特許拒絶査定不服審判
2023-001009
プログラム実行指示装置、その制御方法及びプログラム
- 審判番号
- 2023-001009
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-190537外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年01月20日
- 審決日
- 2023年06月20日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】藤川 求
- 分類
- P18 .113-Z (G06F) / P18 .121-Z (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-190537「プログラム実行指示装置、その制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月19日出願公開、特開2019-160282〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年10月8日(優先権主張 平成30年3月11日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 6月11日 :手続補正書の提出
令和4年 5月26日付け:拒絶理由通知書
令和4年 7月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 7月31日 :意見書の提出
令和4年11月 8日付け:拒絶査定
令和5年 1月20日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和4年7月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
Vサインを閉じるジェスチャの判定情報を取得したときにカットのプログラムの実行を指示する
ことを特徴とするプログラム実行指示装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定(令和4年11月8日付け拒絶査定)の拒絶の理由は、本願請求項1-3に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明又は引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。また、本願請求項1-3に係る発明は、下記の引用文献2-3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献2.米国特許出願公開第2017/0269699号明細書
引用文献3.特開2016-192151号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【0007】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による画像処理装置の使用場面を例示する図である。第1実施形態において、画像処理装置10は、例えばパーソナルコンピュータによって構成される。画像処理装置10は、パーソナルコンピュータに画像処理プログラムを実行させる。画像処理プログラムは、画像に含まれる人物の顔に化粧をしたような画像処理を行う。以降、顔に化粧をしたような画像処理を仮想メイクアップ処理と呼ぶ。画像処理装置10は、仮想メイクアップ処理の対象とする人物の顔が含まれる画像である顔画像21を表示部16に表示するとともに、カメラ15による撮影動作を制御する。カメラ15の撮影対象は、画像処理装置10を操作する人物30の頭部(顔)である。
【0008】
図2は、図1の画像処理装置10の要部構成を説明するブロック図である。画像処理装置10は、制御部11と、操作部12と、記録部13と、画像入力部14と、カメラ15と、表示部16と、ジェスチャー検出部17とを有する。
【0009】
制御部11は、画像解析部11aと、判定部11bと、選択部11cと、画像処理部11dとを有する。これらは、制御部11が記録部13に格納されているプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現されるが、これらをASIC等により構成しても構わない。制御部11は、記録部13に格納されているプログラムに基づいて画像処理装置10の各部を制御する。
【0010】
操作部12は、キーボードやポインティングデバイス等の操作部材によって構成され、各操作に対応する操作信号を制御部11へ出力する。操作部12は、表示部16の表示面に設けられたタッチ操作部を含んでもよい。人物30は、操作部12を介して画像処理装置10を操作する。
【0011】
記録部13は、ストレージ装置や不揮発性メモリなどによって構成される。記録部13は、画像処理装置10を制御するためのプログラムや画像データなどを記録する。また、記録部13は、制御部11からの制御に基づいてプログラムや画像データを出力する。
【0012】
画像入力部14には、外部機器(例えばカメラ、メモリカード、外付けハードディスク等の記録媒体)から画像が入力される。画像入力部14に入力された画像データは、制御部11に出力される。
【0013】
カメラ15は、撮像光学系(図示しない)と、撮像素子(図示しない)とを有する。撮像光学系は、撮像素子の撮像面上に被写体像(本例では人物30の顔)を結像させる。撮像素子は、被写体像を撮像して画像信号を出力する。カメラ15は、撮像素子から出力された画像信号を画像データとして制御部11へ出力する。制御部11は、画像データに所定の画像処理(例えば、輪郭強調やホワイトバランス調整など)を行う。カメラ15の各部は、制御部11によって制御される。
【0014】
表示部16は、記録部13や画像入力部14から読みだされたテキストデータや画像データに基づく画像などを表示する。また、表示部16は、画像処理部11dが画像処理を行った画像を表示する。表示部16はタッチパネルであってもよく、この場合の表示部16は操作部12も兼ねる。表示部16は、スルー画像などのカメラ15で撮影された画像を表示してもよい。
【0015】
ジェスチャー検出部17は、カメラ15と制御部11の一部(画像解析部11a)とを有する。なお、ジェスチャー検出部17は、人物30の動作を検出する構成であればよく、これに限定されない。ジェスチャー検出部は、人物30の動作を検出するために、人物30が身に着けたセンサであってもよい。」
「【0018】
画像処理部11dは、検出したジェスチャーに基づいて、表示部16に表示されている顔画像21に対して仮想メイクアップ処理を行う。例えば、画像処理部11dは、仮想メイクアップ処理として顔画像21に対して色を変える処理、明るさを変える処理、諧調処理、平滑化処理、鮮鋭度に関する画像処理などを行う。」
「【0024】
ジェスチャー検出部17は、カメラ15によって撮影された時系列の画像データに基づいて、公知のジェスチャー認識技術を用いて人物30の動作を検出する。具体的には、上記時系列の画像データから、顔に対する腕、手や指の動きを示すパターンDを検出し、検出した動きのパターンDを基準パターンS1~S7と比較する。なお、ジェスチャー検出部は、時系列の画像データから、顔に対する腕、手や指の位置の時間経過に伴う変化をパターンDとして検出し、検出した位置変化のパターンDを基準パターンS1~S7と比較してもよい。
【0025】
図3は、基準パターンとメイクアップの動作と仮想メイクアップ処理との関連付けを例示する図である。7つの基準パターンS1~S7は、それぞれ一般的なメイクアップの動作C1~C7の実演を撮影した画像データに基づいてあらかじめ作成され、記録部13に記録されている。7つの基準パターンS1~S7は、所定の動作として記録部13に記録されている。具体的には、メイクアップの動作C1~C7の実演を撮影した画像データから検出された、顔に対する腕、手や指の動きを示すパターンである。」
「【0028】
判定部11bは、カメラ15によって撮影された画像データに基づいて検出したパターンDが、上記基準パターンS1~S7のうちいずれかの基準パターンとの間で所定値以上の類似度を有する場合に、顔へのメイクアップの動作と判断する。」
「【0033】
選択部11cは、判定部11bによってパターンDとの間で類似度が高いと判定された基準パターンS1~S7に対応する画像処理を、処理W1~W7から選択する。パターンDとの間で大きい類似度を有する基準パターンS1~S7を特定すれば、図3に基づき、対応するメイクアップの動作C1~C7、および対応する仮想メイクアップ処理W1~W7を特定することができる。
【0034】
画像処理部11dは、表示部16に表示中の顔画像21に対し、選択部11cによって選択された画像処理を行う。図4は、処理前の顔画像21を例示する図である。図5は、図4の顔画像21に対して唇部分の色を変える画像処理(処理W1)を行った顔画像21を例示する図である。図6は、図4の顔画像21に対して頬部分(本例では右頬)の色を変える画像処理(処理W2)を行った顔画像21を例示する図である。」
「【0066】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
以上の説明では、画像に含まれる人物の顔に化粧をしたような画像処理を行うことを説明したが、画像処理の対象は人物の顔に限定されない。また、画像処理は顔に化粧をしたような画像処理(仮想メイクアップ処理)に限定されない。画像処理の対象は、画像に含まれる人体の部位、例えば、頭髪、腕、手、首、胸、腹、脚、足、背中等であってもよい。画像処理は、画像に含まれる人体の部位に色を変える処理、明るさを変える処理、諧調処理、輪郭強調処理、鮮鋭度に関する処理などであってもよい。
【0067】
画像処理は、所定の動作が行われた身体の部位に対応する画像に含まれる身体の部位に、実際の身体そのものに所定の動作を行ったときに身体に現れる変化を表す画像処理であってもよい。身体への所定の動作は、普段の生活で行われる身体へのしぐさや行為である。普段の生活で行われる身体へのしぐさや行為は、化粧をするときの動作の他、身体への動作(髪をかき上げる、髪形を作る、身体の部位を手または足で払う、身体の部位を手または足でなでる、身体の部位を手または足でかく等の動作)を含む。
【0068】
例えば、仮想メイクアップシミュレータの代わりに、仮想髪型シミュレータを構成してもよい。従来、髪型または髪の色を変えたいとき、髪型または髪の色を変えたときの容姿を確認することは困難であった。実際に髪を切るなどして髪型を変えるか、髪の色を実際に変えることをしなければならないが、髪を切った後または髪の色を変えた後から中止、修正をすることは困難であった。
【0069】
変形例1において、画像処理装置10は、人物30によるジェスチャーを検出することによって、表示部16に表示されている画像に対して仮想処理を行う。例えば人物30が、あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟むと、画像処理装置10は、髪の長さを短くする画像処理を行った顔画像21を表示部16に表示させる。反対に、人物30が、「髪を伸ばそうとする」かのように自身の手指で髪を挟んで手指を下に動かすと、画像処理装置10は、髪の長さを長くする画像処理を行った顔画像21を表示部16に表示させる。
【0070】
変形例1では、髪に対するカットの動作、または髪を伸ばそうとする動作をそれぞれジェスチャーとして検出する。画像処理装置10は、実際に髪をカットしたかのような画像となるよう顔画像21に画像処理(ショートヘアスタイルにする)を行う。画像処理装置10は、実際に髪が伸びたかのような画像となるよう顔画像21に画像処理(ロングヘアスタイルにする)を行う。髪の長さは、例えば、ロング、ミディアム、ショートの3段階に切り替えてもよい。」
【図1】「
[図:0001414638000001.jpg]
」
【図2】「
[図:0001414638000002.jpg]
」
【図3】「
[図:0001414638000003.jpg]
」
2 引用発明
したがって、変形例1に着目すると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「画像処理装置10は、例えばパーソナルコンピュータによって構成され、パーソナルコンピュータに画像処理プログラムを実行させ、
画像処理装置10は、制御部11と、操作部12と、記録部13と、画像入力部14と、カメラ15と、表示部16と、ジェスチャー検出部17とを有し、
制御部11は、画像解析部11aと、判定部11bと、選択部11cと、画像処理部11dとを有し、これらは、制御部11が記録部13に格納されているプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現され、
制御部11は、記録部13に格納されているプログラムに基づいて画像処理装置10の各部を制御し、
画像処理部11dは、検出したジェスチャーに基づいて、表示部16に表示されている顔画像21に対して仮想メイクアップ処理を行い、
判定部11bは、カメラ15によって撮影された画像データに基づいて検出したパターンDが、基準パターンS1~S7のうちいずれかの基準パターンとの間で所定値以上の類似度を有する場合に、顔へのメイクアップの動作と判断し、
選択部11cは、判定部11bによってパターンDとの間で類似度が高いと判定された基準パターンS1~S7に対応する画像処理を、処理W1~W7から選択し、
画像処理部11dは、表示部16に表示中の顔画像21に対し、選択部11cによって選択された画像処理を行い、
また、画像処理は顔に化粧をしたような画像処理(仮想メイクアップ処理)に限定されず、画像処理の対象は、画像に含まれる人体の部位、例えば、頭髪であってもよく、
画像処理装置10は、人物30によるジェスチャーを検出することによって、表示部16に表示されている画像に対して仮想処理を行い、
例えば人物30が、あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟むと、画像処理装置10は、髪の長さを短くする画像処理を行った顔画像21を表示部16に表示させることであって、
髪に対するカットの動作をジェスチャーとして検出し、
画像処理装置10は、実際に髪をカットしたかのような画像となるよう顔画像21に画像処理(ショートヘアスタイルにする)を行う
ことを特徴とする画像処理装置10。」
3 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(訳は当審訳。)。
図7B「
[図:0001414638000004.jpg]
」
「[0134] FIG. 7B shows an illustration 708 of a dynamic pose (for example two fingers spreading and contracting (for example a cut gesture)).」
[当審訳]
「[0134]図7Bは、動的ポーズ(例えば、2本の指を広げるもの及び収縮するもの(例えば、カットジェスチャ))の説明図708を示す。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
1 引用発明において、「画像処理装置10は、例えばパーソナルコンピュータによって構成され、パーソナルコンピュータに画像処理プログラムを実行させ」、「画像処理装置10は、制御部11と、操作部12と、記録部13と、画像入力部14と、カメラ15と、表示部16と、ジェスチャー検出部17とを有し」、「制御部11は、画像解析部11aと、判定部11bと、選択部11cと、画像処理部11dとを有し、これらは、制御部11が記録部13に格納されているプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現され」、「制御部11は、記録部13に格納されているプログラムに基づいて画像処理装置10の各部を制御し」、「画像処理部11dは、検出したジェスチャーに基づいて、表示部16に表示されている顔画像21に対して仮想メイクアップ処理を行い」、「判定部11bは、カメラ15によって撮影された画像データに基づいて検出したパターンDが、上記基準パターンS1~S7のうちいずれかの基準パターンとの間で所定値以上の類似度を有する場合に、顔へのメイクアップの動作と判断し」、「選択部11cは、判定部11bによってパターンDとの間で類似度が高いと判定された基準パターンS1~S7に対応する画像処理を、処理W1~W7から選択し」、「画像処理部11dは、表示部16に表示中の顔画像21に対し、選択部11cによって選択された画像処理を行」うことから、制御部11は、判定部11bによる判定情報を取得したときにプログラムの実行を指示しているといえる。
したがって、引用発明の「制御部11」は、本願発明の「判定情報を取得したときに」「プログラムの実行を指示する」「プログラム実行指示装置」に相当するといえる。
2 引用発明の「あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟む」ジェスチャは、本願発明の「Vサインを閉じるジェスチャ」と、「手指を使ったジェスチャ」である点で共通する。
3 引用発明において、「例えば人物30が、あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟むと、画像処理装置10は、髪の長さを短くする画像処理を行った顔画像21を表示部16に表示させ」、「髪に対するカットの動作をジェスチャーとして検出し」、「画像処理装置10は、実際に髪をカットしたかのような画像となるよう顔画像21に画像処理(ショートヘアスタイルにする)を行う」ことから、上記1を踏まえると、画像処理装置10の制御部11は、判定部11bによる「あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟む」ジェスチャの判定情報を取得したときに、実際に髪をカットしたかのような画像となるよう顔画像21に画像処理(ショートヘアスタイルにする)を行うプログラムの実行を指示しているといえる。ここで、本願明細書【0032】の「カットの命令には、ハサミやカットという単語から連想される命令が割り当てられる。」という記載を考慮すると、引用発明の「実際に髪をカットしたかのような画像となるよう顔画像21に画像処理(ショートヘアスタイルにする)を行うプログラム」は、本願発明の「カットのプログラム」に相当することは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「手指を使ったジェスチャの判定情報を取得したときにカットのプログラムの実行を指示する
ことを特徴とするプログラム実行指示装置。」
(相違点)
手指を使ったジェスチャが、本願発明では、「Vサインを閉じる」ものであるのに対し、引用発明では、「あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟む」ものであり、「Vサインを閉じる」ものであるのか明確に特定されていない点。
第6 判断
1 相違点について
引用発明の「あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟む」ジェスチャは、技術常識に照らすと、片手の親指と薬指と小指とを握りつつ、人差し指と中指を開いた状態で人差し指と中指の間に髪を挟み、その後、人差し指と中指を閉じるジェスチャであると認められる。ここで、「片手の親指と薬指と小指とを握りつつ、人差し指と中指を開いた状態」は、いわゆる「Vサイン」であるから、本願発明の「Vサイン」に相当する。したがって、引用発明の「あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟む」ジェスチャは、本願発明の「Vサインを閉じるジェスチャ」に相当するといえる。
したがって、上記相違点は実質的な相違点ではない。
よって、本願発明は、引用発明との実質的な差異がなく、引用文献3に記載された発明である。
また、仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとしても、カットを意味するジェスチャとして、いわゆる「Vサイン」から人差し指と中指を閉じるジェスチャ(本願発明の「Vサインを閉じるジェスチャ」に相当。)を行うことは、周知の事項にすぎない(例えば、上記第4の3を参照。)。
したがって、引用発明において、上記周知の事項を適用し、「Vサインを閉じるジェスチャ」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 請求人の主張について
請求人は、令和5年1月20日提出の審判請求書において
「(1)本願発明の説明
本願発明は、特許請求の範囲に記載された「Vサインを閉じるジェスチャの判定情報を取得したときにカットのプログラムの実行を指示することを特徴とするプログラム実行指示装置。」の構成のうち、「人差し指と中指とが接触したときに限りカットの動作をする」ようにしたことを特徴とするものであって、このような構成を採用したことにより「装置が人差し指と中指とを電極の棒とみなして、人差し指と中指とが離れた状態をスイッチのオフ、人差し指と中指とが接触した状態をスイッチのオン、と判断することができる。その結果ユーザーがハサミのジェスチャをしているにもかかわらず、装置はユーザーに違和感を感じさせることなくスイッチの動作をすることができる」という顕著な作用効果を奏するものである。」、
「引用文献3の髪を挟むジェスチャには指と指の間に髪が存在することから、指と指とが接触しないことは明らかである。したがって引用文献3の髪を挟むジェスチャは、本願発明で定義するVサインを閉じるジェスチャ(指と指との接触)ではないことは技術常識から明らかである。」と主張する。
しかしながら、「人差し指と中指とが接触したときに限りカットの動作をする」という事項は、請求項1には記載されていない。したがって、上記事項に関する主張は、請求項1の記載に基づくものではないため、採用できない。
また、「装置が人差し指と中指とを電極の棒とみなして、人差し指と中指とが離れた状態をスイッチのオフ、人差し指と中指とが接触した状態をスイッチのオン、と判断することができる。その結果ユーザーがハサミのジェスチャをしているにもかかわらず、装置はユーザーに違和感を感じさせることなくスイッチの動作をすることができる」という顕著な作用効果の主張も、上記同様、請求項1の記載に基づくものではないため、採用できない。なお、当該顕著な作用効果は、本願明細書及び図面には記載されていない点も言及しておく。
なお、本願明細書【0021】の「前記片手の親指と薬指と小指とを握り、人差し指と中指を接触して伸ばした手の形状を、閉じたVサインと呼ぶ。(図4)」との記載を考慮し、仮に「人差し指と中指とが接触したときに限りカットの動作をする」という事項が、本願発明に実質的に含まれているとした場合について、以下検討する。
カットを意味するジェスチャとして、いわゆる「Vサイン」から人差し指と中指を閉じ、人差し指と中指とを接触させるジェスチャを行うことは、周知の事項にすぎない(例えば、上記第4の3を参照。)。
したがって、「あたかも「髪を切る」かのように自身の手指を使って模したハサミで髪を挟む」ジェスチャを用いる引用発明において、上記周知の事項を適用し、「人差し指と中指とが接触したときに限りカットの動作をする」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、仮に「人差し指と中指とが接触したときに限りカットの動作をする」という事項が、本願発明に実質的に含まれているとした場合において、「装置が人差し指と中指とを電極の棒とみなして、人差し指と中指とが離れた状態をスイッチのオフ、人差し指と中指とが接触した状態をスイッチのオン、と判断することができる。その結果ユーザーがハサミのジェスチャをしているにもかかわらず、装置はユーザーに違和感を感じさせることなくスイッチの動作をすることができる」という顕著な作用効果の主張について、以下検討する。
「人差し指と中指とが接触したときに限りカットの動作をする」ことから、当該事項をスイッチのオンオフ動作に適用した場合、人差し指と中指とが接触したときに限り、スイッチをオフにする(カットの動作をする)ことが当業者にとって自然なことといえる。しかしながら、上記主張では、人差し指と中指とが接触した状態をスイッチのオンと判断しており、本願発明の構成と矛盾する構成の効果が主張されているといえる。したがって、上記主張は採用できない。なお、当該顕著な作用効果は、本願明細書及び図面には記載されていない点も改めて言及しておく。
4 請求の趣旨について
令和5年1月20日提出の審判請求書の【請求の趣旨】には、「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする。拒絶理由の通知(発送日)令和4年6月3日の理由1(新規事項)には理由がない、との審決を求める。」と記載されているが、当該「理由1(新規事項)」については、原査定と関連がないため、検討しない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-001009