特許拒絶査定不服審判
2022-020186
混合装置、混合方法および基板処理システム
- 審判番号
- 2022-020186
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-212199外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月13日
- 審決日
- 2023年11月13日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東京エレクトロン株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .537-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第44条第1項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-212199「混合装置、混合方法および基板処理システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月18日出願公開、特開2021- 44593〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月13日に出願された特許出願(特願2019-46145号)の一部を、令和2年12月22日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2020-212199号)としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 3月25日 :上申書、手続補正書の提出
令和 4年 3月10日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 5月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 9月 8日付け:拒絶査定(原査定)
令和 4年12月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 7月28日付け:拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由通知書」という。)
令和 5年 9月13日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
令和5年9月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
リン酸水溶液とシリコン酸化物の析出を抑制する添加剤とを混合するタンクと、
前記タンクに前記リン酸水溶液を供給するリン酸水溶液供給部と、
前記タンクの上方に供給口が設けられ、前記シリコン酸化物の析出を抑制する添加剤を供給する添加剤供給部と、
前記タンクに貯留される前記リン酸水溶液が、前記タンクから出て前記タンクに戻る循環路と、
前記循環路に設けられ、前記タンクから出て前記循環路を通り前記タンクに戻る前記リン酸水溶液に循環流を形成するポンプと、
各部を制御する制御部と、
を備え、
前記添加剤は、局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有し、
前記循環路は、前記タンクの底部に入口が設けられ、前記タンクの上部に出口が設けられ、
前記制御部は、
前記リン酸水溶液供給部から前記タンクに前記リン酸水溶液を供給して前記タンクに所定の量の前記リン酸水溶液を貯留し、
前記ポンプを動作させて前記リン酸水溶液に循環流を形成し、
前記添加剤が前記リン酸水溶液の液面上に広がるように、前記タンク内で流動する前記リン酸水溶液の流動性に合わせて、少量ずつ、流動性が与えられた前記リン酸水溶液の液面に向けて、前記液面の上方より、前記添加剤を供給することにより、前記リン酸水溶液の前記添加剤の濃度が局所的に上昇することを抑制するように混合する
混合装置。」
第3 当審の拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知書に記載した当審の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
●理由1(サポート要件)
本願の請求項1~10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
●理由2(明確性要件)
本願の請求項1~10に係る発明は、明確でなく、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0011】
さらに、リン酸水溶液にシリコン酸化物の析出を抑制する添加剤(以下、「析出抑制剤」とも呼称する。)を追加することにより、エッチング処理の際にシリコン酸化膜上にシリコン酸化物が析出することを抑制することができる。」
「【0026】
実施形態に係る析出抑制剤は、シリコン酸化物の析出を抑止する成分を含むものであればよい。たとえば、リン酸水溶液Lに溶解したシリコンイオンを溶解した状態で安定化させてシリコン酸化物の析出を抑制するような成分を含んでもよい。また、その他の公知の方法でシリコン酸化物の析出を抑制するような成分を含んでもよい。
【0027】
実施形態に係る析出抑制剤には、たとえば、フッ素成分を含むヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)水溶液を用いることができる。また、水溶液中のヘキサフルオロケイ酸を安定化させるため、アンモニアなどの添加物を含んでもよい。
【0028】
実施形態に係る析出抑制剤としては、たとえば、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム(NH4)2SiF6や、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(Na2SiF6)などを用いることができる。
【0029】
また、実施形態に係る析出抑制剤は、イオン半径が0.2Åから0.9Åの陽イオンである元素を含む化合物であってもよい。ここで、「イオン半径」とは、結晶格子の格子定数から得られる陰イオンと陽イオンの半径の和から経験に求められたイオンの半径である。」
「【0060】
これにより、リン酸水溶液Lでの析出抑制剤の濃度が局所的に上昇することを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、析出抑制剤の濃度が局所的に上昇することで発生する析出抑制剤のゲル化を抑制することができる。」
第5 判断
ア 請求項1の記載
請求項1には、「前記添加剤は、局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有し、」と記載されている。
イ 請求人の主張
(ア)請求人は、審判請求書の3ページにおいて、「前記添加剤は、局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有し、」について、「補正直前の明細書の段落0060などの記載に基づいております。」と主張するとともに、「なお、拒絶査定に記載される、ヘキサフルオロケイ酸は、水と容易に混和する性質を有し、局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有する添加剤には含まれません。」と主張する。
(イ)さらに、請求人は、令和5年9月13日付け意見書(以下、「当審意見書」という。)において、当審拒絶理由通知書に記載の「請求項1に係る発明における添加剤(析出抑制剤)の具体例は、発明の詳細な説明のどこに開示されているのか不明である。」について、以下のとおり主張する。
「具体的には、本願明細書の段落0029には、「また、実施形態に係る析出抑制剤は、イオン半径が0.2Åから0.9Åの陽イオンである元素を含む化合物であってもよい。」と記載されております。
これは、本願技術におきまして、「イオン半径が0.2Åから0.9Åの陽イオンである元素を含む化合物」が「実施形態に係る析出抑制剤」の主成分であってもよいことを明示するものであります。たとえば、特許第6475881号公報に記載された「複合シラン」が、本願技術における析出抑制剤の一例として挙げられます。かかる「複合シラン」は、水に溶かすと自己縮合反応を起こして縮合しゲル化する性質を有しております。」
ウ 合議体の判断
(ア)しかしながら、上記第4のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0029】には、「実施形態に係る析出抑制剤は、イオン半径が0.2Åから0.9Åの陽イオンである元素を含む化合物であってもよい。」と記載されているものの、そのような化合物であれば、具体的な組成に関わらず、直ちに「局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有」すると認めるに足る証拠はない。
また、「イオン半径が0.2Åから0.9Åの陽イオンである元素を含む化合物」を含む析出抑制剤(添加剤)であれば、具体的な組成に関わらず、「局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有」することが、本願の原出願の出願時において、当該技術の分野における技術常識として知られているとはいえない。
なお、請求人が当審意見書において提示した特許第6475881号公報には、「リン酸系エッチング用組成物の構成成分として複合シランを適用することにより、エッチング工程中に発生するエッチング速度の変化を制御してエッチング速度を一定にすることができ、優れたエッチング選択比を示すエッチング用組成物を提供することにある。」(段落【0014】)と記載されているものの、「イオン半径が0.2Åから0.9Åの陽イオンである元素を含む化合物」を含む析出抑制剤であれば、「局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有」するということについては、記載も示唆もされてないから、当該特許公報の存在は、上記の判断を左右するものではない。
(イ)他方、上記第4のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、段落【0027】に、析出抑制剤にヘキサフルオロケイ酸水溶液を用いることができる旨が記載されているが、上記イ(ア)のとおり、請求人は、ヘキサフルオロケイ酸は、局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有する添加剤には含まれない旨を主張する。
(ウ)さらに、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0029】以外の記載についても検討すると、段落【0060】、【0098】、【0101】、【0109】、【0231】、【0242】等には、「リン酸水溶液Lでの析出抑制剤の濃度が局所的に上昇することを抑制することができるから、析出抑制剤のゲル化を抑制することができる。」旨が記載されているものの、これらの段落には、「局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有」する析出抑制剤(添加剤)の具体例については記載されていない。
(エ)以上のとおりであるから、ヘキサフルオロケイ酸が局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有するものではないのであれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1に記載された「局所的に濃度が上昇するとゲル化する性質を有」する析出抑制剤(添加剤)は記載されていない。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
第6 むすび
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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