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特許拒絶査定不服審判

2022-018344

医療画像処理装置、内視鏡システム、医療画像処理装置の作動方法及びプログラム

審判番号
2022-018344
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-564351外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年11月15日
審決日
2023年10月03日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-564351「医療画像処理装置、内視鏡システム、医療画像処理装置の作動方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月18日国際公開、WO2019/138773〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2018年(平成30年)12月13日(優先権主張 平成30年1月10日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 6月19日 :手続補正書の提出
同日 :手続補正書の提出
令和3年 7月30日付け:拒絶理由通知書

同年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出

令和4年 2月14日付け:拒絶理由通知書

同年 4月14日 :意見書、手続補正書の提出

同年 8月19日付け:拒絶査定

同年11月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年11月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年11月15日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「 【請求項1】
被検者の生体内の複数の位置の画像を順次撮影しリアルタイム表示する医療機器から前記画像を取得する画像取得部と、
前記取得した画像の前記生体内の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記医療機器にシェーマ図を表示させ、前記シェーマ図の前記取得した位置情報が示す位置に図形を表示させる表示制御部と、
続きを表示(全11行)
入力画像から注目領域を検出する注目領域検出部であって、生体内の複数の位置にそれぞれ対応した複数の注目領域検出部と、
前記複数の注目領域検出部から前記位置情報が示す位置に対応した注目領域検出部を選択する選択部と、
前記選択した注目領域検出部によって前記取得した画像から注目領域を検出させる制御部と、
を備え、
前記複数の注目領域検出部は、複数の学習済みモデルであり、
前記複数の学習済みモデルは、それぞれ異なるデータセットを用いて学習したモデルであり、
前記複数の学習済みモデルは、それぞれ生体内の異なる位置を撮影した画像からなるデータセットを用いて学習したモデルである医療画像処理装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、令和4年4月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
被検者の生体内の複数の位置の画像を順次撮影しリアルタイム表示する医療機器から前記画像を取得する画像取得部と、
前記取得した画像の前記生体内の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記医療機器にシェーマ図を表示させ、前記シェーマ図の前記取得した位置情報が示す位置に図形を表示させる表示制御部と、
入力画像から注目領域を検出する注目領域検出部であって、生体内の複数の位置にそれぞれ対応した複数の注目領域検出部と、
前記複数の注目領域検出部から前記位置情報が示す位置に対応した注目領域検出部を選択する選択部と、
前記選択した注目領域検出部によって前記取得した画像から注目領域を検出させる制御部と、
を備え、
前記複数の注目領域検出部は、複数の学習済みモデルである医療画像処理装置。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の学習済みモデル」について、「前記複数の学習済みモデルは、それぞれ異なるデータセットを用いて学習したモデルであり、

前記複数の学習済みモデルは、それぞれ生体内の異なる位置を撮影した画像からなるデータセットを用いて学習したモデルである」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、前記1(1)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定

ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定

(ア)引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2007-151809号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。以下、他の引用文献においても同様。)

(引1-ア)

「【0028】
(実施の形態)
図1は、本発明に係る受信装置の好適な実施の形態である無線型の被検体内導入システムの全体構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る被検体内導入システムは、被検体1の内部に導入されて通過経路に沿って移動するカプセル型内視鏡2と、カプセル型内視鏡2から送信された、被検体内情報を含む無線信号を受信する受信装置3と、受信装置3によって受信された無線信号に含まれる被検体内情報の内容を表示する表示装置4と、受信装置3と表示装置4との間の情報の受け渡しを行うための携帯型記録媒体5と、受信装置3との間で携帯電話通信網7を介して必要に応じて無線通信を行う携帯電話機8とを備える。」

(引1-イ)

「【0035】
図3は、受信装置3の構成を示す模式的なブロック図である。図3に示すように、受信装置3は、複数存在する受信アンテナ6a?6hの中から無線信号の受信に適したものを選択するアンテナ選択部21と、アンテナ選択部21によって選択された受信アンテナ6を介して受信された無線信号に対して、復調等の処理を行う受信回路22と、受信回路22によって抽出された原信号(送信部9によって変調される前の信号)を2値化されたデジタル信号に変換する2値化回路23と、受信回路22から出力された受信強度信号を所定のデジタル信号に変換するA/D変換部24とを備える。また、受信装置3は、2値化回路23によって2値化され、ブリッジ回路25を経由した原信号に基づき被検体内画像データを再構成する画像処理部26と、画像処理部26によって再構成された画像データを記憶するメモリとして携帯型記録媒体5と、前述の無線I/Fカード12と、表示部15と、操作ボタン16とを備える。さらに、本実施の形態における受信装置3は、記憶部27と、これらの携帯型記録媒体5、無線I/Fカード12、表示部15、操作ボタン16、記憶部27に対する入出力を制御する制御部28と、受信装置3の各構成要素に対して駆動電力を供給するバッテリ構成の電力供給部29を備える。」

(引1-ウ)

「【0040】
携帯型記録媒体5等に対する入出力を制御する制御部28は、送信出力部31と警告出力部32とアクセス部33と臓器判定部34と病変箇所判定部35と受信機用異常検出部36とカプセル用異常検出部37とを備える。送信出力部31は、携帯電話機8側からアクセスがあった場合、または当該所定の携帯電話機8に対するアクセスがあった場合に、カプセル型内視鏡2が撮像した被検体内画像データを当該所定の携帯電話機8に対して無線I/Fカード12、携帯電話通信網7を介して送信出力するためのものであり、例えば圧縮処理された画像データを伸長し変調して出力させる機能を備える。
【0032】
カプセル型内視鏡2は、被検体内導入装置の一例として機能するものであって、バッテリ駆動の下、被検体内画像を撮像し、撮像した画像データを含む無線信号を受信装置3に対して送信するためのものである。すなわち、カプセル型内視鏡2は、被検体1の口腔部を介して導入された後、再び体外に排出されるまでの間、被検体1内部の画像たる被検体内画像を取得し、取得した画像データを含む無線信号を間欠的に外部に送信する。
【0033】
次に、受信装置3について説明する。受信装置3は、カプセル型内視鏡2から送信された無線信号を受信し、無線信号に含まれる被検体内画像に関するデータを再構成するためのものである。また、受信装置3は、担当医師、看護師等の特定の医療従事者あるいは被検者本人が所有し画像表示可能な液晶等による表示部9を有する携帯電話機8との間で、必要に応じて、無線通信を行うためのものである。」

(引1-エ)

「【0041】
臓器判定部34は、カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データに基づき撮像臓器の変化をリアルタイムで判定するためのものである。例えば、胃、小腸、大腸なる臓器に関して、最初は胃領域であると判定し、次いで被検体内画像データに基づき小腸領域の特徴である絨毛領域が検出されたら小腸領域に移行したと判定し、さらに被検体内画像データに基づき大腸領域の特徴である便領域が検出されたら大腸領域に移行したと判定する機能を有する。
【0042】
病変箇所判定部35は、カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データに基づき病変箇所(出血、褪色、形状異常等)の有無をリアルタイムで判定するためのものである。例えば、出血部位の場合であれば、臓器内部の粘膜よりも赤みの強い画像領域の出現により判定可能である。」

(引1-オ)

「【0047】
次に、制御部28によって実行される携帯電話機8との間の無線通信処理制御例について説明する。まず、携帯電話機8側から受信装置3に対してアクセスがあった場合の処理制御例を説明する。図4は、携帯電話機8側から受信装置3に対してアクセスがあった場合の処理制御例を示す概略フローチャートである。携帯電話機8側から当該受信装置3のアドレスを指定した呼出しがあった場合(ステップS1,Yes)、当該呼出しを行った発信元の携帯電話機8があらかじめ記憶部27に設定登録されたアドレスのものであるか否かを判定する(ステップS2)。発信元の携帯電話機8が登録されたものでなければ(ステップS2,No)、処理を終了し、登録されたものであれば(ステップS2,Yes)、送信出力部31は、カプセル型内視鏡2で撮像した被検体内画像データに基づきパケットデータを生成し、携帯電話I/F回路13およびアンテナ14並びに携帯電話網7を介して、呼出しのあった携帯電話機8に対して送信出力する(ステップS3)。これにより、携帯電話機8の表示部にはカプセル型内視鏡2で撮像した被検体内画像がリアルタイムで表示される。このようなパケットデータの送信出力は、携帯電話機8側で発呼状態がオフされるまで(ステップS4,Yes)、繰り返される。
【0048】
これによれば、カプセル型内視鏡2の服用による検査中の被検者の居場所に関係なく、担当医療従事者は、自身が所有している携帯電話機8から所望の時点で院内からの遠隔操作によって被検者が携帯中の受信装置3に対してアクセスすることで、検査中の被検体内画像のリアルタイム観察を携帯電話機8の表示部9によって行うことができる。特に、院外への外出許可が出る小腸検査中の被検体内画像のリアルタイム観察が可能となる。また、被検者本人の場合も、カプセル型内視鏡2の服用による検査中の被検者の居場所に関係なく、自身が所有している携帯電話機8から自身が携帯中の受信装置3に対してアクセスすることで、検査中の被検体内画像のリアルタイム観察をいつでも携帯電話機8の表示部9によって行うことができる。今日では、携帯電話機8は日常生活において必須のデバイスとなっており、このような携帯電話機8と受信装置3とを携帯するだけで自身によるリアルタイム観察が可能となる。」

(引1-カ)

「【0051】
図6は、臓器別出力処理に伴い撮像した臓器が変わったタイミングでアクセスする場合の処理制御例を示す概略フローチャートである。当該受信装置3は、検査の開始後、カプセル型内視鏡2で撮像した画像データの分析を行うことで、臓器判定部24によって撮像臓器の変化を監視し(ステップS21)、撮像臓器が変わったか否かを随時判定する(ステップS22)。そして、撮像臓器が変わった場合(ステップS22,Yes)、撮像臓器が変わったタイミングで、送信出力部31は、カプセル型内視鏡2で撮像した被検体内画像データに基づきパケットデータを生成する(ステップS23)。さらに、記憶部27からあらかじめ設定登録されている担当医療従事者の携帯電話機8のアドレス情報を取得し、該アドレス宛の携帯電話機8にアクセスすることで、パケットデータを携帯電話I/F回路13およびアンテナ14並びに携帯電話網7を介して、当該携帯電話機8に対して送信出力する(ステップS24)。これにより、担当医療従事者の携帯電話機8の表示部9にはカプセル型内視鏡2で撮像した被検体内画像がリアルタイムに表示される。このような処理は、撮像臓器が変わるタイミングで繰り返される。」

(引1-キ)

【0054】

これによれば、担当医療従事者は、カプセル型内視鏡2の服用による検査中の被検者の居場所に関係なく、院内に居ながらにして自身が所有している携帯電話機8の表示部9を通じて検査中の被検体内画像のリアルタイム観察を病変箇所が検出される毎に行うことができる。特に、担当医療従事者は、病変箇所の画像データを観察することで、その程度等を判断し、その程度等に応じて被検者に対して院内への戻りを指示したり、極力安静に近い状態での検査続行を指示したりすることで、適正な検査の一助とすることができる。」

(引1-ク)

「図1
[図:0001404427000001.jpg]
」

(引1-ケ)

「図3
[図:0001404427000002.jpg]
」

(イ)引用発明の認定

上記(ア)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用発明:

「被検体1の内部に導入されて通過経路に沿って移動し(【0028】)、被検体内画像を撮像するカプセル型内視鏡2(【0032】)、カプセル型内視鏡2から送信された無線信号を受信し、無線信号に含まれる被検体内画像に関するデータを再構成する受信装置3(【0033】)、カプセル型内視鏡2で撮像した被検体内画像がリアルタイムで表示される携帯電話機8の表示部(【0047】)を備えた被検体内導入システム(【0028】)における受信装置3であって、
臓器判定部34と病変箇所判定部35を備える制御部28を備え(【0035】、【0040】)、
臓器判定部34は、カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データに基づき撮像臓器の変化をリアルタイムで判定するものであり(【0041】)、
病変箇所判定部35は、カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データに基づき病変箇所(出血、褪色、形状異常等)の有無をリアルタイムで判定するものである(【0042】)、
受信装置。」

イ 引用文献5に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2012-249956号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。

(引5-ア)

「【0007】
上述の通り、カプセル内視鏡は、飲み込まれてから自然排出されるまでの間、常に撮影を行っている。従って、1回のカプセル内視鏡を用いた検査によって取得される画像は、数万枚になる(たとえば、小腸用カプセル内視鏡では、約8時間の間に約6万枚の体内画像が取得される)。
【0008】
ユーザがこのような膨大な数の画像を全て確認し、病変部位等を特定することは容易ではない。つまり、画像の数が多いため読影に時間を要するという問題があった。特に、健康診断のように被検者の数が多い場合、その問題は顕著である。
【0009】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたもので、読影の効率化を図ることができるカプセル内視鏡画像処理装置及びカプセル内視鏡システムを提供することを目的とする。」

(引5-イ)

「【0022】
解析用CAD52は、記憶装置6に記憶された複数の解析プログラムのうち特定部44(後述)で特定された所定部位に対応する解析プログラムを読み出し、読み出された体内画像データに対して当該解析プログラムによる解析処理を行い、解析画像データを作成する。「解析プログラム」は、たとえば、体内画像データを解析し、当該画像データにおける病変部位(病変候補部位。たとえば出血部位)を抽出するプログラムである。「解析画像データ」とは、解析プログラムにより解析処理(たとえば、病変部位の抽出処理)がされた体内画像データである。解析処理は、たとえば、所定部位の形状特徴量、色情報、閾値等を用いて病変部位の抽出を行う。閾値は、たとえば、所定部位に病変部位(病変候補部位)があるかどうかを判断するための値である。閾値は、体内画像データ等から臨床的に求められる値である。本実施形態において、解析用CAD52が「解析部」に該当する。」

(引5-ウ)

「【0066】
また、本実施形態におけるカプセル内視鏡画像処理装置において、記憶部は、所定部位毎の画像データを解析するための複数の解析プログラムを予め記憶している。そして、複数の解析プログラムのうち特定された所定部位に対応する解析プログラムを読み出し、読み出された画像データに対して当該解析プログラムによる解析処理を行う解析部(解析用CAD52)を有する。表示制御部45は、特定された所定部位が表されている画像データに基づく画像として、解析部による解析結果に基づく解析画像を表示させる。」

ウ 引用文献6に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である国際公開第2010/113479号(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。

(引6-ア)

「[0009]本発明による画像処理装置は、被検体を断層撮影することにより取得した複数の断層画像からなる3次元画像を取得する画像取得手段と、
前記3次元画像に含まれる前記被検体の部位認識結果の情報を取得する部位情報取得手段と、
前記部位認識結果の情報に基づいて、前記3次元画像を表示する際に使用する複数のメニューから、部位に応じたメニューを特定するメニュー特定手段と、
前記特定されたメニューを表示手段に表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とするものである。」

(引6-イ)

「[0030] ここで、読影ワークステーション2には、ユーザが指示した各種解析処理を行うための解析アプリケーションがインストールされている。ここで、解析アプリケーションは、3次元画像に含まれる部位に応じて用意されている。本実施形態においては、読影ワークステーション2には、3次元画像に含まれる部位と、その部位の解析に使用する解析アプリケーションの種類とを対応づけたテーブルが記憶されている。図2は第1の実施形態に使用されるテーブルの例を示す図である。図2に示すように、テーブルT1には、部位と解析アプリケーションの種類とが対応づけられている。具体的には、頭部および頚部には脳血管抽出、胸部には肺解析、冠動脈解析、心機能解析および石灰化スコアが、胸腹部には肺解析および肝臓解析が、腹部には肝臓解析および大腸解析が、骨盤部には大腸解析の解析アプリケーションがそれぞれ対応づけられている。」

エ 引用文献7に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開平5-12352号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。

(引7-ア)

「【0042】次に、CADと呼ばれるコンピュータ支援診断装置部分について説明する。CADとは、画像データをコンピュータで解析して、例えば異常の位置等の診断支援情報を得ることである。この実施例では、例えば、ワークステーション14にこの支援情報を得る手段を持つ。」

(引7-イ)

「【0082】対象となる診断毎にCADアルゴリズムが決められていて、検査部位名毎にアルゴリズムが選択されて実行されるので、処理ができないものに対しても処理が適用された場合に、かえって誤診の原因になる診断支援情報を提供することを防ぐことができる。さらに、画像の属性としてモダリティ名、検査部位名、撮影方向等を有し、それらが処理の対象の属性と一致した時に、アルゴリズムの実行を開始するので、不適切なアルゴリズムを適用することがない。」

オ 引用文献8に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2003-271924号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。

(引8-ア)

「【0027】例えば、本発明に係る医療画像処理システムによりX線CTによる肺癌の自動診断を行った場合について説明する。被験者をX線CT装置で撮影し、肺のスライス画像を取得する。そして、本発明に係る医療画像処理システムにそのスライス画像をX線CT装置のデータ形式で取り込み、この取り込んだ医療画像データに対して肺癌診断や治療で使用することを目的とした医療画像処理を施す。医師は、医療画像処理システムに予め備えられているテンプレートを選択することで、医療画像処理を自動的に組み立てることができる。まず、医師が肺癌のスクリーニングというテンプレートを選択すると、医療画像処理システムでは、X線CT装置からのスライス画像の取り込むためのプログラム、統一データ形式に変換するためのプログラム、肺(関心臓器)を抽出するためのプログラム、および、抽出した肺を表示するためのプログラム等をテンプレートに従って順次呼び出し、実行する。これらのプログラムは、医療画像処理における基本的な処理であり、診断や治療で使用する目的に関係なく共通化されたプログラムである。さらに、抽出した肺を解析して肺癌の有無を自動診断するために、医師が肺癌の自動診断のテンプレートを選択すると、医療画像処理システムでは、肺癌の病巣を抽出する処理プログラムおよび抽出した病巣を自動診断するプログラム等をライブラリまたはインターネット上のサーバから取り込む。そして、医療画像処理システムでは、病巣を抽出するプログラム、抽出した病巣を自動診断するプログラムおよび診断結果を表示するプログラム等をテンプレートに従って順次呼び出し、実行する。この肺癌の自動診断のテンプレートは、医療画像処理システムに予め備えられている標準的な組み合せのテンプレートを使用することもできるし、あるいは、診断や治療の目的に応じて組み替えることもできる。さらに、抽出した病巣を立体的に人工造形するテンプレートを追加して、その後の手術計画や手術のリハーサルを立てることもできる。なお、この医療画像処理システムは、肝臓癌や乳癌等の他の関心臓器や症例に対しても、医師が行いたい診断や治療の目的に応じたテンプレートが選択されると、その目的に応じた専用の処理モジュールをプラグインして実行するので、医療画像を様々な症例や関心領域に対する診断または/および治療に役立てることができる。」

カ 引用文献9に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2016-189812号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。

(引9-ア)

「【0066】
図7に示すように、内視鏡検査支援画面102は、現在画像表示領域102a、撮影部位表示領域102b、過去画像表示領域102cが設けられている。現在画像表示領域102aには、現在画像49と、現在画像49を撮影中の患者の患者識別情報や、現在画像49の撮影日時情報が表示される。撮影部位表示領域102bには、撮影部位特定部98によって特定された現在画像49の撮影部位が表示される。さらに、現在画像49の取得時点における挿入量情報も表示される。
【0067】
内視鏡検査支援画面102においては、動画の撮影中は、現在画像49が順次更新される。撮影部位情報及び撮影部位の特定に使用された過去画像50は、撮影部位特定処理の実行間隔で更新される。静止画が撮影されて、現在画像49が静止画になった場合には、動画の表示中に挿入表示される。
【0068】
また、本実施形態では、特定された撮影部位を文字情報として表示することに加え、人体を模したシェーマ画像106に円形の指標108を付すことにより、特定された撮影部位を画像情報としても表示している。」

(引9-イ)

「図7
[図:0001404427000003.jpg]
」

キ 引用文献10に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2004-113629号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の事項が記載されている。

(引10-ア)

「【0026】
再び、図1の説明に戻る。超音波画像生成部10で生成された超音波画像と、模式図データ生成部11で生成された模式図データとを画像合成部12にて合成し、表示部3で超音波画像と超音波を走査する位置に対応した模式図が同一画面に表示される。
【0027】
画面表示例を図3に示す。図3は、左側に超音波画像、右側に模式図を表示した例を示す。図3に示すの模式図のように、機械走査型超音波内視鏡1の走査面と挿入形状をあわせて表示してもよく、走査面のみの表示でもよく、走査面がない模式図のみの表示でもよい。
【0028】
図3の右側の模式図には、シェーマ画像もしくは、被検者のCT画像もしくは、MRI画像もしくは、凍結死体から得られる人体の実際の光学画像でもよい。」

(引10-イ)

「図3
[図:0001404427000004.jpg]
」

ク 周知例1~4に記載された事項と周知技術の認定

(ア)周知例1(国際公開第2017/175282号)

原査定の拒絶の理由において引用された文献であり、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知例1には、次の記載が存在する。

「[0074] (実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2は、上述した実施の形態1と同様の構成を有し、画像認識装置が実行する学習処理が異なる。具体的には、本実施の形態1では、カプセル型内視鏡画像群に対する画像分類を説明していたが、本実施の形態2では、病変部等の病変部の概略位置および大きさに関する情報も学習する。なお、上述した実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。」
「[0075] 〔学習処理〕
図10は、本実施の形態2に係る画像認識装置4が実行する学習処理の概要を示すフローチャートである。なお、図10においては、CNN50のタイプをFaster R-CNN(以下、「R-CNN50」という)の例として説明する。また、図10においては、R-CNN50のネットワークを上述した実施の形態1において説明した全結合層503に代えて、物体が存在する矩形領域(Bounding Box)の位置および大きさ(矩形の4頂点)を学習して回帰および分類するネットワークを設定した場合について説明する。さらに、図10においては、画像上でなく、R-CNN50のコンボリーション層とプーリング層との最終層の出力上において、矩形領域をスライドさせる代わりに、Fully-CNNとして実現する。
・・・
[0077] 続いて、制御部45は、取得部41を介して消化器内視鏡画像データベース2から消化器内視鏡によるポリープ画像および正常画像をR-CNN50に入力する。」
「
[図:0001404427000005.jpg]
」

(イ)周知例2(国際公開第2017/203560号)

原査定の拒絶の理由において引用された文献であり、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知例2には、次の記載が存在する。

「[0026]
なお、検出部34は、観察画像G1から病変候補領域Lを検出するための処理を行う限りにおいては、特徴量算出部34a及び病変候補検出部34bを有して構成されていなくてもよい。具体的には、検出部34は、例えば、ディープラーニング等の学習手法を用いてポリープ画像を識別可能な機能を予め取得した画像識別器を観察画像G1に対して適用する処理を行うことにより、当該観察画像G1から病変候補領域Lを検出するように構成されていてもよい。」

(ウ)周知例3(特開2015-154918号公報)

原査定の拒絶の理由において引用された文献であり、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知例3には、次の記載が存在する。

「【0029】
病変候補の検出は、映像内で自動で病変候補を見つけるための多様なアルゴリズムを利用する技法を通じて行われる。例えば、ハールフィーチャー検出技法、デフォーマブルパートモデル、ディープラーニングなどの技法を利用できる。
【0030】
解剖学的客体の検出は、映像から複数の解剖学的客体のそれぞれを個別的に検出することで行われる。この場合、CDBN(Convolutional Deep Belief Network)、CNN(Convolutional Neural Network)のようなさまざまなディープラーニング技法のうち1つを利用できる。また、皮膚を検出する皮膚検出器、脂肪を検出する脂肪検出器、線組織を検出する線組織検出器、筋肉を検出する筋肉検出器のように、それぞれの解剖学的客体に対して別途の検出器を採用することもできる。」
「【0042】
病変候補検出器33は、医療映像を分析して病変候補の存否、及び存在する病変候補の位置を検出するコンポーネントである。病変候補検出器33は、病変候補の検出のために、例えば、ハールフィーチャー検出、デフォーマブルパートモデル、及び/またはディープラーニングのような技法を利用できる。検出された病変候補のそれぞれに、病変候補検出器33によって信頼度を表わす値又はスコア(score)を対応させうる。この信頼度値は、それぞれの病変候補が実際に病変であると判断される可能性を数値で表わしたものである。」

(エ)周知例4(特開2011-212094号公報)

原査定の拒絶の理由において引用された文献であり、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった周知例4には、次の記載が存在する。

「【0049】
本明細書の実施形態における全ての病変抽出部は、機械学習により構築されたものである。以下に、追加診断用病変抽出部の構築方法を説明する。本実施形態による病変抽出部は、アダブースティングアルゴリズム(Adaboosting Algorithm)を用いて、病変の領域が既知である病変を含む複数の正のサンプル画像および病変を含まないことが既知である複数の負のサンプル画像における各画素の特徴量を予め機械学習することにより、その各画素が病変を示す画素であるかどうかを評価する評価関数Fを取得したものである。特徴量は、各サンプル画像からランダムに選んだ複数の画素の特徴量を用いるものとする。病変抽出部は、取得された評価関数Fによって、任意の医用画像中の各画素が病変を示す画素であるかどうかを評価することにより、病変を抽出することができる。
【0050】
また、原発病巣の病変を抽出するCADは、病変を含む複数の正のサンプル画像として原発病巣の病変を含む複数のサンプル画像を用い、原発病巣の病変を抽出するために適した機械学習を行って構築されたものとする。さらに、追加診断用病変抽出部のうち、再発した病変を抽出するCADは、病変を含む複数の正のサンプル画像として再発した病変を含む複数のサンプル画像を用い、再発した病変の抽出に適した機械学習により構築されたものとする。同様に、転移した病変を抽出するCADは、病変を含む複数の正のサンプル画像として転移した病変を含む複数のサンプル画像を用い、再発した病変の抽出に適した機械学習により構築されたものとする。
【0051】
本実施形態に限られず、機械学習の手法としては、種々の方法が適用でき、他にも、例えば、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン、最近傍識別器等の手法を適用してもよい。」

(オ)周知技術の認定

前記(ア)において周知例1の摘記した記載中にある「Faster R-CNN」は、コンボリューショナルニューラルネットワークの一種であり、コンボリューショナルニューラルネットワークは、ディープラーニングの一種である。また、前記(イ)~(ウ)において周知例2及び3の摘記した記載では、「ディープラーニング」を用いることが記載されている。ディープラーニングは、機械学習の一種であることは技術常識である。

また、周知例1の摘記した記載および図面では、R-CNN50に「ポリープ画像および正常画像」を入力して、R-CNNの重みを更新、詰まり学習させているから、「ポリープ画像および正常画像」は、機械学習におけるサンプル画像として用いられている。周知例2、3においても、「ディープラーニング等の学習手法を用いてポリープ画像を識別可能な機能を予め取得」させており(周知例2)、また、「病変候補検出器33は、病変候補の検出のために、・・・ディープラーニングのような技法を利用」するものであり(周知例3)、ディープラーニングのような機械学習において、学習段階において、正解データとなるサンプル画像を複数学習させることは技術常識であるから、周知例2における「画像識別器」および周知例3における「病変候補検出器」が、識別対象となるポリープを含む画像や病変が存在する画像、および、正常画像を複数のサンプル画像として学習させたものであることは自明である。

そうすると、周知例1~4の(ア)~(エ)で摘記した記載で例示されるように、次の技術事項は、周知技術(以下「周知技術」という。)であると認められる。

[周知技術]

「複数のサンプル画像を機械学習させた病変検出部」

(3)対比

ア 引用発明の「被検体1の内部に導入されて通過経路に沿って移動し、被検体内画像を撮像するカプセル型内視鏡2、カプセル型内視鏡2から送信された無線信号を受信し、無線信号に含まれる被検体内画像に関するデータを再構成する受信装置3、カプセル型内視鏡2で撮像した被検体内画像がリアルタイムで表示される携帯電話機の表示部8を備えた被検体内導入システム」について、「カプセル型内視鏡2」が「被検体1の内部に導入されて通過経路に沿って移動し、被検体内画像を撮像」することから、「カプセル型内視鏡2」が被検体内の複数の位置の画像を順次撮影することは自明であるので、引用発明の「被検体1の内部に導入されて通過経路に沿って移動し、被検体内画像を撮像するカプセル型内視鏡2、カプセル型内視鏡2から送信された無線信号を受信し、無線信号に含まれる被検体内画像に関するデータを再構成する受信装置3、カプセル型内視鏡2で撮像した被検体内画像がリアルタイムで表示される携帯電話機の表示部8を備えた被検体内導入システム」は、本件補正発明の「被検者の生体内の複数の位置の画像を順次撮影しリアルタイム表示する医療機器」に相当する。

そして、引用発明の「臓器判定部34」は、判定に「カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データ」を用いるものであるから、引用発明の「受信装置3」が、「カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データ」を取得していることは自明であるので、引用発明の「受信装置3」は、本件補正発明の「被検者の生体内の複数の位置の画像を順次撮影しリアルタイム表示する医療機器から前記画像を取得する画像取得部」に相当する構成を実質的に備えていると認められる。

イ 本件補正発明の「位置情報取得部」について、引用発明において、「臓器判定部34は、カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データに基づき撮像臓器の変化をリアルタイムで判定するもの」であり、撮像臓器の変化したことを判定するためには、撮像臓器が特定されることが前提となるものであるから、「臓器判定部34」は、実質的に被検体内画像データに写っている臓器がどの臓器であるかを特定するものである。そして、本願の発明の詳細な説明の段落0057には、「画像の体腔内の位置を示す位置情報Iとして、直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸、回腸、及び空腸等が入力される。」と記載されていることから、本件補正発明における「位置情報」は、「臓器」であってもよいと解することができる。そうすると、引用発明の「カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データに基づき撮像臓器の変化をリアルタイムで判定する」「臓器判定部34」は、本件補正発明の「前記取得した画像の前記生体内の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部」に相当する。

ウ 引用発明における「病変箇所(出血、褪色、形状異常等)」は、病変箇所判定部35により判定された箇所であることから、本件補正発明の「注目領域」に相当する。また、引用発明における「被検体内画像データ」は、本件補正発明の「入力画像」に相当する。そうすると、引用発明の「カプセル型内視鏡2により撮像されて画像処理された被検体内画像データに基づき病変箇所(出血、褪色、形状異常等)の有無をリアルタイムで判定する」「病変箇所判定部35」は、本件補正発明の「入力画像から注目領域を検出する注目領域検出部」に相当するものである。

エ 引用発明の「制御部28」は、「臓器判定部34と病変箇所判定部35を備える」ものであるから、「病変箇所判定部35」は「制御部28」の制御下にあると認められるので、引用発明の「病変箇所判定部35」を制御する「制御部28」は、本件補正発明の「注目領域検出部によって前記取得した画像から注目領域を検出させる制御部」に相当する。

オ 本件補正発明の「医療画像処理装置」について、本願の発明の詳細な説明の段落0030に「図1は、第1の実施形態に係る内視鏡システム10(医療機器の一例)を示す外観図である。図1に示すように、内視鏡システム10は、内視鏡12、光源装置14、プロセッサ装置16、表示部18、及び入力部20を備えている。」と記載されるように「医療機器の一例」とされる「内視鏡システム10」は「プロセッサ装置16」を構成要素としており、段落0048には、「また、図2に示すように、プロセッサ装置16は、撮影制御部40、画像処理部42、画像取得部44、病変領域検出部46、位置情報取得部48、選択部52、病変領域検出制御部54、表示制御部58、記憶制御部60、及び記憶部62を備えている。」と記載されるとともに、段落0060には「なお、画像取得部44、病変領域検出部46、位置情報取得部48、選択部52、及び病変領域検出制御部54によって、医療画像処理装置56が構成される。」と記載されていることから、発明の詳細な説明で開示されている実施形態においては、本件補正発明の「医療画像処理装置」は、「医療機器」の構成部材である「プロセッサ装置16」に内蔵されるものであるから、本件補正発明の「医療画像処理装置」には、「医療画像処理装置」が実質的に「医療機器」の一部を構成するものを含むと解される。

そして、引用発明は、「受信装置3」が、「臓器判定部34と病変箇所判定部35を備える制御部28」を備えるものであって、且つ、「被検体内導入システム」の構成要素であることから、引用発明の「制御部28」を含む「受信装置」の一部分が、本件補正発明の「医療画像処理装置」に対応するものである。

以上によれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

一致点:

「被検者の生体内の複数の位置の画像を順次撮影しリアルタイム表示する医療機器から前記画像を取得する画像取得部と、
前記取得した画像の前記生体内の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
入力画像から注目領域を検出する注目領域検出部と、
注目領域検出部によって前記取得した画像から注目領域を検出させる制御部と、
を備える医療画像処理装置」。

相違点:

(相違点1)本件補正発明は、「前記医療機器にシェーマ図を表示させ、前記シェーマ図の前記取得した位置情報が示す位置に図形を表示させる表示制御部」を備えているのに対して、引用発明は、シェーマ図を表示させる表示制御部を備えておらず、医療機器がシェーマ図を表示するものであるのか否かが不明である点。

(相違点2)「注目領域検出部」に関して、本件補正発明は、「生体内の複数の位置にそれぞれ対応した複数」の「注目領域検出部」を備えているのに対して、引用発明は、生体内の複数の位置にそれぞれ対応した複数の「病変箇所判定部35」(注目領域検出部)を備えていない点。

(相違点3)相違点2と関連して、本件補正発明は、「前記複数の注目領域検出部から前記位置情報が示す位置に対応した注目領域検出部を選択する選択部」を備えているのに対して、引用発明は、そのような選択部を備えていない点。

(相違点4)相違点2と関連して、本件補正発明は、「前記複数の注目領域検出部は、複数の学習済みモデルであり、

前記複数の学習済みモデルは、それぞれ異なるデータセットを用いて学習したモデルであり、

前記複数の学習済みモデルは、それぞれ生体内の異なる位置を撮影した画像からなるデータセットを用いて学習したモデルである」のに対して、引用発明の「病変箇所判定部35」(注目領域検出部)は、判定をどのようにして行うのかが不明である点。

(4)判断

ア 相違点の検討

(ア)相違点1について

2(2)カで摘記したように引用文献9には、内視鏡検査支援画面の撮影部位表示領域に、撮像部位特定部によって特定された現在画像に撮像部位を、人体を模したシェーマ画像に円形の指標を付すことにより表示することが記載されており、2(2)キで摘記したように引用文献10にも、超音波画像と超音波を走査する位置に対応した模式図が同一画面に表示することと、該模式図に機械走査型超音波内視鏡の走査面と挿入形状をあわせて表示することと模式図にシェーマ画像を用いることが記載されている。

カプセル内視鏡による検査は、カプセル内視鏡が消化管内を順に移動し、複数の臓器にわたって撮像を行う検査であるから、検査画像がどの臓器の画像であるかを把握することが重要であり、このことは、当業者にとって自明であり、引用発明においても、「臓器判定部34」を具備していることからも、この重要性が把握できる。そのため、引用発明において、検査画像がどの臓器の画像であるかを検査者が把握することができるように、内視鏡に関する引用文献9記載された上記技術手段を適用して、本件補正発明の上記相違点1に係る構成を具備させることは当業者が容易に想到しうることである。また、内視鏡の撮像画像も超音波画像と同様に、X線撮影画像やMRI画像などと異なり、画像そのものから撮像部位をすぐに把握することが難しいものであることは当業者にとって自明であるから、引用文献10に記載の上記技術手段を引用発明に適用して、本件補正発明の上記相違点1に係る構成を具備させることも当業者が容易に想到しうることである。

(イ)相違点2、3について

2(2)イで摘記したように引用文献5には、所定部位毎の画像データを解析するための複数の解析プログラムを記憶しておき、特定された所定部位に対応する解析プログラムを読み出し、読み出された画像データに対して当該解析プログラムによる解析処理を行い、病変部位(病変候補部位。たとえば出血部位)を抽出することが記載されている。また、医療画像解析に際して、検査部位毎に解析アプリケーションを用いること(2(2)ウで摘記した引用文献6の記載)、検査部位毎にCADアルゴリズムを選択して実行すること(2(2)エで摘記した引用文献7の記載)、関心臓器など診断の目的に応じたテンプレートを選択し、その目的に応じた専用の処理モジュールをプラグインして実行すること(2(2)オで摘記した引用文献8の記載)が引用文献6~8にそれぞれ記載されており、引用文献6、7の「検査部位」や引用文献8の「関心臓器」は、撮影対象となる部位であるから「撮像位置」であって、引用文献6の「解析アプリケーション」、引用文献7の「CADアルゴリズム」、引用文献8の「専用の処理モジュール」は、医療画像を解析して検査部位の診断支援を行うためのものである。そうすると、撮像位置に応じた解析プログラムを選択して実行することは、医療画像解析において一般的な技術であることが把握でき、撮像部位に応じた解析プログラムであれば、撮像部位に特化していない汎用的な解析プログラムに比べて精度よい解析が行えることは当業者であれば当然予想しうることである。

複数の臓器にわたって撮影を行う内視鏡検査において、臓器により画像の特徴が異なることは技術常識であるから、引用発明においても、部位に応じた精度のよい解析が行えるように、所定部位に対応する解析プログラムを呼び出して解析処理を行う引用文献5に記載の上記技術手段を適用して、病変箇所判定部35を、撮像部位毎に複数具備させ、撮像した部位に応じて選択するように変更して、本件補正発明の相違点2、3に係る各構成を具備させることは当業者が容易に想到しうることである。

(ウ)相違点4について

2(2)ク(オ)のとおり「複数のサンプル画像を機械学習させた病変検出部」は周知技術であるから、本件出願前に機械学習により精度よく病変を検出しようとする課題も、周知であったと認められる。また、サンプル画像を用いて機械学習させるに際して、サンプル画像として、病変検出部が検出対象とする病変検出部位の病変画像及び正常画像を用いることは、検出精度を確保するために自明な事項であり、病変検出部位以外の画像が学習に適していないことは技術常識である。

そうすると、引用発明において、病変箇所判定部35の判定精度を向上させるために、上記周知技術を採用して、病変箇所判定部35(注目領域検出部)を学習済みモデルとすることは当業者が容易に想到しうることであり、その際、上記(イ)で相違点2、3について検討したように、病変箇所判定部を撮像した部位に対応するように複数具備させる場合には、部位毎に、各部位に対応したサンプル画像(つまり、部位毎に異なるサンプル画像)を学習させることは、当業者であれば当然なし得る事項にすぎないので、本件補正発明の相違点4に係る構成を具備させることとなる。

イ 本件補正発明の効果

本件補正発明の効果は、引用文献1、5~10及び周知技術から当業者が十分予想しうる範囲内である。

ウ 審判請求人の主張についての判断

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審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、

「引用文献1に記載の発明は、病変箇所判定部35について、撮影位置によっては最適な病変領域の検出を行うことが難しい、という課題を認識していません。このような課題を有さず、異なる目的のために位置情報を取得している引用文献1に記載の発明に、引用文献5-8に記載の技術を適用する動機付けはありません。」、「撮影位置によっては最適な病変領域の検出を行うことが難しい、という技術的課題を解決する意図のもとに引用文献1に記載の病変箇所判定部35に代えて引用文献5-8、11-14に記載のものを採用することは、当業者といえでも到底想致し得ることではありません。しかも、本願発明は、この構成を採用することにより、画像の生体内の位置に応じた病変領域の検出を適切に行うことができるという格別な作用効果を奏するものです。」と主張している。

これらの主張について医療画像の解析において、解析精度を向上させ、適切な病変領域の検出を行わせることは、医療画像解析における周知な課題であり、引用発明においても当然内在している課題であり、引用文献1において、この周知な課題が除外されることを示す記載も存在しない。そのため、審判請求人の上記主張は採用することができない。

エ まとめ

したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献5~10の記載事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の適否のむすび

上記2のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができず、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和4年11月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、同年4月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含んでいる。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項:1-7、9-13
・引用文献等:1、5-14

<引用文献等一覧>

1.特開2007-151809号公報

5.特開2012-249956号公報

6.国際公開第2010/113479号

7.特開平5-12352号公報

8.特開2003-271924号公報

9.特開2016-189812号公報

10.特開2004-113629号公報

11.国際公開第2017/175282号(周知技術を示す文献)

12.国際公開第2017/203560号(周知技術を示す文献)

13.特開2015-154918号公報(周知技術を示す文献)

14.特開2011-212094号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、5~14の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)ア~クに記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「複数の学習済みモデル」が「前記複数の学習済みモデルは、それぞれ異なるデータセットを用いて学習したモデルであり、

前記複数の学習済みモデルは、それぞれ生体内の異なる位置を撮影した画像からなるデータセットを用いて学習したモデルである」ことに係る限定事項を削除したものである。

本件補正発明については、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献5~10の記載事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献5~10の記載事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献5~10に記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-018344

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