特許拒絶査定不服審判
2023-002087
減衰が小さくなったRF技術を用いる物体の測距および追跡におけるマルチパス緩和
- 審判番号
- 2023-002087
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-110036外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年02月07日
- 審決日
- 2024年12月18日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】クゥアルコム・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第44条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-110036「減衰が小さくなったRF技術を用いる物体の測距および追跡におけるマルチパス緩和」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月14日出願公開、特開2021-165748〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 出願分割の経緯の概略
本願は、令和3年7月1日にされた特許法44条1項の規定による特許出願であって、2012年(平成24年)8月3日を国際出願日とする外国語特許出願である特願2014-524146号を最先の出願とする、いわゆる第3世代の分割出願であるところ、出願の分割の経緯は、次のとおりである。なお、括弧内は当該出願の提出日を示す。
また、本願は、パリ条約による優先権の主張(2011年8月3日、2011年11月2日、2012年3月30日、2012年6月20日 いずれも米国)を伴う特許出願であって、2011年8月3日を以下「優先日」という。
最先の出願 :特願2014-524146号
(平成24年 8月 3日)
第1世代分割:特願2017- 2166号
(平成29年 1月10日)
第2世代分割:特願2018-240732号
(平成30年12月25日)
本願 :特願2021-110036号
(令和 3年 7月 1日)
2 本願の手続の経緯の概略
本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 5月13日付け:拒絶理由通知書
同年 8月23日 :意見書及び手続補正書の提出
同年10月 4日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月11日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 2月 7日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年 6月13日 :上申書の提出
令和6年 4月 5日付け:拒絶理由通知書
同年 6月27日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
1 本願発明の認定と分説
本願の請求項1~11に係る発明(このうち請求項1に係る発明を以下「本願発明」という。)は、令和6年6月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1の記載は、次のとおりである。
ここで、検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成D4までに分説するとともに、参考図として本願の図13及び図14を示す。分説するにあたり、適宜改行を加えて表記した。
「【請求項1】
X 無線ネットワークデバイスの位置検出のためのシステムであって、
A 前記システムは、同期ユニット、第1のプロセッサ、第1のメモリ、第2のプロセッサ、及び第2のメモリを備え、
B1 前記同期ユニットは、アンテナを有し、複数の無線ネットワークノードの複数のダウンリンク送信機から信号を受信するように構成され、
B2 前記同期ユニットの前記アンテナは既知の位置を有し、
B3 前記複数の無線ネットワークノードは、位置基準であり、
B4 前記複数のダウンリンク送信機は時間的に同期していない、
C1 前記第1のメモリは、前記システムが動作可能な場合に前記第1のプロセッサに通信可能に接続され、前記第1のメモリは第1のプロセッサ命令を有し、前記第1のプロセッサ命令は、前記第1のプロセッサにおいて実行された場合、少なくとも、前記システムに、
C2 前記無線ネットワークデバイスの位置検出のための処理に遅延補償値を提供するために、前記信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセットであって、前記複数の無線ネットワークノードの前記複数のダウンリンク送信機から送信される信号のダウンリンクフレーム開始間の差を示す1つ又は複数の時間オフセットを計算することと、
C3 前記1つ又は複数の時間オフセットを追跡して、前記無線ネットワークノードに関連付けられたクロックドリフトを補償することと、
を実行させ、
D1 前記第2のメモリは、前記システムが動作可能な場合に前記第2のプロセッサに通信可能に接続され、前記第2のメモリは第2のプロセッサ命令を有し、前記第2のプロセッサ命令は、前記第2のプロセッサにおいて実行された場合、少なくとも、前記システムに、
D2 前記無線ネットワークデバイスにおいて前記複数の無線ネットワークノードの各ダウンリンク送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号であって、測位基準信号(PRS)及びセル固有基準信号(CRS)のうちの1つ以上を含む第1の1つ又は複数の信号に関連付けられたデータを受信し、
D3 前記データ及び前記追跡された1つ又は複数の時間オフセットに基づいて前記無線ネットワークデバイスの第1の位置を計算すること、
D4 前記追跡された1つまたは複数の時間オフセットは、各ダウンリンク送信機からの前記データを、同期されたダウンリンク送信機によって生成されたかのように、位置合わせするために使用される、
を実行させる、システム。」
<参考図>
【図13】
[図:0001422807000001.jpg]
【図14】
[図:0001422807000002.jpg]
2 課題・作用効果に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願発明の技術上の意義の概略を理解するために、本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果に関連する記載等を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体による。
「【0002】
本実施形態は、無線通信および無線ネットワークシステム、ならびにRTLS(リアルタイム位置検出サービス:Real Time Locating Service)を含む、無線周波数(RF)に基づく、物体の識別、追跡、および位置検出のためのシステムに関する。」
「【0505】
上述したように、位置修正は、位置基準(position reference)を時間的に同期させる必要がある。無線ネットワークでは、これらの位置基準は、アクセスポイント、マクロ/ミニ/ピコおよびフェムトセル、ならびにいわゆる小さなセル(eNB)を含み得る。しかしながら、無線通信事業者は、正確な位置修正のために必要とされる同期精度を実施しない。例えば、LTEの場合には、規格はFDD(周波数分割二重)ネットワーク用のeNB間で時間的な同期を必要としない。LTEのTDD(時間分割二重)では、この時間的な同期精度の限度は、+/-1.5μsである。これは、400メートル以上の位置検出不確実性に相当する。必須ではないが、LTEのFDDネットワークもまた同期されるが、限度はさらに大きい(1.5μsより大きい)。」
「【0528】
LTEまたは他の無線ネットワークを使用して位置検出サービスをサポートするために、送信機が厳しい公差内でクロックおよびイベント同期される必要である。通常、これは、GPSの1PPS信号にロックすることによって達成される。これは、ローカルエリアにおいて、3ns(1σ)内の時間同期になる。
【0529】
しかしながら、このタイプの同期は、実用的ではない場合が多い。本実施形態は、位置検出処理に遅延補償値を提供するために、ダウンリンク送信機間の時間オフセット推定と、時間オフセットの追跡とを提供する。それにより、送信機がクロックおよびイベント同期したように位置検出処理が進行する。これは、(位置検出サービスに必要される)送信アンテナの事前の情報と、既に既知のアンテナの位置を有する受信機とによって実現される。この同期ユニットと呼ばれる受信機は、すべてのダウンリンク送信機からデータを収集し、位置の情報が与えられている場合には、事前に選択された基地アンテナからオフセットタイミングを計算する。これらのオフセットは、ダウンリンク送信機に対してクロックドリフトを補償する追跡アルゴリズムの使用を介して、システムによって追跡される。注記:受信したデータから擬似範囲を導出する処理は、インヴィジトラックのマルチパス緩和アルゴリズム(同時係属出願第12/502809号に記載)を利用する。そのため、同期はマルチパスによる影響を受けない。
【0530】
これらのオフセットデータは、位置検出プロセッサ(ロケートサーバ、LSU)によって使用されることにより、各ダウンリンク送信機からのデータを適切に位置合わせする。その結果、データは、同期した送信機によって生成されたように見える。時間精度は、最高の1-PPSの追跡に匹敵し、3メートルの位置検出精度(1σ)をサポートする。」
第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
当審において令和6年4月5日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、請求項1に係る発明についての理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如)本願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2:特開2009-21987号公報(主たる引用文献)
引用文献3:国際公開第2010/151217号(周知技術を示す文献)
第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
1 引用文献2に記載された事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由において引用され、本願の優先日前に発行された文献である引用文献2(特開2009-21987号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したもので、後記(3)の引用発明の認定に直接用いる記載等に付した。
ア 【0001】~【0010】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には位置決定に関し、具体的には、DTV信号を使用する位置決定に関する。
【背景技術】
【0002】
昔から、ラジオ信号を使用する2次元緯度/経度位置決定システム(positionlocationsystem)の方法があった。LoranCおよびOmegaなどの地上システムと、Transitとして知られる衛星ベースのシステムが、広く使用されてきた。高まる人気を享受しているもう1つの衛星ベースのシステムが、全地球測位システム(GPS)である。
…(中略)…
【0004】
GPSは、ナビゲーションおよび位置決定の技術に変革を起こした。しかし、いくつかの状況で、GPSは、より有効でない。GPS信号は、比較的低い出力レベル(100ワット未満)で送信され、長距離にわたるので、受信信号強度は、比較的弱い(全方向性アンテナによって受信された時に-160dBw程度)。したがって、信号は、妨害物が存在する場合または建物の内部では、辛うじて有用であり、あるいは全く有用ではない。
…(中略)…
【発明の概要】
【0006】
一般に、一態様で、本発明は、ユーザ端末の位置を決定するコンピュータ・プログラム製品、装置、および方法を特徴とする。本発明は、ユーザ端末で複数のディジタル・テレビジョン(DTV)送信器から複数のDTV放送信号を受信することと、DTV放送信号に基づいてユーザ端末と各DTV送信器との間の擬似距離を決定することと、擬似距離およびDTV送信器のそれぞれの位置に基づいてユーザ端末の位置を決定することとを含む。
【0007】
特定の実施態様は、次の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。ユーザ端末の位置を決定することは、DTV送信器のうちの1つの送信器クロックと既知の時刻基準との間の差に基づいて擬似距離を調整することを含む。DTV放送信号は、American Television Standards Committee(ATSC)DTV信号であり、擬似距離は、ATSCフレーム内の既知のディジタル・シーケンスに基づいて決定される。既知のディジタル・シーケンスは、同期化コードである。同期化コードは、ATSCデータ・フレーム内のフィールド同期化セグメントである。同期化コードは、ATSCデータ・フレーム内のデータセグメント内の同期化セグメントである。ユーザ端末の位置を決定することは、ユーザ端末のローカル時刻基準とマスタ時刻基準との間のオフセットを決定することを含む。実施態様は、オフセットを使用してユーザ端末の後続位置を決定することを含む。擬似距離を決定することは、DTV信号のそれぞれの一部を格納することと、その後、擬似距離を作るために、格納された部分のそれぞれおよびユーザ端末によって生成された信号を相関させることとを含む。擬似距離を決定することは、擬似距離を作るために、DTV信号が受信される時にDTV信号のそれぞれをユーザ端末によって生成された信号に相関させることを含む。(後略)
【0008】
本発明の実施態様に見ることができる利益は、次のうちの1つまたは複数を含む。本発明の実施態様は、セル電話機、無線PDA(携帯情報端末)、ポケット・ベル、自動車、OCDMA(直交符号分割多元接続)送信器、および他のデバイスのホストの位置決めに使用することができる。本発明の実施態様は、米国にまたがる優れたカバレッジを有し、その存在が連邦通信委員会によって義務づけられたDTV信号を利用する。本発明の実施態様は、ディジタル放送局に対する変更を必要としない。
【0009】
DTV信号は、40dBを超えるGPSに対する出力の優位性を有し、衛星システムが提供できるものより実質的に優れたジオメトリを有し、これによって、妨害物の存在下および室内であっても位置決定を可能にする。DTV信号は、GPSの約6倍の帯域幅を有し、これによって、マルチパスの影響が最小になる。距離測定に使用されるDTV信号の高出力および低いデューティ係数に起因して、処理要件は、最小限である。本発明の実施態様は、GPS技法が必要とするものよりはるかに安価、より低速、より低出力のデバイスに対処する。
【0010】
GPSなどの衛星システムとは対照的に、DTV送信器とユーザ端末との間の距離は、非常にゆっくりと変化する。したがって、DTV信号は、ドップラ効果によって大きくは影響されない。これは、信号を長期間にわたって積分することを可能にし、非常に効率的な信号獲得をもたらす。」
イ 【0021】~【0022】、【図1】
「【0021】
図1を参照すると、例の実施態様100は、エア・リンクを介して基地局104と通信するユーザ端末102を含む。一実施態様で、ユーザ端末102は、無線電話機であり、基地局104は、無線電話基地局である。一実施態様で、基地局104は、モバイルMAN(メトロポリタン・エリア・ネットワーク)またはWAN(広域ネットワーク)の一部である。
【0022】
図1は、本発明のさまざまな態様を示すのに使用されるが、本発明は、この実施態様に限定されない。たとえば、句「ユーザ端末」は、説明されるDTV位置決定を実施できるすべての物体を指すことが意図されている。ユーザ端末の例は、PDA、携帯電話機、自動車および他の車両、ならびにDTV位置決定を実施するチップまたはソフトウェアを含むことができるすべての物体を含む。「端末」である物体または「ユーザ」によって操作される物体に限定されることは意図されていない。」
「【図1】
[図:0001422807000003.jpg]
」
ウ 【0023】~【0039】、【図2】、【図3】
「【0023】
DTV位置決めサーバによって実行される位置決定
図2に、実施態様100の動作を示す。ユーザ端末102は、複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106NからDTV信号を受信する(ステップ202)。」
「【図2】
[図:0001422807000004.jpg]
」
「【0024】
さまざまな方法を使用して、位置決定に使用されるDTVチャネルを選択することができる。一実施態様では、DTV位置特定サーバ110が、監視すべき最良のDTVチャネルについてユーザ端末102に知らせる。一実施態様では、ユーザ端末102が、基地局104によってDTV位置特定サーバ110とメッセージを交換する。一実施態様では、ユーザ端末102が、基地局104のアイデンティティと、基地局およびDTVチャネルを相関させる格納されたテーブルとに基づいて、監視すべきDTVチャネルを選択する。一実施態様では、ユーザ端末102が、最も近い都市の名前など、領域の一般的表示を与えるユーザからの位置入力を受け入れることができ、この情報を使用して、処理のためにDTVチャネルを選択する。一実施態様では、ユーザ端末102が、使用可能なDTVチャネルをスキャンして、使用可能なDTVチャネルの出力レベルに基づいて、位置の指紋を組み立てる。ユーザ端末102は、この指紋を、既知の指紋を既知の位置と突き合わせる格納されたテーブルと比較して、処理のためにDTVチャネルを選択する。
【0025】
ユーザ端末102は、ユーザ端末102と各DTV送信器106との間の擬似距離を決定する(ステップ204)。各擬似距離は、DTV放送信号の成分の送信器108(当審注:符号「108」は、「106」の明らかな誤記であると認められる。)からの送信の時刻と、その成分のユーザ端末102での受信の時刻との間の時間差(または同等の距離)ならびにユーザ端末でのクロック・オフセットを表す。
【0026】
ユーザ端末102は、擬似距離をDTV位置特定サーバ110に送信する。一実施態様で、DTV位置特定サーバ110は、本明細書で説明する動作を実行するように設計されたソフトウェアを実行する汎用コンピュータとして実施される。もう1つの実施態様では、DTV位置特定サーバは、ASIC(特定用途向け集積回路)として実施される。一実施態様で、DTV位置特定サーバ110は、基地局104内または基地局104の近くで実施される。
【0027】
DTV信号は、複数の監視ユニット108Aから108Nによっても受信される。各監視ユニットは、トランシーバおよびプロセッサを含む小さいユニットとして実施することができ、電柱、DTV送信器106、または基地局104などの便利な位置に取り付けることができる。一実施態様で、監視ユニットは、衛星上で実施される。
【0028】
各監視ユニット108は、それがDTV信号をそこから受信するDTV送信器106のそれぞれについて、そのDTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定する。一実施態様で、基準クロックは、GPS信号から導出される。基準クロックの使用は、複数の監視ユニット108が使用される時の各DTV送信器106の時間オフセットの決定を可能にする。というのは、各監視ユニット108が、基準クロックに関する時間オフセットを決定できるからである。したがって、監視ユニット108のローカル・クロックのオフセットは、これらの決定に影響しない。
【0029】
もう1つの実施態様では、外部時刻基準は不要である。この実施態様によれば、単一の監視ユニットが、ユーザ端末102が受信するのと同一のDTV送信器のすべてからDTV信号を受信する。実際には、この単一の監視ユニットのローカル・クロックが、時刻基準として機能する。
【0030】
一実施態様で、各時間オフセットが、固定オフセットとしてモデル化される。もう1つの実施態様では、各時間オフセットが、a、b、c、およびTによって記述できる
Offset=a+b(t-T)+c(t-T)2 (1)
の形の2次多項式あてはめとしてモデル化される。どの実施態様でも、各測定された時間オフセットは、インターネット、保護されたモデム接続、または類似物を使用して、DTV位置特定サーバに周期的に送信される。一実施態様で、各監視ユニット108の位置が、GPS受信器を使用して決定される。
【0031】
DTV位置特定サーバ110は、各DTV送信器106の位相中心(すなわち、位置)を記述する情報をデータベース112から受信する。一実施態様で、各DTV送信器106の位相中心は、位相中心を直接に測定するために、異なる位置の監視ユニット108を使用することによって測定される。もう1つの実施態様では、各DTV送信器106の位相中心は、アンテナ位相中心を測量することによって測定される。
【0032】
一実施態様で、DTV位置特定サーバ110は、気象サーバ114から、ユーザ端末102の付近の気温、気圧、および湿度を記述する気象情報を受信する。気象情報は、インターネットおよびNOAAなどの他のソースから入手可能である。DTV位置特定サーバ110は、B.ParkinsonおよびJ.Spilker,Jr.著、「GlobalPositioningSystem-Theoryand Applications」、AIAA、米国ワシントン州、1996年、Vol.1、第17章のJ.Spilker,Jr.によるTroposphericEffects on GPSで開示された技法などの技法を使用して、気象情報から対流圏伝搬速度を決定する。
【0033】
DTV位置特定サーバ110は、ユーザ端末102の全般的な地理的位置を識別する情報を基地局104から受信することもできる。たとえば、この情報は、セル電話機が置かれているセルまたはセル・セクタを識別することができる。この情報は、以下で説明するように、曖昧さの解決に使用される。
【0034】
DTV位置決めサーバ110は、擬似距離および送信器のそれぞれの位置に基づいて、ユーザ端末の位置を決定する(ステップ206)。図3に、3つのDTV送信器106を使用する位置決定のジオメトリを示す。DTV送信器106Aは、位置(x1,y1)に配置される。ユーザ端末102とDTV送信器106Aとの間の距離は、r1である。DTV送信器106Bは、位置(x2,y2)に配置される。ユーザ端末102とDTV送信器106Bとの間の距離は、r2である。DTV送信器106Nは、位置(x3,y3)に配置される。ユーザ端末102とDTV送信器106Nとの間の距離は、r3である。」
「【図3】
[図:0001422807000005.jpg]
」
「【0035】
DTV位置決めサーバ110は、対流圏伝搬速度および対応するDTV送信器106の時間オフセットに従って、各擬似距離の値を調整することができる。DTV位置決めサーバ110は、データベース112からの位相中心情報を使用して、各DTV送信器106の位置を決定する。
【0036】
ユーザ端末102は、3回以上の擬似距離測定を行って、3つの未知数すなわち、ユーザ端末102の位置(x,y)およびクロック・オフセットTを解く。他の実施態様では、本明細書で開示する技法は、経度、緯度、および高度などの3次元での位置を決定するのに使用され、DTV送信器の高度などの要因を含む。
【0037】
3つの擬似距離測定値pr1、pr2、およびpr3は、
pr1=r1+T (2)
pr2=r2+T (3)
pr3=r3+T (4)
によって与えられる。
【0038】
3つの距離は、
r1=|X-X1| (5)
r2=|X-X2| (6)
r3=|X-X3| (7)
として表すことができ、ここで、Xは、ユーザ端末の2次元ベクトル位置(x,y)を表し、X1は、DTV送信器106Aの2次元ベクトル位置(x1,y1)を表し、X2は、DTV送信器106Bの2次元ベクトル位置(x2,y2)を表し、X3は、DTV送信器106Nの2次元ベクトル位置(x3,y3)を表す。これらの関係は、3つの未知数x、y、およびTについて解くべき3つの方程式をもたらす。DTV位置特定サーバ110は、従来の周知の方法に従って、これらの方程式を解く。E911応用例では、ユーザ端末102の位置が、正しい機関への配布のためにE911位置特定サーバ116に送信される。もう1つの応用例では、位置が、ユーザ端末102に送信される。
【0039】
もう1つの実施態様で、ユーザ端末102は、擬似距離を計算するのではなく、擬似距離を計算するのに十分なDTV信号の測定値をとり、これらの測定値をDTV位置特定サーバ110に送信する。次に、DTV位置特定サーバ110は、これらの測定値に基づいて擬似距離を計算し、上で説明したように、これらの擬似距離に基づいて位置を計算する。」
エ 【0048】~【0049】、【図4】
「【0048】
受信器アーキテクチャ
図4に、受信されたDTV信号のサンプルをとるのに使用されるサンプラの実施態様400を示す。一実施態様で、サンプラ400は、ユーザ端末102内で実施される。もう1つの実施態様で、サンプラ400は、監視ユニット108内で実施される。サンプリング・レートは、当業者に明白である通り、DTV信号の正確な表現を入手するのに十分に高いものでなければならない。」
「【図4】
[図:0001422807000006.jpg]
」
「【0049】
サンプラ400は、アンテナ404でDTV信号402を受信する。ラジオ周波数(RF)増幅器/フィルタ406が、受信されたDTV信号を増幅し、フィルタリングする。局所発振器クロック416ならびにミキサ408Iおよび408Qが、それぞれ同相(I)サンプルおよび直交(Q)サンプルを作るために信号をダウンコンバートする。IサンプルおよびQサンプルは、それぞれ、低域フィルタ(LPF)410Iおよび410Qによってフィルタリングされる。アナログ-ディジタル変換器(ADC)412が、IサンプルおよびQサンプルをディジタル形式に変換する。ディジタルのIサンプルおよびQサンプルは、メモリ414に格納される。」
(2) 引用文献2から認定した事項
引用文献2の【0006】には、「本発明は、ユーザ端末の位置を決定するコンピュータ・プログラム製品、装置、および方法を特徴とする」と記載されているところ、同【0021】、【0023】、【0026】、【0027】及び【図1】の記載によれば、「実施態様400」として、「ユーザ端末102」、「基地局104」、「複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106N」、「DTV位置特定サーバ110」及び「複数の監視ユニット108Aから108N」を含むものが記載されているから、引用文献2には、これらを含む、ユーザ端末の位置を決定するためのシステムが記載されているといえる。
そうすると、引用文献2には、次の事項が開示されていると認められる(以下「認定事項1という。)。
<認定事項1>
「ユーザ端末102、基地局104、複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106N、DTV位置特定サーバ110、並びに、複数の監視ユニット108Aから108Nを含む、ユーザ端末の位置を決定するためのシステム。」
(3) 引用発明の認定
前記(1)において摘記した事項及び前記(2)において認定した事項を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内に認定の根拠となった事項を示した。
<引用発明>
「ユーザ端末102、基地局104、複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106N、DTV位置特定サーバ110、並びに、複数の監視ユニット108Aから108Nを含む、ユーザ端末の位置を決定するためのシステムであって、(認定事項1)
ユーザ端末102は、エア・リンクを介して基地局104と通信する無線電話機であり、(【0021】)
基地局104は、モバイルMAN(メトロポリタン・エリア・ネットワーク)またはWAN(広域ネットワーク)の一部である無線電話基地局であり、(【0021】)
ユーザ端末102は、複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106NからDTV信号を受信するものであり、(【0023】)
ユーザ端末102は、基地局104によってDTV位置特定サーバ110とメッセージを交換するものであり、(【0024】)
ユーザ端末102は、ユーザ端末102と各DTV送信器106との間の擬似距離を決定するものであり、各擬似距離は、DTV放送信号の成分の送信器106からの送信の時刻と、その成分のユーザ端末102での受信の時刻との間の時間差(または同等の距離)ならびにユーザ端末でのクロック・オフセットを表し、(【0025】)
DTV放送信号は、American Television Standards Committee(ATSC)DTV信号であり、擬似距離は、ATSCフレーム内の既知のディジタル・シーケンスに基づいて決定され、既知のディジタル・シーケンスは、同期化コードであり、(【0007】)
ユーザ端末102は、擬似距離をDTV位置特定サーバ110に送信し、DTV位置特定サーバ110は、動作を実行するように設計されたソフトウェアを実行する汎用コンピュータとして実施されるものであり、(【0026】)
DTV信号は、複数の監視ユニット108Aから108Nによっても受信され、各監視ユニットは、トランシーバおよびプロセッサを含む小さいユニットとして実施することができるものであり、(【0027】)
監視ユニット108内で実施されるサンプラ400は、受信されたDTV信号のサンプルをとるのに使用され、アンテナ404でDTV信号402を受信するものであり、(【0048】、【0049】)
各監視ユニット108は、それがDTV信号をそこから受信するDTV送信器106のそれぞれについて、そのDTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定するものであり、基準クロックは、GPS信号から導出され、(【0028】)
各時間オフセットがモデル化され、各測定された時間オフセットは、インターネット、保護されたモデム接続、または類似物を使用して、DTV位置特定サーバに周期的に送信され、(【0030】)
各監視ユニット108の位置が、GPS受信器を使用して決定され、(【0030】)
DTV位置特定サーバ110は、各DTV送信器106の位相中心(すなわち、位置)を記述する情報をデータベース112から受信し、データベース112からの位相中心情報を使用して、各DTV送信器106の位置を決定するものであり、(【0031】、【0035】)
DTV位置決めサーバ110は、擬似距離および送信器のそれぞれの位置に基づいて、ユーザ端末の位置を決定するものであり、(【0034】)
DTV位置決めサーバ110は、対流圏伝搬速度および対応するDTV送信器106の時間オフセットに従って、各擬似距離の値を調整することができるものである、(【0035】)
システム。(認定事項1)」
2 引用文献3に記載された事項及び周知技術1の認定
(1) 引用文献3に記載された事項
当審拒絶理由において引用され、本願の優先日前に発行された文献である引用文献3(国際公開第2010/151217号)には、次の事項が記載されている。括弧内に日本語訳を示した。当該日本語訳は、引用文献3の日本語ファミリー文献である特表2012-531583号公報に基づいて当合議体が作成した。なお、下線は、原文にあるものの他は当合議体において付した。
ア 明細書1頁8~23行、Fig.1
「The Universal Mobile Telecommunication System (UMTS) is one of
the third generation mobile communication technologies designed to
succeed GSM. 3GPP Long Term Evolution (LTE) is a project within the 3rd Generation Partnership Project (3GPP) to improve the UMTS
standard to cope with future requirements in terms of improved
services such as higher data rates, improved efficiency, and lower
costs. The Universal Terrestrial Radio Access Network (UTRAN) is the radio access network of a UMTS system and evolved UTRAN (E-UTRAN)
is the radio access network of an LTE system. As illustrated in
Figure 1, an E-UTRAN typically comprises user equipment (UE) 150
wirelessly connected to radio base stations (RBS) lOOa-c, commonly
referred to as eNodeB (eNB) . The eNB controls one or more areas
referred to as cells 110a-c. In Figure 1 the UE 150 is served by the serving cell 110a. Cells 110b and 110c are neighboring cells.」
(汎用移動通信システム(UMTS)は、GSM(登録商標)を継承するために考案された第3世代移動通信技術の1つである。3GPPロングタームエボリューション(LTE)は、より速いデータ速度、改良された能率及びより低いコストのような改良サービスに関する将来要求に対処するためにUMTS標準を改良する第3世代パートナシッププロジェクト(3GPP)内のプロジェクトである。汎用地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)は、UMTSシステムの無線アクセスネットワークであり、発展型UTRAN(E-UTRAN)は、LTEシステムの無線アクセスネットワークである。図1に示す様に、E-UTRANは、一般的に、eノードB(eNB)と呼ぶ無線基地局(RBS)100a乃至100cに無線で接続するユーザ装置(UE)150を典型的に含む。eNBは、セル110a乃至110cと呼ぶ1つ以上のエリアを制御する。図1で、サービス提供セル110aが、UE150にサービスを提供する。セル110b及びセル110cは隣接セルである。)
「Fig.1
[図:0001422807000007.jpg]
」
イ 明細書3頁1~11行
「There are a number of terrestrial positioning methods, which
determine the UE position by signals measured by the UE and/or by
the radio network nodes such as the RBS, including:
・ cell identity based methods,
・ network based uplink time difference of arrival (U-TDOA) of
signals at different RBS,
・ UE-based and UE-assisted observed time difference of arrival
(OTDOA) of signals from three or more sites or locations, and
・ fingerprinting or the pattern matching positioning method.」
(以下のものを含むUE及び/又はRBSのような無線ネットワークノードによる測定信号によりUEの位置を決定する複数の地上測位法がある。
・セル識別情報ベース法、
・種々のRBSにおけるネットワークベースアップリンク信号到着時間差(U-TDOA)
・3つ以上のサイト又は位置からのUEベース及びUE支援信号到着観測時間差(OTDOA)
・フィンガプリント又はパターン整合測位法。)
ウ 明細書4頁13~34行
「Downlink UE-assisted OTDOA is currently being discussed in 3GPP for LTE, for which it has been commonly recognized that the
hearability issue needs to be addressed to enable positioning
service that meets the service requirements. It has e.g. been shown that using synchronization signals (SS) and cell-specific reference signals (CRS) for positioning without interference management
results in positioning coverage problems due to low SINR and/or
insufficient number of strong signals from different RBS. The
problem is particularly relevant for synchronized networks or
networks with high data load, as there is a high probability of
parallel transmissions in multiple cells on the resource elements
used for CRS or SS, which leads to high interference. To address
these issues and enhance positioning measurements, new physical
signals, positioning reference signals (PRS), in combination with
low-interference subframes have been proposed. PRS are transmitted
in downlink according to a predefined PRS pattern which may differ
by e.g. site, cell, or subframe. This implies that the UE needs to
know what PRS pattern that is used for a certain cell, in order for it to be able to detect the PRS and perform the positioning
measurements needed for the positioning services.」
(ダウンリンクUE支援OTDOAは、LTEのために3GPPで現在検討中であり、これに関してサービス要求条件を満たす測位サービスを可能にするため、可聴性の課題と取り組む必要があることが一般に認識されている。例えば、干渉管理なく測位に同期信号(SS)及びセル特定基準信号(CRS)を使用すると、低いSINR及び/又は種々のRBSからの不十分な数の強い信号による測位範囲の課題を生じることが分かった。CRS又はSSに使用するリソース要素の複数のセルでの高確率な並列送信があり、これは大きな干渉をもたらすので、この課題は同期ネットワーク又は高データ負荷のネットワークに特に関係する。これらの問題と取り組み、位置測定の高度化のため、新しい物理信号である測位基準信号(PRS)が低干渉サブフレームと組み合わせて提案されている。例えば、サイト、セル又はサブフレームにより異なりうる予め定義されたPRSパターンに従い、PRSをダウンリンクで送信する。これは、UEがPRSを検出でき、測位サービスに必要な位置測定を実行するには、UEは、あるセルに使用されているPRSパターンを知る必要があることを意味する。)
エ 明細書5頁25行~7頁8行、Fig.2
「As already mentioned above, the candidate signals for downlink
positioning measurements in LTE are the SS, the CRS, and the PRS.
…(中略)…」
(以上、説明した様に、LTEのダウンリンク位置測定の候補信号は、SS、CRS及びPRSである。)
「Cell-specific reference signals (CRS) : These signals are
transmitted on resource elements in every subframe, and over the
entire bandwidth. Up to six frequency shifts are possible, which are specified as a function of the PCI k = 6w + (v + Vshlft)mod6 ,
where i^={0,3,6} (specified in 3GPP TS 36.211) and Vshlft = iVID mod 6. This corresponds in practice to a frequency re-use of six and
three, for one and two (or four) transmit antennas respectively. The CRS transmission pattern is thus retrievable for a given PCI since essentially the same pattern is used applying different shifts in
time (when there are four antenna ports) and frequency.」
(セル特定基準信号(CRS):これらの信号は、各サブフレームのリソース要素において、全帯域幅で送信される。6つまでの周波数シフトが可能であり、これはPCIの関数として、k=6m+(v+vshift)mod6、ここでv={0,3,6}(非特許文献1に記載)であり、vshift=NcellIDmod6である。これは、実際には1つ及び2つ(又は4つ)の送信アンテナに対しそれぞれ6つ及び3つの周波数の再使用に相当する。時間(4つのアンテナポートがある場合)及び周波数で異なるシフトを適用して本質的に同じパターンを使用するので、CRS送信パターンは従って所与のPCIについて読み出し可能である。)
「Positioning reference signals (PRS) : As mentioned above, PRS
are newly proposed physical signals with transmission patterns that are different from those for the standardized physical signals (e.g. SSS and CRS). Careful planning of PRS patterns among the cells in
order to minimize the interference on colliding resource elements in neighboring cells is crucial for the positioning performance. PRS
patterns can generally be grouped into three groups:
・ Regular patterns - an example of a regular pattern is illustrated in Figure 2 (a)
・ Random patterns
・ Patterns based on Latin squares, Costas arrays and Modular sonar sequences. An example of a 9x9 Costas array is illustrated in Figure 2 (b).」
(測位基準信号(PRS):上述の如く、PRSは、標準化された物理信号(例えばSSS及びCRS)の送信パターンと異なる送信パターンを持つ新たに提案された物理信号である。隣接セルの競合リソース要素における干渉を最小にするためのセル間PRSパターンの慎重な計画は、測位性能に非常に重要である。PRSパターンは一般に3つのグループにグループ化できる。
・通常パターン-通常パターンの例を図2(a)に示す
・ランダムパターン
・ラテン方格、コスタス(Costas)配列及びモジュラソナーシーケンスに基づくパターン。9×9コスタス配列の例を図2(b)に示す。)
「Fig.2
[図:0001422807000008.jpg]
」
(2) 周知技術1の認定
前記ア~エに摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は、本願の優先日前に当業者にとって周知の技術であったと認められる(以下「周知技術1」という)。
<周知技術1>
「移動通信技術において、複数の無線基地局(RBS)からの、セル特定基準信号(CRS)又は測位基準信号(PRS)を含むダウンリンク信号に基づいて、ユーザ装置(UE)の位置を決定すること。」
第5 対比
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 構成Xの観点
引用発明の「ユーザ端末102」は、「エア・リンクを介して基地局104と通信する無線電話機であり」、「基地局104」は、「モバイルMAN(メトロポリタン・エリア・ネットワーク)またはWAN(広域ネットワーク)の一部である無線電話基地局であ[る]」から、引用発明の「ユーザ端末102」は、無線電話ネットワークにおいてユーザが使用する端末デバイスであり、本願発明の「無線ネットワークデバイス」に相当する。
そうすると、引用発明の「ユーザ端末の位置を決定するためのシステム」は、本願発明の「無線ネットワークデバイスの位置検出のためのシステム」に相当するから、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「無線ネットワークデバイスの位置検出のためのシステム」の発明である点。
(2) 構成Aの観点
ア 引用発明の「システム」は、「ユーザ端末102、基地局104、複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106N、DTV位置特定サーバ110、並びに、複数の監視ユニット108Aから108Nを含む」ものである。
イ そして、引用発明の「複数の監視ユニット108Aから108N」は、「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定するもの」であり、当該「時間オフセット」は、後記(8)において説明するとおり、各「DTV送信器106」からの「DTV信号」を基準クロックに基づいて同期して送信されたかのように補正するためのものといえるから、引用発明の「複数の監視ユニット108Aから108N」は、各「時間オフセット」に基づいて各「DTV信号」の送信タイミングの同期に係る処理を行う手段であり、本願発明の「同期ユニット」に相当する。
ウ また、引用発明の「複数の監視ユニット108Aから108N」は、「トランシーバおよびプロセッサを含む小さいユニットとして実施することができるものであ[る]」ところ、当該「プロセッサ」がメモリに接続されていることは明らかであるから、引用発明の「複数の監視ユニット108Aから108N」の「プロセッサ」、「複数の監視ユニット108Aから108N」の「メモリ」は、それぞれ本願発明の「第1のプロセッサ」、「第1のメモリ」に相当する。
エ 引用発明の「DTV位置特定サーバ110」は、「動作を実行するように設計されたソフトウェアを実行する汎用コンピュータとして実施されるもの」であるから、プロセッサとメモリを含むことは明らかである。
そして、引用発明の「DTV位置特定サーバ110」の「プロセッサ」、「DTV位置特定サーバ110」の「メモリ」は、それぞれ本願発明の「第2のプロセッサ」、「第2のメモリ」に相当する。
オ したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記システムは、同期ユニット、第1のプロセッサ、第1のメモリ、第2のプロセッサ、及び第2のメモリを備える」点。
(3) 構成B1の観点
ア 引用発明の「監視ユニット108内で実施されるサンプラ400」の「アンテナ404」は、本願発明の「前記同期ユニット」の「アンテナ」に相当する。
イ(ア) また、引用発明において、「ユーザ端末102は、複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106NからDTV信号を受信するものであ[る]」ところ、「複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106N」は、「DTV信号」を送信するものであるから、本願発明の「複数の無線ネットワークノード」と、「複数の信号送信ユニット」である点において共通する。
(イ) さらに、引用発明の「複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106N」は、「DTV信号」を送信する送信機を有することは自明であるから、本願発明の「複数の無線ネットワークノードの複数のダウンリンク送信機」と、「複数の信号送信ユニットの複数の送信機」である点において共通する。
ウ そして、引用発明において、「DTV信号は、複数の監視ユニット108Aから108Nによっても受信され[る]」から、引用発明は、本願発明と、「前記同期ユニットは、」「複数の信号送信ユニットの複数の送信機から信号を受信するように構成され[る]」ことにおいて共通する。
エ したがって、本願発明と引用発明は、次の(ア)に示す構成B1の観点での一致点において一致し、(イ)に示す構成B1の観点での相違点において相違する。
(ア) 構成B1の観点での一致点
「前記同期ユニットは、アンテナを有し、複数の信号送信ユニットの複数の送信機から信号を受信するように構成される」点。
(イ) 構成B1の観点での相違点
本願発明においては、「信号送信ユニット」が「無線ネットワークノード」であり、「送信機」が「ダウンリンク送信機」であるのに対して、
引用発明においては、「信号送信ユニット」が「DTV送信器106Aおよび106Bから106N」であり、「送信機」が「DTV信号」を送信する送信機である点。
(4) 構成B2の観点
引用発明は、「各監視ユニット108の位置が、GPS受信器を使用して決定され[る]」ものである。
そして、引用発明の「各監視ユニット108」は、DTV信号を受信して、「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定する」ものであるところ、上記「時間オフセット」は、「ローカル・クロック」の示す時刻と「基準クロック」の示す時刻との間に生じる時間ずれを意味する。
ここで、上記時間ずれは、DTV送信器のローカル・クロックによるDTV信号の送信時刻と、基準クロックによるDTV信号の受信時刻との時間差Δt1が、DTV送信器と各監視ユニット108との間の距離ΔLから換算されるDTV信号の伝搬時間Δt2=ΔL/c(cは光速を表す)からどれだけずれているか(Δt1-Δt2)に対応するから、「時間オフセットを測定」するためには、(Δt1-Δt2)を算出する必要があり、その前提として、ΔLを特定するために、各監視ユニット108の位置を把握する必要がある。
そうすると、引用発明においては、「各監視ユニット108の位置」が、「時間オフセットを測定する」前に「GPS受信器を使用して決定」されていることは明らかであり、このことは、「各監視ユニット108の位置」が既知であることを意味する。
また、引用発明の「各監視ユニット108の位置」は、「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定する」ために使用されるものであるから、「DTV送信器」からの「DTV信号」を受信する「アンテナ404」の位置として決定されることは自明である。
したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記同期ユニットの前記アンテナは既知の位置を有する」点。
(5) 構成B3の観点
引用発明の「DTV位置特定サーバ110」は、「各DTV送信器106の位相中心(すなわち、位置)を記述する情報をデータベース112から受信し、データベース112からの位相中心情報を使用して、各DTV送信器106の位置を決定するもの」であり、「擬似距離および送信器のそれぞれの位置に基づいて、ユーザ端末の位置を決定するもの」であって、「擬似距離」に加えて「送信器のそれぞれの位置」に基づいてユーザ端末の位置を決定するものであるから、「DTV送信器」のそれぞれは、ユーザ端末の位置を決定するための基準となるもの(位置基準)であるといえる。
したがって、前記(3)の対比を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記複数の信号送信ユニットは、位置基準である」点。
(6) 構成B4の観点
ア 引用発明においては、「各監視ユニット108は、それがDTV信号をそこから受信するDTV送信器106のそれぞれについて、そのDTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定するもの」であり、「DTV位置決めサーバ110は、」「対応するDTV送信器106の時間オフセットに従って、各擬似距離の値を調整する」ものであるところ、各擬似距離の値を調整する必要があることから、DTV送信器106のそれぞれについて、ローカル・クロックが同期していないことは明らかである。
イ したがって、前記(3)の対比を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の(ア)に示す構成B4の観点での一致点において一致し、(イ)に示す構成B4の観点での相違点において相違する。
(ア) 構成B4の観点での一致点
「前記複数の送信機は時間的に同期していない」点。
(イ) 構成B4の観点での相違点
「前記複数の送信機」について、本願発明においては、「ダウンリンク送信機」であるのに対して、引用発明においては、「DTV信号」を送信する送信機である点。
(7) 構成C1の観点
引用発明の「複数の監視ユニット108Aから108N」は、「トランシーバおよびプロセッサを含む小さいユニットとして実施することができるものであ[る]」から、当該「プロセッサ」に通信可能に接続されるメモリを有し、当該メモリが、プロセッサによって実行された場合にシステムに所定の処理を実行させるプロセッサ命令を有することは明らかである。
したがって、前記(2)の対比を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記第1のメモリは、前記システムが動作可能な場合に前記第1のプロセッサに通信可能に接続され、前記第1のメモリは第1のプロセッサ命令を有し、前記第1のプロセッサ命令は、前記第1のプロセッサにおいて実行された場合、少なくとも、前記システムに、」「実行させる」点。
(8) 構成C2の観点
ア(ア) 前記(3)ウの対比を踏まえると、引用発明の「DTV信号」は、本願発明の「前記信号」と、「複数の信号送信ユニットの複数の送信機から受信する信号」である点において共通する。
(イ) 引用発明において、「各擬似距離は、DTV放送信号の成分の送信器106からの送信の時刻と、その成分のユーザ端末102での受信の時刻との間の時間差(または同等の距離)ならびにユーザ端末でのクロック・オフセットを表[す]」ものであるところ、「DTV放送信号の成分の送信器106からの送信の時刻」が「そのDTV送信器のローカル・クロック」に基づくものであることは明らかである。
また、引用発明の「各監視ユニット108」は、「それがDTV信号をそこから受信するDTV送信器106のそれぞれについて、そのDTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定するもの」であるところ、前記(4)において論じたとおり、「時間オフセットを測定」するためには、DTV送信器のローカル・クロックによるDTV信号の送信時刻と、基準クロックによるDTV信号の受信時刻との時間差Δt1が、DTV送信器の位置と各監視ユニット108との間の距離ΔLから換算されるDTV信号の伝搬時間Δt2=ΔL/c(cは光速を表す)からどれだけずれているか(Δt1-Δt2)を算出する必要があるから、「時間オフセット」は、「DTV信号」に関連付けられて計算されるものであるといえる。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)の検討から、引用発明の「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定」することと、本願発明の「前記信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセットであって、前記複数の無線ネットワークノードの前記複数のダウンリンク送信機から送信される信号のダウンリンクフレーム開始間の差を示す1つ又は複数の時間オフセットを計算する」ことは、「前記信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセットを計算する」点において共通する。
イ 次に、引用発明において、「時間オフセットを測定する」ことの目的について検討する。
(ア) 引用発明の「DTV位置決めサーバ110」は、「擬似距離および送信器のそれぞれの位置に基づいて、ユーザ端末の位置を決定するもの」であり、「対応するDTV送信器106の時間オフセットに従って、各擬似距離の値を調整する」ものであるところ、この「各擬似距離の値」の「調整」は、「対応するDTV送信器106」ごとに、DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットが異なることを前提として、いずれの「DTV送信器106」からの「DTV信号」も基準クロックに基づいて送信されたかのように、すなわち、同期して送信されたかのように補正するためのものといえる。
(イ) このように、「時間オフセット」が、各「対応するDTV送信器106」からの「DTV信号」を同期させることを目的とするものであり、単にGPS信号のような正確なクロックに合わせることのみを目的とするものでないことは、例えば引用文献2の【0029】の次に示す記載からも、明らかである。
「もう1つの実施態様では、外部時刻基準は不要である。この実施態様によれば、単一の監視ユニットが、ユーザ端末102が受信するのと同一のDTV送信器のすべてからDTV信号を受信する。実際には、この単一の監視ユニットのローカル・クロックが、時刻基準として機能する。」
(ウ) そうすると、引用発明は、「時間オフセットを測定する」ことにより、各「対応するDTV送信器106」からの「DTV信号」の「同期化コード」などのタイミングがずれており、あるDTV送信器106からのDTV信号のタイミングが、他のDTV送信器106からのDTV信号のタイミングよりも遅延している場合に、その遅延を補償する値(遅延補償値)を提供するものといえる。
ウ したがって、本願発明と引用発明は、次の(ア)に示す構成C2の観点での一致点において一致し、(イ)に示す構成C2の観点での相違点において相違する。
(ア) 構成C2の観点での一致点
「前記無線ネットワークデバイスの位置検出のための処理に遅延補償値を提供するために、前記信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセットを計算する」点。
(イ) 構成C2の観点での相違点
「前記信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセット」について、本願発明においては、「前記複数の無線ネットワークノードの前記複数のダウンリンク送信機から送信される信号のダウンリンクフレーム開始間の差を示す」ものであるのに対して、引用発明においては、「DTV送信器106のそれぞれについて」の「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセット」である点。
(9) 構成C3の観点
引用発明において、(各監視ユニット108により)「各測定された時間オフセットは、」「DTV位置特定サーバに周期的に送信され[る]」ものであるから、引用発明は、本願発明の「前記1つ又は複数の時間オフセットを追跡[する]」ことに相当する構成を有する。
また、前記(8)イで検討したとおり、引用発明は、各「DTV送信器106」からの「DTV信号」を基準クロックに基づいて同期して送信されたかのように補正するものといえるから、各「対応するDTV送信器106」におけるクロックドリフトを補償するものであることは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明は、「時間オフセット」の具体的な構成が相違する点(前記(8)ウ(イ)の「構成C2の観点での相違点」を参照)は措くとして、次の点において共通する。
「前記1つ又は複数の時間オフセットを追跡して、前記信号送信ユニットに関連付けられたクロックドリフトを補償する」点。
(10) 構成D1の観点
引用発明の「DTV位置特定サーバ110」は、「動作を実行するように設計されたソフトウェアを実行する汎用コンピュータとして実施されるもの」であるから、プロセッサと当該プロセッサに通信可能に接続されるメモリを含むものであり、当該「メモリ」が、当該「プロセッサ」によって実行された場合にシステムに所定の処理を実行させるプロセッサ命令を有することは明らかである。
したがって、前記(2)の対比を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記第2のメモリは、前記システムが動作可能な場合に前記第2のプロセッサに通信可能に接続され、前記第2のメモリは第2のプロセッサ命令を有し、前記第2のプロセッサ命令は、前記第2のプロセッサにおいて実行された場合、少なくとも、前記システムに、」「実行させる」点。
(11) 構成D2の観点
ア 引用発明の「ユーザ端末102」において「複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106Nから」「受信する」「DTV信号」は、本願発明の「前記無線ネットワークデバイスにおいて前記複数の無線ネットワークノードの各ダウンリンク送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号であって、測位基準信号(PRS)及びセル固有基準信号(CRS)のうちの1つ以上を含む第1の1つ又は複数の信号」と、「前記無線ネットワークデバイスにおいて前記複数の信号送信ユニットの各送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号」である点において共通する。
イ(ア) 引用発明において、「各擬似距離は、DTV放送信号の成分の送信器106からの送信の時刻と、その成分のユーザ端末102での受信の時刻との間の時間差(または同等の距離)ならびにユーザ端末でのクロック・オフセットを表[す]」から、「擬似距離」は、「DTV信号」(当審注:引用文献2において表記が統一されていないが、「DTV放送信号」と「DTV信号」が同じ信号を意味するのは明らかである。)と関連するものであるといえる。
そうすると、前記アの対比を踏まえると、引用発明の「擬似距離」は、本願発明の「第1の1つ又は複数の信号に関連付けられたデータ」に相当する。
(イ) そして、引用発明の「ユーザ端末102」は、「擬似距離をDTV位置特定サーバ110に送信[する]」ものであり、DTV位置特定サーバ110は、擬似距離を受信するものであるから、引用発明は、本願発明の「第1の1つ又は複数の信号に関連付けられたデータを受信する」ことに相当する構成を有する。
ウ したがって、本願発明と引用発明は、次の(ア)に示す構成D2の観点での一致点において一致し、(イ)に示す構成D2の観点での相違点において相違する。
(ア) 構成D2の観点での一致点
「前記無線ネットワークデバイスにおいて前記複数の信号送信ユニットの各送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号に関連付けられたデータを受信する」点。
(イ) 構成D2の観点での相違点
「複数の信号送信ユニットの複数の送信機」について、
本願発明においては、「信号送信ユニット」が「無線ネットワークノード」であり、「送信機」が「ダウンリンク送信機」であるのに対して、
引用発明においては、「信号送信ユニット」が「DTV送信器106Aおよび106Bから106N」であり、「送信機」が「DTV信号」を送信する送信機であり、
「前記無線ネットワークデバイスにおいて前記複数の信号送信ユニットの各送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号」について、
本願発明においては、「測位基準信号(PRS)及びセル固有基準信号(CRS)のうちの1つ以上を含む」ものであるのに対して、
引用発明においては、「DTV信号」である点。
(12) 構成D3の観点
前記(11)イ(ア)の対比を踏まえると、引用発明の「擬似距離」は、本願発明の「前記データ」に相当する。
また、前記(8)及び(9)の対比を踏まえると、引用発明の「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセット」は、本願発明の「前記追跡された1つ又は複数の時間オフセット」に対応する。
そして、引用発明の「DTV位置決めサーバ110」は、「擬似距離および送信器のそれぞれの位置に基づいて、ユーザ端末の位置を決定するもの」であり、「対応するDTV送信器106の時間オフセットに従って、各擬似距離の値を調整するもの」であるから、「擬似距離」及び「時間オフセット」に基づいてユーザ端末の位置を計算するものといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「時間オフセット」の具体的な構成が相違する点(前記(8)ウ(イ)の「構成C2の観点での相違点」を参照)は措くとして、次の点において一致する。
「前記データ及び前記追跡された1つ又は複数の時間オフセットに基づいて前記無線ネットワークデバイスの第1の位置を計算する」点。
(13) 構成D4の観点
ア 引用発明の「DTV位置決めサーバ110」は、「対応するDTV送信器106の時間オフセットに従って、各擬似距離の値を調整する」ものであるところ、前記(8)イで検討したとおり、各「DTV送信器106」からの「DTV信号」を基準クロックに基づいて同期して送信されたかのように補正するものといえる。
そうすると、引用発明の「DTV位置決めサーバ110」において、「時間オフセット」は、「複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106Nから」「受信する」「DTV信号」に関連付けられた「擬似距離」を、同期された送信機からの信号によって生成されたかのように、位置合わせするために使用されるものということができる。
イ したがって、本願発明と引用発明は、「時間オフセット」の具体的な構成が相違する点(前記(8)ウ(イ)の「構成C2の観点での相違点」を参照)は措くとして、次の(ア)に示す構成D4の観点での一致点において一致し、(イ)に示す構成D4の観点での相違点において相違する。なお、構成D4における「各ダウンリンク送信機からの前記データ」との特定は、構成D2の記載からみて、「各ダウンリンク送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号に関連付けられた前記データ」の趣旨と理解して対比を行った。
(ア) 構成D4の観点での一致点
「前記追跡された1つまたは複数の時間オフセットは、各送信機からの前記データを、同期された送信機によって生成されたかのように、位置合わせするために使用される」点。
(イ) 構成D4の観点での相違点
「同期された送信機」について、本願発明においては、「ダウンリンク送信機」であるのに対して、引用発明においては、「DTV信号」を送信する送信機である点。
2 一致点及び相違点の認定
前記1の対比結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の(1)に示す一致点において一致し、以下の(2)に示す相違点において相違する。
(1) 一致点
「 無線ネットワークデバイスの位置検出のためのシステムであって、
前記システムは、同期ユニット、第1のプロセッサ、第1のメモリ、第2のプロセッサ、及び第2のメモリを備え、
前記同期ユニットは、アンテナを有し、複数の信号送信ユニットの複数の送信機から信号を受信するように構成され、
前記同期ユニットの前記アンテナは既知の位置を有し、
前記複数の信号送信ユニットは、位置基準であり、
前記複数の送信機は時間的に同期していない、
前記第1のメモリは、前記システムが動作可能な場合に前記第1のプロセッサに通信可能に接続され、前記第1のメモリは第1のプロセッサ命令を有し、前記第1のプロセッサ命令は、前記第1のプロセッサにおいて実行された場合、少なくとも、前記システムに、
前記無線ネットワークデバイスの位置検出のための処理に遅延補償値を提供するために、前記信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセットを計算することと、
前記1つ又は複数の時間オフセットを追跡して、前記信号送信ユニットに関連付けられたクロックドリフトを補償することと、
を実行させ、
前記第2のメモリは、前記システムが動作可能な場合に前記第2のプロセッサに通信可能に接続され、前記第2のメモリは第2のプロセッサ命令を有し、前記第2のプロセッサ命令は、前記第2のプロセッサにおいて実行された場合、少なくとも、前記システムに、
前記無線ネットワークデバイスにおいて前記複数の信号送信ユニットの各送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号に関連付けられたデータを受信し、
前記データ及び前記追跡された1つ又は複数の時間オフセットに基づいて前記無線ネットワークデバイスの第1の位置を計算すること、
前記追跡された1つまたは複数の時間オフセットは、各送信機からの前記データを、同期された送信機によって生成されたかのように、位置合わせするために使用される、
を実行させる、システム」である点。
(2) 相違点
本願発明においては、
「信号送信ユニット」が「無線ネットワークノード」であり、
「送信機」が「ダウンリンク送信機」であり、
「前記無線ネットワークデバイスにおいて前記信号送信ユニットの各送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号」が、「測位基準信号(PRS)及びセル固有基準信号(CRS)のうちの1つ以上を含む」ものであり、
「前記信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセット」が、「前記複数の無線ネットワークノードの前記複数のダウンリンク送信機から送信される信号のダウンリンクフレーム開始間の差を示す」ものであるのに対して、
引用発明においては、
「信号送信ユニット」が「DTV送信器106Aおよび106Bから106N」であり、
「送信機」が「DTV信号」を送信する送信機であり、
「前記無線ネットワークデバイスにおいて前記複数の信号送信ユニットの各送信機から受信された第1の1つ又は複数の信号」が「DTV信号」であり、
「時間オフセット」が「DTV送信器106のそれぞれについて」の「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセット」である点。
第6 判断
1 相違点の判断
(1) 「無線ネットワークノード」、「ダウンリンク送信機」及び「PRS信号、CRS信号」について
ア 前記第4の2(2)において周知技術1として認定したとおり、次の技術事項は、本願の優先日前に当業者にとって周知の技術であった。
「移動通信技術において、複数の無線基地局(RBS)からの、セル特定基準信号(CRS)又は測位基準信号(PRS)を含むダウンリンク信号に基づいて、ユーザ装置(UE)の位置を決定すること。」
イ 引用発明と周知技術1は、複数の送信機からの信号に基づいてユーザ装置の位置を検出する技術に係る点において共通するものである。
また、引用文献2の段落【0033】には「セル電話機が置かれているセルまたはセル・セクタ」という記載があるところ、セル方式による移動通信システムにおいては、サービスエリアを多数のセルと呼ばれる小さなエリアに分割し、それぞれに基地局が設置されていることは技術常識であり、引用発明の「ユーザ端末の位置を決定するためのシステム」において、「基地局104」の他にも「ユーザ端末102」と通信可能な複数の無線電話基地局が存在することは自明であるから、前記周知技術1を採用する契機はあるというべきである。
ウ そうすると、引用発明において、「複数のDTV送信器106Aおよび106Bから106N」が「DTV信号」を送信することに代えて、周知技術1を採用することにより、「複数の無線基地局(RBS)」(「複数の無線ネットワークノード」に相当)が「セル特定基準信号(CRS)又は測位基準信号(PRS)を含むダウンリンク信号」を送信し、「ユーザ端末102」が当該信号を受信するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ ここで、無線基地局(RBS)の送信機がダウンリンク送信機として機能することは、技術常識であるから(必要であれば、特開2000-299681号公報の【0016】、特開2004-129286号公報の【0040】、特開2008-172762号公報の【0030】等を参照。)、「セル特定基準信号(CRS)又は測位基準信号(PRS)を含むダウンリンク信号」を送信する「送信機」が、「ダウンリンク送信機」であることは、自明な事項である。
(2) 「時間オフセット」について
ア 引用発明における「DTV送信器106のそれぞれについて」の「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセット」について検討すると、前記第5の1(6)において説明したとおり、引用発明は、各DTV送信器のローカル・クロックが同期していないことを前提とするものであるから、「ローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセット」は、DTV送信器106ごとに値の異なるものとなる。
そして、引用発明の「DTV位置決めサーバ110」は、「対応するDTV送信器106の時間オフセットに従って、各擬似距離の値を調整する」ものであるところ、この「各擬似距離の値」の「調整」は、DTV送信器106ごとに時間オフセットの値が異なっていることを前提として、各DTV送信器106間の時間オフセットの差を把握し、各擬似距離の値を当該時間オフセットの差、すなわち、ローカル・クロックの差がない場合のものと同じになるように調整して、各DTV送信器106からのDTV信号が同期して送信されたかのように補正するものといえる。
イ また、引用発明の「DTV放送信号」(DTV信号)は、「American Television Standards Committee(ATSC)DTV信号であり、擬似距離は、ATSCフレーム内の既知のディジタル・シーケンスに基づいて決定され、既知のディジタル・シーケンスは、同期化コードであ[る]」から、信号がフレーム(ATSCフレーム)から構成されるものといえる。
そして、引用発明は、各DTV送信器のローカル・クロックが同期していないことを前提とするものであることを考慮すると、当該フレームの開始タイミングは、各DTV送信器106のローカル・クロックに基づき決定されるものであることから、DTV送信器106ごとにずれたものとなることは明らかであるところ、このフレーム開始間の差は、ローカル・クロックの差、すなわち、前記アで述べた各DTV送信器106間の時間オフセットの差に他ならない。
ウ してみると、引用発明においては、信号のフレーム開始間の差として時間オフセットの差が現れるといえるから、前記周知技術1を採用することにより、「複数の無線基地局(RBS)」が「セル特定基準信号(CRS)又は測位基準信号(PRS)を含むダウンリンク信号」を送信し、「ユーザ端末102」が当該信号を受信するように構成した際、DTV送信器106のそれぞれについて、DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定して、各DTV送信器106間の時間オフセットの差を把握することに代えて、複数のダウンリンク送信機から送信される信号のダウンリンクフレーム開始間の差を取得して、それが「信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセット」であるように構成することは、当業者にとって自明な設計変更にすぎないというべきである。
エ したがって、引用発明において、「前記信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセット」が「前記複数の無線ネットワークノードの前記複数のダウンリンク送信機から送信される信号のダウンリンクフレーム開始間の差を示す」ものであるように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3) 総合評価
前記(1)~(2)において検討したことを総合的に勘案しても、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 請求人の主張について
(1) 意見書における主張内容
請求人は、令和6年6月27日に提出した意見書において、概略次の主張をしている。
本願発明の「前記複数の無線ネットワークノードの前記複数のダウンリンク送信機から送信される信号のダウンリンクフレーム開始間の差を示す、1つまたは複数の時間オフセット」は、引用文献2の「DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセット」とは異なる。また、引用文献2では、「DTV送信機106の時間オフセット」は、ユーザ端末102と各DTV送信機106との間の「擬似距離」を「調整」するために使用されるが、本願発明において「前記追跡された1つまたは複数の時間オフセットは、各ダウンリンク送信機からの前記データを、同期されたダウンリンク送信機によって生成されたかのように、位置合わせするために使用され」る。したがって、引用文献2等には、本願発明の構成C2やD4等について記載も示唆もされていない。
(2) 請求人の主張についての検討
請求人の前記(1)の主張について検討する。
前記1(2)において説示したとおり、引用発明において、前記周知技術1を採用することにより、「複数の無線基地局(RBS)」が「セル特定基準信号(CRS)又は測位基準信号(PRS)を含むダウンリンク信号」を送信し、「ユーザ端末102」が当該信号を受信するように構成した際、DTV送信器106のそれぞれについて、DTV送信器のローカル・クロックと基準クロックとの間の時間オフセットを測定して、各DTV送信器106間の時間オフセットの差を把握することに代えて、複数のダウンリンク送信機から送信される信号のダウンリンクフレーム開始間の差を取得して、それが「信号に関連付けられた1つ又は複数の時間オフセット」であるように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、前記1(1)エにおいて説示した事項を踏まえると、本願発明において「前記追跡された1つまたは複数の時間オフセットは、各ダウンリンク送信機からの前記データを、同期されたダウンリンク送信機によって生成されたかのように、位置合わせするために使用される」点は、引用発明に前記周知技術1を採用することにより、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の前記(1)の主張は採用することができない。
第7 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-002087