特許拒絶査定不服審判
2022-009373
文字、記号、絵によるコミュニケーションにおける、送信対象誤りへの注意喚起装置
- 審判番号
- 2022-009373
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-229627外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年06月01日
- 審決日
- 2023年08月22日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社スタートアップクラウド
- 分類
- P18 .113-WZ (G06F) / P18 .121-WZ (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-229627「文字、記号、絵によるコミュニケーションにおける、送信対象誤りへの注意喚起装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月13日出願公開、特開2019- 91384〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、平成29年11月10日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 8月27日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月30日: 意見書の提出
令和4年 2月28日付け:拒絶査定
令和4年 6月 1日: 審判請求書、手続補正書の提出
令和4年12月20日付け:拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」と
いう。)
令和5年 2月28日: 意見書の提出
2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和4年6月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「人が人ないし文字、記号、絵を通じた司令会話が可能な対象と一対一もしくは複数対象とのコミュニケーションを実施するため、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を表示する宛先欄と送信内容を入力する入力欄を備える入力端末において、入力者の入力中、入力結果を確認するための表示場所から上下2cm以内に、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を、表示する機能を有することを特徴とする誤送信防止の安全装置を備えた表示装置。」
3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由のうち、本願の請求項1に係る発明に対する、理由2(新規性の欠如)、理由3-1(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(1) 理由2(新規性の欠如)
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2) 理由3-1(進歩性の欠如)
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献6に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 特開2015-133038号公報
引用文献6: 川合俊輔、大本あかね著、「ノンデザイナーでも分かるUX+理論で作るWebデザイン」、初版、株式会社マイナビ出版、2017年9月25日初版第1刷発行、p.69-70、125-129(周知技術を示す文献)
4 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用された、引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 段落【0012】-【0015】
「【0012】
図1は、実施形態に係るメッセージ制御システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、メッセージ制御システム1は、メッセージ制御サーバ10及び複数の端末20を含む。メッセージ制御サーバ10及び各端末20は、通信ネットワーク2を介して、互いにデータ送受信可能に接続される。
【0013】
メッセージ制御サーバ10は、サーバコンピュータによって実現される。図1に示すように、メッセージ制御サーバ10は、制御部11、記憶部12、及び通信部13を含む。制御部11は、例えば、マイクロプロセッサ等を含み、オペレーティングシステムやその他のプログラムに従って処理を実行する。記憶部12は、主記憶部(例えば、RAM)及び補助記憶部(例えば、ハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブ)を含む。通信部13は、通信ネットワーク2を介してデータ通信を行うためのものである。
【0014】
端末20は、ユーザが操作するコンピュータである。例えば、端末20は、携帯電話機(スマートフォンを含む)、携帯情報端末(タブレット型コンピュータを含む)、ゲーム機、又はパーソナルコンピュータによって実現される。図1に示すように、端末20は、制御部21、記憶部22、通信部23、操作部24、及び表示部25を含む。
【0015】
制御部21、記憶部22、及び通信部23は、メッセージ制御サーバ10の制御部11、記憶部12、及び通信部13と同様である。操作部24は、入力デバイスであり、例えば、タッチパネル等である。表示部25は、例えば、液晶表示パネル又は有機ELディスプレイ等であり、制御部21の指示に従って画面を表示する。」
イ 【図1】
「
[図:0001403221000001.jpg]
」
ウ 段落【0017】-【0025】
「【0017】
[2.メッセージ制御システムにおいて実行されるチャット]
次に、互いに協力してゲームをプレイする4人のユーザが作戦を話し合う場面を例に挙げて、メッセージ制御システム1において実行されるチャットについて説明する。ここでは、これら4人のユーザを、それぞれユーザA、X、Y及びZと記載する。
【0018】
図2は、ユーザAの端末20に表示されるチャット画像の一例を示す図である。図2に示すように、チャット画像30には、複数のユーザの各々のメッセージを示すメッセージ画像32A~32H(以降、これらをまとめてメッセージ画像32ともいう。)が時系列に並んでいる。
【0019】
メッセージは、ユーザ間で伝達される情報の内容であり、例えば、各ユーザが入力した記号列や指定した画像により構成される。ここでの記号列とは、文字列(テキスト)を含む意味である。また、メッセージが時系列に並ぶとは、メッセージの入力順(送信順)に、画面上でメッセージ画像32が並んで表示されることである。
【0020】
図2のt軸は、時間軸である。図2の画面例では、メッセージ画像32Aは、最も新しいメッセージを示し、メッセージ画像32Hは、最も古いメッセージを示している。即ち、チャット画像30では、所定方向(図2では、上方向)に行くほど、新しいメッセージを示すメッセージ画像32が表示され、所定方向とは逆方向(図2では、下方向)に行くほど、古いメッセージを示すメッセージ画像32が表示されることで、メッセージが時系列で並ぶようになっている。
【0021】
また、チャット画像30には、メッセージを入力したユーザのアバタ画像34A~34H(以降、これらをまとめてアバタ画像34ともいう。)が表示されている。例えば、ユーザAのチャット画像30では、一の端部(図2では、左端)付近に、ユーザA以外(即ち、ユーザX、Y、及びZ)のアバタ画像34が表示され、対向する端部(図2では、右端)付近に、ユーザAのアバタ画像34が表示される。なお、端部付近とは、画面の端部から所定距離までの領域(例えば、端部から所定ピクセル離れた画素までの領域)である。
【0022】
本実施形態では、各ユーザは、宛先を指定してメッセージを入力することができる。宛先とは、メッセージを伝える相手、端末20、又はアカウントのことである。例えば、メッセージ画像32B及び32Fは、ユーザXがユーザAに宛てたメッセージを示し、メッセージ画像32Cは、ユーザAがユーザXに宛てたメッセージを示している。更に、メッセージ画像32Eは、ユーザXがユーザYに宛てたメッセージを示し、メッセージ画像32Gは、ユーザYがユーザXに宛てたメッセージを示している。
【0023】
図2に示すように、ユーザAのチャット画像30では、ユーザA宛てのメッセージを示すメッセージ画像32B及び32Fと、ユーザA以外のユーザ(即ち、ユーザX、Y、又はZ)宛てのメッセージを示すメッセージ画像32E及び32Gと、は表示態様が異なっている。例えば、メッセージ画像32B及び32Fは、第1の色(図2では、斜線で示す)であり、右方向を向く矢印を含む。一方、メッセージ画像32E及び32Gは、第2の色(図2では、網点で示す)であり、矢印を含まない。その代わりに、メッセージ画像32E及び32Gは、宛先を示す宛先画像36E及び36Gが付与されている。
【0024】
ユーザAは、上記のように表示されるチャット画像30を確認しつつ、メッセージを入力することができる。例えば、ユーザAが所定の操作を行うと、新規のメッセージを入力するための入力フォームが表示される。そして、ユーザAは、この入力フォームにおいて、新規のメッセージを入力して宛先を指定する。なお、新規のメッセージを入力するための入力フォームは、所定の操作を行わなくても表示されているようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態では、ユーザAが、ユーザX、Y、又はZのアバタ画像34を指定すると、そのアバタ画像34が示すユーザ宛てにメッセージを入力するための入力フォームが表示される。」
エ 【図2】
「
[図:0001403221000002.jpg]
」
オ 段落【0026】-【0028】
「【0026】
図3は、ユーザAがユーザXのアバタ画像34を指定した場合のチャット画像30の一例を示す図である。図3に示すように、入力フォーム38には、メッセージの宛先を指定するための宛先欄40にユーザXが指定されている。ユーザAは、メッセージ入力欄42に文字列等を入力する。その後、ユーザAが送信ボタン44を選択すると、ユーザX宛てのメッセージを送信することができる。
【0027】
ユーザAがユーザX宛てに入力したメッセージを示すメッセージ画像32(図2及び図3のメッセージ画像32C)は、ユーザAのチャット画像30では、第3の色であり(図2及び図3では、縦線で示す)、左向きの矢印を含む。また、図2及び図3に示すメッセージ画像32Cは、ユーザX宛てのメッセージであることを示す宛先画像36Cが付与されている。
【0028】
更に、本実施形態では、各ユーザは、ユーザ全体宛てにメッセージを送ったり、宛先を指定せずにメッセージを送ったりすることもできる。図2及び図3の例では、ユーザ全体宛て又は宛先を指定せずに送ったメッセージのメッセージ画像32D及び32Hは、第4の色となる(図2及び図3では、白抜きで示す)。」
カ 【図3】
「
[図:0001403221000003.jpg]
」
ここで、図3からは、入力フォーム38には、宛先欄40に「Xさん」と表示されていることに加えて、さらに、宛先欄40とメッセージ入力欄42との間のスペースに「Xさん宛てのメッセージを入力してください」と表示されていることが、見て取れる。
キ 段落【0033】-【0036】
「【0033】
[3-1.各端末で実現される機能]
各端末20では、メッセージ入力部60、宛先指定部62、送受信部64、及び表示制御部66が実現される。メッセージ入力部60及び宛先指定部62は、制御部21及び操作部24を主として実現され、送受信部64は、制御部21及び通信部23を主として実現され、表示制御部66は、制御部21及び表示部25を主として実現される。
【0034】
[メッセージ入力部]
メッセージ入力部60は、メッセージの入力を受け付ける。例えば、メッセージ入力部60は、ユーザによる記号列の入力や画像の指定を受け付ける。なお、メッセージに含まれる画像は、端末20に記憶されていてもよいし、メッセージ制御サーバ10に記憶されていてもよい。
【0035】
[宛先指定部]
宛先指定部62は、宛先の指定を受け付ける。宛先指定部62は、少なくとも一人のユーザの指定を受け付ける。本実施形態では、複数のユーザが参加するチャットが実現されるので、宛先指定部62は、チャットに参加するユーザの少なくとも一人の指定を受け付けることになる。
【0036】
なお、本実施形態では、1人のユーザのみを宛先に指定できる場合を説明するが、後述の変形例で説明するように、複数のユーザを宛先に指定できるようにしてもよい。また、本実施形態では、ユーザ全体を宛先に指定することもできるので、宛先指定部62は、ユーザ全体の指定を受け付ける。即ち、宛先指定部62は、チャットに参加するユーザ全員を宛先として受け付けることができる。」
ク 段落【0080】
「【0080】
また、ゲームの実行中に作戦をチャットする場合には、メッセージをじっくりと確認する時間的な余裕がなくなることが多いが、本実施形態のチャット画像30によれば、自分に必要なメッセージを短い時間で特定することができ、メッセージの見落としを効果的に防止することができる。更に、各ユーザは、自分宛てのメッセージを他人宛てと誤解する可能性を低減し、他人宛てのメッセージを自分宛てと誤解する可能性も低減するため、これらの誤解によるメッセージの誤送信も防止することができる。」
(2) 引用発明
よって、下線部に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「端末20は、携帯電話機(スマートフォンを含む)、携帯情報端末(タブレット型コンピュータを含む)、ゲーム機、又はパーソナルコンピュータによって実現され、端末20は、制御部21、記憶部22、通信部23、操作部24、及び表示部25を含み、
操作部24は、入力デバイスであり、例えば、タッチパネル等であり、表示部25は、例えば、液晶表示パネル又は有機ELディスプレイ等であり、制御部21の指示に従って画面を表示し、
互いに協力してゲームをプレイする4人のユーザが作戦を話し合う場面で、メッセージ制御システム1において実行されるチャットについて、これら4人のユーザを、それぞれユーザA、X、Y及びZと記載し、
ユーザAの端末20に表示される、チャット画像30には、複数のユーザの各々のメッセージを示すメッセージ画像32A~32H(以降、これらをまとめてメッセージ画像32ともいう。)が時系列に並んでおり、
メッセージは、ユーザ間で伝達される情報の内容であり、例えば、各ユーザが入力した記号列や指定した画像により構成され、ここでの記号列とは、文字列(テキスト)を含み、
また、チャット画像30には、メッセージを入力したユーザのアバタ画像34A~34H(以降、これらをまとめてアバタ画像34ともいう。)が表示されており、例えば、ユーザAのチャット画像30では、一の端部(左端)付近に、ユーザA以外(即ち、ユーザX、Y、及びZ)のアバタ画像34が表示され、対向する端部(右端)付近に、ユーザAのアバタ画像34が表示され、端部付近とは、画面の端部から所定距離までの領域(例えば、端部から所定ピクセル離れた画素までの領域)であり、
各ユーザは、宛先を指定してメッセージを入力することができ、宛先とは、メッセージを伝える相手、端末20、又はアカウントのことであり、
ユーザAは、表示されるチャット画像30を確認しつつ、メッセージを入力することができ、ユーザAは、この入力フォームにおいて、新規のメッセージを入力して宛先を指定し、
入力フォーム38には、メッセージの宛先を指定するための宛先欄40にユーザXが指定され、ユーザAは、メッセージ入力欄42に文字列等を入力し、その後、ユーザAが送信ボタン44を選択すると、ユーザX宛てのメッセージを送信することができ、
ここで、入力フォーム38には、宛先欄40に「Xさん」と表示されていることに加えて、さらに、宛先欄40とメッセージ入力欄42との間のスペースに「Xさん宛てのメッセージを入力してください」と表示され、
各ユーザは、ユーザ全体宛てにメッセージを送ったり、宛先を指定せずにメッセージを送ったりすることもでき、
ゲームの実行中に作戦をチャットする場合には、メッセージをじっくりと確認する時間的な余裕がなくなることが多いが、チャット画像30によれば、自分に必要なメッセージを短い時間で特定することができ、メッセージの見落としを効果的に防止することができ、更に、各ユーザは、自分宛てのメッセージを他人宛てと誤解する可能性を低減し、他人宛てのメッセージを自分宛てと誤解する可能性も低減するため、これらの誤解によるメッセージの誤送信も防止することができる、
端末20の表示部25。」
(3) 引用文献6の記載
当審拒絶理由で引用された、引用文献6には、下記の記載がある。
ア 69ページ1行-70ページ12行
「第4章 サイト構成のデザイン
レイアウトパターン
入力フォーム/問い合わせページ
入力フォームをデザインする際に気をつけることを理解しましょう
入力フォームは資料請求などを行うページで、氏名や住所を記入してもらうために用いられます。このフォームが入力しにくいと、ユーザーはストレスを感じページの離脱に繋がるため注意が必要です。CV(コンバージョン)のチャンスを逃さないためにも、ユーザーが短時間でスムーズに入力できるフォームをデザインしなければなりません。
また、Webサイトを運用する中で入力フォームをユーザに合わせて最適化することをEFO(Entry Form Optimization)と言います。一般的にEFOはWebサイトのCVを上げる施策の一つとされますが、UXを高める上でも重要な要素になります。
入力フォームをデザインする際に気をつけることを解説していきます。
1.入力の手間を少なくする
・・・(中略)・・・
2.エラーを事前に回避する
ユーザーはエラーが起きると誰でも良い気分にはなりません。エラーは離脱に繋がる大きな原因です。なるべくエラーが起こりにくいフォームをデザインすることが必要です。ここでは幾つか事例を紹介します。
・プレースホルダーテキストを利用してどのように入力して欲しいか入力例を表示します。
・入力エラーがある場合は、その場でエラーを伝えましょう。ユーザーが完了したと思ってエラーが表示されるよりもストレスを減らすことができます。また、半角全角は自動で変換する仕組みを導入することで、半角・全角とも受け付けることができるためエラーを防ぐことができます。
・入力エラーや未入力のフォームがあった場合にはカラーリングすることでどこを修正、入力すれば良いか分かるようにします。
[図:0001403221000004.jpg]
(欄外注)
キーワード
ブレースホルダーテキスト
入力フォーム内に配置するテキストで、フォームの説明や入力例を追加するもの。」
イ 125ページ1行-129ページ最下行
「第7章
画面設計のデザイン
第7章 画面設計のデザイン
UI設計に役立つ原理・原則を知る
人間の知覚・認知の特徴に基づいた原理・原則を活用し、分かりやすいWebサイトを設計しましょう
「見た目」の美しさと「使いやすさ」は異なる
ユーザーの感性に訴える見た目の美しいデザインを作ることはWebサイトの品質を左右する非常に重要なポイントです。しかし、その見た目の良さが必ずしも使いやすいデザインになるとは限りません。これらの両立を図るためには人間の知覚・認知に基づいた理論的なUI設計が求められます。
どうしてこの配置や配色なのか、「目的」に沿ったデザインが必要になります。一見難しいように思えますが、この章で紹介するUI設計に必要な原理・原則を学ぶことで、理論に基づいたWebサイトをデザインする足掛かりになるでしょう。
人間の知覚や認知に基づいたデザイン理論
ユーザーに限られた画面領域や操作時間で効率的に情報を伝えるには、情報を整理して理解しやすい形にデザインする必要があります。これらを実践するには感覚でデザインするのではなく、人間の知覚や認知に基づいた原理・原則を理解したUI設計が必要です。
原理・原則さえ守っていれば、必ず良いデザインになるとは言い切れません。まずは基本を学ぶことから始め、論理的にUI設計する思考を身につけましょう。
【問題】左と右で違いを考えてみましょう
見て違いがわかっても、その理由についてもできるだけ論理的に回答できるか考えてみてください。
[図:0001403221000005.jpg]
第7章 画面設計のデザイン
デザインの基本原則 近接
関係する情報を近づけることによりグループ化しましょう
人は距離が近い情報に「関係があるもの」と認識する習性があります。例えば、一定の距離を空けて男女が歩いていてもカップルとは思いませんが、寄り添って歩いているだけでカップルに見えます。情報も同じで距離が違いものが同じまとまりであると直感的に感じてしまいます。
つまり、関連している情報は、距離を近づけてグループ化することで情報を整理することができます。逆に、関係しない情報は遠ざけます。このようなレイアウトの原則を「近接」といいます。
[図:0001403221000006.jpg]
ポイント
この章で説明している4つのデザイン基本原則「近接」「整列」「反復」「コントラスト」は、書籍『ノンデザイナーズ・デザインブック』で解説されています。
『ノンデザイナーズ・デザインブック[第4版]』
日本語版
Robin Williams(著)
吉川典秀(翻訳)
マイナビ出版
2016年6月
「間隔」を意識する
前ページ図の(A)では「タイトル」「説明文」「日付」の情報が均等に並んでいるため、同じグループに見えません。(B)では、これらの情報を近接することでまとまりになり、関係性がわかりやすくなります。
入力フォームのUI設計をしてみましょう。互いに関係する「タイトル(お名前)」と「入力フォーム」の間隔を狭めることにより情報をグループ化します。
次に、「お名前」「メールアドレス」「電話番号」など異なる要素を遠ざけ、関係性を与えないようにします。このように間隔を狭めるだけでなく広げることでまとまりを強くすることができます。
[図:0001403221000007.jpg]
離れすぎたボタン
ボタン・ドロップダウン・チェックボックス等の要素が関連した情報と離れすぎていると関係性を認識できません。
図のサイトの場合、入力が完了したとき、ユーザーの視線は入力フォームの下にあります。そこに「登録ボタン」が近接していないと、ユーザーはボタンを見つけることができません。
[図:0001403221000008.jpg]
「登録」ボタンが上部にあると、ユーザーが見つけにくい。フォームの下に配置した方がよい。」
5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(1) 「人が人ないし文字、記号、絵を通じた司令会話が可能な対象と一対一もしくは複数対象とのコミュニケーションを実施するため」について
ア 引用発明において(例えば「ユーザA」である)「宛先を指定してメッセージを入力する」「ユーザ」は、本願発明の「人」に相当する。
イ 引用発明において(例えば「ユーザX」、「ユーザY」、「ユーザZ」である)「宛先」は、「宛先とは、メッセージを伝える相手、端末20、又はアカウントのことであ」るから、本願発明の「人ないし文字、記号、絵を通じた司令会話が可能な対象」のうちの「人」に相当する。
ウ また、引用発明の「宛先」は、「宛先とは、メッセージを伝える相手、端末20、又はアカウントのことであ」るから、本願発明の「人ないし文字、記号、絵を通じた司令会話が可能な対象」のうちの「対象」にも相当する。
ここで、本願発明の「文字、記号、絵を通じた司令会話が可能な対象」との記載は、本願明細書の「背景技術」欄の段落【0004】における「対象は人に限られない。IoTデバイスの登場により、照明やエアコン、お風呂、冷蔵庫など様々なものが、入力端末からの入力を受け付け、遠隔操作や一括操作が可能になりつつある。」との記載、「他の実施形態」欄の段落【0023】における「すなわち、本発明はいわゆるSNS型のチャットアプリケーションへの実装方法に限定されるものではなく、工場におけるロボット操作のための入力装置誤操作防止やオフィスワークの入力ミス防止などにも活用できる。」との記載に対応するものと認められ、「文字、記号、絵」を通じて各種のコミュニケーションが可能な、「人に限られない」「対象」が含まれることを規定していることが明らかである。
(なお、この点に関して、令和5年2月28日提出の意見書の1ページ26-34行に、以下の記載がある。
「「文字、記号、絵を通じた司令会話が可能な対象」とは本願発明の一実施の形態において「文字、記号、絵を通じたコミュニケーションが可能な対象」です。さらに「グループ会話」等の一般的なチャットシステム発明で用いられる用語ではなく「司令」「会話」の用語を用いた経緯についてご説明申し上げると、本願発明の一実施の形態がビジネス上で上司部下関係の定まったグループ内でのコミュニケーションツールとして発案実装され用いられた、指揮命令系統を適切に担保しなければいけない場面で活用実績のあるコミュニケーションツールであったためです。したがって当該発明に対して特段の実施対象、実施環境もしくは実施手段を限定するために用いた言葉ではなく、発明の明確性を損なわないことを改めてお伝えしたく存じます。」)
エ 上記ア-ウによれば、引用発明において、
「端末20は、携帯電話機(スマートフォンを含む)、携帯情報端末(タブレット型コンピュータを含む)、ゲーム機、又はパーソナルコンピュータによって実現され」、
「メッセージは、ユーザ間で伝達される情報の内容であり、例えば、各ユーザが入力した記号列や指定した画像により構成され、ここでの記号列とは、文字列(テキスト)を含み」、
「各ユーザは、宛先を指定してメッセージを入力することができ、宛先とは、メッセージを伝える相手、端末20、又はアカウントのことであり」、「Xさん宛てのメッセージ」や、「ユーザ全体宛てにメッセージを送ったり、宛先を指定せずにメッセージを送ったりすることもでき」ることは、本願発明の「人が人ないし文字、記号、絵を通じた司令会話が可能な対象と一対一もしくは複数対象とのコミュニケーションを実施する」ことに相当する。
(2) 「コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を表示する宛先欄と送信内容を入力する入力欄を備える入力端末において」について
引用発明の「端末20」は、「操作部24、及び表示部25を含み、操作部24は、入力デバイスであり、例えば、タッチパネル等であ」るから、本願発明の「入力端末」に相当する。
引用発明の「端末20」において「チャット画像30」(【図3】を参照。)の「入力フォーム38」に表示された「宛先欄40」、及び、「メッセージ入力欄42」は、それぞれ、本願発明の「コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を表示する宛先欄」、及び、「送信内容を入力する入力欄」に相当する。
よって、引用発明の「端末20」において、「入力フォーム38には、メッセージの宛先を指定するための宛先欄40にユーザXが指定され」、「さらに、宛先欄40とメッセージ入力欄42との間のスペースに「Xさん宛てのメッセージを入力してください」と表示され」、「ユーザAは、メッセージ入力欄42に文字列等を入力」できることは、本願発明の「コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を表示する宛先欄と送信内容を入力する入力欄を備える入力端末」に相当する。
(3) 「入力者の入力中、入力結果を確認するための表示場所から上下2cm以内に、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を、表示する機能を有すること」について
ア 「入力者の入力中」について
引用発明の(例えば「ユーザA」である)「ユーザ」は、「この入力フォームにおいて、新規のメッセージを入力して宛先を指定し」ているから、本願発明の「入力者」に相当する。
引用発明の「ユーザAは、表示されるチャット画像30を確認しつつ、メッセージを入力することができ、ユーザAは、この入力フォームにおいて、新規のメッセージを入力して宛先を指定し、
入力フォーム38には、メッセージの宛先を指定するための宛先欄40にユーザXが指定され、ユーザAは、メッセージ入力欄42に文字列等を入力し、その後、ユーザAが送信ボタン44を選択すると、ユーザX宛てのメッセージを送信することができ、
ここで、入力フォーム38には、宛先欄40に「Xさん」と表示されていることに加えて、さらに、宛先欄40とメッセージ入力欄42との間のスペースに「Xさん宛てのメッセージを入力してください」と表示され」るとの記載から、引用発明の「入力フォーム38」は、入力者が入力のために使用するフォームであるから、「入力者の入力中」に表示されることは明らかである。
イ 「入力結果を確認するための表示場所から上下2cm以内に、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を、表示する機能を有すること」について
引用発明の「入力フォーム38」の「メッセージ入力欄42」は、本願発明の「入力結果を確認するための表示場所」にも相当する。
引用発明の「入力フォーム38」の内部に並べて配置された「メッセージ入力欄42」と「宛先欄40」、及び、両者の間のスペースに表示された「Xさん宛てのメッセージを入力してください」との表示(【図3】を参照。)は、「入力フォーム38」の内部において、少なくとも、互いに「近傍に」表示されているといえる。
ウ まとめ
上記ア、イから、引用発明において、「ユーザAは、表示されるチャット画像30を確認しつつ、メッセージを入力することができ、ユーザAは、この入力フォームにおいて、新規のメッセージを入力して宛先を指定し、
入力フォーム38には、メッセージの宛先を指定するための宛先欄40にユーザXが指定され、ユーザAは、メッセージ入力欄42に文字列等を入力し、その後、ユーザAが送信ボタン44を選択すると、ユーザX宛てのメッセージを送信することができ、
ここで、入力フォーム38には、宛先欄40に「Xさん」と表示されていることに加えて、さらに、宛先欄40とメッセージ入力欄42との間のスペースに「Xさん宛てのメッセージを入力してください」と表示され」ることは、本願発明において、「入力者の入力中、入力結果を確認するための表示場所から上下2cm以内に、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を、表示する機能を有すること」と、「入力者の入力中、入力結果を確認するための表示場所の近傍に、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を、表示する機能を有すること」である点で、少なくとも共通するといえる。
(4) 「誤送信防止の安全装置を備えた表示装置」について
引用発明の「端末20」における「表示部25」は、本願発明の「誤送信防止の安全装置を備えた表示装置」と、少なくとも「表示手段」である点で共通するといえる。
(5) したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点・相違点があるといえる。
[一致点]
「人が人ないし文字、記号、絵を通じた司令会話が可能な対象と一対一もしくは複数対象とのコミュニケーションを実施するため、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を表示する宛先欄と送信内容を入力する入力欄を備える入力端末において、入力者の入力中、入力結果を確認するための表示場所の近傍に、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を、表示する機能を有することを特徴とする、表示手段。」
[相違点1]
本願発明では、「入力者の入力中、入力結果を確認するための表示場所から上下2cm以内に、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を、表示する機能を有する」のに対して、引用発明では、「メッセージ入力欄42」(「入力結果を確認するための表示場所」に相当。)から、「宛先欄40」及び「Xさん宛てのメッセージを入力してください」の表示(「コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称」に相当。)までの距離が特定されておらず、本願発明のように「入力結果を確認するための表示場所から上下2cm以内に」表示する機能を有することが特定されていない点。
[相違点2]
本願発明は、「誤送信防止の安全装置を備えた表示装置」に係るのに対して、引用発明の「表示部25」は、「誤送信防止の安全装置を備えた」ことが明確には特定されておらず、また、「表示部25」が「表示装置」であることが特定されていない点。
6 当審の判断
(1) [相違点1]について
ア 引用発明の「端末20」は、「携帯電話機(スマートフォンを含む)、携帯情報端末(タブレット型コンピュータを含む)、ゲーム機、又はパーソナルコンピュータによって実現され」る。
ここで、「端末20」が、例えば「携帯電話(スマートフォンを含む)」程度のサイズならば、画面の高さ方向の長さは、たかだか十数cm未満である。
一方、引用文献1の「実施形態」である【図2】のメッセージ画面には、8行のメッセージ(メッセージ画像32A~32H)が表示される。
したがって、引用発明において、【図2】の画面を、例えば、「携帯電話(スマートフォンを含む)」などによって実現する場合を想定して、画面の高さが16cmとすると、ここに8行のメッセージ画面を等間隔で表示すれば、8行の各メッセージの行間が、16cmを8等分した「2cm以内」となることは明らかといえる。
同様に、引用文献1の【図3】の画面についても、6行のメッセージ(メッセージ画像32A~32C、32G~32H)と、入力フォーム38内の2行(宛先欄40と、メッセージ入力欄42)とで、8行分のメッセージ等を表示するから、メッセージ等の行間が「2cm以内」となることは明らかといえる。
よって、この場合、引用発明の宛先欄40と、メッセージ入力欄42との間隔は「2cm以内」であるといえる。
さらに、この場合、間隔が「2cm以内」である宛先欄40と、メッセージ入力欄42との間のスペースに表示されている「Xさん宛てのメッセージを入力してください」との表示までの間隔は、宛先欄40と、メッセージ入力欄42との間隔よりも、さらに短いことは明らかであるから、「2cm以内」といえる。
よって、引用発明は、上記[相違点1]に係る「入力者の入力中、入力結果を確認するための表示場所から上下2cm以内に、コミュニケーションの対象の名称もしくは複数対象をグループ化した名称を、表示する機能を有する」場合を、明らかに含んでいるから、上記[相違点1]は、実質的な相違点ではない。
イ 上記アのとおり、上記[相違点1]は、実質的な相違点ではないが、仮に[相違点1]を実質的な相違点としても、以下のとおり、引用発明において、実験的に数値範囲を最適化又は好適化することによって、上記[相違点1]に係る構成とすることは、当業者が容易に推考し得ることである。
引用文献6(上記5(3)アを参照。)に記載されるように、一般に、ユーザが入力フォームにデータを入力させる場合に、ユーザの誤操作などによる入力エラーの発生を防ぐべきことは、周知の課題である。
一方、引用発明は、「誤解によるメッセージの誤送信も防止すること」を課題としており、「ここで、入力フォーム38には、宛先欄40に「Xさん」と表示されていることに加えて、さらに、宛先欄40とメッセージ入力欄42との間のスペースに「Xさん宛てのメッセージを入力してください」と表示され」るものであるから、メッセージを入力中のユーザに対して、「メッセージ入力欄42」の近傍に、宛先「Xさん」を2回反復して表示しており、これらの表示が、メッセージを入力中のユーザに宛先「Xさん」を認識させることによって、誤った宛先への誤送信を防止するための表示であることは、上記の開示に接した当業者であれば、明らかといえる。
また、引用文献6(上記5(3)イを参照。)に記載されるように、一般に、入力フォームをレイアウトする場合、人間の知覚や認知の特徴を考慮して、情報を整理して理解しやすい形でデザインして、関連する情報同士は近接して配置すべきことが、周知技術である。
よって、引用発明において、メッセージを入力中のユーザに宛先を認識させて、誤った宛先への誤送信を防止するための表示であることが明らかな近傍の「宛先」の表示のレイアウトを、誤った宛先への誤送信を防止する機能が適切に発揮できるように、実験的に数値範囲を最適化又は好適化することによって、「入力結果を確認するための表示場所から上下2cm以内に」配置する、上記[相違点1]に係る構成とすることは、当業者が容易に推考し得ることである。
(2) [相違点2]について
ア 上記(1)イで述べたように、引用発明は、「誤解によるメッセージの誤送信も防止すること」を課題としており、「ここで、入力フォーム38には、宛先欄40に「Xさん」と表示されていることに加えて、さらに、宛先欄40とメッセージ入力欄42との間のスペースに「Xさん宛てのメッセージを入力してください」と表示され」ることは、メッセージを入力中のユーザに宛先を認識させることによって、誤った宛先への誤送信を防止するための表示であることは明らかといえる。
よって、引用発明の誤送信を防止する機能を備えていることに着目して、「安全装置を備えた」ものと呼ぶことは、任意である。
また、本願請求項1に、「安全装置を備えた表示装置」と記載されているように、一般に、ある「装置」の構成要素を、「・・・装置」と呼ぶ場合も、あるいは、「・・部」と呼ぶ場合も、どちらの場合も普通の呼び方であって、いずれの呼び方を採用するかは、任意であると認められる。
したがって、引用発明の端末20の「表示部25」を、「誤送信防止の安全装置を備えた」表示「装置」と呼ぶことは、任意であって、相違点2は、実質的な相違点ではない。
イ 上記アのとおり、上記[相違点2]は、実質的な相違点ではないが、仮に[相違点2]を実質的な相違点としても、引用発明において、「携帯電話機(スマートフォンを含む)、携帯情報端末(タブレット型コンピュータを含む)、ゲーム機、又はパーソナルコンピュータによって実現され」る「端末25」の「送信部25」を、ユーザに、宛先を注意させて、誤った宛先への誤送信を防止する点に着目するとともに、「表示装置」として構成することで、「誤送信防止の安全装置を備えた表示装置」とする点は、当業者の通常の創作能力の発揮といえる。
(3) 本願発明の効果について
さらに、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。
(4)まとめ
よって、(1)ア、(2)アより、本願発明と引用発明との間に相違点は認められない。
また、(1)イ、(2)イ、(3)より、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 請求人の主張について
請求人は、令和5年2月28日提出の意見書1ページ35行-3ページ6行において、本願発明は、新規性、進歩性を有する旨主張している。(なお、意見書の主張を分節して、ア-コの記号を付した。)
ア 請求人は、本願発明の「発信時の注意喚起装置」は、引用発明に「容易に取り付け可能な形状」である旨を主張する(意見書1ページ35-38行)。
しかしながら、本願発明は、「表示装置」に係るものであって、「表示装置」の具体的なサイズや「形状」等は規定されていないから、請求人の主張は、請求項1の記載に基づかないものであって、採用できない。
イ 請求人は、本願発明は、(1)入力中に表示すること、(2)表示場所から上下2cm以内であることから、有利な効果をもたらし、且つ、各引用文献に同様の構成要素はない旨を主張する(意見書1ページ39-42行)。
しかしながら、上記5(3)アのとおり、「(1)入力中に表示すること」は、[一致点]である。また、上記(1)のとおり、「(2)表示場所から上下2cm以内であること」([相違点1]に対応。)は、実質的な相違点ではなく、仮に相違しても当業者が容易に推考し得ることであって、上記(3)のとおり、その効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。
ウ 請求人は、引用文献1は「入力中以外」にも表示される点で、本願発明と相違し、「ユーザーの入力動作に合わせて表示機能が発揮されること」は、引用文献1から読み取れない旨を主張する(意見書1ページ43-49行)。
しかしながら、本願発明に、「入力中以外」の表示や、「ユーザーの入力動作に合わせて表示機能が発揮されること」は規定されていないから、本願発明は、請求人のいう「入力中に表示すること」に限定されていない。よって、請求人の主張は、請求項1の記載に基づかないものであって、採用できない。
エ 請求人は、参考文献(引用文献6)から、文字を近づけることは技術的に実現困難ではないものの、参考文献(引用文献6)は、入力作業を円滑化するためで、安全装置としての効能は記述されていない旨主張する(意見書1ページ49行-2ページ7行)。
しかしながら、たとえ文字を近づける点を相違点と仮定しても、請求人が述べるように、この点に格別の技術的な困難性は認められない。
なお、表示の近接によって入力作業の円滑化によって入力の「操作性」が向上すれば、同時に、入力エラーなどの危険性が減って入力の「安全性」も向上できることは明らかである。
オ 請求人は、本願発明は、送信対象をうっかり誤ることを防止できる効能から、進歩性を認めるべき旨を主張する(意見書2ページ7-16行)。
しかしながら、上記(3)のとおり、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。
カ 請求人は、引用文献2について阻害要因がある旨を主張する(意見書2ページ16-31行)。
しかしながら、「引用文献2」に基づく、当審拒絶理由の「理由3-2」(進歩性)について検討するまでもなく、上記(4)のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された引用発明であり、仮に相違するとしても、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
キ 請求人は、「入力中以外」にも名称を表示している引用文献1から「入力中に」表示することには阻害要因がある旨を主張する(意見書2ページ31-43行)。
しかしながら、上記ウで述べたように、本願発明に、「入力中以外」の表示等は規定されていないから、本願発明は、請求人のいう「入力中に表示すること」に限定されない。よって、請求人の主張は、請求項1の記載に基づかないものであって、採用できない。
ク 請求人は、添付物件2の研究成果から随意性停留時間は270ms~500msで、この停留時間なくして表示を点滅させることは通常の創作能力の発揮である旨を主張する。また、本願発明は入力中にユーザーの入力動作と連動し名称を表示することで、表示をユーザーが認識し損なう課題を解決し、かつ、請求項2、3で名称が消失することで文字が認識しづらくなる問題を解決し、本願装置により、不注意の早期発見が期待される旨を主張する(意見書2ページ43-50行)。
しかしながら、「入力者の入力行為に合わせて」「表示がゆるやかに点滅する表示機能」は、本願の「請求項2」における発明特定事項であって、本願発明には、表示を点滅させる規定はない。よって、請求人の主張は、請求項1の記載に基づかないものであって、採用できない。
ケ 請求人は、以上のことから、本願発明は、新規性および進歩性が認識されるべき旨を主張する(意見書3ページ1-2行)。
しかしながら、上記ア-クのとおり、請求人の主張は、いずれも、採用できない。
コ 請求人は、「本願発明が人類の生態上、視野に入りやすいぎりぎりの範囲で且つ良好なリッチテキストコミュニケーション入力が可能な領域を特定しており、簡便に取り付け可能なユーザーの情報保護装置として機能することは、私どもが到達した自然法則の発見であり、実社会で活用可能な製品の構成要素である」旨を主張する(意見書3ページ2-6行)。
しかしながら、上記イで述べたように、上記(1)、(3)のとおり、「(2)表示場所から上下2cm以内であること」([相違点1]に対応。)は、実質的な相違点ではなく、仮に相違しても当業者が容易に推考し得ることであって、その効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。
7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-009373