特許拒絶査定不服審判
2022-013397
情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
- 審判番号
- 2022-013397
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-085654
- 請求日
- 2022年08月25日
- 審決日
- 2023年07月27日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤフー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 林 毅
- 審判官 脇岡 剛
- 審判官 山崎 慎一
- 分類
- P18 .121-WZ (G06F) / P18 .537-WZ (G06F) / P18 .572-WZ (G06F) / P18 .575-WZ (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 85654「情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年12月 2日出願公開、特開2022-178691〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年5月20日を出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 2月 1日付け: 拒絶理由通知書
令和 4年 4月 8日 : 意見書、手続補正書の提出
令和 4年 6月24日付け: 拒絶査定
令和 4年 8月25日 : 審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 3月30日付け: 拒絶理由通知書
令和 5年 6月 2日 : 意見書、手続補正書の提出
第2 令和5年6月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年6月2日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
ユーザの行動分析情報を取得し、前記ユーザの現在の行動や状況を推定する推定部と、
FIDO認証が行われる際に、前記ユーザの行動分析情報、前記ユーザの好みやデバイスに合わせた各認証手段の優先順位に関する情報、認証時の前記ユーザとデバイスに関する情報、デバイスのとりうる認証手段情報、認証サーバごとのセキュリティポリシーの情報から前記ユーザに適した認証手段を選択するものであって、複数の認証手段の中から、前記ユーザの現在の行動や状況に適さない認証手段を避けて、前記ユーザの現在の行動や状況に適した認証手段を複数選択する選択部と、
選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザの現在の行動や状況に応じた認証を行う管理部と、
を備え、
前記選択部は、
前記ユーザの現在の行動や状況として、前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、
前記ユーザの現在の行動や状況として、前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記ユーザの行動に関する行動分析情報を取得し、前記ユーザの行動分析情報から前記ユーザの現在の行動を推定し、
前記選択部は、複数の認証手段の中から、前記ユーザの現在の行動に適さない認証手段を避けて、前記ユーザの現在の行動に適した認証手段を選択することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記ユーザのコンテキスト情報及び行動分析情報に基づいて、前記ユーザの現在の状況を推定し、
前記選択部は、複数の認証手段の中から、前記ユーザの現在の状況に適さない認証手段を避けて、前記ユーザの現在の状況に適した認証手段を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記ユーザのコンテキスト情報を用いて、前記ユーザの行動分析情報の裏付けを行うことを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記選択部は、認証手段の選択ルールに従って、複数の認証手段の中から、前記ユーザ本人の状態及び行動に適した認証手段を選択することを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
複数の認証手段に関する情報と、認証手段の選択ルールに関する情報とを、認証サーバごとにあらかじめ登録する登録部と、
所定の認証サーバへのログインの際に、ログイン先の認証サーバに対応する複数の認証手段に関する情報と認証手段の選択ルールに関する情報とを抽出する抽出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
複数の認証手段の各々に対応する認証情報をあらかじめ登録する登録部と、
あらかじめ登録された認証情報の中から、選択された認証手段に対応する認証情報を抽出する抽出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~6のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項8】
選択された認証手段による認証を行う認証部と、
選択された認証手段による認証の結果、前記ユーザの本人性を検証できた場合に、認証サーバでの認証に用いられる認証情報を前記認証サーバに送付する送信部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~7のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記推定部は、前記ユーザの行動履歴やスケジュール情報、使用中のアプリに関する情報から、前記ユーザの現在の行動を分析し、その分析結果を前記ユーザの行動分析情報として取得することを特徴とする請求項1~8のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記推定部は、前記ユーザの履歴情報から、前記ユーザの現在の行動を分析し、その分析結果を前記ユーザの行動分析情報として取得することを特徴とする請求項1~9のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
ユーザの行動分析情報を取得し、前記ユーザの現在の行動や状況を推定する推定工程と、
FIDO認証が行われる際に、前記ユーザの行動分析情報、前記ユーザの好みやデバイスに合わせた各認証手段の優先順位に関する情報、認証時の前記ユーザとデバイスに関する情報、デバイスのとりうる認証手段情報、認証サーバごとのセキュリティポリシーの情報から前記ユーザに適した認証手段を選択するものであって、複数の認証手段の中から、前記ユーザの現在の行動や状況に適さない認証手段を避けて、前記ユーザの現在の行動や状況に適した認証手段を複数選択する選択工程と、
選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザの現在の行動や状況に応じた認証を行う管理工程と、
を含み、
前記選択工程では、
前記ユーザの現在の行動や状況として、前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、
前記ユーザの現在の行動や状況として、前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択することを特徴とする情報処理方法。
【請求項12】
ユーザの行動分析情報を取得し、前記ユーザの現在の行動や状況を推定する推定手順と、
FIDO認証が行われる際に、前記ユーザの行動分析情報、前記ユーザの好みやデバイスに合わせた各認証手段の優先順位に関する情報、認証時の前記ユーザとデバイスに関する情報、デバイスのとりうる認証手段情報、認証サーバごとのセキュリティポリシーの情報から前記ユーザに適した認証手段を選択するものであって、複数の認証手段の中から、前記ユーザの現在の行動や状況に適さない認証手段を避けて、前記ユーザの現在の行動や状況に適した認証手段を複数選択する選択手順と、
選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザの現在の行動や状況に応じた認証を行う管理手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記選択手順では、
前記ユーザの現在の行動や状況として、前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、
前記ユーザの現在の行動や状況として、前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択することを特徴とする情報処理プログラム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年8月25日に手続補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
ユーザのコンテキスト情報から前記ユーザ本人の状態及び行動を推定する推定部と、
FIDO認証が行われる際に、複数の認証手段の中から、前記ユーザ本人の状態及び行動に適さない認証手段を避けて、前記ユーザ本人の状態及び行動に適した認証手段を複数選択する選択部と、
選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザ本人の状態及び行動に応じた認証を行う管理部と、
を備え、
前記選択部は、
前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、
前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記ユーザの行動分析情報から前記ユーザの現在の行動を推定し、
前記選択部は、複数の認証手段の中から、前記ユーザの現在の行動に適さない認証手段を避けて、前記ユーザの現在の行動に適した認証手段を選択することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記ユーザのコンテキスト情報から前記ユーザの現在の行動を推定することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記ユーザのコンテキスト情報を用いて、前記ユーザの行動分析情報の裏付けを行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記選択部は、認証手段の選択ルールに従って、複数の認証手段の中から、前記ユーザ本人の状態及び行動に適した認証手段を選択することを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
複数の認証手段に関する情報と、認証手段の選択ルールに関する情報とを、認証サーバごとにあらかじめ登録する登録部と、
所定の認証サーバへのログインの際に、ログイン先の認証サーバに対応する複数の認証手段に関する情報と認証手段の選択ルールに関する情報とを抽出する抽出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
複数の認証手段の各々に対応する認証情報をあらかじめ登録する登録部と、
あらかじめ登録された認証情報の中から、選択された認証手段に対応する認証情報を抽出する抽出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~6のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項8】
選択された認証手段による認証を行う認証部と、
選択された認証手段による認証の結果、前記ユーザの本人性を検証できた場合に、認証サーバでの認証に用いられる認証情報を前記認証サーバに送付する送信部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~7のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記ユーザのコンテキスト情報は、前記ユーザの端末装置により得られた緯度、経度、気温、湿度、及び位置情報に関する情報のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~8のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記ユーザのコンテキスト情報は、前記ユーザの属性情報と、前記ユーザの端末装置に関するデバイス情報とのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~9のうちいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
ユーザのコンテキスト情報から前記ユーザ本人の状態及び行動を推定する推定工程と、
FIDO認証が行われる際に、複数の認証手段の中から、前記ユーザ本人の状態及び行動に適さない認証手段を避けて、前記ユーザ本人の状態及び行動に適した認証手段を複数選択する選択工程と、
選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザ本人の状態及び行動に応じた認証を行う管理工程と、
を含み、
前記選択工程では、
前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、
前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択することを特徴とする情報処理方法。
【請求項12】
ユーザのコンテキスト情報から前記ユーザ本人の状態及び行動を推定する推定手順と、
FIDO認証が行われる際に、複数の認証手段の中から、前記ユーザ本人の状態及び行動に適さない認証手段を避けて、前記ユーザ本人の状態及び行動に適した認証手段を複数選択する選択手順と、
選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザ本人の状態及び行動に応じた認証を行う管理手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記選択手順では、
前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、
前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択することを特徴とする情報処理プログラム。」
2 補正の適否
(1)目的外補正について
ア.請求項1に係る補正について
本件補正は、請求項1の「推定部」に関し、補正前の「ユーザのコンテキスト情報から」との事項を削除し、「ユーザの行動分析情報を取得し」との事項とする補正を含むものである。
ここで、本件明細書の記載(「端末装置10は、・・(中略)・・、自身に搭載された測位機能や各種センサの検出結果等から、利用者Uのコンテキスト情報を取得する(ステップS2)。コンテキスト情報は、緯度、経度、気温、湿度、位置情報、その他のセンサ情報等のいずれか又はこれらの組合せ等であってもよい。また、コンテキスト情報は、利用者Uの属性情報や、端末装置10及びその付属物等のデバイスに関する情報や、利用者Uが特に好む認証手段に関する情報を含んでいてもよい。例えば、コンテキスト情報は、利用者Uの好み(嗜好)やデバイスに合わせた各認証手段の優先順位に関する情報を含んでいてもよい。(段落【0032】)」、「コンテキスト情報を、利用者Uの行動分析情報の1つとして使用してもよい。(段落【0035】)」、「推定部35は、測位部14や各センサ21~28の検出結果等から、利用者Uのコンテキスト情報を取得し、(段落【0073】)」)によると、本件補正前の「ユーザのコンテキスト情報」とは、センサ情報、利用者の属性情報や、利用者の端末装置に関する情報を含むものであり、ユーザの行動分析情報の1つとして使用されるものであるといえる。
また、本件明細書の記載(「端末装置10は、現在の利用者Uの行動分析情報として、「ランニング中」、「マスクをしている」、「手袋をしている」、「在宅中」、「料理をしている」、「外出中」、「運転中」、「電車での移動中」、「面談中」といった利用者Uの行動や状況に関する情報を取得する。(段落【0033】)」、「推定部35は、現在の利用者Uの行動に関する行動分析情報を取得し(段落【0073】)」)によると、本件補正後の「ユーザの行動分析情報」とは、利用者Uの行動や状況に関する情報であり、「ユーザのコンテキスト情報」とは異なる技術内容を包含するものであるといえるところ、「ユーザの行動分析情報」と「ユーザのコンテキスト情報」とが等価な情報であることや、「ユーザの行動分析情報」が「ユーザのコンテキスト情報」に対して概念的に下位のものであることについて、本件明細書の他の段落及び図面には記載されておらず、かつ、技術常識でもない。
してみると、補正後の「ユーザの行動分析情報を取得し」とは、補正前の「ユーザのコンテキスト情報から」より広い技術内容を包含するものである。
そうすると、請求項1において、補正前の「ユーザのコンテキスト情報から」との事項を削除し、「ユーザの行動分析情報を取得し」との事項に補正することは、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を概念的に下位にするものでないことは明らかであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当しない。また、上記補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
したがって、本件補正のうち請求項1に係る上記補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれを目的としたものにも該当しないから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていない。
イ.請求項9に係る補正について
本件補正のうち請求項9に係る補正は、本件補正前の「前記ユーザのコンテキスト情報は、前記ユーザの端末装置により得られた緯度、経度、気温、湿度、及び位置情報に関する情報のうち少なくとも1つを含む」との事項を、本件補正後の「前記ユーザの行動履歴やスケジュール情報、使用中のアプリに関する情報から、前記ユーザの現在の行動を分析し、その分析結果を前記ユーザの行動分析情報として取得する」とするものである。
かかる補正は、本件補正前の請求項9に記載された発明の発明特定事項を概念的に下位にするものではないことは明らかであり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当しない。また、上記補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
したがって、本件補正のうち請求項9に係る上記補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれを目的としたものにも該当しないから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていない。
ウ.請求項10に係る補正について
本件補正のうち請求項10に係る補正は、本件補正前の「前記ユーザのコンテキスト情報は、前記ユーザの属性情報と、前記ユーザの端末装置に関するデバイス情報とのうち少なくとも1つを含む」との事項を、本件補正後の「前記ユーザの履歴情報から、前記ユーザの現在の行動を分析し、その分析結果を前記ユーザの行動分析情報として取得する」とするものである。
かかる補正は、本件補正前の請求項10に記載された発明の発明特定事項を概念的に下位にするものではないことは明らかであり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当しない。また、上記補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
したがって、本件補正のうち請求項10に係る上記補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれを目的としたものにも該当しないから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていない。
(2)独立特許要件について
上記(1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれを目的としたものに該当せず却下すべきものであるが、仮に上記補正事項を含む本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当すると仮定して、請求項1の補正事項と同様の事項を含む本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下、予備的に検討する。
ア.本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。
イ.明確性要件について
本件補正発明の「前記ユーザの行動分析情報、前記ユーザの好みやデバイスに合わせた各認証手段の優先順位に関する情報、認証時の前記ユーザとデバイスに関する情報、デバイスのとりうる認証手段情報、認証サーバごとのセキュリティポリシーの情報から前記ユーザに適した認証手段を選択する」とは、その記載からすると、「認証手段を選択」することに関して、「前記ユーザの行動分析情報、前記ユーザの好みやデバイスに合わせた各認証手段の優先順位に関する情報、認証時の前記ユーザとデバイスに関する情報、デバイスのとりうる認証手段情報、認証サーバごとのセキュリティポリシーの情報」に基づいて認証手段を選択することを規定したものであると解される。
一方、本件補正発明の「複数の認証手段の中から、・・適した認証手段を複数選択する」との事項において、「前記ユーザの現在の行動や状況」は、「推定部」で推定された「前記ユーザの現在の行動や状況」であるといえることからすると、「複数の認証手段の中から、・・適した」認証手段を選択するとは、「推定部」で推定された「前記ユーザの現在の行動や状況」に基づいて認証手段を選択することを規定したものであると解される。
そうすると、請求項1は、「認証手段を選択する」ことに対して、異なる技術事項を規定しているものであって、発明の詳細な説明及び本件出願時の技術常識を参酌しても、当該異なる技術事項の間の関係も特定できるとはいえないから、当該異なる技術事項の間の関係を理解するための事項が不足している。
したがって、本件補正発明は、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当該技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといわざる得ないから、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれを目的としたものに該当せず、同法17条の2第5項に規定する要件に違反するものであるから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
または、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明について
令和5年6月2日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年8月25日に手続補正された請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものと認める。
第4 当審の拒絶理由の概要
当審が令和5年3月30日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。
1 理由1(明確性要件)、理由2(サポート要件)
理由1、2は、「(明確性要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」、「(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものであり、その具体的理由は次のとおりである。
(1)請求項1における「ユーザ本人の状態及び行動」との記載について、明細書には、「利用者Uの状況」という記載は認められるものの、「ユーザ本人の状態」についての記載は認められないから、請求項1における「ユーザ本人の状態」は、発明の詳細な説明における「ユーザ本人の状況」を意味するものであるのか、あるいはそれ以外のことを意味するものであるのか不明確である。
(2)また、「状態及び行動」とは、「状態」と「行動」との2つのパラメータの組み合わせを意味するのか、「状態」、「行動」のような、という例示にすぎないのか、明確ではない。
2 理由3(進歩性)
理由3は、「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、本件補正前の請求項1ないし12に係る発明に対して、下記の引用文献1ないし4から容易に発明をすることができたとするものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2017-060103号公報
2.特開2015-90589号公報
3.国際公開第2019/164191号
4.東 知明、岡部 稜、山崎 恭、大木 哲史、利用環境を考慮したマルチファクタ認証システムの認証精度向上に関する一検討、電子情報通信学会技術研究報告、日本、一般社団法人電子情報通信学会、2016年10月15日、Vol.116、No.264、pp.67-72
第5 当審の判断
1 当審拒絶理由の理由1(明確性要件)、理由2(サポート要件)について
(1)明確性要件について
ア.特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、この観点に立って、本願発明が明確であるか否かについて検討する。
イ.請求項1の「ユーザ本人の状態及び行動」との事項における「ユーザ本人の状態」について、「状態」とは、「その場の、またはその時のありさま。ある人を取りまく社会的・精神的・自然的なあり方すべてをいう。様子。情勢」(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)との意味であって、当該「ユーザ本人の状態及び行動」は、精神的あるいは社会的な概念を包含するものと解されるから、発明特定事項としての技術的な範囲が明確とはいえない。また、本件明細書及び図面には、「ユーザ本人の状態及び行動」に関する記載は認められない。
よって、本件請求項1に係る発明は、本件明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、発明の範囲を理解することができないから、明確であるとはいえない。
ウ.また、請求項1の「前記ユーザ本人の状態及び行動を推定する」及び「ユーザ本人の状態及び行動に適した」との事項における「行動及び推定」とは、「状態」と「行動」との2つのパラメータの組み合わせを意味するのか、「状態」と「行動」という例示にすぎないのか特定できない。
エ.上記のとおりであるから、本件発明は、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといわざる得ない。
(2)サポート要件について
ア.特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。
イ.請求項1の「前記ユーザ本人の状態及び行動を推定する」及び「ユーザ本人の状態及び行動に適した」認証手段を選択することにおいて、「行動及び推定」は、「状態」と「行動」との2つのパラメータの組み合わせを含むものであると解される。
ここで、本件明細書及び図面には、上記「前記ユーザ本人の状態及び行動」について、「状態」と「行動」との2つのパラメータの組み合わせとすることについて記載されておらず、出願時の技術常識に照らしても、上記「「状態」と「行動」との2つのパラメータの組み合わせ」を推定すること、及び、上記「「状態」と「行動」との2つのパラメータの組み合わせ」に適した認証手段を選択することが示唆されているとも認められない。
よって、請求項1に記載された「前記ユーザ本人の状態及び行動」との事項について、本件明細書及び図面には記載も示唆もされていない。
ウ.上記のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識である範囲内のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるともいえない。
(3)請求人の主張について
請求人は、令和5年6月2日提出の意見書において、本件補正により、請求項1の「ユーザ本人の状態及び行動」を「ユーザの現在の行動や状況」と補正したので、上記理由1、理由2は解消した旨主張しているが、本件補正は上記のとおり却下されたので、当該主張は採用しない。
(4)明確性要件、サポート要件についてのむすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
2 当審拒絶理由通知の理由3(進歩性)について
上記1で説示したとおり、本件発明のコンテキスト情報から推定される「ユーザ本人の状態及び行動」については、不明確であり、また、本件明細書及び図面には記載されていないところ、本件明細書(段落【0037】、【0073】、【0074】、【0124】)の記載に基づいて、情報処理装置を保持する利用者Uの状況や行動を含むものであると仮定して、以下、進歩性について検討する。
(1)引用発明
ア.引用文献1の記載事項
当審拒絶理由で引用された特開2017-060103号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。なお、引用文献2ないし4も同様である。)
「
【0007】
本願に係る選択装置は、ユーザの本人性を認証する機能を有する認証器を制御する選択装置であって、前記ユーザによって利用される前記選択装置の利用状況を検知する検知部と、前記検知部によって検知された利用状況に基づいて、前記認証器を選択する選択部と、前記選択部によって選択された認証器による認証の結果に対して所定の鍵で署名することにより生成される情報であって、前記ユーザの本人認証を行う認証サーバに特定の認証手順で処理される情報である認証結果情報の生成を制御する生成部と、を備えたことを特徴とする。
・・(中略)・・
【0025】
さらに、上記のように、認証サーバ100は、クライアント20から送信される認証結果情報の処理において、クライアント20との間で規定される特定の認証手順を用いる。なお、特定の認証手順とは、認証サーバ100とクライアント20との間で規定される認証手順であり、通信に関するプロトコルと読み替えることもできる。例えば、認証サーバ100は、UAF(Universal Authentication Framework)や、U2F(Universal Second Factor)といったプロトコルを用いる。これにより、認証サーバ100とクライアント20との通信は、より高い安全性が確保される。
・・(中略)・・
【0027】
しかしながら、上述した方式においては、ユーザは、認証サーバ100に複数の認証器を登録している場合には、ローカルでの認証のたびに複数の認証器から利用する認証器を選択することを要する。さらに、ユーザは、認証器を選択した後に、指紋認証器を利用するためには指紋データの入力を促され、虹彩認証器を利用するためには虹彩データの入力(例えば、カメラによる虹彩の撮影)を促されることになるため、手間がかかる。このように、認証サーバ100に対して通信を行うクライアント20側は、認証サーバ100を利用した安全性の高い認証処理を実現するにあたり、複数の認証器を選択するといった煩雑な処理を課せられるという課題がある。
・・(中略)・・
【0029】
(ユーザ端末10による処理)
図1に示す例では、ユーザU01は、例えば所定のアクセス制限付きサービスを利用するため、認証サーバ100による認証処理を所望するものとする。上記説明したように、認証サーバ100による認証を受けるにあたり、ユーザU01は、ローカルで本人認証を行うことが可能な認証器を認証サーバ100に登録することを要する。ここでは、ユーザU01は、認証サーバ100に対して、指紋認証器163Aと、虹彩認証器163Bと、声紋認証器163Cとを、ユーザU01を認証する認証器として登録しているものとする。なお、図1に示す例では、各認証器は、ユーザ端末10内部で実現される認証機能であり、例えば、ユーザ端末10にインストールされたアプリケーション(アプリ)等により実現される。
・・(中略)・・
【0032】
ユーザ端末10は、認証サーバ100からの要求に応じて、ユーザU01を認証するための認証器を動作させる。すなわち、ユーザ端末10は、認証サーバ100に登録されているいずれかの認証器を機能させ、認証を実行させるものとする。
【0033】
ここで、ユーザ端末10は、認証が要求された際の自装置の利用状況を検知する。具体的には、ユーザ端末10は、認証が要求された際のユーザU01による操作の状況を検知する(ステップS03)。例えば、ユーザ端末10は、認証が要求された際には、ユーザU01がユーザ端末10をタッチ操作していることを検知する(ステップS04)。なお、ユーザ端末10は、ユーザU01が行うタッチ操作以外の操作を検知する場合もありうる。例えば、ユーザ端末10は、ユーザU01がユーザ端末10を用いて撮影を行っていること(ステップS05)や、通話を行っていること(ステップS06)を検知する場合もある。
【0034】
そして、ユーザ端末10は、認証が要求された際に検知した利用状況に基づいて、認証器を選択する(ステップS07)。例えば、ユーザ端末10は、ユーザによってタッチ操作が行われていた場合(ステップS04の場合)、指紋を入力データとして本人を認証する指紋認証器163Aを選択する。あるいは、ユーザ端末10は、ユーザによって撮影が行われていた場合(ステップS05の場合)、虹彩を入力データとして本人を認証する虹彩認証器163Bを選択する。あるいは、ユーザ端末10は、ユーザによって通話が行われていた場合(ステップS06の場合)、音声を入力データとして本人を認証する声紋認証器163Cを選択する。このように、ユーザ端末10は、ユーザ端末10での認証の時点における利用状況を検知し、ユーザU01が現にユーザ端末10に対して行っている操作と関連する認証器を動作させる。言い換えれば、ユーザ端末10は、ユーザU01にとって、認証処理に伴う負担が少ないと想定される認証器を選択する。
【0035】
そして、ユーザ端末10は、選択された認証器であって、認証サーバ100に登録されている認証器による認証を実行する(ステップS08)。認証が成功した場合、すなわち、認証器がユーザU01を本人と認証した場合、ユーザ端末10は、ユーザ端末10内部に保持されている秘密鍵へのアクセスが可能となる。そして、ユーザ端末10は、認証器による認証の結果に対して、秘密鍵を用いて署名(ハッシュ値)を付し、認証結果情報を生成する。そして、ユーザ端末10は、秘密鍵で署名された認証結果情報を認証サーバ100に送信する(ステップS09)。
【0036】
認証サーバ100は、受信した認証結果情報を解析する。具体的には、認証サーバ100は、送信元で用いられた秘密鍵とペアとなる公開鍵を用いて、認証結果情報の信頼性を検証する(ステップS10)。
【0037】
すなわち、認証サーバ100は、検証対象である認証結果情報が、登録された認証器によって発行された秘密鍵で署名された情報であるか否かを、公開鍵を用いて検証する。認証サーバ100は、認証結果情報に改竄がないこと、すなわち、適切な秘密鍵によって認証結果情報が生成されていることが検証できた場合、認証結果情報に基づいて、ユーザ端末10のユーザがユーザU01であることを認証する。この場合、認証サーバ100は、自身が認証したことを示す認証済み情報を発行し、ユーザ端末10や、ユーザ端末10がアクセスしようとするサービス側へ認証済み情報を送信する。これにより、ユーザU01は、所望するサービスを利用することが可能となる。
・・(中略)・・
【0043】
また、ユーザ端末10は、認証器を備える。例えば、ユーザ端末10がスマートフォンである場合、認証器は、スマートフォンにインストールされるアプリケーション等によって実現される。なお、認証器は独立した装置であってもよく、例えば、ノート型PCのUSBインターフェイスに接続される指紋認証装置等であってもよい。
・・(中略)・・
【0047】
〔3.ユーザ端末の構成〕
次に、図5を用いて、実施形態に係るユーザ端末10の構成について説明する。図5は、実施形態に係るユーザ端末10の構成例を示す図である。図5に示すように、ユーザ端末10は、通信部11と、入力部12と、表示部13と、検知部14と、記憶部15と、制御部16とを有する。なお、ユーザ端末10が有する各処理部の接続関係は、図5に示した接続関係に限られず、他の接続関係であってもよい。
・・(中略)・・
【0051】
(検知部14について)
検知部14は、ユーザ端末10における利用状況を検知する。具体的には、検知部14は、ユーザ端末10に対するユーザU01の操作や、ユーザ端末10の所在する位置情報や、ユーザ端末10と接続されている機器に関する情報や、ユーザ端末10における環境等を検知する。図5に示した例では、検知部14は、操作検知部141と、位置検知部142と、外部装置検知部143と、環境検知部144とを有する。
・・(中略)・・
【0053】
(位置検知部142について)
位置検知部142は、ユーザ端末10の現在位置を検知する。具体的には、位置検知部142は、GPS衛星から送出される電波を受信し、受信した電波に基づいてユーザ端末10の現在位置を示す位置情報(例えば、緯度及び経度)を取得する。
・・(中略)・・
【0056】
(環境検知部144について)
環境検知部144は、ユーザ端末10における環境を検知する。環境検知部144は、ユーザ端末10に備えられた各種センサや機能を利用し、環境に関する情報を検知する。例えば、環境検知部144は、ユーザ端末10の周囲の音を収集するマイクロフォンや、ユーザ端末10の周囲の照度を検知する照度センサや、ユーザ端末10の物理的な動きを検知する加速度センサ(又は、ジャイロセンサなど)や、ユーザ端末10の周囲の湿度を検知する湿度センサや、ユーザ端末10の所在位置における磁場を検知する地磁気センサ等を利用する。そして、環境検知部144は、各種センサを用いて、種々の情報を検知する。例えば、環境検知部144は、ユーザ端末10の周囲における騒音レベルや、ユーザ端末10の周囲がユーザU01の虹彩を撮像に適する照度であるか等を検知する。
・・(中略)・・
【0067】
「タイプ」は、認証器が行う認証方式のタイプを示す。例えば、タイプには、指紋や、虹彩や、声紋が含まれる。なお、認証器の認証方式は、上記に限られない。例えば、認証器は、ユーザの顔の画像データを用いて認証を行う顔認証器や、ユーザの心拍等をセンサによって検知する生体情報認証器であってもよい。また、認証器の認証方式は、生体情報を用いた認証方式に限られない。例えば、認証器は、ユーザU1が所有する所定の物理キーをユーザ端末10に接続することによって認証を行うハードウェア認証器であってもよいし、ユーザ端末10に内蔵されるSIMカード(Subscriber Identity Module Card)の内容を判定することで認証を行うSIMカード認証器であってもよい。また、認証器は、パスワード等の所定の情報を入力することで認証を行う方式であってもよい。
・・(中略)・・
【0069】
・・(中略)・・また、選択条件は、外部機器との接続状況や、ユーザ端末10の位置情報など、環境情報も含めたユーザ端末10のコンテキストによって示されてもよい。また、選択条件は、ユーザ端末10を利用するユーザU01によって予め設定されてもよいし、所定の学習を経て、自動的に設定されてもよい。すなわち、ユーザ端末10は、どのようなコンテキストにおいてどのような認証器がユーザU01によって利用されたかを学習する。そして、ユーザ端末10は、その認証器が利用されたコンテキストを選択条件として自動的に記憶するようにしてもよい。
・・(中略)・・
【0072】
制御部16は、ユーザ端末10において行われるローカルでの認証処理や、認証器を機能させる処理や、認証サーバ100やウェブサーバ200との情報の送受信など、各種処理を制御する。図5に示すように、制御部16は、取得部161と、選択部162と、認証部163と、生成部164と、送信部165とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。例えば、制御部16は、RAMを作業領域として上述したアプリを実行することにより、各種情報処理を実現する。なお、制御部16の内部構成は、図5に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
・・(中略)・・
【0079】
また、選択部162は、ユーザ端末10と通信する外部装置との接続状況を参照する。そして、選択部162は、ユーザ端末10と通信する外部装置との接続状況に基づいてユーザ端末10のコンテキストを推測し、コンテキストに適した認証器を選択する。例えば、ユーザ端末10が社内用ルータ50と接続している場合、ユーザ端末10は、ユーザU01が勤務する社内にあるという可能性が高い。このとき、選択部162は、撮像操作や音声操作によらずに認証を行うことのできる認証器を優先的に選択する。
【0080】
また、選択部162は、ユーザ端末10が利用する各種センサから取得される情報に基づいてユーザ端末10のコンテキストを推測し、コンテキストに適した認証器を選択するようにしてもよい。例えば、選択部162は、ユーザ端末10の周辺の照度が虹彩を撮像するには不足している場合、虹彩認証器163Bを選択しないようにし、照度によらない認証方式を採用する認証器を選択する。あるいは、選択部162は、ユーザ端末10の周辺の騒音レベルが、ユーザ端末10のマイクで音声を認識するには適していないほど高い場合、声紋認証器163Cを選択しないようにし、騒音レベルによらない認証方式を採用する認証器を選択する。また、選択部162は、検知部14が検知するデータから、例えば、ユーザU01が電車で移動中であることや、歩行中であることや、比較的暗い場所にいること、比較的静かな場所にいること等、種々のコンテキストを推測してもよい。この場合、例えば、検知部14は、加速度センサやジャイロセンサ、また、過去に観測された行動のログなど、種々のデータを検知しているものとする。そして、選択部162は、検知部14によって検知されたデータから推測されるユーザ端末10のコンテキストに基づいて、最適な認証器を選択する。
【0081】
・・(中略)・・この場合、類似する利用状況とは、ユーザ端末10に対する同一の操作の種別が検知される場合や、ユーザ端末10の位置情報や通信状況などのコンテキストの一部が一致している場合等をいう。
・・(中略)・・
【0083】
(認証部163について)
認証部163は、ユーザ端末10を利用するユーザU01の本人性の認証に関する処理を制御する。例えば、認証部163は、ユーザ端末10が有する認証器を管理する。そして、認証部163は、認証器に関する情報を認証器情報記憶部152に登録する。
【0084】
また、認証部163は、選択部162によって選択された認証器を動作させ、ユーザ端末10を利用するユーザU01の本人性を認証する。すなわち、認証部163は、実施形態において、指紋認証器163A等の認証器としての機能を実現する。
・・(中略)・・
【0117】
〔6.変形例〕
上述したユーザ端末10による認証処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、以下では、ユーザ端末10の他の実施形態について説明する。
・・(中略)・・
【0123】
〔6-2.複数認証器の選択〕
ユーザ端末10は、複数の認証器を選択するようにしてもよい。例えば、ユーザ端末10は、上述したような認証強度について、認証強度が高くない認証器のみを有しているものとする。この場合、ユーザ端末10は、認証サーバ100から要求される認証強度を満たすような認証器によって認証処理を行えない可能性がある。
【0124】
そこで、ユーザ端末10は、認証器を選択する際に、複数の認証器を選択する。例えば、ユーザ端末10は、端末にハードウェアキーを挿入することで本人性を認証するハードウェア認証器と、ユーザ端末10に内蔵されるSIMカードの内容を判定することで認証を行うSIMカード認証器とを選択する。そして、ユーザ端末10は、選択された2種類の認証器による認証を実行する。この場合、2種類の認証器のいずれもがユーザU01の本人性を認証した場合、1種類の認証器による認証が行われた場合よりも、ユーザU01の認証に高い信頼性が与えられる。そして、ユーザ端末10は、2種類の認証器により認証が成功した旨を認証結果情報として認証サーバ100に送信する。そして、認証サーバ100が要求する認証強度を満たすことができたと判定された場合には、ユーザ端末10を利用するユーザU01は、認証サーバ100による認証を受けることができる。
【0125】
このように、ユーザ端末10は、状況に応じて、複数の認証器を選択するようにしてもよい。これにより、ユーザ端末10は、多要素による認証処理を行うことができるため、認証の信頼性を向上させることができる。また、ユーザ端末10は、認証サーバ100から送信される要求に柔軟に応じることができる。
・・(中略)・・
【0133】
上記の処理は、ユーザの購買行動等に限られず、種々の利用状況に応用が可能である。例えば、ユーザ端末10は、周囲の外部機器との通信状況から、ユーザU01が友人と一緒にいるといったコンテキストを検知する。・・
【0134】
また、ユーザ端末10は、ユーザU01が所定の場所にいるというコンテキストを検知した場合に、当該コンテキストにおいて頻繁に用いられている認証器を優先的に選択するようにしてもよい。・・
」
「【図5】
[図:0001402401000001.jpg]
」
イ.引用発明
(ア)上記アの段落【0047】、【0051】、【0072】の記載及び図5によると、引用文献1には、検知部14と制御部16とを有するユーザ端末が記載されており、上記検知部14は、位置検知部142と環境検知部144とを有し、上記制御部16は、選択部162と認証部163とを有しているといえる。
(イ)上記アの段落【0029】、【0043】の記載及び図5(認証器163)によると、ユーザ端末10は、指紋認証器163Aと、虹彩認証器163Bと、声紋認証器163Cとを、ユーザ端末10内部で実現される認証機能である認証器として有しているといえる。
また、上記アの図5(声紋認証器163Cの下の点線)によると、指紋認証器163A、虹彩認証器163B、声紋認証器163Cに加えて、他の認証器を有することが見て取れるところ、上記アの段落【0067】によると、ユーザ端末10は、顔認証器や、パスワード入力によって認証する認証器を用いて認証しているといえるから、引用文献1には、ユーザ端末10が、指紋認証器163Aと、虹彩認証器163Bと、声紋認証器163Cと、顔認証器と、パスワード入力によって認証する認証器とを有することが記載されていると認められる。
(ウ)上記アの段落【0080】、【0133】、【0134】によると、引用文献1の「ユーザ端末10のコンテキスト」は、ユーザ端末10の周辺の照度が虹彩を撮像するには不足していること、ユーザ端末10の周辺の騒音レベルが、ユーザ端末10のマイクで音声を認識するには適していないほど高いこと(段落【0080】)、ユーザU01が電車で移動中であることや、歩行中であること、比較的暗い場所にいること、比較的静かな場所にいること(段落【0080】)、ユーザU01が友人と一緒にいること、会社にいること(段落【0133】、【0134】)を表すものであることからすると、上記「ユーザ端末10のコンテキスト」とは、ユーザ端末10を保持するユーザU01の状況や行動を表すものであると解される。
(エ)上記アの段落【0080】の記載によると、上記選択部162は、検知部14によって検知されたデータからユーザ端末10のコンテキストを推測し、当該推測したコンテキストに適した認証器を選択するものであって、ユーザ端末10の周辺の照度が虹彩を撮像するには不足している場合には、虹彩認証器163Bを選択しないようにし、照度によらない認証方式を採用する認証器を選択する、あるいは、ユーザ端末10の周辺の騒音レベルが、ユーザ端末10のマイクで音声を認識するには適していないほど高い場合には、声紋認証器163Cを選択しないようにし、騒音レベルによらない認証方式を採用する認証器を選択し、あるいは、ユーザU01が電車で移動中であることや、歩行中であることや、比較的暗い場所にいること、比較的静かな場所にいる等と推測される場合には、当該推測に基づいて、最適な認証器を選択するものであるといえる。
(オ)上記(ウ)及び(エ)のとおりであるから、上記選択部162は、検知部14によって検知されたデータからユーザ端末10を保持するユーザU01の状況や行動を推測し、当該推測した状況や行動に適した認証器を選択するものであるといえる。
ここで、上記アの段落【0027】によると、引用文献1に記載された発明は、「認証サーバ100を利用した安全性の高い認証処理を実現するにあたり、複数の認証器を選択するといった煩雑な処理を課せられる」との問題を解決すること課題とするものであり、また、上記段落【0123】、【0124】、【0125】には、実施例として「ユーザ端末10は、状況に応じて、複数の認証器を選択する」ことが記載されていることをふまえると、引用文献1には、上記選択部162が、ユーザ端末10を保持するユーザU01の状況や行動を推測し、当該推測した状況や行動に適した認証器を複数選択することが記載されていると認められる。
(カ)上記アの段落【0083】、【0084】の記載によると、認証部163は、選択部162によって選択された認証器を動作させ、ユーザ端末10を利用するユーザU01の本人性を認証するものであるといえる。
そして、上記(オ)のとおりであるから、引用文献1には、認証部163が、選択部162によって選択された複数の認証器を動作させ、ユーザ端末10を利用するユーザU01の本人性を認証することが記載されていると認められる。
(キ)上記アの段落【0035】~【0037】によると、ユーザ端末10は、認証器による認証の結果に対して、秘密鍵を用いて署名(ハッシュ値)を付し、認証結果情報を生成し、秘密鍵で署名された認証結果情報を認証サーバ100に送信し、認証サーバで認証結果情報を検証することによってユーザU01を認証するものであるといえる。
(ク)以上のとおりであるから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 検知部14と、制御部16とを有するユーザ端末10であって、
検知部14は、位置検知部142と、環境検知部144とを有し、
制御部16は、選択部162と、認証部163とを有し、
ユーザ端末10は、指紋認証器163Aと、虹彩認証器163Bと、声紋認証器163Cと、顔認証器と、パスワード入力によって認証する認証器とを有しており、
選択部162は、検知部14によって検知されたデータからユーザ端末10を保持するユーザU01の状況や行動を推測し、当該推測した状況や行動に適した認証器を複数選択するものであり、
認証部163は、選択部162によって認証器を複数選択し、選択された複数の認証器を動作させ、ユーザ端末10を利用するユーザU01の本人性を認証するものであり、
認証器による認証の結果に対して、秘密鍵を用いて署名(ハッシュ値)を付し、認証結果情報を生成し、秘密鍵で署名された認証結果情報を認証サーバ100に送信し、認証サーバで認証結果情報を検証することによってユーザU01を認証する、
ユーザ端末10。」
(2)引用文献2ないし4について
ア.引用文献2について
(ア)引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「
【0037】
次に、評価部204は、取得したセンサの精度の数値化を行う。具体的には、図4を参照して説明する。図4は、本開示の第1の実施形態に係る認証制御システム10におけるセンサの利用適性の評価結果の例を示す図である。例えば、図4の表20に示したように、評価部204は、タッチセンサ104、音声センサ106、カメラセンサ108、およびモーションセンサ110の各々について、取得したセンサの精度から数値化を行い得る。さらに、評価部204は、センサの精度が高いほど数値が大きくなるように数値化を行い得る。例えば、図4の表20は、カメラセンサおよびモーションセンサと比べてタッチセンサおよび音声センサの利用適性が高いことを示している。
・・(中略)・・
【0045】
例えば、図5に示したように、記憶部206は、行動認識部208により認識される行動の各々と認証方式の各々とが対応するテーブル形式で認証方式の適性値を記憶し得る。例えば、記憶部206は、「コンサート会場にいる」という行動に対して、PIN入力認証は「10」、音声認証は「0」、カメラ認証は「0」、モーション認証は「0」という数値を記憶し得る。
【0046】
ここで図2を参照して認証制御装置200の構成の説明に戻ると、行動認識部208は、センサ情報に基づいてユーザの行動の認識を行う。具体的には、行動認識部208は、上述の特許文献に開示された技術を用いてユーザの行動の認識を行う。認識される行動については、例えば、図5に示したように、「コンサート会場にいる」、「家のテーブルに置いている」、または「ジョギング中」等の行動が認識され得る。
【0047】
ここで図2を参照して認証制御装置200の構成の説明に戻ると、認証方式選択部210は、評価部204による評価結果および行動認識部208により認識された行動に基づいて認証方式の選択を行う。具体的には、認証方式選択部210は、行動認識部208により認識された行動に対応する認証方式の各々の適性値を記憶部206から取得し、評価部204の評価により得られるセンサの各々の利用適性値を、取得した適性値に乗算する。そして、認証方式選択部210は、乗算の結果、最も数値が大きい認証方式を選択する。より具体的には、図4~図6を参照して説明する。図6は、本開示の第1の実施形態に係る認証制御システム10におけるセンサの利用適性値を行動に対する認証方式の適性値に乗算した結果の数値の例を示す図である。
・・(中略)・・
【0049】
次に、認証方式選択部210は、評価部204の評価により得られるセンサの各々の利用適性値を、センサの各々を利用する認証方式の適性値に乗算する。例えば、図4に示したように、認証方式選択部210は、評価部204の評価によりタッチセンサは「5」、音声センサは「5」、カメラセンサは「0」、およびモーションセンサは「3」という数値を取得し得る。そして、認証方式選択部210は、タッチセンサを利用するPIN入力認証の適性値にタッチセンサの利用適性値を乗算し、音声センサを利用する音声認証の適性値に音声センサの利用適性値を乗算し得る。また、認証方式選択部210は、カメラセンサを用いるカメラ認証の適性値にカメラセンサの利用適性値を乗算し、モーションセンサを用いるモーション認証の適性値にモーションセンサの利用適性値を乗算し得る。
【0050】
次に、認証方式選択部210は、センサの利用適性値の各々を認証方式の適性値の各々に乗算した結果、最も数値が大きい認証方式を選択する。例えば、図6に示したように、認証方式選択部210は、乗算した結果、数値が最も大きい音声認証を認証方式として選択し得る。
」
「
【図4】
[図:0001402401000002.jpg]
【図5】
[図:0001402401000003.jpg]
」
(イ)上記(ア)によると、引用文献2には以下の事項が記載されていると認められる。
a.上記段落【0046】、【0047】、【0049】、【0050】によると、ユーザがジョギング中であると認識すると、前記認識されたジョギング中に対応する認証方式の各々の適正値を取得し、各認証方式に対応するセンサの利用適正値を取得して前記適正値に乗算し、乗算の結果、最も数値が大きい認証方式を選択することが記載されているといえる。
b.上記a、及び、上記【図5】に記載されたジョギング中に対応する各認証方式の適正値、及び、上記【図4】に記載された利用適正値によると、「ジョギング中」に対応する各認証方式の適正値にセンサの利用適正値を乗算した結果は、音声認証の数値が最も大きいため、「ジョギング中」の認証方式として音声認証が選択され、PIN認証、カメラ認証、モーション認証は選択されないといえる。
c.以上のとおりであるから、引用文献2には次の技術事項(以下、「引用技術2」という。)が記載されていると認められる。
「センサ情報に基づいてユーザの行動の認識を行い、ユーザの行動として「ジョギング中」であることが認識された際に、複数の認証方式の中から音声認証を選択すること」
イ.引用文献3について
(ア)引用文献3には、以下の事項が記載されている。
「
[図:0001402401000004.jpg]
・・(中略)・・
[図:0001402401000005.jpg]
[図:0001402401000006.jpg]
」
(当審訳)
「[0167] 一実施例によれば、プロセッサ(970)は、マイク(910)を通じた音声パスワードの入力の代わりに、他の入力手段を介したパスワード認証が可能な場合、タスクの遂行に必要なパスワード認証を他の入力手段を介したものに変更することができる。一例として、プロセッサ(970)は、電子装置(900)がキー入力装置(993)を含む場合、タスクの遂行に必要なパスワード認証について、キー入力装置(993)を介したPIN入力方式に変更することができる。他の例として、プロセッサ(970)は、電子装置(900)が生体センサー(994)を含む場合、タスクの遂行に必要なパスワード認証について、生体センサー(994)を介した生体パスワード入力方式に変更することができる。前記生体パスワード入力方式は、例えば、指紋センサーを介した指紋認識、カメラ(991)を介した顔認識、虹彩センサーを介した虹彩認識などを含むことができる。別の例として、プロセッサ(970)は、電子装置(900)がタッチスクリーンディスプレイ(995)を含む場合、タッチスクリーンディスプレイ(995)を介したPIN入力またはパターン入力方式に変更することができる。
・・(中略)・・
[0169] 一実施例によると、プロセッサ(970)は、他の入力手段を介したパスワード認証が可能であっても、ユーザが前記他の入力手段を使用できない状況である場合、タスクの遂行に必要なパスワード認証の設定を、既存の設定された音声パスワードの入力方式から他の音声パスワード、例えば、公共音声パスワードまたは使い捨て音声パスワードの入力方式に変更することができる。一例として、プロセッサ(970)は、ユーザが運転中の場合には、上記他の入力手段を使用できないと判断することができ、これにより、タスクの遂行に必要なパスワード認証を公共音声パスワードまたは使い捨て音声パスワードの入力方式に変更することができる。他の例として、プロセッサ(970)は、ユーザが調理中である場合にも、上記他の入力手段を使用できないと判断することができ、これに応じて、タスクの遂行に必要なパスワード認証を、公共音声パスワードまたは使い捨て音声パスワードの入力方式に変更することができる。これと関連して、プロセッサ(970)は、ユーザが現在運転中であるか又は調理中であるかを判断するために、GPSを通じてユーザの位置情報を取得する、又はマイク(910)を通じて音声情報を取得することもできる。」
(イ)上記(ア)の記載から、引用文献3には以下の事項が記載されていると認められる。
a.上記段落[0169]によると、ユーザが運転中、又は、調理中である場合、他の入力手段を使用できない状況であると判断して、他の入力手段を用いた認証方式から音声パスワードを用いた認証方式に変更することが記載されているといえる。
b.上記段落[0167]によると、上記他の入力手段を介した認証方式には、キー入力装置を介したPIN入力方式が含まれるといえるところ、ユーザが運転中、又は、調理中である場合に、キー入力装置が使用できないことは技術常識であることからすると、引用文献3には、ユーザが運転中、又は、調理中である場合、キー入力装置を介した認証方式から、音声パスワードによる認証方式に変更することが記載されているといえる。
c.以上のとおりであるから、引用文献3には次の技術事項(以下、「引用技術3」という。)が記載されていると認められる。
「ユーザが運転中又は調理中である場合、キー入力装置を介した認証方式から、音声パスワードによる認証方式に変更すること」
ウ.引用文献4について
(ア)引用文献4には、以下の事項が記載されている。
「
[図:0001402401000007.jpg]
・・(中略)・・
[図:0001402401000008.jpg]
」
(イ)上記(ア)の記載から、引用文献4には次の技術事項(以下、「引用技術4」という。)が記載されていると認められる。
「マスクの検出を認証前に行うことにより、パスワードによる認証などの顔認証以外の認証を選択する。」
(3)対比・判断
ア.本件発明と引用発明との対比
(ア)引用発明のユーザ端末10は、情報処理を行う装置であるといえるから、本件発明の「情報処理装置」に相当する。
(イ)本件明細書の記載(「自身に搭載された測位機能や各種センサの検出結果等から、利用者Uのコンテキスト情報を取得する(ステップS2)。コンテキスト情報は、緯度、経度、気温、湿度、位置情報、その他のセンサ情報等のいずれか又はこれらの組合せ等であってもよい。(段落 【0032】)」、「自身に搭載された測位機能や各種センサの検出結果等から、利用者Uのコンテキスト情報を取得する(ステップS105)。コンテキスト情報は、緯度、経度、気温、湿度、位置情報、その他のセンサ情報等のいずれか又はこれらの組合せ等であってもよい。(段落【0122】)」によると、本件発明の「ユーザのコンテキスト情報」とは、情報処理装置に搭載されたセンサ情報を含むものであると認められる。
ここで、引用発明における「検出部14によって検出されたデータ」は、当業者の技術常識によると、位置検知部や環境検知部によって検知された「センサ情報」であると解される。
よって、引用発明の「検出部14によって検出されたデータ」は、本件発明の「ユーザのコンテキスト情報」に相当する。
(ウ)本件発明のコンテキスト情報から推定される「ユーザ本人の状態及び行動」とは、本件明細書(段落【0037】、【0073】、【0074】、【0124】)の記載及び技術常識によると、上記情報処理装置を保持する利用者Uの状況や行動を含むものであると解される。
そうすると、引用発明の「ユーザ端末10を保持するユーザU01の状況や行動」は、本件発明の「ユーザ本人の状態及び行動」に相当する。
(エ)引用発明のユーザ端末10は、選択部162において、検知部14によって検知されたデータからユーザ端末10を保持するユーザU01の状況や行動を推測するものであると認められる。
そして、上記(イ)及び(ウ)のとおりであるから、引用発明の選択部162において「検知部14によって検知されたデータからユーザ端末10を保持するユーザU01の状況や行動を推測する」ことに係る構成は、本件発明の「ユーザのコンテキスト情報から前記ユーザ本人の状態及び行動を推定する推定部」に相当する。
(オ)本件発明の「FIDO認証」とは、本件明細書の段落【0013】~【0016】の記載、及び、技術常識を参酌すると、ユーザの本人性を情報処理装置の認証手段によって検証し、その検証結果の情報をサーバに通知し、その検証結果の情報を当該サーバで検証することによってユーザを認証するための共通化されたプロトコルであると解される。
一方で、引用発明では、ユーザU01をユーザ端末10の認証器によって認証し、その認証結果情報を認証サーバ100に送信し、認証サーバで認証結果情報を検証することによってユーザU01を認証するものであるといえる。
そうすると、本件発明と引用発明とは、ユーザの本人性を認証手段によって検証し、その検証結果の情報をサーバに通知し、その検証結果の情報を当該サーバで検証することによってユーザを認証するものである点で共通する。
(カ)引用発明の選択部162による認証器の選択に関して、上記(1)アの段落【0080】によると、「ユーザ端末10の周辺の照度が虹彩を撮像するには不足している場合には、虹彩認証器163Bを選択しないようにし、照度によらない認証方式を採用する認証器を選択」する、あるいは、上記「ユーザ端末10の周辺の騒音レベルが、ユーザ端末10のマイクで音声を認識するには適していないほど高い場合には、声紋認証器163Cを選択しないようにし、騒音レベルによらない認証方式を採用する認証器を選択」することは、ユーザ端末を保持したユーザの周囲の「照度や騒音」に適さない認証器を選択しないようにし、当該「照度や騒音」に適した認証器を選択するものであるといえる。
ここで、ユーザ端末を保持したユーザの周囲の「照度や騒音」は、ユーザ本人の状況であると解するのが相当である。また、本件発明の「ユーザ本人の状態及び行動」に関し、本件明細書を参酌しても、ユーザの周囲の環境状況(照度や騒音)を除外する理由があるとはいえない。
そして、上記(ウ)のとおりであるから、引用発明の選択部162における選択は、「ユーザ本人の状態及び行動」に適さない認証器を選択しないようにし、「ユーザ本人の状態及び行動」に適した認証器を選択するものであるといえる。
以上によると、引用発明の「当該推測した状況や行動に適した認証器を複数選択する」選択部162は、本件発明の「複数の認証手段の中から、前記ユーザ本人の状態及び行動に適さない認証手段を避けて、前記ユーザ本人の状態及び行動に適した認証手段を複数選択する選択部」に相当する。
(キ)引用発明の「選択部162によって認証器を複数選択し、選択された複数の認証器を動作させ、ユーザ端末10を利用するユーザU01の本人性を認証する」認証部163は、ユーザU01の状況や行動に応じて選択された複数の認証器を用いて認証するものであるから、ユーザU01の状況や行動に応じて認証するものであるといえる。
そして、本件発明の「管理部」は、「選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザ本人の状態及び行動に応じた認証を行う」ものであるから、引用文献の上記認証部163は、本件発明の「選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザ本人の状態及び行動に応じた認証を行う管理部」に相当する。
(ク)したがって、本件発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。
[一致点]
ユーザのコンテキスト情報から前記ユーザ本人の状態及び行動を推定する推定部と、
認証が行われる際に、複数の認証手段の中から、前記ユーザ本人の状態及び行動に適さない認証手段を避けて、前記ユーザ本人の状態及び行動に適した認証手段を複数選択する選択部と、
選択された複数の認証手段を組み合わせて前記ユーザ本人の状態及び行動に応じた認証を行う管理部と、
を備え、
ユーザの本人性を認証手段によって検証し、その検証結果の情報をサーバに通知し、その検証結果の情報を当該サーバで検証することによってユーザを認証する、
ことを特徴とする情報処理装置。
[相違点]
(相違点1)
本件発明では、「FIDO認証」により認証するものであるのに対して、引用発明の認証は「FIDO認証」であることが具体的に特定されていない点。
(相違点2)
本件発明における選択部は、「前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択する」ものであるのに対して、引用発明の選択部では、当該事項が具体的に特定されていない点。
イ.判断
(ア)相違点1について
ユーザの本人性を端末の認証手段によって検証し、その検証結果の情報をサーバに通知し、その検証結果の情報を当該サーバで検証することによってユーザを認証する際に、共通化されたフレームワークであるFIDO認証を用いることは、本願出願時における認証技術上の技術常識であるといえる。
さらに、当業者であれば、上記(1)アの段落【0025】に記載されたUAFやU2Fは、FIDO認証に含まれるプトロコルであると理解できるから、引用発明における認証としてFIDO認証を用いることが示唆されているといえる。
そうすると、引用発明では認証としてFIDO認証を用いていると解するのが相当であるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
(イ)相違点2について
引用技術2ないし4は、いずれもユーザの状況や行動に応じた認証方式を選択する技術に係るものである。
そうすると、引用発明において、引用技術2ないし4を適用して「前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択する」ことは、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求人の主張について
ア.請求人の主張内容
請求人は、令和5年6月2日提出の意見書(以下、「意見書」という。)において、概略次の理由によって、本件発明は特許されるべきであると主張をしている。
(ア)「本願発明は、文言上、照度や騒音レベル又は周囲の環境に応じて認証器を選択しているわけではありません。また、照度や騒音は「ユーザ本人の状態及び行動」であるとは言えません。少なくとも、照度や騒音は「ユーザ本人」に起因しておらず、「ユーザ本人」は関与していないと思われます。ユーザに影響を及ぼす周囲の環境状況は、「ユーザ本人の状態及び行動」ではありません。また、照度や騒音は、「ユーザ本人に関係なく」発生・変化するものであり、極端な話、時間経過とともに、又は原因あるいはユーザがその場から移動しただけで解消し得る事象に過ぎません。(意見書第6頁イ[回答])」
(イ)「・・(中略)・・引用文献1では、複数の認証器を選択する事例として、ハードウェア認証器とSIMカード認証器とを選択することが例示されているに過ぎません。・・(中略)・・すなわち、引用文献1に記載されているのは、「ユーザの操作」に応じて(実際にユーザの操作が行われた際)、又は「ユーザ端末10の環境」(照度、騒音など)に応じて認証器を選択することに過ぎません。(意見書第7頁ウ[回答])」
(ウ)「本願発明は、FIDO認証において、複数の認証器の中から、ユーザの現在の行動や状況に適さない認証器を避けて、ユーザの現在の行動や状況に適した認証器を複数選択する点に特徴があります。一般的に行われている「FIDO認証」を特徴とするものではありません。(意見書第7頁エ[回答])」
(エ)「引用文献1に記載の技術(引用発明)の構成では、「ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択する」ことはできません。また、「引用発明に引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項を適用し、引用発明において、ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択するよう構成すること」は、引用文献1-4のいずれにも教示も示唆もされていません。また、引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項が、本願発明の文言に対する引用発明の欠陥を全て充足しているわけでもありません。(意見書第8頁(3)[回答])」
イ.請求人の主張に対する判断
(ア)上記ア(ア)について
上記(3)ア(カ)で説示したとおり、ユーザの周囲の照度や騒音は、ユーザ本人がどのような環境にいるかを示す情報であるから、ユーザ本人の状況に含まれると解するのが相当であって、本件発明の「ユーザ本人の状態及び行動」に包含されるものといえる。また、本件発明の「ユーザ本人の状態及び行動」について、技術常識及び本件明細書等を参酌しても「ユーザ本人」に起因するものに限定する理由や、ユーザの周囲の環境(照度や騒音)を除外する理由があるとはいえない。
よって、引用発明の選択部162は、本件発明の「複数の認証手段の中から、前記ユーザ本人の状態及び行動に適さない認証手段を避けて、前記ユーザ本人の状態及び行動に適した認証手段を複数選択する選択部」に相当する。
(イ)上記ア(イ)について
上記(1)イ(オ)で説示したとおり引用文献1に記載された発明は、「認証サーバ100を利用した安全性の高い認証処理を実現するにあたり、複数の認証器を選択するといった煩雑な処理を課せられる」との問題を解決すること課題とするものであり、実施例として、「ユーザ端末10は、状況に応じて、複数の認証器を選択する」ことが記載されていることをふまえると、引用文献1には、上記選択部162が、ユーザ端末10を保持するユーザU01の状況や行動を推測し、当該推測した状況や行動に適した認証器を複数選択することが記載されていると認められる。
(ウ)上記ア(ウ)について
ユーザの本人性を端末の認証手段によって検証し、その検証結果の情報をサーバに通知し、その検証結果の情報を当該サーバで検証することによってユーザを認証する際に、共通化されたフレームワークであるFIDO認証を用いることは、認証技術における技術常識であって、さらに、引用発明では、FIDO認証に含まれるUAFやU2Fによるプロトコルを用いることが示唆されているといえる。
そうすると、引用発明における認証は、FIDO認証であると解するのが相当であるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
(エ)上記ア(エ)について
上記(2)イによると、引用技術3は、ユーザが運転中又は調理中である場合にはキー入力装置を介した認証方式は適さないため、音声パスワードによる認証方式を用いるものであること、及び、上記(2)ウによると、引用技術4は、ユーザがマスクをしている場合には顔認証は適さないため、パスワードによる認証を用いるものであることは明らかである。
したがって、引用発明において、引用技術2ないし4を適用して「前記ユーザがランニング中や運転中、又は料理をしていると推定された場合、手入力操作が必要な認証手段を避けて、他の認証手段を選択し、前記ユーザがマスクをしていると推定された場合、前記マスクによる影響を受ける認証手段を避けて、他の認証手段を選択する」ことは、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(オ)上記(ア)ないし(エ)で説示したとおりであるから、本件発明は特許されるべきであるとの上記出願人の主張は認められない。
(5)進歩性についてのむすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明、引用技術2ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件の特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明は、特許を受けることができない。
また、本件発明は、引用文献1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-013397