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特許拒絶査定不服審判

2022-017534

電流センサ及び電力量計

審判番号
2022-017534
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-038551外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年11月01日
審決日
2023年08月30日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .575-Z (G01R) / P18 .121-Z (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-38551号「電流センサ及び電力量計」拒絶査定不服審判事件〔令和元年9月12日出願公開、特開2019-152558号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年3月5日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和4年 1月21日付け:拒絶理由通知書

同年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出

同年 7月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同年 8月 2日 :原査定の謄本の送達)

同年11月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定]

令和4年11月1日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]

1 本件補正の概要

令和4年11月1日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。

(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】
検知すべき電流が流れる線状の電流バーと、前記電流バーが貫通するとともに1以上の空隙が設けられた集磁コアと、前記1以上の空隙に設けられた1以上の磁気検出素子を有する基板とを有し、前記1以上の磁気検出素子が検出した磁気検出結果によって前記電流バーを流れる電流を検出する電流センサであって、
前記電流バーは、前記1以上の空隙のうちの1つの前記空隙を3方向から囲むように配置され、
前記空隙を3方向から囲む電流バーの軸に囲まれる平面は前記空隙を通過するように配置されることを特徴とする電流センサ。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1

「【請求項1】
検知すべき電流が流れ電流の流れる方向を長手方向とする線状の電流バーと、前記電流バーが中央開口を貫通するとともに1以上の空隙が任意の位置に形成された集磁コアと、前記1以上の空隙に設けられた1以上の磁気検出素子を有する基板とを有し、前記1以上の磁気検出素子が検出した磁気検出結果によって前記電流バーを流れる電流を検出する電流センサであって、
前記電流バーは、前記1以上の空隙のうちの1つの前記空隙の幅に対応した同等の太さを有し、1つの前記空隙を3方向から囲むように配置され、
1つの前記空隙を3方向から囲む電流バーの軸に囲まれる平面は1つの前記空隙を通過するように配置されることを特徴とする電流センサ。」

2 本件補正の目的

(1) 本件補正のうち請求項1についての補正は、次のア~エの限定を行うものである。

なお、「集磁コア」の「1以上の空隙」が「任意の位置に形成された」ものであると補正したこと(以下「補正事項1」という。)については、集磁コアのどこかに空隙が存在することは、本件補正の前後において変わらないから、「集磁コア」の「1以上の空隙」について限定したものであるとは認められない。

しかしながら、本件補正のうち請求項1についての補正を全体としてみれば、以下の(3)に示すとおり、本件補正の目的が、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものとして取り扱うのが適当であると判断した。

ア 本件補正前の「検知すべき電流が流れる線状の電流バー」について、「電流の流れる方向」が「線状の電流バー」の「長手方向」であることに限定すること。

イ 本件補正前の「前記電流バーが貫通するとともに1以上の空隙が設けられた集磁コア」について、「電流バーが貫通する」箇所が「集磁コア」の「中央開口」であることに限定すること。

ウ 本件補正前の「前記1以上の空隙のうちの1つの前記空隙を3方向から囲むように配置され」た「前記電流バー」について、「前記1以上の空隙のうちの1つの前記空隙の幅に対応した同等の太さ」を有することに限定すること。

エ 本件補正前の「前記空隙を3方向から囲む電流バーの軸に囲まれ」、「前記空隙を通過するように配置される」「平面」について、「電流バー」が「3方向から囲む」「前記空隙」の数を「1つ」とし、「平面」が「通過する」「前記空隙」の数を「1つ」とすることに限定すること。

(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。

(3) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件についての当審の判断

本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。

(1) 本件補正発明

本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定

ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定

(ア) 引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された特開2001-66328号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付与した。以下同様である。

a 段落【0001】、【0023】~【0030】、【図1】~【図3】

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等といった機器に搭載される電気回路に流れる電流を検出する電流センサ及びこれを用いた電気回路に関し、特に電流検出の精度を向上させる技術に関する。」
「【0023】(第1の実施の形態)図1は本発明の第1の実施の形態に係る電流センサの外観斜視図であり、図2は電流センサの構造を筐体10を除去して示す斜視図であり、図3は電流センサの構造を筐体10を除去して示す側断面図である。
【0024】この電流センサは、略直方体状に構成された筐体10を有し、この筐体10の一側面からこの側面に対向する他の側面に突き抜けるようにして、バスバー等の帯状の導体(以下、電気回路の配線に使用される配線導体と区別するために「センサ導体」と呼ぶ。)20が筐体10に固定されている。
【0025】センサ導体20の中央部は、筐体10の内部に収容されており、筐体10から導出された両端部は、筐体10の表面から所定の位置で折り曲げることによりコ字状に成形されている。このコ字状に形成されたセンサ導体20の脚部は端子として使用されるようになっている。
【0026】また、筐体10の内部にはホール素子30が搭載された基板40が固定されている。基板40上におけるホール素子30は、センサ導体20の近傍であって、その導体幅の略中央に対応する位置に取り付けられている。また、ホール素子30は、その感磁面がセンサ導体20の表面に垂直であり、且つセンサ導体20の長手方向に平行になる方向に取り付けられている。
【0027】以上のように構成される電流センサにおいて、図3に示すように、センサ導体20に電流が流れると、アンペアの右ネジの法則に従って電流の大きさに応じた磁束が発生する。この磁束はホール素子30の感磁面に垂直に入り、ホール素子30は磁束密度に比例した電圧信号を出力する。この電圧信号はセンサ導体20に流れる電流の大きさに比例しているので、この電圧信号を検出することによりセンサ導体20に流れる電流の大きさを検出できる。
【0028】この第1の実施の形態に係る電流センサは、センサ導体20及びホール素子30が搭載された基板40のいずれもが筐体10に固定されて一体に構成されている。従って、従来のような部品の取り付け誤差が発生せず、被測定電流が流れるセンサ導体20に対するホール素子30の位置は精密に決定される。その結果、高い精度で電流を検出することができる。
【0029】また、この電流センサは、従来のような環状に形成されたリング型集磁コアを備えていないので小型化が可能である。また、この電流センサは、集磁コアを備えていないのでセンサ導体20に流れる電流によって発生される磁束の一部だけがホール素子30の感磁面に入力される。従って、大電流を検出するのに好適である。更に、電流センサ自体を1個の部品として取り扱うことができるので、取り扱いに優れたものとなっている。
【0030】なお、この第1の実施の形態では1個のホール素子30だけを備えた電流センサを説明したが、2個以上のホール素子30を備えるように構成してもよい。例えば2個のホール素子31,32を備える電流センサの場合、各ホール素子31,32は、図4に示すように、センサ導体20の両側近傍に対応する位置の基板40上に配置し、それらの感磁面が基板40の面と平行になる方向に取り付けることができる。この構成によっても上記と同様の効果を奏することができる。」
「【図1】
[図:0001403419000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001403419000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001403419000003.jpg]
」

b 段落【0031】~【0037】、【図5】~【図6】

「【0031】(第2の実施の形態)本発明の第2の実施の形態に係る電流センサは、リング型集磁コアを備えている点が上述した第1の実施の形態に係る電流センサと異なる。
【0032】図5は本発明の第2の実施の形態に係る電流センサの構造を、筐体10を除去して示す斜視図であり、図6は電流センサの構造を筐体10を除去して示す側断面図である。
【0033】この電流センサは、上述した第1の実施の形態に係る電流センサの構成に加え、ギャップ51を有するリング型集磁コア50を備えている。このリング型集磁コア50は、そのギャップ51でホール素子30を挟み、且つセンサ導体20を取り巻くようにして基板40に固定されている。
【0034】このように構成される電流センサにおいて、図6に示すように、センサ導体20に電流が流れると、アンペアの右ネジの法則に従って電流の大きさに応じた磁束が発生する。この磁束の殆どはリング型集磁コア50の内部を通り、ギャップ51の位置でホール素子30の感磁面に垂直に入る。これにより、ホール素子30は磁束密度に比例した電圧信号を出力するので、この電圧信号を検出することによりセンサ導体20に流れる電流の大きさを検出できる。
【0035】この第2の実施の形態に係る電流センサによれば、センサ導体に流れる電流によって発生される磁束の殆どはリング型集磁コア50により収束されてホール素子30に供給されるので、センサ導体20に流れる小電流を高感度で検出できる。従って、この電流センサは、特に小電流の検出に好適である。
【0036】また、従来の環状コアを用いた電流センサの場合、電流センサ組み付け時には環状コアの中に被測定導体を通さなければならず、この作業が非常に面倒であった。
【0037】しかし、この第2の実施の形態に係る電流センサのようにホール素子30とセンサ導体20とを一体構造にすることにより、例えばエンジンルーム内のジャンクションボックスやリレーボックスといった電源分配装置に電流センサを取り付ける際は、例えばヒューズを実装する場合のように端子を嵌合させるだけで電流センサを実装できるので、電流センサの取り付けが非常に簡単になる。」
「【図5】
[図:0001403419000004.jpg]
」
「【図6】
[図:0001403419000005.jpg]
」

(イ) 引用文献1の記載から認定した事項

a 引用文献1の【0031】において、「第2の実施の形態に係る電流センサは、リング型集磁コアを備えている点が上述した第1の実施の形態に係る電流センサと異なる」としており、【0032】において、「図5は本発明の第2の実施の形態に係る電流センサの構造を、筐体10を除去して示す斜視図であり、図6は電流センサの構造を筐体10を除去して示す側断面図である」としているから、引用文献1の「第2の実施の形態に係る電流センサ」として【図5】及び【図6】に開示された電流センサも、「筐体10」を備えるものであり、以下の(a)~(c)の構成を有すると認められる。

(a) 「略直方体状に構成された筐体10を有し、この筐体10の一側面からこの側面に対向する他の側面に突き抜けるようにして、バスバー等の帯状の導体(以下、電気回路の配線に使用される配線導体と区別するために「センサ導体」と呼ぶ。)20が筐体10に固定されている」こと(【0024】参照)。

(b) 「センサ導体20の中央部は、筐体10の内部に収容されており、筐体10から導出された両端部は、筐体10の表面から所定の位置で折り曲げることによりコ字状に成形されて」おり、「このコ字状に形成されたセンサ導体20の脚部は端子として使用されるようになっている」こと(【0025】参照)。

(c) 「筐体10の内部にはホール素子30が搭載された基板40が固定されて」おり、「基板40上におけるホール素子30は、センサ導体20の近傍であって、その導体幅の略中央に対応する位置に取り付けられて」おり、「ホール素子30は、その感磁面がセンサ導体20の表面に垂直であり、且つセンサ導体20の長手方向に平行になる方向に取り付けられている」こと(【0026】参照)。

b 引用文献1の【図6】の記載から、「リング型集磁コア50」には、その中央部分を含む領域に開口が形成されており、「センサ導体20」は、「リング型集磁コア50」の中央部分を含む領域に形成された開口を貫通することが読み取れる。

c 引用文献1の【図5】及び【図6】の記載から、「コ字状に形成されたセンサ導体20」(段落【0025】参照)は、「ギャップ51」を3方向から囲むように配置されることが読み取れる。

(ウ) 引用発明の認定

前記(ア)において摘記した引用文献1の記載事項及び前記(イ)において認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]

「電気回路に流れる電流を検出する電流センサであって、(【0001】)
略直方体状に構成された筐体10を有し、この筐体10の一側面からこの側面に対向する他の側面に突き抜けるようにして、バスバー等の帯状の導体(以下、電気回路の配線に使用される配線導体と区別するために「センサ導体」と呼ぶ。)20が筐体10に固定されており、(認定事項a(a))
センサ導体20の中央部は、筐体10の内部に収容されており、筐体10から導出された両端部は、筐体10の表面から所定の位置で折り曲げることによりコ字状に成形されており、このコ字状に形成されたセンサ導体20の脚部は端子として使用されるようになっており、(認定事項a(b))
筐体10の内部にはホール素子30が搭載された基板40が固定されており、基板40上におけるホール素子30は、センサ導体20の近傍であって、その導体幅の略中央に対応する位置に取り付けられており、ホール素子30は、その感磁面がセンサ導体20の表面に垂直であり、且つセンサ導体20の長手方向に平行になる方向に取り付けられており、(認定事項a(c))
ギャップ51を有するリング型集磁コア50は、そのギャップ51でホール素子30を挟み、且つセンサ導体20を取り巻くようにして基板40に固定され、(【0033】)
リング型集磁コア50には、その中央部分を含む領域に開口が形成されており、センサ導体20は、リング型集磁コア50の中央部分を含む領域に形成された開口を貫通するものであり、(認定事項b)
コ字状に形成されたセンサ導体20はギャップ51を3方向から囲むように配置されており、(認定事項c)
センサ導体20に電流が流れると、アンペアの右ネジの法則に従って電流の大きさに応じた磁束が発生し、この磁束の殆どはリング型集磁コア50の内部を通り、ギャップ51の位置でホール素子30の感磁面に垂直に入り、ホール素子30は磁束密度に比例した電圧信号を出力し、この電圧信号を検出することによりセンサ導体20に流れる電流の大きさを検出できるものであり、(【0034】)
センサ導体20に流れる小電流を高感度で検出できる、(【0035】)
電流センサ(【0001】)。」

イ 引用文献5に記載された事項と引用文献5技術事項の認定

(ア) 引用文献5に記載された事項

当審において新たに引用する特開2004-77184号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。

a 段落【0010】~【0011】、【0017】、【図1】

「【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、第1の実施形態に係る電流検出センサを示し、この電流検出センサは回路基板2に実装されたセンサユニット4を備える。回路基板2上の導体6は略コの字形状のワイヤからなり、回路基板2と平行な支持部8と、この支持部8の両端からそれぞれ回路基板2に向けて延びる一対の脚部10とを有する。これら脚部10の先端はそれぞれ、回路基板2の装着孔(図示しない)に差し込み可能なプラグ12として形成され、これらプラグ12の差し込み後、導体6は回路基板2に半田付けにて固定されている。導体6のプラグ12は、検出すべき電流、即ち、負荷電流が流れる配線(図示しない)にそれぞれ接続され、負荷電流の供給を受けることができる。
【0011】
導体6の支持部8は円環状の磁性体、即ち、環状のプラスチックマグネット14を貫通しており、このプラスチックマグネット14は支持部8に合成樹脂製の電気絶縁リング16を介して支持されている。
プラスチックマグネット14の外周面にはその一部にギャップが形成され、このギャップは回路基板2に向けて開口している。ギャップには感磁性素子としてのホール素子18が装着されており、このホール素子18はそのパッケージと、このパッケージから回路基板2に向けて突出した入出力端子20とを有する。この入出力端子20は回路基板2上のプリント配線に半田を介して電気的に接続され、プリント配線は入出力端子20を増幅器22及びインタフェース保護回路24を介してモニタ回路26に接続しており、これら増幅器22、インタフェース保護回路24及びモニタ回路26もまた回路基板2上に配置されている。」
「【0017】
上述した電流検出センサ1によれば、センサユニット4の導体6に負荷電流が流れると、この負荷電流は導体6の周囲に磁界を発生する。この磁界はプラスチックマグネット14内の磁束を増加させ、この磁束の変化がホール素子18の入出力端子20から出力される。この後、この出力は増幅器22、インタフェース保護回路24及びモニタ回路26に供給され、このモニタ回路26にて負荷電流の値が検出される。」
「【図1】
[図:0001403419000006.jpg]
」

b 段落【0021】、【図3】

「【0021】
図3は、第2の実施形態に係る電流検出センサを示す。この電流検出センサを説明するにあたり、第1の実施形態に係る電流検出センサと同様な機能を有する部材及び部位には同一の参照符号を付して、それらの説明は省略し、相違する点のみを説明する。
第1の実施形態に係る電流検出センサは小さい負荷電流(10A以下)の検出に適用されるものであるが、第2の実施形態に係る電流検出センサは大きい負荷電流(10Aよりも大)の検出に適用される。」
「【図3】
[図:0001403419000007.jpg]
」

(イ) 引用文献5技術事項の認定

前記(ア)に摘記した引用文献5の記載事項を踏まえると、引用文献5には、次の技術事項(以下「引用文献5技術事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献5技術事項]

「回路基板2に実装されたセンサユニット4を備える電流検出センサであって、(【0010】)
回路基板2上の導体6は略コの字形状のワイヤからなり、回路基板2と平行な支持部8と、この支持部8の両端からそれぞれ回路基板2に向けて延びる一対の脚部10とを有し、これら脚部10の先端はそれぞれ、回路基板2の装着孔に差し込み可能なプラグ12として形成され、これらプラグ12の差し込み後、導体6は回路基板2に半田付けにて固定され、導体6のプラグ12は、検出すべき電流、即ち、負荷電流が流れる配線にそれぞれ接続され、負荷電流の供給を受けることができ、(【0010】)
導体6の支持部8は円環状の磁性体、即ち、環状のプラスチックマグネット14を貫通しており、このプラスチックマグネット14は支持部8に合成樹脂製の電気絶縁リング16を介して支持され、プラスチックマグネット14の外周面にはその一部にギャップが形成され、このギャップは回路基板2に向けて開口しており、ギャップには感磁性素子としてのホール素子18が装着されており、このホール素子18はそのパッケージと、このパッケージから回路基板2に向けて突出した入出力端子20とを有し、この入出力端子20は回路基板2上のプリント配線に半田を介して電気的に接続され、プリント配線は入出力端子20を増幅器22及びインタフェース保護回路24を介してモニタ回路26に接続しており、これら増幅器22、インタフェース保護回路24及びモニタ回路26もまた回路基板2上に配置されており、(【0011】)
センサユニット4の導体6に負荷電流が流れると、この負荷電流は導体6の周囲に磁界を発生し、この磁界はプラスチックマグネット14内の磁束を増加させ、この磁束の変化がホール素子18の入出力端子20から出力され、この後、この出力は増幅器22、インタフェース保護回路24及びモニタ回路26に供給され、このモニタ回路26にて負荷電流の値が検出されるものであり、(【0017】)
小さい負荷電流(10A以下)の検出に適用されるものである、(【0021】)
電流検出センサ。(【0010】」

ウ 引用文献6、7に記載された事項と技術常識1の認定

(ア) 引用文献6に記載された事項

当審において新たに引用する特開平6-130087号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。

a 段落【0013】~【0014】、【図1】

「【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の電流検出器の樹脂ブロックの構造を示す斜視図であり、図2は、本発明の電流検出器の1実施例を示す。
【0014】図1に示すように樹脂ブロック3は、磁気ギャップ6を有する強磁性体コア1と、金属帯(バスバー)2とを所定の位置関係に保持して一体成形されている。金属帯2は、コの字型形状であり、その中央部が強磁性体コア1の中空部分を貫通するような位置関係を保持しつつ樹脂モールドされている。又、金属帯2の端部11,12は樹脂ブロック3の外部に露出し、回路基板5(図2参照)へ実装するための端子の役割を果たしている。」
「【図1】
[図:0001403419000008.jpg]
」

b 段落【0015】~【0017】、【図2】

「【0015】図2に示されるように、樹脂ブロック3には、回路基板5を実装するための平面部33、及び両側に段差部21及び22が設けられている。即ち、段差部21及び22は回路基板5を平面部23へ実装する位置を規定するために設けられている。
【0016】回路基板5上の感磁素子4は、回路基板5が平面部23上にて強磁性体コア1の磁気ギャップ部分6内に位置するように回路基板上に位置されている。
【0017】回路基板5を平面部23上に接着固定することにより電流検出器が構成される。」
「【図2】
[図:0001403419000009.jpg]
」

(イ) 引用文献7に記載された事項

当審において新たに引用する実願平3-95026号(実開平5-36376号)のCD-ROM(以下「引用文献7」という。)の段落【0007】、【図1】~【図3】には、次の事項が記載されている。

「【0007】
【実施例】
本考案の電流検出器の実施例について、図面を参照して説明する。図1ないし図3は本考案による一実施例を示し、図1は正面構成図であり、図2は断面構成図、図3はブスバー側を示す背面の一部破断斜視図を示す。磁気コアの磁気空隙に挿入しブスバーに流れる検出電流が磁気空隙に作る磁界を検出する感磁素子3と、感磁素子の出力を増幅する回路部品4と、出力の増幅回路の利得とドリフトを調整するトリミング抵抗5を配設した信号処理回路を形成した回路基板1と、部品を実装した面の反対面にU字形の良導電体からなる金属板のブスバー6を回路基板上に接着などで固着させる。この時感磁素子を駆動し、又感磁素子の出力を増幅する信号入出力端子7と検出電流入出力端子6a,6bであるブスバー6の両端末は、回路基板面の両端面に並び配置する。磁気空隙9を設けたトロイダル形の高い比透磁率特性を有する磁気コア2には、図2に示すように回路基板1上の感磁素子3が、その磁気コア2の磁気空隙9の間に位置し、かつ検出電流が流れるブスバー6が強磁性体コア2の内径を貫通するよう配設し、ブスバー6は回路基板1に接着などにより固着される。回路基板1の上に接着などによって固着された磁気コア2、ブスバー6は、更に粉体塗装法又は樹脂ディップ法などによって樹脂モールドされるため、回路基板、磁気コア、感磁素子、回路部品は強固に一体となった構造となる。被検出電流をブスバー6の両端末の検出電流入出力端子6a,6b間に通電すると、磁気コアには1ターンの巻線を形成してブスバーに流れる電流の値に応じた磁界が、磁気コア2の磁気空隙9の間に発生する。磁気空隙9内に配設された磁気空隙に発生した磁界に比例した電圧を出力するホール素子などの感磁素子3により、磁気空隙9内の磁界を電圧信号に変換し、出力信号は感磁素子3の後段の回路部品4に形成された増幅回路によって電圧増幅され、信号入出力端子7を介して出力信号を外部導体に出力する。即ち、本考案による電流検出器の構造とすることにより、ブスバー6に流れる被検出電流の値に応じた直流電圧の出力信号を感磁素子の出力に発生させることができる。又、増幅回路には増幅度及びオフセット電圧を調整するため、トリミング抵抗を回路基板上でレーザトリミングなどにより高精度に出力信号を調整することができる。又、磁気コア2とブスバー6、又は磁気コア2と感磁素子3との間に電気絶縁シートを挿入配置させることにより、磁気コアとブスバー、又は磁気コアと感磁素子との間の電気絶縁耐圧を保証する。」
「【図1】
[図:0001403419000010.jpg]
」
「【図2】
[図:0001403419000011.jpg]
」
「【図3】
[図:0001403419000012.jpg]
」

(ウ) 技術常識1の認定

前記(ア)に摘記した事項(特に引用文献6の図1に示された強磁性体コア1の磁気ギャップ6と、コの字型形状の金属帯(バスバー)2との位置関係を参照)及び(イ)に摘記した事項(特に引用文献7の図2に示された磁気コア2の磁気空隙9と、ブスバー6との位置関係を参照)に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という)。

[技術常識1]

「電流検出器において、磁気コアの1つの空隙を3方向から囲む電流バーを含む平面が、前記空隙を通過するように配置されること。」

エ 引用文献8に記載された事項と技術常識2の認定

(ア) 引用文献8に記載された事項

当審において新たに引用する独国特許出願公開第10011047号明細書(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。なお、原文にあるウムラウト記号は、「ae」、「oe」、「ue」と変換し、エスツェット記号は「ss」と変換して摘記した。日本語訳は合議体が作成したものである。

a 2欄60行~3欄8行、図1

「Bei der in Fig. 1 gezeigten Ausfuehrungsform eines erfindungsgemaessen Stromsensors ist neben einer Primaerwicklung und einem Magnetfeldsensor 2 (wie zum Beispiel einem Hall-Sensor) eine weitere Wicklung vorgesehen, wobei Primaerwicklung und zusaetzliche Wicklung jeweils als Streifenleiter 1 bzw. 3 ausgebildet sind. Statt Streifenleitern koennte in gleicher Weise auch jede andere Leiterform Verwendung finden. Der Magnetfeldsensor 2 ist in einem Luftspalt 5 eines weichmagnetischen Kerns 4 angeordnet. Der Kern 4 hat einen im wesentlichen rechteckfoermigen Querschnitt und ist ausgehend von dem Luftspalt 5 ringfoermig ausgebildet derart, dass die Grundflaeche in etwa rechteckfoermig ist. Anstelle einer rechteckigen Grundflaeche und eines rechteckfoermigen Querschnitts koennte aber jede beliebige, eine Ringform des Kerns 4 ermoeglichende Grund- und Querschnittsflaeche wie beispielsweise eine ovale,runde Flaeche etc. verwendet werden.」

(図1に示された本発明による電流センサの実施例では、一次巻線と磁界センサ2(例えばホールセンサ)の他に別の巻線が設けられており、その際一次巻線と付加的な巻線はそれぞれストリップ線路1ないし3として構成されている。帯状導体の代わりに、同様に他のあらゆる導体形状も使用することができる。磁界センサ2は軟磁性コア4のエアギャップ5内に配置されている。コア4は実質的に矩形の断面を有しており、空隙5を起点としてリング状に形成されており、底面はほぼ矩形である。しかし、長方形の底面及び長方形の横断面の代わりに、コア4のリング形状を可能にする任意の底面及び横断面、例えば楕円形、円形の面等を使用することができる。)

「図1
[図:0001403419000013.jpg]
」

b 3欄9~23行

「Der Streifenleiter 1 (Primaerwicklung) durchdringt dabei die Grundflaeche des Kerns 4 im wesentlichen geradlinig derart,dass er vom Kern 4 abgesehen von dessen Luftspalt 5 ueber den vollen Umfang umschlossen wird. Erfindungsgemaess ist ein zweiter Streifenleiter 3 (zusaetzliche Wicklung), der dem ersten Streifenleiter 1 (Primaerwicklung) elektrisch parallel geschaltet ist, ausserhalb des Kerns 4, jedoch in dessen unmittelbarer Naehe, und in Bezug auf den ersten Streifenleiter 1(Primaerwicklung) dem Luftspalt 5 gegenueberliegend angeordnet. Der als zusaetzliche Wicklung dienende Streifenleiter 3 erzeugt dabei einen mangetischen Fluss, der den durch beispielsweise einen unsymmetrisch innerhalb des Kerns angeordneten Streifenleiters 1 (Primaerwicklung) hervorgerufene ungleichmaessige Flussverteilung im Kern 4 kompensiert.」

(この場合、ストリップ線路1(一次巻線)は、コア4のエアギャップ5を除いてコア4によって全周にわたって包囲されるように、コア4の底面をほぼ直線的に貫通している。本発明によれば、第1のストリップ線路1(一次巻線)に電気的に並列接続された第2のストリップ線路3(付加巻線)が、コア4の外側であってその近傍に、第1のストリップ線路1(一次巻線)に対してエアギャップ5に対向して配置されている。付加的な巻線として用いられるストリップ線路3は磁束を形成し、この磁束は例えばコア内に非対称に配置されたストリップ線路1(一次巻線)によって引き起こされるコア4内の不均一な磁束分布を補償する。)

c 4欄59行~5欄2行、図7

「Beim Ausfuehrungsbeispiel nach Fig. 7 sind gegenueber der in Fig. 1 gezeigten Ausfuehrungsform die Streifenleiter u-foermig ausgebildet. Die U-Form ergibt dabei eine Wicklung mit der Wickungszahl von 0,75. Dabei verlaufen die beiden Streifenleiter 1 und 3 weiterhin parallel, so dass sich zwei ineinander geschachtelte "U" ergeben. Es kann der Abstand zwischen den entsprechenden Schenkeln der u-foermigen Streifenleiter 1und 3 einander gegenueber im Hinblick auf den Abstand im Bereich des Kerns 4 auch verkleinert werden, womit sich der Einfluss von Stoerfeldern, hervorgerufen durch die Stromzufuehrung, verringern laesst. Die U-Form bietet insgesamt einen groesseren Messbereich.」

(図7による実施例では、図1に示された実施例に対して、ストリップ線路がU字形に形成されている。この場合、U字形は0.75の巻数を有する巻線を生じる。

この場合、二つのストリップ線路1及び3はさらに平行に延在しているので、互いに入れ子にされた二つのUが生じる。U字形のストリップ線路1と3の相応の脚部間の相互間隔は、コア4の領域における間隔に対して相対的に小さくすることもでき、これにより電流源によって引き起こされる外乱磁場の影響が低減される。U字形は全体としてより広い測定範囲を提供する。)

「図7
[図:0001403419000014.jpg]
」

(イ) 技術常識2の認定

前記イ(ア)に摘記した事項(特に引用文献5の図1に示された導体6のワイヤ形状を参照)及び前記エ(ア)に摘記した事項(特に引用文献8の「帯状導体の代わりに、同様に他のあらゆる導体形状も使用することができる。」という記載を参照)に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という)。

[技術常識2]

「電流センサにおいて、検知すべき電流が流れる電流バーの形状としては、帯状の他に線状を含む様々な形状を想定することができること。」

(3) 対比・判断

ア 対比

(ア) 対比分析

本件補正発明と引用発明を対比する。

a 引用発明の「電気回路に流れる電流を検出する電流センサ」は、本件補正発明の「電流センサ」に相当するから、本件補正発明と引用発明は、「電流センサ」の発明である点において一致する。

b 引用発明の「電流センサ」は「センサ導体20に流れる電流の大きさを検出できる」から、引用発明の「センサ導体20」は、検出すべき電流が流れるバスバー等の帯状の導体であるといえる。

よって、引用発明の「センサ導体20」は、本件補正発の「検知すべき電流が流れ[る]電流バー」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明は、「検知すべき電流が流れる電流バーを有する電流センサ」である点で共通する。

c 引用発明の「リング型集磁コア50」は、本件補正発明の「集磁コア」に相当する。

引用発明の「リング型集磁コア50の中央部分を含む領域に形成された開口」は、本件補正発明の「集磁コア」の「中央開口」に相当する。

引用発明の「センサ導体20は、リング型集磁コア50の中央部分を含む領域に形成された開口を貫通する」ことは、本件補正発明の「前記電流バーが中央開口を貫通する」ことに相当する。

引用発明の「リング型集磁コア50」が有する「ギャップ51」は、本件補正発明の「集磁コア」に「形成された」「1以上の空隙」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記電流バーが中央開口を貫通するとともに1以上の空隙が形成された集磁コアを有する電流センサ」である点で共通する。

d 引用発明の「ホール素子30」は、本件補正発明の「磁気検出素子」に相当する。

引用発明の「リング型集磁コア50」の「ギャップ51」が「ホール素子30を挟[む]」ことは、本件補正発明の「1以上の磁気検出素子」が「前記1以上の空隙に設けられた」ことに相当する。

引用発明の「ホール素子30が搭載された基板40」は、本件補正発明の「磁気検出素子を有する基板」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記1以上の空隙に設けられた1以上の磁気検出素子を有する基板を有する電流センサ」である点で共通する。

e 引用発明の「ホール素子30は磁束密度に比例した電圧信号を検出することによりセンサ導体20に流れる電流の大きさを検出できる」ことは、本件補正発明の「前記1以上の磁気検出素子が検出した磁気検出結果によって前記電流バーを流れる電流を検出する」ことに相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記1以上の磁気検出素子が検出した磁気検出結果によって前記電流バーを流れる電流を検出する電流センサ」という点で共通する。

f 引用発明の「コ字状に形成されたセンサ導体20はギャップ51を3方向から囲むように配置されて」いることは、本件補正発明の「前記電流バーは、前記1以上の空隙のうちの1つの前記空隙を3方向から囲むように配置され」ることに相当する。

(イ) 一致点及び相違点の認定

前記(ア)の対比分析における検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明は、次のaに示す一致点において一致し、後記bに示す相違点において相違する。

a 一致点

「検知すべき電流が流れる電流バーと、前記電流バーが中央開口を貫通するとともに1以上の空隙が形成された集磁コアと、前記1以上の空隙に設けられた1以上の磁気検出素子を有する基板とを有し、前記1以上の磁気検出素子が検出した磁気検出結果によって前記電流バーを流れる電流を検出する電流センサであって、
前記電流バーは、前記1以上の空隙のうちの1つの前記空隙を3方向から囲むように配置される電流センサ」である点。

b 相違点

本件補正発明において、「電流バー」は、「電流の流れる方向を長手方向とする線状」であり、「前記1以上の空隙のうちの1つの前記空隙の幅に対応した同等の太さを有し」、「集磁コア」の「1以上の空隙」は「任意の位置に形成」されており、「1つの前記空隙を3方向から囲む電流バーの軸に囲まれる平面は1つの前記空隙を通過するように配置される」のに対し、

引用発明において、「センサ導体20」は、「帯状」であり、「ギャップ51の幅に対応した同等の太さ」ではないため、「センサ導体20」の軸が規定できず、「センサ導体20」の軸に囲まれ「ギャップ51」を通過するように配置される平面も規定できない点。

イ 判断

前記相違点について検討する

(ア) 動機付けについて

a 引用発明の「電流センサ」は、「電気回路に流れる電流を検出する」ものであり、引用文献5技術事項の「電流検出センサ」は、「回路基板2に実装されたセンサユニット4を備える」ものであるから、いずれも回路に流れる電流を検出するセンサである点で技術分野が共通している。

b 引用発明の「電流センサ」は、「リング型集磁コア50」の「ギャップ51でホール素子30を挟み」、「センサ導体20に電流が流れると」、「電流の大きさに応じた磁束が発生し、この磁束の殆どはリング型集磁コア50の内部を通り、ギャップ51の位置でホール素子30の感磁面に垂直に入り、ホール素子30は磁束密度に比例した電圧信号を出力し、この電圧信号を検出することによりセンサ導体20に流れる電流の大きさを検出できるもの」であり、「ホール素子30」で「センサ導体20に流れる小電流」を「検出できる」ものである。

引用文献5技術事項の「電流検出センサ」は、「プラスチックマグネット14」の「一部」に「形成」された「ギャップ」に「ホール素子18が装着され」、「センサユニット4の導体6に負荷電流が流れると、この負荷電流は導体6の周囲に磁界を発生し、この磁界はプラスチックマグネット14内の磁束を増加させ、この磁束の変化がホール素子18の入出力端子20から出力され」、「小さい負荷電流(10A以下)の検出に適用されるものである」。

そうすると、引用発明の「電流センサ」と引用文献5技術事項の「電流検出センサ」は、電流検出に係る測定原理が共通しているといえる。

c 引用発明の「電流センサ」の検出すべき電流が流れる「センサ導体20」は「コ字状に形成」されており、引用文献5技術事項の「負荷電流が流れる」「導体6」は「略コの字形状」であるから、検出すべき電流が流れる導体が、いずれもコの字形状である点で共通している。

d 一般に、負荷電流の大きさを考慮して設計変更することは当業者が通常試みることであるところ、前記a~cを踏まえると、引用文献5技術事項の「略コの字形状のワイヤ」からなる「導体6」は、小さい負荷電流(10A以下)の検出に適用されるものであるから、引用発明の「電流センサ」を小さい負荷電流(10A以下)の検出に適用されるものに設計変更するに際して、引用発明の「電流センサ」の「センサ導体20」として、引用文献5技術事項の「略コの字形状のワイヤ」からなる「導体6」は、これを適用する契機もあるというべきであり、設計上の自明な選択肢でもある。

(イ) 構成の容易想到性について

a 電流バーの形状について

引用発明の「電流センサ」の「センサ導体20」として、引用文献5技術事項の「略コの字形状のワイヤ」からなる「導体6」を適用すると、「ワイヤ」は線状であるといえるから、引用発明において、「センサ導体20」は線状になり、前記相違点に係る「電流バー」は「線状」であるという構成が得られることになる。

その際、「ワイヤ」に流れる電流の方向が、「ワイヤ」の長手方向であることは自明であるから、前記相違点に係る「電流の流れる方向を長手方向とする線状」という構成も自然に導かれることになる。

b 電流バーの太さについて

引用発明の「センサ導体20」の形状を線状とする際に、「センサ導体20」の太さをどの程度とするかは当業者が適宜設定すべき設計事項にすぎず、線状のセンサ導体20の太さをギャップ51の幅に対応した同等の太さにすることは、当業者にとっては、格別困難性はない。

c 空隙の位置と平面の通過について

引用発明において、「ギャップ51を3方向から囲むように配置」された「コ字状」の「センサ導体20」の形状を線状とすると、「ギャップ51」を3方向から囲む線状の「センサ導体20」の軸に囲まれる平面を規定することができることは自明である。

そして、「電流検出器において、磁気コアの1つの空隙を3方向から囲む電流バーを含む平面が、前記空隙を通過するように配置されること」は、当業者にとって技術常識であることを踏まえると(前記技術常識1を参照)、引用発明において、「ギャップ51」を「リング型集磁コア50」の任意の位置に形成したとしても、当該位置に合わせて、「ギャップ51」を通過するように「センサ導体20」の軸に囲まれる平面を配置できるようにすることは、当業者が適宜選択し得た設計事項にすぎない。

(ウ) 総合評価

以上のとおりであるから、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、前記(イ)の検討事項を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献5技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 請求人の主張について

ア 審判請求書の主張内容

請求人の主張は、概略次のとおりである。

本件補正発明では、【図7】に示すような偏った位置に空隙が形成される場合であっても、磁束密度が高い空隙空間E3が空隙3を通るように電流バー5を配置することにより、部分電流バー6,8による集磁コアの磁気飽和の発生を防止することができるのに対し、引用発明では、上記場合であっても、磁束密度が高い空隙空間がギャップ51を通るようにセンサ導体を配置することがなく、センサ導体の両端部によるプラスチックマグネットの磁気飽和の発生を防止することができない。

「本願の【図7】
[図:0001403419000015.jpg]
」

イ 請求人の主張に対する当審の判断

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、本件補正発明の「空隙」の位置に関し、【図7】に示すような偏った位置に形成される場合について主張しているが、本件補正発明の「空隙」は、「集磁コア」の「任意の位置に形成された」と規定されているのであり、【図7】に示されるような偏った位置に空隙が形成される場合に限定されるものではない。

要するに、請求人の前記主張は、請求項1の記載から離れたところの主張であって、採用できず、かかる主張により、前記アの結論を左右するものではない。

なお、引用文献7の【図2】には、磁気コア2の偏った位置に磁気空隙9が形成された場合が示されており、磁束密度が高い空間が磁気空隙9を通るようにブスバー6を配置しているといえるから、請求人の主張に沿って検討してみても、格別の主張であるとは認められない。

「引用文献7の【図2】
[図:0001403419000016.jpg]
」

(5) 小括

以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和4年4月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。

2 原査定における拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由は、次のとおりである。

本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1:特開2001-66328号公報

3 引用文献に記載された事項等

引用文献1には、第2の3(2)ア(ウ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

また、技術常識1及び技術常識2は、それぞれ前記第2の3(2)のウ(ウ)及びエ(イ)において認定したとおりである。

4 対比・判断

(1) 一致点及び相違点の認定

本願発明は、本件補正発明における前記第2の2(1)のアからエまでの限定及び補正事項1を省いたものである(前記第2の2(1)参照)。

そうすると、前記第2の3(3)ア(ア)の対比分析における検討結果も踏まえて、本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明の相違点は、次の相違点Aのとおりであり、両者はその余の点で一致する。

<相違点A>

本願発明の「電流バー」は、「線状」であり、「前記空隙を3方向から囲む電流バーの軸に囲まれる平面は前記空隙を通過するように配置される」のに対し、

引用発明の「センサ導体20」は、「帯状」であり、「センサ導体20」の軸が規定できず、「センサ導体20」の軸に囲まれ「ギャップ51」を通過するように配置される平面も規定できない点。

(2) 相違点Aについての判断

ア 電流バーの形状について

「電流センサにおいて、検知すべき電流が流れる電流バーの形状としては、帯状の他に線状を含む様々な形状を想定することができること」は、当業者にとって技術常識であるから(前記技術常識2を参照)、引用発明の「電流センサ」の「センサ導体20」の形状を「線状」とすることは、当業者にとって自明な設計変更にすぎない。

イ 空隙の位置と平面の通過について

引用発明において、「ギャップ51を3方向から囲むように配置」された「コ字状」の「センサ導体20」の形状を線状とすると、「ギャップ51」を3方向から囲む線状の「センサ導体20」の軸に囲まれる平面を規定することができることは自明である。

そして、「電流検出器において、磁気コアの1つの空隙を3方向から囲む電流バーを含む平面が、前記空隙を通過するように配置されること」は、当業者にとって技術常識であることを踏まえると(前記技術常識1を参照)、引用発明において、「ギャップ51」の位置に合わせて、「ギャップ51」を通過するように「センサ導体20」の軸に囲まれる平面を配置できるようにすることは、当業者が適宜選択し得た設計事項にすぎない。

ウ 総合評価

前記ア及びイの検討結果を踏まえると、前記相違点Aに係る本願発明の構成は、引用発明及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび

以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-017534

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