特許拒絶査定不服審判
2023-000794
磁性合金材料
- 審判番号
- 2023-000794
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-557619
- 請求日
- 2023年01月17日
- 審決日
- 2023年11月08日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本電気株式会社
- 【請求人代理人】机 昌彦
- 【請求人代理人】北嶋 啓至
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P18 .561-Z (H01F) / P18 .575-Z (H01F) / P18 .537-Z (H01F) / P18 .113-Z (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-557619「磁性合金材料」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日国際公開、WO2020/110893〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)11月21日(優先権主張 2018年11月30日)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 4年 3月31日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 6月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年10月13日付け:拒絶査定(原査定)
令和 5年 1月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年1月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年1月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、補正後の請求項1~9の記載は、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち少なくとも一種類の元素が添加され、
添加された元素が白金の場合、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金を含み、
添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み、
添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含むことを特徴とする磁性合金材料。
【請求項2】
0.8原子パーセントの白金が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金材料。
【請求項3】
0.8原子パーセントの金が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金材料。
【請求項4】
4.2原子パーセントのイリジウムが添加されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金材料。
【請求項5】
白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち少なくとも二種類の元素のそれぞれが0.1原子パーセント以上添加されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金材料。
【請求項6】
0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金とが添加されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性合金材料。
【請求項7】
0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性合金材料。
【請求項8】
0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性合金材料。
【請求項9】
0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性合金材料。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年6月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち少なくとも一種類の元素が添加されたことを特徴とする磁性合金材料。
【請求項2】
6原子パーセント以下の白金が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金材料。
【請求項3】
4.4原子パーセント以下の金が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金材料。
【請求項4】
5.8原子パーセント以下のイリジウムが添加されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金材料。
【請求項5】
白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち少なくとも二種類の元素のそれぞれが0.1原子パーセント以上添加されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性合金材料。
【請求項6】
0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金とが添加されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性合金材料。
【請求項7】
0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性合金材料。
【請求項8】
0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性合金材料。
【請求項9】
0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていることを特徴とする請求項5に記載の磁性合金材料。」
2 本件補正の適否についての検討
(1)本願の願書に最初に添付された明細書等に記載された事項
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付加した。)。
ア 「【0021】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る磁性合金材料について図面を参照しながら説明する。本実施形態の磁性合金材料は、鉄-コバルト-白金系合金(以下、FeCoPt系合金)である。
【0022】
図1は、本実施形態に係る磁性合金材料10の概念図である。磁性合金材料10は、鉄-コバルト系合金(以下、FeCo系合金)に白金(Pt)が添加された材料である。例えば、磁性合金材料10には、0.1原子パーセント以上のPtが含まれる。
【0023】
図2は、FeCoPt系合金(Fe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtx)におけるPtの濃度(原子組成)とスピンモーメントとの関係を示すグラフである(0≦x≦0.5)。図2の横軸は、FeCoPt系合金におけるPtの濃度xである。図2の縦軸は、FeCo系合金(Fe0.75Co0.25)のスピンモーメントで規格化されたFeCoPt系合金(Fe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtx)のスピンモーメントである。
【0024】
図2のように、Fe0.75Co0.25(x=0)にPtが少量添加されたFe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtxのスピンモーメントは、Fe0.75Co0.25(x=0)よりも大きくなる。Fe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtxは、Ptの組成比が0<x<0.06の範囲でFe0.75Co0.25(x=0)よりもスピンモーメントが大きい。Fe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtxのスピンモーメントは、Fe0.75Co0.25に対するPtの組成比が0.008(0.8原子パーセント)付近で最大になる。すなわち、FeCoPt系合金のうちスピンモーメントが最大になるのはFe0.746Co0.246Pt0.008である。
・・・
【0027】
以上のように、本実施形態の磁性合金材料は、FeおよびCoを主成分とするFeCo系合金にPtが添加されていることを特徴とする。6原子パーセント以下のPtが添加されたFeCoPt系合金は、FeCo系合金よりもスピンモーメントが大きい。」
イ 「【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る磁性合金材料について図面を参照しながら説明する。本実施形態の磁性合金材料は、鉄-コバルト-金系合金(以下、FeCoAu系合金)である。本実施形態の磁性合金材料は、白金(Pt)の替わりに金(Au)を含む点において第1の実施形態の磁性合金材料とは異なる。
【0030】
図3は、本実施形態に係る磁性合金材料20の概念図である。磁性合金材料20は、鉄-コバルト系合金(以下、FeCo系合金)に金(Au)が添加された材料である。例えば、磁性合金材料20には、0.1原子パーセント以上のAuが含まれる。
【0031】
図4は、FeCoAu系合金(Fe0.75-0.5yCo0.25-0.5yAuy)におけるAuの濃度(原子組成)とスピンモーメントとの関係を示すグラフである(yは正の実数)。図4の横軸は、FeCoAu系合金におけるAuの濃度yである。図4の縦軸は、FeCo系合金(Fe0.75Co0.25)のスピンモーメントで規格化されたFeCoAu系合金(Fe0.75-0.5yCo0.25-0.5yAuy)のスピンモーメントである。
【0032】
図4のように、Fe0.75Co0.25(y=0)にAuが少量添加されたFe0.75-0.5yCo0.25-0.5yAuyのスピンモーメントは、Fe0.75Co0.25(y=0)よりも大きくなる。Fe0.75-0.5yCo0.25-0.5yAuyは、Auの組成比が0<y<0.044の範囲でFe0.75Co0.25(y=0)よりもスピンモーメントが大きい。Fe0.75-0.5yCo0.25-0.5yAuyのスピンモーメントは、Fe0.75Co0.25に対するAuの組成比が0.008(0.8原子パーセント)付近で最大になる。すなわち、FeCoAu系合金のうちスピンモーメントが最大になるのはFe0.746Co0.246Au0.008である。
・・・
【0035】
以上のように、本実施形態の磁性合金材料は、FeおよびCoを主成分とするFeCo系合金にAuが添加されていることを特徴とする。4.4原子パーセント以下のAuが添加されたFeCoAu系合金は、FeCo系合金よりもスピンモーメントが大きい。」
ウ 「【0037】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る磁性合金材料について図面を参照しながら説明する。本実施形態の磁性合金材料は、鉄-コバルト-イリジウム系合金(以下、FeCoIr系合金)である。本実施形態の磁性合金材料は、白金(Pt)や金(Au)の替わりにイリジウム(Ir)を含む点において第1および第2の実施形態の磁性合金材料とは異なる。
【0038】
図5は、本実施形態に係る磁性合金材料30の概念図である。磁性合金材料30は、鉄-コバルト系合金(以下、FeCo系合金)にイリジウム(Ir)が添加された材料である。例えば、磁性合金材料30には、0.1原子パーセント以上のIrが含まれる。
【0039】
図6は、FeCoIr系合金(Fe0.75-0.5zCo0.25-0.5zIrz)におけるIrの濃度(原子組成)とスピンモーメントとの関係を示すグラフである(zは正の実数)。図6の横軸は、FeCoIr系合金におけるIrの濃度zである。図6の縦軸は、FeCo系合金(Fe0.75Co0.25)のスピンモーメントで規格化されたFeCoIr系合金(Fe0.75-0.5zCo0.25-0.5zIrz)のスピンモーメントである。
【0040】
図6のように、Fe0.75Co0.25(z=0)にIrが少量添加されたFe0.75-0.5zCo0.25-0.5zIrzのスピンモーメントは、Fe0.75Co0.25(z=0)よりも大きくなる。Fe0.75-0.5zCo0.25-0.5zIrzは、Irの組成比が0<z<0.058の範囲でFe0.75Co0.25(z=0)よりもスピンモーメントが大きい。Fe0.75-0.5zCo0.25-0.5zIrzのスピンモーメントは、Fe0.75Co0.25に対するIrの組成比が0.042(4.2原子パーセント)付近で最大になる。すなわち、FeCoIr系合金のうちスピンモーメントが最大になるのはFe0.729Co0.229Ir0.042である。
・・・
【0043】
以上のように、本実施形態の磁性合金材料は、FeおよびCoを主成分とするFeCo系合金にIrが添加されていることを特徴とする。5.8原子パーセント以下のIrが添加されたFeCoIr系合金は、FeCo系合金よりもスピンモーメントが大きい。」
エ 「【0045】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る磁性合金材料について図面を参照しながら説明する。本実施形態の磁性合金材料は、白金(Pt)、金(Au)およびイリジウム(Ir)からなる群より選ばれる元素のうち少なくとも二種類の元素が鉄-コバルト系合金(以下、FeCo系合金)に添加された材料である。磁性合金材料40には、白金(Pt)、金(Au)およびイリジウム(Ir)からなる群より選ばれる元素のうち少なくとも二種類の元素のそれぞれを0.1原子パーセント以上含む。
【0046】
図7は、本実施形態に係る磁性合金材料40の概念図である。磁性合金材料40は、鉄-コバルト系合金(以下、FeCo系合金)に白金(Pt)、金(Au)およびイリジウム(Ir)からなる群より選ばれる元素のうち少なくとも二種類の元素を添加した材料である。すなわち、磁性合金材料40は、4元素で構成される4元系材料と、5元素で構成される5元系材料とに大別される。4元系材料は、FeCoPtIr系合金、FeCoPtAu系合金、およびFeCoAuIr系合金のいずれかである。5元系材料は、FeCoAuPtIr系合金である。
【0047】
図8は、FeCo系合金のスピンモーメントと、磁性合金材料40の一例のスピンモーメントとを比較するためのグラフである。図8の縦軸は、FeCo系合金(Fe0.75Co0.25)のスピンモーメントで規格化された磁性合金材料40のスピンモーメントである。図8には、4元系材料として、Fe0.75Co0.25Pt0.02Ir0.04、Fe0.75Co0.25Pt0.02Au0.02、Fe0.75Co0.25Au0.02Ir0.04のスピンモーメントを例示する。また、図8には、5元系材料として、Fe0.75Co0.25Pt0.02Au0.02Ir0.04のスピンモーメントを例示する。なお、図8に示す4元系材料および5元系材料に含まれる元素記号の後に付された数字は、それぞれの材料を構成する元素の比率を示すものである。
【0048】
図8のように、Fe0.75Co0.25Pt0.02Ir0.04、Fe0.75Co0.25Pt0.02Au0.02、Fe0.75Co0.25Au0.02Ir0.04、Fe0.75Co0.25Pt0.02Au0.02Ir0.04のいずれも、Fe0.75Co0.25よりスピンモーメントが大きい。なお、磁性合金材料40に用いられる材料の組成比は、FeCo系合金の熱的な物性に影響を与えない程度にPt、Au、およびIrの少なくともいずれかが添加されるのであれば、図8に示すものに限定されない。また、磁性合金材料40には、Pt、AuおよびIr以外の元素が含まれていてもよい。
・・・
【0050】
以上のように、本実施形態の磁性合金材料は、FeおよびCoを主成分とするFeCo系合金に、Pt、AuおよびIrからなる群より選ばれる元素のうち少なくとも二種類の元素がそれぞれ0.1原子パーセント以上添加されていることを特徴とする。
・・・
【0052】
以上が、第1~第4の実施形態に係る磁性合金材料についての説明である。以上の各実施形態に係る磁性材料は、鉄およびコバルトを主成分とし、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち少なくとも一種類の元素を0.1原子パーセント以上含むことを特徴とする。白金、金およびイリジウムは、周期表において、第6周期の第9~11族の遷移金属(原子番号:77~79)である。例えば、第1~第4の実施形態に係る磁性合金材料は、コバルトの原子組成比率が10原子パーセント以上90原子パーセント以下である。また、例えば、第1~第4の実施形態に係る磁性合金材料は、鉄とコバルトとの原子組成比が75:25であることが好適である。」
オ 「【0060】
(実施例1)
実施例1は、第1の実施形態に関する。実施例1は、バルク型のFeCoPt系合金を焼結法によって作製した例である。
【0061】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)および白金(Pt)の金属粉末を、原子組成比がFe:Co:Pt=0.746:0.246:0.008になるように混合し、乳鉢を使用して均等に混ぜ、混合粉末を調製した。
【0062】
次に、真空引きした後にアルゴンガスを導入した焼結装置の内部において、調製した混合粉末を100メガパスカルの圧力でプレス成型し、その後600℃で焼結することによって焼結体を形成させた。
【0063】
その後、その焼結体を所望の大きさにダイシングすることによって、所望の大きさのFeCoPt系合金を作製した。
【0064】
例えば、混合粉末を調整する際に、Fe、CoおよびPt以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoPt系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0065】
(実施例2)
実施例2は、第1の実施形態に関する。実施例2は、薄膜型のFeCoPt系合金をスパッタ法によって作製した例である。
【0066】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)および白金(Pt)のスパッタターゲットを用意し、アルゴンガス雰囲気下においてFe、CoおよびPtを同時にスパッタ(コスパッタとも呼ぶ)し、シリコン基板上にFeCoPt系合金を成膜した。このとき、原子組成比がFe:Co:Pt=0.746:0.246:0.008となるようにスパッタ電力を調整した。
【0067】
その後、FeCoPt系合金が成膜されたシリコン基板を、真空中にて600℃でアニールを施すことによってFeCoPt系合金の薄膜を作製した。
【0068】
例えば、Fe、CoおよびPtをコスパッタする際に、Fe、CoおよびPt以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoPt系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0069】
(実施例3)
実施例3は、第2の実施形態に関する。実施例3は、バルク型のFeCoAu系合金を焼結法によって作製した例である。
【0070】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)および金(Au)の金属粉末を、原子組成比がFe:Co:Au=0.746:0.246:0.008になるように混合し、乳鉢を使用して均等に混ぜ、混合粉末を調製した。
【0071】
次に、真空引きした後にアルゴンガスを導入した焼結装置の内部において、調製した混合粉末を100メガパスカルの圧力でプレス成型し、その後600℃で焼結することによって焼結体を形成させた。
【0072】
その後、その焼結体を所望の大きさにダイシングすることによって、所望の大きさのFeCoAu系合金を作製した。
【0073】
例えば、混合粉末を調整する際に、Fe、CoおよびAu以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoAu系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0074】
(実施例4)
実施例4は、第2の実施形態に関する。実施例4は、薄膜型のFeCoAu系合金をスパッタ法によって作製した例である。
【0075】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)および金(Au)のスパッタターゲットを用意し、アルゴンガス雰囲気下においてFe、CoおよびAuをコスパッタし、シリコン基板上にFeCoAu系合金を成膜した。このとき、原子組成比がFe:Co:Au=0.746:0.246:0.008となるようにスパッタ電力を調整した。
【0076】
その後、FeCoAu系合金が成膜されたシリコン基板を、真空中にて600℃でアニールを施すことによってFeCoAu系合金の薄膜を作製した。
【0077】
例えば、Fe、CoおよびAuをコスパッタする際に、Fe、CoおよびAu以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoAu系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0078】
(実施例5)
実施例5は、第3の実施形態に関する。実施例5は、バルク型のFeCoIr系合金を焼結法によって作製した例である。
【0079】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびイリジウム(Ir)の金属粉末を、原子組成比がFe:Co:Ir=0.729:0.229:0.042になるように混合し、乳鉢を使用して均等に混ぜ、混合粉末を調製した。
【0080】
次に、真空引きした後にアルゴンガスを導入した焼結装置の内部において、調製した混合粉末を100メガパスカルの圧力でプレス成型し、その後600℃で焼結することによって焼結体を形成させた。
【0081】
その後、その焼結体を所望の大きさにダイシングすることによって、所望の大きさのFeCoIr系合金を作製した。
【0082】
例えば、混合粉末を調整する際に、Fe、CoおよびIr以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoIr系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0083】
(実施例6)
実施例6は、第3の実施形態に関する。実施例6は、薄膜型のFeCoIr系合金をスパッタ法によって作製した例である。
【0084】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびイリジウム(Ir)のスパッタターゲットを用意し、アルゴンガス雰囲気下においてFe、CoおよびIrをコスパッタし、シリコン基板上にFeCoIr系合金を成膜した。このとき、原子組成比がFe:Co:Ir=0.729:0.229:0.042となるようにスパッタ電力を調整した。
【0085】
その後、FeCoIr系合金が成膜されたシリコン基板を、真空中にて600℃でアニールを施すことによってFeCoIr系合金の薄膜を作製した。
【0086】
例えば、Fe、CoおよびIrをコスパッタする際に、Fe、CoおよびIr以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoIr系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0087】
(実施例7)
実施例7は、第4の実施形態に関する。実施例7は、バルク型のFeCoPtAu系合金を焼結法によって作製した例である。
【0088】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)、白金(Pt)および金(Au)の金属粉末を、原子組成比がFe:Co:Pt:Au=0.75:0.25:0.02:0.04になるように混合し、乳鉢を使用して均等に混ぜ、混合粉末を調製した。
【0089】
次に、真空引きした後にアルゴンガスを導入した焼結装置の内部において、調製した混合粉末を100メガパスカルの圧力でプレス成型し、その後600℃で焼結することによって焼結体を形成させた。
【0090】
その後、その焼結体を所望の大きさにダイシングすることによって、所望の大きさのFeCoPtAu系合金を作製した。
【0091】
例えば、混合粉末を調整する際に、Fe、Co、PtおよびAu以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoPtAu系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0092】
(実施例8)
実施例8は、第4の実施形態に関する。実施例8は、薄膜型のFeCoPtAu系合金をスパッタ法によって作製した例である。
【0093】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)、白金(Pt)および金(Au)のスパッタターゲットを用意し、アルゴンガス雰囲気下でFe、Co、PtおよびAuをコスパッタし、シリコン基板上にFeCoPtAu系合金を成膜した。このとき、原子組成比がFe:Co:Pt:Au=0.75:0.25:0.02:0.02となるようにスパッタ電力を調整した。
【0094】
その後、FeCoPtAu系合金が成膜されたシリコン基板を、真空中にて600℃でアニールを施すことによってFeCoPtAu系合金の薄膜を作製した。
【0095】
例えば、Fe、Co、PtおよびAuをコスパッタする際に、Fe、Co、PtおよびAu以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoPtAu系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0096】
(実施例9)
実施例9は、第4の実施形態に関する。実施例9は、バルク型のFeCoPtIr系合金を焼結法によって作製した例である。
【0097】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)、白金(Pt)およびイリジウム(Ir)の金属粉末を、原子組成比がFe:Co:Pt:Ir=0.75:0.25:0.02:0.04になるように混合し、乳鉢を使用して均等に混ぜ、混合粉末を調製した。
【0098】
次に、真空引きした後にアルゴンガスを導入した焼結装置の内部において、調製した混合粉末を100メガパスカルの圧力でプレス成型し、その後600℃で焼結することによって焼結体を形成させた。
【0099】
その後、その焼結体を所望の大きさにダイシングすることによって、所望の大きさのFeCoPtIr系合金を作製した。
【0100】
例えば、混合粉末を調整する際に、Fe、Co、PtおよびIr以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoPtIr系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0101】
(実施例10)
実施例10は、第4の実施形態に関する。実施例10は、薄膜型のFeCoPtIr系合金をスパッタ法によって作製した例である。
【0102】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)、白金(Pt)およびイリジウム(Ir)のスパッタターゲットを用意し、アルゴンガス雰囲気下でFe、Co、PtおよびIrをコスパッタし、シリコン基板上にFeCoPtIr系合金を成膜した。このとき、原子組成比がFe:Co:Pt:Ir=0.75:0.25:0.02:0.04となるようにスパッタ電力を調整した。
【0103】
その後、FeCoPtIr系合金が成膜されたシリコン基板を、真空中にて600℃でアニールを施すことによってFeCoPtIr系合金の薄膜を作製した。
【0104】
例えば、Fe、Co、PtおよびIrをコスパッタする際に、Fe、Co、PtおよびIr以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoPtIr系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0105】
(実施例11)
実施例11は、第4の実施形態に関する。実施例11は、バルク型のFeCoAuIr系合金を焼結法によって作製した例である。
【0106】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)、金(Au)およびイリジウム(Ir)の金属粉末を、原子組成比がFe:Co:Au:Ir=0.75:0.25:0.02:0.04になるように混合し、乳鉢を使用して均等に混ぜ、混合粉末を調製した。
【0107】
次に、真空引きした後にアルゴンガスを導入した焼結装置の内部において、調製した混合粉末を100メガパスカルの圧力でプレス成型し、その後600℃で焼結することによって焼結体を形成させた。
【0108】
その後、その焼結体を所望の大きさにダイシングすることによって、所望の大きさのFeCoAuIr系合金を作製した。
【0109】
例えば、混合粉末を調整する際に、Fe、Co、AuおよびIr以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoAuIr系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0110】
(実施例12)
実施例12は、第4の実施形態に関する。実施例12は、薄膜型のFeCoAuIr系合金をスパッタ法によって作製した例である。
【0111】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)、金(Au)およびイリジウム(Ir)のスパッタターゲットを用意した。そして、アルゴンガス雰囲気下において、Fe、Co、AuおよびIrをコスパッタし、シリコン基板上にFeCoAuIr系合金を成膜した。このとき、原子組成比がFe:Co:Au:Ir=0.75:0.25:0.02:0.04となるようにスパッタ電力を調整した。
【0112】
その後、FeCoAuIr系合金が成膜されたシリコン基板を、真空中にて600℃でアニールを施すことによってFeCoAuIr系合金の薄膜を作製した。
【0113】
例えば、Fe、Co、AuおよびIrをコスパッタする際に、Fe、Co、AuおよびIr以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoAuIr系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0114】
(実施例13)
実施例13は、第4の実施形態に関する。実施例13は、バルク型のFeCoPtAuIr系合金を焼結法によって作製した例である。
【0115】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)、白金(Pt)、金(Au)およびイリジウム(Ir)の金属粉末を、原子組成比がFe:Co:Pt:Au:Ir=0.75:0.25:0.02:0.02:0.04になるように混合した。そして、混合した金属粉末を、乳鉢を使用して均等に混ぜ、混合粉末を調製した。
【0116】
次に、真空引きした後にアルゴンガスを導入した焼結装置の内部において、調製した混合粉末を100メガパスカルの圧力でプレス成型し、その後600℃で焼結することによって焼結体を形成させた。
【0117】
その後、その焼結体を所望の大きさにダイシングすることによって、所望の大きさのFeCoPtAuIr系合金を作製した。
【0118】
例えば、混合粉末を調整する際に、Fe、Co、Pt、AuおよびIr以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoPtAuIr系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。
【0119】
(実施例14)
実施例14は、第4の実施形態に関する。実施例14は、薄膜型のFeCoPtAuIr系合金をスパッタ法によって作製した例である。
【0120】
まず、鉄(Fe)、コバルト(Co)、白金(Pt)、金(Au)およびイリジウム(Ir)のスパッタターゲットを用意した。そして、アルゴンガス雰囲気下において、Fe、Co、Pt、AuおよびIrをコスパッタし、シリコン基板上にFeCoAuIr系合金を成膜した。このとき、原子組成比がFe:Co:Pt:Au:Ir=0.75:0.25:0.02:0.02:0.04となるようにスパッタ電力を調整した。
【0121】
その後、FeCoPtAuIr系合金が成膜されたシリコン基板を、真空中にて600℃でアニールを施すことによってFeCoPtAuIr系合金の薄膜を作製した。
【0122】
例えば、Fe、Co、Pt、AuおよびIrをコスパッタする際に、Fe、Co、Pt、AuおよびIr以外の不純物元素を少量添加すれば、FeCoPtAuIr系合金の保磁力を変化させたり、強度(素子の安定性)を向上させたりすることができる。」
(2)当初明細書等の記載についての検討(新規事項の有無)
ア 白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち一種類の元素が添加された磁性合金材料について(磁性合金材料が3元系材料である場合について)
(ア)請求項1について
a 当初明細書等において、第1の実施の形態~第3の実施の形態に関連して、上記(1)ア~ウ、オには、以下の事項が記載されている。
(a)第1の実施の形態に係る磁性合金材料は、FeCo系合金に0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金(Pt)が添加されたFeCoPt系合金(Fe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtx)であること(上記(1)ア)。
(b)第2の実施の形態に係る磁性合金材料は、FeCo系合金に0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金(Au)が添加されたFeCoAu系合金(Fe0.75-0.5yCo0.25-0.5yAuy)であること(上記(1)イ)。
(c)第3の実施の形態に係る磁性合金材料は、FeCo系合金に0.1原子パーセント以上5.8原子パーセント以下のイリジウム(Ir)が添加されたFeCoIr系合金(Fe0.75-0.5zCo0.25-0.5zIrz)であること(上記(1)ウ)。
(d)実施例1、実施例2は、第1の実施の形態に関するものであり、FeCoPt系合金を、それぞれ焼結法、スパッタ法によって作製した例であり、FeCoPt系合金の原子組成比がFe:Co:Pt=0.746:0.246:0.008となるように、それぞれ混合粉末、スパッタ電力を調整したこと(上記(1)オ)。
(e)実施例3、実施例4は、第2の実施の形態に関するものであり、FeCoAu系合金を、それぞれ焼結法、スパッタ法によって作製した例であり、FeCoAu系合金の原子組成比がFe:Co:Au=0.746:0.246:0.008となるように、それぞれ混合粉末、スパッタ電力を調整したこと(上記(1)オ)。
(f)実施例5、実施例6は、第3の実施の形態に関するものであり、FeCoIr系合金を、それぞれ焼結法、スパッタ法によって作製した例であり、FeCoIr系合金の原子組成比がFe:Co:Ir=0.729:0.229:0.042となるように、それぞれ混合粉末、スパッタ電力を調整したこと(上記(1)オ)。
b 上記(a)、(d)から、当初明細書等には、第1の実施の形態及び実施例1並びに実施例2に係る磁性合金材料は、鉄-コバルト系合金に、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金(Pt)が添加されたFeCoPt系合金(Fe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtx)であって、実施例1及び実施例2では、具体的にPtの原子組成比x=0.008である旨が開示されているといえる。
すなわち、当初明細書等の当該開示箇所(【0024】を参照。)には、「Fe0.75Co0.25(x=0)にPtが少量添加されたFe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtx」と記載されており、鉄とコバルトの原子比率が0.75-0.5x:0.25-0.5x(x=0)に調整された鉄-コバルト系合金に、原子組成比x=0.008となるようにPtが添加された磁性合金材料が具体例として開示されているものの、この場合、「磁性合金材料」の鉄とコバルトの原子比率は、0.746:0.246=0.75:0.247であり、0.75:0.25にはならない。
したがって、当初明細書等には、「鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に」、「白金」が「添加され」、「0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金を含」む磁性合金材料が開示されているとはいえない。
また、上記(b)、(e)から、当初明細書等には、第2の実施の形態及び実施例3並びに実施例4に係る磁性合金材料は、鉄-コバルト系合金に、0.1原子パーセント以上4,4原子パーセント以下の金(Au)が添加されたFeCoIr系合金(Fe0.75-0.5yCo0.25-0.5yAuy)であって、実施例3及び実施例4では、具体的にAuの原子組成比y=0.008である旨が開示されているといえる。
すなわち、当初明細書等の当該開示箇所には、鉄とコバルトの原子比率が0.75-0.5y:0.25-0.5y(y=0)に調整された鉄-コバルト系合金に、原子組成比y=0.008となるようにAuが添加された磁性合金材料が具体例として開示されているものの、この場合、「磁性合金材料」の鉄とコバルトの原子比率は、0.746:0.246=0.75:0.247であり、0.75:0.25にはならない。
したがって、当初明細書等には、「鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に」、「金」が「添加され」、「0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含」む磁性合金材料が開示されているとはいえない。
また、上記(c)、(f)から、当初明細書等には、第3の実施の形態及び実施例5並びに実施例6に係る磁性合金材料は、鉄-コバルト系合金に、0.1原子パーセント以上5.8原子パーセント以下のイリジウム(Ir)が添加されたFeCoIr系合金(Fe0.75-0.5zCo0.25-0.5zIrz)であって、実施例5及び実施例6では、具体的にIrの原子組成比z=0.042である旨が開示されているといえる。
すなわち、当初明細書等の当該開示箇所には、鉄とコバルトの原子比率が0.75-0.5z:0.25-0.5z(z=0)に調整された鉄-コバルト系合金に、原子組成比z=0.042となるようにIrが添加された磁性合金材料が具体例として開示されているものの、この場合、「磁性合金材料」の鉄とコバルトの原子比率は、0.729:0.229=0.75:0.236であり、0.75:0.25にはならない。
したがって、当初明細書等には、「鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に」、「イリジウム」が「添加され」、「0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含」む磁性合金材料が開示されているとはいえない。
なお、当初明細書等の【0024】には、「図2のように、Fe0.75Co0.25(x=0)にPtが少量添加されたFe0.75-0.5xCo0.25-0.5xPtx」との記載があるが、図2を参照すれば、これは、「Fe0.75Co0.25(x=0)」を基準として、そのFe及びCoの一部を少量(x)のPtで置換したことを意味するのであって、「Fe0.75Co0.25」に調整された鉄-コバルト系合金に対して、Ptを添加することをいうものではない。また、【0032】の「図4のように、Fe0.75Co0.25(y=0)にAuが少量添加されたFe0.75-0.5yCo0.25-0.5yAuy」との記載、【0040】の「図6のように、Fe0.75Co0.25(z=0)にIrが少量添加されたFe0.75-0.5zCo0.25-0.5zIrz」との記載についても、同様である。
さらに、【0052】には、「例えば、第1~第4の実施形態に係る磁性合金材料は、鉄とコバルトとの原子組成比が75:25であることが好適である。」との記載があるが、第1の実施の形態~第3の実施の形態については、上記のとおりであるから、この記載をもって、当初明細書等に、鉄とコバルトとの原子組成比が75:25である鉄-コバルト系合金に対して、0.1~6原子%の白金、0.1~4.4原子%の金、又は、0.1~4.4原子%のイリジウムのいずれかを添加することが開示されているとすることはできない。
よって、当初明細書等の第1の実施の形態~第3の実施の形態及び実施例1~実施例6の開示箇所には、鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうちいずれか一種類の元素が添加された場合において、「添加された元素が白金の場合、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金を含み、添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み、添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含む」ものについて開示されているとはいえない。
c 一方、本件補正後の請求項1の記載において、「鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち少なくとも一種類の元素が添加され、添加された元素が白金の場合、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金を含み、添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み、添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含む」ものであるところ、上記bのとおり、磁性合金材料が3元系合金の場合であるとしても、本件補正により追加された「添加された元素が白金の場合、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金を含み、添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み、添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含む」ことは、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
イ 白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち二種類以上の元素が添加された磁性合金材料について(磁性合金材料が4元系以上の材料である場合について)
(ア)請求項1について
a 当初明細書等において、第4の実施の形態に関連して、上記(1)エ、オには、以下の事項が記載されている。
(a)第4の実施の形態に係る磁性合金材料40は、4元系材料のFeCoPtIr系合金、FeCoPtAu系合金、およびFeCoAuIr系合金のいずれか、または、5元系材料のFeCoAuPtIr系合金であり、具体例として、Fe0.75Co0.25Pt0.02Ir0.04、Fe0.75Co0.25Pt0.02Au0.02、Fe0.75Co0.25Au0.02Ir0.04、Fe0.75Co0.25Pt0.02Au0.02Ir0.04が示されていること(上記(1)エ)。
(b)実施例7及び実施例8はFeCoPtAu系合金を、実施例9及び実施例10はFeCoPtIr系合金を、実施例11及び実施例12はFeCoAuIr系合金を、実施例13及び実施例14はFeCoPtAuIr系合金を、それぞれの前者は焼結法によって、後者はスパッタ法によって作製した例であり、実施例7及び実施例8の4元系材料では、合金の原子組成比が、それぞれFe:Co:Pt:Au=0.75:0.25:0.02:0.04、Fe:Co:Pt:Au=0.75:0.25:0.02:0.02となるように、実施例9~実施例12の4元系材料では、合金の原子組成比が、Fe:Co:PtまたはAu:Ir=0.75:0.25:0.02:0.04となるように、それぞれの前者では混合粉末を、後者ではスパッタ電力を調整し、5元系材料の実施例13、実施例14では、合金の原子組成比が、Fe:Co:Pt:Au:Ir=0.75:0.25:0.02:0.02:0.04となるように、それぞれ混合粉末、スパッタ電力を調整したこと(上記(1)オ)。
b したがって、当初明細書等には、(a)第4の実施の形態の実施例8に係る磁性合金材料は、鉄-コバルト系合金に白金及び金が添加されたFeCoPtAu系合金(Fe0.75Co0.25Pt0.02Au0.02)であり、(b)第4の実施の形態の実施例9~実施例12に係る磁性合金材料は、鉄-コバルト系合金に白金又は金、及びイリジウムが添加されたFeCoPtIr系合金(Fe0.75Co0.25Pt0.02Ir0.04)またはFeCoAuIr系合金(Fe0.75Co0.25Au0.02Ir0.04)であり、(c)第4の実施形態の実施例13及び実施例14に係る磁性合金材料は、鉄-コバルト系合金に白金、金及びイリジウムが添加されたFeCoPtAuIr系合金(Fe0.75Co0.25Pt0.02Au0.02Ir0.04)である旨が開示されているといえる。この場合、「磁性合金材料」の鉄とコバルトの原子比率は、0.75:0.25である。
すなわち、当初明細書等の当該開示箇所には、鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト合金に、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち二種類または三種類の元素が添加され、添加された元素の原子組成比が特定の数値の磁性合金材料である、実施例7~実施例14は開示されているものの、鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち二種類以上の元素が添加され、添加された元素が白金の場合、「0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下」の白金を含み、添加された元素が金の場合、「0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下」の金を含み、添加された元素がイリジウムの場合、「0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下」のイリジウムを含む、添加された元素の原子組成比が所定の数値範囲の磁性合金材料が開示されているとはいえない。
c 一方、本件補正後の請求項1の記載において、「鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち少なくとも一種類の元素が添加され、添加された元素が白金の場合、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金を含み、添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み、添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含む」ものであるところ、上記bのとおり、磁性合金材料が4元系以上の材料の場合は、本件補正により追加された「添加された元素が白金の場合、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金を含み、添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み、添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含む」ことは、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(イ)請求項2~4について
a 請求項2について
当初明細書等の段落【0024】、【0061】、【0066】には、第1の実施の形態並びに実施例1及び実施例2に関連して、FeCoPt系合金において、0.8原子パーセントの白金が添加されているものが開示されている。
しかしながら、当初明細書等には、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち二種類以上の元素が添加された磁性合金材料について、0.8原子パーセントの白金が添加されているものは、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
b 請求項3について
当初明細書等の段落【0032】、【0070】、【0075】には、第2の実施の形態並びに実施例3及び実施例4に関連して、FeCoAu系合金において、0.8原子パーセントの金が添加されているものが開示されている。
しかしながら、当初明細書等には、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち二種類以上の元素が添加された磁性合金材料について、0.8原子パーセントの金が添加されているものは、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
c 請求項4について
当初明細書等の段落【0040】、【0079】、【0084】には、第83の実施の形態並びに実施例5及び実施例6に関連して、FeCoIr系合金において、4.2原子パーセントの金が添加されているものが開示されている。
しかしながら、当初明細書等には、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち二種類以上の元素が添加された磁性合金材料について、4.2原子パーセントの金が添加されているものは、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
d 請求項2~4についてのまとめ
よって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(ウ)請求項5~9について
上記(ア)bで検討したように、当初明細書等の当該開示箇所(上記(1)エ、オ)には、鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち二種類または三種類の元素が添加され、添加された元素の原子組成比が特定の数値の磁性合金材料である、実施例7~実施例14は開示されているものの、鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、請求項5に記載の「少なくとも二種類の元素のそれぞれが0.1原子パーセント以上添加されていること」、請求項6に記載の「0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金とが添加されていること」、請求項7に記載の「0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていること」、請求項8に記載の「0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていること」、請求項9に記載の「0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下の白金と、0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されていること」は記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
ウ 当初明細書等の記載についての検討(新規事項の有無)のまとめ
以上のとおり、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち一種類の元素が添加された磁性合金材料、白金、金およびイリジウムからなる群より選ばれる元素のうち二種類以上の元素が添加された磁性合金材料のいずれについても、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(3)独立特許要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「磁性合金材料」について、上記1(1)、(2)のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものの、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)についても、以下、検討する。
ア 本件補正後の請求項1~9に係る発明
本件補正後の請求項1~9に係る発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 請求項1の記載について
上記(2)ア(ア)b、c、(2)イ(ア)b、cのとおりであり、また、当初明細書等の記載は本願の出願後に補正されていないから、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
ウ 請求項2~4について
上記(2)イ(イ)のとおりであり、また、当初明細書等の記載は本願の出願後に補正されていないから、請求項2~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
エ 請求項5~9について
上記(2)イ(ウ)のとおりであり、また、当初明細書等の記載は本願の出願後に補正されていないから、請求項5~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
オ 請求項6~9について
(ア)請求項6には、「0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金」が「添加されている」と記載されている。
しかしながら、請求項6が間接的に引用する請求項1には、「添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み」と記載されており、請求項6の当該記載は、請求項1に記載の上限値を超えているので、明確でない。
(イ)請求項7には、「0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウム」が「添加されている」と記載されている。
しかしながら、請求項7が間接的に引用する請求項1には、「添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含む」と記載されており、請求項7の当該記載は、請求項1に記載の上限値を超えているので、明確でない。
(ウ)請求項8には、「0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金と、0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウムとが添加されている」と記載されている。
しかしながら、請求項8が間接的に引用する請求項1には、「添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み、添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含む」と記載されており、請求項8の当該記載は、金及びイリジウムのいずれにおいても請求項1に記載の上限値を超えているので、明確でない。
(エ)請求項9には、「0.1原子パーセント以上5原子パーセント以下の金」と、「0.1原子パーセント以上6原子パーセント以下のイリジウム」とが「添加されている」と記載されている。
しかしながら、請求項9が間接的に引用する請求項1には、「添加された元素が金の場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下の金を含み、添加された元素がイリジウムの場合、0.1原子パーセント以上4.4原子パーセント以下のイリジウムを含む」と記載されており、請求項9の当該記載は、金及びイリジウムのいずれにおいても請求項1に記載の上限値を超えているので、明確でない。
(オ)よって、請求項6~9に係る発明は、明確でない。
カ 独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、本件補正後の請求項6~9に係る発明は、明確ではなく、特許法第36条第6項第1号及び第2項に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。
3 補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであり、また、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年6月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された特表2004-524708号公報(以下「引用文献2」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。)、というものを含む。
3 引用文献2の記載事項、引用発明
(1)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、引用文献2(特表2004-524708号公報)には、次の記載がある。(下線は当審にて付加した。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子(以下、「MR素子」と略す)およびこれを用いた磁気デバイスに関するものである。本発明のMR素子は、特に、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ等の媒体から情報を読み出す磁気記録再生用ヘッド、自動車等に用いられる磁気センサー、磁気抵抗効果型メモリー装置(磁気ランダム・アクセス・メモリー;以下、「MRAM」と略す)等に適している。」
「【0010】
そこで、本発明では、磁性元素Mと非磁性元素Xとを含む強磁性材料M-Xを用いることとした。本発明のMR素子は、少なくとも2つの磁性層と、上記2つの磁性層の間に配置された少なくとも1つの非磁性層とを含む多層膜を含んでいる。また、上記少なくとも2つの磁性層における磁化方向の相対角度に応じて抵抗値が変化する。また、上記磁性層の少なくとも1つが、式M100-aXa、具体的には式M100-a(X1bX2cX3d)aにより示される強磁性材料M-Xを含んでいる。
【0011】
ここで、X1は、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、PtおよびAuから選ばれる少なくとも1種の元素であり、X2は、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Znおよびランタノイド(原子番号57~71までの元素)から選ばれる少なくとも1種の元素であり、X3は、Si、B、C、N、O、PおよびSから選ばれる少なくとも1種の元素である。
【0012】
また、a、b、cおよびdは、それぞれ、以下の式を満たす数値である。
【0013】
0.05≦a≦60、0≦b≦60、0≦c≦30、0≦d≦20、a=b+c+dなお、本明細書において組成を示すために用いる数値は、すべて原子%(at%)に基づく。
【0014】
本発明のMR素子からは、大きなMR比を得ることができる。これは、次のような理由が考えられる:非磁性元素Xの添加によって磁性原子の磁気モーメントの大きさが変化し、その結果、スピン分極率が増大する、など。この効果をさらに顕著とするためには、aは、0.05~50の範囲が好ましく、1~40の範囲がさらに好ましい。」
「【0018】
非磁性元素X1は、外殻電子数(d電子数)がFe以上である白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)とd電子が10個入っているCu、Ag、Auである。特に、白金族元素は、磁性元素Mに添加すると顕著な磁性を示す性質があり、他の元素を用いた場合と比べてスピン分極率が大きくなる。このため、高いMR比を得る上で有利である。また、白金族元素は、原子直径が大きく化学的にも安定であるため、MR素子の接合構造のデバイスプロセス安定性、つまり高い耐熱性を実現する上でも有用である。」
「【0045】
図1は本発明のMR素子の一例を示す断面図である。この素子では、非磁性層2を介して積層された2つの磁性層1、3が異なる磁化反転磁界(保磁力)を有する。保磁力が相対的に大きい磁性層1が固定磁性層、保磁力が相対的に大きい磁性層3が自由磁性層である。この素子では、磁性層1、3の少なくとも一部が上記強磁性材料M-Xであればよい。この素子からは、Fe、Co、Niまたはこれらの合金からなる磁性層を用いた従来のMR素子よりも、大きいMR比と改善された耐熱性とを得ることができる。
・・・
【0045】
図1は本発明のMR素子の一例を示す断面図である。この素子では、非磁性層2を介して積層された2つの磁性層1、3が異なる磁化反転磁界(保磁力)を有する。保磁力が相対的に大きい磁性層1が固定磁性層、保磁力が相対的に大きい磁性層3が自由磁性層である。この素子では、磁性層1、3の少なくとも一部が上記強磁性材料M-Xであればよい。
・・・
【0052】
非磁性層2には、素子に応じて導電性または絶縁性の材料を用いるとよい。GMR素子の非磁性層に用いる導電性材料としては、Cu、Au、Ag、Ru、Crおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。TMR素子の非磁性層(トンネル絶縁層)に用いる絶縁性材料としては、絶縁体または半導体であれば特に制限はない。Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crを含むIIa族~VIa族、La、Ceを含むランタノイド、Zn、B、Al、Ga、Siを含むIIb族~IVb族から選ばれる少なくとも1種の元素と、F、O、C、N、Bから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物が好適である。特に、Alの酸化物、窒化物または酸窒化物は、他の材料に比べて絶縁特性に優れ、薄膜化が可能であり再現性にも優れている。
【0053】
磁性層の磁化反転磁界を増大するために、磁性層に、反強磁性層をさらに積層してもよい。図2に示した素子では、反強磁性層8が固定磁性層1に接して設けられている。・・・
【0055】
図3に示したように、固定磁性層1を多層膜として、非磁性層2側から順に、第1磁性膜11および第2磁性膜12を配置してもよい。この素子では、第2磁性膜12と反強磁性層8との間の交換バイアス磁界と、第2磁性膜12と第1磁性膜11との間の強磁性的結合とにより、固定磁性層1全体に一方向異方性が付与される。第1磁性膜11が強磁性材料M-Xを含む場合、第2磁性膜12は、特に限定されず、例えば、Fe-Co-Ni合金を用いることができる。
【0056】
図4に示したように、固定磁性層1を、非磁性層2側から見て、第1磁性膜11、第2磁性膜13、非磁性膜14、第3磁性膜15をこの順に積層した多層膜としてもよい。非磁性膜14の膜厚を適当な膜厚とすると、磁性膜13、15の間には反強磁性的な交換結合が発生する。第2、第3磁性膜13、15として、CoFe等の飽和磁化の大きな硬質磁性材料を用いることにより、固定磁性層1の磁化反転磁界は大きくなる。このように磁性膜が非磁性膜を介して反強磁性交換結合している多層膜は、積層フェリと呼ばれる。積層フェリにおける非磁性膜14は、Cr、Cu、Ag、Au、Ru、Ir、Re、Osならびにこれらの合金および酸化物から選ばれる少なくとも1種が好適である。また、非磁性膜14の膜厚は0.2~1.2nmが好ましい。
・・・
【0059】
図5に示した積層フェリ固定層を用いたスピンバルブ型素子では、図4に示した固定磁性層1に反強磁性層8が積層されている。この素子では、反強磁性層を単独で含む素子よりも高バイアス磁界化できる。」
「【実施例】
【0078】
熱酸化膜付Si基板(3インチφ)上に多元マグネトロンスパッタリング法を用いて、各実施例の欄に記載の構成の素子を作製し、MR特性を調べた。
【0079】
(実施例1)
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt-Mn(20)/Co-Fe(1)/強磁性材料M-X(2)/Al-O(1.0)/Co-Fe(3)/Ta(15)
ここで、カッコ内の数値は膜厚を示す(単位:nm、以下、同様にして膜厚を表示する)。Al-Oの膜厚の値は、酸化処理前のAlの設計膜厚値(合計値)を示している(Al-N、Al-N-Oにおける窒化、酸窒化処理を含め、以下において同様)。Al-Oは、Alを0.3~0.7nmの膜厚で成膜した後、酸素含有雰囲気中(200Torr(約0.267MPa)、1min)において酸化を繰り返して作製した。
【0080】
基板上のTa(3)/Cu(50)は下部電極であり、Pt-Mnに隣接するTa(3)は下地層である。Ta(15)はMR膜の保護層であり、Ta(15)の一部は上部電極ともなる。Pt-Mnは反強磁性層に相当する。各膜を、図10に示したようにメサ型に微細加工し、さらに上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、280℃、5kOe磁場中で3時間熱処理し、PtMnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は1.5μm×2.5μmとした。
【0081】
このMR素子は、図3に準ずる構成を有するスピンバルブ型TMR素子であり、固定磁性層1の一部に強磁性材料M-Xが用いられている。・・・」
「【0117】
(実施例10)
熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt-Mn(20)/Co-Fe(3)/Ru(0.7)/Co-Fe(2)/強磁性材料M-X(a)(1)/Al-O(0.7)/強磁性材料M-X(b)(1)/Ni-Fe(6)/Ta(25)
Al-Oは、Alを0.7nmの膜厚で成膜した後、ICP酸化法を適用して作製した。それぞれの膜は、実施例1と同様にメサ型に加工し、上部電極としてCu(50)/Ta(3)を形成した。引き続き、素子を280℃、10kOeの磁場中で3時間熱処理してPt-Mnに一方向異方性を付与した。サンプルの素子面積は2.5μm×3.5μmとした。
【0118】
このMR素子は、図5に準じた構成を有する積層フェリ固定層スピンバルブ型TMR素子であり、固定磁性層1の一部に強磁性材料M-X(a)が、自由磁性層3の一部に強磁性材料M-X(b)が用いられている。自由磁性層はNi-Fe軟磁性層を含んでいる。この素子のMR比を、実施例1と同様にして調べた。表10に結果を示す。
【0119】
【表10】
[図:0001405594000001.jpg]
表10に示したように、非磁性層を介して対向する磁性層に含まれるMやXが異なっていても、強磁性材料M-Xを用いると大きなMR比を得ることができた。」
図3~図5は、以下のとおりのものである。
【図3】
[図:0001405594000002.jpg]
【図4】
[図:0001405594000003.jpg]
【図5】
[図:0001405594000004.jpg]
(2)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されている。
ア 図3に示された構成を有するMR素子では、非磁性層2を介して2つの磁性層1、3が積層されており、磁性層1が固定磁性層、磁性層3が自由磁性層であり、固定磁性層1を多層膜として、非磁性層2側から順に、第1磁性膜11および第2磁性膜12が配置されており、第1磁性膜11は強磁性材料M-Xを含むこと(【0045】、【0055】)。
イ 図4に示された磁気抵抗素子において、固定磁性層1は、非磁性層2側から見て、第1磁性膜11、第2磁性膜13、非磁性膜14、第3磁性膜15をこの順に積層した多層膜であること(【0056】)
ウ 図5に示した積層フェリ固定層を用いたスピンバルブ型素子では、図4に示した固定磁性層1に反強磁性層8が積層されていること(【0059】)。
エ(ア)実施例10は、熱酸化膜付Si基板/Ta(3)/Cu(50)/Ta(3)/Pt-Mn(20)/Co-Fe(3)/Ru(0.7)/Co-Fe(2)/強磁性材料M-X(a)(1)/Al-O(0.7)/強磁性材料M-X(b)(1)/Ni-Fe(6)/Ta(25)の構成で、カッコ内の数値は膜厚(単位:nm)を示し、図5に準じた構成を示すMR素子であり、固定磁性層1の一部に強磁性材料M-X(a)が用いられ、強磁性材料M-X(b)(1)及びNi-Fe(6)は自由磁性層3であること(【0079】、【0117】、【0118】)。
(イ)実施例10において、基板上のTa(3)/Cu(50)は下部電極で、Pt-Mnに隣接するTa(3)は下地層で、Ta(25)はMR膜の保護層で、Ta(25)の一部は上部電極ともなり、Pt-Mnは反強磁性層に相当すること(【0079】、【0080】。【0117】)。
(ウ)実施例10のAl-Oは非磁性層2であること(【0052】、【0056】。【0117】)。
(エ)実施例10のCo-Fe(3)は第3磁性膜15、Ru(0.7)は非磁性膜14、Co-Fe(2)は第2磁性膜13、強磁性材料M-X(a)(1)は第1磁性膜11であり、これらが積層された多層膜は固定磁性層1に対応すること(【0056】、【0117】、【0118】)
(オ)上記(ア)~(エ)から、図5には、実施例10のMR素子が有する、反強磁性層8(Pt-Mn)/第3磁性膜15(Co-Fe)/非磁性膜14(Ru)/第2磁性膜13(Co-Fe)/第1磁性膜11(強磁性材料M-X(a))/非磁性層2(Al-O)/自由磁性層3(強磁性材料M-X(b))/Ni-Fe(6))の構成が示されているといえる。
オ 【表10】において、Sample No.j07のサンプルで用いた「強磁性材料 M-X(a)」は、[Fe0.75Co0.25]85Pt15であること(【0119】)。
(3)上記(2)ア~オ及び図5から、引用文献2には、実施例10で作製されたMR素子が有する構成において、固定磁性層1に含まれる第1磁性膜1について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「MR素子を構成する固定磁性層1に含まれる第1磁性膜11の強磁性材料M-X(a)であって、
[Fe0.75Co0.25]85Pt15である、強磁性材料M-X(a)。」
4 対比・判断(理由1.(新規性)について)
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「強磁性材料M-X(a)」は、「[Fe0.75Co0.25]85Pt15である」ところ、「[Fe0.75Co0.25]85Pt15」が合金材料であることは明らかであるから、本願発明の「磁性合金材料」に相当する。
(2)引用発明の「[Fe0.75Co0.25]85Pt15」において、鉄(Fe)とコバルト(Co)の原子比率は、0.75:0.25であり、「[Fe0.75Co0.25]85Pt15」は、かかる鉄とコバルトの合金に白金(Pt)が添加されたものであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金が添加された」ものである点で一致する。
(3)したがって、本願発明と引用発明とは、「鉄とコバルトの原子比率が0.75:0.25に調整された鉄-コバルト系合金に、白金が添加された磁性合金材料。」の点で一致し、両者において相違点はない。
よって、本願発明は、引用発明である。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-000794