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特許拒絶査定不服審判

2023-006280

心電計

審判番号
2023-006280
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-211270外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年04月17日
審決日
2023年12月06日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H04W)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-211270「心電計」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月21日出願公開、特開2020- 78016〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 19項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年11月 9日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年 7月20日付け:拒絶理由通知書
令和4年 9月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 1月12日付け:拒絶査定
令和5年 4月17日 :審判請求書の提出
令和5年 8月22日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和5年10月24日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和5年10月24日に提出された手続補正書による手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものである。そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりの発明である。

「 被検者に装着された電極から得られる信号に基づいて心電図を記録する心電計であって、
外部機器との無線通信を行う第1の通信手段および第2の通信手段と、
前記第1の通信手段および前記第2の通信手段の動作を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段のうち、外部機器との通信状態がよい一つによって前記外部機器と通信するように前記第1の通信手段および前記第2の通信手段を制御することを特徴とする心電計。」

第3 当審拒絶理由の概要

令和5年8月22日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

請求項:1、2、4、7、9、10
引用文献等:4
請求項:3
引用文献等:4ないし6
請求項:5、6
引用文献等:2、4
請求項:8
引用文献等:4、7、8

<引用文献等一覧>

2.特開2002-374203号公報

4.特開2014-213071号公報

5.特開2010-124163号公報

6.特開2004-023693号公報

7.特許第6073895号公報

8.特開2008-166953号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献4について

当審拒絶理由で引用された、引用文献4(特開2014-213071号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。以下、同様。)

(a)「【0005】
ところで、検出された生体情報は、ウェアラブルデバイスに保存されるだけでなく、ネットワークを介してサーバに伝送されることがある。ウェアラブルデバイスは、バッテリによって駆動されているので、消費電力量を抑制するために、生体情報を効率的に伝送することが求められる可能性がある。」
(b)「【0010】
まず、図1を参照して、一実施形態に係る電子機器を備える生体情報管理システムについて説明する。生体情報管理システムは、電子機器によって取得された、ユーザの生体データを管理し、生体データに基づく健康情報や医療情報を提供する機能を有する。この電子機器は、例えば、ユーザが装用(着用)するウェアラブルデバイス11として実現され得る。」
(c)「【0012】
ウェアラブルデバイス11は、内蔵される生体センサを用いて、脈拍、心電、体温、等に関する生体データを取得する。そして、ウェアラブルデバイス11は、取得した生体データをクラウドサーバ12に送信する。ウェアラブルデバイス11とサーバ12とは、3G移動通信、4G移動通信、無線LAN(WLAN)、等の各種の無線通信方式に基づく接続を確立する。これにより、ウェアラブルデバイス11は、サーバ12に生体データを送信することができる。」
(d)「【0017】
図2は、ウェアラブルデバイス11のシステム構成を示す図である。このウェアラブルデバイス11は、例えば、システム制御部101、ROM102、RAM103、無線通信モジュール104、電源制御部105、バッテリ107、記憶装置108、表示装置109、および生体センサ110を備える。
【0018】
システム制御部101は、ウェアラブルデバイス11内の各部の動作を制御する。システム制御部101は、CPU101Aを備え、ROM102、RAM103、無線通信モジュール104、電源制御部105、記憶装置108、表示装置109、および生体センサ110に接続される。
続きを表示(全12行)
【0019】
CPU101Aは、ROM102に格納された命令群及びデータをRAM103へロードし、必要な処理を実行するプロセッサである。RAM103には、無線通信を制御するための通信制御プログラム112がロードされている。CPU101Aは、RAM103にロードされた通信制御プログラム112を実行する。通信制御プログラム112は、無線通信モジュール104を用いて、生体センサ110によって生成された生体データをサーバ12に送信し、サーバから通知されるメッセージを受信する機能を有する。
【0020】
生体センサ110は、脈拍、心電、体温、血圧のような生体で生じる信号を検出し、検出された信号に基づく生体データを生成する1以上の生体センサ110A,110B,110Cを含む。生体センサ110A,110B,110Cは、脈拍、心電、体温、血圧等に関する生体データとして、いわゆる生データ(raw data)を生成(出力)する。
【0021】
無線通信モジュール104は、複数の無線通信方式で通信するための複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cを含む。複数の無線通信方式は、3G移動通信、4G移動通信、無線LAN、Bluetooth、BAN等のさまざまな無線通信方式を含む。
【0022】
複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cの内の一つの無線通信モジュールが、生体センサ110によって生成された生体データや、その生体データから抽出(算出)された特徴量等をサーバ12に送信する。この無線通信モジュールは、コーディネータ端末13を介して、生体データや特徴量をサーバ12に送信することもできる。さらに、この無線通信モジュールによって、生体データや特徴量の解析結果に基づくメッセージをサーバ12から受信することもできる。」
(e)「【0027】
図3は、ウェアラブルデバイス11上で実行される通信制御プログラム112の機能構成の例を示す。通信制御プログラム112は、例えば、通信状態検出部201、通信路選択部202、センサデータ受信部203、特徴量算出部204、ユーザ状態認識部205、表示制御部206、送信制御部207、解析結果受信部209、等を備える。」
(f)「【0033】
より具体的には、通信状態検出部201は、無線通信モジュール104A,104B,104Cの各々について、前記サーバから受信される信号の信号強度(すなわち、受信される電波の電波強度)、データの送受信における応答時間、データ伝送速度、等を検出する。通信状態検出部201は、検出された信号強度、応答時間、データ伝送速度、等に基づいて、通信状態の評価値を算出してもよい。この評価値は、例えば、値が大きいほど通信状態が良好であることを示す。
【0034】
通信路選択部202は、通信状態検出部201によって検出された通信状態に基づいて、複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cから、サーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択する。通信路選択部202は、検出された通信状態とバッテリ107の残量とに基づいて、複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cから、サーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択してもよい。換言すると、通信路選択部202は、通信状態(または通信状態およびバッテリ残量)に基づいて、複数の通信方式による通信路から、サーバ12との通信に用いる通信路を選択する。なお、通信路選択部202は、例えば、通信状態の評価値、バッテリ残量、消費電力、送信対象データのデータサイズ、等に基づく評価値(例えば、それぞれをパラメータ化し、重み付け加算した評価値)を用いて、サーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択してもよい。」

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記(b)の段落0010には、「ユーザが装用(着用)するウェアラブルデバイス11」が記載されている。また、上記(c)の段落0012には「ウェアラブルデバイス11は、内蔵される生体センサを用いて、・・・心電・・・に関する生体データを取得する」と記載されており、上記(d)の段落0020には、「生体センサ110は、・・・心電・・・のような生体で生じる信号を検出し、検出された信号に基づく生体データを生成する1以上の生体センサ110A,110B,110Cを含む」と記載されている。

そうすると、引用文献4には「内蔵される生体センサ110から検出される信号に基づいて心電に関する生体データを生成する、ユーザが装用(着用)するウェアラブルデバイス11」が記載されているといえる。

そして、上記(a)の段落0005には、「検出された生体情報は、ウェアラブルデバイスに保存されるだけでなく、ネットワークを介してサーバに伝送されることがある」と記載されていることから、ウェアラブルデバイスは生体情報を保存しているといえる。

ここで、「生体データ」は「生体情報」に含まれるのが明らかであるから、引用文献4には「内蔵される生体センサ110から検出される信号に基づいて心電に関する生体データを生成して保存する、ユーザが装用(着用)するウェアラブルデバイス11」が記載されているといえる。

イ 上記(d)の段落0017には、「このウェアラブルデバイス11は、・・・無線通信モジュール104・・・を備える」と記載されており、段落0021には「無線通信モジュール104は、複数の無線通信方式で通信するための複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cを含む」と記載されている。

そうすると、引用文献4には「ウェアラブルデバイス11は、複数の無線通信モジュール104A、104B、104Cを備え」ることが記載されている。

ウ 上記(d)の段落0017には、「このウェアラブルデバイス11は、・・・システム制御部101・・・を備える」と記載されている。また、段落0018には「システム制御部101は、CPU101Aを備え、・・・RAM103・・・に接続される」とあり、段落0019には「CPU101Aは、RAM103にロードされた通信制御プログラム112を実行する」と記載されている。

そうすると、引用文献4には「ウェアラブルデバイス11は、CPU101Aを備えるシステム制御部101を備え、当該CPU101Aは、RAM103にロードされた通信制御プログラム112を実行」することが記載されている。

エ 上記(f)の段落0034には「通信路選択部202は、通信状態検出部201によって検出された通信状態に基づいて、複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cから、サーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択する・・・換言すると、通信路選択部202は、通信状態・・・に基づいて、複数の通信方式による通信路から、サーバ12との通信に用いる通信路を選択する」と記載されている。

そして、段落0033に「通信状態検出部201は、無線通信モジュール104A,104B,104Cの各々について、前記サーバから受信される信号の信号強度(すなわち、受信される電波の電波強度)、データの送受信における応答時間、データ伝送速度、等を検出する。通信状態検出部201は、検出された信号強度、応答時間、データ伝送速度、等に基づいて、通信状態の評価値を算出してもよい。この評価値は、例えば、値が大きいほど通信状態が良好であることを示す」と記載されていることや、無線通信を行う際、通信状態が良好な通信路が選択されることが一般的であることに鑑みれば、引用文献4の通信路選択部202が、通信状態に基づいて、複数の無線通信モジュール104A、104B、104Cからサーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択する際、サーバ12から受信される信号の信号強度等の通信状態の評価値を算出し、当該評価値が大きい、すなわち、通信状態が良好な通信モジュールが選択されていることは明らかである。

更に、上記(e)の段落0027には、「ウェアラブルデバイス11上で実行される通信制御プログラム112の機能構成の例を示す。通信制御プログラム112は、・・・通信状態検出部201、通信路選択部202・・・を備える」と記載されている。

以上のことから、引用文献4には「通信制御プログラム112は、複数の無線通信モジュール104A、104B、104Cからサーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択する際、サーバ12から受信される信号の信号強度等の通信状態が良好な通信モジュールを選択」することが記載されているといえる。

また、上記(d)の段落0022には、「複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cの内の一つの無線通信モジュールが、生体センサ110によって生成された生体データ・・・をサーバ12に送信する」と記載されている。

したがって、引用文献4には「通信制御プログラム112は、複数の無線通信モジュール104A、104B、104Cからサーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択する際、サーバ12から受信される信号の信号強度等の通信状態が良好な通信モジュールを選択して生体データをサーバ12に送信する」ことが記載されているといえる。

以上を総合すると、引用文献4には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 内蔵される生体センサ110から検出される信号に基づいて心電に関する生体データを生成して保存する、ユーザが装用(着用)するウェアラブルデバイス11であって、
複数の無線通信モジュール104A、104B、104Cを備え、
CPU101Aを備えるシステム制御部101を備え、当該CPU101Aは、RAM103にロードされた通信制御プログラム112を実行し、
通信制御プログラム112は、複数の無線通信モジュール104A、104B、104Cからサーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択する際、サーバ12から受信される信号の信号強度等の通信状態が良好な通信モジュールを選択して生体データをサーバ12に送信する
ウェアラブルデバイス11。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「ウェアラブルデバイス11」は、内蔵される生体センサ110から検出される信号に基づいて心電に関する生体データを生成して保存することから、本願発明の「心電計」に含まれるといえる。

引用発明の「サーバ12」は、ウェアラブルデバイス11の外部にある機器であることは明らかであるから、本願発明の「外部機器」に含まれる。

イ 引用発明において、ウェアラブルデバイス11はユーザが装用(着用)するものであるから、当該ウェアラブルデバイス11に内蔵される生体センサ110から検出される信号に基づいて生成する生体データは当該ユーザの生体データであることは明らかであり、当該ユーザは生体データの生成に関して被検者であるといえる。

よって、引用発明の内蔵される生体センサ110から検出される信号に基づいて生成される心電に関する生体データは、被検者から得られる信号に基づく生成データといえる。

そして、本願発明の「心電図」と引用発明の「心電に関する生体データ」は「心電に関する生体データ」である点で共通する。

そうすると、本願発明の「被検者に装着された電極から得られる信号に基づいて心電図を記録する心電計」と引用発明の「内蔵される生体センサ110から検出される信号に基づいて心電に関する生体データを生成して保存する、ユーザが装用(着用)するウェアラブルデバイス11」とは、「被検者から得られる信号に基づいて心電に関する生体データを記録する心電計」である点で共通する。

ウ 引用発明において、無線通信モジュール104A、104B、104Cは、サーバ12との通信に用いられるから、本願発明の「外部機器との無線通信を行う第1の通信手段および第2の通信手段」と引用発明の「複数の無線通信モジュール104A、104B、104C」とは、「外部機器との無線通信を行う複数の通信手段」である点で共通する。

エ 引用発明において、システム制御部101は、RAM103にロードされた通信制御プログラム112を実行することで、複数の通信制御モジュール104A、104B、104Cからサーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択して生体データをサーバ12に送信しているから、当該システム制御部101は、複数の無線通信モジュール104A、104B、104Cの動作を制御しているといえる。

そうすると、本願発明の「前記第1の通信手段および前記第2の通信手段の動作を制御する制御手段」と引用発明の「システム制御部101」とは、「前記複数の通信手段の動作を制御する制御手段」である点で共通する。

オ 引用発明において、システム制御部101は、複数の通信モジュール104A、104B、104Cからサーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択する際、サーバ12から受信される信号の信号強度等の通信状態が良好な通信モジュールを選択して生体データをサーバ12に送信しており、通信モジュールを選択することはサーバ12と通信するように選択制御をしているといえることから、本願発明の「制御手段は、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段のうち、外部機器との通信状態がよい一つによって前記外部機器と通信するように前記第1の通信手段および前記第2の通信手段を制御すること」と引用発明の「CPU101Aを備えるシステム制御部101を備え、当該CPU101Aは、RAM103にロードされた通信制御プログラム112を実行し」、「通信制御プログラム112は、複数の無線通信モジュール104A、104B、104Cからサーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択する際、サーバ12から受信される信号の信号強度等の通信状態が良好な通信モジュールを選択して生体データをサーバ12に送信する」こととは、「制御手段は、複数の通信手段のうち、外部機器との通信状態がよい一つによって前記外部機器と通信するように前記複数の通信手段を制御する」点で共通する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、一応相違する。

(一致点)

「 被検者から得られる信号に基づいて心電に関する生体データを記録する心電計であって、
外部機器との無線通信を行う複数の通信手段と、
前記複数通信手段の動作を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記複数の通信手段のうち、外部機器との通信状態がよい一つによって前記外部機器と通信するように前記複数の通信手段を制御する心電計。」

(相違点1)

被検者から得られる信号について、本願発明は「被検者に装着された電極」から得られるのに対し、引用発明では生体センサ110から検出される信号が、被験者であるユーザに装着された電極から得られる信号であることが明らかではない点。

(相違点2)

心電計に記録する心電に関する生体データとして、本願発明は「心電図」であるのに対し、引用発明では心電図であるか否かが明確ではない点。

(相違点3)

複数の通信手段が、本願発明では第1の通信手段および第2の通信手段であるのに対し、引用発明では複数の通信モジュール104A、104B、104Cである点。

第6 判断

(1)相違点1について

心電に関する生体データを生成する際、一般的には、被検者に装着された電極から得られる信号が利用されていることに鑑みれば、引用発明においてウェアラブルデバイス11に内蔵された生体センサ110から検出される信号が、被検者であるユーザに装着された電極から得られる信号であることは明らかである。

したがって、上記相違点1は、実質的な差異ではない。

また、仮に、ユーザに装着された電極から得られる信号であることが引用発明から明らかではないとしても、引用発明の生体センサ110が検出する信号をユーザに装着された電極から得られる信号とすることに、格別の困難性はない。

(2)相違点2について

心電計に記録する生体データから心電図が得られることは周知事項であり、生体データは心電図のデータであるといえることから、引用発明の生体データを心電図と称することに実質的差異はない。

また、仮に、心電に関する生体データが心電図であることが引用発明から明らかではないとしても、引用発明の生体データを心電図と称することに格別の困難性はない。

(3)相違点3について

通信手段を複数利用する場合、いくつの通信手段を利用するかは当業者が適宜設定する事項にすぎないから、引用発明において複数の通信手段を2個の通信手段とすることに格別の困難性はない。

(4)請求人の主張について

令和5年10月24日提出の意見書における主張について、以下に検討する。

請求人は、同意見書において、次のように主張している。

「引用文献4は、少なくとも
「複数の通信モジュール104A、104B、104Cから、サーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択し、通信状態が良好である一つの通信モジュールを用いて生体データをサーバ12に送信する」ことを開示しておらず、請求項1に係る発明はご指摘の拒絶理由に当たらないものと思量します。
引用文献4において、複数の通信モジュール104A、104B、104Cから、サーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択するのは通信路選択部202であり、その動作は例えば段落[0035]に以下のように記載されています(下線は強調のために付与)。
「通信路選択部202は、複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cの各々について、例えば、検出された通信状態で、対象のデータの送信が完了したときのバッテリ残量を推定する。そして、通信路選択部202は、推定された送信完了時のバッテリ残量がしきい値以上である(例えば、データの送信によって、バッテリの残量が空にならない)通信モジュールを、サーバ12との通信に用いる通信モジュールに決定する。」
続きを表示(全13行)
この記載からわかるように、通信路選択部202は、送信完了時のバッテリ残量の推定値がしきい値以上となる通信モジュールを選択します。推定される送信完了時のバッテリ残量がしきい値以上でない通信モジュールは、他の通信モジュールよりも通信状態が良好であっても選択されることはありません。これは、複数の無線通信モジュール104A,104B,104Cが消費電力の異なる通信方式を用いる通信モジュールであることに起因したものです。
そして、通信路選択部202が選択した通信モジュールの通信状態が良好であるとは限らないことから、引用文献4では、送信制御部207が、選択された通信モジュールの通信状態に応じた送信動作を実行しています(段落[0036]~[0037])。
具体的には、送信制御部207は、
・通信路選択部202が選択した通信モジュールの通信状態が良好である場合には生体データをサーバ12に送信し、
・通信路選択部202が選択した通信モジュールの通信状態が良好でない(劣悪である)が通信が可能である場合には、生体データよりもデータサイズが小さい特徴量をサーバ12に送信し、
・通信路選択部202が選択した通信モジュールによる通信ができない場合、生体データと特徴量とをバッファ208に蓄積(保存)し、通信可能になったときに、蓄積されたデータ(生体データまたは特徴量)をサーバ12に送信します。
このように、引用文献4には、「複数の通信モジュール104A、104B、104Cから、サーバ12との通信に用いる通信モジュールを選択」することは開示されていますが、「通信状態が良好である一つの通信モジュールを用いて生体データをサーバ12に送信する」ことは開示されていないと思量します。
従いまして、引用文献4は本願請求項1の構成のうち、少なくとも
「前記制御手段は、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段のうち、外部機器との通信状態がよい一つによって前記外部機器と通信するように前記第1の通信手段および前記第2の通信手段を制御する」ことを開示並びに示唆していません。」

ここで、請求人の当該主張は、引用文献4の段落0035ないし0037に基づくものであり、特に段落0035には、推定された送信完了時のバッテリ残量に基づいて通信モジュールを決定することが記載されているから、請求人の主張は、バッテリ残量に基づいて通信路を決定する態様を前提にしているといえる。

上記主張について検討するに、引用文献4の段落0034には、「通信状態(または通信状態およびバッテリ残量)に基づいて、複数の通信方式による通信路から、サーバ12との通信に用いる通信路を選択する」と記載されているから、引用文献4には、サーバ12との通信に用いる通信路を選択する際に、バッテリ残量を用いることなく、通信状態のみに基づいて通信路を選択する実施形態が開示されているといえる。

そして、通信状態のみに基づいて通信路を選択する実施形態で引用文献4に記載された発明を認定した場合、本願発明との相違点の判断は、上記(1)ないし(3)で説示したとおりである。

そうすると、バッテリ残量に基づいて通信路を決定する態様を前提とした請求人の主張は採用できない。

(5)小括

上記(1)ないし(4)のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する

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2023-006280

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