特許無効審判
2015-800057
ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法
- 審判番号
- 2015-800057
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願平10-512795
- 登録番号
- 特許第3310301号(P3310301)
- 請求日
- 2015年03月10日
- 審決日
- 2016年03月23日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】DKSHジャパン 株式会社
- 【請求人代理人】鮫島 正洋
- 【請求人代理人】▲柳▼下 彰彦
- 【請求人代理人】向畑 元博
- 【請求人代理人】篠田 淳郎
- 【被請求人】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
- 【被請求人代理人】津国 肇
- 【被請求人代理人】小國 泰弘
- 【被請求人代理人】尾崎 英男
- 【被請求人代理人】日野 英一郎
- 【被請求人代理人】江黒 早耶香
- 【被請求人代理人】膝舘 祥治
- 【被請求人】中外製薬 株式会社
- 【被請求人代理人】津国 肇
- 【被請求人代理人】小國 泰弘
- 【被請求人代理人】膝舘 祥治
- 【被請求人代理人】尾崎 英男
- 【被請求人代理人】日野 英一郎
- 【被請求人代理人】江黒 早耶香
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 雅博
- 審判官 中田 とし子
- 審判官 瀬良 聡機
- 分類
- P1123.121-YAA(C07J) / P1123.537-YAA(C07J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第3310301号発明「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件は,1997年9月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 1996年9月3日 米国(US))を国際出願日とし,ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク及び中外製薬株式会社(以下「被請求人」という。)を出願人として,名称を「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」とする発明について特許出願(特願平10-512795号)がされ,平成14年5月24日に,特許第3310301号として設定登録がなされた(請求項の数30。以下,その特許を「本件特許」といい,その明細書を「本件特許明細書」といい,本件特許明細書中の特許請求の範囲を「本件特許請求の範囲」という。)。
その後,本件特許に対して,本件無効審判請求と異なる無効審判の請求(無効2013-800080号)がなされ,平成26年8月4日に「請求のとおり訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決が送達され,本件特許の請求項29,30を削除する訂正が部分確定し,同年11月7日にその原簿登録がなされた。さらに,この無効審判の審決取消訴訟(平成26年(行ケ)第10263号)について,平成27年12月24日に請求棄却の判決があり,平成28年2月8日に当該判決が確定するとともに,本件特許の請求項1~28についての訂正を認める旨の審決も確定し,同年2月19日にその原簿登録がなされた。
本件の請求項13~28についての特許について,DKSHジャパン株式会社(以下「請求人」という。)から,本件無効審判の請求がなされた。その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 3月10日 審判請求書・甲第1~23号証提出(請求人)
同年 3月24日 上申書(請求人)
同年 4月21日 手続補正書(請求人)
同年 7月27日 答弁書(被請求人)
同日 訂正請求書(被請求人)
同年 9月 9日 審判事件弁駁書・甲第24,25号証提出
(請求人)
同年10月 2日 審理事項通知書
同年11月10日 上申書・甲第26~44号証提出(請求人)
同日 上申書・乙第1~4号証提出(被請求人)
同年11月24日 口頭審理陳述要領書・甲第45~49号証提出
(請求人)
同日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年12月 8日 口頭審理
同年12月22日 上申書(被請求人)・乙第3号証再提出
平成28年 1月 8日 上申書(請求人)・甲第50~56号証提出
(請求人)
同年 3月 7日 審理終結通知
第2 訂正について
被請求人は平成27年7月27日に訂正請求書を提出して,本件特許明細書を,訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり,その本件特許請求の範囲を訂正後の請求項1~12からなる一群の請求項及び訂正後の請求項13~28からなる一群の請求項ごとに訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。
しかしながら,本件無効審判とは別の先の無効審判(無効2013-800080号)においても,本件訂正と同じ内容の訂正請求がなされ,上記「第1」で述べたとおり,本件特許の請求項1~28についての訂正を認める旨の審決も,平成28年2月8日に確定した。
そうすると,特許法第134条の2第9項で準用する同法第128条の規定により,先の無効審判で請求された訂正後の明細書及び特許請求の範囲により特許権の設定の登録がなされたものとみなされる。
そして,本件訂正の訂正内容は先の無効審判における訂正内容と同一であるので,本件訂正の適否について判断するまでもなく,本件特許明細書は本件訂正に係る訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりのものとなる。
第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり,本件特許の請求項13~28に係る発明(以下「本件発明13」~「本件発明28」といい,合わせて「本件発明」という。)は,先の無効審判において訂正された訂正後の特許請求の範囲の請求項13~28に記載された事項によって特定される以下のとおりのものと認める(なお,先の無効審判の訂正内容と本件訂正の訂正内容は同一なので,本件特許明細書の記載は,本件の訂正請求書に添付された「訂正明細書」に基づいて摘記する。)。
「【請求項13】 下記構造を有する化合物の製造方法であって:
(式中、nは1であり;R1およびR2はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、式:
のステロイド環構造、または式:
のビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:
(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
または
(式中、n、R1およびR2は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法。
【請求項14】 Zが
,または
(式中、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12およびR13は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR6およびR7は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
である、請求の範囲第13記載の方法。
【請求項15】下記構造を有する化合物の製造方法であって:
(a)下記構造:
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は請求項13の化合物と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は請求項13の化合物と同じなので省略する。)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項16】下記構造を有する化合物の製造方法であって:
(a)下記構造:
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は請求項13の化合物と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は請求項13の化合物と同じなので省略する。)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項17】下記構造を有する化合物の製造方法であって:
(a)下記構造:
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
または
を有する化合物と反応させて、下記構造:
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項18】下記構造を有する化合物の製造方法であって:
(a)下記構造:
を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
(審決注:化学式は請求項17と同じなので省略する。)
または
(審決注:化学式は請求項17と同じなので省略する。)
を有する化合物と反応させて、下記構造:
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項19】化合物の回収が濾過またはクロマトグラフィーを含む、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項20】脱離基がハロゲン、メシル、トシル、イミデート、トリフルオロメタンスルホニル、またはフェニルスルホニルである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項21】ハロゲンが臭素である、請求の範囲第20項記載の方法。
【請求項22】塩基がアルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ金属アルコキシドである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項23】アルカリ金属水素化物がNaHまたはKHである、請求の範囲第22項記載の方法。
【請求項24】塩基がNaOR20、KOR20、R20Li、NaN(R21)2、KN(R21)2、またはLiN(R21)2であり;R20はアルキルであり;そしてR21はイソプロピルまたは(CH3)3Siである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項25】還元剤が、LiAlH4、Li(s-Bu)3BH、またはLiEt3BHである、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項26】上記工程(b)が工程(a)の反応生成物から工程(a)で生成したエポキシド化合物を分離することなく行われる、請求の範囲第13項記載の方法。
【請求項27】上記工程(a)および(b)が溶媒としてのテトラヒドロフランの存在中で行われる、請求の範囲第26項記載の方法。
【請求項28】上記還元剤が、リチウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド、カリウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド、リチウムトリエチルボロハイドライド、およびリチウム9-BBNハイドライドから成る群から選択される、請求の範囲第27項記載の方法。」
第4 請求の趣旨並びにその主張の概要及び請求人が提出した証拠方法
1 審判請求書,審判事件弁駁書,上申書,口頭審理陳述要領書に記載した無効理由の概要
請求人が主張する請求の趣旨は,
「特許第3310301号の特許請求の範囲の請求項13~28に係る発明についての特許を無効にする。審判請求費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」であると認める(審判請求書第2頁「6.請求の趣旨」,平成27年4月21日付け手続補正書第2頁「第6 1 ○3(審決注:○文字内に3である。以下同じである。)」,第1回口頭審理調書「請求人 1」参照)。
そして,請求人が主張する無効理由は,概略以下のとおりである(審判請求書第3頁第5行~第22頁下から2行,第56頁第12行~第108頁第14行,平成27年4月21日付け手続補正書第2頁「第6 1 ○4,○9,○10」,審判事件弁駁書第3頁下から第2行~第37頁下から第2行,審理事項通知書「第1 2(1)」,平成27年11月10日付け上申書第3頁第16行~第4頁第12行,口頭審理陳述要領書第3頁第9行~第5頁第12行,第1回口頭審理調書「請求人 3」参照)。
(1)無効理由1
ア 本件発明13~24,26,27について
本件発明13~24,26,27は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証の1(主引用例)及び甲第2号証の2に記載された発明並びに本件優先日における周知技術に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
イ 本件発明25,28について
本件発明25,28は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証の1(主引用例),甲第2号証の1及び甲第13号証の1に記載された発明並びに本件優先日における周知技術に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
ウ まとめ
よって,本件発明13~28の特許が,特許法第29条に違反してされたものであるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
(2)無効理由2
本件発明13に記載される,
「
」(以下「出発化合物」という。)において「Zは上記定義の通りである」とされ,これは,
「
」(以下「製造化合物」という。)における「Z」として選択可能なすべての場合を含むから,本件発明13には,出発化合物における「Z」と,製造化合物における「Z」が異なる場合を含むといえ,そのような場合まで,本件発明13の課題を解決できるということはできないから,本件発明13は,発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
また,本件発明13を直接又は間接的に引用する本願発明14~28も同様に発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
よって,本件発明13~28の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく,本件発明13~28の特許が特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものである。
2 請求人の提出した証拠方法
請求人の提出した証拠方法は,以下のとおりである。
(1)審判請求書とともに提出した証拠方法
甲第1号証の1 Chem. Pharm. Bull., Vol.34, No.10, pp.4410-4413,
1986
甲第1号証の2 甲第1号証の1の訳文
甲第2号証の1 Chemistry of Heterocyclic Compounds,
Vol.17, No.7, pp.642-644, 1982
甲第2号証の2 甲第2号証の1の訳文(訳文は審判事件弁駁書で再提出
された。)
甲第3号証 大橋守ほか監訳, FESSENDEN-FESSENDEN
有機化学(上), 第5版, 表紙, 第341,
344~345頁,奥付, 株式会社東京化学同人,
1995年2月10日
甲第4号証 特開昭49-13162号公報
甲第5号証の1 国際公開93/21204号
甲第5号証の2 甲第5号証の1の訳文(部分)
甲第6号証の1 J. Chem. Soc. Chem. Commum., pp.249-250, 1988
甲第6号証の2 甲第6号証の1の訳文
甲第7号証 小西友七ら編, ジーニアス英和大辞典, 第1812~
1813頁,奥付, 株式会社大修館書店,
2001年4月25日
甲第8号証の1 Vitamin D Gene Regulation, Structure-Function
Analysis and Clinical Application, Proceedings of
the 8th workshop on Vitamin D, pp.161-162, 1991
甲第8証の2 甲第8号証の1の訳文
甲第9号証 特表平8-505147号公報
甲第10号証の1 國友順一ら編,わかりやすい有機化学 ,表紙,
まえがき,第279~281頁,第299~309頁,
奥付, 株式会社廣川書店, 昭和61年4月1日
甲第10号証の2 國友順一ら著, わかりやすい有機薬化学, 表紙,
まえがき,第279~281頁,第299~309頁,
奥付, 株式会社廣川書店, 昭和60年6月15日
甲第11号証 古賀憲司ら監訳, ボルハルト・ショアー
現代有機化学[上], 表紙,第311,334頁,
奥付, 株式会社化学同人, 1996年8月10日
甲第12号証 S.ターナー著, 湊宏訳, 有機合成デザイン,
表紙,第104~115頁,奥付, 株式会社講談社, 1977年10月20日
甲第13号証の1 Bulletin de la Societe Chimiqe de France,
No.11-12, pp.2584-2592, 1975
甲第13号証の2 甲第13号証の1の訳文
甲第14号証 日本化学会編, 標準 化学用語辞典,
表紙,第683頁,奥付, 丸善株式会社,
平成3年3月30日
甲第15号証 山川浩司ら編, 有機化学(改訂第2版),
表紙,第123~124頁,第162~164頁,
第201頁,奥付, 株式会社南江堂,
1993年4月1日
甲第16号証 特開平3-24053号公報
甲第17号証の1 Vitamin D Molecular, Cellular and Clinical
Endocrinology, Proceedings of the 7th Workshop
on Vitamin D, pp.310-319, 1988
甲第17号証の2 甲第17号証の1の訳文
甲第18号証 特開昭53-144563号公報
甲第19号証 特開昭61-189294号公報
甲第20号証 特開昭62-187485号公報
甲第21号証 特開平6-72994号公報
甲第22号証 日本薬学会, 日本薬学会第112年会講演要旨集2,
表紙,第62頁,奥付, 平成4年3月5日
甲第23号証の1 Chem. Pharm. Bull., Vol.40, No.6, pp.1494-1499,
1992
甲第23号証の2 甲第23号証の1の訳文
(2)審判事件弁駁書とともに提出した証拠方法
甲第24号証 松村明編, 大辞林 第三版,
第1102~1105頁, 奥付,
株式会社三省堂, 2006年10月27日
甲第25号証の1 J. Am. Chem. Soc., Vol.76, pp.709-713, 1954
甲第25号証の2 甲第25号証の1の訳文
(3)平成27年11月10日付け上申書(以下「請求人第2回上申書」という。)とともに提出した証拠方法
甲第26号証 有機合成化学協会誌, Vol.67, No.8,
第820~833頁, 2009
甲第27号証 日本プロセス化学会編, プロセス化学の現場,
表紙,第179~189頁,奥付,
株式会社化学同人, 2009年7月20日
甲第28号証の1 Heterocycles, Vol.63, No.6, pp.1335-1343, 2004
甲第28号証の2 甲第28号証の1の訳文
甲第29号証の1 Tetrahedron Letters, Vol.45, pp.1347-1350, 2004
甲第29号証の2 甲第29号証の1の訳文
甲第30号証の1 Organic Process Research & Development,
Vol.9, No.3, pp.278-287, 2005
甲第30号証の2 甲第30号証の1の訳文
甲第31号証 平成14年改正 産業財産権法(工業所有権法)の解説,
第79~90頁
甲第32号証 特開平6-256300号公報
甲第33号証 大橋守ほか監訳, FESSENDEN-FESSENDEN
有機化学(上)第5版, 表紙, 第230~231頁,
奥付, 株式会社東京化学同人, 1995年2月20日
甲第34号証の1 R.M. Acheson著,秋葉欣哉訳, 複素環化合物の化学
[改訂第3版], 表紙,第vi~ix頁,
第24~27頁,奥付, 科学技術出版社,
昭和55年4月15日
甲第34号証の2の1 Transaction of the Faraday Society,
Vol.45, pp.179-190, 1949
甲第34号証の2の2 甲第34号証の2の1の訳文
甲第35号証の1 欧州特許出願公開第184112号
甲第35号証の2 甲第35号証の1の訳文
甲第36号証 特開平3-188061号公報
甲第37号証 特開平6-256300号公報
甲第38号証の1 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,
Vol.4, No.5, pp.753-756, 1994
甲第38号証の2 甲第38号証の1の訳文
甲第39号証の1 Journal of Organic Chemistry of the USSR,
Vol.1, No.9, pp.1731, 1965
甲第39号証の2 甲第39号証の1の訳文
甲第40号証の1 Journal of Organic Chemistry of the USSR,
Vol.3, No.9, pp.1587-1589, 1967
甲第40号証の2 甲第40号証の1の訳文
甲第41号証の1 Chemistry of Heterocyclic Compounds,
Vol.19, No.9, pp.934-936, 1983
甲第41号証の2 甲第41号証の1の訳文
甲第42号証の1 Armyanskii Khimicheskii Zhurnal,
Vol.33, No.4, p.316-319, 1980
甲第42号証の2 甲第42号証の1の訳文
甲第43号証の1 Heterocycles, Vol.35, No.2, pp.619-622, 1993
甲第43号証の2 甲第43号証の1の訳文
甲第44号証 尾中篤ら訳, 有機合成のロジック,
表紙,第104~105頁,奥付, 株式会社化学同人,
1995年4月25日
(4)口頭審理陳述要領書とともに提出した証拠方法
甲第45号証 池上四郎ら編著, 有機化学,
表紙,まえがき,第232~236頁,奥付,
株式会社朝倉書店, 1996年6月20日
甲第46号証の1 國友順一ら編,わかりやすい有機化学,
表紙,まえがき,第120頁,奥付,
株式会社廣川書店, 昭和61年4月1日
甲第46号証の2 國友順一ら著, わかりやすい有機薬化学,
表紙,まえがき,第120頁,奥付,
株式会社廣川書店, 昭和60年6月15日
甲第47号証 向畑元博作成, 1-ブロモ-3-メチル-2,3-
エポキシブタン、1-ブロモ-3,3-エチレンジオキシ
ブタンと、20(S)-アルコールとのSN2反応の様子
(分子模型を使用した説明)に関する報告書,
平成27年11月19日
甲第48号証 花房昭静ら監訳, ソロモンの新有機化学 上 第2版,
表紙,第240~243頁,奥付,
株式会社廣川書店, 昭和62年11月25日
甲第49号証 Peter Sykes著, 久保田尚志訳,
有機反応機構 第5版(第12刷), 表紙,序言,
第86頁,奥付, 株式会社東京化学同人,
2005年7月1日
(5)平成28年1月8日付け上申書(以下「請求人第3回上申書」という。)とともに提出した証拠方法
甲第50号証 J. D. Robertsら著, 大木道則訳, 有機化学-上-,
表紙,序,訳者序,第496~499頁,奥付,
株式会社東京化学同人, 1969年12月10日
甲第51号証 中西香爾ら訳, モリソンボイド 有機化学(上),
表紙,序第i~iii頁,第346~347頁,奥付,
株式会社東京化学同人, 1994年3月18日
甲第52号証 大木道則ら編, 化学辞典,
表紙,第1284~1285頁,奥付,
株式会社東京化学同人, 1994年10月1日
甲第53号証 大木道則ら編, 化学大辞典,
表紙,第2102~2103頁,奥付,
株式会社東京化学同人, 1989年10月20日
甲第54号証 Peter Sykes著, 久保田尚志訳,
有機反応機構 第5版(第3刷), 表紙,序言,
第86頁,奥付, 株式会社東京化学同人,
1988年7月1日
甲第55号証 木村勝著, 有機機能化学[第2版],
表紙,推薦のことば,第2版まえがき,初版の序,
第26~27頁,奥付, 三共出版株式会社,
1989年10月20日
甲第56号証 児玉三明ら訳, John McMurry 有機化学概説 第3版, 表紙,序,学生諸君への注意,訳者序,
第258~259頁,奥付, 株式会社化学同人,
1996年2月7日
第5 答弁の趣旨並びにその主張の概要
1 審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書,上申書に記載した答弁の趣旨
被請求人が主張する答弁の趣旨は,「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」であると認める(審判事件答弁書第3頁「7.答弁の趣旨」,第1回口頭審理調書「被請求人 1」参照)。
そして,被請求人は請求人が主張する上記無効理由は,審判事件答弁書,平成27年1月10日付け上申書,口頭審理陳述要領書,平成27年12月22日付け上申書において,理由がない旨の主張をしていると認める。
2 被請求人が提出した証拠方法
被請求人の提出した証拠方法は,平成27年11月10日付け上申書(以下「被請求人第1回上申書」という。)に添付された以下のとおりである。
乙第1号証 Chemical Reviews, Vol.113, pp.1461-1498, 2012
乙第2号証 有機化学合成協会誌, 第54巻, 第2号, 表紙,
第139~145頁, 1996年2月1日
乙第3号証 Tetrahedron Letters, Vol.45, pp.1347-1350, 2004
(甲第29号証の1と同じである。訳文は平成27年12 月22日付け上申書(以下「被請求人第2回上申書」とい う。)で再提出された。
乙第4号証 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,
Vol.4, No.5, pp.753-756, 1994
(甲第38号証の1と同じである。)
第6 無効理由についての当審の判断
当審は,以下に示すとおり,上記無効理由は,いずれも理由がないものと判断する。
1 無効理由1について
(1)甲号証,乙号証の記載事項
以下,甲号証に翻訳文がある場合は枝番を省略して,単に「甲第○号証」と表記する。
ア 甲第1号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(1a)「この研究の続きとして我々は、デヒドロエピアンドロステロンから、1α-及び3β-tert-ブチルジメチルシリルオキシ誘導体を鍵中間体として含む新しい一連の反応によって、1α-ヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(3a)[1α-OH-22-オキサ-D3]及び1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(3b)[1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3]を合成した。」(第4410頁本文第6~10行)
(1b)「
」(第4410頁右下の化学式)
(1c)「還流キシレン中9を水素化ナトリウム(NaH)及び1-ブロモ-3-メチルブタンと22時間反応させて8)、プロ-D3誘導体(10)を収率86%で得た。高圧水銀ランプ(400W、Vycorフィルター)を用いてアルゴン雰囲気で、ヘキサン中の10を光照射9)した後、かくして得られたプレ-D3化合物を沸騰ヘキサン中で熱異性化し、続いてテトラヒドロフラン(THF)中、テトラブチルアンモニウムフルオライドを用いてシリル基を除去する反応を16時間行うことにより、1α-OH-22-オキサビタミンD3 3a5c)を収率24%で得た。
10の形成と対照的に、1-ブロモ-3,3-エチレンジオキシブタンまたは3,3-エチレンジオキシ-1-ヨードブタンと9とのアルキル化反応は失敗した10)。しかし、所望の25-ケト誘導体(13)は以下の2段階手法によって得られた;還流キシレン中4-ブロモ-1-ブテン及び大過剰の水素化ナトリウム(NaH)とアルコール9を18時間反応させた後、得られた二重結合の異性体(11及び12)の1:1混合物がワッカー(Wacker)法(触媒量の塩化パラジウム(II)(PdCl2)及び過剰量の塩化銅(I)(CuCl)と共に、ジメチルホルムアミド(DMF)及び水(H20)中、酸素雰囲気下、室温で19時間反応に付す。)11)により酸化され、反応しない異性体12と共に、9の消失量からみて収率44%でケトン化合物(13)を得た。テトラヒドロフラン(THF)中、13をメチルマグネシウムブロマイド(MeMgBr)と0℃で1時間反応させると、プロ-D3誘導体(14)を収率79%で得た。14は、続いて上述したのと同じようにして光反応、熱異性化反応、及び脱保護反応に付され、1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3 3b5d)を収率9%で得た。」(第4411頁第8~25行)
(1d)「
」(第4412頁化学反応式)
(1e)「10) 1α,3β-ビス(テトラヒドロピラニルオキシ)-5-アンドロステン-17β-オールを、沸騰キシレン中で水素化ナトリウム(NaH)の存在下、1-クロロ-4,4-エチレンジオキシペンタンとアルキル化反応させると、所望のエーテル化合物を好収率で得た1)。この研究の失敗は、前者と比べて1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンが嵩高いからであるかもしれない。」(第4413頁第38~42行)
イ 甲第2号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(2a)「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとアルコール類とをアルカリ金属アルコキシドの存在下で反応させるとエポキシ環の関与なしにハロゲン原子の直接置換によりエポキシエーテルが生成する。
α-エピハロヒドリン類と求核試薬とを反応させるとハロゲンが置換された生成物となることが知られている。これらの反応のほとんどはハロヒドリンの生成に伴う付加反応と、それに続く脱離とエポキシド基の生成により進行するものである[1]。ハロゲン原子の直接置換はまれな場合に観察される[2]。」(第642頁第4~11行)
(2b)「この研究で得られた1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとアルコール類との反応の研究により得られたデータはこの点に関して非常に興味深いものである。アルカリ金属アルコキシドを用いて反応が進行し、その結果、エポキシエーテルIが好収率で得られる(表1)。ビスエポキシ化合物Ijがエチレングリコールを2当量のブロミド化合物との反応により生成する。
得られたエポキシエーテル類が、アルコール性カリと還流したときでさえも反応しないことは興味ある知見である。」(第642頁第12行~第643頁第5行,第642頁Table1,第643頁第3行直下の反応式)
(2c)「4-ブトキシ-2-メチル-2-ブタノール(III).
30mlの無水エーテル中で3.9g(25mmo1)の4-ブトキシ-2-メチル-2,3-エポキシブタン(Ie)と1.0g(26mmol)のリチウム・アルミニウム・ハイドライドの混合物を3時間加熱還流し、その後に5mlの水を加えて混合物をろ過し、エーテルで洗浄して乾燥し,蒸留して沸点83-84℃(10mm)のIII(2.1g,52.4%)を得た。nD20 1.4293,及びd420 0.9601{bp82-85℃(10mm),nD201.4297,及びd420 0.9603[4]}」(第643頁下から第5行~第1行)
ウ 甲第3号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には,以下の事項が記載されている。
(3a)「Williamson合成は,ハロゲン化アルキルとアルコキシドイオンまたはフェノキシドイオンとのSN2反応であり,第5章で詳しく論じた反応である。」(第344頁下から第2~1行)
エ 甲第4号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証には,以下の事項が記載されている。
(4a)「本発明は次の反応式で示すことができる。
」(第2頁右下欄第13行~第3頁左上欄反応式)
オ 甲第5号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(5a)「実施例4
手順:ディールスアルダーエポキシド化合物(12.9g、23.1g)をテトラヒドロフラン(THF)(275ml)に溶解し、(0-5℃)に冷却した溶液に、テトラヒドロフラン(THF)(90mlに90mmol)中1Mの水素化リチウムアルミニウムを撹拌しながら滴下した。反応溶液を60℃で30分間加熱した。(反応は2段階で進行する:始めに保護基を除去し、続いてエポキシドを開環する)。反応溶液を0~5℃に冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を(過剰のLAHが分解されるまで~25ml)ゆっくり加えた。反応溶液を30分間(0-5℃)で撹拌し、それからセライトでろ過した。フィルターベッドを少量のテトラヒドロフラン(THF)で洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、粗生成物を得た。この粗生成物はメタノールより再結晶され、総収率6.49g(70.2%)で融点183~185℃の化合物が得られた。2度目の再結晶は融点を190~193℃まで上げた。NMR、IR、及びマススペクトルはいずれも予測した構造(XXVII)に合致した。」(第22頁第1行~26行)
カ 甲第6号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(6a)「
」(第249頁左欄化学式)
(6b)「アセチル化(Ac2O-ピリジン)によりモノアセテート体(2)が得られた。・・・
水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)で還元することにより、エポキシ環がなくなった状態を示すジオール体(3)が得られた」(第249頁右欄第12~20行)
キ 甲第16号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第16号証には以下の事項が記載されている。
(16a)「(c)酢酸エチル中の1.0gのエポキシ化合物(12)の溶液を、大気圧において水素下に0.22gのラネーニッケルとともに震盪する。所望の水素化はNMR分析に従い起こる。25-ヒドロキシビタミン-D3付加物(13)は、50%の収率で形成する。」(第10頁右上欄第6~11行)
(16b)「
」(第12頁反応の概要C)
ク 甲第18号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第18号証には以下の事項が記載されている。
(18a)「24,25-エボキシ-5β-コレスタン-3α-オール808mgを無水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、水素化リチウムアルミニウム0.8gを加え30分緩かに加熱還流する。冷後、飽和重炭酸ナトリウム水を少量ずつ加え、過剰の水素化リチウムアルミニウムを分解した後、10%塩酸を加えエーテルで抽出する。エーテル層を水洗後硫酸マグネシウムで乾燥した後溶媒を留去すると5β-コレスタン-3α,25-ジオールの結晶612.6mgを得る。融点184~185℃(エタノールより再結晶)」(第3頁左上欄第1~10行)
ケ 甲第19号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第19号証には以下の事項が記載されている。
(19a)「24-ハロゲン化コレステロール類を塩基で処理し下記式[II]
・・・で表わされる24,25-エポキシコレステロール類を得、ついで還元剤で処理することを特徴とする下記式[III]
・・・で表わされる25-ヒドロキシコレステロール類の製造方法および原料である上記式[I]で表される24-ハロゲン化コレステロール類が提供される。」(第2頁右下欄第4行~第3頁左上欄第4行)
コ 甲第20号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第20号証には以下の事項が記載されている。
(20a)「参考例3
25-ヒドロキシコレステロールの合成
水素化アルミニウムリチウム60mg(1.6mM)を2mlのTHFに懸濁した。この懸濁液に窒素気流下室温で,24,25-エボキシコレステロ-ル-3β-ベンゾエート126mg(0.25mM)をTHF1mlに溶解した溶液を滴下した。室温で24時間撹拌後200mlの氷水に注ぎ酢酸エチルを加えて抽出した。有機液を1N-HCl,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,飽和食塩水で順次洗い芒硝で乾燥した。濾過濃縮後得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフイーで精製し71mgの25-ヒドロキシコレステロールを得た。」(第7頁左上欄第6行~末行)
サ 甲第23号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第23号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(23a)「
」(第1495頁Chart2)
(23b)「最後の目的化合物はOCTのC-24位が延長された3つの類縁体:24-ホモOCT(8)、24-ジホモOCT(9)及び24-トリホモOCT(10)であった。11とクロライド(18a)11)またはブロマイド(18b)12)をキシレン中18時間加熱し反応させるとアルキル化された生成物19aと19bを良い収率で与えた。」(第1495頁左欄下から第10行~第5行)
(23c)「
」(第1496頁Chart3)
シ 甲第29号証(乙第3号証)の記載事項
本件優先日後に頒布された刊行物であるが,甲第29号証には日本語に訳して以下の事項が記載されている。翻訳は,請求人が提出したもの(被請求人も乙第3号証の翻訳として援用した(被請求人第2回上申書第2頁第3~5行)。)によった。
(29a)「我々はこれまで、この種のステロイドの20S-ヒドロキシ官能基の修飾の困難性を認識してきたが、まずは一連のアルキル化剤9a-dと20S-アルコール4との、水素化ナトリウム(NaH)の存在下、テトラヒドロフラン(THF)や、ジメチルホルムアミド(DMF)やトルエンといった、他の溶媒中での標準的なウィリアムソン(Williamson)反応によるエーテル化を幅広く試みた。これらの反応条件の下、実質的に望むアルキル化反応は全く進行しなかった。さらに、トリクロロアセトイミデート9eを酸触媒存在下に使用した場合でもアルキル化は起こらなかった。一方、より立体的な障害が少なく(less hindered)、より反応性の高い臭化プレニルを用いたアルコール4のアルキル化は塩基性条件下で容易に進行し、プレニルエーテル11を良好な収率で与えた。」(第1348頁左欄第13~26行)
(29b)「
」(第1348頁Scheme2)
(29c)「エポキシブロマイド12は、その嵩高さや、エポキシ基の機能についてのsp2状の性質を考慮すれば、プレニルブロミドと立体的にも電子的にも似ているので12、我々は、該試薬が2級のアルコール4に反応し、エポキシーエーテル13を製造できることを容易に想到することができた。」(第1348頁右欄第19~23行)
ス 甲第32号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第32号証には以下の事項が記載されている。
(32a)「
」(第3頁上の反応式)
セ 甲第33号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第33号証には以下の事項が記載されている。
(33a)「π結合をもつ化合物のSN1またはSN2反応で安定化を大きくするには,そのπ結合が反応する炭素の隣になければならない。それがもっと遠いと重なることができず,遷移状態を安定化させるのに役立たない。SN2反応ではπ結合のp軌道が脱離基および求核試薬の軌道に隣接かつ一直線に並ばなければならない。」(第231頁図5・8の直下第1~4行)
ソ 甲第34号証の1,甲第34号証の2の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第34号証の1には以下の事項が記載されている。
(34a)「オキシランはp2結合を持つと考えられ,その‘bent’結合(バナナ結合とも言われる)はCとOの軌道に接する弧に添って存在する.・・・定性的には,オキシランは共役分子の紫外吸収スペクトルに対してカルボニル(C=O)あるいはアルケニル(C=C)と類似の効果を及ぼす.」(第25頁下から第3行~第26頁第4行)
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第34号証の2には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(34b)「シクロプロパン及びエチレンオキサイドの炭素原子は、工チレンの炭素原子と、混成状熊において非常に似ているという結論を強調するのが重要である。」(第184頁下から第7~5行)
タ 甲第39号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第39号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(39a)「動く水素原子を含むニトリル類のナトリウム誘導体に対するα-ブロモ-オキサイド類の作用は、C-アルキル化につながる。これらの研究の発展において、我々はα-シアノカルボニル化合物のナトリウム誘導体に対する同じオキサイドの作用が、C-アルキル化でなくO-アルキル化につながることを示す。このようにして、1-ブロモ-2,3-エポキシ-3-メチルブタンの存在下、シアノアセトフェノン及びα-シアノシクロヘキサノンのナトリウム誘導体は、それぞれシアノアセトフェノンのエノール型の3-メチル-2,3-エポキシブチルエーテル(I)、及びα-シアノシクロヘキサノンのエノール型の3-メチル-2,3-エポキシブチルエーテル(II)を与えた。
」(第1731頁本文第1~6行,化学式)
チ 甲第40号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第40号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(40a)「シアノ基のエポキシ環との反応の結果として、動く水素の不存在下で環化が起こるかを確認するため、我々は、t-ブチルアルコール中、ブロモエポキシド(I)と 2-シアノプロピオン酸エステルのカリウム誘導体との反応を行った。この反応の結果として、我々は、ブロモエポキシドによって2-シアノプロピオン酸エステルがC-アルキル化した生成物の構造であると同定された物質、すなわちエチル2-シアノ-4,5-エポキシ-2,5-ジメチルヘキサノエートを単離した。
」(第1587頁本文第11~15行,化学反応式)
ツ 甲第41号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第41号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(41a)「ジメチルビニルカルビトールの合成のための新しい簡便な方法の発達により[1]、その誘導体が有機合成において利用しやすい中間体となっている。後者は1-クロロ-及び1-ブロモ-3-メチル-2,3-エポキシブタン並びに2-メチル-2-クロロ-3,4-エポキシブタン(I~III)を含み、これらをジメチルビニルカルビトールから調製するための効果的な方法が広く知られている[2]。だが、これらのハライドと反応させたことのある試薬の数はかなり限られている:メタノール[3]、アルコキシド類[4]、アセト酢酸エステル、及び活性メチレン基を持つ多数の他の化合物[5]の関与を含む反応が知られている。ここで示された試薬との前記反応は決して平凡なものではないことが指摘されたのである。上で述べたように、1-ブロモ、-3-メチル-2,3-エポキシブタンはアルカリ化剤の存在下でアルコール類と反応し、エポキシ環が関与することなくエポキシエーテルを与えるが[4]、例えば塩基の不存在下ではこのエポキシドがメタノールと反応し、平凡なエポキシハライド類と同様、エポキシ環に付加した生成物を与える[3]。アセト酢酸エステルとの反応も、そのエポキシドのC-Br結合で始まることが明らかとなっている[5]。」(第934頁本文第6~12行)
(41b)「結局のところ、エポキシアミン類IVの形成は、エポキシ環が関与することなくエポキシハライドI及びIIにおけるハロゲン原子が直接置換する結果として行われるのであり、エポキシ環の開環及び続く閉環を含む既知スキーム[6]とは対照的である。」(第934頁下から第6~3行)
テ 甲第42号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第42号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(42a)「4-ブロモ-2,3エポキシ-2-メチルブタンは、かつても予想されたとおり[5]、アセト酢酸エステルとともにジヒドロフラン誘導体を生成させる。収率は67.3%である。
」(第317頁第6~7行,その下の反応式)
ト 甲第43号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第43号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものによった。
(43a)「我々は、(化合物)4の調製の間にオキシラン中間体(3)を観察することはできなかったが、類似の中間体(5)は、トリエチルアミンの存在下、3,3-ジメチル-2-ブロモメチルオキシラン(1j)とアミノチオフェノールとの反応で得られ、この反応において最初の求核置換はブロモメチル基で生じた。さらに、(化合物)1jが、室温でMeOH中KOHとともに撹拌されるか、又は塩基の不存在下トルエン中還流しつつ撹拌された場合、ベンゾチアゼピン(4i)がそれぞれ収率62%又は72%で得られた。前者の環化条件では、反応の完結に4日8かかった。これは、そのジメチル基に起因する(化合物)5の周りの立体障害が原因であるかもしれない。この反応において、我々は、エキソ(exo)-6環化生成物(6)の形成を予想した。一方、この生成物の1H nmr スペクトルがOH及びメチンプロトンに対する12.3Hzという大きなカップリング定数を示すということは、生成物が(化合物)6でなく(化合物)4iであることを示している。
」(第621頁第7~17行,その下の反応式)
ナ 甲第45号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第45号証には以下の事項が記載されている。
(45a)「5.2.1 保護が必要になる代表的官能基
(i) アミノ基:NH2
(ii)ヒドロキシル基 (アルコールおよびフェノール):-OH(ROH,ArOH)
(iii)メルカプト基 (チオール):-SH
(iv)カルボキシル基 (カルボン酸〉:-COOH
(v)カルボニル基(アルデヒド,ケトン):\
C=O
/
(vi)二重結合」(第233頁「5.2.1」)
(45b)「(v)カルボニル基(ケトン,R-CO-R;アルデヒド,R-CHO) 反応性が高く還元剤や求核試薬に敏感であるので,エーテル系の誘導体として保護する(前出の1,2-ジオール部を参照).
ケタールには用いるアルコールにより直鎖状のものと環状のものがある。酸には不安定だが塩基には非常に安定である.チオケタールは酸,塩基にも非常に安定で通常の加水分解条件では脱保護されない.」(第235頁表を除き下から第4行~第236頁第2行)
ニ 甲第48号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第48号証には以下の事項が記載されている。
(48a)「tert-ブトキシドイオンのかさ高いメチル基は置換反応を妨害し,脱離反応を優先させる。次に,この影響のよくでている二つの反応例を示した。障害の少ないメトキシドイオンは臭化n-オクタデシルと置換反応をしているが,かさ高いtert-ブトキシドイオンの場合は脱離反応が主になっている。
」(第242頁第3行~6行,その下の反応式)
(48b)「E2とSN2反応の相対速度に影響を与える他の因子は,塩基または求核試薬の塩基性と分極率である。アミドイオン(NH2-)とかアルコキシドイオン(特に立体障害のあるもの)のように強くて,分極率の小さい塩基を使うと脱離反応(E2)の可能性が増える傾向にある.一方,塩化物イオンCl-,酢酸イオンCH3CO2-のように弱い塩基性イオン,あるいはBr-,I-,RS-のように弱塩基性であるが,分極率の大きいイオンを用いると置換反応(SN2)の可能性が増大する.」(第242頁反応式の下から第1~5行)
ヌ 甲第50号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第50号証には以下の事項が記載されている。
(50a)「B.エノール陰イオンの関係する親核置換
ケトンにα-水素がある場合には,ケトンとナトリウムあるいはカリウムアミドのような非常に強い塩基とから,エノール陰イオンを収率よくつくることができる.こうして生成するエノール陰イオンは,理論的には二つの異なるやり方でハロゲン化アルキルとSN反応を行なうことができる.すなわち,tert-ブチルメチルケトンとヨウ化メチルでは,エノール陰イオンの攻撃位置のみが異なるつぎの反応が考えられる.
」(第496頁「B.エノール陰イオンの関与する親核置換」第1~5行,その下の反応式)
ネ 甲第51号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第51号証には以下の事項が記載されている。
(51a)「したがって,反応性の問題は,関与している分子構造を,頭の中で考え,そして実際に分子模型を用いて検討する.」(序第iii頁第3~5行)
ノ 甲第53号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第53号証には以下の事項が記載されている。
(53a)「分子模型 [moleculer model. model of molecule] 分子内の原子の相対的位置や分子全体の形を理解するために考案された模型である.分子は三次元構造をもっているが,これを二次元の紙面に表すことは困難な場合が多い.そこで種々の分子模型が考案され,配座解析や反応の解明,立体化学の教授などに用いられている.現在広く使われている模型は2種に大別される.すなわち,一つは原子空間的な広がりを無視し,結合距離と原子核の位置を明示したもので,結合に金属,プラスチック,木などの棒を用いている(→玉棒模型).Barton模型.ドライディング(Dreiding)模型*がこれで,立体化学の考察に便利である.他の一つは空間実体模型*であって,各原子の大きさ(ファンデルワールス半径)をもった球を結合させて分子を作る.スチュアート(Stuart)模型*.Fisher模型.CPK模型*などという模型がある.分子の実際の大きさ、形,あるいは反応時の立体障害などを見積もるのに便利である.」(第2103頁左欄「分子模型」の項)
ハ 甲第56号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第56号証には以下の事項が記載されている。
(56a)「Williamsonエーテル合成はアルコキシドイオン求核種によるハロゲン化物イオンの求核置換によって起こるSN2反応(§7・7)である.すなわち,この反応はSN2反応における普通の限界すべてに従っている.競争的に起こるHXのE2脱離は立体障害の大きい基質で起こるので,第一級のハロゲン化アルキルは非常によく反応する.」(第258頁下から第8~5行)
ヒ 乙第2号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である乙第2号証には以下の事項が記載されている。
(2’a)「
」(第140頁Fig.3)
(2’b)「
」(第141頁Fig.6)
(2’c)「当初,OCTの合成を行っていた工程を図5に示した9)。この方法の欠点はアルコール(8)のアルキル化の際に副生成物(9)を生成する点にある。9は次のWacker酸化の際,未反応物として分離されるが,ロスとして痛手であった。この副成物(9)の生成は8の水酸基の立体障害に起因する反応性の低さから生じている。8のアルキル化反応を数十系統の反応で検討した結果,図6に示すようにMichael付加反応-メチル化反応を経由する改良法が効率的であることが判明し,現在はこの方法を採用している12)。しかしこのメチル化反応においても,CeCl3・7H2Oを250℃のオーブンで脱水・無水化して用いており,実験室レベルでは何ら問題はないが,大量合成には不利なことからさらに改良が検討されている。」(第141頁右欄第4行~第142頁左欄第8行)
フ 乙第4号証(甲第38号証)の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である乙第4号証(甲第38号証)には日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人及び被請求人が提出したものによった。
(4’a)「次に、26-水酸化OCT(5及び6)を合成するために、(R)又は(S)-シトラリンゴ酸の両エナンチオマーから調製した完全な官能基導入を完了したブロミド(13)を用いて20(S)アルコール(9)のアルキル化を試みたがうまくいかなかった13。いくつかの反応条件下で試みたが20(S)アルコール(9)の回収とブロミド(13)の分解に終わった。だが、水素化カリウムの存在下で20(S)アルコール(9)とブロマイド(15)14とを反応させたところ、9の回収を基準として収率94%でエーテル(16)が得られた。」(第754頁第12~19行)
(4’b)「
」(第755頁反応式)
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には,以下の構造式3bで示される1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミン-D3(「1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3」とも表記する。)
「
」(摘記1b参照)を製造する方法がその反応式とともに記載されている(摘記1c,1d参照)。そして,この製造方法をその反応式に示された化合物とあわせてみると,甲第1号証には,
「以下の構造式である20(S)アルコール(9)を,
還流キシレン中で,4-ブロモ-1-ブテン及び大過剰の水素化ナトリウムと反応させて,以下の構造式である異性体(11),(12)の混合物を得,
この混合物をPdCl2,CuClと共に,ジメチルホルムアミド及び水中で,酸素雰囲気下,室温で反応させて,以下の構造式であるケトン化合物(13)を得,
このケトン化合物(13)を,テトラヒドロフラン中で,メチルマグネシウムブロマイドと0℃で反応させて,以下の構造式であるプロ-D3誘導体(14)を得,
このプロ-D3誘導体(14)を光照射,熱異性化反応,及び脱保護反応に付して,1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3を得る方法」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(3)対比・判断
(3-1)本件発明13について
ア 対比
甲1発明の「以下の化学式で示される20(S)アルコール(9)
」(以下「ステロイド-20-アルコール」という。)は,
本件発明13の
「下記構造式
(式中、WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造、またはビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)」に相当する。
また,甲1発明の「以下の化学式で示されるプロ-D3誘導体(14)
」(以下「プロ-D3誘導体」という。)は,本件発明13の
「下記の構造を有する化合物
(式中、nは1であり;R1およびR2はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造、またはビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)」に相当する。
そうすると,本件発明13と甲1発明とは,
「下記の構造を有する化合物の製造方法であって:
(式中、nは1であり;R1およびR2はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造、またはビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
(a)下記構造:
(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)を有する化合物を塩基の存在下で下記構造:
E-B
を有する化合物(式中、Eは脱離基である)と反応させて下記構造:
を有する化合物を製造すること;
を含む方法」で一致し,以下の点で相違している。
(1-i)「
」の「A」に対応する部分構造が,
本件発明13では,「下記構造:
(式中、nは1であり;R1およびR2はメチルである)」であるのに対して,
甲1発明では,「-CH2-CH2-CH=CH2」である点
(1-ii)「E-B」の「B」に対応する部分構造が,本件発明13では,
「下記構造:
または
(式中、nは1であり;R1およびR2はメチル)」(以下,前者を「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」という。)であるのに対して,
甲1発明では,
「-CH2-CH2-CH=CH2」である点
(1-iii)本件発明13では,「(b)
(式中、nは1であり;R1およびR2はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造、またはビタミンD構造であり、Zの構造の各々は、1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく、Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)
を有するエポキシド化合物を還元剤で処理して、下記構造式を有する化合物を製造すること;および
(式中、n、R1およびR2、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
(c)かくして製造された化合物を回収すること」を含んでいるのに対して,
甲1発明では,「
を酸素雰囲気下で反応させて,以下の構造式であるケトン化合物を得,
このケトン化合物を,メチルマグネシウムブロマイドと反応させて,下記構造式を有するプロ-D3誘導体を製造すること
」を含んでいる点
イ 相違点の検討
(ア)相違点の整理
相違点(1-i),相違点(1-ii)について検討すると,相違点(1-ii)における「E-B」の「B」構造を,
「-CH2-CH2-CH=CH2」から,「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」にすることによって,
相違点(1-i)における「A」も,必然的に,「-CH2-CH2-CH=CH2」から,「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」になる。
そうすると,甲1発明において,相違点(1-ii)の構成が満たされることで,必然的に相違点(1-i)の構成も満たされることになるので,以下,相違点(1-ii)と相違点(1-iii)について検討する。
(イ)相違点(1-ii)について
a 動機付けについて
甲第1号証に,「デヒドロエピアンドロステロンから・・・一連の反応によって、1α-ヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(3a)[1α-OH-22-オキサ-D3]及び1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(3b)[1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3]を合成した。」と記載されている(摘記1a参照)ように,甲1発明は,デヒドロエピアンドロステロンから合成する2つのビタミンD3誘導体の1つである1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3の新規な合成方法において,その中間体であるステロイド-20-アルコールから1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3を得るまでの工程として記載されたものである。
本件発明13と甲1発明とは,ステロイド-20-アルコール(9)を出発化合物として,最終化合物である1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3又はその前駆体であるプロ-D3誘導体(14)を得る方法である点で目的が共通するといえるものの,甲1発明は,上記のとおり,1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3の新規な合成方法として記載されたものであって,この合成方法に何らかの課題があることは甲第1号証に記載されていないし,途中段階で得られる中間化合物も異なるものである。
また,甲第1号証には,2つのビタミンD3誘導体のもう1つである1α-OH-22-オキサ-D3(3a)の製造方法の一工程として,ステロイド-20-アルコール(9)と1-ブロモ-3-メチルブタンとが反応して化合物(10)が生成することが記載される(摘記1c参照)一方,化合物(10)の生成とは対照的に,1-ブロモ-3,3-エチレンジオキシブタンとステロイド-20-アルコール(9)とのアルキル化反応が失敗したこと(摘記1c参照),その点に関して注釈10)に,1α,3β-ビス(テトラヒドロピラニルオキシ)-5-アンドロステン-17β-オールを,1-クロロ-4,4-エチレンジオキシペンタンとアルキル化反応させると所望のエーテル化合物が好収率で得られたことと,失敗の原因が前者と比べて1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンが嵩高いからであるかもしれないことが記載されている(摘記1e参照)。そして,甲第1号証のステロイド-20-アルコール(9)と1-ブロモ-3-メチルブタンや1-ブロモ-ブテンとの反応がWilliamson合成反応と呼ばれるSN2反応の一種であり(摘記3a,56a参照),この反応は立体障害の大きいハロゲン化物を用いると反応しにくくなることは当業者の技術常識といえる(摘記56a参照)から,1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンが嵩高いので反応が失敗したのは,その立体障害が大きいためと理解できる。
ところで,上記注釈10)の1α,3β-ビス(テトラヒドロピラニルオキシ)-5-アンドロステン-17β-オールはステロイド環の17位に直接水酸基が置換している構造であって,ステロイド-20-アルコールとは異なり,1-クロロ-4,4-エチレンジオキシペンタンとアルキル化反応させることで,甲1発明の22位に酸素原子がある22-オキサ誘導体ではなく,20位に酸素原子がある20-オキサ誘導体(摘記2’a参照)が生じるから,1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンを用いた反応の比較対象は1-クロロ-4,4-エチレンジオキシペンタンを用いた反応ではない。
そうすると,甲第1号証の注釈10)の記載は,ステロイド-20-アルコール(9)と1-ブロモ-3-メチルブタンとが反応して化合物(10)が生成するのとは対照的に,1-ブロモ-3,3-エチレンジオキシブタンとステロイド-20-アルコール(9)とのアルキル化反応が失敗した原因は,同じ1-ブロモ-ブタン構造の3位にメチル基が置換した1-ブロモ-3-メチルブタンに比べて,3位にエチレンジオキシ基が置換した1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンが嵩高いことが理由として推測されていると理解するのが自然である。
そして,甲1発明は,ステロイド-20-アルコールと4-ブロモ-1-ブテン(Br-CH2-CH2-CH=CH2)とを反応させるものであるが,4-ブロモ-1-ブテンの嵩高さは3位にメチル基が存在しないことから,1-ブロモ-3-メチルブタンよりもさらに小さいものといえ,甲第2号証に記載される1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンの構造が1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンより嵩高さが小さいとしても,4-ブロモ-1-ブテンに代えて,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンを使用する動機付けがあるといえない。
さらにいえば,甲第1号証において,ステロイド-20-アルコールと1-ブロモ-3,3-エチレンジオキシブタンとの反応を試みたのは,甲第1号証にこの反応が失敗したことの記載に続いて,「しかし、所望の25-ケト誘導体(13)は以下の2段階手法によって得られた」と記載されるように(摘記1c参照),甲1発明の中間化合物であるケトン化合物(13)を得ることを目的としたものであることは明らかで,このことは,エチレンジオキシ基(ケトアセタール構造)がカルボニル基の保護基であること(摘記45a,45b参照),また,ステロイド-20-アルコールと1-クロロ-4,4-エチレンジオキシペンタンと反応させてからケトン化合物を合成する方法が甲第23号証に記載されている(摘記23c参照)ことからも裏付けられる。そうすると,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンを使用すればこのケトン化合物(13)は得られなくなるから,反応が失敗した1-ブロモ-3,3-エチレンジオキシブタンに代える化合物を探索するとの観点でみても,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンを使用する動機付けがあるといえない。
一方,甲第2号証には,本件発明1の「2,3-エポキシ-3-メチル-ブチル基」を有する試薬に当たる「1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタン」とアルコール類との反応が,アルカリ金属アルコキシドを用いて反応が進行し,その結果,エポキシエーテルが好収率で得られることが記載されている(摘記2b参照)。
ところで,甲第2号証には,アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとの反応が記載されてはいるが,これは,エポキシ環がそのままの形で求核試薬と反応することがまれな場合にしか観察されず(摘記2a参照),この点で興味深い反応とされている(摘記2b参照)ものであって,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンを用いたアルコールとアルキル化反応が,その他の試薬に比べてどのような利点があるかについて記載されているわけではないし,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンが,4-ブロモ-1-ブテンよりも嵩高さが小さい点(むしろ,ブタン構造の2位と3位にエポキシ環構造を有するので嵩高さが大きくなるものといえる。)についても何ら示唆するところがない。
なお,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンが,甲第1号証において反応が進行しなかった1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンと対比すると,前者は環構造は小さくなってはいるものの3位に置換していた環構造が,反応する炭素原子の隣の2位と3位を含む環構造となっている点で,必ずしも立体障害が小さくなるとはいえないし,いずれにしても,甲1発明は,4-ブロモ-1-ブテンを使用するものであるから,嵩高さが小さいアルキル化反応の試薬を使用するとの観点から,甲1発明の4-ブロモ-1-ブテンに代えて,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンを使用する理由が甲第2号証に記載されているとはいえない。
次に,嵩高さが小さいアルキル化反応の試薬を使用するとの観点以外の動機付けについても検討する。甲第1号証に甲1発明の課題は具体的に記載されていないが,乙第2号証には,図5に甲1発明の製造方法が記載され(摘記2’b参照),この方法の欠点は出発物質であるアルコールのアルキル化の際に副生成物を生成する点にあり,この副生成物の生成は出発物質であるアルコールの水酸基の立体障害に起因する反応性の低さから生じることが記載されている(摘記2’c参照)ことから,甲1発明には,副生物が生じないようにして,収率の改善するという動機付けが一応当業者にはあったということはできる。
ところで,甲第2号証には,上述のように,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとアルコール類との反応でエポキシエーテルが好収率で得られること,得られたエポキシエーテルがアルコール性アルカリと還流したときでさえも反応しないこと,すなわち,反応生成物が分解しないので収率が向上することは理解できるといえるものの,1-ブロモ-4-ブテンとアルコールとの反応と対比して収率が向上することが記載されているわけではない。
また,甲第2号証のアルコール類として記載があるのは,「ROH」の「R」が「CH3」,「C2H5」,「C3H7」,「i-C3H7」,「CH2C6H5」,「CH2=C(CH3)CH2CH2-」,「C6H5」,
「
」であって,ステロイド-20-アルコールのような大きな置換基を有するアルコールと,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンが実際に反応することについては記載されていない。
そうすると,収率改善の観点からみても,甲1発明の4-ブロモ-1-ブテンに代えて,甲第2号証に記載される1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンを使用する動機付けがあるとすることはできない。
b 甲1発明への甲第2号証に記載された反応の適用について
上記aで述べたとおり,甲1発明の4-ブロモ-1-ブテンに代えて,甲第2号証に記載される1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンを使用する動機付けが甲第1,2号証の記載から導くことができるとはいえないが,甲1発明に甲第2号証に記載されるアルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとの反応を適用すること,すなわち,ステロイド-20-アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとが実際に反応することを当業者が容易に想到し得ることであったかについても検討する。
甲第2号証に記載された1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンが実際に反応しているアルコール類としては,上記aで述べたように,ステロイド-20-アルコールのような大きな置換基を有するアルコールは記載されていないし,ステロイド-20-アルコールと実際に反応することは,その他の証拠の記載を参酌しても当業者が理解できるとはいえない。以下詳述する。
ステロイド-20-アルコールが,1-ブロモ-3-メチルブタン(摘記1c参照),1-クロロ-4,4-エチレンジオキシペンタン,1-ブロモ-5,5-エチレンジオキシペンタン(摘記23a~23c参照),4-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-3-メチル-2-ブテン-1-ブロミドなどと反応することが甲第1号証,甲第23号証,甲第36~38号証に記載されているものの,甲第1号証のステロイド-20-アルコールと1-クロロ-3,3-エチレンオキシペンタンとが反応しなかったとの記載(摘記1b参照)や甲第38号証(乙第4号証)のステロイド-20-アルコールと臭化物
「
」が反応しなかったとの記載(摘記4’a,4’b参照)からすれば,アルコールと反応するアルキル化試薬において環構造の置換基を持つ場合,置換基の大きさのみならず,環構造の位置もその立体障害の大きさに影響し,反応する炭素原子に近いと反応が進行しないことがあることが理解できる。
そうすると,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンは,環構造は,反応しなかったとされる1-クロロ-3,3-エチレンオキシペンタンなどより小さいが,反応する炭素原子の隣の2位と3位を含む環構造となっているから,1-クロロ-3,3-エチレンオキシペンタンより環構造が小さくなったからといって当然に反応するとはいえない。
次に,甲第39~43号証には,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンのSN2反応について記載されているのでこれについて検討する。
甲第39号証には,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンがシアノアセトフェノンやα-シアノシクロヘキサノンのナトリウム誘導体と反応することが記載されている(摘記39a参照)が,これはエノール陰イオンが生成してハロゲン化物と反応するもので(摘記50a参照),反応する炭素原子が二重結合で隣の炭素原子と結合し,立体構造も電子の状態もステロイド-20-アルコールとは異なるものであるから,この記載からステロイド-20-アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンと反応することを理解できるものではない。
さらに,甲第41号証は,甲第2号証を引用して1-ブロモ-3-メチル-2,3-エポキシブタンがアルコールと反応することの記載がある(摘記41a参照)が,それ以外に甲第40~43号証に記載されている1-ブロモ-3-メチル-2,3-エポキシブタンの反応は,反応する対象がそもそもアルコールではない(摘記40a,41b,42a,43a参照)。甲第39号証~甲第43号証に記載された反応は,SN2反応である点で,甲第2号証に記載されるアルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとの反応と共通するところはあるが,反応対象の化合物が異なれば,当然反応性も異なるし,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンが立体障害が大きいアルコール以外の化合物と反応したからといって,これらの記載から1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとステロイド-20-アルコールのような大きな置換基を有するアルコールとが反応することを理解できるとはいえない。
一方,甲第48号証には,tert-ブトキシドイオンのように立体障害のあるアルコキシドイオンのように強くて分極率の小さい塩基を使用すると置換反応(SN2反応)よりも脱離反応(E2反応)の可能性が増える傾向にあることが記載されており(摘記48a,48b参照),このことからすれば,アルコールの水酸基が置換している炭素原子にステロイド環のような大きな置換基を有する立体障害の大きいステロイド-20-アルコールが必ずしも甲第2号証に具体的に記載された上記アルコール類と同じように反応するとはいえず,甲第2号証にアルコール類と1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとが好収率で反応するとの記載があったとしても,甲1発明のステロイド-20-アルコールでも1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンと実際に反応すると直ちに理解できるとはいえない。
さらに,甲第47号証は,請求人代理人が作成した報告書で,1-ブロモ-メチル-2,3-エポキシブタンとステロイド-20-アルコールとが反応するかについて分子模型を使用して考察したものであるが,作成時期は本件優先日後のものであって,本件優先日前に実際に当業者がこのような反応が生じることを当業者が理解できたことを示すものではない。そして,本件優先日前に,反応性の問題を実際に分子模型で検討すること,立体障害の大きさを見積もることが当業者の技術常識であった(摘記51a,摘記53a参照)としても,そのことは,分子模型での反応性の検討のみで実際に反応が進行することが判明することを意味しない。甲第47号証には,分子模型を用いて,甲第2号証で実際に反応しているイソブタノールと20-ステロイド-アルコールとは反応点の炭素原子に置換する置換基の1つがメチル基かステロイド環の違いであること,両者が相互に特定の配置となった場合に,1-ブロモ-メチル-2,3-エポキシブタンとステロイド-20-アルコールとがその反応点において接近し得ることを示してはいるが,置換基の1つがメチルかステロイド環で異なれば,置換基の大きさの違いから立体障害も異なると解するのが自然であるし,仮に,立体構造からみて両者が反応する可能性は理解できるとしても,実際の分子は常に動いているのであるから,固定された構造を前提とした分子模型のとおりに必ず反応することを意味するものではない。この反応が実際に進行するかは,適切な反応条件を選定して確認する必要があることは当然であり,そのような反応条件の試行錯誤を含めて1-ブロモ-メチル-2,3-エポキシブタンとステロイド-20-アルコールとが反応することについて,本件優先日前に当業者が容易になし得たとする根拠は認められない。
その他に,甲第25号証にも甲第2号証と同様にメトキシドナトリウムと1-ブロモ-2,3-エトキシブタンとの反応が記載されているが,これもステロイド-20-アルコールのような大きい置換基を持つアルコールとの反応を示唆するものではない。
その他の証拠もみると,甲第26~30号証には,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとステロイド-20-アルコールとの反応について記載されているが,いずれも本件優先日後に頒布された刊行物であるから,本件優先日前にステロイド-20-アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンが反応することが知られていたとはいえない。
なお,これ以外の証拠には,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンそのものについて記載がない。
以上のとおり,実際にステロイド-20-アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとが反応することについて,本件優先日前に当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)相違点(1-ii)と相違点(1-iii)を一体の相違点とした場合について
上述のとおり,甲1発明において,まず,相違点(1-ii)を構成することが容易であるということはできないが,相違点(1-iii)は,相違点(1-ii)によって本件発明13と甲1発明で得られる中間化合物がそれぞれ異なることにより,その中間化合物から目的とする化合物を得る工程が異なるものともいえる。
したがって,相違点(1-ii)と相違点(1-iii)を一体の相違点として捉え,甲1発明の相違点(1-ii)に係るステロイド-20-アルコールから側鎖に二重結合を有するエーテル化合物を製造する工程と,相違点(1-iii)に係る当該エーテル化合物からケトン化合物を得,このケトン化合物をメチルマグネシウムブロマイドと反応させてプロ-D3誘導体を製造する工程を,本件発明13の相違点(1-ii)に係るステロイド-20-アルコールから側鎖にエポキシドを有するエーテル化合物を得る反応工程と相違点(1-iii)に係る当該エポキシド化合物を還元してアルコールを製造する工程に置き換えることが容易であるかを,さらに検討する。
相違点(1-ii),(1-iii)に対応する本件発明13の中間化合物であるエポキシ化合物を還元することについては,本件優先日前に頒布されたいずれの証拠にも記載されていない。すなわち,甲第4~6号証,甲第16号証,甲18~20号証には,ステロイド構造の側鎖にエーテル結合がない(22-オキサ誘導体でない)化合物の側鎖のエポキシ環を還元剤で処理して開環する反応が記載されている(摘記4a,4b,5a,6a,6b,16a,16b,18a,19a,20a参照)だけであって,これは本件発明13の中間化合物である以下に示されるエポキシ化合物
「
(式中、nは1であり;R1およびR2はメチルであり;WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;YはOであり;そしてZは、ステロイド環構造)」ではない。また,甲第32,38号証には,ステロイド構造の22位がエーテルとなり,24,25位にエポキシ環を有する化合物を還元して開環する反応が記載されている(摘記32a参照)が,25位に置換するメチル基の一方がヒドロキシメチル基となっているので,これも本件発明13の中間化合物である上記エポキシ化合物ではない。
そうすると,本件発明13の上記エポキシ化合物そのものの開示すらなく,これを甲1発明のプロ-D3誘導体を得るための中間化合物とすることについては,本件優先日前に頒布されたいずれの証拠にも具体的な示唆があるとはいえない。仮に,上記甲第4~6号証,甲第16号証,甲18~20号証,甲第32号証に記載されるエポキシ化合物の構造が,本件発明13のエポキシ化合物に類似していることから,甲1発明のプロ-D3誘導体を得るための中間化合物となり得ることを当業者が一応想起し得るとしても,そのような中間化合物を得る動機付けがあるといえないことは上記(イ)で述べたとおりである。
次に,甲第2号証には,アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとが塩基の存在下で反応が進行することに加えて,それらの中で4-ブトキシ-2-メチル-2,3-エポキシブタンをリチウム・アルミニウム・ハイドライドで還元して4-ブトキシ-2-メチル-2-ブタノールを得ることが記載され(摘記2c参照),この反応は本件発明13の得られたエポキシド化合物を還元剤で処理してアルコール化合物を製造する反応に対応するものといえる。
しかしながら,甲第2号証には,これらの一連の反応工程が,甲1発明のような二重結合を有するエーテル化合物を得る工程,その後のケトン化合物(13)を得,さらにメチルマグネシウムブロマイドと反応させてプロ-D3誘導体とする工程と置換できることを示唆する記載はない。
そして,上記(イ)bで述べたとおり,相違点(1-ii)に対応するステロイド-20-アルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとが反応することが当業者に容易に想到し得たといえない上に,上述のとおり,本件優先日前に頒布されたいずれの証拠にも,両者を反応させて得る本件発明13のエポキシ化合物そのものの開示すらなく,甲1発明のプロ-D3誘導体を得るための中間化合物とすることを示唆する記載もないことも考慮すれば,甲第2号証にアルコールと1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンと反応させ,得られたエポキシ化合物を還元する反応が記載されていたとしても,甲1発明の相違点(1-ii)及び相違点(1-iii)に対応する構成に置き換えて適用することが当業者にとって容易になし得たということはできない。
また,収率改善の観点からみて,相違点(1-ii)と相違点(1-iii)を一体の相違点とした場合には,1-ブロモ-3メチル-2,3-エトキシブタンとアルコールとの反応が好収率というだけではなく,その後の還元剤による反応も含めて全体として収率が高いことが必要になる。反応する対象化合物がステロイド-20-アルコールではない点で単純な比較はできないが,甲第2号証の収率についての記載をみると,甲第2号証の1-ブロモ-3-メチル-2,3-エポキシブタンとブタノールを反応させて,得られた4-ブトキシ-2-メチル-2,3-エポキシブタンを還元して4-ブトキシ-2-メチル-2-ブタノールを得る反応の収率は前者が59.5%で後者が52.4%であり,全工程の収率は31.2%となる。一方,甲1発明においては,ステロイド-20-アルコールからケトン化合物(13)を収率44%で得た後,メチルマグネシウムブロマイドと反応させてプロ-D3-誘導体を収率79%で得ており,全工程で35%の収率となっており,全体として甲第2号証に記載される方法が必ずしも収率を改善することを示唆しているともいえない。
(エ)相違点の検討のまとめ
以上のとおりであるから,甲1発明において,甲第2号証及び本件優先日時の周知技術や技術常識に基いて,相違点(1-ii)及び相違点(1-iii)を構成することが容易になし得たとは認められない。
ウ 本件発明1の効果
上述のとおり,本件発明13は,当業者が容易になし得たものということができないが,念のため,本件発明1の効果についても検討する。
本件発明1の効果は,本件特許明細書の「本発明はさらに、以下の式VIの構造を有する化合物の製造方法であって:
(式中、nは1~5の整数であり;R1およびR2は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR3であり、ここでR3は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、
,
,・・・
であり・・・
(a)下記構造:
式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で以下の式Vまたは式V’:
(式中、n、R1およびR2は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
の構造を有する化合物と反応させて式I:
を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法を提供する。」(ただし,化学式の番号は省略した。)との記載(訂正明細書第19頁第2行~第20頁第8行,ただし化学式は除いて数える。以下同様に数える。)からみて,本件発明13に係る新たな製造方法を提供することにあるものと認める。
そして,上記イで検討したとおり,本件発明13に係る構成とすることを当業者が容易に想到し得なかったものであるから,本件発明13の効果も同様に当業者が予測し得なかったものと認められる。
エ 請求人の主張について
(ア)甲1発明の認定について
請求人は,甲第1号証には,上記(2)で示した甲1発明ではなく,
「所定の出発物質ステロイド-20-アルコール(9)を用い,SN2反応を経由してマキサカルシトール(1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3)を製造する方法」を引用発明として認定すべきとして,平成18年(行ケ)第10316号,平成12年(行ケ)404号の判示事項を引用して主張する(第2回上申書第4頁第17行~第6頁第7行,口頭審理陳述要領書第5頁第15~20行)。
しかしながら,甲第1号証には,SN2反応との文言は一切記載されていないし,上記イ(イ)で述べたように, 甲第1号証には,デヒドロエピアンドロステロンから合成する2つのビタミンD3誘導体の1つである1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3の新規な合成方法において,その中間体であるステロイド-20-アルコールから1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3を得るまでの工程としては,甲1発明以外に記載されていない。そして,甲1号証に記載されるステロイド-20-アルコールと1-ブロモ-4-ブテンとを塩基存在下で反応させる工程は確かにSN2反応ではある(摘記3a,56a参照)が,それ以外のSN2反応を経由してステロイド-20-アルコールから1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3を得る方法は記載されておらず,上記反応工程をSN2反応全般に一般化した技術思想として捉えることができるわけではないから,甲第1号証に,請求人が主張するような「ステロイド-20-アルコール(9)を用い,SN2反応を経由してマキサカルシトール(1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3)を製造する方法」が記載されているとは認められない。
また,請求人が引用する参考判決は,本件とは別の事件であって,本件における引用発明の認定においてその判示事項に拘束されるものではないが,念のため検討する。
まず,平成18年(行ケ)第10316号は,引用例に記載されていた物の製造方法が記載されておらず製造することが困難であるから,その物を引用発明とするのは適格性を欠くとの原告の主張に対して,「「頒布された刊行物に記載された発明」というためには,特許出願当時の技術水準を基礎として,当業者が当該刊行物を見たときに,特許請求の範囲の記載により特定される特許発明等の内容との対比に必要な限度において,その技術的思想を実施し得る程度に技術的思想の内容が開示されていることが必要であり,かつ,それで足りると解するのが相当である」と判示したものである。
次に,平成12年(行ケ)404号も,引用刊行物に記載されている「気道過敏系モルモットを作製する方法」について,その具体的な条件が確立したものとして記載されていないから,引用発明とできないとの原告の主張に対して,「本願発明の進歩性を検討するに当たって引用刊行物について考慮すべきことは,同刊行物に接した当業者が,そこに記載された事項を契機として本願発明に容易に想到し得たかどうかである。したがって,引用刊行物に,それを出発点として本願発明に向かうだけのものが開示されている限り,「気道過敏系モルモットを作製する方法」の具体的条件が確立したものとして記載されていないからといって,それだけで,同刊行物に,「気道過敏系モルモットを作製する方法」が記載されていないことになるわけではない。」と判示したものである。
そうすると,これらの判示事項は,請求人が主張するように刊行物に記載されてもおらず,実施できるともいない技術事項を含むように一般化した技術思想として引用発明を認定することを許容するものではない。
よって,請求人の主張は採用できない。
(イ)本件発明13と甲第1号証に記載された発明との対比について
請求人は,相違点として化合物の部分構造を抽出し,その前提として一致点も中間化合物の部分構造レベルで認定しているが,一つの化合物を部分構造に分けて特定するなどということはなく,相違点(1-i)は相違点(1-ii)に吸収されることになると主張する(第2回上申書第6頁第19行~第7頁第6行,口頭審理陳述要領書第8頁第10行~第2行)。
また,「相違点を正しく認定することができるものであるならば,相違点に係る両技術に共通する部分を抽象化して一致点とすることは許され」るとの平成14年(行ケ)第546号の判示事項を踏まえれば,本件発明13と甲第1号証に記載された発明とは,以下のように一致点と相違点を認定すべきであると主張する(審判事件弁駁書第6頁第7行~第7頁第19行,第9頁第20行~第10頁第14行,第2回上申書第7頁第7行~第8頁第18行,口頭審理陳述要領書第5頁第21行~第6頁第8行)。
(一致点)
所定の出発物質ステロイド-20-アルコール(9)を用い,SN2反応を経由してマキサカルシトール(1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3)を製造する方法
(相違点1)
本件発明13では,上記所定の出発物質と,1-ブロモ-3-メチル-2,3-エポキシブタンを包含するエポキシ化合物とをアルキル化反応させて所定のエポキシ化合物を得るのに対して,甲第1号証ではこの点について記載がないこと
(相違点2)
本件発明13では,所定のエポキシド化合物を還元剤で処理してエポキシ環を開環させているのに対して,甲第1号証ではこの点について記載がないこと
(相違点3)
本件発明13では,製造された化合物を回収するのに対して,甲第1号証ではこの点について記載がないこと
まず,相違点として化合物を部分構造レベルで相違点(1-i)と相違点(1-ii)に分けて特定した点については,本件発明13の発明特定事項が化学構造式として記載されている以上,これに沿って一致点,相違点を抽出するには,当該化合物の化学構造式のどの部分構造が一致し,どの部分構造で異なるのかを特定せざるを得ないからであって,相違点として化合物を部分構造レベルで特定したとしても,認定そのものに誤りがあるわけではないから,請求人の主張は採用できない。また,上記イ(ア)で述べたとおり,相違点(1-i)は相違点(1-ii)の構成を採用することで必然的に満たされる構成であり,相違点(1-ii)の容易想到性を検討することで相違点(1-i)の容易想到性をも検討しているのであるから,相違点(1-i)と相違点(1-ii)を別の相違点としても何ら問題はないといえる。
次に,請求人が主張する一致点,相違点の認定は,上記(ア)で述べたとおり,誤った甲第1号証に記載された発明の認定に基づくものであるから,引用した判決の判示事項の「相違点を正しく認定することができるものであるならば」との前提を満たすものではなく,請求人が主張する本件発明13との一致点,相違点の認定は誤りであるといわざるを得ない。なお,請求人が主張する相違点の「甲第1号証ではこの点について記載がないこと」との表現については,発明の対比として適切ではないが,「甲1発明ではこの点が特定されていないこと」の意味に善解した。
(ウ)相違点(1-ii)と相違点(1-iii)との関係について
請求人は,本件発明13が反応工程の順番という経時的要素で構成される発明であるから,まず,相違点(1-i),(1-ii)に係る相違点を検討し,それが容易想到ということになれば,相違点(1-iii)の容易想到性の検討は,相違点(1-i),(1-ii)の容易想到性を前提に判断すべきであると主張するとともに,これらは1つの相違点として判断すべきと主張している(第2回上申書第8頁第18行~第10頁第1行,第22頁第17行~第25頁第1行,口頭審理陳述要領書第9頁第2~11行)。
上記イ(ウ)で述べたとおり,相違点(1-iii)は,相違点(1-ii)によって本件発明13と甲1発明で得られる中間化合物がそれぞれ異なることにより,中間化合物から目的とする化合物を得る工程が異なるものになるといえるので,相違点(1-ii)(相違点(1-i)も含む)と相違点(1-iii)を一体の相違点として捉えて判断すべきという点については理由があるものといえる。
しかしながら,相違点(1-ii)と相違点(1-iii)を一体の相違点として捉えて検討する際には,相違点(1-ii)の構成が容易であれば,それを前提として相違点(1-iii)を判断するのではなく,上記イ(ウ)で述べたとおり,甲1発明の相違点(1-ii)に係る工程と相違点(1-iii)に係る工程を,本件発明13の相違点(1-ii)に係る工程と相違点(1-iii)に係る工程に全体として置き換えることが容易であるかを判断すべきである。
そして,請求人の主張のとおり,相違点(1-ii)について判断しても上記イ(イ)で述べたとおり容易であるとはいえず,また,相違点(1-ii)と相違点(1-iii)に係る工程を一体の相違点として判断しても容易とはいえないことは上記イ(ウ)で示したとおりである。
よって,請求人の主張は採用できない。
(エ)動機付けについて
a 甲第1号証の記載について
請求人は,甲第1号証の注釈10)の「この研究の失敗は、前者と比べて1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンが嵩高いからであるかもしれない」との記載は,1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンの対比されている対象が1-クロロ-4,4-エチレンジオキシブタンであるとし,1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンよりも嵩高さを小さくすればステロイド-20-アルコールとのアルキル化反応が良好に進むことが示唆され,これに示唆に当てはまる1-ブロモ(クロロ)-3-メチル-2,3-エトキシブタンを用いる動機付けがあると主張している(審判事件弁駁書第11頁第2行~第12頁第2行,第19頁第17行~第24頁第6行,第2回上申書第19頁下から第5行~第21頁第14行,口頭審理陳述要領書第21頁第18行~第22頁第12行)。
また,甲第1号証には,4-ブロモ-1-ブテンとステロイド-20-アルコールとが反応すると副生物が生じること,副生物を生じさせないため4-ブロモ-1-ブテンの二重結合を排除した別の化合物と反応させるためには,性質の近い置換基であるエポキシ(摘記34a,34b参照)であり,SN2反応で安定化を大きくするにはπ結合が反応する炭素原子の隣になければならず(摘記33a参照),当業者であれば,SN2反応を安定化する2,3位にエポキシ基が設けられた1-ブロモ(クロロ)-3-メチル-2,3-エトキシブタンを用いる動機付けがあると主張している(第2回上申書第17頁下から第6行~第19頁下から第6行,口頭審理陳述要領書第9頁第26行~第10頁第16行)。
上記イ(イ)aで述べたとおり,1-ブロモ-3-メチルブタンに比べて,1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンが嵩高いことがステロイド-20-アルコールとの反応の失敗の原因と理解するのが自然であり,また,甲第1号証には1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンが嵩高くステロイド-20-アルコールと反応しないとされているだけで,それよりも嵩高くなければ反応するとは記載されていない。
そして,甲1発明の4-ブロモ-1ブテンよりも1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンが嵩高が小さくなるとはいえないから,嵩高さの観点で動機付けがあるといえないし,仮に1-ハロ-3,3-エチレンジオキシブタンに置き換える化合物との観点で考慮しても,目的とする中間化合物(ケトン化合物)とはならない1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンを使用する動機付けがないことは上記イ(イ)aで述べたとおりである。
次に,4-ブロモ-1-ブテンとステロイド-20-アルコールとが反応すると副生物が生じることは請求人の主張のとおりであるが,二重結合をエポキシ基に置き換えれば,その後得られる中間化合物も異なったものになるから,単に二重結合とエポキシとの性質が似ていることを理由に置き換える動機付けがあるわけではない。また,甲第34号証の1,2には,オキシラン(エポキシ構造)がアルケニル構造(二重結合構造)とは紫外線吸収スペクトルに対して類似の効果を有することや電子の混成状態が似ていることが記載されている(摘記34a,34b参照)のみで,4-ブロモ-1-ブテンと1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンが同じに反応できることを示すものではない。
さらに,甲第33号証には,SN2反応で安定化を大きくするにはπ結合が反応する炭素原子の隣になければならないとの記載はある(摘記33a参照)が,この記載を甲1発明に適用すれば,4-ブロモ-1-ブテンの二重結合を2,3位に移すことになり,甲1発明における副生物(化合物(12))を得るものとなってしまうし,さらに,π結合は二重結合やベンゼン環の炭素間の結合であって,このπ結合を有する化合物としてエポキシ化合物が対象となることは記載されていない。
したがって,4-ブロモ-1-ブテンの二重結合をエポキシ基に換えることも,その二重結合を2,3位に置き換えることも動機付けがないのであるから,4-ブロモ-1-ブテンの二重結合をエポキシ基に換えた上で,さらに,そのエポキシ基を2,3位に移して,1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンとすることに動機付けがあったということはできない。
なお,甲第29号証には,「エポキシブロマイド12(1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタン)は、その嵩高さや、エポキシ基の機能についてのsp2状の性質を考慮すれば、プレニルブロミドと立体的にも電子的にも似ているので、我々は、該試薬が2級のアルコール4に反応し、エポキシーエーテル13を製造できることを容易に想到することができた。」と記載されているが(摘記29c参照),そもそも甲第29号証は本件優先日後に頒布されたものであって,本件優先日前にこのようなことを容易に想到し得たとはいえないし,1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンの比較対象は,プレニルブロミド(1-ブロモ-2,3-ブテン)であって,これは上述のように甲1発明における副生物を生成するものであるから,少なくとも,4-ブロモ-1-ブテンを1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンに置き換える動機付けとはならない。甲1発明において,最終的な目的化合物である25位に水酸基を有する化合物を得ようとするのであれば,甲第29号証に記載されるよう(摘記29a,29b参照)に,実際に反応はしなかったが,1-ブロモ-3-メチル-3-OTES(TESはテトラエチルシリケート)-ブタンのように,25位となる炭素原子の水酸基が保護されたアルキル化のための試薬とステロイド-20-アルコールを反応させ,保護基を外して水酸基とする反応を試みることが,むしろ自然であったといえる。
b 甲第2号証の記載について
請求人は,甲第2号証に記載されるアルコールと1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンは還流条件という厳しい反応条件でもエポキシドの開環が起こらずにアルキル化が進行するが,甲1発明においても還流キシレン中でNaH存在下でSN2反応させる厳しい反応条件が採用されているから,厳しい反応条件で反応が進行する点においても甲1発明に組み合わせる動機付けがあると主張している(審判事件弁駁書第12頁第3~14行,口頭審理陳述要領書第10頁第16~23行)。
上記イ(イ)bで述べたように,1-ブロモ(又はクロロ)-3-メチル-2,3-エポキシブタンとアルコール類との反応でエポキシエーテルが好収率で反応し,得られたエポキシエーテルがアルコール性アルカリと還流した厳しい条件でさえもエポキシ環の開環が起きないとの甲第2号証の記載は,反応生成物が分解しないので収率が高い反応であると理解できるといえるものの,1-ブロモ-4-ブテンとアルコールとの反応と対比して収率が向上することが記載されているわけではないし,甲1発明の4-ブロモ-1-ブテンに代えて,1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンを用いれば得られる中間化合物も異なるわけであるから,単に,甲1発明と甲第2号証に記載される反応条件が類似することのみで,甲1発明の4-ブロモ-1-ブテンに代えて,1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンを使用する理由があるとはいえない。
(オ)甲1発明への甲第2号証に記載された反応の適用について
請求人は,甲第2号証の1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンとアルコール類とが反応するとの記載から,甲第2号証に具体的に記載された以外のアルコールにも適用できるという示唆があること,ステロイド-20-アルコールと1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンとが反応することが,及び本件優先日時点の技術常識(甲第1号証,甲第23号証,甲第36号証,甲第39~41号証,甲第47~55号証)から当業者が容易に想到することであると主張している(審判事件弁駁書第26頁下から第2行~第27頁第23行,第2回上申書第25頁下から第3行~第34頁末行,口頭審理陳述要領書第28頁第20行~第34頁下から第3行,第3回上申書11頁第23行~第20頁第7行)。
上記イ(ウ)で述べたとおり,ステロイド-20-アルコールと1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンと反応することは甲第2号証にも,そのほかのいずれの証拠にも記載されていないし,甲第2号証などの1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンがステロイド-20-アルコールと異なる各種アルコールと反応するとの記載,SN2反応に関する技術常識,その他の1-ブロモ-3-メチル-2,3-エトキシブタンがアルコール以外の化合物と反応するとの記載から,当業者が容易に想到し得たとはいえない。
オ 本件発明13のまとめ
以上のとおり,本件発明13は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における周知技術に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3-2)本件発明14~28について
ア 本件発明14~24,26,27は,上記「第3」で示したとおり,本件発明13の構成をさらに限定したものであるから,本件発明14~24,26,27も本件発明13と同様に,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における周知技術に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明25,28について
甲第13号証には,テトラヒドロフラン中で,エポキシド化合物をLiBH4などの還元剤で反応させる方法が記載されているものであって,相違点(1-ii)に関する構成について何ら示唆するものではない。
そうすると,甲第13号証の記載を考慮しても,本件発明25,28も,本件発明13の構成をさらに限定したものである以上,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例),甲第2号証及び甲第13号証に記載された発明並びに本件優先日における周知技術に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)小括
以上のとおりであるから,本件発明13~24,26,27は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例)及び甲第2号証に記載された発明並びに本件優先日における周知技術に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また,本件発明25,28は,本件出願(優先日)前に頒布された甲第1号証(主引用例),甲第2号証及び甲第13号証に記載された発明並びに本件優先日における周知技術に基いて,本件出願(優先日)前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 無効理由2について
(1)特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項は,「第三項第四号の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し,その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は,明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって,特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下,この観点に立って検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
上記「第3」に記載したとおりである。
(3)発明の詳細な説明の記載
訂正後の本件特許明細書の発明の詳細な説明に,以下の事項が記載されている。
(a)「1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(OCT)、即ち、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の22-オキサアナログ体は、強力なインビトロ分化誘導活性を有する一方、低いインビボカルシウム上昇作用(calcemicliability)を有する。OCTは、続発性上皮小体機能亢進症および幹癬の治療の候補として臨床的に試験されている。
日本特許公開公報平成6-072994(1994年3月15日発行)は、22-オキサコレカルシフェロール誘導体およびその製造方法を開示している。この公報は、20位に水酸基を有するプレグネン誘導体をジアルキルアクリルアミド化合物と反応させてエーテル化合物を得て、次いで得られたエーテル化合物を有機金属化合物と反応させて所望の化合物を得ることを含む、オキサコレカルシフェロール誘導体の製造方法を開示している。
日本特許公開公報平成6-080626号(1994年3月22日発行)は、22-オキサビタミンD誘導体を開示している。この公報はまた、出発物質としての1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-プレグネ-5,7-ジエン-20(S又はR)-オールを塩基の存在下でエポキシドと反応させて20位からエーテル結合を有する化合物を得ることを含む方法を開示している。
さらに、日本特許公開公報平成6-256300号(1994年9月13日発行)およびKubodera他(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,4(5):753-756,1994)は、1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-プレグナ-5,7-ジエン-20(S)-オールを4-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-3-メチル-2-ブテン-1-ブロミドと反応させてエーテル化合物を得て、それを脱保護し、そして脱保護されたエーテル化合物をシャープレス酸化することを含む、エポキシ化合物を立体特異的に製造する方法を開示している。しかし、上記方法は、ステロイド基の側鎖にエーテル結合およびエポキシ基を導入するのに1工程より多くの工程を必要とし、従って所望の化合物の収率が低くなる。
さらに、上記文献のいずれにも、アルコール化合物を末端に脱離基を有するエポキシ炭化水素化合物と反応させて、それによりエーテル結合を形成する合成方法は開示されていない。また、上記文献には、側鎖にエーテル結合およびエポキシ基を有するビシクロ[4.3.0]ノナン構造(本明細書中以下においてCD環構造と称する)、ステロイド構造またはビタミンD構造は開示されていない。」(訂正明細書第15頁第19行~第16頁第13行)
(b)「本発明はさらに、以下の式VIの構造を有する化合物の製造方法であって:
(式中、nは1~5の整数であり;R1およびR2は各々独立に、所望により置換されたC1-C6アルキルであり;WおよびXは各々独立に水素またはC1-C6アルキルであり;YはO、SまたはNR3であり、ここでR3は水素、C1-C6アルキルまたは保護基であり;そしてZは、
,
,または
,
であり、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシルであり;そしてR6およびR7は各々独立に水素、置換または未置換の低級アルキルオキシ、アミノ、アルキル、アルキリデン、カルボニル、オキソ、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルであるか、または一緒になって二重結合を形成する);
(a)以下の式IV:
(式中、W、X、YおよびZは上記定義の通りである)
を有する化合物を塩基の存在下で以下の式Vまたは式V':
(式中、n、R1およびR2は上記定義の通りであり、そしてEは脱離基である)
の構造を有する化合物と反応させて式I:
の構造を有するエポキシド化合物を製造すること;
(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して式VIの化合物を製造すること;および
(c)かくして製造された化合物を回収すること;
を含む方法を提供する。」(訂正明細書第19頁第2行~第20頁第8行(なお,化学式の番号は省略して記載してある。)
(c)「本発明に関するCD環構造、ステロイド構造およびビタミンD構造は各々、特には下記する構造を意味し、これらの環は何れも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい。ステロイド構造においては、1個または2個の不飽和結合を有するものが好ましく、5-エンステロイド化合物、5,7-ジエンステロイド化合物、またはそれらの保護された化合物が特に好ましい。
・・・
・・・
CD構造、ステロイド構造、またはビタミンD構造であるZ上の置換基は特に限定されず、水酸基、置換または未置換の低級アルキルオキシ基、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアルキリデン基、カルボニル基およびオキソ基(=O)などを例示することができ、水酸基が好ましい。これらの置換基は保護されていてもよい。」(訂正明細書第26頁第4行~第27頁第5行)
(d)「本発明による式Iで表される化合物の最も好ましい例は、上記式II AおよびII Bで表される。
式Iの化合物の製造について本明細書に開示した反応の概略を以下の反応図Aに示す。
本発明による上記方法で出発化合物として使用される化合物の幾つかは、公知化合物である。例えば、「Y」がOである場合、以下のものを出発化合物として使用することができる:日本特許公開公報昭和61-267550号(1986年11月27日発行)に記載された1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-プレグナ-5,7-ジエン-20(S)-オール;日本特許公開公報昭和61-267550号(1986年11月27日発行)および国際特許公開公報WO90-09991(1990年9月7日)およびWO90/09992(1990年9月7日)に記載された所望により水酸基が保護されている9,10-セコ-5,7,10(19)-プレグナトリエン-1α,3β,20β-トリオール;J.Org.Chem.,57,3173(1992)に記載されたオクタヒドロ-4-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-7-メチル-1H-インデン-1-オール;並びにJ.Am.Chem.Soc.,104,2945(1982)に記載されたオクタヒドロ-4-(アセチルオキシ)-7-メチル-1H-インデン-1-オール。」(訂正明細書第29頁下から第4行~第30頁第10行)
(e)「本発明による上記反応(図A)は、塩基の存在下で実施される。使用できる塩基の例としては、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ金属アルコキシドが挙げられ、アルカリ金属水素化物が好ましく、水素化ナトリウムが特に好ましい。
反応は好ましく不活性溶媒中で実施される。使用できる溶媒の例としては、エーテル系溶媒、飽和脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、およびそれらの組み合わせを挙げることができ、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、およびDMFとジエチルエーテルの混合物が好ましく、ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフランがより好ましい。
反応温度は適切に調節することができ、一般的には25℃から溶媒の還流温度、好ましくは40℃から65℃の範囲内である。
反応時間は適切に調節することができ、一般的には1時間から30時間、好ましくは2時間から5時間の範囲内である。反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)で監視することができる。」(訂正明細書第31頁第2~14行)
(f)「本発明は、本明細書中上記した新規な中間体を経てビタミンDまたはステロイド誘導体を製造する方法に関する。この反応の概略を以下の反応図Bに示す。
本発明による上記2工程の反応の工程(1)の反応は、本明細書中に既に記載した反応図Aの方法と同様に実施できる。
工程(2)の反応は工程(1)で得られたエポキシ化合物中のエポキシ環を開環する反応であり、これは還元剤を使用して実施される。工程(2)で使用できる還元剤は、工程(1)で得られたエポキシ化合物の環を開環して水酸基を生成できるもの、好ましくは第3アルコールを選択的に形成できるものである。
還元剤の例を下記に列挙する:
・・・
還元剤の特に好ましい例を下記に列挙する:
リチウムトリエチルボロハイドライド[LiEt3BH、スーパーハイドライド];
リチウムトリ-sec-ブチルボロハイドライド[Li(s-Bu)3BH、L-セレクトライド);
リチウム9-BBNハイドライド:
例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL-H)などの好適な還元剤を選択することによってビタミンD化合物の24位に水酸基を有する化合物を優先的に得ることもできる。
工程(2)の反応は好ましく不活性溶媒中で実施される。使用できる溶媒の例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ベンゼンおよびトルエンが挙げられ、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランが好ましい。
工程(2)の反応温度は適切に調節することができ、一般的には10℃から100℃、好ましくは室温から65℃の範囲内である。
工程(2)の反応時間は適切に調節することができ、一般的には30分から10時間、好ましくは1時間から5時間の範囲内である。反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)で監視することができる。」(訂正明細書第39頁第5行~第41頁第20行)
(g)「以下の反応図Cは、本発明の化合物および方法を使用する反応経路を示す。対応するステロイド化合物からのビタミンD化合物の合成方法は、紫外線照射および熱異性化などの慣用的方法によって実施できる。対応するCD環化合物からのビタミンD化合物の合成方法もまた慣用的である。そのような方法は、例えば、E.G.Baggiolini他、J.Am.Chem.Soc,104,2945-2948(1982)およびWovkulich他、Tetrahedron,40,2283(1984)に記載されている。反応図Cに示した方法の一部または全部は本発明の範囲内であるものと理解すべきである。
(式中、W、X、Y、O、R1およびR2は上記定義と同一であり、構造の環は何れも1または2個の不飽和結合を所望により有していてもよい)」(訂正明細書第42頁第7行~第43頁第2行)
(h)「実施例2:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-2,3-エポキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5,7-ジエンの合成
氷水浴で冷却した20mlのDMF/ジエチルエーテル(1:1)の溶液中のアルコール化合物3(0.5g、0.89mmol)の激しく撹拌した溶液に、アルゴン下で水素化ナトリウム(60%オイル分散物、0.2g、5.0mmol)を添加した。一定の1:1DMF/ジエチルエーテル混合物を維持するために(蒸発のため)30分後に追加のジエチルエーテル(~5ml)を添加した。1時間撹拌した後、反応混合物を室温まで暖め、強流のアルゴンを激しく撹拌した反応混合物上に吹き付け、ジエチルエーテルを除去した。ジエチルエーテルの除去後、アルゴン流を低レベルまで減少させ、実施例1で得た化合物2(1.5g、8.9mmol)を一度に添加した。反応混合物を50~55℃の間に加熱した。30分後、さらに1gの化合物2を添加した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は1時間後に反応の終結を示した。反応混合物を飽和NaCl水溶液に注入し、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水MgSO4で乾燥した。溶媒を濃縮した後、ヘキサン:酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより0.58g(90%)の標題化合物(化合物4)が無色のオイルとして得られた(ジアステレオマーの混合物)。」(訂正明細書第50頁第2~15行)
(i)「実施例3:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(R)-(2,3-エポキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンの合成
アルコール化合物5(5.0g、8.88mmol)、4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(2.2g、13.32mmol)、次いで水素化ナトリウム(乾燥95%、561mg、22.2mmol)を100mlの丸底ナス型フラスコに加えた。次いでTHF(20ml)をそれに添加した。反応を還流下で2時間行った。反応混合物を冷却後、反応を飽和NH4Cl水溶液の添加により停止した。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層をMgSO4で乾燥して濃縮した。n-ヘキサン/酢酸エチル(20:1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる単離および精製により、5.5g(95.7%)の標題化合物(化合物6)を白色粉末として得た。」(訂正明細書第50頁下から第2行~第51頁第7行)
(j)「実施例4:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5,7-ジエンの合成
20mLの乾燥ジエチルエーテル中のエポキシステロイド化合物4(実施例2で得たもの、200mg、0.3mmol)の撹拌溶液に、アルゴン下で室温でリチウムアルミニウム水素化物(LiAlH4、22mg、3.0mmol)を添加した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は数時間後に出発物質(化合物4)の完全かつ明白な転換を示した。反応混合物を100mLの酢酸エチル/飽和NaCl水溶液(1:1)の間で分画した。有機層を分離し、無水MgSO4で乾燥した。濃縮およびヘキサン/酢酸エチル(9:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより582mg(90%)の標題化合物(化合物7)が無色固体として得られた。」(訂正明細書第51頁第14行~第51頁末行)
(k)「実施例5:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンのワンポット合成
容器にアルコール化合物8(0.5g、0.89mmol)、水素化ナトリウム(60%オイル分散物、71.2mg、1.78mmol)、THF(3ml)および4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(220mg、1.34mmol)を順番に添加した。混合物を50~60℃の反応温度で4時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、混合物を精製することなく、1.8ml(1.8mmol)のLi(s-Bu)3BH(L-セレクトライド、THF中1.0M溶液)を添加し、反応を室温で2時間行った。反応を飽和NH4Cl水溶液の添加により停止した。有機層を飽和NaHCO3水溶液、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄し、有機層を無水MgSO4で乾燥した。有機層の濃縮およびn-ヘキサン/酢酸エチル(8:1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により537mg(93%)の標題化合物(化合物9)が得られた。」(訂正明細書第52頁第7~17行)
(l)「実施例6:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(S)-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンのワンポット合成
容器に水素化ナトリウム(アッセイ95%、179.5g、7.10mol)、THF(8L)、アルコール化合物8(2kg、3.55mol)次いで4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(762g、4.62mol)を順番に添加した。反応を還流下で3時間行った。反応混合物を室温まで冷却した後、Li(s-Bu)3BH(L-セレクトライド、9.9L、8.88mol)をこれに添加し、反応を還流下で3時間行った。次いで、3NのNaOH水溶液および35%の過酸化水素水溶液を反応混合物に順番に添加し、反応を室温で2時間行った。この反応混合物をNa2S2O3水溶液に注入し、反応を1時間行った。反応混合物を飽和NaHCO3水溶液、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄した。洗浄後、有機層を濃縮し、メタノールから再結晶して標題化合物(2.16kg、収率93.7%)が得られた。」(訂正明細書第52頁下から第2行~第53頁第9行)
(m)「実施例7:1α,3β-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-20(R)-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)プレグナ-5-エンのワンポット合成
アルコール化合物5(25g、44.4mmol)、水素化ナトリウム(2.24g)、4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(9.5g)、次いでTHF(100ml)をナス型フラスコに添加し、混合物を2.5時間還流した。混合物を冷却した後、L-セレクトライド(THF中1.0M溶液、100ml)をこれに添加し、反応を還流下で2時間行った。反応混合物を冷却した後、3NのNaOH水溶液(50ml)をこれに徐々に添加し、次いで35%のH2O2溶液(150ml)を徐々に滴加した。添加後、混合物を1時間撹拌した。次いで20%Na2S2O3水溶液(100ml)を添加し、混合物を1時間撹拌した。
混合物の分離後、有機層を飽和NaCl水溶液(100mlで3回)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。MgSO4を濾去し、有機層を減圧下で濃縮した。アセトニトリル(300ml)をこれに添加した。混合物を還流し、次いで室温まで冷却し、結晶化させた。得られた結晶を濾過し、乾燥して25.0g(86.7%)の標題化合物(化合物10)を白色結晶として得た。」(訂正明細書第53頁第10~22行)
(n)「実施例8-21:エポキシ化合物と各種還元剤との反応の試験
実施例5と同様に、アルコール化合物8(0.5g、0.89mmol)、水素化ナトリウム(60%オイル分散物、71.2mg、1.78mmol)、THF(3ml)および4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタン(220mg、1.34mmol)を順番に容器に添加した。混合物を50~60℃の反応温度で4時間撹拌した。反応を飽和NaCl水溶液の添加により停止した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を無水MgSO4で乾燥した。有機層の濃縮およびn-ヘキサン/酢酸エチル(20:1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により化合物8'が得られた。
次いで、試験用の各還元剤を、上記で得たエポキシ化合物(化合物8')(100mg、0.155mmol)を充填した容器に添加し、反応を以下の表1に記載した条件下で行った。反応混合物を後処理した後、生成物への転換率(%)および25-ヒドロキシ化合物(化合物9、最終生成物)および24-ヒドロキシ化合物(化合物11、副生物)の生成比を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
得られた結果を表1に示す。
a)所望化合物(化合物9):副生物(化合物11)の生成比
b)HPLCにより測定
c)所望化合物9が約5%の収率で産生し、副生化合物11も僅かに産生した。
d)副生化合物11が28.3%の収率で産生し、所望化合物9は産生しなかった。2種類の他の未知物質が産生した。
e)副生化合物11は42%の収率で産生し、所望化合物9は産生しなかった。他の未知物質が31.2%の収率で産生した。
f)シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる単離および精製後に、得られた化合物が所望化合物9であることをNMR測定により確認した。
注:r.t.は室温を意味する。」(訂正明細書第54頁第2行~第56頁第6行)
(4)本件発明13~28の課題
本件特許明細書の発明の詳細な説明には,発明の背景として,「1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(OCT)」が「続発性上皮小体機能亢進症および幹癬の治療の候補として臨床的に試験されている。」と記載され,先行技術として,22-オキサコレカルシフェロール誘導体や22-オキサビタミンD誘導体の製造方法及び,1α,3β-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-プレグナ-5,7-ジエン-20(S)-オールを4-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-3-メチル-2-ブテン-1-ブロミドと反応させてエーテル化合物を製造する方法が紹介された後,「上記文献のいずれにも、アルコール化合物を末端に脱離基を有するエポキシ炭化水素化合物と反応させて、それによりエーテル結合を形成する合成方法は開示されていない。」と記載されている(摘記a参照)。
そして,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,そのような先行技術に対して「本発明」の概要として,本件発明14に対応する製造方法を提供することが記載される(摘記b参照)とともに,Zに関して,「本発明に関するCD環構造、ステロイド構造およびビタミンD構造は各々、特には下記する構造を意味し」として,本件発明13のZのステロイド構造,ビタミンD構造に対応する構造式が示されるとともに,「これらの環は何れも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい」こと,「Z上の置換基は特に限定されず・・・置換基は保護されていてもよい」ことが記載されている(摘記c参照)ことからすれば,Zは本件発明14に係る構造のみではなく,本件発明13に対応する「Z」を対象とした場合も含まれていると解することができる。
このような発明の詳細な説明の記載からみて,本件発明13及びこれを引用する14~28は,従来のビタミンD誘導体の製造方法とは別に,20-アルコールから「1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(OCT)」を製造するまでの工程を含む本件発明13~28に係る製造方法を提供することを目的としてなされたものと解するのが自然である。
したがって,本件発明13~28が解決しようとする課題は,本件発明13~28に係る製造方法を提供することにあるものと認める。
(5)判断
本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件発明13において,
「
」(出発化合物)のZがステロイド環構造である化合物3あるいは化合物5を4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタンで反応させて,本件発明13の
「
」(中間化合物)のZが同じテロイド環である化合物4あるいは化合物6のエポキシド化合物を製造する方法(摘記h,i参照)と,得られた化合物4を還元剤で還元して,本件発明13の
「
」(製造化合物)のZが同じステロイド環である化合物7が製造されることが記載されている(摘記j参照)。
また,本件発明13において,Zがステロイド環である化合物5あるいは化合物8を4-ブロモ-2,3-エポキシ-2-メチルブタンで反応させた後,ワンポット反応で還元剤で還元して,Zが同じステロイド環である化合物10あるいは化合物9を製造する方法が記載されている(摘記k,l,m,n参照)。
さらに,発明の詳細な説明には,本件発明13の一般式での表記に対応する反応工程と反応条件が記載されている(摘記d,e,f参照)が,出発化合物のZと製造化合物のZは,明らかに,Zの構造を変化させる反応工程を含まないものである。発明の詳細な説明の反応図C(摘記g参照)には,出発化合物,中間化合物,製造化合物のいずれかの段階においてZの構造をステロイド環構造からビタミンD構造へ変換する工程(横方向の矢印で示される工程)をも含まれているが,本件発明13は,中間化合物であるエポキシ化合物を還元剤で還元して製造化合物としているから,出発化合物から中間化合物を経て製造化合物を得る反応工程において,このようなZの構造を変換する工程は含まれておらず,出発化合物とする前や製造化合物を得た後に,Zをステロイド環からビタミンD構造に変換する工程を含むか否かはさておき,本件発明13の出発化合物と製造化合物のZは同じ構造のものと解するのが自然である。
そうすると,本件発明13において,出発化合物と製造化合物の「Z」が異なる場合は含まれていないから,発明の詳細な説明において,出発化合物と製造化合物の「Z」が異なる場合の本件発明13が記載されていないことが,本件発明13の製造方法を提供するという課題が解決できない理由とはならない。
また,本件発明13を直接又は間接的に引用する本件発明14~28も,同様に,出発化合物と製造化合物の「Z」は同じ構造のものと解するのが自然であるから,同様に,出発化合物と製造化合物の「Z」が異なる場合の本件発明14~28が記載されていないことが,本件発明14~28の製造方法を提供するという課題が解決できない理由とはならない。
(6)請求人の主張
ア 本件発明13~28の課題について
請求人は,本件発明13~28が解決しようとする課題は,本件の特許侵害訴訟(平成25年(ワ)第4040号)の判決において,「マキサカルシトール(1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(OCT))を含む本件発明の目的物質を製造する工程の短縮」と認定されたことから,このように認定すべきと主張し,上記(3)で示した本件発明13~28の課題については,認定の根拠とした先行技術文献の記載は,甲第2号証を示さなかった点で先行技術開示の信義則に違反がある(甲第25~31号証)とともに,その記載内容が事実に反していること(甲第32号証),また,解決しようとする手段をもって課題を導き出す手法は論理的に妥当でなく,解決しようとする課題が解決手段と同じであるのは誤りであると主張している(第2回上申書第10頁第2行~第16頁第14行)。
まず,本件の特許侵害訴訟事件で認定した本件発明13~28の課題のとおりに,本件無効審判事件でも同じに判断しなければならない法的根拠はない。
発明の詳細な説明には,先行技術として日本特許公開公報平成6-256300号(1994年9月13日発行)およびKubodera他(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,4(5):753-756,1994)が記載され,「ステロイド基の側鎖にエーテル結合およびエポキシ基を導入するのに1工程より多くの工程を必要とし、従って所望の化合物の収率が低くなる。」との記載されている(摘記a参照)ことから,この先行技術には「工程の短縮」との課題があると解されるが,発明の詳細な説明に記載される先行技術は上記文献に限られていないし,上記文献は,「マキサカルシトール(1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(OCT))」ではなく,26-ヒドロキシ-22-オキサビタミンD誘導体(OCTの25位に置換するメチル基の1つがヒドロキシメチル基に置き換えられたもの)を製造するもの(摘記32a参照)なので,上記文献を先行技術としても,「マキサカルシトール(1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(OCT))を含む本件発明の目的物質を製造する工程の短縮」が本件発明13~28の解決しようとする課題であるとはいえない。
参考までにいえば,本件特許の別件無効審判事件(無効2013-800080号)においては,本件発明の課題を上記(4)のとおり認定し,知財高裁でもその判断は支持されている(平成26年(行ケ)10263号参照)。
次に,被請求人は先行技術開示の信義則に違反するとしているが,何を先行技術として認識し,記載するかは出願人の判断であって,甲第25~30号証には,本件特許の発明者が著者となっている論文に,甲第2号証が引用されているとしても,これらはいずれも本件出願日後に発行された論文であって,本件特許出願時に被請求人が甲第2号証を先行技術として認識していたことの明確な証拠となるものではなく,また,甲第2号証はビタミンD誘導体の合成方法とは無関係であるから,これを記載しなかったことが先行技術文献の開示の信義則に違反しているとはいえない。
次に,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,「日本特許公開公報平成6-256300号(甲第32号証)は,ステロイド-20-アルコールを4-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)-3-メチル-2-ブテン-1-ブロミドと反応させてエーテル化合物を得・・・エーテル化合物をシャープレス酸化することを含む,エポキシ化合物を立体特異的に製造する方法を開示していること」が記載され(摘記a参照),この構造が側鎖にエーテル結合およびエポキシ基を有するステロイド構造となるので,「上記文献には、側鎖にエーテル結合およびエポキシ基を有するビシクロ[4.3.0]ノナン構造(本明細書中以下においてCD環構造と称する)、ステロイド構造またはビタミンD構造は開示されていない。」との記載(摘記a参照)と整合しないことは請求人の主張のとおりである。
しかしながら,その前段の「上記文献のいずれにも、アルコール化合物を末端に脱離基を有するエポキシ炭化水素化合物と反応させて、それによりエーテル結合を形成する合成方法は開示されていない。」との記載及び上記の先行技術である日本特許公開公報平成6-256300号は,得られている化合物が1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(OCT)を得るための化合物ではないこと(摘記32a参照)からすれば,少なくとも,20-アルコールとエポキシ基を有する側鎖導入試薬を反応させて側鎖を形成して,1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3を最終目的物とする本件発明13~28のような合成方法が記載されていないことは理解できる。
そうすると,発明の詳細な説明には,本件発明13~28に対する先行技術として,従来のビタミンD誘導体の様々な製造方法が記載され(摘記a参照),それらの先行技術に代わる20-アルコールから「1α,25-ジヒドロキシ-22-オキサビタミンD3(OCT)」を製造するまでの工程を含む本件発明13~28に係る製造方法を新たに提供することを本件発明が解決しようとする課題として記載されていると解するのが自然といえる。
また,請求人は解決しようとする手段をもって課題を導き出す手法は論理的に妥当でないと主張しているが,上記(5)で述べたとおり,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からすれば,本件発明13~28を提供することが本件発明13~28が解決すべき課題となるのであるから,結果としても解決すべき手段が解決すべき課題と一致するとしてもその課題の認定が妥当でない理由とはならない。
よって,請求人の主張は採用できない。
イ 本件発明13における「Z」の構造について
請求人は,本件発明13において,出発化合物と製造化合物の「Z」は同一符号が用いられているとしても,「Z」はステロイド環構造もビタミンD構造も選択できるように記載されていること,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,出発化合物と製造化合物で「Z」が異なる記載例もあること(摘記g参照)から,本件発明13には両者の「Z」が異なる場合を含み,そのような態様は発明の詳細な説明に記載されていないと主張する(審判事件弁駁書第34頁第6行~第37頁第22行,第2回上申書)。
しかしながら,上記(5)で述べたように,本件発明13において,出発化合物と製造化合物の「Z」が異なる場合は含まれていないことは明らかといえる。
よって,請求人の主張は採用できない。
(7)小括
以上のとおりであるから,請求人が主張する無効理由2によっては,本件発明13~28の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものではないとはいえず,本件発明13~28の特許が特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり,請求人が示した理由及び証拠によっては,本件発明13~28の特許を無効とすることはできない。
審判費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
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2015-800057