特許拒絶査定不服審判
2022-012883
会議支援装置、方法及びプログラム
- 審判番号
- 2022-012883
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-076890
- 請求日
- 2022年08月17日
- 審決日
- 2023年08月09日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社リコー
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】廣田 浩一
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 土居 仁士
- 分類
- P18 .572-Z (H04M) / P18 .575-Z (H04M) / P18 .121-Z (H04M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 76890「会議支援装置、方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月27日出願公開、特開2020-114030〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月31日に出願した特願2016-169663号の一部を令和2年4月23日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月 9日付け:拒絶理由通知書
6月11日 :意見書、手続補正書の提出
11月 4日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和4年 1月 7日 :意見書の提出
5月 6日付け:拒絶査定
8月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
以下では、令和4年5月6日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年8月17日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正前後の特許請求の範囲の記載内容に鑑みると、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1に対応するものと認められる。
本件補正前後の請求項1の記載を、それぞれ以下の(1)及び(2)に示す。
(1)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前(令和3年6月11日の手続補正による補正後)の請求項1の記載は次のとおりである。
【請求項1】
意志決定支援サービスと接続される会議支援装置であって、
会議の参加者の音声又は前記会議の参加者による手書き文字の入力を受け付ける入力受付手段と、
前記入力受付手段により受け付けた前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを前記意志決定支援サービスに送信するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記意志決定支援サービスに送信すると判定された場合、前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを送信する送信手段と、
を有する会議支援装置。
(2)本件補正後の請求項1の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。なお、下線は、本件補正前の請求項1の記載からの補正箇所を示す。
【請求項1】
意志決定支援サービスと接続される会議支援装置であって、
会議の参加者の音声又は前記会議の参加者による手書き文字の入力を受け付ける入力受付手段と、
前記入力受付手段により受け付けた前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを前記意志決定支援サービスに送信するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記意志決定支援サービスに送信すると判定された場合、前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを送信する送信手段と、
表示部品を表示する表示手段と、を有し、
前記表示手段は、
前記判定手段により前記意志決定支援サービスに送信しないと判定された場合、前記テキストデータを前記意志決定支援サービスに送信しないことを示す前記表示部品を表示し、
前記送信手段は、
前記表示部品を選択する操作が行われた場合、前記テキストデータを送信する、会議支援装置。
2 本件補正の目的について
(1)本件補正による請求項1の限定内容
本件補正は、本件補正前の請求項1について、次のア及びイの限定をすることを含むものである。
ア 「表示部品を表示する表示手段」を有することを限定すること。
イ 前記アの限定を行った上で、「前記表示手段は、前記判定手段により前記意志決定支援サービスに送信しないと判定された場合、前記テキストデータを前記意志決定支援サービスに送信しないことを示す前記表示部品を表示し、前記送信手段は、前記表示部品を選択する操作が行われた場合、前記テキストデータを送信する」ことを限定すること。
(2)補正の目的要件についての検討
ア(ア)前記(1)アの「表示手段」は、本件補正前の請求項1の発明特定事項には存在しない。
また、前記「表示手段」は、「表示部品を表示する」ものであるから「表示」の作用(機能)を有するものであるが、本件補正前の請求項1は、いずれの発明特定事項も「表示」の作用(機能)を有するものではない。
そのため、前記(1)アの限定は、本件補正前の請求項1の発明特定事項を限定するものとはいえない。
(イ)さらに、前記(1)ア及びイの補正により追加された事項によって解決しようとする課題は、会議の参加者が入力された内容が外部に送信されないことを知ることを可能にし、それにより、会議の参加者が機密情報等が含まれる議題等についても気兼ねなく議論をすることを可能にすること(【0088】)であると認められ、当該課題は、本件補正前の請求項1に記載された発明には無かった課題であるから、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
(ウ)よって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するとはいえない。
イ 本件補正による請求項1についての補正が、特許法17条の2第5項1号、3号、4号に規定する「第36条第5項に規定する請求項の削除」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれに該当しないことも、明らかである。
(3)補正の目的についてのまとめ
前記(2)のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に適合しないから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
3 独立特許要件について
前記2において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮(限定的限縮)を目的とするものには該当せず却下すべきものであるが、仮に上記補正事項を含む本件補正が、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当すると仮定して、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、予備的に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1の記載及び引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の遡及日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2014-140121号公報(平成26年7月31日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付したものである(以下、同じ。)。
「【0006】
本発明の目的は、特定の端末装置から入力した検索用データを用いて検索を実行して得られる検索結果を、主装置の表示部に表示して、検索結果を会議の参加者全員が共有可能とした会議システムを提供することである。」
「【0021】
図1に示すように、本実施形態の会議支援システムU1は、会議用サーバ装置Sc、主装置M、端末装置Lを含んで成り、これら全てが、ファイヤウオールなどで保護されたLAN(Local Area Network)内に在る場合を想定したものである。
【0022】
端末装置Lは、たとえばスマートフォン装置、タブレット型コンピュータ、ノート型コンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)などで実現される。なお図2に示す端末装置Lは、後述する会議用サーバ装置Scによって、入力用端末装置Lxとして設定されるものである。
【0023】
図2に示すように、端末装置Lは、通信ネットワークN経由で会議用サーバ装置Scと通信可能に接続する通信部30、端末装置Lの各種動作を制御する制御部31、後述の文字入力部35、音声入力部36またはカメラ部37から入力されたデータを用いて検索用データを作成するデータ作成部32、文字や画像などを表示するディスプレイなどの表示部33、端末装置Lの各種動作を操作するための操作部34、文字データを入力するための文字入力部35、音声を入力するための音声入力部36、静止画または動画を撮影して画像データを入力できるカメラ部37を有している。なお、図示は省略するが、端末装置Lは、端末装置Lの動作を制御するための各種プログラムや設定情報データなどを記憶するための、たとえばハードディスク装置やフラッシュメモリで構成される記憶部を有する。
【0024】
通信部30の通信ネットワークNに対する接続は、無線でも有線でもよい。制御部31は、たとえばCPU(Central Processing Unit)を用いて実現される。データ作成部32は、音声入力部36から入力される音声データをテキストに変換する機能、カメラ部37から入力された画像データから文字情報を抽出し、これをテキスト化する機能、あるいは、画像データから画像の特徴点を抽出する機能を備えてもよい。表示部33は、たとえば液晶素子や有機EL素子などで製造されるディスプレイ装置が用いられる。操作部34および文字入力部35は、たとえばキーボードやタッチパネルなどで実現される。音声入力部36は、たとえばマイクロフォンで実現される。カメラ部37は、静止画および動画の撮影が可能なものである。
【0025】
端末装置Lの検索用データを作成するデータ作成手段は、データ作成部32で実現され、データ作成手段で作成した検索用データを送信するデータ送信手段は、通信部30で実現される。また、音声入力手段は、音声入力部36で実現され、音声データをテキストデータに変換する音声テキスト化手段は、データ作成部32で実現される。さらに、画像データを取得する画像取得手段はカメラ部37で実現され、画像データを用いた検索用データの作成は、データ作成部32で実行される。
【0026】
会議用サーバ装置Scは、たとえばサーバ用コンピュータで実現され、図3に示すように、通信ネットワークNを経由して、主装置Mおよび端末装置L、およびインターネットなどの外部回線と通信可能に接続する通信部10、会議用サーバ装置Scの各種動作を制御する制御部11、端末装置Lから送られる検索用データを用いて検索を実行し、検索結果を出力する検索部12、会議用サーバ装置Scの動作を制御するための各種プログラムデータ、設定情報データとともに、会議に際して必要とされる各種文書ファイルデータを記憶する記憶部13を有している。」
「【0039】
ステップP03で、入力用端末装置Lxと設定された端末装置Lは、たとえば会議中に会議参加者が音声検索したい場面に遭遇したときに、入力用端末装置Lxを所持する会議参加者の操作により、音声入力手段により音声データが入力され、画像取得手段により、画像データが入力される。入力用端末装置Lxは、ステップP04で、データ作成手段に含まれる音声テキスト化手段により、音声データを変換してテキストデータを作成する。また、データ作成手段によって、画像データから文字読取機能を用いて文字情報を抽出し、これをテキスト化した検索用データや、画像データの特徴点を抽出した検索用データを作成する。そしてステップP05で、作成した検索用データを、データ送信手段により、会議用サーバ装置Scへ送信する。
【0040】
端末装置Lの音声入力部36で入力された音声データは、端末装置Lで、音声認識などの技術などを使ってテキストデータを抽出し検索用データを作成するほか、音声データを直接、会議用サーバ装置Scに送信し、会議用サーバ装置Sc上で音声データをテキスト化処理して、検索用データに変換する態様も考えられる。
【0041】
画像データについても、端末装置Lのカメラ部37で撮影して取得した画像データを、端末装置Lで処理して検索用データに変換するほか、入力用端末装置Lxが取得した画像データを直接、会議用サーバ装置Scに送信し、会議用サーバ装置Sc上で画像データを処理して、検索用データを作成する態様も考えられる。なお、画像の特徴点を抽出することにより、類似した画像データを検索することが可能である。
【0042】
入力用端末装置Lxから、音声データや画像データを会議用サーバ装置Scへ直接送信する場合は、必要に応じ、テキストデータを作成して付属させてもよい。
【0043】
会議用サーバ装置Scは、データ受信手段によって、入力用端末装置Lxから送信される検索用データを受信すると、ステップQ06で、検索手段により、検索用データを用いて検索を実行する。検索処理は、会議用サーバ装置Scの記憶部13に記憶されている保存データの検索や、インターネットを通じた検索を行う。そして、得られた検索結果を表す検索結果データを、ステップQ07で、検索結果送信手段によって、主装置Mに送信する。
【0044】
主装置Mは、ステップR03で、検索結果受信手段によって、検索結果データを受信すると、ステップR04で、検索結果データに基づき、表示部23に検索結果を表示する。会議参加者は、ステップR05で、表示された検索結果から、使用するファイルまたは情報を指定し、その内容を確認する。これは、たとえば、会議用サーバ装置Scから送信されてくる検索結果データに対応するデータファイルの保存先が分かるときは、その保存先のファイルパスを、検索結果データに対応する情報がインターネットなどのWebサイトにアップロードされているときは、そのURL(uniform resource locator)を、前記検索結果データに、各データとリンクするように含ませておき、主装置Mで、検索結果を表示させたときに、会議参加者が、前記ファイルパスまたはURLをクリックすることによって、必要な情報を入手することが可能である。」
「【0066】
また、端末設定手段によって設定される入力用端末装置Lxは、1つまたは少数に限定することも可能である。複数個の端末装置Lを、入力用端末装置Lxとして設定する場合は、入力用端末装置Lxから順次送信される検索用データを用いて、会議用サーバ装置Scにおいて実行される検索処理は、時系列で実行されるように設定してもよく、または並列処理することも可能である。」
「【図1】
[図:0001402387000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001402387000002.jpg]
」
(イ)前記(ア)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~kに分説した。
[引用発明]
a 会議支援システムU1の端末装置Lであって、(【0021】)
b 会議支援システムU1は、会議用サーバ装置Sc、主装置M、端末装置Lを含んで成り、(【0021】)
c 端末装置Lは、会議用サーバ装置Scによって、入力用端末装置Lxとして設定され、(【0022】)
d 端末装置Lは、通信ネットワークN経由で会議用サーバ装置Scと通信可能に接続する通信部30、端末装置Lの各種動作を制御する制御部31、文字入力部35、音声入力部36またはカメラ部37から入力されたデータを用いて検索用データを作成するデータ作成部32、文字や画像などを表示するディスプレイなどの表示部33、端末装置Lの各種動作を操作するための操作部34、文字データを入力するための文字入力部35、音声を入力するための音声入力部36、静止画または動画を撮影して画像データを入力できるカメラ部37を有し、(【0023】)
e 端末装置Lの検索用データを作成するデータ作成手段は、データ作成部32で実現され、データ作成手段で作成した検索用データを送信するデータ送信手段は、通信部30で実現され、音声入力手段は、音声入力部36で実現され、音声データをテキストデータに変換する音声テキスト化手段は、データ作成部32で実現され、画像データを取得する画像取得手段はカメラ部37で実現され、画像データを用いた検索用データの作成は、データ作成部32で実行され、(【0025】)
f 会議用サーバ装置Scは、会議に際して必要とされる各種文書ファイルデータを記憶する記憶部13を有し、(【0026】)
g 入力用端末装置Lxと設定された端末装置Lは、会議中に会議参加者が音声検索したい場面に遭遇したときに、入力用端末装置Lxを所持する会議参加者の操作により、音声入力手段により音声データが入力され、画像取得手段により、画像データが入力され、入力用端末装置Lxは、データ作成手段に含まれる音声テキスト化手段により、音声データを変換してテキストデータを作成し、また、データ作成手段によって、画像データから文字読取機能を用いて文字情報を抽出し、これをテキスト化した検索用データを作成し、作成した検索用データを、データ送信手段により、会議用サーバ装置Scへ送信し、(【0039】)
h 会議用サーバ装置Scは、データ受信手段によって、入力用端末装置Lxから送信される検索用データを受信すると、検索手段により、検索用データを用いて検索を実行し、検索処理は、会議用サーバ装置Scの記憶部13に記憶されている保存データの検索や、インターネットを通じた検索を行い、得られた検索結果を表す検索結果データを、検索結果送信手段によって、主装置Mに送信し、(【0043】)
i 主装置Mは、検索結果受信手段によって、検索結果データを受信すると、検索結果データに基づき、表示部23に検索結果を表示し、会議参加者は、表示された検索結果から、使用するファイルまたは情報を指定し、その内容を確認し、(【0044】)
j 設定される入力用端末装置Lxは、1つまたは少数に限定する(【0066】)
k 端末装置L。
イ 引用文献2の記載
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の遡及日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第00/41080号(平成12年7月13日国際公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「背景技術
近年、インターネットの急速な普及に伴い、ユーザ間で情報端末を利用した共同作業が盛んに行われるようになってきている。例えば、複数のユーザがチャットシステムを用いてチャネル内で会話を行うことにより、チャネルという電子的な会議室における会議が可能である。チャットシステムにおいては、ユーザは、発言しようとする内容を入力してリターンキーを押すことにより、参加しているチャネル内での発言を容易に行うことができる。ユーザは、あたかも通常の会話と同じような感覚で他のユーザと会話できるため、気軽に発言できる。しかも、チャットシステムにおいては、ユーザが発言した内容は他のユーザの情報端末上で即座に表示される。従って、1対1の会話のみならず3人以上のユーザ間での会話が可能であり、1対多の質疑応答のような形態の会話を行うことができる。さらに、会話が文字データの送受信により行われるため、議事録など会話内容の記録を作成することが容易である。」(1頁16行~28行)
「 本発明は、チャットシステムなどを用いて他のユーザとリアルタイムで会話するユーザの発言を的確化することを支援し、ネットワーク上における円滑なコミュニケーションを促進することを目的とする。」(3頁1行~3行)
「 図1に、第1実施形態例に係る支援装置1の機能ブロック図を示す。図1は、コンピュータネットワークにより接続された複数のユーザ端末A,B,C,Dが、チャットサーバを介してチャット可能であることを示す。ユーザ端末A上では、支援装置1とチャットクライアントとが動作可能である。他のユーザ端末B,C,D上では、支援装置1は動作可能であってもなくてもよく、少なくともチャットクライアントが動作可能である。
支援装置1は、ユーザDB2(データベース)、条件DB3、判断部4、実行部5、登録部6及び取得部7を有し、チャットクライアントと共に動作する。チャットクライアントは連携部及びチャットDBを有している。支援装置1は、チャットDBにアクセスして情報を取得可能である。
[チャットクライアント]
チャットクライアントは、ユーザ端末Aの入出力部に他のユーザの発言を表示し、入出力部から入力された発言を表示するとともにチャットサーバに送信する。
チャットクライアントの連携部は、ユーザにより入力された発言をチャネルに送信する前に、発言先チャネル名及び発言内容を支援装置1に送出する。また、連携部は、所定の条件に応じて処理された発言を支援装置1から受け取る。連携部によって受け取られた発言は、ユーザにより入力される通常の発言と同様にチャットサーバに送信され、チャネル内の他のユーザの画面上に表示される。さらに、連携部は、チャットクライアントが参加しているいずれかのチャネルにおいて発言が生じたことを、支援装置1に通知する。」(13頁1行~20行)
「 [支援装置]
(1)全体構成
判断部4は、連携部から発言先チャネル名及び発言内容を受け取り、発言が所定の条件を満たすか否かを判断する。判断基準となる条件は、条件DB3に蓄積されている。条件の詳細については後述する。また、判断部4は、発言先チャネル名と、発言内容と、所定の条件に該当する発言であると判断した場合は該当した条件とを、実行部5に通知する。
実行部5は、判断部4から発言先チャネル名と、発言内容と、該当した条件とを受け取ると、条件に応じた処理を行い、チャネル及び発言内容を連携部に送出する。処理は、条件と対応付けられて条件DB3に蓄積されている。行う処理の詳細については後述する。いずれの条件にも該当しなかった場合は、発言先チャネル名及び発言内容を連携部に送出する。」(14頁11行~22行)
「 (2)ユーザDB
ユーザDB2には、ユーザに関する所定のユーザ情報が蓄積されている。前述したように、蓄積されるユーザ情報は判断する条件及び条件に応じて行う処理により変化し、特に限定されない。図1の例では、ユーザDB2には、分類リスト及び属性リストが蓄積されている。
図3に、分類リストの概念図を示す。分類リストには、ユーザ自身以外の他のユーザの少なくともニックネームが、所定の分類毎に登録される。分類基準としては、”知っている人”、”無視する人”、”上司”などが例として挙げられる。チャットシステムではユーザのニックネームがネットワーク内で唯一性を有するため、分類リストにはニックネームが必要である。ただし、ニックネームに併せて本名など他の情報を登録可能にしても良い。前記分類リストへの登録は、前述したように登録部6を介してユーザが行う。
図4に、属性リストの概念図を示す。属性リストには、参加中の各チャネルに対し、"read only"または"read/write"のいずれかの属性が設定されている。"read/write"は、参加中のチャネルに発言を行うことができることを示す。"read only"は、チャネルに発言できず、チャネル内での発言内容を見ることができるだけであることを示す。」(15頁7行~23行)
「 (3)条件DB
図5に、条件DB3に蓄積される条件及び各条件に対する処理の例を示す。条件及び処理は、ニーズに応じて様々に設定可能である。発言が条件を満たすか否かの判断は、判断部4により行われる。条件に応じた処理は実行部5により行われる。以下に、設定しておく条件及び処理の例を挙げる。
条件1;チャネル内における知らない人の人数が5人以上である。
この条件については、判断部4は、ユーザDB2内の分類リストの”知っている人”に登録されているユーザと、チャットDB内の参加者とに基づいて判断する。条件に該当する場合、実行部5は、図6に示す確認ウインドウを表示する。さらに、実行部5は、該当した条件に応じたメッセージを、確認ウインドウ上に出力する。条件に応じて出力するメッセージとしては、例えば、”知らない人が5人以上参加しています。”等が考えられる。また、実行部5は、確認ウインドウで”OK”ボタンが押されると、発言内容を連携部に送出する。逆に”キャンセル”ボタンが押されると、発言内容の送出を中止する。
条件2;チャネルに上司が参加している。
この条件については、判断部4は、分類リストの”上司”に登録されているユーザと、チャットDB内の参加者とに基づいて判断する。条件に該当する場合、実行部5は、前述と同様に確認ウインドウを表示し、押されたボタンに従った処理を行う。但し、確認ウインドウに出力するメッセージは、条件に応じて異なる。例えば、”チャネルに上司が参加しています。”などが考えられる。
条件3;チャネル属性が"read only"である。
この条件については、判断部4は、ユーザDB2内の属性リストと、連携部から取得する発言先チャネル名とに基づいて判断する。条件に該当する場合、実行部5は、例えば”このチャネルはread onlyに設定されています。”などのメッセージと共に前記確認ウインドウを表示する。そして、実行部5は、確認ウインドウで”OK”ボタンが押されると、発言内容を連携部に送出する。逆に、”キャンセル”ボタンが押されると、発言内容の送出を中止する。」(16頁2行~28行)
「図1
[図:0001402387000003.jpg]
」
「図3
[図:0001402387000004.jpg]
」
「図4
[図:0001402387000005.jpg]
」
「図5
[図:0001402387000006.jpg]
」
「図6
[図:0001402387000007.jpg]
」
(イ)引用文献2の前記16頁に記載された「条件2;チャネルに上司が参加している。」の「条件に該当する場合」、「実行部5」は「前述と同様に確認ウインドウを表示し、押されたボタンに従った処理を行う」のであるから、「条件1;チャネル内における知らない人の人数が5人以上である。」と同様に、「実行部5」は、「図6に示す確認ウインドウを表示」し、「確認ウインドウで”OK”ボタンが押されると、発言内容を連携部に送出」し、「”キャンセル”ボタンが押されると、発言内容の送出を中止する」ものと認められる。
以上を踏まえると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2記載事項]
コンピュータネットワークにより接続された複数のユーザ端末A,B,C,Dが、チャットサーバを介してチャット可能であり、(13頁2行~3行)
ユーザ端末A上では、支援装置1とチャットクライアントとが動作可能であり、(13頁3行~4行)
支援装置1は、ユーザDB2(データベース)、条件DB3、判断部4、実行部5、登録部6及び取得部7を有し、チャットクライアントと共に動作し、チャットクライアントは連携部及びチャットDBを有し、(13頁7行~9行)
チャットクライアントは、ユーザ端末Aの入出力部に他のユーザの発言を表示し、入出力部から入力された発言を表示するとともにチャットサーバに送信し、(13頁12行~13行)
チャットクライアントの連携部は、ユーザにより入力された発言をチャネルに送信する前に、発言先チャネル名及び発言内容を支援装置1に送出し、連携部は、所定の条件に応じて処理された発言を支援装置1から受け取り、連携部によって受け取られた発言は、チャットサーバに送信され、(13頁14行~18行)
判断部4は、連携部から発言先チャネル名及び発言内容を受け取り、発言が所定の条件を満たすか否かを判断し、判断基準となる条件は、条件DB3に蓄積されており、判断部4は、発言先チャネル名と、発言内容と、所定の条件に該当する発言であると判断した場合は該当した条件とを、実行部5に通知し、(14頁13行~17行)
実行部5は、判断部4から発言先チャネル名と、発言内容と、該当した条件とを受け取ると、条件に応じた処理を行い、チャネル及び発言内容を連携部に送出し、処理は、条件と対応付けられて条件DB3に蓄積されており、いずれの条件にも該当しなかった場合は、発言先チャネル名及び発言内容を連携部に送出し、(14頁18行~22行)
ユーザDB2には、分類リスト及び属性リストが蓄積されており、(15頁10行~11行)
分類リストには、ユーザ自身以外の他のユーザの少なくともニックネームが、所定の分類毎に登録され、分類基準としては、”知っている人”、”無視する人”、”上司” が挙げられ、(15頁12行~14行)
属性リストには、参加中の各チャネルに対し、"read only"または"read/write"のいずれかの属性が設定されており、"read/write"は、参加中のチャネルに発言を行うことができることを示し、"read only"は、チャネルに発言できず、チャネル内での発言内容を見ることができるだけであることを示し、(15頁19行~23行)
条件2;チャネルに上司が参加している、に該当する場合、実行部5は、確認ウインドウを表示し、確認ウインドウで”OK”ボタンが押されると、発言内容を連携部に送出し、”キャンセル”ボタンが押されると、発言内容の送出を中止し、(16頁16行~21行)
条件3;チャネル属性が"read only"である、に該当する場合、実行部5は、”このチャネルはread onlyに設定されています。”などのメッセージと共に前記確認ウインドウを表示し、実行部5は、確認ウインドウで”OK”ボタンが押されると、発言内容を連携部に送出し、”キャンセル”ボタンが押されると、発言内容の送出を中止する。(16頁22行~28行)
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 「意志決定支援サービスと接続される会議支援装置であって」について
(ア)引用発明の「端末装置L」は、「会議支援システムU1」に含まれる(分説b)「装置」であるから、会議支援装置といえる。
(イ)引用発明の「会議用サーバ装置Sc」は、「記憶部13に記憶されている保存データ」、すなわち、「会議に際して必要とされる各種文書ファイルデータ」(分説f)の検索や、インターネットを通じた検索を行い(分説h)、「検索結果データ」を「主装置M」に送信するものである(分説h)。
前記検索は、「会議中」に実行され(分説g)、前記「検索結果データ」は、「主装置M」が「検索結果を表示」し、「会議参加者」が「表示された検索結果から使用するファイルまたは情報を指定し、その内容を確認」する(分説i)ために用いられるものである。
会議は、通常、何らかの意志(意思)決定を行うものであり、会議中に利用される前記「検索結果データ」が、会議の意志決定に寄与していることは明らかであるから、「会議サーバ装置Sc」による該「検索結果データ」の送信(提供)は、該意志決定を支援するサービスといえる。そうすると、「会議サーバ装置Sc」と通信可能に接続される(分説d)「端末装置L」は、意志決定支援サービスに接続されているともいえる。
(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「意志決定支援サービスと接続される会議支援装置」である点で一致する。
イ 「会議の参加者の音声又は前記会議の参加者による手書き文字の入力を受け付ける入力受付手段と」について
引用発明の「端末装置L」は、「音声入力手段」を有し(分説d、分説e)、前記「音声入力手段」に「会議参加者」の「音声検索」(分説g)のための音声が入力されることは明らかである。
したがって、引用発明の前記「音声入力手段」は、本件補正発明の「会議の参加者の音声又は前記会議の参加者による手書き文字の入力を受け付ける入力受付手段」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「会議の参加者の音声又は前記会議の参加者による手書き文字の入力を受け付ける入力受付手段」を有する点で一致する。
ウ 「前記入力受付手段により受け付けた前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを前記意志決定支援サービスに送信するか否かを判定する判定手段と」について
(ア)引用発明の「端末装置L」は、「音声入力手段」により入力された「音声データ」を変換して「テキストデータ」を作成し、「検索用データ」として「会議用サーバ装置Sc」に送信しており(分説g)、前記イを踏まえると、該「検索用データ」が、会議参加者から入力される音声を示すものといえる。
したがって、引用発明の前記「検索用データ」は、本件補正発明の「前記入力受付手段により受け付けた前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータ」に相当する。
(イ)他方、引用発明は、「端末装置L」が前記「検索用データ」を「会議用サーバ装置Sc」に送信するか否かを判定することは特定されていない。
エ 「前記判定手段により前記意志決定支援サービスに送信すると判定された場合、前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを送信する送信手段と」について
(ア)引用発明の「端末装置L」の「データ送信手段」は、作成した「検索用データ」を「会議用サーバ装置Sc」へ送信するものである(分説g)から、前記ア(イ)及びウ(ア)も踏まえると、引用発明の「データ送信手段」は、本件補正発明の「前記意思決定支援サービスに」「前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを送信する送信手段」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記意志決定支援サービスに」「前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを送信する送信手段」を有する点で一致する。
(イ)他方、前記ウ(イ)に付随して、引用発明は、前記(ア)の「検索用データ」の「会議用サーバ装置Sc」への送信を、該送信を行うと判定された場合に行うことは特定されていない。
オ 「表示部品を表示する表示手段と、を有し」について
引用発明の「端末装置L」は、「文字」や「画像」などを表示する「表示部33」を有するから(分説d)、該「文字」や「画像」は、本件補正発明の「表示部品」に相当し、「表示部33」は、本件補正発明の「表示部品を表示する表示手段」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「表示部品を表示する表示手段」を有する点で一致する。
カ 「前記表示手段は、前記判定手段により前記意志決定支援サービスに送信しないと判定された場合、前記テキストデータを前記意志決定支援サービスに送信しないことを示す前記表示部品を表示し」について
前記ウ(イ)に付随して、引用発明は、本件補正発明の前記事項に対応する構成は特定されていない。
キ 「前記送信手段は、前記表示部品を選択する操作が行われた場合、前記テキストデータを送信する」について
前記カと同様、引用発明は、本件補正発明の前記事項に対応する構成は特定されていない。
ク 前記ア~キによれば、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
意志決定支援サービスと接続される会議支援装置であって、
会議の参加者の音声又は前記会議の参加者による手書き文字の入力を受け付ける入力受付手段と、
前記意思決定支援サービスに前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを送信する送信手段と、
表示部品を表示する表示手段と、を有する
会議支援装置。
[相違点1]
本件補正発明は、前記「前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを前記意志決定支援サービスに送信するか否かを判定する判定手段」を有するのに対し、引用発明は、「検索用データ」を「会議用サーバ装置Sc」に送信するか否かを判定する手段について特定されていない点。
これに付随し、「テキストデータ」の前記送信を、本件補正発明では、「前記判定手段により意志決定支援サービスに送信すると判定された場合」に行うのに対し、引用発明は、そのような構成は特定されていない点。
[相違点2]
相違点1と関連し、本件補正発明は、「前記表示手段は」、「前記判定手段により前記意志決定支援サービスに送信しないと判定された場合、前記テキストデータを前記意志決定支援サービスに送信しないことを示す前記表示部品を表示し」、「前記送信手段は」、「前記表示部品を選択する操作が行われた場合、前記テキストデータを送信する」のに対し、引用発明は、そのような構成は特定されていない点。
(4)判断
ア 相違点1についての検討
(ア)引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けの有無について
以下に示すとおり、引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けはあるといえる。
a 引用文献2記載事項は、チャットに係るものであるところ、チャットは「複数のユーザが」「チャネル内で会話を行うことにより、チャネルという電子的な会議における会議が可能」(引用文献2の1頁18行~20行)であるから、引用文献2記載事項は、会議を支援するものといえる。
そうすると、引用発明と引用文献2記載事項とは、会議支援という技術分野(用途)の点で共通する。
b また、チャットは、「ユーザが発言した内容」が「他のユーザの情報端末上で即座に表示される」(1頁24行~25行)のであるから、引用文献2記載事項は、一のユーザから入力された発言を、他のユーザと共有するものといえる。
これに対し、引用発明は、「特定の端末装置から入力した検索用データを用いて検索を実行して得られる検索結果を、主装置の表示部に表示して、検索結果を会議の参加者全員が共有可能」(【0006】)にするものである。
そうすると、引用発明と引用文献2記載事項とは、参加者間で情報を共有するという作用、機能の点で共通する。
c さらに、引用文献2記載事項のユーザ端末Aは、参加中のチャネルに対して"read only"の属性が設定されると、当該チャネルに発言(送信)できないものである。
これに対し、引用発明の端末装置Lは、「入力用端末装置Lxは、1つまたは少数に限定」(分説j)され、入力用端末装置Lxに設定されなかった場合、検索用データを会議用サーバ装置Scに送信できないものと解される。
すなわち、引用発明と引用文献2記載事項とは、端末装置(参加者)がデータ送信をできない設定にすることが可能という機能の点でも共通するといえる。
d 前記a~cのとおり、引用発明と引用文献2記載事項とは、用途及び作用、機能の点において共通するものであるから、引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けがあるといえる。
e 他方、引用発明に引用文献2記載事項を適用することに対する阻害事由は存在しない。
(イ)引用発明に引用文献2記載事項を適用した構成について
引用発明の端末装置Lが送信する「検索用データ」は、引用文献2記載事項のユーザ端末Aが送信する「発言」と対応するものといえる。該対応を踏まえると、引用発明に引用文献2記載事項を適用した構成において、端末装置Lは、検索用データを送信する際に、検索用データが所定の条件を満たすか否かを判断し、所定の条件に該当すると判断した場合は、確認ウインドウを表示し、いずれの条件にも該当しなかった場合、検索用データを会議用サーバScに送信することは明らかである。
この構成において、検索用データは、所定の条件に該当する場合には、表示された確認ウインドウで”OK”ボタンが押されない限り、会議用サーバScに送信しないのであるから、検索データ用が所定の条件を満たすか否かの判断は、検索用データを会議用サーバScに送信するか否かの判断であるといえる。そして、端末装置Lは、検索用データを会議用サーバScに送信すると判定した場合、検索用データを会議用サーバScに送信しているといえる。
(ウ)相違点1についてのまとめ
前記(ア)及び(イ)のとおり、相違点1に係る本件補正発明の構成、すなわち、「前記音声又は前記手書き文字を示すテキストデータを前記意志決定支援サービスに送信するか否かを判定する判定手段」、及びテキストデータの送信を「前記判定手段により意志決定支援サービスに送信すると判定された場合に」行うことは、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
イ 相違点2についての検討
引用発明に引用文献2記載事項を適用した構成において、端末装置Lが、所定の条件を満たすと判断したときに表示する確認ウインドウは、前記ア(イ)を踏まえると、検索用データを会議用サーバScに送信しないことを示す表示部品といえる。そして、端末装置Lは、該確認ウインドウの”OK”ボタンが押されると、検索用データを送信するのであるから、該確認ウインドウの”OK”ボタンの押下は、検索用データを送信するための、表示部品を選択する操作といえる。
してみると、相違点2に係る本件補正発明の構成も、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。
ウ 効果について
相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載事項の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)請求人の主張について
ア 請求人の主張の内容
請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張する(下線は請求人による。)。
「 そのため、本願請求項1に係る発明は、テキストデータを意志決定支援サービスに送信するか否かを判定し、意志決定支援サービスに送信すると判定された場合にはテキストデータを送信します。一方、テキストデータを意志決定支援サービスに送信しないと判定された場合でも、表示部品を表示させ、ユーザの選択操作に応じてテキストデータを送信するという、2段階での送信対応が可能となります。
・・・(中略)・・・
引用文献2(国際公開第00/41080号)に関して、ユーザの発言内容に社内URLを含む場合に、「内部URLを含む発言です」等のメッセージとともに確認ウィンドウ(図6)を表示させ、確認ウィンドウでOKボタンが押されると発言内容を送出する記載があります。しかしながら、引用文献2では発言内容を送出するかしないかを判断するのは、確認ウィンドウでOKボタンまたはキャンセルボタンが押される際の1回しかなく、本願請求項1に係る発明のように、2段階での送信対応が可能な構成は開示も示唆も成されていません。
従って、引用文献1と引用文献2とを組み合わせたとしても、本願請求項1に係る発明の構成には成りえません。このため、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定による拒絶の理由は有しないものと思料致します。」(審判請求書3~4頁)
イ 請求人の主張についての検討
引用文献2は、前記(2)イ(イ)の引用文献2記載事項のとおり、ユーザにより入力された発言をチャネルに送信する前に、該発言が所定の条件(「条件2;チャネルに上司が参加している」、「条件3;チャネル属性が"read only"である」)を満たすか否かを判定し、いずれの条件にも該当しなかった場合には該発言を送信し、所定の条件を満たした場合に、確認ウインドウを表示し、確認ウインドウで”OK”ボタンが押されると、発言を送信するものである。
すなわち、引用文献2における発言の送信は、発言が所定の条件を満たさないと判断した場合と、発言が所定の条件を満たすと判断し、確認ウインドウで”OK”が押された場合に行われるから、引用文献2も、請求人の主張する2段階の送信対応が可能なものである。
したがって、請求人の主張には理由がないから、その主張を採用することはできない。
(6)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、仮に本件補正が特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると仮定した場合、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年8月17日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、令和3年6月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、1(1)に記載した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~13に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2014-140121号公報
引用文献2.国際公開第00/41080号
3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記第2、3(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2、3で検討した本件補正発明から、「表示部品を表示する表示手段と、を有し、前記表示手段は、前記判定手段により前記意志決定支援サービスに送信しないと判定された場合、前記テキストデータを前記意志決定支援サービスに送信しないことを示す前記表示部品を表示し、前記送信手段は、前記表示部品を選択する操作が行われた場合、前記テキストデータを送信する」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2、3(3)~(6)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-012883