特許異議申立
2022-700376
有価物の回収方法
- 審判番号
- 2022-700376
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-154518
- 登録番号
- 6965420
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2022年12月08日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】DOWAエコシステム株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】廣田 浩一
- 【異議申立人】増田 千夏
- 審判長/審判官
- 審判長 角田 慎治
- 審判官 土居 仁士
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1652.113-YAA(H01M) / P1652.121-YAA(H01M) / P1652.851-YAA(H01M) / P1652.853-YAA(H01M) / P1652.856-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第126条、特許法第120条の5第4項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6965420号発明「有価物の回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6965420号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第6965420号の請求項1、2、7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6965420号の請求項1~12に係る特許についての出願は、令和2年9月15日に出願され、令和3年10月22日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月10日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年4月28日 : 特許異議申立人 増田 千夏(以下「申立人」
という。)による請求項1、2及び7に係る特
許に対する特許異議の申立て
令和4年7月21日付け: 取消理由通知書
令和4年9月 1日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
令和4年9月12日 : 訂正請求書に対する手続補正書の提出(特許権
者)
そして、令和4年9月22日付けの通知書で、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかったものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年9月12日に提出された手続補正書により補正された同年9月1日付けの訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第6965420号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至12について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線部は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「有価物を含む対象物が収容された対象物収容手段を移動させながら前記対象物を熱処理する連続炉を用いて、熱処理のための火炎が前記対象物収容手段に当たらないようにして、前記対象物を熱処理する熱処理工程」を「有価物を含む対象物が収容された対象物収容手段を移動させながら前記対象物を熱処理する連続炉を用いて、複数の前記対象物収容手段を熱処理する際に、隣接する前記対象物収容手段どうしの間から、前記対象物収容手段に当たらないように火炎を放射して前記対象物を熱処理する熱処理工程」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2~12も同様とする。(当審注:2「訂正の単位について」で後述するとおり、請求項1と請求項3は、一群の請求項を構成するところ、請求項3は、訂正事項2により削除されるため「請求項1を引用する請求項2及び4~12も同様とする。」の誤記と認める。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
請求項3を引用する請求項4~12も同様とする。(当審注:請求項3は、削除され、かつ、一群の請求項を構成する請求項4~12は、訂正事項3~8により、いずれも請求項3を引用する請求項ではなくなることから、「請求項3を引用する請求項4~12も同様とする。」なる記載は、全体が誤記であると認める。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4において、
「請求項1から3のいずれか」を「請求項1から2のいずれか」に訂正する。
請求項4を引用する請求項5~12も同様とする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5において、
「請求項2から4のいずれか」を「請求項2及び4のいずれか」に訂正する。
請求項5を引用する請求項6~12も同様とする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6において、
「請求項1から5のいずれか」を「請求項1から2及び4から5のいずれか」に訂正する。
請求項6を引用する請求項7~12も同様とする。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7において、
「請求項1から6のいずれか」を「請求項1から2及び4から6のいずれか」に訂正する。
請求項7を引用する請求項8~12も同様とする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8において、
「請求項1から7のいずれか」を「請求項1から2及び4から7のいずれか」に訂正する。
請求項8を引用する請求項9~12も同様とする。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12において、
「請求項1から11のいずれか」を「請求項1から2及び4から11のいずれか」に訂正する。
2 訂正の単位について
本件訂正前の請求項1~12について、訂正前の請求項2~12は請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12に係る本件訂正は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、対象物を熱処理する熱処理工程における熱処理のための火炎に関し、「複数の前記対象物収容手段を熱処理する際に、隣接する前記対象物収容手段どうしの間から、前記対象物収容手段に当たらないように火炎を放射して」と火炎の態様を限定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1により、火炎の態様が特定された。したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
ウ 新規事項の有無
願書に添付した明細書の【0040】には「火炎18は、対象物収容手段18当たらないように、火炎放射手段により放射され、火炎18により対象物収容手段17に収容された対象物が熱処理される。より具体的には、図1に示す例においては、対象物収容手段18を停止させて加熱する際において、隣接する対象物収容手段17どうしの間に位置する場所に火炎放射手段が配置され、隣接する対象物収容手段17どうしの間に火炎18が放射される。」と記載されている。(当審注:「対象物収容手段18当たらないように」、「対象物収容手段18を停止させて加熱する際において」は、それぞれ「対象物収容手段17に当たらないように」、「対象物収容手段17を停止させて加熱する際において」の誤記と認められる。)
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
エ 独立特許要件
(ア)請求項1、2及び7について
訂正事項1は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正前の請求項1、2及び7について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項1、2及び7に係る本件訂正に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
(イ)請求項4~6、8~12について
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項1の対象となる請求項4~6、8~12には特許異議の申立てがされていないから、訂正事項1については、さらに、訂正後の請求項4~6、8~12に係る発明が特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の規定(独立特許要件)を満足することが必要である。
しかしながら、「第6」で後述するように、訂正後の請求項4~6、8~12に係る発明については、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後の請求項4~6、8~12に係る発明は、訂正の要件としての独立特許要件を満たしており、訂正事項1による訂正は特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の規定に適合するものである。
オ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項から7項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、新規事項を追加するものでもないことは明らかである。
イ 独立特許要件
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法126条7項の規定に適合するか否かについての判断を要しない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3~8について
ア 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項3~8は、本件訂正前の請求項4~12について、訂正事項2によって請求項3が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項2によって削除された請求項3を引用しないようにする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3~8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、新規事項を追加するものでもないことは明らかである。
イ 独立特許要件
(ア)請求項7について
訂正事項3~8は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正前の請求項7について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項7に係る本件訂正に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
(イ)請求項4~6、8~12について
訂正事項3~8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項3~8の対象となる請求項4~6、8~12には特許異議の申立てがされていないから、訂正事項3~8については、さらに、訂正後の請求項4~6、8~12に係る発明が特許法120条の5第9項において読み替えて準用する特許法126条7項の規定(独立特許要件)を満足することが必要である。
しかしながら、「第6」で後述するように、訂正後の請求項4~6、8~12に係る発明については、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後の請求項4~6、8~12に係る発明は、訂正の要件としての独立特許要件を満たしており、訂正事項3~8による訂正は特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の規定に適合するものである。
ウ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項3~8は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条5項から7項の規定に適合する。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法第126条5項から7項の規定に適合する。
したがって、特許第6965420号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~12に係る発明(以下「本件特許発明1~12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
有価物を含む対象物が収容された対象物収容手段を移動させながら前記対象物を熱処理する連続炉を用いて、複数の前記対象物収容手段を熱処理する際に、隣接する前記対象物収容手段どうしの間から、前記対象物収容手段に当たらないように火炎を放射して前記対象物を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程により得た前記対象物の熱処理物から、前記有価物を回収する有価物回収工程と、
を含むことを特徴とする有価物の回収方法。
【請求項2】
前記熱処理工程において、移動させている前記対象物収容手段を停止させ、前記対象物収容手段に前記火炎が当たらないように前記火炎を放射する、請求項1に記載の有価物の回収方法。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記熱処理工程において、前記対象物収容手段を移動させている間は、前記対象物収容手段を停止させている間よりも、前記火炎の放射を弱くする、請求項1から2のいずれかに記載の有価物の回収方法。
【請求項5】
前記熱処理工程において、前記対象物収容手段を移動させる移動時間と、前記対象物収容手段を停止させる停止時間との比が、次の不等式、
前記停止時間 / 前記移動時間 ≧ 10、
を満たす、請求項2及び4のいずれかに記載の有価物の回収方法。
【請求項6】
前記対象物収容手段が、鉄又はステンレス鋼により形成される、請求項1から2及び4から5のいずれかに記載の有価物の回収方法。
【請求項7】
前記熱処理工程において、前記対象物を750℃以上1,085℃未満で熱処理する、請求項1から2及び4から6のいずれかに記載の有価物の回収方法。
【請求項8】
前記対象物がリチウムイオン二次電池である、請求項1から2及び4から7のいずれかに記載の有価物の回収方法。
【請求項9】
前記リチウムイオン二次電池がアルミニウムを含む筐体を有し、
前記熱処理工程において、前記リチウムイオン二次電池における前記筐体のアルミニウムを溶融させて溶融物を分離する、請求項8に記載の有価物の回収方法。
【請求項10】
前記有価物が銅を含む、請求項8から9のいずれかに記載の有価物の回収方法。
【請求項11】
前記熱処理工程において、
前記リチウムイオン二次電池の燃焼状態を観測して、前記リチウムイオン二次電池の燃焼が完了したか否かを判定し、
前記リチウムイオン二次電池の燃焼が完了したと判定したときに熱処理を終了する、請求項8から10のいずれかに記載の有価物の回収方法。
【請求項12】
前記有価物回収工程が、
前記熱処理物を破砕して破砕物を得る破砕工程と、
前記破砕物を0.6mm以上2.4mm以下の分級点で分級して、粗粒産物と細粒産物とを得る分級工程と、
前記粗粒産物を、0.03テスラ以上の磁束密度の磁石を用いて選別する磁力選別工程と、
を含む、請求項1から2及び4から11のいずれかに記載の有価物の回収方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2及び7に係る特許に対して、当審において令和4年7月21日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、訂正前の請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1、2及び7に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2018-159477号公報
甲第2号証:特開2016-219402号公報
甲第3号証:特開2020-64855号公報
甲第4号証:特開2015-170480号公報
第5 当審の判断
1 各証拠の記載
(1)甲第1号証(以下「甲1」という。)について
ア 甲1の記載
特許異議申立人が特許異議の申立ての理由に引用するとともに、令和4年7月21日付け取消理由通知に引用した甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下、同様。)。
「【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明に係る廃リチウムイオン電池の処理方法を実施するために用いられる処理装置1は、複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筐体内に複数収納された電池パック(廃リチウムイオン電池)50に加熱処理を施して有用金属を回収するものであって、主に電池パック50を格納する複数の耐熱容器2と、熱処理炉3と、熱処理炉3に耐熱容器2を投入及び排出する容器搬送装置4を備える。
【0018】
耐熱容器2は、図3~図5に示すように、容器本体2Aと蓋2Bとで構成される。容器本体2A及び蓋2Bの材質は、ステンレス鋼(SUS304)等であって、少なくとも650℃の耐熱温度を有する。
【0019】
図3に示すように、容器本体2Aは、上方に開口して円筒状に形成された内筒2aと、内筒2aよりも大径で内筒2aを囲繞するように配置された外筒2bと、内筒2a及び外筒2bの底面に配置された複数の車輪2cと、外筒2bの周面2dに固定された2本の取っ手2eと、外筒2bの周面2dから突出するハンガー2fとで構成される。
【0020】
一方、図4に示すように、蓋2Bは、下方に開口する円筒状に形成された本体2nと、本体2nの周面に開口して斜め上方に突出する排気管2gと、本体2nの天井面2hに設けられた取っ手2mとで構成される。尚、排気管2gと水平面とのなす角は、45度程度に設定されるが、これに限定されるものではない。また、排気管2gの向きは、排気管2gから噴出する燃焼ガスの速度ベクトルの水平成分が熱処理炉3の渦燃焼の方向と同方向になるように設定される。また、排気管2gの設置位置は、図2に示す通り、4本のガスバーナー8(8A~8D)より低く、排気管28の先端28aより高い位置であればよい。」
「【0023】
また、耐熱容器2は、複数個の電池パック50を格納することができ、耐熱性に優れ、上部に排気管2gが設けられたものであれば、特に分割されていなくともよい。
【0024】
さらに、耐熱容器2の容器本体2Aに、加熱処理時にプラスチック等の溶解物を受けて溜め込む凹部(不図示)を形成し、プラスチック等の溶解物が耐熱容器2から外にこぼれ出すことを防止してもよい。
【0025】
図1及び図2に示すように、熱処理炉3は、耐火材で覆われた鋼板で炉壁7が構成された円筒状の縦型炉であり、4本のガスバーナー8(8A~8D)によって加熱される。ガスバーナー8の近傍にはノズル11(11A~11D)が設けられ、ファン(不図示)を介して送られる、燃焼用及び冷却用の空気Aが炉内に供給される。炉内の温度及び圧力を測定するために温度計13及び圧力計14が設けられる。温度計13は、温度の急激な上昇を検知できるように、上面視円形の天井部の中心部付近に設置される。尚、ガスバーナー8及びノズル11の設置本数は、4本に限定されることなく、3本以下であっても5本以上であってもよい。また、後に詳述するように、ノズル11からは空気Aの他、必要に応じて窒素ガス、二酸化炭素又は水蒸気のうち少なくとも1種類の気体を供給することができる。
【0026】
熱処理炉3の炉床17は、炉壁7と同様に耐火材で覆われた鋼板からなり、電動モータ(不図示)を備えた炉床回転装置19によって鉛直軸回りに回転し、位置決めセンサ(不図示)によって所定の位置に位置決めされる。
【0027】
熱処理炉3の炉壁7の一部には、上下に開閉式の炉体扉7bで外部と仕切られた開口部7aが形成される。開口部7aに対向する位置に、開口部7aから熱処理炉3内に耐熱容器2を投入すると共に、熱処理炉3内を一周した後の耐熱容器2を熱処理炉3から排出する容器搬送装置4が設けられる。」
「【0033】
排気管28の熱処理炉3側は、図2に示すように、熱処理炉3の天井部の中央から熱処理炉3内に導かれ、その先端28aの位置は、耐熱容器2内の電池パック50の上面位置より低くなるように設定されている。このように、排気管28の熱処理炉側先端28aを、耐熱容器2内の電池パック50の上面位置より低く設定することで、熱処理炉3内で熱風は上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流するので、内部の電池パック50は効率的に乾留される。従って、電池パック50を耐熱容器2内において複数積層(本実施形態では2段)しても十分リサイクル処理することができる。また、電池パック50内の廃リチウムイオン電池が放電しているか否かに関わらず処理することができる。
【0034】
排気管28内の熱処理炉3の直上には、熱処理炉3の内部の圧力を調整するためのダンパー33が設けられ、例えば、熱処理炉3内の圧力が高まるとダンパー33を開き、熱処理炉3の内部の負圧が維持される。ダンパー33には、図示のバタフライバルブ等を用いることができる。
【0035】
上記構成を有する廃リチウムイオン電池の処理装置1を用いた廃リチウムイオン電池の処理方法について説明する。尚、以下の説明では、処理装置1によってハイブリッド自動車や電気自動車等から取外されたままの電池パック50を処理する場合を例示する。
【0036】
(1)熱処理炉3の内部の残留ガスを炉外に排出するプレパージを行った後、ガスバーナー8に点火して炉温を450℃以上525℃以下まで昇温して温度を一定に保持する。
【0037】
(2)炉前室扉24を開放してベース移動装置22を介してスライドベース21を炉前室23の外側に設けられたスタンド25の位置まで前進させる。そして、クレーン(不図示)を使用して、図1及び図2に示したように使用済みの4個の電池パック50が格納された(2段重ねのものが2組、各々の組が離間した状態で格納)耐熱容器2をスタンド25の位置に移動したスライドベース21上に載置する。」
「【0043】
(3)ベース移動装置22を介してスライドベース21をスタンド25の位置から炉前室23内まで後退させ、炉前室扉24を閉鎖する。
【0044】
(4)炉体扉7bを開放した後、容器搬送装置4のプッシャー部4aを前進させて耐熱容器2を熱処理炉3内に投入する。これにより、耐熱容器2は熱処理炉3の炉床17上、図1では9時の位置に載置される。
【0045】
(5)容器搬送装置4のプッシャー部4aを後退させた後、炉体扉7bを閉鎖し、炉床回転装置19を介して炉床17を45゜左回転させる。この45゜の回転は、特に限定されるものではないが、例えば、37.5分毎に炉床17を45゜ずつ回転させることで、5時間で炉床17が1回転するように設定している。
【0046】
(6)上記(1)~(5)の処理をさらに7回繰り返すことで、熱処理炉3の炉床17上には、図1に示したように、隣接する耐熱容器2が一定の間隔を開けた状態で8個の耐熱容器2が環状に載置される。
【0047】
上記動作の間、耐熱容器2は熱処理炉3内で1周する間に外側から加熱されることで、耐熱容器2内は還元雰囲気となり、耐熱容器2に格納された電池パック50の樹脂製の筐体等のプラスチック類は乾留により炭化混合物としてリチウム、コバルト、ニッケル、マンガン等の有用金属が含まれた材料から分離された状態となっている。尚、耐熱容器2はアルミニウムの融点(660℃)よりも低い温度(450℃以上525℃以下)で加熱されるので電池パック50内で使用されたアルミニウム成分が溶け出すことはない。また、電池内の電解液は揮発し、プラスチック等の可燃性物質が熱分解することによって発生したガスと共に、耐熱容器2の排気管2gから熱処理炉3内に排出される。耐熱容器2の排気管2gから排出された2種類のガスは可燃性ガスであり、熱処理炉3内で熱源として再利用される。
【0048】
上記熱処理の際に、熱処理炉3内の温度は、ノズル11を介して供給される空気の酸素量を調整することにより、耐熱容器2の排気管2gから熱処理炉3内に放出される可燃性ガスの燃焼量を制御し、温度計13による測定値が所望の値又は範囲となるように制御する。この際、耐熱容器2の蓋2Bは、本体2nの周面に開口して斜め上方に突出する排気管2gを備えるため、電池パック50の乾留時に有機化合物が激しく燃焼して燃焼ガスが排気管2gから噴出しても燃焼ガスが斜め上方に噴出するため、燃焼ガスによって熱処理炉3の内部の安定した渦燃焼が阻害されることがなく、熱処理炉3の安定運転を維持することができる。」
「【0052】
(7)耐熱容器2が熱処理炉3内で1周すると、炉体扉7bを開放して容器搬送装置4のプルアウト部4bを耐熱容器2の位置まで前進させ、図7に示すように、プルアウト部4bの先端に設けられた爪4cを、耐熱容器2に設けられたハンガー2fに係止させる。そして、プルアウト部4bを後退させて耐熱容器2を熱処理炉3から引き出してスライドベース21上に載置し、炉体扉7bを閉鎖する。
【0053】
(8)次に、炉前室扉24を開放した後、ベース移動装置22を介して加熱処理済みの耐熱容器2が載置されたスライドベース21をスタンド25の位置まで前進させる。そして、この状態で炉前室扉24を半分閉鎖し、スライドベース21を元の位置に戻すと、耐熱容器2は半分閉鎖状態の炉前室扉24に当接してスタンド25上に載せられる。そして、炉前室扉24は全閉される。
【0054】
(9)その後、スタンド25の位置まで移動させられたスライドベース21上の加熱処理済みの耐熱容器2は、移送コンベア(不図示)に載せられて冷却室(不図示)に運ばれる。尚、(8)で耐熱容器2が半分閉鎖状態の炉前室扉24に当接することによって、移送コンベア上に載せられ自動的に搬送されるようにすることもできる。そして、その加熱処理済みの耐熱容器2の代わりにスライドベース21上には、(2)で示したものと同様に、クレーン(不図示)を使用し、使用済みの4個の電池パック50が格納された新たな耐熱容器2が設置され、(3)以下の処理が繰り返して行われる。
【0055】
冷却室に運ばれた加熱処理済みの耐熱容器2は、内部の電池パック50を破砕、分級して炭化混合物を取り除いた後、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン等の有用金属をさらに分離する処理が行われる。また、電池パック50の破砕物を磁選機にかけて、鉄筐体、ねじ等の磁着物と、銅とアルミニウムからなるミックメタルに分離し、ミックメタルを比重選別してアルミ塊及び銅塊と、銅箔及びアルミ箔の積層物とに分けた後、選別機でさらに銅箔とアルミ箔とに分けることができる。
【0056】
以上のように構成された廃リチウムイオン電池の処理方法によれば、耐熱容器2内に廃リチウムイオン電池を、占有空間R内における嵩密度が0.3~0.8kg/lとなるように配置するため、電池パック50の形状によらずに焙焼後の煙や火炎の発生を防止することができ、迅速かつ安定して廃リチウムイオン電池を処理することが可能となる。」
「【0062】
また、本実施形態では、熱処理炉3内の炉温を450℃以上525℃以下まで昇温して温度を一定に保持するように、アルミニウムが溶融しない範囲で極力高温にして処理時間を短くするようしたが、加熱処理の温度は、プラスチックの分解温度(300℃)以上であれば樹脂製材料は分解され金属から分離されるので特に限定されるものではない。但し、処理時間の関係から450℃以上が処理に適している。
【0063】
さらに、本実施形態では、電池パック50を格納した耐熱容器2を酸化雰囲気下の熱処理炉3に投入して加熱処理するようにしたが、還元雰囲気下あるいは不活性雰囲気下としても適用可能である。
【0064】
また、本実施形態では、加熱処理用の熱源としてガスを使用した熱処理炉3を使用したが、熱源として電気や重油を使用した各種炉を使用することもできる。また、既存の製造設備、例えば、セメント焼成装置からの排ガスを熱源として用いることなどで熱エネルギーの有効利用を図ることができる。」
「【図1】
[図:0001395219000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001395219000002.jpg]
」
上記の特に【図2】を参照すると、熱処理炉3を加熱するガスバーナー8(8A~8D)は、熱処理炉3内に載置された耐熱容器2の排気管2gよりも高い位置に設置されていることが見て取れる。
「【図3】
[図:0001395219000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001395219000004.jpg]
」
イ 甲1発明
したがって、上記甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「廃リチウムイオン電池の処理方法において、
処理装置1は、複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筐体内に複数収納された電池パック(廃リチウムイオン電池)50に加熱処理を施して有用金属を回収するものであって、主に電池パック50を格納する複数の耐熱容器2と、熱処理炉3と、熱処理炉3に耐熱容器2を投入及び排出する容器搬送装置4を備え、
耐熱容器2は、容器本体2Aと蓋2Bとで構成され、容器本体2A及び蓋2Bの材質は、ステンレス鋼等であり、容器本体2Aは、円筒状に形成された内筒2aと、内筒2aを囲繞するように配置された外筒2bと、内筒2a及び外筒2bの底面に配置された複数の車輪2cと、取っ手2eと、ハンガー2fとで構成され、
蓋2Bは、円筒状に形成された本体2nと、本体2nの周面に開口して斜め上方に突出する排気管2gと、取っ手2mとで構成され、排気管2gの向きは、排気管2gから噴出する燃焼ガスの速度ベクトルの水平成分が熱処理炉3の渦燃焼の方向と同方向になるように設定され、排気管2gの設置位置は、4本のガスバーナー8(8A~8D)より低く、排気管28の先端28aより高い位置であればよく、
熱処理炉3は、耐火材で覆われた鋼板で炉壁7が構成された円筒状の縦型炉であり、4本のガスバーナー8(8A~8D)によって加熱され、ガスバーナー8の近傍にはノズル11(11A~11D)が設けられ、ファンを介して送られる、燃焼用及び冷却用の空気Aが炉内に供給され、
熱処理炉3を加熱するガスバーナー8(8A~8D)は、熱処理炉3内に載置された耐熱容器2の排気管2gよりも高い位置に設置され、
熱処理炉3の炉床17は、炉壁7と同様に耐火材で覆われた鋼板からなり、電動モータを備えた炉床回転装置19によって鉛直軸回りに回転し、位置決めセンサによって所定の位置に位置決めされ、
熱処理炉3の炉壁7の一部には、開口部7aが形成され、開口部7aに対向する位置に、開口部7aから熱処理炉3内に耐熱容器2を投入すると共に、熱処理炉3内を一周した後の耐熱容器2を熱処理炉3から排出する容器搬送装置4が設けられ、
熱処理炉3内で熱風は上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流するので、内部の電池パック50は効率的に乾留され、従って、電池パック50を耐熱容器2内において複数積層しても十分リサイクル処理することができ、
処理装置1によってハイブリッド自動車や電気自動車等から取外されたままの電池パック50を処理する場合として、
使用済みの4個の電池パック50が格納された耐熱容器2をスタンド25の位置に移動したスライドベース21上に載置し、スライドベース21をスタンド25の位置から炉前室23内まで後退させ、炉前室扉24を閉鎖し、炉体扉7bを開放した後、容器搬送装置4のプッシャー部4aを前進させて耐熱容器2を熱処理炉3内に投入し、これにより、耐熱容器2は熱処理炉3の炉床17上、9時の位置に載置され、炉体扉7bを閉鎖し、炉床回転装置19を介して炉床17を45゜左回転させ、この45゜の回転は、特に限定されるものではないが、例えば、37.5分毎に炉床17を45゜ずつ回転させることで、5時間で炉床17が1回転するように設定し、
処理を繰り返すことで、熱処理炉3の炉床17上には、隣接する耐熱容器2が一定の間隔を開けた状態で8個の耐熱容器2が環状に載置され、上記動作の間、耐熱容器2は熱処理炉3内で1周する間に外側から加熱されることで、耐熱容器2内は還元雰囲気となり、耐熱容器2に格納された電池パック50の樹脂製の筐体等のプラスチック類は乾留により炭化混合物としてリチウム、コバルト、ニッケル、マンガン等の有用金属が含まれた材料から分離された状態となり、
耐熱容器2の蓋2Bは、本体2nの周面に開口して斜め上方に突出する排気管2gを備えるため、電池パック50の乾留時に有機化合物が激しく燃焼して燃焼ガスが排気管2gから噴出しても燃焼ガスが斜め上方に噴出するため、燃焼ガスによって熱処理炉3の内部の安定した渦燃焼が阻害されることがなく、熱処理炉3の安定運転を維持することができ、
耐熱容器2が熱処理炉3内で1周すると、炉体扉7bを開放して、耐熱容器2を熱処理炉3から引き出し、炉体扉7bを閉鎖し、加熱処理済みの耐熱容器2は、移送コンベアに載せられて冷却室に運ばれ、冷却室に運ばれた加熱処理済みの耐熱容器2は、内部の電池パック50を破砕、分級して炭化混合物を取り除いた後、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン等の有用金属をさらに分離する処理が行われ、また、電池パック50の破砕物を磁選機にかけて、鉄筐体、ねじ等の磁着物と、銅とアルミニウムからなるミックメタルに分離し、ミックメタルを比重選別してアルミ塊及び銅塊と、銅箔及びアルミ箔の積層物とに分けた後、選別機でさらに銅箔とアルミ箔とに分けることができ、
熱処理炉3内の炉温を450℃以上525℃以下まで昇温して温度を一定に保持するように、アルミニウムが溶融しない範囲で極力高温にして処理時間を短くするようしたが、加熱処理の温度は、プラスチックの分解温度(300℃)以上であれば樹脂製材料は分解され金属から分離されるので特に限定されるものではない、
廃リチウムイオン電池の処理方法。」
(2)甲第2号証(以下「甲2」という。)
特許異議申立人が特許異議の申立ての理由に引用するとともに、令和4年7月21日付け取消理由通知に周知技術を示す文献として引用した甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【発明を実施するための形態】
【0010】
(リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法)
本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法は、焙焼工程を少なくとも含み、切断工程、破砕工程、及び分離工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0011】
<焙焼工程>
前記焙焼工程は、正極集電体と、負極集電体とを含む積層体を収容する外装容器を有するリチウムイオン二次電池を、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち、低い融点の集電体の融点以上、かつ高い融点の前記集電体の融点未満の温度で焙焼して焙焼物を得る工程である。
前記焙焼工程においては、前記リチウムイオン二次電池及び前記積層体の少なくともいずれか一方を、前記高い融点の前記集電体の融点以上の融点である酸素遮蔽容器に収容して焙焼することが好ましい。
前記集電体の融点は、前記集電体が単一の金属であれば、その金属の融点であり、前記集電体が合金や複合材料の場合には、例えば、熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)により融点を測定することができる。」
「【0027】
-焙焼-
前記焙焼は、前記正極集電体及び前記負極集電体のうち、前記低い融点の前記集電体の融点以上、かつ前記高い融点の前記集電体の融点未満の温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、670℃以上が好ましく、670℃以上1,100℃以下がより好ましく、700℃以上900℃以下が特に好ましい。前記焙焼温度が、670℃未満であると、前記低い融点の前記集電体の脆性化が十分に生じないことがあり、1,100℃を超えると、前記低い融点の前記集電体及び前記高い融点の前記集電体のいずれもが脆性化し、破砕及び分級による前記集電体の分離効率が低下する。
【0028】
前記焙焼温度で前記焙焼を行うことにより、例えば、前記正極集電体がアルミニウムであり、前記負極集電体が銅である前記積層体において、アルミニウム箔からなる前記正極集電体が溶融して脆性化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなる。一方、前記銅からなる前記負極集電体は、前記銅の融点未満の温度で焙焼されるため、溶融することがなく、後述する分離工程において、高度に選別できるようになる。また、前記積層体及び前記リチウムイオン二次電池のいずれかを前記酸素遮蔽容器に収容して焙焼したときは、前記アルミニウム箔からなる前記正極集電体が溶融して脆性化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなり、一方、前記銅からなる前記負極集電体は、酸素分圧が低い状態で焙焼されるため、酸化による脆性化が生じない。このため、前記破砕工程における破砕により、前記正極集電体は細かく破砕され、前記負極集電体は、破砕後も粗粒として存在し、後述する分離工程において、より効果的かつ高度に選別できるようになる。
前記焙焼温度とは、焙焼時の前記リチウムイオン二次電池及び前記酸素遮蔽容器のうちいずれかの温度のことをいう。前記焙焼温度は、焙焼中の前記リチウムイオン二次電池及び前記酸素遮蔽容器のうちいずれかに、カップル、サーミスタなどの温度計を差し込むことにより、測定することができる。」
「【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
リチウムイオン二次電池として、開口率1.2%の開口部を有する外装容器を備えた使用済みのリチウムイオン二次電池を用いた。前記リチウムイオン二次電池は、前記正極集電体がアルミニウム(融点660℃)であり、前記負極集電体が銅(融点1,085℃)である。
前記リチウムイオン二次電池の金属含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(iCaP6300、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、リチウムイオン二次電池を構成する金属材料及び活物質の質量を100質量%とした場合、それぞれ、銅が7.8質量%、鉄が35.0質量%、アルミニウムが4.3質量%、マンガンが13.8質量%、コバルトが2.1質量%、ニッケルが1.9質量%、残量は33.4質量%で殆どがカーボンであった。
【0043】
-焙焼工程-
マッフル炉(FJ-41、ヤマト科学株式会社製)に前記リチウムイオン二次電池を入れ、焙焼温度を900℃とし、昇温速度13.3℃/分間、空気通気量20L/分間で900℃まで昇温した。温度が900℃に到達後、900℃で24時間焙焼し、焙焼物を得た。また、炉内雰囲気は大気雰囲気とした。」
(3)甲第3号証(以下「甲3」という。)について
特許異議申立人が特許異議の申立ての理由に引用するとともに、令和4年7月21日付け取消理由通知に周知技術を示す文献として引用した甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0027】
本発明の実施の形態では、図1に示す手順によって、リチウムイオン二次電池に含まれるアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅等の各種有価物を効率的に分離回収する。回収に用いられるリチウムイオン二次電池としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムイオン二次電池の製造過程で発生した不良品のリチウムイオン二次電池、使用機器の不良、使用機器の寿命などにより廃棄されるリチウムイオン二次電池、寿命により廃棄される使用済みのリチウムイオン二次電池などが挙げられる。
【0028】
<熱処理工程>
図1に示すように、先ず、リチウムイオン二次電池(LIB)に対して、熱処理工程(熱処理)が行われる。熱処理温度は、正極集電体及び負極集電体のうち、低い融点の集電体の融点以上、かつ高い融点の集電体の融点未満の温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、670℃以上が好ましく、670℃以上1100℃以下がより好ましく、700℃以上900℃以下が特に好ましい。熱処理温度が、670℃未満であると、低い融点の集電体の脆化が十分に生じないことがあり、1100℃を超えると、低い融点の集電体、高い融点の集電体、及び外装容器のいずれもが脆化し、破砕及び分級による集電体および外装容器の分離効率が低下する。また、前記リチウムイオン二次電池の前記外装容器が前記熱処理中に溶融する場合、前記リチウムイオン二次電池の下に前記溶融金属を回収する受け皿を配置する事で、外装容器由来の金属と電極部を容易に分離する事が出来る。
【0029】
所定の熱処理温度で熱処理を行うことにより、例えば、正極集電体がアルミニウムであり、負極集電体が銅である積層体において、アルミニウム箔からなる正極集電体が脆化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなる。この正極集電体の脆化は溶融もしくは酸化反応により生ずる。また、溶融して流れ落ちたアルミニウムは、受け皿に回収される。一方、銅からなる負極集電体は、銅の融点未満の温度で熱処理されるため、溶融することがなく、後述する乾式磁選工程において、高度に選別できるようになる。また、積層体及びリチウムイオン二次電池のいずれかを酸素遮蔽容器に収容して熱処理したときは、アルミニウム箔からなる正極集電体が溶融して脆化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなり、一方、銅からなる負極集電体は、前記酸素遮蔽容器の酸素遮蔽効果および積層体やリチウムイオン二次電池に含まれるカーボン等の負極活物質による還元効果により、酸素分圧が低い状態で熱処理されるため、酸化による脆化が生じない。このため、破砕工程における破砕により、正極集電体は細かく破砕され、負極集電体は、破砕後も粗粒として存在し、後述する分級工程において、より効果的かつ高度に選別できるようになる。」
「【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
図1のフローに示すように、リチウムイオン二次電池約3.7Kgを、熱処理装置としてマッフル炉(FJ-41、ヤマト科学株式会社製)を用いて、熱処理温度850℃(1H昇温・2H保持)、AIR送気量5L/minの条件で熱処理工程を行った。次いで、破砕工程では、破砕装置として、ハンマークラッシャー(マキノ式スイングハンマークラッシャーHC-20-3.7、槇野産業株式会社製)を用い、50HZ(ハンマー周速38m/s)、出口部分のパンチングメタルの穴径10mmの条件で1回追加破砕した。」
(4)甲第4号証(以下「甲4」という。)について
特許異議申立人が特許異議の申立ての理由に引用するとともに、令和4年7月21日付け取消理由通知に周知技術を示す文献として引用した甲4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0014】
本発明に係るリチウムイオン二次電池からの有価物回収方法は、PC、携帯電話などに使用される小型リチウムイオン二次電池の他に、上記したEV、PHVなどの車載用に使用される大型リチウムイオン二次電池について、電池パック或いは電池モジュールごと、600℃以上の温度で先ず加熱し、次に破砕した後、得られた破砕物に対して、少なくとも気流を用いた形状選別を行い、アルミニウムを重産物として、銅を軽産物として回収するものである。即ち、加熱工程、破砕工程、選別工程を少なくとも含み、必要に応じて更に他の工程を含むものである。
以下、上記した各工程について、詳述する。
【0015】
-加熱工程-
加熱工程としては、リチウムイオン二次電池を、電池セル、電池モジュール、そして電池パックを区別することなく、600℃以上の温度で加熱することができれば、その加熱手段、加熱雰囲気などに特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
リチウムイオン二次電池を、600℃以上の温度で加熱することで、該電池中に含まれる電解液などの有害物質の除去および無害化を実施する。また同時に、セパレーターなどの可燃物除去や、後の選別工程での選別効率を高める為にリチウムイオン二次電池中のアルミニウム箔の溶融も目的としている。このアルミニウム箔の溶融目的の為、加熱雰囲気は問わないが、酸化雰囲気での加熱であるならば600℃以上の温度で、可燃物による急激な燃焼を防止する為に還元雰囲気での加熱を行うのであるならばアルミニウムの融点である663℃以上の温度で処理することが望ましい。この温度条件下で加熱し、後工程の破砕を行うことにより、溶融したアルミニウム箔の分離を効果的に行うことができる。かかる観点および経済性の観点から、前記加熱の温度は、アルミニウム箔を溶融させることができる温度以上で、かつ銅の融点以下である、600~1050℃とすることが好ましく、更には650~900℃とすることがより好ましい。
【0016】
ここで、上記加熱温度とは、加熱時のリチウムイオン二次電池周辺の気体の温度をいい、例えば、加熱時の加熱炉内においてリチウムイオン二次電池が置かれた付近の気体の温度をいう。また前記加熱の時間としては、特に制限はないが、リチウムイオン二次電池の形状や大きさに応じて適時選択し、0.5時間~6時間が好ましく、1時間~4時間がより好ましい。
【0017】
上記リチウムイオン二次電池の加熱は、炉を用いて行うことができ、炉としては、特に制限はないが、ロータリーキルン炉、流動床炉、トンネル炉、マッフル等のバッチ式炉、キュウポラ炉、ストーカー炉などを用いることができる。」
2 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と上記甲1発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 「有価物を含む対象物が収容された対象物収容手段を移動させながら前記対象物を熱処理する連続炉を用いて、複数の前記対象物収容手段を熱処理する際に、隣接する前記対象物収容手段どうしの間から、前記対象物収容手段に当たらないように火炎を放射して前記対象物を熱処理する熱処理工程」について
(ア)甲1発明の「廃リチウムイオン電池の処理方法」は、「複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筐体内に複数収納された電池パック(廃リチウムイオン電池)50に加熱処理を施して有用金属を回収するもの」であるから、甲1発明の「リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン等の有用金属」は、本件特許発明1の「有価物」に相当する。そして、甲1発明の前記「電池パック50」は、前記「有用金属」を含むといえるから、本件特許発明1の「有価物を含む対象物」に相当するといえる。
(イ)甲1発明の「耐熱容器2」は、「主に電池パック50を格納する」ものであるから、上記(ア)を踏まえると、本件特許発明1の「有価物を含む対象物が収容された対象物収容手段」に相当する。
(ウ)甲1発明の「熱処理炉3」は、「例えば、37.5分毎に炉床17を45゜ずつ回転させ」ながら、「炉床17上」に「載置され」た「耐熱容器2」に「格納」された「電池パック」を「加熱処理」し、「37.5分毎」に「炉体扉7bを開放した後、」「耐熱容器2を熱処理炉3内に投入」して、「炉体扉7bを閉鎖し、」「炉床17を45゜左回転させ」る「処理を繰り返すことで、熱処理炉3の炉床17上には、隣接する耐熱容器2が一定の間隔を開けた状態で8個の耐熱容器2が環状に載置され、上記動作の間、耐熱容器2は熱処理炉3内で1周する間に外側から加熱される」ものである。
ここで、本件特許発明1の「連続炉」について、明細書の段落【0015】を参照すると、「本発明では、複数の対象物収容手段を連続的に連続炉に入れることにより、対象物収容手段に収容された対象物を連続的に熱処理することができる」とあることから、甲1発明の「耐熱容器2」を「37.5分毎に炉床17を45゜ずつ回転させ」ながら、「炉床17上」に「載置され」た「耐熱容器2」に「格納」された「電池パック」を「加熱処理」し、「37.5分毎」に「耐熱容器2を熱処理炉3内に投入」して「炉床17を45゜左回転させ」る「処理を繰り返すことで、」「耐熱容器2」を「1周する間に外側から加熱」する「熱処理炉3」は、上記(ア)及び(イ)を踏まえると、本件特許発明1の「対象物収容手段を移動させながら前記対象物を熱処理する連続炉」に相当するといえる。
(エ)甲1発明の「ガスバーナー8」は、ガスを燃料にして「炎」を出す装置であることは技術常識であり、当該「ガスバーナー8」による「炎」は、本件特許発明1の「火炎」に相当する。また、甲1発明の前記「電池パック50」を「加熱処理」することは、上記(ア)を踏まえると、本件特許発明1の「前記対象物を熱処理する」ことに相当する。
(オ)前記「電池パック50」を「加熱処理」する甲1発明は、「耐熱容器2を投入」される「熱処理炉3」が「ガスバーナー8によって加熱され」、「熱処理炉3内で熱風は上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流するので、内部の電池パック50は効率的に乾留され」るものであるから、上記の(ア)~(エ)を踏まえると、「有価物を含む対象物が収容された対象物収容手段を移動させながら前記対象物を熱処理する連続炉を用いて、複数の前記対象物収容手段を熱処理する際に、隣接する前記対象物収容手段どうしの間から、前記対象物収容手段に当たらないように火炎を放射して前記対象物を熱処理する熱処理工程」を有する本件特許発明1とは、「有価物を含む対象物が収容された対象物収容手段を移動させながら前記対象物を熱処理する連続炉を用いて、複数の前記対象物収容手段を熱処理する際に、前記対象物収容手段を加熱するため、火炎を放射して前記対象物を熱処理する熱処理工程」を有する点で共通する。
イ 「前記熱処理工程により得た前記対象物の熱処理物から、前記有価物を回収する有価物回収工程」について
甲1発明の「加熱処理済みの耐熱容器2」の「内部の電池パック50」は、本件特許発明1の「前記熱処理工程により得た前記対象物の熱処理物」に相当する。したがって、甲1発明の「加熱処理済みの耐熱容器2」の「内部の電池パック50を破砕、分級して炭化混合物を取り除いた後、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン等の有用金属をさらに分離する処理」は、本件特許発明1の「前記熱処理工程により得た前記対象物の熱処理物から、前記有価物を回収する有価物回収工程」に相当する。
ウ 「有価物の回収方法」について
甲1発明の「廃リチウムイオン電池の処理方法」は、前記イに示すように、「リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン等の有用金属をさらに分離する処理」を含むことから、後述の相違点を除き、本件特許発明1の「有価物の回収方法」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「有価物を含む対象物が収容された対象物収容手段を移動させながら前記対象物を熱処理する連続炉を用いて、複数の前記対象物収容手段を熱処理する際に、前記対象物収容手段を加熱するため、火炎を放射して前記対象物を熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程により得た前記対象物の熱処理物から、前記有価物を回収する有価物回収工程と、
を含むことを特徴とする有価物の回収方法。」
<相違点>
複数の対象物収容手段を熱処理する際に、対象物収容手段を加熱するための構成として、本件特許発明1では、「隣接する前記対象物収容手段どうしの間から、前記対象物収容手段に当たらないように」火炎を放射しているのに対し、甲1発明では、隣接する「耐熱容器2」どうしの間から、「耐熱容器2」に「当たらないように火炎を放射して」いるものではない点。
(2)相違点についての判断
上記「(1)ア(オ)」で示したように、「電池パック50」を「加熱処理」する甲1発明は、「耐熱容器2を投入」される「熱処理炉3」が「ガスバーナー8によって加熱され」、「熱処理炉3内で熱風は上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流するので、内部の電池パック50は効率的に乾留され」るものであるから、「ガスバーナー8」による「炎」は、「熱処理炉3内」で「上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流する」「熱風」を生じさせるものであれば足り、当該「炎」は「耐熱容器2」に当たる必要はないものといえる。
特に、甲1発明では、「耐熱容器2」を構成する「蓋2B」の「本体2nの周面に開口して斜め上方に突出する排気管2g」について、「排気管2gの設置位置は、4本のガスバーナー8(8A~8D)より低く」、そして、「熱処理炉3を加熱するガスバーナー8(8A~8D)は、熱処理炉3内に載置された耐熱容器2の排気管2gよりも高い位置に設置され」ているといえ、さらに、甲1発明では、「排気管2gの向きは、排気管2gから噴出する燃焼ガスの速度ベクトルの水平成分が熱処理炉3の渦燃焼の方向と同方向になるように設定され」、「耐熱容器2の蓋2Bは、本体2nの周面に開口して斜め上方に突出する排気管2gを備えるため、電池パック50の乾留時に有機化合物が激しく燃焼して燃焼ガスが排気管2gから噴出しても燃焼ガスが斜め上方に噴出するため、燃焼ガスによって熱処理炉3の内部の安定した渦燃焼が阻害されることがなく、熱処理炉3の安定運転を維持することができ」ることから、「ガスバーナー8」は、その「炎」が少なくとも、「斜め上方に噴出する」「排気管2gから」の「燃焼ガス」による「渦燃焼の方向」を「阻害」しないようにするものといえる。
しかしながら、甲1発明は、熱処理炉3内に載置された複数の耐熱容器2どうしの間から「耐熱容器2」に「当たらないように火炎を放射」する構成を有しておらず、また、そのような火炎を放射することは、甲2~甲4にも記載も示唆もされておらず、周知技術であるともいえない。
したがって、甲1発明の「熱処理炉3を加熱するガスバーナー8」による「炎」は、「熱処理炉3内」で「大きく対流する」「熱風」を生じさせれば足り、「耐熱容器2」に当たる必要はないものであり、かつ、「排気管2gよりも高い位置に設置され」た「ガスバーナー8」による「炎」により、「斜め上方に噴出する」「排気管2gから」の「燃焼ガス」による「渦燃焼の方向」を「阻害」しないようにすることから、甲1発明において、「ガスバーナー8」による「炎」を「耐熱容器2」に「当たらないように」することは、当業者が容易に設計し得たことであるとしても、その具体的な火炎の放射として、「耐熱容器2」の「排気管2gよりも高い位置に設置され」た「ガスバーナー8」から火炎が放射され、それらの位置関係において、「熱処理路3内」の「熱風」の対流を考慮している甲1発明において、複数の「耐熱容器2」どうしの間から火炎を放射する動機付けがないだけでなく、周知技術であるともいえないから、熱処理炉3内に載置された複数の耐熱容器2どうしの間から「耐熱容器2」に「当たらないように火炎を放射」する構成とすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。
その他、上記相違点に係る本件特許発明1の構成を記載又は示唆する証拠は存在しない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件特許発明2について
本件特許発明2は、直接的に請求項1の記載を引用し、本件特許発明1の構成を有するものであるから、本件特許発明2は、少なくとも上記相違点で甲1発明と相違する。そして、上記相違点については、上記「2(2)」において検討したとおりであるから、本件特許発明2は、甲1発明に基づいて容易に発明できたものではない。
4 本件特許発明7について
本件特許発明7は、直接的又は間接的に請求項1の記載を引用し、本件特許発明1の構成を有するものであるから、本件特許発明7は、少なくとも上記相違点で甲1発明と相違する。そして、上記相違点については、上記「2(2)」において検討したとおりであるから、本件特許発明7は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。
第6 独立特許要件
異議申立がされていない請求項4~6、8~12について、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正が請求されているので、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものであるか否かを判断する。
本件特許発明4~6、8~12は、いずれも直接的又は間接的に請求項1の記載を引用し、本件特許発明1の構成を有するものであるから、本件特許発明4~6、8~12は、少なくとも上記「第5、2(1)」で挙げた相違点で甲1発明と相違する。そして、当該相違点については、上記「第5、2(2)」において検討したとおりであるから、本件特許発明4~6、8~12、甲1発明及び甲2~甲4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。
また、他に特許にすることができない理由を発見しない。
よって、本件特許発明4~6、8~12は、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものである。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法29条1項(同法113条2号)
申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1、2は、甲1に記載された発明と同一であり、本件請求項1、2に係る特許は、特許法29条1項に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきである旨申し立てている。
しかしながら、本件特許発明1、2は、上記「第5、2(1)」及び「第5、3」で検討したとおり、甲1発明とは相違点を有しており、甲1発明と同一であるとはいえず、特許法29条1項の規定に違反してされたものでない。
よって、申立人による当該申立ての理由は採用することはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、2及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700376