特許異議申立
2022-701204
錠付き収納装置
- 審判番号
- 2022-701204
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-165592
- 登録番号
- 7080485
- 請求日
- 2022年12月05日
- 審決日
- 2023年09月07日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ユニオン
- 【権利者代理人】辻本 希世士
- 【権利者代理人】丸山 英之
- 【異議申立人】飯田 圭亮
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 佐藤 史彬
- 審判官 有家 秀郎
- 分類
- P1651.113-YAA(E05C) / P1651.121-YAA(E05C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7080485号発明「錠付き収納装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7080485号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第7080485号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
特許第7080485号の請求項2ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7080485号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成30年9月5日に出願され、令和4年5月27日にその特許権の設定登録がされ、同年6月6日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許について、令和4年12月5日に、特許異議申立人 飯田 圭亮(以下「申立人」という。)により、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は以下のとおりである。
令和5年3月20日付け:取消理由通知
同年5月23日: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年6月23日付け:申立人への訂正請求があった旨の通知
なお、令和5年5月23日になされた訂正請求について、申立人に対して訂正請求があった旨の通知をし、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、期間内に応答はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨と訂正の内容
令和5年5月23日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7080485号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記錠が、
前記扉に固設される錠基部と、
少なくとも一端側に前記係合部を有し前記錠基部に挿通され前記摘み部が固設された錠軸部と、
前記錠軸部に一端側が固設され他端側が前記錠軸部から離れるように付勢される付勢部材と、
前記錠基部に前記付勢部材の他端側と係脱可能な複数の窪み部を備えることを特徴とする請求項1に記載の錠付き収納装置。」
と記載されているのを、
「内部に種々の物品を収納する収納部本体と、
前記収納部本体の枠部とは所定の隙間を空け、前記収納部本体の開口部を覆う扉と、
前記収納部本体と前記扉を枢支する枢支部と、
前記枠部と前記扉の隙間に露出する摘み部及び前記摘み部と連動し前記枠部の被係合部と係合する係合部を有する錠を備え、
前記錠が、
前記扉に固設される錠基部と、
少なくとも一端側に前記係合部を有し前記錠基部に挿通され前記摘み部が固設された錠軸部と、
前記錠軸部に一端側が固設され他端側が前記錠軸部から離れるように付勢される付勢部材と、
前記錠基部に前記付勢部材の他端側と係脱可能な複数の窪み部を備えることを特徴とする錠付き収納装置。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3、4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記係合部が棒状であり、前記被係合部が溝又は孔であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の錠付き収納装置。」
と記載されているのを、
「前記係合部が棒状であり、前記被係合部が溝又は孔であることを特徴とする請求項2に記載の錠付き収納装置。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(4)一群の請求項
本件訂正前の請求項2~4は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~4に対応する本件訂正後の請求項1~4は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項2について、請求項1との引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であるから、引用関係の解消を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正事項1によって請求項1が削除されたことに伴い、請求項3が引用する請求項を「請求項1又は請求項2」から「請求項2」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、引用関係の解消を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
3 小括
本件においては、訂正前の請求項1~4について特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~4に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号又は4号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、令和5年5月23日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
内部に種々の物品を収納する収納部本体と、
前記収納部本体の枠部とは所定の隙間を空け、前記収納部本体の開口部を覆う扉と、
前記収納部本体と前記扉を枢支する枢支部と、
前記枠部と前記扉の隙間に露出する摘み部及び前記摘み部と連動し前記枠部の被係合部と係合する係合部を有する錠を備え、
前記錠が、
前記扉に固設される錠基部と、
少なくとも一端側に前記係合部を有し前記錠基部に挿通され前記摘み部が固設された錠軸部と、
前記錠軸部に一端側が固設され他端側が前記錠軸部から離れるように付勢される付勢部材と、
前記錠基部に前記付勢部材の他端側と係脱可能な複数の窪み部を備えることを特徴とする錠付き収納装置。
【請求項3】
前記係合部が棒状であり、前記被係合部が溝又は孔であることを特徴とする請求項2に記載の錠付き収納装置。
【請求項4】
前記錠軸部の少なくとも一端側に前記係合部を嵌合する嵌合部を有することを特徴とする請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の錠付き収納装置。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由通知で通知した取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、本件訂正前の本件特許の請求項1~4に係る発明に対して、証拠として甲第1号証~甲第5号証を提出し、次の特許異議申立理由を申し立てている。(以下、甲第1号証等を、それぞれ「甲1」等という。)
(1)本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明である。
(2)本件訂正前の請求項2及び3に係る発明は、甲1に記載された発明、及び、周知技術(甲2、甲3)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件訂正前の請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明、甲4記載事項、及び、周知技術(甲2、甲3)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明、周知技術(甲2、甲3)、及び、甲5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(証拠一覧)
甲1:特開2013-87551号公報
甲2:実願昭46-60342号(実開昭48-18428号公報)のマイクロフィルム
甲3:実公昭51-18227号公報
甲4:特開2000-160905号公報
甲5:特開2005-232927号公報
2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1及び3に係る特許に対して、当審が令和5年3月20日付けの取消理由通知により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び、周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)本件特許の請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明、周知技術、及び引用文献2に記載された周知技術1に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(引用文献等一覧)
引用文献1:特開2013-87551号公報(甲1)
引用文献2:実公昭51-18227号公報(甲3)
第5 当審の判断
本件訂正により、請求項1に係る発明は削除されたため、当審が取消理由通知で通知した請求項1に対する取消理由は、対象とする請求項が存在しないものとなった。
また、本件訂正により、請求項3は、取消理由の対象となっていない請求項2を引用する請求項となったため、本件訂正後の請求項3に係る特許は、当審が取消理由通知で通知した取消理由によっては取り消すことができない。
そこで、以下では取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(上記第4の1(2)~(4))について検討する。
なお、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由のうち、上記第4の1(1)の理由については、本件訂正により請求項1は削除されたため、対象とする請求項が存在しないものとなった。
1 甲号証について
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1には次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【0001】
この発明は、室内壁等に形成された開口部を開閉する扉体の施解錠装置に関する。
【0002】
複数の壁パネルを同一面上に配置する取付けによって平坦な室内壁を形成し、その室内壁の一部に設備点検口のような開口部を設け、その開口部を扉体によって開閉する場合、普通、その扉体に扉錠と開閉操作用のハンドルとを取付け、その扉錠の解錠後、ハンドル操作によって扉体を開放することが行われる。」
(イ)「【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、室内壁Wを形成する壁パネル1間に開口枠11を設け、その開口枠11の開口12を開閉する扉体13の施解錠装置を示し、上記開口枠11の表面は壁パネル1の表面と同一面を形成している。
【0023】
扉体13は、その一側部の上下に設けられた垂直方向に延びるヒンジ軸14を中心にして開閉自在とされ、その戸先側端部には扉錠21が埋設されている。
【0024】
図2および図3に示すように、扉錠21は、扉体13の戸先側端面内に埋設された錠ケース22を有し、その錠ケース22に設けられた積層板からなるフロントプレート23が扉体13の戸先側端面に衝合され、その戸先側端面にねじ込まれるビスの締め付けによって上下の端部が固定されている。
【0025】
図4に示すように、錠ケース22の内側下部には、受け部材24が設けられている。受け部材24は板体の折曲げにより形成されてフロントプレート23と対向する支持板部25、26を上下に有し、その上側支持板部25とフロントプレート23間にカム軸27が設けられている。
【0026】
図4および図7(a)に示すように、カム軸27は、フロントプレート23および受け部材24の上側支持板部25によって両端部が回転自在に支持されている。カム軸27の一方の端部はフロントプレート23を貫通して閉鎖状態とされた扉体13の戸先側端面と開口枠11の縦枠11aの対向部間に形成される目地 すきま16に臨み、その一端部の外周対向位置に接線方向に延びる一対の溝28が形成されて、その一対の溝28間に係合部29が設けられている。」
(ウ)「【0029】
図4および図6に示すように、錠ケース22の内部には、カム軸27の外周一側方に駆動部材36が組み込まれている。駆動部材36は板体の折曲げにより形成され、その上部に設けられたピン37および下端に設けられたガイド片38のそれぞれが錠ケース22の側板22aに形成された上下方向に長い一対の長孔39にスライド自在に嵌合されて昇降自在の支持とされ、上記カム軸27の外周に形成されたカム突起40の回転によって昇降動されるようになっている。
【0030】
カム軸27の回転により駆動部材36を昇降動させるため、ここでは、図6に示すように、駆動部材36のカム軸27と対向する面に水平方向に延びる一対の突出部41、42を上下に設け、その一対の突出部41、42間にカム突起40の先端部を配置し、そのカム突起40が上側突出部41を押圧する作用によって駆動部材36を上昇させ、下側突出部42を押圧する作用によって駆動部材36を下降させるようにしている。」
(エ)「【0032】
錠ケース22の内部には、その錠ケース22のフロントプレート23に対するバックプレート側の上下に一対の摺動部材45、46が組み込まれている。図4および図5に示すように、上側摺動部材45は、ロッド連結板部45aの両側に一対の側板部45bを下向きに設けた構成とされ、その側板部45bには両側方に突出する突出部47が設けられ、その突出部47が錠ケース22の側板22aに形成された上下方向に長い長孔48内にスライド自在に嵌合されて、上側摺動部材45が昇降自在の支持とされている。」
(オ)「【0034】
図4に示すように、駆動部材36とこれに並列配置された上側摺動部材45の相互間には、駆動部材36の昇降動により上側摺動部材45を駆動部材36と同方向に昇降動させる連動機構51が設けられている。」
(カ)「【0042】
上側摺動部材45におけるロッド連結板部45aには上部ロッド70の下端部が連結され、一方、下側摺動部材46におけるロッド連結板部46aには下部ロッド71の上端部が連結されている。
【0043】
図2および図3に示すように、上部ロッド70の上端部には係合片部70aが設けられ、その係合片部70aは扉体13の上面から出没自在とされ、突出時には開口枠11の上枠11bに設けられた受枠72の回転可能なローラ73に係合して、扉体13を閉鎖位置でロックするようになっている。」
(キ)図1は次のものである。
「
[図:0001404782000001.jpg]
」
(ク)図1より、「ヒンジ軸14」は「開口枠11」と「扉体13」を枢支していることが看取される。
イ 甲1に記載された発明
上記アからみて、甲1には、次の発明(以下、甲1発明という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「設備点検口のような開口部が形成され、開口部を開閉する施解錠装置のついた扉体を有する室内壁であって、
室内壁には開口枠が設けられており、
扉体は、その一側部の上下に設けられた垂直方向に延びるヒンジ軸を中心にして開閉自在とされ、その戸先側端部には扉錠が埋設されており、
ヒンジ軸は開口枠と扉体を枢支しており、
扉錠は、扉体の戸先側端面内に埋設された錠ケースを有し、その錠ケースに設けられた積層板からなるフロントプレートが扉体の戸先側端面に衝合され、その戸先側端面にねじ込まれるビスの締め付けによって上下の端部が固定されており、
錠ケースの内側下部には、受け部材が設けられており、
受け部材は板体の折曲げにより形成されてフロントプレートと対向する支持板部を上下に有し、その上側支持板部とフロントプレート間にカム軸が設けられており、
カム軸は、フロントプレートおよび受け部材の上側支持板部によって両端部が回転自在に支持されており、
カム軸の一方の端部はフロントプレートを貫通して閉鎖状態とされた扉体の戸先側端面と開口枠の縦枠の対向部間に形成される目地すきまに臨み、
錠ケースの内部には、カム軸の外周一側方に駆動部材が組み込まれており、
駆動部材は板体の折曲げにより形成され、その上部に設けられたピンおよび下端に設けられたガイド片のそれぞれが錠ケースの側板に形成された上下方向に長い一対の長孔にスライド自在に嵌合されて昇降自在の支持とされ、上記カム軸の外周に形成されたカム突起の回転によって昇降動されるようになっており、
錠ケースの内部には、その錠ケースのフロントプレートに対するバックプレート側の上下に一対の摺動部材が組み込まれており、
上側摺動部材は、ロッド連結板部の両側に一対の側板部を下向きに設けた構成とされ、その側板部には両側方に突出する突出部が設けられ、その突出部が錠ケースの側板に形成された上下方向に長い長孔内にスライド自在に嵌合されて、上側摺動部材が昇降自在の支持とされており、
駆動部材とこれに並列配置された上側摺動部材の相互間には、駆動部材の昇降動により上側摺動部材を駆動部材と同方向に昇降動させる連動機構が設けられており、
上側摺動部材におけるロッド連結板部には上部ロッドの下端部が連結され、
上部ロッドの上端部には係合片部が設けられ、その係合片部は扉体の上面から出没自在とされ、突出時には開口枠の上枠に設けられた受枠の回転可能なローラに係合して、扉体を閉鎖位置でロックするようになっている、
室内壁。」
2 判断
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「開口枠」、「閉鎖状態とされた扉体の戸先側端面と開口枠の縦枠の対向部間に形成される目地すきま」、「開口部」、「扉体」、「ヒンジ軸」、「カム軸」、「ローラ」、「上部ロッド」、「扉錠」のそれぞれは、本件発明2の「枠部」、「枠部」と「扉」の「隙間」、「開口部」、「扉」、「枢支部」、「摘み部」、「被係合部」、「係合部」、「錠」に相当する。
(イ)本件発明2の「錠付き収納装置」と甲1発明の「室内壁」とは、「錠付きの扉を有する物品」である点で一致する。
(ウ)本件発明2の「収納部本体」と甲1発明の「室内壁」の扉体を除いた部分とは、「扉体によって覆われる開口部を有する物品」である点で一致する。
(エ)甲1発明の「ヒンジ軸」は「開口枠と扉体を枢支して」おり、「開口枠」が「室内壁」に設けられていることから、「ヒンジ軸」は「室内壁」と「扉体」を枢支しているといえるから、本件発明2の「枢支部」が「収納部本体」と「扉」を枢支していることと甲1発明の「ヒンジ軸」が「開口枠と扉体を枢支して」いることとは、「枢支部」が「扉体によって覆われる開口部を有する物品」と「扉」を枢支している点で一致する。
(オ)甲1発明の「駆動部材」が「上記カム軸の外周に形成されたカム突起の回転によって昇降動されるようになっており」、「駆動部材とこれに並列配置された上側摺動部材の相互間には、駆動部材の昇降動により上側摺動部材を駆動部材と同方向に昇降動させる連動機構が設けられて」おり、「上側摺動部材におけるロッド連結板部には上部ロッドの下端部が連結され」ていることより、甲1発明の「上部ロッド」は「カム軸」と連動するといえ、このことは本件発明2の「係合部」が「摘み部」と連動することに相当する。
(カ)そうすると、本件発明2と甲1発明とは、「扉体によって覆われる開口部を有する物品と、扉体によって覆われる開口部を有する物品の枠部とは所定の隙間を空け、扉体によって覆われる開口部を有する物品の開口部を覆う扉と、扉体によって覆われる開口部を有する物品と扉を枢支する枢支部と、枠部と扉の隙間に露出する摘み部及び摘み部と連動し枠部の被係合部と係合する係合部を有する錠を備える錠付きの扉を有する物品。」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
「錠付きの扉を有する物品」が、本件発明2は「錠付き収納装置」であって、「内部に種々の物品を収納する収納部本体」を有しているのに対し、甲1発明は「室内壁」であって、内部に物品を収納する空間を有しているか明らかでない点。
(相違点2)
本件発明2が、
「前記錠が、
前記扉に固設される錠基部と、
少なくとも一端側に前記係合部を有し前記錠基部に挿通され前記摘み部が固設された錠軸部と、
前記錠軸部に一端側が固設され他端側が前記錠軸部から離れるように付勢される付勢部材と、
前記錠基部に前記付勢部材の他端側と係脱可能な複数の窪み部を備える」のに対し、甲1発明の「扉錠」はこのような構成を有しない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2から判断する。
相違点2に係る構成は、甲1発明において、甲1における全ての記載、甲2、及び甲3に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易に想到できたとはいえない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明、及び、周知技術(甲2、甲3)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(2)本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、本件発明2の発明特定事項をすべて備え、さらに発明特定事項を追加して限定したものである。
そして、本件発明2については上記(1)で検討したとおりであるから、本件発明3及び4は、甲1に記載された発明、周知技術(甲2、甲3)、甲4記載事項、及び、甲5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は申立書において、「家具、洋服タンス等の収納装置の扉をロックする錠の技術分野では、甲第2号証や甲第3号証に記載されているように、扉(扉17,扉体A)に固設される錠基部(本体1,筐体1)と、少なくとも一端側に被係合部(小孔,挿入孔5)と係合する係合部を有し前記錠基部に挿通され摘み部(摘子5,つまみ2)が固設された錠軸部(係止杆8,係止杆4)と、前記錠軸部に一端側が固設され他端側が前記錠軸部から離れるように付勢される付勢部材(板バネ6,板ばね3)と、前記錠基部に前記付勢部材の他端側と係脱可能な複数の窪み部(突出部10の平面及び底部,突出部1fの上方段部1k及び下方段部1l)を備える錠が従来周知である(以下、甲2、甲3の周知技術という)。
そして、甲2、甲3の周知技術は、収納装置の扉をロックする錠という点で甲1発明の扉錠(21)と同一の技術分野に属し、また、錠を隠蔽するために扉(扉17,扉体A)の戸先側端面に埋設する点及び扉(扉17,扉体A)の戸先側端面にロック切り替え用の被操作部(摘子5、つまみ2)を配置する点でも甲1発明の扉錠(21)と共通するものであるから、甲1発明の扉錠(21)に代えて甲2、甲3の周知技術を適用することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。」と主張している(申立書21頁17行~22頁6行)。
しかしながら、甲1には、課題を解決するための手段として「【0009】上記の課題を解決するために、この発明においては、開口枠の開口を開閉する揺動可能な扉体の戸先側端部内に扉錠を埋設し、その扉錠が、扉体に埋設された錠ケースと、その錠ケース内に収容されて開口枠と扉体の戸先側端面間に形成される目地すきまに一端部が臨む回転可能なカム軸と、そのカム軸に設けられたカム突起の正逆回転時に、そのカム突起で押されて錠ケースに設けられたフロントプレートの両端方向に往復動される駆動部材と、その駆動部材に並列配置されて、駆動部材と同方向に移動可能な摺動部材と、前記駆動部材の往復動に連動して前記摺動部材を駆動部材と同方向に往復動させる連動機構と、前記摺動部材に一端部が連結され、他端部が扉体の端面から出没自在とされ、突出時に前記開口枠に設けられた受枠に係合して扉体を開口枠側に引き寄せつつ施錠するロッドとからなり、前記カム軸の一端部に、前記目地すきまに対して抜き差し可能な施解錠用操作レバーの先端の二股部が係合可能な角軸状の係合部を設けた構成を採用したのである。」と記載されており、甲1の当該構成と、甲2及び甲3に記載された構成とは、施錠・開錠の機構が大きく異なるから、甲1発明に、甲2、甲3に記載された技術事項を適用する動機付けは見いだせない。また、仮に適用する動機付けがあったとしても、甲1発明において、大きく機構の異なる甲2、甲3に記載の構成を適用しようとする場合、甲1発明の上記構成に対してどのように甲2、甲3の構成を適用し得るのかについては、甲1~甲3の記載を参照してもその示唆はなく、甲1発明に甲2、甲3に記載の技術事項を適用することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
なお、本件訂正がされた本件発明2について、申立人は意見書を提出せず、特段の主張を補充していない。
したがって、申立人の申立書における上記主張について検討しても、本件発明2の進歩性について、上記(1)イと異なる判断をすべき事情はない。 本件発明3及び4の進歩性についても、上記(2)と異なる判断をすべき事情はない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、
本件訂正は適法なものであり、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
また、請求項1に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
さらに、請求項2~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701204