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特許拒絶査定不服審判

2021-000597

導電性組成物、非水電解質二次電池用下地層付き集電体、非水電解質二次電池用電極、及び非水電解質二次電池

審判番号
2021-000597
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-117095
請求日
2021年01月15日
審決日
2022年03月15日
公報発行日
2022年04月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】東洋インキSCホールディングス株式会社
  • 【請求人】トーヨーカラー株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 清水 稔
  • 審判官 山田 正文
  • 審判官 須原 宏光
分類
P18 .121-WY (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2016-117095「導電性組成物、非水電解質二次電池用下地層付き集電体、非水電解質二次電池用電極、及び非水電解質二次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-224407、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成28年6月13日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 2月 4日付け:拒絶理由通知 令和 2年 5月27日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年10月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 3年 1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定(令和2年10月12日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1-5 ・引用文献等 1-3、5-9 ・請求項 1-5 ・引用文献等 7、5、6、8、9 引用文献等一覧 1.特開2016-81704号公報 2.国際公開第2015/046469号 3.特開2009-176599号公報 5.国際公開第2014/046112号 6.特開2015-204221号公報 7.特開2014-137915号公報 8.国際公開第2014/010681号 9.国際公開第2014/157405号 なお、引用文献1と引用文献7による拒絶の理由はないので、「・引用文献等 1-3、5-9」との記載は「・引用文献等 1-3、5、6、8、9」の誤記と認める。 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1に「水酸基を含有する水溶性樹脂(B)が、グァーガム、グァーガム誘導体、キサンタンガム、キサンタンガム誘導体、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、セルロース誘導体(但し、カルボキシルメチルセルロースを除く)、アルギン酸およびアルギン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一つであり」という事項を追加する補正は、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「水酸基を含有する水溶性樹脂(B)」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、追加された事項は、願書に最初に添付した明細書の段落【0029】に記載されているから、新規事項を追加するものではない。 さらに、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和3年1月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 導電性の炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)(但し、ケン化度87~89mol%のポリビニルアルコール(PVA)およびカルボキシルメチルセルロースを除く)と、水分散樹脂微粒子(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物であって、前記水分散樹脂微粒子が、少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含み、炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有率が、10~50質量%であり、水酸基を有する水溶性樹脂(B)の含有率が、10~50質量%であり、水分散樹脂微粒子(C)の含有率が、30~70質量%であり、水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子の割合が、水分散樹脂微粒子(C)全体に対し、50~100質量%であり、 水酸基を含有する水溶性樹脂(B)が、グァーガム、グァーガム誘導体、キサンタンガム、キサンタンガム誘導体、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、セルロース誘導体(但し、カルボキシルメチルセルロースを除く)、アルギン酸およびアルギン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、 水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が、カルボニル基を有するオレフィン樹脂微粒子であり、前記オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であり、 架橋剤を含まないことを特徴とする非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物。 【請求項2】 集電体と、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物から形成された下地層とを有する非水電解質二次電池用下地層付き集電体。 【請求項3】 集電体と、請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物から形成された下地層と、電極活物質及びバインダーを含有する電極形成用組成物から形成された合材層とを有する非水電解質二次電池用電極。 【請求項4】 正極と負極と電解液とを具備する非水電解質二次電池であって、前記正極または前記負極の少なくとも一方が、請求項3に記載の非水電解質二次電池用電極である、非水電解質二次電池。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「導電性組成物」について図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、導電性組成物、それを使用する蓄電デバイス用電極、およびその電極を用いて得られる蓄電デバイスに関する。」 「【0010】 本発明の目的は、導電性や密着性に優れる、有機活物質を含有する蓄電デバイス用電極に使用する導電性組成物であり、充放電サイクル特性に優れる、有機活物質を含有する蓄電デバイスを形成するための蓄電デバイス用電極に使用する導電性組成物を提供することである。」 「【0012】 導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)とを含むことにより、導電性組成物中の導電性の炭素材料の分散性を損ねることなく、集電体や有機活物質を含む合材層への密着性に優れる下地層を形成でき、蓄電デバイスが使用される環境下においても良好な充放電サイクル特性を有する蓄電デバイスを提供できる。さらには、導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)とを特定の比率で含む導電性組成物を使用することにより、良好な充放電サイクル特性を有する蓄電デバイスを提供できる。」 「【0016】 <導電性組成物> ここで、本発明で用いられる下地層を形成する導電性組成物について説明する。導電性組成物は、導電性の炭素材料(A)と水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する。」 「【0104】 さらに、本発明の導電性組成物を蓄電デバイス用電極の下地層形成用として用いる場合、蓄電デバイスの過充電または短絡発生時における熱暴走を抑制する目的で、所定温度以上になるとガスを発生する材料、抵抗の温度係数が正である材料を加えてもよい。 【0105】 所定温度以上になるとガスを発生する材料として、例えば、炭酸リチウム、炭酸亜鉛、炭酸鉛、炭酸ストロンチウムなどの炭酸塩類、膨張黒鉛などを挙げることができる。 【0106】 また、抵抗の温度係数が正である材料として、PTC材料および高分子PTC材料が挙げられる。PTC材料とはそのキュリー温度を超えると抵抗が急激に増大する材料であり、例えば、BaTiMO2(MはCr、Pb、Ca、Sr、Ce、Mn、La、Mn、Y、NbおよびNdのいずれか一種以上の元素)が挙げられる。 【0107】 高分子PTC材料とは、熱による高分子の体積変化を利用して抵抗を増大させる材料であり、低温では、導電性の炭素材料(A)によって導電パスが形成されているため電流が流れるが、高温になると高分子が膨張または収縮して導電パスが遮断され、抵抗を増大させることができる。このような高分子PTC材料として、ポリエチレン 、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの共重合体または混合物などが挙げられる。」 「【0130】 <蓄電デバイス> (電池構成) 正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の下地層付き集電体と、有機活物質を有する合材層とを備えた電極を用い、二次電池、キャパシターなどの蓄電デバイスを得ることができる。蓄電デバイスは、正極と、負極と、セパレーターと、電解質とを含む。正極と負極とは、セパレーターを介して対向するように配置される。 【0131】 二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池で従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。 キャパシターとしては、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターなどが挙げられ、それぞれのキャパシターで従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。 【0132】 (電解液) リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。」 「【0137】 以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「質量部」を表す。 【0138】 <水分散性樹脂微粒子バインダー(C)の調製> [合成例1] 攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアデカリアソープSR-10(株式会社ADEKA製)0.2部とを仕込み、別途、メチルメタクリレート48.5部、ブチルアクリレート50部、アクリル酸1部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアデカリアソープSR-10(株式会社ADEKA製)2部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1質量%をさらに加えた。内温を70℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5質量%水溶液10部のうちの10質量%を添加し重合を開始した。反応系内を70℃で5分間保持した後、70℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5質量%水溶液の残りを3時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。25質量%アンモニア水を添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で固形分を40質量%に調整して水分散性樹脂微粒子バインダー(C)を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。 【0139】 <化合物(E)の製造[エポキシ基含有化合物の製造]> [製造例1] 攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器にイソプロピルアルコール20部、水20部を仕込み、別途、メチルメタクリレート40部、メチルアクリレート40部、グリシジルメタクリレート20部を滴下槽1に、また、過硫酸カリウム2部をイソプロピルアルコール30部および水30部に溶解させて滴下槽2に仕込んだ。内温を80℃に昇温し十分に窒素置換した後、滴下槽1、2を2時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、内温を80℃に保ったまま1時間攪拌を続け、固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却し、固形分40質量%のエポキシ基含有化合物(メチルメタクリレート/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体)溶液を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。」 「【0143】 [合成例2~21] 表1、3に示す材料および組成に変更した以外は、合成例1と同様の方法で、それぞれ合成例2~10、18~21の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)を得た。また、表2の合成例11~17の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)は、表2に示す架橋型樹脂微粒子と、重合した樹脂微粒子に添加する未架橋の化合物(E)を混合して得た。尚、表1~3中の数値は質量部を表す。ただし、合成例20、21は乳化重合時に樹脂が凝集し、目的の樹脂微粒子を得ることができなかった。 【0144】 【表1】 [図:0001382865000001.jpg] 【0145】 【表2】 [図:0001382865000002.jpg] 」 「【0148】 <導電性組成物> (実施例1) 導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A-1:デンカブラックHS-100)10部、水溶性樹脂バインダーとしてポリアリルアミン20質量%水溶液(B-1)を5部(固形分として1部)、水分散性樹脂微粒子バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン30-J(三井・デュポンフロロケミカル社製)60質量%水系分散液(C-1)を31部(固形分として18.6部)、水104部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、導電性組成物(1)を得た。得られた導電性組成物の分散度をグラインドゲージによる判定(JISK5600-2-5に準ず)より求めた。評価結果を表4に示す。表中の数字は粗大粒子の大きさを示し、数値が小さいほど分散性に優れ、均一で良好な状態であることを示している。 【0149】 (実施例2~実施例13、比較例1、2) 表4に示す材料および組成比に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、それぞれ導電性組成物(2)~(15)を得た。また、実施例1と同様に、グラインドゲージによる分散度を表4に示す。 【0150】 【表4】 [図:0001382865000003.jpg] 【0151】 実施例で使用した材料を下記に示す。 〈導電性の炭素材料(A)〉 ・A-1:デンカブラックHS-100(電気化学工業社製) ・A-2:ミツビシカーボン#3050B(三菱化学社製) ・A-3:デンカブラック粒状品(電気化学工業社製) 〈水溶性樹脂バインダー(B)〉 ・B-1:ポリアリルアミンPAA-05(20質量%水溶液)(日東紡績社製) ・B-2:カルボキシルメチルセルロース(和光純薬工業社製) ・B-3:ポリアクリル酸(和光純薬工業社製、平均分子量5000) ・B-4:スチレンアクリル共重合体(スチレン75質量%アクリル酸25質量%の共重 合体20質量%水溶液) 〈水分散性樹脂微粒子バインダー(C)〉 ・C-1:ポリテトラフルオロエチレン30-J(固形分60質量%水分散液)(三井・デュポンフロロケミカル社製) ・C-2:ウレタンエマルジョンディスコパールU-53(固形分30質量%水分散液)(住化バイエルウレタン社製) ・C-3:スチレンブタジエンエマルジョンTRD-2001(固形分48質量%水分散液)(JSR社製)」 (2)技術的事項 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているといえる。 ア 段落【0010】、【0012】、【0016】の記載によれば、引用文献1に記載された「導電性組成物」は、蓄電デバイス用電極に使用され、導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有し、集電体への密着性に優れる下地層を形成するものである。 段落【0130】、【0131】の記載によれば、蓄電デバイスとしてはリチウムイオン二次電池が挙げられ、段落【0132】の記載によれば、リチウムイオン二次電池の電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。 してみると、引用文献1に記載された「導電性組成物」は、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解した電解液を用いたリチウムイオン二次電池に使用され、導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有し、集電体への密着性に優れる下地層を形成するものである。 イ 段落【0104】ないし【0107】の記載によれば、導電性組成物は熱暴走を抑制する目的で抵抗の温度係数が正である材料としてポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子PTC材料を加えてもよいものである。 ウ 段落【0149】ないし【0151】の記載によれば、表4の実施例7に係る導電性組成物は、導電性の炭素材料(A)としてミツビシカーボン#3050B(三菱化学社製)を10部、水溶性樹脂バインダー(B)としてポリアクリル酸(和光純薬工業社製、平均分子量5000)を7.6部(固定分として7.6部)、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)として合成例11を30.5部(固形分として12.2部)、水を102部混合して得た導電性組成物である。 段落【0143】、【0145】の記載によれば、表2の合成例11の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)は、架橋型樹脂微粒子として合成例8を100部、重合した樹脂微粒子に添加する未架橋の化合物(E)としてエポキシ樹脂を15部混合して得たものである。 そして、段落【0138】、【0143】、【0144】の記載によれば、表1の合成例8水分散性樹脂微粒子バインダー(C)は、単量体として、メチルメタクリレート7部、アクリル酸1部、スチレン50部、2-エチルエキシルアクリレート40部、アクリルアミド1.5部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部からなるものである。 してみると、合成例11の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)は、架橋型樹脂微粒子として、単量体がメチルメタクリレート7部、アクリル酸1部、スチレン50部、2-エチルエキシルアクリレート40部、アクリルアミド1.5部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部からなる水分散性樹脂微粒子バインダーを100部、重合した樹脂微粒子に添加する未架橋の化合物(E)としてエポキシ樹脂を15部混合して得たものである。 以上のことより、実施例7に係る導電性組成物は、導電性の炭素材料(A)としてミツビシカーボン#3050B(三菱化学社製)を10部、水溶性樹脂バインダー(B)としてポリアクリル酸(和光純薬工業社製、平均分子量5000)を7.6部(固定分として7.6部)、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)として、メチルメタクリレート7部、アクリル酸1部、スチレン50部、2-エチルエキシルアクリレート40部、アクリルアミド1.5部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部からなる単量体を重合した水分散性樹脂微粒子バインダーを100部、重合した樹脂微粒子に添加する未架橋の化合物(E)としてエポキシ樹脂を15部混合して得たものを30.5部(固形分として12.2部)、水を102部混合して得た導電性組成物である。 (3)引用発明 上記(2)アないしウより引用文献1には、原査定の拒絶の理由で引用されると共に、本件発明1との対比において各構成の混合比率が最も適当な実施例である実施例7に係る「導電性組成物」の発明として、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解した電解液を用いたリチウムイオン二次電池に使用され、導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有し、集電体への密着性に優れる下地層を形成するものであり、 熱暴走を抑制する目的で抵抗の温度係数が正である材料としてポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子PTC材料を加えてもよい導電性組成物において、 導電性の炭素材料(A)としてミツビシカーボン#3050B(三菱化学社製)を10部、水溶性樹脂バインダー(B)としてポリアクリル酸(和光純薬工業社製、平均分子量5000)を7.6部(固定分として7.6部)、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)として、メチルメタクリレート7部、アクリル酸1部、スチレン50部、2-エチルエキシルアクリレート40部、アクリルアミド1.5部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部からなる単量体を重合した水分散性樹脂微粒子バインダーを100部、重合した樹脂微粒子に添加する未架橋の化合物(E)としてエポキシ樹脂を15部混合して得たものを30.5部(固形分として12.2部)、水を102部混合して得た 導電性組成物。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落[0011]、[0025]の記載からみて、当該引用文献2には、「正極集電体上に設けられ、導電性粒子とポリマー粒子と水溶性高分子とを含むPTC層を備えるリチウムイオン二次電池用正極において、水溶性高分子として水溶性アルギン酸誘導体、カラギーナン、グルコマンナン、ペクチン、カードラン、ジェランガムなどを用いる」という技術的事項が記載されていると認められる。 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の段落【0012】、【0016】、【0022】、【0024】の記載からみて、当該引用文献3には、「正極活物質層と正極集電体との間に正の抵抗温度特性層が設けられた正極において、正の抵抗温度特性層は正の抵抗温度特性を有する導電性無機粒子を水溶性バインダとともに水に分散させて作製されたものであり、水溶性バインダとしては水溶性アルギン酸誘導体、カラギーナン、グルコマンナン、ペクチン、カードラン、ジェランガムなどを用いる」という技術的事項が記載されていると認められる。 4 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5の段落[0010]、[0032]、[0068]、[0071]の記載からみて、当該引用文献5には実施例18として、「基材の少なくとも片面に導電性を有する樹脂層を備える集電体であって、該樹脂層がPTC発現温度が65℃から200℃となる集電体において、樹脂層に用いる樹脂は、フッ素系樹脂としてアクリル酸変性されたPVDF、ポバール系樹脂(ケン化度70%)を配合したものとする」技術的事項が記載されていると認められる。 5 引用文献6について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6の段落【0019】、【0058】の記載からみて、当該引用文献6には、「導電性基材上の第一樹脂層と第一樹脂層上の第二樹脂層を有し、第一樹脂層及び第二樹脂層は共に導電性とPTC機能とを有する集電体において、第一樹脂層のベース樹脂については、ポバール樹脂として、ケン化度70%のポリビニルアルコールを用いる」技術的事項が記載されていると認められる。 6 引用文献7について (1)記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には、「電気化学素子電極用導電性接着剤組成物」について図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、電極活物質層と集電体との間に設ける導電性接着剤層を形成するための電気化学素子電極用導電性接着剤組成物に関するものである。」 「【0011】 即ち、本発明によれば、 (1) 導電性カーボンと、中和剤で中和されたα-オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体を含む粒子状結着剤と、水とを含むことを特徴とする電気化学素子電極用導電性接着剤組成物、 ・・・中略・・・ が提供される。」 「【0064】 (電気化学素子) 電気化学素子用電極の使用態様としては、かかる電極を用いたリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウム電池、マグネシウム電池などが挙げられ、リチウムイオン二次電池が好適である。たとえばリチウムイオン二次電池は、上記電気化学素子用電極、セパレータおよび電解液で構成される。」 「【0066】 (電解液) 電解液は、特に限定されないが、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liは好適に用いられる。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。支持電解質の量は、電解液に対して、通常1~30質量%、好ましくは5~20質量%である。支持電解質の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下し電池の充電特性、放電特性が低下する。」 「【0070】 以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。各特性は、以下の方法により評価する。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」および「質量%」である。 実施例及び比較例中、粒子径測定、膨潤度試験、碁盤目試験及び高温サイクル特性の評価は以下のようにして行った。」 「【0075】 (実施例1) (粒子状結着剤の製造) 攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに結着剤としてエチレン-アクリル酸共重合体(PRIMACOR5990I、ダウ・ケミカル社製、MI:1300g/10min、エチレン単量体単位とアクリル酸単量体単位との組成比(質量比):エチレン単量体単位/アクリル酸単量体単位=80/20)300部、分散媒としてイオン交換水1162.9部及び中和剤としてN,N-ジメチルエタノールアミン37.14部を加えた。なお、中和剤は、エチレン-アクリル酸共重合体に含まれるカルボキシル基の50モル%を中和するのに相当する量を用いた。 【0076】 これらを攪拌しながら95℃まで昇温させて、2時間保温させることにより中和反応を行わせた。その後、室温まで冷却し、水分散エマルジョン化された粒子状結着剤を得た。この水分散エマルジョン化された粒子状結着剤について粒子径測定を行った。 【0077】 (接着剤組成物の製造) 分散剤(ポリビニルアルコール)2部をイオン交換水80部に溶解させた水溶液に、炭素材料(デンカブラック+グラファイト)16部を添加し、さらに粒子状結着剤を固形分相当で2部添加したスラリーを作製した。スラリーの温度を20℃まで冷却し、株式会社常光社製 ジェットミル(JN-100)にて150μmのX(エックス)ノズルを用い、150MPaの圧力で3パス処理し導電性接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物の固形分濃度は、25質量%であった。」 (2)技術的事項 上記記載から、引用文献7には、次の技術的事項が記載されているといえる。 ア 段落【0001】の記載によれば、引用文献7に記載された「電気化学素子電極用導電性接着剤組成物」は、電極活物質と集電体との間に設ける導電性接着剤層を形成するためのものである。 イ 段落【0064】、【0066】の記載によれば、電気化学素子は、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解した電解液で構成されるリチウムイオン二次電池である。 ウ 段落【0077】の記載によれば、実施例1に係る導電性接着剤組成物は、分散剤(ポリビニルアルコール)2部をイオン交換水80部に溶解させた水溶液に、炭素材料(デンカブラック+グラファイト)16部を添加し、さらに粒子状結着剤を固形分相当で2部添加したものである。 段落【0075】、【0076】の記載によれば、実施例1に係る粒子状結着剤は、結着剤としてエチレン-アクリル酸共重合体(PRIMACOR5990I、ダウ・ケミカル社製、MI:1300g/10min、エチレン単量体単位とアクリル酸単量体単位との組成比(質量比):エチレン単量体単位/アクリル酸単量体単位=80/20)300部、分散媒としてイオン交換水1162.9部及び中和剤としてN,N-ジメチルエタノールアミン37.14部を加えて製造されたものである。 してみると、実施例1に係る導電性接着剤組成物は、分散剤(ポリビニルアルコール)2部をイオン交換水80部に溶解させた水溶液に、炭素材料(デンカブラック+グラファイト)16部を添加し、さらに、結着剤としてエチレン-アクリル酸共重合体(PRIMACOR5990I、ダウ・ケミカル社製、MI:1300g/10min、エチレン単量体単位とアクリル酸単量体単位との組成比(質量比):エチレン単量体単位/アクリル酸単量体単位=80/20)300部、分散媒としてイオン交換水1162.9部及び中和剤としてN,N-ジメチルエタノールアミン37.14部を加えて製造された粒子状結着剤を固形分相当で2部添加したものである。 (3)引用発明 上記(2)アないしウより引用文献7には、原査定の拒絶の理由で引用されると共に、本件発明1との対比において各構成の添加比率が最も適当な実施例である実施例1に係る「電気化学素子電極用導電性接着剤組成物」の発明として、次の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。 「電極活物質と集電体との間に設ける導電性接着剤層を形成する電気化学素子電極用導電性接着剤組成物において、 電気化学素子は、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解した電解液で構成されるリチウムイオン二次電池であり、 導電性接着剤組成物は、分散剤(ポリビニルアルコール)2部をイオン交換水80部に溶解させた水溶液に、炭素材料(デンカブラック+グラファイト)16部を添加し、さらに、結着剤としてエチレン-アクリル酸共重合体(PRIMACOR5990I、ダウ・ケミカル社製、MI:1300g/10min、エチレン単量体単位とアクリル酸単量体単位との組成比(質量比):エチレン単量体単位/アクリル酸単量体単位=80/20)300部、分散媒としてイオン交換水1162.9部及び中和剤としてN,N-ジメチルエタノールアミン37.14部を加えて製造された粒子状結着剤を固形分相当で2部添加したものである 電気化学素子電極用導電性接着剤組成物。」 7 引用文献8について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献8の段落[0022]、[0036]、[0047]ないし[0050]の記載からみて、当該引用文献8には、「導電性基材と樹脂層とを備える集電体において、樹脂層は有機樹脂と導電性粒子とを含むPTC層であり、この樹脂層の有機樹脂として用いられるオレフィン系樹脂は、カルボン酸などで変性させて、カルボキシル基又はカルボン酸エステルを有する」ものとする技術的事項(以下、「引用文献8記載の技術」という。)が記載されていると認められる。 8 引用文献9について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献9の段落[0012]、[0013]、[0030]の記載からみて、当該引用文献9には、「常温時の優れた導電性および高温時の優れたシャットダウン機能を両立させる、導電性基材と樹脂層とを備える集電体において、樹脂層はポリオレフィン系エマルション粒子の凝集物と導電材とを含むペーストで形成されたものであり、ポリオレフィン系エマルション粒子を構成するポリオレフィン系樹脂はカルボン酸(または無水カルボン酸)変性され」たものとする技術的事項(以下、「引用文献9記載の技術」という。)が記載されていると認められる。 第6 対比・判断 1 引用文献1を主引用文献とした拒絶理由について (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1のミツビシカーボン#3050B(三菱化学社製)である「導電性の炭素材料(A)」は、本願発明1における「導電性の炭素材料(A)」に相当する。 引用発明1のポリアクリル酸(和光純薬工業社製、平均分子量5000)である「水溶性樹脂(B)」は、本願発明1の「水酸基を有する水溶性樹脂(B)(但し、ケン化度87~89mol%のポリビニルアルコール(PVA)およびカルボキシルメチルセルロースを除く)」に相当する。 引用発明1の「メチルメタクリレート7部、アクリル酸1部、スチレン50部、2-エチルエキシルアクリレート40部、アクリルアミド1.5部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部からなる単量体を重合した水分散性樹脂微粒子バインダーを100部」と、「重合した樹脂微粒子に添加する未架橋の化合物(E)としてエポキシ樹脂を15部」を混合して得たものである「水分散性樹脂微粒子バインダー(C)」は、本願発明1の「水分散性樹脂微粒子バインダー(C)」に相当する。 引用発明1の「水性液状媒体(D)」は本願発明1の「水性液状媒体(D)」に相当する。 そして、引用発明1の「導電性組成物」は、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解した電解液を用いたリチウムイオン二次電池に使用され、集電体への密着性に優れる下地層を形成するものであるから、本願発明1の「非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物」に相当する。 してみると、引用発明1の「導電性の炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有」する「導電性組成物」は、本願発明1の「導電性の炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)(但し、ケン化度87~89mol%のポリビニルアルコール(PVA)およびカルボキシルメチルセルロースを除く)と、水分散樹脂微粒子(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物」に相当する。 (イ)本願発明1は「前記水分散樹脂微粒子が、少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含み」、「水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子の割合が、水分散樹脂微粒子(C)全体に対し、50~100質量%」であるのに対して、引用発明1は「ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子PTC材料を加えてもよい」ものの、「水分散性樹脂微粒子バインダー(C)」がオレフィン系樹脂微粒子を50~100質量%含むものとは特定されていない点で相違する。 (ウ)引用発明1は導電性の炭素材料(A)を10部、水溶性樹脂バインダー(B)を7.6部(固定分として7.6部)、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)を30.5部(固形分として12.2部)混合したものである。 ここで、引用文献1の段落【0137】の記載によれば「部」は「質量部」であるから、引用発明1の導電性の炭素材料(A)と水溶性樹脂バインダー(B)と水分散性樹脂微粒子バインダー(C)との固形分の合計100質量%中の導電性の炭素材料(A)の含有率は、33.6質量%(=10/(10+7.6+12.2)×100)あり、本願発明1の「炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有率が、10~50質量%であ」ることに含まれる。 同様に、引用発明1の導電性の炭素材料(A)と水溶性樹脂バインダー(B)と水分散性樹脂微粒子バインダー(C)との固形分の合計100質量%中の水溶性樹脂バインダー(B)の含有率は、25.5質量%(=7.6/(10+7.6+12.2)×100)であり、本願発明1の「炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中」、「水酸基を有する水溶性樹脂(B)の含有率が、10~50質量%であ」ることに含まれる。 また、引用発明1の導電性の炭素材料(A)と水溶性樹脂バインダー(B)と水分散性樹脂微粒子バインダー(C)との固形分の合計100質量%中の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)の含有率は、40.9質量%(=12.2/(10+7.6+12.2)×100)であり、本願発明1の「炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中」、「水分散樹脂微粒子(C)の含有率が、30~70質量%であ」ることに含まれる。 (エ)本願発明1は「水酸基を含有する水溶性樹脂(B)が、グァーガム、グァーガム誘導体、キサンタンガム、キサンタンガム誘導体、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、セルロース誘導体(但し、カルボキシルメチルセルロースを除く)、アルギン酸およびアルギン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一つであ」るのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (オ)本願発明1は「水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が、カルボニル基を有するオレフィン樹脂微粒子であり、前記オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であり、架橋剤を含まない」のに対して、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (カ)したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「導電性の炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)(但し、ケン化度87~89mol%のポリビニルアルコール(PVA)およびカルボキシルメチルセルロースを除く)と、水分散樹脂微粒子(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物であって、炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有率が、10~50質量%であり、水酸基を有する水溶性樹脂(B)の含有率が、10~50質量%であり、水分散樹脂微粒子(C)の含有率が、30~70質量%である非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物。」 (相違点1)本願発明1は「前記水分散樹脂微粒子が、少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含み」、「水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子の割合が、水分散樹脂微粒子(C)全体に対し、50~100質量%」であるのに対して、引用発明1は「ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子PTC材料を加えてもよい」ものの、「水分散性樹脂微粒子バインダー(C)」がオレフィン系樹脂微粒子を50~100質量%含むものとは特定されていない点。 (相違点2)本願発明1は「水酸基を含有する水溶性樹脂(B)が、グァーガム、グァーガム誘導体、キサンタンガム、キサンタンガム誘導体、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、セルロース誘導体(但し、カルボキシルメチルセルロースを除く)、アルギン酸およびアルギン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一つであ」るのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 (相違点3)本願発明1は「水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が、カルボニル基を有するオレフィン樹脂微粒子であり、前記オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であり、架橋剤を含まない」のに対して、引用発明1はその旨特定されていない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 引用文献8記載の技術、引用文献9記載の技術のように、PTC機能を有する集電体においてカルボン酸変性されたオレフィン系樹脂を用いる技術は、本願出願日前において周知技術であったといえる。 しかしながら、PTC機能を有する集電体においてカルボン酸変性されたオレフィン系樹脂を用いる技術が周知技術であるとしても、PTC機能を有する集電体に用いるカルボン酸変性されたオレフィン系樹脂として、オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であるカルボニル基を有するオレフィン樹脂微粒子を用いる技術が周知技術であるとはいえない。また、当該技術は、引用文献2、3、5、6、8、9のいずれにも記載されていない。 そして、本願の明細書段落【0033】、【0035】に記載されるように、本願発明1は、変性量としては、オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であるカルボニル基を有するポリオレフィン樹脂微粒子を用いることにより、変性によって、樹脂微粒子の溶融耐性を付与でき、電池の内部温度上昇時に、オレフィン系樹脂微粒子の体積膨張を維持することができ、炭素材料同士の切断効果を維持し続けることができるという効果を奏するものと認められる。 また、当該変性量のカルボニル基を有するポリオレフィン樹脂微粒子を用いることは、引用発明1のみならず、引用文献1に記載されていない。 したがって、引用発明1に引用文献2、3、5、6、8、9に記載された技術を適用して、相違点3に係る構成を得ることが容易であったとはいえない。 よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1ないし3、5、6、8、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (2)本願発明2ないし4について 本願発明1を引用する本願発明2ないし4も、上記相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1ないし3、5、6、8、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2 引用文献7を主引用文献とした拒絶理由について (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明7とを対比する。 (ア)引用発明7の「炭素材料(デンカブラック+グラファイト)」は、本願発明1における「導電性の炭素材料(A)」に相当する。 引用発明7の「分散剤(ポリビニルアルコール)」は、本願発明1の「水酸基を有する水溶性樹脂(B)」と共通する。 ただし、水酸基を有する水溶性樹脂(B)が、本願発明1は「水酸基を有する水溶性樹脂(B)(但し、ケン化度87~89mol%のポリビニルアルコール(PVA)およびカルボキシルメチルセルロースを除く)」であるのに対し、引用発明7はその旨特定されていない点で相違する。 引用発明7の「エチレン-アクリル酸共重合体(PRIMACOR5990I、ダウ・ケミカル社製、MI:1300g/10min、エチレン単量体単位とアクリル酸単量体単位との組成比(質量比):エチレン単量体単位/アクリル酸単量体単位=80/20)300部、分散媒としてイオン交換水1162.9部及び中和剤としてN,N-ジメチルエタノールアミン37.14部を加えて製造された粒子状結着剤」(以下、単に「粒子状結着剤」という。)は、本願発明1の「水分散性樹脂微粒子バインダー(C)」に相当する。 引用発明7の「イオン交換水」は本願発明1の「水性液状媒体(D)」に相当する。 そして、引用発明7の「導電性接着剤組成物」は、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解した電解液で構成されるリチウムイオン二次電池である電気化学素子に用いられる、電極活物質と集電体との間に設ける導電性接着剤層を形成する電気化学素子電極用導電性接着剤組成物であるから、本願発明1の「非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物」に相当する。 してみると、引用発明7の「炭素材料(デンカブラック+グラファイト)」と、「分散剤(ポリビニルアルコール)」と、「粒子状結着剤」と、「イオン交換水」とからなる「導電性接着剤組成物」は、本願発明1の「非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物」と「導電性の炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する」点で共通する。 ただし、水酸基を有する水溶性樹脂(B)が、本願発明1は「水酸基を有する水溶性樹脂(B)(但し、ケン化度87~89mol%のポリビニルアルコール(PVA)およびカルボキシルメチルセルロースを除く)」であるのに対し、引用発明7はその旨特定されていない点で相違する。 (イ)引用発明7の「粒子状結着剤」はエチレン-アクリル酸共重合体、イオン交換水及び中和剤としてN,N-ジメチルエタノールアミン3を加えて製造されたものであるから、本願発明1の「前記水分散樹脂微粒子が、少なくともオレフィン系樹脂微粒子を含み」、「水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子の割合が、水分散樹脂微粒子(C)全体に対し、50~100質量%であ」ることに含まれる。 (ウ)本願発明1は「炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有率が、10~50質量%であり、」「水分散樹脂微粒子(C)の含有率が、30~70質量%であ」るのに対して、引用発明7はその旨特定されていない点で相違する。 (エ)引用発明7は分散剤(ポリビニルアルコール)2部、炭素材料(デンカブラック+グラファイト)16部、粒子状結着剤を固形分相当で2部添加したものである。 ここで、引用文献7の段落【0070】の記載によれば「部」は「質量部」であるから、引用発明7の炭素材料(デンカブラック+グラファイト)と分散剤(ポリビニルアルコール)と粒子状結着剤との固形分の合計100質量%中の分散剤(ポリビニルアルコール)の含有率は、10質量%(=2/(16+2+2)×100)あり、本願発明1の「炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中」、「水酸基を有する水溶性樹脂(B)の含有率が、10~50質量%であ」ることに含まれる。 (オ)本願発明1は「水酸基を含有する水溶性樹脂(B)が、グァーガム、グァーガム誘導体、キサンタンガム、キサンタンガム誘導体、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、セルロース誘導体(但し、カルボキシルメチルセルロースを除く)、アルギン酸およびアルギン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一つであ」るのに対し、引用発明7はその旨特定されていない点で相違する。 (カ)本願発明1は「水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が、カルボニル基を有するオレフィン樹脂微粒子であり、前記オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であり、架橋剤を含まない」のに対して、引用発明7はその旨特定されていない点で相違する。 (キ)したがって、本願発明1と引用発明7との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「導電性の炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物であって、炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中、水酸基を有する水溶性樹脂(B)の含有率が、10~50質量%であり、水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子の割合が、水分散樹脂微粒子(C)全体に対し、50~100質量%である非水電解質二次電池用電極の下地層形成用導電性組成物。」 (相違点1)水酸基を有する水溶性樹脂(B)が、本願発明1は「水酸基を有する水溶性樹脂(B)(但し、ケン化度87~89mol%のポリビニルアルコール(PVA)およびカルボキシルメチルセルロースを除く)」であるのに対し、引用発明7はその旨特定されていない点。 (相違点2)本願発明1は「炭素材料(A)と、水酸基を有する水溶性樹脂(B)と、水分散樹脂微粒子(C)との固形分の合計100質量%中、導電性の炭素材料(A)の含有率が、10~50質量%であり、」「水分散樹脂微粒子(C)の含有率が、30~70質量%であ」るのに対して、引用発明7はその旨特定されていない点。 (相違点3)本願発明1は「水酸基を含有する水溶性樹脂(B)が、グァーガム、グァーガム誘導体、キサンタンガム、キサンタンガム誘導体、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、セルロース誘導体(但し、カルボキシルメチルセルロースを除く)、アルギン酸およびアルギン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一つであ」るのに対し、引用発明7はその旨特定されていない点。 (相違点4)本願発明1は「水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が、カルボニル基を有するオレフィン樹脂微粒子であり、前記オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であり、架橋剤を含まない」のに対して、引用発明7はその旨特定されていない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点4について検討する。 上記「1(1)イ」に述べたように、PTC機能を有する集電体に用いるカルボン酸変性されたオレフィン系樹脂として、オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であるカルボニル基を有するオレフィン樹脂微粒子を用いる技術が周知技術であるとはいえない。 また、当該技術は、引用文献5、6、8、9のいずれにも記載されていない。 そして、上記「1(1)イ」に述べたように、本願発明1は、当該変性量のカルボニル基を有するポリオレフィン樹脂微粒子を用いることにより、変性によって、樹脂微粒子の溶融耐性を付与でき、電池の内部温度上昇時に、オレフィン系樹脂微粒子の体積膨張を維持することができ、炭素材料同士の切断効果を維持し続けることができるという効果を奏するものと認められる。 また、当該変性量のカルボニル基を有するポリオレフィン樹脂微粒子を用いることは、引用発明7のみならず引用文献7に記載されていない。 したがって、引用発明7に引用文献5、6、8、9に記載された技術を適用して、相違点4に係る構成を得ることが容易であったとはいえない。 よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献7、5、6、8、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (2)本願発明2ないし4について 本願発明1を引用する本願発明2ないし4も、上記相違点4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献7、5、6、8、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 本願発明1ないし4は「水分散樹脂微粒子(C)に含まれるオレフィン系樹脂微粒子が、カルボニル基を有するオレフィン樹脂微粒子であり、前記オレフィン樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルにおいて、2800~3000cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(X)と、1690~1740cm-1の最大ピーク高さ(極大吸光度)(Y)との比(Y)/(X)が0.05~1.0であり、架橋剤を含まない」という事項を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし3、5、6、8、9に基づいて、また、引用文献7、5、6、8、9に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし4は、引用文献1ないし3、5、6、8、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本願発明1ないし4は、引用文献7、5、6、8、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-000597

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