特許拒絶査定不服審判
2022-017094
遊技機
- 審判番号
- 2022-017094
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-013913
- 請求日
- 2022年10月26日
- 審決日
- 2023年05月09日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社サンセイアールアンドディ
- 【請求人代理人】松浦 弘
- 【請求人代理人】軸見 可奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 長崎 洋一
- 審判官 西田 光宏
- 審判官 太田 恒明
- 分類
- P18 .121-Z (A63F) / P18 .113-Z (A63F) / P18 .161-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 13913「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月13日出願公開、特開2020-120866〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、平成31年1月30日の出願であって、令和4年4月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月6日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月21日付け(送達日:同年8月2日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年10月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、令和4年10月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである(記号A等は分説するため合議体が付した。また、それぞれの記号により分説された事項を、以下では「構成A」等という。)。
なお、令和4年10月26日提出の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年7月6日提出の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1の記載と同一である。
「A 基板と、前記基板を収容する基板ケースとを有する遊技機であって、
B 前記基板ケースには、前記収容されている基板を示す基板コードが付されるとともに、
C 前記基板の表面に、前記基板コードに対応する対応コードが印字され、
D 前記基板ケースには、前記基板に印字された前記対応コードと対向しかつ、前記基板コードと隣接する位置に窓部が設けられている
E 遊技機。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概ね次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1-2
・引用文献等 1、3
<引用文献等一覧>
1.特開2018-114141号公報
3.特開2016-106780号公報
4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1(特開2018-114141号公報)について
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。)。
ア 記載事項
「【0005】
本発明の目的は、遊技を行う上での態様において興趣の一層の向上を目的とする。」
「【図面の簡単な説明】
【0009】
・・・
【図50】組立体2Aの(a)斜視図、(b)背面図、(c)右側面図である。
・・・」
「【0278】
図47に示すように、本実施形態の遊技機1Aは、外枠10Aと、遊技盤ユニット12Aと、内枠14Aとを備えている。外枠10Aは、遊技場内に設置された島に直接取り付けられる。外枠10Aは上下方向が左右方向より長い略長方形状に形成されている。遊技盤ユニット12Aと内枠14Aは、外枠10Aの一方の縦辺の近傍で外枠10Aに対して回動可能に支持されている。」
「【0287】
組立体2Aについて説明する。図49~図51に示すように、組立体2Aは、台座20Aと、基板ケース3Aと、保護カバー23Aとを備えている。台座20Aは、遊技盤ユニット12A(図49参照)の後側に基板ケース3Aを取り付けるために用いられる部品である。図51に示すように、台座20Aは、左右方向に沿った2辺が上下方向に沿った2辺より長尺な略長方形状に形成されており、下辺の左右両端近傍に一対の軸部21Aを備え、上辺の左右方向中央に板状フック22Aを備えている。軸部21Aは、軸方向が左右方向に一致するものである。」
「【0292】
制御基板501及び基板ケース3Aについて説明する。図51に示すように、遊技を制御する制御基板501は、基板ケース3A内に収納される。制御基板501には、種々の電子部品が実装されている。また、制御基板501には、ROM502が装着されている。ROM502は、遊技の制御に使用される記憶内容を格納している。また、ROM502は、遊技の結果に影響を与える記憶内容を格納している。
【0293】
基板ケース3Aは、制御基板501及びROM502を視認可能で且つ接触困難に収納する箱形のケースである。基板ケース3Aは、例えば、透明なプラスチック等の透過性を有する部材で形成されている。」
「【0318】
図51に示すように、識別表示521は、制御基板501の背面の上部に、シルク印刷によって表示されている。識別表示521は、制御基板501を特定するための情報識別部である。識別表示522は、ROM502に、刻印によって添付されている。識別表示522は、ROM502を特定するための情報識別部である。基板ケース3Aに付された識別表示523、524,525は、制御基板501を特定するための情報識別部である。識別表示524は、内ケース40Aの前面の右上部に、内ケース40Aを製造する金型による刻印によって形成されている(図55参照)。識別表示525は、キャップ8Aの背面に、キャップ8Aを製造する金型による刻印によって形成されている。識別表示523の表示態様については後述する。
【0319】
識別表示521~525は互いに関連しており、少なくとも同じ識別表示529を含む。本実施形態では、一例として、識別表示521は、「ABCD01」の文字列であり、識別表示522は、「ABCD02」の文字列である。識別表示523は、「ABCD03」の文字列であり、識別表示524は、「ABCD04」の文字列である。識別表示525は、「ABCD05」の文字列である。識別表示521~525において同じ識別表示529は、「ABCD」である。識別表示529は、例えば、メーカ名及び機種名等に対応した表示である。本実施形態では、一例として、「ABCD」のうち、「AB」はメーカ名を表し、「CD」は機種名を表すとする。
【0320】
以下の説明では、外ケース45Aにおいて、基板ケース3Aの内側を形成する面を内面532という。外ケース45Aにおいて、基板ケース3Aの外側を形成する面を外面531という。図50(c)、図53(c)、及び図55に示すように、外面531には、位置表示部541が設けられている。位置表示部541は、識別表示523を付与する位置を表示する部位である。位置表示部541は、基板ケース3Aにおいて、ROM502に重なる部位とは異なる部位に設けられている。より詳細には、位置表示部541は、後側から見た場合に矩形状であり、外ケース45Aの右下部に設けられている。ROM502は、後側から見た場合に、位置表示部541より左側に設けられている。位置表示部541は、前側に向かって凹んだ凹部である。
【0321】
位置表示部541には、識別表示523が印刷された透明なシール542が貼り付けられており、これによって、位置表示部541に識別表示523が付された状態となる。外ケース45Aに付された識別表示523によりROM502の装着箇所が視認性を阻害されることはない。」
「【0327】
また、基板ケース3Aに添付された情報識別部である識別表示523と、ROM502に添付された情報識別部である識別表示522と、制御基板501に表示された情報識別部である識別表示521とは、少なくとも同じ識別表示529(本実施形態では「ABCD」の文字列)を含む。このため、検査者は、同じ識別表示529が付された制御基板501、ROM502、及び基板ケース3Aを確認し、不正行為が行われていないことを容易に確認することができる。また、不正行為によって、制御基板501及びROM502の少なくとも一方が、他の制御基板501及びROM502に入れ替えられた場合でも、制御基板501、ROM502、及び基板ケース3Aに付された識別表示529が同じであるか否かを判断することで、検査者は、容易に不正行為が行われたことを確認できる。このため、不正行為の発生を抑制することができる。よって、遊技者が安心して遊技することができ、遊技者の興趣が向上する。」
「【図47】
[図:0001400286000001.jpg]
」
「【図50】
[図:0001400286000002.jpg]
」
イ 認定事項
(ア) 認定事項1
【0278】には、「図47に示すように、本実施形態の遊技機1Aは、外枠10Aと、遊技盤ユニット12Aと、内枠14Aとを備えている。外枠10Aは、遊技場内に設置された島に直接取り付けられる。外枠10Aは上下方向が左右方向より長い略長方形状に形成されている。遊技盤ユニット12Aと内枠14Aは、外枠10Aの一方の縦辺の近傍で外枠10Aに対して回動可能に支持されている。」と記載され、
【0287】には、「組立体2Aについて説明する。図49~図51に示すように、組立体2Aは、台座20Aと、基板ケース3Aと、保護カバー23Aとを備えている。台座20Aは、遊技盤ユニット12A(図49参照)の後側に基板ケース3Aを取り付けるために用いられる部品である。・・・」と記載され、
【図47】から、遊技盤ユニット12Aが外枠10Aに対して開放されているときに、遊技盤ユニット12Aの後側にアクセスすることが可能であり、遊技盤ユニット12Aが外枠10Aに対して閉鎖されているときに、遊技盤ユニット12Aの後側にアクセスすることが困難である点が看取される。
そうすると、遊技盤ユニット12Aの後側に基板ケース3Aが取り付けられ、遊技盤ユニット12Aが外枠10Aに対して開放されているときに、遊技盤ユニット12Aの後側にアクセスすることが可能であり、遊技盤ユニット12Aが外枠10Aに対して閉鎖されているときに、遊技盤ユニット12Aの後側にアクセスすることが困難であること(以下「認定事項1」という。)が認定できる。
(イ) 認定事項2
【0009】には、「・・・【図50】 組立体2Aの(a)斜視図、(b)背面図、(c)右側面図である。・・・」と記載され、
【0293】には、「基板ケース3Aは、制御基板501及びROM502を視認可能で且つ接触困難に収納する箱形のケースである。基板ケース3Aは、例えば、透明なプラスチック等の透過性を有する部材で形成されている。」と記載され、
【0318】には、「・・・識別表示521は、制御基板501の背面の上部に、シルク印刷によって表示されている。・・・」と記載され、
【0319】には、「・・・識別表示521は、「ABCD01」の文字列であり、・・・識別表示523は、「ABCD03」の文字列であり、・・・」と記載され、
【図50】(b)から、符号「523」が付された文字列「ABCD03」と隣接する箇所に、符号「521」が付された文字列「ABCD01」が位置することが看取される。
そうすると、制御基板501を収納し、透明なプラスチック等の透過性を有する部材で形成されている基板ケース3Aの背面側において、識別表示523と隣接する箇所を介して、当該箇所に対向する位置に存在し、制御基板501の背面にシルク印刷された識別表示521が視認可能であること(以下「認定事項2」という。)が認定できる。
ウ 引用発明
上記アの記載事項及び上記イの認定事項より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a等は本件発明の記号A等に対応させて合議体が付した。)
「a 遊技盤ユニット12Aを備える遊技機1Aであって(【0278】)、
台座20Aによって遊技盤ユニット12Aの後側に基板ケース3Aを取り付け(【0287】)、遊技を制御する制御基板501は、基板ケース3A内に収納され(【0292】)、遊技盤ユニット12Aの後側に基板ケース3Aが取り付けられ、遊技盤ユニット12Aが外枠10Aに対して開放されているときに、遊技盤ユニット12Aの後側にアクセスすることが可能であり、遊技盤ユニット12Aが外枠10Aに対して閉鎖されているときに、遊技盤ユニット12Aの後側にアクセスすることが困難であり(認定事項1)、
透明なプラスチック等の透過性を有する部材で形成されている基板ケース3Aは、制御基板501を視認可能で且つ接触困難に収納する箱形のケースであり(【0293】)、
b-c 識別表示521は、制御基板501の背面の上部に、シルク印刷によって表示され、制御基板501を特定するための情報識別部であり、基板ケース3Aに付された識別表示523は、制御基板501を特定するための情報識別部であり(【0318】)、
識別表示521~525は互いに関連しており、少なくとも同じ識別表示529を含み、識別表示521は、「ABCD01」の文字列であり、識別表示523は、「ABCD03」の文字列であり、識別表示521~525において同じ識別表示529は、「ABCD」であり、メーカ名及び機種名等に対応した表示であり(【0319】)、
基板ケース3Aの外側を形成する外面531には、位置表示部541が設けられ(【0320】)、
位置表示部541には、識別表示523が印刷された透明なシール542が貼り付けられ(【0321】)、
d 制御基板501を収納し、透明なプラスチック等の透過性を有する部材で形成されている基板ケース3Aの背面側において、識別表示523と隣接する箇所を介して、当該箇所に対向する位置に存在し、制御基板501の背面にシルク印刷された識別表示521が視認可能であり(認定事項2)、
e 基板ケース3Aに添付された情報識別部である識別表示523と、制御基板501に表示された情報識別部である識別表示521とは、少なくとも同じ識別表示529(「ABCD」の文字列)を含むため、検査者は、同じ識別表示529が付された制御基板501及び基板ケース3Aを確認し、不正行為が行われていないことを容易に確認することができ、不正行為によって、制御基板501が、他の制御基板501に入れ替えられた場合でも、制御基板501及び基板ケース3Aに付された識別表示529が同じであるか否かを判断することで、容易に不正行為が行われたことを確認でき、不正行為の発生を抑制することができ、遊技者が安心して遊技することができ、遊技者の興趣が向上する(【0327】)、
遊技機1A(【0278】)。」
(2)引用文献3(特開2016-106780号公報)について
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。)。
「【0032】
主制御基板150は、マイクロコンピュータ等が搭載され、弾球遊技機100の遊技動作全般に係る統括的な制御を行う。
演出制御基板151は、マイクロコンピュータ等が搭載され、主制御基板150から演出制御コマンドを受けて、画像表示、発光、音響出力を用いた各種の演出動作を実行させるための制御を行う。
液晶制御基板152はマイクロコンピュータやビデオプロセッサ等が搭載され、演出制御基板151からの表示制御コマンドを受けて、液晶表示装置132による表示動作の制御を行う。」
「【0161】
まず基板10は、遊技機の背面や内部に装着されるが、その際に基板10がそのままむき出しでネジ等で固定されるのではなく、基板ケースに収納された状態で装着される。
図24は基板10が基板ケース70に収納された状態を示す斜視図であり、図25Aはその平面図である。
基板ケース70は透明又は半透明の樹脂により筐体が形成されている。基板ケース70の筐体は、上面部70Aとベース部70Bが接合されて形成される。そしてその筐体内部に各種の電子部品21をマウントし、また基板管理番号50が記載された基板10が収納されている。
なお、以下の説明及び図示では、基板管理番号50としては、第1記載形式の基板管理番号50Aが記載されている例とするが、いずれも第2記載形式の基板管理番号50Bとされるものであってもよい。
【0162】
基板ケース70は透明又は半透明の樹脂により筐体が形成されることで、内方の基板10を視認可能としている。従って基板管理番号50や、各電子部品21、及び図示していない識別情報25等も基板ケース70の外部から視認可能である。
基板ケース70には放熱等の目的で孔部72が各所に形成されている。例えばケース上面に多数の小孔としての孔部72が形成され、またケース縁部に上面から側面にかけて孔部72が形成されている例を示している。もちろん孔部72を設ける場合の位置、形状、サイズ、数は多様に考えられる。
なお、説明上、「孔部72」とは、基板管理番号50の全部の文字の記載面積以上の開口空間を有するものではなく比較的小さな開口を指すものとする。基板管理番号50の記載面積以上の開口空間を有する筐体の開口は後述の開口部78Aと読んで区別する。
【0163】
また、基板ケース70は、遊技機への取付の都合や基板10の形状、マウントする部品種別、部品配置などの都合に応じて、適宜所要の形状とされる。図24,図25Aの例のように、適宜、斜面や壁面等が形成されることで、筐体上の屈曲部73が形成されたり、ケース内の所定位置に補強用のリブ74等が形成される。
また上面部70Aとベース部70Bを接合するネジを挿入するネジ支柱部75(支柱周囲の肉厚変化部分も含む)も所要箇所に設けられる。
また図24、図25では示していないが、基板ケース70の筐体には、基板10の一部をむき出しにする切欠部や大型の開口(図28、図29の開口部78Aや切欠部78B)が設けられることもある。
さらに基板ケース70の上面側などに基板の種別、遊技機の機種名、設定情報等の印刷が施されることもある(図28、図29の印刷部76)。
また特に基板10が主制御基板150,240などの場合、基板ケース70がむやみに開けられないように封印シール(図29の封印シール77)が添付される場合や、カシメ機構によりケース筐体を破壊しなければ基板10を取り出せないようにすることもある。」
「【0176】
続いて、基板10上の基板管理番号50の配置と、基板ケース70の位置関係について説明する。
基板ケース70は上述のように透明又は半透明の樹脂で形成されるが、それであっても基板管理番号50の視認性を低下させる場合がある。例えば基板ケース70が透明又は半透明であったとしても、基板ケース70の形状や開口その他によって視認性が低下する領域がある。そこで実施の形態では、基板管理番号50の正面に、基板ケース筐体における非視認性低下部分が位置する状態となるようにし、基板管理番号50の視認性を向上させる。」
「【0179】
図29Aは、基板管理番号50全体の正面に、基板ケース70に形成された開口78Aが位置している様子を示している。つまり開口50を通して基板管理番号50の文字列の全てが見える状態である。また基板管理番号50の正面に、基板ケース70の孔部72や屈曲部73、リブ74、ネジ支柱部75、印刷部76、封印シール77がいずれも位置していない例でもある。図では封印シール77を塗りつぶし部分として示している。封印シール77は、例えば基板ケース70の上面から側面にわたるように添付されている。
【0180】
このような基板管理番号50と基板ケース70の位置関係をまとめると次のようになる。
図28,図29のいずれの例も、基板管理番号50の正面に、基板ケース70の筐体における非視認性低下部分が位置する状態となるようにしている。
そして非視認性低下部分とは、1つには、基板ケース70における非段差部である。基板管理番号50の正面が段差部とならないようにすることで視認性を確保する。」
「【0184】
また非段差部とは、基板ケース70の筐体の開口部78A又は切欠部78Bにより形成された空間部分であることが考えられる。図28C、図28D、図29Aがこの例となる。
これらの場合、基板管理番号50の正面が、すべて空間である。従って基板ケース70の筐体樹脂による視認性の低下は生じないため、視認性は向上される。」
「【図29】
[図:0001400286000003.jpg]
」
イ 引用文献3記載事項
上記アの記載事項より、引用文献3には、以下の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「基板10を遊技動作全般に係る統括的な制御を行う主制御基板150とし(【0032】、【0163】)、基板管理番号50が記載された基板10が基板ケース70に収納された状態で遊技機の背面に装着され、基板ケース70は透明の樹脂により筐体が形成され(【0161】)、基板管理番号50の正面に、基板ケース筐体における非視認性低下部分が位置する状態となるようにし(【0176】)、非視認性低下部分とは基板ケース70における非段差部であり(【0180】)、非段差部とは基板ケース70の筐体の開口部78Aにより形成された空間部分であり(【0184】)、基板管理番号50全体の正面に、基板ケース70に形成された開口78Aが位置し(【0179】)、基板管理番号50の正面がすべて空間となり、基板ケース70の筐体樹脂による基板管理番号50の視認性の低下が生じない(【0184】)遊技機(【0161】)。」
5 対比
本願発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
ア 構成Aについて
引用発明の構成aの「制御基板501」、「制御基板501を視認可能で且つ接触困難に収納する」「基板ケース3A」及び「遊技機1A」は、それぞれ、本願発明の「基板」、「前記基板を収容する基板ケース」及び「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する構成を有する。
イ 構成Bについて
引用発明の構成b-cによれば、引用発明の「識別表示523」は、「「ABCD03」の文字列であり」、「基板ケース3A」の外側に「貼り付けられ」た「透明なシール542」に「印刷された」ものであり、「制御基板501を特定するための情報識別部」である。
ここで、上記アで示したとおり、引用発明の「基板ケース3A」及び「制御基板501」が、それぞれ、本願発明の「基板ケース」及び「基板」に相当することを踏まえると、引用発明の構成b-cの「識別表示523」は、本願発明の「前記基板ケースに」「付され」、「前記収容されている基板を示す」「基板コード」に相当する。
したがって、引用発明の構成b-cは、本願発明の構成Bに相当する構成を有する。
ウ 構成Cについて
引用発明の構成b-cによれば、引用発明の「識別表示521」は、「制御基板501の背面の上部に、シルク印刷によって表示され」たものであり、「制御基板501を特定するための情報識別部であり、」「識別表示521~525は互いに関連し」ているものである。
ここで、上記アで示したとおり、引用発明の「制御基板501」が、本願発明の「基板」に相当し、上記イで示したとおり、引用発明の「識別表示523」が、本願発明の「基板コード」に相当することを踏まえると、引用発明の構成b-cの「識別表示521」は、本願発明の「前記基板コードに対応する」「対応コード」に相当し、引用発明の構成b-cの「制御基板501の背面」「に、シルク印刷によって表示され」ることは、本願発明の「前記基板の表面に、」「印字され」ることに相当する。
したがって、引用発明の構成b-cは、本願発明の構成Cに相当する構成を有する。
エ 構成Dについて
引用発明の構成dによれば、引用発明は、「制御基板501を収納し、透明なプラスチック等の透過性を有する部材で形成されている基板ケース3Aの背面側において、識別表示523と隣接する箇所を介して、当該箇所に対向する位置に存在し、制御基板501の背面にシルク印刷された識別表示521が視認可能」なものであるから、引用発明は、「基板ケース3A」の「識別表示523ち隣接する箇所」と、「制御基板501」「にシルク印刷された識別表示521」が対向するものであることは明らかである。
ここで、上記アで示したとおり、引用発明の「基板ケース3A」及び「制御基板501」が、それぞれ、本願発明の「基板ケース」及び「基板」に相当し、上記イで示したとおり、引用発明の「識別表示523」が、本願発明の「基板コード」に相当し、上記ウで示したとおり、引用発明の「識別表示521」及び「シルク印刷によって表示され」ることが、それぞれ、本願発明の「対応コード」及び「印字され」ることに相当することを踏まえると、引用発明の構成dと本願発明の構成Dは、「前記基板ケース」の「前記基板コードと隣接する位置」と「前記基板に印字された前記対応コード」が「対向」する点で共通する。
オ 構成Eについて
引用発明の構成eの「遊技機1A」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する構成を有する。
上記ア~オによれば、本願発明と引用発明は、
「A 基板と、前記基板を収容する基板ケースとを有する遊技機であって、
B 前記基板ケースには、前記収容されている基板を示す基板コードが付されるとともに、
C 前記基板の表面に、前記基板コードに対応する対応コードが印字され、
D’ 前記基板ケースの前記基板コードと隣接する位置と前記基板に印字された前記対応コードが対向する
E 遊技機。」
の点で一致し、次の点で相違する。
[相違点](構成D)
「前記基板に印字された前記対応コード」と「対向」し、「前記基板ケース」の「前記基板コードと隣接する位置」において、
本願発明では、「窓部が設けられている」が、
引用発明では、窓部ではなく、「透明なプラスチック等の透過性を有する部材」が設けられている点。
6 判断
(1)上記相違点について
上記相違点について検討する。
引用発明は、「遊技を行う上での態様において興趣の一層の向上」(【0005】)という課題を、「不正行為の発生を抑制することができる。よって、遊技者が安心して遊技することができ、遊技者の興趣が向上する。」(【0327】)いう形で解決するために、「検査者は、同じ識別表示529が付された制御基板501及び基板ケース3Aを確認し、不正行為が行われていないことを容易に確認することができ、不正行為によって、制御基板501が、他の制御基板501に入れ替えられた場合でも、制御基板501及び基板ケース3Aに付された識別表示529が同じであるか否かを判断することで、容易に不正行為が行われたことを確認でき」るようにしたものであるから、引用発明において、「不正行為の発生を抑制する」ため、「基板ケース3A」の「識別表示529」の視認性のみならず「基板ケース3A」内に「収納」された「制御基板501」の「識別表示529」の視認性も担保する必要があることは明らかである。
ここで、引用発明と引用文献3記載事項は、ともに、透明な部材で形成された基板ケースに遊技を制御する基板を収納し、当該基板に所定のコードが付され、当該基板ケースにおける当該所定のコードと対向する箇所を介して当該所定のコードが外部から視認可能な遊技機であるから、引用発明の「基板ケース3A」における「識別表示521」(「制御基板501」に付され、「識別表示529」を含む「識別表示」)と対向する箇所の構成として、引用文献3記載事項の構成(「基板管理番号50全体の正面」に「位置」するように「基板ケース70に形成された開口78A」)を採用し、「識別表示521」全体の正面に位置するように「基板ケース3A」に開口を形成し、「識別表示521」全体の正面がすべて空間となり、「基板ケース3A」の筐体による「識別表示521」の視認性の低下が生じないようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明が、「遊技盤ユニット12Aが外枠10Aに対して閉鎖されているときに、遊技盤ユニット12Aの後側にアクセスすることが困難であ」るものであり、遊技者が遊技を行うときには遊技盤ユニットが外枠に対して閉じた閉鎖状態とされることが遊技機の技術常識であることを鑑みれば、引用発明において、遊技者が「遊技盤ユニット12Aの後側に」「取り付けられ」た「基板ケース3A」に「アクセスすること」は「困難」であるといえるから、引用発明の基板ケース3Aに引用文献3記載事項の構成(「基板ケース70に形成された開口78A」)を適用することを妨げる特段の事情(阻害要因)は存在しない。
(2)効果について
本願発明により奏される効果は、当業者が、引用発明及び引用文献3記載事項から予測し得た効果の範囲内のものであり、格別なものではない。
(3)小括
上記(1)及び(2)の検討内容からみて、本願発明は、引用発明及び引用文献3記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(4)請求人の主張について
請求人は、令和4年10月26日付けの審判請求書において、次の点について主張している。
「4.本願が特許されるべき理由
(1)請求項1について
審査官殿は、本願発明は引用文献1,3に記載の発明に基づいて容易に発明可能であると判断されました。
しかしながら、引用文献1は「遊技を行う上での態様において興趣を一層向上させること」を課題としています(引用文献1段落[0005])。そしてこの課題を、「不正行為の発生を抑制することで遊技者が安心して遊技可能な状態にする」という形で解決するために、基板ケースを透明なプラスチック等の透過性を有する部材で形成し、また、封止部材によって封止しています(引用文献1段落[0293],[0301]~[0309],図54~55)。
要するに、引用文献1の基板ケースは、収容した基板がどれか識別可能にし、かつ、第三者の手によって開封されて内部の基板に不正に手を加えられることがないようにするためにこのように構成されています。
ここに開口を形成してしまうと、基板ケースを開封することなく外部から基板に接触可能になってしまうため、引用文献1で掲げた課題を解決することは困難になります。そのため、そのリスクを冒してまで引用文献3に記載の構成を引用文献1に採用することは考えられません。
よって、本願発明は引用文献1,3に基づいて容易に発明可能であるという審査官殿の判断は誤ったものであると思料いたします。」
そこで、請求人の上記主張について検討する。
上記6(1)で検討したとおり、引用発明において、遊技者が「遊技盤ユニット12Aの後側に」「取り付けられ」た「基板ケース3A」に「アクセスすること」は「困難」であるといえるから、引用発明の基板ケース3Aに引用文献3記載事項の構成(基板ケース70に形成された開口78A)を適用することを妨げる特段の事情(阻害要因)は存在しない。
また、上記6(1)で検討したとおり、引用発明において、「不正行為の発生を抑制する」ため、「基板ケース3A」の「識別表示529」の視認性のみならず「基板ケース3A」内に「収納」された「制御基板501」の「識別表示529」の視認性も担保する必要があることは明らかであるから、引用発明の「基板ケース3A」に引用文献3記載事項の構成(「基板管理番号50全体の正面」に「位置」するように「基板ケース70に形成された開口78A」)を適用する動機付けも十分にある。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基いて特許を受けることができない。したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-017094