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特許拒絶査定不服審判

2023-009056

インダクタ及びその製造方法

審判番号
2023-009056
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-144789
請求日
2023年06月02日
審決日
2024年05月29日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社トーキン
  • 【請求人代理人】池田 憲保
  • 【請求人代理人】佐々木 敬
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 ▲高▼橋 徳浩
  • 審判官 渡辺 努
分類
P18 .113-Z (H01F) / P18 .537-Z (H01F) / P18 .575-Z (H01F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-144789「インダクタ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月 6日出願公開、特開2020- 21834〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年8月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 2月18日付け:拒絶理由通知 令和4年 4月28日 :手続補正書、意見書の提出 令和4年 8月31日付け:最後の拒絶理由通知 令和4年11月 4日 :手続補正書、意見書の提出 令和5年 3月 3日付け:令和4年11月4日の手続補正についての補 正の却下の決定 令和5年 3月 3日付け:拒絶査定(原査定) 令和5年 6月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年6月2日の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和5年6月2日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び請求項1を間接的に引用する請求項7の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である)。 「【請求項1】 軟磁性粉末が結合剤中に分散した板状の磁性体であって、第1主面と、第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する複数の貫通孔とを含むコアと、 前記複数の貫通孔にそれぞれ貫通して配置され、かつ前記コアの厚さと実質的に同じ長さを有する複数の導体ピンと、複数の第1導体部と、前記第2主面に沿って配置される部分を含む第2導体部とが一連の導電路を形成するように接合されたコイルと、を含み、 前記複数の第1導体部のそれぞれは、前記第1主面に沿って配置される複数の板状部のそれぞれを含み、 前記複数の第1導体部間の短絡を防ぐために、前記コアとは別部材として前記複数の板状部の近接した端部の間に介在し、かつ前記第1主面に接触する先端部を持つ仕切部を含む絶縁部を更に備える ことを特徴とするインダクタ。」 「【請求項7】 前記仕切部の前記先端部は、前記複数の板状部の各々の前記外面と前記内面との間に位置する ことを特徴とする請求項4又は5に記載のインダクタ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和4年4月28日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1及び請求項1を間接的に引用する請求項7の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 軟磁性粉末が結合剤中に分散した板状の磁性体であって、第1主面と、第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する複数の貫通孔とを含むコアと、 前記複数の貫通孔にそれぞれ貫通して配置され、かつ前記コアの厚さと実質的に同じ長さを有する複数の導体ピンと、複数の第1導体部と、前記第2主面に沿って配置される部分を含む第2導体部とが一連の導電路を形成するように接合されたコイルと、を含み、 前記複数の第1導体部のそれぞれは、前記第1主面に沿って配置される複数の板状部のそれぞれを含み、 前記複数の第1導体部間の短絡を防ぐために、前記コアとは別部材として前記複数の板状部の近接した端部の間に介在する仕切部を含む絶縁部を更に備える ことを特徴とするインダクタ。」 「【請求項7】 前記仕切部の先端部は、前記複数の板状部の各々の前記外面と前記内面との間に位置する ことを特徴とする請求項4又は5に記載のインダクタ。」 2.補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1、7に記載された発明を特定するために必要な事項である「仕切部」について、「前記第1主面に接触する先端部を持つ」ことの限定を付加する補正を含むものである。 そして、補正前の請求項1、7に記載された発明と補正後の請求項1、7に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 よって、上記補正を含む本件補正は、少なくとも特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1、7に記載された発明(以下、それぞれ「本願補正発明1」及び「本願補正発明7」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。 (1)特許法第29条第1項第3号(新規性)について ア.本願補正発明1 本願補正発明1は、上記「1.(1)」の【請求項1】に記載したとおりのものである。 イ.引用例の記載事項 (ア)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された国際公開第2018/079062号(以下、「引用例」という。)には、「コイル部品1」について、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 a.「[0039] 本実施の形態に係るコイル部品1は、図1~図3に示すように、直方体形状の素体2と、素体2の表面2aを覆うように設けられた被覆部材の一例である被覆用素体3と、素体2の裏面2bを覆うように設けられた被覆部材の一例である被覆用素体4とを備えている。被覆用素体3の表面3aには、端子電極となる一対の電極部5が露出するように設けられている。なお、本実施の形態において、表面2aは素体2の第1の面であり、裏面2bは素体2の第2の面である。 [0040] 素体2及び被覆用素体3,4は、磁性体粒子を含む成形体である。素体2は、磁性体粒子を80体積%以上、好ましくは95体積%以上含む。素体2及び被覆用素体3,4は、磁性体粒子がバインダ中に分散している複合磁性体、特に、磁性金属粉末がバインダ(樹脂)中に分散しているメタルコンポジット材が好ましく、例えば、鉄系の磁性金属粉末を熱硬化性のバインダ樹脂(例えば、エポキシ樹脂)で圧粉成形した構造を有する。鉄系の磁性金属粉末の磁性体粒子は、例えば、鉄に添加物としてマンガン又はクロムを加えたものであってよい。また、素体2は、バインダ樹脂を含まず、磁性体粒子の表面に絶縁体として酸化膜を形成し、当該酸化膜を構成する結晶同士が繋がるように成形された成形体であってもよい。この場合、磁性体粒子間の酸化膜が互いにつながっていてもよい。さらに酸化膜の結晶が連続的につながっていてもよい。 [0041] なお、鉄系の磁性金属粉末にはMn、Cr等の添加物又は不純物を含んでいてもよい。バインダは、例えばエポキシ樹脂である。なお、磁性体粒子として、鉄系の磁性金属粉末に限定するものではない。磁性体粒子としてフェライト粉末等を用いてもよい。なお、磁性体粒子として鉄系の磁性金属粉末を用いた場合、比透磁率が高く、飽和しにくいのでパワーインダクタ用のコイル部品として有用である。」 b.「[0044] 被覆用素体3,4は、例えば、素体2に対して上記の複合磁性体等を印刷することによって設けることができる。なお、印刷に限られず、他の方法によって設けてもよい。被覆用素体3,4が印刷により形成される場合、素体2の比透磁率は、被覆用素体3,4の比透磁率よりも高くなる。 [0045] 図2及び図3に示すように、素体2の内部には、複数の金属ピン6が埋設されている。各金属ピン6は、素体2を高さ方向Zに貫通するように設けられている。各金属ピン6の一端部6aは、素体2の表面2aで露出し、導電性接合材7aを介して導体である金属板8aに電気的に接続されている。各金属板8aは、一の金属ピン6の一端部6aと他の一の金属ピン6の一端部6aとを電気的に接続するように素体2の表面2aに配置されている。各金属板8aと素体2の表面2aとの間には、隙間CL1が設けられている。各金属ピン6の他端部6bは、素体2の裏面2bで露出し、導電性接合材7bを介して導体である金属板8bに電気的に接続されている。各金属板8bは、一の金属ピン6の他端部6bと他の一の金属ピン6の他端部6bとを電気的に接続するように素体2の裏面2bに配置されている。各金属板8bと素体2の裏面2bとの間には、隙間CL2が設けられている。導電性接合材7a,7bは、例えば、錫・銀系の半田である。 [0046] 隙間CL1,CL2の平均寸法は、例えば1μm以上10μm以下である。なお、金属板8a,8bと素体2の表面2aとが部分的に接してもよい。即ち、隙間CL1,CL2の寸法は、実質的に0μmである部分があってもよいし、10μmより大きい部分があってもよい。また、隙間CL1,CL2は、磁気飽和を抑えることができればよく、空気層であることに限定されない。例えば、隙間CL1,CL2には、樹脂などの絶縁部材が充填されてもよい。 [0047] 金属ピン6は、例えば、金属塊(バルク)をピン状に加工して構成されている。金属ピン6の直径は、例えば100μm以上200μm以下である。また、金属板8a,8bは、例えば、金属塊(バルク)を板状に加工して構成されている。金属板8a,8bは、蒸着やエッチングによって形成されるものではなく、実質的に樹脂を含んでいない金属部材である。また、金属板8a,8bは、実質的に樹脂を含んでいない金属部材である。金属板8a,8bの厚さは、例えば50μm以上200μm以下である。このように構成することにより、金属ピン6及び金属板8a,8bの直流抵抗を小さくして、損失の少ないパワーインダクタのようなコイル部品を実現することができる。」 c.「[0050] 複数の金属ピン6は、図4及び図5に示すように、横方向Xに2列配置されている。複数の金属板8aは、図4に示すように、横方向X及び縦方向(短手方向)Yに対して斜めに延在するように配置されている。横方向Xに配列された金属ピン6の配置間隔は、例えば100μmである。複数の金属板8bは、図5に示すように、縦方向Yに延在するように配置されている。これにより、複数の金属ピン6と複数の金属板8a,8bとで螺旋状のコイル導体が構成されている。 [0051] 本実施の形態1に係るコイル部品1によれば、素体2内に複数の金属ピン6を埋設し、当該複数の金属ピン6の両端部を金属板8a,8bで電気的に接続してコイル導体を構成するようにしているので、例えば、金属板8a,8bの代わりに導電性ペーストの焼結体である導体を用いた場合と比較して、直流抵抗を小さくして、損失の少ないコイル部品を実現することができる。また、金属板(フープ材)自体が弾性を持つ薄板状であるため、コイル部品の耐衝撃性も改善する。また、金属板8aと素体2の表面2aとの間に隙間CL1を設けるとともに、金属板8bと素体2の裏面2bとの間に隙間CL2を設けているので、磁気飽和を抑えることができる。その結果、コイル部品1の性能を一層向上させることができる。」 d.[図3] 「 [図:0001412962000001.jpg] 」 (イ)上記記載から、引用例には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a.上記引用例に記載の「コイル部品1」は、上記「(ア)a.」の段落[0039]、「(ア)c.」の段落[0050]の記載によれば、直方体形状の素体2と、被覆用素体3と、被覆用素体4と、複数の金属ピン6と、複数の金属板8aと、複数の金属板8bと、を備えるコイル部品1である。 b.上記「(ア)a.」の段落[0040]の記載によれば、直方体形状の素体2は、鉄系の磁性金属粉末の磁性体粒子がバインダ中に分散している複合磁性体である。 c.上記「(ア)a.」の段落[0039]の記載によれば、直方体形状の素体2は、第1の面である表面2aと、第2の面である裏面2bと、を備えている。 d.上記「(ア)a.」の段落[0040]、「(ア)b.」の段落[0044]の記載によれば、被覆用素体3は、磁性体粒子がバインダ(樹脂)中に分散している複合磁性体であり、素体2に対して複合磁性体を印刷することによって設けられる。 e.上記「(ア)b.」の段落[0045]の記載によれば、複数の金属ピン6は、素体2を高さ方向Zに貫通するように設けられ、一端部6aは素体2の表面2aで露出し、他端部6bは素体2の裏面2bで露出している。 f.上記「(ア)b.」の段落[0045]、[0047]の記載によれば、金属板8aは、素体2の表面2aに配置され、金属塊を板状に加工して構成されており、金属板8aと素体2の表面2aとの間には隙間CL1が設けられている。 g.上記「(ア)b.」の段落[0045]の記載によれば、金属板8bは、素体2の裏面2bに配置されている。 h.上記「(ア)c.」の段落[0050]の記載によれば、複数の金属ピン6と、複数の金属板8aと、複数の金属板8bとで螺旋状のコイル導体が構成されている。 i.上記「(ア)b.」の段落[0046]によれば、隙間CL1には、樹脂などの絶縁部材が充填されていてもよいものである。 j.上記「(ア)d.」の[図3]から、被覆用素体3は、隣接する2つの金属板8a同士の間において、素体2の表面2aに向かって延出した部分を備えることが見てとれる。 (ウ)以上のことから、隙間CL1に樹脂からなる絶縁部材が充填されてなる場合に着目し、上記記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」)という。)が記載されている。 「直方体形状の素体2と、被覆用素体3と、被覆用素体4と、複数の金属ピン6と、複数の金属板8aと、複数の金属板8bと、を備えるコイル部品1であって、 直方体形状の素体2は、鉄系の磁性金属粉末の磁性体粒子がバインダ中に分散している複合磁性体であり、第1の面である表面2aと、第2の面である裏面2bと、を備え、 被覆用素体3は、磁性体粒子がバインダ(樹脂)中に分散している複合磁性体であり、素体2に対して複合磁性体を印刷することによって設けられ、 複数の金属ピン6は、素体2を高さ方向Zに貫通するように設けられ、一端部6aは素体2の表面2aで露出し、他端部6bは素体2の裏面2bで露出しており、 金属板8aは、素体2の表面2aに配置され、金属塊を板状に加工して構成されており、金属板8aと素体2の表面2aとの間には隙間CL1が設けられ、 金属板8bは、素体2の裏面2bに配置され、 複数の金属ピン6と、複数の金属板8aと、複数の金属板8bとで螺旋状のコイル導体が構成され、 隙間CL1には、樹脂からなる絶縁部材が充填されており、 被覆用素体3は、隣接する2つの金属板8a同士の間において、素体2の表面2aに向かって延出した部分を備える、コイル部品1。」 ウ.対比 本願補正発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明における「素体2」、「金属ピン6」、「金属板8a」、「金属板8b」は、本願補正発明1における「コア」、「導体ピン」、「第1導体部」、「第2導体部」に相当する。 そして、引用発明における「素体2」は「直方体形状」であり、本願補正発明1における「コア」が「板状」であることに相当する。また、鉄は、軟磁性を呈する金属であるから、引用発明における「鉄系の磁性金属粉末」、「バインダ」、「複合磁性体」は、それぞれ本願補正発明1における「軟磁性粉末」、「結合剤」、「磁性体」に相当する。更に、引用発明における「表面2a」、「裏面2b」は、本願補正発明1における「第1主面」、「第2主面」に相当する。 また、引用発明における「金属ピン6」は、「素体2を高さ方向Zに貫通するように設けられ」ており、「素体2」に着目すると、金属ピン6が素体2を高さ方向Zに貫通するために、素体2の金属ピン6が設けられている部分には、素体2の表面2aと裏面2bとの間を貫通する何らかの孔が存在していることになる。 したがって、本願補正発明1と引用発明とは、「軟磁性粉末が結合剤中に分散した板状の磁性体であって、第1主面と、第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する複数の貫通孔とを含むコア」を含むものである点で一致する。 (イ)一方、上記「(ア)」に記載したように、「金属ピン6」は、上記の何らかの孔に貫通して配置されていることになる。また、引用発明における「金属ピン6」は、「一端部6aは素体2の表面2aで露出し、他端部6bは素体2の裏面2bで露出する」ものであり、素体2の厚さと実質的に同じ長さを有するといえる(この点については、図2も参照)。 したがって、本願補正発明1と引用発明とは、「前記複数の貫通孔にそれぞれ貫通して配置され、かつ前記コアの厚さと実質的に同じ長さを有する複数の導体ピン」を含むものである点で一致する。 (ウ)引用発明における「コイル導体」は、本願補正発明1における「コイル」に相当し、引用発明における「複数の金属ピン6と、複数の金属板8aと、複数の金属板8bとで」「コイル導体が構成され」ることは、本願補正発明における「複数の導体ピンと、複数の第1導体部と、」「第2導体部とが」「接合されたコイル」を構成することに相当し、更に、引用発明における「コイル導体」が「螺旋状」であることは、本願補正発明1における「コイル」が「一連の導電路」を形成することに相当する。また、引用発明における「金属板8b」が「素体2の裏面2bに配置され」ることは、本願補正発明1における「第2導体部」が「前記第2主面に沿って配置される部分を含む」ことに相当する。 したがって、本願補正発明1と引用発明とは、「複数の導体ピンと、複数の第1導体部と、前記第2主面に沿って配置される部分を含む第2導体部とが一連の導電路を形成するように接合されたコイルと、を含」む点で一致する。 (エ)引用発明における複数の「金属板8a」は、「素体2の表面2aに配置され、金属塊を板状に加工して構成されて」おり、本願補正発明1における複数の「第1導体部」がそれぞれ、「前記第1主面に沿って配置される」複数の「板状部」「を含」むことに相当する。 したがって、本願補正発明1と引用発明とは、「前記複数の第1導体部のそれぞれは、前記第1主面に沿って配置される複数の板状部のそれぞれを含」む点で一致する。 (オ)引用発明における「被覆用素体3」は、「磁性体粒子がバインダ(樹脂)中に分散している複合磁性体であり、素体2に対して複合磁性体を印刷することによって設けられ」るものであり、引用発明において、素体2と被覆用素体3は互いに異なる部材として設けられており、かつ、被覆用素体3は絶縁性を有することは明らかである。また、引用発明における「被覆用素体3」は、「隣接する2つの金属板8a同士の間において、素体2の表面2aに向かって延出した部分を備える」ものであることから、引用発明において、被覆用素体3は隣接する2つの金属板8aの端部の間に介在する「延出した部分」を持つものであり、当該「延出した部分」は、2つの金属板8a同士を仕切っているといえる。 したがって、本願補正発明1と引用発明とは、「前記コアとは別部材として前記複数の板状部の近接した端部の間に介在し、かつ先端部を持つ仕切部を含む絶縁部を更に備える」点で一致する。 しかしながら、「仕切部」が、本願補正発明1では、「前記複数の第1導体部間の短絡を防ぐため」のものであることを特定するのに対して、引用発明では、「延出した部分」の具体的な機能が特定されていない点で一応相違する。また、「仕切部」が、本願補正発明1では、「前記第1主面に接触する先端部を持つ」ことを特定するのに対して、引用発明では、「延出した部分」についてそのような明確な特定がない点で一応相違する。 (カ)そして、引用発明における「コイル部品1」は、本願補正発明1における「インダクタ」に相当するものである。 よって、上記「(ア)」ないし「(カ)」によれば、本願補正発明1と引用発明とは、 「軟磁性粉末が結合剤中に分散した板状の磁性体であって、第1主面と、第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する複数の貫通孔とを含むコアと、 前記複数の貫通孔にそれぞれ貫通して配置され、かつ前記コアの厚さと実質的に同じ長さを有する複数の導体ピンと、複数の第1導体部と、前記第2主面に沿って配置される部分を含む第2導体部とが一連の導電路を形成するように接合されたコイルと、を含み、 前記複数の第1導体部のそれぞれは、前記第1主面に沿って配置される複数の板状部のそれぞれを含み、 前記コアとは別部材として前記複数の板状部の近接した端部の間に介在し、かつ先端部を持つ仕切部を含む絶縁部を更に備える ことを特徴とするインダクタ。」 である点で一致し、次の点で一応相違する。 [相違点1] 「仕切部」が、本願補正発明1では、「前記複数の第1導体部間の短絡を防ぐため」のものであることを特定するのに対して、引用発明では、「延出した部分」の具体的な機能が特定されていない点。 [相違点2] 「仕切部」が、本願補正発明1では、「前記第1主面に接触する先端部を持つ」ことを特定するのに対して、引用発明では、「延出した部分」についてそのような明確な特定がない点。 エ.判断 上記相違点1及び相違点2について検討する。 (ア)相違点1について 本願の明細書の段落【0048】、【0049】には、仕切部115の高さは、板状部111の厚さと概ね等しく、また、板状部111の厚さより高くてもよく、低くてもよいことが記載されており、本願の明細書の段落【0098】には、実施の形態1の効果1として、板状部111a、111bの近接した端部の間が仕切部115で仕切られているため、導電性の部材109a、109bの間の短絡を生じ難くすることが記載されており、更に、本願の明細書の段落【0211】~【0214】には、第1絶縁部は、第1導体部109a、109bの間に介在すればよく、第1絶縁部903の高さは、板状部111の厚さよりも低くてもよく、これによっても、実施の形態1で説明した効果1と同様の効果を奏することが記載されている。これらの記載に鑑みれば、本願補正発明1において、仕切部が複数の第1導体部間の短絡を防ぐという機能を実現するためには、仕切部が複数の第1導体部間の高さ方向において少なくとも部分的に形成されていれば事足りるというべきものである。そうすると、引用発明において、「延出した部分」が、「隣接する2つの金属板8a同士の間において」介在している以上、引用発明においても、絶縁性を有しているといえる当該「延出した部分」は、2つの金属板8a間の短絡を防ぐという機能を有するといえる。 したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 (イ)相違点2について 引用発明は、「金属板8aと素体2の表面2aとの間には隙間CL1が設けられ、」「隙間CL1には、樹脂からなる絶縁部材が充填されており、被覆用素体3は、隣接する2つの金属板8a同士の間において、素体2の表面2aに向かって延出した部分を備える」ものである。したがって、引用発明において、被覆用素体3における、素体2の表面2aに向かって「延出した部分」にあっては、隙間CL1に充填された樹脂、すなわちバインダからなる「絶縁部材」に連続して素体2の表面2aと多少なりとも接触する部分を有し、本願補正発明1でいう第1主面に接触する「先端部」に相当する部分を持つものであるといえる。 したがって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。 よって、本願補正発明1と引用発明とは相違するところがなく、本願補正発明1は、引用例に記載された発明である。 (2)特許法第36条第6項第2号(明確性)について 本願補正発明7は、上記「1.(1)」の【請求項7】に記載したとおりのものである。 本願補正発明7に関して、補正後の請求項7には、「前記仕切部の前記先端部は、前記複数の板状部の各々の前記外面と前記内面との間に位置する」と記載されている。ここで、本願の明細書の段落【0049】において、「なお、仕切部115の高さは、板状部111の厚さよりも高くてもよく、また低くてもよい。すなわち、仕切部115の先端部が板状部111の各々の内面113よりもコア101へ向けて突き出していてもよく、また板状部111の各々の内面113と外面114との間に位置してもよい。」と記載されていることに鑑みれば、本願補正発明7において、「前記先端部は」「前記外面と前記内面との間に位置する」ことは、本願の明細書において、仕切部の高さが板状部の厚さより低いことに対応するといえ、そうすると、本願補正発明7における、仕切部の先端部は、高さ方向において、板状部の内面よりも低いものであると解される。 一方、本願補正発明7に関して、補正後の請求項7が引用する請求項1には、「前記第1主面に接触する先端部を持つ仕切部を含む絶縁部を更に備える」と記載されている。そして、仕切部の先端部が第1主面に接触するためには、仕切部の先端部が、高さ方向において、少なくとも板状部の内面と一致するか、或いは、板状部の内面よりも高い必要があることは明らかであることから、本願補正発明7を特定するための上記の記載は、引用する請求項1の上記記載と齟齬するものである。 したがって、本願補正発明7は明確ではない。 3.本件補正についてのむすび 以上のとおり、本願補正発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。また、本願補正発明7は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 令和5年6月2日の手続補正は上記のとおり却下され、令和4年11月4日の手続補正についても令和5年3月3日付けで補正却下の決定がなされているので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年4月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 軟磁性粉末が結合剤中に分散した板状の磁性体であって、第1主面と、第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を貫通する複数の貫通孔とを含むコアと、 前記複数の貫通孔にそれぞれ貫通して配置され、かつ前記コアの厚さと実質的に同じ長さを有する複数の導体ピンと、複数の第1導体部と、前記第2主面に沿って配置される部分を含む第2導体部とが一連の導電路を形成するように接合されたコイルと、を含み、 前記複数の第1導体部のそれぞれは、前記第1主面に沿って配置される複数の板状部のそれぞれを含み、 前記複数の第1導体部間の短絡を防ぐために、前記コアとは別部材として前記複数の板状部の近接した端部の間に介在する仕切部を含む絶縁部を更に備える ことを特徴とするインダクタ。」 2.原査定の概要 本願の請求項1に対する原査定(令和5年3月3日付け拒絶査定)の拒絶の理由のうちの理由2(新規性)の概要は以下のとおりである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 記 引用文献1:国際公開第2018/079062号 3.引用例、引用発明 原査定の拒絶の理由で引用した引用例(引用文献1)の記載事項及び引用発明は、前記「第2 [理由]2.(1)イ.」に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、前記「第2 [理由]2.」で検討した本願補正発明1の発明特定事項である「仕切部」について、「前記第1主面に接触する先端部を持つ」ことの限定を省いたもの、すなわち、前記「第2 [理由]2.(1)ウ.」に記載した[相違点2]に係る構成を省いたものに相当する。 そして、本願補正発明1から[相違点2]に係る構成を省いた残りの発明特定事項については、[相違点1]を除いて、前記「第2 [理由]2.(1)ウ.」の「(ア)」ないし「(カ)」に記載したとおり、引用発明における「コイル部品1」においても備える事項である。また、[相違点1]についても、前記「第2 [理由]2.(1)エ.(ア)」に記載したとおり、実質的な相違点ではない。 したがって、本願発明は、引用例に記載された発明である。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-009056

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