特許拒絶査定不服審判
2023-005189
販売データ処理装置及びそのプログラム
- 審判番号
- 2023-005189
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-157859
- 請求日
- 2023年03月30日
- 審決日
- 2024年06月04日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社寺岡精工
- 【請求人代理人】宮崎 恭
- 審判長/審判官
- 審判長 山澤 宏
- 審判官 篠塚 隆
- 審判官 北元 健太
- 分類
- P18 .121-WY (G07G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-157859「販売データ処理装置及びそのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月27日出願公開、特開2020- 30779、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年8月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 8月10日付け:拒絶理由通知書
令和 4年10月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年12月21日付け:拒絶査定
令和 5年 3月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 5月 9日付け:前置報告書
第2 原査定の概要
原査定(令和4年12月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、3に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2001-143159号公報
第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、令和5年3月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-3は以下のとおりである。
「 【請求項1】
取引に適用されるクーポン券の使用を宣言する使用宣言手段と、
使用された前記クーポン券が回収されたことを宣言する回収宣言手段と、
前記使用宣言手段において前記クーポン券の使用が宣言されると、前記取引の精算を禁止し、前記回収宣言手段で前記クーポン券が回収されたことが宣言されると、前記取引の精算の禁止を解除するよう制御する制御手段と、を備え、
前記回収宣言手段は、前記使用宣言手段で宣言したクーポン券が複数ある場合に、複数のクーポン券の回収をまとめて宣言できることを特徴とする販売データ処理装置。
【請求項2】
会員に紐づいたクーポン券の一覧を表示する表示手段を備え、
前記表示手段は、前記会員に紐づいた期限切れで使用不可能なクーポン券を含む全てのクーポン券を表示する全表示と、前記会員に紐づいた使用可能なクーポン券のみを表示する一部表示を切り替えて表示可能であることを特徴とする請求項1に記載の販売データ処理装置。
【請求項3】
販売データ処理装置を制御するプログラムであって、
コンピュータを、
取引に適用されるクーポン券の使用を宣言する使用宣言手段、
使用された前記クーポン券が回収されたことを宣言する回収宣言手段、
前記使用宣言手段において前記クーポン券の使用が宣言されると、前記取引の精算を禁止し、前記回収宣言手段で前記クーポン券が回収されたことが宣言されると、前記取引の精算の禁止を解除するよう制御する制御手段、
として機能させるためのものであり、
前記回収宣言手段は、前記使用宣言手段で宣言したクーポン券が複数ある場合に、複数のクーポン券の回収をまとめて宣言できることを特徴とするプログラム。」
第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態を図1ないし図6に基づいて説明する。本実施の形態は、商品販売登録データ処理装置として、POS端末1に適用した一例である。
【0018】図1は、POS端末1を示す外観斜視図である。POS端末1は、ドロワ装置2上に載置されており、このドロワ装置2の引出3の開閉を制御する。このPOS端末1は、上面に操作者の操作を受け付ける領域を備え、その操作領域には各種のキーが集合するキーボード4、図示しない鍵によって切り換え操作されるモードキー5、レシート(図示せず)や後述する店発行クーポンC(図3参照)を発行するレシート発行口6、及びジャーナル窓7が設けられている。操作者から見て、キーボード4及びモードキー5は右側の領域、レシート発行口6及びジャーナル窓7は左側の領域にそれぞれ配置されている。また、POS端末1の右側上方には、操作者側の表示部として機能するディスプレイ8が配置され、このディスプレイ8の近傍には客側の表示部として機能する客側表示ユニット9が立設されている。さらに、図1には図示しないが、商品に付される商品コード等のバーコードを光学的に読み取るバーコード読取装置であるバーコードスキャナ10がPOS端末1に接続されている。
【0019】図2は、キーボード4の各種キーの配列を示す平面図である。キーボード4は、商品コードや金額等を入力するための「0」から「9」までの置数キー4a、商品券・クーポン券・地域振興券等の金券の受取り処理を宣言するためのクーポンキー4b、自店でのみ有効な商品券(金券)である店発行クーポンCの受取り処理を宣言するための店発行クーポンキー4c、現金または金券による取引の締めを宣言するための預/現計キー4d、売上合計金額の算出を宣言するための小計キー4e等の各種のキーをブロック毎に配列した外観構造を有している。また、4a~4e以外のキーについては、従来のPOS端末等が備えるキーであって本実施の形態のPOS端末1に特有の機能とは無関係であるため、その説明は省略する。」
イ 「【0037】加えて、客から操作者に支払い代金として商品券・クーポン券・地域振興券等の金券が手渡されている場合、または、客から操作者に支払い代金として商品券・クーポン券・地域振興券等の金券と現金とが併せて手渡されている場合には、置数キー4aによる支払い代金の入力の際に(ステップS10において預/現計キー4dが操作される前に)クーポンキー4bが操作される。このように置数キー4aによる支払い代金の入力の際に(ステップS10において預/現計キー4dが操作される前に)クーポンキー4bが操作されたと判断した場合には(ステップS8のY)、RAM15に記憶された支払い金額は商品券・クーポン券・地域振興券等の金券によるものであると判断し、ステップS11に進み、金券受取り処理を実行する。この金券受取り処理においては、その金券による支払い金額を現金による支払い金額とは区別して売上ファイルに記憶する等の処理を実行する。」
ウ 【図1】「
[図:0001411922000001.jpg]
」
エ 【図2】「
[図:0001411922000002.jpg]
」
オ 【図5】「
[図:0001411922000003.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)から引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「POS端末1は、上面に操作者の操作を受け付ける領域を備え、その操作領域には各種のキーが集合するキーボード4が設けられ、
キーボード4は、商品券・クーポン券・地域振興券等の金券の受取り処理を宣言するためのクーポンキー4bを配列し、
客から操作者に支払い代金として商品券・クーポン券・地域振興券等の金券が手渡されている場合、クーポンキー4bが操作される、POS端末1。」
2 引用文献2
前置報告で引用された特開2008-046737号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0065】
次に、注目クーポンのレコードの「有効期限」と取引時刻とが比較され、その比較結果に基づいて注目クーポンが有効か無効かが判定される(ステップS23)。具体的には、取引時刻が「有効期限」以内のときは注目クーポンは有効と判定され、取引時刻が「有効期限」を超えるときは注目クーポンは無効と判定される。注目クーポンが無効と判定された場合(ステップS23にてNo)は、クーポンチェックテーブル62のそのレコードの「フラグ」に、有効期限切れで無効であることを示す「無効」が登録される(ステップS29)。」
イ 「【0077】
図14は、未利用クーポン画面の一例を示す図である。図に示すように、未利用クーポン画面においては、取引価格を示すボックス72と、未利用の各クーポンの情報を一覧で示すテーブル74と、未利用のクーポンの数を示すメッセージ75とが表示される。また、未利用クーポン画面には、「登録一覧画面」と表記されたコマンドボタン76も表示される。販売側ディスプレイ22の画面においてこのコマンドボタン76に触れれば、ディスプレイ22,23の表示を図13に示す登録一覧画面に戻すことも可能である。
【0078】
未利用クーポン画面のテーブル74では、利用不可と判定された未利用の各クーポンについて、「識別番号」、「クーポン名」、「割引率」、「適用可能商品1」、「適用可能商品2」及び「適用可能商品3」のクーポンデータが示される。このうち、「識別番号」、「クーポン名」、「割引率」には、クーポンチェックテーブル62に登録された内容が示される。一方、「適用可能商品1」、「適用可能商品2」及び「適用可能商品3」には、商品マスタ41が参照されて、クーポンチェックテーブル62の「対象商品コード1」、「対象商品コード2」及び「対象商品コード3」が示す商品の商品名が示される。
【0079】
この未利用クーポン画面は、販売側ディスプレイ22及び顧客側ディスプレイ23の双方に表示されることから、販売スタッフと顧客との双方が、顧客が提示したクーポンのうち、いずれが未利用のクーポンであったかを明確に把握できる。未利用のクーポンは、有効であるにもかかわらず今回の売買取引では利用ができなかったものである。このため、この未利用のクーポンは、次回以降の売買取引において利用できることから顧客に返却する必要があるが、この未利用クーポン画面を参照することで未利用のクーポンを容易に返却できることになる。
【0080】
また、未利用クーポン画面では、未利用の各クーポンについての3つの適用対象商品の商品名が示される。したがって、いかなる商品を購入対象とすれば値引きが適用できたかを明確に顧客に報知できることになる。
【0081】
なお、このように未利用クーポン画面や登録一覧画面が表示されている決済前の時点では、商品あるいはクーポンのバーコードを追加的に読み取ることも可能である。バーコードの追加の読取があった場合(図7:ステップS15にてYes)は、小計キーが押下された以降になされた「値引処理」を含む小計処理がリセットされる。そして、処理は再びステップS2に戻り、明細テーブル61やクーポンチェックテーブル62の更新がなされる。したがって、顧客は取引商品を追加することや、未提示の他のクーポンを追加的に提示することも可能である。前述のように未利用クーポン画面では未利用のクーポンの適用対象商品が明示されることから、顧客がその適用対象商品を追加的に取引商品にすることが期待できる。
【0082】
追加的なバーコードの読取がなされない場合(ステップS15にてNo)は、取引価格に基づいて決済処理がなされる(ステップS16)。具体的には、顧客から受け渡された決済用の現金等の金額が預り金額として入力部24を介して入力され、預り金額から取引価格が差し引かれた結果が釣銭金額として導出され、その釣銭金額がディスプレイ22,23に表示される。さらに、この売買取引の内容がPOSサーバ1に送信されて販売実績データとしてハードディスク14に記録されるとともに、売買取引の内容を示すレシートが印刷発行部26により発行される。これにより一連の精算処理が終了する。なお、売買取引において顧客からクーポンが提示されなかった場合は(ステップS9にてNo)、明細テーブル61の「価格」の合計した結果が取引価格として表示され(ステップS14)、その取引価格に基づいて決済処理がなされることになる(ステップS16)。
【0083】
以上のように、POSシステム100では、売買取引を行う顧客が提示した全てのクーポンが特定され、クーポンのそれぞれの適用対象商品と取引商品とに基づいて、クーポンのそれぞれが売買取引において値引きに利用可能か否かが判定される。そして、その判定手段の判定結果がディスプレイ22,23に表示される。このため、顧客が多数のクーポンを提示した場合であっても、それらのクーポンの利用の可否を容易に把握できる。また、利用不可と判定されたクーポンがディスプレイ22,23に一覧表示されるため、未利用のクーポンを顧客に容易に返却できる。
【0084】
また、クーポンのそれぞれの割引率及び適用対象商品、並びに、取引商品に基づいて、売買取引において値引額が最大となるクーポンと取引商品との組合せを導出し、その導出された組合せに基づいて取引商品の値引きを行うため、クーポンを利用した場合の値引額を最大化することができる。」
ウ 「【0086】
<5-1.第2形態>
第1形態では、クーポンのそれぞれが売買取引において値引きに利用可能か否かを判定した結果として未利用のクーポンの情報のみを一覧表示していたが、顧客が提示した全てのクーポンの情報を一覧表示するようにしてもよい。
【0087】
図15は、全てのクーポンの情報を一覧表示した画面(以下、「クーポン一覧画面」)の例を示す図である。図に示すように、クーポン一覧画面においては、全てのクーポンの情報を示すテーブル77が表示される。すなわち、未利用のクーポンのみならず、利用可能と判定されたクーポン(「フラグ」が「利用済」のクーポン)や、無効と判定されたクーポン(「フラグ」が「無効」のクーポン)についての情報も示されている。このテーブル77では、各クーポンに関して図14と同様のクーポンデータの他に「フラグ」も示される。
【0088】
また、テーブル77においては、利用可能と判定されたクーポンと、利用不可と判定された未利用のクーポンと、無効と判定されたクーポンとで、それぞれクーポンデータを示すセルの背景色が異なっている。図中においては、セルの背景色の違いをハッチングにより擬似的に表現している。このように、異なる判定がなされたクーポンの相互間で、そのクーポンデータの表示態様を異ならせることで、利用可能なクーポンと利用不可のクーポンと無効のクーポンとを容易に識別できることになる。したがって、クーポン一覧画面においても、未利用のクーポンを容易に識別でき顧客に容易に返却できる。なお、この第2形態では、クーポンデータを示すセルの背景色を異ならせているが、クーポンデータを示すフォントの色、サイズ、形式などの他の表示態様を異ならせてもよい。
【0089】
また、このクーポン一覧画面においても、未利用の各クーポンについては3つの適用対象商品の商品名が示される。したがって、いかなる商品を購入対象とすれば値引きが適用できたかを明確に顧客に報知できることになる。なお、図中では、利用可能と判定されたクーポンと、無効と判定されたクーポンに関しては適用対象商品の商品名が示されていないが、商品名が示されてもよい。また、利用可能と判定された利用済のクーポンについては、実際に値引きの対象となった適用対象商品を、表示態様の変更などで明示してもよい。」
エ 【図14】「
[図:0001411922000004.jpg]
」
オ 【図15】「
[図:0001411922000005.jpg]
」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明では、「POS端末1は、上面に操作者の操作を受け付ける領域を備え、その操作領域には各種のキーが集合するキーボード4が設けられ、キーボード4は、商品券・クーポン券・地域振興券等の金券の受取り処理を宣言するためのクーポンキー4bを配列」するから、POS端末1は、商品券・クーポン券・地域振興券等の金券の受取り処理を宣言するためのクーポンキー4bを備えているといえる。
イ 引用発明において、「クーポンキー4b」は、「商品券・クーポン券・地域振興券等の金券の受取り処理を宣言するため」のキーであると同時に、「客から操作者に支払い代金として商品券・クーポン券・地域振興券等の金券が手渡されている場合、」「操作される」キーであるから、本願発明1の「取引に適用されるクーポン券の使用を宣言する使用宣言手段」と、「使用された前記クーポン券が回収されたことを宣言する回収宣言手段」とを兼ねた手段であるといえる。
ウ 引用発明の「POS端末1」は、本願発明1の「販売データ処理装置」に相当することは明らかである。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「取引に適用されるクーポン券の使用を宣言する使用宣言手段と、
使用された前記クーポン券が回収されたことを宣言する回収宣言手段と、を備える販売データ処理装置。」
(相違点1)
本願発明1では、「クーポン券の使用が宣言されると、取引の精算を禁止し、前記クーポン券が回収されたことが宣言されると、前記取引の精算の禁止を解除するよう制御する制御手段を備えるに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(相違点2)
本願発明では、「回収宣言手段は、前記使用宣言手段で宣言したクーポン券が複数ある場合に、複数のクーポン券の回収をまとめて宣言できる」のに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1について先に検討する。
引用発明では、「取引に適用されるクーポン券の使用が宣言されると、取引の精算を禁止し、前記クーポン券が回収されたことが宣言されると、前記取引の精算の禁止を解除するよう制御する」ことは、引用文献2には記載も示唆もなく、また、このように構成することが本願の出願前において周知技術であったともいえない。
したがって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、上記相違点1に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。したがって、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明3は、「プログラム」の発明であって、上記1(2)で検討した相違点1に係る構成と実質的に同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定について
上記第5で説示したとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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