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特許拒絶査定不服審判

2022-018522

クラッドワイヤ及びクラッドワイヤの製造方法

審判番号
2022-018522
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-218799
請求日
2022年11月17日
審決日
2023年10月04日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
  • 【請求人代理人】林 一好
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 濱本 禎広
  • 審判官 田邉 英治
分類
P18 .575-Z (G01R) / P18 .121-Z (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-218799「クラッドワイヤ及びクラッドワイヤの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月30日出願公開、特開2021-124499〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年12月28日(パリ条約による優先権主張2020年2月4日、欧州特許庁)の外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。なお、以下、2020年2月4日を「優先日」という。 令和3年 3月17日 :翻訳文の提出 令和4年 2月28日付け:拒絶理由通知書 同年 5月12日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月13日 :原査定の謄本の送達) 同年11月17日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年12月 7日 :前置報告書 令和5年 2月14日 :上申書の提出 第2 令和4年11月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年11月17日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和4年11月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和4年5月12日にされた手続補正後をいう。)の、請求項1の記載を引用する請求項4が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。 (1) 本件補正前の請求項1及び請求項4 「【請求項1】 試験針又は摺動接点を製造するためのクラッドワイヤ(1、11、21)であって、 ロジウム又はロジウム系合金から作製されるワイヤコア(2、12、22)と、 銅若しくは銀若しくはアルミニウム、又は銅系合金若しくは銀系合金若しくはアルミニウム系合金から作製される内側クラッド部(3、13、23)であって、前記内側クラッド部(3、13、23)は、前記ワイヤコア(2、12、22)を少なくとも2つの反対の側で覆うか又は前記ワイヤコア(2、12、22)を完全に包み囲む内側クラッド部(3、13、23)と、 前記ワイヤコア(2、12、22)と前記内側クラッド部(3、13、23)との間に配置される金又は金系合金から作製される接着促進層(5、15、25)と、 前記内側クラッド部(3、13、23)の材料よりも大きい硬度を有する金属又は金属合金から作製される外側クラッド部(4、14、24)であって、前記外側クラッド部(4、14、24)は前記内側クラッド部(3、13、23)を包み囲む外側クラッド部(4、14、24)と を有するクラッドワイヤ(1、11、21)。」 「【請求項4】 拡散保護層(6、16、26)が、前記内側クラッド部(3、13、23)と前記外側クラッド部(4、14、24)との間に拡散障壁として配置される ことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のクラッドワイヤ(1、11、21)。」 (2) 本件補正後の請求項1 「【請求項1】 試験針又は摺動接点を製造するためのクラッドワイヤ(1、11、21)であって、 ロジウム又はロジウム系合金から作製されるワイヤコア(2、12、22)と、 銅若しくは銀若しくはアルミニウム、又は銅系合金若しくは銀系合金若しくはアルミニウム系合金から作製される内側クラッド部(3、13、23)であって、前記内側クラッド部(3、13、23)は、前記ワイヤコア(2、12、22)を少なくとも2つの反対の側で覆うか又は前記ワイヤコア(2、12、22)を完全に包み囲む内側クラッド部(3、13、23)と、 前記ワイヤコア(2、12、22)と前記内側クラッド部(3、13、23)との間に配置される金又は金系合金から作製される接着促進層(5、15、25)と、 前記内側クラッド部(3、13、23)の材料よりも大きい硬度を有する金属又は金属合金から作製される外側クラッド部(4、14、24)であって、前記外側クラッド部(4、14、24)は前記内側クラッド部(3、13、23)を包み囲む外側クラッド部(4、14、24)と を有し、 前記外側クラッド部(4、14、24)を構成する原子及びイオンが前記内側クラッド部(3、13、23)に移行することを防止又は妨害する拡散保護層(6、16、26)が、前記内側クラッド部(3、13、23)と前記外側クラッド部(4、14、24)との間に拡散障壁として配置される、クラッドワイヤ(1、11、21)。」 2 補正の目的 本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項4に対応し、本件補正前の請求項4に記載された「拡散保護層(6、16、26)」について、「前記外側クラッド部(4、14、24)を構成する原子及びイオンが前記内側クラッド部(3、13、23)に移行することを防止又は妨害する」ものに限定するものである。 そして、本件補正前の請求項4に記載された発明のうち請求項1の記載を引用する部分の発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 (2) 各引用文献に記載された事項並びに引用発明及び技術常識の認定 ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に発行された文献である特表2018-501490号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体によるものであり、以下同様である。 a 【特許請求の範囲】 「【請求項1】 コンタクトチップとコンタクトヘッド(30A、30B)との間に長手方向に従って本質的に延在する本体と、 互いに平行である少なくとも1つの内側層またはコア(32)と第1の内側コーティング層(33)との重ね合わせを含む少なくとも1つの多層構造(31)と、 前記多層構造(31)を完全に被覆し、前記コア(32)を実現している材料よりも硬度が高い材料で作られ、前記コア(32)及び前記第1の内側コーティング層(33)を含む前記多層構造(31)のエッジ部分(34A、34B)をも被覆する外側コーティング層(35)とを含む、 電子デバイスをテストするための装置のテストヘッド用のコンタクトプローブ(30)。」 b 【0001】 「【0001】 本本発明はテストヘッド用コンタクトプローブに関する。本発明は特に、しかしながら非限定的に、ウエハ上に集積された電子デバイスをテストするための装置のテストヘッド用のコンタクトプローブに関し、以下の記述は、説明の簡略化のみを目的として、この応用分野を参照して行われる。」 c 【0052】~【0067】、【図3】、【図4-1】、【図4-2】 「【図面の簡単な説明】 【0052】 【図1】従来技術による垂直プローブヘッドのコンタクトプローブを概略的に示す。 【図2】従来技術によるコンタクトプローブの代替的実施形態の断面を概略的に示す。 【図3】本発明の一実施形態によるコンタクトプローブを概略的に示す。 【図4ー1】本発明の様々な実施形態によるコンタクトプローブの拡大された断面を概略的に示す。 【図4ー2】本発明の様々な実施形態によるコンタクトプローブの拡大された断面を概略的に示す。 【発明を実施するための形態】 【0053】 上記の図、特に図3では、ウエハ上に組み込まれた電子デバイスをテストするための装置のテストヘッドのためのコンタクトプローブについて説明され、30で全般的に示されている。 【0054】 これらの図は、本発明によるコンタクトプローブの概略図を表し、一定の縮尺で描かれているのではなく、本発明の重要な特徴を強調するように描かれていることに留意されたい。これらの図では、様々な部分は概略的に示され、それらの形状は、所望の適用例に応じて変化することが可能である。 【0055】 コンタクトプローブ30は、従来通りであるので図示されていないテスト対象デバイスのコンタクトパッドに当接しやすい少なくとも1つのコンタクトチップ30Aを含む。 【0056】 コンタクトプローブ30はまた、図3の例に示されているように、コンタクトチップ30Aに関して同じまたは異なる形状を有する、コンタクトヘッド30Bを含むことができる。コンタクトヘッド30Bは、ブロックされないプローブの場合のように、スペーストランスフォーマのコンタクトパッドに当接するか、または、支持体から突出するプローブの場合のように、セラミック支持体に締結固定されること、例えばはんだ付けされることを意図され得る。 【0057】 コンタクトプローブ30はまた、コンタクトチップ30Aとコンタクトヘッド30Bとの間の長手方向に従って本質的に延長された本体30Cを備える。 【0058】 本発明の一態様によれば、コンタクトプローブ30は多層構造31を備え、多層構造31は、今度は、図3に示されている平面πにおいて取られた断面P-Pを表す図4(A)~図4(E)に概略的に示されているように、第1の内側コーティング層33によって、特に例えば金Auから作られた高導電性層によって2つの反対側においてコーティングされた、第1の材料、特にニッケルタングステンNiWから作られた少なくとも1つの内側層32またはコアを含む。 【0059】 より詳細には、図4(A)~図4(E)に示されている例では、第1の内側コーティング層33は、コア32の第1の側32Aに、例えば図4(A)~図4(E)の局所参照システムでは上側に配置された第1の部分33Aを含み、またコア32の第2の側32Bに、例えば下側に第2の部分33Bを含む。 【0060】 したがって、多層構造31は、少なくとも1つの第1のエッジ部分34Aおよび第2のエッジ部分34Bを有し、ここで、コア32、また第1の内側コーティング層33が露出する。それらのエッジ部分34A、34Bは、例えば、多層シートから開始するコンタクトプローブ30をレーザ切断して生じることができることが当業者には明らかである。 【0061】 有利には本発明によれば、コンタクトプローブ30はまた、コンタクトプローブ30自体を完全に被覆してコア32および第1の内側コーティング層33の露出部分を被覆する、外側コーティング層35、特に、例えば、ロジウムRdから作られた高硬度層を含む。 【0062】 図4(B)に示されている代替実施形態では、コンタクトプローブ30の多層構造31は、第1の内側コーティング層33を被覆する第2の内側コーティング層36を含むことができる。特に、第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aは、コア32の第1の側32Aに常に配置される第2の内側コーティング層36の第1の部分36Aによって被覆される。 【0063】 この図の例では、第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aは、まさに第1の側32Aにおいて、コア32に接触しており、第2の内側コーティング層36の第1の部分36Aは、第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aに接触している。 【0064】 同様に、第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bは、コア32の第2の側32Bに常に配置される第2の内側コーティング層36の第2の部分36Bによって被覆される。 【0065】 さらに、図4(C)に示されているように、多層構造31はまた、コア32と第1の内側コーティング層33との間に配設され、コア32上の第1の内側コーティング層33の接着を可能にしやすい材料から作られた、接着膜37を含む。特に、接着膜37は、コア32と第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aとの間に配置された第1の部分37Aと、コア32と第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bとの間に配置された第2の部分37Bとを含む。 【0066】 図4(D)に概略的に示されている、さらなる代替実施形態によれば、多層構造31は、コア32の第1の側32Aおよび第2の側32Bにおいて任意の数で交互に配置された、複数の第1の内側コーティング層33iおよび第2の内側コーティング層36iを含むことができる。当該代替実施形態によれば、多層構造31は、コア32と第1の内側コーティング層33との間、及び第2の内側コーティング層36とさらなる第1の内側コーティング層33との間に配置された、1つまたは複数の接着膜37iをも含むことができる。 【0067】 図4(E)に概略的に示されている、別の代替実施形態によれば、コンタクトプローブ30はまた、多層構造31を完全に囲み、多層構造31と外側コーティング層35の間に挿入された、保護層38を含む。」 「【図3】 [図:0001407336000001.jpg] 」 「【図4-1】 [図:0001407336000002.jpg] 」 「【図4-2】 [図:0001407336000003.jpg] 」 d 【0070】~【0086】 「【0070】 コア32は、第1の導電性材料、特に、ニッケルまたはニッケルマンガンNiMn、ニッケルコバルトNiCo、またはニッケルタングステンNiW合金などのニッケル合金等の、金属または金属合金で作られる。本発明の好ましい実施形態では、コア32はニッケルタングステンNiWで作られる。または、コア32は非導電性材料、例えばシリコンSiで作られてもよい。 【0071】 さらに、第1の内側コーティング層33は第2の導電性材料で作られ、特に第1の導電性材料の値よりも大きい、特に高い導電率値および熱伝導率値を有する金属材料で作られる。したがって、当該金属材料は、銅Cu、銀Ag、金Auまたはそれらの合金の中から選択される。本発明の好ましい実施形態では、第1の内側コーティング層33は銅Cuで作られる。 【0072】 第2の内側コーティング層36は同じ第2の導電性材料で作られてもよく、第1の内側コーティング層33と第2の内側コーティング層36とを交互に配置することにより、個々により薄い層を使用できるため、より均質な多層構造31を作成することが可能になる。 【0073】 高導電率、すなわち低抵抗率を有する第1の内側コーティング層33が存在することで、コンタクトプローブ30の電気的挙動が変わることが強調されるべきである。 【0074】 実際、例えば銅から作られる、高導電性層が存在することで、コンタクトプローブ30の多層構造31のコア32の抵抗と並列の抵抗が本質的に実現する。 【0075】 特に、直流(DC)条件下では、電流は、コンタクトプローブ30の全断面に沿って、すなわち(例えばニッケルタングステンで作られた)コア32中を、および(例えば銅で作られた)高導電率を有する第1の内側コーティング層33中を流れる。ニッケルタングステンで作られたコア32の抵抗に対して、高導電率を有し銅で作られている第1の内側コーティング層33によって導入される抵抗は、多層構造31の、したがってコンタクトプローブ30の全体的な抵抗を低下させ、その電流導電を改善する。 【0076】 実際に、これは、コンタクトプローブ30が、高い導電率を有する第1の内側コーティング層33の導電率とコア32の導電率との間、例えば銅とニッケルタングステンとの間の平均値である導電率を有する材料で作られるためである。コンタクトプローブ30に適用される電流は、いずれの場合も、より少ない抵抗経路を選好し、高い導電率を有する第1の内側コーティング層33中を主に流れることになる。 【0077】 好適には、コンタクトプローブ30の挙動は交流(AC)条件下でさらに改善される。実際、その場合、「表皮効果」として知られる現象によれば、コンタクトプローブ30の多層構造31にわたって流れる電流は、実質的にその外側部分、すなわち、最も高い導電率を有する内側コーティング層である第1の内側コーティング層33の中のみを流れる傾向がある。 【0078】 表皮効果が、導体内で交流が不均一に分配される傾向を示す現象を示すことを想起されたい。電流密度は導電面上でより高く、導電面内でより低い。 【0079】 理論的観点から、導体の電流密度、すなわち単位面積当たりの電流は、外側表面から内側部分のほうへ漸進的に侵入して指数関数的に減少する。これは、テストヘッドのコンタクトプローブの場合のように円形断面または他の形状を有する導体について真である。 【0080】 実質的に、多層構造31のおかげで、コンタクトプローブ30では、適用される電流の大部分が、高導電率、すなわちより低い抵抗率を有する第1の内側コーティング層33中に流れるので、完全にニッケルタングステンから作られた従来のプローブよりも高い電流密度を持続させることが可能である。コンタクトプローブ30では、表皮効果により、高導電率を有する第1の内側コーティング層33中のみを流れる傾向がある交流の場合、より一層高い電流密度を持続させることが可能である。 【0081】 そのようなコンタクトプローブ30はまた、テスト信号送信中のリークがより少ない。最後に、高導電率を有する第1の内側コーティング層33が存在することで、コンタクトプローブ30の多層構造31による一層良好な熱放散が保証される。 【0082】 その上、外側コーティング層35は、多層構造31のコア32を作成する第1の導電性材料の硬度に対してより高い硬度を有する第3の導電性材料で作られる。好ましくは、第3の導電性材料は金属または金属合金であり、特にロジウムRd、白金Pt、イリジウムIrもしくはそれらの合金、パラジウムコバルトPdCo合金、パラジウムニッケルPdNi合金、またはニッケルリンNiPh合金である。本発明の好ましい実施形態では、外側コーティング層35はロジウムRdで作られる。 【0083】 第3の導電性材料は、良好な導電率を有し、そうしてコンタクトプローブによって測定される値を著しく悪化させないように選択されることが強調されるべきである。その上、外側コーティング層35の存在により、コンタクトプローブ30の外部硬度がより高くなること、コンタクトプローブ30を含むテストヘッドのプレート形ガイドにおいて実現されるガイドホールを通るコンタクトプローブ30の摺動が改善すること、また、多層構造31の層の露出部分の保護が可能になることが強調されるべきである。そのようにすると、プローブが、プレート形ガイド、特にセラミックガイドにおいて実現されるガイドホール中で摺動するよう取り付けられた場合に、動作中にプローブ自体の摩耗または「剥離」が生じない。 【0084】 実質的に、ロジウムから作られた外側コーティング層35は、プローブの機械的性能を概して改善する。 【0085】 さらに、コンタクトチップ30Aを含めてコンタクトプローブ30を完全に被覆する、ロジウムで作られた外側コーティング層35は、プローブ可使時間を増分することを可能にし、またチップ30Aがテスト中のデバイスのコンタクトパッド上に押下接触する多回数のテスト動作及び研磨布を通常使用する多数のチップクリーニングと再整形の間中の動作について、適切な動作を保証する。 【0086】 結果として、有利には本発明によれば、外側コーティング層35が存在すると、コア32と第1の内側コーティング層33との損傷および酸化が防止される。特に、露出したエッジ部分34Aおよびエッジ部分34Bにおいてこれらのエッジ部分を外側コーティング層35によって被覆されると損傷および酸化が防止される。」 e 【0087】~【0090】 「【0087】 さらに、コア32上の、高導電率を有する第1の内側コーティング層33の接着を改善するために、接着膜37を、金属または金属合金、特に金Au、銀Ag、白金Ptまたはそれらの合金、好ましくは金Auで作成してもよい。 【0088】 「膜」という用語は、当技術分野において知られているように、0.01μm~0.5μmの間の厚さを有する層を意味する。 【0089】 最後に、保護層38は金属または金属合金で作られる。特にロジウムRd、金Au、白金Pt、パラジウムPdまたはそれらの合金またはパラジウムコバルトPdCo合金、好ましくはパラジウムPdから作られる。保護層38は、外側コーティング層35中に浸入することが可能な腐食性薬剤から多層構造31を保護するように構成される。 【0090】 実際、極めて多孔質であり酸素通過を可能とすることが良く知られているロジウムを多層構造31の外側コーティング層35の作成に使用すると、例えば銅で作られている高導電率の第1の内側コーティング層33は酸化され得る。かかる酸化は、例えばパラジウムで作られ、多層構造31間、したがって第1の内側コーティング層33と外側コーティング層35との間に挿入される保護層38を使用することで防止することができる。実際、パラジウムから作られた保護層38は酸素に対して透過性でないため、酸素は高導電率を有する第1の内側コーティング層33に到達できず、したがって第1の内側コーティング層33に損傷を与えることができない。」 (イ) 【図4-2】(E)に示された実施形態についての検討 引用文献1には、【図4-1】及び【図4-2】に示される(A)~(E)に概略的に示される様々な実施形態が開示されているところ、後記(ウ)においては、これらのうちの【図4-2】(E)に示された実施形態に基づいて引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」という。)を認定するので、当該実施形態について以下検討する。 a 第1の内側コーティング層33と第2の内側コーティング層36 (a) 引用文献1の段落【0062】~【0064】及び【図4-1】(B)には、代替実施形態として、次のことが記載されている。 「多層構造31において、第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aは、コア32の第1の側32Aに常に配置される第2の内側コーティング層36の第1の部分36Aによって被覆され、 第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bは、コア32の第2の側32Bに常に配置される第2の内側コーティング層36の第2の部分36Bによって被覆されていること。」 (b) ここで、引用文献1の段落【0067】に記載された、図4(E)に概略的に示されている別の代替実施形態において、引用文献1の【図4-2】(E)の参照符号36が付与された層と、【図4-1】(B)の第2の内側コーティング層36は、同じ参照符号36が付与されているから、これらの層は同じ機能を奏する層であると認められる。 (c) よって、引用文献1の【図4-2】(E)に示された構成について、次のことを読み取ることができる。 「多層構造31において、第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aは、コア32の第1の側32Aに常に配置される第2の内側コーティング層36の第1の部分36Aによって被覆され、 第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bは、コア32の第2の側32Bに常に配置される第2の内側コーティング層36の第2の部分36Bによって被覆されていること。」 b 接着膜37 (a) 引用文献1の【0065】及び【図4-1】(C)には、次のことが記載されている。 「多層構造31は、コア32と第1の内側コーティング層33の間に配設され、コア32上の第1の内側コーティング層33の接着を可能にしやすい材料から作られた接着膜37を含み、 前記接着膜37は、コア32と第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aとの間に配置された第1の部分37Aと、コア32と第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bとの間に配置された第2の部分37Bとを含むこと。」 (b) ここで、引用文献1の段落【0067】に記載された、図4(E)に概略的に示されている別の代替実施形態において、引用文献1の【図4-2】(E)の参照符号37A、37Bが付与された層と、【図4-1】(C)の接着膜37A、37Bは、同じ参照符号37A、37Bが付与されているから、これらの層は同じ機能を奏する層であると認められる。 (c) よって、引用文献1の【図4-2】(E)に示された構成について、次のことを読み取ることができる。 「多層構造31は、コア32と第1の内側コーティング層33の間に配設され、コア32上の第1の内側コーティング層33の接着を可能にしやすい材料から作られた接着膜37を含み、接着膜37は、コア32と第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aとの間に配置された第1の部分37Aと、コア32と第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bとの間に配置された第2の部分37Bを含むものであること。」 c 外側コーティング層35の配置について 引用文献1の【図4-2】(E)から、外側コーティング層35が、第1の内側コーティング層33及び第2の内側コーティング層36の周囲を囲んで形成されていることが読み取れる。 (ウ) 引用発明の認定 前記(ア)の記載事項及び前記(イ)a(c)、b(c)及びcにおいて認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の引用発明が記載されていると認められる。なお、引用文献1の段落【0082】に記載の「ロジウムRd」という記載は、元素記号の表記に明らかな誤記があるから、「ロジウムRh」と正した上で引用発明を認定した。 <引用発明> 「第1の内側コーティング層33によって、2つの反対側においてコーティングされた少なくとも1つのコアを含む多層構造31を備えたコンタクトプローブ30であって、(【0058】) 第1の内側コーティング層33は、コア32の第1の側32Aに配置された第1の部分33Aを含み、またコア32の第2の側32Bに第2の部分33Bを含み、(【0059】) コンタクトプローブ30はまた、コンタクトプローブ30自体を完全に被覆してコア32および第1の内側コーティング層33の露出部分を被覆する、外側コーティング層35から作られた高硬度層を含み、(【0061】) 外側コーティング層35は、第1の内側コーティング層33及び第2の内側コーティング層36の周囲を囲んで形成され、(前記(イ)cの認定事項) 多層構造31において、第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aは、コア32の第1の側32Aに常に配置される第2の内側コーティング層36の第1の部分36Aによって被覆され、 第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bは、コア32の第2の側32Bに常に配置される第2の内側コーティング層36の第2の部分36Bによって被覆され、(前記(イ)a(c)の認定事項) 多層構造31は、コア32と第1の内側コーティング層33の間に配設され、コア32上の第1の内側コーティング層33の接着を可能にしやすい材料から作られた接着膜37を含み、 前記接着膜37は、コア32と第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aとの間に配置された第1の部分37Aと、コア32と第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bとの間に配置された第2の部分37Bを含み、(前記(イ)b(c)の認定事項) コンタクトプローブ30はまた、多層構造31を完全に囲み、多層構造31と外側コーティング層35の間に挿入された、保護層38を含み、(【0067】) コア32は、第1の導電性材料、特に、ニッケルで作られ、(【0070】) 第1の内側コーティング層33は第2の導電性材料で作られ、特に第1の導電性材料の値よりも大きい、特に高い導電率値および熱伝導率値を有する金属材料で作られ、当該金属材料は、銀Agであり、(【0071】) 第2の内側コーティング層36は同じ第2の導電性材料で作られ、(【0072】)、 外側コーティング層35は、多層構造31のコア32を作成する第1の導電性材料の硬度に対してより高い硬度を有する第3の導電性材料で作られ、第3の導電性材料は、ロジウムRhもしくはその合金であり、(【0082】) コア32上の、高導電率を有する第1の内側コーティング層33の接着を改善するために、接着膜37を、金Auで作成し、(【0087】) 「膜」という用語は、0.01μm~0.5μmの間の厚さを有する層を意味し、(【0088】) 保護層38は、金Auから作られる、(【0089】) コンタクトプローブ30。」 イ 引用文献8、9に記載された事項及び技術常識Aの認定 (ア) 引用文献8に記載された事項 唐石利男「ロジウムメッキの現況」金属表面技術 現場パンフレット13巻9号(1966)2-7頁(以下、「引用文献8」という。)には、次の技術事項が記載されている。 「1. はじめに ロジウムメッキは1930年(昭5)頃アメリカで商業的に応用されたのがはじまりで主として装飾用に使われていた.その後第二次大戦中工業的用途に厚付メッキのものが使われるようになり今日に及んでいる.メッキ皮膜としてのロジウムの特徴は次のとおりである. 1) 化学的にきわめて安定で,常温で酸化変色することがない. 2) 非常にかたくビッカース硬さHv800以上あり,クロムについで耐摩耗性が大きい. 3) 耐熱性にもすぐれ空気中で500℃ 以下の温度では酸化しない. 4) 電気抵抗は4.9マイクロオーム/cmを示し,白金族金属中で最も低い. 5) 優雅な白色光沢を有し光反射率は80%で白金族金属中最も大きい. 以上のような優れた特性をもっているので装飾用には勿論のこと各種電気接点,電子工業部品,光学用器具および耐食耐摩耗部品等の工業用にも広い用途をもっている.」 (イ) 引用文献9に記載された事項 「銀合金の種類|銀合金の組成や融点、硬度、特徴について」(2018年6月3日更新)(https://www.toishi.info/sozai/ag_sv/」(以下引用文献9」という。)には、次の技術事項が記載されている。 「銀合金の硬度 純銀や銀合金を加工すると、他の金属と同様、加工硬化がおきます。これは力を加えると金属そのものが硬くなっていく現象で、ステンレスをはじめとする鉄鋼材料等でもおきます。ただ、純銀の場合、加工硬化によってビッカース硬度で80 HV~90 HVまで硬くなった後は、一定を保ち、時間がたつとまだ30 HV前後のもとの硬さに戻ってしまう性質を持ちます(但し、-10℃から50℃の範囲内)。銀合金というのはある意味、この自然にやわらかくなっていってしまう経時軟化を抑える性能を持たせてもいます。」 (ウ) 技術常識Aの認定 前記引用文献8、9の記載事項からも認識されるように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識A」という。)。 <技術常識A> 「ロジウムRhは、銀Agよりも高い硬度を有していること。」 ウ 引用文献5に記載された事項及び技術常識Bの認定 (ア) 引用文献5に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に発行された特開2012-163460号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0008】 上記課題を解決すべく、本発明者等は鋭意研究を行い、イリジウムと比較して加工性に優れる貴金属であるロジウム(Rh)の適用に想到した。一方、ロジウムは、硬度において劣る面があり、純金属の状態でプローブピン用途で使用するのは好ましくない。そこで、本発明者等は、ロジウムを主体とし複数の添加元素を微量添加し、ロジウムの加工性を保持しつつ硬度等が改善された合金を見出し本発明に想到した。」 (イ) 技術常識Bの認定 前記引用文献5に記載されているように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識B」という。)。 <技術常識B> 「ロジウムを主体とし複数の添加元素を微量添加することにより、ロジウムの硬度が改善されること。」 エ 引用文献2及び3に記載された事項と技術常識Cの認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に発行された米国特許出願公開第2019/101569号明細書(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。日本語訳は当合議体によるものであり、以下同様である。 「[0028] FIG. 1(a) illustrates the probe 100 including the probe body 101 and the probe tip 103. The probe body 103 may include a probe core 113 and a probe plating layer 111 around the probe core 113. The probe tip 103 may be attached to the probe body 101, where the probe tip 103 may be next to the probe core 113 of the probe body 101. [0029] The probe core 113 may include a first material, and the probe plating layer 111 may include a second material, which may be different from the first material. In addition, the probe tip 103 may include the first material, which may be the same material for the probe core 113. The first material included in the probe tip 103 and the probe core 113 may provide mechanical stiffness of the probe. For example, the first material may have a Young's modulus in a range of about 200 gigapascals (Gpa) to about 400 Gpa, or a hardness in Mohs scale in a range of about 7.5 to about 8. The first material included in the probe tip 103 and the probe core 113 may include tungsten (W), rhodium (Rh), rhenium (Re), tungsten-rhenium (WRe), tantalum (Ta), nickel (Ni), cobalt (Co), or nickel-cobalt (NiCo). The second material for the probe plating layer 111 may be soft materials to improve electrical and thermal performance of the probe 100 when used in wafer sorting. For example, the second material may include copper (Cu), silver (Ag), gold (Ag), or silver-gold (AgAu).」 ([0028] 図1(a)は、プローブ本体101及びプローブ先端103を含むプローブ100を示す。プローブ本体101は、プローブコア113と、プローブコア113の周りのプローブめっき層111とを含むことができる(当審注:原文の「The probe body 103」は、「The probe body 101」の誤記であるため、日本語訳は、「プローブ本体101」とした)。プローブ先端103は、プローブ本体101に取り付けられてもよく、プローブ先端103は、プローブ本体101のプローブコア113に隣接してもよい。 [0029] プローブコア113は第1の材料を含み、プローブめっき層111は第1の材料と異なる第2の材料を含む。加えて、プローブ先端103は、プローブコア113と同じ物質であり得る第1の材料を含み得る。プローブ先端103及びプローブコア113に含まれる第1の材料は、プローブの機械的剛性を提供し得る。例えば、第1の材料は、約200ギガパスカル(Gpa)~約400Gpaの範囲のヤング率、又は、約7.5~約8の範囲のモース硬度を有することができる。プローブ先端103及びプローブコア113に含まれる第1の材料は、タングステン(W)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、タングステン-レニウム(WRe)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、またはニッケル-コバルト(NiCo)を含んでもよい。プローブめっき層111のための第2の材料は、ウェハの選別に使用されるときに、プローブ100の電気的及び熱的性能を改善するために軟質材料であってもよい。例えば、第2の材料は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Ag)又は銀-金(AgAu)を含んでもよい。) 「 [図:0001407336000004.jpg] 」 (イ) 引用文献3に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に発行された国際公開第2018/93109号(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。 「[39] FIG. 3 is a perspective view of the probe 110 of FIG. 2. As shown therein, the probe 110 includes a conductive core 111 shaped like a cylindrical bar, an elastic plating layer 113 made of a material having higher elasticity than the core 111 and plated on and/or around the outer surface of the core 111, and a ductile plating layer 115 made of a material having lower elasticity than the elastic plating layer 113 and plated on and/or around the outer surface of the elastic plating layer 113. Further, as necessary, the probe 110 may include an additional laminate portion 117 on and/or around the outer surface of the ductile plating layer 115. The additional laminate portion 117 may include a second elastic plating layer 113-2, and a second ductile plating layer 115-2. The probe 110 may include an insulating layer 119 on and/or around the outer surface of the additional laminate portion 117. [40] The core 111 is made of a highly conductive material, for example, Au (gold), Pt (platinum), Ag (silver), Cu (copper), Al (aluminum), Fe (iron), Be (beryllium), Rh (rhodium) or the like, or an alloy thereof.」 ([39] 図3は、図2のプローブ110の斜視図である。同図に示すように、プローブ110は、円柱状の棒状の導電性のコア111と、コア111の外表面にめっきされた、コア111よりも弾性の高い材料からなる弾性めっき層113と、弾性めっき層113の外表面にめっきされた、弾性めっき層113よりも弾性の低い材料からなる延性めっき層115とを備えている。さらに、必要に応じて、プローブ110は、延性めっき層115の外面上及び/又は外面の周りに追加積層部117を含むことができる。追加積層部117は、第2弾性めっき層113-2及び第2延性めっき層115-2を含むことができる。プローブ110は、追加積層部117の外面上及び/又は外面の周りに絶縁層119を含むことができる。 [40] コア111は、導電性の高い材料、例えば、Au(金)、Pt(白金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Fe(鉄)、Be(ベリリウム)、Rh(ロジウム)等、又は、これらの合金からなる。) 「 [図:0001407336000005.jpg] 」 「 [図:0001407336000006.jpg] 」 (ウ) 技術常識Cの認定 前記引用文献2及び3に記載されているように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識C」という。)。 <技術常識C> 「プローブのコアの材料として、ロジウム(Rh)を用いているものがあること。」 オ 引用文献10に記載された事項、技術常識Dの認定 (ア) 引用文献10に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である、 「西川精一,新版 金属工学入門,株式会社アグネ技術センター,2006年8月31日,2版第2刷,103~111頁」(以下「引用文献10」という。)の105頁には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001407336000007.jpg] 」 (イ) 技術常識Dの認定 前記引用文献10に記載されているように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識D」という。)。 <技術常識D> 「ロジウムRhは、ニッケルNiよりも導電率が高いこと。」 カ 引用文献11に記載された事項及び技術常識Eの認定 (ア) 引用文献11に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2008-281413号公報(以下「引用文献11」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0024】 各プローブ20を拡大して示す図3を参照するに、各プローブ20は、平板状のプローブ本体20aと、該プローブ本体に一部を埋設された針先20bとを備える。これらは、共に比較的良好な導電性を示す。 【0025】 プローブ本体20aは、例えば、ニッケル、あるいは、ニッケルリン、ニッケルタングステン、ニッケルコバルト、ニッケルクロムのようなニッケル合金、さらには、燐青銅のような、比較的靭性に優れた高靱性の金属材料で形成することができる。また、針先20bは、例えばロジウム、ルテニウムのような、ビッカース硬度(Hv)が800~1000の金属材料で構成される。このような金属材料からなる針先20bは、プローブ本体20aに比較して硬度が高く、耐摩耗性に優れる。」 「【図3】 [図:0001407336000008.jpg] 」 (イ) 技術常識Eの認定 前記引用文献11に記載されているように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識E」という。)。 <技術常識E> 「ロジウムは、ニッケルよりも硬度が高いこと。」 キ 引用文献6に記載された事項及び技術常識Fの認定 (ア) 引用文献6に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開平10-21772号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0002】 【従来の技術】封入接点材料は、非酸化性雰囲気中で開閉を行うリードスイッチ等の電極として用いられる。前記封入接点材料には、従来、Ni-Fe系合金の接点基材にAg、Au、Cu等の元素をめっきし、その上に、電気伝導度、硬度、融点が高く、耐摩耗性にも優れるRh又はRuの層を被覆したものが多用されていた。ここでAg、Au、Cu等の元素をめっきする理由は、接点の開閉動作時にジュール熱等で、被覆層のRh又はRuが接点基材中に拡散するのを防止し、又Rh又はRuの被覆層と接点基材との密着性を改善する為である。」 (イ) 技術常識Fの認定 前記引用文献6に記載されているように、次の事項は技術常識であると認められる(以下「技術常識F」という。)。 <技術常識F> 「接点基材にAg、Au、Cu等の元素をめっきすることにより、被覆層のRhが接点基材中に拡散するのを防止する効果を奏すること。」 (3) 対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア)a 引用発明の「コンタクトプローブ30」は、コア32、接着膜37、第1の内側コーティング層33、第2の内側コーティング層36、保護層38及び外側コーティング層35からなり、複数の異なる材料で構成された細長い試験針であるから(本願明細書の段落【0003】においても「クラッドワイヤ(クラッド線)は、異なる材料の特性を組み合わせるもの」とされている。)、本件補正発明の「クラッドワイヤ」に相当する構成を備えているといえる。 b また、引用発明の「コンタクトプローブ30」は、本件補正発明の「試験針」に相当する。 c よって、「試験針又は摺動接点を製造するためのクラッドワイヤ」の発明である本件補正発明と「コンタクトプローブ30」の発明である引用発明は、「試験針又は摺動接点を製造するためのクラッドワイヤ」の発明である点において一致する。 (イ)a 引用発明の「コンタクトプローブ30」が有する「コア32」は、本件補正発明の「ワイヤコア」に相当する。 b 引用発明の「コア32」の第1の導電性材料である「ニッケル」と本件補正発明の「ワイヤコア」を作製する「ロジウム又はロジウム系合金」は、「金属材料」である点で共通する。 c よって、本件補正発明と引用発明は、「金属材料から作製されるワイヤコア」を有する点で共通する。 (ウ)a 引用発明の「第1の内側コーティング層33」及び「第2の内側コーティング層36」は、本件補正発明の「内側クラッド部」に相当する。 b また、引用発明の「第1の内側コーティング層33」及び「第2の内側コーティング層36」は、いずれも銀Ag(第2の導電性材料)で作られているから、本件補正発明の「銅若しくは銀若しくはアルミニウム、又は銅系合金若しくは銀系合金若しくはアルミニウム系合金から作製される内側クラッド部」に相当する。 c(a) 引用発明の「第1の内側コーティング層33」は、コア32の第1の側32Aに配置された第1の部分33Aと、コア32の第2の側32Bに第2の部分33Bを含むものであるから、「コア32」の二つの反対側においてコーティングされた層であるといえる。 (b) また、引用発明の「第2の内側コーティング層36」において、第1の部分36Aは、第1の内側コーティング層33の第1の部分33Aの第1の側32Aを被覆し、第2の部分36Bは、第1の内側コーティング層33の第2の部分33Bの第2の側32Bを被覆するものである。 (c) 前記(a)及び(b)を踏まえると、引用発明において、「第1の内側コーティング層の第1の部分33A」及び「第2の内側コーティング層の第1の部分36A」は、コア32の第1の側32Aを被覆し、「第1の内側コーティング層の第2の部分33B」及び「第2の内側コーティング層の第2の部分36B」は、コア32の第2の側32Bを被覆しているから、引用発明の「第1の内側コーティング層33」及び「第2の内側コーティング層36」は、本件補正発明の「前記ワイヤコアを少なくとも2つの反対の側で覆う」「内側クラッド部」に相当する。 d よって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「銅若しくは銀若しくはアルミニウム、又は銅系合金若しくは銀系合金若しくはアルミニウム系合金から作製される内側クラッド部であって、前記内側クラッド部は、前記ワイヤコアを少なくとも2つの反対の側で覆うか又は前記ワイヤコアを完全に包み囲む内側クラッド部」を有する点。 (エ)a 引用発明の「接着膜37」は、コア32と第1の内側コーティング層33の間に配設され、コア32上の第1の内側コーティング層33の接着を改善するために金Auで作成されたものであり、「膜」とは0.01μm~0.5μmの間の厚さを有する層を意味する用語とされているから、本件補正発明の「前記ワイヤコアと前記内側クラッド部との間に配置される金又は金系合金から作製される接着促進層」に相当する。 b よって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記ワイヤコアと前記内側クラッド部との間に配置される金又は金系合金から作製される接着促進層」を有する点。 (オ)a 引用発明の「外側コーティング層35」は、本件補正発明の「外側クラッド部」に相当する。 b 引用発明の「外側コーティング層35」は、ロジウムRhもしくはその合金である第3の導電性材料で作られており、「第1の内側コーティング層33」及び「第2の内側コーティング層36」は、銀Ag(第2の導電性材料)で作られているところ、ロジウムRhもしくはその合金である第3の導電性材料が銀Agという第2の導電性材料より高い硬度を有することは技術常識である(技術常識A(前記(2)イ(ウ))及び技術常識B(前記(2)ウ(イ))を参照)。 c また、引用発明の「外側コーティング層35」は、「第1の内側コーティング層33」及び「第2の内側コーティング層36」の周囲を囲んで形成されている。 d 前記a~cを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記内側クラッド部の材料よりも大きい硬度を有する金属又は金属合金から作製される外側クラッド部であって、前記外側クラッド部は前記内側クラッド部を包み囲む外側クラッド部」を有する点。 (カ)a 引用発明の「保護層38」は、多層構造31を完全に囲み、多層構造31と外側コーティング層35の間に挿入されており、多層構造31は、コア32、第1の内側コーティング層33、第2の内側コーティング層36及び接着膜37からなる構造である。 b そうすると、引用発明の「保護層38」は、「「第1の内側コーティング層33」及び「第2の内側コーティング層36」」と「外側コーティング層35」との間に配置されていることになる。 c よって、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。 「保護層が、前記内側クラッド部と前記外側クラッド部との間に配置される」点。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。 (ア) 一致点 試験針又は摺動接点を製造するためのクラッドワイヤであって、 金属材料から作製されるワイヤコアと、 銅若しくは銀若しくはアルミニウム、又は銅系合金若しくは銀系合金若しくはアルミニウム系合金から作製される内側クラッド部であって、前記内側クラッド部は、前記ワイヤコアを少なくとも2つの反対の側で覆うか又は前記ワイヤコアを完全に包み囲む内側クラッド部と、 前記ワイヤコアと前記内側クラッド部との間に配置される金又は金系合金から作製される接着促進層と、 前記内側クラッド部の材料よりも大きい硬度を有する金属又は金属合金から作製される外側クラッド部であって、前記外側クラッド部は前記内側クラッド部を包み囲む外側クラッド部と を有し、 保護層が、前記内側クラッド部と前記外側クラッド部との間に配置される、 クラッドワイヤ、である点。 (イ) 相違点 a 相違点1 金属材料から作製される「ワイヤコア」が、 本件補正発明においては、「ロジウム又はロジウム系合金から作製され[ている]」ものであるのに対して、 引用発明においては、コア32の第1の導電性材料が、ニッケルである点。 b 相違点2 前記内側クラッド部と前記外側クラッド部との間に配置される「保護層」が、 本件補正発明においては、「外側クラッド部を構成する原子及びイオンが内側クラッド部に移行することを防止又は妨害する拡散保護層であり、前記内側クラッド部と前記外側クラッド部との間に拡散障壁として配置される」ものであるのに対して、 引用発明においては、保護層38は、金Auから作られるものであるところ、外側コーティング層35を構成する原子及びイオンが、第1内側コーティング層33や第2内側コーティング層36に移行することを防止又は妨害する拡散保護層なのか不明である点。 (4) 当審の判断 ア 相違点1について 前記相違点1について検討する。 (ア) 自明の設計指針について 電気検査・試験に用いられるプローブとして、より導電性を高くしつつ、硬度を上げて耐久性を向上することは、自明の課題である。 (イ) 導電率の向上について a(a) 引用文献1の段落【0075】及び【0076】には、次のとおり記載されており、直流(DC)条件下では、電流は、コンタクトプローブ30の全断面に沿って流れるため、コンタクトプローブ30の導電率は、第1の内側コーティング層33の導電率だけでなく、コア32の導電率も寄与することが理解される。 「【0075】 特に、直流(DC)条件下では、電流は、コンタクトプローブ30の全断面に沿って、すなわち(例えばニッケルタングステンで作られた)コア32中を、および(例えば銅で作られた)高導電率を有する第1の内側コーティング層33中を流れる。ニッケルタングステンで作られたコア32の抵抗に対して、高導電率を有し銅で作られている第1の内側コーティング層33によって導入される抵抗は、多層構造31の、したがってコンタクトプローブ30の全体的な抵抗を低下させ、その電流導電を改善する。 【0076】 実際に、これは、コンタクトプローブ30が、高い導電率を有する第1の内側コーティング層33の導電率とコア32の導電率との間、例えば銅とニッケルタングステンとの間の平均値である導電率を有する材料で作られるためである。コンタクトプローブ30に適用される電流は、いずれの場合も、より少ない抵抗経路を選好し、高い導電率を有する第1の内側コーティング層33中を主に流れることになる。」 (b) 引用発明において、第1の内側コーティング層33及び第2の内側コーティング層36は同じ第2の導電性材料である銀Agからなるところ、銀Agは、金属の中で最も導電率が高いから、第1の内側コーティング層33及び第2の内側コーティング層36の導電率はこれ以上向上することはできない。 (c) 他方、コア32についてみると、前記(2)エ(ウ)において技術常識Cとして示したとおり、プローブのコアの材料としてロジウム(Rh)を用いることは、本願の優先日前に周知である。 そして、前記技術常識Cの存在を前提としなくとも、そもそも、前記(2)オ(イ)において技術常識Dとして示したとおり、ロジウムRhはニッケルNiよりも導電率が高いことは、技術常識である。 (d) また、前記(2)カ(イ)において技術常識Eとして示した、ロジウムは、ニッケルよりも硬度が高いことを踏まえると、ニッケルからロジウムに材料を変更することにより、硬度に大きな犠牲が生じないことは、当業者には自明である。 (e) そうすると、引用発明の「コンタクトプローブ30」の「コア32」の材料として、ニッケルに代えてニッケルより導電率が高いロジウムRhを採用すれば硬度を犠牲にすることなく、コンタクトプローブ30の導電率を高くできることは、当業者にとって自明である。 (ウ) 外側コーティング層35の材料について a(a) 引用発明においては、「外側コーティング層35は、多層構造31のコア32を作成する第1の導電性材料の硬度に対してより高い硬度を有する第3の導電性材料で作られ[る]」べきところ、これは、外側コーティング層35は、最も外側に存在するのであるから、摩耗を防ぎ耐久性を持たせるために、外側コーティング層35が最も硬度の高い材料であるべきこととされていると考えられる。 (b) ここで、前記(a)に示した「外側コーティング層35」が、「コア32」より高い硬度を有することは、引用文献1の請求項1に記載されていることからも分かるように、引用発明の本質的な特徴部分であると認められる。 b そして、前記(2)ウ(イ)において技術常識Bとして示したとおり、ロジウムを主体とし複数の添加元素を微量添加することにより、ロジウムの硬度が改善されること、すなわち、ロジウム合金がロジウムよりも硬度に優れていることは技術常識である。 c したがって、前記(イ)の検討に従って、「コア32」の材料としてニッケルからロジウムRhに設計変更した場合、前記a(b)に示した引用発明の本質的な特徴部分を維持するためには、引用発明において「外側コーティング層35」の材料として挙げられている、ロジウムRhもしくはその合金のうち、ロジウムRhより硬いロジウム合金を選択すべきであることは、当業者には自明である。 (エ) 小括 したがって、引用発明において、「コア32」の材料をニッケルからロジウムRhに代え、「外側コーティング層35」の材料としてロジウムRh合金を選択し、外側コーティング層35は、多層構造31のコア32を作成する第1の導電性材料の硬度に対してより高い硬度を有するという引用発明の思想を維持しつつ、前記相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 前記相違点2について検討する。 (ア)a 本願明細書の【0038】及び【0039】には次の記載がある。 「【0038】 さらには、拡散保護層が内側クラッド部と外側クラッド部との間に拡散障壁として配置され、この拡散保護層は、好ましくはニッケル若しくは金又はニッケル系合金若しくは金系合金からなるということが提供されうる。 【0039】 結果として、特に、内側クラッド部の電気特性は、外側クラッド部からの原子又はイオンの内向きの拡散によっては損なわれないということが成し遂げられる。特に、内側クラッド部の導電率は、結果として低下しないことになる。特に、これは、当該クラッドワイヤが使用されるときの、内側クラッド部の内部への異物原子の内向きの拡散による経時的な導電率の劣化を防止する。」 b 前記aの記載から、金からなる層は、「拡散保護層」ということができ、外側クラッド部からの原子又はイオンの内向きの拡散を保護する拡散障壁として機能するといえる。 (イ) また、前記(2)キ(イ)において技術常識Fとして示したとおり、接点基材にAu元素をめっきすることにより、被覆層のRhが接点基材中に拡散するのを防止する効果を奏することは、技術常識でもある。 (ウ)a そうすると、引用発明の「保護層38」は、金Auから作られているから、「拡散保護層」ということができ、ロジウム合金である外側コーティング層35からの原子又はイオンの内向きの拡散を保護する機能を有するものであるといえる。 b よって、引用発明においても、本件補正発明の前記相違点2に係る構成である、「外側クラッド部を構成する原子及びイオンが内側クラッド部に移行することを防止又は妨害する拡散保護層であり、前記内側クラッド部と前記外側クラッド部との間に拡散障壁として配置される」構成を備えていることは、明らかであり、前記相違点2は、実質的な相違点ではない。 ウ 総合検討 前記アにおいて検討したとおり、引用発明において前記相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、前記イにおいて検討したとおり、前記相違点2は、実質的な相違点ではない。 そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び技術常識A~Fに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 請求人の主張について (ア) 主張1(拡散保護層について) a 請求人の主張1の主張内容 請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしている。 「拡散保護層」に関して、引用文献2~5のいずれにも開示されていない。ただし、引用文献1には、段落0067(図4(E))に、保護層38が多層構造31(本願の内側クラッド部)と外側コーティング層35(本願の外側クラッド部)との間に含まれる構成が開示されている。 しかし、引用文献1に記載された保護層38は、腐食性薬剤/酸素の浸入/通過を防止するための保護層である。したがって、本願の「前記外側クラッド部(4、14、24)を構成する原子及びイオンが前記内側クラッド部(3、13、23)に移行することを防止又は妨害する拡散保護層(6、16、26)」とは相違する。 b 請求人の主張1についての検討 請求人が主張している「拡散保護層」は、前記相違点2に係る構成であるところ、前記イにおいて説示したとおり、引用発明においても前記相違点2に係る構成を備えており、前記相違点2は実質的な相違点でない。 よって、請求人の主張1は採用できない。 (イ) 主張2(外側コーティング層の材料をロジウム合金にすることについて) a 請求人の主張2の主張内容 請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしている。 引用文献1の発明の必要要件は、外側コーティング層の材料がコアの材料より高い硬度を有するとともに、外側コーティング層の材料が良好な導電率を有することであり、また、当該の外側コーティング層の好ましい材料がロジウムであることが記載されている。 他方、ロジウムよりも硬度と導電率とが両方とも高いロジウム合金が存在することについては、引用文献1~5のいずれにも開示されていない。 すると、引用文献1の発明(外側コーティング層の好ましい材料がロジウム)を、拒絶査定で認定されたように変形して、コアの材料にロジウムを適用し、外側コーティング層の材料にロジウム合金を適用する形態は、硬度の大小関係についての必要要件を維持できたとしても、外側コーティング層の材料が良好な導電率を有するという必要要件の点で劣化することが明らかである。そのため、当業者であれば、引用文献1の発明の変形形態として、当該の形態を想到することはない。 b 請求人の主張2についての検討 引用発明においては、外側コーティング層35は、ロジウムRhもしくはその合金とされており、ロジウム合金はそもそも排除されていないのであるから、ロジウムに比べて導電率の面で劣るロジウム合金があるとしても、引用発明の外側コーティング層35をロジウム合金とすることに阻害要因があるとは認められない。 また、前記ア(ウ)に示したとおり、引用発明は、外側コーティング層の材料をコアの材料より高い硬度を有する点に本質的な特徴があることを踏まえると、外側コーティング層35の導電率より、前記特徴を維持する方が優先されるべきであるから、ロジウムより導電率が劣るとしても、ロジウムより高い硬度を有するロジウム合金を採用することを妨げるものではない。 よって、請求人の主張2は採用できない。 (ウ) 主張3(引用文献1と引用文献2の組み合わせについて) a 請求人の主張3の主張内容 請求人は、令和5年2月14日に提出された上申書において、概略次の(a)及び(b)の主張をしている。 (a) 引用文献1の発明思想と引用文献2の発明思想とは、むしろ互いに逆の方向を指向している。すなわち、引用文献1の発明では、外側コーティング層がコアより高い硬度を有するのに対し、引用文献2の発明では、コアの材料が所定の(高い)範囲のヤング率又はモース硬度を有する、かつめっき層の材料が軟質材料である、ことを指向している。したがって、引用文献1の発明と引用文献2の発明とは、プローブのコアと外層との間の材質の関係に関する根本的な発明思想が異なる(逆方向である)ので、当業者が引用文献1の発明を改良するために引用文献2を参照することは妥当とはいえない。ましてや、相互の発明思想の違いを無視して、コアの材料(ロジウム)のみを参照することは、極めて不合理である。 (b) ロジウムは確かに引用文献2の発明ではコアの材料として指定されている。しかし、当該のロジウムを引用文献1の発明のコアの材料に適用することは、引用文献2の教示「第1の材料とは異なる第2の材料」に反することになる。なぜなら、ロジウムは引用文献1の発明では外側コーティング層の材料として指定されているからである。したがって、引用文献1の発明のコアの材料にロジウムを適用することは、引用文献1の教示(ロジウムは外側コーティング層の指定材料であってコアの指定材料ではありません)に反するだけでなく、引用文献2の上記の教示にも反する。 b 請求人の主張3についての検討 引用文献2は、コアの材料としてロジウムRhがよく知られていることを示すための証拠として挙げられているのであって、コアの材料とめっき層の材料が異なり、めっき層の方が軟質である構成が、本願の優先日前に知られていたことを示すために挙げられたものではない。 そうすると、請求人が主張している内容は、引用発明に引用文献2に記載された前記構成を適用することを前提としたものであるから、当該主張は、その前提において誤っているものである。 また、技術常識Cの存在を前提としなくとも、そもそも、前記(2)オ(イ)において技術常識Dとして示したとおり、ロジウムRhはニッケルNiよりも導電率が高いことは、技術常識であるから、引用文献2の記載事項に関わらず、引用発明の「コンタクトプローブ30」の「コア32」の材料として、ニッケルに代えてニッケルより導電率も硬度も高いロジウムRhを採用すればコンタクトプローブ30の導電率を高くできることは、当業者にとって自明である。 よって、請求人の主張3は採用できない。 (エ) 小括 したがって、請求人の主張1~3はいずれも採用できず、前記ウの結論を左右するものではない。 (5) 独立特許要件についてのまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び技術常識A~Fに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 本件補正の適否についてのまとめ 前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項4のうち請求項1の記載を引用するものに係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年5月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項4に記載された事項のうち請求項1の記載を引用するもの(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、本願の優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特表2018-501490号公報(主たる引用例) 引用文献2.米国特許出願公開第2019/101569号明細書 引用文献3.国際公開第2018/93109号 引用文献4.特表2016-535847号公報 引用文献5.特開2012-163460号公報 3 各引用文献に記載された事項並びに引用発明及び技術常識の認定 引用文献1~3、5、6、8~11に記載された事項、引用発明及び技術常識A~Fの認定は、前記第2の3(2)ア~キにおいて示したとおりである。 4 対比 (1) 対比分析 前記第2の3(3)アの対比分析において検討した事項を踏まえると、本願発明と引用発明は、次に示す相違点において相違し、その他の点で一致する。 (2) 相違点 ア 相違点A 金属材料から作製される「ワイヤコア」が、 本願発明においては、「ロジウム又はロジウム系合金から作製され[ている]」ものであるのに対して、 引用発明においては、コア32の第1の導電性材料が、ニッケルである点。 イ 相違点B 前記内側クラッド部と前記外側クラッド部との間に配置される「保護層」が、 本願発明においては、「前記内側クラッド部と前記外側クラッド部との間に拡散障壁として配置される」「拡散保護層」であるのに対して、 引用発明においては、保護層38は、金Auから作られるものであるところ、拡散障壁として配置される拡散保護層なのか不明である点。 5 当審の判断 (1) 相違点Aについて 前記相違点Aは、前記相違点1と同じであるから、前記第2の3(4)アにおいて説示した理由と同様の理由により、引用発明において前記相違点Aに係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2) 相違点Bについて 前記第2の3(4)イにおける検討を踏まえると、引用発明における金Auから作られる保護層38も、本願発明の前記相違点Bに係る構成である、「前記内側クラッド部と前記外側クラッド部との間に拡散障壁として配置される」「拡散保護層」であるといえるから、前記相違点Bは、実質的な相違点ではない。 (3) 総合検討 前記(1)において検討したとおり、引用発明において前記相違点Aに係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、前記(2)において検討したとおり、前記相違点Bは、実質的な相違点ではない。 そして、本願発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。 したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識A~Fに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び技術常識A~Fに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-018522

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