特許無効審判
2022-800067
船舶排ガスの洗浄排水処理装置
- 審判番号
- 2022-800067
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2021-007866
- 登録番号
- 6876885
- 請求日
- 2022年07月15日
- 審決日
- 2023年07月26日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーべー
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人代理人】黒田 晋平
- 【被請求人】株式会社 三井E&S
- 【被請求人代理人】丸山 英一
- 【被請求人代理人】丸山 重輝
- 【被請求人代理人】丸山 智貴
- 【被請求人】三菱化工機 株式会社
- 【被請求人代理人】丸山 英一
- 【被請求人代理人】丸山 重輝
- 【被請求人代理人】丸山 智貴
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 立木 林
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1113.121-YAA(C02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6876885号発明「船舶排ガスの洗浄排水処理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6876885号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
請求項1~6に記載された発明についての本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6876885号の請求項1~6に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 本件特許の出願から設定登録に至るまでの経緯
本件特許無効審判事件に係る特許第6876885号(以下、「本件特許」という。)は、株式会社三井E&S及び三菱化工機株式会社(以下、「被請求人」という。)が保有するものであり、その請求項1~6に係る発明についての出願は、令和2年9月8日を出願日とする特願2020-150688号の一部を、令和3年1月21日に分割出願したものであって、特願2021-7866号として審査され、令和3年4月28日に特許権の設定登録がされたものである。
2 本件特許無効審判事件における経緯
本件は、アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー(以下、「請求人」という。)により、請求項1~6に係る特許を対象として、請求されたものである。
本件における手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 7月15日 審判請求書の提出
同年11月 7日 訂正請求書及び答弁書の提出(被請求人)
令和5年 1月23日 弁駁書の提出(請求人)
同年 4月 4日付け 審理事項通知
同年 5月24日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年 同月 同日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年 6月 7日 第1回口頭審理
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
特許第6876885号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。
2 訂正の内容
令和4年11月7日提出の訂正請求書をもってされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第134条の2第3項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~6〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、遠心分離機と膜装置とからなる固液分離機を備え、」と記載されているのを、「前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、遠心分離機と全量ろ過方式の膜装置とからなる固液分離機を備え、前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ、」と訂正する。
3 訂正の適否についての判断
(1) 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、請求項1に記載された「膜装置」の方式を「全量ろ過方式」に、固液分離機で分離された「固形分」の送られる先を「EGR汚染水タンク」に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2) 新規事項の有無について
ア 訂正事項1における「全量ろ過方式」との訂正事項について
本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」といい、同明細書及び図面を纏めて「本件特許明細書及び図面」という。)には、「遠心分離機15で回収できなかった物質は、固液分離機の他の例である膜装置22で全量ろ過方式により除去する」こと(【0047】)、「膜のろ過方式には、全量ろ過方式とクロスフローろ過方式があるが、本発明では全量ろ過方式が好ましい」こと(【0073】)が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。
イ 訂正事項1における「前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ」るとの訂正事項について
(ア) 本件特許明細書及び図面には、次の記載が認められる。
a 「【0045】
本実施形態において、遠心分離機15による固液分離で、液体側の分離液はバッファタンク5に戻され、固体側の汚泥は配管20を介してEGR汚染水タンク21に貯められ、その汚染水は、陸揚げ供給ポンプ29によって陸揚げされる。」
b 「【0047】
凝集剤の添加により、煤や油等を凝集させて、遠心分離機15の固液分離効果を上げることができる。遠心分離機15で回収できなかった物質は、固液分離機の他の例である膜装置22で全量ろ過方式により除去する。」
c 「【0050】
遠心分離機15の処理液は、配管23を介して膜装置22に送液される。24は配管23に設けられる制御弁である。制御弁24は、膜装置の処理能力に応じて開度を調整することができる。
膜装置22を通過後、排水監視モニター25で排水基準値以下であることを確認し、問題なければ海へ放出する。
【0051】
図1に示す例では、排水監視モニター25が、膜装置22を通過した膜処理液を全量監視する場合の構成の一例が示されている。」
d 【0099】
・・・つまり、膜処理前に、定期的なエア抜きを行うことにより、膜処理を安定して行うことができる。更に、膜処理中にも、所定時間間隔でエア抜き用の制御弁を一定時間開けてエア抜きを行うことにより、より安定した膜処理を行うことができる。
【0100】
エアを抜く方法としては、エア抜用の制御弁を設ける方法や間欠的にエアをドレン抜きのための制御弁(AV3)より開くことにより行うことができる。エアの排出先は EGRドレインタンク27に限らず、バッファタンク5でもよい。
e 「【図1】
[図:0001409772000001.jpg]
」
(イ) そして、上記(ア)aによれば、固液分離機を構成する遠心分離機から生じる固体側の汚泥は配管20を介して「EGR汚染水タンク21」に送られることが理解できる(【0045】)。
また、上記(ア)c~eを総合的にみると、図1において膜装置22から四方にのびる配管のうち、排水監視モニター25と繋がる配管は、膜装置22から膜処理液を排出する配管を(【0050】)、遠心分離機15と繋がる配管は、遠心分離機15の処理液を膜装置22へ導入する配管23を(【0050】)、EGRドレインタンク27と繋がる配管は、膜装置22からの定期的なエア抜きの際のエアを排出する配管を(【0099】、【0100】)、それぞれ意味するものと理解できる。
(ウ) 他方、図1において膜装置22から右方向に延びる配管については、本件明細書で説明されていないが、上記(ア)bによれば、膜装置22は、遠心分離機15で回収できなかった物質を除去するためのものであること(【0047】)、膜装置22で除去された物質(固形分)のフローが説明されていないこと(上記(イ)参照)、膜装置22から右方向に延びる配管は、配管20と接続していること(図1)、及び、EGR汚染水タンクが固液分離機から生じる固体側の汚泥を貯留するものであること(【0045】)を併せ考えると、膜装置22から右方向に延びる配管(膜装置22から配管20に向けて延びる配管)は、上記EGR汚染水タンクに貯留されるものと同種のもの、すなわち膜装置22から生じる固形分のフロー又は配管を意味していると解するのが相当である。
(エ) したがって、本件明細書及び図面には、遠心分離機15、膜装置22それぞれから生じる固形分を、EGR汚染水タンク21に送ることが示されているといえるから、「前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ」るとの訂正事項は、本件明細書及び図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、上記(1)のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。よって、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4) 独立特許要件について
一群の請求項1~6に係る訂正は、いずれも「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるところ、訂正前の請求項1~6に係る特許に対しては、本件特許無効審判の請求がされているから、これらの請求項に係る訂正については、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
4 訂正請求についての結論
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第4 本件発明について
上記第3のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。そして、各請求項に係る発明は、その記載事項により特定されるとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、纏めて「本件発明」という。下線は訂正箇所である。)。
「【請求項1】
船舶排ガスをスクラバ水で洗浄する洗浄部を含むと共に、船舶のエンジンに排ガスの一部を再循環して排ガス中の窒素酸化物の量を減少させる排ガス再循環ユニットと、
前記排ガス再循環ユニットの洗浄部における洗浄により排ガス中の環境汚染物質相を含有するスクラバ排水を貯留するバッファタンクとを備え、
前記バッファタンクと前記排ガス再循環ユニットとの間に、循環ポンプを介して、大気圧より高圧で循環するスクラバ排水とスクラバ水とのスクラバ循環系が形成されており、
前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、遠心分離機と全量ろ過方式の膜装置とからなる固液分離機を備え、前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ、
前記バッファタンク内のスクラバ排水を前記固液分離機へ供給する排水供給配管と、前記固液分離機で分離された分離液を前記バッファタンク内に返送する返送配管とにより、前記バッファタンクと前記固液分離機との間に、固液分離循環系が形成されており、
前記バッファタンクには、スクラバ循環系と固液分離循環系が各々独立して形成されており、
前記スクラバ循環系におけるバッファタンクから前記排ガス再循環ユニットに供給するスクラバ水は、前記固液分離循環系で浄化されたスクラバ水を含むことを特徴とする船舶排ガスの洗浄排水処理装置。
【請求項2】
前記バッファタンクに、煤と油分を含むスカムを浮上させて除去することにより、前記遠心分離機の処理時間あたりの固形分排出量を抑えるスカム除去装置を備えることを特徴とする請求項1記載の船舶排ガスの洗浄排水処理装置。
【請求項3】
前記膜装置は、一枚の管板から吊り下げられた中空糸膜を用いた構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の船舶排ガスの洗浄排水処理装置。
【請求項4】
前記膜装置は、膜処理された処理水が、pH調整することなく、海への排水基準を満足させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の船舶排ガスの洗浄排水処理装置。
【請求項5】
前記スクラバ循環系は、前記バッファタンクを介することなく、前記排ガス再循環ユニットに、高圧のスクラバ排水を供給するバイパス流路が形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の船舶排ガスの洗浄排水処理装置。
【請求項6】
前記スクラバ循環系は、前記バッファタンクを介する流路に、バルブが設けられ、
前記流路から分岐する前記バイパス流路に、バイパス用バルブが設けられ、
前記流路及び前記バイパス流路の上流側には、排ガス中の環境汚染物質相を含有するスクラバ排水を、前記バッファタンクに貯留する前に、一次的に貯留する受槽と、pHを計測するpH計が設けられており、
前記受槽には、液面センサーが設けられ、
前記液面センサーによる前記受槽の液面高さと、及び前記pH計のpHとに基づき、前記バルブと前記バイパス用バルブの開度を調整し、前記スクラバ循環系のスクラバ水をコントロールすることを特徴とする請求項5記載の洗浄排水処理装置。」
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人の主張する請求の理由(無効の理由)は、審判請求書、令和5年1月23日付け弁駁書、及び、同年5月24日付け口頭審理陳述要領書の記載からみて、概略、次のとおり整理することができる。
なお、甲第1号証を「甲1」などと略して記載する。
(1) 無効理由
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2~9に記載された技術的事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
請求人が提出した証拠は、次のとおりである。
(1) 審判請求書に添付した証拠
甲1 国際公開第2020/078708号
甲2 特表2013-527788号公報
甲3 特開2017-6883号公報
甲4 Emission Project Guide MAN B&W Two-stroke Marine Engines, MAN Diesel & Turbo(第1ページの記載からみて2017年6月に発行)
甲5 特開2018-51534号公報
甲6 特開2017-205723号公報
甲7 特開2018-140332号公報
甲8 特開2019-209241号公報
甲9 再公表特許WO2016/147708号
(2) 令和5年1月23日付け弁駁書に添付した証拠
甲10 特開2016-203034号公報
甲11 特開2015-160829号公報
甲12 特開2015-73914号公報
甲13 特開2019-157777号公報
甲14 特開2020-58988号公報
甲15 特開2019-18162号公報
甲16 特開2019-155326号公報
(3) 令和5年5月24日付け口頭審理陳述要領書に添付した証拠
甲17 特開2004-81933号公報
第6 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人の主張する答弁の理由(無効理由に対する反論)は、審判事件答弁書、及び令和5年5月24日提出の口頭審理陳述要領書からみて、概略、次のとおり整理することができる。
(1) 無効理由に対する反論
請求人による無効理由についての主張は否認乃至争う。本件特許の請求項1~6に係る発明は進歩性を有するため、特許法第123条第1項第2号に規定する無効理由に該当しない。
2 証拠方法
請求人が提出した証拠は、次のとおりである。なお、乙第1号証を「乙1」などと略して記載する。
(1) 審判事件答弁書に添付して提出された証拠
乙1 和田洋六、「図解入門 よくわかる最新 水処理技術の基本と仕組み[第3版]」、第1版第4刷、株式会社秀和システム、2021年4月30日、表紙、第104~105頁、奥付
乙2 入谷英司、「絵とき「濾過技術」基礎のきそ」、初版、日刊工業新聞社、2011年2月25日、表紙、第28~33頁、第148~151頁、奥付
第7 当審の判断
当審は、請求人が主張する上記無効理由に理由がない、と判断する。判断理由の詳細は、次のとおりである。
1 各甲号証及び各乙号証の記載事項
(1) 甲1の記載事項
甲1には「EXHAUST GAS CLEANING SYSTEM AND METHOD FOR CLEANING EXHAUST GAS(排気ガス浄化システム及び排気ガスを浄化するための方法)」(発明の名称。カッコ内は当審訳。)に関して、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。訳文は、特表2021-534972号公報(以下、「甲1ファミリー公報」という。)を参考に、当審が作成したものである。)。
ア 「The invention relates to an exhaust gas cleaning system for cleaning exhaust gas onboard a ship, e.g. from a marine engine, burner or boiler.」(第1欄第2~3行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0001】参照):
本発明は、船上において例えば船舶用機関、燃焼装置、又はボイラなどからの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化システムに関する。)
イ 「Large ships are typically driven by engines operating on sulphur containing fuel. In the combustion of such fuel, exhaust gas containing sulphur oxides (SOx) is formed. The exhaust gas typically also contains particulate matter, such as soot, oil and heavy metals, and nitrogen oxides (NOx). In order to reduce the impact of the exhaust gas on the environment, the exhaust gas should be cleaned before it is released into the atmosphere. For example, the exhaust gas could be passed through a scrubber to be washed with a scrubber fluid whereby pollutants in the exhaust gas are caught in the scrubber fluid.」(第1欄第8~15行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0002】参照):
大型船舶は、典型的には硫黄含有燃料で動作する機関により駆動される。かかる燃料の燃焼において、硫黄酸化物(SOX)を含有する排気ガスが形成される。さらにこの排気ガスは、煤煙、油、及び重金属などの微粒子状物質と窒素酸化物(NOX)とを典型的に含有する。排気ガスによる環境への影響を低下させるために、大気中への放出前に排気ガスを浄化しなければならない。例えば、排気ガスは、スクラバーを通してスクラバ流体で洗浄することができ、これにより排気ガス中の汚染物質がスクラバ流体中に捕獲される。)
ウ 「An object of the present invention is to provide an exhaust gas cleaning system for cleaning exhaust gas onboard a ship and a method for cleaning exhaust gas by means of such a system that at least partly solve the above mentioned problem. The basic concept of the invention is to use a centrifugal separator for removing most of the particulate matter, herein also referred to as PM, from the scrubber fluid and then a membrane filter for removing residues of particulate matter from the scrubber fluid to make it clean enough to be discharged overboard. The exhaust gas system and the method according to the invention are defined in the appended claims and discussed below.」(第2欄第6~14行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0007】参照):
本発明の目的は、上述の問題を少なくとも一部解消する、船上において排気ガスを浄化するための排気ガス浄化システムと、かかるシステムを用いて排気ガスを浄化するための方法とを提供することである。本発明の基本コンセプトは、スクラバ流体から本明細書においてはPMとも呼ばれる微粒子状物質の大半を除去するための遠心分離機と、次いでスクラバ流体から微粒子状物質の残りを除去してこのスクラバ流体を船外に排出するのに十分な清浄度にするためのメンブランフィルタとを使用するものである。本発明による排気ガスシステム及び方法は、添付の特許請求の範囲において定義され、以下で論じられる。)
エ 「The membrane filter may, for example, be polymeric or ceramic, or a combination thereof. Further, the membrane filter may be of cross flow type.」(第3欄第7~8行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0014】参照):
メンブランフィルタは、例えばポリマー若しくはセラミック、又はそれらの組合せであってもよい。さらに、メンブランフィルタは、クロスフロー型であってもよい。)
オ 「In that the centrifugal separator may receive scrubber fluid from the scrubber unit, cleaning or the scrubber fluid from particulate matter absorbed from the exhaust gas may be enabled. Further, in that the membrane filter may receive the first fraction of the scrubber fluid, i.e. the cleaned scrubber fluid, from the centrifugal separator, further cleaning of the scrubber fluid from particulate matter absorbed from the exhaust gas may be enabled.」
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0015】参照):
遠心分離機がスクラバユニットからスクラバ流体を受領することにより、排気ガスから吸収された微粒子状物質をスクラバ流体から除去することが可能となり得る。さらに、メンブランフィルタが遠心分離機からスクラバ流体の第1の部分、すなわち浄化済みスクラバ流体を受領することにより、排気ガスから吸収された微粒子状物質をスクラバ流体からさらに除去することが可能となり得る。)
カ 「A scrubber fluid inlet of the scrubber may be arranged in communication with a scrubber fluid outlet of the scrubber. Thereby, recirculation of scrubber fluid, i.e. a closed loop scrubber, may be enabled.」
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0016】参照):
スクラバのスクラバ流体入口が、スクラバのスクラバ流体出口と連通状態に構成され得る。これにより、スクラバ流体の再循環、すなわち閉ループスクラバが可能となり得る。)
キ 「 The switching module may receive all, nothing or some of the first fraction of the scrubber fluid from the centrifugal separator, and this may vary over time. Further, the switching module may feed all, nothing or some of the first fraction of the scrubber fluid to the membrane filter and/or the scrubber unit, and this may vary over time.」(第4欄第3~6行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0021】参照):
切替えモジュールは、遠心分離機からスクラバ流体の第1の部分のすべてを受領する、一切を受領しない、又は一部を受領することができる。これは、経時的に変化し得る。さらに、切替えモジュールは、メンブランフィルタ及び/又はスクラバユニットへスクラバ流体の第1の部分のすべてを送る、一切を送らない、又は一部を送ることができる。これは、経時的に変化し得る。)
ク 「 The membrane filter may be in communication with the scrubber unit for feeding the fourth fraction of the scrubber fluid to the scrubber unit, e.g. the scrubber and/or the circulation tank, if such is present, thereof.」(第4欄第7~9行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0022】参照):
メンブランフィルタは、スクラバユニットへ、例えばスクラバ及び/又は存在する場合にはスクラバの循環タンクへスクラバ流体の第4の部分を送るためにスクラバユニットと連通状態にあってもよい。)
ケ 「 The membrane filter may feed all, nothing or some of the fourth fraction of the scrubber fluid to the scrubber unit, and this may vary over time.」(第4欄第10~11行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0023】参照):
メンブランフィルタは、スクラバユニットへスクラバ流体の第4の部分のすべてを送る、一切を送らない、又は一部を送ることができる。これは、経時的に変化し得る。)
コ 「 The second sub system may further comprise a water analysis unit arranged to determine a number > 1 of parameter values of the third fraction of the scrubber fluid. The parameter values can be used to decide on further handling of the third fraction of the scrubber fluid.」(第4欄第12~15行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0024】参照):
第2のサブシステムは、スクラバ流体の第3の部分のパラメータ値の数字が1以上であると決定するように構成された水質分析ユニットをさらに備え得る。パラメータ値は、スクラバ流体の第3の部分のさらなる処理を決定するために使用され得る。)
サ 「 The membrane filter may be in communication with the scrubber unit for feeding the third fraction of the scrubber fluid to the scrubber unit, i.e. the scrubber or the circulation tank, if such is present, thereof, if at least one of said parameter values exceeds or equals a respective limit value. Then, the third fraction of the scrubber fluid may be too dirty to be discharged from the exhaust gas system.」(第4欄第16~20行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0025】参照):
メンブランフィルタは、前記パラメータ値の中の少なくとも1つがそれぞれの限度値以上である場合に、スクラバユニットへ、すなわちスクラバ又は存在する場合にはスクラバの循環タンクへスクラバ流体の第3の部分を送るためにスクラバユニットと連通状態にあってもよい。この場合に、スクラバ流体の第3の部分は、排気ガスシステムから排出できないほど汚染度が過度に高いものとなり得る。)
シ 「 The exhaust gas cleaning system may be arranged to discharge the third fraction of the scrubber fluid from the exhaust gas cleaning system if each of said parameter values is below said respective limit value. For example, the third fraction of the scrubber fluid may be discharged overboard, or to a temporary storage tank for later discharge overboard.」(第4欄第21~25行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0026】参照):
排気ガス浄化システムは、前記パラメータ値のそれぞれが前記それぞれの限度値未満である場合に、排気ガス浄化システムからスクラバ流体の第3の部分を排出するように構成されてもよい。例えば、スクラバ流体の第3の部分は、船外へ、又は後の船外排出のために一時保管タンクへ排出され得る。)
ス 「 Fig. 1 illustrates a exhaust gas cleaning system 1 comprising a first sub system 3 and a second sub system 5. In turn, the first sub system 3 comprises a flocculation unit 7, a centrifugal separator 9 in the form of a high speed separator, a sludge tank 10, a chemical dosing unit 11 , a switching module 13 and a scrubber unit 15, which scrubber unit 15 contains a scrubber 17 and a circulation tank 19. The second sub system 5 comprises a membrane filter 21 of cross flow type with a pore size of 0,15 micro meter, a water analysis unit 23 and a switching module 25. The exhaust gas cleaning system is configured to clean exhaust gas EG from a marine diesel engine 27 on board a ship (not illustrated). Accordingly, the scrubber 17 comprises an exhaust gas inlet 29 for receiving the exhaust gas EG from the engine 27 and an exhaust gas outlet 31 for releasing washed exhaust gas EGW.」(第6欄第19~29行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0042】参照):
図1は、第1のサブシステム3及び第2のサブシステム5を備える排気ガス浄化システム1を示す。さらに、この第1のサブシステム3は、フロキュレーションユニット7、高速分離機の形態の遠心分離機9、スラッジタンク10、薬品注入ユニット11、切替えモジュール13、及びスクラバユニット15を備え、スクラバユニット15は、スクラバ17及び循環タンク19を備える。第2のサブシステム5は、0.15マイクロメートルの孔径を有するクロスフロー型のメンブランフィルタ21と、水質分析ユニット23と、切替えモジュール25とを備える。排気ガス浄化システムは、船(図示せず)の上で船舶用ディーゼル機関27からの排気ガスEGを浄化するように構成される。したがって、スクラバ17は、機関27から排気ガスEGを受領するための排気ガス入口29と、洗浄済み排気ガスEGWを放出するための排気ガス出口31とを備える。)
セ 「 Fig. 2 illustrates a method for cleaning the exhaust gas EG from the engine 27. Inside the scrubber 17, the exhaust gas is washed with a scrubber fluid SF (Step A) in the form of freshwater containing an alkaline agent like sodium hydroxide (NaOH). The scrubber works in a conventional way not further described herein. The scrubber fluid SF is fed from the circulation tank 19 to the scrubber 17 through a scrubber fluid inlet 33 thereof.Inside the scrubber 17 the scrubber fluid SF absorbs pollutants from the exhaust gas EG to clean it whereupon the scrubber fluid SF is fed through a scrubber fluid outlet 35 back to the circulation tank 19. Therefore, the scrubber fluid inlet 33 communicates indirectly, i.e. via the circulation tank 19, with the scrubber fluid outlet 35 whereby the scrubber fluid SF is recirculated through the scrubber 17 (Step B).」(第6欄第30行~第7欄第4行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0043】参照):
図2は、機関27からの排気ガスEGを浄化するための方法を示す。スクラバ17の内部において、排気ガスは、水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ化剤を含有する淡水の形態のスクラバ流体SFで洗浄される(ステップA)。スクラバは、本明細書においてはあらためて説明しない従来の方法で機能する。スクラバ流体SFは、循環タンク19からスクラバ17のスクラバ流体入口33を通りスクラバ17へ送られる。スクラバ17の内部において、スクラバ流体SFは、排気ガスEGから汚染物質を吸収して排気ガスEGを浄化し、スクラバ流体出口35を通り循環タンク19へと送られて戻る。したがって、スクラバ流体入口33は、スクラバ流体出口35と間接的に、すなわち循環タンク19を介して連通し、それによりスクラバ流体SFは、スクラバ17を通り再循環される(ステップB)。)
ソ 「 When the scrubber fluid SF is recirculated through the scrubber 17 it gets more and more polluted. To ensure an efficient operation of the scrubber 17, the scrubber fluid must not get too polluted. Accordingly, some of the scrubber fluid SF is continuously pumped from the circulation tank 19 to be cleaned. To ensure a sufficient amount of scrubber fluid in the circulation tank 19 it is replenished with scrubber fluid to make up for the pumped-off scrubber fluid. This replenishment could involve addition of clean freshwater and alkaline agent from outside the exhaust gas cleaning system 1. Further,“internal” replenishment of scrubber fluid may take place by return of scrubber fluid to the circulation tank 19 after cleaning, as will be further described below.」(第7欄第5~13行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0044】参照):
スクラバ流体SFは、スクラバ17を通り再循環される場合に、徐々に汚染される。スクラバ17の効率的な動作を確保するためには、スクラバ流体は過度に汚染されてはならない。したがって、スクラバ流体SFの一部が、浄化のために循環タンク19から継続的にポンプ排出される。循環タンク19内に十分な量のスクラバ流体を確保するために、循環タンク19は、ポンプ排出されたスクラバ流体の埋め合わせをするためにスクラバ流体を補充される。この補充は、排気ガス浄化システム1の外部から清浄な淡水及びアルカリ化剤を追加することを伴い得る。さらに、以下でさらに説明されるように、浄化後にスクラバ流体を循環タンク19へ戻すことによるスクラバ流体の「内部」補充が行われてもよい。)
タ 「 A chemical substance, containing a coagulant in the form of poly aluminum chloride and the alkaline agent for adjusting the scrubber fluid pH to 6,5, is supplied, by the chemical dosing unit 11 , to the scrubber fluid SF pumped off from the circulation tank 19 (Step C) before it is received in a flocculation unit 7 communicating with the circulation tank 19. Inside the flocculation unit 7 the coagulant-containing scrubber fluid SF is held and mixed to enable proper flocculation (Step D) before it is received by the centrifugal separator 9 communicating with the flocculation unit 7, and thus (indirectly) with the circulation tank 19. The centrifugal separator 9 separates the flocks-containing scrubber fluid SF into first and second fractions (Step E). The second fraction, which is more polluted than the first fraction, is discharged to the sludge tank 10 (Step F). What happens to the cleaner first fraction depends on which mode the exhaust gas cleaning system 1 is in.」(第7欄第14~25行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0045】参照):
ポリ塩化アルミニウムの形態の凝固剤とスクラバ流体のpHを6.5へと調節するためのアルカリ化剤とを含有する化学物質が、薬品注入ユニット11により、循環タンク19からポンプ排出されたスクラバ流体SFに供給され(ステップC)、その後このスクラバ流体SFは、循環タンク19と連通するフロキュレーションユニット7内に受領される。フロキュレーションユニット7の内部において、この凝固剤を含有するスクラバ流体SFは、適切なフロキュレーションが可能になるように保持及び混合され(ステップD)、その後にフロキュレーションユニット7及び(間接的に)循環タンク19と連通する遠心分離機9により受領される。遠心分離機9は、フロックを含有したスクラバ流体SFを第1の部分及び第2の部分へと分離する(ステップE)。第1の部分よりも汚染された第2の部分は、スラッジタンク10へ排出される(ステップF)。より清浄な第1の部分に対して何がなされるかは、排気ガス浄化システム1のモードにより左右される。)
チ 「 In a first mode, the switching module 13 is set such that 100% of the first fraction is fed back to the scrubber unit 15, more particularly the circulation tank 19 thereof (Step G), which is in communication with the centrifugal separator 9, whereby the circulation tank 19 is replenished with cleaned scrubber fluid. In a second mode, the switching module 13 is set such that x%, 0 < x <100, of the first fraction is fed back to the circulation tank 19 (Step G) to replenish the same (depending on the value of x), while (100-x)% of the first fraction is fed to the membrane filter 21 , which is in communication with the centrifugal separator 9. x is adjustable and may be kept constant or varied during operation of the exhaust gas cleaning system 1. Whether the exhaust gas cleaning system 1 is in the first mode or the second mode depends, inter alia, on the amount of aqueous sulphite and sulphate salts in the scrubber fluid, and the amount of scrubber fluid in the first sub system 3.」(第7欄第26行~第8欄第2行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0046】参照):
第1のモードでは、切替えモジュール13は、第1の部分の100%がスクラバユニット15へ、より具体的にはその循環タンク19へ送られて戻るように設定される(ステップG)。循環タンク19は、遠心分離機9と連通状態にあるため、浄化済みスクラバ流体を補充される。第2のモードでは、切替えモジュール13は、第1の部分のx%(ここで0≦x≦100である)が循環タンク19を補充するために循環タンク19へ送られて戻り(xの数値により決定される)(ステップG)、一方で第1の部分の(100-x)%がメンブランフィルタ21へ送られるように設定される。メンブランフィルタ21は、遠心分離機9と連通状態にある。xは、調節可能であり、排気ガス浄化システム1の動作中に一定に維持されても又は変更されてもよい。排気ガス浄化システム1が第1のモード又は第2のモードのいずれにあるかは、とりわけスクラバ流体中の水溶の硫黄及び硫黄塩の量と、第1のサブシステム3内のスクラバ流体の量とによって左右される。)
ツ 「 The membrane filter 21 separates the first fraction into third and fourth fractions (Step H). The fourth fraction, which is more polluted than the third fraction, is fed back to the scrubber unit 15, more particularly the circulation tank 19 thereof (Step I), which is in communication with the membrane filter 21 , whereby the circulation tank 19 is replenished with scrubber fluid. What happens to the cleaner third fraction depends on how polluted it is.」(第8欄第3~8行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0047】参照):
メンブランフィルタ21は、第1の部分を第3の部分及び第4の部分へと分離する(ステップH)。第3の部分よりも汚染された第4の部分は、スクラバユニット15へ、より具体的にはその循環タンク19へ送られて戻る(ステップI)。循環タンク19は、メンブランフィルタ21と連通状態にあり、それによりスクラバ流体を補充される。より清浄な第3の部分に対して何がなされるかは、その汚染度により左右される。)
テ 「 A turbidity value, a pH value and a PAH (Polycyclic Aromatic Hydrocarbons) value of the third fraction is determined by the water analysis unit 23 (Step J) and communicated to the switching module 25. The switching module 25 is set such that, if one or more of the turbidity value, the pH value and the PAH value exceeds or equals a respective limit value, here 25 NTU, 6,5 and 2250 ppb, respectively, the third fraction is fed back to the scrubber unit 15, more particularly the circulation tank 19 thereof (Step K), which is in communication with the membrane filter 21 , whereby the circulation tank 19 is replenished with cleaned scrubber fluid. Further, if the turbidity value, the pH value and the PAH value all are lower than the respective limit values, the third fraction is discharged from the exhaust gas cleaning system 1 (Step L), overboard or to a temporary holding tank (not illustrated) for later discharge, for example if the ship is in an area where discharge overboard is prohibited.」(第8欄第9~20行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0048】参照):
第3の部分の濁度値、pH値、及びPAH(多環芳香族炭化水素)値が、水質分析ユニット23により決定され(ステップJ)、切替えモジュール25へ伝えられる。切替えモジュール25は、濁度値、pH値、及びPAH値の中の1つ又は複数がそれぞれの限度値以上、この場合にはそれぞれ25NTU、6.5、及び2250ppbである場合に、第3の部分がスクラバユニット15へ、より具体的にはその循環タンク19へ送られて戻る(ステップK)ように設定される。循環タンク19は、メンブランフィルタ21と連通状態にあり、それにより浄化済みスクラバ流体を補充される。さらに、濁度値、pH値、及びPAH値のすべてがそれぞれの限度値未満である場合には、第3の部分は、排気ガス浄化システム1から船外へ、又は例えば船舶が船外排出を禁じられた領域内に位置する場合などには後の排出のために一時保持タンク(図示せず)へ排出される(ステップL)。)
ト 「 Thus, the scrubber fluid pumped off from the circulation tank 19 is cleaned first by means of the centrifugal separator 9. The centrifugal separator 9 efficiently removes most of the particulate matter and is capable of handling very high levels of PM without getting blocked. Thus, the centrifugal separator 9 is capable and suitable for keeping the scrubber fluid circulating in the first sub system 3 of the exhaust gas cleaning system 1 sufficiently free from PM. However, if the flow of scrubber fluid in the first sub system 3 is high, the centrifugal separator 9 may be uncapable of removing enough particulate matter to make the scrubber fluid clean enough to be discharged overboard. The cleaned, here first, fraction of the scrubber fluid is then cleaned further by means of the membrane filter 21. The membrane filter 21 efficiently removes nearly all of the remaining particulate matter. Since the scrubber fluid fed through the membrane filter 21 has been pre-cleaned by the centrifugal separator 9, the level of PM in the scrubber fluid is low enough not to clog the membrane filter 21. Thereby, a significantly higher flow through the membrane filter than normal is enabled.」(第8欄第21行~末行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0049】参照):
したがって、循環タンク19からポンプ排出されたスクラバ流体は、最初に遠心分離機9により浄化される。遠心分離機9は、微粒子状物質の大半を効率的に除去し、詰まらせることなく非常に高レベルのPMを処理することが可能である。したがって、遠心分離機9は、排気ガス浄化システム1の第1のサブシステム3内を循環するスクラバ流体を十分なPM非含有状態に維持することが可能でありそれに適する。しかし、第1のサブシステム3内におけるスクラバ流体流量が高い場合には、遠心分離機9は、スクラバ流体を船外排出するのに十分な清浄状態にするのに十分なだけの微粒子状物質の除去が可能ではない場合がある。この場合には、スクラバ流体の浄化済みの、ここでは第1の部分は、メンブランフィルタ21によりさらに浄化される。メンブランフィルタ21は、残留微粒子状物質のほぼすべてを効率的に除去する。メンブランフィルタ21を通り送られたスクラバ流体は、遠心分離機9により事前浄化されているため、このスクラバ流体中のPMレベルは、メンブランフィルタ21を詰まらせないだけの十分な低さである。したがって、通常よりも大幅に高い流量がメンブランフィルタを通過することが可能となる。)
ナ 「The components of the above described exhaust gas cleaning system are connected by suitable piping to allow them to communicate in the above specified way. Further, the exhaust gas system described above may comprise additional components to make it work properly, such as pumps, valves, sensors, further water analysis units, control units etc. As an example, the exhaust gas system may comprise a pH meter or sensor between the scrubber and the circulation tank for measuring the pH of the scrubber fluid. This pH meter may communicate with the chemical dosing unit 11.」(第9欄第1~8行)
(当審訳(甲1ファミリー公報の明細書【0050】参照):
上述の排気ガス浄化システムの構成要素は、上記に明示した様式での連通を可能にするために適した配管により連結される。さらに、上述の排気ガスシステムは、適切に機能するためにポンプ、弁、センサ、他の水質分析ユニット、制御ユニット等の追加の構成要素を備えてもよい。一例として、排気ガスシステムは、スクラバ流体のpHを測定するためにスクラバと循環タンクとの間にpHメータ又はpHセンサを備え得る。このpHメータは、薬品注入ユニット11と連結し得る。)
ニ 「
[図:0001409772000002.jpg]
[図:0001409772000003.jpg]
」
(当審訳(甲1ファミリー公報の図1、図2参照):
[図:0001409772000004.jpg]
[図:0001409772000005.jpg]
)
(2) 甲2の記載事項
甲2には「排ガス及びガス・スクラバ流体浄化装置及び方法」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、スクラバ流体浄化装置を有する排ガス浄化装置、及び汚染されたスクラバ流体を浄化するための方法に係る。」
イ 「【0004】
他の目的は、船舶用エンジンからの窒素酸化物(NOx)の放出を減少させることにある。これは、排ガス再循環(EGR)を実施することにより行われることが可能であり、ここで、排ガスの一部がエンジンの燃焼室に再循環される。しかしながら、排ガスの中のすす及び粒子の量を減少させることが必要である。それ故に、排ガスを浄化することが望ましく、それは、スクラバを使用することにより行われることが可能である。また、このプロセスの中で、汚染されたスクラバ流体が作り出される。
・・・
【0006】
汚染されたスクラバ流体は、すすまたは他の有機物または無機物の燃焼残渣を有している。そのような汚染されたスクラバ流体の海中への放出は、環境的な観点から容認されず、且つ、厳しく規制されている。他方、大量の廃棄物を、廃棄のために港まで移送することは、多大な費用が掛かり、好ましくない。
・・・
【0008】
従って、一つの問題は、スクラバ流体の浄化を改善することである。スクラバ流体の浄化を改善する一つの更なるアスペクトは、スクラバ流体から排ガスの中に汚染物質が再び引き継がれることのリスクを最小にすることにあり、そのような汚染物質は、冷却機などのような下流の装置で問題を引き起こすことがある。更なる問題は、汚染されたスクラバ流体の中の粒子が時間の経過に伴いプロセス装置及び配管の上に付着し易いということであって、それは、すすの付着量の増大が、プロセス装置、センサー類、トランスミッター類などの不調をもたらすと言うリスクをもたらす。フィルタ技術に依拠する装置はまた、フィルタ・コンポーネントの監視、保守及び交換が必要になると言う弱点を有している。」
ウ 「【0044】
遠心分離機9は、分離スペース12の周りを取り囲むロータ11を有していて、この分離スペースは、円錐台形の分離ディスク13の積層体を収容していて、この分離スペースに、セパレータ入口8が伸びている。遠心分離機9には、更に、浄化されたスクラバ流体のための第一のセパレータ出口14、及び第二の出口15が設けられ、第二の出口は、浄化されたスクラバ流体と比べて高い密度で分離された相を排出するために、排出ポートまたはノズルの形態で、分離スペースからロータの中を通って伸びている。第一のセパレータ出口14は、バッファ・タンク6上の入口16に接続されて、浄化回路を閉じる。バッファ・タンクには、スクラバ流体を排ガス・スクラバへ供給するための他の出口17が設けられ、ここで、出口17は、スクラバ供給ポンプ18を介してスクラバ1の入口3に接続されている。
【0045】
運転の間、スクラバ流体は、スクラバ供給ポンプ18を介して、バッファ・タンク6からスクラバ入口3へ供給される。スクラバ流体は、スクラバの中でアトマイズされ、そして、排ガス導管2の中のまたはそれからの排ガスの流れに供給される。スクラバの中で、スクラバ流体は、有機物及び無機物の燃焼残渣の排ガスからの浄化の中で使用される。その結果生ずるスクラバ流体及び排ガスの燃焼残渣の混合物は、飛沫の形態でガスの流れから分離され、そして、スクラバ流体浄化装置のスクラバ流体のためのスクラバ出口4及び入口5から、バッファ・タンク6に戻される。」
エ 「【図1】
[図:0001409772000006.jpg]
」
(3) 甲3の記載事項
甲3には、「スクラバ液処理プロセス」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0002】
今日の海運業は、負の環境影響を最小にすると共に現在および今後の排気ガス規制を履行するために、エンジン内の燃料の燃焼から生じる排気ガスなどの有害な排気ガスを低減するよう努力している。
・・・
【0004】
別の目的は、船舶用エンジンからの窒素酸化物(NOX)排気ガスの低減である。これは、排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)を実施することにより行われ得、排ガスの一部は、エンジンの燃焼室に再循環される。しかし、排ガス中の煤煙と粒子との量は、減少させられる必要がある。したがって、排ガスを浄化することが望ましく、これはスクラバを用いて行われ得る。また、このプロセスでは、汚れたスクラバ液が生産される。
【0005】
そこで、課題の1つは、スクラバ液の浄化を改善することである。スクラバ液の浄化を改善するさらなる一態様は、汚染物質がスクラバ液から再び排ガスの中に持ち込まれ、そこでそれが冷却器などの下流の装備に問題を引き起こし得るリスクを最小にすることである。さらなる問題は、汚れたスクラバ液中の粒子が処理装備に付着する傾向があり、煤煙のスケールが蓄積し、処理装備、センサ、トランスミッタなどの動作不良となるリスクを伴って経時的に流れることである。スクラバ液を浄化するための装備は、フィルタ技術と遠心分離機とを含む。しかし、フィルタ技術に頼る装備は、フィルタ構成要素の監視、点検、および交換の必要があることにおいて欠点を有する。」
イ 「【0069】
排ガススクラバ27は、船の主エンジンまたは補助エンジンなどの大型ディーゼルエンジンの排気導管に作用する。スクラバは、スクラバ液用のスクラバ入口37とスクラバ出口36とを備える。スクラバ出口36は、スクラバ水用のバッファタンク28の入口に接続されている。バッファタンク28は、スクラバ供給ポンプ29を介してスクラバの入口37へスクラバ水を供給するための出口をさらに備える。スクラバ27と、バッファタンク28と、それらを接続する配管は、スクラバ水が動作中に循環されている閉じたスクラバ流体ループ30を形成する。・・・」
ウ 「【図3】
[図:0001409772000007.jpg]
」
(4) 甲4の記載事項
甲4には水処理システムについて、以下の事項が記載されている。
ア 「
[図:0001409772000008.jpg]
」(第25ページ第1~24行)
(当審訳:
1.2.6 水処理システム(WHS)
WHS原理
硫黄及び粒子がエンジンを損傷させることを防止するため、再循環された排気ガスを浄化することが必要である。これは、再循環された淡水(FW)を用いたEGRストリングにおける予備スプレー及びEGR冷却スプレーによって複合化した冷却及び浄化処理において行われる。
排気ガスを浄化して冷却しかつ中和するFWの能力を維持するために、水処理システム(WHS)を必要とする。システムは、水内に蓄積された粒子の除去及び硫酸の中和を確実にしなければならず、また、十分な圧力かつ供給速度でEGRユニットに水を送ることを確実にしなければならない。さらに、WHSは、同様に、ブリードオフ水を処理しなければならず、このブリードオフ水は、システムにおいて蓄積された燃焼処理からの余剰水である。船外に排出する場合、水質は、排気ガス浄化システムに関する2015年のガイドライン、MEPC259(68)で述べられているようなブリードオフ水の国際要件に合致しなければならない。
WHSの原理を図1.16に示す。EGRユニットからの水は、受容タンクユニット(RTU)に排出され、循環ポンプによってEGRユニットへ再循環される。再循環された水の一部は、水処理システム(WTS)に導かれ、浄化されて供給ポンプによってEGRユニットに戻される。再循環された水は、NaOHポンプから送られたNaOHによって中和され、システム内に硫酸が蓄積されることを防止し、この硫酸は、燃料中の硫黄に起因する。供給ポンプ及びNaOHポンプは、供給ユニット(SU)に設置されている。燃焼処理に起因する余剰の水は、ブリードオフ水としてWTSから排水され、海に廃棄される。浄化処理からの残存物は、スラッジタンクに排出される。)
イ 「
[図:0001409772000009.jpg]
」(第26ページのFig.1.16)
(当審訳(請求書の45ページ):
[図:0001409772000010.jpg]
)
ウ 「
[図:0001409772000011.jpg]
」(第27ページ第1~20行)
(当審訳:
WHSへの燃料硫黄分の影響
EGRシステムは、最大許容燃料硫黄成分を0.1% S及び3.5% Sで各別に制限した低硫黄版(LS EGR)及び高硫黄版(HS EGR)で設計されている。WHSの原理は変化ないが、システム内の容量、すなわち水量、浄化容量及び設備の寸法は、HS EGR版において増加される。
高硫黄燃料を船上で使用する場合において、排気ガス浄化システムは、必要なSOx排出制限に応じるために設置されなければならない。排気ガス浄化システムに応じて、このようにシステムに悪影響がもたらされないことを条件として、WHSによっていくつかのシナジー効果、すなわち、共通のNaOHタンク及びスラッジタンク又はいくつかの共通の水処置機能が得られ得る。
受容タンクユニット
受容タンクユニット(RTU)は、加圧タンクと、循環ポンプと、制御弁と、を含む。ユニットは、エンジンの一部であり、通常エンジンに配置されているが、空間が制限されている特定の場合において、ポンプ及び関連設備は、異なって配設され得る。
受容タンクの水位は、RTU制御弁によって調整される。レベルは、供給ポンプとの組み合わせで制御されており、この供給ポンプは、一定の水量をRTU回路に送る。RTU回路におけるpH値は、NaOHの添加によって制御されており、このNaOHは、NaOHポンプによってWTS回路から帰還パイプ内に供給される。)
(5) 甲5の記載事項
甲5には「排水処理装置および排水処理方法」に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、排気ガスの洗浄に使用した液体を処理する排水処理装置および排水処理方法に関するものであり、詳しくは排気ガスの洗浄に使用した液体中に含まれる固形成分の回収効率を向上するとともに、排気ガスの洗浄に使用した液体中の油分を効率的に処理できる排水処理装置および排水処理方法に関するものである。」
イ 「【0023】
図1に例示するように本発明の排水処理装置1は、船舶等から排出される排気ガスに海水や清水などの液体を接触させることにより、排気ガス中の煤塵や硫化物などの固形成分を液中に回収する排気ガス処理装置2に併設されている。
【0024】
この排水処理装置1は、排気ガスの洗浄に使用して排気ガス中の固形成分を含有する液体を貯留するバッファタンク3と、バッファタンク3に貯留されている液体と固形成分とを分離する固液分離機4と、固形成分を貯留するスラッジタンク5とを備えている。この実施形態では、固液分離機4は中空糸膜で構成されている。
【0025】
なおスクラバ2やバッファタンク3などを連通する配管にはポンプPが設置されている。ポンプPは必要な場所に適宜設置することができる。
【0026】
バッファタンク3には、スクラバ2から排出されるスクラバ排水をバッファタンク3に供給する供給管6と、バッファタンク3内に供給されるスクラバ排水を撹拌する撹拌機構7と、バッファタンク3内の液面に浮かぶ浮遊物を回収する回収機構8とが設置されている。」
ウ 「【0030】
スクラバ排水がスクラバ2からバッファタンク3に供給される過程で、この油分の乳化にともないスカムSが発生する。スカムSは、供給管6内やバッファタンク3内で油分と海水等が激しく撹拌されることにより発生する。このスカムSは、クリーム状であり海水等の液体に浮く性質を有していて、煤塵等の固形成分を内包している。」
エ 「【0034】
第二区域F2において液面10がほとんど揺動しないので、スカムSを回収機構8の周囲に集めやすくなる。回収機構8の周囲に集まったスカムSは、回収機構8により回収されスラッジタンク5に送られる。
【0035】
本実施形態の回収機構8は、バッファタンク3内の液体の液面10に浮かんでいるスカムSをかき集めるアーム部と、このアーム部でかき集めたスカムSを回収する回収部とを備えるアーム式スカム回収装置で構成することができる。回収機構8の構成は上記に限定されず、液面10に浮かんでいるスカムSを回収してスラッジタンク5に送る機能を有していれば他の構成を採用してもよい。回収機構8は、例えばスカムスキマ―や、所定の高さに開口部を設定してこの開口部内に流れ込んでくるスカムSを回収するオーバーフロー式配管などで構成してもよい。」
オ 「【0038】
バッファタンク3内のスクラバ排水の大部分は、第二区域F2の中層から抜き出されてスクラバ2に送られて、スクラバ2とバッファタンク3とを循環する。バッファタンク3の底面3aからスクラバ排水の一部は抜き出されて、中空糸膜等の固液分離機4に送られる。固液分離機4はスクラバ排水から固形成分を分離して捕集する。固液分離機4で固形成分を取り除かれたスクラバ排水は三方弁11を経由してバッファタンク3の第二区域F2に戻される。固液分離機4からバッファタンク3に戻されるスクラバ排水は第一区域F1に戻してもよい。」
カ 「【0052】
スクラバ2が、例えば0.4MPaなど高圧で排気ガスが循環する流路に海水等の洗浄水を供給する構成である場合は、スクラバ排水は0.4MPaなど高圧の状態でスクラバ2から排出される。このようなとき、図1に破線で示すように供給管6の上流側に減圧機構13を設置してもよい。この減圧機構13により、0.4MPaのスクラバ排水を例えば0.1MPaに減圧させた後に、バッファタンク3に供給する。この減圧機構13を設置する位置は上記に限定されず、バッファタンク3の上流側であればよく、例えば減圧機構13を供給管6内に組み込む構成としてもよい。
【0053】
高圧のスクラバ排水を減圧機構13で減圧すると、液体中に気泡が発生して、スカムSが生成され易くなる。つまりさらに積極的にスカムSを発生させることができる。」
キ 「【図1】
[図:0001409772000012.jpg]
」
(6) 甲6の記載事項
甲6には、「排水処理装置および排水処理方法」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、排気ガスの洗浄に使用した液体を処理する排水処理装置および排水処理方法に関するものであり、詳しくは排気ガスの洗浄に使用した液体中に含まれる固形成分の回収効率を向上する排水処理装置および排水処理方法に関するものである。」
イ 「【0021】
なおスクラバ2やバッファタンク3などを連通する配管にはポンプPが設置されている。ポンプPは必要な場所に適宜設置することができる。
【0022】
バッファタンク3には、スクラバ2から排出されるスクラバ排水をバッファタンク3に供給する供給管6と、バッファタンク3に貯留されるスクラバ排水の液面に浮かぶ浮遊物を回収する回収機構7とが設置されている。この供給管6の内径は、スクラバ2から排出されるスクラバ排水で供給管6内が常に満たされた状態となる程度の大きさに設定されている。また供給管6が配置されている第一区域F1と、回収機構7が配置されている第二区域F2とにバッファタンク3の内部を分割する堰8が配置されている。
【0023】
スクラバ2から供給管6を通ってバッファタンク3に供給されるスクラバ排水は、主に海水等の液体で構成されているが、排気ガスの洗浄により回収した煤塵や硫化物等の固形成分と、未燃燃料やシリンダオイル等の油分とを含んでいる。」
ウ 「【0029】
本実施形態の回収機構7は、バッファタンク3内の液体の液面9に浮かんでいるスカムSをかき集めるアーム部と、このアーム部でかき集めたスカムSを回収する回収部とを備えるアーム式スカム回収装置で構成することができる。回収機構7の構成は上記に限定されず、液面9に浮かんでいるスカムSを回収してスラッジタンク5に送る機能を有していれば他の構成を採用してもよい。回収機構7は、例えばスカムスキマ―や、所定の高さに開口部を設定してこの開口部内に流れ込んでくるスカムSを回収するオーバーフロー式配管などで構成してもよい。」
エ 「【0053】
スクラバ2が、例えば0.4MPaなど高圧で排気ガスが循環する流路に海水等の洗浄水を供給する構成である場合は、スクラバ排水は0.4MPaなど高圧の状態でスクラバ2から排出される。このようなとき、図1に破線で示すように供給管6の上流側に減圧機構12を設置してもよい。この減圧機構12により、0.4MPaのスクラバ排水を例えば0.1MPaに減圧させた後に、バッファタンク3に供給する。この減圧機構12を設置する位置は上記に限定されず、スクラバ2とバッファタンク3との間であればよく、例えば減圧機構12を供給管6内に組み込む構成としてもよい。
【0054】
高圧のスクラバ排水を減圧機構12で減圧すると、液体中に溶解していたガスが放散して液体中に気泡が発生する。液体に対するガスの溶解量は圧力が低いほど減少するので、減圧により高圧のスクラバ排水中で溶解できなくなったガスが気泡として発生する。気泡が発生するとスカムSが生成され易くなる。つまり積極的にスカムSを発生させることができる。」
オ 「【図1】
[図:0001409772000013.jpg]
」
(7) 甲7の記載事項
甲7には、「排水処理装置および排水処理方法」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、排気ガスの洗浄に使用した液体を処理してスラッジタンクにスラッジを回収する排水処理装置および排水処理方法に関するものであり、詳しくはスラッジタンクに回収されるスラッジの体積を抑制できる排水処理装置および排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の主機等から発生する排気ガスに海水等の液体を接触させて、排気ガス中の煤塵や硫化物などの固形成分を海水中に回収する排気ガス処理装置(以下、スクラバということもある)が使用されている。このスクラバに併設されてスクラバからの排水(以下、スクラバ排水ということがある)を処理する排水処理装置が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。」
イ 「【0013】
この排水処理装置1は、排気ガスの洗浄に使用されて排気ガス中の固形成分を含有する液体を貯留するバッファタンク3と、バッファタンク3に貯留された液体から固形成分を回収する回収機構4と、この回収機構4で回収された固形成分を貯留するスラッジタンク5とを備えている。」
ウ 「【0016】
回収機構4の構成は上記に限らず、例えば分離膜で構成することができる。また回収機構4はバッファタンク3の内部に設置されて、バッファタンク3の内部から直接に固形成分を回収する機構で構成してもよい。具体的には、バッファタンク3の内部の液面近傍に配置され、液面に浮くスカムを回収するスカムスキマで構成することができる。スカムは、スクラバ排水wに含まれる油分の乳化により発生して、固形成分を内包している。そのためスカムスキマはスカムの回収にともない固形成分を回収することができる。スカムスキマで回収されるスカムはスラッジタンク5に送られる。このスカムを以下、スラッジsということがある。」
エ 「【図1】
[図:0001409772000014.jpg]
」
(8) 甲8の記載事項
甲8には、「スクラバ排水の浄化装置及び方法並びに塩分濃度差発電システム」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明はスクラバ排水の浄化装置及び方法と、スクラバ排水の浄化装置を利用した塩分濃度差発電システムとに関する。」
イ 「【0010】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る浄化装置1の概略構成図を示している。浄化装置1は、船舶のエンジン排ガス処理装置でありスクラバ排水発生源でもあるスクラバ2から排水されるスクラバ排水を浄化する。船舶のスクラバ2では通常海水が排ガスに噴霧されるため、スクラバ排水は海水である。しかし、洗浄水として清水を利用することもでき、その場合スクラバ排水は淡水である。
【0011】
浄化装置1は、スクラバ2から排水されるスクラバ排水を受け入れる原水タンク3と、スクラバ排水をろ過するろ過膜4が収容されたろ過膜収容体5と、を有している。ろ過膜4は、スクラバ排水をろ過することができれば特に限定されないが、膜の形状としては中空糸膜や平膜などが挙げられる。また、膜の材質は親水性のろ過膜が好ましい。親水性のろ過膜としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、セラミックなどの膜が挙げられる。本実施形態ではろ過膜4は中空糸膜4Aである。原水タンク3はスクラバ排水排出配管L1によってスクラバ2と接続されている。ろ過膜収容体5はスクラバ排水供給配管L2によって原水タンク3と接続され、スクラバ排水供給配管L2上にはスクラバ排水供給ポンプP1が設けられている。処理されるスクラバ排水はスクラバ排水供給ポンプP1により圧送され、原水タンク3からろ過膜収容体5に供給される。原水タンク3はスクラバ排水の発生量の変動を吸収する機能も有している。すなわち、エンジン負荷に応じてスクラバ2の洗浄水を増減させる運用を行う場合、一時的にスクラバ排水の発生量が増加することがあり、原水タンク3はこのような場合でもスクラバ排水を受け入れることができる容量を有している。スクラバ排水供給配管L2はろ過膜収容体5の底面、より好ましくはろ過膜収容体5の底面、且つ中空糸膜4Aの下方位置に接続されている。
・・・
【0014】
ろ過膜収容体5の内部にはスクラバ排水が貯留されるとともに、多数の中空糸膜4Aが収容されている。中空糸膜4Aはその上端を上部支持部材7で、その下端を下部支持部材8で支持されている。中空糸膜4Aの材料は特に限定されないが、汚染物質の付着を抑制するため、親水性の材料で形成されることが望ましい。材料として例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PAN(ポリアクリロニトリル)などが挙げられる。PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は比較的疎水性の高い材料であるが、親水化材を混ぜ込むなどの親水化処理をしていれば、主たる素材がPVDFでもよい。中空糸膜4Aの外側面はろ過膜収容体5内部のスクラバ排水と直接接触している。すなわち、中空糸膜4Aはろ過膜収容体5の内部で、スクラバ排水に浸漬されるように収容保持されている。中空糸膜4Aの内側空間は透過側空間9、すなわちろ過水が流通する空間とされ、上部支持部材7に設けられた接続空間10に連通している。これに対し、中空糸膜4Aの下端は下部支持部材8によってシールされている。スクラバ排水に含まれる水分(海水)は中空糸膜4Aの側面から透過側空間9に移動してろ過水となり、汚染物質は中空糸膜4Aの外側の入口側空間11に残留する。」
ウ 「【図1】
[図:0001409772000015.jpg]
」
(9) 甲9の記載事項
甲9には「スクラバ排水の処理方法及びスクラバ排水の処理装置」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、燃焼排ガスをスクラバで処理する際に生じるスクラバ排水の処理方法、及び該スクラバ排水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶のディーゼルエンジンや焼却炉などから生じた燃焼排ガスには、ブラックカーボン、スス、油滴などが含まれるので、排ガスを集じん装置(スクラバ)に通して、洗浄水を噴霧して気液接触させ、その洗浄水側にそれら有害物を移行させて除去することが行われている。一方、このような集じん装置(スクラバ)による処理の際に生じたスクラバ排水には回収されたブラックカーボン、スス、油滴などの有害物が含まれるので、これも環境中に放出しないように除去する必要がある。従来、スクラバ排水からの有害物の除去には、遠心分離(下記特許文献1参照)、ろ過処理(下記特許文献2(段落0019)参照)、凝集沈殿(下記特許文献3(段落0004)参照)などの方法が採られていた。」
イ 「【0024】
図1には、本発明の方法を実施するための第1の実施形態に係る装置を示す。この実施形態では、エンジン1から生じた排ガスが、給気口2aからスクラバ2に導入されて、スクラバ洗浄水と気液接触して、その洗浄水側にブラックカーボン、スス、油滴など有害物が移行して、除去された後に、排気口2bから排気されるようになっている。また、その際に生じたスクラバ排水は、排水口2cから配管L1へと通じ、弁3を介し配管L2ないしは配管L3に導入されるようになっている。そして、配管L2が混合タンク7やその下流の磁気分離装置11に通じる一方、配管L3は混合タンク7や磁気分離装置11をバイパスし、それらの下流の配管L6に通じている。このバイパス経路によって、排水が、混合タンク7や磁気分離装置11での処理を受けずに放流されるか、あるいはスクラバ洗浄水として循環利用されるようになっている。また、配管L1は、弁3の上流側において測定タンク4に通じる配管L1aに分岐しており、排水の一部が配管L1aを通って測定タンク4に移送されて溜まり、pH測定装置5や水質測定装置6によって、排水を検査することができるようになっている。なお、この実施形態では、排水の一部を測定タンク4に溜めて検査しているが、タンクを設けずに配管L1aのみとし、その配管内を流れる排水を直接検査してもよい。また、配管を分岐させて検査用に排水の一部を取り出しているが、排水の一部を取り出さずに配管L1内を流れる排水を直接検査してもよい。また、検査後の排水は配管L4を通って混合タンク7に移送されるようになっているが、弁3の上流であって分岐点の下流の配管L1に戻して、検査を受けた排水についても、必要がない場合には、配管L3を通じて混合タンク7や磁気分離装置11をバイパスすることができるようにしてもよい。」
ウ 「【図1】
[図:0001409772000016.jpg]
」
(10) 甲10の記載事項
甲10には、「排水処理方法及びテレフタル酸の製造方法」に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0180】
・・・燃焼処理後の排ガスをアルカリ水等により接触洗浄した後、ガスは大気放出され、酸化排ガス洗浄水217’は排水処理システム221に送られる。」
イ 「【0185】
・・・
第2の固液分離工程(v)及び乾燥工程(vi)からはこの他に、ベントガスを一括してスクラバーで処理する際に発生するベントガス洗浄水226’が排水処理システム221に送られる。」
ウ 「【0189】
・・・
図11は、第1の代表的なテレフタル酸の製造方法において、テレフタル酸製造プロセスから排出される排水を処理する排水処理システム2100の最上流に上記説明した図1の重金属化合物回収装置が導入されており、排水中の重金属濃度を低減した後、生物処理中に精密濾過膜による膜分離処理を行う実施形態を説明する図である。・・・」
エ 「【0193】
排水処理システム2100においては、第2の曝気槽2103内に、MF膜モジュール2105が配設されている。・・・」
オ 「【0197】
MF膜モジュール2105において使用可能な濾過方法としては、濾過面に懸濁物質を堆積しつつ行う通常のデッドエンド濾過(全量濾過ともいう)と、膜面に平行な流れを作り出し、流れの方向を膜透過方向と略直交させて、常に懸濁物質を再分散させるクロスフロー濾過とがあり、設置方法や使用方法に応じて適宜選択することができる。ただし、クロスフロー濾過によれば膜汚れ及び濃度分極現象を低減できるので、濾過効率を向上でき好ましい。・・・」
カ 「【図11】
[図:0001409772000017.jpg]
」
(11) 甲11の記載事項
甲11には「テレフタル酸の製造方法」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0021】
・・・燃焼処理後の排ガスをアルカリ水などと接触洗浄した後、ガスは大気放出され、酸化排ガス洗浄水17’は分離膜を内部に具備した処理槽(以下「処理槽」と称する場合がある)21に送られる。」
イ 「【0025】
上記第2固液分離工程(5)及び乾燥工程(6)からはこの他に、ベントガスを一括してスクラバーで処理する際に発生するベントガス洗浄水26’が処理槽21に送られる。・・・」
ウ 「【0035】
・・・膜分離処理方法は、通常の膜表面に固形分を堆積しつつ行うデッドエンドろ過(全量ろ過ともいう)および膜表面に平行な流れを作り出し、膜透過方向と直交させて、常に固形分を再分散させるクロスフローろ過が一般的に行われ、使用目的に応じて選択することができる。・・・」
エ 「【図1】
[図:0001409772000018.jpg]
」
(12) 甲12の記載事項
甲12には、「排水処理方法及びテレフタル酸の製造方法」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0132】
・・・燃焼処理後の排ガスをアルカリ水等により接触洗浄した後、ガスは大気放出され、酸化排ガス洗浄水217’は排水処理システム221に送られる。」
イ 「【0137】
・・・第2の固液分離工程(v)及び乾燥工程(vi)からはこの他に、ベントガスを一括してスクラバーで処理する際に発生するベントガス洗浄水226’が排水処理システム221に送られる。」
ウ 「【0141】
・・・
図11は、第1の代表的なテレフタル酸の製造方法において、テレフタル酸製造プロセスから排出される排水を処理する排水処理システム2100の最上流に上記説明した図1の重金属化合物回収装置が導入されており、排水中の重金属濃度を低減した後、生物処理中に精密濾過膜による膜分離処理を行う実施形態を説明する図である。」
エ 「【0143】
・・・
排水処理システム2100中には、Co,Mnを主とする重金属の濃度を低減する重金属化合物回収装置、精密濾過膜モジュール(以下において、精密濾過膜を「MF膜」、精密濾過膜モジュールを「MF膜モジュール」とも記す。)が配設されている。・・・」
オ 「【0145】
排水処理システム2100においては、第2の曝気槽2103内に、MF膜モジュール2105が配設されている。・・・」
カ 「【0149】
MF膜モジュール2105において使用可能な濾過方法としては、濾過面に懸濁物質を堆積しつつ行う通常のデッドエンド濾過(全量濾過ともいう)と、膜面に平行な流れを作り出し、流れの方向を膜透過方向と略直交させて、常に懸濁物質を再分散させるクロスフロー濾過とがあり、設置方法や使用方法に応じて適宜選択することができる。・・・」
キ 「【図11】
[図:0001409772000019.jpg]
」
(13) 甲13の記載事項
甲13には、「スクラバー、およびスクラバーシステム」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0018】
上記フィルタろ過装置132は、スクラバー水中の固形成分をフィルタでこし取ることによって除去し、スラッジと浄化後のスクラバー水とを排出するようになっている。」
イ 「【0024】
遠心分離機120によって固形成分が除去された浄化後のスクラバー水をろ過するフィルタろ過装置141が設けられ、さらに固形成分が除去されたスクラバー水が環境系外に排出されるようになっている。」
ウ 「【図2】
[図:0001409772000020.jpg]
」
エ 「【図3】
[図:0001409772000021.jpg]
」
(14) 甲14の記載事項
甲14には、「中空糸モジュール」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0023】
図1及び図2に示すように、中空糸膜モジュール10は、複数の中空糸膜11と当該複数の中空糸膜11を束状に固定する固定部12とを含む中空糸膜エレメント1と、中空糸膜エレメント1を挿抜するための開口部2Aが形成されたハウジング2と、当該開口部2Aを覆うようにハウジング2に取り付けられたキャップ3と、固定部12、ハウジング2及びキャップ3のそれぞれに接する位置に配置されたシール部材4と、を主に備えている。・・・
【0024】
[中空糸膜エレメント]
図1に示すように、複数の中空糸膜11の各々は、上端11B及び下端11Aを有しており、上端11Bが開口した状態で固定部12により固定されると共に、下端11Aが封止されている。固定部12は、複数の中空糸膜11の上端11Bを収束固定している。」
イ 「【0036】
・・・本実施形態における中空糸膜モジュール10は、全量濾過式の構成としてもよいし、循環濾過式の構成としてもよい。」
ウ 「【図1】
[図:0001409772000022.jpg]
」
(15) 甲15の記載事項
甲15には、「中空糸膜濾過装置の洗浄方法及び中空糸膜濾過装置」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0034】
中空糸膜モジュール10は、外圧濾過式のモジュールであり、束状の複数の中空糸膜11を有する中空糸膜束12と、中空糸膜束12を収容するハウジング13と、を主に有している。中空糸膜モジュール10は、濾過の目的や要求される性能に応じて、外圧全量濾過式又は外圧循環濾過式のいずれかの濾過方式のモジュールとなっている。・・・
【0035】
中空糸膜束12は、各中空糸膜11の上端11Aが開口した状態で固定部材14によりハウジング13に固定されると共に、各中空糸膜11の下端11Bが固定されない状態で樹脂などにより封止された片端フリータイプのものである。・・・」
イ 「【図1】
[図:0001409772000023.jpg]
」
(16) 甲16の記載事項
甲16には、「中空糸膜モジュール」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0026】
図1及び図2に示すように、中空糸膜モジュール10は、束状の複数の中空糸膜11を有する中空糸膜束12と、中空糸膜束12を収容するハウジング13と、を主に備えている。中空糸膜モジュール10は、各中空糸膜11の長さ方向が上下方向に沿う縦置き姿勢で配置されている。
【0027】
中空糸膜モジュール10は、中空糸膜11の外面から内面に向かって原水を透過させることにより濾過水を得る外圧濾過式のものである。中空糸膜モジュール10は、濾過処理の目的や要求性能に応じて、外圧全量濾過式のものであってもよいし、外圧循環濾過式のものであってもよい。・・・
【0028】
中空糸膜束12は、各中空糸膜11の上端11Aが固定端であると共に下端11Bが自由端である片端フリー構造となっている。すなわち、中空糸膜束12は、各中空糸膜11の上端11Aが固定部材14によりハウジング13に固定されると共に、下端11Bが固定されない状態で樹脂などにより封止された構造となっている。固定部材14は、例えばエポキシ系の接着樹脂からなる。」
イ 「【図2】
[図:0001409772000024.jpg]
」
(17) 甲17の記載事項
甲17には、「排水処理装置」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0050】
油除去部23-1(又は23-2)は、油を吸着するフィルターである油吸着マットが複数枚重ねられた油分を除去するためのフィルター装置である。遠心分離部22で処理された海水を油吸着マットに通し、油を吸着除去することが可能である。油吸着マットが充分に油分を吸収した場合、油吸着マットを交換する。交換の際は、他方の油除去装置23-2(又は23-1)を使用する。油除去装置23-1(又は23-2)により処理された海水は、中和部24へ送られる。」
イ 「【図2】
[図:0001409772000025.jpg]
」
(18) 乙1の記載事項
乙1には、「水処理技術」について、以下の事項が記載されている。
「膜面の閉塞防止の目的から、ろ過水の出口方向に対して原水を直角に流すのがクロスフロー方式です。
クロスフローろ過も逆洗浄が必要
工業用水処理における膜分離では、膜面の閉塞防止の目的からクロスフロー方式を採用します。
図1は、全量ろ過とクロスフローろ過の水の流れの比較です。全量ろ過は、私たちが実験室で経験するろ紙を用いたろ過と同じです。図1左のように、懸濁物質を含んだ水をろ紙でろ過すると、初めのうちはろ過水がよく出ますが、懸濁物(ケーキ)が膜面に積もると水が出なくなります。これが全量ろ過におけるろ過時間と透過流束(単位時間、単位面積を通過する水量・m3/m2・h)の関係です。
一方、図1右のクロスフローろ過では、膜面上に積もろうとする懸濁物質を原水で洗い流すので、膜面の閉塞を防ぐことができます。最初は透過流束が少し低下しますが、膜面の自己洗浄の効果で、一定時間の経過以後はあまり低下しません。ろ過水の出方も全量ろ過に比べて極端に減少しません。これが長所です。クロスフローろ過では、透過水の流出量に比べて10倍以上の流量で水を循環させます。そのため、大きなポンプを使うので一見、ムダに見えますが、膜の閉塞防止の観点から有効な手段です。
クロスフローろ過でも間欠的な逆洗浄が必要です。
図2は、鉄化合物の比重と流動を始めるときの流速を調べたものです。この結果から、水酸化鉄は流速が0.2m/sec以上あれば流動を始めます。したがって、MF膜やUF膜のモジュール内面では、0.3m/sec以上の流速を確保すればスケール沈着を防ぐことができます。この考え方は、膜処理でクロスフローろ過を行う場合に適用できます。」(第104ページの本文)
(19) 乙2の記載事項
乙2には「濾過技術」に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「 ケーク濾過では、図1-23(a)のように、固体粒子が濾材面上に堆積して濾過ケークが形成されます。濾過の進行とともにケーク厚さが増大して、液が流れる抵抗が増えるため、一定圧力下で濾過しますと、濾過速度は徐々に減少し、濾過性能が低下します。このような濾過方式を、デッドエンド濾過といい、従来からケーク濾過はこの方式で行われてきました。
この場合、濾過ケークの流動抵抗を減じるために、図1-24(a)のように凝集剤の添加による前処理を行って粒子を粗大化し、フロックを生成させたり、図1-24(b)のように、濾過助剤を用いてケークの抵抗を下げたりする手段がとられてきました。また、ある一定期間濾過を行って濾過抵抗の増大が顕著になったら、図1-25のように、その時点でいったん濾過を中断し、濾液出口となる濾材の裏側から、濾液や圧縮空気を加圧して流し込む逆洗と呼ばれる操作を行ってケークを剥離除去し、再び濾過を行う方法がとられてきました。
これに対して、超微細な粒子を対象とし、膜を濾材として用いる膜濾過では、図1-23(b)のように、膜面に平行に原液を高速で流しつつ濾過を行う方式が一般的です。高速流を膜面に作用させることによって膜面へ粒子が堆積しにくくなり、ケークの成長が抑制できるという利点があります。原液の流れと濾液の流れが十字に交差することから、この濾過方式はクロスフロー濾過と呼ばれています。
濾布、金網などの濾材を用いるケーク濾過においても、近年では、凝集濾過、助剤濾過、逆洗濾過と競合する技術として、クロスフロー濾過も利用されるようになっています。
ケーク生成を抑制する濾過という観点からケークレス濾過(薄ケーク層濾過)と呼ばれたり、透過中にケークを動的に剥離するという観点からダイナミック濾過と呼ばれたりします。ケークレス濾過には、クロスフロー濾過法以外にも種々の方式がありますが、多くの場合、濾材近傍に液流れを起こすことによって、ケークの成長を抑制します。」(第29ページ第1行~第32ページ第4行)
イ 「
[図:0001409772000026.jpg]
」(第29ページの図1-23)
2 無効理由について
(1) 甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1には、上記1(1)アによれば、「船上において排気ガスを浄化するための排気ガス浄化システム」が記載されているところ、Fig.1(上記1(1)ニ)に記載された「排気ガス浄化システム」に着目し、同図に記載された部材及び部材番号を当てはめながら、甲1の記載(上記1(1)参照)を整理する。
そうすると、甲1には次の「排気ガス浄化システム」に係る発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「スクラバ17、循環タンク19、フロキュレーションユニット7、薬品注入ユニット11、遠心分離機9、スラッジタンク10、切替えモジュール13、メンブランフィルタ21、水質分析ユニット23、切替えモジュール25を備え、
Fig.1に記載された、船上において排気ガスを浄化するための排気ガス浄化システム。」
(2) 本件発明と甲1発明との対比に先立ち、本件発明1に係る特定事項の意味について検討する。
ア 「前記固形分」について
本件発明1には、「前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、遠心分離機と全量ろ過方式の膜装置とからなる固液分離機を備え、前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ、」との特定事項がある。
ここで、「前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、・・・固液分離機を備え」との特定事項は、固液分離機に導入されたスクラバ排水が、「分離液」と「固形分」に二分されることを意味すると解される。
そうしてみると、EGR汚染水タンクに送られる「前記固形分」とは、本件発明1で先に特定された「固形分」、すなわち「固液分離機」での分離で生じた「固形分」全体を指すものと解するのが相当である。
よって、本件発明1において「前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ」とは、「固液分離機」での分離で生じた「固形分」全体を指すものと認められる。
イ 「EGR汚染水タンク」について
本件発明1には、「前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ、」との特定事項がある。
ここで、「EGR汚染水タンク」との用語のうち、「EGR」は汚染水タンクがEGR(Exaust Gas Recirculation(排気ガス再循環))の用途で用いられることを意味すると解される。この点、被請求人に異論はない(上記審理事項通知の第5ページ「相違点A」、及び被請求人が提出した陳述要領書の第6ページ下から4~5行の「相違点A」を参照。)。
また、「EGR汚染水タンク」における「汚染水タンク」について、本件明細書【0045】には「固体側の汚泥は配管20を介してEGR汚染水タンク21に貯められ、その汚染水は、陸揚げ供給ポンプ29によって陸揚げされる。」との記載が認められる。当該記載及び出願時の技術常識も踏まえると、「EGR汚染水タンク」における「汚染水タンク」とは、汚染水を他の浄化された流体から分けて収納しておくタンクと認められる。
ウ 請求人の主張の検討
(ア) 請求人は、令和5年5月24日提出の口頭審理陳述要領書において、概略、以下の点を主張している。
「前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、遠心分離機と全量ろ過方式の膜装置とからなる固液分離機を備え、前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ、」との特定事項は、遠心分離機及び全量ろ過方式の膜装置、それぞれが分離した固形分をEGR汚染水タンクに送ることまでは明記されておらず、遠心分離機が分離した固形分又は全量ろ過方式の膜装置が分離した固形分のみをEGR汚染水タンクに送る態様も含まれる(上記口頭審理陳述要領書の第5ページのア-2)を参照。)。
(イ) 上記(ア)に係る主張を検討するに、当該主張の根拠は、EGR汚染水タンクに送られる「固形分」が、固液分離機で分離された「固形分」の全量であることが、特許請求の範囲の請求項1に明示されていない点にあると解される。
(ウ) しかしながら、当該請求項1には全量であることの明示はないが、前記アで検討したとおり、EGR汚染水タンクに送られる「固形分」は、固液分離機で分離された「固形分」全体であると理解できる。
よって、上記(ア)の主張は採用できない。
(3) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明の対比
(ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおり解することができる。
a 上記1(1)ス、セによれば、甲1発明の「スクラバ17」は、船舶用ディーゼル機関27から排気ガスEGを受領し、その内部において、排気ガスEGからの汚染物質を、アルカリ化剤を含有する淡水の形態のスクラバ流体SFへ吸収させて排気ガスEGを浄化するものであるから、本件発明1の「船舶排ガスをスクラバ水で洗浄する洗浄部を含む」「ユニット」に相当する。
b 上記1(1)セによれば、甲1発明のスクラバ17内において、排気ガスEGからの汚染物質を吸収させたスクラバ流体SFは、スクラバ流体出口35を通り「循環タンク19」へ送られるものと理解できる。
よって、甲1発明における「循環タンク19」は、本件発明1における「洗浄部における洗浄により排ガス中の環境汚染物質相を含有するスクラバ排水を貯留するバッファタンク」に相当する。
c 上記1(1)セによれば、甲1発明においてスクラバ流体SFは、循環タンク19からスクラバ17へ送られ、スクラバ17内部において排気ガスEGの浄化に用いられた後、スクラバ流体出口35を通り循環タンク19へ送られて戻るものと理解できる。
そうすると、甲1発明における、このようなスクラバ17と循環タンク19との間のスクラバ流体SFの流路は、本件発明1における「前記バッファタンクと」「ユニットとの間に、」「循環するスクラバ排水とスクラバ水とのスクラバ循環系」に相当する。
d 甲1には「遠心分離機9は、フロックを含有したスクラバ流体SFを第1の部分及び」「第1の部分より汚染された第2の部分」「へと分離する」ことが記載されており(上記1(1)タ)、「第1の部分の(100-x)%がメンブランフィルタ21へ送られ」、「メンブランフィルタ21は、第1の部分を第3の部分及び」「第3の部分よりも汚染された第4の部分」「へと分離する」ことが記載されている(上記1(1)チ、ツ)。
ここで、甲1発明における遠心分離機9及びメンブランフィルタ21は、それぞれ分離液と固形分とに分離する機能を有することは出願時の技術常識から明らかである。
そして、甲1には「遠心分離機9は、微粒子状物質の大半を効果的に除去」するものであり、また「メンブランフィルタ21は、残留微粒子状物質のほぼすべてを効率的に除去する」ものであることが記載されている(上記1(1)ト)。
そうすると、甲1発明における遠心分離機9又はメンブランフィルタ21から排出される第1~第4の部分について、「第1の部分より汚染された第2の部分」及び「第3の部分より汚染された第4の部分」とは、それぞれ「第1の部分」及び「第2の部分」より、除去すべき微粒子状物質をより多量に含むもの、すなわち固形分であり、「第1の部分」及び「第3の部分」は、上記微粒子状物質から分離された分離液といえる。
したがって、甲1発明において、「第1の部分」及び「第3の部分」並びに「第1の部分より汚染された第2の部分」及び「第3の部分より汚染された第4の部分」に分離する、「遠心分離機9」及び「メンブランフィルタ21」は、本件発明の「分離液と固形分に分離する、遠心分離機と」「膜装置とからなる固液分離機」に相当するといえる。
e 甲1には、排気ガス浄化システムの構成要素は、配管により連結される旨が記載されていることを踏まえると(上記1(1)ナ)、甲1発明において、各構成要素の間は配管により連結されていると認められる。
さらに、上記1(1)タ~テによれば、甲1発明に係る「船舶排ガスの洗浄排水処理装置」において、「循環タンク19からポンプ排出されたスクラバ流体SF」が、フロキュレーションユニット7を介しつつ、配管を通って「遠心分離機9により受領され」ることが理解できる。加えて、分離液である第1の部分は、遠心分離機9から配管を通って「循環タンク19へ送られて戻るか」又は「メンブランフィルタ21へ送られ」、分離液である第3の部分は、濁度値、pH値、及びPAHに応じて、配管を通って「循環タンク19へ送られて戻る」か、又は「船外へ、または例えば船舶が船外排出を禁じられた領域内に位置する場合などには後の排出のために一時保持タンク・・・へ排出される」ことが理解できる。
そうすると、甲1発明における循環タンク19からフロキュレーションユニット7を経由して遠心分離機9までのスクラバ排水を通す配管は、本件発明1の「前記バッファタンク内のスクラバ排水を前記固液分離機へ供給する排水供給配管」に相当する。
また、甲1発明における、分離液である第1の部分を遠心分離機9から切替えモジュール13を経由して直接循環タンク19へ戻す配管と、分離液である第3の部分をメンブランフィルタ21から切替えモジュール25を経由して循環タンク19へ戻す配管とは、本件発明1の「前記固液分離機で分離された分離液を、前記バッファタンク内に返送する返送配管」に相当する。
そして、甲1発明において「循環タンク19からポンプ排出されたスクラバ流体SF」が、配管を通って「遠心分離機9により受領され」、遠心分離機9から排出される第1の部分(分離液)は、配管を通って「循環タンク19へ送られて戻るか」又は「メンブランフィルタ21へ送られ」、メンブランフィルタ21から排出された第3の部分(分離液)は、配管を通って「循環タンク19へ送られて戻る」一連の流路は、本件発明1の「前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、遠心分離機と」「膜装置とからなる固液分離機を備え」、「前記バッファタンク内のスクラバ排水を前記固液分離機へ供給する排水供給配管と、前記固液分離機で分離された分離液を前記バッファタンク内に返送する返送配管とにより、前記バッファタンクと前記固液分離機との間に」形成される「固液分離循環系」に相当する。
f 甲1発明において、「スクラバ17」と「循環タンク19」とで構成されるスクラバ流体SFの循環する経路(スクラバ循環系。上記c参照。)と、循環タンク19から、フロキュレーションユニット7、遠心分離機9、切替モジュール13、メンブランフィルタ21、切替モジュール25を順に通り、循環タンク19へ戻る経路(固液分離循環系。上記e参照。)とは、循環タンク19で重複するのみで、両経路の運転は互いに干渉するものでないから、各々独立して形成されているといえ、本件発明1における「前記バッファタンクには、スクラバ循環系と固液分離循環系が各々独立して形成されており」との事項を満足する。
g 上記dで検討のとおり、甲1発明において、遠心分離機9及びメンブランフィルタ21で、微粒子状物質から分離された、すなわち浄化された「第1の部分」、及び「第3の部分」は、「循環タンク19」へ戻されることが理解できる。
さらに、上記cで検討のとおり、甲1発明におけるスクラバ流体SFは、循環タンク19からスクラバ17へ送られることが理解できる。
そうすると、遠心分離機9及びメンブランフィルタ21で浄化された「第1の部分」及び「第3の部分」は、循環タンク19を介して、スクラバ17へ送られていると解される。よって、甲1発明において、スクラバ17へ送られるスクラバ流体SFには、上記「第1の部分」及び「第3の部分」が含まれるといえ、本件発明1における「前記スクラバ循環系におけるバッファタンクから」「ユニットに供給するスクラバ水は、前記固液分離循環系で浄化されたスクラバ水を含む」との事項を満足する。
h 甲1発明における「船上において排気ガスを浄化する」とは、船から排出される排気ガスの浄化を意味するから、甲1発明における「船上において排気ガスを浄化するための排気ガス浄化システム」は、本件発明1の「船舶排ガスの洗浄排水処理装置」に相当する。
i 甲1発明における「スラッジタンク10」は、上記1(1)タによれば、遠心分離機9から排出された第2の部分(固形分)を、第1の部分(分離液)と混在しないよう保管するものであるといえるから、本件発明1の「汚染水タンク」に相当する。
(イ) 以上の点に照らすと、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、それぞれ、次のように認定することができる。
a 一致点
「 船舶排ガスをスクラバ水で洗浄する洗浄部を含むユニットと、
前記ユニットの洗浄部における洗浄により排ガス中の環境汚染物質相を含有するスクラバ排水を貯留するバッファタンクとを備え、
前記バッファタンクと前記ユニットとの間に、循環するスクラバ排水とスクラバ水とのスクラバ循環系が形成されており、
前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、遠心分離機と膜装置とからなる固液分離機を備え、汚染水タンクに送られ、
前記バッファタンク内のスクラバ排水を前記固液分離機へ供給する排水供給配管と、前記固液分離機で分離された分離液を前記バッファタンク内に返送する返送配管とにより、前記バッファタンクと前記固液分離機との間に、固液分離循環系が形成されており、
前記バッファタンクには、スクラバ循環系と固液分離循環系が各々独立して形成されており、
前記スクラバ循環系におけるバッファタンクから前記ユニットに供給するスクラバ水は、前記固液分離循環系で浄化されたスクラバ水を含むことを特徴とする
船舶排ガスの洗浄排水処理装置。」
b 相違点1
船舶排ガスを洗浄する洗浄部を含むユニットについて、本件発明1は「船舶のエンジンに排ガスの一部を再循環して排ガス中の窒素酸化物の量を減少させる排ガス再循環」のためのユニットであるとさらに特定しているのに対し、甲1発明の「スクラバ17」は、甲1のFig.1に示されたとおりのものである点。
c 相違点2
スクラバ循環系においてスクラバ排水とスクラバ水を循環する方法について、本件発明1は「循環ポンプを介して、大気圧より高圧で」循環させることが特定されているのに対し、甲1発明におけるスクラバ17と循環ユニット19との間でスクラバ流体SFを流す方法が、甲1のFig.1に示されるとおりのものである点。
d 相違点3
固液分離機における膜装置が、本件発明1は「全量ろ過方式」に特定されているのに対し、甲1発明はメンブランフィルタ21であって、ろ過方式が明らかでない点。
e 相違点4
汚染水タンクに関して、本件発明1は、「EGR汚染水タンク」であってEGR用にさらに特定されているのに対し、甲1発明は、スラッジタンクであり、その用途が特定されていない点。
f 相違点5
固液分離循環系における固液分離機から排出される固形分に関して、本件発明1は「汚染水タンクに送られ」ることが特定されているのに対し、甲1発明は、遠心分離機9から排出される第2の部分(固形分)は、スラッジタンク10に送られるものの、メンブランフィルタ21から排出される第4の部分(固形分)が循環タンク19に戻される点。
イ 相違点の検討
検討の末、当審は、相違点3、及び相違点5に係る本件発明1の構成は容易に想到する事項とはいえないと判断する。
以下、相違点3、相違点5の順に、その判断理由につき詳述する。
(ア) 相違点3について
a 相違点の検討に先立ち、甲1発明におけるメンブランフィルタ21のろ過方式について検討する。
乙1、乙2にも記載のとおり、膜分離の方法として、「全量ろ過」や「クロスフロー」があることは本件特許の出願日時点での技術常識と認められるところ、甲1には、メンブランフィルタはクロスフローであってもよい旨の記載がある一方(上記1(1)エを参照。)、メンブランフィルタを全量ろ過方式とする旨の記載はない。
さらに、甲1には、甲1発明に係るシステムにおいて、メンブランフィルタ21で分離された第4の部分(固形分)を循環タンク19へ戻し、これによりスクラバ流体を補充する旨が、甲1には記載されている(上記1(1)ツを参照。)。
そして、クロスフロー方式は、膜面に堆積した懸濁物質が定常的に原水で洗い流されるものであるのに対し、全量ろ過方式は、懸濁物が膜面に積もり透過流束が小さくなっていくものであることが技術常識である(上記2(18)、同(19)ア~イを参照)。
b 以上の点を併せ考えると、甲1発明のメンブランフィルタ21が「全量ろ過方式」の場合、懸濁物(甲1発明の「第4の部分」に対応)は膜面に堆積していくため、第4の部分を定常的に循環タンク19に戻すことができず、「第3の部分よりも汚染された第4の部分は、・・・その循環タンク19へ送られて戻る(ステップI)。循環タンク19は、メンブランフィルタ21と連通状態にあり、それによりスクラバ流体を補充される。」(上記1(1)ツ参照)という、甲1発明の機能を発揮できないと解される。
よって、甲1発明に係るシステム中のメンブランフィルタ21は、膜面に堆積した懸濁物質を定常的に原水で自己洗浄している、「クロスフロー方式」と解するのが相当である。
なお、甲1発明におけるメンブランフィルタ21が、クロスフロー方式であることについて、当事者間に争いはない(令和5年5月24日提出の口頭審理陳述要領書(請求人)の第6(2)のイ)、同日提出の口頭審理陳述要領書(被請求人)の第6頁下から2行を参照)。
c そこで、相違点3の検討は、甲1発明におけるメンブランフィルタ21がクロスフロー方式であることを前提に行う。
甲10~甲13、甲17、乙1、及び乙2の記載(上記2(10)~(13)、(17)~(19)を参照。)から、全量ろ過方式の膜装置は、本件特許の出願日前に周知の技術的事項であったと認められる。
しかしながら、上記bで検討のとおり、メンブランフィルタ21を「全量ろ過方式」に代えると、膜面に堆積する第4の部分(固形分)を定常的に循環タンク19へ戻すことができなくなると認められる。
そうすると、「クロスフロー」と「全量ろ過」という両方式の膜装置が周知技術だとしても、クロスフロー方式だからこそ発揮されていた機能を損ねてまで、甲1発明におけるメンブランフィルタ21を「全量ろ過方式」のものに代える動機付けは見出せない。むしろ甲1発明が元々持っていた機能を損ねるのであるから、甲1発明における「メンブランフィルタ21」を「全量ろ過方式」とすることは阻害要因があるといわざるを得ない。
さらに、乙1には「クロスフローろ過では、透過水の流出量に比べて10倍以上の流量で水を循環させます。そのため、大きなポンプを使うので一見、ムダに見えますが、膜の閉塞防止の観点から有効な手段です。」(上記2(18)参照。)と記載されているように、「クロスフロー方式」と「全量ろ過方式」とでは、同等の透過水を得るために膜装置に導入するスクラバ排水の量が大きく異なる。
したがって、膜装置における透過水量が同等となるように、甲1発明におけるメンブランフィルタ21を「クロスフロー方式」から「全量ろ過方式」に代えると、膜装置に導入するスクラバ排水量や第4の部分(固形分)として排出される流量も変化し、ひいては循環タンク19へ単位時間当たりに戻される水量も変化するから、甲1発明に係るシステム全体の流量の設計も変更する必要があるといえる。
よって、甲1発明において、クロスフロー方式であるメンブランフィルタ21を「全量ろ過方式」とすることは、システム全体に影響を及ぼすものであって、単なるろ過方式の選択だけに留まるものでないし、甲10~甲13、甲17、乙1及び乙2も、クロスフロー方式から全量ろ過方式に変更するに際し、システム全体の流量の設計をどのように変更するのか示唆するものではない。
加えて、甲2、3には、船舶エンジンの排気ガスを再循環される技術的事項(上記1(2)、(3))、甲4、9には、スクラバ流体をバイパスさせる技術的事項(上記1(4))、甲5~7には、スクラバ流体におけるスカム回収に関する技術的事項(上記1(5)~(7))、甲8には、スクラバ流体の浄化に中空糸膜を使用する技術的事項(上記1(9))がそれぞれ記載されているものの、これらの甲号証には、甲1発明におけるメンブランフィルタ21を「クロスフロー方式」から「全量ろ過方式」に代えることに関する技術的事項は記載も示唆もなされていない。
したがって、甲1発明における「メンブランフィルタ21」を「全量ろ過方式」とすることは、当業者といえども、容易に想到し得るものといえない。
d 以上のとおりであるから、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者にとって容易想到の事項とはいえない。
(イ) 相違点5について
上記(2)アで検討のとおり、本件発明1において「前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ」とは、「固液分離機」での分離で生じた「固形分」全体を汚染水タンクに送ることを意味すると解されるところ、上記相違点5のとおり、甲1発明において、一部の固形分(メンブランフィルタ21から排出される第4の部分)は、配管を通じて循環タンク19へ戻されている。
そこで、便宜上、甲1発明における当該配管(第4の部分(固形分)をメンブランフィルタ21から循環タンク19へ戻す配管)を、審判請求書の第61ページなどの表記に準じて、「配管T4」と表記することとした上で、相違点5の検討を行う。
a 上記(ア)b、cのとおり、甲1発明において、メンブランフィルタ21から排出された第4の部分(固形分)は、配管T4を通って、循環タンク19に戻されるように設計されており、これにより第4の部分(固形分)が循環タンク19へ戻り、スクラバ流体を補充するものと認められる。
b 一方、甲1発明において、上記相違点5に係る本件発明1の構成を採用し、第4の部分(固形分)をスラッジタンク10又は別途設けられた汚染水タンクへ送るようにすると、第4の部分(固形分)は循環タンク19に戻さない(配管T4がなくなる)こととなる。
そうすると、甲1発明において、上記相違点5に係る同構成を採用すると、第4の部分(固形分)による循環タンク19へのスクラバ流体の補充という、甲1発明が元々持っていた機能を損ねることとなるが、当該機能を損ねてまで、メンブランフィルタ21から排出される第4の部分(固形分)を汚染水タンクに送る構成とする動機付けは見出せず、むしろ甲1発明が元々持っていた機能を損ねるのであるから、甲1発明において、上記相違点5に係る同構成を採用することには阻害要因があるといわざるを得ない。
したがって、甲2~9に記載された技術的事項に関わらず、甲1発明において、メンブランフィルタから排出される第4の部分(固形分)を、汚染水タンクに送る構成とすることは、当業者といえども、容易に想到し得るものといえない。
c 以上のとおりであるから、甲1発明において、上記相違点5に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者にとって容易想到の事項とはいえない。
ウ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の概要
請求人は、上記相違点3、相違点5に関して、概略、以下の点を主張している。(弁駁書第10ページ下から1行~第19ページ第8行、口頭審理陳述要領書第7ページ第12行~第9ページ第4行、同第7ページ第12行~第9ページ第4行、及び同第11ページ第3行~第12ページ第12行)
a 相違点3に関して
甲10~甲13には、スクラバーから排出された洗浄水を全量ろ過方式又はクロスフロー方式で膜処理することが記載されており、甲17には、船舶の排ガス再循環方式のエンジンなどの燃焼による排気ガスを洗浄するガス洗浄用スクラバーからの排水を処理装置において、遠心分離機及び油除去部を備え、当該油除去部が油を吸着するフィルターであることが記載されており(上記2(10)~(13)、(17)を参照。)、また甲1発明において、フィルタでろ過する必要があるのは遠心分離機で分離しきれなかった残余の固形成分にすぎないのであるから、甲1発明におけるメンブランフィルタとして全ろ過方式の膜装置を用いることは、単なるろ過方式の選択であって、当業者であれば容易に想到できたものである。
b 相違点5に関して
本件発明1における「前記バッファタンク内のスクラバ排水を導入して、分離液と固形分に分離する、遠心分離機と全量ろ過方式の膜装置とからなる固液分離機を備え、前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ、」との特定事項は、遠心分離機で分離した固形分のみをEGR汚染水タンクに送ることも含まれるから、この点は相違点ではない。
また、甲13には遠心分離機及び全量ろ過方式のフィルタ装置の双方で濾過された固形成分を同一のスラッジ受タンクに送ることも記載されているから、甲1発明において、遠心分離機、メンブランフィルタの双方でろ過された固形成分を同一のタンクに送ることは、当業者であれば容易に想到できたものである。
(イ) 請求人の主張についての検討
まず上記(ア)aの主張について検討すると、上記イ(ア)で検討したとおり、甲1発明では、メンブランフィルタ21がクロスフロー方式だからこそ、定常的に第4の部分(固形分)を循環タンク19に戻し、スクラバ流体を循環タンク19に補充できていたのであり、このような機能を損ねてまで、甲1発明におけるメンブランフィルタ21を「全量ろ過方式」のものに代える動機付けは見出せず、むしろ阻害要因が存在するから、甲1発明におけるメンブランフィルタ21として全ろ過方式とすることは、単なるろ過方式の選択とはいえない。
次に上記(ア)bの主張について検討する。上記1(1)アで検討のとおり、本件発明1の「前記固形分はEGR汚染水タンクに送られ、」との特定事項における「前記固形分」とは、「固液分離機」での分離で生じた「固形分」全体を指すものと解するのが相当である。よって、この点は実質的な相違点といえる。
そして、上記イ(イ)で検討のとおり、甲1発明において、メンブランフィルタから排出される第4の部分(固形分)の送る先をスラッジタンク等に変更すると、循環タンク19へのスクラバ流体の補充という、甲1発明が元々持っていた機能を損ねることとなる。よって、甲1発明においてメンブランフィルタ21から排出される第4の部分(固形分)を汚染水タンクに送る構成とする動機付けは見出せず、むしろ阻害要因が存在するから、甲1発明においてメンブランフィルタ21から排出される第4の部分(固形分)を汚染水タンクに送る構成とすることは、容易想到とはいえない。
よって、請求人の上記主張はいずれも採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明、甲2~9に記載された技術的事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記(3)で検討したのと同様の理由により、本件発明2~6は、甲1に記載された発明、甲2~9に記載された技術的事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5) 無効理由についての結論
以上のとおりであるから、本件発明1~6に係る特許に対する無効理由に理由はない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1~6に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
そして、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-800067