特許拒絶査定不服審判
2023-000613
物標検出装置および物標検出方法
- 審判番号
- 2023-000613
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-156597
- 請求日
- 2023年01月13日
- 審決日
- 2023年11月30日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社デンソーテン
- 【請求人代理人】名古屋国際弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 佐藤 久則
- 分類
- P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-156597「物標検出装置および物標検出方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月27日出願公開、特開2020- 30140〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年8月23日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 6月21日付け:拒絶理由通知書
同年 8月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月18日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 1月13日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年8月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】
周波数変調された送信波と、物標による当該送信波の反射波とを混合して得られるビート信号に対して周波数解析を行うことで、物標の距離および相対速度に対応した周波数軸を有する2次元周波数スペクトルを生成する生成部と、
前記生成部によって生成された前記2次元周波数スペクトルから抽出されたピークに基づいて前記物標の距離および相対速度を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
前記相対速度に対応した周波数軸に対応させる所定の速度範囲を、当該所定の速度範囲の幅を維持した状態で、自車両の走行状態に応じて上限方向または下限方向へシフトするように構成された、
物標検出装置。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如)本願発明は、本願の出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2017-207368号公報
第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
前記引用文献1(特開2017-207368号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体において付したものであり、以下同様である。
ア 【0011】~【0015】、【図1】、【図2】
「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。
<構成>
まず、図1を参照して、レーダ装置1の構成について説明する。レーダ装置1は、発振器11と、増幅器12と、分配器14と、送信アンテナ16と、受信アンテナ部20と、受信スイッチ21と、増幅器22と、ミキサ23と、フィルタ24と、A/D変換器25と、を備え、車両に搭載されたミリ波レーダである。
【0012】
発振器11は、処理装置10からの指令に従って、周波数fc、波長λcのミリ波帯の高周波信号が、一定の幅のパルス状に変調され、且つ一定の繰り返し周期ΔTで繰り返される変調信号を生成する。各パルスはコヒーレントパルスであり、図2に示すように、各パルスを形成する高周波信号の周波数は、所定の帯域内で、一定の割合で直線的に減少するように変調されている。そのため、送信信号Ssと受信信号Srとの周波数の差分には、物標までの距離に応じた送信から受信までの時間による周波数の変化分と、ドップラーシフトによる周波数の変化分が含まれる。ただし、各パルスの幅は、周波数の減少傾きが十分に大きくなるような狭い幅になっており、物標までの距離に応じた周波数の変化分は、ドップラーシフトによる周波数の変化分に比べて十分に大きくなる。よって、単一パルス内でのドップラーシフトによる周波数の変化分は無視することができる。増幅器12は、発振器11が生成する変調信号を増幅する。分配器14は、増幅器12の出力を送信信号Ssとローカル信号Lとに電力分配する。送信アンテナ16は、送信信号Ssに応じたレーダ波を放射する。
【0013】
受信アンテナ部20は、n個の受信アンテナから構成されており、各アンテナのビーム幅はいずれも、送信アンテナ16のビーム幅全体を含むように設定されている。各アンテナはそれぞれCH1~CHnに割り当てられている。なお、nは自然数である。受信スイッチ21は、受信アンテナ部20を構成するアンテナのいずれかを順次選択し、選択したアンテナからの受信信号Srを後段に供給する。増幅器22は、受信スイッチ21から供給される受信信号Srを増幅する。
【0014】
ミキサ23は、増幅器22により増幅された受信信号Srと、送信信号Ssと同じ信号であるローカル信号Lとを混合して、中間周波数信号(以下、IF信号)を生成する。ここでは、IF信号は、受信信号Srとローカル信号Lとの周波数の差分を周波数とする低周波側のIF信号と、受信信号Srとローカル信号Lとの周波数の和を周波数とする高周波側のIF信号が生成される。フィルタ24は、ローパスフィルタであり、ミキサ23が生成したIF信号のうち高周波側のIF信号を除去して、低周波側のIF信号を出力する。本実施形態では、低周波側のIF信号が混合信号に相当する。A/D変換器25は、フィルタ24から出力されたIF信号をサンプリングしてデジタルデータDaに変換する。
【0015】
処理装置10は、周知のマイクロコンピュータを中心に構成されているとともに、さらに、デジタルデータDaについて、高速フーリエ変換(以下、FFT)処理等を実行するためのDSP等の演算処理装置を備えている。処理装置10は、CPUがROM等の非遷移的実体的記録媒体に格納されているプログラムを実行することにより、速度検出部、候補検出部、範囲設定部、及び選択部の機能を実現する。これらの機能の一部又は全部は、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよい。また、処理装置を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。処理装置10は、発振器11の起動及び停止や、A/D変換器25によるサンプリングを制御する。また、処理装置10は、車速センサ50の測定値から自車速度Vsを検出し、検出した自車速度Vsを用いて、デジタルデータDaから物標の相対速度Vrを検出するとともに、自車両から物標までの距離、物標の方位等の物標情報を検出する。本実施形態では、処理装置10が車速検出装置に相当する。」
「【図1】
[図:0001406473000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001406473000002.jpg]
」
イ 【0016】~【0025】、【図3】、【図4】
「【0016】
<相対速度の折り返し>
次に、相対速度Vrの折り返しについて説明する。ここでは、パルスi-2~i+2から、相対速度Vrを算出する場合について説明する。
【0017】
レーダ装置1から距離Reにある物標で反射された反射波を受信した場合、受信信号の位相θは、送信信号の位相θ0から、4πRe/λcの分だけ変化する。よって、位相の時間変化は、次の式(1)のように表される。
【0018】
【数1】
[図:0001406473000003.jpg]
【0019】
ここで、ドップラ周波数をfdとすると、dθ/dtはドップラ角周波数すなわち2πfdに等しい。また、dRe/dtは、ドップラ速度すなわち物標の相対速度Vdに等しい。よって、式(1)は、式(2)のように表される。
【0020】
【数2】
[図:0001406473000004.jpg]
【0021】
各パルスの位相は、図3に示すように、ドップラ効果により回転する。連続するパルス間の位相差すなわちΔTの期間における位相差をΔθとすると、Δθ=dθ/dt×ΔTとなる。よって、相対速度Vdは、式(3)のように表される。
【0022】
【数3】
[図:0001406473000005.jpg]
【0023】
ここで、測定可能なドップラ周波数fdの最大周波数fdmaxは、サンプリング定理により、サンプリングを行う周波数の半分、すなわちデータ間隔である周期ΔTの逆数の半分になるため、fdmax=1/2ΔTとなる。ドップラ周波数fdが最大周波数fdmaxとなるのは、位相差Δθの大きさが180°となるときである。ドップラ周波数fdが最大周波数fdmaxよりも大きくなると、すなわち位相差Δθの大きさが180°よりも大きくなると、相対速度Vdに折り返しが生じる。折り返しを生じない最大速度であるナイキスト速度Vnは、Vn=λd/4ΔTとなる。よって、真の相対速度Vrは、式(4)のように表される。mは、負の値を含む整数であり、いわゆるナイキスト数である。なお、以下では、測定された相対速度Vdを測定値Vdと称し、真の相対速度Vrを相対速度Vrと称する。
【0024】
【数4】
[図:0001406473000006.jpg]
【0025】
図4に示すように、周期ΔTが限りなく0に近い場合、折り返しが生じず、常に、相対速度Vr=測定値Vdとなる。しかしながら、レーダ装置1のようなパルスレーダでは、周期ΔTはある程度の幅、例えば数十μsの幅を持っているため、実際には、相対速度Vrが大きくなると折返しが生じる。よって、測定値Vdを相対速度Vrに補正する必要がある。このとき、ナイキスト数が一意に決まらないと相対速度Vrに曖昧さが生じる。そこで、相対速度Vrの観測範囲Rgを設定する。」
「【図3】
[図:0001406473000007.jpg]
」
「【図4】
[図:0001406473000008.jpg]
」
ウ 【0026】~【0030】、【図5】
「【0026】
<観測範囲の設定>
次に、観測範囲Rgの設定の仕方について説明する。図5に、設定した観測範囲Rgを示す。相対速度Vr=物標の速度-自車速度Vsとしており、物標の速度が自車速度Vsと同じ向きで自車速度Vsよりも大きい場合に、正の値となっている。通常、自車速度Vsに応じて、どのような相対速度Vrを持った物標を注意すべきかが決まるため、自車速度Vsに応じて、観測範囲Rgを限定する。詳しくは、次の(1)~(3)の条件を満たすように、観測範囲Rgを設定する。さらに、ナイキスト数を一意に決めるために、観測範囲Rgは、ナイキスト速度Vnの2倍となる幅よりも小さい範囲に設定する。
【0027】
条件(1):自車速度Vsが予め設定された速度閾値よりも小さい場合は、観測範囲Rgを予め設定された基準範囲よりも狭くする。速度閾値は、車両の徐行速度程度の値、例えば10km/hに設定されている。また、基準範囲は、ナイキスト速度Vnの2倍となる幅よりも小さい範囲で、基準となる自車速度Vs、例えば50km/hに対して設定される観測範囲Rgである。また、自車速度Vsが小さいほど、観測範囲Rgが狭くなるようにしてもよい。
【0028】
自車速度Vsが速度閾値よりも小さくなる走行環境は、駐車場や交差点等であり、このような走行環境において自車両の周囲に存在する物標は、相対速度Vrの大きさが小さい歩行者や徐行車両等である。そこで、自車速度Vsが速度閾値よりも小さい場合は、観測範囲Rgを基準範囲よりも狭くしても支障がない。観測範囲Rgを狭くすることで、ノイズによる誤検出が低減される。
【0029】
条件(2):自車速度Vsが大きいほど、観測範囲Rgの上限値を小さくする。自車速度Vsが大きいほど、自車両を追い越す他車両の相対速度Vrは小さくなる。例えば、50km/hの自車速度Vsの場合に、50km/hの相対速度Vrで自車両を追い抜く他車両は存在しても、150km/hの自車速度Vsの場合に、50km/hの相対速度Vrで追い抜く他車両は存在しないと考えられる。150km/hの自車速度Vsの場合は、20km/h程度の相対速度Vrまで観測できれば十分である。よって、自車速度Vsが大きいほど、観測範囲Rgの上限値を小さくしても支障がない。
【0030】
条件(3):自車速度Vsを負にした値に等しい相対速度Vrが入るようにする。自車速度Vsを負にした値に等しい相対速度Vrを持つ物標は静止物である。図5では、静止物の相対速度Vrを破線で示している。どのような走行環境でも静止物は観測されることが多い。そのため、静止物の相対速度Vrが折り返して、速度を有する移動物として認識されると、誤って静止物をトラッキングするおそれがある。よって、観測範囲Rgを、静止物の相対速度Vrが折り返さない範囲に設定して、静止物を移動物と誤認識されないようにする。本実施形態では、図5に示すような、自車速度Vsに対する観測範囲Rgのマップを予め作成して、ROM等の記憶装置に記憶しておく。マップは、自車速度Vsの想定される最高速度、例えば200km/hまで作成しておけばよい。」
「【図5】
[図:0001406473000009.jpg]
」
エ 【0031】~【0038】、【図6】~【図9】
「【0031】
<相対速度検出>
次に、物標の相対速度Vrを検出する処理手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。本処理手順は、IF信号が検出される都度、処理装置10が実行する。
【0032】
まず、ステップS10では、IF信号をサンプリングしたデジタルデータDaを取得する。
続いて、ステップS20では、車速センサ50の測定値から自車速度Vsを検出する。
【0033】
続いて、ステップS30では、ステップS10で取得したデジタルデータDaをコヒーレント積分する。コヒーレント積分するパルス数をNiとすると、コヒーレント積分時間Tiは、Ti=NiΔTとなる。コヒーレント積分時間Tiは、物標が変動していないと見なせる時間であり、レーダの距離分解能ΔR=c/ΔFよりも十分に小さい必要がある。例えば、ΔFを300MHz、物標の相対速度Vrを50m/sとした場合、コヒーレント積分時間Tiは10msよりも小さい値にすることが望ましい。なお、cは光速であり、ΔFは、コヒーレント積分時間Tiにおける送信周波数の周波数変化量である。まず、図7に示すように、パルスごとに周波数解析、具体的にはFFT処理を行う。これにより、パルスごとに、距離Reに対する周波数スペクトルが算出される。
【0034】
続いて、ステップS40では、図8に示すように、ステップS30で算出したパルスごとの周波数スペクトルを時系列に並べ、時系列に並べた周波数スペクトルに対して、所定の距離幅ごとにFFT処理を行う。これにより、図9に示すように、距離Re及び測定値Vdに対する周波数スペクトルが算出される。図9では、便宜上2次元平面で表しているが、実際には3次元データとなる。
【0035】
続いて、ステップS50では、ステップS40のFFT処理結果から、距離Re及び測定値Vdを検出する。この測定値Vdは、-Vn~Vnの範囲の値として検出される。
続いて、ステップS60では、ステップS50で検出した測定値Vdと式(4)とから、相対速度Vrの候補値を算出する。例えば、ナイキスト数を-5~5として、相対速度Vrの候補値を複数算出する。
【0036】
続いて、ステップS70では、予め作成されている自車速度Vsに対する観測範囲Rgのマップを参照して、ステップS20で検出した自車速度Vsに応じた観測範囲Rgを設定する。
【0037】
続いて、ステップS80では、ステップS60で算出した相対速度Vrの候補値のうち、ステップS70で設定した観測範囲Rgに入る候補値を、相対速度Vrとして選択する。上述したように、観測範囲Rgは、ナイキスト速度Vnの2倍の幅よりも小さい範囲に設定されるため、複数の候補値の中から、相対速度Vrが一意に選択される。以上で、本処理を終了する。
【0038】
なお、物標の方位推定については説明を省略したが、MUSIC等の周知の手法により、物標の方位も推定することができる。また、本実施形態では、ステップS20が、速度検出部の機能が実行する処理に相当し、ステップS30~S60が、候補検出部の機能が実行する処理に相当する。また、ステップS70が、範囲設定部の機能が実行する処理に相当し、ステップS80が、選択部の機能が実行する処理に相当する。」
「【図6】
[図:0001406473000010.jpg]
」
「【図7】
[図:0001406473000011.jpg]
」
「【図8】
[図:0001406473000012.jpg]
」
「【図9】
[図:0001406473000013.jpg]
」
オ 【0042】~【0048】
「【0042】
(他の実施形態)
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0043】
(a)上記実施形態では、FMCW方式のレーダで受信されるIF信号に対して2段階のFFT処理を行って、測定値Vdと距離Reを検出したが、これに限定されるものではなく、パルス間の位相を検出できるレーダ方式であればどのような方式でもよい。
【0044】
(b)上記実施形態では、送信信号の各パルス内を形成する高周波信号の周波数を、直線的に減少するように変調したが、直線的に増加するように変調してもよい。また、高周波信号の周波数は変調しなくてもよい。
【0045】
(c)観測範囲Rgは、条件(1)~(3)の全てを満たすように設定しなくてもよい。観測範囲Rgは、条件(1)~(3)のうちの1つのみ又は2つのみを満たすように設計してもよい。
…(後略)。」
(2) 図1からの認定事項
引用文献1の【0011】及び【0012】の記載を参酌しつつ【図1】を参照すると、次の事項(以下「図1からの認定事項」という。)が見て取れる。
<図1からの認定事項>
「レーダ装置1と処理装置10からなる装置」
(3) 引用発明の認定
前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「レーダ装置1と処理装置10からなる装置であって、(図1からの認定事項)
レーダ装置1は、発振器11と、増幅器12と、分配器14と、送信アンテナ16と、受信アンテナ部20と、受信スイッチ21と、増幅器22と、ミキサ23と、フィルタ24と、A/D変換器25と、を備え、車両に搭載されたミリ波レーダであり、(【0011】)
FMCW方式のレーダで受信されるIF信号に対して2段階のFFT処理を行って、測定値Vdと距離Reを検出するものであり、(【0043】)
処理装置10は、車速センサ50の測定値から自車速度Vsを検出し、検出した自車速度Vsを用いて、デジタルデータDaから物標の相対速度Vrを検出するとともに、自車両から物標までの距離、物標の方位等の物標情報を検出するものであり、(【0015】)
発振器11は、処理装置10からの指令に従って、周波数fc、波長λcのミリ波帯の高周波信号が、一定の幅のパルス状に変調され、且つ一定の繰り返し周期ΔTで繰り返される変調信号を生成し、(【0012】)
各パルスを形成する高周波信号の周波数は、所定の帯域内で、一定の割合で直線的に減少するように変調され、そのため、送信信号Ssと受信信号Srとの周波数の差分には、物標までの距離に応じた送信から受信までの時間による周波数の変化分と、ドップラーシフトによる周波数の変化分が含まれ、(【0012】)
ただし、各パルスの幅は、周波数の減少傾きが十分に大きくなるような狭い幅になっており、物標までの距離に応じた周波数の変化分は、ドップラーシフトによる周波数の変化分に比べて十分に大きくなり、よって、単一パルス内でのドップラーシフトによる周波数の変化分は無視することができるものであり、(【0012】)
増幅器12は、発振器11が生成する変調信号を増幅し、分配器14は、増幅器12の出力を送信信号Ssとローカル信号Lとに電力分配し、送信アンテナ16は、送信信号Ssに応じたレーダ波を放射し、(【0012】)
ミキサ23は、増幅器22により増幅された受信信号Srと、送信信号Ssと同じ信号であるローカル信号Lとを混合して、中間周波数信号(以下、IF信号)を生成し、A/D変換器25は、受信信号Srとローカル信号Lとの周波数の差分を周波数とする低周波側のIF信号をサンプリングしてデジタルデータDaに変換し、(【0014】)
処理装置10は、デジタルデータDaについて、高速フーリエ変換(以下、FFT)処理等を実行するためのDSP等の演算処理装置を備えており、(【0015】)
自車速度Vsに応じて、以下の(1)~(3)の条件を満たすように、観測範囲Rgを設定し、(【0026】)
処理装置10は、IF信号が検出される都度、以下のステップS10~ステップS80の処理手順を実行する、(【0031】)
装置。
<条件(1)~(3)>
条件(1):自車速度Vsが予め設定された速度閾値よりも小さい場合は、観測範囲Rgを予め設定された基準範囲よりも狭くする。(【0027】)
条件(2):自車速度Vsが大きいほど、観測範囲Rgの上限値を小さくする。(【0029】)
条件(3):自車速度Vsを負にした値に等しい相対速度Vrが入るようにする。(【0030】)
<ステップS10~ステップS80の処理手順>
ステップS10:IF信号をサンプリングしたデジタルデータDaを取得する。(【0032】)
ステップS20:車速センサ50の測定値から自車速度Vsを検出する。(【0032】)
ステップS30:ステップS10で取得したデジタルデータDaをコヒーレント積分し、コヒーレント積分したパルスごとに周波数解析、具体的にはFFT処理を行い、これにより、パルスごとに、距離Reに対する周波数スペクトルを算出する。(【0033】)
ステップS40:ステップS30で算出したパルスごとの周波数スペクトルを時系列に並べ、時系列に並べた周波数スペクトルに対して、所定の距離幅ごとにFFT処理を行い、これにより、距離Re及び測定値Vdに対する周波数スペクトルを算出する。(【0034】)
ステップS50:ステップS40のFFT処理結果から、距離Re及び測定値Vdを検出する。(【0035】)
ステップS60:ステップS50で検出した測定値Vdと下記式(4)とから、相対速度Vrの候補値を算出する。(【0035】)
[図:0001406473000014.jpg]
ステップS70:予め作成されている自車速度Vsに対する観測範囲Rgのマップを参照して、ステップS20で検出した自車速度Vsに応じた観測範囲Rgを設定する。(【0036】)
ステップS80:ステップS60で算出した相対速度Vrの候補値のうち、ステップS70で設定した観測範囲Rgに入る候補値を、相対速度Vrとして選択する。(【0037】)」
2 引用文献2に記載された事項と技術常識の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された、
「“ミリ波センサの基礎”,日本テキサス・インスツルメンツ株式会社,2017年,1~9頁」
https://www.ti.com/jp/lit/wp/jajy058/jajy058.pdf
(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 5頁右欄1行~6頁左欄1行
「速度の測定
このセクションでは、複素数を表現するために、ベクトル表記(距離、方向)を使用します。
2つのチャープを使用した速度の測定
速度を測定するために、FMCWレーダは、Tcで分離された2つのチャープを送信します。反射したチャープは、FFT処理され、物体の距離を検出することになります(rangeFFT)。各チャープに対応するrange-FFT(距離FFT)は、同じ場所でピークを示しますが、位相は互いに異なっています。ここで測定した位相の差は、vTcという物体の移動に対応しています。
[図:0001406473000015.jpg]
式6から導いた位相差は、式10のようになります。
[図:0001406473000016.jpg]
式11を使用して、速度を導くことができます。
[図:0001406473000017.jpg]
速度の測定は位相差に基づいているので、あいまいさが残ります。この測定があいまいでなくなるのは、|ΔΦ|<π.の場合のみです。上記の式11を使用すると、数学的に次の式を導くことができます。
[図:0001406473000018.jpg]
式12は、Tcの間隔で離れた2つのチャープを使用して測定する場合の最大相対速度(Vmax)を示しています。より高いVmaxを実現するには、これらのチャープ間で送信時間を短くすることが求められます。
[図:0001406473000019.jpg]
」
イ 6頁左欄2行~右欄6行
「同じ距離にある複数の物体の速度の測定
2つのチャープを使用した速度の測定が機能しない状況があります。複数の物体が測定の時点で異なる速度で移動しており、両者がレーダから同じ距離にあるときです。これらの物体は同じ距離だけ離れているので、同一のIF周波数を持つ反射チャープを生成することになります。その結果、range-FFTは単一のピークを生成し、これは同じ距離だけ離れているこれらの物体すべてから返された、結合された信号を表しています。単純な位相比較方式は機能しません。この場合、速度を測定するために、レーダ・システムは2つより多くのチャープを送信する必要があります。レーダ・システムは、間隔が等しい、N個1組のチャープを送信し、これら一連のチャープを、チャープ・フレームと呼びます。図7は、1つのチャープ・フレームに対して、周波数を時間の関数として表現しています。
[図:0001406473000020.jpg]
以下で説明する処理方式は、レーダから等距離だけ離れている2個の物体が、異なる速度V1とV2で移動している例を使用します。
Range-FFTは、反射された一連のチャープを処理し、その結果、同一の場所にピークが存在するN個のセットが得られます。ただし、それぞれの位相は異なっており、これらすべての物体から得られた位相の寄与を保持しています(これらの各オブジェクトから得られた個別位相の寄与は、図8で赤と青のベクトルとして表現しています)。
[図:0001406473000021.jpg]
Doppler-FFTと呼ばれる2番目のFFTを、N個のベクトルに対して実行し、2つの物体を分解します。このことを図9に示します。
[図:0001406473000022.jpg]
ω1とω2は、各物体を対象とする複数の連続チャープ間の位相差に対応します(式13)。
[図:0001406473000023.jpg]
」
ウ 6頁右欄7~16行
「速度分解能
離散フーリエ変換の理論は、次の式が成立する場合に、2つの個別周波数ω1とω2が分解できると説明しています。
Δω=ω2-ω1>2π/Nラジアン/サンプル。
Δωは次の式ΔΦ=4πνTc/λ(式10)で定義することもできるので、以下の条件が成立している場合、つまり、速度分解能(v)を導けるのは、フレーム期間がTf=NTcに等しい場合は、数学的に次の式を導くことができます。(式14)
[図:0001406473000024.jpg]
レーダの速度分解能は、フレーム時間(Tf)に反比例します。」
(2) 技術常識の認定
前記引用文献2に例示されているように、次の事項は技術常識であると認められる。
<技術常識>
「チャープ・フレームと呼ばれる、間隔Tcが等しいN個1組のチャープを送信し、反射されたチャープ・フレームに対してrange-FFTを実行して得られたN個のベクトルに対して、Doppler-FFTと呼ばれる2番目のFFTを実行することで、距離及び相対速度を検出するレーダにおいて、
最大相対速度(Vmax)は下記式12で示され、
[図:0001406473000025.jpg]
速度分解能(v)は、フレーム期間がTf=NTcに等しい場合は、下記式14で示され、
[図:0001406473000026.jpg]
Nが一定の場合、チャープ・フレームのチャープ間の間隔Tcが小さいほど、最大相対速度(Vmax)は高くなるが、速度分解能(v)は悪化すること。」
第5 対比
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 引用発明における「処理装置10」は、物標の相対速度Vrを検出するとともに、自車両から物標までの距離、物標の方位等の物標情報を検出する装置である。したがって、「レーダ装置1と処理装置10からなる装置」の発明である引用発明と「物標検出装置」の発明である本願発明は、「物標検出装置」の発明である点において一致する。
(2)ア(ア) 引用発明においては、発振器11により、一定の繰り返し周期ΔTで繰り返される変調信号を生成し、各パルスを形成する高周波信号の周波数は、所定の帯域内で、一定の割合で直線的に減少するように変調され、変調された信号を送信信号Ssとして、送信アンテナ16から送信信号Ssに応じたレーダ波として出力しているものであるから、「送信信号Ssに応じたレーダ波」は、本願発明の「周波数変調された送信波」に相当する。
(イ) 引用発明においては、送信信号Ssと受信信号Srとの周波数の差分には、物標までの距離に応じた送信から受信までの時間による周波数の変化分が含まれているとされているから、受信信号Srが送信信号Ssが物標に当たって反射した信号であることは、明らかである。
(ウ) そして、引用発明においては、受信信号Srと送信信号Ssと同じ信号であるローカル信号Lとの周波数の差分を周波数とするIF信号をサンプリングしてデジタルデータDaに変換しているところ、この「IF信号」が「うなり(ビート)」信号になっていることは明らかであるから、引用発明の「IF信号」は、本願発明の「周波数変調された送信波と、物標による当該送信波の反射波とを混合して得られるビート信号」に相当する。
イ(ア)a 引用発明における「距離Re」及び「測定値Vd」は、それぞれ、本願発明における「物標の距離」及び「物標の相対速度」に相当する。
b 引用発明においては、前記IF信号をサンプリングしたデジタルデータDaをコヒーレント積分し、コヒーレント積分したパルスごとにFFT処理を行い、距離Reに対する周波数スペクトルを算出し、算出したパルスごとの周波数スペクトルを時系列に並べ、時系列に並べた周波数スペクトルに対して、所定の距離幅ごとにFFT処理を行い、これにより、距離Re及び測定値Vdに対する周波数スペクトルを算出しているから、引用発明における「距離Re及び測定値Vdに対する周波数スペクトル」は、本願発明の「ビート信号に対して周波数解析を行うことで」生成された「物標の距離および相対速度に対応した周波数軸を有する2次元周波数スペクトル」に相当する。
(イ) 処理装置10は、デジタルデータDaについて、高速フーリエ変換(以下、FFT)処理等を実行するためのDSP等の演算処理装置を備えているから、前記(ア)及び前記ア(ウ)を踏まえると、引用発明の「処理装置10」は、本願発明における「ビート信号に対して周波数解析を行うことで、物標の距離および相対速度に対応した周波数軸を有する2次元周波数スペクトルを生成する生成部」に相当する。
ウ 前記ア及びイの検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「周波数変調された送信波と、物標による当該送信波の反射波とを混合して得られるビート信号に対して周波数解析を行うことで、物標の距離および相対速度に対応した周波数軸を有する2次元周波数スペクトルを生成する生成部」を備える点。
(3) 引用発明においては、「処理装置10」は、FFT処理を行って、距離Re及び測定値Vdに対する周波数スペクトルを算出し、このFFT処理結果から、距離Re及び測定値Vdを検出している。したがって、前記(2)の検討結果も踏まえると、引用発明の「処理装置10」は、「処理装置10(「生成部」に相当する。)」によって生成された2次元周波数スペクトルから抽出されたピークに基づいて、距離Re及び測定値Vdを検出しているものであるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明は次の点において一致する。
「前記生成部によって生成された前記2次元周波数スペクトルから抽出されたピークに基づいて前記物標の距離および相対速度を検出する検出部」を備える点。
(4)ア 引用発明において、「観測範囲Rg」は、相対速度Vrの候補値のうち、観測範囲Rgに入る候補値を、相対速度Vrとして選択するためのものであるから、本願発明における「前記相対速度に対応した周波数軸に対応させる所定の速度範囲」に相当する。
イ(ア) 引用発明においては、自車速度Vsに応じて、観測範囲Rgを設定しているところ、当該観測範囲Rgは、自車速度Vsが大きいほど、観測範囲Rgの上限値を小さくする条件(2)と、自車速度Vsを負にした値に等しい相対速度Vrが入るようにする条件(3)を満たすものであるから、自車速度Vsが大きいほど、観測範囲Rgの上限及び下限が下限方向に変化するように構成されているものである。
(イ) したがって、引用発明の「観測範囲Rg」と本願発明の「前記相対速度に対応した周波数軸に対応させる所定の速度範囲」は、次の点において共通する。
「自車両の走行状態に応じて上限及び下限が上限方向又は下限方向に変化する」点。
ウ よって、前記ア及びイの検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。
「検出部は、前記相対速度に対応した周波数軸に対応させる所定の速度範囲を、自車両の走行状態に応じて上限及び下限が上限方向又は下限方向へ変化するように構成された」点。
2 一致点及び相違点
前記1の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(1) 一致点
周波数変調された送信波と、物標による当該送信波の反射波とを混合して得られるビート信号に対して周波数解析を行うことで、物標の距離および相対速度に対応した周波数軸を有する2次元周波数スペクトルを生成する生成部と、
前記生成部によって生成された前記2次元周波数スペクトルから抽出されたピークに基づいて前記物標の距離および相対速度を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
前記相対速度に対応した周波数軸に対応させる所定の速度範囲を、自車両の走行状態に応じて上限及び下限が上限方向又は下限方向へ変化するように構成された、
物標検出装置、である点。
(2) 相違点
相対速度に対応した周波数軸に対応させる所定の速度範囲を、自車両の走行状態に応じて上限及び下限が上限方向又は下限方向へ変化する態様が、
本願発明においては、「当該所定の速度範囲の幅を維持した状態で」「上限方向または下限方向へシフト」するのに対して、
引用発明においては、自車速度Vsが予め設定された速度閾値よりも小さい場合は、観測範囲Rgを予め設定された基準範囲よりも狭くする条件(1)を満たすものであり、観測範囲Rgの幅を維持した状態でシフトするものではない点。
第6 判断
1 相違点の想到容易性について
前記相違点について検討する。
(1)ア 引用文献1の【0045】には、以下の記載がある。
「(c)観測範囲Rgは、条件(1)~(3)の全てを満たすように設定しなくてもよい。観測範囲Rgは、条件(1)~(3)のうちの1つのみ又は2つのみを満たすように設計してもよい。」
イ また、引用文献1の【0028】には、条件(1)について、以下の記載がある。
「自車速度Vsが速度閾値よりも小さくなる走行環境は、駐車場や交差点等であり、このような走行環境において自車両の周囲に存在する物標は、相対速度Vrの大きさが小さい歩行者や徐行車両等である。そこで、自車速度Vsが速度閾値よりも小さい場合は、観測範囲Rgを基準範囲よりも狭くしても支障がない。観測範囲Rgを狭くすることで、ノイズによる誤検出が低減される。」
(2) 前記(1)イを踏まえると、引用発明において条件(1)を満たす観測範囲Rgとする目的は、観測範囲Rgを狭くすることでノイズによる誤検出を低減することであるところ、当該条件(1)を満たすことは必須のものではなく、任意選択事項であることが理解できる。
(3) そして、観測範囲Rgを狭くすることなく、ナイキスト数mが一意に定まる最大の大きさで一定にすれば、測定値Vdから相対速度Vrが必ず一意に求まり、この観点でメリットがあることは、当業者には自明である。
(4) したがって、引用発明において、観測範囲Rgについて条件(1)を外して条件(2)及び(3)のみとして、観測範囲Rgを、ナイキスト数mが一意に定まる最大の大きさで一定とすることは、当業者にとっては適宜選択できる自明の選択肢にすぎず、当業者が適宜になし得た設計上の事項というべきものである。
(5) 以上(1)~(4)の検討のとおりであるから、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 請求人の主張について
(1) 主張1
ア 請求人の主張1の主張内容
審判請求の理由における請求人の主張1の概略は、次のとおりである。
本願発明は、「前記検出部は、前記相対速度に対応した周波数軸に対応させる所定の速度範囲を、当該所定の速度範囲の幅を維持した状態で、自車両の走行状態に応じて上限方向または下限方向へシフトするように構成された」という構成を備えているが、引用文献1には、そのような構成について記載も示唆もない。
イ 請求人の主張1についての検討
請求人の主張は、要するに、引用発明には前記相違点に係る構成がないというものであるが、前記1において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとっては適宜選択できる自明の選択肢にすぎず、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、請求人の前記主張1は採用できない。
(2) 主張2
ア 請求人の主張2の主張内容
審判請求の理由における請求人の主張2の概略は、次のとおりである。
本願発明では、「検知速度範囲の幅(即ち、所定の速度範囲の幅)をそのまま維持しつつ、優先したい検知速度範囲の位置へシフトさせるため、速度分解能が荒くなることがない」との効果、すなわち、「自車両の走行状態に応じて優先して検出すべき物標の速度範囲へ検知速度範囲をシフトすることで、速度分解能を細かくした状態を保ちつつ所望の検知速度範囲を得ることができる」という効果が得られる。
それに対して、引用発明では、本願発明の構成を備えていないので、上述した本願発明の効果は得られない。
イ 請求人の主張2についての検討
前記第4の2(2)において示したとおり、チャープ・フレームと呼ばれる、間隔Tcが等しいN個1組のチャープを送信し、反射されたチャープ・フレームに対してrange-FFTを実行して得られたN個のベクトルに対して、Doppler-FFTと呼ばれる2番目のFFTを実行することで、距離及び相対速度を検出するレーダにおいて、Nが一定の場合、チャープ・フレームのチャープ間の間隔Tcが小さいほど、最大相対速度(Vmax)は高くなるが、速度分解能(v)は悪化することは、本願出願前において技術常識である。
そして、引用発明は、ナイキスト速度Vn(最大相対速度)を上げるためにチャープ波の間隔Tcを小さくするように変化させる必要はないから、引用発明において観測範囲Rgを一定とする自明の選択肢を選択した場合も、チャープ波の間隔Tcを小さくしてナイキスト速度Vn(最大相対速度)を上げるやり方に比べて、速度分解能が悪化せず、これを維持できることは、明らかである。
したがって、「速度分解能を細かくした状態を保ちつつ所望の検知速度範囲を得ることができる」という本願発明が奏する効果は、当業者が予測困難なものではない。
よって、請求人の前記主張2は、採用できない。
3 小括
前記1において検討したとおり、引用発明において前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記2(2)において検討したとおり、本願発明の奏する作用効果としては、引用発明から予測されるものを超え、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-000613