特許無効審判
2022-800030
- 審判番号
- 2022-800030
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2020-029153
- 登録番号
- 6773929
- 請求日
- 2022年03月31日
- 審決日
- 2024年03月21日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【参加人】ジェンマブ エー/エス
- 【参加人代理人】小野 誠
- 【参加人代理人】城山 康文
- 【参加人代理人】坪倉 道明
- 【参加人代理人】安藤 健司
- 【参加人代理人】川嵜 洋祐
- 【参加人代理人】櫻田 芳恵
- 【被請求人】中外製薬 株式会社
- 【被請求人代理人】小寺 秀紀
- 【被請求人代理人】春名 雅夫
- 【被請求人代理人】清水 初志
- 【被請求人代理人】刑部 俊
- 【被請求人代理人】山口 裕孝
- 【被請求人代理人】井上 隆一
- 【被請求人代理人】佐藤 利光
- 【被請求人代理人】梅村 幸輔
- 【被請求人代理人】新見 浩一
- 【被請求人代理人】小林 智彦
- 【被請求人代理人】大関 雅人
- 【被請求人代理人】川本 和弥
- 【被請求人代理人】塩田 真紀
- 【被請求人代理人】伊藤 圭
- 審判長/審判官
- 審判長 長井 啓子
- 審判官 松本 淳
- 審判官 福井 悟
- 分類
- P1113.113-YAA(C12N) / P1113.121-YAA(C12N) / P1113.536-YAA(C12N) / P1113.537-YAA(C12N) / 標準データ:手続:無効 / 標準データ:113・113-YAA (C12N) / 標準データ:113・121 / 標準データ:113・536 / 標準データ:113・537 / 標準データ:91・091-Y (C12N) / 標準データ:出訴:令和06年10074 / 標準データ:確定ステータス:3 取消
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第134条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第135条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)
事件の表示
上記当事者間の特許第6773929号発明「細胞傷害誘導治療剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6773929号の特許請求の範囲を、令和5年7月4日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~6、11、14~17、21、24、31~44、46~48、54~59〕、〔18、67~80〕、〔20、93~106〕、〔22、119~132〕、〔28、145~158〕、〔30、171~184〕、〔49~53、60~66〕、〔81~92〕、〔107~118〕、〔133~144〕、〔159~170〕、〔185~196〕について訂正することを認める。
特許第6773929号の請求項1、3~6、11、14~18、20~22、24、28、30~44、46~196に係る発明についての本件審判の請求は、成り立たない。
特許第6773929号の請求項2、7~10、12、13、19、23、25~27、29、45に係る発明についての無効審判請求を却下する。
審判費用は、参加人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6773929号(請求項の数は59。以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年11月30日(優先権主張 平成22年11月30日 優先権主張 平成23年5月31日 優先権主張 平成23年10月31日)を国際出願日とする特願2012-546900号の一部を、平成30年1月16日に新たな特許出願とした特願2018-4616号の一部を更に、令和2年2月25日に新たな特許出願とした特願2020-29153号について、令和2年10月5日に特許権の設定登録がなされたものである。
請求人は、令和4年3月31日付けで本件特許の請求項1~59に係る発明の特許について、甲第1~11号証を提出し、特許無効審判請求を行った。本件無効審判の手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 3月31日 審判請求書の提出
令和4年 8月12日 審判事件答弁書、訂正請求書及び乙第1~16号証の提出
令和4年11月 1日付け 審理事項通知書
令和5年 1月23日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和5年 1月23日 口頭審理陳述要領書及び乙第17号証の提出(以上、被請求人)
令和5年 2月 6日 口頭審理
令和5年 3月29日付け 審決の予告
令和5年 7月 4日 上申書、訂正請求書及び乙第18~26号証の提出(以上、被請求人)
令和5年10月16日 弁駁書の提出(請求人)
令和5年12月 1日 参加申請書の提出(ジェンマブ エー/エス)
令和6年 2月 8日付け 参加許否の決定
令和6年 2月19日付け 請求取下書の提出(請求人)
なお、本件特許に対する無効審判請求は、請求項1~59に係る特許の全てについて請求されたものなので、本件無効審判に係る審理において、審理対象でない請求項は存しない。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
被請求人が令和5年7月4日付け訂正請求書により請求する訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は、下記訂正事項1~28のとおりである(下線は訂正箇所を示す)。
なお、令和4年8月12日にされた訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び3~6に、
「T細胞受容体結合ドメインを構成するFab」
と記載されているのを、
「T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFab」
に訂正する。
また、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び3~6に、
「・・・と連結された、」
と記載されているのを、
「・・・と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が違いに異なる配列を有し、」
に訂正する。
さらに、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び3~6に、
「・・・ポリペプチド会合体。」
と記載されているのを、
「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、
ポリペプチド会合体。」
に訂正する
訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び3~6を直接的に又は間接的に引用する請求項11、14~17、21、24、31~44、46~48、54~59も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2、7~10、12、13、19、23、25~27、29、45を削除する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に、
「ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及び/又はヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体」
と記載されているのを、
「ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体」
に訂正する。
訂正前の特許請求の請求項11を直接的に又は間接的に引用する請求項14~17、21、24、31~44、46~48、54~59も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項11、14、15、21、24、31~33、46~48、54に、
「【請求項11】
・・・請求項1から10のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項14】
・・・請求項1から13のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項15】
・・・請求項1から14のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項21】
・・・請求項18又は19に記載のポリペプチド会合体。
【請求項24】
・・・請求項18又は19に記載のポリペプチド会合体。
【請求項31】
・・・請求項1から30のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項32】
・・・請求項1から31のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項33】
・・・請求項1、2、又は、7から32のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項46】
・・・請求項1から45のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項47】
・・・請求項1から46のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項48】
・・・請求項1から47のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項54】
請求項1から48のいずれかに記載のポリペプチド会合体・・・」
と記載されているのを
「【請求項11】
・・・請求項1および3から6のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項14】
・・・請求項1、3から6、および11のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項15】
・・・請求項1、3から6、11、および14のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項21】
・・・請求項1、3から6、11、および14から17のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項24】
・・・請求項1、3から6、11、および14から17のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項31】
・・・請求項1、3から6、11、14から17、21、および24のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項32】
・・・請求項1、3から6、11、14から17、21、24、および31のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項33】
・・・請求項1、11、14から17、21、24、31、および32のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項46】
・・・請求項1、3から6、11、14から17、21、24、および31から44のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項47】
・・・請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、および46のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項48】
・・・請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、46、および47のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項54】
請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、および46から48のいずれかに記載のポリペプチド会合体・・・」
に訂正する。
訂正前の特許請求の範囲の請求項11、14、15、21、24、31~33、46~48、54のいずれかを直接的に又は間接的に引用する請求項14~17、21、24、31~44、46~48、54~59も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項18に、
「Fc領域を構成するアミノ酸のうちEUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸:220位、226位、229位、231位、232位、233位、234位、235位、236位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、267位、269位、270位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、325位、327位、328位、329位、330位、331位、332位、が変異しているヒトFc領域変異体である、請求項1から17のいずれかに記載のポリペプチド会合体。」
と記載されているのを、
「下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項20に、
「Fc領域を構成するアミノ酸のうちEUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸:220位、226位、229位、231位、232位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、267位、269位、270位、295位、296位、300位、325位、328位、329位、332位、が変異しているヒトFc領域変異体である、請求項18又は19に記載のポリペプチド会合体
」
と記載されているのを、
「下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL頷域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項21に、
「下記のいずれかのアミノ酸:234位、235位、297位が変異しているヒトFc領域変異体である」
と記載されているのを、
「該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である」
に訂正する。
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項22に、
「234位のアミノ酸がアラニン、235位のアミノ酸がアラニン、及び/又は、297位のアミノ酸がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項21に記載のポリペプチド会合体。」
と記載されているのを、
「下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体。」
に訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項24に、
「297位が置換されているヒトFc領域変異体である、」
と記載されているのを、
「297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、」
に訂正する。
(10)訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項28に、
「ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)を構成するアミノ酸のうちEUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換:
(a)L235A、G237A、E318A
(b)L235E
(c)F234A、L235A
を含むヒトFc領域変異体である、請求項1から18のいずれかに記載のポリペプチド会合体。」
と記載されているのを、
「下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定されるF234A、およびL235Aの変異を含むヒトFc領域変異体である、
ポリペプチド会合体。」
に訂正する。
(11)訂正事項11
訂正前の特許請求の範囲の請求項30に、
「Fc領域を構成するアミノ酸のうちEUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸:233位、234位、235位、236位、237位、327位、330位、331位、が対応するIgG2またはIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されたFc領域変異体である、請求項18又は19に記載のポリペプチド会合体。」
と記載されているのを、
「下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、該234位のアミノ酸が、対応するIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されている、
ポリペプチド会合体。」
に訂正する。
(12)訂正事項12
訂正前の特許請求の範囲の請求項49に、
「請求項1から48のいずれかに記載のポリペプチド会合体を有効成分として含む医薬組成物。」
と記載されているのを、
「下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む医薬組成物。」
に訂正する。
(13)訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項60~66:
「【請求項60】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項61】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項62】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項63】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項64】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項65】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項66】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項49に記載の医薬組成物。」
を追加する。
(14)訂正事項14
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項67~80:
「【請求項67】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項68】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項69】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項70】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項69に記載のポリペプチド会合体。
【請求項71】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項69に記載のポリペプチド会合体。
【請求項72】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項73】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項74】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項75】
請求項18および67から74のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項76】
請求項75に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項77】
請求項76に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項78】
請求項77に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項79】
細胞が真核細胞である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項79に記載の方法。」
を追加する。
(15)訂正事項15
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項81:
「【請求項81】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該Fc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。」
を追加する。
(16)訂正事項16
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項82~92:
「【請求項82】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項83】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項84】
癌治療剤である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項85】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項84に記載の医薬組成物。
【請求項86】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項87】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項88】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項81に記載医薬組成物。
【請求項89】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項90】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項91】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項92】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項81に記載の医薬組成物。」
を追加する。
(17)訂正事項17
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項93~106:
「【請求項93】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項94】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項95】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項96】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項95に記載のポリペプチド会合体。
【請求項97】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項95に記載のポリペプチド会合体。
【請求項98】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項99】
297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項100】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項101】
請求項20および93から100のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項102】
請求項101に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項103】
請求項102に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項104】
請求項103に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項105】
細胞が真核細胞である、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項105に記載の方法。」
を追加する。
(18)訂正事項18
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項107:
「【請求項107】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに詈換されている、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。」
を追加する。
(19)訂正事項19
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項108~118:
「【請求項108】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項109】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項110】
癌治療剤である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項111】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項110に記載の医薬組成物。
【請求項112】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項113】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項114】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項115】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する請求項114に記載の医薬組成物。
【請求項116】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項114に記載の医薬組成物。
【請求項117】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項118】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項107に記載の医薬組成物。」
を追加する。
(20)訂正事項20
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項119~132:
「【請求項119】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項120】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項121】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項122】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項121に記載のポリペプチド会合体。
【請求項123】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する請求項121に記載のポリペプチド会合体。
【請求項124】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項125】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項126】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項127】
請求項22および119から126のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項128】
請求項127に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項129】
請求項128に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項130】
請求項129に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項131】
細胞が真核細胞である、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項131に記載の方法。」
を追加する。
(21)訂正事項21
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項133:
「【請求項133】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。」
を追加する。
(22)訂正事項22
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項134~144:
「【請求項134】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項135】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項136】
癌治療剤である、請求項13 3に記載の医薬組成物。
【請求項137】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項136に記載の医薬組成物。
【請求項138】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項139】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項140】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項133に記載医薬組成物。
【請求項141】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項140に記載の医薬組成物。
【請求項142】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項140に記載の医薬組成物。
【請求項143】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項144】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項133に記載の医薬組成物。」
を追加する。
(23)訂正事項23
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項145~158:
「【請求項145】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項146】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項147】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項148】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項147に記載のポリペプチド会合体。
【請求項149】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項147に記載のポリペプチド会合体。
【請求項150】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項151】
297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項152】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項153】
請求項28および145から152のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項154】
請求項153に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項155】
請求項154に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項156】
請求項155に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項157】
細胞が真核細胞である、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項157に記載の方法。」
を追加する。
(24)訂正事項24
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項159:
「【請求項159】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定されるF234A、およびL235Aの変異を含むヒトFc領域変異体である、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。」
を追加する。
(25)訂正事項25
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項160~170:
「【請求項160】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項161】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項162】
癌治療剤である、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項163】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項162に記載の医薬組成物。
【請求項164】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項165】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項166】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項167】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項166に記載の医薬組成物。
【請求項168】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項166に記載の医薬組成物。
【請求項169】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項170】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項159に記載の医薬組成物。」
を追加する。
(26)訂正事項26
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項171~184:
「【請求項171】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項172】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項173】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項174】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項173に記載のポリペプチド会合体。
【請求項175】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項173に記載のポリペプチド会合体。
【請求項176】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項177】
297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項178】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項179】
請求項30および171から178のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項180】
請求項179に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項181】
請求項180に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項182】
請求項181に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項183】
細胞が真核細胞である、請求項182に記載の方法。
【請求項184】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項183に記載の方法。」
を追加する。
(27)訂正事項27
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項185:
「【請求項185】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、該234位のアミノ酸が、対応するIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されている、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。」
を追加する。
(28)訂正事項28
訂正前の特許請求の範囲に、以下の請求項186~196:
「【請求項186】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項187】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項188】
癌治療剤である、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項189】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項188に記載の医薬組成物。
【請求項190】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項191】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項192】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項193】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項192に記載の医薬組成物。
【請求項194】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項192に記載の医薬組成物。
【請求項195】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項196】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項185に記載の医薬組成物。」
を追加する。
2 訂正の適否
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1、2、7~59について、請求項2、7~59は、それぞれ請求項1を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1、2、7~59は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項を構成する。
訂正前の請求項3、7~59について、請求項7~59は、それぞれ請求項3を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項3、7~59は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項を構成する。
訂正前の請求項4、7~59について、請求項7~59は、それぞれ請求項4を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項4、7~59は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項を構成する。
訂正前の請求項5、7~59について、請求項7~59は、それぞれ請求項5を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項5、7~59は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項を構成する。
訂正前の請求項6~59について、請求項7~59は、それぞれ請求項6を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項6~59は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項を構成する。
そして、訂正前の請求項1~6は、請求項7~59を一群の請求項とする点で共通しているので、訂正前の請求項1~59は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1、3~6において、ポリペプチド会合体の「該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が違いに異なる配列を有し」ていること、及び、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」ことを限定し、更に、訂正前の請求項1、3~6の「T細胞受容体結合ドメイン」について、当該請求項1、3~6で先行する記載である「T細胞受容体複合体結合ドメイン」の記載に整合させるものであるから、当該訂正は特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1に係る訂正のうち、「T細胞受容体複合体結合ドメイン」に記載を整合させるための訂正により、新たな技術的事項が導入されることはない。
また、本件特許の願書に添付した明細書(下線は当審で付与した。なお、以下では、「本件特許明細書」ということがある。)には、
「【0012】
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
〔1〕 下記のドメイン;
(1)抗原結合ドメイン、
(2)Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域を含むドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン、
を含むポリペプチド会合体。
〔48〕 Fc領域を構成するアミノ酸のうちEUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸;
234位、235位、297位、
が変異しているFc領域であることを特徴とする、〔46〕に記載のポリペプチド会合体。
〔49〕234位のアミノ酸がアラニン、235位のアミノ酸がアラニン、及び/又は、297位のアミノ酸がアラニンに変異していることを特徴とする、〔48〕に記載のポリペプチド会合体。
〔50〕Fc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有することを特徴とする、〔43〕から〔49〕のいずれかに記載のポリペプチド会合体。」
と、「ポリペプチド会合体」のFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有すること、Fc領域の234位、235位が変異してもよいことが記載されている。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書の記載から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1、3~6において、ポリペプチド会合体の「該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が違いに異なる配列を有し」ていること、及び、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」ことを限定し、更に、訂正前の請求項1、3~6の「T細胞受容体結合ドメイン」について、当該請求項1、3~6で先行する記載である「T細胞受容体複合体結合ドメイン」の記載に整合させるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2、7~10、12、13、19、23、25~27、29、45を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項2に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項2に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、Fc領域の結合活性が低下しているFcγ受容体を、訂正前の請求項11に記載される「ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及び/又はヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体」の一態様である「ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体」に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項3に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項3に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項11、14、15、21、24、31~33、46~48、54が択一的に引用していた請求項2、7~10、12、13、18~20、22、23、25~30、45について、被引用請求項から削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項4に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項4に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項18について、訂正前の請求項1を引用せずに新たな独立請求項に書き下し、訂正事項1と同じ減縮を伴う訂正を行うとともに、訂正前の請求項18に記載されていたFc領域を、【0012】に記載された一態様である「234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている」ものに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項5に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項5に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(7)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項20について、訂正前の請求項1、18を引用せずに新たな独立請求項に書き下し、訂正事項1と同じ減縮を伴う訂正を行うとともに、訂正前の請求項20に記載されていたFc領域を、訂正前の請求項1に記載された一態様である「ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変異体」に限定し、更に、【0012】に記載された一態様である「234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている」ものに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項6に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項6に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(8)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7に係る訂正は、訂正事項1においてポリペプチド会合体のFc領域について234位および235位が変異していることを限定したことに伴い、訂正前の請求項21に記載されていたFc領域より234位および235位を削除し、297位のみがさらに変異しているものに明瞭化するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項7に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項7に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(9)訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8に係る訂正は、訂正前の請求項22について、訂正前の請求項1、18、21を引用せずに新たな独立請求項に書き下し、訂正事項1と同じ減縮を伴う訂正を行うとともに、訂正前の請求項22に記載されていたFc領域を、訂正前の請求項1に記載された一態様である「ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変異体」に限定し、更に、【0012】に記載された一態様である「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、・・・235位のアミノ酸がアラニンに置換されている」ものに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項8に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項8に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(10)訂正事項9について
ア 訂正の目的
訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項24に記載される297位の置換を、【0012】に記載された一態様であるアラニンによる置換に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項9に係る訂正は、上記アで述べたものであり、訂正事項9に係る訂正は、本件特許明細書の記載から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項9に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(11)訂正事項10について
ア 訂正の目的
訂正事項10に係る訂正は、訂正前の請求項28について、訂正前の請求項1を引用せずに新たな独立請求項に書き下し、訂正事項1と同じ減縮を伴う訂正を行うとともに、訂正前の請求項28に記載されていたFc領域を、訂正前の請求項1に記載された一態様である「ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変異体」に限定し、更に、【0012】に記載された一態様である「F234A、およびL235A」を含むものに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項10に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項10に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(12)訂正事項11について
ア 訂正の目的
訂正事項11に係る訂正は、訂正前の請求項30について、訂正前の請求項1、18を引用せずに新たな独立請求項に書き下し、訂正事項1と同じ減縮を伴う訂正を行うとともに、訂正前の請求項30に記載されていたFc領域を、訂正前の請求項1に記載された一態様である「配列番号:23に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体」に限定し、更に、訂正前の請求項30に記載された一態様である「該234位のアミノ酸が、対応するIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されている」ものに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項11に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項11に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(13)訂正事項12について
ア 訂正の目的
訂正事項12に係る訂正は、訂正前の請求項49について、訂正前の請求項1を引用せずに新たな独立請求項に書き下し、訂正事項1と同じ減縮を伴う訂正を行ったものであるから、当該訂正は特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項12に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項12に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(14)訂正事項13について
ア 訂正の目的
訂正事項13に係る訂正は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分を独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項49から削除された訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17、21、24を引用する部分について、訂正前の請求項11については訂正事項3、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項13は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項13に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項13に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(15)訂正事項14について
ア 訂正の目的
訂正事項14に係る訂正のうち、訂正後の請求項67~71の追加は、訂正事項5において訂正前の請求項18に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項18から削除された訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17を引用する部分について、新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項72~80の追加は、訂正前の請求項21、24、31、54~59について訂正前の請求項1、18を引用する部分について、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項14は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項14に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項14に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(16)訂正事項15について
ア 訂正の目的
訂正事項15に係る訂正は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項49から削除された、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項18を引用する部分について、訂正事項5と同じ訂正を行い、新たな独立請求項としたものである。
したがって、訂正事項15は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項15に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項15に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(17)訂正事項16について
ア 訂正の目的
訂正事項16に係る訂正のうち、訂正後の請求項82~85の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項49を引用する訂正前の請求項50~53を新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項86~92の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項1及び18を直接的または間接的に引用する請求項11、14~17、21、24を引用する部分について、訂正前の請求項11については訂正事項3、請求項21については訂正事項7、請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項16は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項16に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項16に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(18)訂正事項17について
ア 訂正の目的
訂正事項17に係る訂正のうち、訂正後の請求項93~97の追加は、訂正事項6において訂正前の請求項20に係る発明のうち、訂正前の請求項1、18を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項20から削除された訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17を引用する部分を新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項98~106の追加は、訂正前の請求項21、24、31、54~59の訂正前の請求項1、20を引用する部分について、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項17は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項17に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項17に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(19)訂正事項18について
ア 訂正の目的
訂正事項18に係る訂正は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項49から削除された、訂正前の請求項1、18を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項20を引用する部分について、訂正事項6と同じ減縮を伴う訂正を行い、新たな独立請求項としたものである。
したがって、訂正事項18は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項18に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項18に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(20)訂正事項19について
ア 訂正の目的
訂正事項19に係る訂正のうち、訂正後の請求項108~111の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項49を引用する訂正前の請求項50~53について新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項112~118の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項1、18、20を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17、21、24を引用する部分について、訂正前の請求項11については訂正事項3、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項19は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項19に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項19に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(21)訂正事項20について
ア 訂正の目的
訂正事項20に係る訂正のうち、訂正後の請求項119~124の追加は、訂正事項8において訂正前の請求項22に係る発明のうち、訂正前の請求項1、18、21を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項22から削除された訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17を引用する部分について、新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項125~132の追加は、訂正前の請求項21、24、31、54~59について訂正前の請求項1、22を引用する部分について、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項20は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項20に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項20に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(22)訂正事項21について
ア 訂正の目的
訂正事項21に係る訂正は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項49から削除された、訂正前の請求項1、18、21を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項22を引用する部分について、訂正事項8と同じ訂正を行い、新たな独立請求項としたものである。
したがって、訂正事項21は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項21に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項21に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(23)訂正事項22について
ア 訂正の目的
訂正事項22に係る訂正のうち、訂正後の請求項134~137の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項49を引用する訂正前の請求項50~53について新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項138~144の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17、21、24を引用する部分について、訂正前の請求項11については訂正事項3、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項22は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項22に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項22に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(24)訂正事項23について
ア 訂正の目的
訂正事項23に係る訂正のうち、訂正後の請求項145~149の追加は、訂正事項10において訂正前の請求項28に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項28から削除された訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する請求項11、14~17を引用する部分について、新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項150~158の追加は、訂正前の請求項21、24、31、54~59について訂正前の請求項1を引用する部分について、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項23は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項23に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項23に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(25)訂正事項24について
ア 訂正の目的
訂正事項24に係る訂正は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項49から削除された、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項28を引用する部分について、訂正事項10と同じ減縮を伴う訂正を行い、新たな独立請求項としたものである。
したがって、訂正事項24は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項24に係る訂正は、上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項24に係る訂正は、上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(26)訂正事項25について
ア 訂正の目的
訂正事項25に係る訂正のうち、訂正後の請求項160~163の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項49を引用する訂正前の請求項50~53について新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項164~170の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17、21、24を引用する部分について、訂正前の請求項11については訂正事項3、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項25は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項25に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項25に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(27)訂正事項26について
ア 訂正の目的
訂正事項26に係る訂正のうち、訂正後の請求項171~175の追加は、訂正事項11において訂正前の請求項30に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項30から削除された訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17を引用する部分について、新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項176~184の追加は、訂正前の請求項21、24、31、54~59について訂正前の請求項1を引用する部分について、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項26は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項26に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項26に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(28)訂正事項27について
ア 訂正の目的
訂正事項27に係る訂正は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い、訂正前の請求項49から削除された、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項30を引用する部分について、訂正事項11と同じ減縮を伴う訂正を行い、新たな独立請求項としたものである。
したがって、訂正事項27は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項27に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項27に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(29)訂正事項28について
ア 訂正の目的
訂正事項28に係る訂正のうち、訂正後の請求項186~189の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項49を引用する訂正前の請求項50~53について新たな従属請求項としたものであり、訂正後の請求項190~196の追加は、訂正事項12において訂正前の請求項49に係る発明のうち、訂正前の請求項1を引用する部分について独立請求項形式に書き下したことに伴い削除された、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する訂正前の請求項11、14~17、21、24を引用する部分について、訂正前の請求項11については訂正事項3、訂正前の請求項21については訂正事項7、訂正前の請求項24については訂正事項9と同じ減縮を伴う訂正を行い新たな従属請求項としたものである。
したがって、訂正事項28は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項28に係る訂正は上記アで述べたものであり、このことにより新たな技術的事項が導入されることはないから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の有無
訂正事項28に係る訂正は上記アで述べたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 本件訂正後の発明の独立特許要件について
上記「第1 手続の経緯」で述べたように、本件特許に対する無効審判請求は、訂正前の請求項1~59に係る特許の全てについて請求されたものであるから、本件訂正後の請求項に係る発明は、独立特許要件の判断を要しない。
4 訂正請求についてのむすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
第3 本件訂正発明
本件特許の請求項1~196に係る発明は、本件訂正特許請求の範囲の請求項1~196に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、項番に従い、それぞれ「本件訂正発明1」等といい、これらをまとめて「本件訂正発明」ということがある。なお、下線部は訂正箇所である。)。
【請求項1】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、
ポリペプチド会合体。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの軽鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの重鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、
ポリペプチド会合体。
【請求項4】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCL領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCH1領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、
ポリペプチド会合体。
【請求項5】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、癌抗原結合ドメインを構成するFabの軽鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの重鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、
ポリペプチド会合体。
【請求項6】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCL領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCH1領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、
ポリペプチド会合体。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項1および3から6のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項1、3から6、および11のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項15】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項1、3から6、11、および14のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項16】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項15に記載のポリペプチド会合体。
【請求項17】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項15に記載のポリペプチド会合体。
【請求項18】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体。
【請求項19】(削除)
【請求項20】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL頷域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体。
【請求項21】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項1、3から6、11、および14から17のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項22】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体。
【請求項23】(削除)
【請求項24】
297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項1、3から6、11、および14から17のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項25】(削除)
【請求項26】(削除)
【請求項27】(削除)
【請求項28】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定されるF234A、およびL235Aの変異を含むヒトFc領域変異体である、
ポリペプチド会合体。
【請求項29】(削除)
【請求項30】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、該234位のアミノ酸が、対応するIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されている、
ポリペプチド会合体。
【請求項31】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項1、3から6、11、14から17、21、および24のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項32】
抗がん剤である有機化合物がコンジュゲートされていない、請求項1、3から6、11、14から17、21、24、および31のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項33】
癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片と軽鎖Fv断片、またはT細胞受容体結合ドメイン中の重鎖Fv断片と軽鎖Fv断片が会合するようにCH1領域とCL領域の電荷が制御されている、請求項1、11、14から17、21、24、31、および32のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項34】
T細胞受容体複合体結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基および癌抗原結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに同種の電荷を有する、請求項33に記載のポリペプチド会合体。
【請求項35】
癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基およびT細胞受容体複合体結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに同種の電荷を有する、請求項33に記載のポリペプチド会合体。
【請求項36】
T細胞受容体複合体結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基および癌抗原結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに同種の電荷を有し、癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基およびT細胞受容体複合体結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに同種の電荷を有する、請求項33に記載のポリペプチド会合体。
【請求項37】
T細胞受容体複合体結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基およびT細胞受容体結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに異種の電荷を有する、請求項34又は36に記載のポリペプチド会合体。
【請求項38】
癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基および癌抗原結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基がともに異種の電荷を有する、請求項35又は36に記載のポリペプチド会合体。
【請求項39】
CH1領域のアミノ酸残基およびCL領域のアミノ酸残基が、以下の(a)~(f)に示される1組又は2組以上のアミノ酸残基の組からなる群:
(a)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基、
(b)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基
(c)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング164位のアミノ酸残基
(d)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング138位のアミノ酸残基
(e)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基
(f)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング160位のアミノ酸残基
より選択され、CH1領域のアミノ酸残基とCL領域のアミノ酸残基とが互いに異種の電荷を有するアミノ酸残基である、請求項37又は38に記載のポリペプチド会合体。
【請求項40】
さらに、以下の(g)に示されるアミノ酸残基の組を含む群より選択される、請求項39に記載のポリペプチド会合体:
(g)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング213位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基。
【請求項41】
前記異種の電荷を有するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれかの群:
(X)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D);
(Y)リジン(K) 、アルギニン(R)、ヒスチジン(H);
に含まれるアミノ酸残基から選択される、請求項39又は40に記載のポリペプチド会合体。
【請求項42】
前記異種の電荷を有するアミノ酸残基が、CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基がLys、CL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング180位、131位及び160位のアミノ酸残基がいずれもGluである、請求項39から41のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項43】
前記異種の電荷を有するアミノ酸残基が、CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位及び175位のアミノ酸残基がGlu、CL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング180位、131位及び160位のアミノ酸残基がいずれもLysである、請求項39から41のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項44】
さらに、CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング213位のアミノ酸残基がGluであり、CL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基がLysである、請求項43に記載のポリペプチド会合体。
【請求項45】(削除)
【請求項46】
Fc領域を構成する二つのポリペプチドの一方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される349位のアミノ酸がシステイン、366位のアミノ酸がトリプトファンに、他方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される356位のアミノ酸がシステイン、366位のアミノ酸がセリンに、368位のアミノ酸がアラニンに、407位のアミノ酸がバリンに変異していることを特徴とする、請求項1、3から6、11、14から17、21、24、および31から44のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項47】
Fc領域を構成する二つのポリペプチドの一方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される356位のアミノ酸がリジンに、他方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される439位のアミノ酸がグルタミン酸に変異し、いずれか一方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される435位のアミノ酸がアルギニンに変異している、請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、および46のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項48】
Fc領域を構成する二つのポリペプチドのカルボキシ末端に存在する配列GKが欠失している、請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、46、および47のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
【請求項49】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項50】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項49又は50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
癌治療剤である、請求項49から51のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項53】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、および46から48のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項55】
請求項54に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項56】
請求項55に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項57】
請求項56に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項58】
細胞が真核細胞である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項61】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項62】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項63】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項64】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項65】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項66】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項67】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項68】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項69】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項70】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項69に記載のポリペプチド会合体。
【請求項71】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項69に記載のポリペプチド会合体。
【請求項72】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項73】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項74】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項18に記載のポリペプチド会合体。
【請求項75】
請求項18および67から74のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項76】
請求項75に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項77】
請求項76に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項78】
請求項77に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項79】
細胞が真核細胞である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該Fc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項82】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項83】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項84】
癌治療剤である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項85】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項84に記載の医薬組成物。
【請求項86】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項87】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項88】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項81に記載医薬組成物。
【請求項89】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項90】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項91】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項92】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項93】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項94】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項95】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項96】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項95に記載のポリペプチド会合体。
【請求項97】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項95に記載のポリペプチド会合体。
【請求項98】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項99】
297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項100】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項20に記載のポリペプチド会合体。
【請求項101】
請求項20および93から100のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項102】
請求項101に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項103】
請求項102に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項104】
請求項103に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項105】
細胞が真核細胞である、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに詈換されている、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項108】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項109】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項110】
癌治療剤である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項111】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項110に記載の医薬組成物。
【請求項112】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項113】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項114】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項115】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する請求項114に記載の医薬組成物。
【請求項116】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項114に記載の医薬組成物。
【請求項117】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項118】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項119】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項120】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項121】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項122】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項121に記載のポリペプチド会合体。
【請求項123】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する請求項121に記載のポリペプチド会合体。
【請求項124】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項125】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項126】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項22に記載のポリペプチド会合体。
【請求項127】
請求項22および119から126のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項128】
請求項127に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項129】
請求項128に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項130】
請求項129に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項131】
細胞が真核細胞である、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項134】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項135】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項136】
癌治療剤である、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項137】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項136に記載の医薬組成物。
【請求項138】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項139】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項140】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項133に記載医薬組成物。
【請求項141】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項140に記載の医薬組成物。
【請求項142】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項140に記載の医薬組成物。
【請求項143】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項144】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項133に記載の医薬組成物。
【請求項145】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項146】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項147】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項148】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項147に記載のポリペプチド会合体。
【請求項149】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項147に記載のポリペプチド会合体。
【請求項150】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項151】
297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項152】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項28に記載のポリペプチド会合体。
【請求項153】
請求項28および145から152のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項154】
請求項153に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項155】
請求項154に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項156】
請求項155に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項157】
細胞が真核細胞である、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定されるF234A、およびL235Aの変異を含むヒトFc領域変異体である、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項160】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項161】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項162】
癌治療剤である、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項163】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項162に記載の医薬組成物。
【請求項164】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項165】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項166】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項167】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項166に記載の医薬組成物。
【請求項168】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項166に記載の医薬組成物。
【請求項169】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項170】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項159に記載の医薬組成物。
【請求項171】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項172】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項173】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項174】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項173に記載のポリペプチド会合体。
【請求項175】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項173に記載のポリペプチド会合体。
【請求項176】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項177】
297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項178】
癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項30に記載のポリペプチド会合体。
【請求項179】
請求項30および171から178のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項180】
請求項179に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項181】
請求項180に記載のベクターを保持する細胞。
【請求項182】
請求項181に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。
【請求項183】
細胞が真核細胞である、請求項182に記載の方法。
【請求項184】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項183に記載の方法。
【請求項185】
下記のドメイン:
(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、
該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、
該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、該234位のアミノ酸が、対応するIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されている、
ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項186】
癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項187】
細胞傷害誘導治療剤である、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項188】
癌治療剤である、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項189】
癌が肝癌又は肺癌である、請求項188に記載の医薬組成物。
【請求項190】
ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγII、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項191】
T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項192】
T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項193】
CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項192に記載の医薬組成物。
【請求項194】
CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項192に記載の医薬組成物。
【請求項195】
該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項185に記載の医薬組成物。
【請求項196】
該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項185に記載の医薬組成物。
第4 当事者の主張及び証拠方法
1 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第6773929号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし59に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の(1)~(5)の無効理由を主張し、証拠方法として以下の(6)に記載の書証を提出した。
(1)無効理由1(甲第2号証に基づく新規性欠如)
本件特許の訂正前の請求項1、2、7、11、14、15、18~21、31、32、及び45に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
(2)無効理由2(甲第2号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の訂正前の請求項8~10、12、13、16、17、22~26、29、30、33~44、及び、46~59に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と、甲第1~10号証及び技術常識に基づいて、本件特許の優先日前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
(3)無効理由3(甲第11号証に基づく進歩性欠如)
本件特許の訂正前の請求項1、2、7~26、及び29~59に係る発明は、甲第11号証に記載された発明と、甲第1~11号証及び技術常識に基づいて、本件特許の優先日前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
(4)無効理由4(サポート要件違反)
本件特許は、本件特許の訂正前の請求項1~59に係る発明について、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきである。
(5)無効理由5(実施可能要件違反)
本件特許は、本件特許の訂正前の請求項1~59に係る発明について、本件特許明細書の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきである。
(6)証拠方法
甲第1号証:特表2007-503206号公報
甲第2号証:国際公開第2010/085682号
甲第3号証:国際公開第2009/011941号
甲第4号証:J. Rheumatol., 2007, Vol. 34: 11, pp. 2204-2210
甲第5号証:Hum. Antibodies Hybridomas, 1990, Vol. 1, No. 1, pp. 47-54
甲第6号証:Blood, 2007, Vol. 109, No. 3, pp. 1185-1192
甲第7号証:J. Biol. Chem., 2001, Vol. 276, No. 9, pp. 6591-6604
甲第8号証:国際公開第2008/119567号
甲第9号証:再公表特許WO2006/106905号
甲第10号証:国際公開第2010/131733号
甲第11号証:国際公開第2010/120561号
<以上、審判請求書とともに提出。>
(以下、甲号証は、号証番号に応じて「甲1」などという。)
2 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判請求費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人の主張する上記無効理由は理由がない旨主張し、証拠方法として、以下の書証を提出した。
乙第1号証:Cancer Treat. Rev., 2010, Vol. 36, No. 6, pp. 458-467
乙第2号証:Blood, 2001, Vol. 98, No. 8, pp. 2526-2534
乙第3号証:Curr. Opin. Mol. Ther., 2010, Vol. 12, No. 3, pp. 340-349
乙第4号証:2012年1月26日付のAmgen Inc.によるプレスリリース
乙第5号証:Cancer Res., 2009, Vol. 69, No. 12, pp. 4941-4944
乙第6号証:Cancer Res., 2000, Vol. 60, No. 24, pp. 6964-6971
乙第7号証:Mol. Immunol., 2007, Vol. 44, No. 8, pp. 1935-1944
乙第8号証:Adv. Drug Deliv. Rev., 1998, Vol. 31, No. 1-2, pp. 105-129
乙第9号証:Int. J. Cancer, 2002, Vol. 100, No. 6, pp. 690-697
乙第10号証:BioDrugs, 2010, Vol. 24, No. 2, pp. 89-98
乙第11号証:米国特許5474771号
乙第12号証:実験成績証明書
乙第13号証:Proc. Natl. Acad. Sci., 2011, Vol. 108, No. 27, pp. 11187-11192
乙第14号証:国際公開第2011/108714号
乙第15号証:Methods, 2019, Vol. 1, No. 154, pp. 10-20
乙第16号証:Mol. Cancer Ther., 2019, Vol. 18, No. 11, pp. 2008-2020
<以上、審判事件答弁書とともに提出。>
乙第17号証:Curr. Opin. Biotechnol., 2009, Vol. 20, pp. 685-691
<以上、令和5年1月23日に提出の口頭審理陳述要領書とともに提出。>
乙第18号証:J. Virology, 2001, Vol.75(24), pp.12161-12168
乙第19号証:Nature, 2007, Vol.6:449(7158), pp.101-104
乙第20号証:Immunology, 1995, Vol.86(2), pp.319-324
乙第21号証:特表2013-512258号公報
乙第22号証:Mol Immunol, 2003, Vol.40(9), pp.585-593
乙第23号証:Eur. J. Immunol, 1999, Vol.29, pp.2613-2624
乙第24号証:Cancer Chemother Pharmacol, 2015, Vol.75(5), pp.1065-1073
乙第25号証:J Exp Med, 1991, Vol.173(6), pp.1483-1491
乙第26号証:Proc Natl Acad Sci U S A, 1991, Vol.88(20), pp.9036-9040
<以上、令和5年7月4日に提出の上申書とともに提出。>
(以下、乙号証は、号証番号に応じて「乙1」などという。)
第5 証拠の記載事項
1 甲1の記載事項
甲1(特表2007-503206号公報)には、以下の事項が記載されている。また、下線は当審で付したものである。
「【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
免疫応答は、体に侵入し、感染または疾患をもたらす外来物質に対して体がそれ自身を防御するメカニズムである。このメカニズムは、宿主の可変領域を通して抗原に結合するために、産生されまたは宿主に投与された、抗体の能力に基づく。一度抗原が抗体によって結合される場合、この抗原は、抗体の定常領域またはFcドメインによって、多くの場合部分的に媒介され、破壊の標的となる。
例えば、上記抗体のFcドメインの活動の1つは、標的抗原(例えば、細胞病原体)を溶解することを補助し得る、補体タンパク質に結合することである。Fc領域の別の活動は、免疫細胞(または、いわゆるエフェクター細胞)の表面のFcレセプター(FcR)に結合することであり、このエフェクター細胞は、他の免疫効果を誘発する能力を有する。これらの免疫効果としては、例えば、免疫活性物質の放出、抗体産生の調節、エンドサイトーシス、食菌作用、および細胞の死滅が挙げられる。いくつかの臨床上の適用において、これらの応答は、抗体の効力にとって重要であるが、他の場合において、これらは、望まれない副作用を引き起こす。エフェクターによって媒介された副作用の1つの例は、急性発熱反応をもたらす炎症サイトカインの放出である。別の例は、抗原保有細胞の長期欠失である。
【0004】
抗体のエフェクター機能は、Fc領域(例えば、Fab、Fab’2、または単鎖抗体(sFv))を欠く抗体フラグメントを使用することにより避けられ得るが、これらのフラグメントは、半減期の減少、2つの抗原結合部位の代わりに1つだけの抗原結合部位(例えば、Fab抗体フラグメントおよび単鎖抗体(sFv)の場合)を有し、そしてこれらのフラグメントを精製することは、より難しい。
【0005】
現在、Fc領域の他の価値のある特質を保持しながら、抗体のエフェクター機能を減少させるには限定された方法がある。1つのアプローチは、エフェクター結合相互作用に関与する抗体の表面のアミノ酸を変異することである。ある変異は、エフェクター機能の減少に結び付くが、残りの活動は通常そのままである。その上、これらの添加された変異は、抗体を免疫原性にし得る。
【0006】
エフェクター機能を減少させる別のアプローチは、Fc領域の特定の残基に結合される糖を、例えば、その糖が付着している残基を除去するかまたは変更することによってか、酵素的にその糖を除去することによってか、グリコシル化インヒビターの存在下で培養された細胞中に抗体を産生することによってか、あるいはタンパク質をグリコシル化し得ない細胞中で抗体を発現することによって、除去することである。しかし、前述のアプローチは、残基のエフェクター機能を補体依存性細胞溶解活性とFcレセプター結合との両方の形態のままにする。従って、エフェクター機能のさらなる減少が、活動の完全な除去を保証するために重要である。」
2 甲2の記載事項
甲2(国際公開第2010/085682号)には、以下の事項が記載されている。なお、甲2は英文で記載されているため、甲2のパテントファミリーの公表公報である特表2012-515556号公報の記載事項を翻訳文として使用する。また、下線は当審で付したものである。
甲2a
「【発明の名称】低下したエフェクタ機能を有する安定化Fcポリペプチドおよび使用方法
・・・
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラFc領域を含む安定化ポリペプチドであって、前記安定化ポリペプチドは、IgG4イソタイプのIgG抗体からの少なくとも1つのCH2ドメインと、IgG1イソタイプのIgG抗体からの少なくとも1つのCH3ドメインとを含み、前記安定化ポリペプチドは、297、299、307、309、399、409、および427(EU付番慣例)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に1つまたはそれ以上の安定化Fcアミノ酸を含む、安定化ポリペプチド。
・・・
【請求項3】
IgG4抗体のFc領域からのCH2部分を含む安定化ポリペプチドであって、240F、262L、264T、266F、297Q、299A、299K、307P、309K、309M、309P、323F、399S、および427F(EU付番慣例)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に、1つまたはそれ以上の安定化アミノ酸を含む、安定化ポリペプチド。
・・・
【請求項5】
IgG1抗体のFc領域からのCH2部分を含む安定化ポリペプチドであって、299Kおよび297D(EU付番慣例)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に、1つまたはそれ以上の安定化アミノ酸を含む、安定化ポリペプチド。
・・・
【請求項9】
IgG抗体は、ヒト抗体である、請求項1~8のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。
・・・
【請求項18】
前記安定化ポリペプチドは、前記安定化変異を欠く親Fcポリペプチドと比較して、低下したエフェクタ機能を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項19】
前記低下したエフェクタ機能は、低下したADCC活性である、請求項18に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項20】
前記低下したエフェクタ機能は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体(FcR)への低下した結合である、請求項18に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項21】
前記エフェクタ機能は、約1倍以上、約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上、約15倍以上、約50倍以上、および約100倍以上からなる群から選択される倍数で低下する、請求項18に記載の安定化ポリペプチド。
・・・
【請求項25】
前記Fc領域は、2つのポリペプチド鎖を含む二量体Fc領域である、請求項1~24のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項26】
前記Fc領域は、一本鎖Fc領域である、請求項1~24のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項27】
前記Fc領域の全てのFc部分は、非グリコシル化される、請求項1~26のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項28】
前記非グリコシル化されたFc領域は、前記Fc領域の位置299(EU付番慣例)に置換を含む、請求項7に記載の安定化ポリペプチド。
・・・
【請求項33】
前記安定化アミノ酸は、独立して、(i)位置297の非荷電アミノ酸、ii)位置299の正電荷を持つアミノ酸、(iii)位置307の極性のアミノ酸、(iv)位置309の正電荷を持つもしくは極性のアミノ酸、(v)位置399の極性のアミノ酸、(vi)位置409の正電荷を持つもしくは極性のアミノ酸、および(vii)位置427の極性アミノ酸からなる群から選択される、請求項1に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項34】
少なくとも1つの安定化アミノ酸は、アミノ酸位置297(EU付番)のGlnである、請求項1に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項35】
前記安定化アミノ酸のうちの少なくとも1つは、位置299のリシン(K)またはチロシン(Y)である、請求項1~34のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。
・・・
【請求項39】
前記Fc領域は、結合部位と機能的に結合する、請求項1~38のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項40】
前記結合部位は、抗原結合部位、受容体のリガンド結合部分、またはリガンドの受容体結合部分から選択される、請求項39に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項41】
前記結合部位は、scFv、Fab、ミニボディ、ジアボディ、トリアボディ、ナノボディ、カメリド抗体、およびDabからなる群から選択される修飾抗体に由来する、請求項39に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項42】
安定化完全長抗体である、請求項39に記載の安定化ポリペプチド。
【請求項43】
前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、およびヒト化抗体からなる群から選択される、請求項39に記載の安定化ポリペプチド。
・・・
【請求項53】
請求項1~52のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む組成物。
【請求項54】
請求項1~53のいずれか1項に記載の安定化結合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項55】
請求項25に記載の安定化結合ポリペプチドのポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項56】
請求項54または55に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項57】
請求項56に記載のベクターを発現する、宿主細胞。
・・・
【請求項65】
対象における疾患または障害を治療または予防するための方法であって、前記疾患または障害を患う対象に、請求項53に記載の組成物を投与し、それによって、疾患または障害を治療または予防することを含む、方法。
【請求項66】
前記疾患または障害は、炎症性障害、神経系障害、自己免疫障害、および腫瘍性障害からなる群から選択される、請求項65に記載の方法。」
甲2b
「【背景技術】
【0002】
獲得免疫反応は、体に侵入し、感染または疾病をもたらす外来の生物に対して、体が自らを防御する機構である。1つの機構は、宿主の可変領域を通して抗原に結合するために、産生される、または宿主に投与される、抗体の能力に基づく。抗原が抗体によって結合されると、この抗原は、抗体の定常領域またはFc領域によって、しばしば、少なくとも部分的に媒介され、破壊の標的となる。
【0003】
抗体のFc領域によって媒介される幾つかのエフェクタ機能または活性がある。あるエフェクタ機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)と称されるプロセスにおいて、標的抗原、例えば、細胞病原体を溶解することを補助し得る、補体タンパク質に結合する能力である。Fc領域の別のエフェクタ活性は、免疫細胞、またはいわゆるエフェクタ細胞の表面上でFc受容体(例えば、FcγR)に結合することであり、これは、他の免疫効果を誘発する能力を有する。これらの免疫効果(例えば、抗体依存性細胞毒性(ADCC)および抗体依存性細胞食作用(ADCP))は、例えば、免疫活性物質の放出、抗体産生の調節、エンドサイトーシス、食菌作用、および細胞の死滅によって、病原体/抗原の除去に作用する。幾つかの臨床上の適用において、これらの応答は、抗体の効力にとって重要であるが、他の場合において、これらは、望まれない副作用を引き起こす。エフェクタによって媒介された副作用の1つの例は、急性発熱反応をもたらす炎症サイトカインの放出である。別の例は、抗原保有細胞の長期欠失である。
【0004】
抗体のエフェクタ機能は、Fc領域(例えば、Fab、F(ab′)2、または一本鎖Fv(scFv))を欠く抗体断片を使用することにより避けられ得る。しかしながら、これらの断片は、腎臓を通る迅速なクリアランスにより減少した半減期を有し、FabおよびscFvの場合、断片は、2つではなく1つのみの抗原結合部位を有し、結合親和力によるいかなる利点も損なう可能性があり、また、製造における課題を提示し得る。
【0005】
代替のアプローチは、Fc領域の他の価値のある特質(例えば、長期にわたる半減期およびヘテロ二量化)を保持しながら、完全長抗体のエフェクタ機能を減少させることを目標としている。エフェクタ機能を減少させる1つのアプローチは、Fc領域の特定の残基に結合される糖を除去することによって、いわゆる非グリコシル化抗体を生成することである。非グリコシル化抗体は、例えば、その糖が付着している残基を除去するか、もしくは変更することによってか、酵素的にその糖を除去することによってか、グリコシル化阻害剤の存在下で培養された細胞中に抗体を産生することによってか、あるいはタンパク質をグリコシル化できない細胞(例えば、細菌性宿主細胞)中で抗体を発現することによって、生成することができる。別のアプローチは、IgG1の代わりにIgG4抗体からのFc領域を利用することである。IgG4抗体が、IgG1よりも低いレベルの補体活性化および抗体依存性細胞毒性を有することによって特徴付けられることは、公知である。
【0006】
これらの代替アプローチの利点にもかかわらず、抗体のFc領域からのオリゴ糖の除去は、その構造および安定性において顕著な悪影響を及ぼすことが、現在、十分に確立されている。さらに、IgG4のCH3ドメインが、IgG1のCH3ドメインに対して同程度の安定性を欠いているため、IgG4抗体は、一般的に、より低い安定性を有する。いかなる場合でも、抗体安定性の損失または低下は、抗体薬物の開発に悪影響を及ぼすプロセス開発課題を提示し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、変更された、もしくは低下したエフェクタ機能、および改善された安定性を有する、改善された抗体および他のFc含有ポリペプチド、ならびにこれらの分子を作製する方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、Fc領域の安定性を強化するための改善された方法を提供することによって、先行技術の「エフェクタ無し」抗体の問題、実に、いかなる「エフェクタ無し」Fc含有抗体の問題をも解決する。例えば、本発明は、安定性を操作したFcポリペプチド、例えば、安定化IgG抗体または他のFc含有結合分子を提供し、これは、ポリペプチドのFc領域内における、安定化アミノ酸を含む。一実施形態においては、本発明は、Fc領域の向上した安定性をもたらす親FcポリペプチドのFc領域内における、特定のアミノ酸残基位置で、変異体を導入するための方法を提供する。好ましくは、該安定化Fcポリペプチドは、(1つまたは複数の安定化アミノ酸を含まないポリペプチドと比較して)変化した、あるいは低下したエフェクタ機能を有し、親Fcポリペプチドと比較して、強化された安定性を示す。」
甲2c
「【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】 典型的な抗原結合ポリペプチド(IgG抗体)の構造、ならびに抗体の抗原結合およびエフェクタ機能(例えば、Fc受容体(FcR)結合)の機能的特性を示す。また、いかに抗体のCH2ドメインにおける糖(グリコシル化)の存在がエフェクタ機能(FcR結合)を変化させるが、抗原結合に影響を及ぼさないことも示す。」
甲2d
「【0128】
本明細書において使用される「Fc領域」という用語は、抗体重鎖の2つまたはそれ以上のFc部分によって形成される免疫グロブリンの一部として定義される。ある実施形態においては、該Fc領域は、二量体Fc領域である。「二量体Fc領域」または「dcFc」とは、2つの別々の免疫グロブリン重鎖のFc部分によって形成される二量体を指す。二量体Fc領域は、2つの同一のFc部分(例えば、天然に存在する免疫グロブリンのFc領域)のホモ二量体、または2つの非同一のFc部分のヘテロ二量体であり得る。他の実施形態においては、該Fc領域は、単量体または「一本鎖」Fc領域(すなわち、scFc領域)である。一本鎖Fc領域は、単一のポリペプチド鎖(すなわち、単一の隣接遺伝子配列においてコードされる)内において、遺伝的に連鎖しているFc部分から構成される。例示的なscFc領域は、2008年5月14日出願のPCT出願第PCT/US2008/006260号に開示されており、この内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0129】
本明細書において使用される「Fc部分」という用語は、パパイン切断部位(すなわち、重鎖定常領域の第1の残基を114として、IgGにおける残基216)のちょうど上流にあるヒンジ領域で開始し、免疫グロブリン重鎖のC末端で終止する免疫グロブリン重鎖の一部に由来する配列を指す。したがって、Fc部分は、完全Fc部分またはその一部(例えば、ドメイン)であり得る。完全Fc部分は、少なくとも1つのヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン(例えば、EUアミノ酸位置216~446)を含む。さらなるリシン残基(K)が、Fc部分の最C末端に存在することがあるが、成熟抗体から切断されることが多い。Fc領域内におけるアミノ酸位置のそれぞれは、例えば、米国保健社会福祉省、1983および1987の「Sequences of Proteins of Immunological Interest」における、Kabatらによって参照される、当技術分野において承認されているカバットのEU付番方式に従って付番されている。」
甲2e
「【0143】
本明細書において使用される「タンパク質安定性」という用語は、環境条件(例えば、温度の上昇または低下)に応じたタンパク質の1つまたはそれ以上の物理的特性の維持の当技術分野において承認されている尺度を指す。一実施形態においては、物理的特性は、タンパク質の共有結合構造の維持である(例えば、タンパク質分解的切断、好ましくない酸化、または脱アミドの非存在)。別の実施形態においては、物理的特性は、正確に折り畳まれた状態のタンパク質の存在である(例えば、可溶性または不溶性凝集体または沈殿物の非存在)。一実施形態においては、タンパク質の安定性は、例えば、熱安定性、pHアンフォールディングのプロファイル、グリコシル化の安定した除去、溶解性、生化学的機能(例えば、タンパク質(例えば、リガンド、受容体、抗原等)、もしくは化学部分等に結合する能力)、および/またはこれらの組み合わせ等のタンパク質の生物物理的特性をアッセイすることによって測定される。別の実施形態においては、生化学的機能は、相互作用の結合親和性によって示される。一実施形態においては、タンパク質の安定性の尺度は、熱安定性、すなわち、熱的チャレンジ(thermal challenge)に対する耐性である。安定性は、当該分野で周知の、および/または本明細書中に記載される方法を用いて測定することができる。例えば、「遷移温度」として称される「Tm」が、測定され得る。Tmは、例えば、結合分子等の巨大分子の50%が、変性し、タンパク質の熱安定性を説明するための基準パラペータであると考えられる、温度である。」
甲2f
「【0205】
(II)親Fcポリペプチド
多様Fcポリペプチドは、当技術分野で周知である、親または出発Fcポリペプチドに由来し得る。好ましい実施形態においては、親Fcポリペプチドは、抗体として、そして好ましくは、例えば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のIgG免疫グロブリン、そして好ましくはサブタイプIgG1もしくはIgG4のIgG免疫グロブリンである。親Fcポリペプチドは、免疫グロブリンに由来するFc領域を含むが、任意に、Fc領域に機能的に結合させるか、または融合される結合部位をさらに含み得る。好ましい実施形態においては、前述のポリペプチドは、リガンド、サイトカイン、受容体、細胞表面抗原、または癌細胞抗原等の抗原に結合する。本明細書の実施例は、IgG抗体を使用するが、本方法は、いかなるFcポリペプチド内のFc領域に同等に適用され得ることを理解されよう。Fcポリペプチドが抗体である場合、抗体は、合成されるか、(例えば、血清に)天然に由来するか、細胞株(例えば、ハイブリドーマ)によって産生されるか、または遺伝子導入生物において産生され得る。
【0206】
ある実施形態においては、本発明のFcポリペプチドは、Fc領域の単一のFc部分を含む。他の実施形態においては、Fcポリペプチドは、dcFcポリペプチドである。dcFcポリペプチドとは、二量体Fc(またはdcFc)領域を含むポリペプチドを指す。他の実施形態においては、本発明のFcポリペプチドは、scFcポリペプチドである。本明細書において使用されるscFcポリペプチドという用語は、一本鎖Fc(scFc)領域を含むポリペプチド、例えば、Fc部分の少なくとも2つの間に介入される柔軟ポリペプチドリンカー等を介して遺伝的に融合される、少なくとも2つのFc部分を含むscFcポリペプチドを指す。例示的なscFc領域は、2008年5月14日出願のPCT出願第PCT/US2008/006260号に開示されており、この内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0207】
ある実施形態においては、本発明のポリペプチドは、同じ、または実質的に同じ配列組成のFc部分を含むFc領域(本明細書において「ホモマーFc領域」と称される)を含むことができる。他の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、異なる配列組成である少なくとも2つのFc部分を含むFc領域(すなわち、本明細書において「異種Fc領域」と称される)を含むことができる。ある実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、少なくとも1つの挿入またはアミノ酸置換を含むFc領域を含む。1つの例示的な実施形態においては、異種Fc領域は、第1のFc部分においてアミノ酸置換を含むが、第2のFc部分には含まない。
【0208】
一実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、本明細書に記載されるFc部分から独立して選択されるその構成Fc部分の2つまたそれ以上を有するFc領域を含むことができる。一実施形態においては、Fc部分は同じである。別の実施形態においては、Fc部分の少なくとも2つは、異なる。例えば、本発明のFcポリペプチドのFc部分は、同じ数のアミノ酸残基を含むか、またはそれらは、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、約5つのアミノ酸残基(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸残基)、約10の残基、約15の残基、約20の残基、約30の残基、約40の残基、または約50の残基)の長さにおいて異なり得る。さらに他の実施形態においては、Fc部分は、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置において、配列が異なり得る。例えば、Fc部分の少なくとも2つは、約5のアミノ酸位置(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸部分)、約10の位置、約15の位置、約20の位置、約30の位置、約40の位置、または約50の位置)で異なり得る。」
甲2g
「【0211】
A.Fc部分
本発明の親Fcポリペプチドを産生するために有用なFc部分は、多数の異なる源から得ることができる。好ましい実施形態においては、結合ポリペプチドのFc部分は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、当然のことながら、Fc部分は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む、別の哺乳類種の免疫グロブリンに由来することができる。さらに、Fcは、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む、任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む、任意の免疫グロブリンイソタイプに由来することができる。好ましい実施形態においては、ヒトイソタイプIgG1またはIgG4が使用される。
【0212】
様々なFc部分遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域遺伝子配列)は、公的にアクセス可能な寄託の形で入手可能である。特定のエフェクタ機能を有するか(または特定のエフェクタ機能を欠く)、または免疫原性を低下させる特定の修飾を有するFc部分配列を含む定常領域ドメインを選択することができる。抗体および抗体コード遺伝子の多くの配列は公表され、適切なFc部分配列(例えば、ヒンジ、CH2、および/またはCH3配列、またはそれらの一部)は、当技術分野において承認されている手法を使用してこれらの配列から導くことができる。前述の方法のいずれかを使用して得られた遺伝物質は、次いで、本発明のポリペプチドを得るために変化または合成することができる。本発明の範囲は、定常領域DNA配列の対立遺伝子、変異体、および変異体を包含することがさらに認識される。」
甲2h
「【0221】
ある実施形態においては、親Fcポリペプチドは、1を超えるアミノ酸置換を含む。親Fcポリペプチドは、例えば、野生型Fc領域と比較して、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ以上のアミノ酸置換を含むことができる。好ましくは、アミノ酸置換は、少なくとも1アミノ酸部分、またはそれ以上、例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ以上のアミノ酸位置、またはそれ以上の間隔で互いに空間的に位置する。より好ましくは、操作アミノ酸は、少なくとも5、10、15、20、または25のアミノ酸位置、またはそれ以上の間隔で互いに離れて空間的に位置する。
【0222】
ある実施形態においては、置換は、野生型Fc部分を含むFc領域によって与えられた少なくとも1つのエフェクタ機能の変化(例えば、Fc受容体(例えば、FcγRI、FcγRII、もしくはFcγRIII)、または補体タンパク質(例えば、C1q)に結合する、または抗体依存性細胞毒性(ADCC)、食作用、もしくは補体依存性細胞毒性(CDC)を誘引するFc領域の能力の低下)を与える。」
甲2i
「【0229】
B.エフェクタ無しFcポリペプチド
ある実施形態においては、親Fcポリペプチドは、変化したまたは低下したエフェクタ機能を有する「エフェクタ無し」Fcポリペプチドである。好ましくは、低下した、または変化したエフェクタ機能は、抗原依存性エフェクタ機能である。例えば、親Fcポリペプチドは、例えば、野生型Fcポリペプチドと比較して、ポリペプチドの抗原依存性エフェクタ機能、特に、ADCCまたは補体活性化を低下させる配列変異(例えば、アミノ酸置換)を含むことができる。残念なことに、そのような親Fcポリペプチドは、しばしば、本発明の方法に従って安定化に対して理想的な候補にする低下した安定性を有する。
【0230】
低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチドは、エフェクタ機能を低下させることが見込まれ、そのような分子も、標的細胞破壊が望ましくない状態、例えば、正常細胞が標的分子を発現する場合、またはポリペプチドの慢性投与によって好ましくない免疫系活性化が引き起こされる可能性がある場合の治療に有用である。一実施形態においては、Fcポリペプチドは、野生型Fc領域を含むFcポリペプチドと比較して、オプソニン化、食作用、補体依存性細胞毒性、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、またはエフェクタ細胞改変からなる群から選択される少なくとも1つの抗原依存性エフェクタ機能の低下を示す。一実施形態においては、Fcポリペプチドは、FcγR(例えば、FcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa)への変化した結合を示す。別の実施形態においては、Fcポリペプチドは、阻害性FcγR(例えば、FcγRIIb)への変化した結合親和性を示す。他の実施形態においては、低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチド(例えば、低下したFcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa結合親和性)は、以下の位置の1つまたはそれ以上に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。234、236、239、241、251、252、261、265、268、293、294、296、298、299、301、326、328、332、334、338、376、378、および435(EU付番)。他の実施形態においては、低下した補体結合親和性(例えば、低下したC1q結合親和性)を有するFcポリペプチドは、以下の位置の1つまたはそれ以上に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を有するFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。239、294、296、301、328、333、および376(EU付番)。FcγRまたは補体結合活性を変化させた例示的なアミノ酸置換は、国際公開第WO05/063815号に開示され、この内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。ある好ましい実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、以下の特定の置換の1つまたはそれ以上を含むことができる。S239D、S239E、M252T、H268D、H268E、I332D、I332E、N434A、およびN434K(すなわち、抗体Fc領域におけるこれらのEU付番位置の1つまたはそれ以上に対応するアミノ酸位置にあるこれらの置換の1つまたはそれ以上)。
【0231】
ある例示的な実施形態においては、親「エフェクタ無し」ポリペプチドのエフェクタ機能は、親Fcポリペプチド内の非グリコシル化されたFc領域により変化または低下させることができる。ある実施形態においては、非グリコシル化Fc領域は、Fc領域のグリコシル化を変化させるアミノ酸置換によって生成される。例えば、Fc領域内のEU位置297のアスパラギンは、そのグリコシル化を阻害するために、(例えば、置換、挿入、欠失によって、または化学修飾によって)変化させることができる。別の例示的な実施形態においては、EU位置299のアミノ酸残基(例えば、トレオニン(T))を、(例えば、アラニン(A))で置換し、隣接する残基297のグリコシル化を低下させる。グリコシル化を低下するまたは変化させる例示的なアミノ酸置換は、国際公開第WO05/018572号および米国特許公開第2007/0111281号に開示され、この内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。他の実施形態においては、非グリコシル化Fc領域は、Fc領域をグリコシル化することができない宿主細胞(例えば、減少したグリコシル化機構を有する細菌性宿主細胞または哺乳類宿主細胞)における、オリゴ糖の酵素的もしくは化学的除去、またはFcポリペプチドの発現によって生成される。
【0232】
ある実施形態においては、非グリコシル化Fc領域は、部分的に、非グリコシル化またはヘミグリコシル化である。例えば、Fc領域は、第1のグリコシル化Fc部分(例えば、グリコシル化されたCH2領域)および第2の非グリコシル化Fc部分(例えば、非グリコシル化されたCH2領域)を含むことができる。他の実施形態においては、Fc領域は、完全に非グリコシル化である場合があり、すなわち、そのFc部分で、グリコシル化されるものはない。
【0233】
「エフェクタ無し」ポリペプチドの非グリコシル化Fc領域は、任意のIgGイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のものであり得る。例示的な一実施形態においては、親Fcポリペプチドは、「agly IgG4.P」等のIgG4抗体の非グリコシル化Fc領域を含むことができる。Agly IgG4.Pは、非グリコシル化Fc領域を産生するための、ヒンジ領域においてプロリン置換(Ser228Pro)、およびCH2ドメインにおいてThr299Ala変異(EU付番)を含むIgG4抗体の操作型である。Agly IgG4.Pは、インビトロで測定可能な免疫エフェクタ機能がないことを示している。別の例示的な実施形態においては、親Fcポリペプチドは、「agly IgG1」等のIgG1抗体の非グリコシル化Fc領域を含む。Agly IgG1は、低エフェクタ機能プロファイルを与えるThr299Ala変異(EU付番)を有するIgG免疫グロブリンIgG1の非グリコシル化型である。agly IgG4.Pおよびagly IgG1抗体は共に、免疫エフェクタ機能が望ましくない治療試薬の重要なクラスを示す。
【0234】
ある例示的な実施形態においては、「エフェクタ無し」親Fcポリペプチドは、IgG4抗体に由来するFc領域を含む。IgG4 Fc領域は、野生型Fc領域と同一であり得るか、または野生型IgG4配列への1つまたはそれ以上の修飾を有し得る。そのようなIgG4様Fcポリペプチドは、補体および/またはFc受容体に結合するIgG4抗体の本質的に低下した能力の結果として、低下したエフェクタ機能を有する。IgG4イソタイプの親Fcポリペプチドは、グリコシル化されるか、または非グリコシル化であるかのいずかであり得る。さらに、IgG4様FcポリペプチドのFc領域は、IgG4抗体の完全Fc部分を含むことができるか、またはFc部分の一部は、IgG4抗体からのものであり、その残りは、別のイソタイプの抗体からのものである、キメラFc部分を含むことができる。例示的な一実施形態においては、キメラFc部分は、IgG1抗体からのCH3ドメインおよびIgG4抗体からのCH2ドメインを含む。別の実施形態においては、IgG4抗体は、キメラヒンジを含み、ヒンジ領域における、プロリン置換(Ser228Pro)の結果として、上部および下部ヒンジドメインは、IgG4抗体からのものであるが、中部ヒンジドメインは、IgG1抗体からのものである。さらに別の実施形態においては、親キメラキメラIgG4抗体は、キメラヒンジを含み、ヒンジ領域、IgG1またはIgG4抗体からのCH1ドメイン、IgG4抗体からのCH2ドメイン(または位置292~340、EU付番)、およびIgG1抗体からのCH1CH3ドメインにおける、プロリン置換(Ser228Pro)の結果として、上部および下部ヒンジドメインは、IgG4抗体からのものであるが、中部ヒンジドメインは、IgG1抗体からのものである。
【0235】
ある実施形態においては、「エフェクタ無し」Fcポリペプチドの低下したエフェクタ機能は、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、および/またはFcγRIIIb受容体等のFc受容体(FcR)、または補体タンパク質、例えば、補体タンパク質C1qへの低下した結合である。結合のこの変化は、約1倍以上、例えば、約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、50倍、または100倍以上、またはその任意の間隔もしくは範囲の倍数であり得る。エフェクタ機能、例えば、Fc受容体または補体タンパク質へのFc結合におけるこれらの低下は、例えば、本明細書において記載されるアッセイまたは当技術分野で周知のアッセイを用いて決定される結合活性の低下の割合に基づいて容易に計算される。」
甲2j
「【0390】
III. 多特異性結合ポリペプチドs
ある特定の態様においては、本発明の結合ポリペプチドは、多特異性であり、すなわち、分子の第1の分子またはエピトープに結合する少なくとも1つの結合部位、および第2の分子または第1の分子の第2のエピトープに結合する少なくとも1つの第2の結合部位を有する。本発明の多特異性結合分子は、少なくとも2つの結合部位を含むことができ、結合部位の少なくとも1つは、上述の結合分子の1つからの結合部位に由来するか、またはそれを含む。ある実施形態においては、本発明の多特異性結合分子の少なくとも1つの結合部位は、抗体の抗原結合領域、またはその抗原結合断片(例えば、上述の抗体または抗原結合断片)である。
【0391】
(a)二重特異性分子
一実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、二重特異性である。二重特異性結合ポリペプチドは、例えば、同じ標的分子または異なる標的分子上の2つの異なる標的部位に結合することができる。例えば、本発明の結合ポリペプチドの場合、その二重特異性変異体は、例えば、同じ抗原または2つの異なる抗原上の2つの異なるエピトープに結合することができる。二重特異性結合ポリペプチドは、例えば、診断的および治療的用途において使用することができる。例えば、それらは、免疫アッセイにおける使用で酵素を固定するために使用することができる。それらは、例えば、腫瘍関連分子および検出可能なマーカー(例えば、放射性核種に強固に結合するキレート剤)の両方に結合することによって、癌の診断および治療においても使用することができる。二重特異性結合ポリペプチドは、例えば、細胞毒性を特定の標的へ誘導することによって(例えば、病原体または腫瘍細胞、およびT細胞受容体またはFcγ受容体等の細胞毒性誘引分子に結合することによって)、ヒトの治療のために使用することもできる。二重特異性結合ポリペプチドは、例えば、線維素溶解剤またはワクチンアジュバントとして使用することもできる。
【0392】
二重特異性結合ポリペプチドの例には、異なる腫瘍細胞抗原に対する少なくとも2つのアームを有する二重特異性結合ポリペプチド、腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する二重特異性の変化した結合タンパク質(抗Fc.ガンマ.RI/抗CD15、抗p185.sup.HER2/Fc.ガンマ.RIII(CD16)、抗CD3/抗悪性B細胞(1D10)、抗CD3/抗p185.sup.HER2、抗CD3/抗p97、抗CD3/抗腎細胞癌、抗CD3/抗OVCAR-3、抗CD3/L-D1(抗結腸癌)、抗CD3/抗メラニン細胞刺激ホルモン類似体、抗EGF受容体/抗CD3、抗CD3/抗CAMA1、抗CD3/抗CD19、抗CD3/MoV18、抗神経系細胞接着分子(NCAM)/抗CD3、抗葉酸結合タンパク質(FBP)/抗CD3、抗膵臓癌関連抗原(AMOC-31)/抗CD3等)、腫瘍抗原に特異的に結合する少なくとも1つのアーム、および毒素に結合する少なくとも1つのアームを有する二重特異性結合ポリペプチド(抗サポリン/抗Id-1、抗CD22/抗サポリン、抗CD7/抗サポリン、抗CD38/抗サポリン、抗CEA/抗リシンA鎖、抗インターフェロン-.アルファ.(IFN-.アルファ.)/抗ハイブリドーマイディオタイプ、抗CEA/抗ビンカアルカロイド等)、酵素活性プロドラッグを変換するための二重特異性結合ポリペプチド(抗CD30/抗アルカリホスファターゼ(マイトマイシンアルコールへのマイトマイシンリン酸塩プロドラッグの変換を触媒する)等)、線維素溶解剤として使用することができる二重特異性結合ポリペプチド(抗フィブリン/抗組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、抗フィブリン/抗ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA)等)、細胞表面受容体への免疫複合体を標的とするための二重特異性結合ポリペプチド(抗低比重リポタンパク質(LDL)/抗Fc受容体(例えば、Fc.ガンマ.RI、Fc.ガンマ.RII、またはFc.ガンマ.RIII)等)、感染病の治療において使用するための二重特異性結合ポリペプチド(抗CD3/抗単純ヘルペスウイルス(HSV)、抗T細胞受容体:CD3複合体/抗インフルエンザ、抗Fc.ガンマ.R/抗HIV等)、インビトロまたはインビボにおける腫瘍検出のための二重特異性結合ポリペプチド(抗CEA/抗EOTUBE、抗CEA/抗DPTA、抗p185HER2/抗ハプテン)、ワクチンアジュバントとしての二重特異性結合ポリペプチド(上述のFangerらを参照)、および診断ツールとしての二重特異性結合ポリペプチド(抗ウサギIgG/抗フェリチン、抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)/抗ホルモン、抗ソマトスタチン/拮抗物質P、抗HRP/抗FITC、抗CEA/抗.ベータ.-ガラクトシダーゼ(上述のNolanらを参照)等)が含まれる。三重特異性ポリペプチドの例には、抗CD3/抗CD4/抗CD37、抗CD3/抗CD5/抗CD37、および抗CD3/抗CD8/抗CD37が含まれる。」
甲2k
「【0441】
X.予防、診断、および治療方法
本発明はまた、とりわけ、例えば、治療抗体を用いて抗原に結合するが、エフェクタ機能を誘引するのを避けることが望ましい場合の疾患を含む、疾病の予後診断、診断、または処置のために適切な安定化Fcポリペプチドの使用を対象とする。
【0442】
したがって、ある実施形態においては、本発明の変異体Fcポリペプチドは、例えば、糸球体腎炎、強皮症、肝硬変、多発硬化症、ループス腎炎、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、またはリウマチ性関節炎を含む免疫障害の予防または処置において有用である。別の実施形態においては、本発明の変異体Fcポリペプチドは、アルツハイマー病、重度の喘息、アトピー皮膚炎、悪液質、CHF虚血、冠動脈再狭窄、クローン病、糖尿病性腎症、リンパ腫、乾癬、放射線誘導線維症、若年性関節炎、脳卒中、外傷によってもたらされた脳または中枢神経系の炎症、および潰瘍性大腸炎を含む炎症障害が挙げられるが、これらに限定されない、炎症性疾患を処置または予防するために使用することができる。
【0443】
本発明の変異体Fcポリペプチドを用いて予防または処置することができる他の炎症性障害には、角膜移植、慢性閉塞性肺疾患、肝炎C、多発骨髄腫、および変形性関節症に起因する炎症が含まれる。
【0444】
別の実施形態においては、本発明の変異体Fcポリペプチドは、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、カポジ肉腫、黒色腫、卵巣癌、小細胞肺癌、胃癌、白血病/リンパ腫、および多発骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない、新生組織形成を予防または治療するために使用することができる。さらなる新生組織形成の病状は、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、非扁平細胞肺癌、および前立腺癌を含む。」
甲2l
「【実施例】
【0474】
実施例を通して、特に明記しない限り、以下の材料および方法を使用した。
【0475】
材料および方法
一般的に、本発明の実施は、特に示さない限り、化学、分子生物学、組み換えDNA技術、免疫学(特に、例えば、抗体テクノロジー)の従来の手法、および電気泳動における標準の手法を使用する。例えば、Sambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology),510,Paul,S.,Humana Pr(1996)、Antibody Engineering:A Practical Approach(Practical Approach Series,169),McCafferty,Ed.,Irl Pr(1996)、Antibodies: A Laboratory Manual,Harlow et al.,C.S.H.L.Press,Pub.(1999)、およびCurrent Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.,John Wiley & Sons(1992)を参照のこと。
【0476】
親抗体
本発明の安定化抗体を産生するために、モデルヒト抗体(例えば、hu5c8)、その変異体抗体、あるいは対応するFc領域のいずれかをコードするポリヌクレオチドを、標準的な発現ベクターに導入した。ヒト抗体hu5c8およびその変異型は、例えば、米国特許第5,474,771号および同第6,331,615号に記載されている。アミノ酸配列は、それぞれ、hu5c8 IgG4重鎖(配列番号37)、hu5c8軽鎖(配列番号38)、hu5c8 Fab(配列番号39)、親IgG4抗体(配列番号40)からの完全Fc部分、S228P変異を有する親IgG4 Fc部分(配列番号41)、およびS228P/T299A変異を有する親非グリコシル化IgG4 Fc部分(配列番号42)に対して、以下に提供される。重鎖に対するリーダー配列は、MDWTWRVFCLLAVAPGAHSであった。また、親IgG1非グリコシル化されたhu5c8抗体の重鎖(配列番号43)およびFc部分(配列番号44)配列も提供される。
【0477】
Hu5c8 IgG4重鎖(EAG1807)(配列番号37)
Q V Q L V Q S G A E V V K P G A S V K L S C K A S G Y I F T S Y Y M Y W V K Q A P G Q G L E W I G E I N P S N G D T N F N E K F K S K A T L T V D K S A S T A Y M E L S S L R S E D T A V Y Y C T R S D G R N D M D S W G Q G T L V T V S S A S T K G P S V F P L A P C S R S T S E S T A A L G C L V K D Y F P E P V T V S W N S G A L T S G V H T F P A V L Q S S G L Y S L S S V V T V P S S S L G T K T Y T C N V D H K P S N T K V D K R V E S K Y G P P C P P C P A P E F L G G P S V F L F P P K P K D T L M I S R T P E V T C V V V D V S Q E D P E V Q F N W Y V D G V E V H N A K T K P R E E Q F N S T Y R V V S V L T V L H Q D W L N G K E Y K C K V S N K G L P S S I E K T I S K A K G Q P R E P Q V Y T L P P S Q E E M T K N Q V S L T C L V K G F Y P S D I A V E W E S N G Q P E N N Y K T T P P V L D S D G S F F L Y S R L T V D K S R W Q E G N V F S C S V M H E A L H N H Y T Q K S L S L S L G
Hu5c8軽鎖(配列番号38)
DIVLTQSPATLSVSPGERATISCRASQRVSSSTYSYMHWYQQKPGQPPKLLIKYASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLTISSVEPEDFATYYCQHSWEIPPTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
Hu5c8 VH/CH1ドメイン(配列番号39)
Q V Q L V Q S G A E V V K P G A S V K L S C K A S G Y I F T S Y Y M Y W V K Q A P G Q G L E W I G E I N P S N G D T N F N E K F K S K A T L T V D K S A S T A Y M E L S S L R S E D T A V Y Y C T R S D G R N D M D S W G Q G T L V T V S S A S T K G P S V F P L A P C S R S T S E S T A A L G C L V K D Y F P E P V T V S W N S G A L T S G V H T F P A V L Q S S G L Y S L S S V V T V P S S S L G T K T Y T C N V D H K P S N T K V D K R V
親IgG4 Fc部分(配列番号40)
E S K Y G P P C P S C P A P E F L G G P S V F L F P P K P K D T L M I S R T P E V T C V V V D V S Q E D P E V Q F N W Y V D G V E V H N A K T K P R E E Q F N S T Y R V V S V L T V L H Q D W L N G K E Y K C K V S N K G L P S S I E K T I S K A K G Q P R E P Q V Y T L P P S Q E E M T K N Q V S L T C L V K G F Y P S D I A V E W E S N G Q P E N N Y K T T P P V L D S D G S F F L Y S R L T V D K S R W Q E G N V F S C S V M H E A L H N H Y T Q K S L S L S L G
S228P変異を有する親IgG4 Fc部分(配列番号41)
E S K Y G P P C P P C P A P E F L G G P S V F L F P P K P K D T L M I S R T P E V T C V V V D V S Q E D P E V Q F N W Y V D G V E V H N A K T K P R E E Q F N S T Y R V V S V L T V L H Q D W L N G K E Y K C K V S N K G L P S S I E K T I S K A K G Q P R E P Q V Y T L P P S Q E E M T K N Q V S L T C L V K G F Y P S D I A V E W E S N G Q P E N N Y K T T P P V L D S D G S F F L Y S R L T V D K S R W Q E G N V F S C S V M H E A L H N H Y T Q K S L S L S L G
S228P/T299A変異(YC407)を有する親IgG4非グリコシル化されたFc部分(配列番号42)
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSAYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
親IgG1非グリコシル化されたFc部分(配列番号43)
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSAYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
S228P/N297Q変異(EAG2412)を有する親IgG4非グリコシル化されたFc(配列番号44)
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSP
親IgG1(配列番号45)
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG」
甲2m
「【0502】
・・・
実施例3.安定化IgG Fc抗体の産生
A.大腸菌における、安定化IgG Fc部分の変異生成、一時的発現、および精製
安定性変異を、Stratagene Quik-Change Lightning変異生成キットを用いた部位特異的突然変異誘発法によって、実施例2に既に詳述されるBRM13構造体に組み込んだ。1つまたはそれ以上のC/G塩基中で開始し、終結する、少なくとも40%GC含量の両側に10~15塩基の正しい配列を有する中央に変異を有する36~40塩基長のプライマーを設計した。全ての変異構造体を下の表3.1に列記する。
・・・
【0507】
B.CHO細胞における、安定化抗体の変異生成、一時的発現、抗体精製、および特性解析
安定性変異は、Stratagene Quik-Change Lightning変異生成キットを用いた部位特異的突然変異誘発法によって、IgG4.P抗体(アミノ酸228にプロリンヒンジ変異を既に含むVH構造体)に組み込まれた。Fabを認識する抗原は、抗CD40抗体5c8からのものであった。1つまたはそれ以上のC/G塩基中で開始し、終結する、少なくとも40%GC含量の両側に10~15塩基の正しい配列を有する中央に変異を有する36~40塩基長のプライマーを設計した。全てのグリコシル化および非グリコシル化された変異構造体を、表3.2に列記する。
【0508】
【表10-1】
[図:0001416840000001.jpg]
【0509】
【表10-2】
[図:0001416840000002.jpg]
変異を導入するプライマーを用いたPCR後、親プラスミドを完全に消化するために、37℃で5分間、DpnI制限酵素を加えて、各変異生成物を消化させた。次いで、変異生成反応物を、XL10-Gold大腸菌超形質転換受容性細胞に形質転換した。アンピシリン耐性コロニーをスクリーニングし、DNA塩基配列決定法を用いて、変異生成反応物からの正しい配列を確認した。・・・」
甲2n
「【0541】
実施例6.安定性を操作したIgG Fc抗体のFc受容体結合
本発明の非グリコシル化された変異体抗体のエフェクタ機能を、Fc受容体またはC1q等の補体分子に結合するそれらの能力によって特徴付けた。
【0542】
A.液相競合Biacore実験
Fcγ受容体への結合は、溶液親和性の表面プラズモン共鳴を用いて分析された(Day ES,Cachero TG,Qian F,Sun Y,Wen D,Pelletier M,Hsu YM,Whitty A.Selectivity of BAFF/BLyS and APRIL for binding to the TNF family receptors BAFFR/BR3 and BCMA.Biochemistry.2005 Feb 15;44(6):1919-31を参照)。本方法は、リガンド結合(センサーチップに結合するタンパク質結合)の初期速度は、溶液中のリガンドの濃度に比例する、いわゆる「物質移動限界」結合の条件を使用する(BIApplications Handbook(1994)Chapter6:Concentration measurement,pp6-1-6-10,Pharmacia Biosensor ABを参照)。これらの条件下で、チップ上の固定化したタンパク質への可溶性検体(チップ表面上を流れるタンパク質)の結合は、チップ表面上のデキストランマトリックスへの検体の拡散と比較して速い。したがって、検体の拡散特性およびチップ表面上を流れる溶液中の検体の濃度は、検体がチップに結合する速度を決定する。この実験においては、溶液中の遊離Fc受容体の濃度は、固定化IgG1 MAbを含むCM5 Biacoreチップに結合する初期速度によって決定される。これらのFc受容体溶液に、安定性を操作した構造体を滴定した(下の表6.1を参照)。これらの構造体の半最大(50%)抑制濃度(IC50)は、センサーチップの表面上に固定化した固定化IgG1抗体に結合することからFc受容体を抑制する能力によって示された。初期結合速度は、センサーグラム生データから得られた(図5)。IC50を計算するために使用された滴定曲線をCD64(FcγRI)については図6AおよびCD16(FcγRIIIa V158)については図6Bに示す。結果を表6.1に示し、2つの滴定の平均として報告する。
【0543】
【表7】
[図:0001416840000003.jpg]
CD64結合アッセイにおいては、IgG1対照抗体は、9.6μMのIC50を有したが、IgG1T299A(agly)およびIgG4.PT299A(agly)は、それぞれ、205μMおよび739μMのIC50を有した。予想通りに、IgG1分子は、IgG4分子よりもCD64に対してより大きな親和性を有し、非グリコシル化されたIgG1は、グリコシル化されたIgG1と比較して低下した親和性を示した。安定性を操作したグリコシル化されたIgG4.P分子(EC300およびEC326)は、440μMから5000μMを超える範囲に及ぶ安定性を操作した非グリコシル化されたIgG4.P分子(EC331およびYC400シリーズ)と比較して、約8μMのIC50値を有した。安定性を操作したIgG4.Pグリコシル化された分子(EC300、EC326)に対するIC50は、グリコシル化されたIgG1対照と同等であり、T299A(YC401、YC403)を有する安定性を操作した非グリコシル化されたIgG4.Pは、非グリコシル化されたIgG4.PT299A対照と同等のIC50の対数を有した。しかしながら、T299Kを有する安定性を操作した非グリコシル化されたIgG4.Pは、T299A置換を有する等価分子と比較して、親和性の1から2対数大きい低下を示した。図7A。また、この結果は、非グリコシル化されたIgG1T299A対照と比較して、親和性の対数低下を示した安定性を操作した非グリコシル化されたIgG1T299K(CN578)についても観測された(図7B)。実際、T299K置換は、非グリコシル化されたIgG4.PT299A対照よりもCD64に対してより大きな親和性を有することから、非グリコシル化されたIgG4.P対照と比較して、非グリコシル化されたIgG1(T299K)に対して低下した親和性を有することへと、非グリコシル化されたIgG1(T299A)分子を転換する(図7B)。簡潔に言えば、T299K変異は、IgG1分子およびIgG4分子の両方において、CD64に対する親和性を低下させる。
【0544】
CD16アッセイについては、IgG1対照は、105μMのIC50を有したが、非グリコシル化されたIgG4.P T299AおよびIgG1 T299Aは共に、1000μMを超えるIC50値を有した。グリコシル化された安定性を操作したIgG4.P分子は、IgG1対照に対して同等の対数IC50値を有し、全ての安定性を操作した非グリコシル化された分子(IgG4.PおよびIgG1の両方)は、1000μMを超えるIC50値を有した。T299Kが、CD16対する親和性をさらに低下したかどうかを調査するために、唯一の差異(YC401、YC404、YC403、およびYC406)としてT299K置換を有する2セットの構造体を高濃度の抗体(5μM)で試験した。結合曲線は、高濃度で、T299K変異によって生じるCD16に対する親和性の低下を示す(図8)。簡潔に言えば、T299K変異は、IgG分子において、CD16に対する親和性を低下させる。」
甲2o
「【0549】
実施例8.IgG1 CH3は、エフェクタ機能がなく、非グリコシル化されたIgG4 CH2を安定する。
【0550】
5c8抗体に由来する項に記載されるタンパク質は、特に示さない限り、IgG4からのCH1領域、IgG4からのCH2ドメイン、およびIgG1またはIgG4抗体からのCH3ドメイン(示されるように)を含む。実施例3に記載されるように、タンパク質を産生し、精製した。修飾抗体のCH2およびCH3ドメインの熱安定性は、pH 6.0およびpH4.5で、DSCによって測定された(実施例4に詳述)。撹拌ストレスの効果は、分析SECによって、およびA320nmでの濁度測定(実施例5)によって測定された。本発明の非グリコシル化された変異体抗体のエフェクタ機能は、Fc受容体またはC1q等の補体分子に結合するそれらの能力によって特徴付けられた。Fcγ受容体への結合は、溶液親和性の表面プラズモン共鳴を用いて分析され、補体因子C1qへの結合は、ELISAによって分析された(実施例6)。最終的に、血清半減期は、Sprague-Dawleyラットにおいて行われる薬物動態学的試験によって決定された(実施例7)。
【0551】
IgG4-CH2/ IgG1-CH3の非グリコシル化された構造体は、実施例3に詳述されるように、1リットルの培養液当たり7から30 mgの収量を有するCHOにおいて発現した。IgG1-CH3の導入は、IgG4からのCH3を有する同じ構造体と比較して、より大きい収量(約1.5倍)を与えると思われる(表8.1)。さらに、IgG1非グリコシルIgG4-CH2/IgG1-CH3は、野生型非グリコシルIgG4のCH3ドメインの安定性(Tm=74℃、表8.2および4.2)と比較して、CH3ドメインにおいて増加した熱安定性(Tm=85℃)を有した。興味深い観察は、IgG1 CH3が、撹拌安定性の決定特性である(表8.3)ということである。なぜなら、CH2ドメインにおけるグリカンの欠如が、安定性において重要因子であるとこれまで考えられていたからである。
【0552】
EAG2412構造体(N297Q IgG4-CH2/IgG1-、すなわち、N297QおよびSer228Pro置換を有する5c8可変領域(IgG1フレームワーク)、IgG4 CH1、IgG4 CH2、IgG1 CH3)は、T299AおよびT299K IgG4-CH2/IgG1-CH3と比較して、CD64およびCD32に対して最低結合を有する、良好なエフェクタ機能プロファイルを示すことが観察される。IgG1-CH3は、Fcγ受容体に結合する効果がないことが見出された。非グリコシルIgG4-CH2ドメインを含有する構造体は全て、C1qに結合しない。
・・・
【0556】
【表18-2】
[図:0001416840000004.jpg]
」
甲2p
「実施例9.T299は、安定性およびエフェクタ機能の決定因子である。
【0557】
本項に記載されるタンパク質は全て、5c8抗体に由来し、特に示さない限り、IgG1抗体のCH1、CH2、およびCH3ドメインを含む。実施例3に記載されるように、タンパク質を産生し、精製した。CH2およびCH3ドメインの融解温度における変異の効果は、pH6.0およびpH4.5で、DSCによって測定された(実施例4に詳述)。本発明の非グリコシル化された変異体抗体のエフェクタ機能は、Fc受容体またはC1q等の補体分子に結合するそれらの能力によって特徴付けられた。Fcγ受容体への結合は、溶液親和性の表面プラズモン共鳴を用いて分析され、補体因子C1qへの結合は、ELISAによって分析された(実施例6)。
【0558】
IgG1 T299XおよびN297X/T299Kの非グリコシル化された構造体は、実施例3に詳述されるように、1リットルの培養液当たり7から30mgの収量を有するCHOにおいて発現した(表9.1)。T299Kと組み合わせて位置N297における第2の変異への添加により、1.5~4.4℃で、CH2ドメインの熱安定性は減少しなかった(表9.2)。さらに、T299X変異は、Arg(T299R)およびLys(T299K)の正電荷を持つ側鎖から最大の安定性の増加を示した(表9.2)。2つの極性側鎖のAsn(T299N)およびGln(T299Q)は共に、正電荷を持つ側鎖ほど大きくはないが、T299Aと比較して、より大きな安定性を示した。プロリン(T299P)は、T299Aと比較して安定性のわずかな低下を示し、より大きな疎水性側鎖Phe(T299F)は、2.4℃で、CH2ドメインの熱安定性を低下させた。最後に、負電荷を持つ側鎖Glu(T299E)は、CH2の熱安定性に対してほとんど効果を及ぼさなかった。これらの結果は、CH2ドメインにおける熱安定性を増加させるために、位置T299に正電荷を持つ側鎖を置換する新規の特性を示す。
【0559】
N297X、T299K変異(CN645、CN646、およびCN647)は全て、CD64に対する親和性を若干増加させたが、CD32aおよびCD16に対する非常に低い親和性を維持することが観察される(図11B、11D、および11F)。T299X変異は、CD16に対して一貫して低親和性を示したが、CD32aに対する低親和性は、T299Eの場合には、増加した(表9.3および図11C、9E)。また、正電荷を持つ側鎖T299RおよびT299Kのみが、CD64に対して低親和性を与えることを示すことも興味深い(表9.3および図11A)。最後に、T299K、T299P、およびT299Qは、C1q結合の痕跡がなく、T299N、T299E、T299Fは、若干上昇したが、それでも非常に低いC1qへの結合を示す(図11Gおよび11H)。N297P/T299K、N297D/T299K、およびN297S/T299Kは、C1qへの結合を示さない(図11H)。
【0560】
【表19-1】
[図:0001416840000005.jpg]
【0561】
【表19-2】
[図:0001416840000006.jpg]
」
甲2q
「実施例10.安定化Fc構造体は、安定性変異の適用は、Fabから独立していることを示す
本項に記載されるタンパク質は、5c8抗体に由来する結合部位を含む。EAG2476構造体は、IgG4免疫グロブリン分子からのFc部分を含み、EAG2478は、IgG1分子からのFc部分を含む(EAG2476およびEAG2478は、それぞれ、YC406およびCN578構造体のFc版(Fabなし)である)。
【0562】
実施例3に記載されるように、タンパク質を産生し、精製した。CH2およびCH3ドメインの融解温度における変異の効果は、pH6.0で、DSCによって測定された(実施例4に詳述)。本発明の非グリコシル化された変異抗体のエフェクタ機能を図12に示す。抗体は、Fc受容体に結合するそれらの能力によって特徴付けられた。Fcγ受容体への結合は、溶液親和性の表面プラズモン共鳴を用いて分析された(実施例6)。
【0563】
安定化Fc非グリコシル化された構造体は、実施例3に詳述されるようにCHOにおいて発現され、収量は(表10.1)に詳述する。。CH2ドメイン(T299K、T307P、およびL309K)における変異は、Fabの存在または不在下で、同じ熱安定性を示し(表10.2)、ならびに、同じFcγ受容体結合親和性を有した(表10.3)。総合すれば、本発明に詳述される安定化変異は、予想通りに、Fabから独立しており、Fabが貢献しているどうかにかかわらず、Fcドメインを安定化するのに適用可能である。
【0564】
【表20】
[図:0001416840000007.jpg]
」
甲2r
「
[図:0001416840000008.jpg]
」
3 甲3の記載事項
甲3(国際公開第2009/011941号)には、以下の事項が記載されている。なお、甲3は英文で記載されているため、請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用する。
「低下したFcγR結合親和活性を有するFc欠失変異体の構成物
ここで開示した欠失した配列の周りの配列を含むIgGサブタイプ1-4の配列アライメントは図1に示される。
ここで開示された欠失変異体は、Fc領域のCH2ドメインのN末端における約9アミノ酸(231位あたりから239位あたり)の欠失を有する。」(第18頁第3~8行)
4 甲4の記載事項
甲4(J. Rheumatol., 2007, Vol. 34: 11, pp. 2204-2210)には、以下の事項が記載されている。なお、甲4は英文で記載されているため、請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用する。
「アバタセプトはヒト免疫グロブリンG1(IgG1)の修飾されたFc(ヒンジ、CH2、及びCH3ドメイン)部分に結合されたヒトCTLA4の細胞外ドメインからなる遺伝子組み換え融合タンパク質である。
・・・
しかしながら、アバタセプトにおいては、タンパク質生産を改善し、Fc媒介結合を減少させてCDCやADCCのようなヒトIgG1重鎖の結合と通常は関連する効果を抑止するために、ヒンジ領域での一連の誘導された、選択された変異が導入された。アバタセプトにおける変異はIgG1定常領域のアミノ酸位置130、136、及び139でのシステインのセリンへの置換を含む(図1)。」(第2204頁右欄第3~6行、同欄第16~24行)
5 甲5の記載事項
甲5(Hum. Antibod. Hybridomas, 1990, Vol. 1, No. 1, pp. 47-54)には、以下の事項が記載されている。なお、甲5は英文で記載されているため、請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用する。
「システインからセリンへのヒンジ領域変異抗体は、通常の、又はわずかに減少した抗原結合活性、大いに減少したADCC活性、及び減少はしているが相当なCDCを媒介する能力を有していた。」(第47頁「要約」の第7~9行)
6 甲6の記載事項
甲6(Blood, 2007, Vol. 109, No. 3, pp. 1185-1192)には、以下の事項が記載されている。なお、甲6は英文で記載されているため、請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用する。
「1F6のVHおよびVL配列、ヒトCκ、及びヒトIgG1アイソタイプに基づく組換え抗CD70(c1F6)が構築された。重鎖において、C226S:C229S:E233P:L234V:L235Aのアミノ酸置換を行い、崩壊したFcγR結合及び機能活性の喪失を示すc1F6変異体(c1F6v)を作製した。」(第1186頁左欄下から第18~15行)
7 甲7の記載事項
甲7(J. Biol. Chem., 2001, Vol. 276, No. 9, pp. 6591-6604)には、以下の事項が記載されている。なお、甲7は英文で記載されているため、請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用する。
「
[図:0001416840000009.jpg]
」
(第6585頁のTable1)
8 甲8の記載事項
甲8(国際公開第2008/119567号)には、以下の事項が記載されている。なお、甲8は英文で記載されているため、甲8aについては、請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用し、甲8bについては、甲8のパテントファミリーの公表公報である特表2010-524851号公報の記載事項を翻訳文として使用する。また、下線は当審で付したものである。
甲8a
「【請求項1】
ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε(イプシロン)鎖のエピトープと結合する能力を有する結合ドメインを含むポリペプチドであって、該エピトープが、配列番号2、4、6、又は8からなる群に含まれるアミノ酸配列の一部である、ポリペプチド。
【請求項2】
前記のヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε(イプシロン)鎖のエピトープと結合する能力を有する結合ドメインが、ヒト由来である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
ヒト及び非チンパンジー霊長類CD3ε(イプシロン)鎖のエピトープと結合する能力を有する第一の結合ドメイン、並びに細胞表面抗原と結合する能力を有する第二の結合ドメインを含む、
請求項1乃至2のいずれか1項に記載のポリペプチド。
・・・
【請求項13】
前記のポリペプチドが二重特異性単鎖抗体分子である、請求項3乃至12のいずれか1項に記載のポリペプチド。」(第248頁第2行~12行、第251頁第8~9行)
甲8b
「当分野に記載されている多くのCD3抗体がCD3複合体のCD3イプシロンサブユニットを認識すると報告されているが、それらのほとんどは、実際は、立体配座エピトープに結合しており、そのためTCRのネイティブコンテクストにおけるCD3イプシロンを認識しているのみである。立体配座エピトープは、一次配列中では分かれているがネイティブタンパク質/抗原中にポリペプチドが折り畳まれる時分子の表面で一緒になる、2つ以上の別々のアミノ酸残基の存在により特徴づけられる(Sela,(1969)Science166,1365及びLaver,(1990)Cell61,553-6)。当分野に記載されているCD3イプシロン抗体に結合される立体配座エピトープは、2つの群に分けることができる。主要な群では、前記エピトープは、2つのCD3サブユニット、例えばCD3イプシロン鎖及びCD3ガンマ鎖又はCD3デルタ鎖により形成されている。例えば、最も広く使用されているCD3イプシロンモノクローナル抗体OKT3、WT31、UCHT1、7D6及びLeu-4は、CD3イプシロン鎖により単独にトランスフェクトされた細胞には結合しなかったことが複数の研究で見出された。しかし、これらの抗体は、CD3イプシロンとCD3ガンマ又はCD3デルタの組み合わせにより二重にトランスフェクトされた細胞を染色した(Tunnacliffe,上記引用文献;Law,Int.Immunol.14(2002),389-400; Salmeron,J.Immunol.147(1991),3047-52; Coulie, Eur. J. Immunol.21(1991),1703-9)。第2のより小さな群では、立体配座エピトープは、CD3イプシロンサブユニット自体の中に形成される。この群のメンバーは、例えば変性CD3イプシロンに対して産出されたmAbAPA1/1である(Risueno,Blood106(2005),601-8)。ひとまとめにすると、当分野に記載されているCD3イプシロン抗体のほとんどは、CD3の2つ以上のサブユニット上に位置する立体配座エピトープを認識する。これらのエピトープの三次元構造を形成する別々のアミノ酸残基は、この結果、CD3イプシロンサブユニット自体の上に位置するか、CD3イプシロンサブユニットとCD3ガンマ又はCD3デルタなどの他のCD3サブユニットの上に位置することがある。」(第3頁第25行~第4頁第16行)
9 甲9の記載事項
甲9(再公表特許WO2006/106905号)には、以下の事項が記載されている。また、下線は当審で付したものである。
甲9a
「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項2】
異種多量体の会合が制御されるようにポリペプチド間の界面を形成するアミノ酸残基に変異を有する異種多量体の製造方法であって、(a)ポリペプチド間の界面を形成するアミノ酸残基をコードする核酸を、ポリペプチド間の会合が阻害されるように元の核酸から改変し、(b)宿主細胞を該核酸が発現するように培養し、(c)宿主細胞培養物から該異種多量体を回収することを含む異種多量体の製造方法。
・・・
【請求項4】
2種以上の多量体を形成し得る異種多量体において、1種以上の多量体を形成するポリペプチド間の会合が阻害されるように、ポリペプチド間の界面を形成するアミノ酸残基をコードする核酸を元の核酸から改変する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の改変が、界面を形成する2残基以上のアミノ酸残基が同種の電荷となるように該界面にアミノ酸残基の変異が導入されるように、元の核酸を改変することである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
導入されるアミノ酸残基がグルタミン酸(E)である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
導入されるアミノ酸残基がアスパラギン酸(D)である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
導入されるアミノ酸残基がリジン(K)である請求項5に記載の方法。
【請求項9】
導入されるアミノ酸残基がアルギニン(R)である請求項5に記載の方法。
【請求項10】
導入されるアミノ酸残基がヒスチジン(H)である請求項5に記載の方法。
・・・
【請求項19】
ポリペプチドの界面が、抗体の重鎖定常領域および軽鎖定常領域により形成される請求項1または2に記載の方法。
・・・
【請求項22】
異種多量体が、2種以上の重鎖可変領域と2種以上の軽鎖可変領域を含む多重特異性抗体である請求項2に記載の方法。
【請求項23】
異種多量体が、二重特異性抗体である請求項22に記載の方法。
24.請求項1または2に記載の方法により製造されるポリペプチド変異体または異種多量体。」
甲9b
「【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、各分子内または各分子間の会合の制御によるポリペプチドの製造方法、各分子内または各分子間の会合が制御されたポリペプチド、および該ポリペプチドを有効成分として含有する医薬組成物等に関する。
【0002】
抗体は血中での安定性が高く、副作用も少ないことから医薬品として注目されている。その中には二種類の抗原を同時に認識できる二重特異性抗体がある。現在、臨床試験が行なわれているMDX-210は、FcγRIを発現しているmonocyte等をHER-2/neuを発現している癌細胞にretargetingするIgG型二重特異性抗体である(非特許文献1参照)。抗体の製造は、一般的に遺伝子組み換え技術を用いることが多い。具体的には、抗体の蛋白質をコードするDNAをハイブリドーマ、抗体を産生する感作リンパ球等の抗体産生細胞、または抗体遺伝子を提示しているファージライブラリーからクローニングし、適当なベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入し産生させる技術である。遺伝子組み換え技術を用いたIgG型二重特異性抗体の製造は、目的の二種類のIgGを構成するH鎖及びL鎖の遺伝子、合計4種の遺伝子を細胞に導入し、共発現により分泌させる。このような発現において、野生型のH鎖及びL鎖の構成遺伝子を発現させた場合には、2種類のH鎖の共有結合やH鎖とL鎖の非共有結合はランダムに起こるため、目的の二重特異性抗体の比率は極めて少なくなる。具体的には、目的の二重特異性抗体は10種類中1種類のみであり、生産効率は低下してしまう。目的抗体の生産効率の低下は、目的抗体の精製の障害になるばかりでなく、ロット間差などの不均一性を増大させ、生産コストの肥大を招くことになる。
【0003】
二重特異性抗体の効率的生産に関する知見としては、IgG H鎖のCH3領域にアミノ酸置換を施すことにより、H鎖について異種な組合せのIgGを優先的に分泌させることが報告されている(特許文献1および非特許文献2および3参照)。具体的には、一方のH鎖のCH3領域に存在するアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(knob;突起)に置換し、もう一方のH鎖のCH3領域に存在するアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(hole;空隙)に置換することにより突起が空隙内に配置されえるようにして異種H鎖形成の促進および同種H鎖形成の阻害を引き起こす方法である。H鎖可変領域(以下、VH)とL鎖可変領域(以下、VL)が会合する界面に同様の”knob;突起”と”hole;空隙”を利用した知見も報告されている(非特許文献4参照)。Zheらの報告によると、VHとVLの界面に存在するアミノ酸について2種類(両鎖で4種類)を置換することにより1.28倍効率的にヘテロ分子形成が促進している(野生型;72%、改変体;92%)。また、1種類のアミノ酸置換(両鎖で2種類)では、野生型と同程度の効率となっている。しかし、VHとVLにknob(突起)とhole(空隙)を設ける方法は、ヘテロ分子の形成促進が十分とは言えない。
・・・
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みて為されたものであり、その目的は、ポリペプチドの会合を制御する方法、および、会合が制御されたポリペプチド、並びに、該ポリペプチドの製造方法を提供することにある。また本発明は、その一態様として、VHとVLの界面における会合を制御して二重特異性抗体を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。また、sc(Fv)2の一方の構造異性体を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。」
甲9c
「【0013】
・・・
【図27】H鎖定常領域を改変して二重特異性抗体の形成効率を向上させるための概念図である。改変箇所番号については、EUナンバーリング(Kabat EA et al. 1991. Sequences of Proteins of Immunological Interest.NIH)を採用した。」
甲9d
「【0097】
また、本発明の別態様として、重鎖または軽鎖の定常領域の界面に電荷的な反発を導入して、重鎖同士または重鎖と軽鎖の会合を抑制させる方法が挙げられる。重鎖定常領域の界面で接触するアミノ酸残基としては、例えばCH3領域における377位(356位)と470位(439位)、378位(357位)と393位(370位)、427位(399位)と440位(409位)に相対する領域を挙げることができる。重鎖定常領域と軽鎖定常領域の界面で接触するアミノ酸残基としては、例えばCH1領域の221位(213位)とCL領域の123位の相対する領域を挙げることができる。抗体定常領域のナンバーリングについては、Kabatらの文献(Kabat EA et al. 1991. Sequences of Proteins of Immunological Interest. NIH)を参考にし、重鎖定常領域についてはEUナンバーリングについて括弧内に表示した。
【0098】
後述の実施例で示すように、これらアミノ酸残基を改変し、本発明の方法を実施することにより、抗体の重鎖の会合を制御し、所望の抗体を優先的に取得することができる。
即ち好ましい態様において本発明は、2種以上の重鎖CH3領域を含む抗体およびFc領域結合蛋白質(例えば、IgG型抗体、minibody(Alt M et al. FEBS Letters 1999; 454: 90-94)、イムノアドヘシン(非特許文献2)等)であって、第1の重鎖CH3領域における以下の(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組から選択される1組ないし3組のアミノ酸残基が同種の電荷を有する抗体を提供する。
(1)重鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバーリングによる356位および439位のアミノ酸残基
(2)重鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバーリングによる357位および370位のアミノ酸残基
(3)重鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバーリングによる399位および409位のアミノ酸残基
【0099】
更に好ましい態様において本発明は、上記第1の重鎖CH3領域とは異なる第2の重鎖CH3領域における前記(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組から選択されるアミノ酸残基の組であって、前記第1の重鎖CH3領域において同種の電荷を有する前記(1)~(3)に示すアミノ酸残基の組に対応する1組ないし3組のアミノ酸残基が、前記第1の重鎖CH3領域における対応するアミノ酸残基とは反対の電荷を有する抗体を提供する。
[0100] 上記(1)~(3)に記載のそれぞれのアミノ酸残基は、後述の実施例および図27に示すように、会合した際に互いに接近している。当業者であれば、所望の重鎖CH3領域または重鎖定常領域について、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、上記(1)~(3)に記載のアミノ酸残基に対応する部位を見出すことができ、適宜、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。
上記抗体において、「電荷を有するアミノ酸残基」は、例えば、以下の(a)または(b)のいずれかの群に含まれるアミノ酸残基から選択されることが好ましい。
(a)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D);
(b)リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
[0101] 上記抗体において、「同種の電荷を有する」とは、例えば、2つ以上のアミノ酸残基のいずれもが、上記(a)または(b)のいずれか1の群に含まれるアミノ酸残基を有することを意味する。「反対の電荷を有する」とは、例えば、2つ以上のアミノ酸残基のなかの少なくとも1つのアミノ酸残基が、上記(a)または(b)のいずれか1の群に含まれるアミノ酸残基を有する場合に、残りのアミノ酸残基が異なる群に含まれるアミノ酸残基を有することを意味する。
好ましい態様において上記抗体は、第1の重鎖CH3領域と第2の重鎖CH3領域がジスルフィド結合により架橋されていてもよい。
本発明において「改変」に供するアミノ酸残基としては、上述した抗体の可変領域または抗体の定常領域のアミノ酸残基に限られない。当業者であれば、ポリペプチド変異体または異種多量体について、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、界面を形成するアミノ酸残基を見出すことができ、会合を制御するように、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。」
甲9e
「【0282】
〔実施例16〕ヒト化二重特異性抗体の定常領域CH3界面のアミノ酸改変
実施例15で選定されたH鎖定常領域CH3界面のアミノ酸を改変するために、以下のような操作を行った。ヒトIgG1およびヒトIgG4のH鎖定常領域遺伝子を鋳型にしてH鎖定常領域のN末端側の2アミノ酸(Ala-Ser)をコードする塩基配列がNheI認識配列(GCTAGC)になるように設計した5’末端プライマーと3’末端にアニーリングし、かつNotI認識部位を持つように設計したプライマーを用いて各H鎖定常領域をPCR増幅し、pBluescriptKS+ベクター(東洋紡)をNheI, NotI(ともに宝酒造)で消化したベクターと連結したpBCH(IgG1定常領域遺伝子を含む)およびpBCH4(IgG4定常領域遺伝子を含む)を作製した。ヒト化A69抗体およびヒト化B26抗体のH鎖可変領域の5’末端塩基配列に相補的でコザック配列(CCACC)およびEcoRI認識配列を有するプライマーとNheI認識配列を有する3’末端塩基配列にプライマーを用いてPCRを行い、得られたPCR産物をEcoRI, NheI(ともに宝酒造)で消化したpBCHまたはpBCH4に挿入して可変領域と定常領域を連結した。つづいてH鎖定常領域のCH3界面に存在するアミノ酸を改変するために、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて、添付説明書記載の方法でH鎖定常領域に変異を導入した。目的のH鎖定常領域遺伝子配列であることが確認されたH鎖遺伝子断片挿入プラスミドをEcoRIおよびNotI(ともに宝酒造)で消化した後に、反応液を1 %アガローズゲル電気泳動に供した。目的のサイズ(約1400 bp)のH鎖遺伝子断片をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて、添付説明書記載の方法で精製し、滅菌水30μlで溶出した。その後、EcoRIおよびNotIで消化したpCAGGSに挿入し、発現プラスミドを作製した。ヒト化二重特異性抗体の調製については、実施例14-3に示す方法に従った。改変したアミノ酸の箇所について表1にまとめた。表1の中の改変箇所番号については、EUナンバーリング(Kabat EA et al. 1991. Sequences of Proteins of Immunological Interest.NIH)を採用した。改変箇所番号の前のアルファベットは改変前のアミノ酸の一文字表記であり、改変箇所番号の後ろのアルファベットは改変後のアミノ酸の一文字表記を示している。
【0283】
【表1】
[図:0001416840000010.jpg]
【0284】
上記表中、KiHは非特許文献3に記載のKnobs-into-holes技術を用いた改変体を示す。」
甲9f
「
[図:0001416840000011.jpg]
」(図27)
10 甲10の記載事項
甲10(国際公開第2010/131733号)には、以下の事項が記載されている。また、下線は当審で付したものである。
甲10a
「[0130] ヒト化Ax225可変領域H0およびL0の作製
ヒト化テンプレート配列のFR領域にAx225抗体のCDR領域を移植したヒト化Ax225抗体の可変領域を作製するため、合成オリゴDNAをH鎖、L鎖それぞれ設計した。各合成オリゴDNAを混和し、アッセンブルPCRによりヒト化Ax225の可変領域をコードする遺伝子を作成し、H鎖をH0、L鎖をL0とした。アッセンブルPCRはKOD-Plus(TOYOBO)を用いて行い、以下の条件に従ってPCR法によって実施した。添付のPCR Buffer,dNTPs,MgSO4, KOD-Plusおよび10 pmolの合成オリゴDNAからなる反応混合物を、94℃にて5分加熱した後、94℃にて2分、55℃にて2分、68℃にて2分から構成されるPCR反応サイクルを2回実施した後、可変領域の5’末端に制限酵素サイトとKozak配列を付加したプライマー、及び3’末端に制限酵素サイトを付加したプライマーをそれぞれ10 pmol添加し、94℃にて30秒、55℃にて30秒、68℃にて1分から構成されるPCR反応サイクルを35回実施し増幅断片を得た。得られた増幅断片を動物細胞発現ベクターによりクローニングし、定常領域と連結した。
[0131]
ここで、IgG抗体のH鎖C末端配列由来のヘテロジェニティーとして、C末端アミノ酸のリジン残基の欠損、および、C末端の2アミノ酸のグリシン、リジン両方の欠損によるC末端アミノ基のアミド化が報告されている(Anal Biochem. 2007 Jan 1;360(1):75-83.)。これらのヘテロジェニティーを低減させる方法として、H鎖C末端の2アミノ酸、すなわちEU numbering 446番目のグリシンおよび447番目のリジンを欠損させる方法が知られている(特許文献4;WO2009/041613)。ヒト化Ax225抗体においても、H鎖C末端配列に由来するヘテロジェニティーは存在しないことが望ましいため、ヒトIgG1のEU numbering 446番目のグリシンおよび447番目のリジンを欠損させたIgG1配列(配列番号:106)を定常領域配列として用いた。一方、L鎖については天然型ヒトκ鎖(配列番号:107)を定常領域配列として用いた。」
甲10b
「[0156]
〔実施例4〕脱アミド化反応を抑制する変異の導入
医薬品に使用する抗体は、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られるモノクローナル抗体であるにも関わらず、ヘテロジェニティーが存在する。そのような抗体のヘテロジェニティーは酸化、脱アミド化などの修飾により起こり、長期間の保存中や熱ストレス、光ストレスといったストレス条件下にさらされることで増加することが知られている(参考文献:Heterogeneity of Monoclonal Antibodies:Journal of pharmaceutical sciences, vol.97,No.7,2426-2447)。しかしながら、抗体を医薬品として開発するにあたり、そのタンパク質の物性、中でも均一性と安定性は極めて重要であり、目的物質のヘテロジェニティーを低減し、可能な限り単一物質であることが望まれる。」
11 甲11の記載事項
甲11(国際公開第2010/120561号)には、以下の事項が記載されている。なお、甲11は英文で記載されているため、甲11のパテントファミリーの公表公報であるである特表2012-522512号公報の記載事項を翻訳文として使用する。ただし、上記特表2012-522512公報の実施例11の記載事項には誤訳が含まれているため、誤訳部分については当審が翻訳した。また、下線は当審で付したものである。
甲11a
「【請求項24】
図11で示されるHVR1-HC、HVR2-HCおよび/またはHVR3-HC配列(配列番号35~37)を含む重鎖可変ドメインを含む抗体。
【請求項25】
可変ドメインが、図11で示されるFR1-HC、FR2-HC、FR3-HCおよび/またはFR4-HC(配列番号31~34)を含む請求項24記載の抗体。
【請求項26】
抗体が図11で示されるCH1および/またはFc配列(配列番号38および/または39)を含む請求項24または25記載の抗体。
【請求項27】
図11で示されるHVR1-LC、HVR2-LCおよび/またはHVR3-LC配列(配列番号26~28)を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体。
【請求項28】
可変ドメインが、図11で示されるFR1-LC、FR2-LC、FR3-LCおよび/またはFR4-LC(配列番号22~25)を含む請求項27記載の抗体。
【請求項29】
抗体が図11で示されるCL1配列(配列番号29)を含む請求項27または28記載の抗体。
・・・
【請求項33】
請求項24~26のいずれかに記載の重鎖可変ドメインおよび請求項27~29のいずれかに記載の軽鎖可変ドメインを含む抗体。
・・・
【請求項193】
二重特異性抗体である請求項33記載の抗体。
【請求項194】
CD3に特異的に結合する請求項193記載の抗体。
【請求項195】
空洞への隆起(protuberance-into-cavity)抗体である請求項194記載の抗体。
【請求項196】
非グリコシル化される請求項195記載の抗体。
【請求項197】
大腸菌宿主細胞中で産生される請求項196記載の抗体。
【請求項198】
1つ以上のFcエフェクター機能を欠く請求項196記載の抗体。
【請求項199】
ADCC活性を欠く請求項198記載の抗体。」
甲11b
「【0002】
本発明は、哺乳類における造血系腫瘍の治療に有用な物質の組成物に、ならびにそのための物質の組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
悪性腫瘍(癌)は、心疾患に次いで米国における第2位の死因である(Boring et al., CA Cancel J. Clin. 43: 7(1993))。癌は、正常組織に由来する異常または新生物性細胞の数の増大を特徴としており、それらの細胞は増殖して腫瘍塊、これらの新生物性腫瘍細胞による隣接組織の侵襲、ならびに悪性細胞の生成を生じ、これらは、結局は、血液またはリンパ系を介して、局所リンパ節に、そして転移と呼ばれる過程を通して遠位部位に広がる。癌状態では、細胞は、正常細胞が増殖しない条件下で増殖する。癌は、それ自体、異なる程度の侵襲性および攻撃性により特徴付けられる広範な種々の形態で症状発現する。
【0004】
血液の細胞要素、例えばリンパ球、白血球、血小板、赤血球およびナチュラルキラー細胞が生成されるプロセスである造血中に生成される細胞に関与する癌は、造血系癌と呼ばれる。血液およびリンパ組織中に見出され得る、そして免疫応答のために重要であるリンパ球は、リンパ球の2つの主なクラス、すなわちBリンパ球(B細胞)およびTリンパ球(T細胞)に分類され、これらはそれぞれ、体液性および細胞媒介性免疫を媒介する。
【0005】
B細胞は、骨髄内で成熟し、骨髄を出て、それらの細胞表面で抗原結合抗体を発現する。ナイーブB細胞が、最初に、その膜結合抗体が特異的である抗原に遭遇すると、細胞は迅速に分裂し始めて、その子孫はメモリーB細胞およびエフェクター細胞(「形質細胞」と呼ばれる)に分化する。メモリーB細胞は、より長い寿命を有し、元の親細胞と同一の特異性で膜結合抗体を発現し続ける。形質細胞は、膜結合抗体を産生しないが、その代わりに、分泌され得る形態の抗体を産生する。分泌抗体は、体液性免疫の主要エフェクター分子である。
【0006】
T細胞は、未熟T細胞の増殖および分化のための環境を提供する胸腺内で成熟する。T細胞成熟中、T細胞は、T細胞受容体を産生する遺伝子再編成、ならびに成熟T細胞の細胞表面表現型を決定するのを手助けする正および負の選択を受ける。成熟T細胞の特徴的細胞表面マーカーは、CD3:T細胞受容体複合体ならびに補助受容体CD4またはCD8のうちの1つである。
【0007】
癌療法のための有効な細胞性標的を発見しようと試みて、研究者等は、1つ以上の正常非癌性細胞(単数または複数)と比較して、1つ以上の特定型(単数または複数)の癌細胞の表面で特異的に発現される膜貫通または他の膜関連ポリペプチドを特定しようと努めてきた。しばしば、このような膜関連ポリペプチドは、非癌性細胞の表面と比較して、癌細胞の表面で豊富に発現される。このような腫瘍関連細胞表面抗原ポリペプチドの特定は、抗体ベースの療法による破壊のために癌細胞を特異的に標的にする能力を生み出した。この点で、抗体ベースの療法が、ある種の癌の治療に非常に有効であることが見出された、ということが注目される。例えば、ヘルセプチン(登録商標)およびリツキサン(登録商標)(ともに、Genentech Inc., South San Francisco, Californiaにより製造される)は、それぞれ乳癌および非ホジキンリンパ腫を治療するのに首尾よく用いられている抗体である。さらに具体的には、ヘルセプチン(登録商標)は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)癌原遺伝子の細胞外ドメインと選択的に結合する組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体である。HER2タンパク質過剰発現は、原発性乳癌の25~30%で観察される。リツキサン(登録商標)は、正常および悪性Bリンパ球の表面に見出されるCD20抗原に対して向けられる遺伝子操作キメラネズミ/ヒトモノクローナル抗体である。これらの抗体はともに、CHO細胞中で組換え的に産生される。
【0008】
癌療法のための有効な細胞性標的を発見するための他の試みでは、研究者等は、(1)1つ以上の特定型(単数または複数)の非癌性正常細胞(単数または複数)と比較して、1つ以上の特定型(単数または複数)の癌細胞(単数または複数)により特異的に産生される非膜関連ポリペプチド、(2)1つ以上の正常非癌性細胞(単数または複数)のものより有意に高い発現レベルで癌細胞により産生されるポリペプチド、あるいは(3)癌性および非癌性状態(例えば、正常前立腺および前立腺腫瘍組織)の両方における単一(または非常に限定された数の異なる)組織型(単数または複数)にのみ、その発現が特異的に限定されるポリペプチドを特定しようと努めてきた。このようなポリペプチドは、依然として細胞内に位置するか、あるいは癌細胞により分泌され得る。さらに、このようなポリペプチドは、癌細胞それ自体によらずに、むしろ、癌細胞に及ぼす増強または増殖強化作用を有するポリペプチドを産生しおよび/または分泌する細胞により発現され得る。このような分泌ポリペプチドは、しばしば、正常細胞を上回る増殖利点を癌細胞に提供するタンパク質であり、例としては、血管新生因子、細胞接着因子、増殖因子等が挙げられる。このような非膜関連ポリペプチドのアンタゴニストの特定は、このような癌の治療のための有効な治療薬として役立つと予期される。さらに、このようなポリペプチドの発現パターンの特定は、哺乳類における特定の癌の診断に有用である。
【0009】
哺乳類癌療法における上記の確認された進歩にもかかわらず、それぞれ、哺乳類における腫瘍の存在を検出し得る付加的治療薬に対する、ならびに新生物細胞増殖を有効に抑制することに対する多大な必要性が存在する。したがって、癌性および非癌性状態の両方における単一(または非常に限定された数の異なる)組織型(単数または複数)、造血組織にのみ、その発現が特異的に限定される細胞膜関連、分泌または細胞内ポリペプチドであるポリペプチドを特定すること、そしてそれらのポリペプチドおよびそれらのコード核酸を用いて哺乳類における造血系癌の療法的処置および/または検出に有用な物質の組成物を産生することが、本発明の一目的である。
【0010】
染色体1q21の異常は、B細胞悪性疾患、例えばB細胞リンパ腫および骨髄腫に共通であるが、これらの異常により標的化される遺伝子は大部分は不明である。帯域1q21~q23に関連した染色体異常は、B細胞非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫の両方における最も頻度の高い遺伝子病変の1つである。非ホジキンリンパ腫亜型の間では、転座および重複を含めた1q21~q23での転座切断点は、しばしば、辺縁帯B細胞リンパ腫における濾胞性およびび漫性大細胞型B細胞リンパ腫(DLCL)における、ならびにバーキットリンパ腫における単一染色体異常として、報告されている。骨髄腫細胞株におけるt(1:14)(q21:q32)染色体転座の切断点をクローニングすることにより、免疫グロブリン・スーパーファミリー受容体転座関連(IRTA)1およびIRTA2と呼ばれる2つの遺伝子が特定された。IRTA2は、BXMASi(Nakayama et al., Biochm. Biophys. Res. Commun. 285: 830-7, 2001)およびFcRH5(Davis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 9772-7, 2001)として特定された配列と同一である。IRTA1およびIRTA2はともに、関連遺伝子の一ファミリーIRTAの成員である。
【0011】
FcRH5(またはIRTA2)は、Fc受容体ファミリーと相同性を有する細胞表面受容体である。それは普通は成熟B細胞中で発現され、そしてFcRH4(IRTA1)とは異なる末梢リンパ器官中の分布を示す。IRTA1は辺縁帯B細胞中で発現され、一方、IRTA2は胚中心細胞中および免疫芽細胞中でも発現される。IRTA2発現は、多発性骨髄腫、ならびに1q21異常を伴うバーキットリンパ腫細胞株において脱調節される(Miller et al., Blood 99: 2662-2669, 2002参照)。B細胞悪性疾患における1q21構造再編成の高頻度の関与は、IRTA1およびIRTA2がこれらの疾患の病因に対して重要である、ということを示唆する(公開PCT出願番号WO 01/38490;米国公開特許出願番号20080292632参照;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)(Polson, et al. Int Immunol. 2006 Sep; 18(9): 1363-73も参照)。
【0012】
FcRH5の発現を考えると、特に長期治療のために、患者に投与される際に、最小抗原性を有するかまたは全く有さないFcRH5抗原に対する治療用抗体を産生することは有益である。本発明は、このまたは他の要求を満たす。本発明は、一般的治療用組成物の制限を克服し、ならびに以下の詳細な説明から明らかになる付加的な利点を与える抗FcRH5抗体を提供する。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、抗FcRH5抗体またはその機能的断片、ならびに造血系腫瘍の治療におけるその使用方法に関する。」
甲11c
「【0271】
一態様では、FcRH5と結合する抗体であって、以下のものを含む抗体が提供される:
(a)以下の:
(i)配列KASQDVSTAVA(配列番号26)を含むHVR-L1
(ii)配列SASYRYT(配列番号27)を含むHVR-L2
(iii)配列QQHFSSPRT(配列番号28)を含むHVR-L3
(iv)配列GFTFSSYAVS(配列番号35)を含むHVR-H1
(v)配列ATISSGGSLTFYLDSVR(配列番号36)を含むHVR-H2
(vi)配列PIPDYYALDY(配列番号37)を含むHVR-H3
からなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5または6つのHVR。
一実施形態では、本発明の抗体のHVR-L1は、配列番号26の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR-L2は、配列番号27の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR-L3は、配列番号28の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR-H1は、配列番号35の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR-H2は、配列番号36の配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体のHVR-H3は、配列番号37の配列を含む。一実施形態では、(本明細書中に記載されるような組合せで)これらの配列を含む本発明の抗体は、ヒト化またはヒト抗体である。」
甲11d
「【0285】
一態様では、ヒト化抗体およびキメラ抗体はともに一価である。一実施形態では、ヒト化およびキメラ抗体はともに、Fc領域と連結される単一Fab領域を含む。一実施形態では、参照キメラ抗体は、ヒトFc領域と結合される図2(配列番号11)および図4(配列番号13)に示される可変ドメイン配列を含む。一実施形態では、ヒトFc領域は、IgGのもの(例えば、IgG1、2、3または4)である。」
甲11e
「【0364】
A. 抗FcRH5抗体
一実施形態では、本発明は、治療薬として本明細書中で用途を見出し得る抗FcRH5抗体を提供する。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性および異種接合体抗体が挙げられる。
・・・
【0412】
5. 二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例となる二重特異性抗体は、本明細書中に記載されるようなFcRH5タンパク質の2つの異なるエピトープと結合し得る。他のこのような抗体は、別のタンパク質に対する結合部位を有するFcRH5結合部位を併有し得る。代替的には、抗FcRH5アームは、FcRH5発現細胞に細胞性防御機序を集中し、限局するために、T細胞受容体分子(例えば、CD3)、あるいはIgGに対するFc受容体(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)のような白血球上のトリガー分子と結合するアームと組合され得る。二重特異性抗体は、FcRH5を発現する細胞に細胞傷害剤を限局するためにも用いられ得る。これらの抗体は、FcRH5結合アーム、ならびに細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、シリンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位体ハプテン)に結合するアームを有する。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えばF(ab‘)2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0413】
WO 96/16673は二重特異性抗ErbB2/抗FcγRIII抗体を記載し、米国特許第5,837,234号は二重特異性抗ErbB2/抗FcγRI抗体を開示する。二重特異性抗ErbB2/抗Fcα抗体は、WO98/02463に示されている。米国特許第5,821,337号および第6,407,213号は、二重特異性抗ErbB2/抗CD3抗体を教示する。CD3抗原上のエピトープおよび第二エピトープと結合する付加的二重特異性抗体が記載されている。例えば、米国特許第5,078,998号(抗-CD3/腫瘍細胞抗原);第5,601,819号(抗-CD3/IL-2R;抗-CD3/CD28;抗-CD3/CD45);第6,129,914号(抗-CD3/悪性疾患B細胞抗原);第7,112,324号(抗-CD3/CD19);第6,723,538号(抗-CD3/CCR5);第7,235,641号(抗-CD3/EpCAM);第7,262,276号(抗-CD3/卵巣腫瘍抗原);および第5,731,168号(抗-CD3/CD4IgG)を参照されたい。
【0414】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で既知である。全長二重特異性抗体の伝統的産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいており、ここで、2つの鎖は異なる特異性を有する(Millstein et al., Nature 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為組合せのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうち、1つだけが正しい二重特異性構造を有する。通常はアフィニティークロマトグラフィー段階により実行される正しい分子の精製は、かなり厄介であり、その生成収率は低い。類似の手順は、WO 93/08829に、そしてTraunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
・・・
【0417】
米国特許第5,731,168号に記載された別のアプローチによれば、抗体分子の対の間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にするよう操作され得る。好ましい界面は、CH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面からの1つ以上の小アミノ酸側鎖が、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大型アミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることにより、大きい側鎖(単数または複数)と同一または類似のサイズの代償性「空洞」が第二抗体分子の界面上に作られる。これは、ホモ二量体のような他の望ましくない最終産物に対してヘテロ二量体の産生を増大するための機序を提供する。このアプローチに従って産生される二重特異性抗体は、本明細書中では「空洞への隆起」抗体として言及される。」
甲11f
「【0632】
本発明の範囲内に含まれる抗FcRH5抗体の別の型の共有的修飾は、抗体またはポリペプチドのネイティブグリコシル化パターンを変更することを包含する。「ネイティブグリコシル化パターンを変更すること」は、ネイティブ配列抗FcRH5抗体中に見出される1つ以上の炭水化物を欠失すること(基本的グリコシル化部位を除去することによるかまたは化学的および/または酵素的手段によりグリコシル化を欠失することによる)、および/またはネイティブ配列抗FcRH5抗体中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加することを意味するよう、本明細書中の目的のために意図される。さらに、その語句は、存在する種々の炭水化物部分の性質および割合の変化を含めたネイティブタンパク質のグリコシル化における定量的変化を包含する。
【0633】
抗体およびその他のポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N連結またはO連結である。N連結は、炭水化物部分とアスパラギン残基の側鎖との結合を指す。トリペプチド配列 アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分とアスパラギン側鎖との酵素的結合に関する認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列の存在は、潜在的グリコシル化部位を作り出す。O連結グリコシル化は、糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つとヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンとの結合を指すが、しかし5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンも用いられ得る。
【0634】
抗FcRH5抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N連結グリコシル化部位に関して)上記トリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するよう、アミノ酸配列を変更することにより好都合に成し遂げられる。変更は、(O連結グリコシル化部位に関して)元の抗FcRH5抗体の配列に対する1つ以上のセリンまたはトレオニン残基による付加または置換によってもなされ得る。抗FcRH5抗体アミノ酸配列は、任意に、DNAレベルでの変化を通して、特に、所望のアミノ酸に翻訳するコドンが生成されるよう、予め選択された塩基で抗FcRH5抗体をコードするDNAを突然変異化することにより、変更され得る。
【0635】
抗FcRH5抗体上の炭水化物部分の数を増大する別の手段は、グリコシドとポリペプチドとの化学的または酵素的カップリングによる。このような方法は、当該技術分野で、例えばWO 87/05330(1987年9月11日公開)に、およびAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
【0636】
抗FcRH5抗体上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的にまたは酵素的に、あるいはグリコシル化のための標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異的置換により、成し遂げられ得る。化学的脱グリコシル化技法は、当該技術分野で知られており、例えば、Hakimuddin, et al., Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)により、ならびにEdge et al., Anal. Biochem., 118:131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的開裂は、種々のエンド-およびエキソ-グリコシダーゼの使用により達成され得る(Thotakura et al., Meth. Enzymol., 138:350 (1987)に記載)。」
甲11g
「【0649】
本明細書中のベクター中でDNAをクローニングし、または発現するための適切な宿主細胞としては、原核生物、酵母または高等真核生物細胞が挙げられる。
・・・
【0651】
特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合、全長抗体、抗体断片および抗体融合タンパク質が細菌中で産生され得る。全長抗体は、より大きな循環中半減期を有する。大腸菌中での産生は、より速く、且つより費用効率が高い。細菌中での抗体断片およびポリペプチドの発現に関しては、例えばU.S. 5,648,237 (Carter et. al.)、 U.S. 5,789,199 (Joly et al.)およびU.S. 5,840,523 (Simmons et al.)(これは、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)および シグナル配列を記載する)(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)を参照されたい。発現後、抗体は可溶性分画中の大腸菌細胞ペーストから単離され、例えば、アイソタイプによってプロテインAまたはGカラムを通して精製され得る。最終精製は、例えばCHO細胞中で発現される抗体を精製するためのプロセスと同様に実行され得る。」
甲11h
「【0744】
本発明の抗FcRH5抗体は、本明細書中の「抗体」の定義に包含される種々の形態で存在し得る。したがって、抗体は、全長または無傷抗体、抗体断片、ネイティブ配列抗体またはアミノ酸変異体、ヒト化、キメラまたは融合抗体、免疫接合体、ならびにその機能的断片を包含する。融合抗体では、抗体配列は異種ポリペプチド配列と融合される。抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る。本明細書中の節で詳細に考察されているように、適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合された裸抗体は、例えば抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を介して、または補体依存性細胞傷害性において補体を動員することにより、または他のいくつかの機序により、細胞傷害性を誘導し得る。代替的には、副作用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る。」
甲11i
「実施例11: FcRH5二重特異性抗体の産生および特性化
抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の構築および産生 FcRH5二重特異性抗体、具体的には抗CD3/FcRH5 空洞への隆起二重特異性抗体の構築を、以下に記載する。
【0921】
種々の空洞への隆起二重特異性抗体は、以前に記載されている(例えば米国特許第5,731,168号および第7,183,076号;Ridgway et al., Prot. Eng. 9:617-621 (1996);Atwell et al., J. Mol. Biol. 270:26-35 (1997);Merchant et al., Nat. Biotechn. 16:677-681 (1998)参照)。ある場合には、Chamow et al. J. Immunol. 153:4268 (1994)により前に記載されたヒト化抗CD3/CD4-IgGキメラ間のCH3界面を操作して、発現構築物で同時トランスフェクトされた哺乳類細胞株から回収され得るヘテロ多量体のパーセンテージを最大にした。本明細書中で用いる場合、「ヘテロ多量体」は、少なくとも第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチド(ここで、第二のポリペプチドはアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が第一のポリペプチドと異なる)を含む分子、例えば二重特異性抗体を指す。
【0922】
前段落中で引用した文書に記載されているように、ヘテロ多量体形成を行なうために用いる戦術は、第一ポリペプチド、例えば抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の「隆起」を導入すること、そしてさらにまた、第二ポリペプチド、例えば第二抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の対応する「空洞」を導入することに頼っている。「隆起」突然変異は、小アミノ酸をより大きいものに置き換え、そして「空洞」突然変異は、大型アミノ酸をより小さいもので置き換えた。さらに、隆起および空洞突然変異のほかに、遊離チオール含有残基が2つのポリペプチド、例えば2つのCH3ドメインの界面に導入されたが、これは、ヘテロ多量体の形成を増強することが示された。ポリペプチド界面に導入される種々の例となる空洞への隆起突然変異および遊離チオール含有残基が記載されている。例えば米国特許第5,731,168号および第7,183,076号;Ridgway et al., Prot. Eng. 9:617-621 (1996);Atwell et al., J. Mol. Biol. 270:26-35 (1997);Merchant et al., Nat. Biotechn. 16:677-681 (1998)を参照されたい。
【0923】
以下の工程を実行して、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体を産生する。ネズミ抗CD3モノクローナルAb UCHT1のヒト化抗CD3軽鎖(L)および重鎖(H)変異体をコードする大腸菌発現プラスミド(米国特許第5,821,337号および第6,407,213号;Shalaby et al., J. Exp. Med. 175: 217 [1992]およびRodrigues et al., Int. J. Cancer (Suppl.) 7: 45 [1992]))を構築する。多数の適切な大腸菌発現プラスミド、例えばpAK19が、当該技術分野で知られている(Carter et al., Bio/Tehcnology 10:163-167 (1992))。ヒト化抗CD3H鎖の(上記のような)CH3ドメイン中に隆起または空洞を導入する突然変異は、例えば部位特異的突然変異誘発により成される。種々の部位特異的突然変異誘発方法が、当該技術分野で周知である(例えばKunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987)参照)。さらに、ヒト化抗FcRH5軽鎖および重鎖、例えば本明細書中に記載されるようなヒト化抗FcRH5軽鎖および重鎖をコードする大腸菌発現プラスミドが、構築される。ヒト化抗FcRH5H鎖の(上記のような)CH3ドメイン中に対応する空洞(抗CD3ドメインが隆起突然変異を有する場合)または対応する隆起(抗CD3ドメインが空洞突然変異を有する場合)を導入する突然変異は、例えば部位特異的突然変異誘発により作製される。
【0924】
二重特異性抗CD3/FcRH5抗体は、当該技術分野で知られている方法を用いて、上記のような大腸菌発現プラスミドを、適切な大腸菌株、例えば33B6中で形質転換することにより産生される(例えばRodrigues et al., Cancer Res. 55:63-70 (1995)参照)。前に記載されたように、10L発酵器中で増殖させた形質転換大腸菌により、抗体は分泌される(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。当該技術分野で既知の手法を用いて、抗体は精製され、分析される(例えばAtwell et al., J. Mol. Biol. 270:26-35 (1997)参照)。」
甲11j
「
[図:0001416840000012.jpg]
」(図11)
12 乙17の記載事項
乙17(Curr. Opin. Biotechnol., 2009, Vol. 20, pp. 685-691)には、以下の事項が記載されている。なお、乙17は英文で記載されているため、被請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用する。
「
[図:0001416840000013.jpg]
」(第688頁のTable2)
13 乙22の記載事項
乙22(Mol Immunol, 2003, Vol.40(9), pp.585-593)には、以下の事項が記載されている。なお、乙22は英文で記載されているため、被請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用する。
乙22a
「
[図:0001416840000014.jpg]
」(第586頁のTable1)
乙22b
「
[図:0001416840000015.jpg]
」(第589頁のFig.5)
14 乙23の記載事項
乙23(Eur. J. Immunol, 1999, Vol.29, pp.2613-2624)には、以下の事項が記載されている。なお、乙23は英文で記載されているため、被請求人が提出した訳文の記載事項を翻訳文として使用する。
乙23a
「
[図:0001416840000016.jpg]
」(第2615頁のTable1)
乙23b
「他の変異Abのいずれについてもわずかな結合が見られ、IgG1およびIgG4におけるΔbおよびΔc変異が、FcγRIに対する結合を、少なくとも104分の1に低減させるのに十分であることが示唆された。Δc変異、したがって余分なグリシン残基を含むAb、特にG1Δcは、蛍光レベルをバックグラウンドまたはΔb変異を有する対応するAbと比較した場合、試験した最も高い濃度において、両方の株に由来する細胞に対してわずかな結合を示した。」(第2616頁右欄第2行~第10行)
第6 当審の判断
1 無効理由1(甲2に基づく新規性欠如)、無効理由2(甲2に基づく進歩性欠如)について
(1)甲2に記載された発明
甲2aには、低下したエフェクタ機能を有する安定化Fcポリペプチドが記載されており(【発明の名称】)、特許請求の範囲には、IgG1抗体のFc領域からのCH2部分を含み、299Kおよび297D(EU付番慣例)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に、1つまたはそれ以上の安定化アミノ酸を含む、安定化ポリペプチドであること(【請求項5】)、前記安定化ポリペプチドは、前記安定化変異を欠く親ポリペプチドと比較して、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体への低下した結合を有すること(【請求項5】を直接又は間接的に引用する【請求項18】、【請求項20】)、前記Fc領域は、結合部位と機能的に結合すること(【請求項5】を直接引用する【請求項39】)、前記安定化ポリペプチドは安定化完全長抗体であること(【請求項5】を間接的に引用する【請求項42】)が記載されている。
また、甲2jには、本発明の結合ポリペプチドは、多特異性であることができ、腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する二重特異性分子でよいことが記載されている(【0390】~【0392】)。
さらに、甲2nの実施例6の【表7】や甲2pの実施例9の【表19-2】では、安定性を操作したFc変異体のFc受容体結合を分析した結果が示されており、IgG1抗体のFc領域に対し、T299KやN297D変異が導入されたFc変異体が、変異を有さない親IgG1Fc部分を有するポリペプチドに比して、CD64(FcγRI)、CD16(FcγRIIIa V158)に対し低い親和性を示すことが記載されている。
ここで、上記の実施例6、9では、モデルヒト抗体として5c8抗体に由来するFabを含むものであるが、甲2qの実施例10には、変異による安定性やFcγ受容体に対する親和性が、Fabから独立しており、Fcドメインを安定化するのに適用可能であることが示されているから(【0563】)、上記の実施例6や実施例9で示されたFc領域の変異の導入による安定化やFcγ受容体に対する親和性の低下は、5c8抗体のFabを使用する場合のみならず、5c8抗体のFabを使用しない別の抗体であっても、得られることが甲2に開示されているといえる。
以上からすると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「IgG1抗体のFc領域からのCH2部分を含み、299Kおよび297D(EU付番慣例)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に、1つまたはそれ以上の安定化アミノ酸変異を含み、
前記安定化アミノ酸変異を欠く親ポリペプチドと比較して、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体への低下した結合を有し、
腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する二重特異性結合抗体である、
安定化ポリペプチド。」(以下、「甲2発明」という。)
ここで、被請求人は、甲2に記載されている発明は、T細胞やB細胞の活性化に関与するCD40リガンド(癌抗原ではない)に結合する通常のモノクローナル抗体であり、マウス5c8モノクローナル抗体に由来する熱安定性の改善された「特定の」ヒト5c8モノクローナル抗体を得ることに関するものに過ぎず、二重特異性抗体については甲2で何ら取得がなされていないので、上記の甲2発明は記載されていない旨を主張する。
しかるところ、甲11eの【0364】を見ても理解できるように、抗体の例として、ポリクローナル、モノクローナルと共に二重特異性抗体は、一般的なものであって、甲2cの【0115】や甲2rの図1には、典型的な抗原結合ポリペプチド(IgG抗体)の構造として、癌細胞等の細胞抗原に結合するアームを有する二重特異性抗体が示されているし、甲2jの【0392】及び甲11eの【0412】~【0413】を参照すると、実用化が進められている代表的な二重特異性抗体は、腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有するものであるから、甲2には、モノクローナル抗体のみならず、二重特異性抗体に関する発明も記載されているといえる。
よって、甲2に記載された発明を、実施例に基づき、CD40リガンド(癌抗原ではない)に結合する5c8モノクローナル抗体のみと解すべき理由はないから、上記の被請求人の主張は採用できない。
(2)本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲2発明との対比
甲2発明における「腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム」は、甲2jの【0392】からみて、CD3ではない種々の腫瘍細胞抗原に結合するアームを包含するから、本件訂正発明1の「癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)」に相当する。
甲2発明における「細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアーム」については、甲2jの【0391】に細胞毒性誘因分子の例としてT細胞受容体が挙げられ、同【0392】からみて、当該アームは、CD3に結合するアームを包含するものであるから、本件訂正発明1の「T細胞受容体複合体結合ドメイン」に相当する。
甲2発明における「IgG1抗体のFc領域」は、甲2aの請求項9によると、ヒトIgG1抗体のFC領域であるから、本件訂正発明1の「ヒトFc領域変異体を含むドメイン」とは、ヒトFc領域を含むドメインの限りにおいて一致する。
甲2発明の「安定化ポリペプチド」は、甲2aによると、完全長抗体二重特異性結合抗体であり(【請求項42】)、完全長抗体は、Fabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された構造を有することは技術常識であるから、甲2発明の、二重特異性結合抗体である「安定化ポリペプチド」は、「腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム」を構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、また、「細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアーム」を構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結されているものと認められる。
よって、甲2発明の「二重特異性結合抗体である、安定化ポリペプチド」は、本件訂正発明1の「癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明とは、
「(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)ヒトFc領域を含むドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン、
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、
ポリペプチド会合体。」
で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点1>
本件訂正発明1では、ヒトFc領域を含むドメインが「配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している」ものであり、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」のに対し、
甲2発明では、「IgG1抗体のFc領域からのCH2部分を含み、299Kおよび297D(EU付番慣例)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に、1つまたはそれ以上の安定化アミノ酸変異を含み、前記安定化アミノ酸変異を欠く親ポリペプチドと比較して、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体への低下した結合を有」する点。
<相違点2>
本件訂正発明1では、「該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する」のに対し、
甲2発明では、上記のような特定がされていない点。
イ 相違点についての判断
甲2iには「低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチドは、エフェクタ機能を低下させることが見込まれ、そのような分子も、標的細胞破壊が望ましくない状態、例えば、正常細胞が標的分子を発現する場合、またはポリペプチドの慢性投与によって好ましくない免疫系活性化が引き起こされる可能性がある場合の治療に有用である。・・・一実施形態においては、Fcポリペプチドは、FcγR(例えば、FcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa)への変化した結合を示す。別の実施形態においては、Fcポリペプチドは、阻害性FcγR(例えば、FcγRIIb)への変化した結合親和性を示す。他の実施形態においては、低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチド(例えば、低下したFcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa結合親和性)は、以下の位置の1つまたはそれ以上に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。234、236、239、241、251、252、261、265、268、293、294、296、298、299、301、326、328、332、334、338、376、378、および435(EU付番)。・・・FcγRまたは補体結合活性を変化させた例示的なアミノ酸置換は、国際公開第WO05/063815号に開示され、この内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。ある好ましい実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、以下の特定の置換の1つまたはそれ以上を含むことができる。S239D、S239E、M252T、H268D、H268E、I332D、I332E、N434A、およびN434K(すなわち、抗体Fc領域におけるこれらのEU付番位置の1つまたはそれ以上に対応するアミノ酸位置にあるこれらの置換の1つまたはそれ以上)。
」と記載され(【0230】)、低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチド(例えば、低下したFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa結合親和性)が有する23箇所のアミノ酸の置換位置の候補の1つとして234位が例示されている。
しかし、甲2には【0230】以外において、Fcポリペプチドの234位のアミノ酸を置換する旨の記載は一切存在せず、実施例においても234位のアミノ酸に置換を有するポリペプチドは製造されていない。
さらに、甲2には235位のアミノ酸を置換する旨の記載や示唆は一切存在しない。
なお、請求人は、令和5年10月16日に提出の弁駁書において、令和5年3月29日付け審決の予告において、甲2の【0230】の記載から299位及び297位以外の位置に変異を有する態様も甲2に記載されているに等しいものとして認定可能であると指摘されており、甲7のTable1にはL234V、L235A、乙17のTable2にはL234A、L235Aが記載されているから、甲2発明および技術常識としての甲7および乙17の記載から、本件訂正発明1は甲2に記載された発明である旨を主張している。
しかしながら、上記のとおり甲2には【0230】に置換位置の候補として234位が例示されているにとどまり、235位のアミノ酸を置換することについては記載も示唆もされてないから、Fc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位を共に変異させることが、甲2に記載されているとはいえないし、甲7や乙17に234位および235位の変異体が記載されているとしても、かかる記載によって、甲2に、234位および235位を共に変異させた態様が記載されているに等しいと解することはできない。
よって、請求人の主張は採用できない。
そうすると、本件訂正発明1は、少なくとも相違点1において甲2発明と異なるから、甲2に記載されたものではない。
次に、本件訂正発明1が、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
請求人は令和5年10月16日提出の弁駁書において、令和5年3月29日付け審決の予告で説明されるように、甲2には299位又は297位に変異を有する態様のみならず、それ以外の位置に変異を有する態様が記載されていると認められ、甲7のTable1にはL234V、L235Aが記載され、乙17のTable2にはL234A、L235Aの変異が記載されていること、甲2には二重特異性抗体において、低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチドを親ポリペプチドとして用いることが、ポリペプチドの慢性投与によって好ましくない免疫活性化が引き起こされる可能性がある場合などの治療に有効であること、IgG1以外にもIgG2、IgG3、IgG4を親ポリペプチドとして用いることが記載されているから、FcγR結合親和性を低下させる目的で、甲2発明に甲7および乙17に記載されるFc領域のアミノ酸変異を組み合わせて、234位および235位のアミノ酸変異を導入することは当業者が容易になし得たことである旨を主張している。
しかしながら、甲7(特に、Table1)には、Fcγ受容体への結合が低下するものだけでなく、Fcγ受容体への結合が増加するものや、一部のFcγ受容体にのみ結合するもの、FcRn結合のみに作用し、Fcγ受容体には作用しないものなど、様々な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されているものであり、234位および235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されている。また、乙17(特に、Table2)をみても、ADCC、ADCP、サイトカインストーム、CDCを減少させることができるアミノ酸変異として234位および235位の他に多数のアミノ酸変異が記載されている。
しかも、これらのアミノ酸位置には甲2の【0230】には記載されていないもの(例えば、甲7に記載された233位、238位、乙17に記載された237位、318位等)、また、逆に、甲2の【0230】で掲載されたアミノ酸位置には甲7に掲載されていないもの(例えば、239位、252位等)、乙17に掲載されていないもの(例えば、241位、251位等)が存在する。
また、甲2の【0230】において、置換前後のアミノ酸が示された「S239D、S239E、M252T、H268D、H268E、I332D、I332E、およびN434K」は、甲7、乙17には記載されていない。
更に、甲2の【0230】で低下したFcγR結合親和性を有するものとして例示された「N434A」について、甲7(Table1)においてはFcRN結合のみに作用するClass10に分類されているから、甲2と甲7におけるFcγ受容体への結合性は判断手法が異なっていることが推知される。
そうすると、甲7のL234V、L235Aという記載や、乙17のL234A、L235Aの記載が、甲2発明のヒトFc領域において、特に234位および235位のアミノ酸に着目し、両位置のアミノ酸を置換すること、すなわち、両位置を変異させることを当業者に動機づけるものであるとは認められない。
更に、甲1、甲3~6、甲8~甲10、乙17の記載及び本件特許の優先日の技術常識を参酌しても、甲2発明のヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち234位および235位を変異させることを当業者が動機付けるとは認められない。
そうすると、甲2発明において、甲2及び甲7、甲1、甲3~6、甲8~甲10、乙17の記載に接した当業者が、上記の相違点1として挙げた本件訂正発明1の発明特定事項を採用することを容易に想到し得るとはいえない。
ウ 小括
以上からすると、本件訂正発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明とはいえず、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明と甲7、甲1、甲3~6、甲8~甲10、乙17に記載された事項及び本件特許の優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明3~6、11、14~18、20~22、24、28、30~44、46~196について
本件訂正発明11、14~17、21、24、31~44、46~48、54~59は、いずれも本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲2に記載された発明とはいえず、甲2に記載された事項と甲7、甲1、甲3~6、甲8~甲10、乙17に記載された事項及び本件特許の優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
一方、独立請求項である本件訂正発明3~6、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185は、いずれも、上記の相違点1として挙げた「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」という本件訂正発明1の発明特定事項を含むものである。
そして、上記(2)イによると、上記相違点1の「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」という発明特定事項は、甲2に記載されたものではなく、甲7、甲1、甲6、甲8~甲10、乙17の記載事項及び本件特許の優先日の技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
そうすると、本件訂正発明3~6、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185及びこれらの発明を直接的又は間接的に引用する本件訂正発明11、14~17、21、24、31~44、46~48、50~196も、本件訂正発明1に対するものと同様の理由により、甲2に記載された発明とはいえず、甲2に記載された発明と甲7、甲1、甲3~6、甲8~甲10、乙17に記載された事項及び本件特許の優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)小括
以上に述べたとおりからすると、無効理由1(甲2に基づく新規性欠如)及び無効理由2(甲2に基づく進歩性欠如)は、いずれも理由がない。
2 無効理由3(甲11に基づく進歩性欠如)について
(1)甲11に記載された発明
甲11bには、哺乳類における造血腫瘍の治療に有用な抗FcRH5抗体が記載されており(【0002】、【0019】)、甲11a、甲11eによると、抗FcRH5抗体は、別のタンパク質に対する結合部位を有するFcRH5結合部位を併有し得、抗FcRH5アームは、FcRH5発現細胞に細胞性防御機序を集中し、限局するために、例えばCD3といったT細胞受容体分子と結合するアームと組合され得る、全長抗体の二重特異性抗体となり(請求項193、請求項194【0412】、【0413】)、甲11cには、抗体はヒト化抗体でよく、ヒトFc領域は、IgGのもの(例えば、IgG1、2、3または4)であること(【0271】、【0285】)が記載されている。また、甲11iに記載された、具体的な実施態様である実施例11では、その製造方法からみて、ヒト化抗体である、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の製造方法が記載されている。
そうすると、甲11には、以下のとおりの発明が記載されていると認められる。
「抗FcRH5アームと、CD3といったT細胞受容体分子と結合するアームとが組合された、ヒト化抗体である、全長抗体の二重特異性抗体。」(以下、「甲11発明」という。)
(2)本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲11発明との対比
甲11発明におけるFcRH5は、甲11bの【0007】~【0011】からみて、骨髄腫等の癌細胞の表面で特異的に発現する細胞表面受容体であると認められるから、甲11発明の「抗FcRH5アーム」は、本件訂正発明1の「癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)」に相当する。
甲11発明の「CD3といったT細胞受容体分子と結合するアーム」は本件訂正発明1の「T細胞受容体複合体結合ドメイン」に、甲11発明の「二重特異性抗体」は本件訂正発明1の「ポリペプチド会合体」にそれぞれ相当する。
本件特許明細書の【0114】によると、本件訂正発明1の配列番号:23、24、25、26は、それぞれヒトIgG1、2、3、4のFc領域のアミノ酸配列を示すから、甲11発明の、「全長抗体」である「ヒト化抗体」が備える「ヒトIgG1、2、3または4のFc領域」は、本件訂正発明1の「配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域を含むドメイン」に相当する。
さらに、全長抗体は、Fabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された構造を有するのは技術常識であるから、甲11発明の二重特異性抗体は、「抗FcRH5アーム」を構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、また、「CD3といったT細胞受容体分子と結合するアーム」を構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結されていると認められる。
よって、甲11発明の「ヒト化抗体である、全長抗体の二重特異性抗体」は、本件訂正発明1の「癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体」に相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲11発明とは、
「(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、
(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域を含むドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン、
を含むポリペプチド会合体であって、
癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、
癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、
ポリペプチド会合体」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件訂正発明1では、ヒトFc領域を含むドメインが「配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している」ものであり、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」のに対し、
甲11発明では、上記のような特定がされていない点。
<相違点4>
本件訂正発明1では、「ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する」のに対し、
甲11発明では、上記のような特定がされていない点。
イ 相違点3についての判断
甲11hには、副作用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得ることが記載され(【0744】)、甲11fの【0636】には、抗FcRH5抗体上に存在する炭水化物部分の除去が、グリコシル化の標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換によっても成し遂げられ得ることが、化学的にまたは酵素的に脱グリコシル化する方法とともに示唆されている。
しかし、甲11gには、特にグリコシル化及びエフェクター機能が必要とされない場合、全長抗体が細菌中で産生され得、大腸菌中での産生は、より速く、且つより費用効率が高いこと(【0651】)が記載され、甲11iの実施例11では、FcRH5二重特異性抗体の産生について、大腸菌を用いて抗体を発現させることが採用されているので、甲11では、エフェクター機能を排除または低減させる手段として、大腸菌といった細菌を用いて脱グリコシル化する方法が好ましい方法として推奨されており、上記の「アミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換」による方法、すなわち、Fc領域を構成するアミノ酸を変異する方法は推奨されているわけではない。まして、甲11には、Fc領域のうち、特に234位及び235位のアミノ酸に着目し、両位置のアミノ酸を置換すること、すなわち、両位置を変異させることを示唆する記載は存しないから、相違点3は実質的な相違点である。
一方、甲1~甲7には、抗体のFc領域にアミノ酸変異を導入することで、エフェクター機能を減少させることが記載されているが(甲1の【0005】、【0006】/甲2iの【0230】、【0231】/甲3の第18頁第3~8行/甲4の第2204頁右欄第3~6行、同欄第16~24行/甲5の第47頁「要約」の第7~9行/甲6の第1186頁左欄下から第18~15行/甲7の6585頁のTable1)、Fc領域の特に234位及び235位のアミノ酸に着目し、両位置を変異させることを当業者に動機付ける記載や示唆は見当たらない。
更に、甲8~甲10には、抗体のFc領域にアミノ酸変異を導入することで、エフェクター機能を減少させることに関する記載はない。
そうすると、甲1~甲10の記載及び本件特許の優先日の技術常識を参酌しても、甲11において示唆に止まる、グリコシル化の標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換による方法を、甲11発明で敢えて採用し、更に、この方法の採用を前提に、甲11発明のFc領域を構成するアミノ酸の234位及び235位を変異させることを当業者が動機付けられるとは認められない。
したがって、甲11発明において、甲1~甲11の記載に接した当業者が、上記の相違点3として挙げた本件訂正発明1の発明特定事項を採用することを容易に想到し得るとはいえない。
ウ 小括
以上から、本件訂正発明1は、相違点4について検討するまでもなく、甲11発明、すなわち、甲11に記載された発明と甲1~甲11に記載された事項及び本件特許の優先日の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明3~6、11、14~18、20~22、24、28、30~44、46~196について
本件訂正発明11、14~17、21、24、31~44、46~48、54~59は、いずれも本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲11に記載された発明とはいえず、甲11に記載された事項と甲1~甲10に記載された事項及び本件特許の優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
一方、独立請求項である本件訂正発明3~6、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185は、いずれも、上記の相違点1として挙げた「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」という本件訂正発明1の発明特定事項を含むものである。
そして、上記(2)イによると、上記相違点1の「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」という発明特定事項は、甲11に記載されたものではなく、甲1~甲11の記載事項及び本件特許の優先日の技術常識を参酌しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
そうすると、本件訂正発明3~6、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185及びこれらの発明を直接的又は間接的に引用する本件訂正発明11、14~17、21、24、31~44、46~48、50~196も、本件訂正発明1に対するものと同様の理由により、甲11に記載された発明とはいえず、甲11に記載された発明と甲1~甲11に記載された事項及び本件特許の優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)小括
以上に述べたとおりからすると、無効理由3(甲11に基づく進歩性欠如)は、理由がない。
4 無効理由4(サポート要件違反)について
本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付与したものである。
本a
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、および当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤に関する。また当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療または予防するための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに優れた抗腫瘍効果を示す複数の治療用抗体が、癌治療を目的とする医薬品として開発されている(非特許文献1)。これらの治療用抗体は、癌細胞の増殖に必要なシグナルの阻害、細胞死シグナルの誘発、あるいはADCC(Antibody Dependent Cell-mediated Cytotoxicity;抗体依存性細胞傷害)、CDC(Complement Dependent Cytotoxicity;補体依存性細胞傷害)によって、癌細胞に対する抗腫瘍効果を発揮することが知られている(非特許文献2)。抗体のFc領域がNK細胞やマクロファージなどのエフェクター細胞上に存在するFcレセプターに結合することにより、抗体が結合した標的の癌細胞に対してこれらのエフェクター細胞が発揮する細胞傷害がADCCである。抗体の構造中に存在する補体結合部位には補体複合体が結合する。抗体が結合した細胞の細胞膜上に当該複合体中に存在する補体成分が孔を形成することにより、水やイオンの細胞内への流入が促進され細胞が破壊されて起こる細胞傷害がCDCである。既存の治療用抗体には優れた作用が認められるものの、こうした抗体の投与によって得られる治療成績はまだ満足できるものではない。そこで、さらに強力な殺細胞活性を発揮する癌に対する治療抗体の開発が望まれている。
【0003】
上記のNK細胞やマクロファージをエフェクター細胞として動員するADCCをその抗腫瘍効果のメカニズムとする抗体とは別に、T細胞をエフェクター細胞として動員する細胞傷害をその抗腫瘍効果のメカニズムとする抗体であるT細胞リクルート抗体(T cell recruiting抗体、TR抗体)も1980年代から知られている(非特許文献3-5)。TR抗体は、T細胞上のT細胞レセプター(TCR)複合体の構成サブユニットのいずれかに対する抗体、特にCD3 epsilon鎖に結合する抗体と、標的である癌細胞上の抗原に結合する抗体を含むbi-specific(二重特異性)抗体である。TR抗体がCD3 epsilon鎖と癌抗原に同時に結合することにより、T細胞が癌細胞に接近する。その結果、T細胞の持つ細胞傷害作用により癌細胞に対する抗腫瘍効果が発揮されると考えられている。
【0004】
TR抗体の一つとしてtrifunctional抗体と称される抗体も知られている(非特許文献6、7)。これは、癌抗原に結合するFabとCD3 epsilon鎖に結合するFabがそれぞれ片腕に含まれるwhole IgG型のbi-specific抗体である。EpCAMに対するtrifunctional抗体であるcatumaxomabをEpCAM発現陽性の癌細胞を持つ悪性腹水患者の腹腔内に対して投与することにより悪性腹水症に対する治療の効果が示されている。EUにおいて上記の治療を目的とするcatumaxomabの使用が承認されている。
【0005】
さらに最近になり、BiTE(bispecific T-cell engager)と称されるTR抗体が強い抗腫瘍作用を示すことが知られるようになった(非特許文献8、9)。BiTEは癌抗原に対する抗体のscFvとCD3 epsilon鎖に対する抗体のscFvが短いポリペプチドリンカーを介して連結された分子型を有するTR抗体である。BiTEはそれまでに知られていた様々なTR抗体に比べて優れた抗腫瘍作用を持つことが報告されている(非特許文献9、10)。すなわちBiTEは、他のTR抗体に比較し、著しく低い濃度、および低いエフェクター細胞:癌細胞比率(ETレシオ)の下で抗腫瘍効果を発揮する。またこの効果の発現に、予めエフェクター細胞をIL-2やCD28アゴニスト抗体などにより活性化させる必要がないことも示されている。臨床的に優れた効果があることが知られているリツキサンよりもはるかに強いin vitroでの癌細胞に対する傷害作用をCD19に対するBiTEであるblinatumomab(MT103)が示した。さらに最近行なわれた第一相臨床試験、第二相臨床試験において極めて優れた抗腫瘍効果を示したことが報告されている(非特許文献11)。
【0006】
catumaxomabが臨床で薬効を示し治療薬として承認されていること、およびblinatumomabを始めとする複数のBiTEが強い抗腫瘍効果を発揮することから、T細胞をエフェクター細胞として動員するTR抗体には、通常のADCCをその作用機序とする抗体に比べて極めて高い抗腫瘍薬としてのポテンシャルがあることが示唆された。
【0007】
しかしながら、trifunctional抗体が癌抗原非依存的にT細胞とNK細胞やマクロファージなどの細胞と同時に結合する結果、これらの細胞に発現する受容体が架橋されることにより、癌抗原非依存的な各種サイトカインの発現を誘導することが知られている。こうしたサイトカインの発現の誘導は、trifunctional抗体の全身投与によるサイトカインストーム様の副作用の発生につながるものと考えられる。実際、非小細胞肺癌患者に対するcatumaxomabの全身投与による第一相臨床試験においては、5μg/bodyという極めて低い用量が最大許容投与量であり、それ以上の用量の投与により様々な重篤な副作用が起こることが報告されている(非特許文献12)。こうした低い用量のcatumaxomabの投与によっては、その有効血中濃度には到底達し得ない。すなわち、こうした低い用量のcatumaxomabの投与によっては期待される抗腫瘍作用が得られない。
【0008】
一方、BiTEはcatumaxomabとは異なりFcγ受容体に対する結合部位を持たないため、癌抗原非依存的にT細胞とNK細胞やマクロファージなどに発現する受容体が架橋されることはない。そのため、catumaxomabが投与された場合に観察された癌抗原非依存的なサイトカインの誘導は起こらないことが示されている。しかしながら、BiTEはFc領域を欠く低分子量型の改変抗体分子であるために、治療用抗体として通常用いられるIgG型の抗体に比較して、患者に投与されたBiTEの血中半減期は著しく短いという問題点が存在する。実際、生体に投与されたBiTEの血中半減期は数時間程度であることが示されており(非特許文献13、14)、blinatumomabの臨床試験においてはミニポンプを用いた持続静脈内投与によりblinatumomabの投与が行なわれている。こうした投与は患者にとって著しく利便性の悪い投与法であるばかりでなく、機器の故障などによる医療事故のリスクも潜在し、望ましい治療法であるとはいえない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の情況に鑑みてなされたものであり、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、および当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤を提供することを目的とする。また当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療または予防するための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合体を見出した。さらに、ポリペプチド会合体における抗原結合ドメインを置換することにより、当該ポリペプチド会合体が様々な細胞を標的として細胞傷害をもたらすことを見出した。本発明者らは、かかる発見に基づいて、本発明に係るポリペプチド会合体が癌細胞を傷害することを明らかにした。また、ポリペプチド会合体に、CH1/CL界面会合制御導入およびKnob into Hole (KiH)改変を導入することで、さらに効率よく細胞傷害をもたらすことを見出した。また、本発明者らは、本発明に係るポリペプチド会合体を有効成分とする細胞傷害誘導治療剤が、様々な癌を治療又は予防することを見出した。」
本b
「【0012】
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
〔1〕 下記のドメイン;
(1)抗原結合ドメイン、
(2)Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域を含むドメイン、及び、
(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン、
を含むポリペプチド会合体。
・・・
〔43〕 Fc領域が、配列番号:23に記載のFc領域、配列番号:24に記載のFc領域、配列番号:25に記載のFc領域、又は配列番号:26に記載のFc領域を構成するアミノ酸が変異しているFc領域であることを特徴とする、〔1〕から〔42〕のいずれかに記載のポリペプチド会合体。
・・・
「【発明の効果】
【0014】
本発明によって、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合体が提供された。本発明のポリペプチド会合体における抗原結合ドメインを置換することにより、当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤が癌細胞を含む様々な細胞を標的として細胞傷害をもたらし、様々な癌を治療又は予防することができる。患者にとっても、安全性が高いばかりでなく、身体的負担が少なく利便性も高いという、望ましい治療ができるようになる」
本c
「【0113】
本明細書に記載されるポリペプチド会合体にはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域を構成するアミノ酸のうちFcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域が含まれる。
【0114】
抗体のアイソタイプは、定常領域の構造によって決定される。IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の各アイソタイプの定常領域は、それぞれ、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4と呼ばれている。ヒトCγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4のFc領域を構成するポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号:23、24、25、26に例示される。各アミノ酸配列を構成するアミノ酸残基と、kabatのEUナンバリング(本明細書においてEU INDEXとも呼ばれる)との関係は図18に示されている。」
本d
「【0118】
Fcγ受容体に対する結合活性
Fc領域がFcγI、FcγIIA、FcγIIB、FcγIIIA及び/又はFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下していることは、上記に記載されるFACSやELISAフォーマットのほか、ALPHAスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等によって確認することができる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。
【0119】
ALPHAスクリーンは、ドナーとアクセプターの2つのビーズを使用するALPHAテクノロジーによって下記の原理に基づいて実施される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と生物学的に相互作用し、2つのビーズが近接した状態の時にのみ、発光シグナルを検出される。レーザーによって励起されたドナービーズ内のフォトセンシタイザーは、周辺の酸素を励起状態の一重項酸素に変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に拡散し、近接しているアクセプタービーズに到達するとビーズ内の化学発光反応を引き起こし、最終的に光が放出される。ドナービーズに結合した分子とアクセプタービーズに結合した分子が相互作用しないときは、ドナービーズの産生する一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は起きない。
【0120】
例えば、ドナービーズにビオチン標識されたポリペプチド会合体が結合され、アクセプタービーズにはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)でタグ化されたFcγ受容体が結合される。競合する変異Fc領域を有するポリペプチド会合体の非存在下では、野生型Fc領域を有するポリペプチド会合体とFcγ受容体とは相互作用し520-620 nmのシグナルを生ずる。タグ化されていない変異Fc領域を有するポリペプチド会合体は、野生型Fc領域を有するポリペプチド会合体とFcγ受容体間の相互作用と競合する。競合の結果表れる蛍光の減少を定量することによって相対的な結合親和性が決定され得る。抗体等のポリペプチド会合体をSulfo-NHS-ビオチン等を用いてビオチン化することは公知である。Fcγ受容体をGSTでタグ化する方法としては、Fcγ受容体をコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドをインフレームで融合した融合遺伝子を発現可能なベクターに保持した細胞等において発現し、グルタチオンカラムを用いて精製する方法等が適宜採用され得る。得られたシグナルは例えばGRAPHPAD PRISM(GraphPad社、San Diego)等のソフトウェアを用いて非線形回帰解析を利用する一部位競合(one-site competition)モデルに適合させることにより好適に解析される。
【0121】
相互作用を観察する物質の一方(リガンド)をセンサーチップの金薄膜上に固定し、センサーチップの裏側から金薄膜とガラスの境界面で全反射するように光を当てると、反射光の一部に反射強度が低下した部分(SPRシグナル)が形成される。相互作用を観察する物質の他方(アナライト)をセンサーチップの表面に流しリガンドとアナライトが結合すると、固定化されているリガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面の溶媒の屈折率が変化する。この屈折率の変化により、SPRシグナルの位置がシフトする(逆に結合が解離するとシグナルの位置は戻る)。Biacoreシステムは上記のシフトする量、すなわちセンサーチップ表面での質量変化を縦軸にとり、質量の時間変化を測定データとして表示する(センサーグラム)。センサーグラムのカーブからカイネティクス:結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)が、当該定数の比からアフィニティー(KD)が求められる。BIACORE法では阻害測定法も好適に用いられる。阻害測定法の例はProc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010において記載されている。
【0122】
本明細書において、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているとは、例えば、上記の解析方法に基づいて、対照とするポリペプチド会合体の競合活性に比較して被検ポリペプチド会合体の競合活性が、50%以下、好ましくは45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、20%以下、15%以下、特に好ましくは10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下の結合活性を示すことをいう。
【0123】
対照とするポリペプチド会合体としては、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体のFc領域を有するポリペプチド会合体が適宜使用され得る。当該Fc領域の構造は、配列番号:23(RefSeq登録番号AAC82527.1のN末にA付加)、24(RefSeq登録番号AAB59393.1のN末にA付加)、25(RefSeq登録番号CAA27268.1のN末にA付加)、26(RefSeq登録番号AAB59394.1のN末にA付加)に記載されている。また、ある特定のアイソタイプの抗体のFc領域の変異体を有するポリペプチド会合体を被検物質として使用する場合には、当該特定のアイソタイプの抗体のFc領域を有するポリペプチド会合体を対照として用いることによって、当該変異体が有する変異によるFcγ受容体への結合活性に対する効果が検証される。上記のようにして、Fcγ受容体に対する結合活性が低下していることが検証されたFc領域の変異体を有するポリペプチド会合体が適宜作製される。
【0124】
このような変異体の例としては、EUナンバリングに従って特定されるアミノ酸である231A-238Sの欠失(WO 2009/011941)、C226S, C229S, P238S, (C220S)(J.Rheumatol (2007) 34, 11)、C226S, C229S(Hum.Antibod.Hybridomas (1990) 1(1), 47-54)、C226S, C229S, E233P, L234V, L235A(Blood (2007) 109, 1185-1192)等の変異体が公知である。
【0125】
すなわち、特定のアイソタイプの抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸;220位、226位、229位、231位、232位、233位、234位、235位、236位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、267位、269位、270位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、325位、327位、328位、329位、330位、331位、332位。が置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が好適に挙げられる。Fc領域の起源である抗体のアイソタイプとしては特に限定されず、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体を起源とするFc領域が適宜利用され得るが、IgG1抗体を起源とするFc領域が好適に利用される
【0126】
例えば、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す);
(a)L234F、L235E、P331S、
(b)C226S、C229S、P238S、
(c)C226S、C229S、
(d)C226S、C229S、E233P、L234V、L235A
が施されているFc領域、又は、231位から238位のアミノ酸配列が欠失したFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。
【0127】
また、IgG2抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す);
(e)H268Q、V309L、A330S、P331S
(f)V234A
(g)G237A
(h)V234A、G237A
(i)A235E、G237A
(j)V234A、A235E、G237A
が施されているFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。
【0128】
また、IgG3抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す);
(k)F241A
(l)D265A
(m)V264A
が施されているFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。
【0129】
また、IgG4抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す);
(n)L235A、G237A、E318A
(o)L235E
(p)F234A、L235A
が施されているFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。
【0130】
その他の好ましい例として、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸;233位、234位、235位、236位、237位、327位、330位、331位が、対応するIgG2またはIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が挙げられる。
【0131】
その他の好ましい例として、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸;234位、235位、297位が他のアミノ酸によって置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が好適に挙げられる。置換後に存在するアミノ酸の種類は特に限定されないが、234位、235位、297位のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸がアラニンに置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が特に好ましい。
【0132】
その他の好ましい例として、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸;265位が他のアミノ酸によって置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が好適に挙げられる。置換後に存在するアミノ酸の種類は特に限定されないが、265位のアミノ酸がアラニンに置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が特に好ましい。」
本e
「【実施例】
【0219】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【0220】
〔実施例1〕GPC3 ERY2の作製と検討
(1)概容
生体内に投与されたタンパク質の血中半減期を延ばす方法としては、目的タンパク質に抗体のFcドメインを付加し、FcRnを介したリサイクリング機能を利用する方法が良く知られている。しかしこの際、天然型のFcをBiTEに付加すると、一つの分子がBiTE部分の抗CD3 scFvを介してT細胞と結合すると同時に、Fc部分を介してNK細胞、マクロファージなどの細胞膜上のFcgR(Fcγ受容体)と結合することにより、癌抗原非依存的にこれらの細胞を架橋することによって活性化させ、各種サイトカインの誘導につながる可能性があるものと考えられた。そこで、BiTEにポリペプチドリンカーを介してFcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域(サイレント型Fc)を連結させた分子、ERY2が作製され、この活性をBiTEと比較する検証が行われた。肝臓癌細胞において高発現していることが知られているGPIアンカータンパクであるGlypican 3(GPC3)に対する抗体のscFvとCD3 epsilonに対する抗体のscFvを短いペプチドリンカーで連結することによって、GPC3に対するBiTE(GPC3 BiTE)が作製された(図17A)。ついで、これにサイレント型Fcを連結したGPC3に対するERY2(GPC3 ERY2)が作製された(図17C)。また、比較として通常のIgG型抗GPC3抗体が作製された。この際、IgG型抗GPC3抗体は、ADCC活性がより増強することが知られている、糖鎖部分においてフコース含量を低減させた抗体、すなわち低フコース型抗体として調製された。
【0221】
(2)GPC3 BiTEの作製
抗GPC3抗体の発現ベクターを鋳型として用いることによって、PCR法により増幅されたH鎖可変領域(anti-GPC3 VH)、L鎖可変領域(anti-GPC3 VL)をコードするcDNAがそれぞれ取得された。適切な配列を付加したプライマー及び当該cDNAを鋳型として用いたPCR法により、anti-GPC3 VHとanti-GPC3 VLとがGly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:7)を3回繰り返す配列からなるリンカーによって連結されたアミノ酸配列を有するanti-GPC3 scFvをコードするcDNA断片が作製された。
【0222】
また、抗CD3抗体(M12)のH鎖可変領域(M12 VH)、及びL鎖可変領域(M12 VL)の部分配列をコードする塩基配列を有し、その末端配列が相補的配列を有する一連のオリゴヌクレオチドが作製された。ポリメラーゼ反応によってこれら一連のオリゴヌクレオチドがその相補的配列部分を介して連結され当該H鎖可変領域(M12 VH)、及びL鎖可変領域(M12 VL)に相当するポリヌクレオチドが合成されるように設計された。当該オリゴヌクレオチドが混合された後、PCR法によってこれらのオリゴヌクレオチドが連結され、各可変領域のアミノ酸配列をコードする2つのcDNAが取得された。適切な配列を付加したプライマー及びこれらのcDNAを鋳型として用いたPCR法により、M12 VLとM12 VHとがGly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:7)を3回繰り返す配列からなるリンカーによって連結されたアミノ酸配列を有するM12 scFvをコードするcDNA断片が作製された。
【0223】
次に、適切な配列を付加したプライマー及びanti-GPC3 scFvとM12 scFvをそれぞれコードするcDNA断片を鋳型として用いたPCR法により、anti-GPC3 scFvとM12 scFvとがGly・Gly・Gly・Gly・Ser配列(配列番号:7)からなるリンカーによって連結され、かつそのC末端にHisタグ(8個のHis)が付加された(配列番号:33で記載されるアミノ末端の19アミノ酸を除く)アミノ酸配列をコードするcDNA断片が作製された。
【0224】
適切な配列を付加したプライマー及び配列番号:33で記載されるアミノ末端の19アミノ酸を除くアミノ酸配列をコードするcDNA断片を鋳型として用いたPCR法により、当該cDNA断片の5’側にEcoRI切断配列、kozac配列、及び分泌シグナル配列をコードする塩基配列が付加され、またその3’側にNot I切断配列が付加されたcDNA断片が作製された。このcDNA断片を、EcoRI、NotIで切断し、哺乳動物細胞用発現ベクターに組み込むことによって、GPC3 BiTE(配列番号:33、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)の発現ベクターを取得した。
【0225】
当該ベクターがエレクトロポレーション法によってCHO細胞DG44株へ遺伝子導入された。限界希釈後に1mg/mL Geneticine存在下で遺伝子導入された細胞を培養することによって薬剤耐性細胞株が単離された。Hisタグに対する抗体を用いて、得られた細胞株の培養上清に対するウエスタンブロット解析を行なうことにより、GPC3 BiTEを発現する細胞株が選択された。
【0226】
前記細胞株を大量に培養することによって得られた培養上清がSP Sepharose FFカラム(GE Healthcare社)に添加された。当該カラムの洗浄後、GPC3 BiTEを含む画分がNaClの濃度勾配によって溶出された。さらに当該画分がHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に添加された。当該カラムの洗浄後、GPC3 BiTEを含む画分がイミダゾールの濃度勾配によって溶出された。当該画分が限外ろ過膜で濃縮された後に、濃縮液がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加された。単量体のGPC3 BiTE画分のみを回収することにより精製GPC3 BiTEが得られた。
【0227】
(3)GPC3 ERY2の作製
上記した方法と同様の適切な配列が付加されたプライマーを用いたPCR法、およびQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)を用いた方法等の当業者において公知の方法によって、GPC3 ERY2_Hk(配列番号:34、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、およびGPC3 ERY2_Hh(配列番号:35、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された発現ベクターが作製された。
【0228】
これらの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞(Invitrogen社)に共に導入され、一過性にGPC3 ERY2が発現させた。得られた培養上清がAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。GPC3 ERY2を含む画分がHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。GPC3 ERY2を含む画分が限外ろ過膜で濃縮された後、濃縮液がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加され、その溶出液の単量体のGPC3 ERY2画分のみを回収することにより精製GPC3 ERY2が得られた。
【0229】
(4)低フコース型抗GPC3抗体の作製
抗GPC3抗体(WO2006/006693においてヒト化GC33抗体として記載されている)の発現ベクターがエレクトロポレーション法によってGDPフコースノックアウトCHO細胞DXB11株(Cancer Sci. (2010) 101(10), 2227-33)に遺伝子導入された。限界希釈後に0.5 mg/mL Geneticine存在下で培養することにより薬剤耐性株が選択され、低フコース型抗GPC3抗体発現株が得られた。この細胞を培養して調製した培養上清より、Hitrap(R) ProteinA(Pharmacia社)を用いた通常のアフィニティー精製により抗体画分が調製された。次に当該抗体画分がSuperdex 20026/60(Pharmacia社)を用いたゲルろ過精製に供され、溶出液のモノマー画分を分取することによって低フコース型GPC3抗体が得られた。
【0230】
(5)ヒト末梢血単核球を用いた細胞傷害活性の測定
(5-1)ヒト末梢血単核球(PBMC)溶液の調製
1,000単位/mLのヘパリン溶液(ノボ・ヘパリン注5千単位,ノボ・ノルディスク社)をあらかじめ100μL注入した注射器を用い、健常人ボランティア(成人)より末梢血50mLが採取された。PBS(-)で2倍希釈した後に4等分された末梢血が、15 mLのFicoll-Paque PLUSをあらかじめ注入して遠心操作が行なわれたLeucosepリンパ球分離管(Cat.No.227290、Greiner bio-one社)に加えられた。当該分離管の遠心分離(2,150rpm、10分間、室温)の後、単核球画分層が分取された。10%FBSを含むDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(SIGMA社、以下10%FBS/D-MEM)で1回単核球画分の細胞が洗浄された後、当該細胞は10%FBS/D-MEMを用いてその細胞密度が4×106/mLに調製された。このように調製された細胞溶液がヒトPBMC溶液として以後の試験に用いられた。
【0231】
(5-2)細胞傷害活性の測定
細胞傷害活性はxCELLigenceリアルタイムセルアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いた細胞増殖抑制率で評価された。標的細胞にはSK-HEP-1細胞株にヒトGPC3を強制発現させて樹立したSK-pca13a細胞株が用いられた。SK-pca13aをディッシュから剥離し、1×104cells/wellとなるようにE-Plate 96(ロシュ・ダイアグノスティックス社)プレートに100μL/wellで播き、xCELLigenceリアルタイムセルアナライザーを用いて生細胞の測定が開始された。翌日xCELLigenceリアルタイムセルアナライザーからプレートを取り出し、当該プレートに各濃度(0.004、0.04、0.4、4nM)に調製した各抗体50μLが添加された。室温にて15分間反応させた後に(5-1)で調製されたヒトPBMC溶液50μL(2×105cells/well)が加えられ、xCELLigenceリアルタイムセルアナライザーに当該プレートを再セットすることによって、生細胞の測定が開始された。反応は5%炭酸ガス、37℃条件下にて行われ、ヒトPBMC添加72時間後のCell Index値から、下式により細胞増殖抑制率(%)が求められた。なお計算に用いたCell Index値は、抗体添加直前のCell Index値が1となるようにノーマライズした後の数値が用いられた。
【0232】
細胞増殖抑制率(%)=(A-B)×100/(A-1)
【0233】
Aは抗体を添加していないウェルにおけるCell Index値の平均値(標的細胞とヒトPBMCのみ)、Bは各ウェルにおけるCell Index値の平均値を示す。試験はtriplicateにて行なわれた。
【0234】
ヒト血液より調製したPBMC(Peripheral Blood Mononuclear Cell)をエフェクター細胞としてGPC3 BiTE、GPC3 ERY2、およびIgG型GPC3抗体の細胞傷害活性を測定したところ、GPC3 BiTEには極めて強い活性が認められた(図1)。この活性は低フコース型抗GPC3抗体よりもはるかに強いものであり、GPC3 BiTEはIgG型抗体を凌駕する優れた癌治療薬となり得るものと考えられた。一方、GPC3 ERY2にはIgG型抗GPC3抗体を上回る活性が見られたものの、GPC3 BiTEの活性には及ばなかった。このことより、単にFcをBiTEに付加するだけでは目的とする分子を創製することができないものと考えられた。
【0235】
〔実施例2〕GPC3 ERY5、GPC3 ERY6、GPC3 ERY7の作製と検討
次に、癌抗原(GPC3)への結合ドメインを2価にすることにより、より癌細胞に対する結合活性を高めることで比活性を向上させることを試みた。GPC3 ERY2にさらにGPC3に対するscFvをもう一つ付加した形のGPC3 ERY5(図17D)、付加するGPC3に対する結合ドメインをscFvではなくFabの形にしたGPC3 ERY7(図17F)がそれぞれ作製された。また、GPC3 ERY5のCD3 epsilonに対するscFvを両腕に分離した形のGPC3 ERY6(図17E)も作製された。
【0236】
すなわち、上記した方法と同様の適切な配列が付加されたプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、GPC3 ERY5_Hh、GPC3 ERY6_Hk、GPC3 ERY6_Hh、GPC3 ERY7_Hh、GPC3 ERY7_Lをそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。
【0237】
以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。
【0238】
A.目的分子:GPC3 ERY5
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY5_Hh(配列番号:36、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY2_Hk
【0239】
B.目的分子:GPC3 ERY6
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY6_Hk(配列番号:37、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY6_Hh(配列番号:38、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)
【0240】
C.目的分子:GPC3 ERY7
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY7_Hh(配列番号:39、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY7_L(配列番号:40、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY2_Hk
【0241】
得られた培養上清がAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)による溶出が行われた。目的分子を含む画分がHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過膜で濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。
【0242】
これらのポリペプチド会合体とGPC3 BiTEとの細胞傷害活性の比較が行なわれた。その結果、これらのポリペプチド会合体の細胞傷害活性はいずれもGPC3 BiTEの活性に及ばないことが明らかとなった(図2~4)。このことから、BiTEの構造、あるいはそれを模倣した構造にFcを付加し、さらに癌抗原に対して2価で結合する構成のみでは目的とする分子を創製することができないものと考えられた。
【0243】
〔実施例3〕GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1の作製と検討
(1)GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1の作製
次に、BiTEの構造を持たずに目的の活性を持つ分子の創製が試みられた。癌抗原(GPC3)に対するIgGを基本骨格とし、これにCD3 epsilonに対するscFvを付加した形の分子が作製された。この際、基本骨格とするIgGのFcとしては、上述した場合と同様に、FcgR(Fcγ受容体)への結合性が減弱されたサイレント型Fcが用いられた。CD3 epsilonに対するscFvが抗GPC3抗体IgGのH鎖のN末に付加されたGPC3 ERY8-2(図17G)、H鎖のC末に付加されたGPC3 ERY10-1(図17I)、L鎖のC末に付加されたGPC3 ERY9-1(図17H)がそれぞれ作製された。
【0244】
すなわち、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、GPC3 ERY8-2_Hk(配列番号:41、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY8-2_Hh(配列番号:42、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_H(配列番号:43、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_ L-His(配列番号:44、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_ L-FLAG(配列番号:45、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY10-1_Hh(配列番号:46、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。
【0245】
以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。
【0246】
D.目的分子:GPC3 ERY8-2
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY8-2_Hk(配列番号:41、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY8-2_Hh(配列番号:42、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY7_L
【0247】
E.目的分子:GPC3 ERY9-1
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY9-1_H(配列番号:43、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_L-His(配列番号:44、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_L-FLAG(配列番号:45、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)
【0248】
F.目的分子:GPC3 ERY10-1
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY10-1_Hh(配列番号:46、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY8-2_Hk、GPC3 ERY7_L
【0249】
得られた培養上清がAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。
【0250】
これらの分子についてin vitroの細胞傷害活性を調べたところ、いずれの分子もGPC3 BiTEと同等以上の細胞傷害活性を示すことが明らかとなった(図5)。特に、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1は、明らかにGPC3 BiTEを上回る細胞傷害活性が認められた。本発明において、癌抗原に対するIgGにCD3 epsilonに対するscFvを付加する分子においてもBiTEと同等以上の細胞傷害活性を持つことが初めて明らかとなった。特に、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1のように癌抗原に対する結合ドメインとCD3 epsilonに対する結合ドメインの距離が大きい分子において、BiTEよりも明らかに強い細胞傷害活性が見られたことは予想外の結果であった。
【0251】
(2)GPC3 ERY8-2、及び、GPC3 ERY10-1の in vivo薬効の評価:
(1)で記載されたin vitroのアッセイでGPC3 BiTEと同等以上の細胞傷害活性が認められたGPC3 ERY8-2、及び、GPC3 ERY10-1のin vivoの薬効の評価が行なわれた。GPC3を発現するヒト肺癌細胞株であるPC-10がヒトPBMCと混合されNOD scidマウスに移植された。当該マウスに対してGPC3 ERY8-2、あるいはGPC3 ERY10-1の投与による治療が行なわれた(pre-mixモデルと指称される)。
【0252】
すなわち、GPC3 ERY8-2のPC-10 pre-mixモデルによる薬効試験においては、下記のような試験が実施された。健常人ボランティアより採取した血液から分離されたPBMCから、CD56 MicroBeads, human (MCAS Miltenyi biotec社)を用いてNK細胞が除去された。ヒト肺扁平上皮がん細胞株PC-10(免疫生物研究所)5×106細胞と、NK細胞が除去されたヒトPBMC 4.5×106細胞、およびマトリゲル基底膜マトリックス(BD社)が混和され、NOD scidマウス(日本クレア、雌、7W)のそけい部皮下に移植された。移植の日をday0とした。マウスには移植前日に抗アシアロGM1抗体(和光純薬)が0.2mg/匹で腹腔内に投与された。移植2時間後にGPC ERY8-2が30μg/匹で腹腔内投与された。GPC ERY8-2の投与がday0~4までの間、計5回行われた。
【0253】
また、GPC3 ERY10-1のPC-10 pre-mixモデルによる薬効試験においては、下記のような試験が実施された。健常人ボランティアより採取した血液から分離されたPBMCから、CD56 MicroBeads, human (MACS Miltenyi biotec社)を用いてNK細胞が除去された。ヒト肺扁平上皮がん細胞株PC-10(免疫生物研究所) 5×106細胞と、NK細胞が除去されたヒトPBMC 4.5×106細胞、およびマトリゲル基底膜マトリックス(BD社)が混和され、NOD scidマウス(日本クレア、雌、7W)のそけい部皮下に移植された。移植の日をday 0とした。マウスには移植前日に抗アシアロGM1抗体(和光純薬)が0.2mg/匹で腹腔内に投与された。移植2時間後にGPC ERY10-1が30μg/匹で腹腔内投与された。GPC ERY10-1の投与がday0~4、day 7~11、day14~16の間、計13回行われた。
【0254】
その結果、GPC3 ERY8-2、あるいはGPC3 ERY10-1投与群においては、コントロールである溶媒(PBS)投与群と比べて明らかに腫瘍の増殖が抑制されることが明らかとなった(図6および7)。
【0255】
また、別のモデルにおいてもGPC3 ERY10-1によるin vivo薬効の評価が行なわれた。すなわち、移植されたPC-10による腫瘍の形成が確認されたNOD scidマウスに、in vitroでヒトPBMCを培養することにより増殖させたT細胞が移入された。当該マウスに対してGPC3 ERY10-1を投与することによる治療が行なわれた(T細胞移入モデルと指称される)。
【0256】
すなわち、GPC3 ERY10-1のPC-10 T細胞移入モデルによる薬効試験においては、下記のような試験が行われた。健常人ボランティアより採取した血液から分離されたPBMC及びT cell activation/ expansion kit/ human(MACS Miltenyi biotec社)を用いてT細胞の拡大培養が行なわれた。ヒト肺扁平上皮がん細胞株PC-10(免疫生物研究所) 1×107細胞と、マトリゲル基底膜マトリックス(BD社)が混和され、NOD scidマウス(日本クレア、雌、7W)のそけい部皮下に移植された。移植の日をday 0とした。マウスには移植前日、およびday6、8、12、16、20に抗アシアロGM1抗体(和光純薬)が0.2mg/匹で腹腔内に投与された。移植後6日目に腫瘍サイズと体重に応じて群分けが行なわれた後、前記拡大培養によって得られたT細胞が1×107細胞/匹で腹腔内に移植された。その2時間後から、GPC ERY10-1が30μg/匹で腹腔内投与された。GPC ERY10-1の投与はday7、8、12、16、17に、計5回行われた。
【0257】
その結果、このモデルにおいても、GPC3 ERY10-1投与群においては溶媒投与群に比較して明らかな抗腫瘍作用が認められた(図8)。
【0258】
以上のことから、サイレント型Fcを持つIgGを基本骨格とし、これにCD3 epsilonに対する抗体のscFvを一つ付加した形の一連の分子は明らかなin vivoにおける抗腫瘍効果を奏することが示された。
【0259】
(3)血漿中滞留性の評価
GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1等の一連の分子が、GPC3 BiTEに比較して顕著に長い血漿中半減期を有するか否かを検証するために、癌細胞が移植されていないNOD scidマウスに対して30μg/匹で投与された、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1の血漿中濃度が経時的に測定された。
【0260】
すなわち、下記のようなPK解析試験が実施された。NOD scidマウス(日本クレア、雌、8W)の腹腔内にGPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1が30μg/匹で投与された。投与後、15min、2時間、1日、2日、7日の各ポイントでマウスの頬静脈よりヘマトクリット毛細管(テルモ)を用いて採血が行われ、その血漿が調製された。
【0261】
GPC3を発現させたBa/F3細胞(GPC3/BaF)およびヒトCD3 epsilonを発現させたBa/F3細胞(CD3/BaF)に適宜希釈したGPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1が加えられ、GPC3 ERY9-1、又は、GPC3 ERY10-1とGPC3/BaF又はCD3/BaFと反応させた。これらの細胞の洗浄の後、FITC標識された2次抗体が加えられ、当該二次抗体をさらに反応させた。当該細胞の洗浄の後、Epics XLフローサイトメーター(Beckman coulter社)により当該細胞に標識された蛍光強度が測定され、各抗体についての標準曲線が作成された。
【0262】
GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1が投与されたマウスより継時的に採取された血液から調製された血漿が適宜希釈された。上記の標準曲線の作成の場合と同様に当該血漿とGPC3/BaF、CD3/BaFとを反応させ、血漿中に存在するGPC3 ERY9-1及びGPC3 ERY10-1の各細胞への結合量が測定された。測定された値と前記の標準曲線を用いて、血漿中の各抗体濃度が算出された。
【0263】
その結果、GPC3 ERY9-1及びGPC3 ERY10-1はともに、投与後2日後において10 nM以上の血中濃度を維持していることが明らかとなった(図9および10)。この結果から、GPC3 ERY9-1及びGPC3 ERY10-1等の一連の分子の血漿中半減期はBiTEに比べて著しく改善されていることが示された。
【0264】
(4)癌抗原非依存的サイトカイン誘導におけるサイレントFcの効果
(4-1)FcgR結合型Fcを持つGPC3 ERY15-1の作製
GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1等の一連の分子が癌抗原非依存的なサイトカインの誘導を起こすか否かを検証するために、FcgR結合型Fcを持つGPC3 ERY15-1(図17J)を作製した。
【0265】
すなわち、上記の方法と同様に、適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法、およびQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)を用いた方法等の当業者にとって公知の方法により、GPC3 ERY15-1_Hh(配列番号:47、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY15-1_Hk(配列番号:48、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された発現ベクターが作製された。
【0266】
GPC3 ERY15-1_Hh(配列番号:47、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY15-1_Hk(配列番号:48、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、およびGPC3 ERY7_Lの発現ベクターが共にFreeStyle293-F細胞に導入され、GPC3 ERY15-1を一過性に発現させた。得られた培養上清がAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。GPC3 ERY15-1を含む画分がHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。GPC3 ERY15-1を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加され、溶出液の単量体のGPC3 ERY15-1画分のみを回収することにより精製GPC3 ERY15-1が得られた。
【0267】
(4-2)癌抗原非依存的なサイトカイン誘導能の測定
GPC3 ERY15-1の癌抗原非依存的なサイトカイン誘導能が、GPC3 BiTE、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1、及びcatumaxomabのそれと比較された。健常人ボランティアから採取した血液より上記の方法によりPBMCが調製された。ヒトPBMC溶液50 μL(2×105細胞/ウェル)に、40nMに調製された各抗体50μLが添加され、更に100μLの10%FBS/D-MEMが加えられた。反応液は5%炭酸ガス、37℃条件下にて培養された。72時間の培養の後に、培養上清が回収され、Human Th1/Th2/Th17 Kit(BD社)を用いたCytometric Beads Array(CBA)法にて培養上清中に分泌されたサイトカインが定量された。添付プロトコールに従った測定方法による試験はtriplicateにて行われた。
【0268】
その結果、FcgR結合型Fcを持つGPC3 ERY15-1、catumaxomabには明らかなサイトカイン誘導が認められたのに対して、Fcを持たないGPC3 BiTE、及びサイレント型Fcを持つGPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1ではサイトカイン誘導が認められなかった(図11)。よって、サイレント型Fcを持つGPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1等の一連の分子は癌抗原非依存的なサイトカイン誘導を起こさず、非常に高い安全性を持つ分子であるものと考えられた。」
本f
「【0279】
〔実施例5〕GPC3 ERY19-3の作製と検討
次に、CD3結合ドメインがFab様構造である分子の検討が行われた。癌抗原(GPC3)に対するIgG抗体の2本のH鎖のC末端にそれぞれCD3抗体のVH領域とCH1領域、およびVL領域とCL領域が結合した分子型であるGPC3 ERY19-3が作製された(図17L)。すなわち、上記の方法と同様に適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者にとって公知の方法により、GPC3 ERY19-3_Hh(配列番号:59、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY19-3_Hk(配列番号:60、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された発現ベクターが作製された。
【0280】
GPC3 ERY19-3_Hh(配列番号:59、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY19-3_Hk(配列番号:60、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、およびGPC3 ERY7_Lの発現ベクターが共にFreeStyle293-F細胞に導入され、一過性にGPC3 ERY19-3を発現させた。得られた培養上清がHiTrap rProtein A FFカラム(GE Healthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、酸による溶出が実施された。GPC3 ERY19-3を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加され、溶出液の単量体のGPC3 ERY19-3画分のみを回収することにより精製GPC3 ERY19-3が得られた。
【0281】
GPC3 ERY19-3分子によるin vitroの細胞傷害活性が評価された。その結果、GPC3 BiTEと同等の活性を有することが示された(図14)。Fab様構造を有するCD3結合ドメインによる、本願発明に係るポリペプチド会合体分子の安定化への貢献が期待される。」
本g
「【0296】
〔実施例7〕GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3の作製と検討
(1)GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3の作製
次に、癌抗原(GPC3)に対するIgGを基本骨格とし、片方のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた形の分子が作製された。この際、基本骨格とするIgGのFcとしては、上述した場合と同様に、FcgR(Fcγ受容体)への結合性が減弱されたサイレント型Fcが用いられた。CD3 epsilonに対する結合ドメインとして、CD3 epsilonに対するFabのVHドメインとVLドメインを置き換えたGPC3 ERY17-2(図19A)と、CH1ドメインとCLドメインを置き換えたGPC3 ERY17-3(図19B)がそれぞれ作製された。
【0297】
すなわち、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、ERY17-2_Hh(配列番号:73、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_L(配列番号:74、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-3_Hh(配列番号:75、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-3_L(配列番号:76、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。
【0298】
以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。
【0299】
P.目的分子:GPC3 ERY17-2
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY8-2_Hk、GPC3 ERY7_L、ERY17-2_Hh(配列番号:73、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_L(配列番号:74、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)
【0300】
Q.目的分子:GPC3 ERY17-3
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY8-2_Hk、GPC3 ERY7_L、ERY17-3_Hh(配列番号:75、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-3_L(配列番号:76、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)
【0301】
(2)GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3の精製
得られた培養上清がAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。
【0302】
(3)GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3の細胞傷害活性
GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3についてin vitroの細胞傷害活性が調べられた(図20)。その結果、いずれの分子も明らかにGPC3 BiTEを上回る細胞傷害活性を奏することが認められた。本発明において、癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた分子もBiTEと同等以上の細胞傷害活性を奏することが初めて明らかとなった。
【0303】
(4)PC-10 T細胞移入モデルを用いたGPC3 ERY17-2の薬効試験
in vitroのアッセイでGPC3 BiTEと同等以上の細胞傷害活性が認められたGPC3 ERY17-2のin vivoの薬効の評価がPC-10 T細胞移入モデルを用いて行なわれた。すなわち、GPC3 ERY17-2のPC-10 T細胞移入モデルによる薬効試験においては、下記のような試験が行われた。健常人ボランティアより採取した血液から分離されたPBMC及びT cell activation/ expansion kit/ human(MACS Miltenyi biotec社)を用いてT細胞の拡大培養が行なわれた。ヒト肺扁平上皮がん細胞株PC-10(免疫生物研究所) 1×107細胞と、マトリゲル基底膜マトリックス(BD社)が混和され、NOD scidマウス(日本クレア、雌、7W)のそけい部皮下に移植された。移植の日をday 0とした。マウスには移植前日、およびday13、17、21、25に抗アシアロGM1抗体(和光純薬)が0.2mg/匹で腹腔内に投与された。移植後13日目に腫瘍サイズと体重に応じて群分けが行なわれ、移植後14日目に前記拡大培養によって得られたT細胞が3×107細胞/匹で腹腔内に移植された。その2時間後から、GPC ERY17-2が30μg/匹で静脈内投与された。GPC ERY17-2の投与はday14、15、16、17、18に、計5回行われた。
【0304】
その結果、このモデルにおいても、GPC3 ERY17-2投与群においては溶媒投与群に比較して明らかな抗腫瘍作用が認められた(図21)。
【0305】
以上のことから、癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた分子は明らかなin vivoにおける抗腫瘍効果を奏することが示された。」
本h
「【0310】
〔実施例9〕EpCAM ERY17-2、EpCAM ERY17-3の作製と検討
(1)EpCAM ERY17-2、EpCAM ERY17-3の作製
次に、標的とする癌抗原が変わっても目的の活性を持つ分子の創製が試みられた。GPC3 ERY17-2のGPC3に対するFabをEpCAMに対するFabに変えたEpCAM ERY17-2(図19A)と、GPC3 ERY17-3のGPC3に対するFabをEpCAMに対するFabに変えたEpCAM ERY17-3(図19B)がそれぞれ作製された。すなわち、EpCAM抗体の発現ベクターが鋳型として用いられ、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、EpCAM ERY17_Hk(配列番号:79、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、EpCAM ERY17_L(配列番号:80、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。
【0311】
以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。
【0312】
R.目的分子:EpCAM ERY17-2
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:EpCAM ERY17_Hk(配列番号:79、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、EpCAM ERY17_L(配列番号:80、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_Hh、ERY17-2_L
【0313】
S.目的分子:EpCAM ERY17-3
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:EpCAM ERY17_Hk、EpCAM ERY17_L、ERY17-3_Hh、ERY17-3_L
【0314】
(2)EpCAM ERY17-2、EpCAM ERY17-3の精製
得られた培養上清がAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。
【0315】
(3)EpCAM ERY17-2、EpCAM ERY17-3の細胞傷害活性
EpCAM ERY17-2、EpCAM ERY17-3のin vitroの細胞傷害活性を調べたところ、いずれの分子においても強い細胞傷害活性が認められた(図23)。本発明において、癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた分子において、癌抗原の種類を変えても細胞傷害活性を持つことが明らかとなった。」
本i
「【0324】
〔実施例11〕EGFR ERY17-2の作製と検討
(1)EGFR ERY17-2の作製
さらに他の癌抗原を標的とした目的の活性を持つ分子の創製が試みられた。GPC3 ERY17-2のGPC3に対するFabをEGFRに対するFabに変えたEGFR ERY17-2(図19A)が作製された。すなわち、EGFR抗体の発現ベクターが鋳型として用いられ、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、EGFR ERY17_Hk(配列番号:91、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、EGFR ERY17_L(配列番号:92、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。
【0325】
以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。
【0326】
W.目的分子:EGFR ERY17-2
発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:EGFR ERY17_Hk(配列番号:91、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、EGFR ERY17_L(配列番号:92、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_Hh、ERY17-2_L
【0327】
(2)EGFR ERY17-2の精製
得られた培養上清がAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GE Healthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。
【0328】
(3)EGFR ERY17-2の細胞傷害活性
EGFR ERY17-2のin vitroの細胞傷害活性を調べたところ、強い細胞傷害活性が認められた(図26)。本発明において、癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた分子において、GPC3、EpCAMのみならず、癌抗原の種類をさらに変えても細胞傷害活性を持つことが明らかとなった。」
本j
「【産業上の利用可能性】
【0329】
本発明によって、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合体が提供された。本発明のポリペプチド会合体における抗原結合ドメインを置換することにより、当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤が癌細胞を含む様々な細胞を標的として細胞傷害をもたらし、様々な癌を治療又は予防することができる。患者にとっても、安全性が高いばかりでなく、身体的負担が少なく利便性も高いという、望ましい治療ができるようになる。」
本k
「【図1】
[図:0001416840000017.jpg]
【図2】
[図:0001416840000018.jpg]
【図3】
[図:0001416840000019.jpg]
【図4】
[図:0001416840000020.jpg]
【図5】
[図:0001416840000021.jpg]
・・・
図9
[図:0001416840000022.jpg]
図10
[図:0001416840000023.jpg]
図11
[図:0001416840000024.jpg]
・・・
【図14】
[図:0001416840000025.jpg]
・・・
【図19】
[図:0001416840000026.jpg]
【図20】
[図:0001416840000027.jpg]
・・・
【図23】
[図:0001416840000028.jpg]
・・・
【図26】
[図:0001416840000029.jpg]
」
(2)本件訂正発明が解決しようとする課題
本aの【0010】には「本発明は上記の情況に鑑みてなされたものであり、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、および当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤を提供することを目的とする。・・・」と記載されている。
ここで、「上記の情況」とは、本aの【0003】~【0008】からみて、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて抗腫瘍効果を発揮すると考えられるTR抗体は、極めて高い抗腫瘍薬としてのポテンシャルがあることが示唆されるが、TR抗体のうち、trifunctional抗体は、癌抗原非依存的にT細胞とNK細胞やマクロファージなどの細胞と同時に結合する結果、これらの細胞に発現する受容体が架橋されることにより、癌抗原非依存的な各種サイトカインの発現を誘導し、trifunctional抗体の全身投与によるサイトカインストーム様の副作用の発生につながること、及び、TR抗体のうち、BiTEは、trifunctional抗体と異なりFcγ受容体に対する結合部位を持たないため、癌抗原非依存的なサイトカインの誘導は起こらないことが示されているが、Fc領域を欠く低分子量型の改変抗体分子であるために、治療用抗体として通常用いられるIgG型の抗体に比較して、患者に投与されたBiTEの血中半減期は著しく短いこと、であると認められる。
そうすると、本件訂正発明は、極めて高い抗腫瘍薬としてのポテンシャルがあるTR抗体であるtrifunctional抗体やBiTEが備える技術課題に鑑み、提案されたものであることが理解できる。
そのうえ、【課題を解決するための手段】の項目(本bの【0011】)、【発明の効果】の項目(本bの【0014】)、及び【産業上の利用可能性】の項目(本jの【0329】)に、本件訂正発明によって、「BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合体」が提供されることが繰り返し記載されている。また、特に細胞傷害活性については、多くの実施例において、細胞傷害活性がBiTEと同等以上のものを「目的とする分子」と記載されており、細胞傷害活性はBiTEと同等以上のものこそが本件訂正発明であることが見て取れる。
そうすると、本件訂正発明は、TR抗体であるtrifunctional抗体やBiTEが備える技術課題に鑑み、提案されたものであり、「BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質を維持し、かつ長い血中半減期を持つ、T細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体を提供すること」を課題としたものであると認められる。
(3)無効理由4-1(会合体の抗腫瘍活性)
ア 請求人の主張の具体的内容
次の(ア)~(ウ)のとおり、訂正前の本件発明1、3~6に記載される会合体は、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するとは認められないから、本件発明の課題を解決できるとはいえない。訂正前の本件発明1を引用する訂正前の本件発明2、7~59、訂正前の本件発明3~6を引用する訂正前の本件発明7~59についても同様である。
(ア)訂正前の本件発明1の会合体の抗腫瘍活性
訂正前の本件発明1に含まれるポリペプチド会合体は、普通の二重特異性抗体にエフェクター機能を低下させるためにFc領域にアミノ酸変異を導入しただけの、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を得るための方策が何もなされていない、二重特異性抗体に過ぎない。方策が何もなされていないのだから、訂正前の本件発明1に係る二重特異性抗体が、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するようになることはあり得ない。本件特許明細書において、訂正前の本件発明1に係る二重特異性抗体の細胞傷害活性は測定されているが、BiTEとの比較は行われていないので、訂正前の本件発明1に係る二重特異性抗体が、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するとはいえない。訂正前の本件発明1に係る二重特異性抗体は、CH1/CL界面会合制御及びKnob into Hole(KiH)の効果を確認するための対照(コントロール)として使用するために作製されただけであり、そもそも、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有する二重特異性抗体として作製されたものではない。
(イ)訂正前の本件発明3及び4の会合体の抗腫瘍活性
訂正前の本件発明3及び4の会合体は、通常の抗体の構造を大きく変化させたものであるところ、本件特許明細書で実際に抗腫瘍活性(細胞傷害活性)を測定し、BiTEと比較されたポリペプチド会合体は、訂正前の本件発明3及び4についてそれぞれ1例(実施例7のGPC ERY17-2及びGPC3 ERY17-3)しかないが、実施例7の実験データは信頼できるものではない。また、実施例7のGPC3 ERY17-2とGPC3 ERY17-3において、癌抗原結合ドメインを別のものに変えた会合体(実施例9のEp-CAM ERY17-2とEp-CAM ERY17-3、実施例11のEGFR ERY17-2)についてはBiTEとの比較がなされていないが、これらの細胞傷害活性(図23、26)を実施例1~3及び7で測定されたBiTEの細胞傷害活性(図1~5、14、20)と比較してみると、実施例9、11の会合体の活性は、いずれもBiTEよりもはるかに弱いと考えられる。したがって、実施例7の結果を訂正前の本件発明3及び4の会合体全体にまで拡張ないし一般化することはできない。
(ウ)訂正前の本件発明5及び6の会合体の抗腫瘍活性
訂正前の本件発明5及び6の会合体は、通常の抗体の構造を大きく変化させたものであるところ、それらの実施例は記載されていない。また、訂正前の本件発明5及び6の会合体とは構造が異なる訂正前の本件発明3及び4の会合体の会合体についてそれぞれ1例しか記載されていない実施例7の抗腫瘍活性(細胞傷害活性)の結果を訂正前の本件発明1の(c)及び(d)の会合体にまで拡張ないし一般化することはできない。
イ 当審の判断
以下では、事案に鑑み、本件訂正発明3、4の会合体、本件訂正発明1、5、6の会合体の順で検討する。
(ア)本件訂正発明3、4の会合体の抗腫瘍活性
本件特許明細書の実施例7(本g)には、「癌結合ドメイン」をGPC3結合ドメイン、「T細胞受容体複合体結合ドメイン」をCD3結合ドメインとした場合の、本件訂正発明3の会合体であるGPC3 ERY17-2、本件訂正発明4の会合体であるGPC3 ERY17-3、及びBiTEの形態のGPC3 BiTEについて、細胞傷害活性を直接比較して、GPC3 ERY17-2及びGPC3 ERY17-3がGPC3 BiTEと同等以上の細胞傷害活性を有することが具体的に示されている(本kの図20、本gの【0302】)。
実施例7の実験で用いられた上記3つは「癌結合ドメイン」及び「T細胞受容体複合体結合ドメイン」が共通しており、ドメイン配置のみが異なるものであるのだから、実施例7の結果は、ドメイン配置による効果を一般化できるものである。したがって、実施例7により、本件訂正発明3及び4の会合体全体がBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するものであると認めることができる。
なお、請求人は、図20に示される実施例7のBiTEの細胞増殖抑制率だけが、他の実施例に示されるBiTEの細胞増殖抑制率とグラフの形状が異なること等を理由に、実施例7の図20に示されるデータは信頼できるものではない旨を縷々主張しているが、実施例7の実験方法、実験結果が、他の箇所の記載と比べて不自然な内容を含むものとは認められないし、実験系が異なれば同一の実験結果が得られるとはいえないことが通常であることからすると、図20のグラフの形状が他のグラフと多少異なるものであったとしても、実施例7の図20に示されるデータが信頼性に欠けるものとは認められない。
また、請求人は、実施例9及び11における本件訂正発明3及び4の会合体を実施例1~3及び7のBiTEと比較することにより、実施例7の結果の妥当性を否定するが、失当である。なぜならば、「癌抗原結合ドメイン」が実施例9の会合体ではEp-CAM結合ドメイン、実施例11の会合体ではEGFR結合ドメインであって、実施例1~3及び7のBiTEのGPC3結合ドメインとは異なるものであり、「癌抗原結合ドメイン」のドメインの種類が異なれば、癌抗原への結合活性や、癌細胞における癌抗原の発現量等が異なり、それらはいずれも細胞傷害活性に影響を及ぼすものであるのだから、請求人が行った比較ではドメイン配置の違いによる細胞傷害活性の違いを判断することができないからである。
(イ)本件訂正発明1、5、6の会合体の抗腫瘍活性
本件特許明細書の実施例7(本g)には、「癌結合ドメイン」をGPC3結合ドメイン、「T細胞受容体複合体結合ドメイン」をCD3結合ドメインとした場合の、本件訂正発明3及び4の会合体が、BiTEと同等以上の細胞傷害活性を有することが具体的に示され(本kの図20)、「癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、・・・分子もBiTEと同等以上の細胞傷害活性を奏することが初めて明らかとなった。」(【0320】)と結論付けられている。
また、実施例3(本e)にも、「癌結合ドメイン」をGPC3結合ドメイン、「T細胞受容体複合体結合ドメイン」をCD3結合ドメインとして、IgGを基本骨格としたドメイン配置の会合体とBiTEを比較し、IgGを基本骨格とした会合体がBiTEと同等以上の細胞傷害活性を有することが具体的データにより示され(本kの図5)、「いずれの分子(合議体注:IgGを基本骨格とした会合体)もGPC3 BiTEと同等以上の細胞傷害活性を示すことが明らかとなった」(【0250】)と結論付けられている。
上記実施例3及び7によれば、IgGを基本骨格とした各種会合体がBiTEが持つ強い細胞傷害活性(抗腫瘍活性)を有することが認められるから、同じくIgGを基本骨格とする、本件訂正発明1、5及び6の会合体も同様に、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することが優に推測される。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由4-1は理由がない。
(4)無効理由4-2(複数のFcγ受容体すべてに対する結合活性)
ア 請求人の主張の具体的内容
訂正前の本件発明12及び13は、それぞれ、ポリペプチド会合体のヒトFc領域変異体が、「ヒトFcγI、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBに対する結合活性が低下している」ポリペプチド会合体、並びに、「ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのすべてに対する結合活性が低下している」ポリペプチド会合体である。
しかしながら、本件特許明細書には、ヒトFcγI、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBの全てに対して、あるいは、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのすべてに対して、結合活性が低下するヒトFc領域のアミノ酸変異については一切記載されていない。
したがって、訂正前の本件発明12及び13に含まれるポリペプチド会合体は、本件特許発明の課題を解決できるとはいえず、サポート要件に違反するものである。同じ理由により、訂正前の本件発明12及び13を引用する訂正前の本件発明14~59、及び訂正前の本件発明12及び13が引用する訂正前の本件発明1~11も、サポート要件に違反するものである。
イ 当審の判断
令和5年7月4日提出の訂正請求書による訂正後の本件訂正発明では、訂正前の本件発明12及び13は削除されているから、無効理由4-2は、その前提としていた訂正特許請求の範囲が存在しなくなった。
なお、本件訂正発明においては、「ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異していることが特定されている」ことが特定されているから、ポリペプチド会合体のFcγ受容体に対する結合活性が低下し、上記(2)に示される本件訂正発明の課題を解決することができることを当業者は認識できたものといえ、無効理由4-2は解消している。
(5)無効理由4-3(Fc領域のアミノ酸変異)
ア 請求人の主張の具体的内容
訂正前の本件発明18、20~28及び30には、本件発明の「ポリペプチド複合体」が有する「ヒトFc領域変異体」が有するアミノ酸変異について、アミノ酸変異の位置(及び変異後のアミノ酸)が記載されており、ここには多様な「ヒトFc領域変異体」が含まれる。
しかしながら、そのような多様な「ヒトFc領域変異体」が、本件発明1の「当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している」という要件を満たすことについて、本件特許明細書により裏付けられていない。
訂正後の本件訂正発明1では、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」と、位置は特定されているが、どのアミノ酸に変異しているかが特定されていないから、本件訂正発明についても依然として上述の無効理由は存在する。
イ 当審の判断
令和5年7月4日提出の訂正請求書により、訂正後の本件訂正発明は、ポリペプチド会合体の「Fc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」ことが特定された。
ここで、本dの【0123】、【0124】には、「対照とするポリペプチド会合体としては、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体のFc領域を有するポリペプチド会合体が適宜使用され得る。当該Fc領域の構造は、配列番号:23(RefSeq登録番号AAC82527.1のN末にA付加)、24(RefSeq登録番号AAB59393.1のN末にA付加)、25(RefSeq登録番号CAA27268.1のN末にA付加)、26(RefSeq登録番号AAB59394.1のN末にA付加)に記載されている。また、ある特定のアイソタイプの抗体のFc領域の変異体を有するポリペプチド会合体を被検物質として使用する場合には、当該特定のアイソタイプの抗体のFc領域を有するポリペプチド会合体を対照として用いることによって、当該変異体が有する変異によるFcγ受容体への結合活性に対する効果が検証される。上記のようにして、Fcγ受容体に対する結合活性が低下していることが検証されたFc領域の変異体を有するポリペプチド会合体が適宜作製される。」、「このような変異体の例としては、EUナンバリングに従って特定されるアミノ酸である231A-238Sの欠失(WO 2009/011941)、C226S, C229S, P238S, (C220S)(J.Rheumatol (2007) 34, 11)、C226S, C229S(Hum.Antibod.Hybridomas (1990) 1(1), 47-54)、C226S, C229S, E233P, L234V, L235A(Blood (2007) 109, 1185-1192)等の変異体が公知である。」と記載され、同【0129】、【0131】には、「IgG4抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す);
(n)L235A、G237A、E318A
(o)L235E
(p)F234A、L235A
が施されているFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。」、「IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸;234位、235位、297位が他のアミノ酸によって置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が好適に挙げられる。置換後に存在するアミノ酸の種類は特に限定されないが、234位、235位、297位のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸がアラニンに置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が特に好ましい。」と記載されている。
また、本gの【0296】には「次に、癌抗原(GPC3)に対するIgGを基本骨格とし、片方のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた形の分子が作製された。この際、基本骨格とするIgGのFcとしては、上述した場合と同様に、FcgR(Fcγ受容体)への結合性が減弱されたサイレント型Fcが用いられた。CD3 epsilonに対する結合ドメインとして、CD3 epsilonに対するFabのVHドメインとVLドメインを置き換えたGPC3 ERY17-2(図19A)と、CH1ドメインとCLドメインを置き換えたGPC3 ERY17-3(図19B)がそれぞれ作製された。」と記載され、ERY17-2、ERY17-3がサイレント型Fcを有すること、すなわち、Fcγ受容体への結合性が減弱されていることが記載されており、答弁書の第232頁~第235頁の記載によれば、ERY17-2、ERY17-3は、IgG1のFc領域にL234A/L235Aの変異が導入されたものである(下線はいずれも当審で付与した。)。
上記のとおり、本件特許明細書の【0124】には234Vや235Aの変異体が公知であること、【0129】には234A/235Aを有する変異体が記載され、実施例では234A/235Aを有する変異体についてFcγ受容体への結合性が低下したことが確認されている。
そして、ポリペプチド中のあるアミノ酸残基を、それと構造や電荷等が類似するそのほかのアミノ酸残基へと置換しても、もとの性質が変化しない場合が多いことは本願出願時点における技術常識であり、このことを裏付ける記載として、A(アラニン)と類似したアミノ酸であるバリン(V)の変異を有する変異体である234V/235AがFcγ受容体への結合性低下を示したことが乙22(特に、乙22aのTable1、乙22bのFig.5)、乙23(特に、乙23aのTable1、乙23bの第2616頁右欄第2行~第10行)に示されている。
そうすると、本件特許明細書の上記記載に接した当業者であれば、234位および235位をAと構造や電荷等が類似するアミノ酸残基に置換した場合でも、234A/235Aと同様にFcγ受容体への結合性が低下する場合が多いこと、234位及び235位をAと類似するアミノ酸残基に置換した変異体について、【0123】にも記載されているとおり、当業者にとって通常行う程度の検証試験によりFcγ受容体への結合性が低下した変異体を選択すれば、本件訂正発明の課題を解決できることを当業者は認識し得たものと認められる。
よって、請求人の主張は理由がない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由4-3は理由がない。
(6)小括
無効理由4-1の当審の判断で述べたとおり、本件訂正発明のポリペプチド会合体は、実施例の記載より、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を備えたものであることを当業者は理解できる。
また、無効理由4-3の当審の判断で述べたとおり、本件訂正発明のポリペプチド会合体は、「Fc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」ことにより、Fcγ受容体への結合性が低下しているドメインを備えており、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質を維持していることを当業者は理解できる。
さらに、BiTEはFc領域を欠くために血中半減期が短いという問題点を有するところ(【0008】)、本件訂正発明のポリペプチド会合体は、Fc領域を有するものであり、実施例3(本e、特に【0263】)でも確認されたとおり、長い血中半減期を持つものである。
そうすると、本件訂正発明は、本件特許明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえると、上記(2)で示した課題を解決できることを当業者が認識できるものであるから、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
したがって、本件訂正発明1、3~6、11、14~18、20~22、24、28、30~44、46~196についての無効理由4(サポート要件違反)は、いずれも理由がない。
5 無効理由5(実施可能要件違反)について
(1)無効理由5-1(会合体の抗腫瘍活性)
ア 請求人の主張の具体的内容
上記4(3)ア(無効理由4-1)で説明したように、本件特許明細書の記載には、訂正前の本件発明1、3~6に含まれる全ての二重特異性抗体が、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することは記載されていないのだから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正前の本件発明1、3~6を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
よって、訂正前の本件発明1、及び、訂正前の本件発明1を引用する訂正前の本件発明2、7~59、訂正前の本件発明3~6を引用する訂正前の本件発明7~59は実施可能要件に違反するものである。
イ 当審の判断
上記4(3)イで検討したとおり、当業者であれば、本件特許明細書の記載から、本件訂正発明1、3~6に示されるポリペプチド会合体が、BiTEと同等以上の抗腫瘍活性(細胞傷害活性)を有することを理解でき、当該効果を有する本件訂正発明に示されるポリペプチド会合体を製造し、それを使用することに過度の試行錯誤、実験を要するとは認められない。
したがって、請求人による無効理由5-1に係る主張は、理由がない。
(2)無効理由5-2(複数のFcγ受容体すべてに対する結合活性)
ア 請求人の主張の具体的内容
上記4(2)ア(無効理由4-2)で説明したように、本件特許明細書には、ヒトFcγI、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBの全てに対して、あるいは、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのすべてに対して、結合活性が低下するヒトFc領域のアミノ酸変異については一切記載されていないのだから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正前の本件発明12及び13を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
よって、訂正前の本件発明12及び13、並びに訂正前の本件発明12及び13を引用する訂正前の本件発明14~59及び訂正前の本件発明12及び13を含む訂正前の本件発明1~11は実施可能要件に違反するものである。
イ 当審の判断
上記4(4)イで検討したとおり、令和5年7月4日付け訂正請求書による訂正後の本件訂正発明では、訂正前の本件発明12及び13は削除されているから、無効理由5-2は、その前提としていた訂正特許請求の範囲が存在しなくなった。
なお、本件訂正発明においては、「ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異していることが特定されている」ことによって、ポリペプチド会合体のFcγ受容体に対する結合活性が低下することを当業者は理解でき、当該ポリペプチド会合体を製造し、それを使用することに過度の試行錯誤、実験を要するとは認められないから、無効理由5-2は解消している。
(3)無効理由5-3(Fc領域のアミノ酸変異)
ア 請求人の主張の具体的内容
本件訂正発明には、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下することが理解できないアミノ酸変異が含まれており、全てのアミノ酸変異の組み合わせからヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下する組み合わせを選択することは当業者に過度の試行錯誤を要求するものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、実施可能要件に違反するものである。
イ 当審の判断
令和5年7月4日付け訂正請求書により訂正後の本件訂正発明は、ポリペプチド会合体の「Fc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」ことが特定された。
そして、上記4(5)イで検討したとおり、本件特許明細書の記載及び乙22、乙23の記載に照らすと、本件訂正発明における、「ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」ことにより、実施例で効果が確認されている234A/235Aや、アラニン(A)と構造や電荷が類似する他の一部のアミノ酸変異であっても、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下することを当業者は期待できるから、「変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下」するような変異体、すなわち、本件訂正発明に係るポリペプチド会合体の取得や使用において、当業者に過度の試行錯誤、実験を要するとは認められない。
よって、請求人の主張は理由がない。
(4)小括
無効理由5-1~無効理由5-3の当審の判断で述べたとおり、本件訂正発明のポリペプチド会合体を製造し、それを使用することが、当業者において、過度の試行錯誤、実験を要するとは認められないので、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているといえる。
したがって、本件訂正発明1、3~6、11、14~18、20~22、24、28、30~44、46~196についての無効理由5(実施可能要件違反)は、いずれも理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、本件訂正後の請求項1、3~6、11、14~18、20~22、24、28、30~44、46~196に記載された発明の特許は、請求人が主張する理由のいずれによっても無効とすることはできない。
請求項2、7~10、12、13、19、23、25~27、29、45は、本件訂正によって削除されたため、本件特許の請求項2、7~10、12、13、19、23、25~27、29、45に係る発明についての審判請求は不適法な請求であり、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により、それらに対して請求人がした請求については、却下する。
審判に関する費用については、請求人は令和6年2月19日付けで訴えを取り下げているから、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、参加人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-800030