2022-014042
電圧検出プローブおよび電極装着具
- 審判番号
- 2022-014042
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-170349外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月07日
- 審決日
- 2023年10月11日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 分類
- P18 .575-Z (G01R) / P18 .121-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、令和2年10月8日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 5月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 6月 7日 :原査定の謄本の送達)
同年 9月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年12月 7日 :上申書の提出
第2 令和4年9月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月7日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年9月7日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】電線(3)にかかる電圧を検出するための電極(44)を有する電圧検出プローブであって、前記電線(3)に対して着脱自在に装着されるクリップ部(12)を備え、前記クリップ部(12)は、前記電線(3)が嵌め入れられる嵌入凹部(20)を有し、該嵌入凹部(20)の開口(24)を広げるように弾性変形可能であり、該開口(24)から前記嵌入凹部(20)に嵌め入れられた前記電線(3)を弾性力で保持して、該電線(3)の外周面に沿うように前記電極(44)を配置させるように構成され、前記クリップ部(12)は、前記電極(44)が内側に配置される円弧状のばね部材(30)を有し、前記ばね部材(30)の外面は、絶縁性を有する材料からなる絶縁被膜(46)によって被覆され、前記絶縁被膜(46)は、前記嵌入凹部(20)の内面を構成することを特徴とする電圧検出プローブ。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】電線(3)にかかる電圧を検出するための電極(44)を有する電圧検出プローブであって、前記電線(3)に対して着脱自在に装着されるクリップ部(12)を備え、前記クリップ部(12)は、前記電線(3)が嵌め入れられる嵌入凹部(20)と、該嵌入凹部(20)の内面に対応するよう当該クリップ部(12)の内部に位置する、円弧状を有するばね部材(30)と、該ばね部材(30)の内側で嵌入凹部(20)の内面に沿って配置される前記電極(44)とを有し、前記嵌入凹部(20)の開口(24)を広げるように弾性変形可能であり、該開口(24)から前記嵌入凹部(20)に嵌め入れられた前記電線(3)を弾性力で保持して、該電線(3)の外周面に沿うように前記電極(44)を配置させるように構成され、絶縁性を有する材料からなる絶縁被膜(46)によって被覆され、前記絶縁被膜(46)は、前記クリップ部(12)の外面から前記嵌入凹部(20)の内面にかけて一続きに設けられ、当該クリップ部(12)の内側で前記電極(44)を覆い、前記嵌入凹部(20)の内面を構成することを特徴とする電圧検出プローブ。」
2 本件補正の目的についての当審の判断
(1)ア 本件補正のうち、請求項1の補正は、「前記クリップ部(12)」が「絶縁性を有する材料からなる絶縁被膜(46)によって被覆され」ることを特定している。
イ 本件補正前の請求項1では、「前記ばね部材(30)の外面は、絶縁性を有する材料からなる絶縁被膜(46)によって被覆され」るとしているから、「絶縁性を有する材料からなる絶縁被膜(46)によって被覆され」る対象が、本件補正前は「前記ばね部材(30)の外面」であったのに対して、本件補正後は「前記クリップ部(12)」とされている。
ウ ここで、本件補正前の請求項1には、「前記クリップ部(12)は、前記電極(44)が内側に配置される円弧状のばね部材(30)を有し」との記載があり、「クリップ部(12)」は「ばね部材(30)」を有することが特定されているものの、「ばね部材(30)の外面」が「クリップ部(12)」の最表面であるとは限らないから、本件補正後の「クリップ部(12)」の「被覆」は、「ばね部材(30)の外面」以外の箇所の「被覆」を含むことになり、本件補正後の被覆態様は、本件補正前の被覆態様を限定するものであるとはいえない。
エ したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
(2) また、本件補正は、特許法17条の2第5項1号、3号又は4号に規定するいずれを目的としたものに該当しないことも明らかである。
(3) 以上より、本件補正は、特許法17条の2第5項各号に規定するいずれを目的としたものにも該当しない補正であり、同項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正が、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると仮に認めたとしても、以下に詳述するとおり、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるとの結論に変わりはない。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものである。
なお、令和4年12月7日に提出された上申書において、請求人は、本願の明細書及び特許請求の範囲の「電極(44)」は「電極(28)」の誤記である旨主張しているところ、合議体も、請求人の主張のとおり、本件補正後の請求項1の「電極(44)」は「電極(28)」の誤記であると認める。
したがって、以下では、本件補正発明の「電極(44)」は「電極(28)」に読み替えて論じることとする。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2014-182060号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。以下同様である。
a 段落【0020】~【0032】、【図2】
「【0020】本発明の実施形態による電線導体電圧を測定するためのプローブを用いた測定装置について、以下に図2以降を参照しながら詳細に説明する。まず、図2~5を参照して、プローブにより形成される本発明のプローブ構造について、いくつかの変形例と共に説明する。【0021】続きを表示(全30行)このようなプローブ構造の一例を図2に示す。測定対象の電線は円柱形状を有しており、プローブは、電線の周りに同軸状の円筒形状となるように密着して配置されプローブ構造が形成される。図2(a)は、このようなプローブ構造の斜視図であり、図2(b)はその平面図、図2(c)はその等価回路を示している。【0022】図2(a)のとおり、電線10は円柱形状の電線導体11の周囲を電線被覆12により被覆している。また、プローブ20は、内側導体板21、外側導体板22、およびこれら内側導体板および外側導体板の間のプローブ誘電体25を備え、プローブ20それ自身でキャパシタ(C2)を形成するように構成されている。さらに、一対の測定端子23,24が内側導体板21および外側導体板22に接続される。この測定端子は、後述する電位差センサに接続される。【0023】当該プローブ20は、電線の一部(長さLの電線部分)の周囲を覆うように内側導体板21を電線被覆表面12に密着して配置される。このように構造すると、当該プローブ20と電線導体10との間に直列に接続された2つのキャパシタC1およびキャパシタC2を形成して電線およびプローブ間の電圧を分圧する。【0024】これらキャパシタについてより詳細に説明する。キャパシタC1は、電線導体、プローブの内側導体板、およびその間の電線被覆(絶縁被覆)から形成され、また、キャパシタC2は、プローブの内側導体板、プローブの外側導体板、およびその間のプローブ誘電体から形成される。そして、このようにして設けた2つのキャパシタは、直列的に接続されることになるため、これらキャパシタC1,C2に関する等価回路は図2(c)のようになる。【0025】このようなプローブ構造とすることにより、プローブを電線に固定させることができ、また、プローブと電線の幾何学的な構造も固定的なものとすることができる。これは、定常的な導体低電圧計測を可能とする点で有利である。【0026】また、このプローブ構造により、次のような測定対象の導体電圧の算出を可能とする。ここで、図2(b)に示すように、電線およびプローブの構造パラメータについて、電線の導体径a、電線の被覆径b、プローブの外径c、電線被覆の誘電率ε1、プローブ構造体の誘電率ε2とし、またプローブ長Lとする。【0027】キャパシタC1,C2は同軸円筒状のキャパシタとして形成されることから、これらのキャパシタンスC1,C2は、【0028】【数1】[図:0001404289000001.jpg]【0029】となる。また、これらは直列接続されることから、電線・プローブ間のキャパシタンスは、1/C=1/C1+1/C2を用いて計算される。すなわち、これらキャパシタンスは、電線およびプローブについての構造パラメータに基づいて算出されることが分かる。【0030】そして、キャパシタC2に印加される電位差V2、測定対象の導体電圧Vとすると、導体電圧Vは、V/V2=C2/Cに上記を代入して整理することで、【0031】【数2】[図:0001404289000002.jpg]【0032】として計算でき、測定対象の導体電圧Vは、この数式を用いることで算出可能となる。上記数式(2)によれば、導体電圧Vは、キャパシタC2における電位差V2(一対の端子23,24を介して接続された電位差センサを用いて測定される)と電線およびプローブについての構造パラメータとの値のみに基づいて算出可能となる。即ち、導体電圧Vの算出に際し数式(1)のようなキャパシタンスの算出が不要となる点で有利である。」
「【図2】[図:0001404289000003.jpg]」
b 段落【0033】~【0034】、【図3】、【図4】
「【0033】次に、図3および図4を用いて、本発明の実施形態による上記プローブの形成および配置について説明する。図3は、電線にプローブを巻き付けて接着により固定する方法を示す概略図である。導体板(導体簿膜)21,22および厚さdの誘電体25からなるプローブ20は可撓性を有するように形成され、図3に示すように、プローブ20の内側導体板21を電線被覆12表面に密着させながら周囲の全部または一部に巻き付けるように固定して、プローブ20が電線10を覆うように配置することができる。【0034】このようにして、図4に示すようなプローブ構造が、電線被覆表面上のプローブの内側導体板21、プローブの外側導体板22、およびこれらの間の誘電体25からなるキャパシタを形成する。なお、図4(a)は、円筒形状のプローブ構造を示しており、他方、図4(b)は、部分円筒形状のプローブ構造を示している。本発明の実施形態では、プローブ端子(23,24)に後述の電位差センサを配線して測定を行う。電位差センサの一例のポッケルス・センサは、電気回路を用いないため高インピーダンスなものとなる。この点、ポッケルス・センサとの接続が測定対象に与える影響は少ないものと考えられることから、図4(a)や(b)に示すような形状にすることが可能である。また、実際には、図4(a)に示すプローブ構造はクランプ型として、図4(b)に示すプローブ構造は嵌め込み型として製造および装着固定される。この他、電線被覆上に予め導体装着部分を設けておく等の対応によりプローブ形成の効率化を図ることも可能である。」
「【図3】[図:0001404289000004.jpg]」
「【図4】[図:0001404289000005.jpg]」
c 段落【0046】~【0049】、【図6】
「【0046】そこで、以下の実施形態1~4では、例えば図2に示した円筒形状のプローブ20を1つ以上用いてその端子23,24を通じて当該プローブと電位差センサを接続し、また、導体電圧算出手段を用いて実際に低電圧測定を行うための測定装置(測定回路)について説明する。第1の実施形態図6は、図2に示した円筒形状のプローブを1つ用いて構成した測定装置に関する本発明の第1実施形態を示している。なお、以下では、本プローブの構造により形成されるキャパシタC2をピックアップ・キャパシタ、または単にピックアップと称することもある。【0047】第1実施形態では、図6(a)のとおり、プローブの内側導体21および外側導体22が多重反射型ポッケルス電位差センサ60に接続され、更に、プローブの外側導体22を接地電位としている。当該多重反射型ポッケルス電位差センサ60とは、電気光学効果(ポッケルス効果)を利用した光電位差センサのことであり、高インピーダンス測定器の一種である。【0048】以下に、当該多重反射型ポッケルス電位差センサ60の構成について簡単に説明するが、本発明の測定装置が備える電位差センサは、高インピーダンス測定器であれば如何なるものでもよく、光電位差センサや多重反射型ポッケルス電位差センサ60に限定されないことは言うまでもない。【0049】多重反射型ポッケルス電位差センサ60は、対向する第1および第2の表面を有する光学結晶であって第1および第2の表面が光学研磨された光学結晶、光学結晶の第1または第2の表面の端部の近傍に配置される、この表面上に密着被覆される第1および第2の透明電極であって計測光が入射および出射される透明電極、ならびに、光学結晶の第1および第2の表面のうち第1および第2の透明電極以外の表面上に密着被覆される、反射ミラーとして機能する第1および第2の金属電極であって、電位差を計測すべき一対の被測定端子に接続される金属電極を備えており、第2透明電極から出射される計測光の強度に基づいて、一対の被測定端子の間の電位差を算出可能とすることを特徴とするものである。また、上記電位差センサは縦型変調方式の配置とすることができる。すなわち、出射される光の強度が、対向する第1および第2の表面に対する垂直方向の電界成分に基づいて変化する。本発明の実施形態では、例えばこのような多重反射型ポッケルス電位差センサ60を採用すると、電磁無誘導性、電気絶縁性、広帯域性などの光測定の特徴を生かした測定を、素子サイズを大きくすることなく低電位差領域で実施をすることができる点で有利である。」
「【図6】[図:0001404289000006.jpg]」
d 段落【0094】~【0096】
「【産業上の利用分野】【0094】本発明の実施形態による低電圧測定装置に用いられるプローブの特徴は、プローブが2つの導体板およびこれらの間の誘電体を備えており、プローブ単体で1つのキャパシタC2を形成し、このようなプローブを電線の周囲に設置することで、電線の周囲に2つのキャパシタC1,C2を直列に配置する構造を持つ点である。特に、電線を対象とすることで、キャパシタC1の誘電体は電線被覆そのものとなる点が利用できる。このようにして構成されるプローブは、電線外側表面に固定することができるので、既に配線が終了し使用中の電力線に対しても停電や被覆除去を行うことなくプローブを設置し電圧計測を行うことが可能となる。さらには、定常的な観察も容易に実施可能である。このことから、本発明の測定装置は、家庭用電圧に対する低電圧測定装置として有効なものと言える。【0095】より具体的には、本発明の実施形態による測定装置に用いられるプローブ構造は、クランプ型のCT素子やホール素子と併用して非接触の電力量計を構成できる。これにより既存の配線を切断、破壊等をすることなく、また、通電を停止することなく着脱可能な電力量計を構成ことができるようになる。さらに、設置時の電気工事に伴う工事者の電気工事士資格も必要ではなくなり、短期間の計測や電力量モニタ箇所の増設に対応可能なものとなる。【0096】また、このような測定装置を用いて、非接触で電流、電圧および位相を測定することができるコンパクトな非接触ハンディ電気量測定装置を構成することができる。さらに、周波数特性の良い高インピーダンスの測定器を用いて測定することにより、非接触でのPLC通信信号の検出も可能になる。特に、危険エリアでの電気量測定装置に応用することができ、採掘現場や危険物貯蔵所での計測装置(光ファイバを使用し電気回路の要らないセンサとする)を構成でき、高圧電線下や変電所周辺の環境測定にも利用できる。」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「電線導体電圧を測定するためのプローブを用いた測定装置であって、(【0020】)電線10は円柱形状の電線導体11の周囲を電線被覆12により被覆しており、プローブ20は、内側導体板21、外側導体板22、およびこれら内側導体板および外側導体板の間のプローブ誘電体25を備え、プローブ20それ自身でキャパシタ(C2)を形成するように構成されており、一対の測定端子23,24が内側導体板21および外側導体板22に接続され、この測定端子は、電位差センサに接続されるものであり、(【0022】)続きを表示(全16行)当該プローブ20は、電線の一部の周囲を覆うように内側導体板21を電線被覆表面12に密着して配置され、当該プローブ20と電線導体10との間に直列に接続された2つのキャパシタC1およびキャパシタC2を形成して電線およびプローブ間の電圧を分圧するものであり、(【0023】)キャパシタC1は、電線導体、プローブの内側導体板、およびその間の電線被覆(絶縁被覆)から形成され、また、キャパシタC2は、プローブの内側導体板、プローブの外側導体板、およびその間のプローブ誘電体から形成されるものであり、(【0024】)電線およびプローブの構造パラメータについて、電線の導体径a、電線の被覆径b、プローブの外径c、電線被覆の誘電率ε1、プローブ構造体の誘電率ε2とすると、(【0026】)[図:0001404289000007.jpg]測定対象の導体電圧Vは、上記数式(2)により、キャパシタC2における電位差V2と電線およびプローブについての構造パラメータとの値のみに基づいて算出可能となり、(【0031】~【0032】)導体板(導体簿膜)21,22および厚さdの誘電体25からなるプローブ20は可撓性を有するように形成され、(【0033】)部分円筒形状のプローブ構造では、嵌め込み型として製造および装着固定され、プローブ端子(23,24)に電位差センサを配線して測定を行うものであり、(【0034】)プローブの内側導体21および外側導体22は多重反射型ポッケルス電位差センサ60に接続され、更に、プローブの外側導体22を接地電位としており、(【0047】)電位差センサは、高インピーダンス測定器であれば如何なるものでもよく、光電位差センサや多重反射型ポッケルス電位差センサ60に限定されないものであり、(【0048】)プローブ構造は、クランプ型のCT素子やホール素子と併用して非接触の電力量計を構成でき、これにより既存の配線を切断、破壊等をすることなく、また、通電を停止することなく着脱可能な電力量計を構成できるようになり、(【0095】)特に、危険エリアでの電気量測定装置に応用することができ、採掘現場や危険物貯蔵所での計測装置(光ファイバを使用し電気回路の要らないセンサとする)を構成でき、高圧電線下や変電所周辺の環境測定にも利用できる、(【0096】)電線導体電圧を測定するためのプローブを用いた測定装置。」
イ 引用文献2に記載された事項と引用文献2技術事項の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2010-236984号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 段落【0001】~【0004】
「【技術分野】【0001】本発明は、架空送電線や圧縮接続管などの被測定物に装着されて抵抗を測定する抵抗測定端子に関するものである。【背景技術】続きを表示(全13行)【0002】長距離にわたって送電を行う手段として、地上に建てた鉄塔で電線を中継して電気を流す架空送電線が多用されている。架空送電線の多くを接続支持している鉄塔は、一般的には、図8に例示する圧縮形引留クランプ140Bなどの圧縮接続管を用いて電線を中継している。図8(a)は圧縮形引留クランプ140Bの正面図を示し、図8(b)は図8(a)の側面図を示し、図8(c)は管径の異なる他の圧縮形引留クランプ152を例示し、図8(d)は図8(a)の圧縮部における断面図と、圧縮前の断面図とを示す。この引留クランプ140Bは電線が挿入されたクランプ部142と、六角ボルト146によってボルト接合される羽子板状の面接触部148と、ジャンパ線につながるソケット部144とを備えている。引留クランプ等は、経年変化などにより電気抵抗が増大し異常に発熱することがある。この発熱は、電気的性能や機械的性能に影響を及ぼすことがあるため、余寿命診断を実施し、交換などを検討する必要がある。【0003】余寿命診断の際には、点検と定量的な診断を行うため、抵抗計による測定を行っている。この測定方法は、目視による診断ではなく、線路停止(送電停止)を必要とする搭上の作業であることから、可能な限り短時間に完了する必要があり、作業時間と作業時期などの制約を受けることになる。従来、抵抗測定は、直流電圧降下法にて実施していて、被測定物に測定用端子のバインド線を両手を使って装着している(例えば特許文献1および特許文献2)。【先行技術文献】【特許文献】【0004】【特許文献1】特開2008-145346号公報【特許文献2】実開平6-66070号公報」
b 段落【0028】~【0037】、【図3】
「【0028】(抵抗測定端子:第1実施形態)図3は、第1実施形態である図2の抵抗測定端子200(抵抗測定端子200A~200Fを総称して符号200で示す)の構成を示す図であり、図3(a)は抵抗測定端子200の組立図、図3(b)は抵抗測定端子200の完成斜視図である。【0029】続きを表示(全21行)図3(a)に示すように、抵抗測定端子200は、リング状の板バネで構成された把持部材220を備えている。把持部材220は、高復元金属シールにアルミや銅などの極薄低抵抗シールを貼った複合金属シールとしてよい。リングの幅は5~20mmとしてよい。【0030】把持部材220の内面には、把持部材220と被測定物との空隙を充填する充填体230が配置されている。充填体230については、後に詳述する。【0031】充填体230上には可撓性を有する導電性部材240が配置されている。導電性部材240はメッシュ状またはフィルム状としてよい。かかる形態とすることにより、導電性部材240の可撓性を十分に確保し、後述するように、充填体230によって押圧されると、被測定物に密着し、測定精度を保持することができるからである。【0032】図3(a)に示すように、導電性部材240は、把持部材220の内面に部分的に固着され、その内部に充填体230が閉じ込められている。これは、特に、充填体230をビーズ状など細粒化するときに、充填体230が把持部材220から脱落したりはみ出したりするのを防ぐためである。【0033】ただし導電性部材240は必ずしも、図3(a)のように袋状に把持部材220の内面に固着されている必要はなく、充填体230の上に載置されているだけでもよい。把持部材220は、被測定物が延伸する方向(リングの幅方向)の端部にて、充填体230を把持部材220の内面からはみ出さないようにするガイド部材250を有しているからである。ガイド部材250も、充填体230が把持部材220のリング幅から脱落したりはみ出したりするのを防ぎ、抵抗測定端子200による複数回の測定を可能にする。【0034】図3(b)に示す抵抗測定端子200は、図3(a)のように組み立てられた把持部材220をリング状に丸めて成形したものである。ただし充填体230および導電性部材240は図3(b)では図示を省略している。導電性部材240にはリード線202が接続されていて、これはリング状に丸められた把持部材220の外側から引き出され、測定ケーブル204に接続される。【0035】把持部材220は被測定物の太さに応じて外径を決定してよく、図2の各抵抗測定端子200A~200Fの外径は等しくしてもよいし、それぞれ異ならせてもよい。【0036】図3(b)に示すように、把持部材220は、被測定物に押し付けられることにより変形して開く開口260を有し、開口260から被測定物をリング内に導入して把持する。【0037】抵抗測定端子200は、把持部材220の開口の反対側に設けられた取手部270(絶縁体)をさらに備えている。端子装着時に変形しない、かかる取手部270を持って作業すれば、装着時に変形する把持部材220に作業者は直接触れなくてすみ、より容易に装着作業が可能となる。」
「【図3】[図:0001404289000008.jpg]」
c 段落【0038】~【0039】、【図4】、【図5】
「【0038】図4および図5は、図3の抵抗測定端子200に、それぞれ、略円形断面を有する架空送電線120A、および多角形(六角形)断面を有する圧縮形引留クランプ140Bを導入する際の把持部材の変形を示す概略図である。なお図4および図5において、ガイド部材250は図示省略している。【0039】代表して図4を用いて説明すると、リング状に丸められた把持部材220は、その合わせ目から端部まで、図4(a)に示すように、末広がりの形状になっている。この末広がりの部分が開口260である。かかる開口260に架空送電線120Aを押し付けると、図4(b)に示すように、末広がりの開口260が、板バネの性質によって架空送電線120Aに抗力を及ぼしながら開く。さらに架空送電線120Aを押し付けると、図4(c)に示すように、架空送電線120Aは把持部材220の内部に完全に包含されることとなる。」
「【図4】[図:0001404289000009.jpg]」
「【図5】[図:0001404289000010.jpg]」
(イ) 引用文献2技術事項の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2技術事項]
「リング状の板バネで構成された把持部材220を備えている抵抗測定端子200であって、(【0029】)抵抗測定は、直流電圧降下法にて実施しており、(【0003】)把持部材220の内面には、把持部材220と被測定物との空隙を充填する充填体230が配置されており、(【0030】)充填体230上には可撓性を有する導電性部材240が配置されており、導電性部材240はメッシュ状またはフィルム状であり、これにより、導電性部材240の可撓性を十分に確保し、充填体230によって押圧されると、被測定物に密着し、測定精度を保持することができ、(【0031】)導電性部材240は、把持部材220の内面に部分的に固着され、その内部に充填体230が閉じ込められており、(【0032】)抵抗測定端子200は、把持部材220をリング状に丸めて成形したものであり、導電性部材240にはリード線202が接続されていて、これはリング状に丸められた把持部材220の外側から引き出され、測定ケーブル204に接続されるものであり、(【0034】)把持部材220は、被測定物に押し付けられることにより変形して開く開口260を有し、開口260から被測定物をリング内に導入して把持するものであり、(【0036】)リング状に丸められた把持部材220は、その合わせ目から端部まで末広がりの形状になっており、この末広がりの部分が開口260であり、かかる開口260に架空送電線120Aを押し付けると、末広がりの開口260が、板バネの性質によって架空送電線120Aに抗力を及ぼしながら開き、さらに架空送電線120Aを押し付けると、架空送電線120Aは把持部材220の内部に完全に包含されることとなる、(【0039】)抵抗測定端子200。」
ウ 引用文献5に記載された事項と技術常識1の認定
(ア) 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用された文献である特開2006-30141号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
a 段落【0016】~【0022】、【図1】、【図2】
「【発明を実施するための最良の形態】【0016】図1は、第1の発明である電圧センサの一例を示す平面図であり、図2(a)は、図1におけるA-A線矢視方向での断面図を、図2(b)は、図1におけるB-B線矢視方向での断面図を、図2(c)は、図1におけるC-C線矢視方向での断面図をそれぞれ示す。【0017】続きを表示(全15行)これらの図によれば、静電誘導検出器が備える図3に示すようなクリップに配設される電圧センサ11は、可撓性を有して適宜の平面形状を呈する絶縁シート12と、該絶縁シート12の面内に納まるようにその一側面13と他側面14とに各別に配設される導電層22,32と、可撓性を有してこれらの導電層22,32側を各別に覆う絶縁カバー43とで構成されている。【0018】このうち、絶縁シート12は、例えばポリエステルフィルムやポリイミドフィルムなどの絶縁性樹脂製のシート状薄片からなる略方形を呈する基片部13と、該基片部13の一辺側からその面方向に一体となって延設されている略方形を呈する舌片部14とで形成されている。【0019】絶縁シート12の一側面13側に銅箔を付着して形成される導電層22は、絶縁シート12における基片部15側をその周囲に余白を残してほぼ覆う主面部23と、該主面部23から舌片部16方向にその途中まで引き出された比較的狭幅な引出し部24とで形成されている。【0020】また、絶縁シート12の他側面14側に銅箔を付着して形成される導電層32は、絶縁シート12における基片部15側をその周囲に余白を残してほぼ覆う主面部33と、該主面部33から舌片部16方向にその途中まで引き出された比較的狭幅な引出し部34とで形成されている。【0021】このため、導電層22,32は、絶縁シート12の基片部15を介してその一側面13と他側面14にて対面合致する主面部23,33と、絶縁シート12の舌片部16を介して相互に左右対称の位置関係となる引出し部24,34とで構成されることになる。なお、引出し部24,34の終端からは、図示は省略してあるが舌片部16の開放端に到達するリードがそれぞれ一体形成されている。【0022】絶縁カバー43のそれぞれは、適宜の絶縁塗料を塗布した絶縁層や、ポリエステルフィルムやポリイミドフィルムなどからなる絶縁フィルムや絶縁テープを貼着するなどして形成されるものであり、これにより引出し部24,34の開放端部25,35が位置する面領域を除く絶縁シート12の一側面13と他側面14との全面が覆われる。なお、電圧センサ11は、そのいずれか一方の面に予め接着剤を塗着しておくことで、この接着剤を有する面をセンサ電極側として、接着剤を有しない面をシールド電極側として用いることができる。」
「【図1】[図:0001404289000011.jpg]」
「【図2】[図:0001404289000012.jpg]」
b 段落【0023】~【0030】、【図3】
「【0023】次に、第2の発明であるクリップにつき、第1の発明である電圧センサ11が奏する作用・効果とともに説明する。【0024】図3は、本発明に係るクリップの一例を半割りした状態で示す説明図であり、一側クリップ部52と他側クリップ部53とは、略V字形を呈する捩りコイルばね54を介装させた支軸55を介することで、帯電体としての交流電路を保持するために開閉される各湾曲保持部56,57側が常閉状態となって一体的に軸支されてクリップ51の全体が形成されている。続きを表示(全16行)【0025】また、各湾曲保持部56,57の内側には、電圧センサ11が各別に配設されており、帯電体としての交流電路を保持させ際に静電誘導により電荷を検出することができるようになっている。【0026】すなわち、一側クリップ部52の湾曲保持部56の内側には、絶縁シート12の一側面13側を対面させ、かつ、他側面14の導電層32の引出し部34側が支軸55側に向くように目視される配置関係のもとで、電圧センサ11が湾曲保持部56の曲面に沿うように接合固着するなどして位置固定されている。【0027】また、他側クリップ部53の湾曲保持部57の内側には、絶縁シート12の一側面13側を対面させ、かつ、一側面13の導電層22の引出し部24側が支軸55側に向くように目視される配置関係のもとで、電圧センサ11が湾曲保持部57の曲面に沿うように接合固着するなどして位置固定されている。【0028】このため、クリップ51に配設された各電圧センサ11は、一側クリップ部52側の導電層22と他側クリップ部53側の導電層22とをそれぞれ帯電体としての交流電路側に配置してセンサ電極として機能させることができる。【0029】また、クリップ51に配設された各電圧センサ11は、一側クリップ部52側の導電層32と他側クリップ部53側の導電層32とを三相交流電路や束ねられている交流電路における他の近接交流電路側に配置してこれから発生する外乱静電誘導を遮蔽するシールド電極として機能させることができる。【0030】しかも、各電圧センサ11自体は、それぞれ一体物として形成されているので、一側クリップ部52側と他側クリップ部53側とに単に貼着するなど、極簡単に組み込んでクリップ11を形成することができる。また、導電層22と導電層32とは、絶縁シート12と絶縁カバー43とに封入されるようにしてで確実に絶縁されているので、結露等の短絡要因が存在しても相互間の抵抗が下がりにくく、したがって、電荷を安定的に検出することができる。」
「【図3】[図:0001404289000013.jpg]」
(イ) 技術常識1の認定
前記(ア)において摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という)。
[技術常識1]
「電路にかかる電圧を検出するための電極を有する電圧検出手段において、結露などへの対策として、電極の両面を絶縁材料によって被覆すること。」
(3) 対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「円柱形状の電線導体11の周囲を電線被覆12により被覆」した「電線10」は、本件補正発明の「電線(3)」に相当し、引用発明の「電線導体電圧」は、本件補正発明の「電線(3)にかかる電圧」に相当する。
(イ) 引用発明において、「キャパシタC1は、電線導体、プローブの内側導体板、およびその間の電線被覆(絶縁被覆)から形成され、また、キャパシタC2は、プローブの内側導体板、プローブの外側導体板、およびその間のプローブ誘電体から形成されるもの」であるから、「内側導体板21」は、「キャパシタC1」及び「キャパシタC2」のいずれにとっても、電極として機能しているといえる。
(ウ) 引用発明において、「2つのキャパシタC1およびキャパシタC2」は、「電線およびプローブ間の電圧を分圧するものであり」、「測定対象の導体電圧V」は、「キャパシタC2における電位差V2」と「電線およびプローブについての構造パラメータとの値のみに基づいて算出可能」であるから、「キャパシタC2」の電極として機能する「内側導体板21」は、「測定対象の導体電圧V」を検出するためのものであるといえる。
(エ) 前記(ア)~(ウ)を踏まえると、引用発明の「内側導体板21」は、本件補正発明の「電線(3)にかかる電圧を検出するための電極(28)」に相当する。
(オ) 引用発明の「電線導体電圧を測定するためのプローブ」は、「内側導体板21」を備えているから、前記(エ)を踏まえると、本件補正発明の「電線(3)にかかる電圧を検出するための電極(28)を有する電圧検出プローブ」に相当する。
(カ) 引用発明は、「電線導体電圧を測定するためのプローブを用いた測定装置」の発明であるところ、「電線導体電圧を測定するためのプローブ」の発明を内包するから、本件補正発明と引用発明は、「電線にかかる電圧を検出するための電極を有する電圧検出プローブ」の発明である点において一致する。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
(ア) 一致点
「電線にかかる電圧を検出するための電極を有する電圧検出プローブ」である点。
(イ) 相違点
本件補正発明においては、
「前記電線(3)に対して着脱自在に装着されるクリップ部(12)を備え、前記クリップ部(12)は、前記電線(3)が嵌め入れられる嵌入凹部(20)と、該嵌入凹部(20)の内面に対応するよう当該クリップ部(12)の内部に位置する、円弧状を有するばね部材(30)と、該ばね部材(30)の内側で嵌入凹部(20)の内面に沿って配置される前記電極(28)とを有し、前記嵌入凹部(20)の開口(24)を広げるように弾性変形可能であり、該開口(24)から前記嵌入凹部(20)に嵌め入れられた前記電線(3)を弾性力で保持して、該電線(3)の外周面に沿うように前記電極(28)を配置させるように構成され、絶縁性を有する材料からなる絶縁被膜(46)によって被覆され、前記絶縁被膜(46)は、前記クリップ部(12)の外面から前記嵌入凹部(20)の内面にかけて一続きに設けられ、当該クリップ部(12)の内側で前記電極(28)を覆い、前記嵌入凹部(20)の内面を構成する」ものであるのに対して、
引用発明においては、「プローブ20は可撓性を有するように形成され」、「部分円筒形状のプローブ構造では、嵌め込み型として製造および装着固定され」ているものの、電線10に対して着脱自在に装着されるクリップ部を備えているとまではいえず、また、絶縁被膜によって被膜されていない点。
ウ 判断
前記相違点について検討する。
(ア) 「クリップ部」について
a 引用文献2技術事項の「直流電圧降下法」にて「抵抗測定」を「実施」する「抵抗測定端子200」が備える「リング状の板バネで構成された把持部材220」は、「被測定物に押し付けられることにより変形して開く開口260を有し、開口260から被測定物をリング内に導入して把持するもの」であるから、「被測定物」である「架空送電線120A」に対して着脱自在に装着されるクリップ部であるといえる。
b ここで、引用発明においては、「部分円筒形状のプローブ構造では、嵌め込み型として製造および装着固定され」るとし、「プローブ構造は、クランプ型のCT素子やホール素子と併用して非接触の電力量計を構成でき、これにより既存の配線を切断、破壊等をすることなく、また、通電を停止することなく着脱可能な電力量計を構成できるように」なるとしているから、引用発明の「プローブ20」について、「電線10」に対して着脱自在に装着されることが可能となるような部材を設ける契機は存在するといえる。
c そうすると、引用発明の「プローブ20」において、「電線10」に対して着脱自在に装着されることが可能となるように、引用文献2技術事項に開示された「リング状の板バネで構成された把持部材220」を「電線10」に対して着脱自在に装着されるクリップ部として設けるように構成することは、当業者ならば格別困難なことではないというべきである。
d そして、引用文献2技術事項においては、「導電性部材240」が「把持部材220の内面に部分的に固着され」、「リング状に丸められた把持部材220は、その合わせ目から端部まで末広がりの形状になっており、この末広がりの部分が開口260であり、かかる開口260に架空送電線120Aを押し付けると、末広がりの開口260が、板バネの性質によって架空送電線120Aに抗力を及ぼしながら開き、さらに架空送電線120Aを押し付けると、架空送電線120Aは把持部材220の内部に完全に包含されることとなる」のであるから、引用発明の「プローブ20」において、引用文献2技術事項の「リング状の板バネで構成された把持部材220」(クリップ部)を設けた場合には、かかるクリップ部の構成として、「電線10」が嵌め入れられる嵌入凹部と、該嵌入凹部の内面に対応するようクリップ部の内部に位置する、リング状の板バネと、該リング状の板バネの内側で嵌入凹部の内面に沿って配置される「内側導体板21」とを有することが自然に導かれることになり、また、かかるクリップ部は、前記嵌入凹部の開口を広げるように弾性変形可能であり、該開口から前記嵌入凹部に嵌め入れられた前記「電線10」を弾性力で保持して、該「電線10」の外周面に沿うように前記「内側導体板21」を配置させるような構成も、自然に導かれることになる。
e したがって、前記相違点に係る本件補正発明の構成のうち、
「前記電線(3)に対して着脱自在に装着されるクリップ部(12)を備え、前記クリップ部(12)は、前記電線(3)が嵌め入れられる嵌入凹部(20)と、該嵌入凹部(20)の内面に対応するよう当該クリップ部(12)の内部に位置する、円弧状を有するばね部材(30)と、該ばね部材(30)の内側で嵌入凹部(20)の内面に沿って配置される前記電極(28)とを有し、前記嵌入凹部(20)の開口(24)を広げるように弾性変形可能であり、該開口(24)から前記嵌入凹部(20)に嵌め入れられた前記電線(3)を弾性力で保持して、該電線(3)の外周面に沿うように前記電極(28)を配置させるように構成され」ることは、格別のものではない。
(イ) 「絶縁被膜」による「被覆」について
a 引用発明においては、「高圧電線下や変電所周辺の環境測定にも利用できる」としており、屋外における電圧測定を想定しているから、「プローブ20」において、雨滴等の水分を原因とした短絡が生じることのないように外部に防水対策(絶縁)を講じる必要があるといえる。
b ここで、「電路にかかる電圧を検出するための電極を有する電圧検出手段において、結露などへの対策として、電極の両面を絶縁材料によって被覆すること」は、当業者にとって技術常識である(前記技術常識1を参照)。
c 前記技術常識1に照らしてみると、引用発明の「プローブ20」において、引用文献2技術事項の「リング状の板バネで構成された把持部材220」(クリップ部)を設けた場合に、かかるクリップ部の内側及び外側を絶縁材料によって被覆することにより防水対策(絶縁)を講じることは、当業者にとって自明な設計変更にすぎないというべきである。
d そして、絶縁被膜がクリップ部の外面から嵌入凹部の内面にかけて一続きに設けられること、当該クリップ部の内側で電極を覆い、嵌入凹部の内面を構成することは、クリップ部の内側及び外側を絶縁材料によって被覆することにより防水対策(絶縁)を講じるにあたり、当業者が適宜選択し得た設計事項にすぎない。
e したがって、前記相違点に係る本件補正発明の構成のうち、
「絶縁性を有する材料からなる絶縁被膜(46)によって被覆され、前記絶縁被膜(46)は、前記クリップ部(12)の外面から前記嵌入凹部(20)の内面にかけて一続きに設けられ、当該クリップ部(12)の内側で前記電極(28)を覆い、前記嵌入凹部(20)の内面を構成する」ことも、格別のものではない。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)の検討結果を総合しても、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとしては当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 審判請求書の主張の概要
引用文献1(特開2014-182060号公報)には、クリップ部がばね部材を有すること、ましてや、ばね部材が嵌入凹部の内面に対応するようクリップ部の内部に位置することについては、明示的な記載はおろか示唆さえもない。
また、引用文献1には、クリップ部が絶縁被膜によって覆われること、ましてや、絶縁被膜が、クリップ部の外面から嵌入凹部の内面にかけて一続きに設けられ、クリップ部の内側で電極を覆い、嵌入凹部の内面を構成することについても、明示的な記載はおろか示唆さえもない。
引用文献2(特開2010-236984号公報)には、抵抗測定端子がリング状の板バネで構成された把持部材を備えることが記載されているが、クリップ部が絶縁被膜によって覆われることについて明示的な記載も示唆もない。
よって、引用文献1に「図4(b)に示すプローブ構造は嵌め込み型として製造および装着固定される」との記載があるからといって、当業者といえども、引用文献1に開示された電線導体電圧を測定するためのプローブが、ばね部材を内部に有する構成に必ずしも至るものではなく、また、絶縁被膜によって覆われる構成を採り得えない。そして、装置の部品を使用環境等による傷や劣化を保護する目的でゴム等の絶縁材料で覆って保護することが慣用の技術であるとしても、引用文献1に開示のようなプローブに適用した場合に至る構成は、プローブの外面を絶縁材料で覆う構成に留まり、絶縁材料をプローブの内面にまで一続きで設けるものではない。引用文献1のプローブの内面には、電線被覆表面に密着して配置される内側導体板が存在するため、内側導体板の電線被覆表面への密着を阻害するのに、絶縁材料が設けられるはずがない。
本願発明1は、僅かでも水分が電極に付くと電圧検出プローブによる電圧の検出精度が低下するという課題を考慮したからこそ、絶縁被膜を、クリップ部の外面と嵌入凹部の内面とに分けて設けるのではなく、クリップ部の外面から嵌入凹部の内面にかけて一続きに設け、電極がクリップ部の内側で絶縁被膜により覆われるようにしたものである。これに対し、引用文献1および2には、上述した課題や当該課題の解決手段について何ら記載も示唆もない。
よって、引用文献1に係る発明に基づいても、また、仮に引用文献1および2に係る発明を組み合わせることができたとしても、本願発明1には想到し得ず、上述した本願発明1の作用効果(特にクリップ部の防水機能)を奏することもできない。
(イ) 令和4年12月7日に提出された上申書の主張の概要
引用文献1記載の発明は、「前記プローブが、前記電線の一部を覆うように前記内側導体板を前記電線被覆の表面の周囲の少なくとも一部に密着して構造されたときに、直列に配置される第1のキャパシタおよび第2のキャパシタを形成[する]」ことを発明特定事項(請求項1の構成要件)としており、プローブ内面の内側導体板が電線被覆の表面に密着することを発明の本質的部分に含んでいる。このことから、引用文献1のプローブの内面には、内側導体板の電線被覆の表面への密着を阻害するのに、絶縁材料が設けられるはずがない。
よって、仮に引用文献1記載の発明に引用文献2記載の技術を適用し得たとしても、「ゴム等の絶縁材料で外面から内面に一続きで覆って保護する」との構成は採り得ず、本願発明1には想到し得ないものである。
本願発明1は、僅かでも水分が電極に付くと電圧検出プローブによる電圧の検出精度が低下するという課題を考慮したからこそ、絶縁被膜を、クリップ部の外面と嵌入凹部の内面とに分けて設けるのではなく、クリップ部の外面から嵌入凹部の内面にかけて一続きに設け、電極がクリップ部の内側で絶縁被膜により覆われるように防水対策したものである。これに対し、引用文献1および2には、上述した課題や当該課題の解決手段について何ら記載も示唆もない。
よって、当業者は、引用文献1及び2に基づいても、本願発明には想到し得ず、上述した本願発明1の作用効果(特にクリップ部の防水機能)を奏することもできない。
(ウ) 請求人の主張に対する当審の判断
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a 両面の絶縁について
前記ウ(イ)aにおいて説示したとおり、引用発明の「プローブ20」において、雨滴等の水分を原因とした短絡が生じることのないように外部に防水対策(絶縁)を講じる必要があるといえるから、引用発明の「プローブ20」において、引用文献2技術事項の「リング状の板バネで構成された把持部材220」(クリップ部)を設けた場合に、かかるクリップ部の内側及び外側を絶縁材料によって被覆することにより防水対策(絶縁)を講じることは、技術常識1に照らして当業者にとって自明な設計変更にすぎないというべきである。
b 一続きの絶縁被膜について
絶縁被膜がクリップ部の外面から嵌入凹部の内面にかけて一続きに設けられること、当該クリップ部の内側で電極を覆い、嵌入凹部の内面を構成することは、クリップ部の内側及び外側を絶縁材料によって被覆することにより防水対策(絶縁)を講じるにあたり、当業者が適宜選択し得た設計事項にすぎない。
c 阻害要因について
請求人は、引用文献1のプローブの内面には、電線被覆表面に密着して配置される内側導体板が存在するため、内側導体板の電線被覆表面への密着を阻害するのに、絶縁材料が設けられるはずがないと主張する。
しかしながら、引用発明は、「電線およびプローブの構造パラメータについて、電線の導体径a、電線の被覆径b、プローブの外径c、電線被覆の誘電率ε1、プローブ構造体の誘電率ε2とすると」、「測定対象の導体電圧V」は、「数式(2)により、キャパシタC2における電位差V2(一対の端子23,24を介して接続された電位差センサを用いて測定される)と電線およびプローブについての構造パラメータとの値のみに基づいて算出可能」となるのであるから、電線被覆表面と内側導体板の間に内側導体板を被覆する絶縁被膜が存在したとしても、当該絶縁被膜の厚さ及び誘電率が判明していれば、数式(2)の右辺の構造パラメータ(特に、電線の被覆径bと電線被覆の誘電率ε1)を当該絶縁被膜の厚さ及び誘電率に相当する分だけ修正することにより、「測定対象の導体電圧V」の算出は可能であるといえるから、引用発明において、内側導体板の電線被覆表面への直接触は必須のものではない。
したがって、引用発明において、電線被覆表面と内側導体板の間に内側導体板を被覆する絶縁被膜を設けることに関して、阻害要因があるとはいえない。
d 前記a~cを踏まえると、審判請求書及び上申書における請求人の主張はいずれも採用することはできない。
オ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和4年2月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるものである。
なお、前記第2の3(1)における認定と同様に、本件補正前の請求項1の「電極(44)」は「電極(28)」の誤記であると認め、以下では、本願発明の「電極(44)」は「電極(28)」に読み替えて論じることとする。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。
本願発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、上記引用文献2には、第2の3(2)イ(イ)において認定したとおりの引用文献2技術事項が記載されていると認められる。
さらに、技術常識1は、前記第2の3(2)ウ(イ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
(1) 対比
前記第2の3(3)アの対比における検討結果も踏まえて、本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明の相違点は、次の相違点Aのとおりであり、両者はその余の点で一致する。
<相違点A>
本願発明においては、
「前記電線(3)に対して着脱自在に装着されるクリップ部(12)を備え、前記クリップ部(12)は、前記電線(3)が嵌め入れられる嵌入凹部(20)を有し、該嵌入凹部(20)の開口(24)を広げるように弾性変形可能であり、該開口(24)から前記嵌入凹部(20)に嵌め入れられた前記電線(3)を弾性力で保持して、該電線(3)の外周面に沿うように前記電極(28)を配置させるように構成され、前記クリップ部(12)は、前記電極(28)が内側に配置される円弧状のばね部材(30)を有し、前記ばね部材(30)の外面は、絶縁性を有する材料からなる絶縁被膜(46)によって被覆され、前記絶縁被膜(46)は、前記嵌入凹部(20)の内面を構成する」ものであるのに対して、
引用発明においては、「プローブ20は可撓性を有するように形成され」、「部分円筒形状のプローブ構造では、嵌め込み型として製造および装着固定され」ているものの、電線10に対して着脱自在に装着されるクリップ部を備えているとまではいえず、また、絶縁被膜によって被膜されていない点。
(2) 相違点についての判断
前記第2の3(3)ウにおいて説示した判断を踏まえると、前記相違点Aに係る本願発明の構成は、引用発明、引用文献2技術事項及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-014042