審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2019-800091

PIVKA-IIに関する抗体およびその使用

審判番号
2019-800091
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2013-521798
登録番号
5981914
請求日
2019年10月29日
審決日
2022年04月14日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ロシュ ダイアグノスティックス ゲーエムベーハー
  • 【請求人代理人】細田 芳徳
  • 【被請求人】アボット・ラボラトリーズ
  • 【被請求人代理人】特許業務法人川口國際特許事務所
  • 【被請求人代理人】小林 純子
  • 【被請求人代理人】米山 朋宏
  • 【被請求人代理人】丸山 智裕
  • 【被請求人】アボットジャパン 合同会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人川口國際特許事務所
  • 【被請求人代理人】小林 純子
  • 【被請求人代理人】米山 朋宏
  • 【被請求人代理人】丸山 智裕
審判長/審判官
  • 審判長 長井 啓子
  • 審判官 吉森 晃
  • 審判官 福井 悟
分類
P1123.113-YAA(C12N) / P1123.121-YAA(C12N) / P1123.16 -YAA(C12N) / P1123.536-YAA(C12N) / P1123.537-YAA(C12N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第131条の2第2項、特許法第134条の2第6項、特許法第184条の19、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5981914号発明「PIVKA-IIに関する抗体およびその使用」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第5981914号の特許請求の範囲を、令和3年7月19日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[3-5、40-41、52-54]、[13-21]、[22-30]、[31-37]、[45-51]、[55-67]、[68-70]、[71-75]について訂正することを認める。 特許第5981914号の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~38、40、45~53、55、57~69、71、72に係る発明についての無効審判請求は、成り立たない。 特許第5981914号の請求項73及び74に係る発明についての無効審判請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第5981914号(請求項の数は75。以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年7月8日(パリ条約による優先権主張 平成22年7月26日 米国)を国際出願日とする特願2013-521798号であって、平成28年8月5日に特許権の設定登録がなされたものである。 請求人は、令和1年10月29日付けで当該特許の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~38、40、45~53、55、57~69及び71~74に係る発明の特許について、甲第1~14号証を提出し、特許無効審判請求を行った。本件無効審判の手続の経緯は以下のとおりである。 令和1年10月29日 審判請求書の提出 令和2年 3月27日 審判事件答弁書、訂正請求書、及び乙第1号証の提出 令和2年 5月29日 審判事件弁駁書の提出 令和2年 7月14日付け 審理事項通知書 令和2年 8月27日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 令和2年 9月10日 口頭審理陳述要領書、及び甲第15~16号証の提出(請求人) 令和2年 9月24日 口頭審尋 令和2年10月 8日 上申書、及び乙第2号証の提出(被請求人) 令和2年10月 8日 上申書、及び甲第17号証の提出(請求人) 令和3年 2月10日付け 審決の予告 令和3年 7月19日 訂正請求書、上申書(被請求人)、及び乙第3号証の提出 令和3年 9月29日 審判事件弁駁書、及び甲第18号証の提出 第2 補正の許否の決定 1 決定の結論 審判請求人が令和3年9月29日に提出した弁駁書による請求の理由の補正については、特許法第131条の2第2項の規定により、許可することを決定する。 2 決定の理由 令和3年9月29日提出の弁駁書において、請求人は訂正後の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~37、40、45~53、55、57~69、71、72に係る発明は、実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)、サポート要件(同法第36条第6項第1号)、及び明確性要件(同法第36条第6項第2号)の無効理由を有している旨を主張するが、これは令和3年7月19日にされた訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたものと認められる。 第3 訂正請求について 1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容 被請求人が令和3年7月19日付け訂正請求書により請求する訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものである。 その請求の内容は、請求項3~5、13~37、40、41、45~75、及び、明細書に係る訂正であって、一群の請求項ごと([3-5、40、41、52-54]、[13-21]、[22-30]、[31-37]、[45-51]、[55-67]、[68-70]、[71-75])になされた、以下のとおりのものである(下線部が訂正箇所である。)。 なお、令和2年3月27日にされた訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなされる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3に「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含む、単離された結合性タンパク質」とあるのを、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「単離された結合性タンパク質」とあるのを、「単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項13に「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有する抗体」とあるのを、「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項13に「抗体」とあるのを、「抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項22に「b)第2の抗体がPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、」とあるのを、「b)PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合し、」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項22に「第2の抗体」とあるのを、「第2の抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項29に「請求項28に記載の方法」とあるのを、「請求項27に記載の方法」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項31に「抗体がPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合ドメインを含み」とあるのを、「抗体がPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合ドメインを含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するものであり」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項31に「結合する」とあるのを、「結合するもの(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)であり」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項45に「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に抗原結合性ドメインを有し」とあるのを、「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを有し」に訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項45に「検出可能な標識に付着している第2の抗体」とあるのを、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合し、検出可能な標識に付着している第2の抗体」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項45に「第2の抗体」とあるのを、「第2の抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)」に訂正する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項45のステップd)に「前記試験試料中に存在する」とあるのを、「前記生物学的試料中に存在する」に訂正する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項55に「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有する抗体」とあるのを、「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」に訂正する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項55に「抗体」とあるのを、「抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)であり」に訂正する。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項68に「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含む第2の単離された結合性タンパク質」とあるのを、「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する第2の単離された結合性タンパク質」に訂正する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項68に「第2の単離された結合性タンパク質」とあるのを、「第2の単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)」に訂正する。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項71に「各結合性タンパク質」とあるのを、「前記結合性タンパク質の各々」に訂正する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項71に「PIVKA-IIのアミノ酸1-33の異なるサブセットに結合する」とあるのを、「PIVKA-IIのアミノ酸1-33の異なるサブセットに結合し、前記結合性タンパク質の少なくとも一つは、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するものである」に訂正する。 (20)訂正事項20 特許請求の範囲の請求項71に「結合する」とあるのを、「結合するもの(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)である」に訂正する。 (21)訂正事項21 特許請求の範囲の請求項73を削除する。 (22)訂正事項22 特許請求の範囲の請求項74を削除する。 (23)訂正事項23 特許請求の範囲の請求項75を削除する。 (24)訂正事項24 願書に添付した明細書の段落【0028】における「第2の抗体は、PIVKAの脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することができ、脱炭酸された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる。」という記載のうち、「脱炭酸された(通常の)アミノ酸残基」を「カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基」に訂正する。 (25)訂正事項25 明細書の段落【0166】における「プロトロンビン(II因子)はアミノ酸長17個のペプチド中に脱炭酸されたグルタミン酸(GLA)を4個有していた。」という記載のうち、「脱炭酸されたグルタミン酸(GLA)」を「カルボキシル化されたグルタミン酸(GLA)」に訂正する。 (26)訂正事項26 明細書の段落【0182】における「プロトロンビン(II因子)はアミノ酸長15個のペプチド中に脱炭酸されたグルタミン酸(GLA)6個を有していた。」という記載のうち、「脱炭酸されたグルタミン酸(GLA)」を「カルボキシル化されたグルタミン酸(GLA)」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1、3、8、11、14、16について 訂正事項1は、訂正前の請求項3において、結合性タンパク質を、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含むことで特定していたものを、さらにPIVKA-IIを特異的に認識して結合するように限定したものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、本件明細書の段落【0029】には、「本開示の結合性タンパク質または抗体は、約1×10-9Mまたはそれを超える、好ましくは約1×10-10Mまたはそれを超える、PIVKA-IIのアミノ酸領域1-13に対する解離定数(Kd)を有する。抗体はこのように、PIVKA-IIを特異的に認識し結合することができる。」と記載されており、本件明細書には、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、PIVKA-IIを特異的に認識し結合することができる抗体等が記載されていることが明らかであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そうすると、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 訂正事項3、8、11、14、16も、それぞれ訂正前の請求項13、31、45、55、68において、抗体等をPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含むこと等で特定していたものを、さらにPIVKA-IIを特異的に認識して結合するように限定したものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、これらの訂正事項も、訂正事項1と同様、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項5について 訂正事項5のうち「第2の抗体が」を削除する訂正は、訂正前の請求項22において、「第2の抗体」の重複記載を除くものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、訂正事項5のうち「PIVKA-IIを特異的に認識して結合し」を追加する訂正は、訂正前の請求項22において、抗体を、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含むこと等で特定していたものを、さらにPIVKA-IIを特異的に認識して結合するように限定したものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、上記(1)と同様に、訂正事項5は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項2、4、6、9、12、15、17、20について 訂正事項2は、訂正前の請求項3において、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含む結合性タンパク質から、受託番FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されモノクローナル抗体を除くものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、受託番FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生される特定のモノクローナル抗体は、訂正前の請求項3の結合性タンパク質に含まれる具体的かつ特定の抗体にすぎず、これを除いたとしても、除かれたあとの発明において、新たな技術的特徴が導入されるとは認められない。 したがって、この訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 訂正事項4、6、9、12、15、17、20も、受託番FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されモノクローナル抗体を単に除くものであるから、訂正事項2と同様に、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。 (4)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項29において、請求項28を引用していたが、請求項28に記載の化合物と、請求項29の化合物との従属関係が明瞭ではなかったため、引用する請求項を請求項28から請求項27に変更することで、従属関係を明瞭にするものである。 したがって、訂正事項7は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、この訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の請求項45において、「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13」と「抗原結合性ドメイン」の修飾関係が明瞭でなかったため、「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメイン」とするものである。 したがって、訂正事項10は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、この訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項13について 訂正事項13は、訂正前の請求項45において、「前記試験試料」と、その前に記載された「生物学的試料」の関係性が明瞭でなかったため、「試験試料」を「生物学的試料」に統一するものである。 したがって、訂正事項13は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、この訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項18について 訂正事項18は、訂正前の請求項71において、「各結合性タンパク質」と、その前に記載された「少なくとも2つの異なる結合性タンパク質」の関係性が明瞭でなかったため、「各結合性タンパク質」を「前記結合性タンパク質の各々」とするものである。 したがって、訂正事項18は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、この訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (8)訂正事項19について 訂正事項19は、訂正前の請求項71において、少なくとも2つの異なる結合性タンパク質のうち、一つをPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するものに限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、本件明細書段落【0026】及び【0029】には、次のように記載されている。 「別の一態様において、本開示は、少なくとも2つの異なる結合性タンパク質の使用を含む、試料中のPIVKA-IIの量を決定するための方法を提供し、・・・各結合性タンパク質の抗原結合性部分は、PIVKA-IIのアミノ酸1-33の異なるサブセットに結合する。結合性タンパク質は、モノクローナル抗体であることができる。・・・第2のモノクローナル抗体は、例えば、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有することができる。」(段落【0026】)。 「本開示の結合性タンパク質または抗体は、約1×10-9Mまたはそれを超える、好ましくは約1×10-10Mまたはそれを超える、PIVKA-IIのアミノ酸領域1-13に対する解離定数(Kd)を有する。抗体はこのように、PIVKA-IIを特異的に認識し結合することができる。」(段落【0029】)。 したがって、PIVKA-IIの量を決定するために利用する2種の抗体のうち、第2の抗体に、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、PIVKA-IIを特異的に認識し結合することができる抗体が含まれることは明らかであるから、訂正事項19は、上述のとおり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そうすると、訂正事項19は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (9)訂正事項21~23について 訂正事項21~23は、訂正前の請求項73~75を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項21~23は、訂正前の請求項73~75を削除するものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。 (10)訂正事項24~26について 訂正事項24~26は、いずれも本件明細書の誤訳を訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する「誤訳の訂正」を目的とするものである。 また、訂正事項24~26は、いずれも願書に添付した明細書に記載されているといえるから、特許法第184条の19で読み替えて準用する特許法第126条第5項に適合する。 3 本件訂正後の発明の独立特許要件について 上記の「第1 手続きの経緯」で述べたように、本件特許無効の申し立ては、本件請求項1~74に係る特許のうち請求項3~5、13、15~22、25~31、33~38、40、45~53、55、57~69及び71~74に係る特許について申立てられたものであるから、上記の請求項に係る発明は、独立特許要件の判断を要しない。 一方、上記の請求項と一群の請求項の関係であることにより、訂正がなされることになる請求項14、23~24、32、41、54、56、70に係る特許に対しては、本件特許無効の申し立てはなされていない。 そして、請求項14、23~24、32、41、54、56、70に係る発明は、いずれも上記の「1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容」で示した訂正により、これらの請求項が直接又は間接的に引用する請求項と連動して訂正を受けるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がなされることになるものである。 しかるところ、下記の「第7 当審の判断」で示されるように、請求項14、23~24、32、41、54、56、70に係る発明が、直接的に引用する請求項13、22、31、40、53、55、69に係る発明には無効理由がなく、他に無効とする理由も発見されないから、本件訂正後の請求項14、23~24、32、41、54、56、70に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。 4 訂正請求についての結論 以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに、同法第184条の19で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 第4 本件訂正発明 本件特許の請求項1~75に係る発明は、本件訂正特許請求の範囲の請求項1~75に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」等といい、まとめて「本件訂正発明」ということもある。なお、下線部が訂正箇所である。) 「 【請求項1】 アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)受託番号PTA-10541によって表される、ハイブリドーマ細胞系統。 【請求項2】 請求項1に記載のハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体。 【請求項3】 プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。 【請求項4】 4.0×10-9またはそれより低い結合解離定数(Kd)を有する、請求項3に記載の単離された結合性タンパク質。 【請求項5】 1.0×10-9から1.0×10-10までの結合解離定数(Kd)を有する、請求項3に記載の単離された結合性タンパク質。 【請求項6】 結合性タンパク質が可変重鎖領域を有し、可変重鎖領域のアミノ酸配列が請求項2に記載のモノクローナル抗体のアミノ酸配列に少なくとも95%の配列同一性を有する、PIVKA-IIに結合する結合性タンパク質をコードする単離された核酸分子。 【請求項7】 結合性タンパク質がPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含む、請求項6に記載の単離された核酸分子。 【請求項8】 請求項2に記載のモノクローナル抗体のアミノ酸配列に少なくとも95%の配列同一性を有する、精製されたポリペプチド。 【請求項9】 請求項6に記載の単離された核酸分子を含むベクター。 【請求項10】 請求項9に記載のベクターを含む単離された宿主細胞。 【請求項11】 a)調節エレメントに操作可能に連結している請求項7に記載の核酸分子を含むベクターを構築するステップ、b)得られたベクターを宿主細胞中に形質転換で導入するステップ、c)結合性タンパク質を生成するのに十分な時間および条件下、前記宿主細胞を培養するステップを含む、PIVKA-IIに結合することができる結合性タンパク質を生成する方法。 【請求項12】 請求項11に記載の方法にしたがって生成される、単離された結合性タンパク質。 【請求項13】 a)試験試料を、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)と、抗体-抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、およびb)前記抗体-抗原複合体の存在が前記試験試料中のPIVKA-II抗原の存在を示す、前記抗体-抗原複合体の存在を検出するステップ、を含む、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法。 【請求項14】 前記抗体が、ATCC受託番号PTA-10541を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体である、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 試験試料が、全血、血清、または血漿である、請求項13に記載の方法。 【請求項16】 抗体が検出可能な標識で標識化されており、(b)が、検出可能な標識によって生成され、または検出可能な標識から放射されるシグナルを測定するステップ、および試験試料中のPIVKA-II抗原を検出するステップを含む、請求項13に記載の方法。 【請求項17】 検出可能な標識が、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識、および免疫-ポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。 【請求項18】 検出可能な標識がアクリジニウム化合物である、請求項16に記載の方法。 【請求項19】 a)過酸化水素の源を生成し、または抗体-抗原複合体に提供するステップ、b)塩基性溶液をステップ(a)の混合物に加えるステップ、およびc)ステップ(b)において生成され、または放射される光シグナルを測定し、試料中のPIVKA-IIを検出するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。 【請求項20】 アクリジニウム化合物が、式I: 【化1】 [図:0001416847000001.jpg] [式中、R1およびR2は各々独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化2】 [図:0001416847000002.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキサミドである、請求項18に記載の方法。 【請求項21】 アクリジニウム化合物が、式II: 【化3】 [図:0001416847000003.jpg] [式中、R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルであり、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアル キルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化4】 [図:0001416847000004.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルである、請求項18に記載の方法。 【請求項22】 試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法であって、 a)試験試料を、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体と、第1の抗体-抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、b)PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合し、検出可能な標識にコンジュゲートしている、第2の抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)を第1の抗体/抗原複合体に、第1の抗体/抗原/第2の抗体の複合体を形成するのに十分な時間および条件下、加えるステップ、ならびにc)検出可能な標識によって生成され、または検出可能な標識から放射されるシグナルを測定し、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出するステップを含む、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する前記方法。 【請求項23】 第1の抗体が、ATCC受託番号PTA-9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体である、請求項22に記載の方法。 【請求項24】 第2の抗体が、ATCC受託番号PTA-10541を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体である、請求項22に記載の方法。 【請求項25】 試験試料が、全血、血清、または血漿である、請求項22に記載の方法。 【請求項26】 検出可能な標識が、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識、および免疫-ポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。 【請求項27】 検出可能な標識がアクリジニウム化合物である、請求項22に記載の方法。 【請求項28】 アクリジニウム化合物が、式I: 【化5】 [図:0001416847000005.jpg] [式中、R1およびR2は各々独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニ ル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化6】 [図:0001416847000006.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキサミドである、請求項27に記載の方法。 【請求項29】 アクリジニウム化合物が、式II: 【化7】 [図:0001416847000007.jpg] [式中、R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルであり、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化8】 [図:0001416847000008.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルである、請求項27に記載の方法。 【請求項30】 第1の抗体が固相上に、第1の抗体-抗原複合体の形成の前または後のいずれかに固定化される、請求項22に記載の方法。 【請求項31】 試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法であって、 a)試験試料を、1)検出可能なシグナルを生成することができる検出可能な標識に付いている、PIVKA-IIレファレンス抗原、および2)PIVKA-II抗原に対する抗体と、PIVKA-IIレファレンス抗原/抗体複合体を形成するのに十分な時間および条件下、接触させるステップ、b)検出可能な標識によって生成されるシグナルを検出するステップであって、抗体がPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合ドメインを含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するもの(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)であり、試験試料中に検出されるPIVKA-II抗原の量が、抗体に結合しているPIVKA-IIレファレンス抗原の量に逆比例する、ステップを含む、試験試料 中のPIVKA-II抗原を検出する前記方法。 【請求項32】 抗体が、ATCC受託番号PTA-10541を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成される、請求項31に記載の方法。 【請求項33】 試験試料が、全血、血清、または血漿である、請求項31に記載の方法。 【請求項34】 検出可能な標識が、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識、および免疫-ポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。 【請求項35】 検出可能な標識がアクリジニウム化合物である、請求項31に記載の方法。 【請求項36】 アクリジニウム化合物が、式I: 【化9】 [図:0001416847000009.jpg] [式中、R1およびR2は各々独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化10】 [図:0001416847000010.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキサミドである、請求項35に記載の方法。 【請求項37】 アクリジニウム化合物が、式II: 【化11】 [図:0001416847000011.jpg] [式中、R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルであり、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化12】 [図:0001416847000012.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルである、請求項35に記載の方法。 【請求項38】 PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、 a)GANPマウスを、PIVKA-IIのアミノ酸1-17を含む抗原で、前記マウスが前記抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ、b)前記マウスの脾臓から8つの細胞を収集し、精製するステップ、c)ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびにd)PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを含む前記結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する前記方法。 【請求項39】 ハイブリドーマ細胞系統がATCC受託番号PTA-10541を有する、請求項38に記載の方法。 【請求項40】 請求項3に記載の結合性タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、薬剤組成物。 【請求項41】 結合性タンパク質が、ATCC受託番号PTA-10541を有するハイブリドーマ細胞系によって生成されるモノクローナル抗体を含む、請求項40に記載の薬剤組成物。 【請求項42】 肝細胞癌(HCC)または肝癌を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌の存在を決定する方法であって、 a)患者に由来する生物学的試料を、PIVKA-II抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下、PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含む抗体と接触させるステップ、b)PIVKA-II抗原/抗体複合体の存在を検出するステップ、c)前記複合体中に存在する前記PIVKA-II抗原を、前記複合体中に存在する前記抗体から解離するステップ、ならびにd)予め決定されたレベルを超える解離されたPIVKA-II抗原の量が、前記患者における肝細胞癌(HCC)または肝癌の存在を示す、解離したPIVKA-II抗原の量を測定するステップを含む、HCCまたは肝癌を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌の存在を決定する前記方法。 【請求項43】 予め決定されたレベルが40mAU/mLである、請求項42に記載の方法。 【請求項44】 生物学的試料が、全血、血清、または血漿である、請求項42に記載の方法。 【請求項45】 肝細胞癌(HCC)または肝癌を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌の存在を決定する方法であって、 a)患者に由来する生物学的試料を、PIVKA-II抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下、PIVKA-II抗原のアミノ酸13-27に結合する抗原結合性ドメインを有する第1の抗体と接触させるステップ、b)検出可能なシグナルを産生することができるPIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合し、検出可能な標識に付着している第2の抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)を含むコンジュゲートを、得られたPIVKA-II抗原/抗体複合体に、結合しているPIVKA-II抗原に前記コンジュゲートを結合させるのに十分な時間および条件下、加えるステップ、c)前記検出可能な標識によって産生されるシグナルを検出することによって、前記生物学的試料中に存在する可能性があるPIVKA-II抗原の存在を検出するステップ、ならびにd)予め決定されたレベルを超えるPIVKA-II抗原の量が、前記患者におけるHCCまたは肝癌の存在を示す、前記シグナルの強度を測定することによって前記生物学的試料中に存在するPIVKA-II抗原の量を測定するステップを含む、HCCまたは肝癌を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌の存在を決定する前記方法。 【請求項46】 予め決定されたレベルが40mAU/mLである、請求項45に記載の方法。 【請求項47】 生物学的試料が、全血、血清、または血漿である、請求項45に記載の方法。 【請求項48】 検出可能な標識が、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識、および免疫-ポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。 【請求項49】 検出可能な標識がアクリジニウム化合物である、請求項45に記載の方法。 【請求項50】 アクリジニウム化合物が、式I: 【化13】 [図:0001416847000013.jpg] [式中、R1およびR2は各々独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化14】 [図:0001416847000014.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキサミドである、請求項49に記載の方法。 【請求項51】 アクリジニウム化合物が、式II: 【化15】 [図:0001416847000015.jpg] [式中、R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルであり、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化 物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化16】 [図:0001416847000016.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルである、請求項49に記載の方法。 【請求項52】 請求項2に記載のモノクローナル抗体または請求項3に記載の結合性タンパク質を含有する容器を含む、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット。 【請求項53】 PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する結合性タンパク質を含有する容器をさらに含む、請求項52に記載のキット。 【請求項54】 結合性タンパク質が、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)受託番号PTA-9638によって表されるハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体を含む、請求項53に記載のキット。 【請求項55】 PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)を含む検出試薬、ならびに試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するための指示書を含む、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット。 【請求項56】 PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有する抗体が、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)受託番号PTA-10541によって表されるハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体である、請求項55に記載のキット。 【請求項57】 抗体に付いている検出可能な標識をさらに含み、検出可能な標識が、検出可能なシグナルを生成することができる、請求項55に記載のキット。 【請求項58】 検出可能な標識が、放射性標識、酵素標識、化学発光標識、蛍光標識、温度測定標識、および免疫-ポリメラーゼ連鎖反応標識からなる群から選択される、請求項57に記載のキット。 【請求項59】 検出可能な標識がアクリジニウム化合物である、請求項58に記載のキット。 【請求項60】 アクリジニウム化合物が、式I: 【化17】 [図:0001416847000017.jpg] [式中、R1およびR2は各々独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化18】 [図:0001416847000018.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキサミドである、請求項59に記載のキット。 【請求項61】 アクリジニウム化合物が、式II: 【化19】 [図:0001416847000019.jpg] [式中、R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルであり、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、およびオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 【化20】 [図:0001416847000020.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルである、請求項59に記載のキット。 【請求項62】 塩基性溶液をさらに含む、請求項59に記載のキット。 【請求項63】 塩基性溶液が少なくとも10のpHを有する溶液である、請求項62に記載のキット。 【請求項64】 過酸化水素の源をさらに含む、請求項59に記載のキット。 【請求項65】 過酸化水素の源が、過酸化水素を含むバッファーまたは溶液を含む、請求項64に記載のキット。 【請求項66】 過酸化水素の源が過酸化水素生成酵素を含む、請求項64に記載のキット。 【請求項67】 過酸化水素生成酵素が、(R)-6-ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、(S)-2-ヒドロキシ酸オキシダーゼ、(S)-6-ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、3-aci-ニトロプロパン酸オキシダーゼ、3-ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ、4-ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ、6-ヒドロキシニコチン酸デヒドロゲナーゼ、アブシジン酸-アルデヒドオキシダーゼ、アシル-CoAオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ(銅含有)、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)、アリール-アルコールオキシダーゼ、アリール-アルデヒドオキシダーゼ、カテコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、コルンバミンオキシダーゼ、シクロヘキシルアミンオキシダーゼ、チトクロームcオキシダーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ、D-アラビノノ-1、4-ラクトンオキシダーゼ、D-アラビノノ-1、4-ラクトンオキシダーゼ、D-アスパラギン酸オキシダーゼ、D-グルタミン酸オキシダーゼ、D-グルタミン酸(D-アスパラギン酸)オキシダーゼ、ジヒドロベンゾフェナントリジンオキシダーゼ、ジヒドロオロテートオキシダーゼ、ジヒドロウラシルオキシダーゼ、ジメチルグリシンオキシダーゼ、D-マンニトールオキシダーゼ、エクジソンオキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルタチオンオキシダーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、グリオキシル酸オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ、インドール-3-アセトアルデヒドオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、L-アスパラギン酸オキシダーゼ、L-ガラクトノラクトンオキシダーゼ、L-グルタミン酸オキシダーゼ、L-グロノラクトンオキシダーゼ、L-リジン6-オキシダーゼ、L-リジンオキシダーゼ、長鎖アルコールオキシダーゼ、L-ピペコリン酸オキシダーゼ、L-ソルボースオキシダーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、メタンチオールオキシダーゼ、モノアミノ酸オキシダーゼ、N6-メチルリジンオキシダーゼ、N-アシルヘキソサミンオキシダーゼ、NAD(P)Hオキシダーゼ、ニトロアルカンオキシダーゼ、N-メチル-L-アミノ酸オキシダーゼ、ヌクレオシドオキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ポリアミンオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、ポリビニルアルコールオキシダーゼ、プレニルシステインオキシダーゼ、タンパク質-リジン6-オキシダーゼ、プトレシンオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ピリドキサール5’-リン酸合成酵素、ピリドキシン4-オキシダーゼ、ピロロキノリンキノン合成酵素、ピルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ(CoA-アセチル化)、レチクリンオキシダーゼ、レチナールオキシダーゼ、リファマイシン-Bオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、2級アルコールオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドレダクターゼ、 テトラヒドロベルベリンオキシダーゼ、チアミンオキシダーゼ、トリプトファンα、β-オキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ、尿酸オキシダーゼ)、バニリルアルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項66に記載のキット。 【請求項68】 PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を含む第1の単離された結合性タンパク質、およびPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する第2の単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)を含む、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット。 【請求項69】 第1および第2の単離された結合性タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項68に記載のキット。 【請求項70】 第1のモノクローナル抗体が、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)受託番号PTA-9638によって表されるハイブリドーマ細胞系統によって生成される抗体であり、第2のモノクローナル抗体が、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)受託番号PTA-10541によって表されるハイブリドーマ細胞系統によって生成される抗体である、請求項69に記載のキット。 【請求項71】 少なくとも2つの異なる結合性タンパク質の使用を含み、前記結合性タンパク質の各々が、PIVKA-IIのアミノ酸1-33のサブセットに特異的に結合する抗原結合性部分を含み、前記結合性タンパク質の各々の抗原結合性部分が、PIVKA-IIのアミノ酸1-33の異なるサブセットに結合し、前記結合性タンパク質の少なくとも一つは、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するもの(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)である、試料中のPIVKA-IIの量を決定するための方法。 【請求項72】 結合性タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項71に記載の方法。 【請求項73】(削除) 【請求項74】(削除) 【請求項75】(削除) 」 第5 当事者の主張及び証拠方法 1 請求人の主張及び証拠方法 請求人は、「特許第5981914号の特許請求の範囲の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~38、40、45~53、55、57~69、71~74に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として以下の(1)~(6)の無効理由を主張し、証拠方法として以下の(7)に記載の書証を提出している。 (1)無効理由1(新規性欠如) 本件特許の訂正前の請求項3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第4号証に記載された発明であり、特許法29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、当該発明についての特許は、同法123条第1項2号に該当し、無効とすべきものである。 (2)無効理由2(進歩性欠如) 本件特許の訂正前の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~38、40、45~53、55、57~69、71~74に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第4号証及び甲第1、5~10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、当該発明についての特許は、同法123条第1項2号に該当し、無効とすべきものである。 (3)無効理由3(拡大先願) 本件特許の訂正前の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~38、40、45~53、55、57~69、71~74は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた他の特許出願であるPCT/JP2011/064724の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(甲第11号証)に記載された発明と同一でり、しかも、本件特許の出願に係る発明の発明者が当該他の特許出願に係る発明の発明者と同一ではなく、また本件特許の出願時の出願人が当該他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (4)無効理由4(サポート要件違反) 本件特許の訂正前の請求項45~51及び訂正後の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~37、40、45~53、55、57~69、71、72に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (5)無効理由5(実施可能要件違反) 本件特許の訂正前の請求項22、25~30、45~51、74及び訂正後の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~37、40、45~53、55、57~69、71、72に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (6)無効理由6(明確性要件違反) 本件特許の訂正前の請求項29、45~51及び訂正後の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~37、40、45~53、55、57~69、71、72に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (7)証拠方法 甲第1号証:Biochimica et Biophysica Acta (2002) 1586:287-298 甲第2号証:動脈硬化 (1996) 23(10):567-571 甲第3号証:特開平5-249108号公報 甲第4号証:Journal of Biological Chemistry (1988) 263(13):6259-6267 甲第5号証:国際公開第02/079377号 甲第6号証:免疫生物学 原書第5版 南江堂 2005年7月15日発行、619~628頁 甲第7号証:特公平8-16103号公報 甲第8号証:国際公開第2009/026401号 甲第9号証:国際公開第2008/124749号 甲第10号証:特表平9-501233号公報 甲第11号証:国際公開第2012/002345号 甲第12号証:特願2010-147784号の優先権証明書 甲第13号証:Cancer Sci (2012) 103(5):921-925 甲第14号証:実験報告書(Dr.クラウス ヒルツェル氏作成の実験報告書) 甲第15号証:免疫学用語辞典第三版 最新医学社 1993年12月1日発行、47頁 甲第16号証:免疫学ハンドブック オーム社 2005年10月25日発行、11~13頁 甲第17号証:口頭審尋用資料 甲第18号証:Blood (1989) 74(7):2418-2425 2 被請求人の主張及び証拠方法 被請求人は、本件審判請求は成り立たない旨主張し、証拠方法として、以下の書証を提出している。 <証拠方法> 乙第1号証:甲4(Journal of Biological Chemistry (1988) 263(13):6259-6267)の訳文 乙第2号証:口頭審尋に用いた資料 乙第3号証:生物学事典第4版 岩波書店、2000年3月8日発行、551頁、1049頁 第6 証拠の記載事項 各号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。 1 甲第1号証 2002年に発行された甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている(翻訳は当審による。)。 (1)標題 「肝細胞がんに関連するデス-γ-カルボキシプロトロンビンにおけるγ-カルボキシグルタミン酸の含有量」(第287頁) (2)要約 「血清デス-γ-カルボキシプロトロンビン(DCP)は、肝細胞がん(HCC)の有益な診断用マーカーであるが、その正確な合成メカニズムと肝疾患における構造的な特徴は不明である。DCPはモノクローナル抗体MU-3により測定される。この研究の目的は、MU-3のエピトープを分析し、HCCと良性の肝疾患との間のDCPの違いを明らかにすることである。」(第287頁第1~4行) (3)本文 (ア)「肝臓内で合成される血液凝固タンパク質であるプロトロンビンは、Glaドメインにおける位置6、7、14、16、19、20、25、26、29と32位の10のGlu残基が、ビタミンK依存性γ-グルタミルカルボキシラーゼによってGlaへとγ-カルボキシル化された後、活性化型に変換される。肝細胞がんや肝硬変を含む肝疾患を有する患者では、プロトロンビンの合成が減少し、そのγ-カルボキシル化は減少するため、デス-γ-カルボキシプロトロンビン又はビタミンK欠乏状態で誘導されるタンパク質(PIVKA-II)が代わりに形成される。」(第287頁左欄第1行-右欄第8行) (イ)「MU-3抗体は、Motohataらによって作成されたDCPに対するモノクローナル抗体である。医療研究で、MU-3抗体を使用する免疫試験はHCCにおけるDCPに対して高い感度と特異性を有すること、DCP測定がHCCの早期検出に有用であることが証明されている。」(第288頁左欄第34-40行) (ウ)「2.5 直接結合ELISA MU-3抗体のデカルボキシル化タンパク質及び合成ペプチドに対する反応性は、96ウェルマイクロタイタープレート(Nalge Nunc International、 Rochester、 NY、 USA)を使用したELISAによって測定した。TBS(50mM Tris-HCl、 0.1M NaCl、 pH8.0)に溶解したデカルボキシル化タンパク質及び合成ペプチドを、室温で 5時間インキュベートすることによりマイクロタイタープレートのウェルにコートした。TBSで3回洗浄した後、ウェルを1%ウシ血清アルブミン-TBS(BSA-TBS)で1時間ブロッキングした。TBSで洗浄した後、0.1%Tween20-BSA-TBSで様々な濃度に希釈したMU-3抗体の溶液を各ウェルに添加した。室温で2時間インキュベートして洗浄した後、MU-3抗体と反応したウェルを西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗マウスIgG抗体(ICN Pharmaceuticals、 Irvine、 CA、 USA)の溶液でさらに室温で1時間インキュベートした。さらなる洗浄の後、ウェルは1mg/mlのo-フェニレンジアミンと0.1mMクエン酸緩衝液に溶解した2mMの過酸化水素とpH5.5でインキュベートした。反応は2Nの硫酸を加えて停止させ、マイクロプレート光度計を使用して492nMの吸光度を測定した。」(第289頁左欄第25行ー右欄第7行) (エ)「2.6 サンドイッチELISA サンドイッチELISAは、デカルボキシル化プロテインに代えてMU-3抗体をウェルにコートした点、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗マウスIgG抗体に代えて、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した、親和性精製されたウサギ抗プロトロンビン抗体のFabを使用した点を除き、直接結合ELISAで使用した方法で実施した。3%BSA-TBSで希釈したデカルボキシル化プロトロンビンは参照標準タンパク質として用いられた。」(第289頁右欄第8-17行) (オ)「患者及び健常者の血清を10倍量の0.2%BSA-TBSに希釈して、炭酸バリウムを10%で添加し、混合物を完全に撹拌した。遠心分離によって沈殿物を除去して、上清を得た。このバリウム吸収上清は3%BSA-TBSで希釈して、プロトロンビン抗原濃度(全DCPという。)を抗プロトロンビン抗体でコートしたウェルを使用するサンドイッチELISAで測定した。標準曲線は3%BSA-TBSで希釈した既知濃度の精製プロトロンビンを使用して作成した。」(第289頁右欄第23-35行) (カ)「MU-3抗体と反応するDCPの量は次のように測定した。第1に、4×108ビーズあたり1mgのMU-3抗体の濃度で、Dynabeads M450(Dynal、 Oslo、 Norvay)を使用してMU-3抗体でコートした固相を得た。MU-3抗体でコートされたビーズは、バリウム沈殿で得られた上清50μlあたりに2×107で加えられ、室温で2時間インキュベートした後、磁気分離でビーズを除去した。サンプルに添加されたMU-3抗体の量は、50μg(312pmоl)であり、一方50μlの上清は、サンプル中の全てのプロトロンビンがDCPに変換されているときであっても、0.5μg(7pmоl)のDCPを含有するだけであるから、全てのDCPを吸収するのに十分であった。全DCP測定する方法と同じ方法でビーズ除去後の溶液のDCP濃度を測定した。」(第289頁右欄第36行-第290頁左欄第10行) (キ)「MU-3抗体エピトープの決定 ペプチド-2のエピトープをさらに詳細に特定するために、より小さなペプチドの試験が必要であったが、ペプチド-2より小さなペプチドはウェルに結合させるのが困難であった。そのため、MU-3抗体エピトープは、MU-3抗体をコートしたウェルを使用するサンドイッチELISAによって、デカルボキシル化プロトロンビンに対する競合ペプチドで試験した。それぞれのペプチドと競合した後、MU-3と反応したデカルボキシル化プロトロンビンの結合活性が、相対的な活性として表示される。ペプチド-5(残基13-27)とペプチド-6(残基17-27)は、MU-3抗体との反応を阻害し、ペプチド-2と同様の活性を示した。しかし、ペプチド-7(残基17-24)はMU-3抗体とは弱く反応した(図4)。これらの結果から、MU-3抗体のエピトープは少なくとも残基17-27から構成されることが明らかとなる。」(第291頁右欄第1-18行) (ク)「表3は、プロトロンビン、全DCP、ELISAで測定されるDCP濃度、MU-3抗体吸収後のDCP濃度と百分率を示している。HCCにおける全DCP濃度は39.5ng/mlから413.6ng/mlの範囲であり、良性の肝疾患における濃度は35.1ng/mlから368.6ng/mlの範囲である。したがって、HCCと良性の肝疾患の間に差異はなかった。一方で、MU-3抗体と反応するDCPの百分率は、HCC患者において41.0-76.8%であるのに対して、良性の肝疾患の患者においては0~42.1%であった。MU-3抗体は、Glaが4つより少ないDCPと主に反応するため、HCCにおいて優先的に合成されるDCP変異体はGlaが4つより少なく、良性の肝疾患においては豊富に見られるDCP変異体はGlaが4つより多い。」(第293頁右欄第8-23行) (4)表及び図面 (ア)図2 「 [図:0001416847000021.jpg] 図2.Glaドメイン及びエピトープ決定に使用したペプチドのアミノ酸配列。アミノ酸を、一文字コードで示す。Gla残基をγで示す。Kdを、図3、4及び7を使用して計算する。」 (イ)表1 「 [図:0001416847000022.jpg] (翻訳) 表1 MU-3抗体と脱カルボキシル化ヒトプロトロンビン、脱カルボキシル化Glaドメイン、およびペプチド-2の解離定数 <1行目>脱カルボキシル化タンパク質 Kda(nM) <1列目> 脱カルボキシル化プロトロンビン 脱カルボキシル化Glaドメイン(残基1-41) ペプチド-2(残基11-30) <脚注> a解離定数(Kd)は、MU-3抗体濃度の逆数に対するOD 492nmの逆数に図3のデータをフィットさせて算出した。」 (ウ)図3 「 [図:0001416847000023.jpg] (翻訳) 図3 脱カルボキシル化プロトロンビン、脱カルボキシル化Glaドメイン、ペプチド-1、ペプチド-2、およびペプチド-3へのMU-3抗体の反応性。脱カルボキシル化プロトロンビン(◯)、脱カルボキシル化Glaドメイン(×)、ペプチド-2(11-30:GNLERECVEETCSYEEAFEA、△)、ペプチド-1(1-16:ANTFLEEVRKGNLERE、□)、またはペプチド-3(23-41:SYEEAFEALESSTATDVFW、●)で被覆したウェル内でMU-3抗体をインキュベートし、反応したMU-3抗体を直接結合ELISA法で測定した。」 (エ)表3 「 [図:0001416847000024.jpg] 」 2 甲第4号証 1988年に発行された甲第4号証(以下、「甲4」という。)には、以下の事項が記載されている(翻訳は当審による。)。 (1)標題 「いくつかのヒトビタミンK依存性タンパク質における保存されたエピトープ」(第6259頁) (2)要約 (ア)「精製したヒトプロテインCをマウスに注射することによって生産されたマウスモノクローナル抗体(H-11と表す。)は、いくつかのヒトビタミンK依存性タンパク質と結合することがわかった。マイクロタイタープレート上に固相化された抗体での固相競合放射性標識免疫アッセイにより、125I標識したプロテインCの抗体への結合は、1×10-8から1×10-6Mの範囲を超えて増量するプロテインC、プロトロンビンと第10因子と第7因子によって阻害された。」(第6259頁左欄第1~9行) (イ)「プロトロンビンのキモトリプシン消化、及びプロトロンビンのN末端1-44残基を示すペプチドのQAE-セファデックス上での分離は、モノクローナル抗体による抗原認識サイトが、高度に保存されたγ-カルボキシグルタミン酸保存ドメインであることを特定した。H-11抗体の正確な抗原決定基の位置は、合成ペプチドを使用して立証された。H-11抗体は、第VII因子の1-12残基と、プロテインCの1-22残基に対応する合成ペプチドに特異的に結合した。ウシとヒトのビタミンK依存性タンパク質の配列比較は、Phe-Leu-Glu-Glu-Xaa-Arg/Lysの配列が抗体の結合に必要とされることを示唆している。」(第6259頁左欄第27-41行) (3)本文 (ア)「ハイブリドーマH-11の調製-BALB/cマウスを、完全フロイントアジュバント中の50μgのプロテインCで複数部位で皮下的に免疫した。完全フロイントアジュバント中の50μgのブースター注射を、4、8、及び12週に行った。最後の注射の6週後、血清力価を、プロテインC抗体の存在について決定し、最も高い抗プロテインC力価を有するマウスは、生理食塩水中の100μgのプロテインCを静脈内的に受けた。4日後、マウスを、クロロホルムで殺傷し、脾臓を摘出した。2匹のマウスからの脾臓細胞(3×108細胞)を、3×107のミエローマ細胞と混合し、遠心分離した。細胞ペレットを、3mlの50%ポリエチレングリコール1000に注意深く懸濁し、3分間穏やかに混合した。次いで、懸濁物を、1000rpmで3分間遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを、15mlの胎仔血清に再懸濁した。容量を、培養培地で72mlまで上げ、0.1mlの細胞混合物を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにピペッティングした。次の日、各ウェルに、20%胎仔血清及びヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジンを含む0.1mlの培養培地を加えた。融合の2日後、胸腺細胞を、フィーダー細胞として供するために添加した。抗プロテインC抗体についてのハイブリドーマ上清のスクリーニングを、ハイブリドーマが目視できるときに実施した。ハイブリドーマ産生抗プロテインC抗体を、限界希釈により3回クローニングした。 ハイブリドーマスクリーニングアッセイ-抗プロテインC抗体についてのハイブリドーマのスクリーニングを、プロテインCコートマイクロタイタープレートを用いた固相酵素免疫測定法により実施した。」(第6260頁右欄第9-33行) (イ)「固相免疫アッセイ-ビタミンK依存性タンパク質に対するH-11抗体の結合は、プラスチック96ウェルマイクロタイタープレート(Dynatech Laboratories、 Inc.、Removawells)で、プレート表面上に直接吸着させるか、精製したウサギ抗マウス免疫グロブリンで間接的に吸着したH-11抗体を使用して実施した。プレートは、pH9.0の50mM炭酸ナトリウム緩衝液中のH-11抗体か精製したウサギ抗マウス免疫グロブリンで一晩コートされた。続いてプレートはTBS(10mMTris、0.15mM NaCl、pH7.4)で洗浄した。非特異的タンパク質の結合サイトは、TBS中1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA/TBS)を添加して室温で1-2時間ブロックした。プレートはまた-20℃でBSA/TBS中で保存した。ウサギ抗マウス免疫グロブリンでコートしたプレートはH-11抗体で室温で2時間インキュベートしてコートし、放射性標識したプロテインCを添加する前にウェルをTBSで3回洗浄した。プロテインCは以前記述されたようにクロラミンTを使用して放射性標識した。20μCi/μgタンパク質の特異的活性はこの手順で通常に得られる。放射性標識した抗原(典型的には5000cpm)は、TBS中の0.5%BSAでウェル中で2-4時間室温でインキュベートした。その後TBSで3回洗浄し、ウェルに関連する放射性活性は、ベックマン バイオガンマ カウンターで決定した。 免疫染色-タンパク質は、Laemmliによって記述されたように、5-15%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動され、Towbinらによって記述されたように、電気的にニトロセルロースに転写された。転写に続き、ニトロセルロースはBSA/TBS中で1-2時間室温でインキュベートした。それからニトロセルロースブロットはTBS中の0.2%(w/v)BSA中の5μg/mlの抗体溶液中に2時間室温で置いた。ニトロセルロースブロットは氷冷した0.5%(v/v)Nonidet P-40界面活性剤を含有するTBSで3回、全部で30分間で洗浄し、1:2000で0.2%BSA/TBS中に希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したヤギ抗マウス免疫グロブリンの溶液中に置いた。シェーカーで1時間室温で第2のインキュベーションを行った後、ブロットは再びNonidet P-40を含むTBSで3回洗浄した。結合した抗体の位置は、0.8mMо-ジアニシジンジハイドロクロライドと0.001%過酸化水素又は0.6mg/ml 4-クロロ-1-ナフトールと0.1%過酸化水素を含むTBS中でブロットをインキュベートすることで可視化した。反応は0.2%(w/v)アジ化ナトリウムを含むTBS中でブロットを洗浄し、フィルター紙のいくつかのシートの間でブロットを乾燥することにより停止した。免疫染色は、ドット又はスロット型を用いてニトロセルロース上に直接タンパク質をブロットすることにより実施された。50μl中2~0.05μgの全タンパク質量を含むそれぞれのタンパク質サンプルのいくつかの希釈物は、それぞれのウェルにブロットされ、上述のように免疫検出された。ブロットは島津CS-930スキャナーを使用した濃度測定により分析された。」(第6260頁右欄第49行-第6261頁左欄第17行) (ウ)「プロトロンビンはBajajらによって記述された方法で脱カルボキシル化された。」(第6261頁左欄第46-47行) (エ)「図2に示されるデータは、抗体H-11のニトロセルロースに固定したウシプロテインC、ウシプロトロンビン及びウシ第IX因子への結合を示し、いくつかの他のウシタンパク質並びに化学的及び酵素的に改変したプロトロンビン誘導体への結合についてのデータを、表Iにまとめる。陽性の反応性は、抗体H-11が、図2に示されるデータに例示されるように用量依存性様式で固定した抗原と反応したことを示す。 プロトロンビン上の抗原性部位は、SDSによる変性、メルカプトエタノールを用いたジスルフィドの還元又は還元後のカルボキシメチル化、シトラコン酸でのリジン残基の標識、CNBrでのメチオニン残基での切断、及びGla残基の熱脱カルボキシル化等の種々の処理の後に反応性であった。」(第6262頁左欄第5~19行) (オ)「脱カルボキシル化タンパク質からのデータは、また、グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化が抗体認識に必要とされないことを示す。」(第6262頁右欄第14~16行) (カ)「図3に示したデータは、抗体H-11が、プロトロンビンと第VII因子で見出された決定基と同様に、プロテインCの軽鎖、第X因子の決定基に結合することを示す。」(第6262頁右欄第23-26行) (キ)「抗体H-11により認識される決定因子をタンパク質構造のより小さな断片にさらに局在化させる試みにおいて、プロトロンビンを、キモトリプシンで消化し、消化産物を、SDS-PAGEで分離し、ニトロセルロースに電気泳動転写し、その後、抗体H-11を用いてブロッティングした。このアプローチは、全てのビタミンK依存性タンパク質において保存され(53-55)、ヒトプロトロンビンのTyr44に位置する(45)高度に感受性のキモトリプシン消化部位の存在に基づく。プロトロンビンにおけるこの部位での切断により、生成物として、Glaドメイン及びデス-1-44-プロトロンビン(45)が得られる。図4Aに示すデータは、時間の関数として、ヒトプロトロンビンのキモトリプシン消化を示す。上パネルは、種々のインキュベーション時間での消化混合物のSDS-PAGEゲルのクマシーブルー染色を示し、より小さな分子量種であるデス-1-44-プロトロンビンへのプロトロンビンの切断が明らかである。切断されたGlaドメイン断片は、この電気泳動系では分離されず、観察されない。同じセットの試料のニトロセルロースへの電気泳動転写及び抗体H-11でのブロッティングは、インタクトなプロトロンビンのみが抗体に対する抗原性部位を保持し、デス-1-44-プロトロンビンは保持しないことを示す(図4A、下パネル)。」(第6263頁左欄第6行~右欄第10行) (ク)「直接的な証拠とH-11抗体の抗原決定基のGlaドメインのより小さな領域へのさらなる特定は、ビタミンK依存性タンパク質の既知の配列を含む合成ペプチドによって得られた。第VII因子の1-12残基を含むペプチド、第VII因子の13-29残基を含むペプチド、プロテインC軽鎖の1―22残基を示すペプチドが合成された。Glaドメイン配列におけるペプチドの位置は図5に示される。図5に示される配列は、ヒトプロテインC、プロトロンビン、そしてX、VII、IX因子の配列である。アスタリスクは抗体H-11が結合するその4つのタンパク質で同一である残基を示す。精製した合成ペプチドは96ウェルマイクロタイタープレートの底に固定化した。H-11抗体のペプチドへの結合は、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗マウス免疫グロブリンと発色基質を使用して決定された。図6に示すように、固定化されたプロトロンビン、第VII因子-(1-12)-ペプチド、そして、プロテインC-(1-22)-ペプチドにH-11抗体が結合するが、第VII因子-(13-29)-ペプチドには結合しなかった。このアッセイの対照としては、他の任意の配列のペプチドや、ビタミンK依存性タンパク質でないタンパク質に対する他のモノクローナル抗体をそれぞれのペプチドとインキュベートしたものを含んだ。これらの対照ウェルのいずれも、同一のインキュベーション、アッセイ条件下で、発色は見られなかった。これらのデータは、H-11抗体が第VII因子-(1-12)-ペプチドとプロテインC-(1-22)-ペプチドの両方に特異的に結合することから、H-11抗体はGlaドメインのN末端領域に存在する残基に結合することを裏付けている。このデータはまた、ペプチドはグルタミン酸で合成されているから、γ-カルボキシグルタミン酸は、直接的に抗体結合に必要がないという、脱カルボキシル化されたプロトロンビンに関する見解を確認するものである。」(第6263頁右欄第24行~第6264頁左欄第9行) (ケ)「本報告のデータは、抗体H-11が、ヒトおよびウシのプロテインC、プロトロンビン、ならびに第X因子および第VII因子のGlaドメインのアミノ末端に位置する進化的に保存された抗原決定基を認識することを示す。」(第6264頁右欄第27-30行) (コ)「タンパク質と合成ペプチド化学の組み合わせにより、我々はH-11抗体の抗原決定基をGlaドメインのN末端12アミノ酸のペプチドにマッピングした。この領域におけるヒト及びウシのビタミンK依存性タンパク質の比較を図8に示す。表1に要約した情報と併せて、そのような既知のタンパク質の配列の比較は、H-11抗体の結合場所のアミノ酸のさらなる特定を可能にする。図8に示すように、H-11に結合するそれらのタンパク質で共有される最小のコンセンサス配列は、FLEEである。天然のタンパク質では、グルタミン酸はビタミンK依存性カルボキシラーゼによってカルボキシル化される場所である。シトラコニル化ヒトプロトロンビンのトリプシンによる切断は、抗原部位がArgも含む可能性を示している。各タンパク質は、FLEEのカルボキシル末端から2残基の位置に、塩基性アミノ酸(ArgまたはLysのいずれか)を有している。これは抗原決定基内の残基の最小配列がFLEEXR/Kである可能性を示唆している。抗体H-11に結合しないタンパク質、特にウシおよびヒトの第IX因子およびプロテインSは、保存されたトリペプチドLEEのアミノ末端にフェニルアラニン残基を含まず、この残基が抗体H-11結合に必要であることを示唆する。」(第6264頁右欄第45行-第6265頁左欄第2行) (4)表及び図面 (ア)図2 「 [図:0001416847000025.jpg] (翻訳) 図2 固定化されたウシビタミンK依存性タンパク質への抗体H-11の結合。スロットブロット装置を使用して、漸減量の精製ウシビタミンK依存性タンパク質をニトロセルロースに固定化した。ニトロセルロースシートを抗体H-11(5μg/ml)とインキュベートした後、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリンと発色基質を用いて抗原抗体複合体を可視化した。ニトロセルロースの着色領域の密度をShimazu CS-930デンシトメーターを用いて定量した。デンシトメータートレースの相対面積を、各スロット中にブロットされたタンパク質の総質量に対してプロットする。プロトロンビン(●)、プロテインC(■)、第IX因子(〇)の代表的なデータを示す。同様に得られたデータを表Iに要約する。 」 (イ)表1 「 [図:0001416847000026.jpg] 」 (ウ)図3 「 [図:0001416847000027.jpg] (翻訳) 図3 抗体H-11によるヒトビタミンK依存性タンパク質のイムノブロット。タンパク質を2%のSDSの存在下で2%β-メルカプトエタノールで還元し、100℃で加熱した。A:タンパク質試料のクマシーブルー染色(8μg);B:5~15%のSDSポリアクリルアミドゲルでの電気泳動、ニトロセルロースへの電気泳動転写、および抗体H-11によるブロッティング後のタンパク質試料(6μg)のイムノブロット。抗原-抗体複合体の検出は、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリン二次抗体ならびに基質としてのo-ジアニシジンおよび過酸化水素を用いて行った。 」 (エ) 図4(Aのみ) 「 [図:0001416847000028.jpg] 図4.キモトリプシン消化プロトロンビンの抗体H-11での免疫ブロット及びQAE-セファロース上でのプロトロンビンGlaドメインの単離。A、キモトリプシンによるプロトロンビン消化の時間経過。示された時間において、試料を取り出し、2% SDSに配置し、100℃で2分間加熱した。上パネル、10% SDS-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動後の試料(6μg)のクマシーブルー染色;下パネル、SDS-PAGEでの電気泳動及びニトロセルロースへの電気泳動転写後の同じ試料(3μg)の抗体H-11での免疫ブロット。上パネルについての分子量標準は、ホスホリラーゼb(97、000)、ウシ血清アルブミン(68、000)、及びオボアルブミン(43、000)である。 」 (オ)図5 「 [図:0001416847000029.jpg] (翻訳) 図5 ヒトビタミンK依存性タンパク質のGlaドメインの配列の比較。配列は、National Biomedical Research Foundation Protein Identification Resource Data Baseに掲載されている。グルタミン酸残基はGlu(E)として示され、天然に存在するアミノ酸であるGlaではない。番号はプロテインCに対応する。アスタリスクは、プロテインC、プロトロンビン、ならびに第X因子および第VII因子において同一である残基を示す。プロテインC配列の下線および第VII因子配列の上線および下線は、合成されたペプチドの位置を示す。 」 (カ)図6 「 [図:0001416847000030.jpg] (翻訳) 図6 抗体H-11の合成ペプチドへの結合。様々な量のペプチドを、炭酸塩緩衝液中でマイクロタイタープレートのウェル上にコーティングした。抗体H-11(BSA/TBS中20μg/ml)をウェル中でインキュベートし、ウェルをTBSで洗浄し、抗体-ペプチド複合体の存在を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリンおよび基質としてo-フェニレンジアミンと過酸化水素を用いて決定した。4NのH2SO4で反応を停止させた後、酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダーを用いて490nmでの吸光度測定により発色を定量した。ヒトプロトロンビン(II)および第VII因子(FVII)の残基1~12および13~29、ならびにプロテインC(PC)の残基1~22に相当するペプチドへのH-11結合のデータを示す。 」 (キ)図8 「 [図:0001416847000031.jpg] 図8.ビタミンK依存性タンパク質のアミノ末端配列のアライメント。ヒト及びウシビタミンK依存性タンパク質についてのアミノ末端配列を、これらが、National Biomedical Research Foundation Protein Identification Resource Data Baseに現れるとおりに列挙する。太字の残基は、抗体H-11の結合に必要とされ得るこれらのアミノ酸を示す。 」 3 甲第5号証 甲第5号証(以下、「甲5」という。)には、以下の事項が記載されている(翻訳は当審による。)。 (1)特許請求の範囲 (ア)「請求項16. 抗体が、 (a)10-7Mから10-8Mの解離定数(KD); (b)10-8Mから10-9Mの解離定数(KD); (c)10-9Mから10-10Mの解離定数(KD); (d)10-10Mから10-11Mの解離定数(KD); (e)10-11Mから10-12Mの解離定数(KD);及び (f)10-12Mから10-13Mの解離定数(KD) からなる群から選択される解離定数(KD)を有する、請求項3の抗体。」(請求項16) (イ)「請求項17. 検出可能な標識をコンジュゲートされた抗体である、請求項3の抗体。」(請求項17) (ウ)「請求項18. 検出可能な標識が放射性標識である、請求項3の抗体。」(請求項18) (エ)「請求項20. 検出可能な標識が酵素、蛍光標識、発光標識又は生物発光標識である、請求項17の抗体。」(請求項19) (オ)「請求項40. 薬学的に許容される担体を含む請求項2の抗体。」(請求項20) 4 甲第6号証 甲第6号証(以下、「甲6」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「A-6 ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)および競合阻害反応 ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素免疫測定法(ELISA)はいずれも、抗体もしくは抗原への直接結合を測定する目的で使われる手法であり、原理は同じであるが特異的結合を測定する手段が異なる。ラジオイムノアッセイは血液や組織液中のホルモンを測定する際に使われる。 一方、ELISAはHIV感染の有無を調べるなどのウイルス性疾患を検出する際に頻用される。これらの方法を施行するには、検出結果を定量的に評価するために既知の抗原と抗体のいずれか、または両者がよく精製されている必要がある。ここでは、より使用頻度の高い、精製抗体を用いた場合の例について解説するが、精製抗原を用いた場合でも原理は同じである。ラジオイムノアッセイでは、精製された抗原または抗体が放射性同位元素(通常125Iが使われる)で標識されている。ELISAでは、酵素が抗体に化学的に結合されている。標識されていない状態の抗体または抗原は、マルチウェルプラスチックプレートにある孔のような特定量の蛋白を吸着する固相支持体に付着させて使用する。非特異的吸着が阻止された状態で、標識抗体は標識していない抗原に結合し、結合しなかったものは洗浄して除く。ラジオイムノアッセイでは、残った放射活性により、ELISAでは、無色の基質が有色の反応産物に変換されることにより抗体の結合を測定する(図A.6)。色の変化は測定器で読み取られ、そのデータは容易に得られる。またELISAは被曝の危険がない。これらの理由からELISAは多くの直接結合検査法として好んで使われる。未標識の抗体が未標識抗原を接着させたプレートに結合するのを検出する目的には標識された抗免疫グロブリン抗体を用いることもできる(A-10節参照)。この場合、標識された抗免疫グロブリン抗体はいわゆる二次応答に用いられる。このような二次応答を行う場合には、検出感度が増強される。なぜならば、少なくとも2分子以上の標識された抗免疫グロブリン抗体が個々の未標識抗体に結合することができるからである。ラジオイムノアッセイおよびELISAでは未標識抗体をプレー卜に結合させ、そこへ標識抗原を加えることでも反応を検出することが可能である。 サイトカインのような分泌蛋白を検出する際には、ELISAを改良した捕獲あるいはサンドイッチELISA(より一般的には抗原捕獲反応と呼ぶ)が使われる。これらの検出系では抗原ではなく抗原特異的抗体を先にプレートに結合させる。この場合、高い特異性が期待できるため、たとえ試料の中にごく少量の抗原しか存在していなくても高感度に検出が可能である。特異的に捕獲された抗原を検出するのには、当該抗原の他のエピトープを認識する抗体を標識して用いればよい。 これらの検査法は次の2点において厳密に行わなければならない。第一に、検査する試料(抗原と抗体)の少なくとも一つはよく精製され検出可能なかたちになっていないと量的情報は得られない。第二に、結合した標識物質と結合していない標識物質がきちんと分離できる手段が必要で、そうすれば特異的結合の割合が算出できる。分離するためには、標識していない相手の物質をプラスチックに付着させることが多い。結合しなかった標識分子は洗浄して除けば、結果として結合した標識分子のみがプレート上に残る。図A.6にあるように、標識していない抗原はプラスチック孔に付着し、標識した抗体は抗原に結合して孔に残る。非結合物から結合物を分離するこの方法は、抗体を用いた検査法の基本的手段である。 ラジオイムノアッセイおよびELISAでは、成分が未知の試料における抗原または抗体の量を直接測定はできない。両者は精製した標識抗体か抗原の結合に依存するからである。しかし、この問題は解決できないわけではない。その一つが、図A.7に示したような競合阻害試験である。この方法では、未知の試料中のある抗原の存在や量は、プラスチック孔に付着している抗体に既知の標識標準抗原が結合するのを阻止する度合いによって決定される。既知の標識していない標準抗原の量を変えて加えて作製した標準曲線と比較して、未知試料中の抗原量を知るのである。競合結合試験も未知の試料中の抗体を測定するのに使われる。その際、プラスチック孔に抗原を付着させ、そこに標識した特異抗体が結合するのを試料が阻止する割合によって測定を行う。」(第619頁第20行-第620頁第46行) 5 甲第7号証 甲第7号証(以下、「甲7」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)発明の名称 (ア)「化学発光性アクリジニウム塩」 (2)明細書 (ア)「カルボキシ置換アクリジニウム塩は、免疫検定の標識物として使用されている」(第6頁右欄5~7行) 6 甲第8号証 甲第8号証(以下、「甲8」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)明細書 (ア)「塩基性溶液は、本明細書で以前に記載したのと同じ塩基性溶液であり、即ち、少なくとも1つの塩基を含み、10以上のpH、好ましくは12以上のpHを有する溶液である。」(第28頁17~19行) (2)特許請求の範囲 (ア)「a)アクリジニウム-9-カルボキサミド-抗体コンジュゲートを試験試料に加えるステップ、ここで、該抗体は、鉄メタロプロテインに特異的に結合する; b)アクリジニウム-9-カルボキサミド-抗体コンジュゲートを加える前又は後に、過酸化水素の源を生成し、又は試験試料に提供するステップ; c)塩基性溶液を試験試料に加え、光シグナルを生成するステップ;及び d)生成される光を定量し、鉄メタロプロテインを検出するステップを含む、試験試料中の鉄メタロプロテインを検出する方法。」(請求項1) (イ)「アクリジニウム-9-カルボキサミド-抗体コンジュゲートが、式I: [図:0001416847000032.jpg] [式中、R1及びR2は各々独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキル、及びオキソアルキルからなる群から選択され、R3からR15は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、カルボキシアルキル、及びオキソアルキルからなる群から選択され、場合によって、存在する場合は、 [図:0001416847000033.jpg] は陰イオンである] による構造を有するアクリジニウム-9-カルボキサミドから調製される、請求項1~3いずれか記載の方法。」(請求項5) (ウ)「a.少なくとも1つのアクリジニウム-9-カルボキサミド; b.鉄メタロプロテインに特異的に結合する少なくとも1つの抗体; c.少なくとも1つの塩基性溶液; d.過酸化水素の源;及び e.試験試料中の鉄メタロプロテインを検出するための指示書 を含む、試験試料中の鉄メタロプロテインの検出に使用するためのキット。」(請求項10) (エ)「過酸化水素の源が、過酸化水素を含むバッファー又は溶液である、請求項10又は11記載のキット。」(請求項12) (オ)「過酸化水素をその場所で生成するための手段が、過酸化水素生成酵素である、請求項13、14又は15記載のキット。」(請求項16) (カ)「過酸化水素生成酵素が、(R)-6-ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、(S)-2-ヒドロキシ酸オキシダーゼ、(S)-6-ヒドロキシニコチンオキシダーゼ、3-aci-ニトロプロパン酸オキシダーゼ、3-ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ、4-ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ、6-ヒドロキシニコチン酸デヒドロゲナーゼ、アブシジン酸-アルデヒドオキシダーゼ、アシル-CoAオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ(銅含有)、アミンオキシダーゼ(フラビン含有)、アリール-アルコールオキシダーゼ、アリール-アルデヒドオキシダーゼ、カテコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、コルンバミンオキシダーゼ、シクロヘキシルアミンオキシダーゼ、チトクロームcオキシダーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ、D-アラビノノ-1、4-ラクトンオキシダーゼ、D-アラビノノ-1、4-ラクトンオキシダーゼ、D-アスパラギン酸オキシダーゼ、D-グルタミン酸オキシダーゼ、D-グルタミン酸(D-アスパラギン酸)オキシダーゼ、ジヒドロベンゾフェナントリジンオキシダーゼ、ジヒドロオロテートオキシダーゼ、ジヒドロウラシルオキシダーゼ、ジメチルグリシンオキシダーゼ、D-マンニトールオキシダーゼ、エクジソンオキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルタチオンオキシダーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、グリシンオキシダーゼ、グリオキシル酸オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ、インドール-3-アセトアルデヒドオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、L-アスパラギン酸オキシダーゼ、L-ガラクトノラクトンオキシダーゼ、L-グルタミン酸オキシダーゼ、L-グロノラクトンオキシダーゼ、L-リジン6-オキシダーゼ、L-リジンオキシダーゼ、長鎖アルコールオキシダーゼ、L-ピペコリン酸オキシダーゼ、L-ソルボースオキシダーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、メタンチオールオキシダーゼ、モノアミノ酸オキシダーゼ、N6-メチルリジンオキシダーゼ、N-アシルヘキソサミンオキシダーゼ、NAD(P)Hオキシダーゼ、ニトロアルカンオキシダーゼ、N-メチル-L-アミノ酸オキシダーゼ、ヌクレオシドオキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ポリアミンオキシダーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、ポリビニルアルコールオキシダーゼ、プレニルシステインオキシダーゼ、タンパク質-リジン6-オキシダーゼ、プトレシンオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ピリドキサール5’-リン酸合成酵素、ピリドキシン4-オキシダーゼ、ピロロキノリンキノン合成酵素、ピルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ(CoA-アセチル化)、レチクリンオキシダーゼ、レチナールオキシダーゼ、リファマイシン-Bオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、2級アルコールオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドレダクターゼ、テトラヒドロベルベリンオキシダーゼ、チアミンオキシダーゼ、トリプトファンα、β-オキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ、尿酸オキシダーゼ)、バニリルアルコールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16記載のキット。」(請求項17) 7 甲第9号証 甲第9号証(以下、「甲9」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)特許請求の範囲 (ア)「a)試験試料を処理して、試験試料中のタンパク質から分析物を分離するステップ; b)アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルを処理した試験試料に加えるステップ、ここで、該アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルが、式: [図:0001416847000034.jpg] [式中、R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、スルホアルキル又はカルボキシアルキルであり、R2からR8は各々独立に、水素、アルキル、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、-SO3、-NHC(O)R、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NHR及び-SCNからなる群から選択され、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、スルホアルキル又はカルボキシアルキルであり、Xは、陰イオンである]を有する; c)塩基性溶液を処理した試験試料に加え、光シグナルを生成するステップ;及び d)該分析物についての標準曲線との比較により、試験試料中で生成される光の量を関連づけることにより、試験試料中の分析物の量を定量するステップを含む、試験試料中の分析物を検出する方法。」(請求項1) 8 甲第10号証 甲第10号証(以下、「甲10」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)明細書 (ア)「本発明は、検査試料中のテストステロンを検出し定量するためのアッセイも提供する。」(第33頁14~15行) (イ)「抗体に結合したトレーサーの量は、検査試料中に存在するテストステロンの量に反比例して変化する。」(第52頁14~15行) (2)特許請求の範囲 (ア)「検査試料中の対象分析物を定量するための競合イムノアッセイ方法であって、(a)前記検査試料を、下記の式: [図:0001416847000035.jpg] [式中、Qは検出可能部分であり、Wは接続部分であり、nは1~10である]で示される1位が標識された試薬と、前記1位が標識された試薬及び前記対象分析物に結合することができる抗体とに接触させて反応溶液を形成し、(b)前記抗体に結合した前記反応溶液中の前記1位が標識された試薬の量を前記検査試料中の前記対象分析物の量の関数として測定するステップを含む前記競合イムノアッセイ方法。」(請求項29) 9 甲第11号証 2012年1月5日に公開された甲第11号証(以下、「甲11」という。)には、以下の事項が記載されている。甲11は、2011年6月28日を国際出願日とする国際出願PCT/JP2011/064724の国際公開公報であり、その優先権主張の基礎となる出願は、特願2010-147784号(2010年6月29日出願)である。 (1)発明の名称 「PIVKA-IIの測定方法、PIVKA-IIの測定試薬及び抗体」 (2)明細書 (ア)「PIVKA-II(Protein Induced by Vitamin K Absence or Antagonist-II)は、AFP(α-フェトプロテイン)と並んで肝がんを診断するマーカーとして広く臨床検査室で測定されている。PIVKA-IIはビタミンK依存性血漿タンパク質の一つであるプロトロンビンの前駆物質である。プロトロンビン(血液凝固第II因子)は、分子量71、600のタンパクで、フラグメント1、2及びトロンビンの3領域から構成されており、アミノ酸配列も明らかにされている(非特許文献1)。フラグメント1は、N末端から41個のアミノ酸によって構成されるGlaドメインを含む156個のアミノ酸からなる。このGlaドメイン中の10個のγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)残基が正常に合成されたものが正常プロトロンビン、正常に合成されず、その全てあるいは一部がグルタミン酸(Glu)残基のままのものがPIVKA-IIである。従って、PIVKA-IIとは正常プロトロンビンのγ-カルボキシグルタミン酸残基についての脱カルボキシル化体であるということもでき、異常プロトロンビンと呼ばれることもある。10個のグルタミン酸残基中いくつがγ-カルボキシル化を受けるかにより数種類のPIVKA-IIが混在した状態で存在している(非特許文献2)。」([0002]) (イ)「本発明者らは、鋭意検討を行い、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIと反応する2種の抗体を用いた二抗体サンドイッチ法によりPIVKA-IIを測定することで、肝がんにおける肝障害度の判定及び予後予測が可能となることを見出した。また、この抗体を用いて得られる測定値と従来の方法で行ったPIVKA-II測定値を比較することにより、アルコール性肝炎や肝硬変と肝がんを区別することが可能であり、肝がんの予後予測と、特異性の高い肝がんの検出が可能となることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明のPIVKA-IIの測定方法は、(a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA-IIの測定方法であって、前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とする。」([0010]~[0011]) (ウ)「本発明のPIVKA-IIの測定方法は、(a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA-IIの測定方法であって、前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用するものである。本願明細書において、前記(a)工程で測定されたビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIをNX-PVKAと称することがある。」([0029]) (エ)「前記(a)工程における二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法は、例えば、下記方法により実施される。前記方法により、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを抗原として2種のモノクローナル抗体を調製し、一方を固相化して用い、他方を標識して用いる。該2種の抗体は、互いに交差反応しない抗体である。抗体を固相化する方法は特に制限はないが、例えば、磁気ビーズやマイクロプレート等の固相に固相化することが好適である。抗体を標識する方法は特に制限はないが、Ru等の標識物質により標識することが好ましい。前記固相化抗体及び標識抗体を用いて、検体中のビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定する。測定は、二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法における通常の手順に従って行えばよい。なお、後述する実施例では、電気化学発光免疫測定法を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、化学発光法や放射性同位元素法等の公知の測定法を広く使用可能である。」([0033]~[0034]) (オ)「(1)ハイブリドーマの調製クマジン血漿(UNIGLOBE RESEARCH CORPORATION社製)より精製したPIVKA-II(1mg/mL)とフロイドの完全アジュバント(GIBCO社製)とを1対1で混和乳化し、50μg/100μmL(エマルジョン)で8週齢の雌BALB/Cマウス(日本チャールズリバー(株)製)の皮下に2週間間隔で4回投与後、最終免疫の3日後に脾臓を摘出した。摘出した脾臓から得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞SP2/O-Ag14とを10対1の割合で混合し、50%ポリエチレングリコール1540(和光純薬工業(株)製)存在下にて細胞融合させた。融合細胞は脾臓細胞として2.5x106/mLになるようにHAT培地に懸濁し、96穴培養プレート(CORNING社製)に0.2mLずつ分注した。これを5%CO2インキュベーター中で37℃にて培養し、おおよそ2週間後に、ハイブリドーマの生育してきたウェルの培養上清を、次に示すELISA法にしたがって評価し、PIVKA-IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択した。」([0038]) (カ)「前記の各種PIVKA-IIのうち、脱炭酸処理時間30分及び6時間のPIVKA-II、及びプロトロンビンを0.1μg/mL固相化したマイクロプレートを用いて、塩化カルシウムを4mmol/Lの濃度で共存させた条件で、選択したハイブリドーマの精製IgGの反応性を測定した。この条件でプロトロンビンに反応せず、且つ脱炭酸処理時間6時間のPIVKA‐IIに比べて脱炭酸処理時間30分のPIVKA‐IIに対して高い反応性を示すハイブリドーマを選択し、2種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ24211と24216(以下、それぞれ「ハイブリドーマ11」及び「ハイブリドーマ16」と表記することがある)を獲得した。前記得られたハイブリドーマ11及び16は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託され(受領日:2010年5月28日)、ハイブリドーマ11の受託番号はFERM BP-11258であり、ハイブリドーマ16の受託番号はFERM BP-11259である。」([0041]) (キ)「脱炭酸処理時間を表1及び図1に示した如く変更した以外は上記と同様の方法でプロトロンビンの脱炭酸処理を行い、5種類のPIVKA-IIを調製した。ハイブリドーマ11から調製したP-11モノクローナル抗体、ハイブリドーマ16から調製したP-16モノクローナル抗体、及び従来試薬(ピコルミPIVKA-II(エーディア(株)製))の抗PIVKA-IIモノクローナル抗体の前記5種類のPIVKA-II及びプロトロンビン(脱炭酸処理時間0分)に対する反応性を上記と同様の方法で測定した。結果を表1及び図1に示す。表1及び図1において、(1)はP-11モノクローナル抗体、(2)はP-16モノクローナル抗体、(3)は従来試薬の抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)である。なお、P-11モノクローナル抗体及びP-16モノクローナル抗体の調製は後述する方法により行った。」([0042]) (ク)「(2)モノクローナル抗体の調製ハイブリドーマ11及びハイブリドーマ16からそれぞれ下記方法によりP-11モノクローナル抗体及びP-16モノクローナル抗体を調製した。あらかじめ2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた12週齢の雌BALB/Cマウスに、ハイブリドーマを細胞数0.5x106個の量で腹腔内に投与した。約14日後に腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3mol/L NaCl-1.5mol/L Glycine-NaOH、pH8.5)と混和後、濾過した。このろ液を吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAカラム(ファルマシア社製)に通して抗体をカラムに吸着させた後、0.1mol/Lクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させてモノクローナル抗体を精製した。」([0044]) (ケ)「(3)ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIの測定前記調製したP-16モノクローナル抗体固相磁気ビーズ及びRu標識P-11モノクローナル抗体を用い、電気化学発光免疫測定法により検体中のビタミンK欠乏に起因するPIVKA-II(NX-PVKA)の測定値Aを求めた。検体として、手術を行っておらず、5年後の予後が判明している肝細胞癌患者63名の血清試料を用い、下記方法に従いNX-PVKA量を測定した。各検体50μLにP-16モノクローナル抗体固相磁気ビーズを25μLと1μg/mLのRu標識P-11モノクローナル抗体を含むRu標識抗体液150μLを加え、30℃で9分間反応させた。反応後、磁気ビーズを磁石でトラップしながらピコルミBF洗浄液(エーディア(株)製)で3回洗浄した。0.1mol/Lトリプロピルアミンを含むピコルミ発光電解液(エーディア(株)製)を300μL加えて、電極表面に送り、磁気ビーズに結合したRuの発光量を自動分析装置ピコルミIII(エーディア(株)製)で測定し、検体中のNX-PVKA量を求めた。」([0047]~[0048]) (コ)「ピコルミPIVKA-II測定キット(エーディア(株)製)を用いて、PIVKA-IIの測定を行った。結果を表2、図2(b)及び図3に示した。ROC分析における曲線下面積は、0.653であった。」([0051]) (サ)「PIVKA-II測定値をグラフにしたものを図4に示した。PIVKA-II測定値をNX-PVKA測定値で割ったレシオ値の結果をグラフにしたものを図5に示した。表3、図4及び図5において、HCCは肝細胞癌、CHは慢性肝炎、LCは肝硬変、BはB型肝炎、CはC型肝炎、NBNCは非B型非C型肝炎、NASHは非アルコール性肝障害、AIHは自己免疫性肝炎、ALDはアルコール性肝障害である。表3、図4、図5に示した結果から明らかなように、従来の測定方法で得たPIVKA-II測定値をNX-PVKA測定値で割ったレシオ値(図5のNX-PVKA-R)により、従来の測定方法では偽陽性となっていた検体を区別することができ、肝がんに高い特異性を示した。」([0057]) (シ)「まず、従来試薬の抗体はPIVKA-IIのみに反応しプロトロンビンには反応しなかったのに対し、P-11及びP-16モノクローナル抗体は何れもPIVKA-IIとプロトロンビンに対し同等に反応した。一方、トロンビンに対しては、何れの抗体も反応しなかった。このことから、P-11及びP-16モノクローナル抗体はPIVKA-IIとプロトロンビンの一次アミノ酸配列の共通部位即ちGla残基を含まない部位を認識していることが示唆された。」([0063]) (ス)「上記(1)と同様の競合ELISAで各モノクローナル抗体と各ペプチドの反応性を調べた。その結果を表4に示す。まず、P-16モノクローナル抗体はaa1-16のペプチドに反応性を示し、aa7-22及び他のペプチドに対しては反応性を示さなかった。一方、P-11モノクローナル抗体は何れのペプチドとも反応しないことが判明した。 以上の結果をまとめると、次の通りである。 P-16モノクローナル抗体のエピトープは、該抗体の上記(1)と(4)に記載のペプチドに対する反応性、及び上記(2)に記載したPIVKA-IIとプロトロンビンに対する反応性から、プロトロンビンフラグメント1のN末端から5残基(配列番号14で表わすaa1-5)の範囲であることが判明した。 aa1-5のアミノ酸配列 Ala Asn Thr Phe Leu (配列番号14) また、P-11モノクローナル抗体のエピトープは、上記(3)でフラグメント1(aa1-156)に反応すること、及び上記(4)でaa1-70に含まれる各ペプチドに反応しないことから、プロトロンビンフラグメント1のaa60-156の範囲に存在することが考えられた。」([0067]~[0070]) (3)請求の範囲 (ア)「[請求項1](a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA-IIの測定方法であって、 前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とするPIVKA-IIの測定方法。」(請求項1) (イ)「[請求項6]二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定するに当り、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とするPIVKA-IIの測定試薬。」(請求項6) (ウ)「[請求項14]請求項2記載の方法によって得られた値により、肝がんを判定することを特徴とする肝がんの判定方法。」(請求項14) (4)表及び図面 (ア)表3 [図:0001416847000036.jpg] 10 甲第12号証 2010年6月29日に出願された特願2010-147784号の出願書類である甲第12号証には、以下の事項が記載されている。 (1)発明の名称 「PIVKA-IIの測定方法、PIVKA-IIの測定試薬及び抗体」 (2)明細書 (ア)「PIVKA-II(Protein Induced by Vitamin K Absence or Antagonist-II)は、AFP(α-フェトプロテイン)と並んで肝がんを診断するマーカーとして広く臨床検査室で測定されている。 PIVKA-IIはビタミンK依存性血漿タンパク質の一つであるプロトロンビンの前駆物質であって、アミノ末端領域にある10個のグルタミン酸残基のγ-カルボキシル化の程度が不完全なものを言う。当該カルボキシル化の程度が完全なものを正常プロトロンビンと言う。従って、PIVKA-IIとは正常プロトロンビンのγ-カルボキシグルタミン酸残基についての脱カルボキシル化体であるということもでき、異常プロトロンビンと呼ばれることもある。10個のグルタミン酸残基中いくつがγ-カルボキシル化を受けるかにより数種類のPIVKA-IIが混在した状態で存在している(非特許文献1)。」(【0002】) (イ)「本発明者らは、鋭意検討を行い、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIと反応する2種の抗体を用いた二抗体サンドイッチ法によりPIVKA-IIを測定することで、肝がんにおける肝障害度の判定及び予後予測が可能となることを見出した。また、この抗体を用いて得られる測定値と従来の方法で行ったPIVKA-II測定値を比較することにより、アルコール性肝炎や肝硬変と肝がんを区別することが可能であり、肝がんの予後予測と、特異性の高い肝がんの検出が可能となることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明のPIVKA-IIの測定方法は、(a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA-IIの測定方法であって、前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とする。」(【0009】~【0010】) (ウ)「本発明のPIVKA-IIの測定方法は、(a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA-IIの測定方法であって、前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用するものである。本願明細書において、前記(a)工程で測定されたビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIをNX-PVKAと称することがある。」(【0024】) (エ)「前記(a)工程における二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法は、例えば、下記方法により実施される。 前記方法により、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを抗原として2種のモノクローナル抗体を調製し、一方を固相化して用い、他方を標識して用いる。該2種の抗体は、互いに交差反応しない抗体である。 抗体を固相化する方法は特に制限はないが、例えば、磁気ビーズやマイクロプレート等の固相に固相化することが好適である。 抗体を標識する方法は特に制限はないが、Ru等の標識物質により標識することが好ましい。 前記固相化抗体及び標識抗体を用いて、検体中のビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定する。測定は、二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法における通常の手順に従って行えばよい。なお、後述する実施例では、電気化学発光免疫測定法を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、化学発光法や放射性同位元素法等の公知の測定法を広く使用可能である。」(【0028】~【0029】) (オ)「1)ハイブリドーマの調製クマジン血漿(UNIGLOBE RESEARCH CORPORATION社製)より精製したPIVKA-II(1mg/mL)とフロイドの完全アジュバント(GIBCO社製)とを1対1で混和乳化し、50μg/100μmL(エマルジョン)で8週齢の雌BALB/Cマウス(日本チャールズリバー(株)製)の皮下に2週間間隔で4回投与後、最終免疫の3日後に脾臓を摘出した。摘出した脾臓から得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞SP2/O-Ag14とを10対1の割合で混合し、50%ポリエチレングリコール1540(和光純薬工業(株)製)存在下にて細胞融合させた。融合細胞は脾臓細胞として2.5x106/mLになるようにHAT培地に懸濁し、96穴培養プレート(CORNING社製)に0.2mLずつ分注した。これを5%CO2インキュベーター中で37℃にて培養し、おおよそ2週間後に、ハイブリドーマの生育してきたウェルの培養上清を、次に示すELISA法にしたがって評価し、PIVKA-IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択した。」(【0033】) (カ)「脱炭酸処理時間30分又は6時間の処理条件で、プロトロンビン(Enzyme Research Laboratories社)の脱炭酸処理を行い(S.Paul Bajah、Paul A. Price、 and William A. Russell、Decarboxylation of γ-Carboxyglutamic Acid Residues in Human Prothrombin、Journal of Biological Chemistry 257(7):3726、1982に記載の方法)、2種類のPIVKA-IIを調製した。前記2種類のPIVKA-II及びプロトロンビンを0.1μg/mL固相化したマイクロプレートを用いて、塩化カルシウムを4mmol/Lの濃度で共存させた条件で、選択したハイブリドーマの精製IgGの反応性を測定した。この条件でプロトロンビンに反応せず、且つ脱炭酸処理時間6時間のPIVKA‐IIに比べて脱炭酸処理時間30分のPIVKA‐IIに対して高い反応性を示すハイブリドーマを選択し、2種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ24211と24216(以下、それぞれ「ハイブリドーマ11」及び「ハイブリドーマ16」と表記することがある)を獲得した。前記得られたハイブリドーマ11及び16は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託され(受領日:2010年5月28日)、ハイブリドーマ11の受領番号はFERM ABP-11258であり、ハイブリドーマ16の受領番号はFERM ABP-11259である。」(【0035】) (キ)「脱炭酸処理時間を表1及び図1に示した如く変更した以外は上記と同様の方法でプロトロンビンの脱炭酸処理を行い、5種類のPIVKA-IIを調製した。ハイブリドーマ11から調製したP-11モノクローナル抗体、ハイブリドーマ16から調製したP-16モノクローナル抗体、及び従来試薬(ピコルミPIVKA-II(三光純薬(株)製))の抗PIVKA-IIモノクローナル抗体の前記5種類のPIVKA-II及びプロトロンビン(脱炭酸処理時間0分)に対する反応性を上記と同様の方法で測定した。結果を表1及び図1に示す。表1及び図1において、(1)はP-11モノクローナル抗体、(2)はP-16モノクローナル抗体、(3)は従来試薬の抗PIVKA-IIモノクローナル抗体である。なお、P-11モノクローナル抗体及びP-16モノクローナル抗体の調製は後述する方法により行った。」(【0036】) (ク)「2)モノクローナル抗体の調製 ハイブリドーマ11及びハイブリドーマ16からそれぞれ下記方法によりP-11モノクローナル抗体及びP-16モノクローナル抗体を調製した。 あらかじめ2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた12週齢の雌BALB/Cマウスに、ハイブリドーマを細胞数0.5x106個の量で腹腔内に投与した。約14日後に腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3M NaCl-1.5M Glycine-NaOH、pH8.5)と混和後、濾過した。このろ液を吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAカラム(ファルマシア社製)に通して抗体をカラムに吸着させた後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させてモノクローナル抗体を精製した。」(【0038】) (ケ)「3)ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIの測定 前記調製したP-16モノクローナル抗体固相磁気ビーズ及びRu標識P-11モノクローナル抗体を用い、電気化学発光免疫測定法により検体中のビタミンK欠乏に起因するPIVKA-II(NX-PVKA)の測定値Aを求めた。 検体として、5年後の予後が判明している肝細胞癌患者83人の血清試料を用い、下記方法に従いNX-PVKA量を測定した。 各検体50μLにP-16モノクローナル抗体固相磁気ビーズを25μLと1μg/mLのRu標識P-11モノクローナル抗体を含むRu標識抗体液150μLを加え、30℃で9分間反応させた。反応後、磁気ビーズを磁石でトラップしながらピコルミBF洗浄液(三光純薬(株)製)で3回洗浄した。0.1Mトリプロピルアミンを含むピコルミ発光電解液(三光純薬(株)製)を300μL加えて、電極表面に送り、磁気ビーズに結合したRuの発光量を自動分析装置ピコルミIII(三光純薬(株)製)で測定し、検体中のNX-PVKA量を求めた。」(【0041】~【0042】) (コ)「ピコルミPIVKA-II測定キット(三光純薬(株)製)を用いて、PIVKA-IIの測定を行った。結果を図2(b)及び図3に示した。ROC分析における曲線下面積は、0.653であった。」(【0044】) (サ)「PIVKA-II測定値を図4に示した。PIVKA-II測定値をNX-PVKA測定値で割ったレシオ値の結果を図5に示した。図4及び図5において、HCCは肝細胞癌、CHは慢性肝炎、LCは肝硬変、BはB型肝炎、CはC型肝炎、NBNCは非B型非C型肝炎、NASHは非アルコール性肝障害、AIHは自己免疫性肝炎、ALDはアルコール性肝障害である。 図4、図5に示した結果から明らかなように、従来の測定方法で得たPIVKA-II測定値をNX-PVKA測定値で割ったレシオ値(図5のNX-PVKA-R)により、従来の測定方法では偽陽性となっていた検体を区別することができ、肝がんに高い特異性を示した。」(【0049】) (3)請求の範囲 (ア)「【請求項1】(a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA-IIの測定方法であって、 前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とするPIVKA-IIの測定方法。」(請求項1) (イ)「【請求項5】二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定するに当り、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とするPIVKA-IIの測定試薬。」(請求項5) 11 甲第18号証 令和3年9月29日付弁駁書において請求人が新たに提出したものであって、甲4の技術内容(H-11の性質)について説明をするために提出した補助事実、間接証拠としての甲第18号証(以下、「甲18」という。)には、以下の事項が記載されている(翻訳は当審による。)。 (1)標題 「種々のビタミンK依存タンパク質の共通エピトープに対するカルシウムイオン阻害モノクローナル抗体を利用した、血漿中のプロトロンビンとプロテインCの、正常及び異常の区別」 (2)要約 (ア)「抗体H-11は、EDTAの存在下では、完全カルボキシル化プロトロンビン及びプロテインCに結合するが、結合は、二価金属イオンであるカルシウム、マグネシウム及びマンガンにより阻害される。一方、デス-γ-カルボキシプロトロンビン及びプロテインCは、EDTAの存在下又はカルシウムイオンの存在下で同様にH-11に結合する。」(第2418頁要約左欄6-11行) (イ)「カルシウムイオンの存在下で抗体H-11のデス-γ-カルボキシプロトロンビン及びプロテインCに結合するこの能力により、血漿でこれらのタンパク質に対するイムノアッセイの開発が可能になった。」(第2418頁要約左欄14行及び右欄1-3行) (3)本文 (ア)「最近、我々は、プロテインCに対して産生され、かつプロトロンビン、第VI因子及び第X因子並びにプロテインCを含むビタミンK依存性タンパク質のサブセットに結合するマウスモノクローナル抗体(MoAb、H-11と記載される)について記載した17。」(第2418頁本文右欄第7-11行) (イ)「図2Bに示されるアッセイ形式を使用して、精製完全カルボキシル化プロトロンビン(10Gla)及び熱脱カルボキシル化(0Gla)を、H-11アッセイにおいて測定した。図3A(左パネル)のデータは、カルシウムイオンの存在下では、抗体H-11のプロトロンビンへの結合レベルと比べて低下することを示す。以前の実験(データは示さず)では、プロトロンビンの抗プレトロンビン1抗体への結合は10mmol/Lカルシウム又はEDTAの存在下で同一であったことが確立された。熱により脱カルボキシル化したプロトロンビンへの抗体H-11の結合は、カルシウムイオンの存在下及びEDTAの存在下の両方で同等であった(図3A、右パネル)。これらのデータは、γ-カルボキシルグルタミン酸の脱カルボキシル化によりプロトロンビンのGlaドメインのカルシウムイオンの結合部位が破壊され、タンパク質がコンフォメーション転移できないことによるプロトロンビンへの抗体H-11の結合のカルシウムイオン依存性阻害の喪失を生じることを示唆する。」(第2420頁本文左欄第27-33行及び右欄第1-12行) (4)図面 (ア)図2 「 [図:0001416847000037.jpg] 図2.抗体H-11イムノアッセイの概略図 (A)カルシウムイオンでプロトロンビンのGlaドメインに誘導される構造変化の図。示されたドメインはフラグメント1(F1)、フラグメント2(F2)、プレトロンビン2(P2)である。カルシウムイオンがGlaを含むフラグメント1に結合することによって、この領域の構造変化がもたらされる。抗体H-11の認識部位はプロトロンビンのF1領域にある。 (B)血漿中のビタミンK依存タンパク質への抗体H-11の結合を測定するためのサンドイッチ型アッセイ。本研究で利用される補足抗体は、プロトロンビンに対してはロバのポリクローナルなプレトロンビン1抗体を、プロテインCに対してはMoAb αHPC-2が利用される。標識化された抗体H-11の結合は、EDTA又はカルシウムイオン存在下で決定される。このアッセイの原理は、EDTA又はカルシウムイオン存在下でGlaを含むビタミンK依存タンパク質に対する抗体H-11の結合性の違いである。 (図中対訳) Metal Free II Binds H-11:金属フリーIIはH-11に結合する Metal-protein Complex Does Not Bind H-11:金属-タンパク質複合体はH-11に結合しない Capture antibody:捕捉抗体 Labeled antibody H-11:標識抗体H-11 Vitamin K-dependent protein + Ca2+:ビタミンK依存タンパク質+カルシウムイオン Vitamin K-dependent protein、 no Ca2+:ビタミンK依存タンパク質、カルシウムイオン無し des-gamma-carboxy vitamin K-dependent protein:デス-γ-カルボキシビタミンK依存タンパク質 」(第2420頁右欄図2) (イ)図3ABのみ 「 [図:0001416847000038.jpg] 図3.正常及びワーファリン血漿中のプロトロンビン及びプロテインCに対するH-11アッセイ (A)精製10-Glaプロトロンビン又は熱により完全に脱カルボキシル化したプロトロンビンを、ポリクローナルロバ抗体プレトロンビン1抗体でコートしたマイクロタイタープレート中でインキュベートした。抗体H-11-プロトロンビン-抗プレトロンビン1複合体の存在を、西洋ワサビペルオキシダーゼと連結したヤギ抗マウス免疫グロブリン、ならいに、基質としてo-フェニレンジアミンと過酸化水素を使用して決定した。EDTAの存在下での抗体H-11の結合(●);カルシウムイオンの存在下での結合(○)。 (B)正常な血漿(N)、又は、ワーファリン摂取患者由来の血漿(C)中において、EDTA(■)又はカルシウムイオン(□)存在下で、抗体H-11のプロトロンビン結合を材料と方法に記載した手法で決定した。プロトロンビンの濃度は、プロトロンビンラジオイムノアッセイで決定した。 」(第2421頁左欄図3) 第7 当審の判断 訂正前の請求項73~74は、本件訂正により、その内容が削除され、対象を欠くものとなっており、それらの請求項に対して請求人がした審判の請求は、不適法な請求であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により、請求項73~74に係る特許に対する請求は却下すべきものである。 以下では、事案に鑑み、無効理由6、無効理由4、5、無効理由1、2、3の順で検討する。 1 本件明細書の記載事項 本件明細書には、以下の事項が記載されている。 本a.背景技術 「【0002】 タンパク質プロトロンビンIIはII因子としても知られており、ビタミンKの存在下、合成後修飾を受け、GLA-ドメインにおける10個のグルタミン酸残基(GLA)がg-カルボキシグルタミン酸にカルボキシ化されている。カルボキシ化のプロセスは、プロトロンビンがPIVKA-II(ビタミンK欠乏時誘導蛋白)に変換される病状およびプロセスにおいて異常であり、不完全である。PIVKA-IIは分子量72kDaを有する大型の糖タンパク質であり、HCC患者の場合に上昇することが知られている・・・。さらに、このような状態を効果的に検出するイムノアッセイにおいて有用であるため、またはこのような状態を処置するために必要とされる結合特異性を有するモノクローナル抗体は殆んど知られていない・・・。したがって、腫瘍学において、HCCまたは肝癌を検出するのに有効に用いられ得る抗体の開発が極めて必要とされている。」 本b.課題 「【0002】 ・・・腫瘍学において、HCCまたは肝癌を検出するのに有効に用いられ得る抗体の開発が極めて必要とされている。」 「【0001】 本開示は、例えば、肝細胞癌(HCC)、肝癌および関連の病状の診断、処置および予防において用いられ得る抗体およびイムノアッセイ方法に関する。」 「【0005】 別の一態様において、本開示は、プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含む単離された結合性タンパク質を提供する。・・・」 本c.実施態様 「【0028】 A.序文および定義 PIVKA-IIタンパク質のGLAドメインは、10個のGLAアミノ酸を含む、アミノ酸1-46(またはプロトロンビン配列の44-88)からなる。PIVKAタンパク質は、脱炭酸されたGLAの位置および数に関して変化する複数の形態において存在する。現在利用可能なPIVKA-IIに対するイムノアッセイは一部分のタンパク質だけ(主に、環状ジスルフィド結合のアミノ酸17-23の配列)、および周囲の配列、すなわちアミノ酸13-27を検出する。その結果、アミノ酸17-23のGLAの外側(脱炭酸されたGLAを含む。)は検出されない。本明細書に開示する新たな抗体および方法は、PIVKAのアミノ酸1-17、およびアミノ酸17-23の領域における脱炭酸された残基を検出するための方法を提供する。これは、例えば、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗PIVKA抗体、およびPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有する第2の抗PIVKA抗体を用いることによって実現され得る。第2の抗体は、PIVKAの脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することができ、カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる。アッセイにおいて両方の抗体を用いることで、高レベルの特異性でPIVKA13-27およびPIVKA1-27の両方を検出することができ、したがってPIVKA13-27単独を検出することによって生成されるものよりも強力なシグナルを生成する。 【0029】 本開示は、したがって37±4nMまたはそれ未満のKdで、好ましくは1×10-9Mまたはそれを超える範囲の、好ましくは約1×1010Mまたはそれを超える、PIVKA-IIペプチドに対するKdで、PIVKA-IIの1つまたは複数のエピトープに結合する結合性タンパク質、特に、本明細書以後「6H6」と呼ぶモノクローナル抗体を提供する。特に、本開示の結合性タンパク質または抗体は、約1×10-9Mまたはそれを超える、好ましくは約1×10-10Mまたはそれを超える、PIVKA-IIのアミノ酸領域1-13に対する解離定数(Kd)を有する。抗体はこのように、PIVKA-IIを特異的に認識し結合することができる。抗体がPIVKA-IIに結合した後は、例えば、プロトロンビンによって置換されない。抗体がPIVKA-IIおよびプロトロンビンに同時に曝露された場合、本開示の6H6抗体は、PIVKA-IIよりもプロトロンビンに対して約10倍から約1000倍低い親和性を有することは注目すべきことである。・・・」 「【0035】 本明細書で用いられる「結合」、「特異的結合」または「特異的に結合する」の語は、抗体、タンパク質またはペプチドの、第2の化学種との相互作用に関して、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基もしくはエピトープ)の存在に依存することを意味し、例えば、抗体は、一般的にタンパク質よりもむしろ特異的なタンパク質構造を認識し、結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識化されている「A」および抗体を含む反応における、エピトープA(または遊離の、非標識のA)を含む分子の存在は、抗体に結合する標識化されているAの量を低減する。」 本d.実施例 「【0166】 [実施例1]6H6モノクローナル抗体の開発 免疫原のデザイン:PIVKA-II(すなわち、血液凝固II因子の非存在下ビタミンKによって誘導されるタンパク質)特異的領域のPIVKA-II 1-17におけるアミノ酸長17個のペプチドを免疫原として選択した。PIVKA-IIにおけるアミノ酸長17個のペプチド中にグルタミン酸の脱炭酸されたアミノ酸が4個存在し、プロトロンビン(II因子)はアミノ酸長17個のペプチド中にカルボキシル化されたグルタミン酸(GLA)を4個有していた。・・・6H6モノクローナル抗体は、担体としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に連結している以下の合成ペプチド(配列番号18)を用いて生成された。 【0167】 【化9】 [図:0001416847000039.jpg] 【0168】 免疫化:ペプチドKLHを用いて、図1に示す通り、胚中心関連DNAプライマーゼ(GANP)トランスジェニックBalb/cマウス3匹およびGANPトランスジェニックC57BL/6マウス3匹を免疫化した。・・・各群においてPIVKA-IIに対して最高の反応性を示し、プロトロンビンに対して最小の反応性を示したマウスを、次のステップのために選択した。 【0169】 融合:GANPトランスジェニックBalb/cおよびGANPトランスジェニックC57BL/6の各群から選択したマウス1匹からの脾臓細胞を、Sakaguchiら、The Journal of Immunology、174巻(2005年)、4485-4494頁において記載されている標準方法でミエローマ細胞に融合した。ハイブリドーマ細胞を限外希釈法によって希釈し、次いで培養上清をハイブリドーマのスクリーニングに用いた。 【0170】 ハイブリドーマのスクリーニング:・・・結果を図2に示した。1ODを超える吸光度を示したハイブリドーマを、次のステップのために選んだ。 【0171】 クローンの確立:ハイブリドーマ6H6ハイブリドーマのクローニングを、Sakaguchiら、The Journal of Immunology、174巻(2005年)、4485-4494頁において記載されている標準手順を用いて行った。次いで6H6のクローンを確立した。 【0172】 [実施例2]6H6モノクローナル抗体親和性のキャラクタリゼーション 蛍光相関分光法(FCS)を用いて、mAb 6H6およびPIVKA-IIペプチド(1-13)、mAb 6H6およびプロトロンビンペプチド(1-13)のKdを決定した。・・・ 【0173】 PIVKA-IIペプチド(1-13)の配列はAlexa488-CANTFLEEVRKGNL(配列番号19)であり、プロトロンビンペプチド(1-13)の配列はAlexa488-CANTFLE*E*VRKGNL(配列番号20)であった。・・・ 【0174】 結合性の測定は全て、0.15M NaCl、3mM EDTA、および0.005%界面活性剤P20を含む10mM HEPESバッファーpH7.4中で行った。図3は、mAb 6H6およびAlexa488-PIVKA-IIペプチドの結合曲線を示す。PIVKA-IIペプチドに対するmAb 6H6のKdは37±4nMである。図4は、mAb 6H6およびAlexa488-プロトロンビンペプチド(1-13)の結合曲線を示す。曲線上の各データ点を、各自己相関曲線の適合から抽出した(データは示さず)。6H6 mAbおよびプロトロンビンペプチドのKdは4.6±0.5uMである。 【0175】 PIVKA-IIペプチドCys1-13の標識化:・・・ 【0176】 [実施例3]イムノアッセイ自動化イムノアッセイにおける6H6の使用 無血清培地中でハイブリドーマを培養した。培養上清中の抗体を、タンパク質Aカラムで精製した。精製した3C10 PIVKA-II特異的モノクローナル抗体を、磁性微粒子にコーティングした(カルボキシル基を、微粒子(Abbott Laboratories、IL)の表面上に、塩酸1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)を用いて共有結合で付けた。)。コーティングした微粒子を、ウシ血清アルブミン(試薬Aを作成するためのBSA)を含んでいたバッファー溶液中に分散させた。 【0177】 アクリジニウムコンジュゲートを、上記に記載した6H6モノクローナル抗体から作成した。抗体を、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化したアクリジニウムエステル(Abbott Laboratories、IL)を用いて標識化した。標識化した抗体を、BSAを含むバッファー中に希釈して試薬Bを調製した。TritonX-100を含むバッファー溶液を試薬Cとして調製した。イムノアッセイを、ARCHITECTi2000(Abbott Laboratories、IL)の自動化イムノアッセイシステムを利用した以下の手順で自動的に行った。・・・ 【0178】 PIVKA-II溶液を、磁性微粒子上にコーティングした4つの抗体を用いて、Architectイムノアッセイで試験した(図2)。・・・ヒトPIVKA-II分子の図を抗体反応性の部位とともに図5Aに示す。アッセイフォーマットの図を図5Bに示す。 【0179】 アッセイ性能の評価:6つのキャリブレーターを5回繰り返してアッセイし、ヒトプロトロンビン(Abbott Japan、東京、日本)に対する対照のコンジュゲートおよび6H6コンジュゲートの反応を用いて各キャリブレーターに対するRLU(相対的な光単位)の平均値を、表Bおよび図6に示す通り比較した。両方のコンジュゲートともアッセイにおいて良好な応答をもたらした。 【0180】 【表2】 [図:0001416847000040.jpg] 【0181】 2つのARCHITECT PIVKA-IIアッセイからの結果を、ポリクローナル抗ヒトプロトロンビンコンジュゲートを用いる市販のPIVKA-IIアッセイ(Picolumi、EISAI、日本)からの結果に比較した。見かけ上健康な人からの試料(ProMedDx LLC、Norton、Massachusetts)および肝細胞癌患者からの試料(Clinical Research Center of Cape Cod、West Yarmouth、Massachusetts)を用いた。両方のアッセイフォーマット対Picolumiに対する相関を図7-8に示す。これらの結果は、ヒト血清中のPIVKA-IIを検出するこれらのアッセイの能力を実証している。」 本e.抗体の調製方法 「【0073】 B.モノクローナル抗体の調製 モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはこれらの組合せの使用を含む、当技術分野において知られている広範囲の技術を用いて調製され得る。・・・ 【0075】 ハイブリドーマ技術を用いて特異的な抗体を生成し、スクリーニングするための技術は、当技術分野において日常的であり、よく知られている。・・・ 【0076】 動物が抗原で免疫化された後、抗体および/または抗体産生細胞は動物から得ることができる。・・・ 【0077】 例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清中で検出されるなど、免疫反応が検出された後、マウスの脾臓を収集し、脾細胞を単離する。次いで、脾臓細胞を、よく知られている技術によって、アメリカ培養細胞系統保存機関(Manassas、VA)から入手できる細胞系統SP20からの細胞など、あらゆる適切なミエローマ細胞に融合する。ハイブリドーマを選択し、限外希釈法によってクローニングする。次いで、ハイブリドーマクローンを、対象のペプチドまたは抗原に結合することができる抗体を分泌する細胞に対して、当技術分野において知られている方法によってアッセイする。一般的に高レベルの抗体を含んでいる腹水は、ポジティブのハイブリドーマクローンで免疫化したマウスによって産生され得る。 【0078】 別の実施形態において、抗体生成性の不死化ハイブリドーマは、免疫化した動物から調製され得る。・・・ 【0079】 抗体生成性ハイブリドーマが選択され、クローニングされ、ハイブリドーマの活発な成長、抗体の高生成性、および下記にさらに論じる所望の抗体の特徴を含めた望ましい性質に対してさらにスクリーニングされる。ハイブリドーマは、ヌードマウスなどの免疫系を欠く動物などの同質遺伝子的な動物においてインビボで、またはインビトロの細胞培養において培養および拡張されてもよい。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、拡張する方法は、当業者にはよく知られている。 【0081】 C.抗体を生成する他の方法 上記に記述した通り、本開示の抗体は、当技術分野において知られているあらゆる数々の技術によって生成されてよい。・・・ 【0083】 宿主細胞が、FabフラグメントまたはscFv分子などの機能的な抗体フラグメントを生成するのに用いられてもよい。上記の手順に対する変形も本開示の範囲内であることが理解される。・・・ 【0084】 ・・・標準の分子生物学技術を用いて、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。またさらに、本発明は、本開示の組換え抗体が合成されるまで適切な培地中で本開示の宿主細胞を培養することによって、本開示の組換え抗体を合成する方法を提供する。方法は、培地から組換え抗体を単離することをさらに含むことができる。」 本f.抗体を使用する方法 「【0114】 E.抗体を使用する方法 PIVKA-II、またはそのエピトープもしくはその部分に結合する本明細書に記載する抗体の能力を考慮すると、本明細書に記載する抗体は、従来の競合的または非競合的なイムノアッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫測定、サンドイッチアッセイもしくは免疫組織化学)を用いて、生物学的試料(例えば、血清、血液、組織もしくは血漿など)中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するのに用いられ得る。次いで、このような検出は、生物学的試料が得られた患者に対するHCCまたは肝癌の診断をもたらし得る。 【0115】 生物学的試料中のPIVKA-IIを検出するための方法は、例えば、第1の抗体-抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、生物学的試料を本開示の抗体(またはその抗体部分)と接触させ、抗原/抗体複合体の形成を検出することによってPIVKA-IIまたは部分(例えば、そのエピトープ)を検出することを含む。抗体は、結合している抗原もしくは非結合の抗原(すなわち、PIVKA-II)の検出および/または定量を促進するために、検出可能な物質で直接的または間接的に標識化され得る。 【0116】 試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法は、a)試験試料を、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体と、第1の抗体-抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、b)第2の抗体がPIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有し、検出可能な標識にコンジュゲートしている、第2の抗体を第1の抗体/抗原複合体に、第1の抗体/抗原/第2の抗体の複合体を形成するのに十分な時間および条件下、加えるステップ、ならびにc)検出可能な標識によって生成され、または検出可能な標識から放射されるシグナルを測定し、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出するステップを代替的に含むことができる。第1の抗体は、例えば、mAb 3C10、すなわち、ATCC受託番号PTA-9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体である。第2の抗体は、例えば、6H6、すなわち、ATCC受託番号PTA-10541を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体である。 【0117】 イムノアッセイに基づく定量方法はよく知られており、例えば、イムノアッセイの出力から決定されたPIVKA-IIの量を、閾値またはカットオフ値など、PIVKA-IIのレベルがそれを超えるとHCCもしくは肝癌であることを示す、予め決定されたレベルに比べることを含むことができる。・・・ 【0121】 抗体を標識化するのに適切な検出可能な物質は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質を含む。・・・ 【0122】 抗体の標識化の代替として、検出可能な物質および非標識の抗体で標識化された組換えの標準を利用して、競合的イムノアッセイ(competition immunoassay)によって生体液中の抗原がアッセイされ得る。・・・ 【0126】 上記のイムノアッセイによって試験され得る生体液の例は、血漿、尿、全血、乾燥全血、血清、脳脊髄液、唾液、涙液、鼻洗浄液または組織および細胞の水性抽出物を含む。・・・ 【0129】 抗原および抗体を同時に検出するために、本開示の目的に用いられ得る他のアッセイフォーマットは、デュアルアッセイストリップブロット(Dual assay strip blot)、迅速試験、ウエスタンブロット、およびArchitect(登録商標)アッセイなどにおける常磁性粒子の使用を含む(Frank Quinn、The Immunoassay Handbook、第2版、David Wild編、363-367頁、2001年)。このようなフォーマットは当業者には知られている。・・・ 【0131】 本明細書におけるあらゆる例示のフォーマット、および本発明によるあらゆるアッセイまたはキットは、米国特許第5,089,424号および第5,006,309号などに記載されている通り、ならびにそれだけには限定されないが、AbbottのARCHITECT(登録商標)、AxSYM、IMX、PRISMおよびQuantum IIプラットフォームおよび他のプラットフォームを含めてAbbott Laboratories(Abbott Park、IL)によって販売されている、自動化および半自動化のシステム(微粒子を含む固相が存在するシステムを含む)の使用に適用または最適化されていてよい。 【0132】 さらに、本発明のアッセイおよびキットはAbbott’s Point of Care(i-STATIm)電気化学的イムノアッセイシステムを含むポイントオブケアアッセイシステムに適用または最適化されていてよい。免疫センサー、および免疫センサーを製造し、使い捨ての試験装置において操作する方法は、例えば、米国特許第5,063,081号、ならびに公開されている米国特許出願第20030170881号、第20040018577号、第20050054078号および第20060160164号において記載されている(これらに関する教示に関して本明細書に参照により組み込む)。 【0133】 さらに、PIVKA-IIは腫瘍の悪性度を誘発し得ることが注目されている(Shiraha、J.Biol.Chem.、2005年2月25日、280巻(8)、6409-15頁)。したがって、本開示は、PIVKA-II活性が関連する疾患または障害(例えば、肝癌もしくはHCC)に罹患しているヒトにおける、PIVKA-II活性を低減するための方法も提供する。・・・」 2 無効理由6(明確性要件違反)について (1)請求人の主張の具体的内容 ア 本件特許の請求項29は、請求項28を引用し、請求項28で特定される化合物をさらに特定しようとするものであるが、請求項29に記載された化合物は、請求項28に記載された化合物に含まれないから、従属関係が適切でなく、発明が明確でない。 イ 本件特許の請求項45には、「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に抗原結合性ドメインを有し」と記載されているが、抗原結合ドメインは抗体が有するものであって、抗原が有するものではないから、上記記載は不明確である。 ウ 訂正後の請求項3の「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」は、不明確である。 次のとおり、PIVKA-IIの中には、訂正後の請求項3に係る抗原結合性タンパク質が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ことができないものが含まれるから、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」を明確なものであるとすることはできない。 すなわち、PIVKA-IIには、次の4つのタイプがある。 タイプ(i) 6位及び7位にGluを有するPIVKA-II タイプ(ii) 6位にGluを有し、7位にGlaを有するPIVKA-II タイプ(iii) 6位にGlaを有し、7位にGluを有するPIVKA-II タイプ(iv) 6位及び7位にGlaを有するPIVKA-II(但し、アミノ酸1-13以外の位置に1つ以上のGluを有する)。 このうち、タイプ(iv)のPIVKA-IIは、6位及び/又は7位がGlaであって、アミノ酸1-13の領域はプロトロンビンと同一であるから、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み」という「結合性タンパク質」は、タイプ(iv)の「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ことはできず、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」の意味が不明となる。 したがって、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」を明確なものであるとすることはできない。 (2)当審の判断 ア 請求人の主張アについて 請求項29の「請求項28に記載の方法」は、本件訂正の訂正事項7により「請求項27に記載の方法」と訂正され、従属関係が適切となった。したがって、請求人の主張アは理由がない。 イ 請求人の主張イについて 請求項45の「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に抗原結合性ドメインを有し」は、本件訂正の訂正事項10により「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを有し」と訂正され、明確になった。したがって、請求人の主張イは理由がない。本件訂正発明46~51についても同様である。 ウ 請求人の主張ウについて 訂正後の請求項3は、上記「第4 本件訂正発明」のとおり、 「【請求項3】 プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」 というものである。ここで、訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」の「抗原結合性部分」は、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する」ものなのだから、当該「結合性タンパク質」の特性である「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」とは、当該「結合性タンパク質」の「抗原結合性部分」が結合する「抗原結合性部分」の範囲内、すなわち、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」の範囲内で「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ことを意味することは、技術的に明らかである。 このことは、本件明細書の記載とも矛盾しない。すなわち、 本件明細書の段落【0028】(本c)には、従来のPIVKAの検出方法では、「アミノ酸17-23のGLAの外側(脱炭酸されたGLAを含む。)は検出されない。」ため、「本明細書に開示する新たな抗体および方法は、PIVKAのアミノ酸1-17(中略)の領域における脱炭酸された残基を検出するための方法」を提供するものであることが記載され、その方法は、「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を有する第2の抗PIVKA抗体を用いることによって実現され得」、「第2の抗体は、PIVKAの脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応することができ、カルボキシル化された(通常の)アミノ酸残基と中程度に反応することができる」ものであることが記載されている。 また、本件明細書の段落【0029】(本c)には、「本開示の結合性タンパク質または抗体は、約1×10-9Mまたはそれを超える、好ましくは約1×10-10Mまたはそれを超える、PIVKA-IIのアミノ酸領域1-13に対する解離定数(Kd)を有する。抗体はこのように、PIVKA-IIを特異的に認識し結合することができる。抗体がPIVKA-IIに結合した後は、例えば、プロトロンビンによって置換されない。」ことが記載されている。 以上の本件明細書の記載を踏まえると、本件明細書に開示される抗体は、PIVKA-IIの脱炭酸された残基を検出することを目的としたものであり、その抗体の一つ(第2の抗体、すなわち訂正後の請求項3に係る結合性タンパク質)は、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の脱炭酸されたアミノ酸残基と強力に反応し、反応後(結合後)は、脱炭酸されていない通常のアミノ酸1-13、すなわち、プロトロンビンのアミノ酸1-13により、置換されない特性を有し、PIVKA-IIを特異的に認識し、結合することができるものであることが理解できる。そして、プロトロンビンのアミノ酸1-13の範囲内において、脱炭酸されるアミノ酸残基GLAは、6位と7位にのみ存在するから(段落【0173】(本d)、および、配列番号19、20を参照)、PIVKA-IIにおける6位及び/又は7位のGluが、プロトロンビンの6位及び7位のGlaとは異なる特異的な構造部位であるといえ、訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」は、当該特異的な構造部位により「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであると理解できる。 したがって、訂正後の請求項3は、不明確であるとはいえない。 また、訂正後の請求項4~5、13、15~22、25~31、33~37、40、45~53、55、57~69、71、72は、いずれも、訂正後の請求項3を直接または間接的に引用するか、それと同様の「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むところ、本件訂正発明3の判断で示したとおり、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」は、不明確なものであるとは認められないのだから、同様に、明確性要件を満たすものである。 エ 小括 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由6は理由がない。 3 無効理由4(サポート要件違反)について (1)請求人の主張の具体的内容 ア 本件特許の請求項45には、「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に抗原結合性ドメインを有し」と記載されているが、そもそも抗原結合ドメインは抗体が有するものであって、抗原が有するものではなく、また、抗原結合性ドメインを有する抗原について、本件明細書に記載も示唆もない。 イ 無効理由6で指摘したとおり、PIVKA-IIの中には、アミノ酸1-13の領域がプロトロンビンと同一であるから(タイプ(iv))、訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」には「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ことができないものも含まれ、そのような結合性タンパク質は、PIVKA-IIだけでなくプロトロンビンをも検出してしまうから、本件訂正発明の課題(肝細胞癌などの診断、処置、予防において用いられる抗体の提供など)を解決できない。 (2)当審の判断 ア 請求人の主張アについて 請求項45の「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に抗原結合性ドメインを有し」は、本件訂正の訂正事項10により「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを有し」と訂正され、抗原結合性ドメインがPIVKA-II抗原が有するものでないことが明確化されたから、本件訂正発明45は、本件明細書に記載されたものである。本件訂正発明46~51についても同様である。したがって、請求人の主張アは理由がない。 イ 請求人の主張イについて 本件明細書によると、「PIVKA-IIは・・・HCC患者の場合に上昇することが知られている」ところ、「腫瘍学において、HCCまたは肝癌を検出するのに有効に用いられ得る抗体の開発が極めて必要」であることから(いずれも【0002】)、本件訂正発明3は、HCCまたは肝癌を検出するための、「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含む単離された結合性タンパク質を提供する」(【0005】)ことを技術課題にするものと認められる。 そのような課題に対して、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」は、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の範囲内(6位及び/又は7位)における特異的な構造を認識して結合するという特徴(結合特異性)を有するものであり、本件明細書の実施例3には、上記「結合性タンパク質」の一つである抗体6H6が、肝細胞癌などで発生するPIVKA-IIに対して特異的に結合することが実験データにより具体的に裏付けられている。 そうすると、これらの記載から、本件訂正発明3は、当業者が、上記の発明の課題を解決できると認識しうる範囲のものと認められる。 請求人は、請求項3には、アミノ酸1-13の領域がプロトロンビンと同一のPIVKA-II(タイプ(iv))に対する結合性タンパク質、すなわちPIVKA-IIを特異的に認識して結合するとはいえない結合性タンパク質が含まれ、そのような結合性タンパク質は、PIVKA-IIだけでなくプロトロンビンをも検出してしまうことを理由に、サポート要件違反を主張する。しかし、上記2(2)イのとおり、訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」は、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」の範囲内で「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであるのだから、請求人の上記主張は前提において誤りである。 また、訂正後の請求項4~5、13、15~22、25~31、33~37、40、45~53、55、57~69、71、72は、いずれも、訂正後の請求項3を直接または間接的に引用するか、それと同様の「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むところ、本件訂正発明3の判断で示したとおり、本件明細書には、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を用いることで、本件訂正発明の課題を解決できると当業者が認識し得る記載があるのだから、同様に、サポート要件を満たすものである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由5は理由がない。 4 無効理由5(実施可能要件違反)について (1)請求人の主張の具体的内容 ア 本件特許の請求項22には、「PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体」と「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する項弦月合成部分を有する第2の抗体」を利用する方法であって、いわゆるサンドイッチELISAに係る方法が記載されているが、第1及び第2の抗体の抗原結合性部分がアミノ酸13で重複するので、サンドイッチELISA、すなわち請求項22の方法は実施できない。 イ 無効理由6で指摘したとおり、PIVKA-IIの中には、アミノ酸1-13の領域がプロトロンビンと同一であって(タイプ(iv))、訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ことができないものも含まれるから、本件訂正発明3には、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」とはいえない「結合性タンパク質」が含まれる。そのような「結合性タンパク質」は、理解することができないし、本件明細書は、そのような結合性タンパク質は記載していないので、本件訂正発明3について実施することができる程度に記載したものということはできない。 (2)当審の判断 ア 請求人の主張アについて 本件訂正発明22の「PIVKA-II抗原のアミノ酸13-27に結合する抗原結合性ドメインを有する第1の抗体」及び「PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合し、検出可能な標識に付着している第2の抗体」なる記載について検討する。これらの抗体は、一般的な抗体の抗原決定基(エピトープ)の長さは数アミノ酸残基であることをふまえると(必要であれば、免疫学辞典(第1版第1刷1993年11月15日発行)第185-186頁「抗原決定基」の項等を参照されたい。)、抗原結合性ドメイン又は抗原結合性部分がPIVKA-II抗原のアミノ酸13-27の全てのアミノ酸に結合するものであること、すなわち、アミノ酸13-27の全てのアミノ酸がその抗体のエピトープであることは技術的に想定できないし、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の全てのアミノ酸に結合するものであること、すなわち、アミノ酸1-13の全てのアミノ酸がその抗体のエピトープであることは技術的に想定できない。また、本件明細書においても、3C10モノクローナル抗体のPIVKA-IIペプチド(13-27)への結合、6H6モノクローナル抗体のPIVKA-IIペプチド(1-13)への結合を実験的に確認しただけであり(実施例2、7)、抗原結合性ドメイン又は抗原結合性部分がPIVKA-II抗原のアミノ酸13-27の全てのアミノ酸をエピトープとすること、及びPIVKA-IIのアミノ酸1-13の全てのアミノ酸をエピトープとすることを確認したものではない。そうすると、当該発明特定事項は、抗原結合性ドメインがPIVKA-II抗原のアミノ酸13-27の全てのアミノ酸をエピトープとすること、及びPIVKA-IIのアミノ酸1-13の全てのアミノ酸をエピトープとすることを意味するものではなく、抗原結合性部分が結合する抗原のエピトープが含まれる範囲としてPIVKA-IIのアミノ酸13-27及びアミノ酸1-13をそれぞれ特定するものと理解できる。そうすると、各モノクローナル抗体のエピトープがPIVKA-IIのアミノ酸13において必然的に重複するものではない。 ここで、サンドイッチELISAで使用する2つの抗体は、1つの抗原を異なるエピトープで認識する必要があることは、その測定原理から明らかであり、1つの抗原を検出するために2つのモノクローナル抗体を使用するサンドイッチELISAにおいて、各モノクローナル抗体のエピトープの重要な部位が、同じアミノ酸で重複することがなく、抗体-抗原-抗体の複合体を形成できるように設定することは当業者にとって当然のことであるといえる。また、本件明細書において、2つの抗体を使用する方法について記載した部分で、2つの抗体が、PIVKA-IIに特異的に結合することができるが異なる抗原結合性ドメインを有し、PIVKA-IIタンパク質の異なるサブセットのアミノ酸1-33に結合することによって、単一のモノクローナル抗体の使用よりも極めて高いシグナルを生成することができるとしているのは、これらの抗体が、抗体-抗原-抗体の複合体を形成できるように設定することが前提であるといえ、当業者が第1の抗体と抗原と第2の抗体の複合体が形成できるように材料を選択することができることは明らかである。そうすると、本件訂正発明22は、明細書及び出願時の技術常識に基づき、当業者がこの方法を使用できるように記載されている。 以上のとおりであるから、請求人の主張アは理由がない。本件訂正発明25~30、45~51についても同様である。 イ 請求人の主張イについて 上記1の無効理由6の判断で示したとおり、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」は、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の範囲内(6位及び/又は7位)における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ものである。 そして、本件明細書の段落【0073】-【0084】(本e)には、抗原特異的な抗体、すなわち「結合性タンパク質」を産生する方法が日常的なものであることが説明されており、段落【0166】-【0181】(本d)には、実施例として、PIVKA-IIの1-17アミノ酸のペプチドを免疫原として用いて、上記(本e)に記載されたような日常的な方法により、PIVKA-IIのアミノ酸6位及び7位のGluを特異的に検出可能な抗体を得られたことが具体的に記載されている。また、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」は、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の範囲内(6位及び/又は7位)における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことで、6位及び/又は7位における特異的な構造を有するPIVKA-IIの検出に使用できることは明らかであり、検出方法についても、本件明細書の段落【0114】-【0132】(本f)において、従来のアッセイ方法を使用できることが記載されている。 以上の本件明細書の記載からすると、当業者であれば、本件訂正発明3の「結合性タンパク質」を、過度の試行錯誤を要することなく製造し、使用することが可能であると認められる。 請求人は、請求項3には、アミノ酸1-13の領域がプロトロンビンと同一のPIVKA-II(タイプ(iv))に対する結合性タンパク質、すなわちPIVKA-IIを特異的に認識して結合するとはいえない結合性タンパク質が含まれ、そのような結合性タンパク質は本件明細書に記載されていないことを理由に、本件訂正発明3が実施可能要件に違反している旨を主張する。しかし、上記2(2)イのとおり、訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」は、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」の範囲内で「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであるのだから、請求人の上記主張は前提において誤りである。 また、訂正後の請求項4~5、13、15~22、25~31、33~37、40、45~53、55、57~69、71、72は、いずれも、訂正後の請求項3を直接または間接的に引用するか、それと同様の「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むところ、本件訂正発明3の判断で示したとおり、本件明細書には、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」について当業者が実施できる程度の記載がなされているのだから、同様に、実施可能要件を満たすものである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由5は理由がない。 5 無効理由1(新規性欠如)について (1)甲4-1発明の認定 甲4は、H-11と呼ぶ抗体の性質を論じる論文と認められ、そのH-11とは、「精製したヒトプロテインCをマウスに注射することによって生産されたマウスモノクローナル抗体(H-11と表す。)」であることが記載されている(前記第6の2(2)(ア))。 そうすると、甲4には、次の発明(以下、「甲4-1発明」という。)が記載されているものと認める。 「精製したヒトプロテインCをマウスに注射することによって生産されたマウスモノクローナル抗体H-11。」 (2)本件訂正発明3と甲4-1発明との対比 甲4-1発明の「マウスモノクローナル抗体H-11」は、本件訂正発明3の「単離された結合性タンパク質」に相当するので、本件訂正発明3と甲4-1発明との一致点及び相異点は次のとおりのものである。 一致点 「単離された結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」 相違点 単離された結合性タンパク質が、本件訂正発明3では、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4-1発明では、そのような特定がない点。 (3)判断 上記相違点について検討すると甲4には、H-11抗体と各種ビタミンK依存性タンパク質(断片)との結合実験の結果から、H-11抗体の抗原決定基を当該タンパク質のN末端12アミノ酸領域にマッピング(位置決め)したことが記載され(第6の2(3)(ケ)、(コ))、H-11抗体との結合実験が行われた各種ビタミンK依存性タンパク質の当該領域のアミノ酸配列がアラインメント(比較)された図8には、ヒトプロトロンビンの1-12位が記載され、当該図中の太字の残基(ヒトプロトロンビンの場合は、FLEE・R)がH-11抗体の結合に必要とされ得る(may be required for antibody H-11 binding)ことが記載されている(なお、6位及び7位のEは、ヒトプロトロンビンについては、γカルボキシル化されたグルタミン酸と認める、第6の2(4)(キ))。そして、甲4には、H-11抗体の抗体認識のためには抗原決定基におけるグルタミン酸残基のカルボキシル化を必要としないこと、すなわち、抗原決定基のグルタミン酸残基がカルボキシル化されていてもされていなくてもH-11抗体は認識することが記載されている(第6の2(3)(ウ)~(オ))。 これらのことから、甲4-1に係る抗体H-11抗は、ヒトプロトロンビンの1-12位に含まれるγカルボキシル化グルタミン酸残基(6位及び7位)が、脱カルボキシル化されたもの、すなわち、PIVKA-IIの1-12位にも結合するものであって、上記相違点のうち「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」という特性は有さないものであると理解される。 したがって、本件訂正発明3は、甲4-1発明に対して新規性を有する。 (4)請求人の主張について ア 請求人の主張 無効理由6で指摘したとおり、PIVKA-IIの中には、アミノ酸1-13の領域がプロトロンビンと同一であって(タイプ(iv))、訂正後の請求項3に係る「結合性タンパク質」が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ことができないものも含まれるから、本件訂正発明3は、どのように解釈しても、甲4に対して新規性を有しない。 すなわち、本件訂正発明3は、以下の3種類の解釈ができる。 解釈1.本件訂正発明3は、タイプ(iv)のPIVKA-IIにも結合する抗体を含む。 解釈2.本件訂正発明3は、タイプ(iv)のPIVKA-IIにも結合する抗体を含むが、PIVKA-IIのアミノ酸4-9位において、アミノ酸配列が異なる場合は結合しない。 解釈3.本件訂正発明3は、PIVKA-IIの6位及び/又は7位のGluを含む構造と、それとは異なる構造、例えばプロトロンビンの6位及び/又は7位のGlaを含む構造、とを識別し、両者に対する反応性が異なる抗体を含む。 解釈1.の場合 甲4の抗体H-11は、PIVKA-IIのアミノ酸1-13にもプロトロンビンのアミノ酸1-13にも結合すると認められる。したがって、本件訂正発明3は、甲4発明と同一である。 解釈2.の場合 甲4の抗体H-11は、ウシの第IX因子には結合しないのだから、PIVKA-IIのアミノ酸1-13には結合し、PIVKA-IIのアミノ酸4-9位において、アミノ酸配列が異なる場合は結合しないものと認められる。したがって、本件訂正発明3は、甲4発明と同一である。 解釈3.の場合 甲18には、カルシウムイオンの存在下では、抗体H-11は、プロトロンビンよりも熱脱カルボキシル化したプロトロンビンに対して親和性が高いことが記載されている。熱脱カルボキシル化したプロトロンビンは、6位及び7位がGluのPIVKA-IIに相当するため、カルシウムイオン存在下においては、抗体H-11は、PIVKA-IIに特異的に結合する。したがって、本件訂正発明3は、甲4発明と同一である。 イ 判断 上記第7の2(2)イのとおり、本件訂正発明3に係る「結合性タンパク質」は、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」の範囲内で「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであるのだから、請求人の上記主張のうち解釈1及び2に基づく主張は前提において誤りである。 また、請求人は、解釈3に基づいて、甲18を参酌すると甲4の抗体H-11は、カルシウムイオン存在下であれば、PIVKA-IIに特異的に結合するから、本件訂正発明3と同一である旨主張する。しかし、甲18において、カルシウムイオン存在下において反応性に違いがあるにしても、カルシウムイオン濃度が10mmol/Lという特殊な条件下での反応性の違いであって、甲18の記載のみから抗体H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであると認めることができない。 したがって、請求人の主張は、いずれも失当である。 (5)小括 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由1は理由がない。 6 無効理由2(進歩性欠如)について (1)引用発明の認定 ア 甲4発明の認定 (ア)甲4-1発明 上記第7の5(1)に記載したとおり、甲4には、以下のとおりの甲4-1発明が記載されているものと認められる。 「精製したヒトプロテインCをマウスに注射することによって生産されたマウスモノクローナル抗体H-11。」 (イ)甲4-2発明 甲4には、ハイブリドーマH-11の調製方法として、「BALB/cマウスを、完全フロイントアジュバント中の50μgのプロテインCで複数部位で皮下的に免疫した。完全フロイントアジュバント中の50μgのブースター注射を、4、8、及び12週に行った。最後の注射の6週後、血清力価を、プロテインC抗体の存在について決定し、最も高い抗プロテインC力価を有するマウスは、生理食塩水中の100μgのプロテインCを静脈内的に受けた。4日後、マウスを、クロロホルムで殺傷し、脾臓を摘出した。2匹のマウスからの脾臓細胞(3×108細胞)を、3×107のミエローマ細胞と混合し、遠心分離した。細胞ペレットを、3mlの50%ポリエチレングリコール1000に注意深く懸濁し、3分間穏やかに混合した。次いで、懸濁物を、1000rpmで3分間遠心分離し、上清を廃棄し、ペレットを、15mlの胎仔血清に再懸濁した。容量を、培養培地で72mlまで上げ、0.1mlの細胞混合物を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにピペッティングした。次の日、各ウェルに、20%胎仔血清及びヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジンを含む0.1mlの培養培地を加えた。融合の2日後、胸腺細胞を、フィーダー細胞として供するために添加した。抗プロテインC抗体についてのハイブリドーマ上清のスクリーニングを、ハイブリドーマが目視できるときに実施した。ハイブリドーマ産生抗プロテインC抗体を、限界希釈により3回クローニングした。 ハイブリドーマスクリーニングアッセイ-抗プロテインC抗体についてのハイブリドーマのスクリーニングを、プロテインCコートマイクロタイタープレートを用いた固相酵素免疫測定法により実施した。」と記載されているから(上記第6の2(3)(ア))、甲4には、次の発明(以下、「甲4-2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「マウスモノクローナル抗体H-11を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、BALB/cマウスを、精製したヒトプロテインCで免疫化し、4、8、12週に追加免疫を行い、最後の追加免疫の6週後にプロテインC抗体の力価を測定する、免疫化ステップ、前記マウスの脾臓から細胞を収集し、精製するステップ、ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびにプロテインCに結合する抗体を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、マウスモノクローナル抗体H-11を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法。」 イ 甲1発明の認定 甲1の標題及び要約では、血清デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP、γ―カルボキシル基が脱カルボキシル化されているプロトロンビン)は、肝細胞がん(HCC)の有益な診断用マーカーであり、モノクローナル抗体MU-3により測定されることが記載されており、この論文では、MU-3のエピトープを分析し、HCCと良性の肝疾患との間のDCPの違いを明らかにすることが目的であることが記載されている(第6の1(1)及び(2))。そして、その分析手法として直接結合ELISAについては、「2.5 直接結合ELISA MU-3抗体のデカルボキシル化タンパク質及び合成ペプチドに対する反応性は、96ウェルマイクロタイタープレート(Nalge Nunc International、 Rochester、 NY、 USA)を使用したELISAによって測定した。TBS(50mM Tris-HCl、 0.1M NaCl、 pH8.0)に溶解したデカルボキシル化タンパク質及び合成ペプチドを、室温で5時間インキュベートすることによりマイクロタイタープレートのウェルにコートした。TBSで3回洗浄した後、ウェルを1%ウシ血清アルブミン-TBS(BSA-TBS)で1時間ブロッキングした。TBSで洗浄した後、0.1%Tween20-BSA-TBSで様々な濃度に希釈したMU-3抗体の溶液を各ウェルに添加した。室温で2時間インキュベートして洗浄した後、MU-3抗体と反応したウェルを西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗マウスIgG抗体(ICN Pharmaceuticals、 Irvine、 CA、 USA)の溶液でさらに室温で1時間インキュベートした。さらなる洗浄の後、ウェルは1mg/mlのо-フェニレンジアミンと0.1mMクエン酸緩衝液に溶解した2mMの過酸化水素とpH5.5でインキュベートした。反応は2Nの硫酸を加えて停止させ、マイクロプレート光度計を使用して492nMの吸光度を測定した。」と具体的に記載されている(第6の1(3)(ウ))。また、サンドイッチELISAについても、「2.6 サンドイッチELISA サンドイッチELISAは、デカルボキシル化プロテインに代えてMU-3抗体をウェルにコートした点、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗マウスIgG抗体に代えて、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した、親和性精製されたウサギ抗プロトロンビン抗体のFabを使用した点を除き、直接結合ELISAで使用した方法で実施した。3%BSA-TBSで希釈したデカルボキシル化プロトロンビンは参照標準タンパク質として用いられた。」と具体的に記載されている(第6の1(3)(エ))。さらに、使用したMU-3抗体について、「MU-3抗体のエピトープは少なくとも残基17-27から構成されることが明らかとなる。」と記載されている(第6の1(3)(キ))。 そうすると、甲1には次の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出する方法であって、a)試験試料を、デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)のアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体MU-3と、接触させるステップ、b)西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗プロトロンビン抗体のFabを、MU-3とデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)の複合体に、加えるステップ、ならびにc)西洋ワサビペルオキシダーゼによって生成される蛍光を測定し、試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出するステップを含む、試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出する方法。」 (2)対比・判断 ア 本件訂正発明3~5について (ア)本件訂正発明3と甲4-1発明との対比 本件訂正発明3と甲4-1発明との対比は、上記第7の5(2)の通りである。 (イ)本件訂正発明3についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体を取得することは記載されてないし、甲1、5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、甲4-1発明における「マウスモノクローナル抗体H-11」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、本件訂正発明3は、甲4-1発明、すなわち、甲4に記載された発明に、甲1、5~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4、要すれば甲18の記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものとして捉えることは容易と主張するが、上記5(4)のとおり、甲18を参酌しても甲4に記載された抗体H-11が、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ものであるとは認められないから、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明4、5についての判断 本件訂正発明4は、上記本件訂正発明3の結合能を「4.0×10-9またはそれより低い結合解離定数(Kd)を有する」ものであることを特定するものであり、本件訂正発明5は、結合解離定数をさらに「1.0×10-9から1.0×10-10までの結合解離定数(Kd)を有する」ものであることを特定するものである。したがって、本件訂正発明4、5は、上記本件訂正発明3と甲4-1発明との対比結果における相違点に加えて、それぞれ上記の点でさらに相違している。 上記相違点について検討すると、甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体を取得することは記載されてないし、甲1、5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、本件訂正発明4、5は、甲4及び他の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 請求人は、本件訂正発明3が進歩性を有さないので、本件訂正発明4、5も進歩性を有さないと主張するが、上述の通り、請求人の主張は失当である。 イ 本件訂正発明13、15~21について (ア)本件訂正発明13と甲4-1発明との対比 甲4-1発明の「マウスモノクローナル抗体H-11」は、本件訂正発明13の「抗体」に相当するので、本件訂正発明13と甲4-1発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」 相違点1 抗体が、本件訂正発明13では、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4-1発明では、そのような特定がない点。 相違点2 本件訂正発明13は、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法であって、その具体的なステップが特定されているのに対して、甲4-1発明は、そのような特定がない点 (イ)本件訂正発明13についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体を取得すること(相違点1)は記載されてないし、甲1、5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、甲4-1発明における「マウスモノクローナル抗体H-11」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明13は、甲4に記載された発明に、甲1、5~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明13も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲各号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13領域内のアミノ酸6位及び/又は7位のGluという特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明15~21についての判断 本件訂正発明15は、本件訂正発明13において、「試験試料」を「全血、血清、または血漿」に特定するものである。本件訂正発明16は、本件訂正発明13において、「抗体が検出可能な標識で標識化され」、「その標識から放射されるシグナルを測定するステップ」を含むことを特定するものである。本件訂正発明17は、本件訂正発明16において、「検出可能な標識」が「放射性標識、酵素標識」等であることを特定するものである。本件訂正発明18は、本件訂正発明16において、「検出可能な標識」が「アクリジニウム化合物」であることを特定するものである。本件訂正発明19は、本件訂正発明18において、「過酸化水素の源を生成」するステップを含む検出ステップであることを特定するものである。本件訂正発明20は、本件訂正発明18において、「アクリジニウム化合物」が式Iで示される化合物であることを特定するものである。また、本件訂正発明21は、本件訂正発明18において、「アクリジニウム化合物」が式IIで示される化合物であることを特定するものである。 このとおり、本件訂正発明15~21は、上記本件訂正発明13と甲4-1発明との対比結果における相違点に加えて、それぞれ上記の点でさらに相違しているのだから、上記(イ)に示したのと同様の理由により、本件訂正発明15~21は、甲4及び他の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 ウ 本件訂正発明22、25~30について (ア)本件訂正発明22と甲1-1発明との対比 甲1-1発明の「デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)」は、当該技術分野において「PIVKA-II」と同義で使用される用語であるから(必要であれば、Cancer,1988,Vol.61,No.8,pp.1621-1628の要約等を参照されたい。)、甲1-1発明の「試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出する方法」は、本件訂正発明22の「試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法」に相当する。また、甲1-1発明の「試験試料を、デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)のアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体MU-3と、接触させるステップ」は、本件訂正発明22の「試験試料を、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体と、・・・接触させるステップ」に相当し、甲1-1発明の「西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗プロトロンビン抗体のFabを、MU-3とデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)の複合体に、加えるステップ」は、本件訂正発明22の「検出可能な標識にコンジュゲートしている、第2の抗体を第1の抗体/抗原複合体に、・・・加えるステップ」に相当し、甲1-1発明の「西洋ワサビペルオキシダーゼによって生成される蛍光を測定し、試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出するステップ」は、本件訂正発明22の「検出可能な標識によって生成され、または検出可能な標識から放射されるシグナルを測定し、試験試料中のPIVKA―II抗原を検出するステップ」に相当する。また、本件訂正発明22では、試験試料を第1の抗体と接触させる条件について、第1の抗体-抗原複合体の形成に十分な時間および条件で行うことや、第2の抗体と第1の抗体/抗原複合体に加える条件について、第1の抗体/抗原/第2の抗体の複合体を形成するのに十分な時間及び条件で行うことが特定されているが、甲1には、これらに対応するステップの実験条件が詳細に記載されており、その条件については複合体の形成に十分であるとの記載はないものの、サンドイッチELISAを実施することができていることから、その原理をふまえれば当然に複合体の形成に十分な時間および条件を満たすものであるということができる。 したがって、本件訂正発明22と甲1-1発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法であって、試験試料を、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体と接触させるステップ、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の抗体を第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、検出可能な標識によって生成され、または検出可能な標識から放射されるシグナルを測定し、試験試料中のPIVKA―II抗原を検出するステップを含む、試験試料中のPIVKA-I抗原を検出する方法。」 相違点 第2の抗体が、本件訂正発明22では、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するのに対して、甲1-1発明では、ウサギ抗プロトロンビン抗体のFabであることが特定されるのみで、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合することが特定されていない点。 (イ)本件訂正発明22についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体を取得することは記載されてないし、甲5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、甲1-1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、本件訂正発明22は、甲1に記載された発明に、甲4~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明22も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明25~30についての判断 本件訂正発明25は、本件訂正発明22において、「試験試料」を「全血、血清、または血漿」に特定するものである。本件訂正発明26は、本件訂正発明22において、「検出可能な標識が放射性標識、酵素標識」等であることを特定するものである。本件訂正発明27は、本件訂正発明22において、「検出可能な標識がアクリジニウム化合物」であることを特定するものである。本件訂正発明28は、本件訂正発明27において、「アクリジニウム化合物」が式Iで示される化合物であることを特定するものである。また、本件訂正発明29は、本件訂正発明27において、「アクリジニウム化合物」が式IIで示される化合物であることを特定するものである。本件訂正発明30は、本件訂正発明22において、「第1の抗体が固相上に、第1の抗体-抗原複合体の形成の前または後のいずれかに固定化される」ことを特定するものである。 このとおり、本件訂正発明25~30は、上記本件訂正発明22と甲1-1発明との対比結果における相違点に加えて、それぞれ上記の点でさらに相違しているのだから、上記(イ)に示したのと同様の理由により、本件訂正発明15~21は、甲1及び他の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 エ 本件訂正発明31、33~37について (ア)本件訂正発明31と甲4-1発明との対比 甲4-1発明の「マウスモノクローナル抗体H-11」は、本件訂正発明31の「抗体」に相当するので、本件訂正発明31と甲4-1発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」 相違点1 本件訂正発明31は、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法であって、その具体的なステップが特定されているのに対して、甲4-1発明は、そのような試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法ではなく、具体的なステップが特定されていない点。 相違点2 本件訂正発明31では、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する際に利用する抗体が、さらに「PIVKA-IIを特異的に認識して結合するもの」であるのに対し、甲4-1発明は、この点が明記されていない点。 (イ)本件訂正発明31についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体を取得すること(相違点2)は記載されてないし、甲1、5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、甲4-1発明における「マウスモノクローナル抗体H-11」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、相違点1を検討するまでもなく、本件訂正発明31は、甲4に記載された発明に、甲1、5~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明22も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明33~37についての判断 本件訂正発明33は、本件訂正発明31において、「試験試料」を「全血、血清、または血漿」に特定するものである。本件訂正発明34は、本件訂正発明31において、「検出可能な標識が放射性標識、酵素標識」等であることを特定するものである。本件訂正発明35は、本件訂正発明31において、「検出可能な標識がアクリジニウム化合物である」ことを特定するものである。本件訂正発明36は、本件訂正発明35において、「アクリジニウム化合物」が式Iで示される化合物であることを特定するものである。また、本件訂正発明37は、本件訂正発明35において、「アクリジニウム化合物」が式IIで示される化合物であることを特定するものである。 このとおり、本件訂正発明33~37は、上記本件訂正発明31と甲4発明との対比結果における相違点に加えて、それぞれ上記の点でさらに相違しているのだから、上記(イ)に示したのと同様の理由により、本件訂正発明33~37は、甲4及び他の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 オ 本件訂正発明38について (ア)本件訂正発明38と甲4-2発明との対比 甲4-2発明の「マウスモノクローナル抗体H-11」、「4、8、12週に追加免疫を行い、最後の追加免疫の6週後にプロテインC抗体の力価を測定する、免疫化ステップ」は、それぞれ、本件訂正発明38の「抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質」、「抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ」に相当する。 したがって、本件訂正発明38と甲4-2発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、マウスを、抗原で、前記マウスが前記抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ、前記マウスの脾臓から細胞を収集し、精製するステップ、ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびに抗原に結合する抗体を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法。」 相違点1 本件訂正発明38では、抗原がPIVKA-IIのアミノ酸1-17を含むものであるのに対し、甲4-2発明は、プロテインCである点。 相違点2 本件訂正発明38では、免疫化するマウスがGANPマウスであるのに対し、甲4-2発明は、BALB/cマウスである点。 相違点3 本件訂正発明38では、マウスの脾臓から収集する細胞が「8つ」であることを特定しているのに対し、甲4-2発明は、そのことが明記されていない点。 (イ)本件訂正発明38についての判断 上記相違点について検討する。 甲4全体をみても、PIVKA-II抗体を取得しようとする思想はなく、PIVKA-IIのアミノ酸1-17を含む抗原でマウスを免疫化すること(相違点1)は、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 したがって、相違点2、3については検討するまでもなく、本件訂正発明38は、甲4に記載された発明及びその他の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 カ 本件訂正発明40について (ア)本件訂正発明40と甲4-1発明との対比 甲4-1発明の「マウスモノクローナル抗体H-11」は、本件訂正発明40の「結合性タンパク質」に相当するので、本件訂正発明40と甲4-1発明との一致点及び相違点は次の通りのものである。 一致点 「結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」 相違点1 単離された結合性タンパク質が、本件訂正発明40では、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4-1発明では、そのような特定がない点。 相違点2 本件訂正発明40では、「結合性タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、薬剤組成物。」であるが、甲4-1発明では、そのような特定がない点。 (イ)本件訂正発明40についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体(相違点1)を取得することは記載されてないし、甲1、5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、甲4-1発明における「マウスモノクローナル抗体H-11」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明40は、甲4に記載された発明に、甲1、5~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明40も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 キ 本件訂正発明45~51について (ア)本件訂正発明45と甲1-1発明との対比 甲1-1発明の「デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)」は、当該技術分野において「PIVKA-II」と同義で使用される用語であるから(必要であれば、Cancer,1988,Vol.61,No.8,pp.1621-1628の要約等を参照されたい。)、甲1発明の「試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出する方法」は、本件訂正発明45の「生物学的試料中に存在する可能性があるPIVKA-II抗原の存在を検出するステップ」に相当する。また、甲1-1発明の「試験試料を、デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)のアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体MU-3と、接触させるステップ」は、本件訂正発明45の「生物学的試料を、・・・PIVKA-II抗原のアミノ酸13-27に結合する抗原結合ドメインを有する第1の抗体と接触させるステップ」に相当し、甲1-1発明の「西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギ抗プロトロンビン抗体のFabを、MU-3とデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)の複合体に、加えるステップ」は、本件訂正発明45の「検出可能な標識に付着している第2の抗体を含むコンジュゲートを、得られたPIVKA-II抗原/抗体複合体に、・・・加えるステップ」に相当し、甲1-1発明の「西洋ワサビペルオキシダーゼによって生成される蛍光を測定し、試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出するステップ」は、本件訂正発明45の「検出可能な標識によって産生されるシグナルを検出することによって、前記生物学的試料中に存在する可能性があるPIVKA―II抗原の存在を検出するステップ」に相当する。また、本件訂正発明45では、生物学的試料を抗体と接触させる条件について、PIVKA-II抗原/第1の抗体複合体の形成に十分な時間および条件下で行うことや、第2の抗体とPIVKA-II抗原/第1の抗体複合体に加える条件について、結合しているPIVKA-II抗原にコンジュゲートを結合させるのに十分な時間および条件下で行うことが特定されているが、甲1には、これらに対応するステップの実験条件が詳細に記載されており、その条件については複合体の形成に十分であるとの記載はないものの、サンドイッチELISAを実施することができていることから、その原理をふまえれば当然に複合体の形成に十分な時間および条件を満たすものであるということができる。 したがって、本件訂正発明45と甲1-1発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法であって、試験試料を、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体と接触させるステップ、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の抗体を第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、検出可能な標識によって生成され、または検出可能な標識から放射されるシグナルを測定し、試験試料中のPIVKA―II抗原を検出するステップを含む、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法。」 相違点1 第2の抗体が、本件訂正発明45では、PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するものであるのに対して、甲1-1発明では、ウサギ抗プロトロンビン抗体のFabであることが特定されるのみで、PIVKA-II抗原のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性ドメインを有し、PIVKA-IIを特異的に認識して結合することが特定されていない点。 相違点2 本件訂正発明45は、予め決定されたレベルを超えるPIVKA-II抗原の量が、患者におけHCCまたは肝癌の存在を示す、シグナルの強度を測定することによって生物学的試料中に存在するPIVKA-II抗原の量を測定するステップを含む、HCCまたは肝癌を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌の存在を決定する方法であるのに対して、甲1発明は、そのようなステップを含む方法ではない点。 (イ)本件訂正発明45についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体(相違点1)を取得することは記載されてないし、甲1、5~10にも、そのような記載や示唆は見当たらないから、甲1-1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明45は、甲1に記載された発明に、甲4~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明45も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明46~51についての判断 本件訂正発明46は、本件訂正発明45において、「予め決定されたレベルが40mAU/mlである」ことを特定するものである。本件訂正発明47は、本件訂正発明45において、「試験試料」を「全血、血清、または血漿」に特定するものである。本件訂正発明48は、本件訂正発明45において、「検出可能な標識が放射性標識、酵素標識」等であることを特定するものである。本件訂正発明49は、本件訂正発明45において、「検出可能な標識がアクリジニウム化合物である」ことを特定するものである。本件訂正発明50は、本件訂正発明49において、「アクリジニウム化合物」が式Iで示される化合物であることを特定するものである。また、本件訂正発明51は、本件訂正発明49において、「アクリジニウム化合物」が式IIで示される化合物であることを特定するものである。 このとおり、本件訂正発明46~51は、上記本件訂正発明45と甲1発明との対比結果における相違点に加えて、それぞれ上記の点でさらに相違しているのだから、上記(イ)に示したのと同様の理由により、本件訂正発明46~51は、甲1及び他の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 ク 本件訂正発明52、53について (ア)本件訂正発明52と甲4-1発明との対比 甲4-1発明の「マウスモノクローナル抗体H-11」は、本件訂正発明52の「結合性タンパク質」に相当するので、本件訂正発明52と甲4-1発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「結合性タンパク質(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」 相違点1 単離された結合性タンパク質が、本件訂正発明52では、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4-1発明では、そのような特定がない点。 相違点2 本件訂正発明52では、「結合性タンパク質を含有する容器を含む、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット。」であるが、甲4-1発明では、そのような特定がない点。 (イ)本件訂正発明52についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体(相違点1)を取得することは記載されてないし、甲1、5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、甲4-1発明における「マウスモノクローナル抗体H-11」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明52は、甲4に記載された発明に、甲1、5~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明52も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 (エ) 本件訂正発明53についての判断 本件訂正発明53は、本件訂正発明52において、「(PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する結合性タンパク質を含有する)容器をさらに含むこと」を特定するものである。 このとおり、本件訂正発明53は、上記本件訂正発明52と甲4-1発明との対比結果における相違点に加えて、上記の点でさらに相違しているのだから、上記(イ)に示したのと同様の理由により、本件訂正発明53は、甲4及び他の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 ケ 本件訂正発明55、57~67 (ア)本件訂正発明55と甲4-1発明との対比 甲4-1発明の「マウスモノクローナル抗体H-11」は、本件訂正発明55の「抗体」に相当するので、本件訂正発明55と甲4-1発明との一致点及び相違点は次の通りのものである。 一致点 「抗体(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」 相違点1 抗体が、本件訂正発明55では、「PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」ものであるのに対して、甲4-1発明では、そのような特定がない点。 相違点2 本件訂正発明55では、「抗体を含む検出試薬、ならびに試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するための指示書を含む、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット。」であるのに対し、甲4-1発明では、そのような特定がない点。 (イ)本件訂正発明55についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体(相違点1)を取得することは記載されてないし、甲1、5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、甲4-1発明における「マウスモノクローナル抗体H-11」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明55は、甲4に記載された発明に、甲1、5~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明55も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明57~67についての判断 本件訂正発明57は、本件訂正発明55において、「抗体に付いている検出可能な標識をさらに含み、検出可能な標識が、検出可能なシグナルを生成することができる」ことを特定するものである。本件訂正発明58は、本件訂正発明57において、「検出可能な標識が放射性標識、酵素標識」等であることを特定するものである。本件訂正発明59は、本件訂正発明58において、「検出可能な標識がアクリジニウム化合物である」ことを特定するものである。本件訂正発明60は、本件訂正発明59において、「アクリジニウム化合物」が式Iで示される化合物であることを特定するものである。本件訂正発明61は、本件訂正発明59において、「アクリジニウム化合物」が式IIで示される化合物であることを特定するものである。本件訂正発明62は、本件訂正発明59において、「塩基性溶液をさらに含む」ことを特定するものである。本件訂正発明63は、本件訂正発明62において、「塩基性溶液が少なくとも10のpHを有する溶液である」ことを特定するものである。本件訂正発明64は、本件訂正発明59において、「過酸化水素の源をさらに含む」ことを特定するものである。本件訂正発明65は、本件訂正発明64において、「過酸化水素の源が、過酸化水素を含むバッファーまたは溶液を含む」ことを特定するものである。本件訂正発明66は、本件訂正発明64において、「過酸化水素の源が過酸化水素生成酵素を含む」ことを特定するものである。そして、本件訂正発明67は、本件訂正発明66において、「過酸化水素生成酵素」を具体的名称で特定するものである。 このとおり、本件訂正発明57~67は、上記本件訂正発明55と甲4-1発明との対比結果における相違点に加えて、それぞれ上記の点でさらに相違しているのだから、上記(イ)に示したのと同様の理由により、本件訂正発明57~67は、甲4及び他の甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 コ 本件訂正発明68、69について (ア)本件訂正発明68と甲1-1発明との対比 甲1-1発明の「デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)」は、当該技術分野において「PIVKA-II」と同義で使用される用語である(必要であれば、Cancer,1988,Vol.61,No.8,pp.1621-1628の要約等を参照されたい。)。また、甲1-1発明の「モノクローナル抗体MU-3」は、本件訂正発明68の「抗原結合性部分を有する結合性タンパク質」に相当する。したがって、甲1-1発明の「試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出する方法」で使用する「デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)のアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体MU-3」は、本件訂正発明68の「PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する結合性タンパク質」といえる。 したがって、本件訂正発明68と甲1-1発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する結合性タンパク質。」 相違点1 本件訂正発明68は、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキットであるのに対して、甲1-1発明は、そのようなキットではない点。 相違点2 本件訂正発明68では、使用されるもう1つの抗体が、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するものであるのに対して、甲1-1発明では、ウサギ抗プロトロンビン抗体のFabであることが特定されるのみで、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合することが特定されていない点。 (イ)本件訂正発明68についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体(相違点2)を取得することは記載されてないし、甲1、5~10にも、そのような記載や示唆は見当たらないから、甲1-1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、相違点1を検討するまでもなく、本件訂正発明68は、甲1に記載された発明に、甲4~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明68も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明69についての判断 本件訂正発明69は、本件訂正発明68において、「第1および第2の単離された結合性タンパクがモノクローナル抗体である」ことを特定しているが、甲1-1発明のいずれの抗体もモノクローナル抗体であるから、当該発明特定事項は、上記本件訂正発明68と甲1-1発明との対比結果に、新たに相違点を追加するものではない。 そうすると、上記(イ)に示したとおり、本件訂正発明69も、甲1に記載された発明に、甲4~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 請求人は、本件訂正発明68が進歩性を有さないので、本件訂正発明69も進歩性を有さないと主張するが、上述の通り、請求人の主張は失当である。 サ 本件訂正発明71、72について (ア)本件訂正発明71と甲1-1発明との対比 甲1-1発明の「デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)」は、当該技術分野において「PIVKA-II」と同義で使用される用語である(必要であれば、Cancer,1988,Vol.61,No.8,pp.1621-1628の要約等を参照されたい。)。また、甲1-1発明の「モノクローナル抗体MU-3」は、本件訂正発明71の「結合性タンパク質」に相当する。したがって、甲1-1発明の「試験試料中のデス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)を検出する方法」で使用する「デス-γ―カルボキシプロトロンビン(DCP)のアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体MU-3」は、本件訂正発明71の「PIVKA-IIのアミノ酸1-33のサブセットに特異的に結合する抗原結合性部分を含む」結合性タンパク質といえる。 したがって、本件訂正発明71と甲1-1発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「PIVKA-IIのアミノ酸1-33のサブセットに特異的に結合する抗原結合性部分を含む結合性タンパク質」を使用する、試料中のPIVKA-IIの量を決定する方法である点。 相違点 本件訂正発明71では、使用されるもう1つの抗体が、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合するものであるのに対して、甲1-1発明では、ウサギ抗プロトロンビン抗体のFabであることが特定されるのみで、PIVKA-IIのアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合することが特定されていない点。 (イ)本件訂正発明71についての判断 上記相違点について検討する。 甲4の全体をみても、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13」に対して特異的に認識して結合する抗体を取得することは記載されてないし、甲5~10にも、当該抗体に関する記載や示唆が見当たらないから、甲1-1発明における「ウサギ抗プロトロンビン抗体のFab」を、PIVKA-IIに対して特異的に認識して結合する抗体とすることが、当業者に容易に動機づけられるとはいえない。 したがって、本件訂正発明22は、甲1に記載された発明に、甲4~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲4には、H-11が「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体であることは実質的に記載されているので、当業者であればその記載から「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」も容易に想到し、本件訂正発明71も容易想到であると主張するが、上述のとおり、いずれの甲号証にも、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ことについて、記載も示唆もされていない以上、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明72についての判断 本件訂正発明72は、本件訂正発明71において、「結合性タンパク質がモノクローナル抗体である」ことを特定しているが、甲1-1発明のいずれの抗体もモノクローナル抗体であるから、当該発明特定事項は、上記本件訂正発明71と甲1-1発明との対比結果に、新たに相違点を追加するものではない。 そうすると、上記(イ)に示したとおり、本件訂正発明72も、甲1に記載された発明に、甲4~10に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 請求人は、本件訂正発明71が進歩性を有さないので、本件訂正発明72も進歩性を有さないと主張するが、上述の通り、請求人の主張は失当である。 (3)小括 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由2は理由がない。 7 無効理由3(拡大先願)について (1) 甲11出願の優先権についての判断 本件出願は、2010年7月26日を優先日とするものであるのに対して、甲11出願の優先日は、それより前の2010年6月29日であるから、甲11出願の優先権明細書(甲12/特願2010-147784号)(以下、「先願明細書」という。)に記載され、且つ、国際公開2012/002345号(甲11)で公開された発明(以下、「先願発明」という。また、甲11及び甲12に共通して記載された事項を「先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載された事項」ということがある。)が、本件訂正発明と同一である場合には、無効理由3は理由があることになる。この観点から、以下、検討する。 まず甲11の実施例1には、精製したPIVKA-IIで免疫したマウスから脾臓を摘出して骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを取得し、プロトロンビンに反応せず、脱炭酸処理時間6時間のPIVKA-IIに比べて脱炭酸処理時間30分のPIVKA-IIに対して高い反応性を示すハイブリドーマを選択し、2種類のハイブリドーマ、すなわち、ハイブリドーマ24211(「ハイブリドーマ11」、FERM BP-11258)、及びハイブリドーマ24216(「ハイブリドーマ16」、FERM BP-11259)を取得したことが記載されている([0038]-[0041])。また、それぞれのハイブリドーマから、P-11モノクローナル抗体及びP-16モノクローナル抗体を調製したことが記載されている([0044])。次に、実施例2に、これらの抗体を用いて肝細胞癌患者の血清試料中のビタミンK結合に起因するPIVK-IIの測定を行ったところ、NX-PVKAのみが肝機能を評価するための分類を反映していたことが記載されている([0045]-[0054]、図2-3)。そして、実施例3では、従来の測定方法で得たPIVKA-II測定値をNX-PVKA測定値で割ったレシオ値により、従来の測定方法では偽陽性となっていた検体を区別することができ、肝がんに高い特異性を示したことが記載されている([0055]-[0057]、図4-図5)。さらに実施例4として、P-16モノクローナル抗体及びP-11モノクローナル抗体のエピトープの分析が記載されており、競合ELISAを行ってこれらの抗体の変性PIVKA-II、変性プロトロンビン、及びトロンビンに対する反応性や、プロトロンビンフラグメントに対する反応性や、Gla残基非含有ペプチドに対する反応性を検討したことが記載されている([0058]-[0070]、図6-9)。 一方、甲12には、甲11と同様に、実施例1~実施例3が記載されている。 しかし、甲12には、実施例4は記載されておらず、P-16モノクローナル抗体及びP-11モノクローナル抗体のエピトープに関する記載も存しないから、実施例4に記載されている箇所は、甲11発明(先願発明)の認定に組み入れることはできない。 してみれば、甲11出願の優先権明細書(甲12/特願2010-147784号)(先願明細書)に記載され、且つ、国際公開2012/002345号(甲11)でその内容が公開された発明(甲11-1~甲11-7発明。先願発明ということもある。)は、以下のとおりのものと認定できる。 (2)先願発明の認定 ア 甲11-1発明 甲11には、「PIVKA-II(Protein Induced by Vitamin K Absence or Antagonist-II)は、AFP(α-フェトプロテイン)と並んで肝がんを診断するマーカーとして広く臨床検査室で測定されている」と記載されている(前記第6の9(2)(ア))。また、甲11には、「(1)ハイブリドーマの調製クマジン血漿(UNIGLOBE RESEARCH CORPORATION社製)より精製したPIVKA-II(1mg/mL)とフロイドの完全アジュバント(GIBCO社製)とを1対1で混和乳化し、50μg/100μmL(エマルジョン)で8週齢の雌BALB/Cマウス(日本チャールズリバー(株)製)の皮下に2週間間隔で4回投与後、最終免疫の3日後に脾臓を摘出した。摘出した脾臓から得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞SP2/O-Ag14とを10対1の割合で混合し、50%ポリエチレングリコール1540(和光純薬工業(株)製)存在下にて細胞融合させた。融合細胞は脾臓細胞として2.5x106/mLになるようにHAT培地に懸濁し、96穴培養プレート(CORNING社製)に0.2mLずつ分注した。これを5%CO2インキュベーター中で37℃にて培養し、おおよそ2週間後に、ハイブリドーマの生育してきたウェルの培養上清を、次に示すELISA法にしたがって評価し、PIVKA-IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択した。」と記載されている(前記第6の9(2)(オ))。さらに、甲11には「プロトロンビンに反応せず、且つ脱炭酸処理時間6時間のPIVKA‐IIに比べて脱炭酸処理時間30分のPIVKA‐IIに対して高い反応性を示すハイブリドーマを選択し、2種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ24211と24216(以下、それぞれ「ハイブリドーマ11」及び「ハイブリドーマ16」と表記することがある)を獲得した。前記得られたハイブリドーマ11及び16は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託され(受領日:2010年5月28日)、ハイブリドーマ11の受託番号はFERM BP-11258であり、ハイブリドーマ16の受託番号はFERM BP-11259である。」と記載されており(前記第6の9(2)(カ))、このハイブリドーマ16からモノクローナル抗体P-16が取得されたことが記載されている(前記第6の9(2)(ク))。 したがって、甲11には、次の発明(以下「甲11-1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「精製したPIVKA-IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P-16。」 イ 甲11-2発明 甲11には、前記甲11-1発明に関する記載に加えて、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIの測定方法として、「調製したP-16モノクローナル抗体固相磁気ビーズ及びRu標識P-11モノクローナル抗体を用い、電気化学発光免疫測定法により検体中のビタミンK欠乏に起因するPIVKA-II(NX-PVKA)の測定値Aを求めた。検体として、手術を行っておらず、5年後の予後が判明している肝細胞癌患者63名の血清試料を用い、下記方法に従いNX-PVKA量を測定した。各検体50μLにP-16モノクローナル抗体固相磁気ビーズを25μLと1μg/mLのRu標識P-11モノクローナル抗体を含むRu標識抗体液150μLを加え、30℃で9分間反応させた。反応後、磁気ビーズを磁石でトラップしながらピコルミBF洗浄液(エーディア(株)製)で3回洗浄した。0.1mol/Lトリプロピルアミンを含むピコルミ発光電解液(エーディア(株)製)を300μL加えて、電極表面に送り、磁気ビーズに結合したRuの発光量を自動分析装置ピコルミIII(エーディア(株)製)で測定し、検体中のNX-PVKA量を求めた。」と記載されているから、甲11には、次の発明(以下「甲11-2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「血清試料を、精製したPIVKA-IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P-16と、Ru標識P-11モノクローナル抗体を加え、30℃で9分間反応させるステップ、およびRuの発光量を測定し、検体中のPIVKA-IIを検出する方法。」 ウ 甲11-3発明 甲11には、前記甲11-1発明及び甲11-2発明に関する記載に加えて、「(a)二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定し、測定値Aを得る工程、を含むPIVKA-IIの測定方法であって、前記(a)工程の二抗体サンドイッチ法で用いられる抗体として、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とするPIVKA-IIの測定方法」が記載されている(前記第6の9(3)(ア))。また、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体として、P-11モノクローナル抗体やP-16モノクローナル抗体の他、従来試薬の抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)が記載されている(前記第6の9(2)(キ))。 そうすると、甲11には、次の発明(以下、「甲11-3発明」という。)が記載されているものと認められる。 「血清試料中のPIVKA-IIを検出する方法であって、試料を、抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)と、精製したPIVKA-IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P-16とを使用する二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法によって検出する方法。」 エ 甲11-4発明 甲11には、「ハイブリドーマの調製 クマジン血漿(UNIGLOBERESEARCH CORPORATION社製)より精製したPIVKA-II(1mg/mL)とフロイドの完全アジュバント(GIBCO社製)とを1対1で混和乳化し、50μg/100μmL(エマルジョン)で8週齢の雌BALB/Cマウス(日本チャールズリバー(株)製)の皮下に2週間間隔で4回投与後、最終免疫の3日後に脾臓を摘出した。摘出した脾臓から得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞SP2/O-Ag14とを10対1の割合で混合し、50%ポリエチレングリコール1540(和光純薬工業(株)製)存在下にて細胞融合させた。融合細胞は脾臓細胞として2.5x106/mLになるようにHAT培地に懸濁し、96穴培養プレート(CORNING社製)に0.2mLずつ分注した。これを5%CO2インキュベーター中で37℃にて培養し、おおよそ2週間後に、ハイブリドーマの生育してきたウェルの培養上清を、次に示すELISA法にしたがって評価し、PIVKA-IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択した。」と記載されている(前記第6の9(2)(オ))。 そうすると、甲11には、次の発明(以下、「甲11-4発明」という。)が記載されているものと認められる。 「PIVKA-IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、a)BALB/Cマウスを、クマジン血漿より精製したPIVKA-IIで、皮下に2週間間隔で4回投与して免疫化するステップ、b)マウスの脾臓から脾臓細胞を得るステップ、c)ハイブリドーマを生成するために、脾臓細胞と骨髄腫細胞と融合するステップ、ならびにd)PIVKA-IIに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択するステップを含む方法。」 オ 甲11-5発明 甲11には、前記甲11-1発明に関する記載に加えて、「[請求項6]二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定するに当り、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とするPIVKA-IIの測定試薬。」が記載されている(前記第6の9(3)(イ))。 そうすると、甲11には、次の発明(以下、「甲11-5発明」という。)が記載されているものと認められる。 「精製したPIVKA-IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P-16を含む測定試薬。」 カ 甲11-6発明 甲11には、前記甲11-1発明及び甲11-2に関する記載に加えて、「表3、図4、図5に示した結果から明らかなように、従来の測定方法で得たPIVKA-II測定値をNX-PVKA測定値で割ったレシオ値(図5のNX-PVKA-R)により、従来の測定方法では偽陽性となっていた検体を区別することができ、肝がんに高い特異性を示した。」と記載されている(前記第6の9(2)(サ))。また、「[請求項14]請求項2記載の方法によって得られた値により、肝がんを判定することを特徴とする肝がんの判定方法。」も記載されている。 そうすると、甲11には、次の発明(以下、「甲11-6発明」という。)が記載されているものと認められる。 「血清試料中のNX-PVKAを検出して肝がんを判定する方法であって、試料を、抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)と、精製したPIVKA-IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P-16とを使用する二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法によって検出する方法。」 キ 甲11-7発明 甲11には、前記甲11-1発明、甲11-2発明、甲11-3発明に関する記載に加えて、「[請求項6]二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定法によってビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIを測定するに当り、ビタミンK欠乏に起因するPIVKA-IIに特異的な抗体を使用することを特徴とするPIVKA-IIの測定試薬。」が記載されている(前記第6の9(3)(イ))。 そうすると、甲11には、次の発明(以下、「甲11-7発明」という。)が記載されているものと認められる。 「抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)と、精製したPIVKA-IIをマウスに注射することによって生産されたモノクローナル抗体P-16を含む測定試薬。」 (3)対比・判断 ア 本件訂正発明3~5について (ア)本件訂正発明3と甲11-1発明との対比 甲11-1発明の「モノクローナル抗体P-16」は、本件訂正発明3の「単離された結合性タンパク質」に相当するので、本件訂正発明3と甲11-1発明との一致点及び相違点は次の通りのものである。 一致点 「単離された結合性タンパク質。」 相違点 本件訂正発明3では、単離された結合性タンパク質が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-1発明は、この点が明記されていない点。 (イ)本件訂正発明3についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(1)のとおり、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)には、「モノクローナル抗体P-16」のエピトープはおろか、当該抗体の変性PIVKA-II、変性プロトロンビン、トロンビン、プロトロンビンフラグメント、Gla残基非含有ペプチドに対する反応性についての記載もない。 また、上記第6の9(2)(ス)のとおり、甲11-1の「モノクローナル抗体P-16」のエピトープは、「プロトロンビンフラグメント1のN末端から5残基(配列番号14で表わすaa1-5)の範囲であ」り、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する」抗体が、甲11に記載されているに等しい事項であるとも認められない。 さらに、甲11-1発明の「モノクローナル抗体P-16」は、「受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体」であり、当該抗体は、本件訂正発明3から明示的に除かれてもいる。 以上のことから、上記相違点が、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載、または、記載されているに等しい事項であるとは認められない。 したがって、本件訂正発明3は、甲11-1発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、甲11には、段落[0069]の記載を根拠に、PIVKA-IIの1~5位に結合する抗体という技術思想が記載されていると主張するが、上記第7の6(1)の通り、当該段落は、甲11出願の優先権明細書(甲12)に存しないものであるから、優先権主張の利益を受けることができないものである。 したがって、請求人の主張は失当である。 もっとも、上記の段落の記載が、甲12に記載されていたとしても、本件訂正発明3の結合性タンパク質は、PIVKA-IIのアミノ酸1-13の6位及び/又は7位における特異的な構造を認識して結合する(結合特異性)ものであるから、甲12のPIVKA-IIの1~5位に結合する抗体に係る技術思想と本件訂正発明3の技術思想は異なるものであり、いずれにしても請求人の主張は理由がない。 (エ)本件訂正発明4、5についての判断 本件訂正発明4、5は、いずれも、本件訂正発明3と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 イ 本件訂正発明13、15~21について (ア)本件訂正発明13と甲11-2発明との対比 甲11-2発明の「血清試料」は、本件訂正発明13の「試験試料」に相当する。また、甲11-2発明の「Ru標識P-11モノクローナル抗体を加え、30℃で9分間反応させるステップ、およびRuの発光量を測定し、検体中のPIVKA-IIを検出する方法」は、本件訂正発明13の「抗体-抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、前記抗体-抗原複合体の存在が前記試験試料中のPIVKA-II抗原の存在を示す、前記抗体-抗原複合体の存在を検出するステップ、を含む、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法」に相当する。 したがって、本件訂正発明13と甲11-2発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「試験試料を抗体と、抗体-抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、前記抗体-抗原複合体の存在が前記試験試料中のPIVKA-II抗原の存在を示す、前記抗体-抗原複合体の存在を検出するステップ、を含む、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法。」 相違点 本件訂正発明3では、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する際に使用する抗体が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-2発明は、この点が明記されていない点。 (イ)本件訂正発明13についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、上記相違点については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)甲11に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、本件訂正発明13は、甲11-2発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明15~21についての判断 本件訂正発明15~21は、いずれも、本件訂正発明13と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 ウ 本件訂正発明22、25~30について (ア)本件訂正発明22と甲11-3発明との対比 甲11-3発明の「血清試料」は、本件訂正発明22の「試験試料」に相当する。また、甲11-3発明の「抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)」は、甲第1号証に記載されているとおり、PIVKA-IIのアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体であることが知られており、本件訂正発明22の「PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体」であるといえる。 したがって、本件訂正発明22と甲11-3発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法であって、試験試料を、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体、及び、第2の抗体を使用する方法。」 相違点1 本件訂正発明22は、第2の抗体が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-3発明は、この点が明記されていない点 相違点2 具体的な検出方法について、本件訂正発明22は、試験試料を第1の抗体と接触させるステップ、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の抗体を、第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、検出可能な標識によるシグナルを測定してPIVKA-II抗原を検出するステップであることを特定しているのに対して、甲11-3発明では、二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法であることのみが特定されている点。 (イ)本件訂正発明22についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」点(相違点1)については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明22は、甲11-3発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明25~30についての判断 本件訂正発明25~30は、いずれも、本件訂正発明22と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 エ 本件訂正発明31、33~37について (ア)本件訂正発明31と甲11-2発明との対比 甲11-2発明の「血清試料」は、本件訂正発明31の「試験試料」に相当するので、本件訂正発明31と甲11-2発明との一致点及び相違点は次の通りのものである。 一致点 「試験試料を、抗体を使用し、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する方法。」 相違点1 本件訂正発明31は、試験試料中のPIVKA-II抗原を検出する際に使用する抗体が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-2発明は、この点が明記されていない点。 相違点2 具体的な検出方法について、本件訂正発明31は、試験試料を、検出可能なシグナルを生成することができる検出可能な標識に付いている、PIVKA-IIレファレンス抗原、及びPIVKA-II抗原に対する抗体と、PIVKA-IIレファレンス抗原/抗体複合体を形成するのに十分な時間および条件下、接触させるステップ、検出可能な標識によって生成されるシグナルを検出するステップ、試験試料中に検出されるPIVKA-II抗原の量が、抗体に結合しているPIVKA-IIレファレンス抗体の量に逆比例するステップを含むのに対して、甲11-2発明では、二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法であることのみが特定されている点。 (イ)本件訂正発明31についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」点(相違点1)については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明31は、甲11-2発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明33~37についての判断 本件訂正発明33~37は、いずれも、本件訂正発明31と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 オ 本件訂正発明38について (ア)本件訂正発明38と甲11-4発明との対比 甲11-4発明の「PIVKA-IIに反応する抗体」、「皮下に2週間間隔で4回投与して免疫化するステップ」、「(マウスの脾臓から脾臓細胞を)得る」「骨髄腫細胞」は、それぞれ、本件訂正発明38の「抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質」、「抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ」、「(マウスの脾臓から細胞を)収集し」、「ミエローマ」に相当する。 したがって、本件訂正発明38と甲11-4発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、マウスを、抗原で、前記マウスが前記抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ、前記マウスの脾臓から細胞を収集するステップ、ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびに抗原に結合する抗体を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む、結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法。」 相違点1 マウスを免疫化するステップにおいて、本件訂正発明38では、PIVKA-IIのアミノ酸1-17を含む抗原を使用するのに対して、甲11-4発明では、クマジン血漿より精製したPIVKA-IIを抗原として使用する点。 相違点2 本件訂正発明38では、免疫化するマウスがGANPマウスであるのに対し、甲11-4発明は、BALB/cマウスである点。 相違点3 本件訂正発明38では、マウスの脾臓から得る細胞が「8つ」であり、さらに精製するステップを含むことが特定されているのに対し、甲11-4発明は、そのことが明記されていない点。 (イ)本件訂正発明38についての判断 上記相違点のうち、少なくとも相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の追加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)とはいえないから、両者は実質同一であるとはいえない。 よって、本件訂正発明38と甲11-4発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 カ 本件訂正発明40について (ア)本件訂正発明40と甲11-5発明との対比 甲11-5発明の「モノクローナル抗体」は、本件訂正発明40の「結合性タンパク質」に相当し、甲11-5発明の「測定試薬」は、本件訂正発明40の「薬剤組成物」に相当するので、本件訂正発明40と甲11-5発明との一致点及び相違点は次の通りのものである。 一致点 「結合性タンパク質を含む薬剤組成物。」 相違点1 本件訂正発明40は、結合性タンパク質が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-5発明は、この点が明記されていない点。 相違点2 本件訂正発明40では、薬剤組成物に含まれるものが、薬学的に許容される担体を含むのに対して、甲11-5発明ではそのような特定がない点。 (イ)本件訂正発明40についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」点(相違点1)については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明40は、甲11-5発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 キ 本件訂正発明45~51について (ア)本件訂正発明45と甲11-6発明との対比 甲11-6発明の「血清試料」は、本件訂正発明45の「試験試料」に相当する。また、甲11-6発明の「抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)」は、甲第1号証に記載されているとおり、PIVKA-IIのアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体であることが知られており、本件訂正発明45の「PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体」であるといえる。また、甲11-6発明の「肝がんを判定する方法」は、本件訂正発明45の「肝細胞癌(HCC)または肝癌を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌の存在を決定する方法」に相当する。 したがって、本件訂正発明45と甲11-6発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「肝癌を有することが疑われる患者における肝癌の存在を決定する方法であって、試験試料を、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性部分を有する第1の抗体、及び、第2の抗体を使用してPIVKA-II抗原の量を測定する方法。」 相違点1 本件訂正発明31は、第2の抗体が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-6発明は、この点が明記されていない点。 相違点2 具体的な検出方法について、本件訂正発明45は、試験試料を第1の抗体と接触させるステップ、検出可能な標識にコンジュゲートしている第2の抗体を、第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、検出可能な標識によるシグナルを測定してPIVKA-II抗原を検出するステップであることを特定しているのに対して、甲11-6発明では、二抗体サンドイッチ法を利用する免疫学的測定方法であることのみが特定されている点。 (イ)本件訂正発明45についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」点(相違点1)については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明45は、甲11-6発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明46~51についての判断 本件訂正発明46~51は、いずれも、本件訂正発明45と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 ク 本件訂正発明52、53について (ア)本件訂正発明52と甲11-5発明との対比 甲11-5発明の「モノクローナル抗体」、「測定試薬」は、それぞれ、本件訂正発明52の「結合性タンパク質」、「試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット」に相当する。 一致点 「結合性タンパク質を含有する、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット。」 相違点1 本件訂正発明52は、結合性タンパク質が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-5発明は、この点が明記されていない点。 相違点2 本件訂正発明52が、結合性タンパク質を含有する容器を含むものであるのに対して、甲11-5発明は容器を含むものであることが特定されていない点。 (イ)本件訂正発明52についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」点(相違点1)については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件訂正発明52は、甲11-5発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明53についての判断 本件訂正発明53は、いずれも、本件訂正発明52と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する抗体」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 ケ 本件訂正発明55、57~67について (ア)本件訂正発明55と甲11-5発明との対比 甲11-5発明の「測定試薬」は、本件訂正発明55の「試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット」に相当するので、本件訂正発明55と甲11-5発明との一致点及び相違点は次の通りのものである。 一致点 「抗体を含む、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット。」 相違点1 本件訂正発明55は、検出試薬中の抗体が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-5発明は、この点が明記されていない点。 相違点2 本件訂正発明55が、「試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するための指示書を含む」ものであるのに対して、甲11-5発明は、そのような指示書を含むものであることが特定されていない点。 (イ)本件訂正発明55についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」点(相違点1)については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件訂正発明55は、甲11-5発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明57~67についての判断 本件訂正発明57~67は、いずれも、本件訂正発明55と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、(検出試薬中の)抗体」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 コ 本件訂正発明68~69について (ア)本件訂正発明68と甲11-7発明との対比 甲11-7発明の「抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)」は、甲第1号証に記載されているとおり、PIVKA-IIのアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体であることが知られており、本件訂正発明68の「PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する抗原結合性タンパク質」であるといえる。また、甲11-7発明の「測定試薬」は、本件訂正発明68の「試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット」に相当する。 したがって、本件訂正発明68と甲11-7発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「(PIVKA-IIに対する)第1の結合性タンパク質、及び、PIVKA-IIのアミノ酸13-27に結合する第2の結合性タンパク質を含む、試験試料中のPIVKA-IIの量を検出および/または定量するためのキット。」 相違点 本件訂正発明68は、第1の結合性タンパク質が、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-7発明は、この点が明記されていない点。 (イ)本件訂正発明68についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」点については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、本件訂正発明68は、甲11-7発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明69についての判断 本件訂正発明69は、本件訂正発明68と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する、単離された結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 サ 本件訂正発明71、72について (ア)本件訂正発明71と甲11-3発明との対比 甲11-3発明の「モノクローナル抗体P-16」は、上記第6の9(2)(ス)のとおり「エピトープ」が「プロトロンビンフラグメント1のN末端から5残基(配列番号14で表わすaa1-5)の範囲であ」り、「抗PIVKA-IIモノクローナル抗体(MU-3)」は、甲第1号証に記載されているとおり、PIVKA-IIのアミノ酸17-27に結合する抗原結合部分を有するモノクローナル抗体であることが知られているから、それぞれ本件訂正発明71の「PIVKA-IIのアミノ酸1-33のサブセットに特異的に結合する抗原結合性部分を含」む結合性タンパク質といえる。そして、モノクローナル抗体P-16とモノクローナル抗体MU-3は、PIVKA-IIのアミノ酸1-33の異なるサブセットに結合するものである。 したがって、本件訂正発明71と甲11-3発明との一致点及び相違点は次のとおりのものである。 一致点 「少なくとも2つの異なる結合性タンパク質の使用を含み、前記結合性タンパク質の各々が、PIVKA-IIのアミノ酸1-33のサブセットに特異的に結合する抗原結合性部分を含み、前記結合性タンパク質の各々の抗原結合性部分が、PIVKA-IIのアミノ酸1-33の異なるサブセットに結合する、試料中のPIVKA-IIの量を決定するための方法。」 相違点 本件訂正発明71は、結合性タンパク質の少なくとも1つが、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」ものであるのに対し、甲11-3発明は、この点が明記されていない点。 (イ)本件訂正発明71についての判断 上記相違点について検討する。 上記第7の7(3)ア(イ)と同様、「プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA-II)のアミノ酸1-13に結合する抗原結合性部分を含み、PIVKA-IIを特異的に認識して結合する(但し、受託番号FERM BP-11259で特定されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体を除く)。」点については、先願(優先)明細書(甲11かつ甲12)に記載されておらず、記載されているに等しい事項であるとも認められない。 したがって、本件訂正発明71は、甲11-7発明、すなわち、先願発明と同一ではない。 (ウ)請求人の主張について 上記第7の7(3)ア(ウ)のとおり、請求人の主張は失当である。 (エ)本件訂正発明72についての判断 本件訂正発明72は、本件訂正発明71と同様に、「PIVKA-IIを特異的に認識して結合する結合性タンパク質」を発明特定事項とするものを含むものであるから、これらの発明も、先願発明と同一ではない。 (4)小括 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由3は理由がない。 第8 むすび 以上のとおり、本件訂正は適法であり、本件訂正後の請求項3~5、13、15~22、25~31、33~38、40、45~53、55、57~69、71、72に係る特許は、請求人が主張する無効理由1~6のいずれによっても無効とすることはできない。 本件特許の請求項73及び74に記載された発明は、本件訂正により削除されたため、それらに対して請求人がした請求については却下する。 審判に関する費用については、特許法169条第2項で準用する民事訴訟法61条の規定により請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2019-800091

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決12件(アボットジャパン 合同会社、アボット・ラボラトリーズ、ロシュ ダイアグノスティックス ゲーエムベーハー)
  • 2023-018231拒絶査定不服審判 / 2025-03-25 / 請求不成立サンプル分析用デバイス及び方法
    同じ当事者: アボット・ラボラトリーズ
  • 2022-014613拒絶査定不服審判 / 2024-07-10 / 請求不成立隔壁および関連方法
    同じ当事者: アボット・ラボラトリーズ
  • 2022-005030拒絶査定不服審判 / 2023-01-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)前処理カルーセルを有する診断分析装置および関連方法
    同じ当事者: アボット・ラボラトリーズ
  • 2018-017483拒絶査定不服審判 / 2020-06-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)HCVコア脂質結合ドメインモノクローナル抗体
    同じ当事者: アボット・ラボラトリーズ
  • 2019-011925拒絶査定不服審判 / 2020-06-08 / 請求不成立フローサイトメーターシステムのビーム整形光学系およびこの光学系に関連する方法
    同じ当事者: アボット・ラボラトリーズ
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,862件(113・C12N、121・C12N、16・C12N ほか)
  • 2022-002512拒絶査定不服審判 / 2024-05-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)改善された分化方法
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、16・C12N、536・C12N ほか1件
  • 2020-700867異議申立 / 2021-03-30 / 維持RNA依存性標的DNA修飾およびRNA依存性転写調節のための方法および組成物
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、16・C12N、536・C12N ほか1件
  • 2022-800027無効審判 / 2024-03-21 / 請求不成立
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、536・C12N、537・C12N
  • 2022-800030無効審判 / 2024-03-21 / 請求不成立
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、536・C12N、537・C12N
  • 2020-800099無効審判 / 2022-05-10 / 請求不成立活性型GcMAFの製造方法
    共通の審決分類: 113・C12N、121・C12N、536・C12N、537・C12N

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存