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特許拒絶査定不服審判

2022-019919

通信ネットワーク接続システム及びそれに用いるWiFiルータ

審判番号
2022-019919
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-143752
請求日
2022年12月08日
審決日
2024年12月26日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】a2network株式会社
  • 【請求人代理人】岩田 敏
審判長/審判官
  • 審判長 土居 仁士
  • 審判官 高野 洋
  • 審判官 寺谷 大亮
分類
P18 .121-WZ (H04M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-143752「通信ネットワーク接続システム及びそれに用いるWiFiルータ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 3月10日出願公開、特開2022- 38989〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年8月27日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 4年 4月19日付け 拒絶理由通知書 8月22日 意見書・手続補正書 9月 2日付け 拒絶査定 12月 8日 審判請求書・手続補正書 令和 5年10月26日付け 拒絶理由通知書 12月26日 意見書・手続補正書 令和 6年 3月15日付け 拒絶理由通知書(最後) 5月20日 意見書・手続補正書 9月17日付け 平成6年5月20日の手続補正についての補 正の却下の決定、拒絶理由通知書(最後) 11月19日 意見書・手続補正書 以下では、令和6年9月17日付け拒絶理由通知書(最後)で通知された拒絶理由を「当審拒絶理由」といい、同年11月19日の手続補正書による補正を「本件補正」といい、同年5月20日の意見書を「意見書1」といい、同年11月19日の意見書を「意見書2」という。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正後の請求項1 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所を示す。)。 【請求項1】 通信事業者の通信回線と通信端末とを接続するためのWiFiルータが、通信事業者の異なる2以上の通信回線の利用を可能にして通信端末に対する通信ネットワークへの接続を行う通信ネットワーク接続システムであって、 2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが全て無線によるものであれば、利用する通信回線に優先順位をつけ、天災又は通信事業者の障害による通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し、それまで接続していない通信回線で停電時でも通信環境を維持でき、また、施設の外でも使用することができる携帯型であることを特徴とした通信ネットワーク接続システム。 (2)本件補正前の請求項1 本件補正前の、令和5年12月26日に提出された手続補正書にて補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 【請求項1】 通信事業者の通信回線と通信端末とを接続するためのWiFiルータが、通信事業者の異なる2以上の通信回線の利用を可能にして通信端末に対する通信ネットワークへの接続を行う通信ネットワーク接続システムであって、 2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが全て無線によるものであれば、利用する通信回線に優先順位をつけ、天災又は通信事業者の障害による通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し、それまで接続していない通信回線で通信環境を維持することを特徴とした通信ネットワーク接続システム。 2 補正の目的 本件補正による請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1の発明を特定するために必要な事項である「通信環境」について、「停電時でも」「維持でき」、「施設の外でも使用することができる携帯型である」との限定を付加するものであって、当該変更内容は、本願の出願当初の明細書の【0017】及び図4等に基づくものである。 よって、本件補正は、本件補正前の請求項1が有する発明特定事項に限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 補正の適否 本件補正の目的が限定的減縮に該当するので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 ア 本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。 イ 本件補正発明における「天災又は通信事業者の障害による通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し」(以下「発明特定事項A」という。)の解釈について (ア)発明特定事項Aに関し、発明の詳細な説明には、次の記載がある。(下線は当審にて付した。以下同様。) 「【0003】 インターネットが人々の生活や仕事等と密接に関わりあうようになり、通信ネットワークへの安定した接続環境は不可避となっている一方で、地震や雷雨等の自然災害や通信設備の故障・事故等の人的災害により予期しない通信障害が発生するリスクがある。従って、このような通信障害発生時でも通信環境を維持できる仕組みがあれば、社会の混乱(パニック)や二次被害を未然に防止できる可能性がある。」 「【0008】 これに対して、本願発明者は、特許文献1とは全く異なる「通信障害発生時でも通信環境を維持する」という目的で本願発明を着想し、完成させるに至った。 【0009】 本願発明の第1の発明は、通信事業者(キャリア)の異なる2以上の通信回線の利用を可能にして通信ネットワークへの接続を提供する通信ネットワーク接続サービス提供システムであって、2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが全て無線によるものであれば、利用する通信回線に優先順位をつけ、通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し、通信環境を維持することを特徴としたものである。 第2の発明は、通信事業者(キャリア)の異なる2以上の通信回線の利用を可能にして通信ネットワークへの接続を提供する通信ネットワーク接続サービス提供システムであって、2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが有線と無線を含むものであれば、有線でアクセスする通信回線を利用の第1優先にして、残る無線でアクセスする通信回線について利用の第2優先以降の優先順位をつけ、通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し、通信環境を維持することを特徴としたものである。 第3の発明は、サービス提供者が通信事業者(キャリア)から借り入れた2以上の通信回線の利用を可能にして通信ネットワークへの接続を提供することを特徴とした同通信ネットワーク接続サービス提供システムである。 第4の発明は、上記した第1から第3の発明に係る通信ネットワーク接続サービス提供システムに用いられることを特徴とするWiFiルータである。 【発明の効果】 【0010】 本願発明によれば、以下のような効果を有する。 (1)通信事業者(キャリア)の異なる2以上の通信回線の利用を可能にして、利用する通信回線に優先順位をつけ、通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更することで、通信障害の発生した通信回線を回避して通信環境を維持することができる。 (2)サービス提供者が通信事業者(キャリア)から借り入れた2以上の通信回線の利用を可能にして通信ネットワークへの接続を提供することで、サービス利用者は複数の通信事業者との契約及び費用は不要にできて、最小限の負担(契約や維持費用)で通信環境の維持を可能にする。 (3)WiFiルータを用いることで極めて簡易且つ確実にサービス利用者へ通信環境の維持を提供できる。」 「【0013】 図1に図示するように、これまでのWiFiルータは、特定の固定回線や携帯回線のみを使用してインターネット接続をしている(図1左図)。そうした場合、天災やその特定の通信事業者の障害などにより、提供する通信サービスに通信障害が発生すると、インターネット接続環境を維持できず、ネットワークが使えなくなってしまう(図1右図)。 【0014】 これに対して、本願発明に係るWiFiルータ(通信ネットワーク接続サービス提供システム)は、図2に図示するように、通信事業者(キャリア)の異なる2以上のSIMカード(ここでは国内3携帯電話事業者のSIMカード)を標準装備するものである。そして、通常は、プライマリ事業者(ここでは仮に「D社」とする)に接続し通信を行う(図2左図)。しかし、プライマリサービスに通信障害が発生した場合には、セカンダリ事業者(ここでは仮に「S社」とする)に接続することで、インターネット接続環境を維持し、セカンダリーサービスにも通信障害が発生した場合には、ターシャリ事業者(ここでは仮に「A社」とする)を利用する(図2右図)。」 (イ)請求人は、意見書1において、以下のように主張している。(3.(3)及び(4)) 「そもそも、「予定(予期)されていた通信障害」に対しては、本願発明のような複雑な仕組みをとらなくても、簡単に回避できますので(通信障害の予定されている時間帯に別の回線を利用できるように設定すればよいだけの話)、本願発明が「予期しない通信障害」を対象とするものであることは明らかです。そして、この予期しない通信障害は、およそ「地震や雷雨等の自然災害」と「通信設備の故障・事故等の人的災害」に集約されます。」 「従って、『「通信障害」が「天災又は通信事業者の障害」によるものと判断すること』は必要無く、これについて『何ら具体的な記載がなされておらず』とも、それによって「実施可能要件」に違反することにはならないと思料いたします。」 (ウ)前記(ア)の【0008】の下線部で示した記載によれば、本件補正発明の目的は、「通信障害発生時でも通信環境を維持する」ことであると認められる。 ここで、前記(ア)の【0003】の下線部、【0013】の下線部で示した記載及び前記(イ)の下線部で示した記載も考慮すると、「地震や雷雨等の自然災害や通信設備の故障・事故等の人的災害」による「予期しない通信障害」は、「天災やその特定の通信事業者の障害」による「通信障害」のことであって、本件補正発明は、このような通信障害が発生した場合でも通信環境を維持することも目的にしていると認められる。 他方、これらの段落の記載を考慮しても、本件補正発明の動作として、「通信障害」が「天災又は通信事業者の障害による」ものと判断することは、記載されていないと認められる。 (エ)前記(ア)の【0009】及び【0010】の下線部で示した記載によれば、「通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更」することで、「通信環境を維持すること」が記載されている。 また、前記(ア)の【0014】の下線部で示した記載によれば、通信障害が発生した場合には、利用する事業者を変更することが記載されている。 他方、これらの段落の記載を考慮しても、本件補正発明の動作として、「通信障害」が「天災又は通信事業者の障害による」ものと判断することは、記載されていないと認められる。 (オ)前記(ア)~(エ)によれば、発明特定事項Aは、通信ネットワーク接続システムの動作としては、「通信障害」が「天災又は通信事業者の障害による」ものと判断することを特定するものではなく、「通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更」するのみであって、そのシステムの動作を行った結果として、「通信障害」に含まれる「天災又は通信事業者の障害による通信障害」についても、通信回線を変更することになるものと認められる。 (カ)以上の点は、前記(イ)の下線部で示した「通信障害が天災又は通信事業者の障害によるものと判断することは必要なく、これについて発明の詳細な説明に何ら具体的な記載がなされていない」旨の請求人の主張とも整合する。 (キ)以上によれば、発明特定事項Aは、「通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更」することを特定するものであり、「通信障害」が何に起因するものかを特定する構成を備えておらず、当該「通信障害」の発生が、「天災又は通信事業者の障害による」発生であっても対応可能であることを特定しているにすぎないと理解される。 (2)引用文献1 ア 当審拒絶理由で引用された、Pepwave Ltd.,“Pepwave MAX and Surf User Manual Pepwave Products:MAX700/HD2/HD2 IP67/HD2 mini/HD4/Transit/Hotspot/BR1/BR1 Mini/BR1 Slim/BR1 ENT/BR1 Pro LTE/BR1 IP55/BR2 IP55/On-The-Go/MAX HD2/HD4 with MediaFast/Device Connector/ Surf SOHO, Pepwave Firmware 6.3”,pages.1,6,8-9,22,24,41,55,64,67,75-77,88,107, [online], 2016年9月30日, Pepwave Ltd.,香港, [2023年9月20日検索],インターネット, <URL:https://download.peplink.com/manual/pepwave_max_surf_v6.3.3_user_manual.pdf>(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「1 Introduction and Scope Pepwave routers provide link aggregation and load balancing across multiple WAN connections, allowing a combination of technologies like 3G HSDPA, EVDO, 4G LTE, Wi-Fi, external WiMAX dongle, and satellite to be utilized to connect to the Internet. The MAX wireless SD-WAN router series has a wide range of products suitable for many different deployments and markets. Entry level SD-WAN models such as the MAX BR1 are suitable for SMEs or branch offices. High-capacity SD-WAN routers such as the MAX HD2 are suitable for larger organizations and head offices. This manual covers setting up Pepwave routers and provides an introduction to their features and usage.」(6頁) (当審訳:1 導入とスコープ Pepwaveルータは、複数のWAN接続にわたってリンクアグリゲーションと負荷分散を提供し、3G HSDPA、EVDO、4G LTE、Wi-Fi、外部WiMAXドングル、衛星などの技術を組み合わせてインターネットに接続できるようにします。 MAXワイヤレスSD-WANルーターシリーズには、さまざまな展開や市場に適した、幅広い製品があります。MAX BR1などのエントリーレベルのSD-WANモデルは、中小企業やブランチオフィスに適しています。MAX HD2などの大容量SD-WANルータは、大規模な組織や本社に適しています。 このマニュアルでは、Pepwaveルータのセットアップについて説明し、その機能と使いやすさを紹介します。) (イ)「3 Product Features Pepwave routers enable all LAN users to share broadband Internet connections, and they provide advanced features to enhance Internet access. Our Max BR wireless routers support multiple SIM cards. They can be configured to switch from using one SIM card to another SIM card according to different criteria, including wireless network reliability and data usage. Our MAX HD series wireless routers are embedded with multiple 4G LTE modems, and allow simultaneous wireless Internet connections through multiple wireless networks. The wireless Internet connections can be bonded together using our SpeedFusion technology. This allows better reliability, larger bandwidth, and increased wireless coverage are comparing to use only one 4G LTE modem. Below is a list of supported features on Pepwave routers. Features vary by model. For more information, please see peplink.com/products. 3.1 Supported Network Features 3.1.1 WAN ・ Ethernet WAN connection in full/half duplex ・ Static IP support for PPPoE ・ Built-in HSPA and EVDO cellular modems ・ USB mobile connection(s) ・ Wi-Fi WAN connection ・・・(中略)・・・ 3.1.2 LAN ・ Wi-Fi AP ・ Ethernet LAN ports ・ DHCP server on LAN ・ Extended DHCP option support ・ Static routing rules ・ VLAN on LAN support」(8頁) (当審訳:3 製品の特徴 Pepwaveルータは、すべてのLANユーザがブロードバンドインターネット接続を共有できるようにし、インターネットアクセスを強化するための高度な機能を提供します。当社のMax BRワイヤレスルータは、複数のSIMカードをサポートしています。ワイヤレスネットワークの信頼性やデータ使用量など、さまざまな基準に従って、あるSIMカードの使用から別のSIMカードに切り替えるように構成できます。 当社のMax HDシリーズワイヤレスルータには、複数の4G LTEモデムが組み込まれており、複数のワイヤレスネットワークを介したワイヤレスインターネット接続が可能です。ワイヤレスインターネット接続は、当社のSpeedFusionテクノロジーを使用して結合できます。これにより、4G LTEモデムを1つだけ使用する場合と比較して、信頼性が向上し、帯域幅を拡大し、ワイヤレスカバレッジの拡大が可能になります。 以下は、Pepwaveルータでサポートされている機能の一覧です。機能はモデルによって異なります。詳細については、peplink.com/productsを参照してください。 3.1 サポートされているネットワーク機能 3.1.1 WAN ・ 全二重/半二重のイーサネットWAN接続 ・ PPPoEに対するスタティックIPのサポート ・ 内蔵のHSPAおよびEVDOセルラーモデム ・ USBモバイル接続 ・ Wi-Fi WAN接続 ・・・(中略)・・・ 3.1.2 LAN ・ Wi-Fi AP ・ イーサネットLANポート ・ LAN上のDHCPサーバ ・ 拡張DHCPオプションのサポート ・ 静的ルーティング規則 ・ VLANオンLANのサポート) 上記下線部の記載によれば、WAN側の接続機能として、全二重/半二重のイーサネットWAN接続機能と、複数のSIMカードをサポートした内蔵のHSPAおよびEVDOセルラーモデムによる接続機能を有することが記載されている。 また、LAN側の接続機能として、Wi-Fi AP接続機能を有することが記載されている。 (ウ)「3.1.3 VPN ・PepVPN with SpeedFusionTM ・PepVPN performance analyzer ・X.509 certificate support ・VPN load balancing and failover among selected WAN connections ・Bandwidth bonding and failover among selected WAN connections ・IPsec VPN for network-to-network connections (works with Cisco and Juniper only) ・Ability to route Internet traffic to a remote VPN peer ・Optional pre-shared key setting ・SpeedFusionTM throughput, ping, and traceroute tests ・PPTP server ・PPTP and IPsec passthrough」(9頁) (当審訳:3.1.3 VPN ・PepVPN with SpeedFusionTM ・PepVPNパフォーマンスアナライザー ・X.509証明書のサポート ・VPN負荷分散と選択したWAN接続間のフェイルオーバー ・帯域幅ボンディングと選択したWAN接続間のフェイルオーバー ・ネットワーク間接続用のIPsec VPN(CiscoおよびJuniperでのみ動作) ・インターネットトラフィックをリモートVPNピアにルーティングする機能 ・オプションの事前共有キー設定 ・SpeedFusionTMのスループット、ping、およびトレースルートのテスト ・PPTPサーバ ・PPTPおよびIPsecパススルー) 上記下線部の記載によれば、VPN接続機能として、選択したWAN接続間のフェイルオーバー機能を有することが記載されている。 (エ)「4.8 MAX BR1 4.8.1 Panel Appearance [図:0001419588000001.jpg] 」(22頁) (当審訳:4.8 MAX BR1 4.8.1 パネルの外観) 上記の右下図には、ワイヤレスルータに「Redundant Cellular SIM Slots」(当審訳:冗長なセルラーのSIMカードスロット)を有することが記載されており、該ワイヤレスルータは、それぞれにSIMカードが挿入される冗長なセルラーのSIMカードスロットを2つ有することが見てとれる。 また、上記の左上図では、筐体の側面にフランジ部が設けられ、該フランジ部に穴が空いていることから、該ワイヤレスルータは、据え置き型が想定されると認められる。 (オ)「4.9 MAX BR1 Mini 4.9.1 Panel Appearance [図:0001419588000002.jpg] 」(24頁) (当審訳:4.9 MAX BR1 Mini 4.9.1 パネルの外観) 前記(イ)において、ワイヤレスルータが複数のSIMカードをサポートすることが示されており、上記の右下図には、該ワイヤレスルータに前記(エ)で示されたRedundant Cellular SIM Slotsが見てとれる。 したがって、該ワイヤレスルータは、それぞれにSIMカードが挿入される冗長なセルラーのSIMカードスロットを2つ有することが見てとれる。 また、該ワイヤレスルータは、フランジ部を備えることから、据え置き型が想定されると認められる。 (カ)「8 Connecting to the Web Admin Interface 1. Start a web browser on a computer that is connected with the Pepwave router through the LAN. 2. To connect to the router's web admin interface, enter the following LAN IP address in the address field of the web browser: http://192.168.50.1 (This is the default LAN IP address for Pepwave routers.) 3. Enter the following to access the web admin interface. Username: admin Password: admin (This is the default username and password for Pepwave routers. The admin and read-only user passwords can be changed at System>Admin Security.) 4. After successful login, the Dashboard will be displayed. The Dashboard shows current WAN, LAN, and Wi-Fi AP statuses. Here, you can change WAN connection priority and switch on/off the Wi-Fi AP. For further information on setting up these connections, please refer to Sections 8 and 9.」(41頁) (当審訳:8 Web管理インターフェイスへの接続 1. LAN経由でPepwaveルータに接続されているコンピューター上でWebブラウザを起動します。 2. ルータのWeb管理インターフェイスに接続するには、Webブラウザのアドレスフィールドに次のLAN IPアドレスを入力します。 http://192.168.50.1 (これは、PepwaveルータのデフォルトのLAN IPアドレスです。) 3. Web管理インターフェイスにアクセスするには、次のように入力します。 ユーザ名:admin パスワード:admin(これはPepwaveルータのデフォルトのユーザ名とパスワードです。管理者および読み取り専用ユーザのパスワードは、システム>管理者セキュリティで変更できます。) 4. ログインに成功すると、ダッシュボードが表示されます。 ダッシュボードには、現在のWAN、LANおよびWi-Fi APのステータスが表示されます。ここでは、WAN接続の優先順位を変更したり、Wi-Fi APのオン/オフを切り替えたりできます。これらの接続の設定の詳細については、セクション8および9を参照してください。) (キ)「10 Configuring the WAN Interface(s) WAN Interface settings are located at Network>WAN. To reorder WAN priority, drag on the appropriate WAN by holding the left mouse button, move it to the desired priority (the first one would be the highest priority, the second one would be lower priority, and so on), and drop it by releasing the mouse button. [図:0001419588000003.jpg] To disable a particular WAN connection, drag on the appropriate WAN by holding the left mouse button, move it the Disabled row, and drop it by releasing the mouse button. You can also set priorities on the Dashboard. Click the Details button in the corresponding row to modify the connection setting.」(55頁) (当審訳:10 WANインターフェースの設定 WANインターフェースの設定は、Network>WANにあります。WANの優先順位を並べ替えるには、マウスの左ボタンを押したまま該当するWANをドラッグし、希望の優先順位に移動して(最初の優先順位が最も高く、2番目の優先順位が低いというように)、マウスボタンを放してドロップします。特定のWAN接続を無効にするには、マウスの左ボタンを押したまま該当するWANをドラッグし、「無効」の行に移動して、マウスボタンを放してドロップします。ダッシュボードで優先順位を設定することもできます。対応する行の[詳細]ボタンをクリックして、接続設定を変更します。) 上記「WANインターフェースの設定」では、上記(カ)の「ダッシュボード」において、WAN接続の優先順位を変更する方法の詳細が記載されており、WANの優先順位を並べ替えるには、マウスの左ボタンを押したまま該当するWANの各項目をドラッグし、希望の優先順位に移動してマウスボタンを放してドロップすればよいことが説明されている。そうすると、上記の図も参照すれば、「Cellular1」、「Cellular2」、「WAN1」及び「WAN2」の各項目の優先順位を、マウスのドラッグ・ドロップ操作により、任意に設定できることが記載されているといえる。 (ク)「10.2 Cellular WAN ・・・(中略)・・・ [図:0001419588000004.jpg] [図:0001419588000005.jpg] (図中の説明) General Settings Standby State This option allows you to choose whether to remain connected or disconnected when this WAN connection is no longer in the highest priority and has entered the standby state. When Remain connected is chosen, bringing up this WAN connection to active makes it immediately available for use. Idle Disconnect When Internet traffic is not detected within the user-specified timeframe, the modem will automatically disconnect. Once the traffic is resumed by the LAN host, the connection will be reactivated.」(64~67頁) (当審訳:10.2 セルラーWAN ・・・(中略)・・・ (図中の説明) 一般的な設定 スタンバイ状態 このオプションでは、このWAN接続の優先順位が最高でなくなり、スタンバイ状態に入った時に、接続を維持するか、切断するかを選択することができます。接続状態を維持を選択すると、このWAN接続がアクティブになり、すぐに使用可能となります。 待機時切断 ユーザが指定した時間内に、インターネットトラフィックが検出されない場合、モデムは自動的に切断されます。LANホストによって、トラフィックが再開されると、接続が再開されます。) (ケ)「13.1 PepVPN [図:0001419588000006.jpg] 」(88頁) 上記の図より、「Link Failure Detection Time」(当審訳:「リンク障害検出時間」)が、「Recommend(Approx.15secs)」(当審訳:「推奨(約15秒)」)、「Fast(Approx.6secs)」(当審訳:「高速(約6秒)」)、「Faster(Approx.2secs)」(当審訳:「より高速(約2秒)」)、「Extreme(under 1 sec)」(当審訳:エクストリーム(約1秒))の中から選択できることが見てとれる。 (コ)「Link Failure Detection Time The bonded VPN can detect routing failures on the path between two sites over each WAN connection. Failed WAN connections will not be used to route VPN traffic. Health check packets are sent to the remote unit to detect any failure. The more frequently checks are sent, the shorter the detection time, although more bandwidth will be consumed. When Recommended (default) is selected, a health check packet is sent every five seconds, and the expected detection time is 15 seconds. When Fast is selected, a health check packet is sent every three seconds, and the expected detection time is six seconds. When Faster is selected, a health check packet is sent every second, and the expected detection time is two seconds. When Extreme is selected, a health check packet is sent every 0.1 second, and the expected detection time is less than one second.」(92頁) (当審訳:リンク障害検出時間 ボンディングされたVPNは、各WAN接続を介した2つのサイト間のパスでのルーティング障害を検出できます。失敗したWAN接続は、VPNトラフィックのルーティングには使用されません。障害を検出するためにヘルスチェックヘルスチェックパケットをリモートユニットに送信します。より頻繁にヘルスチェックパケットを送信すると、検出時間は短くなりますが、より多くの帯域幅が消費されます。 推奨(デフォルト)が選択されている場合、ヘルスチェックパケットは5秒ごとに送信され、予想される検出時間は15秒です。 高速(Fast)を選択されている場合、ヘルスチェックパケットが3秒ごとに送信され、予想される検出時間は6秒です。 より高速(Faster)を選択されている場合、ヘルスチェックパケットが毎秒送信され、予想される検出時間は2秒です。 エクストリーム(Extreme)が選択されている場合、ヘルスチェックパケットが0.1秒ごとに送信され、予想される検出時間は1秒未満です。」 (サ)「15.2.4 Algorithm: Priority This setting specifies the priority of the WAN connections used to route the specified network service. The highest priority WAN connection available will always be used for routing the specified type of traffic. A lower priority WAN connection will be used only when all higher priority connections have become unavailable.」(107頁) (当審訳:15.2.4 アルゴリズム:優先順位 この設定では、指定したネットワークサービスのルーティングに使用されるWAN接続の優先度を指定します。使用可能な最も優先度の高いWAN接続が指定されたタイプのトラフィックのルーティングに常に使用されます。優先順位の低いWAN接続は、優先順位の高い接続がすべて使用できなくなった場合にのみ使用されます。) ここで、上記の「優先順位の高い接続」は、例えば、上記(キ)の図中の「Priority1」のことであり、「優先順位の低いWAN接続」は、例えば、上記(キ)の図中の「Priority2」のことであることは、明らかである。 (シ)前記(イ)の記載によれば、引用文献1に記載の「ワイヤレスルータ」は、LANユーザがブロードバンドインターネット接続を行うために用いられ、複数のSIMカードをサポートし、ワイヤレスネットワークの信頼性などの基準に従って、あるSIMカードの使用から別のSIMカードに切り替えるように構成されると認められる。 したがって、一般に、「システム」の語義が「複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体。組織。系統。仕組み」(広辞苑)であることを考慮すると、「ブロードバンドインターネット」、「ワイヤレスルータ」及び「複数のSIMカード」は、全体として、通信ネットワーク接続システムであるといえる。 イ 前記アの記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~lに分説し、「構成a」のようにして参照する。 「a ワイヤレスルータを用いた通信ネットワーク接続システムにおいて、(前記(シ)) b すべてのLANユーザがブロードバンドインターネット接続を共有できるようにし、(前記(イ)) c WAN側の接続機能として、全二重/半二重のイーサネットWAN接続機能と、複数のSIMカードをサポートした内蔵のHSPAおよびEVDOセルラーモデムによる接続機能を有し、(前記(イ)) d LAN側の接続機能として、Wi-Fi AP接続機能を有し、(前記(イ)) e ワイヤレスルータは、据え置き型が想定され、それぞれにSIMカードが挿入される冗長なセルラーのSIMカードスロットを2つ有し、(前記(エ)及び(オ)) f ワイヤレスネットワークの信頼性やデータ使用量など、さまざまな基準に従って、あるSIMカードの使用から別のSIMカードに切り替え、(前記(イ)) g ダッシュボードにおいてWAN接続の優先順位を変更し、(前記(カ)) h 「Cellular1」、「Cellular2」、「WAN1」及び「WAN2」の各項目の優先順位を、マウスのドラッグ・ドロップ操作により、任意に設定することができ、(前記(キ)) i VPN接続機能として、選択したWAN接続間のフェイルオーバー機能 を有し、(前記(ウ)) j リンク障害検出時間は、「推奨(約15秒)」、「高速(約6秒)」、「より高速(約2秒)」、「エクストリーム(約1秒)」の中から選択でき、(前記(ケ)及び(コ)) k 優先順位の低いWAN接続(例えば、Priority2)は、優先順位の高い接続(例えば、Priority1)がすべて使用できなくなった場合にのみ使用される、(前記(サ)) l 通信ネットワーク接続システム。(前記(イ))」 (3)引用文献2 ア 当審拒絶理由で引用された、エム・シー・エム・ジャパン株式会社,「マルチSIM対応 モバイルSD-WANルーターMAX-BR1 Mini」,[online],2020年3月30日, エム・シー・エム・ジャパン株式会社,日本, [2023年9月19日検索],インターネット, <URL:https://www.mcn.co.jp/cao/2087>(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。 「MAX BR1 Miniは、2SIMスロットを搭載し、4G/LTEをアクティブ1回線、スタンバイ1回線の冗長構成での使用が可能。さらに、Hot Failover機能によりVPNトンネルを維持した状態でスタンバイ回線への自動切り替えが可能。このため、異なるキャリアのSIMを複数枚搭載することで、冗長性に優れた通信ができ、車載・映像・店舗などIoT/M2M用途を想定したシーンで、4G/LTEによる安定したモバイル通信を実現します。また、SD-WAN機能によるリモートでの通信状況の可視化と、接続している回線の優先設定が可能です。 ・SpeedFusionテクノロジーによる切れない通信接続 ・冗長SIMスロット搭載のシングルセルラー回線 ・802.11b/g/n Wi-Fi WAN/アクセスポイント機能 ・様々なキャリアのバンド帯域に対応・・・(略)・・・」 「有線とセルラーを組み合わせネットワークに柔軟性・安心を デュアルSIMスロットを搭載したセルラー通信と、有線WAN、Wi-Fiのボンディングに対応。柔軟なネットワークと安定した接続を実現します。」 「様々なキャリアのバンドに対応 Docomo・KDDI・Softbankのバンドに対応。日本国内の様々なキャリア無線帯域から、安定したインターネット接続を行うことが可能になります。」 「InControl2での可視化と設定 Peplinkが展開する追加料金不要のクラウドプラットフォームInControl2により、ネットワークに接続しているユーザーのデバイス/位置情報を確認可能。 帯域制限等の設定も可能です。」 「PoE対応 LANポートはPassive規格のPoE受電に対応。電源確保が困難な環境でもイーサネット経由で受電することが出来、柔軟な設置設計に対応することができます。」 「802.11b/g/n Wi-Fi 対応 WANもしくはアクセスポイントとして使用できる802.11b/g/n 無線LAN機能を搭載。有線LANとの組み合わせでIoT環境の構築をサポートします。」 「製品スペック 製品型番 MAX-BR1-MINI-LTEA-P-T ・・・(中略)・・・ Celluar WANインターフェイス LTE通信モジュール LANインターフェイス RJ45 10/100M×1 WANインターフェイス RJ45 10/100M×1 ※LAN/WAN対応 Wi-Fiインターフェイス 801.11b/g/n WAN or AP アンテナコネクタ SMA Cellular×2 SMA GPS×1 SMA Wi-Fi×1 通信方式 LTE-Advanced 内蔵モデム数 1 キャリア領域 docomo/KDDI/Softbank 4G周波数/4G対応バンド 700APT/800(Lower/Upper)/850/900/1500Upper/ 1800/2100/2600/TD1900+/TD2300/TD2500/TD2600MHz バンド1/3/5/7/8/18/19/21/28/38/39/40/41 3G周波数/3G対応バンド 800(Upper)/850/900/1800/1900/2100MHz バンド1/5/6/8/9/19/39 ルータースループット 100Mbps ・・・(中略)・・・ LTE-Aデータ通信速度 Downlink/UplinkDatarate:300Mbps/50Mbps フェイルオーバー対応 ロードバランス対応 推奨ユーザー数1-60」 イ 引用文献2に記載されたルータは、ワイヤレスルータであることが明らかであるから、前記アの記載によれば、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。 「2SIMスロットを搭載し、異なるキャリアのSIMを複数枚搭載することで、冗長性に優れた通信ができ、接続している回線の優先設定が可能であり、 冗長SIMスロットを搭載し、 アクセスポイント機能を有し、 有線とセルラーを組み合わせ、デュアルSIMスロットを搭載したセルラー通信に対応し、Docomo・KDDI・Softbankのバンドに対応し、 802.11b/g/n Wi-Fi対応であり、 Wi-Fiインターフェイスは、801.11b/g/n WAN or APであり、 キャリア領域は、docomo/KDDI/Softbankであり、 フェイルオーバー対応である ワイヤレスルータ。」 (4)引用文献3 ア 当審で新たに引用する特開2010-21878号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。 「【0020】 無線中継装置A1は、外部のネットワークと通信を行うWAN側通信部A10(第1の通信部)と、無線端末と通信を行うLAN側通信部A11(第2の通信部)と、WAN側通信部A10とLAN側通信部A11とに接続され、WAN側通信部A10とLAN側通信部A11との間のデータの転送を行う中継機能部A5と、WAN側通信部A10のいずれを用いて通信を行うかを選択するインタフェース選択部A8と、予め定めた期間を経過したことをインタフェース選択部A8に通知するタイマ部A9と、無線中継装置A1が動作する電源を供給するバッテリ部A6と、を具備している。 【0021】 WAN側通信部A10は、3つの通信インタフェース部(第1の通信インタフェース部)を備え、それぞれの通信インタフェース部は、外部のネットワークと接続をするIEEE802.11の規格に準拠した通信を行う無線LAN(Local Area Network)インタフェース部A2、外部のネットワークと接続をする第3世代及び第3.5世代の携帯電話規格に準拠した通信を行う3G/3.5G携帯電話インタフェース部A3、及び、広帯域移動無線インタフェース部としてのWiMAXの規格に準拠した通信を行うWiMAXインタフェース部A4である。なお、第3世代及び第3.5世代の携帯電話規格とは、例えば、WCDMA(Wide Band Code Division Multiple Access)やHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)やEDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)などである。」 「【0031】 次に、図4は、第1実施形態における無線中継装置A1を用いた無線端末B11の具体的通信動作の概要を示した概略図である。 ここで、ワイヤレスルータである無線中継装置A1は、ユーザの所持する鞄やポケットに入れられている。ユーザは、所持する無線端末B11で通信を行いながら、実線B2で示す経路を移動する。なお、ユーザは、実線B2で示されるように、無線通信サービスが提供されている範囲を示す無線LANサービスエリアB3から無線LANサービスエリアB10に向かって移動をする。 【0032】 まず、無線中継装置A1は、無線LAN基地局B3による無線通信のサービスが行われている無線LANサービスエリアB4に位置し、無線LAN基地局B3と通信可能な圏内状態であると共に、3G携帯電話基地局B5による無線通信のサービスが行われている3GサービスエリアB6内に位置し、3G携帯電話基地局B5と通信可能な圏内状態にある。ここで、無線中継装置A1において、インタフェース選択部A8が、図3に示した通信インタフェース部の選択を行い、無線LANインタフェース部A2が選択される。無線中継装置A1は、LAN側通信部A11に備えられる無線LANインタフェース部A7が、無線端末B11と通信すると共に、WAN側通信部A10に備えられる無線LANインタフェース部A2が無線LANアクセスポイントB3と接続し通信を行う。このように、無線中継装置A1は、無線端末B11と無線LAN基地局B3との間の通信データを中継する。これにより、無線端末B11は、無線中継装置A1を介して無線LAN基地局B3と通信を行うことが可能になる。 【0033】 次に、ユーザが実線B2に沿って移動を行い、無線LANサービスエリアB3の外に出ると、WAN側通信部A10に備えられた3G/3.5G携帯電話インタフェース部A3のみが圏内状態になり、インタフェース選択部A8は、3G/3.5G携帯電話インタフェース部A3を選択する。無線端末B11は、無線中継装置A1を介して3G携帯電話基地局B5と通信を行う。このとき、無線中継装置A1は、図3に示した手順にてWAN側の接続を変更するので、ユーザに無線LANサービスエリアB3から外に出たことを意識させることなく、すなわち、ユーザにWAN側の接続状態を意識させずに、中継を継続することができる。 【0034】 続いて、ユーザが実線B2に沿って移動し、無線中継装置A1がWiMAX基地局B7により無線通信サービスの提供が行われているWiMAXサービスエリアB8内に位置すると、WAN側通信部A10に備えられるWiMAXインタフェース部A4が圏内状態になる。ここで、インタフェース選択部A8は、3G/3.5G携帯電話インタフェース部A3より消費電力の少ないWiMAXインタフェース部A4を選択する。これにより、無線端末B11は、無線中継装置A1を介してWiMAX基地局B7と通信を行う。」 イ 前記アの記載によれば、引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。 「ユーザの所持する鞄やポケットに入れられているワイヤレスルータである無線中継装置A1は、外部のネットワークと通信を行うWAN側通信部A10と、無線端末と通信を行うLAN側通信部A11と、WAN側通信部A10とLAN側通信部A11とに接続され、WAN側通信部A10とLAN側通信部A11との間のデータの転送を行う中継機能部A5と、WAN側通信部A10のいずれを用いて通信を行うかを選択するインタフェース選択部A8と、無線中継装置A1が動作する電源を供給するバッテリ部A6と、を具備し、(【0020】及び【0031】) WAN側通信部A10は、3つの通信インタフェース部を備え、それぞれの通信インタフェース部は、外部のネットワークと接続をするIEEE802.11の規格に準拠した通信を行う無線LANインタフェース部A2、外部のネットワークと接続をする第3世代及び第3.5世代の携帯電話規格に準拠した通信を行う3G/3.5G携帯電話インタフェース部A3、及び、広帯域移動無線インタフェース部としてのWiMAXの規格に準拠した通信を行うWiMAXインタフェース部A4であり、(【0021】) 無線中継装置A1は、無線LAN基地局B3と通信可能な圏内状態であると共に、3G携帯電話基地局B5と通信可能な圏内状態にあるとき、無線中継装置A1において、インタフェース選択部A8が、通信インタフェース部の選択を行い、無線LANインタフェース部A2が選択され、(【0032】) WAN側通信部A10に備えられた3G/3.5G携帯電話インタフェース部A3のみが圏内状態になり、インタフェース選択部A8は、3G/3.5G携帯電話インタフェース部A3を選択し、(【0033】) WAN側通信部A10に備えられるWiMAXインタフェース部A4が圏内状態になるとき、インタフェース選択部A8は、3G/3.5G携帯電話インタフェース部A3より消費電力の少ないWiMAXインタフェース部A4を選択すること。(【0034】)」 (5)引用文献4 ア 当審で新たに引用する特開2017-69676号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。 「【0007】 本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ユーザ端末にて使用されるアプリケーションに適したSIMカードへ自動で切り替えることができるモバイルルータ、SIMカードの自動切り替えシステム、及びその方法を提供することを目的とする。」 「【0014】 モバイルルータ100は、複数のSIMスロットを備え、複数のSIMカードを挿入可能なモバイルルータである。例えば、モバイルルータ100は、2つのSIMスロットを備えたデュアルSIM対応モバイルルータであり、2つのSIMカードでデュアルアクティブが可能なものである。また、モバイルルータ100は、Wi-Fi(Wireless Fidelity)通信によりユーザ端末200と通信可能なインタフェースを備えている。さらに、モバイルルータ100は、WAN(Wide Area Network)回線を用いた通信により無線基地局300と通信可能なインタフェースを備えている。なお、WAN回線を用いた通信とは、例えばLTE(Long Term Evolution)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)等の無線通信規格を用いた通信のことをいう。 【0015】 ユーザ端末200は、Wi-Fi通信が可能なインタフェースを搭載したモバイル機器である。例えば、ユーザ端末200は、スマートフォン、タブレット端末等である。 【0016】 無線基地局300は、一般的な無線基地局を示し、LTE、WiMAX等の無線通信を行う無線基地局である。」 「【0025】 SIMカード選択部122は、識別子検出部121から識別子を受け取る。また、SIMカード選択部122は、第1のテーブル111を参照して、受け取った識別子に対応するSIMカードを選択する。すなわち、SIMカード選択部122は、ユーザ端末200から受信したパケット内の識別子に対応するSIMカードを、当該識別子のアプリケーションが使用される際のSIMカードとして選択する。 【0026】 したがって、基地局側通信モジュール103は、SIMカード選択部122に選択されたSIMカードを用いて、アプリケーションのパケットの通信を行う。 【0027】 以上のように、実施の形態1にかかる図2のモバイルルータ100では、第1のテーブル111により、アプリケーションの識別子と第1又は第2のSIMカードとを対応付けて格納する構成としている。また、識別子検出部121により、ユーザ端末200から受信したパケット内の識別子を検出する構成としている。さらに、SIMカード選択部122により、第1のテーブル111を参照して、受信したパケット内の識別子に対応するSIMカードを選択する構成としている。これにより、実施の形態1にかかる図2のモバイルルータ100では、ユーザが操作することなく、ユーザ端末200にて使用されるアプリケーションに適したSIMカードへ自動で切り替えることができる。」 イ 前記アの記載によれば、引用文献4には、次の事項が記載されていると認められる。 「ユーザ端末にて使用されるアプリケーションに適したSIMカードへ自動で切り替えることができるモバイルルータにおいて、(【0007】) モバイルルータ100は、複数のSIMスロットを備え、複数のSIMカードを挿入可能なモバイルルータであり、(【0014】) モバイルルータ100は、Wi-Fi通信によりユーザ端末200と通信可能なインタフェースを備えており、(【0014】) モバイルルータ100は、WAN回線を用いた通信により無線基地局300と通信可能なインタフェースを備えており、(【0014】) WAN回線を用いた通信とは、例えばLTE、WiMAX等の無線通信規格を用いた通信のことであり、(【0014】) ユーザ端末200は、Wi-Fi通信が可能なインタフェースを搭載したモバイル機器であり、(【0015】) 無線基地局300は、LTE、WiMAX等の無線通信を行う無線基地局であり、(【0016】) SIMカード選択部122は、ユーザ端末200から受信したパケット内の識別子に対応するSIMカードを、当該識別子のアプリケーションが使用される際のSIMカードとして選択し、(【0025】) モバイルルータ100では、ユーザ端末200にて使用されるアプリケーションに適したSIMカードへ自動で切り替えることができること。(【0027】)」 (6)引用文献5 ア 当審で新たに引用する特開2017-199952号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は通信装置、通信方法、及び、プログラムに関し、例えば、複数のWAN通信回線を用いて通信を行う通信装置、通信方法、及び、プログラムに関する。」 「【0014】 (実施の形態1) 以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1の通信装置10は、WAN通信部11、WAN通信部12、データ割り振り部13、通信制御部14、及び、LAN通信部15を有している。通信装置10は、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することによって動作するコンピュータ装置であってもよい。通信装置10は、例えば、データを中継する装置であってもよい。具体的には、通信装置10は、ルータ装置、もしく、ゲートウェイ装置であってもよい。ルータ装置は、持ち運びすることができるモバイルルータであってもよい。ゲートウェイ装置は、自宅内等に配置されるHGWであってもよい。」 「【0016】 WAN通信部11は、WAN通信部12と異なる通信ネットワークと通信を行う。例えば、WAN通信部11は、WAN通信部12が通信する通信ネットワークを管理する通信事業者と異なる通信事業者が管理する通信ネットワークと通信を行ってもよい。また、WAN通信部11は、WAN通信部12が用いる通信方式と異なる通信方式を用いて通信ネットワークと通信を行ってもよい。例えば、WAN通信部11は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)においてLTE(Long Term Evolution)として規定されている通信方式を用い、WAN通信部12は、3GPPにおいていわゆる3Gとして規定されている通信方式を用いてもよい。3GPPは、移動通信システムに関する仕様を規定する標準化団体である。」 「【0018】 LAN通信部15は、例えば、携帯電話端末、スマートフォン端末、もしくは、WAN通信回線を用いた通信機能を有さない通信端末等と通信を行う。WAN通信回線は、例えば、3GPPもしくはその他の標準化団体において規定されているモバイル通信回線であってもよい。例えば、LAN通信部15は、無線LAN通信を用いて通信端末と通信を行ってもよい。もしくは、LAN通信部15は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を用いて通信端末と通信を行ってもよい。LAN通信部15と通信する通信端末は、クライアント端末と称されてもよい。」 「【0021】 通信制御部14は、クライアント端末から送信されたデータを、データが要求する通信品質を満たす通信を実行可能なWAN通信部11もしくはWAN通信部12へ出力する。クライアント端末から送信されたデータは、LAN通信部15において受信される。データが要求する通信品質は、例えば、音声データである場合、遅延時間が所定の時間よりも短いことであってもよい。また、FTP(File Transfer Protocol)を用いた通信においては、通信速度が所定の値よりも速いことであってもよい。」 イ 前記アの記載によれば、引用文献5には、次の事項が記載されていると認められる。 「複数のWAN通信回線を用いて通信を行う通信装置であって、(【0001】) 通信装置10は、WAN通信部11、WAN通信部12、データ割り振り部13、通信制御部14、及び、LAN通信部15を有し、(【0014】) 通信装置10は、ルータ装置、もしく、ゲートウェイ装置であってもよく、(【0014】) ルータ装置は、持ち運びすることができるモバイルルータであってもよく、(【0014】) WAN通信部11は、WAN通信部12と異なる通信ネットワークと通信を行い、(【0016】) WAN通信部11は、WAN通信部12が通信する通信ネットワークを管理する通信事業者と異なる通信事業者が管理する通信ネットワークと通信を行ってもよく、(【0016】) WAN通信回線は、例えば、3GPPもしくはその他の標準化団体において規定されているモバイル通信回線であってもよく、(【0018】) LAN通信部15は、無線LAN通信を用いて通信端末と通信を行ってもよく、(【0018】) クライアント端末から送信されたデータを、データが要求する通信品質を満たす通信を実行可能なWAN通信部11もしくはWAN通信部12へ出力し、(【0021】) クライアント端末から送信されたデータは、LAN通信部15において受信される、(【0021】) 通信装置。」 (7)引用文献6 ア 当審で新たに引用する特開2010-183376号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、使用者が容易に持ち運ぶことのできる携帯式通信中継装置に関し、特に内部ネットワークと外部ネットワークとを中継する構成において、複数の外部ネットワークと接続可能な装置に関わる。 【背景技術】 【0002】 従来から、家庭内や会社内で複数の端末装置がインターネットなど外部ネットワークに接続できるようにする装置として、無線LANルータと呼ばれる通信中継装置が広く使用されている。本装置は、端末装置との間で内部ネットワークであるLAN(Local Area Network)を構成し、通信端末からの通信を外部ネットワークにルーティングする機能、通信端末に対してIPアドレスを割り当てるDHCPサーバ機能、アドレス変換を行うNAT機能、ドメイン名とIPアドレスとを変換するDNSサーバ機能(DNSフォワード機能)などを搭載している。 【0003】 一方、街頭における通信環境では、携帯電話、無線LAN、PHSなど様々な無線アクセスシステムが普及し、WiMAXなどの無線MANサービスも開始されようとしている。 このように様々な無線アクセスシステムが提供される中で、家庭内や会社内で無線LANに接続する構成に限らず、外出先においても外部ネットワークとの接続を複数の通信端末で共有したいという要求や、無線アクセスシステムごとに異なる接続用の機器や接続処理を、通信端末本体から切り離したいという要求が生じている。」 「【0033】 (実施例1) 図1は、本発明に係る携帯式無線通信中継装置の構成図である。本発明は、上記非特許文献1に開示されるような携帯式の無線LANルータに本発明の機能を実装して提供することが簡便である。 本装置(1)のハードウェアとしては、本発明における各処理を行う実行処理部を構成するCPU(10)と、外部ネットワーク通信アダプタとして携帯電話網(2)で通信する通信モジュールA(11)、街頭のホットスポット等において無線LAN(3)に接続する通信モジュールB(12)、使用者の端末(4)と通信する内部ネットワーク通信アダプタ(13)、後述するプロファイル情報(141)を格納したメモリ等の記憶手段(14)を備える。 【0034】 通信モジュール(11)(12)は、例えば携帯電話通信カード、PHSデータ通信カード、無線LANカードなどの無線通信ネットワークと接続するための通信モジュールであって、CFカードやPCIカード、USB接続の機器などで広く提供されている。 一般的には通信モジュールにつき1つのアンテナが設けられているが、アンテナは使用周波数が近ければ共用可能であり、異なる通信モジュールでアンテナを共用してもよい。 【0035】 内部ネットワーク通信アダプタ(13)は、内部ネットワークを構成する機器であって、無線LANアダプタやBluetoothアダプタで構成することができる。内部ネットワーク通信アダプタ(13)は、上記各通信モジュール(11)(12)と別個に設けてもよいが、実際には外部ネットワーク接続用と、内部ネットワーク接続用で共用してもよい。アンテナについても同様である。」 「【0115】 最後に、本装置の外観及び構造について説明する。図7は本装置(70)の外観を示す斜視図であり、掌中に収まる程度の大きさとすることで容易に携帯することができる。 上部の左右両側に2本のアンテナ(71)(72)を設ける。上端のアンテナベース部(73)(74)を屈曲自在にして携帯時にはアンテナ(71)(72)の形状に合わせた凹部に収納できる。使用時には凹部から上方に直立させることで通信感度を向上させることができる。 【0116】 中央部側面には、CFカードを挿入するスロット(75)を備えて、PHS通信カードなどを実装して使用できる。 使用者の操作系としては、右下端から順に電源を供給するジャック(76)、電源スイッチ(77)、外部ネットワークを再選択するためのサーチボタン(78)を有する。 また、インジケータとして内部ネットワーク(無線LAN)の接続状況を示すLED(79)、外部ネットワーク(無線LAN・CFカード・USB)の接続状況を示すLED(80)、電源表示(81)、動作状態を示すLED(82)、バッテリの残量表示(83)を備える。 【0117】 図8は本装置(70)の内部構造を示す分解図であり、基板上にCPU(84)と記憶手段を構成するSDRAM(85)を配置する他、MiniPCIスロット(86)(87)を基板の両面に設けて、外部ネットワーク及び内部ネットワーク用の無線LANモジュールをそれぞれに接続できるようにしている。 また、USBコネクタ(88)も備えて、USB接続の通信モジュールを内蔵できる。本体下部には、携帯時に駆動するための充電池(89)を内蔵している。」 「【図7】 [図:0001419588000007.jpg] 」 イ 前記アの記載によれば、引用文献6には、次の事項が記載されていると認められる。 「使用者が容易に持ち運ぶことのできる携帯式通信中継装置であって、(【0001】) 内部ネットワークと外部ネットワークとを中継する構成において、複数の外部ネットワークと接続可能な装置であり、(【0001】) 携帯式無線通信中継装置は、携帯式の無線LANルータに本発明の機能を実装して提供するものであり、(【0033】) ハードウェアとしては、外部ネットワーク通信アダプタとして携帯電話網(2)で通信する通信モジュールA(11)、街頭のホットスポット等において無線LAN(3)に接続する通信モジュールB(12)、使用者の端末(4)と通信する内部ネットワーク通信アダプタ(13)を備え、(【0033】) 通信モジュール(11)(12)は、例えば携帯電話通信カード、PHSデータ通信カード、無線LANカードなどの無線通信ネットワークと接続するための通信モジュールであり、(【0034】) 内部ネットワーク通信アダプタ(13)は、内部ネットワークを構成する機器であって、無線LANアダプタやBluetoothアダプタで構成することができ、(【0035】) 掌中に収まる程度の大きさとすることで容易に携帯することができ、(【0115】) 携帯時に駆動するための充電池(89)を内蔵している、(【0117】) 携帯式通信中継装置。」 (8)周知技術及び慣用手段 前記(4)イ、前記(5)イ、前記(6)イ及び前記(7)イの記載によれば、「ワイヤレスルータを携帯型とすること」は慣用手段であり、その一例として、「2以上の通信回線の利用を可能とし、バッテリを備えた携帯型のワイヤレスルータ」は、本願の出願前における周知技術であったと認められる。 (9)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 「通信事業者の通信回線と通信端末とを接続するためのWiFiルータが、通信事業者の異なる2以上の通信回線の利用を可能にして通信端末に対する通信ネットワークへの接続を行う通信ネットワーク接続システムであって、」について (ア)引用発明の「ワイヤレスルータ」(構成a)は、「LAN側の接続機能としてWi-Fi AP接続機能を有し」(構成d)ており、LAN側のWi-Fi接続可能なアクセスポイントにより、Wi-Fi接続に対応した端末機器をWi-Fi(無線LAN)で接続できるものであることは明らかであるから、引用発明の「ワイヤレスルータ」は、本件補正発明の「通信端末とを接続するためのWiFiルータ」に相当する。 (イ)引用発明の「すべてのLANユーザ」(構成b)は、Wi-Fi接続に対応した端末機器(前記(ア))により無線LANを利用するユーザのことであり、無線LANを利用するユーザが、Wi-Fi接続に対応した端末機器を用いて無線LANを利用することは明らかであるから、引用発明の「すべてのLANユーザ」が用いるWi-Fi接続に対応した端末機器は、本件補正発明の「通信端末」に相当する。 (ウ)引用発明の「ワイヤレスルータ」(構成a)は、WAN側の接続機能として、「複数のSIMカードをサポートした内蔵のHSPAおよびEVDOセルラーモデムによる接続機能」(構成c)を有しており、「冗長なセルラーのSIMカードスロット」に「SIMカードが挿入され」(構成e)て、通信事業者の回線を利用した通信を通じてデータ通信を可能にしていることは明らかであるから、引用発明の「ワイヤレスルータ」は、本件補正発明の「通信事業者の通信回線とを接続するためのWi-Fiルータ」に相当する。 (エ)前記(ア)~(ウ)を踏まえると、引用発明において、「LAN側の接続機能として、Wi-Fi AP接続機能」(構成d)を有し、「WAN側の接続機能として」、「複数のSIMカードをサポートした内蔵のHSPAおよびEVDOセルラーモデムによる接続機能」(構成c)を有する「ワイヤレスルータ」は、本件補正発明の「通信事業者の通信回線と通信端末とを接続するためのWi-Fiルータ」に相当する。 (オ)引用発明の「ワイヤレスルータ」は、「冗長なセルラーのSIMカードスロット」(構成e)を有し、「あるSIMカード」(構成f)と「別のSIMカード」(構成f)を利用して、前記(ウ)で示したデータ通信を可能にしているから、2以上の通信回線の利用を可能にしているといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「2以上の通信回線の利用を可能にして」いる点で一致する。 (カ)引用発明は「通信ネットワーク接続システム」(構成a)であり、前記(イ)及(ウ)を踏まえると、引用発明の「すべてのLANユーザ」が用いるWi-Fi接続可能な端末機器が、本件補正発明の「通信端末」に相当し、引用発明の「ワイヤレスルータ」は、「すべてのLANユーザ」に対して、通信事業者の回線を利用した通信を通じてデータ通信を可能にしているから、LANユーザが用いるWi-Fi接続可能な端末機器に対して、通信ネットワークへの接続を行うものであるといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「通信端末に対する通信ネットワークへの接続を行う通信ネットワーク接続システム」点で一致する。 (キ)したがって、前記(ア)~(カ)を踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、「通信事業者の通信回線と通信端末とを接続するためのWiFiルータが、2以上の通信回線の利用を可能にして通信端末に対する通信ネットワークへの接続を行う通信ネットワーク接続システム」である点で一致する。 他方、引用発明の「2以上の通信回線」は「通信事業者の異なる」ものであるか否か不明である。 イ 「2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが全て無線によるものであれば、利用する通信回線に優先順位をつけ、天災又は通信事業者の障害による通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し、それまで接続していない通信回線で停電時でも通信環境を維持でき、また、施設の外でも使用することができる携帯型であること」について (ア)引用発明の「複数のSIMカードをサポートした内蔵のHSPAおよびEVDOセルラーモデムによる接続機能」(構成c)は、セルラー回線(公衆無線回線)により通信回線への接続を行うものであることは明らかであるから、本件補正発明の「無線による」、「通信回線へのアクセス」に相当する。 (イ)引用発明の「あるSIMカード」及び「別のSIMカード」(構成f)を用いることは、2つの通信回線の利用を可能にしているといえる。 したがって、前記(ア)を踏まえると、引用発明の「SIMカードが挿入される冗長なセルラーのSIMカードスロット」(構成e)に、「あるSIMカード」と「別のSIMカード」が挿入されてセルラーモデムによる接続機能が使用され、他のWAN回線接続がなされていない状態は、本件補正発明の「2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが全て無線によるものであ」る場合に相当する。 (ウ)引用発明では、「「Cellular1」、「Cellular2」、「WAN1」及び「WAN2」の各項目の優先順位を、任意に設定することができ」(構成h)るものであり、引用発明では、「優先順位の低いWAN接続(例えば、Priority2)は、優先順位の高い接続(例えば、Priority1)がすべて使用できなくなった場合にのみ使用され」る(構成k)から、引用発明では、利用する通信回線に優先順位をつけているといえる。 (エ)引用発明は「フェイルオーバー機能を有する」(構成i)ところ、フェイルオーバーが、稼働中のシステムに障害が発生したときに待機している別のシステムに変更して、システムを維持する仕組みであることは技術常識であるから、前記(ウ)を考慮すると、引用発明の「フェイルオーバー機能」は、利用する通信回線に通信障害が発生したときに、優先順位に従って利用する通信回線を変更し、変更後の通信回線で通信環境を維持できるものであると認められる。 ここで、引用発明において、「リンク障害検出時間は、「推奨(約15秒)」、「高速(約6秒)」、「より高速(約2秒)」、「エクストリーム(約1秒)」の中から選択でき」る(構成j)ものであり、「リンク障害」は、通信障害によって通信ネットワークへ接続できない状況であるといえ、選択対象となる上記「リンク障害検出時間」はいずれも一定時間といえるから、引用発明では、通信障害によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況を検出し、当該検出により通信回線を変更すると認められる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは「通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では、優先順位に従って利用する通信回線を変更し、それまで接続していない通信回線で通信環境を維持でき」る点で一致する。 (オ)引用発明の「ワイヤレスルータ」は、「据え置き型が想定され」る(構成e)から、施設の外でも使用することができる携帯型ではない。 (カ)前記(ア)~(オ)より、本件補正発明と引用発明とは、「2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが全て無線によるものであれば、利用する通信回線に優先順位をつけ、通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し、それまで接続していない通信回線で通信環境を維持でき」る点で一致する。 他方、引用発明の「通信障害」は「天災又は通信事業者の障害による」ものであるか否か不明である。 また、引用発明は、「停電時でも」通信環境を維持できるか否か特定されておらず、据え置き型が想定されるため、施設の外でも使用することができる携帯型ではない。 ウ 前記ア及びイによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「通信事業者の通信回線と通信端末とを接続するためのWiFiルータが、2以上の通信回線の利用を可能にして通信端末に対する通信ネットワークへの接続を行う通信ネットワーク接続システムであって、 2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが全て無線によるものであれば、利用する通信回線に優先順位をつけ、通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し、それまで接続していない通信回線で通信環境を維持できることを特徴とした通信ネットワーク接続システム。」 (相違点1) 「2以上の通信回線」について、本件補正発明では、「通信事業者の異なる」ものであるのに対して、引用発明では、「通信事業者が異なる」か否か不明な点。 (相違点2) 本件補正発明では、「通信障害」が「天災又は通信事業者の障害による」ものであるのに対して、引用発明では、「通信障害」にそのような特定がされていない点。 (相違点3) 本件補正発明では、「停電時でも」通信環境を維持できるものであり、「また、施設の外でも使用することができる携帯型である」のに対して、引用発明は、停電時でも通信環境を維持できるか否か特定されておらず、また、据え置き型が想定されるため、施設の外で使用することができる携帯型ではない点。 (10)相違点についての判断 ア 相違点1について 2以上の通信回線が、通信事業者の異なるものとすることについて、引用文献2には、「ワイヤレスルータ」の「冗長SIMスロット」に、「異なるキャリア(docomo/KDDI/Softbank)のSIMを複数枚搭載する」ことが記載されている。引用発明と引用文献2に記載された技術とは、SIMスロットを複数搭載し、フェイルオーバー機能を有するワイヤレスルータで有る点で共通し、ともに、冗長性を持たせることを課題としているから、引用発明のワイヤレスルータにおいて、引用文献2に記載された技術を適用して、2以上の通信回線を「通信事業者の異なる」回線とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 引用発明は、「通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では、優先順位に従って利用する通信回線を変更」(前記(9)イ(エ))するから、一定時間接続できない状況により検出される通信障害は、その通信障害の原因によらず検出して、通信回線を変更できるものと認められる。 ここで、通信障害を生じさせる事象としては、本件補正発明が特定する「天災又は通信事業者の障害による」もの以外にも、戦争などの紛争による災害やセキュリティの問題など種々想定されるところ、引用発明においては、いずれを原因とする通信障害が発生した場合も、一定時間接続できない状況になれば、通信障害の原因を区別することなく、通信障害として検出されることは明らかである。 そして、本件補正発明は、通信障害が何に起因するものかを特定する構成を備えない(前記3(1)イ)ものであるから、その点において、本件補正発明と引用発明は、何ら相違するものではない。 そうすると、引用発明では、一定時間接続できない状況により検出される通信障害について、その原因のいずれを対応可能な通信障害として挙げるかは、当業者が適宜選択し得たことに過ぎないから、通信障害の原因として「天災又は通信事業者の障害による」ものを挙げて、相違点2に係る構成とすることに格別な困難性はない。 ウ 相違点3について 引用発明の「ワイヤレスルータ」は、据え置き型が想定されているが、ワイヤレスルータを据え置き型、携帯型とすることはいずれも慣用されており、どちらの使用形態も技術常識である。よって、据え置き型、携帯型のいずれの使用形態を選択するかは、当業者における設計的事項であって、その選択に対して創作性が何ら認められるものではなく、引用発明の「ワイヤレスルータ」に据え置き型が想定される点に特段の技術的意義は認められない。 また、引用発明の「ワイヤレスルータ」は、「2以上の通信回線の利用を可能」にするもの(前記(9)ア)であるところ、携帯型のワイヤレスルータの一例として「2以上の通信回線の利用を可能とし、バッテリを備えた携帯型のワイヤレスルータ」も周知技術(前記(8))である。 したがって、引用発明の「ワイヤレスルータ」を、バッテリを備えた携帯型とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、この点に格別の困難性は存在しない。 そして、ワイヤレスルータを「バッテリを備えた携帯型」とした場合には、施設の外でも使用することができ、停電時でも通信環境を維持できることは明らかである。 したがって、引用発明の「ワイヤレスルータ」を、バッテリを備えた携帯型として、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 以上より、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (11)請求人の主張についての判断 ア 請求人は、意見書2において、以下の(ア)及び(イ)の主張をしている。 (ア)「引用発明の記載された引用文献1の「Pepwaveのワイヤレスルータ」は明らかに「据置型」であり、本願発明のような「携帯型」ではありません。その証左に説明図1(上記拒絶理由通知書第11頁の画像を抜粋)に示す「MAX BR1」には、その底面側にフランジ部があり、そのフランジ部に本体を固定するための固定孔が設けられています。同様に説明図2(上記拒絶理由通知書第12頁の画像を抜粋)に示す「MAX BR1 Mini」でもその底面側にフランジ部があります(固定孔は確認できません)。本体を固定するためのフランジ部の存在が「据置型」であることを如実に物語っています。」 (イ)「引用文献1に開示された「MAX BR1」及び「MAX BR1 Mini」が「停電時でも通信環境を維持でき、また、施設の外でも使用することができる携帯型であること」は引用文献1に記載されておらず、それを示唆する記載もありません。そもそも、これだけ複雑で消費電力もかかる大掛かりなルータ(「MAX BR1」及び「MAX BR1 Mini」)を携帯型(モバイル型)にすることは求められていないと思いますし、限りなく不可能に近い話です。そして、審判請求書および意見書(提出日:令和5年12月26日)でも言及しましたが、引用発明の認定については、裁判例に判示されているように『主引用発明及び副引用発明の技術内容は、引用文献の記載を基礎として、客観的かつ具体的に認定・確定されるべきであって、引用文献に記載された技術内容を抽象化したり、一般化したり、上位概念化したりすることは、恣意的な判断を容れるおそれがあるため、許されないものといえる。』(平成23年(行ケ)第10121号審決取消請求事件「樹脂封止型半導体装置の製造方法」事件)とあります。そうとすると、引用発明から本願発明の「停電時でも通信環境を維持でき、また、施設の外でも使用することができる携帯型の通信ネットワーク接続システム」は想到できないものと思料いたします。」 イ しかしながら、前記(10)ウで示したように、ワイヤレスルータの使用形態として、据置型、携帯型のいずれの使用形態を選択するかは、当業者における設計的事項であることから、当業者であれば、引用文献1の製品に搭載されたワイヤレスルータとしての技術は、据置型、携帯型のいずれの使用形態でも用いることができることを当然に理解する。前記(10)ウの判断は、これを踏まえて、引用発明の「ワイヤレスルータ」が据え置き型を想定していたとしても、技術常識を考慮すれば、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであることを説示したのであって、引用文献1に記載された事項を抽象化、一般化、上位概念化して認定したものではない。 また、停電時の対処は、据え置き型のワイヤレスルータに限らず、商用電源から電力を受ける機器等に共通した一般的な課題であり、その解決手法も、機器を携帯型とすること以外に、非常用発電機、UPS等のように様々な手法が存在し、いずれの手法も技術常識であるから、当業者であれば、対象機器の使用形態等に応じて、適宜必要な解決手法を使用し得るのであって、停電時でも通信環境を維持できることは、本願特有の課題及び解決手法であるとはいえない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (12)小括 以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 4 本件補正についてのむすび 前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)のとおりである。 2 当審拒絶理由 当審拒絶理由の概要は、 (進歩性)この出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、 というものであり、本願発明に対して引用文献1及び2が引用されている。 3 引用文献 引用文献1及び2の記載事項並びに引用発明は、前記第2[理由]3(2)及び(3)に記載したとおりである。 4 対比 本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、前記第2[理由]2に示した限定事項を削除したものであるから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「通信事業者の通信回線と通信端末とを接続するためのWiFiルータが、2以上の通信回線の利用を可能にして通信端末に対する通信ネットワークへの接続を行う通信ネットワーク接続システムであって、 2以上の利用可能な通信回線へのアクセスが全て無線によるものであれば、利用する通信回線に優先順位をつけ、通信障害の発生によって通信ネットワークへ一定時間接続できない状況では優先順位に従って利用する通信回線を変更し、それまで接続していない通信回線で通信環境を維持することを特徴とした通信ネットワーク接続システム。」 (相違点1) 「2以上の通信回線」について、本件補正発明では、「通信事業者の異なる」ものであるのに対して、引用発明では、「通信事業者が異なる」か否か不明な点。 (相違点2) 本件補正発明では、「通信障害」が「天災又は通信事業者の障害による」ものであるのに対して、引用発明では、「通信障害」にそのような特定がされていない点。 5 判断 (1)相違点1について 前記第2[理由]3(10)アで示したとおりである。 (2)相違点2について 前記第2[理由]3(10)イで示したとおりである。 (3)以上より、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-019919

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