2022-018928
閉鎖環境のプロパティの無線感知およびその装置
- 審判番号
- 2022-018928
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-522637外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月25日
- 審決日
- 2023年10月18日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゲート サイエンティフィック,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】高岡 亮一
- 【請求人代理人】小田 直
- 【請求人代理人】岩堀 明代
- 【請求人代理人】高橋 香元
- 分類
- P18 .121-Z (G01K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)7月17日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張2016年7月15日(以下「優先日」という。)、米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 8月30日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月11日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月26日 :原査定の謄本の送達)
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和4年3月11日に提出された手続補正書により補正された請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項2の記載は次のとおりである。
以下、請求項2に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項2】器具であって、物質を含む密閉容器内に封入可能な無線センサであって、前記無線センサは、無線送信器と前記物質のプロパティを測定するように構成されたセンサとを含み、前記センサは、比較され得る少なくとも2つの異なる温度測定要素を有し、それらが一線になって走らない場合に、前記センサが、壊れているかその較正が外れていると考えられ、前記無線センサは、前記無線センサを回転させることによって前記無線センサを攪拌器として機能させる磁石を含む、無線センサと、前記無線送信器と電子通信している無線受信器であって、前記無線送信器は、前記物質のプロパティを記述するデータを前記無線受信器に送信する、無線受信器と、を含む、器具。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由(進歩性)の概要は、次のとおりである。
理由(進歩性の欠如)
本願発明は、本願の優先日前に発行された下記の引用文献1又は引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1の記載事項
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原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2011-20024号公報)には、以下の記載がある。下線は合議体が付した。以下同様である。
ア 段落【0001】~【0012】
「【技術分野】【0001】本発明は、物質を攪拌しながら濃度調整や化学反応等を行う攪拌装置で使用されるセンサモジュールおよびこれを用いた攪拌装置に関する。【背景技術】続きを表示(全29行)【0002】従来の理化学反応工程では、流体や粉体などを、攪拌装置で攪拌しながら濃度や温度、化学反応の均一化を図り、各種分析や化学合成などを行っている。【0003】この攪拌装置には、容器に被攪拌物質と共に磁性体を内蔵した回転子(マグネチックスターラー)を入れ、回転子を回転駆動させて攪拌させる装置(例えば、特許文献1参照。)や、容器自体を回動させたり、あるいは攪拌装置に取り付けた攪拌子を回転させて容器内を攪拌させたりする装置がある。【0004】そして例えば上記回転子に、攪拌する物質の温度やpH等の特性を感知するセンサ部と、このセンサ部からの測定情報を無線で伝送する送信部とを備えることで、回転子はセンサモジュールとして機能する。【0005】このようにセンサモジュールを攪拌する物質と共に容器に投入することで、温度計やpH計などを別途挿入する必要がない。したがって、容器が小型化しても、効率よく物質の特性を測定することができる(例えば特許文献2参照。)。…(中略)…【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0007】従来のセンサモジュールを攪拌装置に用いると、センサモジュールの無線伝送効率が低くなることがある。【0008】その理由は、センサモジュールが攪拌装置内で回転し、ランダムな方向に向いてしまうからである。したがって、センサモジュールの送信部の指向性パターンのピークと受信部の配置された方向とが一致し難く、一時的に無線伝送が断絶されることがある。そしてその結果、受信部における平均受信電力が低下し、センサモジュールの無線伝送効率が低下するのである。【0009】そこで本発明は、無線伝送効率の高いセンサモジュールおよびこれを用いた攪拌装置を実現することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0010】そしてこの目的を達成するため本発明のセンサモジュールは、物質の特質特性を感知するセンサ部と、このセンサ部からの情報を無線で伝送する送信部と、センサモジュールの向きを調整する方向制御手段とを備え、この方向制御手段によってセンサモジュールの向きが安定状態になった時に、送信部の指向性パターンのピークは、センサモジュールの中心を通る水平軸に対して上方または下方に向いているものとした。【0011】また本発明の攪拌装置は、攪拌する物質の少なくとも一つの物質特性を感知するセンサ部と、このセンサ部からの情報を無線で伝送する送信部と、センサモジュールの向きを調整する方向制御手段とを有するセンサモジュールと、送信部からの信号を受信する受信部とを有し、方向制御手段によって、センサモジュールの向きが安定状態になった時に、送信部の指向性パターンのピークは、前記センサモジュールの中心を通る水平軸に対して受信部側に向いている攪拌装置とした。【発明の効果】【0012】これにより本発明は、無線伝送効率の高いセンサモジュールおよびこれを用いた攪拌装置を実現できる。」
イ 段落【0017】~【0025】、【図1】
「【発明を実施するための形態】【0017】(実施の形態1)<回転子>続きを表示(全21行)以下、本発明の実施の形態1では、センサモジュールとして、このセンサモジュール自体が回転手段を有する回転子6を例に挙げ、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1における回転子6の断面図である。図1において、回転子6は、溶液特性を感知するセンサ部1と、センサ部1からの測定情報を無線で外部に伝送する送信部2と、センサ部1及び送信部2に電力を供給する電源部3と、外部から非接触で回転駆動力を得て回転する回転手段としての磁性体4と、を備える。また、回転子6の全体は外装部5で覆われている。【0018】以下に、回転子6の各構成部材について説明する。【0019】センサ部1では、溶液や粒子などの物質の物性を測定する。本実施の形態では、溶液8の溶液特性、例えば、温度あるいはpH値を測定する。温度を測定する場合にはサーミスタあるいは熱電対などの電気変換センサを用いることが好ましい。また、pH値を電気特性として測定する電気変換センサとしては、表面のイオン濃度に応じて出力電圧が変化するFET素子などがあり、例えば、pH値が下がるほど出力電圧が低下するFET素子が知られている。このように、センサ部1には、測定値が電気的出力として取り出せる小型のセンサ素子を用いることが好ましい。また、温度を測定する場合にはセンサ部1を回転子6の表層部に配置することが好ましく、pH濃度を測定する場合には、センサ部1の検知部が表出する構造とすることが好ましい。【0020】このセンサ部1は溶液8の状態変化を速やかに測定できることが好ましい。そこで、センサ部1の溶液特性を検知する領域の一部を回転子6の表層近傍に配置することが好ましい。これに対して、センサ部1を外部に表出させることができない場合には、回転子6の表層から内部のセンサ部1へ通じる少なくとも2つの流路を設け、回転子6の回転に伴って、この流路の内部に溶液8が進入・排出する構造とすることが好ましい。センサ部1をこの流路の内部に配置することで、流路の内部に流れる溶液8の状態変化を速やかに測定できる。【0021】次に、センサ部1にて測定された温度またはpH値などの測定情報の電気信号は送信部2に送られ、ここで伝送に適した高周波信号に変換されて送信される。このときの送信手段は近距離無線通信技術を応用することが可能であり、例えば、ブルートゥース(Bluetooth)通信技術、赤外線通信技術などを用いることができる。【0022】また、電源部3は、電気二重層コンデンサあるいは小型の充電電池などを用いることができる。これらのデバイスを用いた電源部3には非接触の充電装置を用いて充電できる。その他電源部3として発電素子を用い、回転子6の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して充電してもよい。発電素子としては、圧電素子やコイルなどが挙げられる。【0023】前記構成のように、回転子6の内部にセンサ部1を内蔵し、このセンサ部1によって測定したデータを、近距離無線通信技術を用いて伝送することによって、外部から測定器を挿入する必要がなく、小型容器あるいは少量の液体であっても効率良く攪拌または反応を行うことができる攪拌装置を実現できる。さらに、外部から測定器を挿入しなくてよいため、測定器が回転運動を阻害したり、回転部と測定器が衝突することによって測定器の一部を破損したりするなどの問題の発生を回避できる。【0024】また、外部から非接触で回転駆動力を受けるための磁性体4を設けている。この磁性体4には着磁した金属磁性体、あるいはバリウムフェライトなどの金属酸化物磁性体などを所定の形状に加工して内蔵させることが好ましい。【0025】また、回転子6は、これらの内蔵した各種部材を攪拌および/または反応を行う各種液体から保護するために、全体を外装部5にて被覆した構造としている。この外装部5に用いる材料としては、多くの化学反応に対して安定なフッ素系樹脂が好ましい。また、外装部5は、回転子6の全体をモールドすることが好ましい。」
「【図1】[図:0001408549000001.jpg]」
ウ 段落【0026】~【0034】、【図2】
「【0026】<攪拌装置>次に、この回転子6を用いた攪拌装置の詳細な図2を用いて説明をする。図2は本発明の実施の形態1における攪拌装置の概念を説明するための断面図である。この攪拌装置は、攪拌又は化学反応を行う溶液8を入れた容器7内に入れた回転子6と、回転子6に外部から非接触で回転駆動力を与える回転磁石10と、回転子6から溶液8の測定情報を受信するアンテナ部14及び受信部15と、受信したデータを処理するデータ処理部16と、制御部17とを備える。なお、図2に示すように、アンテナ部14、受信部15と、データ処理部16と、制御部17とは、一つの端末18を構成してもよい。【0027】続きを表示(全19行)攪拌あるいは化学反応等を行う容器7の内部には、攪拌等を行う溶液8を入れ、その中に図1の回転子6が入れられる。この容器7としては、通常、ガラスあるいは金属製の容器7が用いられる。また、この容器7の内部に入れられる溶液8としては、攪拌又は化学反応を行う溶液、例えば、薬品などを含んだ溶液8を入れる。容器7は、加熱あるいは保温のためのホットプレート9の上に載置される。このホットプレート9によって容器7の内部の溶液8を加熱又は保温する。なお、この加熱方法は一例であり、加熱の他に冷却手段を設けて、高精度な温度制御をすることも可能である。【0028】また、ホットプレート9を挟んで、回転子6に非接触で回転駆動力を伝えるための着磁した回転磁石10を設けている。この回転磁石10は、回転軸11を介して回転駆動力を有するモータ12に連結されている。モータ12を回転させることによって回転軸11を介して回転磁石10を所定の回転数に回転させ、回転磁石10による磁場変化によって、非接触で回転子6を回転させることができる。なお、このような構成からなる攪拌装置はマグネッティックスターラと広く呼ばれており、これらの原理を用いた攪拌装置に広く用いることができる。例えば、回転磁石10の代わりにマグネットにコイルを巻き付け、そのコイルに電流を流すことによって電磁石として用いる電磁コイルを用いることも可能である。【0029】また、回転子6の構造は円柱状、多角形あるいは楕円状の丸みを帯びた形状であっても良く、適宜、所定の形状の回転子6を設計して用いることができる。【0030】なお、容器7の内部に充填した溶液8の温度を測定したい場合には、図1にて説明した温度センサ1を回転子6に内蔵しておく。この場合、回転子6から送信された温度に関する測定データを受信側であるアンテナ部14にて受信し、受信された電気信号は受信部15を介してデータ処理部16へと伝送される。この伝送された温度に関する測定データを蓄積しておくために、例えばメモリ部(図示せず)を設けておき、このメモリ部に測定データを記憶させておくことも可能である。【0031】さらに、このメモリ部には測定のためのプログラムソフトなどを記憶させておき、自動計測のための制御部としても利用することが可能である。また、適宜メモリ部の内容について検討を加え最適なメモリ部を構成することによって、効率が良い、精度の高い測定を実現できる装置を提供できる。【0032】次に、測定された温度に関する信号は制御部17へ送られ、所定の温度に加熱したいときには制御部17からホットプレート9に電流を流すように指示することによって、溶液8を加熱できる。【0033】また、溶液8のpH値を測定あるいは制御する場合には、回転子6のセンサ部1にpHセンサを内蔵しておく。内蔵されたpHセンサを介して測定された測定値を回転子6から送信し、前記方法と同様の方法によって測定データを受信し、制御部17を介して溶液8のpH値を制御できる。【0034】また、近距離無線通信は、赤外線通信技術、ジグビー通信技術、ブルートゥース(Bluetooth)通信技術などを用いることによってデータ通信を行うことができる技術として、数メートルの距離であれば小型のモジュールを利用する技術が普及してきており、これらのモジュールを用いて小型の送受信システムを構築することが可能となっている。」
「【図2】[図:0001408549000002.jpg]」
(2) 引用文献1の記載から認定した事項
引用文献1の【図2】の記載からみて、容器7の上部に蓋が当該上部を覆うように設けられていることから、容器7が密閉されていることが読み取れる。
(3) 引用発明の認定
前記(1)において摘記した事項及び前記(2)において認定した事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「 攪拌又は化学反応を行う溶液8を入れた容器7内に入れた回転子6と、回転子6に外部から非接触で回転駆動力を与える回転磁石10と、回転子6から溶液8の測定情報を受信するアンテナ部14及び受信部15と、受信したデータを処理するデータ処理部16と、制御部17とを備える攪拌装置であって、(【0026】)容器7は密閉されており、(前記(2)認定事項)回転子6は、溶液特性を感知するセンサ部1と、センサ部1からの測定情報を無線で外部に伝送する送信部2と、センサ部1及び送信部2に電力を供給する電源部3と、外部から非接触で回転駆動力を得て回転する回転手段としての磁性体4と、を備え、(【0017】)センサ部1では、溶液8の溶液特性、例えば、温度あるいはpH値を測定し、(【0019】)回転磁石10を所定の回転数に回転させ、回転磁石10による磁場変化によって、非接触で回転子6を回転させることができるマグネッティックスターラと広く呼ばれている、(【0028】)攪拌装置。」
2 引用文献3、引用文献4の記載事項及び周知技術1の認定について
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(1) 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3(特開2004-3573号公報)には、以下の記載がある。
「【0018】(第1実施形態)図1(a)は、本発明の第1実施形態の転動装置用センサを示す。第1実施形態の転動装置用センサ10は、一対の第1,第2の検出素子11,12と、一対の第1,第2の信号処理回路13,14と、異常判定回路15と、を内部に有するセンサユニット16から構成される。センサユニット16は、外部からの電磁波等の外乱を遮蔽する構造を備えていても良い。続きを表示(全17行)【0019】転動装置用センサ10は、例えば転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ10が転がり軸受の運転状態の検出を行う。【0020】第1,第2の検出素子11,12は、いずれも温度センサであり、転がり軸受の近傍に配置されることにより、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた第1,第2の出力信号をそれぞれ出力する。第1,第2の検出素子11,12から出力される出力信号は、同特性を有する電流または電圧である。第1の検出素子11は、第1の出力信号を第1の信号処理回路13に出力する。第2の検出素子12は、第2の出力信号を第2の信号処理回路14に出力する。第1,第2の検出素子11,12は、一対に設けられているが、複数対設けられても良い。ここで第1,第2の検出素子11,12は、正常時、同一温度にて同一出力を出力するように調整されている。…(中略)…【0028】図1(b)に示すように、第1,第2の検出素子11,12の出力は同特性をもつ。よって、第1,第2の検出素子11,12の両者が正常な場合、第1の信号処理回路13からの第1の出力信号の値、および第2の信号処理回路14からの第2の出力信号の値は、同一またはほぼ同一の値を示す。そのため、両者の差は、0レベルまたはほぼ0レベル(以下、0レベルと称する)となる。両者の差が0レベルであることは、第1,第2の検出素子11,12,および第1,第2の信号処理回路13,14が正常に動作していることを意味する。【0029】ここで、0レベルとは、正常時、第1の出力信号のレベルと第2の出力信号のレベルがほぼ同一となるように、第1,第2の検出素子11,12の出力レベルを調整した時に許容される調整誤差および検出素子の径年変化に依存する誤差を考慮しても差が0であると認められるものである。この調整誤差および径年変化に依存する誤差については、状況に応じ適切な値を選択すればよい。【0030】ここで、第1,第2の検出素子11,12、および第1,第2の信号処理回路13,14のうち、いずれかが動作不良を起こしている場合、第1の信号処理回路13からの第1の出力信号の値、および第2の信号処理回路14からの第2の出力信号の値は、互いに異なる値を示す。したがって、両者の差は、0レベルではない正または負のレベルとなる。【0031】差が、正または負のレベルであることは、第1,第2の検出素子11,12、および第1,第2の信号処理回路13,14のいずれかに動作不良が発生していることを意味する。異常判定回路15は、差が0レベルではない正または負のレベルとなった場合、ケーブル18を介してセンサ異常信号を計測器17に出力する。」
「【図1】[図:0001408549000003.jpg]」
(2) 引用文献4の記載事項
当審において新たに引用する引用文献4(特開昭48-62472号公報)には、以下の記載がある。
「3 発明の詳細な説明本発明は測温用サーミスタ、測光用硫化カドミウム等のごとく抵抗値が著しく変化する可変抵抗素子の断線検出回路に関するものである。…(中略)…そこで、本発明においては、サーミスタ、硫化カドミウムのごとき可変抵抗素子を、同一作動条件で同一特性のものを2個使用し、この2個の可変抵抗素子の一方が断線したとき生ずる両者の両端間電圧の差を検出することにより、可変抵抗素子の断線を良好に検出し得る断線検出回路を提供することを目的とするものである。」(1頁右欄10行~2頁左上欄14行)
(3) 周知技術1の認定
前記(1)に摘記した引用文献3の記載及び前記(2)に摘記した引用文献4の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
[周知技術1]
「温度センサを二つ使用し、それらの温度センサからの信号値を比較して両者の値が異なる値を示したときに、当該温度センサが動作不良を起こしていると判定すること。」
第5 本願発明と引用発明の対比
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(1)ア 本願発明の「器具」と「無線センサ」の関係について、本願の明細書の段落【0020】~【0021】、図面の【図2】には、次の記載がある。
「【0020】感知デバイス120を、容器110内に完全に封入することができ、感知デバイス120のいくつかの構成を、物質115内に完全にまたは部分的に浸漬可能とすることができる。感知デバイス120を、容器110によって支持し、容器110内に完全に含めることができ、あるいは、感知デバイス120は、容器110内の閉鎖環境の完全性を危険にさらすことなく容器110を横断することができる。感知デバイス120に、外部無線受信器によって無線で電力を供給し、感知デバイス120がバッテリなしで機能することを可能にすることができる。バッテリは、周期的な充電を必要とし、ある回数の充電の後に使い古される可能性があり、通常は制限された温度範囲内で最も有効に動作するので、感知デバイス120からバッテリを省略することは、デバイスの寿命を改善し、デバイス120を極端な温度に露出する可能性がある応用例に使用され得る。感知デバイス120は、バッテリを含むことができる。【0021】図2は、図1に示された横断面A-Aに沿った、システム100の構成例200を示す。システム200は、容器110内の物質115を加熱し、攪拌するシステムとすることができ、器具210および感知デバイス120を含むことができる。」
「【図2】[図:0001408549000004.jpg]」
イ 本願発明の「物質を含む密閉容器内に封入可能な無線センサ」は、段落【0020】に記載された「感知デバイス120」に対応するものと認められる。
ウ 本願発明の「器具」については、段落【0021】に「器具210」との記載があるものの、同段落には、「容器110内の物質115を加熱し、攪拌する」「システム200」は「器具210および感知デバイス120を含む」旨記載されているから、「器具210」と「感知デバイス120」は、「システム200」の構成要素としては別体のものであり、「感知デバイス120」が「器具210」に含まれないことを前提としている。
エ しかしながら、本願発明においては、「器具」は「物質を含む密閉容器内に封入可能な無線センサ」を「含む」と規定されているのであるから、本願発明の「器具」と段落【0021】の「器具210」は、「器具」という文言としては同一であるが、「無線センサ」(感知デバイス120)を含むものであるか否かという点では実質的に対応しておらず、本願発明の「器具」が、段落【0021】の「器具210」に直接対応すると考えるのは適当ではない。
オ 以上を踏まえると、本願発明の「器具」とは、「システム200」内の特定の部材を意味するものというよりもむしろ、「無線センサ」、「無線受信器」を含む総称としての「器具」を意味するものと解するのが相当である。
(2)ア 引用発明において、「回転子6」は、「攪拌又は化学反応を行う溶液8を入れた」「密閉された」「容器7内に入れ」られ、「溶液特性を感知するセンサ部1と、センサ部1からの測定情報を無線で外部に伝送する送信部2」を備え、「センサ部1では、溶液8の溶液特性、例えば、温度あるいはpH値を測定」している。
イ ここで、引用発明の「回転子6」は「センサ部1」と「センサ部1からの測定情報を無線で外部に伝送する送信部2」を備えるものであり、無線機能、センサ機能いずれも有するものであるから、本願発明の「無線センサ」に相当する。
ウ また、引用発明の「溶液8」及び「密閉された」「容器7」は、それぞれ本願発明の「物質」及び「密閉容器」に相当し、前記ア及びイを踏まえると、引用発明の「回転子6」は、「溶液8」を含む「密閉された」「容器7内に入れ」た無線センサであるといえる。
エ したがって、本願発明と引用発明は、「物質を含む密閉容器内に封入可能な無線センサ」を備える点で一致する。
(3)ア 引用発明の「送信部2」は「センサ部1からの測定情報を無線で外部に伝送する」ものであるから、本願発明の「無線送信器」に相当する。
イ また、引用発明の「溶液8」の「温度あるいはpH値」は、本願発明の「前記物質のプロパティ」に相当し、引用発明の「センサ部1」は「溶液8の溶液特性、例えば、温度あるいはpH値を測定」するものであるから、本願発明の「前記物質のプロパティを測定するように構成されたセンサ」に相当する。
ウ したがって、前記(2)イを踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記無線センサは、無線送信器と前記物質のプロパティを測定するように構成されたセンサとを含[む]」点で一致する。
(4) 引用発明において、「センサ部1」は「溶液8の溶液特性、例えば、温度あるいはpH値を測定」するものであるから、本願発明と引用発明は、「前記センサは、温度測定要素を有」する点で共通する。
(5)ア 引用発明において、「回転子6」は、「外部から非接触で回転駆動力を得て回転する回転手段としての磁性体4と、を備え」、「攪拌装置」は、「回転磁石10を所定の回転数に回転させ、回転磁石10による磁場変化によって、非接触で回転子6を回転させることができるマグネッティックスターラ」を構成するものである。
イ ここで、引用発明の「磁性体4」は本願発明の「磁石」に相当し、前記アを踏まえると、引用発明の「回転子6」は、自身を回転させることによって攪拌器として機能させることができる磁性体4を含むから、本願発明と引用発明は、「前記無線センサは、前記無線センサを回転させることによって前記無線センサを攪拌器として機能させる磁石を含む」点で一致する。
(6)ア 引用発明において、「攪拌装置」は、「回転子6から溶液8の測定情報を受信するアンテナ部14及び受信部15と、受信したデータを処理するデータ処理部16と、制御部17とを備え」ている。
イ ここで、引用発明において、「送信部2」は「センサ部1からの測定情報を無線で外部に伝送」しており、引用発明の「溶液8の測定情報を受信するアンテナ部14及び受信部15」は「送信部2」と電子通信していると認められるから、本願発明の「無線送信器と電子通信している無線受信器」に相当する。
ウ そして、前記(3)を踏まえると、引用発明における、「温度あるいはpH値」である「溶液8の溶液特性」が「測定」された結果得られる「溶液8の測定情報」は、本願発明の「物質のプロパティを記述するデータ」であるから、本願発明と引用発明は、「前記無線送信器と電子通信している無線受信器であって、前記無線送信器は、前記物質のプロパティを記述するデータを前記無線受信器に送信する、無線受信器」を備える点で一致する。
(7) 引用発明の「攪拌装置」は、「回転子6」と「アンテナ部14及び受信部15」を含む総称としての「器具」であるといえるから、前記(1)から(6)を踏まえると、本願発明と引用発明は、「無線センサと、無線受信器と、を含む、器具」の発明である点で共通する。
2 一致点及び相違点の認定
前記1の対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の(1)の一致点において一致し、後記(2)の相違点において相違する。
(1) 一致点
「 器具であって、物質を含む密閉容器内に封入可能な無線センサであって、前記無線センサは、無線送信器と前記物質のプロパティを測定するように構成されたセンサとを含み、前記センサは、温度測定要素を有し、前記無線センサは、前記無線センサを回転させることによって前記無線センサを攪拌器として機能させる磁石を含む、無線センサと、前記無線送信器と電子通信している無線受信器であって、前記無線送信器は、前記物質のプロパティを記述するデータを前記無線受信器に送信する、無線受信器と、を含む、器具。」である点。
(2) 相違点
本願発明においては、「前記センサは、比較され得る少なくとも2つの異なる温度測定要素を有し、それらが一線になって走らない場合に、前記センサが、壊れているかその較正が外れていると考えられ」る「センサ」を有するのに対し、
引用発明においては、「センサ部1」は温度を測定するものであるが、上記のような構成を備えていない点。
第6 判断
1 相違点について
(1) 「一線になって走らない」について
ア 前記相違点に係る「センサ」の有する「比較され得る少なくとも2つの異なる温度測定要素」が「一線になって走らない場合」という本願発明の構成については、特に「一線になって走らない」という表現が日本語として不自然な表現であるため、その意味するところが一見して明確であるとはいえない。
イ ここで、本願の明細書の段落【0036】の「集積回路402は、内部温度センサを有する場合もあり、この内部温度センサに対して、サーミスタ504によって測定された温度を比較することができる。」との記載、及び、段落【0048】の「コントローラ226は、2つのセンサによって検出された温度の間の差がしきい差(たとえば、±2℃)以内であるかどうかを判定する1404ことができる。」との記載を踏まえると、前記構成の「2つの温度測定要素」の「比較」とは、検出した温度を対比してその差を評価することを意味すると認められる。
ウ また、前記構成は、原文では「the sensor device has at least 2 different temperature measurement elements that can be compared and if they do not track」に対応するところ、「track」が、跡をたどる、正しい間隔を保つという辞書的意味を有することを踏まえて、前記構成に係る「track」について「一線になって走[る]」という表現を採用したものであると認められる。
エ そうすると、前記相違点に係る「センサ」の有する「比較され得る少なくとも2つの異なる温度測定要素」が「一線になって走らない場合」とは、二つの異なる温度測定要素が検出した温度を対比してその差を評価したとき、継続する所定の時間の範囲内において、その差が常に所定のしきい値以内にあることが満たされず、当該所定のしきい値を超えてしまう部分が存在することを意味すると認められる。
(2) 相違点の検討
ア 温度センサを二つ使用し、それらの温度センサからの信号値を比較して両者の値が異なる値を示したときに、当該温度センサが動作不良を起こしていると判定することは、本願の優先日において周知技術である(前記「周知技術1」を参照)。
イ ここで、引用文献1の段落【0068】に、「これによって、小型あるいは少量の液体であっても高精度に物性をセンシングし、効率良く攪拌あるいは化学反応を行うことが可能となるので、広く理化学反応の攪拌あるいは反応装置等の用途にも適用できる。」と記載されており、引用発明においては「高精度に物性をセンシングする」ことを課題とするものであるから、「高精度」な「センシング」を実現する前提として、センサの信頼性を担保するための構成を備えるべきことは当業者にとって自明であると認められる。
ウ よって、引用発明において、センサの信頼性を担保する観点から、前記周知技術1を採用する契機はあるというべきであり、引用発明のセンサ部1を二つの温度センサから構成し、それらからの信号値を比較して両者が異なる値を示したときに、当該温度センサが動作不良を起こしていると判定するように構成することは当業者であれば適宜なし得る設計事項にすぎない。
エ そして、二つの温度センサの種類について、異なる種類のものを採用することも、センサの信頼性を担保する観点から、当業者にとって自明な設計変更にすぎない。
オ ここで、周知技術1のように、「両者の値が異なる値を示したときに、当該温度センサが動作不良を起こしていると判定する」ためには、継続する所定の時間にわたってその測定値を監視し、異常値を発見した場合に動作不良との判定を行うのが通常であるから、引用発明において、前記周知技術1を採用した場合には、二つの異なる温度測定要素が検出した温度を対比してその差を評価し、継続する所定の時間の範囲内において、その差が常に所定のしきい値以内にあることが満たされず、当該所定のしきい値を超えてしまう部分が存在するか否かを判定していることは明らかであって、相違点に係る「一線になって走らない」ことに基づいて判定していることは明白である。
(3) まとめ
以上のとおり、前記相違点に係る本願発明の構成を導き出すことは当業者にとっては、格別困難なものではない。
また、本願発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
2 請求人の主張について
(1) 請求人の主張の内容
審判請求書において、請求人は、概略次の主張をしている。
引用発明においては、回転子を回転させるためにはモータが必須であることは自明であり、他方、本願発明はそのようなモータを必要とするものではない。
したがって、引用発明及び周知技術に基づいて本願発明を実現することは、当業者に過度の試行錯誤を強いることになる。
(2) 請求人の主張に対する当審の判断
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請求人は、「本願発明はそのようなモータを必要とするものではない」と主張するが、本願発明(請求項2に係る発明)において、モータを必要とするものではないことについてなんら特定されておらず、すなわち、モータを必要とするものも当然に含まれていることになるから、請求人の主張は請求項2の記載に基づかない主張である。
なお、本願の明細書の段落【0023】、【図2】には、「モータ220」を備えることが記載されているから、本願の明細書の記載を踏まえれば、むしろ、本願発明はモータを必要とするものが含まれていると解釈するのが相当である。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-018928