特許異議申立
2022-700366
梁補強金具、梁補強構造及び梁補強方法
- 審判番号
- 2022-700366
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-027472
- 登録番号
- 6960423
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2023年05月11日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】センクシア株式会社
- 【権利者代理人】井上 誠一
- 【異議申立人】コーリョー建販 株式会社
- 【異議申立人代理人】小川 護晃
- 審判長/審判官
- 審判長 西村 泰英
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 菅家 裕輔
- 分類
- P1651.55 -ZAA(F16L) / P1651.537-ZAA(F16L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条1号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6960423号発明「梁補強金具、梁補強構造及び梁補強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6960423号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第6960423号の請求項1ないし4、6、7に係る特許を取り消す。
特許第6960423号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6960423号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成31年2月19日にされたものであり、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年1月8日付け 拒絶理由通知書
令和3年3月11日 意見書、及び手続補正書の提出
令和3年6月1日付け 拒絶理由通知書
令和3年7月19日 意見書、及び手続補正書の提出
令和3年10月1日付け 特許査定
令和3年10月13日 特許権の設定登録
令和3年11月5日 特許掲載公報の発行
令和4年4月28日 特許異議申立人 コーリョー建販株式会社に
よる請求項1ないし7に係る特許に対する特
許異議の申立て
令和4年7月13日付け 取消理由通知書
令和4年8月29日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年12月14日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和5年2月3日 特許権者による意見書の提出
なお、特許異議申立人に対して、令和4年9月9日付けの訂正請求があった旨の通知を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが何ら応答がなかった。
第2 訂正の請求
1 訂正の内容
令和4年8月29日にした訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の事項からなる(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、
フランジ部と、
前記フランジ部の一方の側に突出して前記貫通孔に挿入される筒状の本体部と、
を具備し、
前記フランジ部に対して、前記本体部の逆側に凸部が形成され、
軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さいことを特徴とする梁補強金具。」とあるのを、
「ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、
外周部が全周にわたってウェブに溶接されるフランジ部と、
前記フランジ部の一方の側に突出して前記貫通孔に挿入される筒状の本体部と、
を具備し、
前記フランジ部に対して、前記本体部の逆側に、筒状部材設置の際の位置決め及びずれ止めのための凸部が形成され、
軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さいことを特徴とする梁補強金具。」と訂正する。
(2)訂正事項2
請求項5を削除する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、「フランジ部」に対して、「外周部が全周にわたってウェブに溶接される」ことを限定し、「凸部」に対して、「筒状部材設置の際の位置決め及びずれ止めのための」ものであることを限定したものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、明細書の段落【0022】、【0031】、図3及び図6に記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、アのように、訂正前の請求項1の記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項5を削除するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項5を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし7について、請求項2ないし7は、それぞれ請求項1を直接あるいは間接的に引用するものであるから、請求項2ないし7は、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、訂正前の請求項1ないし7の一群の請求項について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりであり、本件訂正後の本件特許の請求項1ないし7に係る発明(それぞれ、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明7」という。)は、それぞれ本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものである。
「【請求項1】
ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、
外周部が全周にわたってウェブに溶接されるフランジ部と、
前記フランジ部の一方の側に突出して前記貫通孔に挿入される筒状の本体部と、
を具備し、
前記フランジ部に対して、前記本体部の逆側に、筒状部材設置の際の位置決め及びずれ止めのための凸部が形成され、
軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さいことを特徴とする梁補強金具。
【請求項2】
軸方向における前記本体部の幅が、前記フランジ部の幅より大きいことを特徴とする請求項1記載の梁補強金具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の梁補強金具を用いた梁補強構造であって、前記本体部が前記貫通孔に挿入された状態で、前記フランジ部の外周部がウェブに溶接され、前記本体部の前記貫通孔から突出する部分が、前記フランジ部と前記凸部とを合わせた幅より小さく形成されていることを特徴とする梁補強構造。
【請求項4】
前記凸部および前記本体部の前記貫通孔から突出する部分をガイドとして、それぞれに筒状部材が取り付けられており、前記筒状部材が、前記梁の周囲に配置された鉄筋に固定された支持部材によって支持されていることを特徴とする請求項3記載の梁補強構造。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の梁補強金具を用いた梁補強方法であって、
前記梁補強金具の前記本体部を、梁のウェブに形成された貫通孔に挿入し、前記梁補強金具を前記梁に溶接し、前記凸部および前記本体部の前記貫通孔から突出する部分をガイドとして、それぞれに筒状部材を取り付けることを特徴とする梁補強方法。
【請求項7】
前記筒状部材が、前記梁の周囲に配置された鉄筋に固定された支持部材によって支持されることを特徴とする請求項6記載の梁補強方法。」
第4 取消理由の概要
当審において令和4年12月14日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
[理由](新規事項)令和3年3月11日付け手続補正書でした、請求項1の記載に「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい」という事項を追加する補正、及び明細書段落【0008】の記載に「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい」という事項を追加する補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第5 令和3年3月11日提出の手続補正書でした補正の概要
1 本件訂正発明
本件訂正発明1、及び本件特許明細書の段落【0008】の記載は、下記のとおりであって、令和3年3月11日提出の手続補正書でした下記2の補正1、及び補正2の内容を含むものである(補正1、補正2の部分に対応する下線は当審が付与した。)。
「【請求項1】
ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、
外周部が全周にわたってウェブに溶接されるフランジ部と、
前記フランジ部の一方の側に突出して前記貫通孔に挿入される筒状の本体部と、
を具備し、
前記フランジ部に対して、前記本体部の逆側に、筒状部材設置の際の位置決め及びずれ止めのための凸部が形成され、
軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さいことを特徴とする梁補強金具。」
「【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、フランジ部と、前記フランジ部の一方の側に突出して前記貫通孔に挿入される筒状の本体部と、を具備し、前記フランジ部に対して、前記本体部の逆側に凸部が形成され、軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さいことを特徴とする梁補強金具である。」
2 令和3年3月11日提出の手続補正書でした補正
令和3年3月11日提出の手続補正書でした補正は、当初明細書等における請求項1を、以下の請求項1に補正(以下、「補正1」という。)することを含むものである(下線部は、補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、
フランジ部と、
前記フランジ部の一方の側に突出して前記貫通孔に挿入される筒状の本体部と、
を具備し、
前記フランジ部に対して、前記本体部の逆側に凸部が形成され、
軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さいことを特徴とする梁補強金具。」
さらに、同手続補正書でした補正は、上記当初明細書等における段落【0008】を、以下の段落【0008】に補正(以下、「補正2」という。)することを含むものである(下線部は、補正箇所を示す。)。
「【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、フランジ部と、前記フランジ部の一方の側に突出して前記貫通孔に挿入される筒状の本体部と、を具備し、前記フランジ部に対して、前記本体部の逆側に凸部が形成され、軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さいことを特徴とする梁補強金具である。」
なお、令和3年7月19日提出の手続補正書により、特許請求の範囲の全文が補正されたが、請求項1は実質的に補正されていない。また、明細書段落【0008】も補正されていない。
第6 当初明細書等の記載
当初明細書等において、凸部及びフランジ部につき、以下の記載ないし図示がある(下線は当審が付与した。)。
「【0005】
梁に梁補強金具を設置した後、梁の周囲には、鉄筋が配置されて、コンクリートが打設される。この際、梁補強金具が取り付けられた貫通部がコンクリートで埋まらないように、筒状部材であるボイド管が取り付けられる。すなわち、ボイド管は、コンクリート打設時の型枠として機能する。
【0006】
ボイド管を貫通孔に設置する際には、例えば、梁の両側にそれぞれボイド管を設置し、ボイド管を梁補強金具または梁等へ固定する方法が採られる。この際、梁の両側のボイド管の位置や向きがずれてしまうと、その後のコンクリートの打設作業や、配管の設置作業に悪影響が出る恐れがある。」
「【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、フランジ部と、前記フランジ部の一方の側に突出して前記貫通孔に挿入される筒状の本体部と、を具備し、前記フランジ部に対して、前記本体部の逆側に凸部が形成されることを特徴とする梁補強金具である。
【0009】
前記凸部は、周方向に連続して形成されることが望ましい。
【0010】
第1の発明によれば、フランジ部に対して本体部とは逆側に凸部を形成することで、その後の筒状部材の取り付け時に、凸部を筒状部材の位置決めとして利用することができる。」
「【0015】
【図1】梁補強金具1を示す斜視図。
【図2】梁補強構造10を示す斜視図であり、(a)は裏面側を示す図、(b)は表面側を示す図。
【図3】(a)は梁補強構造10を示す正面図、(b)は(a)のA-A線断面図。
【図4】梁補強金具1の他の固定構造を示す図。
【図5】梁補強構造10に筒状部材21を設置した状態を示す正面図。
【図6】梁補強構造10に筒状部材21を設置した状態を示す断面図。
【図7】梁補強構造10に筒状部材21を設置した他の状態を示す断面図。
【図8】(a)は梁補強構造10aを示す正面図、(b)は(a)のB-B線断面図。
【図9】梁補強構造10bを示す正面図。」
「【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施形態にかかる梁補強金具1を示す斜視図である。梁補強金具1は、本体部3、フランジ部5、凸部7等から構成される。梁補強金具1は、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための部材である。
【0017】
梁補強金具1は、例えば鋼材やステンレス鋼などの金属製の部材である。梁補強金具1は、全体としてリング状の部材であり、配管等が貫通する配管孔を有している。フランジ部5は、本体部3及び凸部7に対して外径が大きい部位である。フランジ部5の一方の側には筒状の本体部3が配置される。本体部3は、フランジ部5の一方の側に突出し、後述する梁の貫通孔に挿入される部位である。
【0018】
フランジ部5の他方の側(本体部3とは逆側)には、凸部7が配置される。凸部7は、フランジ部5の他方の側に突出する。なお、凸部7は、周方向に連続して全周に亘って形成される。すなわち、本実施形態では、凸部7は全体として筒状である。
【0019】
なお、本体部3、フランジ部5及び凸部7の内径は略同一であり、内周面には凹凸は形成されない。また、本体部3と凸部7の外径は、略同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、凸部7の外径は、本体部3よりも大きくてもよく、または小さくてもよい。
【0020】
次に、梁補強金具1を用いた梁補強構造10について説明する。図2(a)は、梁補強構造10の裏面側(本体部3側)から見た斜視図であり、図2(b)は、梁補強構造10の表面側(凸部7側)から見た斜視図である。また、図3(a)は、梁補強構造10の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のA-A線断面図である。
【0021】
梁11は、ウェブ15の上下にフランジ13を有するH鋼である。ウェブ15には、配管等を通すための貫通孔17が形成される。梁補強金具1は、貫通孔17に配置される。前述したように、貫通孔17には、梁補強金具1の本体部3が挿入される。フランジ部5は、貫通孔17の縁部近傍のウェブ15に面接触する。
【0022】
梁補強金具1は、ウェブ15に対して溶接によって接合される。本実施形態では、フランジ部5の外周部が、ウェブ15に対して全周にわたって溶接される。すなわち、溶接部19は、フランジ部5の外周部とウェブ15の表面との間に形成される。
【0023】
次に、梁補強金具1を用いた梁補強方法(梁補強構造10の施工方法)について説明する。まず、梁補強金具1の本体部3を、梁11の一方の側から挿入する。この際、梁補強金具1のフランジ部5は、梁11に設けられた貫通孔17よりも大きな外径を有している。また、本体部3は、梁11に設けられた貫通孔17の径よりも小さい外径を有している。このため、本体部3を貫通孔17に挿入すると、フランジ部5はウェブ15に接触させることができる。すなわち、フランジ部5は梁補強金具1を貫通孔17に挿入する際、軸方向の位置決めに使われる。」
「【0026】
なお、フランジ部5側ではなく、本体部3側を溶接してもよい。図4は、本体部3側を溶接した状態を示す図である。この場合には、まず、貫通孔17に梁補強金具1を挿入し、フランジ部5側より、クランプ等で仮固定した状態で、梁11を反転させて、本体部3側より、本体部3の全周にわたって溶接部19によって梁11と一体化される。なお、梁11を反転させる前に、必要に応じて、梁補強金具1のフランジ部5側よりフランジ部5の外周部を数点、ウェブ15に点溶接し、梁補強金具1をウェブ15に仮止めしてもよい。」
「【0029】
次に、梁補強金具1の部位に、筒状部材21を設置する。図5は、筒状部材21を設置した状態の正面図であり、図6は断面図である。筒状部材21は、梁11の両側にそれぞれ配置される。また、梁11の周囲には、複数の鉄筋23が配置される。
【0030】
鉄筋23には、支持部材25が固定される。支持部材25によって筒状部材21が支持される。なお、筒状部材21の材質は、金属製、紙製や樹脂製など材質は特に限定されない。筒状部材21が金属製の場合には、筒状部材21は、梁11または梁補強金具1に対して溶接によって接合される。
【0031】
ここで、梁11の凸部7側に筒状部材21を設置する際、筒状部材21の端部を梁補強金具1の凸部7に挿入するように配置する。このようにすることで、筒状部材21の位置決めが容易であるとともに、筒状部材21のずれを抑制することができる。すなわち、凸部7を、筒状部材21を設置する際の位置決め及びずれ止めのガイドとして機能させることができる。なお、梁11の本体部3側に筒状部材21を設置する際には、筒状部材21の端部を梁補強金具1の本体部3に挿入するように配置すればよい。
【0032】
この状態で、必要に応じて筒状部材21の端部を塞ぎ、コンクリート27(図7参照)を打設することで、貫通孔17を塞ぐことなく鉄筋コンクリート製の梁を形成することができる。」
「【0034】
以上、本実施の形態によれば、貫通孔17を有する梁11を、効率よく補強することができる。また、梁補強金具1を固定した後、筒状部材21を梁11に設置する際に、凸部7を筒状部材21の位置決めのガイドとして機能させることができる。このため、筒状部材21の設置作業が容易となる。」
【図1】
[図:0001401615000001.jpg]
【図2】
[図:0001401615000002.jpg]
【図3】
[図:0001401615000003.jpg]
【図4】
[図:0001401615000004.jpg]
【図6】
[図:0001401615000005.jpg]
第7 当審の判断
1 補正1について
補正1により、請求項1の記載において「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい」という事項が追加された。
しかし、当初明細書等のうち、凸部7とフランジ部5とがともに図示され
ている図1、図2(b)、図3(b)、図4、及び図6(以下、総称して「
当該図面」という。)をみると、当該図面の上で、凸部の幅とフランジ部の幅とを比較しても、それらの大小関係が明確に把握できる程の顕著な差異はなく、また、部材の寸法や部材同士の寸法の大小関係を表す記号や文字等の記載は、特段されていない。
さらに、当初明細書等の記載をみるところ、フランジ部ないし凸部に関す
る当初明細書等における記載としては、「フランジ部に対して、前記本体部
の逆側に凸部が形成される」(段落【0008】)、「フランジ部に対して
本体部とは逆側に凸部を形成する」(段落【0010】)、「梁補強金具1
は、本体部3、フランジ部5、凸部7等から構成される。」(段落【001
6】)、「フランジ部5は、本体部3及び凸部7に対して外径が大きい部位
である。」(段落【0017】)、「凸部7は、フランジ部5の他方の側に
突出する。」(段落【0018】)、「本体部3、フランジ部5及び凸部7
の内径は略同一であり」(段落【0019】)、「フランジ部5の外周部が
、ウェブ15に対して全周にわたって溶接される。すなわち、溶接部19は
、フランジ部5の外周部とウェブ15の表面との間に形成される。」(段落
【0022】)、「梁11の凸部7側に筒状部材21を設置する際、筒状部
材21の端部を梁補強金具1の凸部7に挿入するように配置する。」(段落
【0031】)があるものの、いずれも軸方向における凸部の幅とフランジ
部の幅との大小関係を表す、あるいは大小関係について示唆する記載はない
。
そうすると、そもそも凸部7の幅とフランジ部5の幅との大小関係については、その技術的意義を含めて当初明細書等において記載や示唆がされていないことから、当該図面において問題意識をもって正確に記載されているとは扱えず、軸方向における凸部の幅がフランジ部の幅より小さいことが当該図面の記載から直ちに自明であるとはいえない。
また、一般的に、特許出願の願書に添付される図面は、明細書を補完し、
特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明
図であって、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備
えていれば足り、設計図面のように現実の寸法を反映するものとは限らない
から、当該図面から読み取れる凸部やフランジ部の寸法は、正確な寸法を反
映したものとは限らない。
そうすると、当該図面に記載された「軸方向における前記凸部の幅」と、
「前記フランジ部の幅」は、それぞれの正確な寸法を反映したものと扱うに
は足らず、両者の大小関係について、図面から測った数値に基づいて論ずる
ことはできないので、「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の
幅より小さい」ことが、当初明細書等に記載されているということはできな
い。
加えて、補正1がされると同時に提出された令和3年3月11日の意見書
において、特許権者は、「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部
の幅より小さい」ことを請求項1に係る発明において新たに特定することに
ついて、「梁補強金具の重量増を避けることができる。また本願発明1では
、フランジ部に対して本体部とは逆側に凸部が形成され、筒状部材を設置す
る際の位置決めのガイドとして機能させる([0031])ため、凸部は、
長さが不要であり、筒状部材が引っ掛かる程度の段差を有していればよく、
一方フランジ部は溶接するだけの厚みが必要である。したがって、本願発明
1は、筒状部材を容易に設置することができる最適な梁補強金具である。」
(意見書2ページ12~17行)と主張しており、補正1は、凸部を形成す
ることにより解決する「筒状部材の設置が容易」であることに加えて、「梁
補強金具の重量増を避ける」という、当初明細書等に記載がない新たな課題
を解決し得るものであるから、補正1は、解決すべき技術的課題に影響を及
ぼすものであって、新たな技術的事項を追加するものといわざるを得ない。
したがって、当該補正事項を含む補正1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものと判断される。
請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項2ないし7においても同
様である。
2 補正2について
上記補正2により、明細書段落【0008】の記載において、「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい」という事項が追加された。
しかし、上記「1 補正1について」と同様の理由により、「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい」ことが、当初明細書等に記載されているということはできない。
したがって、当該補正事項を含む補正2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものと判断される。
3 特許権者が令和4年8月29日に提出した意見書について
特許権者は、令和4年8月29日に意見書を提出し、概ね以下のとおり主張している(下線は当審が付与した。)。
(1)「(エ)そこで、次に、図3に示された形態的特徴の技術的意義について検討する。本件出願当時の技術常識として、梁補強部材を溶接でウェブに固定する際には、最低限必要な溶接深さが存在することが知られている(例えば、特開2018-131824号公報、特許第6381762号など多数)。これは、梁補強金具がウェブに単に固定されているだけでは、梁補強機能を発揮することができず、梁補強金具とウェブとを強度的に一体化して、ウェブから梁補強金具への応力伝達を十分に行うことができるようにする必要があるためである。
ここで、本訂正によってフランジ部の外周部の全周が溶接されることを限定したため、本発明では、フランジ部の外周部が溶接部となることが明確となった。実際、図3にも、フランジ部の幅とほぼ等しい溶接深さとなるように溶接がなされている。したがって、前述した技術常識によれば、フランジ部の幅は、必要な溶接深さよりも大きくなることはあっても、必要な溶接深さよりもフランジの幅を小さくすることは技術常識に反するものといえる。すなわち、フランジ部の幅は、梁補強金具を機能させるために少なくとも必要な溶接深さ以上とするものと理解できる。
このように、本件明細書等に接した当業者であれば、フランジ部の幅は、少なくとも溶接深さ以上の幅とする必要があることは、明細書及び技術常識から明らかといえる。
(オ)一方、本発明の凸部は、筒状部材の位置決めとずれ止めのために設けられるものである。なお、本発明の対象とする筒状部材(いわゆるボイド管)は、コンクリート打設時に型枠として使用される部材である。このようなボイド管は、一般的に紙製のものも多く市販されており、金属製のものであっても薄肉で軽量な部材である。そして、凸部の幅としては、このような筒状部材の位置決め等を行う幅であればよいことになる。したがって、少なくとも、フランジ部のように幅を大きくしなければならない事情はない。むしろ、部材の軽量化や材料費の削減等の、当該技術分野における共通の課題を考慮すれば、凸部の幅を不要に大きくしないことが技術常識であるといえる。」(意見書9ページ12行ないし10ページ第14行)
上記特許権者の主張について検討する。
フランジ部の幅について、上記(エ)において例示された特開2018-131824号公報、特許第6381762号をみても、溶接深さよりもフランジ部の幅が大きいことを示すものであるが、フランジ部の幅と凸部の幅との関係を示すものではない。
そして、上記(オ)においては、凸部の幅は、筒状部材の位置決め等を行う程度の幅であればよく、凸部の幅を不要に大きくしないことが技術常識である旨述べている。
また、凸部の幅について、「フランジ部のように幅を大きくしなければならない事情はない」と主張しているが、当初明細書等の記載から、特許権者の主張を裏付ける事項を見出すことができず、発明の解決しようとする課題との関連も見いだせない。
そうすると、特許権者は、「フランジ部の幅」と、「凸部の幅」について、それぞれ個々の事情について述べるのみであって、「フランジ部の幅」が「必要な溶接深さよりも大きい幅」であり、「凸部の幅」が「筒状部材の位置決め等を行う幅」であるとしても、両者の大小関係のみならず、「必要な溶接深さよりも大きい幅」と「筒状部材の位置決め等を行う幅」の採りうる具体的な寸法について、当初明細書等の記載に基づいて述べるものではないから、上記特許権者の主張によっても「凸部の幅」が「フランジ部の幅」より小さいことについて、当初明細書等において記載されたものとはいえない。
(2)「審査基準においても、図面から直接読み取ることができる形態的な特徴については、図面に記載されているものとして認めており、・・したがって、図面に基づく補正として、そこから直接読み取ることが可能な形態的特徴についてまで、新規事項であるとするものではない。」(意見書9ページ5ないし11行)
上記特許権者の主張について検討する。
上記1において説示したとおり、当該図面に記載された「軸方向における前記凸部の幅」と、「前記フランジ部の幅」の大小関係は、図面上、凸部の幅とフランジ部の幅とを比較しても、それらの大小関係が明確に把握できる程の顕著な差異はなく、また、図面は、それぞれの正確な寸法を反映したものとは限らないから、両者の寸法の大小関係についても当該図面に正確に表されたものとはいえない。
そうすると、「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい」ことが、当初明細書等に記載されているということはできない。
4 特許権者が令和5年2月3日に提出した意見書について
特許権者は、令和5年2月3日に意見書を提出し、概ね以下のとおり主張している(下線は当審が付与した。)。
(1)意見書「(e)まとめ」の欄における特許権者の主張について
意見書「(e)まとめ」の欄において、特許権者は、「以上のように、本
補正は、凸部の幅がフランジ部の幅以上であるものを除くものであり、前述
したように、図3には形態的な特徴として、凸部の幅がフランジ部の幅以上
である構成が除かれた状態(すなわち、フランジ部が凸部よりも幅が広い状
態)の形状が図示されており、このようにすることが、技術常識からは明ら
かであり、また、仮に図面から直接的に本補正内容が読み取れなくても、本
来新規な発明において引例との重複部分を排除して技術的範囲を減縮するも
のであり、本補正が、新たな技術的事項を導入するものとは言えず、本補正
は、特許法第17条の2第3項の要件を満たすものであり、さらに、本取り
消し理由は、本来検討されるべき事項が十分に検討されているとは言えず、
その理由が十分に示されているとは言えない。」(意見書17ページ下から
4行~18ページ6行)と主張している。
そこで、上記主張について以下検討する。
ア 上記主張のうち、補正が、図3において、凸部の幅がフランジ部の幅以上である構成が除かれた状態(すなわち、フランジ部が凸部よりも幅が広い状態)の形状が図示されていることに基づくものである点について
上記第7 1、2において述べたとおり、補正1、及び補正2において請求項1、段落【0008】の記載において追加された、「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい」という事項に関して、当初明細書等には、軸方向における凸部の幅とフランジ部の幅との大小関係を表す、あるいは大小関係について示唆する記載はなく、当該事項は、図3において問題意識をもって正確に記載されているとは限らないから、軸方向における凸部の幅がフランジ部の幅より小さいことが当該図面の記載から直ちに自明であるとはいえない。
イ 上記主張のうち、補正が、引例との重複部分を排除して技術的範囲を減縮するものであり、新たな技術的事項を導入するものとは言えない点について
意見書「(e)まとめ」の欄の以前において、特許権者は、「本発明は、強度の内容や位置決め対象は異なるものの、同様に、フランジ部が強度から設計され、凸部が位置決め機能から設計されるものであるから、上記に倣えば、凸部<フランジとすることが望ましいが、補正前においては、このような限定はなく、凸部の幅は特定されていなかったものである。これに対し、本補正は、本発明の位置決め用の「凸部」が引例のように強度部材として機能するような場合(すなわち、位置決め用の「凸部」>強度を担う「フランジ部」)を排除することで、引例との差別化を明確にしたものである。
すなわち、本補正は、本来は引例にはない新規な課題を解決し、新規な効果を奏する構成である本発明から、公知発明と重複する部分を除くことで引例を含まないように技術的範囲を減縮するものである。このため、本補正『軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい』は、『(但し、位置決めのための前記凸部の軸方向における幅が、強度を担う前記フランジ部の幅以上のものを除く)』とする、いわゆる除くクレームと同義といえる。」(意見書3ページ10行ないし4ページ12行)と主張する。
上記特許権者の主張について検討する。
補正1は、請求項1の記載において、「凸部」と「フランジ部」に対して「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さい」なる事項を付加して限定するものであるが、引用例との差別化を図るために行った補正であるとしても、いわゆる「除くクレーム」に該当しないことは記載の形式からみても明らかである。
そして、仮に、補正1が、凸部とフランジ部に関して、「(但し、位置決
めのための前記凸部の軸方向における幅が、強度を担う前記フランジ部の幅
以上のものを除く)」を請求項1の記載に付加するものであることを特許権
者が意図しているとしても、補正により当初明細書等に記載のない新たな技
術的事項が導入されたものであるか否かにより補正の適否は判断されるので
あって、補正による限定を、いわゆる「除くクレーム」の形式とするか否か
により補正の適否の取り扱いが変わるものではない。
そして、「軸方向における前記凸部の幅が、前記フランジ部の幅より小さ
い」ことが当初明細書等に記載されているとは認められないところ、補正が
、いわゆる「除くクレーム」と同義であったとしても、新たな技術的事項を
導入する補正であることには変わりはない。
(2)取消理由(予告)について争うとした点について
権利者は意見書において、取消理由通知(決定の予告)において当審が説
示した「そうすると、梁補強金具1の軸方向の幅は、軸方向における凸部7
の幅と、フランジ部の幅と、本体部3の幅とを合わせたものであるが、そも
そも軸方向における凸部7の幅とフランジ部5の幅との大小関係については
、その技術的意義を含めて当初明細書において記載や示唆がされていないこ
とから、当該図面において問題意識をもって正確に記載されているとは限ら
ず、軸方向における凸部の幅がフランジ部の幅より小さいことが当該図面の
記載から直ちに自明であるとはいえない。」について争うとし(意見書5ペ
ージ12ないし14行)、「明細書の裏付けがない限りにおいて、当該部分
の寸法や比率などがこれによって特定されるものではない。」との認定に対
して(意見書5ページ22及び23行)、特許権者は、「本補正は「寸法値
」や「比率」などの数値を図面から読み取り、その数値を限定するものでは
なく、あくまでも図面で表された定性的な特徴を読み取ったものである。そ
して、図面には、当業者であれば明らかに把握できる程度にフランジ部の幅
と凸部の幅との大小関係が表されており、その寸法値や比率はともかく、本
補正はこの特徴に基づいて行ったものである。」と主張しており、上記図面
に示された定性的特徴からフランジ部の幅と凸部の幅との大小関係を把握す
ることができることについて、以下、ア、イ、ウを根拠として挙げている。
ア フランジ部の幅について
「フランジ部を溶接する際には、梁補強金具として機能させるために最低
限必要な溶接深さが存在する(参考図4によれば参考製品では9mm以上)
。そして、フランジ部を溶接する場合には、フランジ部の幅は少なくとも溶
接深さよりも大きくする必要があることは、技術常識であるといえる。この
ため、本発明の図面に接した当業者は、フランジ部の幅は何ら意図せずに図
示したのではなく、必要な溶接深さがあることを前提として記載されている
とみるのが自然である。」(意見書7ページ3行ないし8ページ6行)
イ 凸部の幅について
「筒状部材自体の自重を保持して位置を固定するのは支持部材であるため
、凸部において筒状部材の端部がわずかに引っ掛かりさえすれば位置決め等
として機能するものである。そうすると、荷重がかかることもなく、このよ
うな単なる位置決めのみの突起は、当業者でなくても数mmあれば十分機能
することは容易に理解できる。」(意見書10ページ7ないし11行)
ウ 凸部の幅とフランジ部の幅との大小関係について
「梁補強部材の溶接に必要な深さとしては、一例ではあるが9mm以上な
どであり、仮により浅いものでよいものがあったとしても、通常の溶接作業
も考慮すれば、少なくとも5~6mm以上の溶接深さは必要であるため、フ
ランジ部の幅は最低限の溶接深さ以上が必要となる。一方、支持部材で支持
される紙管等の端面の単なる位置決めだけであれば、わずかに引っ掛かりさ
えすれば良いのであるから、最低限1~2mm程度の段差でも十分に機能す
ることは明らかであり、仮にその倍の幅を設けるとしても溶接深さに基づく
フランジ幅よりも十分に小さいものである。すなわち、フランジ部と凸部と
に関して、その機能を考慮すれば、最低限必要な幅というのは明らかに前者
が大きい。また、凸部の幅は広くしない方がよい点は明細書(例えば003
6~0037、詳細は後述)にも開示されているため、最低限必要な幅を超
えて大きくすることはむしろ避けるべきである。」(意見書10ページ16
行ないし11ページ1行)
上記特許権者の主張について検討する。
上記ア、ウによると、フランジ部の幅は少なくとも溶接深さより大きくする必要があり、少なくとも5~6mm以上の溶接深さは必要であるため、フランジ部の幅は最低限の溶接深さ以上が必要となる。また、上記イ、ウによると、凸部の幅は、紙管等の端面の単なる位置決めだけであれば、最低限1~2mm程度の段差でも十分に機能するとの主張である。
しかし、フランジ部の幅は、少なくとも溶接深さより大きくする必要があるものの、最低限必要な溶接深さは、梁補強金具の材質や溶接を行う方法等によっても変化し得るものであり、凸部の幅は、「最低限1~2mm程度の段差でも十分に機能する」と、紙管等がわずかに引っ掛かる最低限の幅をいうのみであって、紙管等を引っ掛ける機能を奏するために、それ以上の長さを有する段差(凸部の幅)を採用し得ることは明らかであるから、上記アないしウで示された定性的な特徴により、必ずしも軸方向における凸部の幅が、フランジ部の幅より小さいことを導き出すことはできない。
なお、上記ウにおいて、「凸部の幅は広くしない方がよい点は明細書(例えば0036~0037、詳細は後述)にも開示されている」と主張されているが、当初明細書の段落【0035】ないし【0037】には、
「【0035】
また、凸部7が周方向に連続して形成されるため、筒状部材21や配管を梁補強金具1に挿入した際に、筒状部材21等を支持する長さを長くすることができる。
【0036】
なお、凸部7を形成せずに、本体部3を長くしても、同様に配管の支持長さを確保することができるが、溶接部19から本体部3の先端までの距離が長くなる。このため、梁補強金具1に挿通された筒状部材21や配管に対して、筒状部材21等が傾く方向に力が付与された際に、溶接部19に付与されるモーメントが大きくなる。
【0037】
これに対し、フランジ部5の反対側に凸部7を形成して全長を長くすることで、溶接部19から梁補強金具1の先端部までの長さを抑えることができる。このため、筒状部材21等に力が付与された際にも、溶接部19にかかる力を抑制することができる。」と記載されており、これらの記載を総合すると、凸部7を形成することにより、溶接部19から本体部3の先端までの距離を抑えることが可能となり、梁補強金具1に挿通された筒状部材21や配管に対して、筒状部材21等が傾く方向に力が付与された際に、溶接部19に付与されるモーメントが大きくなるのを防止することを示すのみであって、凸部の幅を広くしない方がよいことまでは、記載されていない。
したがって、上記意見書における特許権者の主張は、いずれも採用できない。
第8 むすび
上記「第7 当審の判断」によれば、本件特許の請求項1ないし4、6、7に係る発明の特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第1号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件特許の請求項5に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項5に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700366