特許拒絶査定不服審判
2022-006478
有価物の回収装置
- 審判番号
- 2022-006478
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-553828
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2022年10月26日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】DOWAエコシステム株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】廣田 浩一
- 【請求人代理人】流 良広
- 【請求人代理人】松田 奈緒子
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 角田 慎治
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P18 .121-WY (H01M) / P18 .113-WY (H01M) / P18 .537-WY (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2021-553828「有価物の回収装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 3月17日国際公開、WO2022/054723、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)9月3日(優先権主張 令和2年9月9日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年11月 8日付け:拒絶理由通知書
令和3年12月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 2月 7日付け:拒絶査定(原査定)
令和4年 4月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 6月30日付け:拒絶理由通知書
(以下「当審拒絶理由(1)」という。)
令和4年 8月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 8月31日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
(以下「当審拒絶理由(2)」という。)
令和4年 9月 7日 :意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和4年2月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由1(新規性)
この出願の請求項1~3、5、6、9、11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献A又はBに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性)
この出願の請求項1~13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献A~Fに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A.特開2016-22395号公報
B.特開2010-3512号公報
C.特開2020-64855号公報
D.特開平8-217401号公報
E.特開2011-117270号公報
F.特開2016-207648号公報
第3 当審拒絶理由の概要
1 当審拒絶理由(1)の概要は次のとおりである。
理由1(進歩性)
この出願の請求項1~12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1~5に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2016-22395号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2010-3512号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2020-64855号公報(拒絶査定時の引用文献C)
4.特開平8-217401号公報(拒絶査定時の引用文献D)
5.特開2011-117270号公報(拒絶査定時の引用文献E)
2 当審拒絶理由(2)の概要は次のとおりである。
理由1(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
・請求項 8
請求項8には、「前記熱処理物」とあるが、少なくとも引用元の請求項1を含むこの記載以前に「熱処理物」はなく、「前記」に対応する構成が不明確である。
第4 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明8」という。)は、令和4年9月7日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
内部に気体が位置する気体加熱部と、
前記気体加熱部に設けられ、略水平方向に火炎を放射する火炎放射手段と、
前記気体加熱部の上方に設けられた突起と、
前記突起上に載置され、有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能であり、気体が流通可能な格子状の支持手段と、
熱処理物から前記有価物を回収する有価物回収手段と、
を含むことを特徴とする有価物の回収装置。」
また、本願発明2~8は、本願発明1を減縮した発明である。
第5 当審拒絶理由(1)の理由1(進歩性)について
1 引用文献1及び引用発明1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、強調のため当審で付与した。)。
「【発明を実施するための形態】
【0033】
図1乃至図4を参照して、本発明の実施形態に係る廃リチウムイオン電池の処理システム及びそのシステムを使用した処理方法について説明する。
この廃リチウムイオン電池の処理システムは、複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筺体内に複数収納されてなる電池パック100に加熱処理を施して有用金属を回収するものであって、主に電池パック100が格納される複数の耐熱容器20と、温度制御可能な熱処理炉10と、熱処理炉10に耐熱容器20を投入及び排出可能な容器搬送装置30を備えている。
【0034】
熱処理炉10は、図1及び図2に示すように、耐火材で覆われた鋼板で炉壁11が構成された略円筒状の縦型炉であり、ガスバーナー15によって加熱される。ガスバーナー15の近傍にはファン16を介して送られる、燃焼用及び冷却用として使用されるエアーを炉内に供給するためのノズル17が設けられている。炉内の温度及び圧力は温度センサー18A及び圧力センサー19Aによって検知され、温度調節計18B及び圧力調節計19Bによって調節管理されている。なお、図1ではガスバーナー15を一台設けた構成にしたが、四台など複数台設けるようにしてもよい。
また、熱処理炉10の炉床12は、炉壁11と同様に耐火材で覆われた鋼板からなり、
モーター41,動力を伝えるチェーン42,スプロケット43などからなる炉床回転装置
40によって水平方向に回転させられる。
熱処理炉10には、耐熱容器20が複数個、ここでは8個投入され、炉床12上で環状
にかつ隣接する耐熱容器20に対しては一定の間隔をおいた状態で載置されている。」
「【0037】
電池パック100が格納される耐熱容器20は、図3及び図4に示すように、全体的には円筒形状であり、内部には4段に積層された電池パック100が2組、計8個の電池パック100が格納されている。電池パック100はいずれもハイブリッド自動車や電気自動車などから取外されたままの状態のものを複数段(4段)重ねたものである。・・・(略)」
「【0038】
特に耐熱容器20については、その上蓋部20Aが受け皿部20Bに対して一定の距離L分、浮き上がり可能な状態で取付けられる構成にしたものであるので、加熱処理時の反応によって耐熱容器20の内部の圧力が高まる事態が発生したとしても上蓋部20Aの浮き上がりによって高まった圧力が下げられるので耐熱容器20が損傷などすることが防止される。
なお、耐熱容器20の受け皿部20Bに、加熱処理時にプラスチックなどの溶解物を受けて溜め込む凹部(図示しない)を形成してプラスチックなどの溶解物が耐熱容器20から外にこぼれ出すことを防止するようにしてもよい。
本実施形態では、耐熱容器20はステンレス鋼(SUS304)で少なくとも650度(℃)の温度に耐えることができるものを採用した。」
「【0040】
ダクト61の熱処理炉10側は、図2に示すように、熱処理炉10の上面中央から熱処理炉10内に導かれ、その先端61a位置は、耐熱容器20内の電池パック100の上面位置より低くなるように設定されている。ここでは、ダクト61の先端(下端)61aの位置を耐熱容器20内で4段重ねにされた電池パック100の上から3段目と4段目の間の高さと同じ位置にしている。このように、ダクト61の熱処理炉側先端を、耐熱容器20内の電池パックの上面位置より低く設定することで、熱処理炉10内で熱風は上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流するので、内部の電池パック100は効率的に乾留される。よって、特に、電池パック100を耐熱容器20内において複数積層(本実施形態では4段)しても十分リサイクル処理することができるので仮に処理すべき電池パック100の数が大量であっても短時間で処理することができる。」
「【0048】
・・・(中略)・・・
なお、冷却室に運ばれた加熱処理済みの耐熱容器20は、内部の電池パック100において炭化混合物が取り除かれたものからリチウム,コバルト,ニッケル,マンガンなどの有用金属をさらに分離する処理が行われる。
【0049】
以上のように構成された廃リチウムイオン電池の処理方法及びその処理システムによれば、複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筺体内に複数収納されてなる電池パック100を、排気口23が設けられた耐熱容器20に格納した後、熱処理炉10に投入して耐熱容器20の外側から加熱することで耐熱容器20内部の電池パック100を乾留して炭化混合物を分離するようにしたので、電池パック100の樹脂製の筺体やリチウムイオン電池の負極材料に使用されるカーボンなどが炭化混合物として有用金属が含まれる金属から分離される。また、そのときの加熱温度は650度(℃)で、アルミニウムの融点(660度(℃))よりも低い温度でアルミニウムは溶けないように設定されているので、アルミニウムが溶け出した場合と比較して、その後の処理として有用金属が含まれる金属から有用金属を分離する処理を容易に行うことができる。」
「【0052】
本実施形態では、炉床12が回転する熱処理炉10を使用することで均一的な加熱処理を行ったが、耐熱容器20をその外側からアルミニウムの融点よりも低い温度で加熱することで内部の電池パック100を乾留して炭化混合物を分離することが可能な熱処理炉であれば、必ずしも炉床12が回転するものでなくてもよい。また、熱処理炉10内に複数の耐熱容器20を連続して投入・排出するようにしたがバッチ式のものでも適用可能である。
【0053】
また、本実施形態では、熱処理炉10内の炉温を650度(℃)まで昇温して温度を一定に保持するように、アルミニウムが溶融しない範囲で極力高温にして処理時間を短くするようしたが、加熱処理の温度は、プラスチックの分解温度(300度(℃))以上であれば樹脂製材料は分解され金属から分離されるので特に限定されるものではない。
【0054】
さらに、本実施形態では、電池パック100を格納した耐熱容器20を酸化雰囲気下の熱処理炉10に投入して加熱処理するようしたが、還元雰囲気下あるいは不活性雰囲気下としても適用可能である。
特に、熱処理炉10内を還元雰囲気にすれば耐熱容器20を使用することなく直接投入された電池パック100に対して加熱処理することで電池パック100を乾留して炭化混合物を分離するとともに電池内の電解液を揮発化させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、加熱処理として、熱源としてガスを使用した熱処理炉10を使用したものについて説明したが、熱源として電気や重油を使用した各種炉を使用することもできる。また、既存の製造設備、例えば、セメント製造時に出る廃熱を利用するなどすれば熱エネルギーの有効利用が図れる。
また、本実施形態では、電池パック100を電池セルを個々に取外すことなくそのままの状態のものに対して加熱処理したものであったが、電池パック100から分解した電池モジュール(この場合も電池セルを個々に取外したものではない)単位のものを格納した耐熱容器20を熱処理炉10に投入して加熱処理したり、あるいは、電池モジュール単位のものを還元雰囲気の炉に直接投入して加熱処理することでも電池モジュールを乾留して炭化混合物を分離するとともに電池内の電解液を揮発化させることができる。」
「【図2】
[図:0001391914000001.jpg]
」
前記【図2】を参照すると、熱処理炉10を加熱するガスバーナー15は、熱処理炉10内に載置された耐熱容器20よりも高い位置に設置されていることが見て取れる。
したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「廃リチウムイオン電池の処理システムについて、
廃リチウムイオン電池の処理システムは、複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筺体内に複数収納されてなる電池パック100に加熱処理を施して有用金属を回収するものであって、主に電池パック100が格納される複数の耐熱容器20と、温度制御可能な熱処理炉10と、熱処理炉10に耐熱容器20を投入及び排出可能な容器搬送装置30を備え、
熱処理炉10は、ガスバーナー15によって加熱され、
ガスバーナー15の近傍にはファン16を介して送られる、燃焼用及び冷却用として使用されるエアーを炉内に供給するためのノズル17が設けられ、ガスバーナー15を複数台設けるようにしてもよく、
熱処理炉10には、耐熱容器20が複数個投入され、炉床12上で環状にかつ隣接する耐熱容器20に対しては一定の間隔をおいた状態で載置され、
熱処理炉10を加熱するガスバーナー15は、熱処理炉10内に載置された耐熱容器20よりも高い位置に設置され、
電池パック100が格納される耐熱容器20は、全体的には円筒形状であり、内部には電池パック100が格納され、
耐熱容器20はステンレス鋼を採用し、
熱処理炉10内で熱風は上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流するので、内部の電池パック100は効率的に乾留され、よって、電池パック100を耐熱容器20内において複数積層しても十分リサイクル処理することができ、
加熱処理済みの耐熱容器20は、内部の電池パック100において炭化混合物が取り除かれたものからリチウム,コバルト,ニッケル,マンガンなどの有用金属をさらに分離する処理が行われる、
廃リチウムイオン電池の処理システム。」
2 引用文献2の記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0033】
以下、電池バック(当審注:「電池バック」は「電池パック」の誤記と認められる。以下同様。)のリサイクル方法および電池バックのリサイクル装置の一例を、以下に、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態における電池パックは、上述した図8に示す電池パック300と同じ構成を有するため、その説明を省略する。
【0034】
本実施の形態における電池パックのリサイクル方法は、複数の単電池を直列接続してなる組電池と前記組電池を制御する制御部とを含む電池バックをリサイクルする方法であって、図1に示すように、充電状態の組電池を収容した前記電池パックをそのまま焙焼する工程(S110)を有する。さらに、本実施の形態の電池パックのリサイクル方法は、焙焼された電池パックを解体し(S112)、単電池と単電池以外の部品とに分別する工程(S114,S140)と、分別された単電池を粉砕する工程(S116)と、粉砕された電池を洗浄し篩い分ける工程(S118)と、篩い分け後に篩下のスラリーを脱水して(正極及び負極に用いられた金属を回収する工程S120,S112)と、篩い分けの後に篩上の金属を磁石を用いて磁気分離してニッケルを含有する金属を回収する工程(S130,S132)とを有する。」
「【0037】
[焙焼工程]
まず、図1に示す充電状態の組電池を収容した前記電池パックをそのまま焙焼する工程(S110)は、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パックを解体せず、そのまま、電池パック内の樹脂部品や絶縁材料に用いた樹脂の熱分解可能温度以上で且つ電池パック内の金属部品の融点以下の第1焙焼温度、例えば500℃から600℃程度の焙焼温度で焙焼する。
・・・(中略)・・・
【0039】
さらに詳細に説明すると、1次燃焼室の火格子22上に、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パック10を一つまたは複数個配置し、適宜空気を1次燃焼室20内に送風しながら、電池パック10の配置位置に対して下方から加熱バーナー26を用いて加熱する。1次燃焼室内の温度を第1焙焼温度(例えば500~600℃)に保つように、温度センサ24からの出力をもとにバーナー制御装置28によって加熱バーナー26の燃焼量を制御する。これにより、加熱により電池パック10内の樹脂材料が熱分解して生じた熱分解ガスが、1次燃焼室の下部にて空気と接触して可燃範囲でバランスしながら燃焼し、この熱は電池パック加熱用熱源として利用されるとともに、樹脂が燃焼する際に、1次燃焼室内の酸素を消費し、その結果、電池パック10内の組電池の焙焼が非酸化性雰囲気下または還元雰囲気下で行われ、酸化を抑制して、有価金属単体を効率よく回収することができる。特に、電池パック10の側面、上部を密閉し、下部のみ開放して加熱することにより、熱分解ガスは、1次燃焼室20の下部に生成し易くなる。なお、第1焙焼温度における第1焙焼時間は、電池パック内の樹脂材料の消失に必要な時間で適宜選択される。例えば、ある電池パックを用いた実証試験においては、第1場宇晶温度を500℃、第1焙焼時間を1時間に設定することで有価金属単体を効率よく回収することが確認できた。」
「【図1】
[図:0001391914000002.jpg]
」
「【図2】
[図:0001391914000003.jpg]
」
引用文献2の【図2】を参照すると、加熱バーナー26は1次燃焼室20の下部に設置され、加熱バーナー26から出る炎は、ほぼ水平方向に放出されていることが見て取れる。
したがって、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「電池パックのリサイクル装置において、電池パックのリサイクル方法は、
充電状態の組電池を収容した前記電池パックをそのまま焙焼する工程を有し、
さらに、焙焼された電池パックを解体し、単電池と単電池以外の部品とに分別する工程と、
分別された単電池を粉砕する工程と、粉砕された電池を洗浄し篩い分ける工程と、篩い分け後に篩下のスラリーを脱水して正極及び負極に用いられた金属を回収する工程と、篩い分けの後に篩上の金属を磁石を用いて磁気分離してニッケルを含有する金属を回収する工程とを有し、
充電状態の組電池を収容した前記電池パックをそのまま焙焼する工程は、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パックを解体せず、そのまま、電池パック内の樹脂部品や絶縁材料に用いた樹脂の熱分解可能温度以上で且つ電池パック内の金属部品の融点以下の第1焙焼温度、例えば500℃から600℃程度の焙焼温度で焙焼し、
1次燃焼室の火格子22上に、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パック10を一つまたは複数個配置し、適宜空気を1次燃焼室20内に送風しながら、電池パック10の配置位置に対して下方から加熱バーナー26を用いて加熱し、
加熱バーナー26は1次燃焼室20の下部に設置され、加熱バーナー26から出る炎は、ほぼ水平方向に放出され、
加熱により電池パック10内の樹脂材料が熱分解して生じた熱分解ガスが、1次燃焼室の下部にて空気と接触して可燃範囲でバランスしながら燃焼し、この熱は電池パック加熱用熱源として利用されるとともに、樹脂が燃焼する際に、1次燃焼室内の酸素を消費し、その結果、電池パック10内の組電池の焙焼が非酸化性雰囲気下または還元雰囲気下で行われ、酸化を抑制して、有価金属単体を効率よく回収することができる、
電池パックのリサイクル装置。」
3 引用文献3の記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0027】
本発明の実施の形態では、図1に示す手順によって、リチウムイオン二次電池に含まれるアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅等の各種有価物を効率的に分離回収する。回収に用いられるリチウムイオン二次電池としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムイオン二次電池の製造過程で発生した不良品のリチウムイオン二次電池、使用機器の不良、使用機器の寿命などにより廃棄されるリチウムイオン二次電池、寿命により廃棄される使用済みのリチウムイオン二次電池などが挙げられる。
【0028】
<熱処理工程>
図1に示すように、先ず、リチウムイオン二次電池(LIB)に対して、熱処理工程(熱処理)が行われる。熱処理温度は、正極集電体及び負極集電体のうち、低い融点の集電体の融点以上、かつ高い融点の集電体の融点未満の温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、670℃以上が好ましく、670℃以上1100℃以下がより好ましく、700℃以上900℃以下が特に好ましい。熱処理温度が、670℃未満であると、低い融点の集電体の脆化が十分に生じないことがあり、1100℃を超えると、低い融点の集電体、高い融点の集電体、及び外装容器のいずれもが脆化し、破砕及び分級による集電体および外装容器の分離効率が低下する。また、前記リチウムイオン二次電池の前記外装容器が前記熱処理中に溶融する場合、前記リチウムイオン二次電池の下に前記溶融金属を回収する受け皿を配置する事で、外装容器由来の金属と電極部を容易に分離する事が出来る。
【0029】
所定の熱処理温度で熱処理を行うことにより、例えば、正極集電体がアルミニウムであり、負極集電体が銅である積層体において、アルミニウム箔からなる正極集電体が脆化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなる。この正極集電体の脆化は溶融もしくは酸化反応により生ずる。また、溶融して流れ落ちたアルミニウムは、受け皿に回収される。一方、銅からなる負極集電体は、銅の融点未満の温度で熱処理されるため、溶融することがなく、後述する乾式磁選工程において、高度に選別できるようになる。また、積層体及びリチウムイオン二次電池のいずれかを酸素遮蔽容器に収容して熱処理したときは、アルミニウム箔からなる正極集電体が溶融して脆化し、後述する破砕工程において細粒化しやすくなり、一方、銅からなる負極集電体は、前記酸素遮蔽容器の酸素遮蔽効果および積層体やリチウムイオン二次電池に含まれるカーボン等の負極活物質による還元効果により、酸素分圧が低い状態で熱処理されるため、酸化による脆化が生じない。このため、破砕工程における破砕により、正極集電体は細かく破砕され、負極集電体は、破砕後も粗粒として存在し、後述する分級工程において、より効果的かつ高度に選別できるようになる。」
「【0034】
<破砕工程>
次に、熱処理工程で得られた熱処理物(LIB熱処理物)を破砕する破砕工程が行われる。破砕工程では、熱処理物を衝撃により破砕して破砕物を得ることが好ましい。
・・・(略)」
「【0038】
<分級工程>
次に、破砕工程で得られた破砕物を粗粒産物と細粒産物とに分級する分級工程が行われる。分級方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振動篩、多段式振動篩、サイクロン、JIS Z8801の標準篩、湿式振動テーブル、エアーテーブルなどを用いて行うことができる。
【0039】
分級工程で用いる分級点としては、0.45mm以上であれば目的に応じて適宜選択することができる。例えば、0.6~2.4mmの分級点を用いることが望ましい。・・・(略)」
「【0041】
<乾式磁選工程>
次に、分級工程で得られた粗粒産物に対しては、乾式磁選工程が行うことができる。磁着物として鉄が回収され、非磁着物として銅などの負極集電体由来金属が回収される。
【0042】
<湿式磁選工程>
一方、分級工程で得られた細粒産物に対しては、湿式磁選工程(湿式磁選)が行われ、磁着物としてコバルト、ニッケルが回収される。先にも説明したように、分級工程で得られた細粒産物を磁選するに際し、乾式で磁選した場合、粒子間の付着水分により粒子の凝集が生じ、負極集電体由来金属粒子および細粒産物に10%以上含まれる負極活物質微粒子とコバルト・ニッケル粒子を十分に分離できない。本発明では、湿式磁選工程において負極活物質由来の物質と負極集電体由来金属を非磁着産物スラリーに分離し、コバルトおよびニッケルを磁着物に回収する。
この磁着物中には、例えば、磁着物中に含まれる負極活物質由来のカーボンを5%未満とすることができる。また、磁着物中に含まれる負極集電体由来金属(代表的には銅)を0.2%未満とすることができる。・・・(略)」
「【0047】
得られた細粒産物については、ドラム型磁選機を用いて、磁力:1500G、ドラム回転数45rpm、固液比10%、スラリー供給速度100ml/minで湿式磁選を行い、磁着物と非磁着物スラリーを回収した。この非磁着物のスラリーを固液分離し、固形分を分離後、溶液に炭酸ガスの吹込みを行い、炭酸リチウムを沈殿させた。
【0048】
一方、粗粒産物については、ハンドマグネットを用いて、磁力:1500G、粗粒産物からの前記ハンドマグネットの距離が10mm、の条件で乾式磁選を行い、磁着物と非磁着物を回収した。」
したがって、引用文献3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「不良品のリチウムイオン二次電池、使用機器の不良、使用機器の寿命などにより廃棄されるリチウムイオン二次電池、寿命により廃棄される使用済みのリチウムイオン二次電池に含まれるアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅等の各種有価物を効率的に分離回収する手順であって、
先ず、リチウムイオン二次電池(LIB)に対して、熱処理工程(熱処理)が行われ、熱処理温度は、正極集電体及び負極集電体のうち、低い融点の集電体の融点以上、かつ高い融点の集電体の融点未満の温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、670℃以上が好ましく、670℃以上1100℃以下がより好ましく、
所定の熱処理温度で熱処理を行うことにより、例えば、正極集電体がアルミニウムであり、負極集電体が銅である積層体において、溶融して流れ落ちたアルミニウムは、受け皿に回収され、銅からなる負極集電体は、銅の融点未満の温度で熱処理されるため、溶融することがなく、後述する乾式磁選工程において、高度に選別できるようになり、
次に、熱処理工程で得られた熱処理物(LIB熱処理物)を破砕する破砕工程が行われ、破砕工程では、熱処理物を衝撃により破砕して破砕物を得、
次に、破砕工程で得られた破砕物を粗粒産物と細粒産物とに分級する分級工程が行われ、分級工程で用いる分級点としては、例えば、0.6~2.4mmの分級点を用いることが望ましく、
次に、分級工程で得られた粗粒産物に対しては、乾式磁選工程が行うことができ、磁着物として鉄が回収され、非磁着物として銅などの負極集電体由来金属が回収され、
一方、分級工程で得られた細粒産物に対しては、湿式磁選工程(湿式磁選)が行われ、磁着物としてコバルト、ニッケルが回収され、
得られた細粒産物については、ドラム型磁選機を用いて、磁力:1500G、ドラム回転数45rpm、固液比10%、スラリー供給速度100ml/minで湿式磁選を行い、磁着物と非磁着物スラリーを回収し、
一方、粗粒産物については、ハンドマグネットを用いて、磁力:1500G、粗粒産物からの前記ハンドマグネットの距離が10mm、の条件で乾式磁選を行い、磁着物と非磁着物を回収すること。」
4 引用文献4の記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1(a),(b)に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図2に対応する同一部材には同じ符号が付してある。すなわち、図示実施例において、燃料改質器の基本構造は図2と同様であるが、バーナ2の前方には符号7で示す火炎包囲筒が新たに追加装備されている。この火炎包囲筒7はバーナ2の口金2aから炉内へ噴き出す火炎6(火炎長は改質器の運転条件によって変わる)を包囲してその外周側に位置する二重円筒構造の改質管3の内壁面との間を隔離する役目を果たすものであり、温度1200℃以上の高温にも耐える耐火レンガ,セラミックなどの材質で作られており、かつその周壁面には多数の小穴7aが分散開口している。なお、8は火炎包囲筒6を炉内の定位置に保持する筒サポートである。
【0011】かかる火炎包囲筒7をバーナ2の前方に設けたことにより、バーナの燃焼中に図1(b)で表すように火炎6が偏った場合でも、火炎6は包囲筒7に阻まれて改質管2の筒壁面に直接触れることがない。また、バーナの燃焼熱は、火炎6で高温に加熱された包囲筒7からの輻射熱、および包囲筒7の壁面に開口した前記小穴7aを通じて包囲筒7と改質管3の内筒との間の間隙に流れる燃焼ガスにより改質管3に伝熱して改質管内に充填した改質触媒4を加熱する。これにより、改質管3に充填した改質触媒4が局部的に最高使用温度を超えて加熱されるような異常過熱が防げるとともに、改質触媒4は改質管3の周方向で大きな温度差を生じることなく平均的に所定の改質反応温度に加熱されて原燃料を水蒸気改質する。」
「【図1】
[図:0001391914000004.jpg]
」
5 引用文献5の記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0041】
このように、内筒(82)が加熱バーナー(81)の火炎の周囲を覆うことによって、回転ドラム(80)の一端部からドラム内に供給された骨材は、火炎に直接触れることなく、熱風と、内筒の周面からの輻射熱と、火炎からの放射熱により加熱される。
そのため、再生骨材の表面に付着している油分(アスファルト)の燃焼や劣化、更にドラム内周面へのアスファルトの付着を防止しつつ、骨材の温度を混合工程に最適な温度まで上げることが可能となる。」
「【図5】
[図:0001391914000005.jpg]
」
よって、引用文献4及び5には、バーナーに対し、バーナーが出す火炎を包囲する筒を設けることが記載されている。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)主たる引用発明を引用発明1とした対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 「内部に気体が位置する気体加熱部と、」について
引用発明1の「エアー」は、本願発明1の「気体」に相当する。そして、引用発明1の「熱処理炉10」は、「炉内」に「エアー」が「供給」され、「ガスバーナー15によって加熱され」ることから、本願発明1の「内部に気体が位置する気体加熱部」に相当する。
イ 「前記気体加熱部に設けられ、略水平方向に火炎を放射する火炎放射手段と、」について
引用発明1の「ガスバーナー15」は、ガスを燃料にして「炎」を出す装置であることは技術常識であり、当該「ガスバーナー15」による「炎」は、本願発明1の「火炎」に相当する。そして、引用発明1では、「熱処理炉10を加熱するガスバーナー15は、熱処理炉10内に載置された耐熱容器20よりも高い位置に設置され」ることから、当該「ガスバーナー15」と、本願発明1の「前記気体加熱部に設けられ、略水平方向に火炎を放射する火炎放射手段」とは、「前記気体加熱部に設けられ、火炎を放射する火炎放射手段」である点で共通する。
ウ 「前記気体加熱部の上方に設けられた突起と、」について
引用発明1には、「熱処理炉10」の上方に突起はなく、本願発明1のような「前記気体加熱部の上方に設けられた突起」について特定されていない。
エ 「前記突起上に載置され、有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能であり、気体が流通可能な格子状の支持手段と、」について
(ア)引用発明1において、「リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン」などの「有用金属」は、「廃リチウムイオン電池の処理システム」が、「複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筺体内に複数収納されてなる電池パック100」を「加熱処理」して「回収する」ものであるから、本願発明1の「有価物」に相当する。そして、引用発明1の前記「電池パック100」は、収納される「リチウムイオン電池セル」に前記「有用金属」を含むといえるから、本願発明1の「有価物を含むリチウムイオン二次電池」に相当するといえる。
(イ)引用発明1の「耐熱容器20」は、「複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筺体内に複数収納されてなる電池パック100」が「格納される」ものであるから、上記(ア)を踏まえると、本願発明1の「有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段」に相当する。
(ウ)引用発明1では、「熱処理炉10には、耐熱容器20が複数個投入され、炉床12上で環状にかつ隣接する耐熱容器20に対しては一定の間隔をおいた状態で載置され」ることから、引用発明1の「耐熱容器20」が「載置され」る「炉床12」は、「耐熱容器20」を支持するものといえる。
(エ) 以上(ア)~(ウ)を踏まえると、引用発明1の「耐熱容器20」を支持する「炉床12」と、本願発明1の「前記突起上に載置され、有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能であり、気体が流通可能な格子状の支持手段」とは、「有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能である支持手段」である点で共通する。
オ 「熱処理物から前記有価物を回収する有価物回収手段と、」について
(ア)引用発明1の「加熱処理済みの耐熱容器20」の「内部の電池パック100」は、本願発明1の「熱処理物」に相当する。
(イ)引用発明1の「廃リチウムイオン電池の処理システム」においては、「加熱処理済みの耐熱容器20は、内部の電池パック100において炭化混合物が取り除かれたものからリチウム,コバルト,ニッケル,マンガンなどの有用金属をさらに分離する処理が行われる」ことから、当該「有用金属をさらに分離する処理が行われる」手段を当然備えるものといえる。
(ウ)以上の(ア)、(イ)及び前記エ(ア)を踏まえると、引用発明1の「加熱処理済みの耐熱容器20」の「内部の電池パック100において炭化混合物が取り除かれたものからリチウム,コバルト,ニッケル,マンガンなどの有用金属をさらに分離する処理が行われる」手段は、本願発明1の「熱処理物から前記有価物を回収する有価物回収手段」に相当する。
カ 「有価物の回収装置」について
引用発明1の「廃リチウムイオン電池の処理システム」は、前記オ(ウ)に示すように、「リチウム,コバルト,ニッケル,マンガンなどの有用金属をさらに分離する処理が行われる」手段を含み、「複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筺体内に複数収納されてなる電池パック100に加熱処理を施して有用金属を回収するもの」であるから、後述の相違点を除き、本願発明1の「有価物の回収装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「内部に気体が位置する気体加熱部と、
前記気体加熱部に設けられ、火炎を放射する火炎放射手段と、
有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能である支持手段と、
熱処理物から前記有価物を回収する有価物回収手段と、
を含むことを特徴とする有価物の回収装置。」
<相違点>
相違点1
火炎放射手段が放射する火炎の方向が、本願発明1では「略水平方向」であるのに対し、引用発明1では、そのような特定がされていない点。
相違点2
本願発明1には、「前記気体加熱部の上方に設けられた突起」があるのに対し、引用発明1には、そのような特定がされていない点。
相違点3
「有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能である支持手段」は、本願発明1では、前記相違点2に係る「前記突起上に載置され」るものであるのに対し、引用発明1では、「炉床12」であって、本願発明1のような「前記突起上に載置され」るものではない点。
相違点4
「有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能である支持手段」は、本願発明1では、「気体が流通可能な格子状」のものであるのに対し、引用発明1では、「炉床12」であって、本願発明1のような「気体が流通可能な格子状」のものではない点。
(2)(1)の対比に基づく判断
事案に鑑みて、相違点4について先に検討する。
引用発明2には、「電池パックのリサイクル装置において、」「電池パックをそのまま焙焼する工程」として、「有価金属」を含む「例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パック10」を「火格子22」上に配置して、「適宜空気を1次燃焼室20内に送風しながら、電池パック10の配置位置に対して下方から加熱バーナー26を用いて加熱」する技術が開示されている。
引用発明1と引用発明2は、電池パックを熱処理して、有価物を回収する装置という同一の技術分野に属する。
しかしながら、引用発明1の「電池パック100が格納される耐熱容器20」が載置される「炉床12」に対し、引用発明2の「電池パック10」が配置される「火格子22」を適用する動機付けはない。
すなわち、引用発明1において、「炉床12」を備える「熱処理炉10」は、「電池パック100」が「複数積層」して「格納」された「耐熱容器20」に対して、加熱処理するものであって、そのための構造として、「熱処理炉10を加熱するガスバーナー15は、熱処理炉10内に載置された耐熱容器20よりも高い位置に設置され、」「熱処理炉10内で熱風は上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流するので、内部の電池パック100は効率的に乾留され、よって、電池パック100を耐熱容器20内において複数積層しても十分リサイクル処理することができ」るものである。
一方、引用発明2では、「電池パック10」を耐熱容器等の容器に格納するものではなく、「電池パックをそのまま焙焼する工程」として、「電池パック10」を「火格子22」上に配置して、「適宜空気を1次燃焼室20内に送風しながら、電池パック10の配置位置に対して下方から加熱バーナー26を用いて加熱」するものである。
要するに、引用発明1と2は、加熱処理する対象が、前者は電池パックを格納した耐熱容器であるのに対し、後者は電池パックそのままであり、そのため両者は対象を加熱処理するための構造が大きく異なるものである。
したがって、引用発明1の「電池パック100が格納される耐熱容器20」が載置される「炉床12」に対し、引用発明2の「電池パック10」が配置される「火格子22」を適用する動機付けはないといえる。
また、相違点4に係る本願発明1の構成は、引用文献3~5のいずれにも、記載も示唆もされておらず、本願の優先日前に周知技術であるともいえない。
(3)主たる引用発明を引用発明2とした対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
ア 「内部に気体が位置する気体加熱部と、」について
引用発明2の「空気」は、本願発明1の「気体」に相当する。そして、引用発明2では、「1次燃焼室の火格子22上に、」「電池パック10を一つまたは複数個配置し、適宜空気を1次燃焼室20内に送風しながら、電池パック10の配置位置に対して下方から加熱バーナー26を用いて加熱」し、「加熱により電池パック10内の樹脂材料が熱分解して生じた熱分解ガスが、1次燃焼室の下部にて空気と接触して可燃範囲でバランスしながら燃焼し、この熱は電池パック加熱用熱源として利用される」ことから、引用発明2の「1次燃焼室20の下部」は、本願発明1の「内部に気体が位置する気体加熱部」に相当する。
イ 「前記気体加熱部に設けられ、略水平方向に火炎を放射する火炎放射手段と、」について
引用発明2の「炎」は、本願発明1の「火炎」に相当する。そして、引用発明2において、「加熱バーナー26は1次燃焼室20の下部に設置され、加熱バーナー26から出る炎は、ほぼ水平方向に放出され」ることから、当該「加熱バーナー26」は、本願発明1の「前記気体加熱部に設けられ、略水平方向に火炎を放射する火炎放射手段」に相当する。
ウ 「前記気体加熱部の上方に設けられた突起と、」について
引用発明2の「1次燃焼室20の下部」の上方には、「火格子22」があるものの、本願発明1のような「前記気体加熱部の上方に設けられた突起」については特定されていない。
エ 「前記突起上に載置され、有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能であり、気体が流通可能な格子状の支持手段と、」について
(ア)引用発明2において、「ニッケル」などの「有価金属」は、「電池パックのリサイクル装置」が、「ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パック10」を「焙焼する工程」、「分別する工程」、「粉砕する工程」及び「篩い分ける工程」を介して「回収する」ものであるから、本願発明1の「有価物」に相当する。
(イ)引用発明2の「リチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パック10」は、前記「有価金属」を含むといえることから、本願発明1の「有価物を含むリチウムイオン二次電池」に相当するといえる。
(ウ)本願発明1の「対象物収容手段」は、本願の明細書の段落【0030】を参照すると、「例えば、コンテナ、ドラム缶などが挙げられる」ものであることから、引用発明2には、本願発明1のような「対象物収容手段」は特定されていない。
(エ)引用発明2では、「1次燃焼室の火格子22上に、」「電池パック10を一つまたは複数個配置し、適宜空気を1次燃焼室20内に送風しながら、電池パック10の配置位置に対して下方から加熱バーナー26を用いて加熱」し、「加熱により電池パック10内の樹脂材料が熱分解して生じた熱分解ガスが、1次燃焼室の下部にて空気と接触して可燃範囲でバランスしながら燃焼」することから、引用発明2の「火格子22」は、「電池パック10」を支持するものであり、「1次燃焼室の下部」から「加熱」した「空気」が「1次燃焼室の火格子22上」に伝わる構造といえる。
(オ)以上(ア)~(エ)を踏まえると、引用発明2の「電池パック10」を支持する「火格子22」と、本願発明1の「前記突起上に載置され、有価物を含むリチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段を支持可能であり、気体が流通可能な格子状の支持手段」とは、「有価物を含むリチウムイオン二次電池を支持可能であり、気体が流通可能な格子状の支持手段」である点で共通する。
オ 「熱処理物から前記有価物を回収する有価物回収手段と、」について
(ア)引用発明2の「焙焼された電池パック」は、本願発明1の「熱処理物」に相当する。
(イ)前記エ(ア)で示したように、引用発明2において、「ニッケル」などの「有価金属」は、「電池パックのリサイクル装置」が、「ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パック10」を「焙焼する工程」、「分別する工程」、「粉砕する工程」及び「篩い分ける工程」を介して「回収する」ものであるから、当該「有価金属」を「回収」するための当該「分別する工程」、「粉砕する工程」及び「篩い分ける工程」を行う手段を当然備えるものといえる。
(ウ)以上の(ア)、(イ)及び前記エ(ア)を踏まえると、引用発明2の前記「分別する工程」、「粉砕する工程」及び「篩い分ける工程」を行う手段は、本願発明1の「熱処理物から前記有価物を回収する有価物回収手段」に相当する。
カ 「有価物の回収装置」について
引用発明2の「電池パックのリサイクル装置」は、前記エ(ア)に示すように、「有価金属」を含む「ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池からなる単電池を直列接続してなる組電池を収容する電池パック10」を「焙焼する工程」、「分別する工程」、「粉砕する工程」及び「篩い分ける工程」を介して「有価金属」を「回収する」ものであるから、後述の相違点を除き、本願発明1の「有価物の回収装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「内部に気体が位置する気体加熱部と、
前記気体加熱部に設けられ、略水平方向に火炎を放射する火炎放射手段と、
有価物を含むリチウムイオン二次電池を支持可能であり、気体が流通可能な格子状の支持手段と、
熱処理物から前記有価物を回収する有価物回収手段と、
を含むことを特徴とする有価物の回収装置。」
<相違点>
相違点5
本願発明1には、「前記気体加熱部の上方に設けられた突起」があるのに対し、引用発明2には、そのような特定がされていない点。
相違点6
「有価物を含むリチウムイオン二次電池を支持可能であり、気体が流通可能な格子状の支持手段」は、本願発明1では、前記相違点5に係る「前記突起上に載置され」るものであるのに対し、引用発明2には、そのような特定がされていない点。
相違点7
「気体が流通可能な格子状の支持手段」が支持するのは、本願発明1では、「リチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段」であるのに対し、引用発明2では、「電池パック10」であって、本願発明1のような「リチウムイオン二次電池が収容された対象物収容手段」ではない点。
(4)(3)の対比に基づく判断
事案に鑑みて、相違点7について先に検討する。
引用発明1には、「複数個のリチウムイオン電池セルが配列された電池モジュールが箱型筺体内に複数収納されてなる電池パック100に加熱処理を施して有用金属を回収する」ための「廃リチウムイオン電池の処理システム」において、「ステンレス鋼」からなる「耐熱容器20」に、「電池パック100が格納される」技術が開示されている。
引用発明2と引用発明1は、電池パックを熱処理して、有価物を回収する装置という同一の技術分野に属する。
しかしながら、引用発明2の「火格子22」上に配置される「電池パック10」に対し、引用発明1の「熱処理炉10」の「炉床12」に載置される「電池パック100が格納される耐熱容器20」を適用する動機付けはない。
すなわち、引用発明2では、「電池パック10」を耐熱容器等の容器に格納するものではなく、「電池パックをそのまま焙焼する工程」として、「電池パック10」を「火格子22」上に配置して、「適宜空気を1次燃焼室20内に送風しながら、電池パック10の配置位置に対して下方から加熱バーナー26を用いて加熱」するものである。
一方、引用発明1の「炉床12」を備える「熱処理炉10」は、「電池パック100」が「複数積層」して「格納」された「耐熱容器20」に対して、加熱処理するものであって、そのための構造として、「熱処理炉10を加熱するガスバーナー15は、熱処理炉10内に載置された耐熱容器20よりも高い位置に設置され、」「熱処理炉10内で熱風は上方から下方へまた下方から上方へ大きく対流するので、内部の電池パック100は効率的に乾留され、よって、電池パック100を耐熱容器20内において複数積層しても十分リサイクル処理することができ」るものである。
要するに、引用発明2と1は、加熱処理する対象が、前者は電池パックそのままであるのに対し、後者は電池パックを格納した耐熱容器であり、そのため両者は対象を加熱処理するための構造が大きく異なるものである。
したがって、引用発明2の「火格子22」上に配置される「電池パック10」そのままに対し、引用発明1の「熱処理炉10」の「炉床12」に載置される「電池パック100が格納される耐熱容器20」を適用し、「電池パック10」を「耐熱容器20」に格納する動機付けはないといえる。
また、相違点7に係る本願発明1の構成は、引用文献3~5のいずれにも、記載も示唆もされておらず、本願の優先日前に周知技術であるともいえない。
(5)小括
前記(2)及び(4)のことから、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明1、引用発明2及び引用文献3~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2~8について
本願発明2~8は、本願発明1を減縮した発明であるから、前記相違点4に係る本願発明1の構成、又は前記相違点7に係る本願発明1の構成を備えるものである。よって、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2及び引用文献3~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和4年9月7日になされた手続補正により補正された請求項1~8は、前記相違点4又は相違点7に係る構成を有するものとなった。これらの構成は、原査定における引用文献A(引用文献1)~引用文献E(引用文献5)には記載されておらず、本願の優先日前における周知技術でもない。
また、引用文献Fには、特に段落【0017】~【0034】及び【図1】を参照すると、ニッケル、コバルト等を含むリチウムイオン電池10が内部に配置された電池保護コンテナ1の外面に火炎を当てることにより、火炎による熱をリチウムイオン電池10に伝達する加熱工程と、ニッケル、コバルト等を回収する回収工程と、を有するリチウムイオン電池の処理方法が開示されているものの、当該電池保護コンテナ1を支持する手段として、前記相違点4に係る本願発明1のような「気体が流通可能な格子状」の構成は開示されておらず、また、引用発明2の「火格子22」上に配置されることにより「下方から加熱バーナー26を用いて加熱」される「電池パック10」、すなわち、直接加熱バーナー26の炎が当てられない「電池パック10」に対し、引用文献Fに記載された、「外面に火炎を当てる」用途である「電池保護コンテナ1」を適用する動機付けはない。
よって、本願発明1~8は、引用文献A又はBに記載された発明と同一ではなく、また、当業者であっても、原査定における引用文献A~Fに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の拒絶の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)を維持することはできない。
第8 当審拒絶理由(2)の理由1(明確性)について
当審では、令和4年8月31日付けで、前記「第3」の「2」で示した拒絶の理由を通知したところ、当該拒絶の理由に対し、令和4年9月7日になされた手続補正において、請求項1の「有価物を回収する」を「熱処理物から前記有価物を回収する」との補正がなされた結果、当該拒絶の理由は解消した。
第9 むすび
以上のとおり、本願発明1~8は、引用発明1又は引用発明2と同一ではなく、また、引用発明1、引用発明2及び引用文献3~5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-006478