特許拒絶査定不服審判
2023-001199
筆穂用繊維
- 審判番号
- 2023-001199
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-101248
- 請求日
- 2023年01月24日
- 審決日
- 2024年03月06日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ぺんてる株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 嵯峨根 多美
- 分類
- P18 .121-Z (A46D) / P18 .575-Z (A46D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-101248「筆穂用繊維」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月14日出願公開、特開2021-164661〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年1月25日(以下「原出願日」という。)に出願した特願2017-11210号の一部を令和3年6月18日に新たな特許出願としたものであって、令和4年6月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年8月18日に意見書が提出され、同年10月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、令和5年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和5年1月24日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年1月24日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和3年6月18日の特許出願時の)特許請求の範囲の請求項1乃至4を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
先端部に縮径部を有する筆穂用繊維において、基部繊維径が50μm以上75μm以下であると共に、繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径の70%以上105%以下である筆穂用繊維。
【請求項2】
前記繊維がナイロン繊維である請求項1に記載の筆穂用繊維。
【請求項3】
前記繊維が周期1500μm以上5500μm以下で波高さ20μm以上200μm以下の波型繊維である請求項1又は請求項2に記載の筆穂用繊維。
【請求項4】
前記繊維の平均表面粗さRaが0.15μm以上0.90μm以下である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の筆穂用繊維。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
先端部に縮径部を有する筆穂用繊維において、基部繊維径が50μm以上75μm以下であると共に、繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径の60%以上100%以下であり、当該繊維が、ナイロン繊維であり、周期1500μm以上5500μm以下で、波高さ20μm以上200μm以下の波型繊維であり、平均表面粗さRaが0.10μm以上1.00μm以下である筆穂用繊維。」
(3)補正事項
上記(1)及び(2)によれば、本件補正は、
ア 本件補正前の請求項1の「筆穂用繊維」の発明特定事項である「繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径」に対する割合について、「70%以上105%以下」であったものを「60%以上100%以下」とし(以下「補正事項1」という。)、「繊維」について「ナイロン繊維であり、周期1500μm以上5500μm以下で、波高さ20μm以上200μm以下の波型繊維であり、平均表面粗さRaが0.10μm以上1.00μm以下である」とする(以下「補正事項2」という。)ものである。
2 補正の適否について
特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明瞭でない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
そこで、本件補正について、以下、検討する。
(1)補正事項1について
補正事項1は、「繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径」に対する割合について、「70%以上105%以下」であったものを「60%以上100%以下」するものである。 上限の割合は、105%から100%へと限定されているものの、下限の割合は、70%から60%へと拡大されている、
してみると、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものということはできない。
また、補正事項1が、同項第1号に規定する請求項の削除、同項第3号に規定する誤記の訂正、同項第4号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことも明らかである。
したがって、補正事項1を含む本件補正は、審判請求時の補正であって、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。
3 独立特許要件について
上記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであるが、本件補正後の請求項1についての補正が同項第2号に規定するいわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるとして、念のため、本件補正後の請求項1に係る発明(令和5年1月24日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】(以下、それぞれ「本件補正発明」という。))が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載された事項により特定されるものと認められる。
(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の原出願日前である平成27年1月19日に頒布された刊行物である特開2015-8856号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下、同様。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の複数種の筆毛の先端にテーパー加工を施し、その筆毛を混毛し束ねて塗布ブラシとし、前記塗布ブラシを管状体の先端部に配置し、管状体の基端部に軸筒を設けた化粧ブラシであって、特にチークブラシ、フェイスブラシ、パウダーブラシなどのパウダー状の塗布液を肌に載せる効果に優れ、ソフトな感触で塗布できる化粧ブラシに用いられる塗布ブラシに関するものである。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、獣毛と合成樹脂製の筆毛とを混毛してなる塗布ブラシの場合は、一般的に、天然毛である獣毛は、全体的に柔らかく筆毛表面がキューティクル状の凹凸が形成されているので、粉含みが良く、化粧料を肌に載せる効果に優れるが、獣毛と合成樹脂製の筆毛を混毛した場合は、獣毛と合成樹脂製の筆毛の弾性の違いや表面状態の粗さの違いから、肌へのフィット感が劣ることや化粧料を塗布した際に、肌への仕上がりの均一さに欠けるといった問題が残されていた。」
(ウ)「【0013】
以下、本発明について説明する。図1は、本発明による化粧ブラシに適した1例を示している。参照符号1は塗布ブラシ1であり、この塗布ブラシ1は、管状体4に挿入固定され、この管状体4の基端部に、軸筒5を挿入固定され化粧ブラシを形成している。また、塗布ブラシ1は、先端をテーパー加工した筆毛の表面に算術平均粗さがRa0.05~0.20μmの範囲の微細な凹凸を形成し、且つ、波状のクリンプ加工を施して形成した筆毛2と先端をテーパー加工した筆毛の表面に算術平均粗さがRa0.20~1.00μmの範囲の微細な凹凸を形成した筆毛3とを混毛したものを用いて長手方向に集束し、後端部を熱溶着や接着剤による接着などの方法により固着して形成したものである。」
(エ)「【0016】
前記筆毛に使用している合成樹脂製の繊維材質としては、ポリアミド(6、6-ナイロン、6-ナイロン、12-ナイロン、6,10-ナイロン、6,12-ナイロンなど)ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合物などを用いることができるが、各筆毛の材質は同一であっても異なっていても良い。
【0017】
前記塗布ブラシ1に用いる合成樹脂製の筆毛2、3、の基部の直径Dは、製造用途又は大きさ(直径及び長さ)によっても異なるが、本発明に係わる化粧料の塗布ブラシ1における筆毛2、3、の基部の直径Dは、0.05mm~0.08mmのものを用いることが好ましい。ここで言う筆毛の直径Dとは、テーパー加工されていない部分の直径を言うものである。」
(オ)「【0022】
又、前記塗布ブラシ1は、筆毛の表面算術平均粗さがRa0.05~0.2μmの範囲もので形成し、且つ、波状のクリンプ加工を施して形成した筆毛2と筆毛の表面算術平均粗さがRa0.2~1.0μmの範囲の筆毛3とを少なくとも混毛する目的は、表面算術粗さの大きさの異なるものを混ぜることで、塗布ブラシ全体が大きい粗さのものと微細な粗さのものとが均一に塗布ブラシ全体に形成されるため、肌面に対してフィットし易く、さらにクリンプ加工により塗布ブラシ全体に程良い空間が形成されるため、非常に柔らかい肌面にフィットする塗布ブラシを得るためである。」
(カ)「【0030】
前記塗布ブラシ1の筆毛は、先端をテーパー加工した筆毛の表面算術平均粗さがRa0.14μmのもので形成し、且つ、波状のクリンプの形状をピッチ2.54mm・高さ0.06mmで形成し、筆毛の直径Dが0.07mmの筆毛2と先端をテーパー加工した筆毛の表面算術平均粗さがRa0.8μmのもので形成し、筆毛の直径Dが0.07mmの筆毛3とを混毛し、塗布ブラシ1の横断面形状を幅17.5mm・厚さ11.5mmの楕円形状にし、先端部形状を扇状に形成したものを用いた。
但し、筆毛2には、他のクリンプ形状ピッチ4.60mm・高さ0.15mmのようなクリンプ形状の異なるものを加えて混毛して構成しても良い。…」
(キ)「【図3】
[図:0001409794000001.jpg]
」
(ク)「【図4】
[図:0001409794000002.jpg]
」
(ケ)図3及び図4より、繊維の先端がテーパー加工した円筒形筆毛が看取できる。
上記(ア)乃至(ク)の記載事項及び上記(ケ)の認定事項から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「先端をテーパー加工した円筒形筆毛であって、
表面に算術平均粗さがRa0.05~0.20μmの範囲の微細な凹凸を形成し、且つ、波状のクリンプ加工を施して形成し、
波状のクリンプの形状をピッチ2.54mm・高さ0.06mmで形成し、
基部の直径Dは、0.05mm~0.08mmであり、
筆毛に使用している合成樹脂製の繊維材質としては、ポリアミド(6、6-ナイロン、6-ナイロン、12-ナイロン、6,10-ナイロン、6,12-ナイロンなど)である、
円筒形筆毛。」
イ 引用例2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の原出願日前である平成22年7月8日に頒布された刊行物である特開2010-148744号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、リップブラシやコーンシーラー及び付け筆タイプのネイルなどの液体の化粧液、筆跡修正液、漆器用といったパウダーや高粘度インキを塗布する筆穂に関し、塗布液の保持性と吐出が良好で、塗布時のタッチを滑らかにし、長い時間使用しても筆穂が乾燥しにくい筆穂に関するものである。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記獣毛と先端をテーパー化した合成樹脂製筆毛とを混毛したものの場合、獣毛ゆえの欠点を合わせ持たざるを得ず、又、クリンプの波長が各々相違する多数の合成樹脂製筆毛よりなるものの場合、空間率が大きくなり易く、塗布性は向上するが、腰が弱くなり使用感が悪くなるといった問題を有していた。又、先端をテーパー化した合成樹脂製筆毛を用いて、ストレートな大径と小径と断面形状が異形な筆毛を混毛した筆穂は、塗布液の掻き取り性は良いが、塗布液が溝に入り込み易く、塗布液の吐出が悪くなったり、ストレートな大径の筆毛を用いているので、使用感がハードになるといった問題があった。さらに、上記の筆穂を含め、通常筆穂は特にテーパー毛を用いるものの場合、筆穂を円錐状に作成し、毛管現象を強くし筆穂がまとまるようにするが、このような筆穂であると筆穂自体がまとまっているので、高粘度インキやパウダー粉が筆穂に入り込こみ、筆穂からの液の離れが悪いといた問題も残されていた。」
(ウ)「【0009】
以下、本発明について説明する。図1において、参照符号1は、リップ用筆穂であり、この筆穂1は、固定管7に挿入・固定され、この固定管7はインキ内蔵された後軸8の前端より挿入固定され筆を形成している。また、筆穂1は、先端にテーパー加工した断面が中空の3穴を有する筆毛2と、クリンプを有する筆毛2、3とを用いて長手方向に集束し、後端部を熱溶着や接着剤による接着などの方法により固着して形成したものである。
また、以下の本実施例において筆穂1の断面形状は、中間部と先端近傍部においてほぼ同形の円形状をなしており、その外観形状として筆毛3が収束された円柱状をなしているが、筆穂の断面形状を楕円形状としても良く、或いは、8角形や12角形、16角形などとしても良い。尚、筆穂1の断面形状は、中間部と先端近傍部において同形の円形状をなすのが好ましいが、製造時のばらつきや気温、湿気、或いは、筆穂に蓄えられたインキの貯留量などにより、若干異なってしまうことがある。しかし、その若干の相違にあっては本効果を損失するものではなく、十分に呈するものとなっている。ちなみに、湿気やインキが筆穂の先端に吐出され蓄えられると、そのインキの表面張力によって各筆毛が引き寄せられ、若干ではあるものの、筆穂の中間部分よりも先端部近傍が縮形する。
【0010】
筆毛に使用している繊維材質としては、ポリアミド(6,6-ナイロン、6-ナイロン、6、12-ナイロン、6,10-ナイロン、6,12ナイロンなど)ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)などを用いることができるが、上記材質が同一であっても異なっていても良い。
尚、筆穂1に使用する筆毛は、断面が中空の筆毛が少なくとも混毛してあれば、他の筆毛は、断面が異形の筆毛、筆毛表面に凹凸を有する筆毛、クリンプを有する筆毛、ストレートな筆毛を混毛して使用することができるが、断面が中空の筆毛を少なくとも使用すれば他の筆毛は、何種類使用しても良い。
又、使用する用途及びインキ粘度、使用するインキの種類よっては、筆穂の先端が円柱状の斜形状に配置すれば、上記の繊維を単体で使用することもできる。
…
【0012】
筆穂1に用いる筆毛の径(直径D)は、製造する用途又は大きさ(太さ及び長さ)によっても異なるが、本発明に係る筆穂1における筆毛2、3、4、5、6は、0.05mm~0.16mmのものを用いることが好ましい。尚、ここでいう筆毛の径とは、テーパー加工されていない部分の径をいうものである。又、筆毛の太さがこの範囲の中であれば何種類使用して良い。又、ここで、筆穂1を円柱状になすには、筆毛先端部からのテーパーの長さが重要であり、その範囲としては、2.0mm~8.0mm程度が好ましい。筆毛先端部からのテーパー長さが2.0mmに満たないと筆穂が円柱状になり易いが、テーパーが短いため、塗布時に肌当たりがハードになり使用感が悪くなったり、筆毛の先端近傍における空間が少ないためインキが溜まり難く、一方、筆毛先端部からのテーパーの長さが8.0mmを超えると筆穂が円柱状になり難く、テーパーが長いため、筆穂が円錐状になり、塗布時の吐出性が悪くなったり、筆穂がまとまっているので筆穂が広がり難くなり、塗布時のタッチが悪くなるからである。従来、筆穂は、筆穂自体まとまるように作成するのが、このときのテーパーの長さは8.0mm以上あるのが通常である。」
上記(ア)乃至(ウ)の記載事項から、引用例2には、次の技術事項(以下「引用例2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「先端にテーパー加工した断面が中空の3穴を有する筆毛であって、
筆穂に用いる筆毛の径(直径D)は、0.05mm~0.16mmのもの
筆毛先端部からのテーパーの長さは、2.0mm~8.0mm程度であり、
繊維材質としては、ポリアミド(6,6-ナイロン、6-ナイロン、6、12-ナイロン、6,10-ナイロン、6,12ナイロンなど)である、筆毛。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「先端」、「『円筒形筆毛』の『テーパー加工した』部分」、「円筒形筆毛」、「基部の直径D」は、それぞれ、本件補正発明の「先端部」、「縮径部」、「筆穂用繊維」、「基部繊維径」に相当する。
イ 引用発明1の「基部の直径D」は、「0.05mm~0.08mm」であるから、本件補正発明の「基部繊維径」と引用発明1の「基部の直径D」とは、「50μm以上75μm以下」の範囲で一致する。
ウ 引用発明1の「円筒形筆毛」の「繊維材質」は、「ポリアミド(6,6-ナイロン、6-ナイロン、6、12-ナイロン、6,10-ナイロン、6,12ナイロンなど)」であるから、本件補正発明の「繊維」と引用発明1の「円筒形筆毛」とは、「ナイロン繊維」との概念で一致する。
エ 引用発明1の「繊維材質」は、「表面に算術平均粗さがRa0.05~0.20μmの範囲の微細な凹凸を形成し、且つ、波状のクリンプ加工を施して形成し、波状のクリンプの形状をピッチ2.54mm・高さ0.06mmで形成し」たものであるから、本件補正発明の「繊維」と引用発明1の「円筒形筆毛」とは、「周期2540μmで、波高さ60μmの波型繊維であり、平均表面粗さRaが0.50μm以上1.00μm以下」の点で一致する。
そうすると、本件補正発明と引用発明1とは、
[一致点]
「先端部に縮径部を有する筆穂用繊維において、基部繊維径が50μm以上75μm以下であり、当該繊維が、ナイロン繊維であり、周期2540μmで、波高さ60μmの波型繊維であり、平均表面粗さRaが0.50μm以上1.00μm以下である筆穂用繊維。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本件補正発明の「筆穂用繊維」は「繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径の60%以上100%以下であ」るのに対し、引用発明1の「円筒形筆毛」は「先端をテーパー加工した」ものであるものの、筆毛の先端から基部の直径Dの長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が不明であり、基部繊維径と比較した割合も不明な点。
(4)判断
ア 引用例2記載の技術事項の「筆穂に用いる筆毛の径(直径D)」は、0.05mm~0.16mmであるから、筆毛の先端から筆毛の径(直径D)の長さの50倍の距離は、2.50mm~8.00mmとなる。
イ ここで、引用例2記載の技術事項の筆毛先端部からのテーパーの長さは、2.0mm~8.0mmであるから、
テーパーの長さ:8.0mm、50倍の距離:2.50mm の位置の径の割合は、31.25%
テーパーの長さ:2.0mm、50倍の距離:8.00mm の位置の径の割合は、100.00%
であって、引用例2記載の技術事項には、筆毛の先端から筆毛の径(直径D)の長さの50倍の距離の位置における筆毛の径(直径D)が基部の筆毛の径(直径D)の31.25%以上100%以下であることが示されている。
ウ そうすると、引用発明2には、上記相違点に係る構成(60%以上100%以下)が示されているといえる。
エ ここで、引用発明1と引用例2記載の技術事項とは、化粧ブラシの技術分野に属する点で共通し、化粧料の肌へ仕上がりの均一さを課題としている点で一致する。
オ そうすると、引用発明1に引用例2記載の技術事項を適用する動機付けがあるといえ、引用発明1の筆毛の先端から基部の直径Dの長さの50倍の距離後方の位置における繊維径と、基部繊維径と比較した割合に、引用例2記載の技術事項の筆毛の先端から筆毛の径(直径D)の長さの50倍の距離の径の割合を適用し、以て、上記相違点とすることは、当業者が容易になし得るものである。
カ したがって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本件補正発明の効果も、引用発明1及び引用例2記載の技術事項から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「本願請求項1に係る発明は上記の通りであり、各引用文献に記載も示唆もありません。各引用文献に記載の事項からは、テーパー加工の程度について、繊維の先端から、特定の範囲の基部繊維径の整数倍で特定された長さ分後方の位置の繊維径が、基部繊維径に対して特定の範囲内であること、当該繊維が特定の繊維、波型、表面粗さにすることについて動機付けはないものと思料いたします。そして、本願請求項1に係る発明の有利な効果は、実施例1から実施例10の確認項目の結果の通り、「粉含み」「肌へのタッチ感」「定着性」「発色(ツヤ)」「均一性(ムラの有無)」「粉の伸び」のいずれの項目も「○」以上の評価を同時に達成するという臨界的意義を有し、顕著性を備えるものであると思料いたします。」と、主張する。
しかし、上記の通り、引用発明1は、先端をテーパー加工した円筒形筆毛であり、また、引用例2記載の技術事項には、テーパー加工の程度について、筆毛の先端から筆毛の径(直径D)の長さの50倍の距離の位置における筆毛の径(直径D)が基部の筆毛の径(直径D)の60%以上100%以下を包含したものが示されている。
また、引用発明1も引用例2記載の技術事項も、化粧料の肌へ仕上がりの均一さという共通の課題を備えている点で組み合わせる動機付けを有している。
してみると、上記(4)の判断通り、本件補正発明は、引用発明1及び引用例2記載の技術事項から、当業者容易に発明できたものである。
よって、請求人の主張は採用できない。
(6)独立特許要件についての検討のまとめ
以上検討したように、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、本件補正発明は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下された。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年6月18日の特許出願時の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
先端部に縮径部を有する筆穂用繊維において、基部繊維径が50μm以上75μm以下であると共に、繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径の70%以上105%以下である筆穂用繊維。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和4年6月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下のものを含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2015-8856号公報及び特開2010-148744号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用例
令和4年6月14日付けの拒絶理由通知書で引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3(2)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
上記「第2 1(3)」のとおり、本願発明は、本件補正発明から「繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径」に対する割合ついて、「60%以上100%以下」から「70%以上105%以下」へと変更し、「ナイロン繊維であり、周期1500μm以上5500μm以下で、波高さ20μm以上200μm以下の波型繊維であり、平均表面粗さRaが0.10μm以上1.00μm以下である」との事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明1とを対比すると、上記「第2 3(3)対比」での検討を勘案すると、両者は、
[一致点]
「先端部に縮径部を有する筆穂用繊維において、基部繊維径が50μm以上75μm以下である筆穂用繊維。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
本件補正発明の「筆穂用繊維」は「繊維の先端から基部繊維径の長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が基部繊維径の70%以上105%以下であ」るのに対し、引用発明1の「円筒形筆毛」は「先端をテーパー加工した」ものであるものの、筆毛の先端から基部の直径Dの長さの50倍の距離後方の位置における繊維径が不明であり、基部繊維径と比較した割合も不明な点。
そして、上記「第2 2(4)ア乃至ウ」のとおり、引用発明2には、上記相違点に係る構成(60%以上100%以下)が示されているといえる。
そうすると、上記「第2 2(4)」の判断と同様に、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本願発明の効果も、引用発明1及び引用例2記載の技術事項から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-001199