態であるという勤怠情報が入力されると従業員が出社したと判断し、記憶装置4にその情報が蓄積される(ステップS101)。従業員が出社状態になると記憶装置4に蓄積された勤怠情報により労働情報算出手段5は休日の取得状況を算出する(ステップS102)。休日取得状況が算出されると判定手段6は、休日取得がアラート条件に該当しているかを判定する(ステップS103)。アラート条件としては、「1週間で1日も休日を取得していない」、「2週間で2日以上休日を取得していない」等である。このように労働基準法に定める4週間を通じて4日以上の休日取得を遵守できるように、労働基準法に違反する前に段階的にアラート条件を設定しアラートを表示する。アラート条件に該当している場合には、判定結果として労働状態(休日取得期限)およびアラートを、労働情報として休憩取得状況を送信し携帯端末8に表示する(ステップS104)。アラートとしては、「1週間で1日も休日を取得していません。今週は2日以上休日を取得してください」等である。アラート条件に該当していない場合には判定結果として労働状態(休日取得期限)を労働情報として休憩取得状況を送信し携帯端末8に表示する(ステップS105)。」
「【0021】
次に、単位期間あたりの労働時間について算出(ステップS106)を行う。単位期間としては、1日、1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、1年等が考えられる。これら単位期間あたりの労働時間が算出されると判定手段6は、これらの労働時間がアラート条件に該当しているかを判定する(ステップS107)。アラート条件としては、「1週間の労働時間が40時間を超えている」、「2週間の労働時間が80時間を超えている」等である。このように労働基準法に定める月間171.4時間の労働時間(1月が30日、変形労働時間制の場合)を遵守できるように、労働基準法に違反する前に段階的にアラート条件を設定しアラートを表示する。アラート条件に該当している場合には、判定結果として労働状態(労働時間残余)およびアラートを、労働情報として労働時間を送信し携帯端末8に表示する(ステップS108)。アラート条件に該当していない場合には判定結果として労働状態(労働時間残余)を、労働情報として労働時間を送信し携帯端末8に表示する(ステップS109)。」
「【0025】
従業員が退社すると、入力手段3により退社した状態であるという勤怠情報が入力され(ステップS119)、記憶装置4に蓄積され、労働情報の算出および判定は終了する。なお、ステップS106からステップS118までのステップは従業員が退社するまで繰り返し行われる。これらのステップを行うタイミングは、逐次でも所定時間毎でもよく、これによりリアルタイムに労働情報および労働状態を把握できるので、労働基準の遵守を促すことができる。」
「【0027】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図4ないし図15に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図4ないし図6に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、従業員がアラート条件に該当した場合には、アラートを当該従業員の携帯端末8だけでなく、その監督者の携帯端末8Aに送信する(ステップS104A、S108A、S112A、S117A)送信手段7Aにした点で、このような労務管理システム1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、監督者にもアラートを送信することにより、監督者が従業員の労働状態を把握することができるので、監督者に労働環境の改善を促すことができる。」
「【0028】
図7および図8に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、入力手段3Aを備えた携帯端末8Bを使用して勤怠情報を入力する入力手段3Aにした点で、このような労務管理システム1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。」
「【0029】
なお、携帯端末8Bに備える入力手段3Aとしては上記ICチップを利用する方法の他に、携帯端末8BのGPSや位置情報を利用して勤怠情報を入力する方法や携帯端末8Bを端末ホルダー等から取った時間等を利用して入力する方法、従業員が携帯端末のキーボードからネットワークを介して入力する方法なども考えられる。」
「
[図:0001407647000002.jpg]
」
「
[図:0001407647000003.jpg]
」
「
[図:0001407647000004.jpg]
」
「
[図:0001407647000005.jpg]
」
「
[図:0001407647000006.jpg]
」
(2)引用文献2に記載されているに等しい事項
上記(1)から、次のことがいえる。
ア 段落【0011】の記載によると、引用文献2には、「入力手段3と、記憶装置4と、労働情報算出手段5と、判定手段6と、送信手段7と、携帯端末8より構成されている労務管理システム1であること」が記載されている。
また、【図1】の記載によると、「記憶装置4と、労働情報算出手段5と、判定手段6と、送信手段7は、労務管理装置2に含まれるものであること」が記載されている。
イ 段落【0012】の記載によると、引用文献2には、上記アの「入力手段3」は、「出社日時、退社日時等の勤怠情報を労務管理装置2に入力し、記憶装置4に蓄積させるものであり、タブレット、キーボード、タッチパネル等の入力端末10でそれらの情報を入力する方法等が想定されること」が記載されている。
また、段落【0020】の記載によると、引用文献2には、「入力手段3により出社した状態であるという勤怠情報が入力されると従業員が出社したと判断し、記憶装置4にその情報が蓄積されること」が記載されている。
また、段落【0025】の記載によると、引用文献2には、「従業員が退社すると、入力手段3により退社した状態であるという勤怠情報が入力され、記憶装置4に蓄積されること」が記載されている。
ウ 段落【0013】の記載によると、引用文献2には、上記アの「労働情報算出手段5」は、「記憶装置4に蓄積された勤怠情報から、従業員の単位期間あたりの労働時間を算出すること」が記載されている。
また、【0021】の記載によると、引用文献2には、「単位期間としては、1日、1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、1年等が考えられること」が記載されている。
エ 段落【0014】の記載によると、引用文献2には、上記アの「判定手段6」は、「記憶装置4に記録されたアラート条件および算出された労働情報から、その従業員がアラート条件に該当しているかを判定すること」が記載されている。
また、段落【0021】の記載によると、引用文献2には、「アラート条件としては、「1週間の労働時間が40時間を超えている」、「2週間の労働時間が80時間を超えている」等であり、労働基準法に定める月間171.4時間の労働時間(1月が30日、変形労働時間制の場合)を遵守できるように、段階的にアラート条件を設定すること」が記載されている。
オ 段落【0016】の記載によると、引用文献2には、上記アの「送信手段7」は、「判定結果として、労働状態、およびアラート条件に該当する場合にはアラートを携帯端末8に送信すること」が記載されている。
また、段落【0021】、【図3】の記載によると、引用文献2には、「送信されたアラートは携帯端末8に表示されること」が記載されている。
カ 段落【0018】の記載によると、引用文献2には、上記アの「携帯端末8」は、「送信手段7が送信した情報を受信手段12で受信し、それを表示部13に表示すること」が記載されている。
また、段落【0018】の記載によると、引用文献2には、上記アの「携帯端末8」は、スマートフォン、タブレットPCのような多機能携帯端末でもよいこと」が記載されている。
キ 段落【0016】の記載によると、引用文献2には、「判定結果の送受信は、社内LANやネットワーク11等を介して行われること」が記載されている。
ク 段落【0027】、【0028】、【0029】、【図7】、【図8】の記載によると、引用文献2には、上記アの「労務管理システム1」の「異なる形態」として、「入力手段を備えた携帯端末を使用して勤怠情報を入力し、ICチップを利用する方法の他に、携帯端末のGPSや位置情報を利用して勤怠情報を入力する方法や携帯端末を端末ホルダー等から取った時間等を利用して入力する方法、従業員が携帯端末のキーボードからネットワークを介して入力する方法なども考えられること」が記載されている。
ケ 段落【0001】の記載によると、引用文献2には、上記アの「労務管理システム1」が「所定の労働基準に違反する前に従業員等に警告を行い労働基準の遵守を促すものであること」が記載されている。
(3)引用文献2に記載された発明
上記(2)のア~ケから、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(引用発明)
「入力手段3と、記憶装置4と、労働情報算出手段5と、判定手段6と、送信手段7と、携帯端末8より構成されている労務管理システム1であって、記憶装置4と、労働情報算出手段5と、判定手段6と、送信手段7は、労務管理装置2に含まれるものであり、
入力手段3は、出社日時、退社日時等の勤怠情報を労務管理装置2に入力し、記憶装置4に蓄積させるものであり、タブレット、キーボード、タッチパネル等の入力端末10でそれらの情報を入力する方法等が想定され、入力手段3により出社した状態であるという勤怠情報が入力されると従業員が出社したと判断し、記憶装置4にその情報が蓄積され、従業員が退社すると、入力手段3により退社した状態であるという勤怠情報が入力され、記憶装置4に蓄積され、
労働情報算出手段5は、記憶装置4に蓄積された勤怠情報から、従業員の単位期間あたりの労働時間を算出し、単位期間としては、1日、1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、1年等が考えられ、
判定手段6は、記憶装置4に記録されたアラート条件および算出された労働情報から、その従業員がアラート条件に該当しているかを判定し、アラート条件としては、「1週間の労働時間が40時間を超えている」、「2週間の労働時間が80時間を超えている」等であり、労働基準法に定める月間171.4時間の労働時間(1月が30日、変形労働時間制の場合)を遵守できるように、段階的にアラート条件を設定し、
送信手段7は、判定結果として、労働状態、およびアラート条件に該当する場合にはアラートを携帯端末8に送信し、送信されたアラートは携帯端末8に表示され、
携帯端末8は、送信手段7が送信した情報を受信手段12で受信し、それを表示部13に表示し、スマートフォン、タブレットPCのような多機能携帯端末でもよく、
判定結果の送受信は、社内LANやネットワーク11等を介して行われ、
異なる形態として、入力手段を備えた携帯端末を使用して勤怠情報を入力し、ICチップを利用する方法の他に、携帯端末のGPSや位置情報を利用して勤怠情報を入力する方法や携帯端末を端末ホルダー等から取った時間等を利用して入力する方法、従業員が携帯端末のキーボードからネットワークを介して入力する方法なども考えられ、
所定の労働基準に違反する前に従業員等に警告を行い労働基準の遵守を促す、労務管理システム1。」
2 引用文献3について
(1)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来の方法には次のような問題点があった。第1の問題点は、各作業者が意識して勤務情報の入力を行わなければならず、作業者にとって負担となることである。第2の問題点は、各作業者の出欠は事前に分かっているわけではなく、作業者の体調、および天候等の不確定要素によって、必ずしも勤怠管理の期限日に勤務情報を本社サーバ30に登録することができない場合があることである。さらに、第3の問題点は、勤務情報の本社サーバ30への登録を、月末時に集中的に行う作業者が多く、月末時に、本社サーバ30へのネットワーク負荷が大きくなることである。」
「【0006】本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、作業者が端末を操作し、ログイン及びログオフするだけで、本社サーバに勤務情報を登録することができ、ネットワーク負荷を減少させることができるようにするものである。」
「【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、作業者が勤怠管理表の入力を意識せずに、端末のログインおよびログオフにより、勤務時間管理システムのデータベースに勤務時間の登録を行うことができるようにするものである。」
「【0009】図1において、作業者が端末10を操作してログインしたのとほぼ同時に、端末10は部門内サーバ20との間で疎通確認を行い、部門内サーバ20は、疎通確認を行った時刻を勤務情報として、部門内サーバ20に接続されている記憶装置50に書き込む。」
「【0010】また、ログオフする場合も、ログオンする場合と同様に、端末10と部門内サーバ20との間で疎通確認が行われ、部門内サーバ20は、疎通確認が行われた時刻を勤務情報として記憶装置50に書き込む。記憶装置50には、各作業者毎に勤務情報が記憶される。例えば、各作業者の受理者コードと、勤務情報とが対応付けて記憶される。これにより、各作業者の勤務状況を把握し、管理することができるようになっている。」
「【0011】営業終了時刻を過ぎた時点で、記憶装置50に記憶されている勤務情報(各作業者のログオン時刻とログオフ時刻等の情報からなる)が、部門内サーバ20によって読み出され、インターネット網110を介して本社サーバ30に送信される。本社サーバ30は、部門内サーバ20よりインターネット網110を介して送信されてきた勤務情報を、本社サーバ30に接続されている記憶装置60に書き込む。」
「【0012】このようにして、作業者の月末時の勤怠入力に要する無駄な時間、および本社サーバ30に集中するネットワーク負荷を減少させることが可能となる。」
「【0013】
次に、図1を参照して、本発明の勤務時間管理システムの構成および動作について詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態は、端末10、および作業者端末(以下では適宜、端末と記載する)11乃至1N(Nは(部門内作業者数-1)に対応する任意の整数)と、部門内サーバ20乃至2M(Mは(部門数-1)に対応する任意の整数)と、上記端末10乃至1Nを相互に接続するLAN(local Area network)100と、本社サーバ30と、部門内サーバ20乃至2M、および本社サーバ30を相互に接続するインターネット網110と、携帯電話70と、部門内サーバ20乃至2M、および携帯電話70を相互に接続する携帯電話網120と、部門内サーバ20に接続された、勤務情報等を記憶する記憶装置50と、本社サーバ30に接続された、勤務情報等を記憶する記憶装置60とから構成されている。」
「【0015】
端末10は、ログインを行った作業者の受理者コードとパスワードをLAN100を介して部門内サーバ20に送信する機能を有する。また、端末10は、ログオフを行った場合、受理者コードとパスワードをLAN100を介して部門内サーバ20に送信する機能を有する。」
「【0017】部門内サーバ20は、端末10乃至1N、または携帯電話70から送信された受理者コード及びパスワード等の情報を基に、部門内作業者であるか否かを認証し、部門内作業者でない場合は本システムを使用できない旨を端末10乃至1N、または携帯電話70に通知する機能を有する。部門内サーバ21乃至2Mも、部門内サーバ20の場合と同様の処理を実行するので、その説明は省略する。」
「【0018】部門内サーバ20は、さらに、受理者コード及びパスワードを基に、部門内作業者であると認証した場合、疎通確認が行われた時刻を記憶装置50に書き込む機能を有する。記憶装置50は、部門内サーバ20に接続されており、端末10乃至1N、または携帯電話70によって疎通確認された時刻等からなる勤務情報のデータベースを記憶する機能を備えている。」
「【0022】まず、図2を参照して、部門内サーバ20における勤務情報登録処理の手順について説明する。作業者端末である端末10には、作業者がログインしたとき、およびログオフしたときに、受理者コードとパスワードの情報をLAN100を介して部門内サーバ20に送信し、疎通確認する(201)ための疎通確認システム1が設けられている。」
「【0023】作業者が出勤し、端末10を操作し、受理者コードとパスワードを入力してログインしたのとほぼ同時に、入力された受理者コードとパスワードが、端末10から部門内サーバ20へ、LAN100を介して作業者情報として送信され、部門内サーバ20から作業者情報を受信したことを示す情報が端末10に送信され、疎通確認が行われる。」
「【0024】部門内サーバ20に設置されている疎通確認システム2は、ログインした作業者が部門内作業者であるか否かを、端末10からLAN100を介して送信されてきた受理者コードとパスワードに基づいて認証(チェック)し、その結果(認証結果)を端末10にLAN100を介して送信する(202)。」
「【0025】また、部門内サーバ20により、端末10からログインした作業者が部門内作業者であると認証された場合、部門内サーバ20は、部門内サーバ20に接続されている記憶装置50に、端末10との間で疎通確認が行われた時刻を登録する(203)。」
「【0026】作業者が端末10を操作してログオフする場合も、ログインする場合と同様に、端末10から部門内サーバ20へ受理者コードとパスワード等からなる作業者情報の送信、および疎通確認が行われ、疎通確認が行われた時刻をこの作業者の勤務情報として記憶装置50に登録する。」
「【0031】部門内サーバ20に設置されている疎通確認システム2は、開始時刻の場合、最早に疎通確認を行った時刻を記憶装置50に記憶させ、また、終了時刻の場合、最遅に疎通確認を行った時刻を記憶装置50に記憶させる。即ち、勤務情報は、勤務開始時刻と勤務終了時刻とにより構成されており、部門内サーバ20が端末10から作業者情報を複数回受信し、疎通確認が複数回行われた場合、疎通確認システム2は、作業者情報を受信し、疎通確認を行った複数の時刻のうち、最も早い時刻を勤務開始時刻とし、最も遅い時刻を勤務終了時刻とする。」
「【0032】上記のように疎通確認システム2が働くことにより、出社してから退社するまで終日会社内にいる場合はもとより、終日外出している場合、一旦会社に出社し、その後、外出した場合、さらに、外出先から出社した場合等であっても、出勤時刻および退社時刻等の情報からなる勤務情報を記憶装置50に登録することができる。」
「【0035】本社サーバ30の勤怠管理登録システム4は、上記識別情報に基づいて部門内サーバ20であるか否かを確認し、部門内サーバ20であると確認された場合は、その日の日付と、部門内サーバ20から送信されてきた勤務情報を、本社サーバ30に接続されている記憶装置60に登録する(207)。」
「【0037】以上のように、本実施の形態により以下のような効果が得られる。第1の効果は、作業者が端末10を操作してログイン及びログオフするだけで、勤務情報の登録が行われるので、勤務情報の入力に要する時間を削減することができることである。」
「【0040】また、上記実施の形態においては、疎通確認が行われた時刻を勤務情報として登録するようにしているが、端末10からログイン及びログオフした時刻を勤務情報として登録するようにすることも可能である。」
「
[図:0001407647000007.jpg]
」
「
[図:0001407647000008.jpg]
」
(2)引用文献3に記載されているに等しい事項
上記(1)から、次のことがいえる。
ア 段落【0013】の記載によると、引用文献3には、「端末10と、部門内サーバ20と、LAN100と、部門内サーバ20に接続された、勤務情報等を記憶する記憶装置50と、本社サーバ30とを含む時間管理システム」が記載されている。
イ 段落【0022】の記載によると、引用文献3には、上記アの「端末10」は、「作業者端末であること」と、「作業者がログインしたとき、およびログオフしたときに、受理者コードとパスワードの情報を、LAN100を介して部門内サーバ20に送信し、疎通確認するための疎通確認システム1が設けられていること」が記載されている。
ウ 段落【0017】、【0024】の記載によると、引用文献3には、上記アの「部門内サーバ20」は、「ログインした作業者が部門内作業者であるか否かを、端末10からLAN100を介して送信されてきた受理者コードとパスワードに基づいて認証すること」が記載されている。
また、段落【0009】、【0025】の記載によると、引用文献3には、上記アの「部門内サーバ20」は、「部門内作業者であると認証した場合、疎通確認が行われた時刻を勤務情報として記憶装置50に書き込む機能を有すること」が記載されている。
また、段落【0010】、【0026】の記載によると、引用文献3には、上記アの「部門内サーバ20」は、「作業者が端末10を操作してログオフする場合も、ログインする場合と同様に、端末10から部門内サーバ20へ受理者コードとパスワード等からなる作業者情報の送信、および疎通確認が行われ、疎通確認が行われた時刻をこの作業者の勤務情報として記憶装置50に登録すること」が記載されている。
また、段落【0031】の記載によると、引用文献3には、上記アの「部門内サーバ20」は、「疎通確認が複数回行われた場合、作業者情報を受信し、疎通確認を行った複数の時刻のうち、最も早い時刻を勤務開始時刻とし、最も遅い時刻を勤務終了時刻とする疎通確認システム2が設置されていること」が記載されている。
また、段落【0040】の記載によると、引用文献3には、「疎通確認が行われた時刻を勤務情報として登録するようにしているが、端末10からログイン及びログオフした時刻を勤務情報として登録するようにすることも可能であること」が記載されている。
エ 段落【0013】の記載によると、引用文献3には、上記アの「LAN100」は、「端末10と、部門内サーバ20とを相互に接続すること」が記載されている。
オ 段落【0018】の記載によると、引用文献3には、上記アの「記憶装置50」は、「勤務情報のデータベースを記憶する機能を備えていること」が記載されている。
また、段落【0011】の記載によると、引用文献3には、「勤務情報は各作業者のログオン時刻とログオフ時刻等の情報からなり、営業終了時刻を過ぎた時点で部門内サーバ20によって本社サーバ30に送信されること」が記載されている。
カ 段落【0035】の記載によると、上記アの「本社サーバ30」は、「部門内サーバ20から送信されてきた勤務情報を、本社サーバ30に接続されている記憶装置60に登録するものであること」が記載されている。
キ 段落【0006】、【0037】の記載によると、上記アの「時間管理システム」は、「作業者が端末を操作し、ログイン及びログオフするだけで、勤務時間の登録を行うことができること」が記載されている。
また、【0008】の記載によると、上記アの「時間管理システム」は、「勤怠管理表の入力を意識せずに、勤務時間管理システムのデータベースに勤務時間の登録を行うことができること」が記載されている。
また、段落【0012】の記載によると、上記アの「時間管理システム」は、「作業者の月末時の勤怠入力に要する無駄な時間を減少させることが可能であること」が記載されている。
(3)引用文献3に記載された技術
上記(2)のア~キから、引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3記載技術」という。)が記載されている。
(引用文献3記載技術)
「端末10と、部門内サーバ20と、LAN100と、部門内サーバ20に接続された、勤務情報等を記憶する記憶装置50と、本社サーバ30とを含む時間管理システムであって、
端末10は作業者端末であり、作業者がログインしたとき、およびログオフしたときに、受理者コードとパスワードの情報を、LAN100を介して部門内サーバ20に送信し、疎通確認するための疎通確認システム1が設けられており、
部門内サーバ20は、ログインした作業者が部門内作業者であるか否かを、端末10からLAN100を介して送信されてきた受理者コードとパスワードに基づいて認証し、部門内作業者であると認証した場合、疎通確認が行われた時刻を勤務情報として記憶装置50に書き込む機能を有し、作業者が端末10を操作してログオフする場合も、ログインする場合と同様に、端末10から部門内サーバ20へ受理者コードとパスワード等からなる作業者情報の送信、および疎通確認が行われ、疎通確認が行われた時刻をこの作業者の勤務情報として記憶装置50に登録し、疎通確認が複数回行われた場合、作業者情報を受信し、疎通確認を行った複数の時刻のうち、最も早い時刻を勤務開始時刻とし、最も遅い時刻を勤務終了時刻とする疎通確認システム2が設置されており、疎通確認が行われた時刻を勤務情報として登録するようにしているが、端末10からログイン及びログオフした時刻を勤務情報として登録するようにすることも可能であり、
LAN100は、端末10と、部門内サーバ20とを相互に接続し、
記憶装置50は、勤務情報のデータベースを記憶する機能を備えており、勤務情報は各作業者のログオン時刻とログオフ時刻等の情報からなり、営業終了時刻を過ぎた時点で部門内サーバ20によって本社サーバ30に送信され、
本社サーバ30は、部門内サーバ20から送信されてきた勤務情報を、本社サーバ30に接続されている記憶装置60に登録するものであり、
作業者が端末を操作し、ログイン及びログオフするだけで、勤怠管理表の入力を意識せずに、勤務時間管理システムのデータベースに勤務時間の登録を行うことができ、作業者の月末時の勤怠入力に要する無駄な時間を減少させることが可能な、時間管理システム。」
第6 当審の判断
1 本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「携帯端末」は、「スマートフォン、タブレットPCのような多機能携帯端末」が例示されており、情報処理を行うことは自明であるから、本願発明1の「情報処理端末」に相当する。また、引用発明の「従業員」は、システムを利用する人であるから、本願発明1の「ユーザ」に相当する。
(2)本願発明1の「情報処理端末におけるログインおよびログオフ」は、「推定時間外労働時間」の算出に用いられる「ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間」の算出に用いられる、労働とみなされる状態に関する情報であるといえるところ、引用発明の「勤怠情報」は、「出社した状態である」という情報や、「退社した状態である」という情報であって、「労働とみなされる状態に関する情報」であるから、この点で、本願発明1の「情報処理端末におけるログインおよびログオフ」と共通する。
また、引用発明の「勤怠情報」は、「従業員が携帯端末のキーボードからネットワークを介して入力する」ことが例示されているから、情報処理端末とネットワークを用いて得られるものである点においても、本願発明1の「情報処理端末におけるログインおよびログオフ」と共通する。
そうすると、引用発明の「入力手段」は、「スマートフォン、タブレットPCのような多機能携帯端末でもよい携帯端末」を使用して、「出社した状態である」又は「退社した状態である」という旨の「勤怠情報」を「従業員」が「キーボードからネットワークを介して入力する」ものであるから、「情報処理端末」の「ログインおよびログオフ」を検知するものではないものの、情報処理端末とネットワークを用いて労働とみなされる状態に関する情報を得る手段である点において、本願発明1の「情報処理端末におけるログインおよびログオフを検知する検知部」と共通する。
(3)引用発明の「出社した状態であるという勤怠情報」及び「退社した状態であるという勤怠情報」は、「入力手段」により入力され「蓄積」されるものであり、上記(2)に示した「労働とみなされる状態に関する情報」の内容といえるから、労働とみなされる状態に関する情報を得る手段による労働とみなされる状態に関する情報の内容である点において、本願発明1の「前記検知部による検知内容」と共通する。
引用発明の「単位期間」は、例えば「1日、1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、1年」であり、定まった期間であることは自明であるから、本願発明1の「所定期間」に相当する。そして、引用発明の「労働時間」は、従業員のアラート条件について「1週間の労働時間」や「2週間の労働時間」が例示されていることから、「情報処理端末」の「使用時間」ではないものの、労働とみなされる状態に関する情報の内容に基づいて、ユーザの労働時間として累計される時間として算出されるものであるといえる点で、本願発明1の「情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間」と共通する。
そうすると、引用発明の「入力手段」により入力され、蓄積された「出社した状態であるという勤怠情報」及び「退社した状態であるという勤怠情報」から「従業員の単位期間あたりの労働時間を算出」する「労働情報算出手段5」は、累計時間が「情報処理端末」の「使用時間」ではないものの、労働とみなされる状態に関する情報を得る手段による労働とみなされる状態に関する情報の内容に基づき、所定期間における、ユーザの労働時間として累計される時間を算出する算出部である点において、本願発明1の「前記検知部による検知内容に基づき、ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間を算出する算出部」と共通する。
(4)引用発明の「労働時間」は、上記(3)で述べたように、ユーザの労働時間として累計される時間である点において、本願発明1の「使用時間の累計時間」と共通する。
引用発明の「アラート条件」の「1週間の労働時間が40時間を超えている」や「2週間の労働時間が80時間を超えている」における、「40時間」や「80時間」という時間の値は、「変形労働時間制の場合」の「労働基準法に定める月間171.4時間の労働時間」を「遵守できるように」すべく、労働を許容する時間として設定されるものであって、本願発明1における択一事項である「労働時間制又は業務内容」のうちの「労働時間制」に応じて設定される労働を許容する労働時間の上限であるといえる。このことから、引用発明の「アラート条件」は、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する労働時間の上限である点において、本願発明1の「労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する前記情報処理端末の使用時間の上限」と共通する。
引用発明の「携帯端末8に表示」される「アラート」は、本願発明1の「情報処理端末に対する」「警告表示」に相当する。
引用発明の「アラートを携帯端末8に送信」は、「携帯端末8」に対し「アラート」の「表示」を実行させるものであることは自明であるから、「情報処理端末」に対し、本願発明1における択一事項である「強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つ」のうちの「警告表示」を「実行させる」点に相当し、このことから、本願発明1の「強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させる」は、一致点となる。
引用発明の「アラート条件に該当しているかを判定」する「判定手段6」と、「アラート条件に該当する場合にはアラートを携帯端末8に送信」する「送信手段7」とは、両者が連携してアラートに関する処理を行うから、両者をあわせて一つの手段であるともいえる。
そうすると、引用発明の「判定手段6」及び「送信手段7」を合わせたものは、ユーザの労働時間として累計される時間と、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する労働時間の上限を基にして、強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させる手段である点において、本願発明1の「前記累計時間と、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する前記情報処理端末の使用時間の上限とを基にして、前記情報処理端末に対する強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させる表示制御部」と共通する。
(5)引用発明の「労務管理システム1」は、「入力手段3」と、「労働情報算出手段5」と、「判定手段6と、送信手段7」を備え、所定の労働基準に違反する前に従業員等に警告を行い労働基準の遵守を促すものであり、ユーザの労働時間を管理するものであるから、本願発明1と同様の「管理システム」であるといえる。
以上、上記(1)~(5)によると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
情報処理端末とネットワークを用いて労働とみなされる状態に関する情報を得る手段と、
労働とみなされる状態に関する情報を得る手段による労働とみなされる状態に関する情報の内容に基づき、所定期間における、ユーザの労働時間として累計される時間を算出する算出部と、
ユーザの労働時間として累計される時間と、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する労働時間の上限を基にして、強制シャットダウン、強制ログオフ、および、警告表示のうち、いずれか一つを実行させる手段と、
を備える管理システム。
[相違点]
(相違点1)
本願発明1は、労働とみなされる状態に関する情報を得る手段が「情報処理端末におけるログインおよびログオフを検知する検知部」であるのに対し、引用発明は「出社した状態であるという勤怠情報」や「退社した状態であるという勤怠情報」を入力する「入力手段」であり、「情報処理端末におけるログインおよびログオフ」を「検知」する「検知部」ではない点。
(相違点2)
労働とみなされる状態に関する情報を得る手段による労働とみなされる状態に関する情報の内容は、本願発明1では、「前記検知部による検知内容」であるのに対し、引用発明では、「入力手段」により「入力」された勤怠情報である点。
(相違点3)
所定期間における、ユーザの労働時間として累計される時間は、本願発明1では、「ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間」であるのに対し、引用発明では、「従業員の単位期間あたりの労働時間」である点。
(相違点4)
労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する労働時間の上限は、本願発明1では、「前記情報処理端末の使用時間の上限」であるのに対し、引用発明では、例えば「1週間の労働時間が40時間を超えている」等の従業員の単位期間あたりの労働時間の上限である点。
2 相違点の判断
(1)相違点1、2について
ア 労働時間の管理を行うシステムにおいて、労働者が労働時間の始期と終期を入力する代わりに、労働者が用いる情報処理端末におけるログイン及びログオフを、それぞれ、労働時間の始期及び終期とみなすことは、周知技術である(例えば、引用文献3には、上記第5 2(3)の引用文献3記載技術が記載されており、作業者のログイン及びログオフに応じて作業者の勤務情報を格納する手段(部門内サーバに設置されている疎通確認システム)によって、作業者が端末を操作しログイン及びログオフするだけで、勤怠管理表の入力を意識せずに、勤務時間管理システムのデータベースに勤務時間の登録を可能にすることが示されている。作業者のログイン及びログオフに応じて作業者の勤務情報を格納する手段は、ログイン及びログオフを「検知」する「検知手段」といえる。)。
イ 引用発明の「携帯端末」は、社内LAN等を介して「判定結果の送受信」が行われるものであり、社内LAN等のネットワークにおいては関係者のみがアクセスできるようにするために接続の際に認証を求めることは自明であるから、引用発明において、出社に際し社内LAN等に接続するために従業員がログイン操作を行い、退社に際し社内LAN等の接続を解除するために従業員がログオフ操作を実行することは当然の事項といえる。また、引用発明において、従業員が勤怠情報を入力する方法としては様々なものが例示されており、特に「携帯端末8Bを端末ホルダー等から取った時間等を利用して入力」(【0029】)が例示されることからみて、従業員の行動により勤怠情報を自動的に入力することも示唆されている。
ウ してみると、引用発明の「労務管理装置2」において該周知技術を採用して、労働とみなされる状態に関する情報を得る手段を「情報処理端末におけるログインおよびログオフを検知する検知部」とし、労働とみなされる状態に関する情報を得る手段による労働とみなされる状態に関する情報の内容を「前記検知部による検知内容」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(2)相違点3、4について
ア 本願発明1は、「情報処理端末におけるログインおよびログオフを検知する検知部と、 ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間を算出する算出部と、・・・を備えることを特徴とする管理システム。」である。そして、本願発明1は、「検知部」が操作入力を検知することも、「算出部」が操作入力に基づいて算出を行うことも特定していない。そうすると、本願発明1の「前記情報処理端末の所定期間における使用時間」という概念は、キーボードやマウスの操作入力の検知により得られた使用時間だけでなく、異なる手法により得られた使用時間、具体的には、ログインからログオフまでの時間から推測されたユーザによる情報処理端末の使用時間とみなすものを含む。
この点について、発明の詳細な説明を参酌すると、段落【0090】には、「たとえば、固定時間制のユーザについては操作入力がなくとも、ログイン操作からログオフ操作までの勤務時間の間は労働時間とみなす等の条件を設けてもよい。ただし、業務の性質上、クライアント20に操作入力を行わなければ業務を遂行できないユーザの場合には、算出部121は操作入力の有無のみに基づき労働時間か否かを判定してもよい。」との記載があり、段落【0043】等には、「労働時間(クライアント使用時間)」との記載があり、段落【0025】には、「クライアント20は、ユーザが業務遂行のために使用する情報処理端末である。」との記載がある。発明の詳細な説明においても、キーボードやマウスの操作入力の検知により得られた使用時間だけでなく、ログイン操作からログオフ操作までの勤務時間を労働時間(クライアント使用時間)とみなす場合が記載されている。
このように、本願発明1の「ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間」は、「ログイン操作からログオフ操作までの勤務時間」を含むことを踏まえれば、該周知技術における、情報処理端末におけるログイン及びログオフの間の時間は、労働時間とみなされる情報処理端末の使用時間であって、本願発明1でいう「情報処理端末の使用時間」に他ならない。
そして、引用発明の携帯端末は、労働者が労働状態を把握するためにアラートを受信及び表示するものであるから、従業員の出社から退社までの時間において、従業員が受信及び表示用に「使用」するものであるといえるし、上記(1)イのとおり、引用発明において出社や退社に際してログイン操作やログオフ操作を実行することは当然の事項といえる。
イ また、引用発明の労務管理システムにおいて該周知技術を採用した場合に労働を許容する労働時間の上限を「労働時間の上限」と表現するか「労働時間とみなされる情報処理端末の使用時間の上限」と表現するかは、表現の違いにすぎない。
ウ 以上を踏まえれば、引用発明の労務管理システムにおいて、該周知技術を採用するにあたって、所定期間におけるユーザの労働時間として累計される時間を、「ユーザによる前記情報処理端末の所定期間における使用時間の累計時間」とし、また、労働時間制又は業務内容に応じて設定される労働を許容する労働時間の上限を、「前記情報処理端末の使用時間の上限」とすることは、表現上の違いないし設計的事項である。
(3)本願発明1の効果について
本願発明1の奏する効果は、引用発明と該周知技術とから予想できる範囲のものであって、格別のものでない。
発明の詳細な説明の段落【0009】に記載された「客観的な業務管理を支援することができる」という効果は、引用発明及び該周知技術から当業者が予測し得る範囲を超えるものではない。
第7 むすび
してみると、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-007189