商標取消審判
2022-300048
アリストン
- 審判番号
- 2022-300048
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2009-078424
- 登録番号
- 5387954
- 請求日
- 2022年01月21日
- 審決日
- 2024年01月11日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 和楊徳信
- 【請求人代理人】弁理士法人ナビジョン国際特許事務所
- 【被請求人】株式会社 ミヤキ
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T132 .1 -Z (X01)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条、商標法第50条第2項、商標法第50条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5387954号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5387954号商標の指定商品中、第1類「工業用洗浄剤」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5387954号商標(以下「本件商標」という。)は、「アリストン」の文字を標準文字で表してなり、平成21年10月16日に登録出願、第1類「床及び建築物用コーティング剤,その他の化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類,塗装用パテ,工業用洗浄剤」を指定商品として、同23年2月4日に設定登録され、その後、その指定商品中「植物成長調整剤類」については、放棄による一部抹消の登録が同年8月29日(受付日)になされており、その商標権は現に有効に存続するものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年2月7日であり、この登録前3年以内の期間である平成31年2月7日から令和4年2月6日までを、以下「要証期間」という場合がある。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和4年3月2日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同月17日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第1類「工業用洗浄剤」(以下「請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁について
被請求人の提出する証拠は、請求に係る指定商品に関するものとはいえず、商標を使用していたことの証明にはなり得ない。
被請求人は、自身(本件商標権者)の取り扱う商品の用途に洗浄の用途がある旨を述べているものの、建築石材用浸透性保護剤・防汚剤として販売されていることが明らかであり、洗浄剤として販売されていないことは明らかである。
したがって、商標法第50条に規定されている登録商標の使用事実が証明されたということはできない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 本件商標権者(被請求人)が上市している「製品名:アリストン」とする商品(以下「使用商品」という。)は、建築石材用浸透性保護剤・防汚剤と記載のとおり主に石材を保護し、汚れを抑える保護剤である(乙1)。 建築メンテナンス業界では広く知られ、国内施設のみならず、2008年開催の北京オリンピック時には中華人民共和国の国家スタジアム、「通称:鳥の巣」でも使用された主力製品の一つである(乙2)。
その使用方法及び用途は幅広く、建築物への施工だけではなく、某タイルメーカーがタイル製造の最終工程で使用商品を塗布することで美しく仕上げるといったケースもある。
また、使用商品は、プロフェッショナル向け(業務用)で高い施工技術が必要な製品であり、特殊な技法も含め施工方法は多岐にわたる。その中の一つに、基材表面の油汚れやワックス汚れ等の除去(洗浄作業)に使用するという方法がある。これは、塗工作業性を良くすることを目的として、石油ナフサ・ノナン・オクタン等の工業用洗浄溶剤に使われる成分を80%以上含んでいることからも理解できる(乙3~乙6)。
このように、使用商品は、主用途である建築石材用浸透性保護剤・防汚剤のみならず、洗浄と保護を同時に行うことができる洗浄保護剤としての利用方法があることがわかる。そのため、本件商標の商標登録にあたり、需要者を守ることを目的として指定商品に「工業用洗浄剤」を含めて出願した。
2 一般的に建築物の外壁や床面等にコーティング剤や保護剤を施工する際、施工前に充分基材を洗浄することが推奨されている。これは、施工面に汚れ・ゴミ・ホコリ・油分・ワックス等が付いていることにより、保護剤の密着・浸透が悪くなることを防ぐのを目的としている(乙1)。
実際に工事を発注する施主は、洗浄剤や保護剤の施工を発注する際、ビフォーとアフターでどれだけ綺麗になったかという視覚的な効果や、施工後の汚れ防止や美観の維持といった資産価値の向上に大きな期待をされることがほとんどである。
発注者である施主の立場で見ると、洗浄と保護はどちらも同じ「投資」の側面を持ち、また得られる効果も「美観」という側面で一致している。
このように、建築メンテナンス業界は勿論の事、一般の施主においても、基材を綺麗に洗浄することと、基材を綺麗に保護することは分けることの出来ない一体化されたイメージであり、洗浄と保護の概念を完全に切り離すことは不可能であると思料する。
3 本件審判請求で、本件商標の指定商品中、第1類「工業用洗浄剤」の取消審判がなされた場合、一般市場において、他者の「工業用洗浄剤:アリストン」と「本件商標権者製アリストン」(使用商品)が同時に存在しうることになる。上記2でも述べたとおり、洗浄と保護の概念を完全に切り離すことはとても難しく、一般の需要者が混同したり選択の錯誤をしたりする可能性が非常に高くなることを危惧している。これらを理由とする訴訟やトラブルの発生を否定することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は不使用にあたらず、また需要者の利益を守るためにも本件商標の権利は変わらず維持されるべきものである。
第4 審尋及び被請求人の回答
1 審尋
審判長は、令和5年8月14日付け審尋において、被請求人に対し、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標権者が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認めることができない旨の合議体の暫定的見解及び請求人提出の弁駁書に対する回答を求めた。
2 被請求人の回答
被請求人は、上記1の審尋に対し何らの応答もしていない。
第5 当審の判断
1 事実認定
被請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証
乙第1号証は、本件商標権者(被請求人)が製造しているとする商品(使用商品)のパンフレットであり、該カタログの表面及び裏面の上部等に、「アリストン」の表示はあるももの、該「アリストン」の表示の上部に「建築石材用浸透性保護剤・防汚剤(自然色仕上げ)」の記載があり、また、カタログの裏面に、商品の用途として「御影石・大理石・テラゾー・磁器タイル・レンガ・セメント目地等の保護及び汚れの抑制。」、「エフロの石材表面発生や裏面からの水分・汚れの吸い上げの抑制。撥水・撥油効果による石材表面からの汚れの侵入の抑制。」との記載がある。
(2)乙第2号証
乙第2号証として提出された「アリストン施工実績表」に、施行年月や施行現場名等とともに「アリストン」の記載があるものの、該「アリストン」は「使用した保護剤」の項目として記載されている。
(3)乙第3号証
乙第3号証は、使用商品に係る安全データシートであるところ、当該書証には、製品の名称として「アリストン」の記載があり、推奨用途及び使用上の制限として「建築石材用浸透性保護材・防汚剤(自然色仕上げ)」の記載がある。
(4)乙第4号証ないし乙第6号証
乙第4号証は「石油ナフサ」、乙第5号証は「n-ノナン」及び乙第6号証は「n-オクタン」の安全データシートであるところ、石油ナフサはエチレン製造用、都市ガス、ガソリン、各種溶剤などの製造用原料等、n-ノナンは無臭溶剤として機械洗浄用等及びn-オクタンは合成樹脂、アルコール可溶染料の溶媒等を用途とする化学品であり、いずれも使用商品の原材料であることが認められる(乙3)。
2 判断
上記1によれば、以下のとおりである。
(1)使用商品
上記1(1)ないし(3)からすれば、本件商標の使用に係る商品(使用商品)は「石材等の目地等の保護剤」及び「汚れを防止する防汚剤」であり、請求に係る指定商品「工業用洗浄剤」と異なる商品である。
その他、被請求人が提出した全証拠によっても、要証期間に本件商標を請求に係る指定商品に使用したものとは認められない。
(2)被請求人の主張について
被請求人は、使用商品は工業用洗浄溶剤に使われている成分を含んでなるものであるから、「工業用洗浄剤」である旨、また、洗浄と保護の概念を切り離すことは不可能である旨述べているが、上記(1)のとおり、使用商品は「石材等の目地等の保護剤」及び「汚れを防止する防汚剤」として使用されているものであって、原材料が同じこと及び原材料に洗浄用の用途があることをもって使用商品が工業用洗浄剤(請求に係る指定商品)であると認めることはできない。
また、商標法第50条第2項には「・・・その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」旨規定されているところ、当該「指定商品」は類似の商品にまで及ぶものではないから、仮に「洗浄剤」と「保護材」とが一体的な概念を持つ商品であるとしても、使用商品への本件商標の使用が、請求に係る指定商品への本件商標の使用と認めることはできない。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)のとおり、被請求人の主張及び同人の提出した証拠を総合的に判断すると、本件商標の使用商品は「石材等の目地等の保護剤」及び「汚れを防止する防汚剤」であり、請求に係る指定商品(工業用洗浄剤)と異なる商品である。
3 結び
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定商品について、本件商標を使用したことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、その指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、結論掲記の指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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