特許拒絶査定不服審判
2022-006175
検知装置
- 審判番号
- 2022-006175
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-012543
- 請求日
- 2022年04月25日
- 審決日
- 2023年03月28日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コイト電工株式会社
- 【請求人代理人】瀧野 文雄
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 則夫
- 審判官 出口 昌哉
- 審判官 三宅 龍平
- 分類
- P18 .121-Z (B61D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-12543号「検知装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年8月10日出願公開、特開2021-116029号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年1月29日の出願であって、令和3年12月6日付けで拒絶理由が通知され、令和4年2月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年2月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明は、令和4年2月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
なお、令和4年4月25日の手続補正により、特許請求の範囲は補正されていない。
「 【請求項1】
鉄道車両の外部に取り付けられており、当該鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の距離画像を生成するセンサと、
前記距離画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部と、を有する、検知装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[刊行物等]
特開2005-349997号公報(以下「引用文献1」という。)
特開2012-11987号公報(以下「引用文献2」という。)
第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
「【0005】
本発明は上記事情に鑑み、出入り口ドアの会合部外側上部に、カメラを設置し、カメラにより撮像した画像を画像処理することにより、ドア閉動作時にドアに挟まれた異物、及びドア周辺の異物を自動的に検出することができる鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置を提供することを目的としている。
・・・
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
〈システム全体の構成〉
図1において、車両10の好ましくは全ての乗降客ドア11の会合部外側上部には、ドア監視用カメラ1が設けられている。その詳細は図2に示すように、ドア11の上部に在るドア上部ケーシング14内に、既存の左右の戸閉めセンサ2と共に中央にドア監視用カメラ1が取り付けられる。従って、車両10がホーム15に停車しているときにドア監視用カメラ1により画像を取得すると、例えば、図3に示す画像が得られる。
【0014】
図3に示す画像において、符号11’はドア11の映像部分、12’はドア11の会合部のゴム帯等からなる弾性体12の映像部分、15’はドアホーム15の映像部分である。なお、図2における符号13は車両10の床である。
【0015】
ドア監視カメラ1は、基準画像としてドア開放前画像を取得し、判定画像として乗降後画像を取得するものである。ドア監視用カメラ1の画像は、画像処理器3に送られる。
【0016】
画像処理器3は、コンピュータで構成され、本発明に係る鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置を構成している。この画像処理器3は、ソフトウェアによる画像処理によってドア閉動作時にドアに挟まれた小さな異物やドア周辺の異物を自動的に検出することができるもので、その機能上、ドア監視用カメラ1により撮像されたドア開放前画像を基準画像として取得するとともに、乗降客の乗降後画像を判定画像として取得する画像取得手段と、取得された基準画像と判定画像とを比較処理する際に、両画像の垂直成分をそれぞれ強調する垂直成分強調処理手段と、垂直成分が強調された前記基準画像と判定画像との差分を求め、この差分に基づいて乗降客用ドア11に挟まれた異物を検出して異物検知信号を生成する異物検出手段とを備えている。生成された異物検知信号は、運転席や車掌席に設けられた乗務員用モニタ4に送出される。乗務員用モニタ4では、ドア監視用カメラ1の選択等の指示と共に、異物の検知されたドア監視カメラ1からの画像の表示行われる。
【0017】
次に本発明における画像取得処理と画像処理のシーケンスについて、図4のフローチャートおよび図5乃至図12を用いて説明する。
【0018】
〈画像取得処理〉
画像処理器3は、ドア開閉信号と、車両の速度が5km/h以下になった際に通知される5Kリレー(図示せず)からの通知を受ける。画像の取得に際しては、車両が5km/h以下になった際に通知される5K検知指令を受けると、ドア監視用カメラ1から基準画像の取得を開始する。基準画像は連続的に最新のものを記録しておく。車掌がドア開閉スイッチをドア開にするとドア11が開き、ドア開信号が出力されるので、その直前の画像を基準画像とする。
【0019】
乗客の乗降後、車掌がドア開閉スイッチをドア閉にするとドアが閉まるとともに、ドア閉信号が出力されるので、この際の画像を判定画像として取得して判定処理を行う。」
(2)引用文献1の認定事項
段落【0016】の記載によると、「画像処理器3は、コンピュータで構成され、・・・鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置を構成している」ところ、「画像処理器3」は、「ドア監視用カメラ1により撮像されたドア開放前画像を基準画像として取得するとともに、乗降客の乗降後画像を判定画像として取得する画像取得手段と、・・・を備えている」。
そうすると、「鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置」は、必然的に「ドア監視用カメラ1」を伴うものであり、システム(段落【0016】)として、実質的に「ドア監視用カメラ1」と「画像処理器3」とから構成されているから、ドア監視用カメラ1と、画像処理器3(鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置)と、を有する鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置として認定できる。
この認定は、段落【0005】の記載内容とも整合している。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)、(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「車両10の乗降客ドア11の会合部外側上部に設けられ、基準画像としてドア開放前画像を取得し、判定画像として乗降後画像を取得する、ドア監視用カメラ1と、
ドア監視用カメラ1により撮像されたドア開放前画像を基準画像として取得するとともに、乗降客の乗降後画像を判定画像として取得する画像取得手段と、取得された基準画像と判定画像とを比較処理する際に、両画像の垂直成分をそれぞれ強調する垂直成分強調処理手段と、垂直成分が強調された前記基準画像と判定画像との差分を求め、この差分に基づいて乗降客用ドア11に挟まれた異物を検出して異物検知信号を生成する異物検出手段とを備えている、画像処理器3と、
を有する、鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の戸挟み状態の検知は、物が挟まれていることを、電気的なセンサにより検出しているので、たとえ挟まれている物が電車の運行に支障の無いような物であっても、戸挟み状態として検知されてしまう、という問題があった。逆に、挟まれている物が、電車の運行に支障があるものであっても、電気的なセンサにより検出できない場合もあった。
そこで、本発明は、挟まれている物を画像処理により認識して、ドアが閉じた時の安全を確認することができる鉄道車両用ドアの安全確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、少なくとも2以上の撮像素子によって撮像して得られた少なくとも2つの画像信号に基づいて立体形状に関する情報を生成する立体形状情報生成部と、生成された前記立体形状に関する情報から、鉄道車両のドアを含む所定の背景画像の部分を分離する背景画像分離部と、前記背景画像分離部において前記所定の背景画像の部分が分離されて残った立体形状に関する情報から、前記ドアに挟まれている物の立体形状に関する情報を抽出する立体形状物抽出部と、前記立体形状物抽出部において抽出された前記物の立体形状に関する情報から得られた所定のパラメータ情報と前記所定のパラメータ情報に基づく所定のルールとに基づいて、前記ドアに関する安全の確認の判定を行う判定部と、を有する鉄道車両用ドアの安全確認装置を提供することができる。
・・・
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ここでは、鉄道の駅のホーム端上に設置されたステレオカメラを用いて鉄道車両のドアの閉まったときの安全を確認する装置を例に挙げて説明する。
図1は、ステレオカメラにより、駅のホームを撮影している監視システム1を説明するための図である。図1は、ホームを電車の進行方向から見た図である。図1では、1つのステレオカメラSCのみが示されているが、複数のステレオカメラが、鉄道の線路が敷かれる地面G上の長いホームHの縁に沿って天井に設置され、電車とホームの全体を鉛直方向から監視している。各ステレオカメラは、電車Tが停止したときに、電車のドアに挟まれた物を撮像可能な位置に設置される。
・・・
【0015】
(ステレオカメラSCの構成)
図2は、ステレオカメラの外観図である。ステレオカメラSCの筐体21の一側面には、例えば、2つの対物光学系22が所定の距離だけ離れて光軸が互いに平行になるように設けられている。2つの対物光学系22は、対物レンズであり、筐体21内の各対物レンズの後ろ側には、CMOSセンサ等の撮像素子が設けられている。2つの対物光学系22の設けられた面が、ホームHの床面に対向するように、ステレオカメラSCは、駅のホームH上に設置される。
【0016】
なお、ここでは、各ステレオカメラSCは、ステレオ撮像のために2つの撮像素子を有している例で説明するが、ステレオ撮像のために3つ以上の撮像素子を有していてもよく、少なくとも2つの撮像素子を有していればよい。
【0017】
また、ステレオカメラSCには、PC11と接続するための通信ケーブルCBが接続されている。
図3は、ステレオカメラSCの構成を示すブロック図である。ステレオカメラSCは、カメラとしての2つのCMOSセンサ31、2つの画像取込部32、ステレオ処理部33、認識処理部34、通信部35を有しており、筐体21内の図示しない基板上に設けられている。本実施の形態では、2つの画像取込部32、ステレオ処理部33及び認識処理部34は、DSPにより構成される。
【0018】
各CMOSセンサ31は、対物光学系22からの光を受けて撮像信号を、対応する画像取込部32に出力する。
【0019】
各画像取込部32は、CMOSセンサ31からの撮像信号を取り込み、その撮像素子から画像信号を生成して、ステレオ処理部33に供給する処理部である。
【0020】
ステレオ処理部33は、入力された2つの動画像の画像信号に基づき、立体形状に関する情報としての距離画像を生成する処理部である。距離画像は、各画素値が距離値である画像情報である。なお、距離画像は、画素値が3次元空間内の位置を示す情報であってもよい。すなわち、ステレオ処理部33は、2つの撮像素子によって撮像して得られた2つの画像信号に基づいて立体形状に関する情報を生成する立体形状情報生成部を構成する。
【0021】
認識処理部34は、ステレオ処理部33で得られた距離画像の情報に基づいて、立体形状を認識し、ドアが閉じたときの安全が確認されたことを示す、あるいは安全でないことを示す検知信号を出力する処理部である。
【0022】
すなわち、認識処理部34は、ステレオ処理部33で生成された距離画像の情報に基づいて、画像中の、閉じたドアに挟まれている物の立体形状を認識し、その立体形状が所定の条件に合致しない場合あるいは合致した場合に、安全であるあるいは安全でないことを示す検知信号を出力する処理部である。
【0023】
通信部35は、PC11からの所定のコマンドを受信すると認識処理部34に対して安全確認の処理を実行する指示を与え、認識処理部34から検知信号を受信すると、安全確認の判定情報としての検知信号をPC11へ送信する処理部である。通信部35は、図示しないインターフェース回路及びコネクタを介して、通信ケーブルCBに接続されている。
【0024】
さらに、通信部35は、画像取込部32にも接続されており、CMOSセンサ31の両方あるいは一方から得られた動画像の画像信号を、所定のタイミングでPC11へ送信することができるようになっている。よって、PC11では、各ステレオカメラSCからの画像信号をモニタ上に表示することができる。
・・・
【0034】
電車のドアが閉じて、発車する前に、ドアに物が挟まれていないか、あるいは挟まれていても、電車の運行等に支障のない物であるか、の安全確認が行われる。その安全確認は、各ステレオカメラSCにおいて、実行される。すなわち、各ステレオカメラSCが、鉄道車両用ドアの安全確認装置である。全てのドアについて、安全が確認されなければ電車は発車することができない。その安全確認のための指示は、安全確認指示信号によって行われる。
・・・
【0037】
図5の処理は、DSPに含まれる認識処理部34によって実行される。まず、得られた距離画像中の所定の領域41内について、背景分離処理が実行される(ステップ(以下、Sと略す)1)。背景分離処理は、上述したように、電車T、地面G及びホームHの各領域及び距離は予め判っているので、その各領域及びその対応する距離の情報に合致する画素を背景画素の部分として、距離画像IRから分離する処理である。電車T、地面G及びホームHの各領域TR,GR,HRの画素の情報が、DSP中の記憶領域に予め記憶されている。背景分離処理では、その予め記憶されている各領域TR,GR,HRの画素の情報と、生成された距離画像の各画素を比較することによって、背景を分離することができる。その結果、領域41内において、背景でない画像のみの距離画像が抽出される。
【0038】
よって、S1は、生成された立体形状に関する情報である距離画像から、ドアを含む所定の背景画像の部分を分離する背景画像分離部を構成すると共に、所定の背景画像の部分が分離されて残った立体形状に関する情報である距離画像から、ドアに挟まれている物の立体形状に関する情報を抽出する立体形状物抽出部を構成する。
・・・
【0061】
以上のように、S5は、抽出された物SBの立体形状に関する情報である距離画像から得られた複数の所定のパラメータ情報と、所定のパラメータ情報に基づく所定のルールとに基づいて、ドアに関する安全の確認の判定を行う判定部を構成する。
・・・
【0066】
なお、上述した実施の形態では、ドアの安全確認装置としてのステレオカメラSCが安全の確認処理を行っているが、認識処理部34の処理を、PC11の方で行うようにしてもよい。すなわち、ステレオカメラSCは、立体形状の情報として、距離画像を出力し、PC11あるいは制御装置12において、認識処理を実行するようにしても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。」
(2)引用文献2の認定事項
「ステレオカメラSCが、鉄道車両用ドアの安全確認装置である」(段落【0034】)ところ、「ステレオカメラSCは、カメラとしての2つのCMOSセンサ31、・・・を有しており」(段落【0017】)、「ステレオカメラSCの筐体21内の各対物レンズの後ろ側には、CMOSセンサ等の撮像素子が設けられ」(段落【0015】)、「ステレオカメラSCは、・・・少なくとも2つの撮像素子を有していればよい」(段落【0016】)こと、及び、図3においてSC(ステレオカメラ)には2つの31(CMOSセンサ)が含まれていることから、「ステレオカメラSC」すなわち「鉄道車両用ドアの安全確認装置」は、少なくとも2以上の撮像素子を有している鉄道車両用ドアの安全確認装置として認定できる。
(3)引用文献2に記載された発明
上記(1)の段落【0006】、(2)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用文献2に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2に記載された発明]
「少なくとも2以上の撮像素子と、
少なくとも2以上の撮像素子によって撮像して得られた少なくとも2つの画像信号に基づいて立体形状に関する情報を生成する立体形状情報生成部と、
生成された前記立体形状に関する情報から、鉄道車両のドアを含む所定の背景画像の部分を分離する背景画像分離部と、
前記背景画像分離部において前記所定の背景画像の部分が分離されて残った立体形状に関する情報から、前記ドアに挟まれている物の立体形状に関する情報を抽出する立体形状物抽出部と、
前記立体形状物抽出部において抽出された前記物の立体形状に関する情報から得られた所定のパラメータ情報と前記所定のパラメータ情報に基づく所定のルールとに基づいて、前記ドアに関する安全の確認の判定を行う判定部と、
を有する鉄道車両用ドアの安全確認装置。」
(4)本願発明に倣って認定した引用文献2に記載された発明
上記(3)で認定した引用文献2に記載された発明を、本願発明に倣って認定するために両者を対比させると、次のとおりである。
ア
段落【0037】、【0038】、【0061】及び図5の記載内容によると、引用文献2に記載された発明の「背景画像分離部」「立体形状物抽出部」及び「判定部」は、実質的には、ステレオカメラSCの認識処理部34によって構成されているところ、段落【0066】には、「ドアの安全確認装置としてのステレオカメラSCが安全の確認処理を行っているが、認識処理部34の処理を、PC11の方で行うようにしてもよい」と記載されていることから、機能的に見て、引用文献2に記載された発明の「背景画像分離部」「立体形状物抽出部」及び「判定部」(認識処理部34)と、引用文献2に記載された発明の「撮像素子」及び「立体形状情報生成部」とは、別々の部分であると認められる。
イ
引用文献2に記載された発明では、「生成された前記立体形状に関する情報から、鉄道車両のドアを含む所定の背景画像の部分を分離する」ことから、引用文献2に記載された発明の「少なくとも2以上の撮像素子によって撮像して得られた少なくとも2つの画像信号に基づいて立体形状に関する情報を生成する立体形状情報生成部」における「少なくとも2以上の撮像素子」による「撮像」は、「鉄道車両のドアを含む所定の背景(領域)を撮影したものといえる。
引用文献2に記載された発明の「少なくとも2以上の撮像素子によって撮像して得られた少なくとも2つの画像信号に基づい」た「立体形状に関する情報」が、距離画像であることは明らかであり(段落【0038】の「生成された立体形状に関する情報である距離画像」という記載も参照)、引用文献2に記載された発明の当該「立体形状に関する情報」は、本願発明の「距離画像」に相当する。
これらのことと、上記アを踏まえると、引用文献2に記載された発明の「少なくとも2以上の撮像素子と、少なくとも2以上の撮像素子によって撮像して得られた少なくとも2つの画像信号に基づいて立体形状に関する情報を生成する立体形状情報生成部」と、本願発明の「鉄道車両の外部に取り付けられており、当該鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の距離画像を生成するセンサ」とは、「鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の距離画像を生成するセンサ」において共通する。
ウ
上記ア及び上記イの相当関係を踏まえると、引用文献2に記載された発明の「生成された前記立体形状に関する情報から、鉄道車両のドアを含む所定の背景画像の部分を分離する背景画像分離部と、前記背景画像分離部において前記所定の背景画像の部分が分離されて残った立体形状に関する情報から、前記ドアに挟まれている物の立体形状に関する情報を抽出する立体形状物抽出部と、前記立体形状物抽出部において抽出された前記物の立体形状に関する情報から得られた所定のパラメータ情報と前記所定のパラメータ情報に基づく所定のルールとに基づいて、前記ドアに関する安全の確認の判定を行う判定部」は、本願発明の「前記距離画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部」に相当する。
エ
引用文献2に記載された発明の「鉄道車両用ドアの安全確認装置」は、本願発明の「検知装置」に相当する。
オ
以上から、引用文献2に記載された発明は、本願発明に倣うと、次の発明(以下「引用発明2」という。)のとおり認定できる。
[引用発明2]
「鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の距離画像を生成するセンサと、
前記距離画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部と、を有する、検知装置。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)
引用発明1は、「鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置」であるから、引用発明1の車両10」は、鉄道車両であり、本願発明の「鉄道車両」に相当する。
引用発明1の「基準画像として」の「ドア開放前画像」及び「判定画像として」の「乗降後画像」は、鉄道車両の乗降用ドアを含む領域の画像であることが明らかであり、本願発明の「当該領域の距離画像」すなわち「鉄道車両の乗降用ドアを含む領域」の「距離画像」と、「鉄道車両の乗降用ドアを含む領域」の「画像」において共通する。
引用発明1の「ドア監視用カメラ1」は、本願発明の「センサ」に相当する。
これらのことから、「車両10の乗降客ドア11の会合部外側上部に設けられ、基準画像としてドア開放前画像を取得し、判定画像として乗降後画像を取得する、ドア監視用カメラ1」と、本願発明の「鉄道車両の外部に取り付けられており、当該鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の距離画像を生成するセンサ」とは、「鉄道車両の外部に取り付けられており、当該鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の画像を生成するセンサ」において共通する。
(2)
引用発明1の「乗降客用ドア11に挟まれた異物を検出して異物検知信号を生成する」ことは、本願発明の「乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する」ことに相当する。
引用発明1の「画像処理器3」は、本願発明の「制御部」に相当する。
これらのことと、上記(1)を踏まえると、引用発明1の「ドア監視用カメラ1により撮像されたドア開放前画像を基準画像として取得するとともに、乗降客の乗降後画像を判定画像として取得する画像取得手段と、取得された基準画像と判定画像とを比較処理する際に、両画像の垂直成分をそれぞれ強調する垂直成分強調処理手段と、垂直成分が強調された前記基準画像と判定画像との差分を求め、この差分に基づいて乗降客用ドア11に挟まれた異物を検出して異物検知信号を生成する異物検出手段とを備えている、画像処理器3」と、本願発明の「前記距離画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部」とは、「前記画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部」において共通する。
(3)
引用発明1の「鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置」は、本願発明の「検知装置」に相当する。
以上から、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「鉄道車両の外部に取り付けられており、当該鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の画像を生成するセンサと、
前記画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部と、を有する、検知装置。」
<相違点>
「検知装置」が、本願発明では、鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の「距離」画像を生成するセンサと、前記「距離」画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部と、を有する、検知装置であるのに対して、引用発明1では、「・・・ドア監視用カメラ1と、・・・画像処理器3と、を有する鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置」であるが(要するに、本願発明の用語では「鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の画像を生成するセンサと、前記画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部と、を有する、検知装置」であるが)、距離画像を生成していない点。
2 判断
相違点について、以下検討する。
(1)
上記「第4 2(4)オ」の引用発明2の構成及び上記「1の<一致点>」(引用発明1の構成の一部)から、引用発明1の「ドア監視用カメラ1」と「画像処理器3」とを有する「異物検出装置」と、引用発明2の「検知装置」(引用文献2に記載された発明の「鉄道車両用ドアの安全確認装置」)とは、「鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影し、当該領域の画像を生成するセンサと、前記画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する制御部と、を有する、検知装置」で共通しており、鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影した画像に基づいて、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する点で同等の機能を有する検知装置である。
(2)
そして、一般に、同等の機能を有する手段の置換を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから、引用発明1の上記「異物検出装置」に替えて、それと同等の機能を有する引用発明2の上記「検知装置」を採用し、鉄道車両の乗降用ドアを含む領域を撮影した距離画像に基づいて、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知するようにして、相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(3)
なお、引用発明1の上記「異物検出装置」に替えて、引用発明2の上記「検知装置」を採用しても、引用発明1の「出入り口ドアの会合部外側上部に、カメラを設置し、カメラにより撮像した画像を画像処理することにより、ドア閉動作時にドアに挟まれた異物、及びドア周辺の異物を自動的に検出することができる鉄道車両における乗降客ドアの異物検出装置を提供する」(段落【0005】)という課題は十分解決できるし、ほかに技術的な支障もないことから、上記採用には何ら阻害要因は認められない。
(4)
そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2から予測できるものであり、格別に顕著な作用効果ではない。
(5)
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張の概要
ア 主張1
審判請求人は、審判請求書の「4.本願発明が特許されるべき理由」の「(A2)拒絶理由通知に記載された主張に対する反論」において、次のとおり主張する(以下「主張1」という。)。
「引用文献1において、ドア監視用カメラ1は、車両10の外部に設置されております。一方、引用文献2において、ステレオカメラSCは、ホーム上に設置されております(引用文献0009)。つまり、引用文献1の「ドア監視用カメラ1」と引用文献2の「ドア監視用カメラ1」とでは設置位置が大きく異なっております。一般に、センサの設置位置を変更した場合、センサから得られる情報が変わります。このため、センサの設置位置を変更した場合、情報処理方法も変更する必要があります。よって、一般に、引用文献2において、「ステレオカメラSC」の設置場所を「ホーム上」から「車両の外部」に変更した場合に、引用文献2に開示された情報処理方法(認識処理部34による処理)をそのまま用いることはできないと、当業者は理解します。よって、たとえ「引用文献2には、ホーム上に設けられており、鉄道車両のドア(乗降用ドア)を含む領域を撮影し、当該領域の距離画像を生成するステレオカメラSC(センサ)と、前記距離画像に基づいて、前記ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する認識処理部34(制御部)と、を有する、鉄道車両用ドアの安全確認装置(検知装置)が記載されている」としても、引用文献2の当該記載が、「引用文献1に記載された発明において、センサを距離画像を生成するものとする」動機付けになることはありません。」
イ 主張2
審判請求人は、審判請求書の「4.本願発明が特許されるべき理由」の「(A2)拒絶理由通知に記載された主張に対する反論」及び「(A3)原査定に記載された主張に対する反論」において、次のとおり主張する(以下「主張2」という。)。
「つまり、上記の「引用文献2に開示された技術では、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを正確に検知することができない可能性がある」との問題が、引用文献2では全く認識されておりません。当該問題が引用文献2において認識されていない以上、「乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する」との目的を達成するためには、引用文献2に開示された発明において、「ステレオカメラSC」はホーム上に設置される必要があると、当業者は理解すると思料致します。つまり、引用文献2において、「ステレオカメラSC」の設置場所を「ホーム上」から「車両の外部」に変更した場合、引用文献2に開示された情報処理方法(認識処理部34による処理)では、「乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する」との目的を達成することはできないと、当業者は理解すると思料致します。実際、引用文献2に係る発明は、出願審査において、「引用文献2に開示された技術では、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知することができない可能性がある」との問題が全く指摘されることなく、特許されております。」
「引用文献1では、乗降客ドアに挟まった異物を検出するためには、差分処理やエッジ処理などの高負荷な画像処理を行っており、高負荷な画像処理を行うための高速度のコンピュータを使用する必要があります。引用文献2に開示された技術では、差分処理やエッジ処理などの高負荷な画像処理を行なっておらず、高負荷な画像処理を行うための高速度のコンピュータを使用する必要がありませんが、上述したように、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知することができない可能性があります。
一方、本願発明では、高負荷な画像処理を行うための高速度のコンピュータを使用することなく、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知することが可能であります。
つまり、本願発明では、引用文献1、2に係る発明では得ることができない格別な効果を得ることが可能であります。たとえ「差分処理やエッジ処理などの画像処理を行うか否かは、採用するセンサの種類や物体を検知する精度をどの程度とするかによって当業者が適宜定める事項」であったとしても、本願発明は、「引用文献1及び2に比べて格別であ」ります。」
(2)検討
ア 主張1について
主張1について検討するに、引用発明1に引用発明2を適用する動機付けがあること(当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないこと)は、上記2で示したとおりである。
また、審判請求人の主張1は、「引用文献2において、ステレオカメラSCは、ホーム上に設置されております」という事情を前提にしているが、引用文献2には、発明の技術分野として「本発明は、鉄道車両用ドアの安全確認装置に関し、特に、鉄道車両のドアが閉じたときに挟まれた物の立体形状から安全を確認する鉄道車両用ドアの安全確認装置に関する」(段落【0002】)と記載され、また、発明が解決しようとする課題として「挟まれている物を画像処理により認識して、ドアが閉じた時の安全を確認することができる鉄道車両用ドアの安全確認装置を提供する」(段落【0005】)と記載され、さらに、実施例として「鉄道の駅のホーム端上に設置されたステレオカメラを・・・例に挙げて説明する」(段落【0009】)と記載されていること等に鑑みれば、引用文献2の「ステレオカメラSC」は、ホーム上に設置されることが必須ではなく、例えば鉄道車両上に設置することも何ら排除されていないことは明らかである(引用文献2の請求項1にも「立体形状情報生成部(ステレオカメラSC)」が、ホーム上に設置されるという特定はない。)。
したがって、審判請求人の主張1は、そもそも前提において誤っている。
イ 主張2について
次に、主張2について検討する。
審判請求人は、引用文献1、2の画像処理について縷々主張するが、本願の請求項1に特定されるのは「距離画像に基づいて、前記乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する」ことのみであって、具体的な画像処理に係る構成については何ら特定されていない。
そうすると、「距離画像に基づいて、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する」という点でまったく同様の構成を有する引用発明2に比べて、本願発明が格別の効果を奏するものとは認められない。
また、審判請求人の主張2は、「「乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知する」との目的を達成するためには、引用文献2に開示された発明において、「ステレオカメラSC」はホーム上に設置される必要がある」、「「ステレオカメラSC」の設置場所を「ホーム上」から「車両の外部」に変更した場合」、「引用文献2に開示された技術では、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知することができない可能性がある」という事情を前提としているが、上記アで述べたとおり、引用文献2の「ステレオカメラSC」(図2ないし図3に示されるパッケージ化されているステレオカメラSC)は、ホーム上に設置されることが必須でなく、ホーム上に設置されなくても十分機能するといえるから、引用文献2の「ステレオカメラSC」を車両の外部に配置しても、乗降用ドアに挟まった物体があるのか否かを検知することができることは、明らかである。
したがって、審判請求人の主張2も、そもそも前提において誤っている。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-006175