特許拒絶査定不服審判
2019-017481
容器の製造方法
- 審判番号
- 2019-017481
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-234365外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月25日
- 審決日
- 2020年10月09日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三笠産業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人森本国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B29C) / P18 .575-Z (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-234365「容器の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 8日出願公開、特開2017-100330〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年 7月17日付け:拒絶理由通知書
令和1年 9月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和1年 9月30日付け:拒絶査定
令和1年12月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和1年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年12月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「底部に、環状の脚部と脚部に囲まれた上げ底部とを有する合成樹脂製の容器を、金型を用いたブロー成形により成形する容器の製造方法であって、
金型に、容器の上げ底部に粗面加工を形成する粗面加工部と、金型のキャビティ内で成形された容器における粗面加工された上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に連通して気体を導入可能な孔部と、が形成され、
成形工程において、容器の上げ底部における、孔部が臨む箇所も含めた箇所に、粗面加工が形成され、
成形工程後の離型工程において、前記孔部から粗面加工された上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に気体を導入させることにより、粗面加工されている箇所を通して、上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部における孔部に臨んでいない箇所にも、空気などの気体を拡がるように導入させて容器を金型から離型させる
ことを特徴とする容器の製造方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和1年9月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「底部に、環状の脚部と脚部に囲まれた上げ底部とを有する合成樹脂製の容器を、金型を用いたブロー成形により成形する容器の製造方法であって、
金型に、容器の上げ底部に粗面加工を形成する粗面加工部と、金型のキャビティ内で成形された容器における粗面加工された上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に連通して気体を導入可能な孔部と、が形成され、
成形工程において、容器の上げ底部に粗面加工が形成され、
成形工程後の離型工程において、前記孔部から粗面加工された上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に気体を導入させることにより、粗面加工されている箇所を通して、上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部における孔部に臨んでいない箇所にも、空気などの気体を拡がるように導入させて容器を金型から離型させる
ことを特徴とする容器の製造方法。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、粗面加工が形成される箇所について、「孔部が臨む箇所も含めた箇所」に減縮することを含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)補正後の本願発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2013-144560号公報(平成25年7月25日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、合議体による。)。
a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が減圧吸収性能を有する合成樹脂容器であって、該底部には、胴部から連なる外周壁、接地部及び内周壁から成る環状の脚部が形成され、且つ該脚部の内周壁よりも内側が、前記接地部よりも上方に位置する上げ底部として形成されており、該上げ底部は、前記脚部の内周壁との付け根よりも下方に突出していると共に、上げ底部の中央部外縁から外周側に向かって外方に突出する複数の凸部、及び該凸部の間に形成される凹部が周方向且つ等間隔に形成されていることを特徴とする合成樹脂製容器。
・・・<略>・・・
【請求項6】
前記凸部の表面が粗面である請求項1乃至5の何れかに記載の合成樹脂製容器。
【請求項7】
前記凹部の表面が粗面である請求項1乃至6の何れかに記載の合成樹脂製容器。
【請求項8】
前記脚部の内周壁の表面が粗面である請求項1乃至7の何れかに記載の合成樹脂製容器。」
b「【0011】
また上げ底部に形成された、凸部の表面、凹部の表面、及び環状の脚部の内周壁の表面が粗面に形成されていること、すなわち本発明の合成樹脂製容器を成形する際に用いる底金型に、粗面加工が施されていることにより、複雑な形状の底部であっても離型性を向上することができ、生産性にも優れている。
本発明の合成樹脂製容器においては、減圧吸収に寄与しない環状の脚部が底部に形成されていることから、内圧変化が生じても容器の高さを常に一定に維持することが可能であると共に、容器の自立性が維持され、搬送性にも優れている。
また本発明の合成樹脂製容器においては、胴部に減圧吸収のためのパネルを形成する必要がないことから、外観特性を維持できると共に、ラベルの貼付も可能である。」
c「【0021】
本発明の合成樹脂製容器においては、上述した底部形状を有する限り、従来公知の合成樹脂製容器の製造方法により成形することができるが、容器の内圧変化による上げ底部9の上下動を可能にする上で、上げ底部9が薄肉であることが重要であることから、上げ底部9を薄肉に成形可能な延伸ブロー成形法により成形することが好ましい。 延伸ブロー成形においては、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂から成るプリフォームを上述した底部形状を容器底部に賦形可能な底金型を用いて成形する。 この際、凸部12,12・・・及び凹部13,13・・・から成る凹凸形状が底部に賦形されることから、底金型の離型性を向上するために底金型は粗面を有していることが好適である。特に、上げ底部9の表面、すなわち、凸部12,12・・・の内方傾斜面12a、外側端部(頂部)12b、外方傾斜面12c、及び側方傾斜面12d及び凹部13,13・・・の表面、更には環状の脚部8の内周壁8cに相当する部分が、凹凸が入り組み、型抜きが困難になるおそれがあることから、上記箇所に対応する底金型の部分を粗面とすることが離型性の点から好ましい。従って、成形された合成樹脂製容器においても、かかる底金型と接触する、上げ底部9の表面、更には環状の脚部8の内周壁8cの表面が粗面に形成される。」
(イ)上記(ア)の記載事項aないしcの下線部から、引用文献1には、次の周知技術が記載されていると認められる。
「底部が減圧吸収性能を有する合成樹脂容器をブロー成形によって製造する際に、底型表面に粗面加工を施すことにより、複雑な形状の底部であっても離型性が向上すること。」
イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2015-85625号公報(平成27年5月7日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成され、底壁部に、外周縁部に位置する接地部と、前記接地部に立設され前記接地部の内側を閉塞する多段有頂筒状の変形筒部と、が備えられたボトルを、金型を用いたブロー成形により形成するボトルの製造方法であって、
前記金型のキャビティ内で成形された前記ボトルから、前記金型のうち、前記底壁部を形成する底型を離型させる離型工程の際、前記変形筒部の外表面と、前記底型のキャビティ面と、の間の境界部を、前記底型の設けられた接続孔を通して前記金型の外部に接続しておくことを特徴とするボトルの製造方法。」
b「【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、有底筒状に形成されたボトルが知られている。このボトルの底壁部には、外周縁部に位置する接地部と、接地部に立設され接地部の内側を閉塞する多段有頂筒状の変形筒部と、が備えられている。
このボトルでは、例えば高温の内容物がこのボトル内に充填された後、冷却されたとき等に、変形筒部を構成する筒状部のうち、ボトル軸方向の内側に位置する第1筒状部が、外側に位置する第2筒状部に対して、ボトル軸方向の内側に向けて相対的に変位するように、変形筒部が変形することで、減圧吸収性能が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/061758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のボトルでは、前述のように高温の内容物をこのボトルに充填したときに、内容物の熱の影響を受けて、第1筒状部が、第2筒状部に対してボトル軸方向の外側に向けて相対的に変位するように、変形筒部が変形することがあった。このように変形筒部が変形したボトルでは、減圧吸収性能が十分に発揮されないおそれがある。
この問題を解決するために、このボトルを、金型を用いたブロー成形により形成するときに、金型のうち、ボトルの底壁部を形成する底型の温度を上昇させて底壁部をヒートセットすることで、変形筒部の耐熱性を向上させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、前記製造方法では、金型のキャビティ内で成形されたボトルにおける変形筒部の各筒状部が、底型に対して各別に嵌合することで、底型が底壁部から離型し難くなっている上、前述のように、底型を高温とすることで、この底型と、ボトルの底壁部と、が、底型からの熱の影響で密着し易くなっており、ボトルから底型を離型させるときに、ボトルの変形筒部が底型に張り付いて、例えばボトル軸方向に反転変形する等の可能性がある。
なお、底型のキャビティ面に表面処理を施して、ボトルが底型に張り付くのを抑制することも考えられるが、この場合、金型により多量のボトルを生産する過程で、表面処理の効果が弱まっていく。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、ボトルを高精度に形成することができるボトルの製造方法を提供することを目的とする。」
c「【0008】
この発明によれば、離型工程の際、前記境界部を、接続孔を通して金型の外部に接続しておくので、ボトルから底型を離型するときに、金型の外部から接続孔を通して境界部に空気を供給することができる。これにより、変形筒部の外表面を底型のキャビティ面から解放して変形筒部が底型に張り付くのを抑えることが可能になり、ボトルを高精度に形成することができる。
なお、キャビティ内でボトルを成形するブロー成形工程の際、キャビティ内が接続孔を通して金型の外部に開放されている場合には、ボトルの賦形性を高めることが可能になり、ボトルをより高精度に形成することができる。」
d「【0020】
なお、ボトル10は、例えばポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂材料で一体に形成されている。また、このボトル10は、例えば二軸延伸ブロー成形により形成される。さらにこのボトル10は、例えば、80~100℃(好ましくは83~93℃、例えば約87℃程度)の内容物を充填するいわゆる耐熱ボトルとして用いてもよいし、あるいは、60~78℃程度の内容物を充填するのに用いてもよい。
口部11は筒状に形成され、口部11に図示されないキャップが装着される。さらに、口部11、肩部12、胴部13及び底部14はそれぞれ、ボトル軸Oに直交する横断面視形状が円形状とされている。」
e「【0037】
キャビティ面34のうち、第1形成面35、第3形成面37および第5形成面39は、ボトル径方向の外側を向いていて、第2形成面36および第4形成面38は、上側(ボトル軸方向の内側)を向いている。また第2形成面36には、リブ29を形成するリブ形成部36aが設けられている。リブ形成部36aは、ボトル径方向に沿って延び、ボトル周方向に間隔をあけて複数設けられている。
・・・<略>・・・
【0040】
外接続孔40aは、キャビティ面34のうち、第2形成面36に設けられている。外接続孔40aは、第2形成面36のうち、リブ形成部36aを回避する位置に配置されていて、図示の例では、ボトル周方向に隣り合うリブ形成部36a同士の間に配置されている。外接続孔40aは、ボトル周方向に間隔をあけて複数設けられていて、図示の例では、ボトル軸Oを中心とした同一円周上に、ボトル周方向に同等の間隔をあけて複数配置されている。」
f「【図2】
」
g「【図4】
」
(イ)上記(ア)の記載事項a、c、dの下線部から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「有底筒状に形成され、底壁部に、外周縁部に位置する接地部と、前記接地部に立設され前記接地部の内側を閉塞する多段有頂筒状の変形筒部と、が備えられた合成樹脂材料で一体に形成されるボトルを、金型を用いたブロー成形により形成するボトルの製造方法であって、
前記金型のキャビティ内で成形された前記ボトルから、前記金型のうち、前記底壁部を形成する底型を離型させる離型工程の際、前記変形筒部の外表面と、前記底型のキャビティ面と、の間の境界部を、前記底型の設けられた接続孔を通して前記金型の外部に接続しておくことにより、ボトルから底型を離型するときに、金型の外部から接続孔を通して境界部に空気を供給することができ、これにより、変形筒部の外表面を底型のキャビティ面から解放して変形筒部が底型に張り付くのを抑えることが可能なボトルの製造方法。」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「外周縁部に位置する接地部」、「前記接地部の内側を閉塞する多段有頂筒状の変形筒部」、「合成樹脂材料で一体に形成されるボトル」、「接続孔」「空気」は、各々、本件補正発明の「環状の脚部」、「脚部に囲まれた上げ底部」、「合成樹脂製の容器」、「孔部」、「気体」に相当する。また、引用発明の「金型の外部から接続孔を通して境界部に空気を供給すること」は、本件補正発明の「前記孔部から上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に気体を導入」することに相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
底部に、環状の脚部と脚部に囲まれた上げ底部とを有する合成樹脂製の容器を、金型を用いたブロー成形により成形する容器の製造方法であって、金型に、金型のキャビティ内で成形された容器における上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に連通して気体を導入可能な孔部と、が形成され、成形工程後の離型工程において、前記孔部から上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に気体を導入させて容器を金型から離型させる、容器の製造方法。
<相違点1>金型について、本件補正発明においては「容器の上げ底部に粗面加工を形成する粗面加工部」が形成されているのに対し、引用発明においてはそのような特定がされていない点。
<相違点2>成形工程において、本件補正発明においては「容器の上げ底部における、孔部が臨む箇所も含めた箇所に、粗面加工が形成され」と特定しているのに対し、引用発明においてはそのような特定がされていない点。
<相違点3>成形工程後の離型工程において、本件補正発明においては「前記孔部から粗面加工された上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に気体を導入させることにより、粗面加工されている箇所を通して、上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部における孔部に臨んでいない箇所にも、空気などの気体を拡がるように導入させて容器を金型から離型させる」と特定しているのに対し、引用発明においてはそのような特定がされていない点。
(4)判断
ア 相違点1について
底部が減圧吸収性能を有する合成樹脂容器をブロー成形によって製造する際に、底型表面に粗面加工を施すことにより、複雑な形状の底部であっても離型性が向上することは、例えば、引用文献1に示されるように周知の技術的事項である。
一方、引用発明は、引用文献2の上記記載事項(2)イ(ア)e、f、gに示されるように、ボトルの底部にリブを形成しても良いものであり、この場合、底部は複雑な形状を呈するものである。
してみると、金型の外部から接続孔を通して境界部に空気を供給することができ、これにより、変形筒部の外表面を底型のキャビティ面から解放して変形筒部が底型に張り付くのを抑えることが可能な引用発明において、ボトルの底部に複雑な形状を呈するリブを形成する場合に、ボトルの底型からの離型性をより向上するために、上げ底部を形成する底型表面に粗面加工を施す周知技術を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
上記アで検討したように、引用発明において、上げ底部を形成する底型表面に、粗面加工を施すことは当業者が容易に想到し得ることである。そして、ボトルの底部に、複雑な形状を呈するリブを形成する場合、底型の粗面加工を施す箇所は、当業者であれば底型に張り付き易いリブ形成部、及び/又はリブ形成部同士の間に配置される箇所に自ずと設定するものである。
また、引用文献2の上記記載事項(2)イ(ア)eより、「外接続孔40aは、第2形成面36のうち、リブ形成部36aを回避する位置に配置されている。」と記載されていることから、引用発明において、粗面加工を施す箇所を、リブ形成部を回避するリブ形成部同士の間とすると、「容器の上げ底部における、孔部が臨む箇所も含めた箇所」となる。
よって、引用発明において、「容器の上げ底部における、孔部が臨む箇所も含めた箇所に、粗面加工が形成され」ることも当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 相違点3について
引用発明は、金型の外部から接続孔を通して境界部に空気を供給してボトルを金型から離型させるボトルの製造方法であって、その離型工程の際には、粗面加工の有無に関わらず、孔部から開始される離型工程の進行に伴って必然的に、徐々に「上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部における孔部に望んでいない箇所にも、空気などの気体を拡がるように導入させ」ていくものである。
してみると、引用発明である、金型の外部から接続孔を通して境界部に空気を供給してボトルを金型から離型させるボトルの製造方法において、周知技術を適用して底型に粗面加工を施した際にも、粗面加工を施した箇所を含めて、当然に「上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部における孔部に臨んでいない箇所にも、空気などの気体を拡がるように導入させ」ていくものとなる。
よって、引用発明において、「前記孔部から粗面加工された上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に気体を導入させることにより、粗面加工されている箇所を通して、上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部における孔部に臨んでいない箇所にも、空気などの気体を拡がるように導入させて容器を金型から離型させる」ことも当業者が容易に想到し得ることである。
エ 効果について
本件補正発明の効果は、本願明細書の段落【0017】等からみて、「離型工程において容器を良好に離型することができ、容器が不正な形状に変形して製造されることを防止できて、信頼性が向上する。」ことである。
しかしながら、引用発明は、「変形筒部の外表面を底型のキャビティ面から解放して変形筒部が底型に張り付くのを抑えることが可能になり、ボトルを高精度に形成することができる。」(引用文献2の上記記載事項(2)イ(ア)c)という効果を有しており、また、周知技術においても、「底金型に、粗面加工が施されていることにより、複雑な形状の底部であっても離型性を向上することができ」る(引用文献1の上記記載事項(2)ア(ア)b)という効果を奏するものであるから、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由 (2)本願発明と引用文献の技術との対比」において「しかしながら、何れの引用文献にも、本願発明の新請求項1のごとき、成形工程において、容器の上げ底部における、孔部が臨む箇所も含めた箇所に、粗面加工が形成され、粗面加工されている箇所を通して、上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部における孔部に臨んでいない箇所にも、空気などの気体を拡がるように導入させて容器を金型から離型させることは開示されておりません。
したがって、これらの引用文献の技術を例え組み合わせたとしても、成形工程において、容器の上げ底部における、孔部が臨む箇所も含めた箇所に、粗面加工が形成されているので、孔部を通して導入される気体が、上げ底部における粗面加工が形成されている箇所に良好に導入されるという本願発明の新請求項1のごとき容器の製造方法を容易に発明することができるとは考えられないものです。」と主張するので、以下検討する。
上記ウで検討したように、「前記孔部から粗面加工された上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部に気体を導入させることにより、粗面加工されている箇所を通して、上げ底部の外面と金型のキャビティとの境界部における孔部に臨んでいない箇所にも、空気などの気体を拡がるように導入させて容器を金型から離型させる」ことも当業者が容易に想到し得ることである。そして、上記イで検討したように、孔部が臨む箇所も含めた箇所に、粗面加工を形成することについても、当業者が容易に想到し得たのであるから、孔部を通して導入される気体が、上げ底部における粗面加工が形成されている箇所に良好に導入されることも、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、請求人の上記主張を首肯することはできない。
カ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年12月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和1年9月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び周知技術(引用文献1、3、4)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:特開2013-144560号公報(周知技術を示す文献)
引用文献2:特開2015-85625号公報
引用文献3:特開2009-241971号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2008-155565号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項、並びに引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「おける、孔部が臨む箇所も含めた箇所に、」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-017481