特許拒絶査定不服審判
2022-013120
円盤状コンデンサを備える同軸RFフィルタ
- 審判番号
- 2022-013120
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-509463
- 請求日
- 2022年08月22日
- 審決日
- 2023年10月30日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】小見山 泰明
- 審判長/審判官
- 審判長 千葉 輝久
- 審判官 高野 洋
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P18 .121-WZ (H01P)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020-509463「円盤状コンデンサを備える同軸RFフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月21日国際公開、WO2019/034997、令和 2年11月 5日国内公表、特表2020-532196〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)8月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年8月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 9月16日付け:拒絶理由通知書
令和4年 3月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 4月15日付け:拒絶査定
令和4年 8月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 4月27日付け:拒絶理由通知書
令和5年 7月26日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~10に係る発明は、令和4年8月22日に提出された手続補正書に係る手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。(なお、後の参照の便宜のため、請求項1をA~Fに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。)
「【請求項1】
A 積層方向に細長い外殻(110)と、
B 前記外殻内の第1の円盤状コンデンサ(120A)と、
C 前記外殻内の第2の円盤状コンデンサ(120B)であって、前記第1の円盤状コンデンサが前記積層方向に沿って前記第2の円盤状コンデンサの上に積層されている第2の円盤状コンデンサ(120B)と、
D 前記外殻内の第1のパターン形成された導電線(138)を備えたインダクタ(130A)であって、前記第1のパターン形成された導電線は、前記第1の円盤状コンデンサと前記第2の円盤状コンデンサの間に結合され、前記第1のパターン形成された導電線は、前記積層方向を横切る巻き方向に巻かれるインダクタと、を備え、
E 前記第1のパターン形成された導電線は、前記積層方向に沿った筒状を有する本体(134)上に形成され、当該筒状は当該積層方向に沿って一定の直径の円形断面である、
F フィルタ装置(100)。」
第3 拒絶の理由
令和5年4月27日付けで当審において通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、次のとおりのものである。
この出願の請求項1~10に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開昭62-72201号公報
引用文献2.特開平1-321611号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献
1 引用文献1の記載及び引用発明
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、強調のため当審で付した。以下、同様。)。
(1)1頁右下欄10行~13行
「本発明は、主として誘電体同軸共振器をフィルタ素子として使用するフィルタ装置に係り、詳しくはスプリアス除去機能を有するローパスフィルタを内蔵したフィルタ装置に関する。」
(2)2頁右下欄15行~3頁右上欄1行
「第1図(A)は軸状ローパスフィルタの構成図、同図(B)はその等価回路図であって、両図においてはインダクタ・インプット・タイプの軸状ローパスフィルタを示している。しかして、該軸状ローパスフィルタ1は、軸状孔2を有する外部導体3と、誘電体が断面筒形、たとえば断面円筒形のコンデンサ4と、インダクタ5と、中心導体6とからなる。
前記外部導体3は、通常アルミニウム合金等の金属で構成されるが、絶縁性の材料で軸状孔2の内周面に電極膜が形成されたもので構成することもでき、少なくとも軸状孔2の内周面部が導体で構成されていればよく、この導体部分がアース接続される。また、該外部導体3は、要するに軸状孔2を有するものであればよく、その外部形状はどのような形状であってもよい。前記コンデンサ4とインダクタ5とは、この外部導体3の中空内部に軸方向に沿って交互に挿入される。前記コンデンサ4は、外部導体3を外側コンデンサ電極とするもので、外部導体3の中空内部に内接嵌合する円筒状の誘電体7と、該誘電体7の円筒内部に嵌合する円柱形(もしくは円筒形)の内側コンデンサ電極8とで構成されている。また、前記インダクタ5は、外部導体3の中空内部で内側コンデンサ電極8に接続される。中心導体6はこの実施例では、初段および最後段の各インダクタ5に接続される。」
(3)3頁右上欄13行~左下欄9行
「第3図は、軸状ローパスフィルタ1の具体的構造を示す断面図であって、同図には、キャパシタ・トップ・タイプの5段軸状ローパスフィルタを示している。
この実施例においては、複数(この例では3段)のコンデンサ4,…を構成する誘電体71は、互いに連続して一体で長寸の円筒体であり、PTFEやポリエステル等の熱収縮チューブを用いる。また、各コンデンサ4の内側コンデンサ電極8の軸芯位置には一本の絶縁棒9が挿入されて、この絶縁棒9の外周にインダクタが巻回形成されている。一方の中心導体6は、初段のコンデンサ4の内側コンデンサ電極8に結合され、他方の中心導体6は、最後段のコンデンサ4の内側コンデンサ電極8に結合されている。なお、第1図(A)、第2図(A)におけるのと同一の構成部分には同一の符号を付して示している。」
(4)第3図
「
[図:0001408412000001.jpg]
」
(5)前記(1)~(4)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~iに分説し、「分説a」のようにして参照する。
「a フィルタ装置であって、(前記(1))
b 軸状孔2を有する外部導体3と、断面円筒形のコンデンサ4と、インダクタ5と、中心導体6とからなり、(前記(2))
c 外部導体3は、絶縁性の材料で軸状孔2の内周面に電極膜が形成されたもので構成することもでき、(前記(2))
d コンデンサ4とインダクタ5とは、外部導体3の中空内部に軸方向に沿って交互に挿入され、(前記(2))
e コンデンサ4は、外部導体3を外側コンデンサ電極とするもので、外部導体3の中空内部に内接嵌合する円筒状の誘電体7と、該誘電体7の円筒内部に嵌合する円筒形の内側コンデンサ電極8とで構成され、(前記(2))
f 複数のコンデンサ4を構成する誘電体71は、互いに連続して一体で長寸の円筒体であり、(前記(3))
g 各コンデンサ4の内側コンデンサ電極8の軸芯位置には一本の絶縁棒9が挿入されて、この絶縁棒9の外周にインダクタが巻回形成され、(前記(3))
h インダクタ5は、外部導体3の中空内部で内側コンデンサ電極8に接続される、(前記(2))
i フィルタ装置。」
2 引用文献2の記載事項及び周知技術
当審拒絶理由に、周知技術を示すための文献として引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(1)3頁右上欄16行~左下欄4行
「第1図および第2図には本発明に係る立体露光形成方法の第1の実施例が示されている。同図において、柱体としてのボビン13は断面形状が一様な(本明細書で、断面形状が一様とは、各軸長位置で断面形状が等しい場合の他に、例えば三角柱の如く、断面形状が各軸長位置で相似形になる場合も含む概念で使用している)円筒状をしており、このボビン13の表面には無電解メッキ用の感光層14が形成されている。」
(2)5頁右下欄19行~6頁左上欄3行
「すなわち、第6図に示すように、ボビン13の表面にコイル状のコイル導体パターン26とランド透光部21a,21b と同一のランド導体パターン27とが形成され、コイル28が形成されるのである。」
(3)7頁右下欄3行~12行
「さらに、従来のコイルはボビンに巻線を巻回して構成されるが、かかる巻線コイルはいわゆるアッセンブリ工程で巻線がずれたり、崩れる等して巻線(導体部)が移動し、これが断線やアーク放電等のコイル不良事故を引き起こす発生源となっていたが、本発明のコイルによれば、導体部がパターン化されて形成されるものであるから、コイルを傾けたりしても導体部が移動することは全くなく、前記従来のコイルの欠点は効果的に解消されることになる。」
(4)前記(1)~(3)によれば、次の技術(以下「周知技術」という。)が周知であったと認められる。
「コイルにおいて、柱体に巻線を巻回して構成される巻線コイルの欠点を解消するために、導体部をパターン化して形成すること、及び、導体部をパターン化して形成するコイルの形状として、柱体を断面形状が一様な円筒状とし、柱体の表面にコイル導体パターンを形成すること。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 発明特定事項Aについて
引用発明において、「外部導体3」は、「絶縁性の材料で軸状孔2の内周面に電極膜が形成されたもの」(分説c)であるから、「電極膜」と「電極膜以外の部分」に分けることができ、「電極膜以外の部分」は、外殻であるといえる。
引用発明において、「コンデンサ4」と「インダクタ5」は、「軸方向に沿って交互に挿入」(分説d)されるから、引用発明の「軸方向」は、本願発明の「積層方向」に相当する。また、引用発明の「誘電体71」は「長寸の円筒体」(分説f)であり、積層方向に長寸を持つから、それらを覆う外殻についても積層方向に細長いといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「積層方向に細長い外殻」を備える点で一致する。
2 発明特定事項Bについて
(1)引用発明において、「コンデンサ4は、外部導体3を外側コンデンサ電極」とし、「外部導体3の中空内部に内接嵌合する円筒状の誘電体7と、該誘電体7の円筒内部に嵌合する円筒形の内側コンデンサ電極8とで構成」(分説e)される。ここで、前記1を考慮すると、「外部導体3」の「電極膜」は「外側コンデンサ電極」となり、「外部導体3」の「電極膜以外の部分」が外殻となるから、「コンデンサ4」は外殻内にあると認められる。
(2)本願発明でいう「円盤状コンデンサ」とは、「向き合うとともにx方向に沿って伸びる2つの筒状電極を備え」(明細書【0029】)、「円盤状コンデンサの断面は、外側電極と、内側電極と、電極間の空間と、内側電極によって取り囲まれた空間とを備え」、「外側電極の断面は、内側電極の断面を囲む」(明細書【0031】、【0032】及び図2)ものである。
引用発明の「コンデンサ4」は、「円筒状の誘電体7」が「外部導体3の中空内部に内接嵌合」するから、「軸状孔2の内周面」に形成された「電極膜」は筒状の電極である。また、「内側コンデンサ電極」も「円筒形」であって、「誘電体7の円筒内部に嵌合する」から、両電極は向き合って、「電極膜」の断面は「内側コンデンサ電極」の断面を囲むように構成されると認められる。そうすると、引用発明の「コンデンサ4」は、本願発明における「円盤状コンデンサ」に相当する。
ここで、引用発明は「コンデンサ4」を複数備えているから(分説f)、そのうちの一つの「コンデンサ4」を「第1の円盤状コンデンサ」と称することは任意である。
(3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明とは、「前記外殻内の第1の円盤状コンデンサ」を備える点で一致する。
3 発明特定事項Cについて
引用発明において、「コンデンサ4」は、外殻内に複数備えられた円盤状コンデンサである(前記2)。ここで、「第1の円盤状コンデンサ」(前記2(2))とは別の「コンデンサ4」を「第2の円盤状コンデンサ」と称することは任意である。
また、引用発明では、「コンデンサ4とインダクタ5とは、外部導体3の中空内部に軸方向に沿って交互に挿入され」(分説d)、「軸方向」は「積層方向」である(前記1)から、「第1の円盤状コンデンサ」が「積層方向」に沿って「第2の円盤状コンデンサ」の上に積層されるといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記外殻内の第2の円盤状コンデンサであって、前記第1の円盤状コンデンサが前記積層方向に沿って前記第2の円盤状コンデンサの上に積層されている第2の円盤状コンデンサ」を備える点で一致する。
4 発明特定事項Dについて
(1)引用発明において、「インダクタ5」が導電線を備えることは第3図から明らかであり、該導電線を「第1の導電線」と称することは任意である。また、「インダクタ5」は、「外部導体3の中空内部」(分説d及びh)に備えられるから、前記1を考慮すると、外殻内に備えられる。
そうすると、本願発明の「インダクタ」と引用発明の「インダクタ5」とは、「外殻内の第1の導電線」を備える点で共通する。
(2)引用発明において、「軸芯位置」に「絶縁棒9が挿入され」(分説g)、「軸方向」は「積層方向」であり(前記1)、「絶縁棒9の外周にインダクタが巻回形成され」(分説g)るから、「第1の導電線」(前記(1))は、積層方向を横切る巻き方向に巻かれると認められる。
そうすると、本願発明の「インダクタ」と引用発明の「インダクタ5」とは、「第1の導電線は、積層方向を横切る巻き方向に巻かれる」点で共通する。
(3)引用発明において、「コンデンサ4とインダクタ5とは、外部導体3の中空内部に軸方向に沿って交互に挿入され」(分説d)、「インダクタ5」は「第1の導電線」を備える(前記(1))から、「第1の導電線」は、「第1の円盤状コンデンサ」(前記2)と「第2の円盤状コンデンサ」(前記3)の間に結合されると認められる。これは、第3図とも整合する。
(4)前記(1)~(3)より、本願発明と引用発明とは、「前記外殻内の第1の導電線を備えたインダクタであって、前記第1の導電線は、前記第1の円盤状コンデンサと前記第2の円盤状コンデンサの間に結合され、前記第1の導電線は、前記積層方向を横切る巻き方向に巻かれるインダクタ」を備える点で共通するが、本願発明では、第1の導電線が「パターン形成された」ものであるのに対し、引用発明では、第1の導電線がパターン形成されたものではない点で相違する。
5 発明特定事項Eについて
引用発明において、「インダクタ5」は、「第1の導電線」を備え(前記4(1))、「絶縁棒9の外周にインダクタが巻回形成」(分説g)されるから、引用発明の「絶縁棒9」は本願発明の「本体」に相当し、「第1の導電線」は「本体上に形成される」と認められる。
また、引用発明では、「軸芯位置」に「絶縁棒9が挿入され」(分説g)、「軸方向」は「積層方向」である(前記1)から、「絶縁棒9」は積層方向に沿っていると認められる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1の導電線は、前記積層方向に沿った本体上に形成される」点で共通するが、本願発明では、本体が「筒状を有する」ものであり、「当該筒状は一定の直径の円形断面である」のに対し、引用発明では、そのような特定はされていない点で相違する。
6 発明特定事項Fについて
引用発明は、フィルタ装置(分説a)である。
7 前記1~6によれば、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「積層方向に細長い外殻と、
前記外殻内の第1の円盤状コンデンサと、
前記外殻内の第2の円盤状コンデンサであって、前記第1の円盤状コンデンサが前記積層方向に沿って前記第2の円盤状コンデンサの上に積層されている第2の円盤状コンデンサと、
前記外殻内の第1の導電線を備えたインダクタであって、前記第1の導電線は、前記第1の円盤状コンデンサと前記第2の円盤状コンデンサの間に結合され、前記第1の導電線は、前記積層方向を横切る巻き方向に巻かれるインダクタと、
を備え、
前記第1の導電線は、前記積層方向に沿った本体上に形成される、フィルタ装置。」
<相違点1>
本願発明では、第1の導電線が「パターン形成された」ものであるのに対し、引用発明では、第1の導電線がパターン形成されたものではない点。
<相違点2>
本願発明では、本体が「筒状を有する」ものであり、「当該筒状は一定の直径の円形断面である」のに対し、引用発明では、そのような特定はされていない点。
第6 判断
1 相違点1及び2について
柱体に巻線を巻回して構成される巻線コイルの欠点を解消するために、導体部をパターン化して形成すること、及び、導体部をパターン化して形成するコイルの形状として、柱体を断面形状が一様な円筒状とし、柱体の表面にコイル導体パターンを形成することは、周知技術(前記第4、2(4))である。
そして、引用発明の「インダクタ」は「巻回形成され」(分説g)るものであるから、引用発明において、「巻線を巻回して構成される巻線コイル」の欠点を解消するために、前記周知技術で示されるコイルの形状を採用することで、「第1の導電線」をパターン形成すること、及び、「本体」が筒状を有するようにして、該筒状を一定の直径の円形断面とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、当業者が容易に想到し得たことである。
2 効果について
本願発明の効果として、次の事項が挙げられる。
(1)インダクタにおいて、パターン形成された導電線を実装することにより、単位長さあたりより高いインダクタンス、低減された寄生要素、及び、高いQ値を実現されること。(【0022】、【0027】)
(2)インダクタにおいて、ロッド上に巻かれた可撓性ワイヤよりも、パターン形成された導電線が高い剛性であることにより、特性の変化の影響を受けにくいこと。(【0027】)
(3)円盤状コンデンサにおいて、向き合った筒状を有する2つの電極を実現することにより、単位長さあたりより高い静電容量、低減された寄生要素、及び、高いQ値を実現されること。(【0022】、【0029】)
前記(1)~(3)に挙げられる本願発明の効果は、引用発明において周知技術を採用することによって得られる効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別のものとは認められない。
3 請求人の主張について
請求人は、令和5年7月26日に提出した意見書において、引用文献2は、円筒状のボビンの外周表面上にプリントされたコイル導体パターンが形成されたコイルの一般的な技術を示しているに過ぎない、即ち、引用文献2に開示の発明は、インダクタがフィルタ装置に採用されている点を開示も示唆も教示もしていないから、仮に当業者が引用文献2に開示のコイルを知得しても、引用文献2に開示のコイルを引用文献1に開示のフィルタ装置に適用しようとする動機付けがなく、当業者は本願発明に想到することはできない、言い換えれば、本発明によって提供される後知恵がなければ、引用文献2に開示のコイルを使って引用文献1に開示のフィルタ装置を改変しようとすることは動機付けがなかった旨を主張する(意見書(3))。
しかしながら、引用発明の「インダクタ」は「巻回形成され」(分説g)るものであるから、当業者は、引用発明の「インダクタ」に、引用文献2に記載された「巻線を巻回して構成される巻線コイルの欠点」があることを理解できる。したがって、引用発明の「インダクタ」に対して、該欠点を解消する引用文献2に記載された周知技術を採用する動機付けがあると認められる。そして、引用発明において、「第1の導電線」をパターン形成すること、及び、「本体」が筒状を有するようにして、該筒状を一定の直径の円形断面とすることは、前記1で示したとおり、当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の主張は採用できない。
4 小括
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-013120