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特許拒絶査定不服審判

2022-018536

コンバイン

審判番号
2022-018536
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-034345外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年11月17日
審決日
2024年04月15日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (A01D) / P18 .121-WZ (A01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 34345「コンバイン」拒絶査定不服審判事件〔令和3年7月1日出願公開、特開2021-97692〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成28年12月19日に出願した特願2016-245945号の一部を令和元年11月6日に新たな特許出願(特願2019-201465号)とし、その一部を令和3年3月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

令和3年 4月 2日付:手続補正書の提出
令和4年 4月 8日付:拒絶理由通知

同年 6月16日 :意見書、手続補正書の提出

同年 8月15日付:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月23日 :原査定の謄本の送達)

同年11月17日 :審判請求書の提出
令和5年 9月22日付:拒絶理由通知
同年11月27日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

令和5年11月27日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「 【請求項1】
収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクと、前記穀粒タンクの前方に位置する運転部と、が備えられ、
前記穀粒タンクの側板が、タンク内部の貯留空間を閉塞して穀粒の貯留を可能にする貯留状態と、前記貯留空間を外部に開放して前記貯留空間へのアクセスを可能にするメンテナンス状態とに切り換え可能に設けられ、
前記穀粒タンクは、前記側板と、前記側板以外のタンク本体部と、を備え、
前記タンク本体部のうち前記側板が位置する側の側壁部に、前記穀粒タンクの上部から下部に亘るとともに前部から後部に亘るように形成された開口が備えられ、
前記側板は、前記穀粒タンクの後部に位置する縦軸芯周りで揺動可能に前記タンク本体部に支持され、かつ、前記開口を開閉するように構成されているコンバイン。」

第3 当審の拒絶理由通知書の概要

当審において通知した拒絶の理由である、令和5年9月22日付けで通知した拒絶の理由のうち、本願の請求項1に係る発明に対する理由の概略は、次のとおりである。

理由1(新規性)

本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、引用文献7に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性)

本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用文献7に記載された発明、または、引用文献2及び引用文献8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

<出願日について>

本願は、平成28年12月19日に出願した特願2016-245945号(以下「原原出願」という。)の一部を令和元年11月6日に新たな特許出願とした特願2019-201465号(以下「原出願」という。)の一部を令和3年3月4日に新たな出願としたものであるが、令和4年6月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に「前記係止部材を姿勢変更操作可能な手動操作具」と記載されているが、原原出願及び原出願の明細書に「操作レバー80」以外に、操作具に相当する記載もなく、示唆もない。

そして、請求項4が引用する請求項3には、「係止部材」について「前記フレーム体に係止して前記側板を前記タンク本体部に対して位置保持する作用姿勢と、前記フレーム体との係止状態を解除する非作用姿勢とに切り換え可能な係止部材」と記載されており、「係止部材」の構造等について特に特定はされていないから「前記係止部材を姿勢変更操作可能な手動操作具」として、前記「操作レバー80」のように「揺動」することで「係止部材」を姿勢変更操作可能とするものは記載されているものの、それ以外の「手動操作具」の態様として、リンク機構等の機械的構造、スイッチ等の電気的構造に基づく動作により「係止部材」を姿勢変更操作可能とするものが含まれるといえる。

よって、少なくとも原原出願及び原出願のそれぞれの当初明細書等に記載されていない事項を含むものであり、分割出願の実体的要件を満たさないことになるから、本願の出願日は原原出願及び原出願の出願日に遡及せず、令和3年3月4日と認められる。

よって、請求項1に係る発明は、原原出願の公開公報である引用文献7に記載された発明であり、または、引用文献7に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものである。

<引用文献一覧>

2 実願平1-109805号(実開平3-50839号)のマイクロフィルム

7 特開2018-99048号公報

8 実願昭57-32946号(実開昭58-135238号)のマイクロフィルム

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献2について

(1) 引用文献2の記載事項

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引用文献2には、次の記載がある。

ア 6頁14行~11頁8行

「〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第2図に、本考案のグレンタンク構造を備えたコンバインを示している。

このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置(1),(1)を備えた走行車体(2)と、この走行車体(2)の前部に取付けられた刈取前処理部(3)と、前記走行車体(2)上に搭載された脱穀装置(4)及びグレンタンク(5)とにより構成されている。

第1図に示すように、脱穀装置(4)とグレンタンク(5)とは、左右方向で隣接配置した状態となっている。そして、脱穀装置(4)において一番スクリュー(図示せず)と連動連結されて、穀粒をグレンタンク(5)内に揚送するための揚送スクリュー(7)を、グレンタンク(5)と脱穀装置(4)と間の空間に立設配置してある。また、脱穀装置(4)における二番スクリュー(8)の搬送終端でグレンタンク(5)に臨むがわに二番物を再処理するため扱室がわに還元するスロワー(9)を配設してあり、このスロワー(9)のグレンタンク(5)に臨むがわには、スロワー(9)の羽根(9a)等を点検するための開口(10)を形成してあり、この開口(10)を開塞し得る蓋(11)を着脱自在に設けてある。

次に、グレンタンク(5)について説明する。

第1図に示すように、グレンタンク(5)の底部は、下方がわほど左右の中央箇所寄りにすぼむ状態に谷形に傾斜形成してあり、底部中央箇所には、穀粒を搬出するための前後方向に沿った搬送スクリュー(12)を付設してある。そして、この搬送スクリュー(12)の終端から穀粒を受け継いで外部へ搬出するためのアンローダ装置(13)を、縦軸芯周りに回動自在及び横軸芯周りに起伏自在に構成して、グレンタンク(5)後部に付設してある。さらに、第1図に示すように、断面形状が山形の穀粒案内部材(14)を、搬送スクリュー(12)に沿う状態でその上方箇所に設けて、搬送スクリュー(12)へ穀粒が大量に流下しないようにしてある。

グレンタンク(5)の側壁のうち、脱穀装置(4)に面した内側壁(15)と相対向した外側壁(16)には、人の出入りが可能な長方形のメンテナンス用の開口(17)を形成してあり、この開口(17)には、その上端辺における蝶番構造(A)で外側壁(16)に対し前後向き軸心周りで揺動自在に連結した開閉蓋(18)を設けてあり、この開閉蓋(18)の揺動操作によって開口(17)は開閉自在となっている。尚、開口(17)を開放した状態で開閉蓋(18)の姿勢保持がなされるように、開閉蓋(18)に保持部材(19)を設けてあるとともに、開口(17)を閉止した状態で開閉蓋(18)が不当に開くことがないように、閉止姿勢の開閉蓋(18)を位置固定するロック部材(20)を備えている。

イ 9頁9行~11頁8行

「一方、第1図に示すように、グレンタンク(5)の前記内側壁(15)には、前記スロワー(9)及び揚送スクリュー(7)に対して作業者がグレンタンク(5)の内がわから臨むことのできるメンテナンス用の開口(21)を形成してある。この開口(21)は、ほぼ長方形に形成され、かつ、開口(21)の下端がわは、グレンタンク(5)の底部の脱穀装置(4)寄りの傾斜面(22)にまで入り込んだ状態に形成してある。この開口(21)には、その下端辺における蝶番構造(B)で傾斜面(22)に前後向き軸芯(P)周りで揺動自在に連結した揺動壁(23)を設けてあり、この揺動壁(23)の揺動操作による姿勢変更で開口(21)を開閉自在としている。尚、開口(21)を閉止した状態の揺動壁(23)は、その上端部を、第1図に示すように、内側壁(15)上部にボルト締結される押え部材(24)で止められることによって位置固定されるとともに、揺動壁(23)の下端部は、開口(21)の閉止状態で、穀粒を流下させる前記傾斜面(22)の脱穀装置(4)寄り部分をも構成している。
そして、開口(21)を開放状態とするときは、第1図に2点鎖線で示すように、揺動壁(23)を搬送スクリュー(12)及び穀粒案内部材(14)の上方を覆う姿勢で、前記外側壁(16)の開口(17)の下端辺上に載置させる。こうすることによって、揺動壁(23)は、開口(17)の下端辺と蝶番構造(B)とにより支持されて、グレンタンク(5)の左右間にわたって架設された状態となる。よって、前記スロワー(9)や揚送スクリュー(7)等に対するメンテナンス作業を行うに際して、揺動壁(23)は、作業者の踏板として用いることができるとともに、作業者が搬送スクリュー(12)や穀粒案内部材(14)等を踏み付けないようにするための保護部材にもなっている。」

ウ 第1図及び第2図

「
[図:0001411768000001.jpg]
」

エ 図面から看取できる事項

前記アを踏まえると、前記イの第2図から次の事項が看取できる。

「グレンタンク(5)の前方に運転部が位置すること。」

(2) 引用文献2に記載された発明

前記(1)より、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>

「走行車体(2)上に搭載された脱穀装置(4)、グレンタンク(5)及びグレンタンク(5)の前方に位置する運転部を備えたコンバインであって、
脱穀装置(4)において一番スクリューと連動連結され、穀粒をグレンタンク(5)内に揚送するための揚送スクリュー(7)を、グレンタンク(5)と脱穀装置(4)と間の空間に立設配置され、
グレンタンク(5)の側壁のうち、外側壁(16)には、人の出入りが可能な長方形のメンテナンス用の開口(17)を形成してあり、この開口(17)には、その上端辺における蝶番構造(A)で外側壁(16)に対し前後向き軸心周りで揺動自在に連結した開閉蓋(18)を設けてあり、この開閉蓋(18)の揺動操作によって開口(17)は開閉自在となっており、開口(17)を開放した状態で開閉蓋(18)の姿勢保持がなされるように、開閉蓋(18)に保持部材(19)を設けてあるとともに、開口(17)を閉止した状態で開閉蓋(18)が不当に開くことがないように、閉止姿勢の開閉蓋(18)を位置固定するロック部材(20)を備えているコンバイン。」

2 引用文献8について

(1) 引用文献8の記載事項

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引用文献8には、次の記載がある。

ア 2頁8~19行

「本件考案はこの溢流した穀粒の処理において、集めたり、袋に入れたりするのが面倒なので、穀粒タンクの上面で揚穀筒とは逆の外側の位置に溢流穀粒の戻し用の開口を穀粒タンク内の点検用開口と兼用にして設け、座席に座つたオペレーターが、座席の位置から手を伸ばせば溢流穀粒をタンクの外側でまだ少し余裕のある部分に戻すことができるように点検用兼戻し用の開口を設けたものである。蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設けて、座席側のオペレーターが開けやすく、かつ溢流穀粒を流し込み易いようにしたものである。」

イ 第1図

「
[図:0001411768000002.jpg]
」

(2) 引用文献8に記載された技術的事項

前記(1)より、引用文献8には、次の技術的事項(以下「引用文献8技術的事項」という。)が記載されている。

<引用文献8技術的事項>

「穀粒タンクの上面で揚穀筒とは逆の外側の位置に溢流穀粒の戻し用の開口を穀粒タンク内の点検用開口と兼用にして設け、座席に座つたオペレーターが、座席の位置から手を伸ばせば溢流穀粒をタンクの外側でまだ少し余裕のある部分に戻すことができるように点検用兼戻し用の開口を設け、蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設けて、座席側のオペレーターが開けやすく、かつ溢流穀粒を流し込み易いようにすること。」

第5 対比・検討・判断

1 出願日について

令和5年11月27日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項4及び5は次のとおりである。

「 【請求項4】
前記複数の縦向き支持体のうち前記側板の揺動端側に位置する2つの前記縦向き支持体と、前記タンク本体部の前記側板側の側壁部とによって囲われた収納用領域に、前記係止部材を姿勢変更操作可能な操作レバーが備えられている請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記収納用領域を構成する前記タンク本体部の前記側壁部に、前記収納用領域を外方に臨む状態で開放する操作用開口が形成され、
前記操作用開口を閉塞する閉状態と開放する開状態とに切り換え可能な蓋体が備えられ、
前記操作レバーは、前記蓋体を前記開状態に切り換えた状態で、前記操作用開口を通して外方側から操作可能である請求項4に記載のコンバイン。」

よって、本件補正により、請求項4及び5において「手動操作具」に代えて「操作レバー」と特定され、原原出願及び原出願の明細書に記載されたものとなった。

したがって、本願は、分割出願の実体的要件を満たし、本願の出願日は原出願及び原原出願の出願日に遡及し、平成28年12月19日と認められる。

以上のことから、引用文献7は、本願の出願日後に発行されたものとなるから、前記第3に示した当審において通知した拒絶の理由のうち、理由2において請求項1に係る発明は、引用文献2及び引用文献8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとしたことを対象として、以下検討する。

2 対比

本願発明と引用発明を対比する。

(1) 引用発明の「グレンタンク(5)」は、「脱穀装置(4)において一番スクリューと連動連結され、穀粒をグレンタンク(5)内に揚送するための揚送スクリュー(7)を、グレンタンク(5)と脱穀装置(4)と間の空間に立設配置され」るタンクであるから、本願発明の「収穫した穀粒を貯留する穀粒タンク」に相当する。

(2) 引用発明の「グレンタンク(5)の前方に位置する運転部」は、本願発明の「前記穀粒タンクの前方に位置する運転部」に相当する。

(3) 引用発明の「開閉蓋(18)」は、「人の出入りが可能な長方形のメンテナンス用の開口(17)を形成してあり、この開口(17)には、その上端辺における蝶番構造(A)で外側壁(16)に対し前後向き軸心周りで揺動自在に連結した開閉蓋(18)を設けて」あり、「開口(17)を開放した状態で開閉蓋(18)の姿勢保持がなされるように、開閉蓋(18)に保持部材(19)を設けてあるとともに、開口(17)を閉止した状態で開閉蓋(18)が不当に開くことがないように、閉止姿勢の開閉蓋(18)を位置固定するロック部材(20)を備えている」ものであるから、本願発明の「前記穀粒タンクの側板が、タンク内部の貯留空間を閉塞して穀粒の貯留を可能にする貯留状態と、前記貯留空間を外部に開放して前記貯留空間へのアクセスを可能にするメンテナンス状態とに切り換え可能に設けられ」るものに相当する。

(4) 引用発明の「グレンタンク(5)」は、「グレンタンク(5)の側壁のうち、外側壁(16)には、人の出入りが可能な長方形のメンテナンス用の開口」と、「この開口(17)には、その上端辺における蝶番構造(A)で外側壁(16)に対し前後向き軸心周りで揺動自在に連結した開閉蓋(18)を設け」られたタンク構造のものであるから、本願発明の「前記穀粒タンクは、前記側板と、前記側板以外のタンク本体部と、を備えられ、前記タンク本体部のうち前記側板が位置する側の側壁部に、前記穀粒タンクの上部から下部に亘るとともに前部から後部に亘るように形成された開口が備えられ」ることに相当する。

(5) 本願発明の「前記側板は、前記穀粒タンクの後部に位置する縦軸芯周りで揺動可能に前記タンク本体部に支持され、かつ、前記開口を開閉するように構成されている」ことと、引用発明の「開閉蓋(18)」は、「グレンタンク(5)の側壁のうち、外側壁(16)には、人の出入りが可能な長方形のメンテナンス用の開口(17)を形成してあり、この開口(17)には、その上端辺における蝶番構造(A)で外側壁(16)に対し前後向き軸心周りで揺動自在に連結した開閉蓋(18)を設け」たことは、「前記側板は、軸芯周りで揺動可能に前記タンク本体部に支持され、かつ、前記開口を開閉するように構成されている」点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明は、次の一致点で一致し、相違点1で相違する。

<一致点>

「収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクと、前記穀粒タンクの前方に位置する運転部と、が備えられ、
前記穀粒タンクの側板が、タンク内部の貯留空間を閉塞して穀粒の貯留を可能にする貯留状態と、前記貯留空間を外部に開放して前記貯留空間へのアクセスを可能にするメンテナンス状態とに切り換え可能に設けられ、
前記穀粒タンクは、前記側板と、前記側板以外のタンク本体部と、を備え、
前記タンク本体部のうち前記側板が位置する側の側壁部に、前記穀粒タンクの上部から下部に亘るとともに前部から後部に亘るように形成された開口が備えられ、
前記側板は、軸芯周りで揺動可能に前記タンク本体部に支持され、かつ、前記開口を開閉するように構成されているコンバイン。」

<相違点1>

本願発明の「前記側板」は、「前記穀粒タンクの後部に位置する縦軸芯周りで揺動可能に前記タンク本体部に支持され」たものであるのに対し、引用発明の「開閉蓋(18)」は、「グレンタンク(5)の側壁のうち、外側壁(16)には、人の出入りが可能な長方形のメンテナンス用の開口(17)を形成してあり、この開口(17)には、その上端辺における蝶番構造(A)で外側壁(16)に対し前後向き軸心周りで揺動自在に連結した開閉蓋(18)を設け」られている点。

3 検討・判断

(1) 相違点1について

ア 引用文献8技術的事項について

引用文献8技術的事項において、「蓋」及びこれにより覆われる「開口」は、「穀粒タンク内の点検用」兼「溢流穀粒の戻し用」のものであり、「蓋」及び「開口」により、「蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設けて、座席側のオペレーターが開けやすく、かつ溢流穀粒を流し込み易いようにしたもの」である。

このことから、「穀粒タンク内の点検用」兼「溢流穀粒の戻し用」の「開口」は、「穀粒タンク内の点検用」の「開口」の機能・作用として「蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設けて、座席側のオペレーターが開けやすく」したものであり、「溢流穀粒の戻し用」の「開口」の機能・作用として、「蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設けて」、「溢流穀粒を流し込み易いようにしたもの」と互いに分離して理解することができるものである。

また、「開口」の用途である「穀粒タンク内の点検用」と「溢流穀粒の戻し用」は、ともに「穀粒タンク」に関するものであるが、用途として密接な関係があるとはいえない。

そうすると、前記の2つの機能において互いの用途の密接性に寄与するものではないから、互いに独立した機能として認識することができる。

そして、各機能に関する技術について、他と独立して活用したり、他のものに適用することは、当業者の通常の創作活動の範囲に属することである。

以上のことから、引用文献8には「穀粒タンク内の点検用開口を、蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設けて、座席側のオペレーターが開けやすくすること」が記載されているものと認識することができる。

イ 引用文献8技術的事項の引用発明への適用について

グレンタンク(5)の前方に位置する運転部を備えたコンバインである引用発明においても、運転部のオペレータにとって「メンテナンス用の開口(17)」に設ける「開閉蓋(18)」の操作性をよくすることは、オペレータが装置の操作性をよりよくしようと指向する一般的な課題からみて、引用発明においても当然有する課題である。

よって、「開閉蓋(18)」と「外側壁(16)」との連結部として、「前後向き軸心周りで揺動自在に連結」することに代えて、引用文献8技術的事項のように、「蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設け」るようにして、本願発明の相違点1に係る構成のようにすることは、当業者であれば、容易になし得たことである。

(2) 審判請求人の主張について

ア 審判請求人の主張の概要

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審判請求人は、令和5年11月27日に提出された意見書の3.(2)において概略次の主張をしている。

(ア) 主張1:阻害要因

審判請求人は、引用発明には本願発明1への想到を阻害する阻害要因があるため、本願発明1への想到は容易ではないと考えます。

引用文献2の第1図には、揺動壁(23)が、外側壁(16)の開口(17)の下端辺上に載置されて、揺動壁(23)の先端(上端)が開口(17)からグレンタンク(5)の外部へ突出している状態が示されています。

このような構造を有する引用文献2のコンバインにおいて、開閉蓋(18)を、本願発明1のように「穀粒タンクの後部に位置する縦軸心周りで揺動可能」に支持されたものに変更すると、開閉蓋(18)が水平方向に開くものとなります。そうすると、揺動壁(23)を下に開く際には、開閉蓋(18)を90度以上大きく後方へ開いておかないと、揺動壁(23)が半開きの開閉蓋(18)に当たってしまう危険性が生じます。また、揺動壁(23)が下に開いた状態で、風や作業員の不注意により開閉蓋(18)が閉じてしまうと、開閉蓋(18)が揺動壁(23)に接触し、破損や故障が生じる危険性があります。このような不都合が生じ得るような改変を、引用発明に接した当業者が行うことは考え難いため、引用発明から本願発明1への想到は容易ではないと思量します。

(イ) 主張2:引用発明への引用文献8技術的事項の適用について

引用文献8の1頁4行~2頁19行の記載から、引用文献8のコンバインでは、安全弁開口から溢れた穀粒を穀粒タンクに戻す為に、点検用開口兼戻し用の「開口」、及びその「蓋」が、穀粒タンクの上面に設けられていると認められます。そして「蓋」の開ける方向については、座席に座ったオペレータが、座席の位置から手を伸ばして穀粒を流し込みやすいように、進行方向後方に枢支部を設けたと認められます。

一方、引用文献2の「開閉蓋(18)」は、グレンタンク(5)の上面ではなく「外側壁(16)の開口(17)」に設けられています。引用文献2の開口(17)及び開閉蓋(18)は、溢れた穀粒の戻しに用いることはできません(穀粒が側壁から地面に落ちてしまうため)。そもそも引用文献2のコンバインは、穀粒が溢れる安全弁開口を備えません。

このように溢流穀粒と縁遠い引用文献2と、穀粒タンクの上面に溢れた穀粒を戻しやすくするための引用文献8とに接した当業者が、引用文献8に記載された発明を引用文献2に記載された発明、すなわち引用発明に適用することは無いと考えます。

また、引用文献8に記載された発明において、蓋の枢支部が進行方向後方に設けられたのは、溢流穀粒の流し込みを座席から容易に行う為であって、「穀粒タンクの点検」の為ではありません。溢流穀粒の流し込みのための引用文献8技術的事項を、溢流穀粒の流し込みを想定していない引用発明に適用する動機付けは存在しないと考えます。

イ 審判請求人の主張についての見解

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(ア) 主張1について

審判請求人は、引用文献2の第1図から、「揺動壁(23)が半開きの開閉蓋(18)に当たってしまう危険性が生じ」ること、「揺動壁(23)が下に開いた状態で、風や作業員の不注意により開閉蓋(18)が閉じてしまうと、開閉蓋(18)が揺動壁(23)に接触し、破損や故障が生じる危険性があり」ることから「このような不都合が生じ得るような改変を、引用発明に接した当業者が行うことは考え難いため、引用発明から本願発明1への想到は容易ではない」と主張するが、引用文献2(第4の1(1)を参照。)に記載された「グレンタンク(5)の前記内側壁(15)に」、「前記スロワー(9)及び揚送スクリュー(7)に対して作業者がグレンタンク(5)の内がわから臨むことのできるメンテナンス用の開口(21)を形成して」あり、「この開口(21)には、その下端辺における蝶番構造(B)で傾斜面(22)に前後向き軸芯(P)周りで揺動自在に連結した揺動壁(23)を設けて」あり、「メンテナンス用の開口(21)」を「開放状態」としたとき、「揺動壁(23)」を「外側壁(16)の開口(17)の下端辺上に載置させ」るから、第1図のとおり、「揺動壁(23)」の一部が外側に突出するものである。

そして、明細書の記載及び第1図から前記「開放状態」において、「前後向き軸心周りで揺動自在に連結した開閉蓋(18)」は、「保持部材(19)」により下方に下がらないように支持されていることを理解でき、風等の外力により「保持部材(19)」の支持力を超える力が加わると「開閉蓋(18)」が下方に揺動し、「揺動壁(23)」に接触し、破損や故障が生じる可能性があるといわざるを得ないものであり、「開閉蓋(18)」の揺動方向が変更されることに依存することなく発生する「危険性」といえる。

また、「開閉蓋(18)」である以上、開閉時に不測の事態により破損や故障が生じる可能性があることは構造上不可避といえ、その範囲で予測可能な「危険性」にすぎない。

なお、引用発明において、「開閉蓋(18)」と「外側壁(16)」との連結部として、「前後向き軸心周りで揺動自在に連結」することに代えて、引用文献8技術的事項のように、「蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設け」るように設計する際に、併せて「保持部材(19)」の位置も同様に変更して、破損や故障が生じる可能性を低くするように設計することも、当業者の通常の創作活動の範囲でなし得る程度のことである。

そうすると、前記「危険性」によって、「開閉蓋(18)」の「揺動」する方向を変更することの阻害要因を有するとまでいえず、また、引用文献2において、「開閉蓋(18)」を「前後向き軸心周りで揺動自在」としなくてはならない特段の事情等の記載や示唆もなく、技術常識ともいえない。

よって、引用発明の「外側壁(16)に対し前後向き軸心周りで揺動自在に連結した開閉蓋開閉蓋」の揺動方向を変更する阻害要因があるといえず、前記(1)に示したとおり、引用文献8記載技術を適用し、「開閉蓋(18)」の「揺動」する方向を変更するようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

よって、主張1は採用できない。

(イ) 主張2について

前記(1)に示したとおり、引用文献8の「蓋」及びこれにより覆われる「開口」は、「穀粒タンク内の点検用」兼「溢流穀粒の戻し用」であるが、「穀粒タンク内の点検用」の「開口」の機能・作用として「蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設けて、座席側のオペレーターが開けやすく」したものであり、「溢流穀粒の戻し用」の「開口」の機能・作用として、「蓋の開ける方向としては進行方向後方に枢支部を設けて」、「溢流穀粒を流し込み易いようにしたもの」と互いに分離して理解することができ、各機能に関する技術について、他と独立して活用したり、他のものに適用することは、当業者の通常の創作活動の範囲に属することであるから、「兼用」であることを理由に引用文献8技術的事項を引用発明に適用する動機付けは存在しないとする主張2は採用できない。

(ウ) 審判請求人の主張のまとめ

よって、主張1及び主張2は、前記(1)の判断を左右するものでなく採用できない。

(3) 本願発明のまとめ

よって、本願発明は、引用発明及び引用文献8技術的事項に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たことである。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-018536

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