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意匠無効審判

2022-880006

封印帯付きキャップ

審判番号
2022-880006
法域
意匠
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
意願2021-001129外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
1688792
請求日
2022年04月05日
審決日
2024年10月17日
公報発行日
2025年01月31日
結論
請求成立(無効)
当事者
審判長/審判官
分類
D1113.113-Z (F4-9)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
意匠法3条1項3号意匠法52条特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
意匠法第3条第1項第3号、意匠法第3条第1項第1号、意匠法第9条第2項、意匠法第48条第1項第1号、意匠法第4条第2項、意匠法第15条第2項、特許法第34条第1項、意匠法第52条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の意匠登録第1688792号「封印帯付きキャップ」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。

結論

結 論 意匠登録第1688792号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件意匠登録第1688792の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)は、令和3年(2021年)1月21日に意匠登録出願(意願2021-1129)されたものであって、審査を経て同年6月10日に意匠権の設定の登録がなされ、同年6月28日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。 審判請求 令和4年(2022年)4月 5日付け 営業秘密に関する申出書(請求人)令和4年 4月 5日付け 答弁書 令和4年 8月 5日差出 審尋(請求人及び被請求人) 令和4年 12月13日付け 上申書(被請求人:提出期限延長)令和4年 12月23日付け 上申書(請求人:提出期限延長) 令和4年 12月26日付け 回答書(被請求人) 令和5年(2023年)1月13日差出 通知書(請求人)(回答期間) 令和5年 1月17日付け 通知書(被請求人)(回答期間) 令和5年 1月17日付け 回答書(請求人) 令和5年 1月27日付け 営業秘密に関する申出書(請求人)令和5年 1月27日付け営業秘密に関する申出書(請求人)令和5年 2月 6日付け審理事項通知 令和5年 12月 7日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人) 令和6年(2024年)1月23日差出 口頭審理陳述要領書(請求人) 令和6年 2月 5日付け 営業秘密に関する申出書(請求人)令和6年 2月 6日付け 口頭審理 令和6年 2月20日 営業秘密に関する申出書(請求人)令和6年 8月 1日付け 第2 請求人の申し立て及び理由の要点 請求人は、請求の趣旨を 「登録第1688792号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を、おおむね、以下のとおり主張した(「回答書」、「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)。 1 請求の理由(「審判請求書」における主張) (無効審判請求書の第2~13ページ) (1)本件登録意匠 意匠登録第1688792号 意匠に係る物品「封印帯付きキャップ」(別紙の参考資料1(当審注:審決の別紙第1)参照) (2)手続の経緯 出願 令和3年1月21日(2021年1月21日) 登録 令和3年6月10日(2021年6月10日) 掲載公報発行 令和3年6月28日(2021年6月28日)(意匠登録第1688792号公報) (3)無効理由の要点 本件登録意匠は、本件意匠の出願前に公然知られた意匠(甲第1、4及び7号証の意匠(当審注:下記第4のとおり、甲第7号証は、口頭審理において証拠申し出が撤回され、被請求人も撤回を認めている。)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。 (4)本件意匠登録を無効とすべき理由 (i)本件登録意匠の要旨 本件登録意匠は、別紙の参考資料1(当審注:審決の別紙第1)に示される意匠登録第1688792号の意匠公報に記載のとおりである。当該意匠公報において、【意匠に係る物品】は「封印帯付きキャップ」であり、【意匠に係る物品の説明】は「本物品は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の封印帯付きキャップである。」と記載されている。 【意匠に係る物品の説明】に記載のとおり、「本物品は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用」であるから、本件登録意匠の需要者は、本物品を購入する者、すなわち、下図に示されるとおり、容器に内容物を充填して容器口部に本物品の口部を溶着する充填メーカー、及び、容器に内容物を充填まではしないが容器口部に本物品の口部を溶着する袋メーカー(パウチなどの容器のメーカーで、コンバーターとも言われる)などである。 [図:0001418277000001.jpg] 需要者である充填メーカー及び袋メーカーにとって、本件登録意匠の口部が、関心を持って観察される部位である。なぜなら、本件登録意匠の口部は容器口部に溶着される部分であり、当該溶着が不十分であれば、溶着の不十分な箇所から容器の内容物が漏れ得るからである。 したがって、本件登録意匠の要部は、口部である。また、本件登録意匠の要部が口部であることは、次の事実からも明らかである。 すなわち、被請求人は、本件登録意匠と同一の出願日に、別紙の参考資料2(当審注:審決では添付を省略)に示される他の意匠(以下、同日出願意匠という)について意匠登録出願をした。本件登録意匠(参考資料1)と同日出願意匠(参考資料2)とは、次ページの図に示されるように、意匠に係る物品がいずれも「封印帯付きキャップ」であり、形態が口部のみ異なり口部以外が同一である。 [参考資料1の抜粋](本件登録意匠)[参考資料2の抜粋](同日出願意匠) [図:0001418277000002.jpg] 本件登録意匠と同日出願意匠とは、本意匠-関連意匠の関係で出願及び登録されていない。このため、本件登録意匠と同日出願意匠とは、非類似として出願されて意匠登録を受けた。したがって、本件登録意匠と同日出願意匠とが非類似であるには、共通しない部分(つまり口部)が意匠の要部となる。 ここで、本件登録意匠の形態における基本的構成態様は、下図に示されるとおり、上蓋部をローレットが形成されたものとし、封印帯を上蓋部から下方に配置されたものとし、口部を縦横2本ずつのリブが設けられるとともに左右両端部に耳が設けられたものである。 [参考資料1の抜粋](本件登録意匠) [図:0001418277000003.jpg] (ii)先行意匠が存在する事実及び証拠の説明 (ii)-1.先行意匠1(カタログ) [ア]甲第1号証は、2012年10月に印刷された2013年版のカタログである。甲第1号証のP.68に記載された「R1210 2.5」は、下図に示されるとおり、2012年10月に2500部が印刷されたことを意味する。 (当審注:図省略) [イ]前記カタログが2012年10月に印刷されたことは、甲第2及び3号証で裏付けられる。甲第2号証は、前記カタログを印刷した印刷会社「株式会社●(省略)●」からの前記カタログについての見積書である。 (当審注:図省略) 甲第3号証は、前記印刷会社「株式会社●(省略)●」からの前記カタログについての請求書である。甲第2及び3号証がいずれも前記カタログについての書類であることは、甲第2及び3号証の「2013 ~総合カタログ」の記載から明らかである。甲第2号証の日付が「2012年9月10日」、及び、甲第3号証の日付が「2012年10月16日」であるから、前記カタログの印刷は、「2012年9月10日」~「同年10月16日」に行われたと言える。したがって、前記カタログに掲載された意匠は、印刷の過程で前記印刷会社「株式会社●(省略)●」の従業員等に知られたので、2012年10月までに公然知られている。 [ウ]前記カタログは、2013年版であるから、印刷された2012年10月から遅くとも2013年末までの間に頒布されている。したがって、前記カタログに掲載された意匠は、2013年末までに、頒布された刊行物に掲載された意匠に該当する。 [エ]前記カタログに掲載された意匠、すなわち、2012年10月までに公然知られた意匠は、下図のとおりである(甲第1号証参照)。 (当審注:図省略) (ii)-2.先行意匠2(製造用図面) [ア]甲第4号証は、前記カタログに掲載された意匠に係るキャップ「9.5MS-TEセット品」の製造用図面である。キャップ「9.5MS-TEセット品」は、その名のとおりセット品であるから、被せる部分(上蓋部及び封印帯)と、被せられる部分(口部を含む)とがセットされた製品である。甲第4-1号証は被せる部分の製造用図面であり、甲第4-2号証は被せられる部分の製造用図面である。前記キャップのセット品を示す甲第4号証は、前記キャップの外部形状と内部形状とを混在して示している。しかしながら、甲第4-1及び4-2号証から、前記キャップの構成部品(被せる部分及び被せられる部分)の外部形状が明らかなので、セット品としての外部形状も明らかである。 [イ]甲第5号証は、前記製造用図面に基づきキャップ「9.5MSTEセット品」を製造するための金型発注書 注文請書である。金型発注書には、下図に示されるとおり、「納品期限:平成●(省略)●末」(201●(省略)●年●(省略)●月末)の記載と、甲第4-1及び4-2号証に記載された金型コードと一致する「●(省略)●」及び「●(省略)●」の記載とがある。また、注文請書の「確認・返却」欄には、金型メーカーである●(省略)●の捺印がある。 (当審注:図省略) したがって、前記製造用図面に現わされた意匠は、金型を製作する過程で前記金型メーカー「●(省略)●」の従業員等に知られたので、201●(省略)●年●(省略)●月末までに公然知られている。 [ウ]前記製造用図面に現わされた意匠、すなわち、201●(省略)●年●(省略)●月末までに公然知られた意匠は、下図のとおりである(甲第4号証参照)。なお、下図のとおり、甲第4号証は、その金型コードが甲第4-1及び4-2号証に記載された金型コードと一致するので、甲第4-1及び4-2号証のセット図面である。 (当審注:図省略) (ii)-3.先行意匠3(販売されたキャップ) [ア]甲第6号証は、前記カタログに掲載された「9.5MS-TEセット品」についての顧客からの注文書である。前記カタログ及び注文書には、いずれも「9.5MS-TEセット品」の記載がある(甲第1号証参照)。 [イ]前記注文書に記載された販売日(納品日)の最先の日付は、下図のとおり、甲第6号証の平成25年(2013年)4月11日である。販売されたキャップ「9.5MS-TEセット品」に係る意匠は、最先で甲第6号証の注文書に基づいて納品を受けた顧客に知られたので、2013年4月11日までに公然知られている。 (当審注:図省略) [ウ]請求人から顧客に販売されたキャップ「9.5MS-TEセット品」の見本(以下、販売品という)を、甲第7号証として提出する。 (iii)本件登録意匠と先行意匠との対比 意匠に係る物品は、本件登録意匠及び先行意匠1~3ともに「封印帯付キャップ」に関するものであり、同一の物品である。本件登録意匠と先行意匠1~3との形態は、以下のとおり、本件登録意匠の意匠公報に掲載された図の順に従い、「(iii)-1.平面斜視図」~「(iii)-6.底面図の順に対比する。 (iii)-1.平面斜視図 (当審注:図省略) 本件登録意匠と先行意匠3とは、上蓋部、封印帯及び口部の位置及び形状が共通する。特に、本件登録意匠と先行意匠3とは、上蓋部、封印帯及び口部の意匠全体に占める割合も共通する。 (iii)-2.底面斜視図 (当審注:図省略) 本件登録意匠と先行意匠3とは、口部の底面中央に円形の穴が形成されている点、及び、当該円形の穴から左右に長円状の窪みが形成されている点で共通する。 (iii)-3.正面図 (当審注:図省略) 本件登録意匠と先行意匠1~3とは、口部に縦横2本ずつのリブが形成されている点で共通する。また、2本の横のリブが口部の上下端縁とともに上下方向に等間隔で配置されている点でも共通する。さらに、2本の縦のリブの左右方向の間隔が封印帯の径よりも僅かに小さい点でも共通する。 (iii)-4.右側面図 (当審注:図省略) 本件登録意匠と先行意匠2及び3とは、口部の前後方向の幅が上蓋部のローレットが形成された位置の径と略同一である点で共通する。しかしながら、本件登録意匠と先行意匠2及び3とは、上蓋部と封印帯との隙間にある微小な突起の位置及び形状が差異点である。 (iii)-5.平面図 (当審注:図省略) 本件登録意匠と先行意匠2及び3とは、口部の平面形状と上蓋部の平面形状との比率が略同一である点で共通する。 (iii)-6.底面図 (当審注:図省略) 本件登録意匠と先行意匠2及び3とは、口部の底面形状が同一である点で共通する。 (iv)本件登録意匠と先行意匠との類否 本件登録意匠と先行意匠とは、前述の対比のとおり、基本的構成態様が共通するだけでなく、意匠の要部である口部の形状が略同一である。すなわち、意匠の要部である口部は、本件登録意匠及び先行意匠のいずれも、同一の舟形状であるとともに、同一の位置に同一の形状の縦横2本ずつのリブが設けられ、同一の位置に同一の形状の耳が設けられたものである。したがって、本件登録意匠と先行意匠とは、全体としても同一に近いほどに類似している。 本件登録意匠と先行意匠とは、上蓋部と封印帯との隙間にある微小な突起の位置及び形状が差異点であるものの、上蓋部と封印帯との隙間は、意匠全体に占める割合が極めて小さいので、視覚的影響に与える影響も極めて小さい。 したがって、前記差異点は本件登録意匠と先行意匠との共通感に殆ど影響を与えないので、本件登録意匠は、甲第1、4及び7号証の意匠に類似するものである。 (5)むすび したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。 (6)その他 (i)意匠法第3条第1項第1号及び第2号の規定による無効理由 本件登録意匠は、前述の差異点が無視できる程度に小さく、先行意匠と実質的に同一とも考えられる場合がある。この場合、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第1号及び第2号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。 (ii)意匠法第9条第2項の規定による無効理由。 本件登録意匠は、万一、前述の差異点など口部以外が意匠の要部である場合、参考資料2で示される同日出願意匠と類似する。なぜなら、本件登録意匠と同日出願意匠とは、口部以外(上蓋部から封印帯)の形態が同一だからである。この場合、本件登録意匠は、同日出願意匠と出願日が同一なので、意匠法第9条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。 2 「回答書」における主張 (回答書の第1~20ページ。なお、以下では、各甲号証を「甲1」などと記載する場合がある。) 請求人は、当合議体の令和4年12月13日付けの「審尋」に対し、おおむね、以下のとおり回答した。 回答の内容 (1)審尋の「1.公然知られた意匠」に対して 審判請求書における「6.請求の理由」(当審注:審判請求書は「.」なし。記載まま)の「(3)無効理由の要点」は、正しくは「本件登録意匠は、本件意匠の出願前に公然知られた意匠(甲第1,4及び7号証の意匠)及び頒布された刊行物に記載された意匠(甲第1号証の意匠)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである・・」となる。 (2)審尋の「2.甲1について」に対して (2-1)2013年版のカタログ(甲1)が実際に頒布された事実を証明する証拠を、甲第8~18号証として提出する。なお、甲8~18の赤下線及び赤枠は、請求人代理人による追記である。甲8~18で証明される甲1が実際に頒布された日は、いずれも本件登録意匠の出願日(2021年1月21日)より前である。 (2-1-1)甲第8号証 甲8は、請求人から請求人の顧客へのEメール(2013年11月19日付)である。Eメールには、2013年版のカタログ(甲1)の抜粋が添付されている。抜粋された部分は、本件登録意匠との対比の対象とした「先行意匠1」である「9.5MS-TEセット品」を含んでいる。(甲1の第60ページ)。 (2-1-2)甲第9号証 甲9は、請求人から請求人の顧客へのEメール(2016年3月4日付)である。Eメールには、2013年版(甲1)ではなく、2014年版のカタログの抜粋が添付されている。抜粋された部分は、2014年版の「9.5MS-TEセット品」を含んでおり、これは「先行意匠1」である2013年版(甲1)の「9.5MS-TEセット品」と同一である。 (2-1-3)甲第10号証 甲10は、請求人から請求人の顧客へのEメール(2018年10月26日付)と、その返信(2018年10月27日付)である。Eメールには、2013年版(甲1)ではなく、2014年版のカタログの抜粋が添付されている。抜粋された部分は、甲9とは一部異なるものの、甲9と同じく2014年版の「9.MS-TEセット品」を含んでおり、これは「先行意匠1」である2013年版(甲1)の「9.5MS-TEセット品」と同一である。 (2-1-4)甲第11号証 甲11は、2014年版のカタログである。「9.5MS-TEセット品」が2014年版と2013年版のカタログ(甲1)とで同一であることを明確に示すために、2014年版のカタログを証拠(甲11)として提出する。 (2-1-5)甲第12号証 甲12は、請求人から請求人の顧客へのEメール(2013年12月13日付)である。Eメールには、請求人から顧客にカタログ2部を発送した旨が記載されている。 (2-1-6)甲第13号証 甲13は、請求人から請求人の顧客へのEメール(2014年3月25日付)と、その返信(2014年3月26日付)である。Eメールには、請求人から顧客にカタログを発送した旨が記載されている。その返信には、顧客がカタログを受け取ったことを示す記載がある。発送された(顧客が受け取った)カタログは、Eメール及びその返信の日時(2014年3月25,26日付)から、2013年版甲1)ではなく2014年版(甲11)の可能性がある。しかしながら、前記(2-1-2)~(2-1-4)で述べた通り、2013年版及び2014年版ともに「先行意匠1」を含んでいる。 (2-1-7)甲第14号証 甲14は、請求人から請求人の顧客へのEメール(2014年1月25日付)と、その返信(2014年1月27日付)である。Eメールには、2013年版のカタログ(甲1)の内容についての記載がある。具体的には、「※組合せキャップは、複数のパターンがございます。弊社製品の後ページ(2013年カタログでしたら57~58ページ)に組合せ参考図を記載しております。」との記載から、2013年版のカタログ(甲1)がEメールの送信日時(2014年1月25日付)までに顧客に頒布されていることが明らかである。 (2-1-8)甲第15号証 甲15は、請求人におけるEメールのやり取りである。具体的には、請求人における、関西支店「宮本賢一」から関東支店「大原直人」へのEメール(2013年5月2日付)と、その返信(2013年5月6日付)である。Eメールには、件名「●(省略)● ●(省略)●さんにカタログ送付しました。」と、本文「2013年カタログを持っていなかったので、手配しておきました。ご連絡まで。」との記載がある。この記載から、2013年版のカタログ(甲1)が、請求人の関西支店「宮本賢一」からの送付により、顧客「●(省略)● ●(省略)●さん」に頒布されていることが明らかである。 (2-1-9)甲第16号証 甲16は、顧客が請求人の工場(茨城)に見学に来る旨を請求人において連絡する書面(工場見学届)である。具体的には、請求人の関西支店「高橋典正」から発行されている(2013年3月15日付)。甲16の「準備して欲しい物」の欄には「商品カタログ 3部」と記載されていることから、2013年版(当時最新版)のカタログ(甲1)が、見学の日(2013年3月25日)に、顧客(見学者)に頒布されていることが推認される。 (2-1-10)甲第17号証 甲17は、請求人におけるEメールのやり取りである。具体的には、請求人における、西部支店「宮崎公美子」から関西支店「高橋典正」へのEメール(2013年11月13日付)である。Eメールの本文には、「(株)●(省略)●様(男性)よりお見積依頼です。・・・当社カタログをご覧になってのご依頼です。」との記載がある。この記載から、2013年版(当時最新版)のカタログ(甲1)が、Eメールの送信日時(2013年11月13日付)までに、顧客「(株)●(省略)●様」に頒布されていることが明らかである。 (2-1-11)甲第18号証 甲18は、請求人におけるEメールのやり取りである。具体的には、請求人における、受注センター「楠見学」から関西支店「高橋典正」へのEメール(2013年12月6日付)である。Eメールの本文には、「●(省略)●ヘカタログ5部郵送の依頼がありましたので、本日、メール便にて手配いたしました。」との記載がある。この記載から、2013年版(当時最新版)のカタログ(甲1)が、「メール便」の到着により、顧客「●(省略)●」に頒布されていることが明らかである。 (2-2)甲1が2012年10月に2500部印刷された証拠を、甲第19号証として提出する。 (2-2-1)甲第19号証 甲19は、甲1を実際に印刷した印刷会社「株式会社サンデザインワーク」が、甲1を2012年10月に2500部印刷したことを確認する書面である。甲19には、「1.・・・2012年10」月に2,500部の2013年版のカタログが印刷されたことを意味します。」との記載と、「本書及び添付資料1~3を確認したところ、上記1.~3.の全てについて、相違ありません。」との記載がある。さらに、甲19には、「株式会社サンデザインワーク」の「代表取締役」である「青山克己」の署名及び捺印がある。従って、甲19から、甲1が2012年10月に2500部印刷されたことが明らかである。 (2-2-2)甲第2~3号証 甲2には「案件」の項目に「2500部」の記載があり、甲3には「伝票番号UD000861-2」の「請求書」における「商品コード」の最下段の欄に「2500部」の記載がある。この記載から、「2500部」の甲1が印刷されたことが推認される。 また、甲2の「見積書」における「日付」が「2012年9月10日」であり、甲3の「請求書」における「日付」が「2012年10月16日」である。このため、これらの「日付」の間(2012年9月10日~10月16日)に甲1が印刷されたことが推認される。 従って、甲2~甲3により、「甲1が2012年10月(の遅くとも16日まで)に2500部印刷された」と推認される。「甲1が2012年10月に2500部印刷された」ことは、甲2~3によれば推認であるが、甲19によれば立証されている。 (3)審尋の「3.甲4について」に対して (3-1)知財高裁平成22年6月29日(平成21年(行ケ)第10323号)判決では、「のみならず,甲1について,黙示的にも秘密保持契約が締結されていたと認定することはできない。すなわち,甲1には,・・・記載事項のうち秘密とすべき対象を特定するのが自然であるが,そのような特定は何らなされていない。」と示されている。 (3-2)従って、黙示的に秘密保持契約が締結されたと認定されるためには、秘密とすべき対象を特定する必要がある。これに対して、甲4には、秘密の対象とする表記、例えば、「(秘)」(当審注:丸付き文字はシステム上表示不可のため丸付き文字の「秘」は「(秘)」と表記する。)」、「社外秘」、「重要書類」、又は「Confidential」のような表記がない。このため、甲4は、秘密とすべき対象とされていないので、黙示的に秘密保持契約が締結されていたとは言えない。 (3-3)なお、請求人は、甲4に営業秘密の申出をしたが、これは、甲4が営業秘密の書面だと自認しているからではない。請求人の2013年からの製品である「9.5MS-TEセット品」について、2021年に権原のない被請求人により意匠登録出願がされ、本件意匠登録を受けたことで、請求人として情報を公開することに強い危機感を感じているからである。 (4)審尋の「4.甲7について」に対して (当審注:下記第4のとおり、甲第7号証は、口頭審理において証拠申し出が撤回され、被請求人も撤回を認めているので、甲第7号証に係る主張は省略する。) (5)審尋の「5.各号証について」に対して (5-1)甲1から甲3について ア-1.甲2(見積書)の「2013~総合カタログ 追加修正増刷」は、「2013~総合カタログ」と、「追加修正増刷」とに分けられる。「2013~総合カタログ」の部分は、甲1(2013年版のカタログ)の「キャップ&ボトル総合カタログ 2013」を略した表記である。なぜなら、「2013」と「~総合カタログ」との表記により、甲2を発行した印刷会社「株式会社サンデザインワーク」と、請求人との間で対象物となる2013年版のカタログ(甲1)を特定できるからである。一方、「追加修正増刷」の部分は、請求人が「株式会社サンデザインワーク」に依頼した前年度版のカタログ(2011~2012年版)を元に、2013年版として追加及び修正を加えた改訂版の作成(増刷)を意味する。従って、甲2の「2013~総合カタログ 追加修正増刷」は、甲1(2013年版のカタログ)を指している。なお、甲2が甲1に対応することは、次の「ア-2.」で説明する甲19によっても明らかである。 ア-2.甲19には、「2.・・・見積書及び請求書(添付資料2及び3)は、2013年版のカタログ(添付資料1)に対するものです。」との記載と、「本書及び添付資料1~3を確認したところ、上記1.~3.の全てについて、相違ありません。」との記載がある。さらに、甲19には、「株式会社サンデザインワーク」の「代表取締役」である「青山克己」の署名及び捺印がある。従って、甲2(見積書)は、甲1(2013年版のカタログ)に対するものであることが明らかである。 イ.甲2(見積書)のみによって甲1が印刷されたとは言えないが、甲1が印刷された時期は、甲2(見積書)の発行日と甲3(請求書)の発行日との間であると推認される。 ウ.甲19には、「2. ・・・見積書及び請求書(添付資料2及び3)は、2013年版のカタログ(添付資料1)に対するものです。」との記載と、「本書及び添付資料1~を確認したところ、上記1.~3.の全てについて、相違ありません。」との記載がある。さらに、甲19には、「株式会社サンデザインワーク」の「代表取締役」である「青山克己」の署名及び捺印がある。従って、甲3(請求書)は、甲1(2013年版のカタログ)に対するものであることが明らかである。 エ.商慣習上、カタログ(例えば甲1)のような広告宣伝を目的とした印刷物まで印刷会社に守秘義務を生じさせるのは、当然ではない。また、甲19には、「3.2013年版のカタログについて、当社と貴社との間に守秘義務契約を締結していません。守秘義務契約を締結しない場合、貴社に守秘義務は生じません。」との記載と、「本書及び添付資料1~3を確認したところ、上記1.~3.の全てについて、相違ありません。」との記載がある。さらに、甲19には、「株式会社サンデザインワーク」の「代表取締役」である「青山克己」の署名及び捺印がある。従って、請求人と印刷会社との間に守秘義務が生じていなかったことは明らかである。 (5-2)甲4~6について ア.甲4、甲4-1及び甲4-2の関係について 甲4は、甲4-1と甲4-2とを組み上げた(セットされた)図面である。より正確に説明すると、甲4は、甲4-2(口部を有するスパウト)に甲4-1(スパウトキャップ、つまり上蓋部及び封印帯)を被せた図面である。その根拠は、審判請求書で述べた金型コードだけではなく、寸法の一致にもよる。 以下、甲4、甲4-1及び甲4-2の寸法について説明する。この説明で使用される括弧書きの符号(A~G,H1及びH2)は、下記に示される抜粋の図(甲4,甲4-1及び甲4-2)における赤色の符号に対応する。 ・スパウトキャップの外径(A)及び高さ(B)が、甲4及び甲4-1で共通する。 ・口部の前後幅(C)及び左右幅(D)が、甲4及び甲4-2で共通する。 ・口部の高さ(E)が、甲4及び甲4-2で共通する。 ・スパウトの高さ(F)が、甲4及び甲4-2で共通する。 ・キャップの高さ(G)とスパウトの高さ(F)との差、つまり、上蓋部の天壁の厚さ(G-F)が、甲4及び甲4-1で共通する。 ・甲4-1に示される上蓋部の内ネジ(H1,H2)と、甲4-2に示されるスパウトの外ネジ(H1,H2)とは、螺合する寸法である。 以上より、甲4,甲4-1及び甲4-2の寸法からも、甲4は、甲4-1と甲4-2とを組み上げた(セットされた)図面と言える。 [図:0001418277000004.jpg] [図:0001418277000005.jpg] [図:0001418277000006.jpg] イ.甲5(金型発注書)の「備考」の欄には、「●(省略)●T-0予定」と記載されている。これは、●(省略)●(金型メーカー)が、平成●(省略)●年(●(省略)●年)●(省略)●月●(省略)●日に、製造した金型を使用してスパウト及びスパウトキャップを成形し、スパウトとスパウトキャップとを組み上げて寸法適性の確認等を行うことを意味する。スパウトとスパウトキャップとを組み上げた状態が請求人の製品なので、寸法適性の不備等で組み上がらなければ、請求人として、スパウトとスパウトキャップとのそれぞれの金型を金型メーカーに発注する意味が無いからである。 新たな証拠として、甲第20~22号証を提出する。なお、甲20~22の赤下線及び赤枠は、請求人代理人による追記である。 甲20~22のうち、甲20には、「金型の製作が完成すると検収し、・・・検収に当たっての重要な確認工程は、その金型を使用しての試作です。(この工程をトライと言う企業もあります)」と、「1トライで必ず品質確認」との記載がある。これらの記載から、金型メーカーは、金型を製作すると、成形品を試作するというトライを行うことが明らかである。 また、甲21には、「金型の目的は金型を作ることではなく、製品を成形することです。ですが、成形にたどり着くまでは通常T0、T1、T2・・・と成形トライと金型修正を繰り返しながら条件だしを行います」との記載と、この記載の下の赤枠で囲われた図がある。この記載及び図から、「T0」はトライ(成形トライ)であること、及び、金型メーカーは、トライ(成形トライ)として単に成形品を試作するだけでなく、試作された成形品を元に金型修正することが明らかである。 さらに、甲22の図1には、「トライ」の行に「T0」がある。この図1からも、「T0」はトライであることが明らかである。加えて、甲X3の「金型を製作し、作り込んだ」との記載がある。この記載からも、金型メーカーは、トライとして単に成形品を試作するだけでなく、試作された成形品を元に金型修正することが明らかである。 金型修正の目的は、成形される製品の品質を担保することである。従って、商慣習上、請求人の製品である「9.5MS-TEセット品」の品質を担保するために、甲5(金型発注書)の発注先である金型メーカー「●(省略)●」は、甲5の「備考」の欄に記載された「平成●(省略)●年●(省略)●月●(省略)●日●(省略)●T-0予定」に基づいて、スパウト及びスパウトキャップの成形品を試作して組み上げたことが明らかである。 ウ.甲6(注文書) 甲6は、左下部に記載された企業(発注元)から、左上部に記載された企業(商社)への注文書である。そして、甲6は、左端部のFAX送信記録から明らかなように、商社から請求人にFAXで注文がされている。甲6の手書きのうち、「三笠産業 楠見様」の文字は商社による記載であり、それ以外の文字は請求人による記載である。甲6のスタンプ及び押印のうち、「注文書」の「注」の文字の下にある押印(かすれた丸印)は商社によるものであり、それ以外のスタンプ及び押印は請求人によるものである。 甲6の「品名」の欄に記載された「三笠産業製9mmスパウト」は、発注元がタイプした文字である。しかしながら、この文字は正確な品名ではないので、請求人は、「9.5MS-TEセット品」と正確な品名を手書きした上で、商社に甲6をFAXした。その後、発注元及び商社から品名の訂正がなかったので、請求人は、「9.5MS-TEセット品」を発注元に納品した。 甲6が甲1(2013年版のカタログ)の「9.5MS-TEセット品」の販売を示す証拠として、甲第23~26号証を提出する。なお、甲23~26の赤下線は、請求人代理人による追記である。 ウ-1.甲第23号証 甲23は、甲6(注文書)の2013年4月11日納品分に対応する請求人の売上伝票(納品書)である。甲6と甲23とは、受注番号、主体(宛先、送り先及び出荷先)、品名、出荷日-納品日、及び、数量が、同一又は対応する。 具体的には、甲6の「毎度ありがとうございます。・・・三笠産業(株)」のスタンプの上に、請求人により赤文字で番号「R708325」が手書きされている。詳しくは後述するが、請求人は、通常、このスタンプの上に受注番号(甲6だと、R708325)を赤文字で手書きする。一方、甲23の左上端にも同一の受注番号である「R708325」が記載されている。従って、甲6の受注番号と、甲23の受注番号とは同一の「R708325」である。 また、甲6の宛先と、甲23の宛先とは同一の企業(商社)である。甲6の送り先と、甲23の出荷先とは同一の企業(発注元、工場まで同一)である。甲6の品名(手書き)と、甲23の品名とは同一の「9.5 MS-TEセット品」である。 さらに、甲6の「備考」の欄に記載された「4/11」は、2013年(甲6が発行された平成25年)4月11日が納品日であることを意味する。なぜなら、発注元は、通常、注文書において納品日を指定するからである。一方、甲23の「出荷日」の欄に記載された「13/04/10」は、2013年4月10日に出荷されたことを意味する。出荷日が納品日の前日であることから、出荷日と納品日とが対応する。加えて、甲6の「4/11」の右に記載された数量と、甲23の「数量」の欄における記載とは同一である。 ウ-2.甲第24号証 甲24は、甲6(注文書)の2013年4月16日納品分に対応する請求人の売上伝票(納品書)である。甲6と甲24とは、受注番号、主体(宛先、送り先及び出荷先)、品名、出荷日-納品日、及び、数量が、同一又は対応する。 具体的には、甲6の受注番号と、甲24の受注番号とは同一の「R708325」である。甲6の宛先と、甲24の宛先とは同一の企業(商社)である。甲6の送り先と、甲24の出荷先とは同一の企業(発注元、工場まで同一)である。甲6の品名(手書き)と、甲24の品名とは同一の「9.5MS-TEセット品」である。 また、甲6の「備考」の欄に記載された「4/16」は、2013年(甲6が発行された平成25年)4月16日が納品日であることを意味する。一方、甲24の「出荷日」の欄に記載された「13/04/15」は、2013年4月15日に出荷されたことを意味する。出荷日が納品日の前日であることから、出荷日と納品日とが対応する。 加えて、甲6の「4/16」の右に記載された数量と、甲24の「数量」の欄における記載とは同一である。 ウ-3.甲第25号証 甲25は、甲6(注文書)の2013年4月24日出荷分(手書きによる訂正前は4月18日納品分)に対応する請求人の売上伝票(納品書)である。甲6と甲25とは、受注番号、主体(宛先、送り先及び出荷先)、品名、出荷日、及び、数量が、同一である。 具体的には、甲6の受注番号と、甲25の受注番号とは同一の「R708325」である。甲6の宛先と、甲25の宛先とは同一の企業(商社)である。甲6の送り先と、甲25の出荷先とは同一の企業(発注元、工場まで同一)である。甲6の品名(手書き)と、甲25の品名とは同一の「9.5MS-TEセット品」である。 また、甲6の「備考」の欄に記載された「4/18」は、請求人による手書きで「4/24出4/25着へ変更いたします(弊社西本より)」と訂正されている。これは、2013年(甲6が発行された平成25年)4月24日が出荷日であることを意味する。一方、甲25の「出荷日」の欄に記載された「13/04/24」は、2013年4月24日に出荷されたことを意味する。従って、甲6の出荷日と、甲25の出荷日とは同一の「2013年4月24日」である。 さらに、甲6の「4/18」の右に記載された数量と、甲22の「数量」の欄における記載とは同一である。 ウ-4.甲第26号証 甲26は、甲6(注文書)の2013年4月23日納品分に対応する請求人の売上伝票(納品書)である。甲6と甲26とは、受注番号、主体(宛先、送り先及び出荷先)、品名、出荷日―納品日、及び、数量が、同一又は対応する。 具体的には、甲6の受注番号と、甲26の受注番号とは同一の「R708325」である。甲6の宛先と、甲26の宛先とは同一の企業(商社)である。甲6の送り先と、甲26の出荷先とは同一の企業(発注元、工場まで同一)である。甲6の品名(手書き)と、甲26の品名とは同一の「9.5MS-TEセット品」である。 また、甲6の「備考」の欄に記載された「4/23」は、2013年(甲6が発行された平成25年)4月23日が納品日であることを意味する。一方、甲26の「出荷日」の欄に記載された「13/04/22」は、2013年4月22日に出荷されたことを意味する。出荷日が納品日の前日であることから、出荷日と納品日とが対応する。 加えて、甲6の「4/23」の右に記載された数量と、甲26の「数量」の欄における記載とは同一である。 エ.注文書と売上伝票(納品書)との紐付け ウ-1.~ウ-4.で説明した売上伝票(甲23~26)と注文書(甲6)とが対応する根拠について説明する。この説明のために、甲第27~29号証を提出する。なお、甲27~29の赤下線は、請求人代理人による追記である。 エ-1.甲第27号証 甲27は、請求人が対応する書面として保管する、注文書及び売上伝票である。甲27の注文書と売上伝票とは、受注番号、主体、品名、数量、及び、出荷日が、同一である。従って、これらの項目が同一であれば、注文書と売上伝票とが対応すると言える。 具体的に、甲27の注文書も、甲6と同じく、「毎度ありがとうございます。・・・三笠産業(株)」のスタンプの上に、請求人により赤文字で番号が手書きされている。この番号は、受注番号であり、具体的には「R709280」である。一方、甲27の売上伝票の左上端にも同一の受注番号である「R709280」が記載されている。 甲27の注文書は、発注元が「●(省略)●」であり、品名が「9.5MS-TEセット品」であり、数量が「●(省略)●」個である。また、甲27の注文書は、請求人による手書きの「4/12出荷4/15着で手配します」の記載から、出荷日が「2013年4月12日」である。 一方、甲27の売上伝票は、宛先及び出荷先が「●(省略)●」であり、品名が「9.5MS-TEセット品」であり、数量が「●(省略)●」個であり、出荷日が「2013年4月12日」である。 従って、甲27では、対応する注文書及び売上伝票において、受注番号、主体、品名、数量、及び、出荷日が同一である。 ところで、甲27の注文書は、「4/12出荷4/15着で手配します」の記載から、納品日が「2013年4月15日」である。従って、納品日である「2013年4月15日」に、先行意匠1である「9.5MS-TEセット品」が「●(省略)●」に知られたと推認される。 エ-2.甲第28号証 甲28は、請求人が対応する書面として保管する、発注書及び売上伝票である。甲28の発注書と売上伝票とは、受注番号、主体、品名、数量、及び、出荷日が、同一である。従って、これらの項目が同一であれば、発注書と売上伝票とが対応すると言える。 具体的に、甲28の発注書も、甲6と同じく、「毎度ありがとうございます。・・・三笠産業(株)」のスタンプの上に、請求人により赤文字で受注番号が手書きされている。この受注番号は、「R710343」である。一方、甲28の売上伝票の左上端にも同一の受注番号である「R710343」が記載されている。 甲28の発注書は、発注元が「●(省略)●」であり、品名が「スパウト9.5MS-TEセット品」であり、数量が「●(省略)●」個である。また、甲28の発注書は、「4/30出荷」の記載から、出荷日が「2013年4月30日」である。 一方、甲28の売上伝票は、宛先及び出荷先が「●(省略)●」であり、品名が「9.5MS-TEセット品」であり、数量が「●(省略)●」個であり、出荷日が「2013年4月30日」である。 従って、甲28では、対応する発注書及び売上伝票において、受注番号、主体、品名、個数(数量)、及び、出荷日が同一である。 ところで、甲28の発注書における出荷日が「2013年4月30日 」であることから、その翌日辺りが納品日であると考えられる。従って、納品日と考えられる「2013年5月初旬」に、先行意匠1である「9.5MS-TEセット品」が「●(省略)●」に知られたと推認される。 エ-3.甲第29号証 甲29は、請求人が対応する書面として保管する、発注書及び売上伝票である。甲29の発注書と売上伝票とは、受注番号、主体、品名、数量、及び、出荷日が、同一である。従って、これらの項目が同一であれば、発注書と売上伝票とが対応すると言える。 具体的に、甲29の発注書も、甲6と同じく、「毎度ありがとうございます。・・・三笠産業(株)」のスタンプの上に、請求人により赤文字で受注番号が手書きされている。この受注番号は、「R737688」である。一方、甲29の売上伝票の上端にも同一の受注番号である「R737688」が記載されている。 甲29の発注書は、発注元が「●(省略)●」であり、品名及び規格が「スパウトセット品」及び「9.5 MSスパウト」であり、数量が「●(省略)●」個である。また、甲29の発注書は、「11/1出荷」の記載から、出荷日が「2013年11月1日」である。 一方、甲29の売上伝票は、宛先及び出荷先が「●(省略)●」であり、品名が「9.5MS-TEセット品」であり、数量が「●(省略)●」個であり、出荷日が「2013年11月1日」である。 従って、甲29では、対応する発注書及び売上伝票において、受注番号、主体、品名、個数(数量)、及び、出荷日が同一である。 ところで、甲29の売上伝票における納入日が「2013年11月5日」であることから、納入日である「2013年11月5日」に、先行意匠1である「9.5MS-TEセット品」が「●(省略)●」に知られたと推認される。 オ.さらなる証拠 「9.5MS-TEセット品」が公知に至ったさらなる証拠として、甲第30~34号証を提出する。なお、甲30~34の赤下線は、請求人代理人による追記である。 オ-1.甲第30号証 甲30は、●(省略)●への売上伝票である。甲30の「出荷先」、「品名」、「出荷日」及び「数量」の記載から、「●(省略)●」に「9.5MS-TEセット品」が「2013年4月12日」に「●(省略)●」個出荷された証拠となる。 オ-2.甲第31号証 甲31は、●(省略)●への売上伝票である。甲31の「出荷先、「品名」、「出荷日」及び「数量」の記載から、「●(省略)●」に「9.5MS-TEセット品」が「2013年4月12日」に「●(省略)●」個出荷された証拠となる。 オ-3.甲第32号証 甲32は、●(省略)●への売上伝票である。甲32の「出荷先」、「品名」、「出荷日」及び「数量」の記載から、「●(省略)●」に「9.5MS-TEセット品」が「2013年4月15日」に「●(省略)●」個出荷された証拠となる。 オ-4.甲第33号証 甲33は、●(省略)●への売上伝票である。甲33の「出荷先」、「品名」、「納入日」及び「数量」の記載から、「●(省略)●」に「9.5MS-TEセット品」が「2013年11月5日」に「●(省略)●」個納入された証拠となる。 オ-5.甲第34号証 甲34は、●(省略)●への売上伝票である。甲34の「出荷先」、「品名」、「納入日」及び「数量」の記載から「●(省略)●工場」に「9.5MS-TEセット品」が「2013年11月5日」に「●(省略)●」個納入された証拠となる。 (6)審尋の「6.原本確認」に対して 甲1及び甲6の原本を証拠申出する。 3 「口頭審理陳述要領書」における主張 (口頭審理陳述要領書の第2~11ページ) 陳述の要領 (1)概要 審理事項通知書の第1ページの記載である 「請求人は、合議体の暫定的な見解を踏まえ、主として「第2(2)」に記す項目に従い、意見等を記載した口頭審理陳述要領書を作成してください。」と、 審理事項通知書の「第2(2)」の記載である 「(請求人に対して)(2)被請求人の審判事件答弁書、回答書及び被請求人の送付する口頭審理陳述要領書の主張(無効理由1及び2に関する主張)に対して、意見等を述べてください。」と、 に基づき、以下、請求人は、被請求人の主張(無効理由1及び2に関する主張)に対する意見を述べる。 (2)被請求人の主張に対して 以下、被請求人が送付した口頭審理陳述要領書を、単に「口頭審理陳述要領書」と称する。一方、請求人が作成した口頭審理陳述要領書、つまり本書を「本書」と称する。 (2-1)口頭審理陳述要領書の「6.(1)ア」(本件審決の第3の3(1)ア) (2-1-1)口頭審理陳述要領書に「印刷会社が、それ(請求人が作成した書面に署名及び捺印)を断ることは、常識的に考えられません。」と記載されている。また、「印刷会社も・・何ら不利益が無いですし、印刷会社が・・・それを断る理由も有りません。」と記載されている。 このような記載から、何を被請求人が主張しようとしているのか明確ではないが、推測として、被請求人は「印刷会社は自身の意に反して甲第19号証に署名及び捺印をした」と主張するつもりだったと考えられる。 しかしながら、常識的に考えれば、印刷会社は、署名及び捺印をすれば責任を負うことになる以上、自身の意に反して署名及び捺印をすることはない。特に、甲第19号証は、印刷会社の「代表取締役」により署名及び捺印がされたものである。代表取締役は、自身の代表する印刷会社の危険を冒してまで、意に反する内容に署名及び捺印をすることはなく、意に反する内容であれば署名及び捺印をしないのが通常である。従って、甲第19号証は、署名及び捺印をした印刷会社の意思を表した、確かな証拠であることに違いない。 (2-1-2)口頭審理陳述要領書に「甲第19号証は、後から作成された証拠であり、立証が不十分」と記載されている。 しかしながら、甲第19号証は、「2012年当時に守秘義務契約(秘密保持契約)を印刷会社と請求人とで締結していなかった」ことを確認するものなので、その作成日時が2012年より後でも、証拠として何ら問題はない。 従って、「甲第19号証は、後から作成された証拠であり、立証が不十分」との被請求人の主張は、失当である。 (2-2)口頭審理陳述要領書の「6.(1)イ(ア)」(本件審決の第3の3(1)イ(ア)) (2-1-1)口頭審理陳述要領書に「ここで、「公然知られた意匠」とは、・・ものとは言えない。」との記載から、被請求人は、判例(東京高判H12.12.25 6本ロールカレンダー事件)に基づいて、「印刷会社は、請求人のために秘密を保つべき関係にある者」と主張している。 しかしながら、「6本ロールカレンダー事件」は、本件の事案と前提が大きく異なるので、本件の事案に適用できない。 具体的に説明すると、「6本ロールカレンダー事件」は、「開発がらみの引き合いのために、発明の実施品を製造するために必要な図面を、特定の製造業者に開示した」判例である。この判例では、開示された側の「特定の製造業者」が、開示された技術内容が機密扱いされるべきことを認識及び理解する能力及び経験を有する、ということが前提の1つとされている。これに対して、本件の事案は、機密扱いされるべき技術内容ではなく、カタログ(甲第1号証)についての請求人から印刷会社への印刷の発注である。カタログは頒布される刊行物であるので、印刷会社は、カタログ(甲第1号証)を機密扱いされるべきとは認識及び理解していない。 従って、「6本ロールカレンダー事件」を本件の事案に適用できないので、被請求人の「6本ロールカレンダー事件」に基づく主張は失当である。 (2-2-2)口頭審理陳述要領書の「6.(1)イ(ア)」(本件審決の第3の3(1)イ(ア))に「更に、一般的に、会社の従業員主張は、失当です。」との記載がある。この記載を要約すると、被請求人の主張は、「「古河鉱業足尾製作所事件」に基づくと、印刷会社の従業員等は在職中に秘密保持義務を負っていると解されるので、印刷会社の従業員等に甲第1号証の先行意匠1が知られても、先行意匠1は公然知られた意匠に該当しない」ということである。 しかしながら、「古河鉱業足尾製作所事件」は、会社の内部での(会社と従業員等との)秘密保持義務に関する労働事件の判例である。請求人は印刷会社の従業員等ではないので、言うまでもなく、この労働事件の判例を本件の事案に適用できない。 従って、被請求人の「古河鉱業足尾製作所事件」に基づく主張は失当である。 (2-3)口頭審理陳述要領書の「6.(1)イ(イ)」(本件審決の第3の3(1)イ(イ)) 審理事項通知書に「両当事者は、すでに主張した内容を繰り返す必要はありません。」と記載されている。 にもかかわらず、口頭審理陳述要領書の「審判事件答弁書・・に示すように、」及び「更に、被請求人は、審判事件答弁書に示すように、」の記載から明らかなように、被請求人は、すでに主張した内容を繰り返している。 請求人としても、主張した内容の繰返しにより議論を複雑にすることを望まないが、被請求人が繰り返す上述の主張に対して意見を述べていないので、以下、簡潔に意見を述べる。 被請求人は、本件登録意匠と先行意匠1との差異点として、離形用突起の形状を説明している。離形用突起は、需要者である充填メーカー及び袋メーカーからすれば、視覚を通じて起こさせる美感に影響を与えない程に、物品全体に対して極めて小さく、且つ、目立たない部分である。 従って、本件登録意匠と先行意匠1とは、形態の差異点が微差ですので、同一又は少なくとも類似する。 (2-4)口頭審理陳述要領書の「6.(1)ウ(ア)」(本件審決の第3の3(1)ウ(ア)) 口頭審理陳述要領書に「審理事項通知書の「2 甲第1号証についての合議体の見解」に・・」と記載されている。 以下、審理事項通知書の「2 甲第1号証についての合議体の見解」に沿って、新たに提出する間接証拠について説明する。 審理事項通知書における「2 甲第1号証についての合議体の見解」である第3ページの第4行目に「なお、甲第1号証(カタログ)が出願前に頒布されたことを示す書証として、請求人は、甲第8~18号証を回答書に添付して提出しているが、いずれも甲第1号証のカタログ名「キャップ&ボトル総合カタログ 2013」と同一と認められるカタログ名は記載されていない。 請求人は、甲第1号証が本件登録意匠の出願前に頒布されていることを示す更なる間接事実を主張し、それを立証する間接証拠(第三者による陳述書など)を提出することを検討してください。」と記載されている。 従って、甲第1号証が本件登録意匠の出願前に頒布されていることを立証する間接証拠を、甲第35号証として提出する。また、甲第1号証にも示された先行意匠1が本件登録意匠の出願前に公然知られたことを立証する間接証拠も、甲第36号証として提出する。甲第35号証及び甲第36号証は、本件登録意匠の出願(2021年1月21日)より前のメールである甲第12号証及び甲第10号証を補強する。以下、甲第35号証及び甲第36号証をそれぞれ具体的に説明する。 (2-4-1)甲第35号証 甲第35号証は、甲第12号証のメールに基づき、このメールの受信者が「キャップ&ボトル総合カタログ 2013」を2013年12月16日(月)に受領したことを確認する書面である。 従って、甲第35号証により、「キャップ&ボトル総合カタログ2013」(甲第1号証)が、本件登録意匠の出願(2021年1月21日)前である2013年12月16日(月)に、頒布されていることが立証される。 (2-4-2)甲第36号証 甲第36号証は、甲第10号証のメールに基づき、このメールの受信者が添付ファイルの先行意匠1を2018年10月中に知ったことを確認する書面である。 甲第10号証は、請求人の回答書(本件審決の第2の2(2)(2-1-3))に記載されているとおり、2013年版のカタログ(甲第1号証)ではなく、2014年版のカタログ(甲第11号証)の抜粋(先行意匠1)が添付されている。添付された内容は、甲第10号証及び甲第36号証から明らかなように、先行意匠1である。甲第1号証(2013年版のカタログ)及び甲第11号証(2014年版のカタログ)の「9.5MSTEセット品」は、これらを比較すると明らかなように、同一の先行意匠1である。 従って、甲第36号証により、「キャップ&ボトル総合カタログ2014」(甲第11号証)に開示された先行意匠1が、本件登録意匠の出願(2021年1月21日)前である2018年10月中に、公然知られていることが立証される。 (2-5)口頭審理陳述要領書の「6.(1)ウ(イ)」(本件審決の第3の3(1)ウ(イ)) 本件登録意匠と先行意匠1との類否についてであり、本書の「6-2(3)」(本件審決の上記(2-3))で上述したとおりである。 (2-6)口頭審理陳述要領書の「6.(1)エ」(本件審決の第3の3(1)エ) 審理事項通知書の「3 主な争点」及び「第2 審理事項」に、争点である「無効理由1及び2」に関する主張に対して意見を述べる旨が記載されている。 にもかかわらず、口頭審理陳述要領書の「6.(1)エ」(本件審決の第3の3(1)エ)では、無効理由3及び4について主張している。 請求人としても、争点以外について意見を述べることで、議論を徒に複雑にすることを望まない。しかしながら、口頭審理陳述要領書の「6.(1)エ」には、被請求人が意匠登録制度及び実用新案登録制度を大きく誤解している記載が見られるので、その点について意見を述べる。 口頭審理陳述要領書(本件審決の第3の3(1)エ(ア)b)に「請求人は、・・公然知られた意匠であると主張しており、・・現実にその内容が知られた意匠であることから、何ら権利が発生しない意匠であることを自認しています。」と記載されている。 しかしながら、公然知られた意匠でも、請求人には意匠登録を受ける権利(意匠法第4条第2項)が発生している。請求人は、意匠登録出願をしていないが、意匠登録出願前でも、意匠登録を受ける権利は意匠法で明確に認められている(意匠法第15条第2項で準用する特許法第34条第1項)。 従って、請求人が公知にしたからといって、その公知の対象に、何ら権利が発生していないと思い込み、意匠登録出願及び実用新案登録出願をして意匠権及び実用新案権を取得することは、無用の紛争を生じさせるだけでなく、第三者にも不利益を与えることになる。 また、口頭審理陳述要領書(本件審決の第3の3(1)エ(ア)b)に「本件登録意匠と同日に実用新案登録出願をして、且つ、実用新案技術評価書を請求し・・このような行為は、実用新案登録制度と意匠制度を活用した正当な行為」と記載されている。 しかしながら、他人の公知製品について意匠登録出願及び実用新案登録出願をしても、その後に実用新案技術評価書を受ければ正当な行為になる、というものではない。この点は、実用新案技術評価制度の趣旨からすれば、明らかである。 (2-6-1)口頭審理陳述要領書の「6.(1)エ(ア)d及びe」(本件審決の第3の3(1)エ(ア)d及びe) 口頭審理陳述要領書の「6.(1)(ア)d及びe」(本件審決の第3の3(1)エ(ア)d及びe)も、審理事項通知書で示された「無効理由1及び2」とは異なる無効理由3についての主張であるので、以下、簡潔に意見を述べる。 dについては、被請求人は「営業秘密の申出により、寸法の数値が不明」と主張しているが、「営業秘密の申出」前の甲号証を見れば、寸法の比率が明確である。 eについては、被請求人は「T0」と「T-0」との関係が不明と主張しているが、当業者であれば、「T0」と「T-0」とは、いずれも「トライ0回」を意味する表記の揺れであることが明らかである。 (2-7)口頭審理陳述要領書の「6.(1)オ」(本件審決の第3の3(1)オ) 口頭審理陳述要領書の「6.(1)オ」も、審理事項通知書で示された「無効理由1及び2」とは異なる無効理由3についての主張ですので、以下、簡潔に意見を述べる。 (2-7-1)口頭審理陳述要領書の「6.(1)オ(ア)」(本件審決の第3の3(1)オ(ア)) 「6本ロールカレンダー事件」及び「古河鉱業足尾製作所事件」が本件の事案に適用されないことは、本書の「6-2.(2)」(本件審決の上記(2-2))で述べたとおりである。 (2-7-2)口頭審理陳述要領書の「6.(1)オ(イ)」(本件審決の第3の3(1)オ(イ)) 審判事件答弁書(本件審決の第3の1(2)イ(イ)b)には、甲第4号証、甲第4-1号証及び甲第4-2号証(以下、甲第4号証等)に、外部形状と断面形状とが含まれているので、意匠全体として不明確と記載されている。 しかしながら、甲第4号証等は、意匠登録出願のための図面ではなく、当業者が使用する図面である。当業者であれば、外部形状と断面形状とが含まれている図面を使用するので、甲第4号証等から意匠を明確に把握できる。 (2-8)口頭審理陳述要領書の「6.(1)カ~ク」(本件審決の第3の3(1)カ~ク) 口頭審理陳述要領書の「6.(1)カ~ク」も、審理事項通知書で示された「無効理由1及び2」とは異なる無効理由4~6についての主張である。 請求人としても、争点以外について意見を述べることで、議論を徒に複雑にすることを望まないが、場合によっては無効理由6も争点になる可能性があるので、以下に意見を述べる。 (2-8-1)口頭審理陳述要領書の「6.(1)ク」(本件審決の第3の3(1)ク) 口頭審理陳述要領書の「6.(1)ク」で、被請求人は、無効理由6について、本件登録意匠と同日出願意匠とが非類似である旨を主張している。 一方で、被請求人は、意匠の要部についての主張として、審判事件答弁書(本件審決の第3の1(2)ア)で「口部が、関心をもって観察される部位となり得ない」(つまり要部でない)と主張し、「上蓋部と封印体との間の形態は、・・関心を持って観察される部位である」(つまり要部である)と主張している。 また、被請求人は、本件登録意匠と同日出願意匠との相違点として、審判事件答弁書(本件審決の第3の1(5)イ(カ))に、形状(a8)及び形状(d8)のみを上げている。形状(a8)及び形状(d8)は、審判事件答弁書(本件審決の第3の1(3)ア(ア)及び同(5)イ(イ))の記載から明らかなように、いずれも口部である。 従って、本件登録意匠と同日出願意匠とは、被請求人が要部でないと主張する口部の形状(a8、d8)のみが相違する。また、本件登録意匠と同日出願意匠とは、被請求人が要部であると主張する上蓋部と封印体との間の形態が、審判事件答弁書(本件審決の第3の1(5)イ(カ))の正面図の比較(乙第1号証及び乙第18号証)から明らかなように、完全に同一である。 以上より、意匠の要部についての被請求人の主張が正しい場合、本件登録意匠と同日出願意匠とは類似するので、本件登録意匠に係る意匠登録は、無効理由6を有することになる。 (2-9)無効理由4の取下げ 請求人としては、主な争点である無効理由1及び2が十分に成立すると考えるので、審理を複雑にしないためにも、無効理由4を取り下げる。 (当審注:下記第4のとおり、無効理由4は、口頭審理において取り下げられ、被請求人も無効理由4の取下げを認めている。) 4 請求人添付の証拠 甲第1号証 2013年版のカタログ(原本及び写し) 甲第2号証 甲1のカタログを印刷した印刷会社から請求人宛の見積書(写し) 甲第3号証 甲1のカタログを印刷した印刷会社株式会社から請求人宛の請求書(写し) 甲第4号証 請求人の意匠に係る物品の製造用図面(セット図面)(写し) 甲第4-1号証 請求人の意匠に係る物品の製造用図面(被せる部分の図面)(写し) 甲第4-2号証 請求人の意匠に係る物品の製造用図面(被せられる部分の図面)(写し) 甲第5号証 請求人から、請求人の意匠に係る物品の金型を製造した金型メーカヘの金型発注書・注文請書(写し) 甲第6号証 請求人の意匠に係る物品の顧客から請求人宛の注文書(原本及び写し) 甲第8号証 請求人から顧客へのEメール(甲1を添付)(写し) 甲第9号証 請求人から顧客へのEメール(2014年版のカタログを添付)(写し) 甲第10号証 請求人から顧客へのEメール(2014年版のカタログを添付)と返信(写し) 甲第11号証 2014年版のカタログ(原本及び写し) 甲第12号証 請求人から顧客へのEメール(写し) 甲第13号証 請求人から顧客へのEメールと返信(写し) 甲第14号証 請求人から顧客へのEメールと返信(写し) 甲第15号証 請求人におけるEメールのやり取り(写し) 甲第16号証 顧客が請求人の工場に見学する旨を請求人において連絡する工場見学届(写し) 甲第17号証 請求人におけるEメールのやり取り(写し) 甲第18号証 請求人におけるEメールのやり取り(写し) 甲第19号証 印刷会社による甲1の印刷及び守秘義務が無い旨の確認書(原本) 甲第20号証 神奈川県異業種連携協議会のホームページを印刷した書面(写し) 甲第21号証 プラスチック加工.labのホームページを印刷した書面(写し) 甲第22号証 YAMAHA MOTOR TECHNICALREVIEWの技術論文のホームページを印刷した書面(写し) 甲第23号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第24号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第25号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第26号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第27号証 顧客の注文書、及び、請求人の売上伝票(写し) 甲第28号証 顧客の発注書、及び、請求人の売上伝票(写し) 甲第29号証 顧客の発注書、及び、請求人の売上伝票(写し) 甲第30号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第31号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第32号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第33号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第34号証 請求人から顧客への売上伝票(写し) 甲第35号証 甲12に基づき甲1が出願前に頒布された旨の確認(原本) 甲第36号証 甲10に基づき甲11の請求人の先行意匠1が出願前に知られた旨の確認(原本) (当審注:下記第4のとおり、甲第7号証は、口頭審理において証拠申し出が撤回され、被請求人も撤回を認めている。) 第3 被請求人の答弁及び理由の要点 被請求人は、審判事件答弁書を提出し、答弁の趣旨を「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と答弁し、その理由を、おおむね以下のとおり主張した(「回答書」、「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)。 1 「審判事件答弁書」における主張 (審判事件答弁書の第1~37ページ) 答弁の理由 (1) 審判請求書の「6 請求の理由」(本件審決の第2の1)に対する認否 ア「(1)本件意匠登録」(審判請求書(以下単に「請求書」を記す。)第2ページ(本件審決の第2の1(1))について、認める。 イ「(2)手続の経緯」(請求書第2ページ(本件審決の第2の1(2)))について、認める。 ウ「(3)無効理由の要点」(請求書第2ページ(本件審決の第2の1(3)))について、全て否認ないし争う。 エ「(4)本件意匠登録を無効とすべき理由」(本件審決の第2の1(4)) (ア)「(i)本件登録意匠の要旨」(請求書第2-4ページ(本件審決の第2の1(4)(i)))について、「本件登録意匠の需要者は、本物品を購入する者、すなわち、充填メーカー、及び、袋メーカーなどであること」、「需要者である充填メーカー及び袋メーカーにとって、本件登録意匠の口部が、関心を持って観察される部位であること」、「本件登録意匠の要部は、口部であること」、「本件登録意匠と同日出願意匠とが非類似であるには、共通しない部分(つまり口部)が意匠の要部となること」については、否認ないし争い、その余の請求人特定については認める。 (イ)「(ii)先行意匠が存在する事実及び証拠の説明」 a「(ii)-1.先行意匠1(カタログ)」(請求書第5-6ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-1))について、「R121025が、2012年10月に2500部が印刷されたことを意味すること」、「甲第2号証がカタログについての見積書であること」、「甲第3号証がカタログについての請求書であること」、「カタログの印刷は、2012年9月10日~同年10月16日に行われたこと」、「カタログに掲載された意匠は、2012年10月までに公然知られたこと」については、否認ないし争い、その余の請求人特定については認める。 b「(ii)-2.先行意匠2(製造用図面)」(請求書第7-8ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-2))については、「甲第4号証は、カタログに掲載された意匠に係るキャップ「9.5MS-TEセット品」の製造用図面であること」、「甲第4-1号証は、カタログに掲載された意匠に係るキャップのセット品の被せる部分の製造用図面であり、甲第4-2号証は、カタログに掲載された意匠に係るキャップのセット品の被せられる部分の製造用図面であること」、「甲第4-1及び4-2号証から、前記キャップの構成部品(被せる部分及び被せられる部分)の外部形状が明らかなので、セット品としての外部形状も明らかであること」、「甲第5号証は、前記製造用図面に基づきキャップ「9.5MS-TEセット品」を製造するための金型発注書・注文請書であること」、「金型発注書には、甲第4-1号証及び甲第4-2号証に記載された金型コードと一致する「●(省略)●」及び「●(省略)●」の記載があること」、「製造用図面に現わされた意匠は、●(省略)●までに公然知られていること」について、否認ないし争い、その余の請求人特定については認める。 c「(ii)-3.先行意匠3(販売されたキャップ)」(請求書第8-9ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-3))について、 「甲第6号証は、カタログに掲載された「9.5MS-TEセット品」についての顧客からの注文書であること」、「販売されたキャップ「9.5MS-TEセット品」に係る意匠は、2013年4月11日までに公然に知られていること」、「請求人から顧客に販売されたキャップ「9.5MS-TEセット品」の見本」については、否認ないし争い、その余の請求人特定については認める。 (ウ)「(iii)本件登録意匠と先行意匠との対比」(請求書第9-11ページ(本件審決の第2の1(4)(iii)))について、全て否認ないし争う。 (エ)「(iv)本件登録意匠と先行意匠との類否」(請求書第12ページ(本件審決の第2の1(4)(iv)))について、全て否認ないし争う。 オ「(5)むすび」(請求書第12ページ(本件審決の第2の1(5))))について、全て否認ないし争う。 カ「(6)その他」 (ア)「(i)意匠法第3条第1項第1号及び第2号の規定による無効理由」(請求書第12ページ(本件審決の第2の1(6)(i)))について、全て否認ないし争う。 (イ)「(ii)意匠法第9条第2項の規定による無効理由」(請求書第13ページ(本件審決の第2の1(6)(ii)))について、全て否認ないし争う。 なお、以下の被請求人による本件登録意匠の特定においては、部材名称の「上蓋部」と「封印帯」と「口部」のそれぞれを、請求人特定の本件登録意匠の部材名称に合わせる。 (2)請求人主張に対する反論 ア 「(i)本件登録意匠の要旨」(請求書第2-4ページ(本件審決の第2の1(4)(i)))について (ア)請求人は、「本件登録意匠の需要者は、本物品を購入する者、すなわち、充填メーカー、及び、袋メーカーなどである」、「需要者である充填メーカー及び袋メーカーにとって、本件登録意匠の口部が、関心を持って観察される部位である」、「本件登録意匠の要部は、口部である」と主張する(請求書第3ページ(本件審決の第2の1(4)(i)))。 しかしながら、本物品の口部を容器口部に溶着した後の容器は、大多数のスーパーや店に置かれ、大多数の一般消費者に手に取られて、消費されるため、需要者は、一般消費者にも及ぶと考える。その場合、本物品の口部を容器口部に溶着した後の容器では、本物品の口部は容器口部で覆いかぶさり、外部から視認することが出来ないため、本件登録意匠の口部が、関心を持って観察される部位となり得ないと考える。 一方、本物品の口部を容器口部に溶着した後の容器では、本物品の上蓋部と封印帯とが容器口部から露出することから、本物品の上蓋部と封印帯とが、正面視で最初に視認される部位であると考えるべきである。又、封印帯付きキャップは、一般的に、不正開封防止機能(ピルファープルーフ機能)を目的としている構成であることから、封印帯が、上蓋部と接続しているか、上蓋部と分離しているかは、極めて重要な事項であり、上蓋部と封印帯との間の形態は、封印帯付きキャップの開閉に直接関係する一般消費者にとって、関心を持って観察される部位となる。更に、上蓋部と封印帯との間の形態は、封印帯付きキャップの開閉の容易さや円滑さに直接関係する部分にもなるため、封印帯付きキャップの開発、製造に携わるキャップメーカーにとっても、関心を持って観察される部位となる。 従って、本物品の上蓋部と封印帯との間の形態は、充填メーカー及び袋メーカーのみならず、一般消費者及びキャップのメーカーにとっても関心を持って観察される部位であると考えるべきである。 (イ)請求人は、「本件登録意匠と同日出願意匠とが非類似であるには、共通しない部分(つまり口部)が意匠の要部となる」と主張する(請求書第4ページ(本件審決の第2の1(4)(i)))。 しかしながら、「意匠審査基準第2章新規性 創作非容易性第1節新規性2.新規性の判断 2.2.2.7 総合的な類否判断」(9ページ)には、「両意匠の形状等における各共通点及び差異点についての個別評価に基づき、意匠全体として両意匠の全ての共通点及び差異点を総合的に観察した場合に、需要者(取引者を含む)に対して異なる美感を起こさせるか否かを判断する。意匠は、全体が有機的なつながりを持って結合されたものであるから、各共通点及び差異点を個別に評価するだけでは、類否を判断することはできない。各形状等の組合せにも注意しつつ共通点及び差異点を総合的に検討した場合に、それら共通点及び差異点が意匠全体の美感の類否に対し、どのような影響を与えているかを評価しなければならない。」と記載され、「(2)意匠に係る物品等の全体の形状等(基本的構成態様)」(9ページ)には、「意匠に係る物品等の全体の形状等(基本的構成態様)は、意匠の骨格ともいえるものであって、視覚を通じて起こさせる美感への影響が最も大きい。 よって、意匠が類似するためには、原則として、意匠に係る物品等の全体の形状等(基本的構成態様)が共通することが必要である。」と記載されている。 つまり、意匠の類否判断では、両意匠の形状等における各共通点及び差異点についての個別評価に基づき、意匠全体として両意匠の全ての共通点及び差異点を総合的に観察した場合に、需要者に対して異なる美感を起こさせるか否かを判断する必要があり、原則として、基本的構成態様が共通することが必要であるところ、本件登録意匠の基本的構成態様では、口部に2本の縦のリブと2本の横のリブが形成され、縦のリブと横のリブ以外に溝部が形成されている一方、同日出願意匠の基本的構成態様では、口部について、側面が平面で形成されるとともに、上端に1本のリブが縦に形成され、下端に1本の太いリブが縦に形成され、上端のリブと下端のリブとの間に、等間隔に2本のリブが縦に形成されており、それぞれの基本的構成態様が全く相違しており、これにより、看者への印象が全く異なることから、両意匠は、非類似であり、請求人主張は、失当である。 イ「(ii)先行意匠が存在する事実及び証拠の説明」(請求書第5-9ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)))について (ア)「(ii)-1.先行意匠1(カタログ)」(請求書第5-6ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-1.))について a 請求人は、「R1210 2.5が、2012年10月に2500部が印刷されたことを意味する」と主張する(請求書第5ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-1.[ア]))。 しかしながら、「R1210 2.5」が「2012年10月に2500部が印刷されたこと」を示す客観的な証拠がなく、請求人主張は、失当である。 b 請求人は、「甲第2号証がカタログについての見積書である」、「甲第3号証がカタログについての請求書である」、「カタログの印刷は、2012年9月10日~同年10月16日に行われた」と主張する(請求書第5-6ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-1.[イ]))。 しかしながら、甲第2号証の案件と、甲第3号証の商品コード/商品名には、共通して、「2013~総合カタログ 追加修正増刷(90kg・2,500部)一式」と記載されているものの、この「2013~総合カタログ 追加修正増刷(90kg・2,500部)一式」が、甲第1号証のカタログであることを示す客観的な証拠がなく、請求人主張は、失当である。 c 請求人は、「カタログに掲載された意匠は、2012年10月までに公然知られた」と主張する(請求書第6ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-1.[イ]))。 ここで、「公然知られた意匠とは、不特定の者に秘密でないものとして現実にその内容が知られた意匠のこと」を意味するところ、甲第2号証の見積書や甲第3号証の請求書は、請求人と印刷会社との間でのみ取り交わされた書面であり、不特定の者に秘密でないものとして取り交わされた書面ではない。又、請求人は、甲第2号証の見積書や甲第3号証の請求書について、営業秘密に関する申出書を提出しており、請求人自身が、甲第2号証の見積書や甲第3号証の請求書について、営業秘密の書面として自認している。更に、通常の商取引において、請求人と印刷会社との間に守秘義務契約が行われるか、守秘義務契約が行われていなかったとしても、請求人と印刷会社とに守秘義務が生じるのは、商慣行上、当然のことと言える。 従って、カタログに掲載された意匠は、印刷の過程で印刷会社の従業員等に知られたとしても、それによって、カタログに掲載された意匠が、不特定の者に秘密でないものとして現実にその内容が知られたことを示すことは出来ず、請求人主張は、失当である。 又、「カタログに掲載された意匠は、2012年10月までに公然知られた」を主張するためには、カタログが第三者に頒布された事実を具体的に示す必要があるものの、そのような事実を具体的に示す客観的な証拠がなく、請求人主張は、失当である。 (イ)「(ii)-2.先行意匠2(製造用図面)」(請求書第7-8ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-2.))について a 請求人は、「甲第4号証は、カタログに掲載された意匠に係るキャップ「9.5MS-TEセット品」の製造用図面であること」、「甲第4-1号証は、カタログに掲載された意匠に係るキャップのセット品の被せる部分の製造用図面であり、甲第4-2号証は、カタログに掲載された意匠に係るキャップのセット品の被せられる部分の製造用図面であること」と主張する(請求書第7ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-2.[ア]))。 しかしながら、甲第1号証のカタログには、「9.5MS-TEセット品」のところに、「9.5MS-TEcap 入数4,000 CDL078」と、「9.5MSスパウト 入数3,000 CDL079」と記載されているが、甲第4号証の品名には、「9.5MSスパウト セット図面」と記載され、甲第4-1号証の品名には、「9.5MSスパウトキャップ 1型 製品図面」と記載され、甲第4-2号証の品名には、「9.5MSスパウト 1型 製品図面」と記載されており、それぞれの名称が一致していない。そのため、請求人主張は、失当である。 (当審注:図省略) なお、甲第4号証における赤印の部分について、「出図」と「三笠産業株式会社」とロゴの赤色に対して、「2012.06.26」の日付の赤色が、微妙に異なり、印影としての一体性を欠いている。例えば、「出図」と「三笠産業株式会社」とロゴには、赤色の他に黒色が見られる一方、「2012.06.26」の日付には、やや薄めの赤色のみしか見られない。同様に、甲第4-1号証、甲第4-2号証における「出図」と「三笠産業株式会社」とロゴの赤色に対して、「2012.03.28」の日付の赤色が、微妙に異なり、印影としての一体性を欠いている。この押印について、信用性が欠けると考える。 (当審注:図省略) b 請求人は、「甲第4-1及び4-2号証から、前記キャップの構成部品(被せる部分及び被せられる部分)の外部形状が明らかなので、セット品としての外部形状も明らかであること」と主張する(請求書第7ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-2.[ア]))。 しかしながら、甲第4号証の製造用図面の右側面図及び正面図と、甲第4-2号証の製造用図面の正面図において、左側が口部の外部形状と上蓋部及び封印帯の断面形状と口部の内部形状を示し、右側が口部と上蓋部と封印帯の断面形状を示しており、請求人が指摘のように、キャップの外部形状と内部形状とを混在して示しているからこそ、内部形状から外部形状を予測することは不可能であり、意匠全体として不明確である。また、甲第4-1号証の製造用図面の正面図において、断面図しか示されていない。そのため、このような製造用図面では、外部形状を意匠として明確に表したとは言えないことから、本件登録意匠との比較も不可能であり、請求人主張は、失当である。 (当審注:図省略) c 請求人は、「甲第5号証は、前記製造用図面に基づきキャップ「9.5MS-TEセット品」を製造するための金型発注書・注文請書であること」、「金型発注書には、甲第4-1及び4-2号証に記載された金型コードと一致する「●(省略)●」及び「●(省略)●」の記載があること」と主張する(請求書第7-8ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-2.[イ]))。 しかしながら、甲第5号証の金型発注書・注文請書には「金型コード●(省略)● 9.5MSスパウト 1型」と記載されているところを、金型コードの「●(省略)●」のうち、「●(省略)●」に手書きで二重線を加筆して、その上に「●(省略)●」を手書きで加筆している。又、「金型コード●(省略)● 9.5MSスパウトキャップ 1型」と記載されているところを、金型コードの「●(省略)●」のうち、「●(省略)●」に手書きで二重線を加筆して、その下に「●(省略)●」を手書きで加筆している。そのため、甲第5号証の金型発注書の発行時において、甲第4-1号証及び甲第4-2号証に記載された金型コードと一致していたか不明であり、甲第5号証は、信用性を欠く書面であり、この加筆の理由についても客観的な証拠がなく、請求人主張は、失当である。 (当審注:図省略) d 請求人は、「製造用図面に現わされた意匠は、●(省略)●までに公然知られていること」と主張する(請求書第8ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-2.[イ]及び[ウ]))。 しかしながら、甲第4号証、甲第4-1号証、甲第4-2号証の製造用図面や甲第5号証の金型発注書・注文請書は、請求人と金型メーカーとの間でのみ取り交わされた書面であり、不特定の者に秘密でないものとして取り交わされた書面ではない。又、請求人は、上述と同様に、甲第4号証、甲第4-1号証、甲第4-2号証の製造用図面や甲第5号証の金型発注書 注文請書について、営業秘密に関する申出書を提出しており、請求人自身が、これらの書面について、営業秘密の書面として自認している。更に、通常の商取引において、請求人と金型メーカーとの間に守秘義務契約が行われるか、守秘義務契約が行われていなかったとしても、請求人と金型メーカーとに守秘義務が生じるのは、商慣行上、当然のことと言える。 従って、製造用図面に現わされた意匠は、金型を製作する過程で金型メーカーの従業員等に知られたとしても、それによって、製造用図面に現わされた意匠は、不特定の者に秘密でないものとして現実にその内容が知られたことを示すことは出来ず、請求人主張は、失当である。 (ウ)「(ii)-3.先行意匠3(販売されたキャップ)」(請求書第8-9ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-3.))について a 請求人は、「甲第6号証は、カタログに掲載された「9.5MS-TEセット品」についての顧客からの注文書であること」を主張する(請求書第8-9ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-3.[ア]))。 しかしながら、甲第6号証の注文書の品名には、「三笠産業製9mmスパウト」と記載され、その下に「9.5MS-TEセット品 日/N」を手書きで加筆している。そのため、甲第6号証の注文書の発行時において、カタログに掲載の「9.5MS-TEセット品」と一致していたか不明であり、甲第6号証は、信用性を欠く書面であり、この加筆の理由についても客観的な証拠がない。 (当審注:図省略) 又、甲第6号証の注文書に記載されたキャップがカタログに掲載された「9.5MSTEセット品」であるか否かも不明であり、請求人主張は、失当である。 b 請求人は、「販売されたキャップ「9.5MS-TEセット品」に係る意匠は、2013年4月11日までに公然に知られていること」を主張する(請求書第9ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-3.[イ]))。 しかしながら、甲第6号証の注文書は、請求人と顧客との間でのみ取り交わされた書面であり、不特定の者に秘密でないものとして取り交わされた書面ではない。又、請求人は、甲第6号証の注文書について、営業秘密に関する申出書を提出しており、請求人自身が、甲第6号証の注文書について、営業秘密の書面として自認している。更に、通常の商取引において、請求人と顧客との間に守秘義務契約が行われるか、守秘義務契約が行われていなかったとしても、請求人と顧客とに守秘義務が生じるのは、商慣行上、当然のことと言える。 従って、販売されたキャップ「9.5MS-TEセット品」に係る意匠は、注文された時点で、顧客に知られたとしても、それによって、販売されたキャップ「9.5MS-TEセット品」に係る意匠は、不特定の者に秘密でないものとして現実にその内容が知られたことを示すことは出来ず、請求人主張は、失当である。 又、「販売されたキャップに係る意匠は、2013年4月11日までに公然に知られていること」を主張するためには、注文書のみでは足らず、例えば、納品書、検収書、請求書等の販売の事実を具体的に示す証拠が必要であるところ、そのような事実を具体的に示す客観的な証拠がない。 更に、販売を以て、公知意匠を主張するのであれば、いつ、誰に、どのようなキャップを販売して、当該キャップがどのような意匠なのかを具体的に主張する必要があるところ、そのような事実を具体的に示す客観的な証拠がなく、請求人主張は、失当である。 c 請求人は、「請求人から顧客に販売されたキャップ「9.5MS-TEセット品」の見本」を主張する(請求書第9ページ(本件審決の第2の1(4)(ii)-3.[ウ])))。 ここで、甲第1号証のカタログのキャップ「9.5MS-TEセット品」の意匠は、後述するように、甲第7号証の見本の意匠と異なる。又、甲第6号証の注文書に記載のキャップの品番が不一致であることから、この意匠が、キャップ「9.5MS-TEセット品」の意匠であるかも不明であり、甲第7号証の見本からは、甲第6号証の注文書に記載のキャップを特定することが出来ない。 従って、甲第1号証のカタログのキャップと、甲第6号証の注文書に記載のキャップと、甲第7号証の見本とが、全て一致しているか否かは、現時点での証拠では立証出来ておらず、請求人主張は、失当である。(エ)「(iii)本件登録意匠と先行意匠との対比」(請求書第9-11ページ(本件審決の第2の1(4)(iii)))について 先行意匠2について、上述のように、先行意匠2は、意匠が不明確であるため、先行意匠2は本件登録意匠との比較が出来ないことから、対比対象から除外する。 ここで、現時点において、甲第1号証のカタログが第三者に頒布された事実を具体的に示す客観的な証拠が無いため、甲第1号証のカタログが本件登録意匠の出願時よりも前に公然に知られているかどうか不明であるものの、仮に、請求人が、甲第1号証のカタログが本件登録意匠の出願時よりも前に公知であることを明らかにした場合に備えて、被請求人は、甲第1号証の封印帯付きキャップの意匠を先行意匠1とし、本件登録意匠と先行意匠1が類似しないことを主張する。 一方、甲第7号証の見本が、いつ製造されたものか不明であり、甲第6号証の注文書の製品に対応するか否かも不明である。 ここで、請求人は、甲第7号証について検証を希望していないものの、請求人が、甲第1号証のカタログのキャップと、甲第7号証の見本が一致しているという主張に対して、被請求人は、甲第1号証のカタログの封印帯付きキャップの意匠と、甲第7号証の見本の意匠が異なることを主張する。 そして、仮に、請求人が、甲第7号証の見本を本件登録意匠の出願日前に販売して、甲第7号証の見本が公知であることを明らかにした場合に備えて、被請求人は、甲第7号証の見本の意匠を先行意匠3とし、本件登録意匠と先行意匠3が類似しないことを主張する。 (3) 本件登録意匠と甲先行意匠1、3についての被請求人の主張 ア 本件登録意匠と先行意匠1との類否について (ア)本件登録意匠 本件登録意匠の形態は、乙第1号証の登録公報に開示されているとおりであるが、詳細に示すと以下のようになる。 (a1)本件登録意匠は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の封印帯付きキャップである。 (a2)本件登録意匠は、乙第1号証に示すように、上蓋部と、封印帯と、口部とから構成される。 (a3)上蓋部は、上下方向に沿ったローレットが形成されている。 (a4)上蓋部は、上蓋部の下面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向(正面視で左方向)の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも長い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向(正面視で右方向)の端部を凸状の曲面として、この角部を丸くした上側突起が形成されている。(当審注:答弁書には、「開栓方向(正面視で左方向)」と記載されているが、「開栓方向(正面視で右方向)」の誤記と認める。a4に係る誤記は、以下同様に認定する。) (a5)上蓋部は、上蓋部の下面で、且つ、左右面側のそれぞれに、上蓋部の下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、これらの角部を丸くし、上蓋部の下方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とする離型用突起が形成されている。 (a6)封印帯は、上面が4つの連結片を介して上蓋部の下面に接続され、円筒状に形成されている。 (a7)封印帯は、封印帯の上面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、この角部を丸くし、上蓋部の上方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を垂直面とし、垂直面を、2つの上側突起のそれぞれの垂直面に対向させる下側突起が形成されている。 (a8)口部は、縦横2本ずつのリブが形成されるとともに、縦のリブと横のリブ以外に複数の溝部が形成されている。 (a9)口部は、左右両端部に耳が形成されている。 [乙第1号証の抜粋] [図:0001418277000007.jpg] [図:0001418277000008.jpg] (イ)本件登録意匠の基本的構成態様と具体的構成態様 以上を踏まえた上で、本件登録意匠の基本的構成態様と具体的構成態様とを列挙すると、以下のようになる。 a 基本的構成態様 形状(a1)により、封印帯付きキャップを前提として、形状(a2)により、上蓋部と封印帯と口部とから構成されていることと、形状(a3)により、上蓋部にローレットが形成されていることと、形状(a6)により、封印帯の上面が4つの連結片を介して上蓋部の下面に接続され、封印帯が円筒状であることと、形状(a8)により、口部に2本の縦のリブと2本の横のリブが形成され、縦のリブと横のリブ以外に溝部が形成されていることと、形状(a9)の口部の左右両端部に耳が形成されていること。 b 具体的構成態様 形状(a4)により、上蓋部の下面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも長い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を凸状の曲面として、この角部を丸くした上側突起が形成されていることと、 形状(a5)により、上蓋部の下面で、且つ、左右面側のそれぞれに、上蓋部の下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、これらの角部を丸くし、上蓋部の下方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とする離型用突起が形成されていることと、 形状(a7)により、封印帯の上面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、この角部を丸くし、上蓋部の上方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を垂直面とし、垂直面を、2つの上側突起のそれぞれの垂直面に対向させる下側突起が形成されていること。 (ウ)甲先行意匠1 甲先行意匠1の形態は、甲第1号証を用いて、より詳細に示すと以下のようになる。 (b1)甲先行意匠1は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の封印帯付きキャップである。 (b2)甲先行意匠1は、甲第1号証に示すように、上蓋部と、封印帯と、口部とから構成される。 (b3)上蓋部は、上下方向に沿ったローレットが形成されている。 (b4)上蓋部は、上蓋部の下面に、且つ、正面側に、上蓋部の下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向(正面視の左方向)の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向(正面視の右方向)の端部を斜面とし、この角部を尖らせた上側突起が形成されている。 (当審注:答弁書には、「閉栓方向(正面視の右方向)」と記載されているが、「開栓方向(正面視の右方向)」の誤記と認める。b4に係る誤記は、以下同様に認定する。) (b5)封印帯は、上面が、少なくとも2つ連結片を介して上蓋部の下面に接続され、円筒状に形成されている。 (b6)封印帯は、封印帯の上面に、且つ、正面側に、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を斜面とし、この角部を尖らせ、上蓋部の上方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を垂直面とし、垂直面を、上側突起の垂直面に対向させる下側突起が形成されている。 (b7)封印帯は、封印帯の上面に、且つ、正面側で、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向のそれぞれに、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を、上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、全体として略正方形を構成する離型用突起が形成されている。 (b8)口部は、縦横2本ずつのリブが形成されるとともに縦のリブと横のリブ以外に複数の溝部が形成されている。 (b9)口部は、左右両端部に耳が形成されている。 [甲第1号証の抜粋] [図:0001418277000009.jpg] [図:0001418277000010.jpg] (エ)甲先行意匠1の基本的構成態様と具体的構成態様 以上を踏まえた上で、甲先行意匠1の基本的構成態様と具体的構成態様とを列挙すると、以下のようになる。 a 基本的構成態様 形状(b1)により、封印帯付きキャップを前提として、形状(b2)により、上蓋部と封印帯と口部とから構成されていることと、形状(b3)により、上蓋部にローレットが形成されていることと、形状(b5)により、封印帯の上面が2つの連結片を介して上蓋部の下面に接続され、封印帯が円筒状であることと、形状(b8)により、口部に2本の縦のリブと2本の横のリブが形成され、縦のリブと横のリブ以外に溝部が形成されていることと、形状(b9)により、口部の左右両端部に耳が形成されていること。 b 具体的構成態様 形状(b4)により、上蓋部の下面に、且つ、正面側に、上蓋部の下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を斜面とし、この角部を尖らせた上側突起が形成されていることと、 形状(b6)により、封印帯の上面に、且つ、正面側に、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を斜面とし、この角部を尖らせ、上蓋部の上方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を垂直面とし、垂直面を、上側突起の垂直面に対向させる下側突起が形成されていることと、 形状(b7)により、封印帯の上面に、且つ、正面側で、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向のそれぞれに、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向の端部を垂直面とし、上蓋部の上方向の端部を、上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、全体として略正方形を構成する離型用突起が形成されていること。 (オ)甲先行意匠1と本件登録意匠との比較 a 物品について 甲先行意匠1と本件登録意匠とは、形状(a1)(b1)により、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の封印帯付きキャップである点で共通する。 b 基本的構成態様の共通点について 甲先行意匠1の基本的構成態様と本件登録意匠の基本的構成態様を比較すると、両意匠は、以下の点で共通する。 (a) 形状(a2)(b2)により、上蓋部と封印帯と口部とから構成されている点(共通点1)。 (b) 形状(a3)(b3)により、上蓋部にローレットが形成されている点(共通点2)。 (c)形状(a6)(b5)により、封印帯の上面が連結片を介して上蓋部の下面に接続され、円筒状である点(共通点3)。 (d)形状(a8)(b8)により、口部に2本の縦のリブと2本の横のリブが形成され、縦のリブと横のリブ以外に溝部が形成されている点(共通点4)。 (e)形状(a9)(b9)により、口部の左右両端部に耳が形成されている点(共通点5)。 (カ)具体的構成態様の共通点について 甲先行意匠1の具体的構成態様と本件登録意匠の具体的構成態様を比較すると、両意匠は、以下の点で共通する。 a 形状(a4)(b4)により、上蓋部に上側突起が形成されている点(共通点1)。 b 形状(a7)(b6)により、封印帯に下側突起が形成されている点(共通点2)。 (キ)基本的構成態様の相違点について 上述のように、甲先行意匠1の基本的構成態様と本件登録意匠の基本的構成態様を比較すると、両意匠は、基本的構成態様(a)-(e)の全てにおいて共通しており、基本的構成態様における相違点は存在しない。 (ク)具体的構成態様の相違点について 甲先行意匠1の具体的構成態様と本件登録意匠の具体的構成態様を比較すると、両意匠は、以下の点で相違する。 a 甲先行意匠1では、形状(b7)により、封印帯に2つの離型用突起が形成されているのに対して、本件登録意匠では、形状(a5)により、上蓋部に2つの離型用突起が形成されている点(相違点1)。 b 甲先行意匠1では、形状(b4)により、上蓋部の下面に、且つ、正面側に、上蓋部の下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を斜面とし、この角部を尖らせた上側突起が形成されているのに対し、本件登録意匠では、形状(a4)により、上蓋部の下面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも長い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を凸状の曲面として、この角部を丸くした上側突起が形成されている点(相違点2)。 c 甲先行意匠1では、形状(b6)により、封印帯の上面に、且つ、正面側に、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を斜面とし、この角部を尖らせ、上蓋部の上方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を垂直面とし、垂直面を、上側突起の垂直面に対向させる下側突起が形成されているのに対し、本件登録意匠では、形状(a7)により、封印帯の上面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、この角部を丸くし、上蓋部の上方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を垂直面とし、垂直面を、2つの上側突起のそれぞれの垂直面に対向させる下側突起が形成されている点(相違点3)。 d 甲先行意匠1では、形状(b7)により、封印帯の上面に、且つ、正面側で、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向のそれぞれに、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向の端部を垂直面とし、上蓋部の上方向の端部を、上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有する平面とし、全体として略正方形を構成する離型用突起が形成されているのに対し、本件登録意匠では、形状(a5)により、上蓋部の下面で、且つ、左右面側のそれぞれに、上蓋部の下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向(正面視で右方向)の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、これらの角部を丸くし、上蓋部の下方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とする離型用突起が形成されている点(相違点4)。 (ケ)看者が注意を惹く構造について a 甲先行意匠1及び本件登録意匠の物品である封印帯付きキャップの需要者は、充填メーカー、袋メーカー、一般消費者及びキャップのメーカーと考える。 b その理由は、先ず、甲先行意匠1及び本件登録意匠の物品である封印帯付きキャップは、不正開封防止機能(ピルファープルーフ機能)を目的としている構成である。不正開封防止機能を実現するためには、本物品の上蓋部と封印帯との間の形態が重要である。この不正開封防止機能を示す文献として、被請求人が、本件登録意匠における上蓋部と封印帯との間の形態を実用新案登録出願として、本件登録意匠と同日に出願して発行された実用新案登録公報を下記に示す。 (a)乙第2号証 実用新案登録第3231418号公報 公報発行日:2021年4月1日 (当審注:図省略) 乙第2号証では、従来からの不正開封防止機能を目的とするキャップの技術について、先行特許文献として、特許文献1の特開2002-370765号公報、特許文献2の特開2005-59906号公報、特許文献3の特開2013-180763号公報を列記している。これらの先行特許文献のうち、特許文献1-2は、本件登録意匠の出願日よりも前で、且つ、甲先行意匠1の公知日(2013年頃)よりも前の特許文献であるため、下記に示す。なお、特許文献3は、2013年9月12日に公開されているが、参考に下記に示す。 (b)乙第3号証 特開2002-370765号公報 公開日:平成14年12月24日 (c)乙第4号証 特開2005-59906号公報 公開日:平成17年3月10日 (d)乙第5号証 特開2013-180763号公報 公開日:平成25年9月12日 (当審注:図省略) 乙第3-4号証では、上蓋部と封印帯との間の形態について、上側突起や下側突起、離型用突起の様々な形状が開示されている。 なお、乙第5号証は、請求人が出願人として特許出願している特許文献であり、乙第5号証では、消費者がキャップを再閉栓する際に、十分な閉栓感覚を得ることができる封印帯付きキャップを提供することを目的として、上蓋部に突起を設け、封印帯に干渉突起を設けた構成が開示されている。甲第5号証の出願日は、2012年2月29日であることから、請求人は、この当時、上蓋部と封印帯との間の形態について着目していたといえる。 さて、乙第2号証では、乙第3-5号証を踏まえた上で、従来より、不正開封防止機能付きのキャップには、開閉し易く、且つ、初開栓後に、封印帯がキャップと適切に分離するように求められているが、上蓋部と封印帯との間の形態によっては、上蓋部に過大な開栓力及び閉栓力が必要であることが記載され、上蓋部と封印帯との間の形態が特殊な場合に、特に、子供や高齢者にとっては、封印帯付きキャップの開閉は困難であることが記載されている。 つまり、上蓋部と封印帯との間の形態は、封印帯付きキャップの開閉に密接に関係する極めて重要な部分であり、一般消費者が、封印帯付きキャップの初開栓及び閉栓をする際に、関心を持って観察される部位となる。 更に、被請求人は、乙第2号証の実用新案登録出願と同日に、この実用新案登録出願について、実用新案技術評価請求を行い、特許庁から、実用新案技術評価書の通知書を受け取っている。この実用新案技術評価書は、誰でも閲覧可能であるため、下記に示す。 (e)乙第6号証 実用新案登録第3231418号についての実用新案技術評価書 通知日:令和3年4月19日 乙第6号証では、乙第2号証の実用新案登録出願の構成について、引用文献1(特開2003-072796号公報)を挙げ、乙第2号証のラチェット爪及びラチェット歯がそれぞれ4つである点(これらは内部構造であるため、本答弁書では特定していない。)、上側突起及び下側突起の上蓋部の閉栓方向の端部が曲面である点、離型用突起の上蓋部の閉栓方向及び開栓方向の端部が曲面である点について、引用文献1に記載されていないとして、新規性を有すると判断されている。なお、乙第2号証について、引用文献1に記載の発明に基いて、進歩性を否定しているものの、実用新案の進歩性と意匠の創作非容易性は異なるため、本答弁書では議論しない。さて、引用文献1は、本件登録意匠の出願日よりも前で、且つ、甲先行意匠1の公知日よりも前の特許文献であるため、下記に示す。 (f)乙第7号証 特開2003-72796号公報 公開日:平成15年3月12日 (当審注:図省略) このように、乙第2号証、乙第3-5号証、乙第7号証に示すように、封印帯付きキャップを開発、製造するキャップメーカーにとっても、上蓋部と封印帯との間の形態は、封印帯付きキャップの開閉の容易さや円滑さを求める上で、重要な部分であり、キャップメーカーが、封印帯付きキャップを開発、製造する際に、各種設計変更している部分であり、関心を持って観察される部位となる。 更に、充填メーカー及び袋メーカーについては、本物品の口部を容器口部に溶着する前に、通常、本物品の封印帯が上蓋部から分離していないことを確認した上で、本物品の口部を容器口部に溶着する必要があることから、不正開封防止機能を目的とした封印帯付きキャップにおいて、本物品の上蓋部と封印帯との間の形態は、充填メーカー及び袋メーカーが、本物品の口部を容器口部に溶着する際に、関心を持って観察される部位となる。 以上のように、本物品の上蓋部と封印帯との間の形態は、充填メーカー及び袋メーカーのみならず、一般消費者及びキャップのメーカーにとっても関心を持って観察される部位であると考えるべきである。 (ケ)公知意匠 a 甲先行意匠1の公開日よりも前に公知であった意匠(公知意匠)に開示されている部分は、看者にとってありふれて見えるものとなるため、注意を惹かないし、重きが置かれない部分となり、要部となり得ない。ここで、本件登録意匠の登録査定の際に特許庁より通知される通知書に記載の参考文献は、本件登録意匠の出願日よりも前で、且つ、甲先行意匠1の公知日よりも前の公知意匠であるため、公知意匠として更に挙げると、以下の如くとなる。 (a)乙第8号証 意匠登録第1688792号の登録査定の際の特許庁の通知書 発送日:令和3年5月17日 (b)乙第9号証 意匠登録第1353084号 公報発行日:平成21年3月9日 [乙第9号証の抜粋] (当審注:図省略) (c)乙第10号証 キャップ&ボトル総合カタログ 三笠産業株式会社2008-2009、61ページ、(特許庁意匠課公知資料番号HC20018379) 公開日:2008年頃 [乙第10号証の抜粋] (当審注:図省略) 乙第10号証は、請求人が特許庁へ誰でも閲覧可能にするために提供した2008年-2009年のカタログである。乙第10号証には、封印帯付きキャップ(BASE A 2088/1610)が開示されているが、この封印帯付きキャップの口部は、甲1号証の封印帯付きキャップの口部のうち、2本の縦のリブが無いことと耳の上下の長さが長いこと以外は、甲第1号証の封印帯付きキャップの口部と同等である。 (当審注:図省略) ここで、乙第10号証は、封印帯付きキャップ(BASE A 2088/1610)が一部しか記載されていないことから、被請求人は、乙第10号証の総合カタログを閲覧して、封印帯付きキャップが記載された部分を乙第11号証として下記に示す。 (d)乙第11号証 キャップ&ボトル総合カタログ 三笠産業株式会社2008-2009、表紙、57ページ-64ページ、裏表紙(特許庁意匠課公知資料番号HC20018379) 公開日:2008年頃 乙第11号証には、封印帯付きキャップ(16MS-TEスパウトセット品)が開示されているが、この封印帯付きキャップの口部は、2本の縦のリブが有ることと耳の上下の長さが短いことが開示されている。 (当審注:図省略) (e)乙第12号証 大韓民国意匠商標公報、2002-44、(2002-9-25)、30-0306865、(特許庁意匠課公知資料番号HH14683738) 公開日:2002年9月25日 (当審注:図省略) 更に、被請求人は、上蓋部及び口部について、甲先行意匠1の公知日よりも前の封印帯付きキャップ或いは封印帯付きキャップに使用される口部の物品分野における公知意匠を列挙すると、以下の如くとなる。 (f)乙第13号証 意匠登録第1008959号 公報発行日:平成10年5月7日 (g)乙第14号証 大韓民国意匠商標公報、07-31号、(2007-11-21)、30-0469860、(特許庁意匠課公知資料番号HH20402184) 公報発行日:2007年11月21日 (当審注:図省略) 次に、被請求人は、上蓋部及び封印帯について、甲先行意匠1の公知日よりも前の封印帯付きキャップ或いは封印帯付きキャップに使用される上蓋部及び封印帯の物品分野における公知意匠を列挙すると、以下の如くとなる。 (h)乙第15号証 意匠登録第939482号 公報発行日:平成7年11月20日 (当審注:図省略) (i)乙第16号証 意匠登録第1176836号 公報発行日:平成15年4月25日 (当審注:図省略) b 公知意匠における上蓋部と封印帯について (a)乙第7号証、乙第9号証、乙第10-11号証、乙第13号証、乙第15号証では、甲先行意匠1における上蓋部にローレットが形成されている。 (b)乙第3-4号証、乙第7号証、乙第9号証、乙第15-16号証では、甲先行意匠1における封印帯の上面が複数の連結片を介して上蓋部の下面に接続され、円筒状である。 (c)乙第3-4号証、乙第7号証、乙第9号証、乙第15-16号証では、甲先行意匠1における上側突起、下側突起及び離型用突起の形状が開示されている。 (d)なお、乙第5号証の公開日は、甲第1号証の2013年頃に含まれるため、除外している。 c 公知意匠における口部について (a)乙第10-11号証、乙第13-14号証には、甲先行意匠1における口部に2本の縦のリブと2本の横のリブが形成されるとともに、縦のリブと横のリブ以外に複数の溝部が形成されており、且つ、口部の左右両端部に耳が形成されている。 (コ)甲先行意匠1の要部 このように甲先行意匠1の基本的構成態様の形状(b1)-(b3)(b5)(b8)(b9)の全ては、甲先行意匠1の公知日よりも前の乙第3-4号証、乙第7号証、乙第9-16号証の公知意匠にもみられるありふれた形態である。更に、乙第10-11号証は、請求人の行為に起因して、甲先行意匠1の公知日よりも前に、甲先行意匠1の口部を公知意匠として公知にしている。これらを考慮すれば、甲先行意匠1の基本的構成態様の全ては、看者の注意を最も惹きやすい部分であるとは言えず、甲先行意匠1の要部となり得ない。 一方、甲先行意匠1の具体的構成態様のうち、形状(b4)(b6)の上側突起と下側突起は、乙第3-4号証、乙第7号証、乙第9号証、乙第15-16号証の公知意匠に見られるが、形状(b7)の離型用突起の形状と位置と数は、乙第3-4号証、乙第7号証、乙第9号証、乙第15-16号証の公知意匠にみられず、且つ、封印帯付きキャップを正面視で俯瞰して観察したときに明確に視認できるものであることに鑑みれば、その形状の如何は看者の受ける印象に大いに影響を与えるものであると考える。 以上の点を考慮しつつ、甲先行意匠1について総合的に検討すると、その要部は、形状(b7)の離型用突起の形状と位置と数の具体的構成態様にあると考える。 (サ)類否判断 a 両意匠の共通点の評価 先ず、上述のように、基本的構成態様に係る共通点の形態は、全て、乙第3-4号証、乙第7号証、乙第9-16号証の公知意匠にも見られるありふれた形態であるから、当該基本的構成態様に係る共通点は、封印帯付きキャップとしての両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎず、特徴的な形態ではない。したがって、これら基本的構成態様に係る共通点に係る構成に需要者が注意を払う程度は小さく、これら共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 b 両意匠の差異点の評価 両意匠は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の封印帯付きキャップであるから、その不正開封防止機能の観点より、上蓋部と封印帯との間の具体的構成態様は、両意匠の全体の基調を顕著に表出し、類否判断を左右するものである。 具体的には、両意匠の具体的構成態様に係る相違点1(離型用突起の位置の違い)、相違点2(上側突起の長さや上側突起の端部の角部が直角か曲面かの違い)、相違点3(下側突起の長さや下側突起の端部の角部が直角か曲面かの違い)、相違点4(離型用突起の長さや離型用突起の端部の角部が直角か曲面かの違いや位置の違い)は、両意匠の全体の基調を顕著に表出し、類否判断を大きく左右するものである。 (シ)意匠の類否 上述のように、本件登録意匠は、甲先行意匠1の基本的構成態様の構成(b1)-(b3)(b5)(b8)(b9)を有しているが、甲先行意匠1の具体的構成態様の構成(b4)(b6)(b7)は有していない。そして、上述のように、甲先行意匠1の要部は、基本的構成態様の構成(b1)-(b3)(b5)(b8)(b9)を有していることを前提として、具体的構成態様の構成(b4)(b6)(b7)を備えていることであるから、本件登録意匠は、甲先行意匠1の要部のうち、具体的構成態様の構成(b4)(b6)(b7)を有していない。 ここで、甲先行意匠1は、形状(b4)(b6)(b7)により、上側突起、下側突起、離型用突起の全てが尖った印象を与え、且つ、上側突起、下側突起、離型用突起の全てが、公知意匠にあるように、上蓋部と封印帯との間の間隔よりも短い長さを有することから、微細な突起の印象を与える。つまり、甲先行意匠1では、意匠全体として刺々しい印象を与える。 一方、本件登録意匠は、形状(a4)(a5)(a7)により、上側突起、下側突起、離型用突起の全てが曲面の柔らかな印象を与え、且つ、上側突起、下側突起、離型用突起の全てが、公知意匠に無い特徴である、上蓋部と封印帯との間の間隔よりも長い長さを有し、且つ、同等の長さを有することから、幅広い突起の印象を与える。つまり、本件登録意匠では、意匠全体として柔らかい丸みの印象を与える。 従って、本件登録意匠では、甲先行意匠1と異なり、両意匠は看者に与える美感が全く異なるから、両意匠は非類似である。 (当審注:図省略) イ 本件登録意匠と先行意匠3との類否について (当審注:先行意匠3は、甲第7号証に係る意匠である(上記(2)イ(エ))ところ、下記第4のとおり、甲第7号証は、口頭審理において証拠申し出が撤回され、被請求人も撤回を認めているので、先行意匠3に係る主張は省略する。) (4)「(5)むすび」(請求書第12ページ(本件審決の第2の1(5)))について 上述で示した通り、請求人の請求理由では、無効理由を覆す程の理由が無いため、請求人主張は、失当である。 (5)「(6)その他」 ア 「(i)意匠法第3条第1項第1号及び第2号の規定による無効理由」(請求書第12ページ(本件審決の第2の1(6)(i)))について 上述で示した通り、本件登録意匠は、甲先行意匠1、3の基本的構成態様の構成を有しているが、甲先行意匠1、3の具体的構成態様の構成は有していない。一方、甲先行意匠1、3は、本件登録意匠の基本的構成態様の構成を有しているが、本件登録意匠の具体的構成態様の構成は有していない。従って、本件登録意匠は、甲先行意匠1、3と実質的に同一とも考える場合はあり得ず、甲先行意匠1、3と同一でないから、請求人主張は、失当である。 イ 「(ii)意匠法第9条第2項の規定による無効理由」(請求書第13ページ(本件審決の第2の1(6)(ii)))について (ア)本件登録意匠と同日出願意匠との類否について a 本件登録意匠 本件登録意匠の詳細は、ア(ア)と同様であるため、その説明を省略する。 (イ)同日出願意匠 同日出願意匠の形態は、乙第18号証の登録公報に開示されているとおりであるが、詳細に示すと以下のようになる。 (d1)同日出願意匠は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の封印帯付きキャップである。 (d2)同日出願意匠は、乙第18号証に示すように、上蓋部と、封印帯と、口部とから構成される。 (d3)上蓋部は、上下方向に沿ったローレットが形成されている。 (d4)上蓋部は、上蓋部の下面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向(正面視で左方向)の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも長い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向(正面視で左方向)の端部を凸状の曲面として、この角部を丸くした上側突起が形成されている。 (d5)上蓋部は、上蓋部の下面で、且つ、左右面側のそれぞれに、上蓋部の下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向(正面視で右方向)の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、これらの角部を丸くし、上蓋部の下方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とする離型用突起が形成されている。 (d6)封印帯は、上面が4つの連結片を介して上蓋部の下面に接続され、円筒状に形成されている。 (d7)封印帯は、封印帯の上面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、この角部を丸くし、上蓋部の上方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を垂直面とし、垂直面を、2つの上側突起のそれぞれの垂直面に対向させる下側突起が形成されている。 (d8)口部は、側面が平面で形成されるとともに、上端に1本のリブが縦に形成され、下端に1本の太いリブが縦に形成され、上端のリブと下端のリブとの間に、等間隔に2本のリブが縦に形成されている。 (d9)口部は、左右両端部に耳が形成されている。 [乙第18号証の抜粋] (当審注:図省略) (ウ)同日出願意匠の基本的構成態様と具体的構成態様 以上を踏まえた上で、同日出願意匠の基本的構成態様と具体的構成態様とを列挙すると、以下のようになる。 a 基本的構成態様 形状(d1)により、封印帯付きキャップを前提として、形状(d2)により、上蓋部と封印帯と口部とから構成されていることと、形状(d3)により、上蓋部にローレットが形成されていることと、形状(d6)により、封印帯の上面が4つの連結片を介して上蓋部の下面に接続され、封印帯が円筒状であることと、形状(d8)により、口部は、側面が平面で形成されるとともに、上端に1本のリブが縦に形成され、下端に1本の太いリブが縦に形成され、上端のリブと下端のリブとの間に、等間隔に2本のリブが縦に形成されていることと、形状(d9)の口部の左右両端部に耳が形成されていること。 b 具体的構成態様 形状(d4)により、上蓋部の下面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を垂直面とし、上蓋部の下方向の端部を上蓋部と封印帯との間の間隔よりも長い長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を凸状の曲面として、この角部を丸くした上側突起が形成されていることと、 形状(d5)により、上蓋部の下面で、且つ、左右面側のそれぞれに、上蓋部の下面から、封印帯の上面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向及び開栓方向(正面視で右方向)の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、これらの角部を丸くし、上蓋部の下方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とする離型用突起が形成されていることと、 形状(d7)により、封印帯の上面で、且つ、正面側と背面側のそれぞれに、封印帯の上面から、上蓋部の下面に向かって膨出するとともに、上蓋部の閉栓方向の端部を、上側突起の曲面と同等の曲面として、この角部を丸くし、上蓋部の上方向の端部を、上側突起の平面の長さと同等の長さを有する平面とし、上蓋部の開栓方向の端部を垂直面とし、垂直面を、2つの上側突起のそれぞれの垂直面に対向させる下側突起が形成されていること。 (エ)同日出願意匠と本件登録意匠との比較 a 物品について 同日出願意匠と本件登録意匠とは、形状(a1)(d1)により、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の封印帯付きキャップである点で共通する。 b 基本的構成態様の共通点について 同日出願意匠の基本的構成態様と本件登録意匠の基本的構成態様を比較すると、両意匠は、以下の点で共通する。 (a)形状(a2)(d2)により、上蓋部と封印帯と口部とから構成されている点(共通点1)。 (b)形状(a3)(d3)により、上蓋部にローレットが形成されている点(共通点2)。 (c)形状(a6)(d5)により、封印帯の上面が連結片を介して上蓋部の下面に接続され、円筒状である点(共通点3)。 (d)形状(a9)(d9)により、口部の左右両端部に耳が形成されている点(共通点4)。 (オ)具体的構成態様の共通点について 同日出願意匠の具体的構成態様と本件登録意匠の具体的構成態様を比較すると、両意匠は、以下の点で共通する。 a 形状(a4)(d4)により、上蓋部に上側突起が形成されている点(共通点1)。 b 形状(a7)(d7)により、封印帯に下側突起が形成されている点(共通点2)。 c 形状(a8)(d8)により、上蓋部に離型用突起が形成されている点共通点3)。 (カ)基本的構成態様の相違点について 同日出願意匠の基本的構成態様と本件登録意匠の基本的構成態様を比較すると、両意匠は、以下の点で相違する。 a 同日出願意匠では、形状(d8)により、口部について、側面が平面で形成されるとともに、上端に1本のリブが縦に形成され、下端に1本の太いリブが縦に形成され、上端のリブと下端のリブとの間に、等間隔に2本のリブが縦に形成されているのに対し、本件登録意匠では、形状(a8)により、口部に2本の縦のリブと2本の横のリブが形成され、縦のリブと横のリブ以外に溝部が形成されている点(相違点1)。 ここで、同日出願意匠は、本件登録意匠の形状(a8)を有しておらず、本件登録意匠は、同日出願意匠の形状(d8)を有していない。そのため、両意匠は、基本的構成態様の構成が共通していないことから、それぞれの基本的構成態様が全く相違する。そのため、両意匠のそれぞれに対する看者への印象が全く異なることから、両意匠は、非類似である。 従って、請求人主張は、失当である。 (当審注:図省略) (6)むすび 以上の通り、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号、同法第3条第1項第1号、同法第3条第1項第2号、同法第9条第2項の規定に違反してされたものではないため、同法第48条第1項第1号の無効理由により無効にされるべきものではない。 2 「回答書」における主張 被請求人は、当合議体の令和4年12月13日付けの「審尋」に対し、おおむね、以下のとおり回答した。(回答書の第1~5ページ) 回答の内容 令和4年12月15日(発送日)付け審尋によると、 「1.被請求人は、請求人と印刷会社に守秘義務が生じるのは商習慣上当然のことといえると説明している(答弁書4ページ)が、カタログの印刷についても守秘義務が生じる商習慣を具体的に示す証拠があれば、提出されたい」(審尋1)。 「2.被請求人は、請求人と金型メーカーに守秘義務が生じるのは商習慣上当然のことといえると説明している(答弁書7ページ)が、金型の製作についても守秘義務が生じる商習慣を具体的に示す証拠があれば、提出されたい」(審尋2)。 とのことである。 これについて回答する。 (1)審尋1について 中小企業庁のHPでは、下請事業者と親事業者との間で、適正な下請取引が行われるよう、国が策定したガイドラインが各業種毎に公開されており(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/guideline.htm)、その中に、「印刷業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/guideline/15_printing.pdf)が公開されている。 この「印刷業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」には、「IV.印刷産業下請取引ガイドライン A.見積・発注段階 1-2.見積・取引条件の協議段階で問題となるおそれのある取引事例 11)営業秘密の取扱い」の記載があり、「<事業者における配慮の例>」には、「会社間で取引等を行う場合には、取引の開始時において、秘密保持の対象となるか否かを明確に定めた秘密保持契約を締結する。」(38ページ)と記載されている(乙第19号証)。 つまり、印刷会社が受注を受ける際には、「営業秘密」に対する十分な配慮が必要であり、印刷会社が、委託者の情報について営業秘密として十分に配慮して、相当の守秘義務を払って業務に当たるのは当然であり、印刷会社に守秘義務が生じる商習慣があるのは明らかと思料する。 ここで、「カタログの印刷」について、「カタログ」は、商品目録や営業案内を示すものであるが、これらの情報は、委託者の事業戦略上、将来における宣伝活動や販売活動に影響する情報であり、「カタログ」が発行されて第三者に公開される前に、印刷会社が、委託者の許可なく第三者に公開すると、委託者の事業戦略上、大きな問題が生じるのは明らかであり、「カタログ」についても「営業秘密」に該当すると思料する。 なお、ここで記載されている「秘密保持契約の締結」は、委託者と印刷会社との間で後に紛争が生じるおそれがあることから、明文化することを推奨していることを示しているものと思料する。 ここで、一般的な印刷会社の商取引について見てみると、印刷会社Aでは、ウェブページ(https://www.ag-media.jp/security/index.html)で、「情報セキュリティ体制」を公開し、そこには、「入稿からDTP、印刷・製本、納品までお客様の情報を責任もってお預かりする社内生産体制を整えています。」、「お客様から受託した製品は、制作の段階から印刷、製本、ファイリングなどの手作業・検査、発送まですべての工程を原則社内にて仕上げます。営業本部(本社)と製造部門(工場)は、同じ自社ビル内にあるので、原稿、仕掛品、完成品まで、社屋から外部に洩れることがなく、建物敷地からの情報流出を物理的に防ぐことができます。また、生産能力上、製本・加工を外部に委託する場合は、業務委託契約書により守秘義務契約を締結した協力会社に委託しています。」と記載されており(乙第20号証)、印刷会社Aは、印刷を依頼した委託者の情報を営業秘密として十分に配慮していることが伺え、この情報が外部に漏れないように、情報セキュリティ体制を取っていることが分かる。 又、他の印刷会社Bでは、ウェブページ (https://www.34insatsu.com/service/confidential.php)で、「秘密保持契約対応」を公開し、そこには、「弊社では、官公庁、医療法人、学校法人ほか多くの法人様とお取り引きをさせて頂いている実績があります。法人様から安心して印刷をお任せいただけるように、ご要望があれば秘密保持契約を締結し、印刷物やデータの取り扱いについてもルールにそった管理を行います。秘密保持契約がご要望の方はお気軽にお問い合わせください。」と記載されており(乙第21号証)、印刷を依頼した委託者が法人の場合、印刷会社Bは、委託者の情報を営業秘密として十分に配慮していることが伺え、秘密保持契約を締結出来る対応を行っていることが分かる。 従って、カタログの印刷についても請求人と印刷会社に守秘義務が生じるのは明らかであり、カタログの印刷についても守秘義務が生じる商習慣があると思料する。 (2)審尋2について 上述のように、中小企業庁のHPでは、下請事業者と親事業者との間で、適正な下請取引が行われるよう、国が策定したガイドラインが各業種毎に公開されており(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/guideline.htm)、その中に、「金属産業取引適正化ガイドライン」(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/guideline/12_kinzoku.pdf)が公開されている。 この「金属産業取引適正化ガイドライン」には、「2.取引内容による基準(1)製造委託 製造委託とは、事業者が他の事業者に、(i)業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品(その半製品、部品、付属品、原材料及びこれらの製造に用いる金型を含む。) (ii)業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料 (iii)事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合に、その物品(その半製品、部品、付属品、原材料及びこれらの製造に用いる金型を含む。)の製造を委託することをいう。」(6ページ)と記載され(乙第22号証)、金型メーカーは金属産業に含まれる。 そして、「金属産業取引適正化ガイドライン」には、「5.不正競争防止法への対応」、「下請事業者との取引に際しては、秘密保持の対象となるか否かを明確に定めた秘密保持契約を締結する等、下請事業者に損失を与えることがないよう、十分な配慮を行うことが望まれる。」(15ページ~16ページ)と記載されている(乙第22号証)。 つまり、金型メーカーが、金型を含む物品の製造の受注を受ける際には、「営業秘密」に対する十分な配慮が必要であり、上述と同様に、金型メーカーが、委託者の情報について営業秘密として十分に配慮して、相当の守秘義務を払って業務に当たるのは当然であり、金型メーカーに守秘義務が生じる商習慣があるのは明らかと思料する。 ここで、「金型の製作」について、「金型」は、素材の塑性または流動性の性質を利用し成形加工して製品を得るための、主として金属素材を用いてつくった型の総称であり、「金型から製造される製品」は、委託者の事業戦略上、将来における製品宣伝活動や製品販売活動に影響する情報であり、「金型から製造される製品」が市場に販売される前に、金型メーカーが、委託者の許可なく第三者に公開すると、委託者の事業戦略上、大きな問題が生じるのは明らかであり、「金型」についても「営業秘密」に該当すると思料する。 なお、ここでも記載されている「秘密保持契約の締結」は、委託者と金型メーカーとの間で後に紛争が生じるおそれがあることから、明文化することを推奨していることを示しているものと思料する。 又、経済産業省のHPでは、「重要技術マネジメント 技術情報管理認証制度」が公開されており (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/technology_management/index.html)、「技術等情報漏えい防止措置認証制度における認証機関」として、「一般社団法人日本金型工業会」が認定されている。認証機関の一般社団法人日本金型工業会は、技術等の情報漏えい防止のための基準への適合認証を行う立場であり、多くの金型メーカーに対して適合認証を行っている。 そして、一般社団法人日本金型工業会のHPでは、「「金型取引ガイドライン」発行のご案内」が公開されており(https://www.jdmia.or.jp/wp/wp- content/uploads/2022/09/%E9%87%91%E5%9E%8B%E5%8F%96%E5%BC%95%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3_A4.pdf)、「2 金型図面 加工データ等知的財産について (1)金型図面・加工データの問題 ■基本的な考え方 ・金型図面・加工データの所有権は、作成者である金型メーカーにあります。・金型図面・加工データは本来売買するものではないです。・金型図面・加工データは無償譲渡あるいは著しく安い低額譲渡などは認められません。・金型図面・加工データは知的財産としてその価値は金型本体価格と同等とされています。」(2ページ)と記載されており(乙第23号証)、金型図面・加工データは知的財産としての価値が認められている。 又、一般社団法人日本金型工業会のHPでは、「金型図面等不正流出問題に関する概要」が公開されており (https://www.jdmia.or.jp/document/%E9%87%91%E5%9E%8B%E5%9B%B3%E9%9D%A2%E7%AD%89%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E6%B5%81%E5%87%BA%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%A6%82%E8%A6%81/)、「指針の概要」、「2.金型図面等に含まれる知的財産については、金型製造業者は、権利取得、機密保持契約による営業秘密化等により、管理保護に努めること。」(2ページ)と記載されている(乙第24号証)。 つまり、一般社団法人日本金型工業会では、所属する金型メーカーに対して、金型図面等に含まれる情報は知的財産として認識しており、金型メーカーに対して金型図面等の情報を十分に配慮すべきと推奨しており、更に踏み込んで、機密保持契約による営業秘密化等の注意喚起をしている。 ここで、金型の製作を含む一般的な金属加工会社の商取引について見てみると、金属加工会社Aでは、ウェブページ(http://www.jkb-net.co.jp/feature/management_system/)で、「営業秘密管理体制」を公開し、そこには、「JKBでは徹底した営業秘密管理体制を構築することにより、お客様より開発段階から図面開示等をいただくなどのお手伝いをさせていただいています。これにより製品化を早めたり、設計の試行錯誤を減らし、開発費を削減することが可能です。また、量産後の秘密保持にも努めていて、安心してご発注いただけます。これらを支える営業秘密管理体制が評価されて、さまざまなメディアで当社の取り組みが掲載されています。」と記載されており(乙第25号証)、金属加工会社Aは、委託者の情報を営業秘密として十分に配慮していることが伺え、徹底した営業秘密管理体制を構築していることが分かる。 他の金属加工会社Bでは、ウェブページ (http://oishikinzoku.com/environment.html)で、「環境方針と機密保持」を公開し、そこには、「【基本的な考え方】弊社は、お客様の皆様にご信頼して頂ける(当審注:乙第26号証には「頂いける」と記載されているが「頂ける」の誤記と認める。)事が大切であると考えております。そしてお客様の機密情報を保護する責任が弊社にある事を強く認識しております。このため社内外のすべてのスタッフに機密保持誓約書の提出を義務付けるなど、万全の仕組み作りと教育に取り組んでおります。また、お客様の業務を受託する場合には、機密保護契約の締結を前提としております。」と記載されており(乙第26号証)、金属加工会社Bは、委託者の業務を受託する場合には、委託者の情報を営業秘密として十分に配慮していることが伺え、機密保護契約の締結を前提としていることが分かる。 従って、金型の製作についても請求人と印刷会社に守秘義務が生じるのは明らかであり、金型の製作についても守秘義務が生じる商習慣があると思料する。 3 「口頭審理陳述要領書」における主張 (口頭審理陳述要領書の第1~7ページ) 陳述の要領 (1)審理事項通知書で求められている釈明 ア 「第1 2 甲第1号証についての合議体の見解(3)」について 請求人は、請求人と印刷会社との間に秘密保持契約を締結していない証拠として甲第19号証を提出している。 しかしながら、甲第19号証の日付は、「2023年1月19日」と記載されており、且つ、甲第19号証の書類は、印刷会社が作成したものではなく、請求人が作成したものである。 ここで、印刷会社は、請求人の取引会社であるので、印刷会社の立場として、取引会社の請求人が、審尋の回答期間において、請求人が作成した書面に署名及び捺印を求められた場合に、印刷会社が、それを断ることは、常識的に考えられない。 更に、甲第1号証のカタログは、2013年版であり、今から約10年前のカタログの秘密保持契約を締結しないことについて、「2023年1月19日」において、印刷会社が、署名及び捺印したとしても、印刷会社も請求人もいずれも何ら不利益が無いし、印刷会社が、請求人から書面に署名及び捺印を求められた際に、それを断る理由もない。 一方、甲第1号証について求められているのは、2012年10月の当時に、請求人と印刷会社との間に秘密保持契約を締結していないことを示す証拠であると思料する。 すると、「2012年10月」よりも後の「2023年1月19日」において、請求人が印刷会社と協力して作成した甲第19号証の書面では、「2012年10月の当時」に、請求人と印刷会社との間で秘密保持契約が締結されていなかったことを証するものではないと思料する。 従って、甲第19号証は、後から作成された証拠であり、立証が不十分であり、請求人主張は、失当である。 イ 「第1 3 主な争点」の無効理由1について (ア)無効理由1の「先行意匠1は、公然知られた意匠」としている点について ここで、「公然知られた意匠」とは、不特定の者に秘密でないものとして現実にその内容が知られた意匠のことをいう(意匠審査基準 22.1.1.2)。 そして、請求人は、印刷会社との間に秘密保持契約を締結していなかったため、先行意匠1は、印刷の過程で印刷会社の従業員等に知られたので、2012年10月までに公然知られていると主張している。 しかしながら、上述のように、請求人は、2012年10月の当時に、印刷会社との間で秘密保持契約が締結されていなかったことを証していないと思料する。 又、特許の裁判例になるが、「また,仮にYに対して本件発明の内容が示されていたとしても,Yは,社会通念上又は商慣習上,原告側の特段の明示的な指示や要求がなくとも,当該6本ロールカレンダーの技術内容につき,原告のために秘密を保つべき関係にある者というべきであるから,本件発明が公然知られた状態となったものとはいえない。」とされている(東京高判H12.12.25 6本ロールカレンダー事件)。 すると、印刷会社と請求人との間に明示的に秘密保持契約を締結していなかったことが示されたとしても、印刷会社は、社会通念上又は商慣習上、請求人側の特段の明示的な指示や要求がなくとも、カタログの内容につき、請求人のために秘密を保つべき関係にある者というべきであるし、先行意匠1が公然知られた状態になったものとは言えない。 更に、一般的に、会社の従業員等は、会社の在職中に、就業規則等の特別の根拠が無くても、労働契約に付随する信義則上の義務として、秘密保持義務を負っていることが通常である(東京高判S55.2.18古河鉱業足尾製作所事件)。 すると、印刷の過程で先行意匠1を知った印刷会社の従業員等が、印刷会社の使用者から提供された先行意匠1に関して秘密保持義務を負った者と言えるので、先行意匠1が公然知られた状態になったとは言えない。 従って、先行意匠1は、2012年10月までに公然知られた意匠に該当せず、請求人主張は、失当である。 (イ)無効理由1の「本件登録意匠は、先行意匠1に類似する意匠である」としている点について 本件登録意匠は、令和4年8月5日付けの審判事件答弁書(以下、単に「審判事件答弁書」という)に示すように、先行意匠1と比較して、具体的構成態様が全く異なる。又、看者が注意を惹く構造について、本件登録意匠も先行意匠1も、不正開封防止機能(ピルファープルーフ機能)を目的としている構成であることから、具体的構成態様である「上蓋部と封印帯との間の形態」が重要である。 更に、被請求人は、審判事件答弁書に示すように、本件登録意匠の登録査定の際に特許庁より通知される通知書に記載の参考文献(乙第9号証意匠登録第1353084号)を公知意匠1として選定し、本件登録意匠と、先行意匠1と、公知意匠1とを正面図で比較すると、下記の通りになる。 (当審注:図(表)省略) ここで、被請求人は、上側突起、下側突起、離型用突起の輪郭を赤線で示している。さて、本件登録意匠は、上側突起、下側突起、離型用突起の全てが曲面であり、左右方向に長いことから、柔らかい丸みの印象を与える。 一方、先行意匠1は、上側突起、下側突起、離型用突起の全てが尖っており、左右方向に短いことから、刺々しい印象を与える。 更に、公知意匠1は、上側突起と、下側突起とが、尖っており、左右方向に短いことから、先行意匠1の形態に近いと思料する。 すると、先行意匠1は、本件登録意匠と類似するというよりも、公知意匠1と類似すると言え、本件登録意匠の形態は、先行意匠1の形態と全く異なる。 従って、本件登録意匠は、先行意匠1と類似しない。 ウ 「第1 3 主な争点」の無効理由2について (ア)無効理由2の「刊行物の頒布性」について 請求人は、「前記カタログは、2013年版であるから、印刷された2012年10月から遅くとも2013年末までの間に頒布されている。」と主張している。 しかしながら、審理事項通知書の「2 甲第1号証についての合議体の見解」に示すように、甲第1号証のカタログ名「キャップ&ボトル総合カタログ 2013」と同一と認められるカタログ名が記載されておらず、請求人は、甲第1号証が本件登録意匠の出願前に頒布されていることを示す事実を主張していない。 従って、刊行物は頒布されているか否か不明であり、請求人主張は、失当である。 (イ)無効理由2の「本件登録意匠は、先行意匠1に類似する意匠である」としている点について 上述のイ (イ)に示すように、本件登録意匠は、先行意匠1と類似しない。 エ 「第2 審理事項」について (ア)請求人の回答書の主張について a 回答書第6ページ「5-3.審尋の「3.甲4について」に対して」(本件審決の第2の2(3)) 請求人は、「知財高裁平成22年6月29日(平成21年(行ケ)第10323号)判決」を挙げて、「黙示的に秘密保持契約が締結されたと認定されるためには、秘密とすべき対象を特定する必要がある。」と主張している。 しかしながら、上述の「知財高裁平成22年6月29日(平成21年(行ケ)第10323号)判決」では、「甲1(松下電器とサービス業者との間でやり取りされるテクニカルガイド)には、以下のとおり、公知の事項が多数含まれており、仮に、秘密保持契約を締結するのであれば、守秘義務の対象を特定するのが自然であるが、秘密として取り扱うべき事項の特定がされた形跡はない。」、「仮に、甲1の作成者が配布先に対して守秘義務を課すのであれば、公知の事項も含まれる甲1の記載事項のうちで秘密とすべき対象を特定するのが自然であるが、そのような特定は何らされていない。したがって、甲1に記載された事項の全部又は一部について、守秘義務を負う旨の明示又は黙示の秘密保持契約がされていたものと認めることはできない。」としている。 つまり、上述の「知財高裁平成22年6月29日(平成21年(行ケ)第10323号)判決」では、公知の事項が多数含まれているテクニカルガイドの書面については、秘密とすべき対象を特定する必要があるとしている。そもそも前記判決で問題となったテクニカルガイドは、洗濯機の販売配送施工修理等を行うサービス業者が顧客に対してサービスを実施する便宜のために作成されたものであり、かかる作成目的からして、サービス業者が顧客先で当該テクニカルガイドを広げたり、その内容を示しながら顧客に説明したりする利用場面も十分に想定しうることから守秘義務が否定されたものと考えられる。他方で、甲4の製造用図面については、公知の事項が多数含まれる書面でないし、利用場面として製造担当者が第三者に対して開示することは全く想定されないので、テクニカルガイドと甲4の製造用図面とは書面の性質が異なり、事案が全く異なり、請求人主張は、失当である。 b 回答書第7ページ「(3)」(本件審決の第2の2(3)(3-3)) 請求人は、「なお、請求人は、甲4に営業秘密の申出をしたが、これは、甲4が営業秘密の書面だと自認しているからではない。請求人の2013年からの製品である「9.5MS-TEセット品」について、2021年に権原のない被請求人により意匠登録出願がされ、本件意匠登録を受けたことで、請求人として情報を公開することに強い危機感を感じているからである。」と主張している。 しかしながら、請求人は、甲4の図面に記載された意匠(先行意匠2)は、公然知られた意匠であると主張しており、公然知られた先行意匠2は、不特定の者に秘密でないものとして現実にその内容が知られた意匠であることから、何ら権利が発生しない意匠であることを自認している。 一方、請求人は、被請求人が取得した本件登録意匠について、あたかも冒認出願(出願する権利がない者が出願して権利を取得した出願)のような主張をしており、請求人は、一方で、先行意匠2について権利が無いと主張し、他方で、先行意匠2について自身に権利が有るかの主張をしており、両者は、矛盾した主張であり、請求人主張は、失当である。 なお、被請求人は、審判事件答弁書に示すように、本件登録意匠における上蓋部と封印帯との間の形態について、本件登録意匠と同日に実用新案登録出願をして、且つ、実用新案技術評価書を請求している。それは、被請求人は、2021年の当時、本件登録意匠における上蓋部と封印帯との間の形態を事業化するにあたって、審判事件答弁書の乙第3号証から乙第5号証に示すように、技術的に類似する形態が存在していたことから、他社の権利抵触が無いか否かを実用新案登録制度と意匠登録制度で確認する必要があったからである。このような行為は、実用新案登録制度と意匠登録制度を活用した正当な行為であり、請求人が主張するような冒認出願に該当するものでは無く、単なる言いがかりである。 c 回答書第7ページ「5-4.審尋の「4.甲7について」に対して」(本件審決の第2の2(4)) (当審注:下記第4のとおり、甲第7号証は、口頭審理において証拠申し出が撤回され、被請求人も撤回を認めているので、甲第7号証に係る主張は省略する。) d 回答書第9ページ「(2)甲4~6について ア.甲4、甲4-1及び甲4-2の関係について」(本件審決の第2の2(5)(5-2)ア) 請求人は、甲4、甲4-1及び甲4-2の寸法について、共通関係を示して、「以上より、甲4、甲4-1及び甲4-2の寸法からも、甲4は、甲4-1と甲4-2とを組み上げた(セットされた)図面と言えます。」と主張している。 しかしながら、甲4、甲4-1及び甲4-2の寸法について、営業秘密の申出により、寸法の数値が不明であり、甲4、甲4-1及び甲4-2の寸法の共通関係を特定することは不可能である。 従って、甲4、甲4-1及び甲4-2の寸法について、立証が不十分であり、請求人主張は、失当である。 e 回答書第12ページ「イ.」(本件審決の第2の2(5)(5-2)イ) 請求人は、「「T0」はトライ(成形トライ)であること」、「T-0」は、スパウト及びスパウトキャップの成型品を試作して組み上げたことと主張している。 しかしながら、「T0」と「T-0」とは、異なる文字列であり、不一致であるから、「T-0」が「T0」を示すかどうかは不明である。 従って、「T0」と「T-0」とについて、立証が不十分であり、請求人主張は、失当である。 オ 「無効理由3」について (ア)無効理由3の「先行意匠2は、公然知られた意匠」としている点について 請求人は、先行意匠2は、金型を製作する過程で金型メーカーの従業員等に知られたので、2012年4月末までに公然知られていると主張している。 しかしながら、被請求人の回答書に示すように、金型の製作について、請求人と金型メーカーとに守秘義務が生じるのは明らかであり、金型の製作について守秘義務が生じる商慣習があると思料する。 又、上述の「東京高判H12.12.25 6本ロールカレンダー事件」のように、金型メーカーは、社会通念上又は商慣習上、請求人側の特段の明示的な指示や要求がなくとも、製造用図面の内容につき、請求人のために秘密を保つべき関係にある者というべきであるし、先行意匠2が公然知られた状態になったものとは言えない。 又、上述の「東京高判S55.2.18 古河鉱業足尾製作所事件」のように、金型を製作する過程で先行意匠2を知った金型メーカーの従業員等が、金型メーカーの使用者から提供された先行意匠2に関して秘密保持義務を負った者と言えるので、先行意匠2が公然知られた状態になったとは言えない。 従って、先行意匠2は、公然知られた意匠に該当しない。 (イ)無効理由3の「本件登録意匠は、先行意匠2に類似する意匠である」としている点について 審判事件答弁書に示すように、先行意匠2は、意匠が不明確であるため、先行意匠2は、本件登録意匠との比較が出来ない。 従って、本件登録意匠は、先行意匠2に類似する意匠ではない。 カ 「無効理由4」について (当審注:下記第4のとおり、無効理由4は口頭審理において取り下げられ、被請求人も取り下げを認めているので、無効理由4に係る主張は省略する。) キ 「無効理由5」について 上述のイ(イ)に示すように、本件登録意匠は、先行意匠1と類似しない。 又、先行意匠2は、意匠が不明確であり、先行意匠3は、形態等を認定することが出来ない。 従って、本件登録意匠は、無効理由5に該当しない。 ク 「無効理由6」について 審判事件答弁書に示すように、本件登録意匠と、同日に出願された意願2021-1128(意匠登録第1688791号)の意匠(同日出願意匠)とは、基本的構成態様の構成が共通しておらず、両意匠のそれぞれに対する看者への印象が全く異なることから、両意匠は、非類似である。 従って、本件登録意匠は、無効理由6に該当しない。 4 被請求人添付の証拠 乙第1号証 意匠登録第1688792号公報(写し) 乙第2号証 実用新案登録第3231418号公報(写し) 乙第3号証 特開2002-370765号公報(写し) 乙第4号証 特開2005-59906号公報(写し) 乙第5号証 特開2013-180763号公報(写し) 乙第6号証 実用新案登録第3231418号についての実用新案技術評価書(写し) 乙第7号証 特開2003-72796号公報(写し) 乙第8号証 意匠登録第1688792号の登録査定の際の特許庁の通知書(写し) 乙第9号証 意匠登録第1353084号公報(写し) 乙第10号証 キャップ&ボトル総合カタログ 三笠産業株式会社2008-2009、61ページ、(特許庁意匠課公知資料番号HC20018379)(写し) 乙第11号証 キャップ&ボトル総合カタログ 三笠産業株式会社2008-2009、表紙、57-64ページ、裏表紙(特許庁意匠課公知資料番号HC20018379)(写し) 乙第12号証 大韓民国意匠商標公報、2002-44、(2002-9-25)、30-0306865、(特許庁意匠課公知資料番号HHl4683738)(写し) 乙第13号証 意匠登録第1008959号公報(写し) 乙第14号証 大韓民国意匠商標公報、07-31号、(2007-11-21)、30-0469860、(特許庁意匠課公知資料番号HH20402184)(写し) 乙第15号証 意匠登録第939482号公報(写し) 乙第16号証 意匠登録第1176836号公報(写し) 乙第17号証 写真撮影報告書(写し) 乙第18号証 意匠登録第1688791号公報(写し) 乙第19号証 印刷業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン(写し) 乙第20号証 印刷会社Aのウェブページ「情報セキュリティ体制」(写し) 乙第21号証 印刷会社Bのウェブページ「秘密保持契約対応」(写し) 乙第22号証 金属産業取引適正化ガイドライン(写し) 乙第23号証 「金型取引ガイドライン」発行のご案内(写し) 乙第24号証 「金型図面等不正流出問題に関する概要」(写し) 乙第25号証 金属加工会社Aのウェブページ「営業秘密管理体制」(写し) 乙第26号証 金属加工会社Bのウェブページの「環境方針と機密保持」(写し) 第4 口頭審理 当審は、本件審判について、令和6年(2024年)2月20日に口頭審理を行った。 請求人は、無効理由4を取り下げ、甲第7号証を撤回すると申し述べた。(第1回口頭審理調書の「請求人」欄の3) また、被請求人の以下の指摘に対し、請求人の口頭審理陳述要領書9ページ2~3行「寸法の数値」とあるのを「寸法の比率」に訂正し、甲第4号証、甲第4-1号証、甲第4-2号証の図面の間の比率は「尺度」の欄から明らかであり、また、本件について冒認出願は主張していない、と申し述べた。(同「請求人」欄の4及び5) 被請求人は、請求人の、無効理由4の取り下げ及び甲第7号証の撤回及び上記請求人の訂正を認め、甲第4号証、甲第4-1号証、甲第4-2号証の図面の間の比率が不明であり、押印の色が疑わしく、請求人の口頭審理陳述要領書8ページ8~12行について、意匠登録を受ける権利の第三者対抗要件は出願が前提となることを申し述べた。(同「被請求人」欄の3~7) 審判長は、甲第1号証から甲第6号証、甲第8号証から甲第36号証及び乙第1号証から乙第26号証までについて取り調べ、同日付けで審理を終結した。(同「審判長」欄の1及び2) 第5 当審の判断 1 本件登録意匠 本件登録意匠は、願書の記載及び願書に添付された図面によれば、意匠に係る物品を「封印帯付きキャップ」とし、「本物品は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の封印帯付きキャップである。」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 ア 形状等 本件登録意匠の形状等は、以下のとおりである。 [基本的構成態様] 認定A 上部に設けた封印帯付き上蓋部(審判請求書(本件審決の第2の1(4)(i))でいう「上蓋部」及び「封印帯」)とその内側に嵌め合わせた注ぎ口を備えた台部(審判請求書でいう「口部」。以下「注口付き台部」ともいう。また、上方の注ぎ口部分を「注口部」、下方の台状部分を「台部」という。)から成り、 [具体的態様] 認定B 全体は、正面視で縦横奥行きの長さ比は約11:14:7であって、封印帯付き上蓋部と台部の縦方向長さ比は、約7:3.4であり、台部の縦横奥行きの長さ比は約3.4:14:5.6であって、封印帯付き上蓋部の縦横奥行きの長さ比は約7:7:7である。 認定C 注口付き台部は、その台部を略菱形柱状とし、略菱形の鈍角側をなだらかな曲面状とし、注口部を、台部の上面中央に、台部の奥行き幅よりわずかに小径の略先細円筒状に設け、注口部から台部底面までは、貫通孔を形成して成る。 認定D 台部は、略菱形柱状の中央に円筒部を設け、その円筒部の左右方向に幅いっぱいの垂直壁を延出し、それと直交する複数の垂直片及び水平片で構成して成り、水平片は、上板、仕切り板2枚(審判請求書でいう「横のリブ」)、底板の4つの平面視、略菱形の板状であり、上下方向略等間隔に、略棚板状に設け、垂直片は、正背面の台部左右端から約1/4に円筒部を挟むように垂直片部(審判請求書でいう「縦のリブ」)を配して形成し、底面側の貫通孔の左右には、略半長円状の浅い凹部を形成し、左右端外側は、台部高さの7割程度の角丸縦長長方板状の耳部(審判請求書でいう「耳」)を設けている。 認定E また、断面視で、本体の注口部外周中程には、上蓋部螺合用の略山型の凸条が斜状に設けられている。 認定F 封印帯付き上蓋部は、注口部基部に、台部の奥行き長さの約1.25倍の直径の封印帯部を、その上端に複数の小凸片を配した、短円筒(リング)状に形成し、封印帯部の上方に間隔を空けて、伏せたカップ状の上蓋部を設け、その下端には複数の小凸片を配している。両者は未開蓋時において、細棒状片が斜めにわたって連結している(以下「斜条ブリッジ」という。)上蓋部の下縁は末広がり状に斜め下側にせり出して形成し、その余の上側外周は、下寄りのせり出し箇所から周側面上端寄りまでに、無数の細い凸条(審判請求書でいう「ローレット」)を略垂直方向に密集して配して滑り止め部を形成し、天面中央に小さい円形凹部を配し、上縁は、丸みを帯びた面取り状に形成している。また、断面視の上蓋部内周には、螺合のための略台形状の細溝部を設けている。 認定G 封印帯付き上蓋部の上蓋部及び封印帯部の間の態様は、小凸片の間に、略等間隔に4つの細い線状の斜条ブリッジを配置し、小凸片は、正背面視及び左右側面視に表れ、正背面の小凸片は、封印帯部の横幅(直径)の約1/6の横幅で、封印帯部と上蓋部間の半ばほどの高さの、一方が斜状で他方が垂直直線状の略角丸扁平直角台形状とし、封印帯部上端の正背面の中央左寄り、及び上蓋部下端の正背面の中央右寄りの、閉蓋時で互い違いになる位置に配されている。左右側面視中央の小凸片は、封印帯部の横幅(直径)の約1/5の横幅で、封印帯部と上蓋部間の半ばほどの高さの、略角丸扁平等脚台形状とし、上蓋部下端に配されている。 2 無効理由の要点 請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由を整理すると、以下の無効理由1~6のとおりである。なお、上記第4のとおり、無効理由4は、口頭審理において取り下げられ、被請求人も取り下げを認めている。 (1)無効理由1について 本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠である、甲第1号証に係るカタログ掲載の意匠(甲第1号証のカタログを作成する過程で撮影された写真及び印刷紙面に現れた意匠)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 (2)無効理由2について 本件登録意匠は、その出願前に頒布された刊行物(甲第1号証)に記載された意匠(甲第1号証のカタログに印刷された意匠)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることかできないものである。 (3)無効理由3について 本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠である、甲第4号証の意匠(甲第4号証、甲4-1号証及び甲4-2号証の図面に記載された意匠)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 (4)無効理由4について 本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠である、甲第7号証の意匠(甲第7号証の物品の見本の意匠)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 (5)無効理由5について(予備的主張) 本件登録意匠は、各先行意匠(甲第1号証の意匠、甲第4号証の意匠及び甲第7号証の意匠)と実質的に同一のものであって、意匠法第3条第1項第1号及び2号の規定により意匠登録を受けることができないものである。 (6)無効理由6について(予備的主張) 本件登録意匠は、同人によって同日に出願された意願2021-1128(意匠登録第1688791号)の意匠に類似する意匠であり、意匠法第9条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。 3 無効理由の判断 以下、甲第1号証の意匠、甲第4号証の意匠、甲第4-1号証の意匠及び甲第4-2号証の意匠は、本件登録意匠の向きと合わせて認定を行う。 (1)無効理由1及び無効理由2について 無効理由1及び無効理由2は、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないとするものであって、その出願前に公然知られた、本件登録意匠と類似する意匠とは、甲第1号証に基づくものである。 そして、無効理由1において、その意匠とは、甲第1号証のカタログに掲載の意匠に基づき、その甲第1号証のカタログを作成する過程で撮影された写真及び印刷紙面に現れた意匠であって、甲第1号証に係る写真や印刷紙面を公然と知るに至った者は当該印刷会社の従業員などであるのに対し、無効理由2は、甲第1号証のカタログ(刊行物)に記載された意匠であって、甲第1号証のカタログを公然と知るに至った者は、そのカタログを頒布され、目にした取引先企業の従業者などである。 そして、本件登録意匠と対比すべき意匠が、甲1意匠である点において両者は、同様であるから、無効理由1及び無効理由2を合わせて検討する。 本件登録意匠については、前記1に記載のとおりである。 ア 甲第1号証(先行意匠1)について 本件登録意匠出願前に公然知られた意匠として示された、甲第1号証は、三笠産業株式会社(請求人)による「キャップ&ボトル総合カタログ 2013」と題した製品カタログであって、甲第1号証の意匠(以下「甲1意匠」という。)は、60ページの上段図版部に「9.5MS-TEセット品」「9.5MS-TEcap 9.5MSスパウト」として現された意匠である。 また、68ページ右下には、「R12102.5」との記載がある。(別紙第2参照) イ 甲1意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて (ア)印刷会社の従業員などに知られたものであったかについて 甲1意匠については、甲第1号証が本件登録意匠出願前に公然知られたものである旨、審判請求書、証拠説明書で述べられ、そのカタログ名「キャップ&ボトル総合カタログ 2013」からも、2013年中には、印刷され、頒布された蓋然性は高いものといえるが、甲第19号証(「キャップ&ボトル総合カタログ 2013についてのご確認」と題された当該カタログを印刷した株式会社サンデザインワーク(以下「印刷会社」という。)の代表取締役青山克己により確認された確認書)(別紙第7参照)によれば、2012年10月(平成24年10月)に印刷され、当該カタログについて、両者(請求人及び印刷会社)は、守秘義務契約を締結しておらず、当該印刷会社は守秘義務を負わない旨確認されている。 したがって、甲1意匠は、2012年10月頃に印刷会社の従業員などに知られたものであったと認めるのが相当である。 これに対して、被請求人は、甲第19号証が、本件登録意匠の意匠登録出願後の2023年1月19日に作成されたものであること、印刷会社が、請求人から甲第19号証の署名及び捺印を求められた際に、断る理由がないこと、社会通念上、印刷会社は請求人のために秘密を保持すべき関係にあるものであること、などを主張している。 しかし、2012年10月に甲第1号証に係るカタログを印刷する際に、請求人と印刷会社との間で守秘義務契約を締結していなかったことを、その後の2023年1月19日に確認したとしても、特に不自然とはいえない。 また、請求人と印刷会社との間で守秘義務契約を締結していたことを認めるに足る証拠はないから、印刷会社が、請求人から甲第19号証の署名及び捺印を求められた際に、それに応じて署名及び捺印をしても、特に不自然とはいえない。 さらに、社会通念について検討すると、カタログは、自社の製品を周知して、購買意欲を高めることを目的として頒布・配付するものであるから、一般的には、カタログの掲載内容自体に社会通念上、秘密を保持するものが含まれているとはいえない。また、甲第1号証に係るカタログを頒布する前に、その秘密を保持するべき特別の事情を認めるに足る証拠はないから、甲第1号証がカタログであることを前提とすると、社会通念上、印刷会社が請求人のために秘密を保持すべき関係にあるとまではいえない。 以上から、被請求人の主張は採用できない。 (イ)取引先企業の従業者などに知られたものであったかについて 甲第35号証(「「キャップ&ボトル総合カタログ 2013」送付についてのご確認」と題された頒布先企業への確認書)(別紙第8参照)によれば、2013年12月16日に甲第1号証に係るカタログを取引先企業で受領した事実を認めることができる。 取引先企業が当該カタログを受領するに至った経緯をみると、甲第35号証に記載された「2013年12月13日のメール」は、甲第12号証に示すメール(別紙第6参照)であり、このメールから、2013年12月12日に取引先企業の従業者から請求人の従業者宛てに、キャップサンプルを送付するようにメールで依頼があり、2013年12月13日に請求人の従業者から取引先企業の従業者宛に、FScapサンプル5個、FSIcapサンプル5個及びカタログ2部を同封して送付した旨を、メールで回答した事実を認めることができる。 そして、キャップのサンプルとカタログを同封して送付することから、サンプルと同封するカタログは、送付したサンプルが掲載されたものであること、すなわち、2013年12月13日当時に販売されていたサンプルを掲載する2013年のカタログ(甲第1号証)が送付されたことを推認できる。そして、この推認された事実は、甲第35号証により立証される、甲第1号証に係るカタログを2013年12月16日に取引先企業の従業者が受領した事実と符合する。 したがって、甲1意匠は、2013年12月16日頃に取引先企業の従業者などに知られたものであったと認めるのが相当である。 ウ 甲1意匠の認定 以下、甲1意匠は、上記「キャップ&ボトル総合カタログ 2013」の第60ページの上段図版部に「9.5MS-TEセット品」「9.5MS-TEcap 9.5MSスパウト」として現された意匠である。 (ア)物品 甲1意匠の意匠に係る物品は、「キャップ付きスパウト」である。 (イ)形状等 甲1意匠の形状等は、以下のとおりである。 [基本的構成態様] 認定a1 上部に設けた封印帯付き上蓋部とその内側に嵌め合わせた注ぎ口を備えた台部から成り、 [具体的態様] 認定b1 全体は、正面視で縦横奥行きの長さ比は約11:14:7であって、封印帯付き上蓋部と台部の縦方向長さ比は、7:3.4であり、台部の縦横奥行きの長さ比は約3.4:14:5.6であって、封印帯付き上蓋部の縦横奥行きの長さ比は約7:7:7である。(全体の奥行きは、封印帯 部(以下の認定f1)の直径から推認される。) 認定c1 注口付き台部は、その台部を略菱形柱状とし、略菱形の鈍角側をなだらかな曲面状とし、注口部を、台部の上面中央に、台部の奥行き幅よりわずかに小径の略先細円筒状に設け、注口部から台部底面までは、貫通孔を形成して成る。 認定d1 台部は、略菱形柱状の中央に円筒部を設け、その円筒部の左右方向に幅いっぱいの垂直壁を延出し、それと直交する複数の垂直片及び水平片で構成して成り、水平片は、上板、仕切り板2枚、底板の4つの平面視、略菱形の板状であり、上下方向略等間隔に、略棚板状に設け、垂直片は、正背面の台部左右端から約1/4に円筒部を挟むように垂直片部を配して形成し、底面側の貫通孔の左右には、略半長円状の浅い凹部を形成し、左右端外側は、台部高さの7割程度の角丸縦長長方板状の耳部を設けている。 認定e1 また、本体の注口部外周中程には、上蓋部螺合用の略山型の凸条が斜状に設けられている。 認定f1 封印帯付き上蓋部は、注口部基部に、台部の奥行き長さの約1.25倍の直径の封印帯部を、その上端に複数の小凸片を配した、短円筒(リング)状に形成し、封印帯部の上方に間隔を空けて、伏せたカップ状の上蓋部を設け、その下端には複数の小凸片を配している。両者は未開蓋時において、斜条ブリッジで連結していると推認され、上蓋部の下縁は末広がり状に斜め下側にせり出して形成し、その余の上側外周は、下寄りのせり出し箇所から周側面上端寄りまでに、無数の細い凸条を略垂直方向に密集して配して滑り止め部を形成し、天面中央に小さい円形凹部を配し、上縁は、丸みを帯びた面取り状に形成している。 認定g1 封印帯付き上蓋部の上蓋部と封印帯部の間の態様は、まず正面視で左右端寄りに略等間隔に2つの細い線状の斜条ブリッジ(斜条ブリッジが断裂した開蓋時の態様が「9.5MS-TEcap 9.5MSスパウト」に認められ、背面側を合わせると合計4つの斜条ブリッジを推認できる。)を配置し、封印帯部の横幅(直径)の約2/35の幅で、封印帯部と上蓋部間の半ばほどの高さの正面視略台形状の小凸片を、封印帯部側上端の正面の中央やや左寄り、及び上蓋部側下端の正背面の中央に、閉蓋時で互い違いになる位置に配し、封印帯部側上端には正面視略台形状の小凸片を正面右寄り及び正面左端に配しており、この種物品分野の知識に照らして背面側も同様に現れると推認される。 認定h1 注ぎ口を備えた台部は、透光性を有した略白色で、封印帯付き上蓋部は白色の色彩が表されている。 エ 本件登録意匠と甲1意匠の対比 (ア)本件物品の需要者について 本件登録意匠の意匠に係る物品(以下「本件物品」という場合がある。)の需要者は「封印帯付きキャップ」の購入者であって、主に、包装業者や、各種飲料や食品などの製造業者、さらに間接的には、本件部品を用いた製品(飲料や食品の製品)の購買者等であって、製品を製造する者にあっては、封印帯付きキャップを包装用袋に接合する際に、いかに効率よく、かつ、隙間無く確実に接合できるか否かの点に注目し、台部周側面は特に注視するものである。これに対して、飲料や食品の製品の購買者は、製品の内容(飲料や食品)に応じて製品を選択することが普通であって、封印帯付きキャップに応じて製品を選択するとまではいえないから、本件物品の主たる需要者とはいえない。また、本件物品は封印帯付きキャップであるから、需要者は、内容物を充填した後の品質保持のための、封印帯周辺にも一定の注意を払うものといえ、本件登録意匠と甲1意匠の類否判断に際しては、それらを踏まえて、両意匠の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価することとする。 (イ)物品について 本件登録意匠は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の「封印帯付きキャップ」であって、甲1意匠は「キャップ付きスパウト」であって、「スパウト」とは、「飲み口や注ぎ口がついた袋」等を指すところ甲第1号証掲載の製品は、そのような飲料用包装用袋の飲み口部品を指したものと認められるから、本件登録意匠と甲1意匠(以下本項目において「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。 (ウ)形状等について A 共通点 基本的構成態様について (A1)上部に設けた封印帯付き上蓋部、とその内側に嵌め合わせた注ぎ口を備えた台部から成る点、(認定A及びa1) 具体的態様について (B1)全体は、正面視で縦横奥行きの長さ比は約11:14:7であって、封印帯付き上蓋部と台部の縦方向長さ比は、7:3.4であり、台部の縦横奥行きの長さ比は約3.4:14:5.6であって、封印帯付き上蓋部の縦横奥行きの長さ比は約7:7:7である点、(認定B及びb1) (C1)注口付き台部は、その台部を略菱形柱状とし、略菱形の鈍角側をなだらかな曲面状とし、注口部を、台部の上面中央に、台部の奥行き幅よりわずかに小径の略先細円筒状に設け、注口部から台部底面までは、貫通孔を形成して成り(認定C及びc1)、台部は、略菱形柱状の中央に円筒部を設け、その円筒部の左右方向に幅いっぱいの垂直壁を延出し、それと直交する複数の垂直片及び水平片で構成して成り、水平片は、上板、仕切り板2枚、底板の4つの平面視、略菱形の板状であり、上下方向略等間隔に、略棚板状に設け、垂直片は、正背面の台部左右端から約1/4に円筒部を挟むように垂直片部を配して形成し、底面側の貫通孔の左右には、略半長円状の浅い凹部を形成し、左右端外側は、台部高さの7割程度の角丸縦長長方板状の耳部を設けている(認定D及びd1)点、 (D1)本体の注口部外周中程には、上蓋部螺合用の略山型の凸条が斜状に設けられている点、(認定E及びe1) (E1)封印帯付き上蓋部は、注口部基部に、台部の奥行き長さの約1.25倍の直径の封印帯部を、その上端に複数の小凸片を配した、短円筒(リング)状に形成し、封印帯部の上方に間隔を空けて、伏せたカップ状の上蓋部を設け、その下端には複数の小凸片を配し、両者は未開蓋時において、斜条ブリッジで連結し、上蓋部の下縁は末広がり状に斜め下側にせり出して形成し、その余の上側外周は、下寄りのせり出し箇所から周側面上端寄りまでに、無数の細い凸条を略垂直方向に密集して配して滑り止め部を形成し、天面中央に小さい円形凹部を配し、上縁は、丸みを帯びた面取り状に形成している点、(認定F及びf1) (F1)封印帯付き上蓋部及び封印帯部の間の態様について、略等間隔に4つの細い線状の斜条ブリッジを配置し、小凸片は、封印帯部と上蓋部間の半ばほどの高さであって、閉蓋時において、正面の略中央で、互い違いになる位置の封印帯部側上端及び上蓋部側下端に、正面視略台形状の小凸片を配している点において共通する。(認定G及びg1) B 相違点 具体的態様について (a1)本件登録意匠は、断面視の上蓋部内周には、螺合のための略台形状の細溝部を設けている(認定F)のに対し、甲1意匠は、上蓋部内の態様は確認できない点、 (b1)封印帯部上端の小凸片について、本件登録意匠は、封印帯部の横幅(直径)の約1/6幅の正背面視、略角丸扁平直角台形状の小凸片を、正背面中央左寄りに、配したものである(認定G)のに対し、甲1意匠は、封印帯部の横幅(直径)の約2/35幅の略台形状の小凸片を、正背面右寄り、正背面の中央やや左寄り、及び正背面左端に配している(認定g1)点、 (c1)上蓋部下端の小凸片について、本件登録意匠は、封印帯の横幅(直径)の約1/6幅の、正背面視、略角丸扁平直角台形状の小凸片を、正背面の中央右寄りに配し、左右側面視中央に封印帯部の横幅(直径)の約1/5幅の、正背面視、略角丸扁平等脚台形状の小凸片を配している(形状G)のに対し、甲1意匠は、封印帯部の横幅(直径)の約2/35幅の略台形状の小凸片を、上蓋部側下端の正背面の中央に配している(認定g1)点、 (d1)色彩について、本件登録意匠は、線図で表されたものであるのに対して、甲1意匠は、本体は、透光性を有した略白色で、封印帯付き上蓋部は白色の色彩が表されている(認定h1)点において相違する。 オ 本件登録意匠と甲1意匠が類似するか否かの判断 両意匠の意匠に係る物品は、「封印帯付きキャップ」及び「キャップ付きスパウト」であって、表記は異なるが、共に飲料用包装用袋の飲み口部品を指したものと認められるから、本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致し、同一である。 両意匠の形状等については、以下のとおり評価する。 (ア)共通点の評価 まず、基本的構成態様としてあげた共通点(A1)は、両意匠の構成態様を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。次に共通点(B1)は、全体及び各部の縦横と奥行きの長さ比についてであり、両意匠の全体のプロポーションに関わる共通点であって、全体の印象に大きく関わるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 そして、共通点(C1)及び(E1)は、注ぎ口を備えた台部及び封印帯付き上蓋部の具体的態様についてであって、上蓋部の外観については、よく見受けられるキャップの態様といえるものの、特に両意匠の共通する特徴である台部の、略菱形柱状の中央に円筒部を設け、その円筒部の左右方向に幅いっぱいの垂直壁を延出し、それと直交する複数の垂直片及び水平片で構成して成り、水平片は、上板、仕切り板2枚、底板の4つの平面視、略菱形の板状であり、上下方向略等間隔に、略棚板状に設け、垂直片は、正背面の台部左右端から約1/4に円筒部を挟むように垂直片部を配して形成した態様は、両意匠に共通する特徴的態様であって、需要者に共通する美観を強く印象づけるというべきであるから、類否判断に与える影響は大きい。 これに対して、共通点(D1)は、本体の注口部外周の態様についてであるが、注口部外周に上蓋部螺合用の凸条を設けることは、この種物品において、ごく普通の形態であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(F1)についても、封印状態に関わる略等間隔に4つの細い線状の斜条ブリッジを配置した点や、正面の略中央の左寄り及び右寄りの閉蓋時で互い違いになる位置の封印帯部側上端及び上蓋部側下端に、正面視略台形状の小凸片を配している点は、両意匠は、封印帯付きキャップとしての構成態様を共有するものとして、需要者に看取されるから両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。 よって、共通点(A1)、共通点(D1)は類否判断に与える影響は、いずれも小さいものの、共通点(F1)は類否判断に与える影響は一定程度あるものであり、共通点(B1)、共通点(C1)及び共通点(E1)は類否判断に与える影響は、いずれも大きいものであって、それら共通点(A1)ないし共通点(F1)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、共通点全体が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 (イ)相違点の評価 これに対して、両意匠の各相違点を見ると、まず、相違点(a1)については、甲1意匠は、上蓋部内の態様は観察できないものの、キャップ内に何らかの溝を形成することは、上蓋部の態様として、自明のことでもあり、この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 次に、相違点(b1)及び相違点(c1)は、封印帯部と上蓋部の間の封印帯部上端及び上蓋部下端に設けた小凸片の態様についての相違であるが、閉蓋時に封印され、使用に際して、開蓋する箇所であり、需要者は一定の注意を払うところであるものの、見えにくい封印帯部と上蓋部の間のごく小さな小凸片の幅の長短や個数などであって、より子細に観察し、注視するとまではいえず、共通点(F1)などがある中で、この相違点のみをもって、両意匠の印象を別異のものとするとはいえないものであり、この点が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまるものである。 そして、相違点(d1)は、色彩の有無の相違であり、本件登録意匠は出願に際し、線図で表したもので、甲1意匠は、カタログに掲載した実製品の写真画像であり、色彩を表したものも表さないものも、どちらも広く封印帯付きキャップの物品分野に限らず、よく見受けられる形態であり、特段の特徴ある色彩が現れているものでもないから、この相違点が類否判断に与える影響は小さい。 そうすると、相違点(b1)及び相違点(c1)は類否判断に与える影響は一定程度にとどまるものであって、相違点(a1)及び、相違点(d1)は類否判断に与える影響が小さいものであるから、それら相違点(a1)ないし相違点(d1)があいまった視覚的効果も考慮して総合したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 よって、相違点は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、共通点は、相違点を凌駕して、両意匠を共通するものと印象づけるものであるから本件登録意匠は甲1意匠に類似する。 カ 小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、両意匠の形状等についても類似するものであるから、本件登録意匠と甲1意匠は類似するものである。 また、上記イのとおり、甲1意匠は、印刷会社内において、カタログ制作の課程で、従業員などに公然知られたものと認められ、また、取引先企業などに頒布することで、カタログ掲載の意匠として公然知られたと認められる。 したがって、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に公然知られた甲1意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同条同項柱書の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、無効理由1によって、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とすべきものである。 また、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に頒布された刊行物に記載された甲1意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、無効理由2によっても、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とすべきものである。 (2)無効理由3について 無効理由3は、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないとするものであって、その出願前に公然知られた、本件登録意匠と類似する意匠とは、甲第4号証、甲第4-1号証及び甲第4-2号証に現されたものであって、三笠産業株式会社(請求人)が甲第4号証に係る製品を成形する金型の製作を金型メーカーに依頼した際に、金型製作をする課程で金型メーカーの従業員に対し公然知られた意匠であるとするものである。 まず、甲第4号証、甲第4-1号証及び甲第4-2号証に現された意匠(以下「甲4意匠」という。)が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったか、次いで、本件登録意匠と甲4意匠が類似する意匠であるか否かについて検討し、判断する。 本件登録意匠については、前記1に記載のとおりである。 ア 甲第4号証(先行意匠2)について 本件登録意匠出願前に公然知られた意匠として示された、甲第4号証は、請求人の「9.5MSスパウト セット図面」(別紙第3参照)であって、甲第4-1号証及び甲第4-2号証は、それぞれ、「9.5MSスパウトキャップ 1型製品図面」(被せる部分の図面)(別紙第4参照)及び「9.5MSスパウト 1型製品図面」(被せられる部分の図面)(別紙第5参照)である。 イ 甲4意匠が本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものであったかについて 甲4意匠については、本件登録意匠出願前に請求人が金型製作を依頼した際に、金型メーカーの従業員に対し公然知られた意匠である旨、審判請求書、証拠説明書で述べられ、金型発注書(甲第5号証)及び図面の検印(甲第4号証)などから、本件登録意匠出願前に当該金型メーカーに金型製作が依頼されたことは、認め得る。しかしながら、「金型メーカーの従業員に対し公然知られた意匠」であるか否かについては、一般的に金型図面などは、製品の製造に関わる重要な情報であって、取引関係者外に漏洩しないことが通常であると認められる。 すなわち、乙第24号証によれば、平成13年(2001年)当時から、金型を製造する事業者(以下「金型事業者」という。)の作成した金型図面や金型加工データが海外に流出し、金型事業者に損失が生じる事案が生じていたことを理解でき、乙第22号証によれば、このような事案を防止するように、「秘密保持の対象となるか否かを明確に定めた秘密保持契約を締結する等、下請事業者に損失を与えることがないよう、十分な配慮を行うこと」(乙第22号証の第15ページ最下行~第16ページ第1行)というガイドラインが作成されたことを推認でき、当該秘密保持契約は、下請事業者である金型事業者の金型図面や金型加工データの秘密を保持するためのものといえる。 そして、下請事業者である金型事業者においては、自らが作成した金型図面や金型加工データの秘密が流出すれば、損失が生じることから、仮に、秘密保持契約が締結されていなくても、当然に、金型図面や金型加工データの秘密を保持することを推認できるところ、金型とその金型で成形される製品は、表裏一体の関係にあるから、金型事業者は、金型図面や金型加工データの秘密を保持するだけでなく、その金型で成形される製品のデータの秘密も保持するというべきである。 さらに、請求人と甲第4号証に係る製品を成形する金型を製作する金型メーカーとの間の守秘義務についての取決めについては書証などからは、不明であって、当該金型メーカーに守秘義務を負わない旨確認されているわけでもない。そうすると、本件登録意匠出願前に、当該金型メーカーの従業員に対し甲4意匠が知られたとしても、公然知られたとまではいえないものであって、甲4意匠は公然知られたものとは、認められない。 そうすると、甲4意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものとは認められないから、本件登録意匠は甲4意匠をもって、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものとはいえない。 したがって、無効理由3によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって無効とすべき理由はない。 なお、無効理由3については、上記のとおりであるが、甲4意匠の認定及び本件登録意匠との類否判断については、以下、念のために記載する。 ウ 甲4意匠の認定 甲第4号証は、「9.5MSスパウト セット図面」(セット図面)であり、甲第4-1号証及び甲第4-2号証は、それぞれ、「9.5MSスパウトキャップ 1型製品図面」及び「9.5MSスパウト 1型製品図面」であり、甲4意匠は、これらの甲第4号証、甲第4-1号証及び甲第4-2号証に係る図面として現された意匠である。 (ア)物品 甲4意匠の意匠に係る物品は、「キャップ付きスパウト」である。 (イ)形状等 甲4意匠の形状等は、以下のとおりである。 [基本的構成態様] 認定a4 上部に設けた封印帯付き上蓋部とその内側に嵌め合わせた注ぎ口を備えた台部から成り、 [具体的態様] 認定b4 全体は、正面視で縦横奥行きの長さ比は約11:14:7であって、封印帯付き上蓋部と台部の縦方向長さ比は、7:3.4であり、台部の縦横奥行きの長さ比は約3.4:14:5.6であって、封印帯付き上蓋部の縦横奥行きの長さ比は約7:7:7である。 認定c4 注口付き台部は、その台部を略菱形柱状とし、略菱形の鈍角側をなだらかな曲面状とし、注口部を、台部の上面中央に、台部の奥行き幅よりわずかに小径の略先細円筒状に設け、注口部から台部底面までは、貫通孔を形成して成る。 認定d4 台部は、略菱形柱状の中央に円筒部を設け、その円筒部の左右方向に幅いっぱいの垂直壁を延出し、それと直交する複数の垂直片及び水平片で構成して成り、水平片は、上板、仕切り板2枚、底板の4つの平面視、略菱形の板状であり、上下方向略等間隔に、略棚板状に設け、垂直片は、正背面の台部左右端から約1/4に円筒部を挟むように垂直片部を配して形成し、底面側の貫通孔の左右には、略半長円状の浅い凹部を形成し、左右端外側は、台部高さの7割程度の角丸縦長長方板状の耳部を設けている。 認定e4 断面視で、本体の注口部外周中程には、上蓋部螺合用の略山型の凸条が斜状に設けられている。 認定f4 封印帯付き上蓋部は、注口部基部に、台部の奥行き長さの約1.25倍の直径の封印帯部を、その上端に複数の小凸片を配した、短円筒(リング)状に形成し、封印帯部の上方に間隔を空けて、伏せたカップ状の上蓋部を設け、その下端には複数の小凸片を配している。両者は未開蓋時において、斜条ブリッジで連結している。上蓋部の下縁は末広がり状に斜め下側にせり出して形成し、その余の上側外周は、下寄りのせり出し箇所から周側面上端寄りまでに、無数の細い凸条を略垂直方向に密集して配して滑り止め部を形成し、天面中央に小さい円形凹部を配し、上縁は、丸みを帯びた面取り状に形成している。また、上蓋部内周には、螺合のための略台形状の細溝部を設けている。 認定g4 封印帯付き上蓋部の上蓋部と封印帯部の間の態様は、(甲4意匠は、正背面縦断面視で奥側の斜条ブリッジ及び各小凸片は表れている(甲第4号証及び甲第4-1号証)ので、正背面において認定すると、各片の位置(手前側の位置)は断面図(奥側の位置)と左右が反対となる。また、この種物品分野の知識に照らして正背面は、同様に現れると推認される。)正背面において、左右端寄りに2つ略等間隔に細い線状の斜条ブリッジ(背面側を合わせると合計4つの斜条ブリッジが認められる)を配置し、封印帯部の横幅(直径)の約2/35の幅で、封印帯部と上蓋部間の半ばほどの高さ正面視略直角台形状の小凸片を、封印帯部側上端の正背面の中央左寄り、及び上蓋部側下端の正背面の中央右寄りに、閉蓋時で互い違いになる位置に配し、封印帯部側上端には正面視略長方形状の小凸片を正背面右寄り及び正背面左端寄りに配している。 エ 本件登録意匠と甲4意匠の対比 (ア)物品について 本件登録意匠は、液状体やペースト状体等の内容物を充填して使用される容器口部用の「封印帯付きキャップ」であって、甲4意匠は「キャップ付きスパウト」であって、「スパウト」とは、「飲み口や注ぎ口がついた袋」等を指すところ甲第4号証掲載の製品は、そのような飲料用包装用袋の飲み口部品を差したものと認められるから、本件登録意匠と甲4意匠(以下本項目において「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。 (イ)形状等について A 共通点 基本的構成態様について (A4)上部に設けた封印帯付き上蓋部、とその内側に嵌め合わせた注ぎ口を備えた台部から成る点、(認定A及びa4) 具体的態様について (B4)全体は、正面視で縦横奥行きの長さ比は約11:14:7であって、封印帯付き上蓋部と台部の縦方向長さ比は、7:3.4であり、台部の縦横奥行きの長さ比は約3.4:14:5.6であって、封印帯付き上蓋部の縦横奥行きの長さ比は約7:7:7である点、(認定B及びb4) (C4)注口付き台部は、その台部を略菱形柱状とし、略菱形の鈍角側をなだらかな曲面状とし、注口部を、台部の上面中央に、台部の奥行き幅よりわずかに小径の略先細円筒状に設け、注口部から台部底面までは、貫通孔を形成して成り(認定C及びc4)、台部は、略菱形柱状の中央に円筒部を設け、その円筒部の左右方向に幅いっぱいの垂直壁を延出し、それと直交する複数の垂直片及び水平片で構成して成り、水平片は、上板、仕切り板2枚、底板の4つの平面視、略菱形の板状であり、上下方向略等間隔に、略棚板状に設け、垂直片は、正背面の台部左右端から約1/4に円筒部を挟むように垂直片部を配して形成し、底面側の貫通孔の左右には、略半長円状の浅い凹部を形成し、左右端外側は、台部高さの7割程度の角丸縦長長方板状の耳部を設けている(認定D及びd4)点、 (D4)本体の注口部外周中程には、上蓋部螺合用の略山型の凸条が斜状に設けられ(認定E及びe4)、また、上蓋部内周には、螺合のための略台形状の細溝部を設けている(認定F及びf4)点、 (E4)封印帯付き上蓋部は、注口部基部に、台部の奥行き長さの約1.25倍の直径の封印帯部を、その上端に複数の小凸片を配した、短円筒(リング)状に形成し、封印帯部の上方に間隔を空けて、伏せたカップ状の上蓋部を設け、その下端には複数の小凸片を配し、両者は未開蓋時において、斜条ブリッジで連結し、上蓋部の下縁は末広がり状に斜め下側にせり出して形成し、その余の上側外周は、下寄りのせり出し箇所から周側面上端寄りまでに、無数の細い凸条を略垂直方向に密集して周面に配して滑り止め部を形成し、天面中央に小さい凹部を配し、上縁は、丸みを帯びた面取り状に形成している点、(認定F及びf4) (F4)封印帯付き上蓋部の上蓋部と封印帯部の間の態様について、略等間隔に4つの細い線状の斜条ブリッジを配置し、小凸片は、封印帯部と上蓋部間の半ばほどの高さであって、閉蓋時において、正背面の略中央の左寄り及び右寄りで互い違いになる位置の封印帯部側上端及び上蓋部下端に、正面視略直角台形状の小凸片を配している点において共通する。(認定G及びg4) B 相違点 具体的態様について (a4)封印帯上端の小凸部について、本件登録意匠は、封印帯の横幅(直径)の約1/6幅の正背面視、略角丸扁平直角台形状の小凸片を、正背面中央左寄りに、配したものであるの(認定G)に対し、甲4意匠は、小凸片の幅が封印帯の横幅(直径)の約2/35幅の略直角台形状の小凸片を、正背面中央左寄りに配し、さらに、正背面右寄り及び正背面左端寄りにも正面視略長方形状の小凸片を配している(認定g4)点、 (b4)上蓋部下端の小凸片について、本件登録意匠は、封印帯の横幅(直径)の約1/6幅の、略角丸扁平直角台形状の小凸片を、正背面の中央右寄りに配し、左右側面視中央には、封印帯の横幅(直径)の約1/5幅の、左右側面視、略角丸扁平等脚台形状の小凸部を配している(形状G)のに対し、甲4意匠は、正背面の中央右寄りに配しているのみであって、小凸片の幅が封印帯の横幅(直径)の約2/35幅である(形状g4)点、 オ 本件登録意匠と甲4意匠が類似するか否かの判断 両意匠の意匠に係る物品は、「封印帯付きキャップ」及び「キャップ付きスパウト」であって、表記は異なるが、共に飲料用包装用袋の飲み口部品を指したものと認められるから、本件登録意匠と甲4意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。 両意匠の形状等については、以下のとおり評価する。 (ア)共通点の評価 まず、基本的構成態様としてあげた、共通点(A4)は、両意匠の構成態様を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。次に共通点(B4)は、全体及び各部の縦横と奥行きの長さ比についてであり、両意匠の全体のプロポーションに関わる共通点であって、全体の印象に大きく関わるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 そして、共通点(C4)及び(E4)は、注ぎ口を備えた台部及び封印帯付き上蓋部の具体的態様についてであって、上蓋部の外観については、よく見受けられるキャップの態様ともいえるものの、特に両意匠の共通する特徴である台部の、略菱形柱状の中央に円筒部を設け、その円筒部の左右方向に幅いっぱいの垂直壁を延出し、それと直交する複数の垂直片及び水平片で構成して成り、水平片は、上板、仕切り板2枚、底板の4つの平面視、略菱形の板状であり、上下方向略等間隔に、略棚板状に設け、垂直片は、正背面の台部左右端から約1/4に円筒部を挟むように垂直片部を配して形成した態様は、両意匠に共通する特徴的態様であって、需要者に共通する美観を強く印象づけるというべきであるから、類否判断に与える影響は大きい。 これに対して、共通点(D4)は、本体の注口部外周の態様及び上蓋部内周の態様についてであるが、注口部外周に上蓋部螺合用の凸条を設け、上蓋部内周に螺合のための略台形状の細溝部を設けていることは、この種物品において、ごく普通の形態であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(F4)についても、封印状態に関わる略等間隔に4つの細い線状の斜条ブリッジを配置した点や、正面の略中央の左寄り及び右寄りの閉蓋時で互い違いになる位置の封印帯部側上端及び上蓋部側下端に、正面視略直角台形状の小凸片を配している点は、両意匠は、封印帯付きキャップとしての構成態様を共有するものとして、需要者に看取されるから両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。 よって、共通点(A4)、共通点(D4)は類否判断に与える影響は、いずれも小さいものの、共通点(F4)は類否判断に与える影響は一定程度あるものであり、共通点(B4)、共通点(C4)及び共通点(E4)は類否判断に与える影響は、いずれも大きいものであって、それら共通点(A4)ないし共通点(F4)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、共通点全体が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 (イ)相違点の評価 これに対して、両意匠の各相違点を見ると、相違点(a4)及び相違点(b4)は、封印帯部と上蓋部の間の封印帯部上端及び上蓋部下端に設けた小凸片の態様についての相違であるが、閉蓋時に封印され、使用に際して、開蓋する箇所であり、需要者は一定の注意を払うところであるものの、見えにくい封印帯部と上蓋部の間のごく小さな小凸片の幅の長短や個数などをより子細に観察し、注視するとまではいえず、共通点(F4)などがある中で、この相違点のみをもって、両意匠の印象を別異のものとするとはいえないものであり、この点が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまるものである。 そうすると、相違点(a4)及び相違点(b4)は類否判断に与える影響が一定程度にとどまるものであるが、それら相違点(a4)及び相違点(b4)があいまった視覚的効果も考慮して総合したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 よって、相違点は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、共通点は、相違点を凌駕して、両意匠を共通するものと印象づけるものであるから本件登録意匠は甲4意匠に類似する。 カ 小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、両意匠の形状等についても類似し、本件登録意匠と甲4意匠は類似するものであるが、上記イのとおり、甲4意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前に公然知られたものとは認められないから、本件登録意匠は甲4意匠をもって、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものとはいえない。 したがって、無効理由3によって、本件登録意匠の登録を、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって無効とすべき理由はない。 (3)予備的主張について(無効理由5及び無効理由6) 請求人は、審判請求書において、「その他」の無効理由として、本件登録意匠と先行意匠と実質的に同一とも考えられる場合、及び口部以外が意匠の要部である場合、それらの場合に該当する前提において、それぞれ、無効理由(無効理由5及び無効理由6)があると申し述べた。 このうち前者の無効理由5ついては、上記第4のとおり、先行意匠3(甲7意匠)は撤回されており、上記(1)エのとおり、本件登録意匠と先行意匠1(甲1意匠)は、相違点が存在し、同一の意匠ということはできないし、先行意匠2(甲4意匠)は、公然知られた意匠とはいえず、上記(2)エのとおり、本件登録意匠と先行意匠2(甲4意匠)は、相違点が存在し、同一の意匠ということもできないから、「本件登録意匠は、各先行意匠と実質的に同一のものであって、意匠法第3条第1項第1号及び2号の規定により意匠登録を受けることができないものである。」とする無効理由5によって、本件登録意匠を無効とすることはできない。 後者の無効理由6ついては、上記(1)及び(2)のとおり、口部(本審決で認定した「台部」)以外が本件登録意匠の要部であるとしたものではない。よって、口部以外の形態が同一であるとする「同人によって同日に出願された意願2021-1128(意匠登録第1688791号)の意匠に類似する意匠であり、意匠法第9条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。」とする無効理由6によって、本件登録意匠を無効とすることはできない。 第6 むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、無効理由1及び無効理由2において理由があり、出願前に公然知られた又は出願前に頒布された刊行物に記載された甲第1号証の意匠と類似する意匠であって、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同条同項柱書の規定に違反して意匠登録を受けたものと認められるから、登録第1694947号の意匠登録は、無効にすべきものである。 審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-880006

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