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特許拒絶査定不服審判

2019-005914

有機エレクトロルミネセンス材料及びデバイス

審判番号
2019-005914
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-025999
請求日
2019年05月08日
審決日
2020年03月16日
公報発行日
2020年09月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
  • 【請求人代理人】廣田 浩一
  • 【請求人代理人】流 良広
  • 【請求人代理人】松田 奈緒子
審判長/審判官
  • 審判長 村上 騎見高
  • 審判官 瀬良 聡機
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P18 .113-Z (C07F) / P18 .575-Z (C07F) / P18 .121-Z (C07F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015- 25999「有機エレクトロルミネセンス材料及びデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月27日出願公開、特開2015-155403〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成27年2月13日(パリ条約による優先権主張 2014年2月14日、米国(US))の出願であって、平成30年7月10日付けで拒絶理由が通知され、同年10月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月28日付けで拒絶査定され、令和1年5月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和1年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和1年5月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 令和1年5月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、補正前の平成30年10月23日付け手続補正により補正した特許請求の範囲の請求項1の「LAは、任意で他の配位子と結合して、三座配位子、四座配位子、五座配位子、又は六座配位子となり」との特定事項を削除する補正及び補正前の「他の配位子に配位され」との特定事項を「下記の他の配位子LB1~LB41のいずれかに配位され、(LB1~LB41の化学構造式省略)」とする補正を含むものである。 2 補正の適否 (1)目的要件の判断 上記補正のうち、「LAは、任意で他の配位子と結合して、三座配位子、四座配位子、五座配位子、又は六座配位子となり」との特定事項を削除する補正は、補正前にLAは、任意で他の配位子と結合して、合計三座~六座の配位子となっていることを特定していたことを意味する特定事項を補正後削除しているのであるから、特許請求の範囲の減縮であるとはいえず、明りようでない記載の釈明又は誤記の訂正であるともいえず、特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの目的にも合致するものとはいえない。 審判請求人は、審判請求書5頁(b)において、本件補正に関して、「請求項1は、「他の配位子」をLB1~LB41のいずれかに限定し、この補正に併せて「LAは、任意で他の配位子と結合して、三座配位子、四座配位子、五座配位子、又は六座配位子となり」の規定を削除したものです。」と主張しているが、「他の配位子」をLB1~LB41のいずれかに限定することが、例えLBの配位子の種類を限定することになっても、一方でLBを含めたLAとLBの配位子の合計数の特定が削除されているのであるから、その点で請求項1の範囲が拡張されているのは明らかである。 (2)独立特許要件の判断 ア 仮に、発明を特定する事項である本件補正前の請求項1の「化合物」を特定するために必要な特定事項である「他の配位子に配位され」との特定事項を具体的に「下記の他の配位子LB1~LB41のいずれかに配位され、」と限定したものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について検討する。 イ 特許法第29条第1項第3号についての判断 (イ-1)本願補正発明 本願補正発明は、以下に記載したとおりのものである。 「  【請求項1】 下記の式(I)で表される配位子LAを含むことを特徴とする化合物。 【化1】 (式(I)中、環Aは、5員又は6員の炭素環又は複素環であり; Rは、環Bに縮合しており、且つ式(II)で表され: 【化2】 ここで、 波線は、環Bへの結合を表し; R1及びR3は、それぞれ独立して、モノ、ジ、トリ、若しくはテトラ置換、又は無置換を表し; R2は、モノ若しくはジ置換、又は無置換を表し; X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、及びX8は、それぞれ独立して、炭素又は窒素であり; X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、及びX8のうちの少なくとも1つは、窒素であり; Y1は、BR’、NR’、PR’、O、S、Se、C=O、S=O、SO2、CR’R’’、SiR’R’’、及びGeR’R’’からなる群より選択され; R1、R2、R3、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、又は任意の2つの隣接する置換基が、任意で結合して環を形成し(前記環が更に置換されていてもよい)、 前記LAは、金属Mに配位しており、 前記Mは、任意で下記の他の配位子LB1~LB41のいずれかに配位され、 【化3】 【化4】 ただし、 前記化合物が、下記配位子LAを有するホモレプティックイリジウム化合物である場合、Y1は、CR’R’’ではない。 【化5】 」 (イ-2)引用刊行物 刊行物1:特開2014-7397号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1) (イ-3)刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2014-7397号公報には、以下の記載がある。 (1a)「 【請求項1】 ベンゾフロピリミジン誘導体が金属に配位した有機金属錯体を発光中心とする、 発光素子。 【請求項2】 4位にアリール基を有するベンゾフロピリミジン誘導体が金属に配位した有機金属錯体を発光中心とする、 発光素子。 【請求項3】 4位にアリール基を有するベンゾフロピリミジン誘導体の3位の窒素が金属に配位し、前記アリール基が前記金属に結合した有機金属錯体を発光中心とする、 発光素子。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、 前記金属が、第9族元素または第10族元素である発光素子。 【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、 前記金属が、イリジウムである発光素子。 【請求項6】 一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体。 【化1】 (式中、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。また、Mは、第9族元素または第10族元素のいずれかを表す。) 【請求項7】 一般式(G2)で表される有機金属錯体。 【化2】 (式中、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。また、Mは、第9族元素または第10族元素のいずれかを表す。また、前記Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。) 【請求項8】 一般式(G3)で表される有機金属錯体。 【化3】 (式中、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。また、Mは、第9族元素または第10族元素のいずれかを表す。また、前記Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。また、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。) 【請求項9】 請求項6乃至請求項8のいずれか一に記載の有機金属錯体を含む発光素子。 【請求項10】 請求項9に記載の発光素子を用いた発光装置。 ・・・」 (1b)「【技術分野】 【0001】 三重項励起状態を発光に変換できる有機金属錯体を発光中心とする発光素子に関する。また、該有機金属錯体に関する。また、該発光素子を用いた、発光装置、電子機器、及び照明装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、発光性の有機化合物や無機化合物を発光材料として用いた発光素子の開発が盛んである。特に、EL(Electro Luminescence)素子と呼ばれる発光素子の構成は、電極間に発光材料を含む発光層を設けただけの単純な構造であり、薄型軽量化できる・入力信号に高速に応答できる・直流低電圧駆動が可能であるなどの特性から、次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、このような発光素子を用いたディスプレイは、コントラストや画質に優れ、視野角が広いという特徴も有している。さらに、これらの発光素子は面状光源であるため、液晶ディスプレイのバックライトや照明等の光源としての応用も考えられている。 【0003】 発光物質が発光性の有機化合物である場合、発光素子の発光機構は、キャリア注入型である。すなわち、電極間に発光層を挟んで電圧を印加することにより、電極から注入された電子およびホールが再結合して発光物質が励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。そして、励起状態の種類としては、一重項励起状態(S*)と三重項励起状態(T*)が可能である。また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、S*:T*=1:3であると考えられている。 【0004】 発光性の有機化合物は通常、基底状態が一重項状態である。したがって、一重項励起状態(S*)からの発光は、同じ多重度間の電子遷移であるため蛍光と呼ばれる。一方、三重項励起状態(T*)からの発光は、異なる多重度間の電子遷移であるため燐光と呼ばれる。ここで、蛍光を発する化合物(以下、蛍光性化合物と称す)は室温において、通常、燐光は観測されず蛍光のみが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた発光素子における内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、S*:T*=1:3であることを根拠に25%とされている。 【0005】 一方、燐光性化合物を用いれば、理論上は内部量子効率を100%とすることが可能となる。つまり、蛍光性化合物に比べて4倍の発光効率が可能となる。このような理由から、高効率な発光素子を実現するために、燐光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。 【0006】 特に、燐光性化合物としては、その燐光量子効率の高さゆえに、イリジウム等を中心金属とする有機金属錯体が注目されている。例えば、赤色の発光が得られる有機金属錯体として、ピラジン誘導体が第9族または第10族の金属イオンに対してオルトメタル化した有機金属錯体がある(例えば、特許文献1)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0007】 【特許文献1】特開2007-284432号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 特許文献1において報告されているように、有機金属錯体を用いた発光素子の開発も進んできてはいるものの、発光効率、信頼性、発光特性、合成収率、またはコストといった面で改善の余地が残されており、より優れた発光素子の開発が望まれている。 【0009】 上記課題に鑑み、本発明の一態様は、新たな有機金属錯体を発光中心とする発光素子を提供することを課題とする。また、該有機金属錯体を提供することを課題とする。また、該発光素子を用いた発光装置、電子機器、及び照明装置を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、ベンゾフロピリミジン誘導体が金属に配位した有機金属錯体が、燐光発光を示すことを見出した。また、該有機金属錯体を一対の電極間に有する発光素子に、電圧を印加することにより、該発光素子は、燐光発光を示し且つ信頼性が高いことを見出した。 【0011】 したがって、本発明の一態様は、ベンゾフロピリミジン誘導体が、金属に配位した有機金属錯体を発光中心とする発光素子である。特に、4位にアリール基を有するベンゾフロピリミジン誘導体が、金属に配位した有機金属錯体を発光中心とする発光素子であると良い。また、4位にアリール基を有するベンゾフロピリミジン誘導体の3位の窒素が、金属に配位し、アリール基が金属に結合した有機金属錯体を発光中心とする発光素子であると良い。 【0012】 上記各構成において、金属が、第9族元素または第10族元素であると好ましく、イリジウムであるとさらに好ましい。 【0013】 また、本発明の他の一態様は、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体である。一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体は燐光発光することができるため、発光素子の発光層に適用する際に有益である。 【0014】 【化1】 【0015】 特に、一般式(G1)で表される構造を含み、該構造において最低三重項励起状態が形成される燐光性の有機金属錯体は、発光に寄与する最低三重項励起状態が(G1)以外の骨格(他の配位子)により消光されないため、効率よく燐光を放出することができるため好ましい。このような態様を実現するためには、例えば、該構造の最低三重項励起エネルギーが、該燐光性の有機金属錯体を構成する他の骨格(他の配位子)の最低三重項励起エネルギーと同じになるか、またはそれより低くなるように、他の骨格(他の配位子)を選択すればよい。このような構成とすることで、該構造以外の骨格(配位子)がどのようなものであっても、最終的には該構造にて最低三重項励起状態が形成されるため、該構造に由来する燐光発光が得られる。したがって、高効率な燐光発光を得ることができる。例えば、該構造を側鎖として有するビニルポリマー等がその代表例である。 【0016】 また、本発明の他の一態様は、一般式(G2)で表される有機金属錯体である。 【0017】 【化2】 ・・・ 【0018】 また、本発明の他の一態様は、一般式(G3)で表される有機金属錯体である。 【0019】 【化3】 ・・・ 【0020】 一般式(G1)、一般式(G2)、及び一般式(G3)において、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。また、Mは、第9族元素または第10族元素のいずれかを表す。 【0021】 また、一般式(G2)において、Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。 【0022】 また、一般式(G3)において、Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。また、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。 【0023】 また、一般式(G1)、一般式(G2)、及び一般式(G3)において、Mは、第9族元素または第10族元素のいずれかを表し、第9族元素としてはイリジウムが好ましく、第10族元素としては白金が好ましい。これは、より効率よく燐光発光させるためには、重原子効果の観点から、有機金属錯体の中心金属として重い金属の方が好ましいためである。 【0024】 なお、Mがイリジウムであると、スピン-軌道相互作用が大きくなる。また、Mと配位子が金属-炭素結合を有していることから、配位子のベンゾフロピリミジン誘導体への電荷の移動(三重項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移ともいう)が起こり易くなる。その結果、燐光発光のような禁制遷移が生じやすくなる上に、三重項励起寿命も短くなり、燐光性の有機金属錯体の発光効率を高める効果を奏するため好ましい。」 (1c)「【0034】 また、本発明の一態様は、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体、一般式(G2)で表される有機金属錯体、または一般式(G3)で表される有機金属錯体である。一般式(G1)で表される構造を含み、該構造において最低三重項励起状態が形成される燐光性の有機金属錯体は、発光に寄与する最低三重項励起状態が(G1)以外の骨格(他の配位子)により消光されないため、効率よく燐光を放出することができるため好ましい。このような態様を実現するためには、例えば、該構造の最低三重項励起エネルギーが、該燐光性の有機金属錯体を構成する他の骨格(他の配位子)の最低三重項励起エネルギーと同じになるか、またはそれより低くなるように、他の骨格(他の配位子)を選択すればよい。このような構成とすることで、該構造以外の骨格(配位子)がどのようなものであっても、最終的には該構造にて最低三重項励起状態が形成されるため、該構造に由来する燐光発光が得られる。したがって、高効率な燐光発光を得ることができる。例えば、該構造を側鎖として有するビニルポリマー等がその代表例である。 【0035】 【化4】 ・・・ 【0036】 【化5】 ・・・ 【0037】 【化6】 ・・・ 【0038】 一般式(G1)、一般式(G2)、及び一般式(G3)において、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。また、Mは、第9族元素または第10族元素のいずれかを表す。 【0039】 また、一般式(G2)において、Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。 【0040】 また、一般式(G3)において、Mが第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。また、Lは、モノアニオン性の配位子を表す。 【0041】 また、一般式(G3)において、モノアニオン性の配位子は、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、カルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、フェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、又は2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子であることが好ましい。特に、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート配位子が安定であり好ましい。 【0042】 なお、モノアニオン性の配位子としては、下記一般式(L1)乃至(L7)のいずれか一であることが好ましい。 【0043】 【化7】 【0044】 一般式(L1)~(L7)において、R11~R51は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、ビニル基、置換もしくは無置換の炭素数1~6のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルコキシ基、又は置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキルチオ基を表す。さらにここで言う置換基として、アリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン、スルホニル基、アミノ基などがあげられる。また、A1~A3は、それぞれ独立に、窒素、水素と結合するsp2混成炭素、または炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1~6のハロアルキル基、もしくはフェニル基のいずれかと結合するsp2混成炭素を表す。 【0045】 なお、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体、一般式(G2)で表される有機金属錯体、及び一般式(G3)で表される有機金属錯体は、燐光発光することができるため、発光素子の発光層に適用する際に有益である。したがって本発明の好ましい一態様は、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体、一般式(G2)で表される有機金属錯体、及び一般式(G3)で表される有機金属錯体である。 【0046】 特に、一般式(G1)で表される構造を含み、該構造において最低三重項励起状態が形成される有機金属錯体は、効率よく燐光を放出することができるため好ましい。このような態様を実現するためには、例えば、該構造の最低三重項励起エネルギーが、該有機金属錯体を構成する他の骨格(他の配位子)の最低三重項励起エネルギーと同じになるか、またはそれより低くなるように、他の骨格(他の配位子)を選択すればよい。このような構成とすることで、該構造以外の骨格(配位子)がどのようなものであっても、最終的には該構造にて最低三重項励起状態が形成されるため、該構造に由来する燐光発光が得られる。したがって、高効率な燐光発光を得ることができる。」 (1d)「【0048】 ≪一般式(G0)で表される4-アリールベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン誘導体の合成法≫ 下記一般式(G0)で表される4-アリールベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン誘導体は、以下のような簡便な合成スキーム(a)により合成できる。 【0049】 【化8】 【0050】 一般式(G0)において、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。 【0051】 下記合成スキーム(a)に示すように、アリールのボロン酸化合物(A1)と4-クロロベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン誘導体(A2)を反応させることにより得られる。 【0052】 【化9】 【0053】 合成スキーム(a)において、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。 【0054】 上述の化合物(A1)、(A2)は、様々な種類が市販されているか、あるいは合成可能であるため、一般式(G0)で表される4-アリールベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン誘導体は数多くの種類を合成することができる。したがって、本発明の一態様である有機金属錯体は、その配位子のバリエーションが豊富であるという特徴がある。 【0055】 ≪一般式(G2)で表される本発明の一態様の有機金属錯体の合成方法≫ 一般式(G2)で表される本発明の一態様である有機金属錯体は、下記合成スキーム(b)により合成することができる。すなわち、一般式(G0)で表される4-アリールベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウム、テトラクロロ白金酸カリウムなど)、または第9族または第10族の有機金属化合物(アセチルアセトナト錯体、ジエチルスルフィド錯体等)とを混合した後、加熱することにより、一般式(G2)で表される有機金属錯体を得ることができる。また、この加熱プロセスは、一般式(G0)で表される4-アリールベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物、または第9族または第10族の有機金属化合物とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール等)に溶解した後に行ってもよい。加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。 【0056】 【化10】 【0057】 合成スキーム(b)において、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。また、Mは、第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。 【0058】 ≪一般式(G3)で表される本発明の一態様の有機金属錯体の合成方法≫ 一般式(G3)で表される本発明の一態様である有機金属錯体は、下記合成スキーム(c-1)に示すように、一般式(G0)で表される4-アリールベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン誘導体と、ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウム、テトラクロロ白金酸カリウムなど)とを無溶媒、またはアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノールなど)単独、あるいはアルコール系溶媒1種類以上と水との混合溶媒を用いて、不活性ガス雰囲気にて加熱することにより、ハロゲンで架橋された構造を有する有機金属錯体の一種であり、新規物質である複核錯体(B)を得ることができる。加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。 【0059】 【化11】 【0060】 合成スキーム(c-1)において、Xはハロゲンを表し、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。また、Mは、第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=2であり、Mが第10族元素のときはn=1である。 【0061】 さらに、下記合成スキーム(c-2)に示すように、上述の合成スキーム(c-1)で得られる複核錯体(B)と、モノアニオン性の配位子の原料HLとを、不活性ガス雰囲気にて反応させることにより、HLのプロトンが脱離してLが中心金属Mに配位し、一般式(G3)で表される本発明の一態様である有機金属錯体が得られる。加熱手段として特に限定はなく、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。 【0062】 【化12】 【0063】 合成スキーム(c-2)において、Lはモノアニオン性の配位子を表し、Xはハロゲンを表し、R1は、水素、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基を表し、R2~R5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5~7の単環式飽和炭化水素、置換もしくは無置換の炭素数7~10の多環式飽和炭化水素、または置換もしくは無置換の炭素数6~13のアリール基を表し、Arは、置換もしくは無置換の炭素数6~10のアリーレン基を表す。また、Mは、第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=2であり、Mが第10族元素のときはn=1である。」 (1e)「【0066】 【化13】 【0067】 【化14】 【0068】 【化15】 【0069】 【化16】 【0070】 【化17】 【0071】 【化18】 【0072】 ・・・ 【0073】 なお、上記構造式(100)~(141)で表される有機金属錯体には、配位子の種類によっては立体異性体が存在しうるが、本発明の一態様の有機金属錯体にはこれらの異性体も全て含まれる。 【0074】 以上に示す本発明の一態様である有機金属錯体は、燐光を発光することが可能な新規物質である。」 (1f)「【実施例1】 【0188】 ≪合成例1≫ 本合成例1では、実施の形態1の構造式(100)で表される本発明の有機金属錯体、ビス[2-(ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン-4-イル-κN3)フェニル-κC](2,4-ペンタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(pbfpm)2(acac))の合成例を具体的に例示する。なお、Ir(pbfpm)2(acac)(略称)の構造を以下に示す。 【0189】 【化20】 【0190】 <ステップ1;4-フェニルベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:Hpbfpm)の合成> まず、4-クロロベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン2.42gとフェニルボロン酸2.19g、炭酸ナトリウム1.89g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(略称:Pd(PPh3)2Cl2)0.10g、水20mL、アセトニトリル20mLを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz100W)を60分間照射することで加熱した。その後、得られた残渣を水で吸引ろ過し、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を、ヘキサン:酢酸エチル=2:1を展開溶媒とするフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、目的のピリミジン誘導体Hpbfpmを得た(白色粉末、収率45%)。なお、マイクロ波の照射はマイクロ波合成装置(CEM社製Discover)を用いた。ステップ1の合成スキームを下記(d-1)に示す。 【0191】 【化21】 【0192】 <ステップ2;ジ-μ-クロロ-テトラキス[2-(ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン-4-イル-κN3)フェニル-κC]ジイリジウム(III)(略称:[Ir(pbfpm)2Cl]2)の合成> 次に、2-エトキシエタノール15mLと水5mL、上記ステップ1で得たHpbfpm1.32g、塩化イリジウム水和物(IrCl3・H2O)0.78gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz100W)を1時間照射し、反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣をエタノールで吸引ろ過、洗浄し、複核錯体[Ir(pbfpm)2Cl]2を得た(赤茶色粉末、収率88%)。また、ステップ2の合成スキームを下記(d-2)に示す。 【0193】 【化22】 【0194】 <ステップ3;ビス[2-(ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン-4-イル-κN3)フェニル-κC](2,4-ペンタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:Ir(pbfpm)2(acac)の合成> さらに、2-エトキシエタノール30mL、上記ステップ2で得た複核錯体[Ir(pbfpm)2Cl]21.66g、アセチルアセトン0.36g、炭酸ナトリウム1.30gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz120W)を60分間照射した。ここで更に、アセチルアセトン0.24gを加え、反応容器に、110℃、120Wの条件で1時間マイクロ波を照射することによって加熱した。溶媒を留去し、得られた残渣をエタノールで吸引ろ過した。得られた固体を水、エタノールで洗浄した。得られた固体を、ヘキサン:酢酸エチル=2:1を展開溶媒とするフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。その後、ジクロロメタンとエタノールの混合溶媒にて再結晶することにより、本発明の有機金属錯体Ir(pbfpm)2(acac)(略称)を赤色粉末として得た(収率6%)。ステップ3の合成スキームを下記(d-3)に示す。 【0195】 【化23】 【0196】 なお、上記ステップ3で得られた赤色粉末の核磁気共鳴分光法(1H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、1H-NMRチャートを図9に示す。このことから、本合成例1において、上述の構造式(100)で表される本発明の有機金属錯体Ir(pbfpm)2(acac)(略称)が得られたことがわかった。 【0197】 1H-NMR.δ(CDCl3):1.82(s,6H),5.30(s,1H),6.42(d,2H),6.79(t,2H),7.02(t,2H),7.60(t,2H),7.78(t,2H),7.85(d,2H),8.31(d,2H),8.57(d,2H),9.15(s,2H). 【0198】 次に、Ir(pbfpm)2(acac)(略称)の紫外可視線吸収スペクトル法による解析を行った。UVスペクトルの測定は紫外可視分光光度計((株)日本分光製V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.090mmol/L)を用いて、室温で測定を行った。また、Ir(pbfpm)2(acac)(略称)の発光スペクトルを測定した。発光スペクトルの測定は蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.090mmol/L)を用いて、室温で測定を行った。測定結果を図10に示す。横軸は波長、縦軸はモル吸光係数および発光強度を表す。 【0199】 図10に示す通り、本発明の有機金属錯体Ir(pbfpm)2(acac)(略称)は、610nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは赤橙色の発光が観測された。 【0200】 また、Ir(pbfpm)2(acac)(略称)の絶対量子収率を測定した。絶対量子収率の測定は絶対PL量子収率測定装置((株)浜松ホトニクス社製C9920-02)を用い、トルエンを溶媒として1.0×10-5mol/Lとなるように濃度を調整した後、室温で測定した。測定した結果、絶対量子収率は83%であり、高い発光効率を示すことがわかった。」 (1g)「【実施例3】 【0214】 本実施例では、本発明の一態様の発光素子(発光素子1)について、図13を用いて説明する。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。【0215】 【化28】 ・・・ 【0216】 以下に、本実施例の発光素子1の作製方法を示す。 【0217】 (発光素子1) まず、基板1100上に、シリコン、または酸化シリコンを含有した酸化インジウム-酸化スズ化合物(ITO-SiO2、以下ITSOと略記する。)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、用いたターゲットの組成は、In2O3:SnO2:SiO2=85:10:5[重量%]とした。また、第1の電極1101の膜厚は、110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極1101は、発光素子の陽極として機能する電極である。 【0218】 次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。 【0219】 その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。 【0220】 ・・・ 【0233】 次に、発光素子1の輝度1104cd/m2のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm2)、CIE色度座標(x、y)、輝度(cd/m2)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表2に示す。 【0234】 【表2】 ・・・ 【0237】 以上のように、本発明の一態様の有機金属錯体であるIr(pbfpm)2(acac)(略称)を発光層として用いた発光素子1は、赤色の波長領域の光を効率よく発光させることができると示された。そのため、Ir(pbfpm)2(acac)(略称)は、赤色の波長領域で発光するゲスト材料として好適であることがわかった。 【0238】 次に、上記発光素子1について、信頼性試験の評価を行った。信頼性試験の結果を図19に示す。 【0239】 図19において、信頼性試験の測定方法は、初期輝度を5000cd/m2に設定し、電流密度一定の条件で発光素子1を駆動した。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を表す。図19から、発光素子1の400時間経過後の規格化輝度は、82%であった。 【0240】 このように図19より、発光素子1は、長寿命な発光素子であることがわかった。 【0241】 以上の結果から、本発明の一態様の有機金属錯体であるIr(pbfpm)2(acac)(略称)を発光層として用いた発光素子1は、高効率、低駆動電圧、低消費電力、及び長寿命な発光素子であることがわかった。」 (4)刊行物1記載の発明 ア 刊行物1は、三重項励起状態を発光に変換できる有機金属錯体を発光中心とする発光素子に使用される有機金属錯体に関するものであることが記載されており(摘記(1b))、摘記(1a)摘記(1c)の一般式に(G1)に該当する化合物(134)、化合物(135)(摘記(1e))が、記載されている。 そして、それらの製造方法は、合成スキームとして記載されている(摘記(1d)。 したがって、刊行物1には、以下の錯体化合物の発明が記載されている(以下、それぞれ「刊行物1A発明」「刊行物1B発明」という。)。 「 (134)の化合物 」 「 (135)の化合物」 (5)対比・判断 ア 刊行物1A発明との対比 本願補正発明と刊行物1A発明を対比する。 刊行物1A発明の化合物は、本願補正発明の式(I)で表される配位子LAにおいて、環Aは6員の炭素環であり、X1、X3、X4、X5、X6、X7、X8は炭素、X2は窒素であり、X3、X4でRが環Bに縮合している場合に該当しており、Y1がO、R1が無置換、R2が無置換である場合に該当しており、金属MがIrで、任意の他の配位子が存在しない場合に該当している。 そうすると、刊行物1A発明の化合物は、本願補正発明のホモレプテフィックイリジウム化合物として一致しており、相違するところはない。 イ 刊行物1B発明との対比 本願補正発明と刊行物1B発明を対比する。 刊行物1B発明の化合物は、本願補正発明の式(I)で表される配位子LAにおいて、環Aは6員の炭素環であり、X1、X3、X4、X5、X6、X7、X8は炭素、X2は窒素であり、X3、X4でRが環Bに縮合している場合に該当しており、Y1がO、R1がアルキルのジ置換、R2が無置換である場合に該当しており、金属MがIrで、任意の他の配位子が存在しない場合に該当している。 そうすると、刊行物1B発明の化合物は、本願補正発明のホモレプテフィックイリジウム化合物として一致しており、相違するところはない。 ウ まとめ 本願補正発明は、刊行物1A発明又は刊行物1B発明と相違するところはなく、刊行物1に記載された発明である。 エ 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書5頁において、補正により、他の配位子をLB1~LB41のいずれかに限定したのに対し、引用文献1には、LB1~LB41のいずれかである配位子を有する化合物(ヘテロレプティック金属錯体)について記載も示唆もなく動機付けがない旨主張している。 しかしながら、上述のとおり、その他の配位子(LB)自体が任意の配位子である以上、引用文献1に記載された化合物134や化合物135と同一であることは明らかであり、審判請求人の上記主張は採用できない。 (6)小括 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正却下のまとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項に違反し又は同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 第2で検討したとおり、令和1年5月8日付け手続補正は却下されることとなったので、この出願の請求項1に係る発明は、平成30年10月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「【請求項1】 下記の式(I)で表される配位子LAを含む化合物を含むことを特徴とする化合物。 【化1】 (式(I)中、環Aは、5員又は6員の炭素環又は複素環であり; Rは、環Bに縮合しており、且つ式(II)で表され: 【化2】 ここで、 波線は、環Bへの結合を表し; R1及びR3は、それぞれ独立して、モノ、ジ、トリ、若しくはテトラ置換、又は無置換を表し; R2は、モノ若しくはジ置換、又は無置換を表し; X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、及びX8は、それぞれ独立して、炭素又は窒素であり; X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、及びX8のうちの少なくとも1つは、窒素であり; Y1は、BR’、NR’、PR’、O、S、Se、C=O、S=O、SO2、CR’R’’、SiR’R’’、及びGeR’R’’からなる群より選択され; R1、R2、R3、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、又は任意の2つの隣接する置換基が、任意で結合して環を形成し(前記環が更に置換されていてもよい)、 前記LAは、金属Mに配位しており、 前記LAは、任意で他の配位子と結合して、三座配位子、四座配位子、五座配位子、又は六座配位子となり、 前記Mは、任意で他の配位子に配位され、 ただし、 (i)前記化合物が、下記配位子LAを有するホモレプティックイリジウム化合物である場合、Y1は、CR’R’’ではなく; 【化3】 (ii)前記化合物が、配位子LAとして下記LA1又はLA137を2つ有するヘテロレプティックイリジウム化合物である場合、配位子LA以外の配位子Lは、下記LB42又はLB45ではない。) 【化4】 【化5】 」 第4 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の1つは、概略、以下のとおりのものと認める。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である「特開2014-7397号公報」に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 特開2014-7397号公報は、前記刊行物1である。 拒絶査定の対象となった、平成30年10月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1である本願発明は、拒絶理由通知の対象となった、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に対応する。 第5 当審の判断 当審は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。 理由は以下のとおりである。 1 引用刊行物 刊行物1:特開2014-7397号公報 2 引用刊行物の記載 刊行物1には、前記第2 2(2)イ(イ-3)に記載のとおりの記載がある。 3 刊行物1に記載された発明について 刊行物1には、前記第2 2(2)イ(イ-3)に摘記された、摘記(1a)摘記(1b)の有機金属錯体に対応したものとして、摘記(1b)、摘記(1c)、摘記(1d)、摘記(1e)から、下記の化合物(100)、化合物(101)が製造方法を伴って記載されているので、以下の刊行物1C発明及び刊行物1D発明が記載されているといえる。 「 化合物(100)」(刊行物1C発明) 「 化合物(101)」(刊行物1D発明) 4 対比・判断 (1)対比・判断 ア 対比 本願発明と刊行物1C発明とを対比すると、刊行物1C発明は、式(I)で表される配位子LAにおいて、環Aは6員の炭素環であり、X1、X3、X4、X5、X6、X7、X8は炭素、X2は窒素であり、X3、X4でRが環Bに縮合している場合に該当しており、Y1がO、R1が無置換、R2が無置換である場合に該当しており、金属MがIrで、任意の他の配位子がLB42である場合に該当し、 「下記の式(I)で表される配位子LAを含む化合物を含むことを特徴とする化合物。 【化1】 (式(I)中、環Aは、5員又は6員の炭素環又は複素環であり; Rは、環Bに縮合しており、且つ式(II)で表され: 【化2】 ここで、 波線は、環Bへの結合を表し; R1及びR3は、それぞれ独立して、モノ、ジ、トリ、若しくはテトラ置換、又は無置換を表し; R2は、モノ若しくはジ置換、又は無置換を表し; X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、及びX8は、それぞれ独立して、炭素又は窒素であり; X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、及びX8のうちの少なくとも1つは、窒素であり; Y1は、BR’、NR’、PR’、O、S、Se、C=O、S=O、SO2、CR’R’’、SiR’R’’、及びGeR’R’’からなる群より選択され; R1、R2、R3、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、又は任意の2つの隣接する置換基が、任意で結合して環を形成し(前記環が更に置換されていてもよい)、 前記LAは、金属Mに配位しており、 前記LAは、任意で他の配位子と結合して、三座配位子、四座配位子、五座配位子、又は六座配位子となり、 前記Mは、任意で他の配位子に配位され、 ただし、 (i)前記化合物が、下記配位子LAを有するホモレプティックイリジウム化合物である場合、Y1は、CR’R’’ではなく; 【化3】 」という点で一致しており、以下の点で相違している。 相違点:本願発明では、「(ii)前記化合物が、配位子LAとして下記LA1又はLA137を2つ有するヘテロレプティックイリジウム化合物である場合、配位子LA以外の配位子Lは、下記LB42又はLB45ではない。) 【化4】 【化5】 」 との特定があるのに対して、刊行物1C発明では、LA1でLB42である点 イ 相違点の判断 摘記(1c)の【0043】には、L1の置換基がR11~R13であることが記載され、【0044】には、R11~R13の選択肢の選択肢として、最初に水素、置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキル基が示されている。 そして、摘記(1d)には、具体的錯体構造式の例が刊行物1C発明である化合物(100)だけでなく、R11が炭素数4のアルキル基であるt-Bu基の例である刊行物1C化合物(102)が示されるように、当業者であれば、R11~R13を水素やエチル基やブチル基に変更することにより、「配位子LAとして下記LA1又はLA137を2つ有するヘテロレプティックイリジウム化合物である場合に、配位子LA以外の配位子Lを、LB42又はLB45」との本願発明において除外された特定の組み合わせの化合物以外の化合物とすることは、容易になし得る技術的事項であるといえる。 また、その効果に関して検討しても、刊行物1C発明においても、実施例3の【0214】~【0241】から、赤色の光を効率よく発光させることができる錯体であることが示されており、発光素子としても、高効率、低駆動電圧、低消費電力、長寿命なものであることも示されている(摘記(1g))。 したがって、本願発明の効果を当業者の予測を超えた格別顕著なものとはいえない。 さらに、本願発明は、膨大な選択肢及び種々の化合物構造を含みうるもので、わずか2つの実施例の結果から特許請求の範囲全体の効果といえない点からも、本願発明の効果を当業者の予測を超えた格別顕著なものとはいえない。 ウ 審判請求人の主張について 審判請求人は、意見書2頁において、刊行物1に記載された化合物(100)や化合物(101)や化合物(103)が本願発明の範囲外であることを指摘し、刊行物1には、本願発明に対する動機付けが全く存在しない旨主張している。 しかしながら、上記イで述べたとおり、【0043】に記載のR11~R13の選択肢である、【0044】には、選択肢の数として少なく、選択肢の最初に、ごく一般的な置換基である水素や炭素数の少ないアルキル基が記載されている。 したがって、刊行物1C発明において、R11~R13の選択肢として、選択肢として少なく、その選択肢の最初に記載されている、水素や炭素数の少ないアルキル基に変更することは、それに続く具体的化学構造式の記載や、一般的製造方法の記載があることも考慮すると、当業者の当然に検討する範囲であり、実際に化合物(102)のとおりブチル基に変更している。 上述のとおり、刊行物1C発明において、R11,R13にあたるメチル基を変更して、水素やエチル基やブチル基に変更し、本願発明に該当する化合物とすることは、当業者であれば、容易に想起できる技術的事項である。 よって請求人の上記主張を採用することはできない。 5 まとめ 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物1に記載された技術的事項に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明及び及び刊行物1に記載された技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-005914

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