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特許拒絶査定不服審判

2022-019160

量子ドット製造用ホスフィン前駆体およびそれから製造される量子ドット

審判番号
2022-019160
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-548069
請求日
2022年11月28日
審決日
2024年07月16日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
  • 【請求人代理人】弁理士法人北斗特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 瀬良 聡機
  • 審判官 木村 敏康
分類
P18 .113-Z (C07F) / P18 .575-Z (C07F) / P18 .121-Z (C07F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-548069「量子ドット製造用ホスフィン前駆体およびそれから製造される量子ドット」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月 7日国際公開、WO2018/160037、令和 2年 4月 9日国内公表、特表2020-510674〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)3月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年3月3日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和3年10月7日付けで拒絶理由が通知され、令和4年3月14日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月15日付けで拒絶査定がされ、同年11月28日に拒絶査定不服審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和4年11月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年11月28日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 令和4年11月28日にされた手続補正(以下「本件補正」ともいう。)は、 (1)補正前の特許請求の範囲の請求項1の 「 【請求項1】 下記構造式からなる群より選ばれるものである、量子ドット製造用ホスフィン前駆体。 【化1】 [図:0001416983000001.jpg] 」との記載(令和4年3月14日提出の手続補正書を参照。)を、下記(2)のとおり補正することを含むものである。 (2)本件補正後の特許請求の範囲の記載 「 【請求項1】 下記構造式からなる群より選ばれるものである、量子ドット製造用ホスフィン前駆体。 【化1】 [図:0001416983000002.jpg] 」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である【化1】の21個の化合物のうち、1段目左端の化合物、7段目左端及び中央の化合物を削除する補正を含み、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を包含する(その他、本件補正により、化学構造式中の「2H」との表示を「H2」に誤記の訂正も行われている。)。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献2 原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である、O.J.SCHERER 外1名、Journal of Organometallic Chemistry、1972年、40、p.C64~C66(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 訳文にて示す。 (ア1)「 [図:0001416983000003.jpg] ・・・ (tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィンI:5.54g(99mMol)の粉砕したNaPH25.54g(99mMol)を、100mlのエーテルに添加し、室温で懸濁した。14.9g(99mMol)のt-C4H9Si(CH3)2Clを50mlのエーテルに滴下すると、直ちにNaClが沈殿した。その後室温でかき混ぜた。一晩放置し、沈降させ、G3フリットを通して濾過し、分別蒸留した。収量6.25g(理論値の43%)。 ・・・ (トリメチルシリル)(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィンII:エーテル100mlのエーテル中の6.25g(42mMol)のIを氷で冷却しながらn-C2H2Li-ヘキサン溶液19.2ml(42mol)で金属化すると、溶液は透明のままである。室温で2時間攪拌した後、白く濁っていた。50mlのエーテル中に4.56g(42mMol)(CH3)3SiCl室温で滴下し、一晩攪拌を続け、Iで説明したように後処理した。収量6.15g(理論値の66%)。 ・・・ 」(C64頁反応式及びC65頁16~35行) イ 引用文献4 原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用した、Carson von Hanisch 外1名、Eur. J. Inorg. Chem.、2006年、p.4770~4773(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 訳文にて示す。 (イ1)「実験項目 すべての操作が、シュレンク管や窒素雰囲気を用いて、酸素及び水分を厳密に排除した状態で実行された。溶媒は、使用前に、乾燥され、新たに蒸留された。出発物質であるtBuPh2SiPH2は、我々が、以前に記載した方法で[15]、tBuPh2SiClと[(dme)LiPH2]をTHF中で、LiCl-脱離反応によって調製された。BiClは、Aldrichから入手し、そのまま使用した。 ・・・ (tBuPh2Si)2PH:この化合物は、tBuPh2SiPH2の合成の副生成物として単離され、n-ペンタンからの蒸留残渣の再結晶により、無色結晶として得られた。[15] ・・・」(4772頁右欄14~26行) ウ 引用文献12 引用文献4の参考文献15であって、新たに引用文献12として提示する引用文献である、Donna Nikolova 外1名、Eur. J. Inorg. Chem.、2005年、p.378~382(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。 (ウ1)「実験項目 一般:すべての操作が、シュレンク管や窒素雰囲気を用いて、酸素及び水分を厳密に排除した状態で実行された。溶媒は、使用前に、乾燥され、新たに蒸留された。出発物質であるiPr3SiAsH2とThexMeSiPH2は、文献に記載されている関連手順に従って調製された。[14] ・・・ tBuPh2SiPH2:50mLのTHFにtBuPh2SiCl(41.2g、0.15mol)を溶解した溶液が、150mLのTHFに[(dme)LiPH2](19.5g、0.15mol)を溶解した溶液に、0℃で滴下された。混合物を室温で一晩攪拌後、THFをペンタン100mLに置き換えた。続いて沈殿した塩化リチウムを濾過により除去した。溶媒を除去した後、真空蒸留によりtBuPh2SiPH2が20g(50%)の収量で得られた。沸点:100~103℃(103mbar)・・・」(380頁右欄1~18行) (3)引用文献に記載された発明について ア 引用文献2に記載された発明 引用文献2には、(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィンIが、製造方法の記載を伴って記載されている(摘記(ア1))。 そうすると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる(また、「(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィン」を「引用2化合物」ともいう。)。 したがって、引用文献2には、以下の化合物の発明が記載されている。 「(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィン」 イ 引用文献4に記載された発明 引用文献4には、tBuPh2SiPH2が、製造方法の記載を伴って記載されている(摘記(イ1))。 そうすると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる(また、「tBuPh2SiPH2」を「引用4化合物」ともいう。)。 したがって、引用文献4には、以下の化合物の発明が記載されている。 「tBuPh2SiPH2」 ウ 引用文献12に記載された発明 引用文献12には、tBuPh2SiPH2が、製造方法の記載を伴って記載されている(摘記(ウ1))。 そうすると、引用文献12には、次の発明(以下「引用発明12」という。)が記載されていると認められる(また、「tBuPh2SiPH2」を「引用12化合物」ともいう。)。 したがって、引用文献12には、以下の化合物の発明が記載されている。 「tBuPh2SiPH2」 (4)引用発明との対比 ア 引用発明2との対比判断 (ア)本件補正発明と引用発明2とを対比する。 まず、引用発明2の「(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィン」は、C64の反応式(I)とC65の「t-C4H9Si(CH3)2Cl」との記載からみて、「t-C4H9Si(CH3)2PH2」という化学構造を有するtert-ブチル基と2個のメチル基がSiに結合した基と、残りの2個が水素であるホスフィン化合物であるから、 本件補正発明の「 [図:0001416983000004.jpg] 」 に相当する。 そして、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」は、請求項1に列挙されている構造式を有する前駆体化合物と解されるから、引用発明2の「ホスフィン」は、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」に相当する。 (イ)以上のことから、本件補正発明と引用発明2とは、 「下記構造式からなる群より選ばれるものである、ホスフィン前駆体。 【化1】 [図:0001416983000005.jpg] 」 である点で一致し、以下の点で一応相違している。 相違点1:本件補正発明は、「量子ドット製造用」との特定事項を有しているのに対して、引用発明2は、そのような用途の特定がされていない点。 (ウ)相違点1の判断 以下、相違点1について検討する。 a 本件補正発明における「量子ドット製造用」との特定は、前駆体化合物が、「量子ドット製造」に適しているという化合物自体が有する性質を表しているに過ぎないので、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」は、引用発明2のホスフィンと化合物と相違するところはない。 したがって、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。 b 上記aのとおり、相違点1は、実質的な相違点ではないが、仮に相違点1を実質的な相違点であるとして念のため検討しておく。 InP等の量子ドット製造のP源として、ホスフィン前駆体化合物が使用されることは周知の技術的事項であるので(Dylan C.Gary 外1名、American Chemical Society、2013年、25、p.2463~2469、特表2010-535262号【特許請求の範囲】【0064】実施例7等参照)、引用発明2のホスフィン化合物を量子ドット製造にホスフィン前駆体化合物として用い、「量子ドット製造用」との特定をすることは当業者であれば容易になし得る技術的事項である。 本件補正発明の効果について、本願明細書においては、本件補正発明のホスフィン前駆体化合物に該当しないビス(ターシャリー-ブチルジメチルシリル)ホスフィンとトリス(トリメチルシリルホスフィン)(TMSP)との1:1混合物を一原料成分として形成した量子ドット(InP/GaP/ZnS量子ドット)が、従来のホスフィン前駆体化合物であるトリス(トリメチルシリルホスフィン)(TMSP)単独のものを一原料成分とした量子ドット(InP/GaP/ZnS量子ドット)に比べて、光学特性として発光ピークの半値幅が狭かったことが示されているだけで、本件補正発明のホスフィン前駆体化合物に関しては、単独のものはもちろん、混合物でさえ、それを用いて量子ドットを形成した場合の効果の検討が示されていない。 したがって、各ホスフィン前駆体化合物を量子ドット形成の一成分として用いた場合に形成条件を含めて結晶性を反映する発光ピークの半値幅が一定でないのは当然であるから、本件補正発明のホスフィン前駆体化合物を量子ドット形成に用いた場合に想定される効果に比べて、本件補正発明の効果が、予測できない、かつ顕著な効果を奏しているとまではいえない。 c 審判請求人の主張について 審判請求人は、意見書4~6頁及び審判請求書4~6頁において、追加実施例や追加比較例の結果を示して、中心金属であるPに対して水素が1つ結合し、かつ互いに異なる置換基を有するホスフィン前駆体化合物が、中心金属であるPに対して水素が2つ結合したホスフィン前駆体よりも、上記半値幅が狭いという効果がある旨主張をしている。 しかしながら、本願明細書【0032】~【0052】の記載をみても、中心金属であるPに対して水素が1つ結合し、互いに異なる置換基を有する化合物だけでなく、同じ置換基を有する化合物や水素が2つ結合している化合物も含めて広く提示されているだけである。また、実施例においても、種々のホスフィン前駆体が製造されているものの、本件補正発明の効果に関しては、本件補正発明に該当しない、中心金属であるPに対して水素が一つ結合し、かつ2つの同じ置換基を有するホスフィン前駆体をトリメチルシリルホスフィン(TMSP)との1:1混合物にした例に関して、上記光学特性の測定が行われているだけである。それゆえ、上記審判請求書で示された追加実施例や追加比較例の結果は、本願明細書の内容と一致しておらず、参照できない。また、仮に参照したとしても、本願明細書の記載に基づく効果であるとは認められない。 (エ)したがって、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明であり、特許法29条第1第3号に該当し、特許法29条1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 また、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明並びに本願優先日時点の技術常識から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 イ 引用発明4との対比判断 (ア)本件補正発明と引用発明4とを対比する。 まず、引用発明4の「tBuPh2SiPH2」は、t-Bu(ターシャリーブチル基)と2個のPh(フェニル基)がSiに結合した基と、残りの2個が水素であるホスフィン化合物であるから、 本件補正発明の「 [図:0001416983000006.jpg] 」 に相当する。 そして、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」は、請求項1に列挙されている構造式を有する前駆体化合物と解されるから、引用発明4の「ホスフィン」は、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」に相当する。 (イ)以上のことから、本件補正発明と引用発明4とは、 「下記構造式からなる群より選ばれるものである、ホスフィン前駆体。 【化1】 [図:0001416983000007.jpg] 」 である点で一致し、以下の点で一応相違している。 相違点1’:本件補正発明は、「量子ドット製造用」との特定事項を有しているのに対して、引用発明4は、そのような用途の特定がされていない点。 (ウ)相違点1’の判断 以下、相違点1’について検討する。 a 本件補正発明においては、上記特定が存在するが、前駆体化合物が、「量子ドット製造用」に適しているという化合物自体が有する性質を表しているに過ぎないので、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」は、引用発明4のホスフィンと化合物として相違するところはない。 したがって、相違点1’は、実質的な相違点とはいえない。 b 上記aのとおり、相違点1’は、実質的な相違点ではないが、仮に相違点1’を実質的な相違点であるとして検討しても、前記ア(ウ)で述べたとおり、引用発明4のホスフィン化合物を量子ドット製造にホスフィン前駆体化合物として用い、「量子ドット製造用」との特定をすることは、当業者であれば容易になし得る技術的事項である。 (エ)したがって、本件補正発明は、引用文献4に記載された発明及び本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献4に記載された発明であり、特許法29条第1第3号に該当し、特許法29条1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 また、本件補正発明は、引用文献4に記載された発明並びに本願優先日時点の技術常識から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 ウ 引用発明12との対比判断 (ア)本件補正発明と引用発明12とを対比する。 イと同様に、引用発明12の「tBuPh2SiPH2」は、t-Bu(ターシャリーブチル基)と2個のPh(フェニル基)がSiに結合した基と、残りの2個が水素であるホスフィン化合物であるから、 本件補正発明の「 [図:0001416983000008.jpg] 」 に相当する。 そして、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」は、請求項1に列挙されている構造式を有する前駆体化合物と解されるから、引用発明4の「ホスフィン」は、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」に相当する。 (イ)以上のことから、本件補正発明と引用発明12とは、 「下記構造式からなる群より選ばれるものである、ホスフィン前駆体。 【化1】 [図:0001416983000009.jpg] 」 である点で一致し、以下の点で一応相違している。 相違点1’’:本件補正発明は、「量子ドット製造用」との特定事項を有しているのに対して、引用発明12は、そのような用途の特定がされていない点。 (ウ)相違点1’’の判断 以下、相違点1’’について検討する。 a 本件補正発明においては、上記特定が存在するが、前駆体化合物が、「量子ドット製造用」に適しているという化合物自体が有する性質を表しているに過ぎないので、本件補正発明の「ホスフィン前駆体」は、引用発明4のホスフィンと化合物と相違するところはない。 したがって、相違点1’’は、実質的な相違点とはいえない。 b 上記aのとおり、相違点1’’は、実質的な相違点ではないが、仮に相違点1’’を実質的な相違点であるとして検討しても、前記ア(ウ)で述べたとおり、引用発明12のホスフィン化合物を量子ドット製造にホスフィン前駆体化合物として用い、「量子ドット製造用」との特定をすることは当業者であれば容易になし得る技術的事項である。 (エ)したがって、本件補正発明は、引用文献12に記載された発明及び本願優先日時点の技術常識を参照すると、引用文献12に記載された発明であり、特許法第29条第1第3号に該当し、特許法29条1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 また、本件補正発明は、引用文献12に記載された発明並びに本願優先日時点の技術常識から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~11に係る発明は、令和4年3月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載の以下のとおりである(本願発明を再掲)。 「 【請求項1】 下記構造式からなる群より選ばれるものである、量子ドット製造用ホスフィン前駆体。 [図:0001416983000010.jpg] 」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、令和3年10月7日付け拒絶理由通知書において下記のとおり通知された以下のものを含むと認める。 「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・・・ 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・・・ ●理由1(新規性)について ・請求項 1-6 ・引用文献等 2-4 ・・・ ・請求項 1-4、6 ・引用文献等 7、8 ・・・ <引用文献等一覧> ・・・ 2.Scherer, O. J. et al.,Inversion barriers of some tri(silyl)phosphines,Journal of Organometallic Chemistry,1972年,40(2),pp. C64-C66 3.Westerhausen, M. et al.,NMR-spectroscopic and structural characterization of calcium triisopropylsilylphosphide,Journal of Organometallic Chemistry,1996年,513(1-2),pp. 213-229 4.Carsten von Haenisch et al.,Synthesis and Characterization of Molecular Bismuth Phosphorus Compounds Containing Bi2 Units with Bi-Bi Single and Double Bonds,European Journal of Inorganic Chemistry,2006年,(23),pp. 4770-4773 ・・・ 7.Driess, M. et al.,Modular Chemistry with Aluminum Phosphanides: Cluster Formation of (AlP)n (n = 3,6,7), Al4P3, and Al4Li4P6 Frameworks,Chemistry - A European Journal ,2000年,6(23),pp. 4343-4347 8.Demuth, R. et al.,Preparation and characterization of unsymmetrical bistrifluoromethyldiphosphine and phosphinobistrifluoromethylarsine,Journal of Fluorine Chemistry,1973年,2(3),pp. 269-279 ・・・」 そして、拒絶査定において、以下のとおり理由が示されている。 「この出願については、令和3年10月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって拒絶すべきものです。 ・・・ 備考 ●理由1(特許法第29条第1項第3号)について ・請求項 1 ・引用文献等 2-4、7、8 ・・・ <引用文献等一覧> 2.Scherer, O. J. et al.,Inversion barriers of some tri(silyl)phosphines,Journal of Organometallic Chemistry,1972年,40(2),pp. C64-C66 3.Westerhausen, M. et al.,NMR-spectroscopic and structural characterization of calcium triisopropylsilylphosphide,Journal of Organometallic Chemistry,1996年,513(1-2),pp. 213-229 4.Carsten von Haenisch et al.,Synthesis and Characterization of Molecular Bismuth Phosphorus Compounds Containing Bi2 Units with Bi-Bi Single and Double Bonds,European Journal of Inorganic Chemistry,2006年,(23),pp. 4770-4773 7.Driess, M. et al.,Modular Chemistry with Aluminum Phosphanides: Cluster Formation of (AlP)n (n = 3,6,7), Al4P3, and Al4Li4P6 Frameworks,Chemistry - A European Journal ,2000年,6(23),pp. 4343-4347 8.Demuth, R. et al.,Preparation and characterization of unsymmetrical bistrifluoromethyldiphosphine and phosphinobistrifluoromethylarsine,Journal of Fluorine Chemistry,1973年,2(3),pp. 269-279 ・・・」 3 当審合議体の判断 当審合議体は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるか、又は引用文献4に記載された発明であるか、又は引用文献3に記載された発明であるか、又は引用文献7に記載された発明であるか、又は引用文献8に記載された発明であるから、特許法第29条第1第3号に該当し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができないと考える。 理由は、以下のとおりである。 4 引用文献及びその記載事項 (1)引用文献2:(原査定の拒絶査定の理由における引用文献2) 原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用文献2」には、前記2(2)アのとおりの記載がある。 (2)引用文献4:(原査定の拒絶査定の理由における引用文献4) 原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用文献4」には、前記2(2)イのとおりの記載がある。 (3)引用文献3:(原査定の拒絶査定の理由における引用文献3) 原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用文献3」には、以下の記載がある。 訳文にて示す。 (エ1)「4.2 (dme)LiPHとクロロトリイソプロピルシランの反応 20.6mLのクロロ-トリ-イソ-プロピルシランを、(1,2-ジメトキシエタン-O,O’)リチウムホスファニド12.5g(96.2mmol)THF懸濁液に室温でゆっくり滴下する。徐々に赤色の沈殿が期待値どおり形成された。添加が完了した後、混合物をさらに1時間攪拌し、次いで真空中で揮発性のすべての成分を室温で留去する。残った赤色の油を真空精密蒸留に供する。無色の自己発火性トリイソプロピルシリルホスフィン1が39℃/0.04Torrで蒸留され、収量:11.7g(61.6mol)、64%。」(225頁右欄21~34行) (4)引用文献7:(原査定の拒絶査定の理由における引用文献7) 原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用文献7」には、以下の記載がある。 訳文にて示す。 (オ1)「複素環1は、第1級シリルホスフィン6aとAlMeを70℃、モル比1:1で反応させることにより、94%の収率で入手できます(スキーム2)。」(4344頁右欄10~12行)と記載され、 スキーム2には、6aとして、 「RPH2 6a:R=iPr3Si」との出発原料の記載がある。 (5)引用文献8:(原査定の拒絶査定の理由における引用文献8) 原査定で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物にあたるといえる上記「引用文献8」には、以下の記載がある。 訳文にて示す。 (カ1)「R3MPH2と(CF3)2AsXの反応 結合開裂の基本的問題は、(CF3)2PXを用いた研究を通じて明らかにすることができたので、ここでの研究は(CF3)2AsPH2の純粋な調製に最も好ましい反応に限定されました。ビス-(トリフルオロメチル)アルシノホスフィンは、(5)にしたがって、-30℃での(C2H5)3SiPH2と(CF3)2AsJの反応、又は-78℃でのH3SiPH2と(CF3)2AsClの反応により実質的に定量的に生成されます。・・・ ・・・ RMPHと(CH3)2PClの反応 この反応は、リン上の置換基が反応プロセスにどのような影響を与えるかという問題を解明することを目的としていました。研究の結果、(CH)3SiPH2、(CH3)3SnPH2は、(CF3)2EX化合物と同様に(CH3)2PClによって切断されるが、一次生成物(CH3)2PPH2は、単離できないことがわかりました。・・・ 」(272頁下から9行~273頁13行) 5 引用発明 引用文献2及び4には、それぞれ、前記第2の2(3)ア及びイのとおり、引用発明2及び引用発明4が記載されていると認定できる。 さらに、引用文献2には、(トリメチルシリル)(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィンIIが製造方法の記載を伴って記載されている(摘記(ア1))。 そうすると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2-I I 」という。)が記載されていると認められる(また、「(トリメチルシリル)(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィン」を「引用2-II化合物」ともいう。)。 したがって、引用文献2には、以下の化合物の発明が記載されている。 「(トリメチルシリル)(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィン」 また、引用文献3、7、8には、それぞれ、引用発明3、引用発明7、引用発明8として以下の化合物の発明が記載されているといえる。 引用発明3:「トリイソプロピルシリルホスフィン」 引用発明7:「iPr3SiPH2」 引用発明8:「(C2H5)3SiPH2」 6 対比・判断 (1)本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明のホスフィン前駆体の選択肢に 補正によって削除された、 [図:0001416983000011.jpg] 、 [図:0001416983000012.jpg] 及び [図:0001416983000013.jpg] を加えた以外は、選択肢は同じものであり、本件補正発明が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、引用文献2及び引用文献4に記載された発明であるから、本願発明も、引用文献2及び引用文献4に記載された発明である。 (2)また、前記第2の[理由]2で検討したの同様に、 引用発明2-IIの化合物は、本願発明のホスフィン前駆体の化合物の [図:0001416983000014.jpg] に、 引用発明3及び引用発明7の化合物は、本願発明のホスフィン前駆体の化合物の [図:0001416983000015.jpg] に、 引用発明8の化合物は、本願発明のホスフィン前駆体の化合物の [図:0001416983000016.jpg] に、それぞれ相当するので、本願発明は、引用文献2に記載された発明であり((トリメチルシリル)(tert-ブチルジメチルシリル)ホスフィンに関して)、引用文献3に記載された発明であり、引用文献7に記載された発明であり、引用文献8に記載された発明でもある。 第4 むすび 請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明であり、又は本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同条第1項の規定により、特許を受けることができない。 さらに、請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献3に記載された発明であり、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献7に記載された発明であり、又は本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献8に記載された発明でもあるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同条第1項の規定により、特許を受けることができない。 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-019160

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