特許拒絶査定不服審判
2022-012833
エンコーダ
- 審判番号
- 2022-012833
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-528969
- 請求日
- 2022年08月16日
- 審決日
- 2023年09月20日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 濱本 禎広
- 分類
- P18 .121-Z (G01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-528969号「エンコーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年6月8日国際公開、WO2017/093737、平成30年12月6日国内公表、特表2018-536167号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)12月1日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張 2015年12月3日 欧州特許庁、同日付けのものが全部で二つある。)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、以下、2015年12月3日を「優先日」という。
平成30年 7月10日 :翻訳文の提出
令和 2年 9月30日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 4月 6日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月25日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 1月 6日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月10日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月17日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月16日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年1月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】
機械の第1および第2の部分の相対的な変位を測定するべく、機械に取り付けるための密封エンコーダモジュールであって、
スケール、
スケール信号レシーバを備えている読み取りヘッド、および
少なくとも当該スケールと前記スケール信号レシーバとをカプセル化する保護ハウジング、を備え、
当該密封エンコーダモジュールは、当該読み取りヘッドによって検出されたスケール信号に関する診断情報を測定して出力するように構成されており、
前記密封エンコーダモジュールは、第1の自由度で前記スケールと前記スケール信号レシーバの相対位置を測定するように構成され、前記診断情報は、前記第1の自由度以外の少なくとも1つの自由度における前記スケールと前記スケール信号レシーバとの前記相対的な位置関係に依存し、およびしたがってそれを示し、
前記読み取りヘッドは、前記読み取りヘッドを前記機械の第1および第2の可動部分の1つに取り付けるための前記保護ハウジングの外部の取り付けブロックを備え、前記密封エンコーダモジュールは、前記診断情報を光信号の形で出力するために、前記取り付けブロックまたは前記保護ハウジングに提供される、少なくとも1つの視覚出力装置を備えることを特徴とする、密封エンコーダモジュール。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如)
本願発明は、本願の優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開平5-133732号公報
引用文献2:特開昭54-126566号公報
引用文献3:特開2014-182054号公報
第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開平5-133732号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したもので、以下同様である。
ア 【0001】~【0008】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はクアドラチュア(直角位相関係にある)出力を発生するデバイスをセットアップするのに役立つ装置に関するものである。斯種の装置は、座標測長機または工作機械に用いて斯種機械の固定部に対する可動部の位置を測定するような、スケールと読取ヘッドをセットアップするのに有効である。
【0002】
【従来の技術】斯種のスケールおよび読取ヘッドで、読取ヘッドが2つの正弦波出力をクアドラチュアに発生するようにしたものは周知である。これらの出力は、クアドラチュア出力信号のサイクルを計数するための他の回路に供給して、位置を測定することができる。上記他の回路は、どちらのクアドラチュア信号が他方の信号よりも先行しているかを求めることにより読取ヘッドの移動方向を求めたりおよび/または出力の1サイクル内で位置の補間をとったりすることもできる。良好な結果を得るために、例えばスケールから適当な距離離れた所で読取ヘッドをスケールに対して正確に整列するようにセットアップして、良好な信号レベルを達成すべきことは勿論である。
【0003】斯様な目的のためのセットアップ装置については本願人の先の出願に係る国際特許出願公開明細書WO90/02956号に開示されている。実際上、このような装置は読取ヘッドの外側に設けて、読取ヘッドからの2つの正弦波状のクアドラチュア出力を受信するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、正弦波状でなく、方形波のクアドラチュア出力を発生する読取ヘッドの需要がある。これは読取ヘッド内にゼロ交差検出器を設けて、正弦波状の信号を読取ヘッドから出力する前にこれらの信号を方形波にすることにより達成することができる。しかしこの場合、前記WO90/02956号に開示されている外部セットアップ装置は斯様な方形波出力信号では作動しないために問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、スケールに沿って横送りされるときに信号を発生する読取ヘッドであって、ハウジングと;このハウジングに内蔵され、前記スケールの目盛を検知すると共にこれに応答してクアドラチュアの信号を発生する目盛検知手段と;前記ハウジングに内蔵され、読取ヘッドの適切なセットアップを示す前記クアドラチュア信号のレベルを検出するためのセットアップ検出手段とを具え、前記セットアップ検出手段により前記信号レベルが所定レベル以上か、以下であるかを識別して、所定レベル以下では前記信号は使用できるも、最適な信号ではない旨のそれ相当の指示を与えるようにしたことを特徴とする。
【0006】要約するに、本発明は、読取ヘッドの適切なセットアップを示す信号レベルを検出するための回路を一様に内蔵した読取ヘッドにある。読取ヘッドにはスケールの目盛を検出し、それに応答してクアドラチュア信号を発生する検知手段を設けることができ、この場合に前記信号レベルを検出する回路は検知手段の出力に作用して、スケールに対する読取ヘッドの適切なセットアップの指示を与える。検知手段のクアドラチュア出力は読取ヘッドから方形波クアドラチュア出力を発生するスクエアリング手段に供給することもできる。
【0007】前記信号レベル検出回路は読取ヘッド内に設けるのが好適であるが、これは必ずしもそのようにする必要はなく、本発明の或る実施例では斯様な回路を読取ヘッドの外部に設けるようにする。
【0008】本発明の好適な形態では、本発明は、スケールの目盛を検知すると共にそれからクアドラチュア信号を発生する目盛検知手段と、セットアップ検出手段(読取ヘッドの内部または外部に設けられる)とを具えている読取ヘッドであって、前記セットアップ検出手段が:前記クアドラチュア信号の内の第1クアドラチュア信号に作用し、この第1クアドラチュア信号と、しきい値とを比較し、このしきい値以下では前記第1信号は使用できるも、最適な信号ではないものとして、第1クアドラチュア信号が前記しきい値以下の場合に出力を発生する第1比較器と;前記クアドラチュア信号の内の第2クアドラチュア信号に作用し、この第2クアドラチュア信号と、しきい値とを比較し、このしきい値以下では前記第2信号は使用できるも、最適な信号ではないものとして、第2クアドラチュア信号が前記しきい値以下の場合に出力を発生する第2比較器と;前記2つの比較器の出力端子に接続され、双方のクアドラチュア出力が同時にそれぞれ前記しきい値以下となる場合に指示を与える手段と;を具えていることを特徴とする。」
イ 【0009】~【0025】、【図1】~【図3】
「【0009】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0010】図1は、例えば工作機械または座標測長機(CMM)の相対的可動部11に固着したハウジング10を有している読取ヘッドを示す。この読取ヘッドのハウジング10は図に矢印にて示すようにスケール12に沿って横送り可能である。スケール12は工作機械または座標測長機の相対的固定部14に取付けられている。スケール12は、その長さ方向に沿って例えば20μmの間隔で離間させた周期的な目盛を有しており、読取ヘッドハウジング10は目盛が読取ヘッドを通過するときにこれらの目盛を検出すると共に読取ヘッドを動かすと直角位相関係(正弦および余弦)にある(クアドラチュアの)2つの正弦波状出力信号を発生するためのセンサ15(図2)を収容している。このようなセンサは周知であり、例えば米国特許第4,959,542号および第4,949,289号に開示されている。」
「【図1】
[図:0001407177000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001407177000002.jpg]
」
「【0011】図2は図1の読取ヘッド10内に入れる回路の回路図であり、センサ15からのクアドラチュアの2つの正弦波状の出力をそれぞれライン16,18を経てスクエアリング回路20,22に供給する。これらのスクエアリング回路は慣例のものであり、これらはそれぞれのライン24,26にクアドラチュアの方形波出力を発生するようにゼロ交差検出器を具えている。前記方形波出力は読取ヘッド10の主出力であり、図1に示すように外部カウンタ28に取り出される。カウンタ28は全く慣例のものであり、これは工作機械またはCMMの制御部34内に入れる。カウンタ28はライン24,26に現われる方形波のサイクル数を計数し、それに応じて出力を発生し、この出力は読取ヘッド10がスケール12に沿って横送りした距離を示す。カウンタ28は上向きに計数するのか、下向きに計数するのかを決めるために方形波の相対位相から読取ヘッドの移動方向も検出する。
【0012】読取ヘッド10がライン24,26にクアドラチュアの方形波を発生するということは、必要に応じて方形波入力を期待する既存の機械の制御部34に斯種の読取ヘッドを適用するのが容易であることを意味している。ライン24,26に本来ディジタル信号を用いても、このような信号は雑音に対する免疫(immunity)が良好なため、相互接続配線を容易に、しかも安価に行うことができる。
【0013】図2には誤差検出回路30も示してあり、これは読取ヘッドの正常の作動時にライン16,18の正弦波および余弦波信号のレベルが信頼できないか、または使用できないような低レベルにある場合に読取ヘッド10から機械の制御部34にライン32で誤差信号を供給する。この誤差信号が発生する状況は図3から理解することができる。図3はライン16,18における正弦波および余弦波信号をオシロスコープのxおよびy入力端子にそれぞれ供給した場合に得られる円形のリサージュ図形36を示している。この仮想リサージュ図形36は、読取ヘッド10がスケール12に対して正しく整列している場合にだけ図示のように完全な円となるのである。さらに、読取ヘッドとスケールとの離間距離が正確にセットアップされていない場合には、リサージュ図形36の半径が図示のものよりも小さくなる。誤差検出回路30の効果は、図3のリサージュ線図に小さな正方形として表わした誤差領域40を規定することにある。ライン16,18の信号により発生される仮想リサージュ図形が、例えば線42で示すように誤差領域40内に完全に、または部分的に落ちる場合には、ライン32に誤差信号が発生して、機械の制御部34が運転を停止したり、アラームを作動させたりする。線42で示すようにリサージュ図形がくずれるのは、読取ヘッドがスケールに対して誤整列したり、またはスケールからの離間距離の調整が誤ったりする場合に生ずる。
【0014】誤差検出回路30は2つのウィンドウ比較器を具えている。第1ウィンドウ比較器は2個のしきい値比較器44を具えており、これらの比較器はライン18の正弦波信号を正方形40の対向する2辺の電圧に相当する正および負の基準しきい値電圧Vpos およびVneg とそれぞれ比較する。同様に、第2ウィンドウ比較器も2個のしきい値比較器46を具えており、これらの比較器はライン16の余弦波信号を正方形40の他の2辺の電圧に相当する同じ基準しきい値電圧VposおよびVnegとそれぞれ比較する。4個の比較器44,46の出力端子をワイヤード・オア構造に一緒に接続して、ライン32に誤差信号を与える。ワイヤード・オア構造とは、ライン18の正弦波信号がしきい値電圧VposとVnegとの狭い範囲内にあり、また同時にライン16の余弦波信号が同じくVposとVnegとの間の範囲内にある場合にだけライン32の信号が高レベルとなるようなものである。このようにライン32の信号が高レベルとなるのは、図3の線42が方形波40内に位置する瞬時に相当する。読取ヘッドが満足に機能している時には常に仮想リサージュ図形が小さな正方形40の外にあり、ライン32に誤差信号は現われない。
【0015】しかし、誤差検出回路30は装置の正常な作動における誤りを検出するのにだけ有効であり、このためには比較的小さな誤差領域40に相当する比較的小さなしきい値が必要である。このような回路は読取ヘッドをスケールに対して初期設定(セットアップ)するのにはあまり使用されない。その理由は、リサージュ図形が丁度正方形の誤差領域40の外側に落ちるように読取ヘッドをセットアップしても、ライン16,18の正弦波および余弦波信号が所望な大きさの最適値を有するようになり、しかもこれらの信号が使用時に誤差領域40内にあまり急速に押し戻されないようにすることはできないからである。
【0016】こうした問題点を克服するために、読取ヘッドはセットアップ回路52を具えている。この回路は2個の別のウィンドウ比較器を具えており、これらの比較器もライン16,18から到来する正弦波および余弦波信号を受信する。しかし、誤差検出回路30とは異なり、このセットアップ回路52は抵抗分圧器54を具えており、これは到来する正弦波および余弦波信号をこの特定の例では約1/3にする。なお、一般にこの値は電源電圧;信号のダイナミックレンジ(誤差領域);許容可能な信号の限定サイズに応じて変えることができる。上記2つのウィンドウ比較器の内で最初のものは2個のしきい値比較器56を具えており、これらの比較器は正弦波信号(ライン18の正弦波信号の1/3)を正および負の基準しきい値電圧VposおよびVnegとそれぞれ比較する。第2ウィンドウ比較器は2個のしきい値比較器58を具えており、これらの比較器はライン16の信号を1/3にした余弦波信号を基準しきい値電圧VposおよびVnegと比較する。誤差検出器30の比較器と同様に比較器56,58の出力端子をワイヤード・オアの形態に接続して、正弦波および余弦波信号の双方が図3の正方形48によって規定される領域内に入る場合にだけセットアップ回路52から高レベルの出力を発生させるようにする。ライン16,18の正弦波および余弦波信号を1/3にするために、正方形48は誤差領域40の大きさの3倍となる。しきい値VposおよびVnegの大きさの3倍の基準しきい値電圧を用いることにより同じ結果を達成することができることは明らかである。
【0017】ウィンドウ比較器56,58の合成出力をバッファ60を介して読取ヘッドのハウジングに設けた2色に発光するダイオード(LED)62の形態の可視表示器に供給する。このLED62は一方の方向にバイアスされる場合に赤色に発光し、逆方向にバイアスされる場合に緑色に発光する。LED62の双方の端子をバッファ60の出力端子により駆動させ、一方の端子はインバータ64を介して駆動させる。このようにすることにより仮想リサージュ図形36が正方形48の外側にある期間中は緑色光を放ち、リサージュ図形が正方形48の中にある場合には赤色光を放つことになる。
【0018】セットアップ操作は全く簡単に行うことができる。読取ヘッド10を据え付ける人は、その読取ヘッドに設けてあるLED62を見ながら読取ヘッドをスケールに沿って単に横送りするだけである。最初はたぶん仮想リサージュが図3に円51で示すように正方形48内に完全に入っていることを示す赤色光に発光することになる。読取ヘッドをスケールに対して離間させて整列させ、スケールに沿う読取ヘッドの横送りを繰り返す。スケールに対する読取ヘッドのセットアップが改善されると、LEDはこれが或る時間は赤色光に発光し、或りの時間には緑色光を発光したりするために赤でなく黄色に見えるようになる。これは例えば図3のリサージュ図形50に相当する。スケールに対する読取ヘッドのセットアップをさらに調整するとLEDが完全な緑色光を放つようになり、これはリサージュ図形が図3に36で示すように正方形48の外に完全に位置し、従ってセットアップが満足のいくものであることを示す。
【0019】LEDをメータで直接モニタし、メータの読取値に従って読取ヘッドとスケールとの整合およびこれら両者間の距離(スタンド-オフ)を調整することもできる。メータはLEDの出力が次のようなことを表わすべくセットアップすることができる。即ち、
【0020】
【表1】
LED信号 メータ読取値
緑 指針のフルスケール振れ
黄 指針の中点値振れ
赤 指針の振れがない
これは何等かの理由によりLEDを容易に見ることができない場合に有効である。
【0021】スケールおよび読取ヘッドを長期にわたり使用したことにより、セットアップがやがてドリフトを生ずる場合に、リサージュ図形の一部が再度正方形48内に落ちてしまい、LED62が緑色でなく、再び黄色に発光してしまう。このようなことは、セットアップが問題を提起するよりもずっと前に、すなわちリサージュ図形が誤差領域40内に落ちるずっと前に観測される。このようなことが最もありがちな原因は、スケールがよく用いられて汚れたために、ライン16および18に現われる正弦波および余弦波信号の振幅が低くなることに起因している。従って、LED62の色をモニタすることによって、ライン32の誤差信号により指示されることになる実際の問題が生ずる前に、スケールをきれいにするようなメインテナンスを必要とする旨の早期警告を機械のユーザに与えるようにする。
【0022】図3に示すように、セットアップ領域は正方形48内に位置させる。このようにすれば、正方形の緑を規定するのに簡単なウィンドウ比較器を使用できるという利点がある。しかし、セットアップ領域は図3に示した以外の形状、例えば円50の半径と円36の半径との間の半径を有している円によって規定することもできる。このようにすれば、セットアップ領域からこの円の外側の許容領域までの移行をより速く、より公正にすることができるという利点がある。しかし、この場合には電子回路が一層複雑となり、例えばマルチプライヤの使用を伴うことになる。
【0023】スケール12にはその長さ方向に沿う或る位置にスケールに並べて立上がり突起物68を設けることができる。これはゼロまたは基準位置を示し、読取ヘッド10は突起物の通過を検出する突起検出器70を内蔵している。回路71は突起検出器70の出力を処理して、ライン72でカウンタ28に基準マーカパルスを供給する。従って、カウンタ28が例えば電源不良のためにその計数値を失う場合に、そのカウンタをゼロにリセット(または既知の値にプリセット)することができる。このマーカパルスは、突起物68の前縁が検出器70を通過する時でなく、むしろ次の正弦波および余弦波信号が双方共に「高」となる場合、即ちライン24,26の信号が共に低となる場合に発生させて、安定性および精度をさらに高めるようにする。このようにするために、NOR-ゲート73はライン24,26の信号が共に低となる場合に出力を発生し、この出力を回路71の突起検出器70の出力でゲートして、マーカパルスを形成する。
【0024】突起物68は可調整に取付ける。この突起物68は、その前縁が、ライン24,26の双方の信号が低となる際の方形波の前縁に近付かないように設定するのが好適である。これは、突起物68の位置に僅かのドリフトがある場合に、マーカパルスが意図したサイクルでなく、むしろ方形波の隣りのサイクルの前縁にてトリガされてしまうことのないようにするのに役立つ。従って、突起物を設定するには、ライン24,26の信号が共に「高」である間に突起物の前縁が生ずるようにするのが望ましい。
【0025】突起物68をこうしてセットアップするのは次のような追加の回路によって容易に行うことができる。単安定回路74は突起物の前縁の通過によりトリガされて、幅狭パルスを発生する。このパルスをライン24および26における直角位相関係にあるクアドラチュア信号と共にNANDゲート76にてゲートし、ライン24および26の双方の信号が「高」である場合に、突起物の前縁が通過したことにする。この状態が現われる場合に、別の単安定回路78が長目の出力パルスを発生する。このパルスをゲート80でバッファ60の出力と共にゲートして、突起物が通過するとLED62を赤色に閃光させ、突起物の位置の正しいセットアップを指示させる。」
「【図3】
[図:0001407177000003.jpg]
」
(2) 引用発明の認定
前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「工作機械または座標測長機(CMM)の相対的可動部11に固着したハウジング10を有している読取ヘッドであって、(【0010】)
この読取ヘッドのハウジング10は、スケール12に沿って横送り可能であり、(【0010】)
スケール12は、工作機械または座標測長機の相対的固定部14に取付けられており、(【0010】)
スケール12は、その長さ方向に沿って例えば20μmの間隔で離間させた周期的な目盛を有しており、(【0010】)
読取ヘッドハウジング10は、目盛が読取ヘッドを通過するときにこれらの目盛を検出すると共に読取ヘッドを動かすと直角位相関係(正弦および余弦)にある(クアドラチュアの)2つの正弦波状出力信号を発生するためのセンサ15を収容しており、(【0010】)
読取ヘッド内に入れる回路において、センサ15からのクアドラチュアの2つの正弦波状の出力は、それぞれライン16,18を経てスクエアリング回路20,22に供給され、(【0011】)
スクエアリング回路20,22は、それぞれのライン24,26にクアドラチュアの方形波出力を発生するようにゼロ交差検出器を具えており、前記方形波出力は、読取ヘッドの主出力であり、外部カウンタ28に取り出され、(【0011】)
カウンタ28は、工作機械またはCMMの制御部34内に入れられるものであり、ライン24,26に現われる方形波のサイクル数を計数し、それに応じて出力を発生し、この出力は読取ヘッドがスケール12に沿って横送りした距離を示し、カウンタ28は上向きに計数するのか、下向きに計数するのかを決めるために方形波の相対位相から読取ヘッドの移動方向も検出するものであり、(【0011】)
読取ヘッドは、セットアップ回路52を具えており、(【0016】)
セットアップ回路52は、2個のウィンドウ比較器を具えており、これらの比較器は、ライン16,18から到来する正弦波および余弦波信号を受信するものであり、(【0016】)
このセットアップ回路52は抵抗分圧器54を具えており、これは到来する正弦波および余弦波信号を約1/3にするものであり、(【0016】)
上記2つのウィンドウ比較器の内で最初のものは2個のしきい値比較器56を具えており、これらの比較器は正弦波信号(ライン18の正弦波信号の1/3)を正および負の基準しきい値電圧VposおよびVnegとそれぞれ比較するものであり、(【0016】)
第2ウィンドウ比較器は2個のしきい値比較器58を具えており、これらの比較器はライン16の信号を1/3にした余弦波信号を基準しきい値電圧VposおよびVnegと比較するものであり、(【0016】)
ライン16,18における正弦波および余弦波信号をオシロスコープのxおよびy入力端子にそれぞれ供給した場合に得られる円形のリサージュ図形36(仮想リサージュ図形36)は、読取ヘッドがスケール12に対して正しく整列している場合にだけ完全な円となるものであり、読取ヘッドとスケールとの離間距離が正確にセットアップされていない場合には、リサージュ図形36の半径が小さくなり、読取ヘッドがスケールに対して誤整列したり、またはスケールからの離間距離の調整が誤ったりする場合には、リサージュ図形のくずれが生ずるものであり、(【0013】、【図3】)
比較器56,58の出力端子をワイヤード・オアの形態に接続して、正弦波および余弦波信号の双方が正方形48によって規定される領域内に入る場合にだけセットアップ回路52から高レベルの出力を発生させるようにし、(【0016】)
ウィンドウ比較器56,58の合成出力は、バッファ60を介して読取ヘッドのハウジングに設けた2色に発光するダイオード(LED)62の形態の可視表示器に供給され、(【0017】)
このLED62は、一方の方向にバイアスされる場合に赤色に発光し、逆方向にバイアスされる場合に緑色に発光するものであり、
LED62の双方の端子をバッファ60の出力端子により駆動させ、一方の端子はインバータ64を介して駆動させることにより仮想リサージュ図形36が正方形48の外側にある期間中は緑色光を放ち、リサージュ図形が正方形48の中にある場合には赤色光を放つことになり、(【0017】、【図3】)
読取ヘッドのセットアップ操作においては、読取ヘッドを据え付ける人は、その読取ヘッドに設けてあるLED62を見ながら読取ヘッドをスケールに沿って単に横送りするだけであり、
最初はたぶん仮想リサージュが後記図3に円51で示すように正方形48内に完全に入っていることを示す赤色光に発光することになり、(【0018】、【図3】)、
読取ヘッドをスケールに対して離間させて整列させ、スケールに沿う読取ヘッドの横送りを繰り返し、スケールに対する読取ヘッドのセットアップが改善されると、LEDはこれが或る時間は赤色光に発光し、或りの時間(当審注:原文ママ)には緑色光を発光したりするために赤でなく黄色に見えるようになり、これは例えば図3のリサージュ図形50に相当し、(【0018】、【図3】)、
スケールに対する読取ヘッドのセットアップをさらに調整すると、LEDが完全な緑色光を放つようになり、これはリサージュ図形が正方形48の外に完全に位置し、従ってセットアップが満足のいくものであることを示すものであり、(【0018】、【図3】)
スケールおよび読取ヘッドを長期にわたり使用したことにより、セットアップがやがてドリフトを生ずる場合に、リサージュ図形の一部が再度正方形48内に落ちてしまい、LED62が緑色でなく、再び黄色に発光してしまうようなことがあり、
その最もありがちな原因は、スケールがよく用いられて汚れたために、ライン16および18に現われる正弦波および余弦波信号の振幅が低くなることに起因しており、
LED62の色をモニタすることによって、ライン32の誤差信号により指示されることになる実際の問題が生ずる前に、スケールをきれいにするようなメインテナンスを必要とする旨の早期警告を機械のユーザに与えるようにする、(【0021】)
読取ヘッド。
図3
[図:0001407177000004.jpg]
」
2 引用文献2、3に記載された事項、周知技術1及び引用文献3技術事項の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開昭54-126566号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 1頁右下欄19行~2頁左上欄7行
「 一つの担持体上に配置された尺度を有し、該尺度の目盛りが走査装置によって走査され、その際走査装置は、測定すべき対象物と結合している運行体に連結されそして走査装置は尺度および/または担持体の2つの案内面に押し付けられている測長機に関する。
上記した如き測長機は特に可動な機械部分、例えば工作機械の可動部分の相対運動を測定するために用いられる。」
イ 3頁左上欄12行~同頁左下欄7行
「 第1a、1b図には本発明の測長機の特に優れた実施形態が示され、該実施例では、担持体としての容器1の中に尺度2が接着剤で同着されており、該尺度の目盛りは、走査装置3により図示されていない走査板を用いて走査される。尺度2および走査板の目盛りは、図示されていないが、走査装置に取り付けられている照明装置により照明され、該照明装置はランプとコンデンサーとを包含しているものである。尺度2および走査板を透過する光線は走査装置3に取り付けられている光電要素4,5に入射し、該光電要素からの信号は、相対運動を発見するための、図示されていない電子的評価装置に導かれる。
走査装置3は測定方向に硬直な針金6を介して尺度2の中立面の近傍で連行体7に関節連結され、その際連行体の足部8は、図示されていないが、測定すべき対象物、例えば機械の移動台と結合される。合目的に引抜きアルミ材から成り立っている容器1の内部は、曲り易く、屋根形に配置されているパッキング唇9,10を用いて汚染されない様に防護されており、該バッキング唇を、その範囲では刀の形状になっている連行体7が通過している。
走査装置3は2つの摺動子11によって尺度2に設けられた案内面12上を、そして摺動子13によって尺度2に設けられた案内面14上を案内されている。走査装置3を、互に直交している案内面12,14に押し付けるのは、2つのばね15,16によって行われ、これらのばねは夫々案内面12,14に付設されたものでありそして双方とも一方では走査装置3に支えられそして他方では連行体7に支えられている。この様な支え方を用いる場合には容器1に支承面が不要となる。従って容器が無い場合にこの方法が用いられる。」
ウ 第1a図
「
[図:0001407177000005.jpg]
」
エ 第1b図
「
[図:0001407177000006.jpg]
」
(2) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2014-182054号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 【0001】
「【0001】 本発明は、工作機械等精密な位置測定が必要な環境において相対移動量の測定に好適なリニアエンコーダに関するものであり、特にスケールとこのスケール上に刻印された測定用パターンを読み取る読み取りヘッドとが所定のギャップを空けて移動するリニアエンコーダのギャップ調整構造と調整方法に関するものである。」
イ 【0015】、【0021】
「【0015】
本発明のリニアエンコーダは、スケールと、このスケールを収納するハウジングと、前記スケールと対向配置されスケールを走査して位置情報を得るセンサユニットとを有するリニアエンコーダにおいて、前記ハウジングまたはそのエンドカバーにはスケールとセンサユニットとのギャップに対応する位置にギャップ調整用の調整穴を有するものである。」
「【0021】
ハウジングは、スケールおよびセンサユニットを収納し、これらを外部環境から保護する役割を有するとともに、通常動作しない機械基部など測定基準となる構造物に固定され、エンコーダの支持構造物となる。このため、ハウジングには、構造物に固定するための固定部がハウジングの長手方向に沿って一定間隔で複数形成・配置されている。固定部は一般にはねじ取り付け孔が形成され、取り付けねじにより固定できるようになっているが、他の固定方法を用いてもよい。」
ウ 【0030】、【0033】~【0040】、【図1】、【図7】
「【0030】
図1~3および7において、本発明のリニアエンコーダは、スケール6と、このスケール6を収納するハウジング1a,1bと、ハウジング1a,1b内に収納されたスケールを走査して測定信号を生成するセンサユニット5とを有する。」
「【0033】
次に、本発明のリニアエンコーダの基本構成について詳細に説明する。本発明のリニアエンコーダは、図7に示すように、断面縦長の長方形のハウジング1a,1b内に、測定用のパターンが刻印されたスケール6が配置されている。このハウジング1a,1bは、スケール6および後述のハウジング外装部の支持基材となるハウジング基部1bと、スケール6およびセンサユニット5を覆って外部環境から保護するハウジング外装部1aとから構成されている。
【0034】
ハウジング基部1bは、装着する装置の筐体、基部など装置固定側100に取り付けられ固定される。そして、このハウジング基部1b下面に接着剤7を介してスケール6が前記下面と平行に固定されている。この接着剤7は弾性を有し、温度変化によるハウジング基部1bとスケール6との膨張、収縮率の差を吸収できるようになっている。
【0035】
スケール6はガラスなどの透明な材料で形成されている。そして、前記接着面とは反対側に、測定のためのパターンが刻印されている。このパターン形成には、クロムなどの金属材料を蒸着し、その際のパターニング、あるいはその後の工程でのエッチング等により形成することができる。スケールは、金属材料で形成することも可能であるが、熱による影響の少なさ、高精度化やパターン形成の容易さ等の点においてガラス系材料が優れている。
【0036】
スケール6の下方にはセンサユニット5が一定のギャップtを介して配置されている。このセンサユニットには、前記スケール上に形成されてあるパターンを読み取るための光学センサおよびその光源となる発光素子、前記センサから出力される電気信号を処理するための電子回路等が搭載されている。前記スケール6の下面とセンサユニット5の表面との間の距離、つまりギャップを一定に保つことは、センサユニット5から出力される読み取り信号を安定させ、誤作動を防止したり精度を一定に保つ上で極めて重要な要素となる。
【0037】
センサユニット5は、支持基材となるベッド4上に載置され、ねじ42により固定されている。このベッド4下部には進行方向投影面が肉薄になるフット41が下方に向かって植設されていて、スキャニングヘッド3と結合している。スキャニングヘッド3には図1に示すように止め孔31が形成されていて、測定対象となる装置の可動部200に固定できるようになっている。そして、この止め孔31により固定する際に、前記ギャップ調整が行われる。なお、スキャニングヘッド3には、取り外しの際などに治具などを固定するため、段差部32にねじ孔33が形成されている。
【0038】
ハウジング外装部1aには、図1に示すように段差部1cが形成され、この段差部1cには長手方向にねじ孔130が一定間隔で形成されている。そして、ハウジング基部1bの対応する位置に形成されたねじ孔にねじ131を用いて着脱自在に固定することができるようになっている。さらに前記段差部1cの長手方向には前記ねじ孔130とは異なる位置に長手方向に一定間隔で逃げ孔110が形成され、ハウジング基部1bの対応する位置には固定用の止め孔120が形成されている。そして、この止め孔120を介して装置固定側に止めねじにより固定することができるようになっている。
【0039】
ハウジング1a,1b端部には、ハウジング端部を封鎖し、密封するためのエンドプレート2が着脱自在に配置されている。このエンドプレート2には止め孔21が形成され、ハウジング1a、1b端部の対応する位置に形成されているねじ孔120に止めねじ22を用いて着脱自在に固定できるようになっている。このエンドプレート2とハウジング1a,1b端部との間にも、密封性を確保するために封止部材を配置してもよい。
【0040】
ハウジング外装部1a下部は、前記フット41が摺動するための開口部1dが形成されている。そして、この開口部1dにおける気密性を確保するために、シール材固定部8a,8bにより固定される一対の図示しないシールリップが配置されている。このシールリップは、先細で厚膜状の樹脂または弾性部材であり、斜め下方に向けて向かい合わせに配置され、フット41が存在する部分以外では双方のシールリップ先端部同士が会合し、密着して密封状態を確保できるようになっている。また、フット41が存在する部分ではシールリップ先端部がフット41周囲に密着して同様に気密性を保てるようになっている。」
「【図1】
[図:0001407177000007.jpg]
」
「【図7】
[図:0001407177000008.jpg]
」
(3) 周知技術1の認定
前記(1)及び(2)に摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。
<周知技術1>
「工作機械の可動部の相対変位を測定するエンコーダにおいて、スケール部とセンサ部とを外部環境から保護するために、スケール部とセンサ部とを収容する密封部材を備えること」
(4) 引用文献3技術事項の認定
前記(2)の摘記事項から、引用文献3には次の技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献3技術事項>
「スケール6と、このスケール6を収納するハウジング1a,1bと、ハウジング1a,1b内に収納されたスケールを走査して測定信号を生成するセンサユニット5とを有するリニアエンコーダであって、(【0030】、【図7】)
断面縦長の長方形のハウジング1a,1b内に、測定用のパターンが刻印されたスケール6が配置されており、このハウジング1a,1bは、スケール6およびハウジング外装部の支持基材となるハウジング基部1bと、スケール6およびセンサユニット5を覆って外部環境から保護するハウジング外装部1aとから構成されており、(【0033】)
ハウジング基部1bは、装着する装置の筐体、基部など装置固定側100に取り付けられ固定されるものであり、(【0034】)
スケール6の下方にはセンサユニット5が一定のギャップtを介して配置されており、このセンサユニットには、前記スケール上に形成されてあるパターンを読み取るための光学センサおよびその光源となる発光素子、前記センサから出力される電気信号を処理するための電子回路等が搭載されており、(【0036】)
センサユニット5は、支持基材となるベッド4上に載置され、ねじ42により固定されており、このベッド4下部には進行方向投影面が肉薄になるフット41が下方に向かって植設されていて、スキャニングヘッド3と結合しており、スキャニングヘッド3には止め孔31が形成されていて、測定対象となる装置の可動部200に固定できるようになっており、(【0037】、【図1】)
ハウジング外装部1a下部は、前記フット41が摺動するための開口部1dが形成されており、この開口部1dにおける気密性を確保するために、シール材固定部8a,8bにより固定される一対のシールリップが配置されており、このシールリップは、先細で厚膜状の樹脂または弾性部材であり、斜め下方に向けて向かい合わせに配置され、フット41が存在する部分以外では双方のシールリップ先端部同士が会合し、密着して密封状態を確保できるようになっており、フット41が存在する部分ではシールリップ先端部がフット41周囲に密着して気密性を保てるようになっている、(【0040】)
リニアエンコーダ。」
第5 対比
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア(ア) 引用発明の「工作機械または座標測長機(CMM)」は、本願発明の「機械」に相当し、引用発明の「工作機械または座標測長機(CMM)の相対的可動部11」及び「工作機械または座標測長機の相対的固定部14」は、本願発明の「機械の第1および第2の部分」に相当する。
(イ)a 引用発明において、「相対的可動部11に固着した」「読取ヘッドのハウジング10」は、「相対的固定部14に取付けられ」「長さ方向に沿って例えば20μmの間隔で離間させた周期的な目盛を有して」いる「スケール12」に「沿って横送り可能であり」、「目盛が読取ヘッドを通過するときに」、「読取ヘッドのハウジング10」に「収容」された「センサ15」が、「これらの目盛を検出すると共に読取ヘッドを動かすと直角位相関係(正弦および余弦)にある(クアドラチュアの)2つの正弦波状出力信号を発生する」。
b そして、「センサ15からのクアドラチュアの2つの正弦波状の出力」が「供給」される「スクエアリング回路20,22」は、「それぞれのライン24,26にクアドラチュアの方形波出力を発生」させ、「カウンタ28」が、「ライン24,26に現われる方形波のサイクル数を計数」し、「それに応じて」「発生」した「出力」が「読取ヘッドがスケール12に沿って横送りした距離」を示すことになる。
c そうすると、引用発明においても、「読取ヘッドがスケール12に沿って横送りした距離」に対応する、「相対的可動部11」と「相対的固定部14」の相対的な変位を測定しているといえる。
d 前記aからcの検討も踏まえると、引用発明の「スケール12」、「センサ15」及び「読取ヘッド」は、それぞれ本願発明の「スケール」、「スケール信号レシーバ」及び「読み取りヘッド」に相当する。
(ウ) 引用発明の「スケール12」は、「相対的固定部14」に「取り付けられており」、「読取ヘッド」の「ハウジング10」は、「相対的可動部11」に「固着」されていることから、引用発明の「スケール12」と「読取ヘッド」は、「機械に取り付ける」ものであるといえる。
(エ)a(a) 本願発明の「エンコーダ」について、本願の明細書の段落【0002】には、次の記載がある。
「エンコーダは、機械の制御システムに、位置(または、その派生物、例えば、速度および/または加速度)のフィードバック、例えば、機械の他の部分に対する機械の一の部分の位置/動作のためのフィードバック制御を提供するために、多くの産業において使用されている。理解されるように、典型的には、機械の一部分にはスケール(目盛り)が設けられ、スケールを読み取るための読み取りヘッドが機械の他の部分に設けられ、スケールと読み取りヘッドの相対位置、したがって、機械の部分の相対位置が、エンコーダの測定次元に沿って読み取りヘッドによって検出される。」
(b) 上記記載を参酌すると、本願発明の「エンコーダ」とは、「機械の一部分」に設けられた「スケール」を「機械の他の部分」に設けられた「読み取りヘッド」によって読み取ることにより、スケールと読み取りヘッドの相対位置を検出するものであると解するのが相当である。
b ここで、前記(イ)の検討結果を踏まえると、引用発明においても、「相対的固定部14」に設けられた「スケール12」を、「相対的可動部11」に固着されたハウジング10を有する「読取ヘッド」により読み取ることにより、「読取ヘッドがスケール12に沿って横送りした距離」に対応する、「相対的可動部11」と「相対的固定部14」の相対的な変位を測定しており、スケール12と読取ヘッドの相対位置を検出するものであるといえる。
c 前記aの「エンコーダ」に係る解釈を踏まえると、引用発明も「エンコーダ」に相当する構成を有していると認められる。
(オ)a 前記(ア)~(エ)の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、「機械の第1および第2の部分の相対的な変位を測定するべく、機械に取り付けるエンコーダ」の発明である点において共通する。
b さらに、本願発明と引用発明は、「スケール、スケール信号レシーバを備えている読み取りヘッド、を備える」ものである点においても共通する。
イ(ア) 前記ア(イ)の検討結果を踏まえると、引用発明の「読取ヘッドがスケール12に沿って横送りした距離」は、「スケール12に沿って」設定した座標軸からみたときのスケール12と読取ヘッドの相対的な変位を示すものであるから、引用発明の「スケール12に沿っ[た]」方向は、本願発明の「第1の自由度」に相当する。
(イ) そうすると、引用発明において、「読取ヘッドがスケール12に沿って横送りした距離」に対応する、スケール12に沿った方向でスケール12と読取ヘッドの相対的な変位を測定することは、本願発明の「第1の自由度で前記スケールと前記スケール信号レシーバの相対位置を測定する」ことに相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「前記エンコーダは、第1の自由度で前記スケールと前記スケール信号レシーバの相対位置を測定するように構成され」るという点において共通する。
ウ(ア)a 本願発明の「診断情報」について、本願の明細書の段落【0014】には、次の記載がある。
「上述したように、診断情報は、特に、エンコーダモジュールの測定次元のもの以外の少なくとも1つの次元/自由度において、スケールとスケール信号レシーバの相対的配置に依存する(したがって、それを示している)。例えば、診断情報は、スケールおよびスケール信号レシーバの横方向の位置、ライドハイト、ピッチ、ロールまたはヨーのうちのいずれか1つ、任意の組み合わせ、またはすべてに互いに依存する(したがって、それらを示している)。したがって、例えば、診断情報は、スケールおよびスケール信号レシーバが、測定次元のそれ以外の少なくとも1つの自由度において、所望の相対的配置にあるときか、またはそうでないときかに依存する(したがって、それを示している)。そのような配置情報は、以下により詳細に説明されるように、スケールとは独立して配置されるスケール信号レシーバを有している実施形態にとって、特に有用である。」
b 上記記載を参酌すると、本願発明の「診断情報」とは、スケール及びスケール信号レシーバが、測定次元以外の少なくとも1つの自由度において、所望の相対的配置にあるか否かを診断するための情報であると解するのが相当である。
(イ)a 引用発明においては、「ライン16,18における正弦波および余弦波信号をオシロスコープのxおよびy入力端子にそれぞれ供給した場合に得られる」「リサージュ図形」について、「読取ヘッドがスケール12に対して正しく整列している場合にだけ完全な円となるものであり、読取ヘッドとスケールとの離間距離が正確にセットアップされていない場合には、リサージュ図形36の半径が小さくなり、読取ヘッドがスケールに対して誤整列したり、またはスケールからの離間距離の調整が誤ったりする場合には、リサージュ図形のくずれが生ずるものであ[る]」としている。
b(a) ここで、引用発明の「読取ヘッドとスケールとの離間距離」は、「スケール12に沿っ[た]」方向とは異なる方向に沿った距離であることは明らかであるから、本願発明の「第1の自由度以外の少なくとも1つの自由度における前記スケールと前記スケール信号レシーバとの前記相対的な位置関係」に相当する。
(b) そして、引用発明においては、「読取ヘッドとスケールとの離間距離が正確にセットアップ」されているか否かを診断しており、「スケール12に沿っ[た]」方向とは異なる方向において、所望の相対的配置にあるか否かを診断しているといえる。
(c) また、引用発明においては、「読取ヘッドとスケールとの離間距離が正確にセットアップ」されているか否かを「リサージュ図形」の大きさに基づいて診断しているから、前記(ア)の「診断情報」に係る解釈を踏まえると、引用発明の「リサージュ図形」の大きさは、本願発明の「第1の自由度以外の少なくとも1つの自由度における前記スケールと前記スケール信号レシーバとの前記相対的な位置関係に依存し、およびしたがってそれを示[す]」「診断情報」に相当する。
(ウ) 引用発明の「センサ15からのクアドラチュアの2つの正弦波状の出力」は、本願発明の「当該読み取りヘッドによって検出されたスケール信号」に相当するところ、引用発明においては、「ライン16,18から到来する正弦波および余弦波信号を受信する」「比較器56,58の出力端子をワイヤード・オアの形態に接続して、正弦波および余弦波信号の双方が正方形48によって規定される領域内に入る場合にだけセットアップ回路52から高レベルの出力を発生させるように」しているから、「センサ15からのクアドラチュアの2つの正弦波状の出力」から得られる「リサージュ図形」の大きさを「セットアップ回路52」が測定して出力しているといえる。
(エ) 前記(ア)~(ウ)の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点a及びbの点において共通する。
a 「当該エンコーダは、当該読み取りヘッドによって検出されたスケール信号に関する診断情報を測定して出力するように構成されて[いる]」点
b 「前記診断情報は、前記第1の自由度以外の少なくとも1つの自由度における前記スケールと前記スケール信号レシーバとの前記相対的な位置関係に依存し、およびしたがってそれを示すものである」という点
エ(ア) 引用発明の「相対的可動部11」は、本願発明の「前記機械の第1および第2の可動部分の1つ」に相当する。
(イ) 引用発明の「読取ヘッド」の「ハウジング10」は、「相対的可動部11に固着」されているところ、「ハウジング10」には、「相対的可動部11に固着」するための部材が設けられていることは明らかであるから、引用発明における「ハウジング10」に設けられた「相対的可動部11に固着」するための部材は、読取ヘッドを相対的可動部11に取り付けるための取り付け部材であるといえる。
(ウ) よって、本願発明と引用発明は、「前記読み取りヘッドは、前記読み取りヘッドを前記機械の第1および第2の可動部分の1つに取り付けるための取り付け部材を備える」点において共通する。
オ(ア) 引用発明においては、「ウィンドウ比較器56,58の合成出力は、バッファ60を介して読取ヘッドのハウジングに設けた2色に発光するダイオード(LED)62の形態の可視表示器に供給され」、「仮想リサージュ図形36が正方形48の外側にある期間中は緑色光を放ち、リサージュ図形が正方形48の中にある場合には赤色光を放つことになり」、「読取ヘッドのセットアップ操作においては、読取ヘッドを据え付ける人は、その読取ヘッドに設けてあるLED62を見ながら読取ヘッドをスケールに沿って単に横送りすると、最初はたぶん仮想リサージュが円51で示すように正方形48内に完全に入っていることを示す赤色光に発光することになり、読取ヘッドをスケールに対して離間させて整列させて、スケールに沿う読取ヘッドの横送りを繰り返し、スケールに対する読取ヘッドのセットアップが改善されると、LEDはこれが或る時間は赤色光に発光し、或りの時間には緑色光を発光したりするために赤でなく黄色に見えるようになり」、「スケールに対する読取ヘッドのセットアップをさらに調整すると、LEDが完全な緑色光を放つようになり、これはリサージュ図形が36で示すように正方形48の外に完全に位置し、従ってセットアップが満足のいくものであることを示す」ものである。
(イ) 前記(ア)を踏まえると、引用発明の「読取ヘッドのセットアップ操作」においては、「読取ヘッドに設けてあるLED62」が、「仮想リサージュ図形36が正方形48の外側にある期間中は緑色光を放ち、リサージュ図形が正方形48の中にある場合には赤色光を放つことになり」、「読取ヘッドとスケールとの離間距離が正確にセットアップ」されているか否かを診断するための「リサージュ図形」の大きさを「LED62」の発光に対応する光信号の形で出力しているといえる。
(ウ) そして、「読取ヘッドを据え付ける人は、その読取ヘッドに設けてあるLED62を見ながら」、「読取ヘッドのセットアップ操作」を行うから、引用発明の「LED62」は、本願発明の「前記診断情報を光信号の形で出力するため」の「少なくとも1つの視覚出力装置」に相当する。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、「エンコーダは、前記診断情報を光信号の形で出力するために、少なくとも1つの視覚出力装置を備える」という点において共通する。
2 一致点及び相違点
前記1の対比分析の結果を総合すると、本願発明と引用発明は、次の一致点において一致し、後述の相違点において相違する。
(1) 一致点
「機械の第1および第2の部分の相対的な変位を測定するべく、機械に取り付けるエンコーダであって、
スケール、
スケール信号レシーバを備えている読み取りヘッド、を備え、
当該エンコーダは、当該読み取りヘッドによって検出されたスケール信号に関する診断情報を測定して出力するように構成されており、
前記エンコーダは、第1の自由度で前記スケールと前記スケール信号レシーバの相対位置を測定するように構成され、前記診断情報は、前記第1の自由度以外の少なくとも1つの自由度における前記スケールと前記スケール信号レシーバとの前記相対的な位置関係に依存し、およびしたがってそれを示し、
前記読み取りヘッドは、前記読み取りヘッドを前記機械の第1および第2の可動部分の1つに取り付けるための取り付け部材を備え、前記エンコーダは、前記診断情報を光信号の形で出力するために、少なくとも1つの視覚出力装置を備える、エンコーダ」である点。
(2) 相違点
本願発明は、「密封エンコーダモジュール」の発明であって、「エンコーダ」が、「機械に取り付けるための密封エンコーダモジュール」として構成されており、「少なくとも当該スケールと前記スケール信号レシーバとをカプセル化する保護ハウジング」を備えており、「取り付け部材」が、「保護ハウジングの外部の取り付けブロック」であり、「視覚出力装置」が、「前記取り付けブロックまたは前記保護ハウジングに提供される」のに対して、
引用発明は、「密封エンコーダモジュール」の発明ではなく、エンコーダ(スケール12と読取ヘッドの相対位置を検出するもの)は、「読取ヘッドのハウジング10」を備え、「読取ヘッドのハウジング10」に「LED62」が設けられているものの、「スケール12」と「センサ15」とをカプセル化する保護ハウジングに相当する構成を有しておらず、「取り付け部材」が、「保護ハウジングの外部の取り付けブロック」ではなく、「LED62」が設けられる箇所が、「前記取り付けブロックまたは前記保護ハウジング」であるとはいえない点。
第6 判断
1 相違点に係る構成の想到容易性について
(1) 「密封エンコーダモジュール」及び「保護ハウジング」について
ア 前記第4の2(3)において認定したとおり、「工作機械の可動部の相対変位を測定するエンコーダにおいて、スケール部とセンサ部とを外部環境から保護するために、スケール部とセンサ部とを収容する密封部材を備えること」は、周知技術である(前記周知技術1を参照)。
イ ここで、引用発明においては、「スケールおよび読取ヘッドを長期にわたり使用したことにより、セットアップがやがてドリフトを生ずる場合に、リサージュ図形の一部が再度正方形48内に落ちてしまい、LED62が緑色でなく、再び黄色に発光してしまうようなことがあり、その最もありがちな原因は、スケールがよく用いられて汚れたために、ライン16および18に現われる正弦波および余弦波信号の振幅が低くなることに起因しており、LED62の色をモニタすることによって、ライン32の誤差信号により指示されることになる実際の問題が生ずる前に、スケールをきれいにするようなメインテナンスを必要とする旨の早期警告を機械のユーザに与えるようにする」としているから、引用発明は、スケール及び読取ヘッドの長期使用に伴ってスケールが汚れてしまうという自明の課題が存在することを前提としている。
ウ よって、前記イに示した、スケール及び読取ヘッドの長期使用に伴ってスケールが汚れてしまうという自明の課題を解決するために、引用発明において、前記周知技術1を適用する契機はあるというべきであり、スケール12とセンサ15を外部環境から保護するために、「読取ヘッドのハウジング10」に代えて、スケール12とセンサ15を収容する密封部材を備えるようにすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
エ そして、かかる密封部材を、少なくともスケール12とセンサ15とを「カプセル化する保護ハウジング」として構成することや、エンコーダ(スケール12と読取ヘッドの相対位置を検出するもの)を「機械に取り付けるための密封エンコーダモジュール」として構成することは、当業者にとって適宜なし得た設計事項にすぎない。
(2) 「保護ハウジングの外部の取り付けブロック」について
ア 引用文献3には、「ハウジング外装部1a」が「スケール6およびセンサユニット5を覆って外部環境から保護」し、「センサユニット5は、支持基材となるベッド4上に載置され、ねじ42により固定されており、このベッド4下部には進行方向投影面が肉薄になるフット41が下方に向かって植設されていて、スキャニングヘッド3と結合しており、スキャニングヘッド3には止め孔31が形成されていて、測定対象となる装置の可動部200に固定できるようになっており」、「ハウジング外装部1a下部は、前記フット41が摺動するための開口部1dが形成されており、この開口部1dにおける気密性を確保するために、シール材固定部8a,8bにより固定される一対のシールリップが配置されており」、「フット41が存在する部分ではシールリップ先端部がフット41周囲に密着して気密性を保てるようになっている」ことが開示されている(前記第4の2(4)において認定した引用文献3技術事項を参照)。
イ ここで、引用文献3技術事項において、「ハウジング外装部1a下部」の「開口部1d」の「フット41が存在する部分ではシールリップ先端部がフット41周囲に密着して気密性を保てるようになっている」から、「フット41」に「結合」した「スキャニングヘッド3」は、気密性を保つ対象にはなっておらず、「ハウジング外装部1a」の外部にあることは明らかである。
そして、「スキャニングヘッド3」は、「測定対象となる装置の可動部200に固定できるようになって」いるから、「センサユニット5」を「可動部200」に取り付けるための「ハウジング外装部1a」の外部の取り付けブロックであるといえる。
ウ 前記(1)イにおいて説示したとおり、引用発明は、スケール及び読取ヘッドの長期使用に伴ってスケールが汚れてしまうという自明の課題が存在することを前提としているから、かかる自明の課題を解決するために、引用発明において引用文献3技術事項を適用する契機はあるというべきであり、引用発明において、読取ヘッドを相対的可動部11に取り付けるための取り付け部材として、「保護ハウジングの外部の取り付けブロック」として構成することは、当業者にとって自明な設計変更にすぎない。
(3) 「視覚出力装置」が「取り付けブロックまたは保護ハウジングに提供される」ことについて
ア 引用発明においては、「読取ヘッドを据え付ける人は、その読取ヘッドに設けてあるLED62を見ながら」「読取ヘッドのセットアップ操作」を行っているから、「LED62」は、「読取ヘッドを据え付ける人」が「セットアップ操作」を行うに際して、その発光色を見ることができる位置に設けられるべきであることは当然である。
イ 引用発明の「読取ヘッドのハウジング10」の代わりに、「スケール12」と「センサ15」とを収容する密封部材を備えるようにし、読取ヘッドを相対的可動部11に取り付けるための取り付け部材を「保護ハウジングの外部の取り付けブロック」として構成した場合には、「LED62」の発光色を目視で確認できる位置としては、当該密封部材又は当該取り付けブロックのいずれかが考えられるから、「視覚出力装置」が「前記取り付けブロックまたは前記保護ハウジングに提供される」ようにすることは、当業者にとって自明な選択肢を規定したにすぎない。
2 総合評価
前記1において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記1の(1)から(3)までに検討した部分的相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び引用文献3技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
3 請求人の主張について
(1) 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
ア 請求人の主張1
引用文献1の可視表示器の機能はスケールパターンの検知であるのに対し、引用文献3のスキャニングヘッド3の機能はスケールパターンから得られた診断情報の出力であり、それらの機能は真逆である。
したがって、引用文献3のハウジングがスキャニングヘッド3を備える構成から、真逆の機能を有する引用文献1の可視表示器をハウジングに対して適用することは容易に想到するとはいえず、引用文献1及び3から当業者が本願発明に容易に想到し得るものではない。
イ 請求人の主張2
引用文献1-3のいずれも、本願発明で要求される、診断情報を光信号の形で出力するために、取り付けブロック又は保護ハウジングに提供される、少なくとも1つの視覚出力装置を備えることについては示唆ないし教示もなく、引用文献1-3に記載された発明を組み合わせたとしても、当業者が容易に本願発明に想到し得るものではない。
(2) 請求人の主張に対する当審の判断
ア 請求人の主張1に対する当審の判断
前記1(2)イにおいて説示したとおり、引用文献3の「スキャニングヘッド3」については、「センサユニット5」を「可動部200」に取り付けるための「ハウジング外装部1a」の外部の取り付けブロックであるとしたのであって、このことは、引用文献1の可視表示器の機能がスケールパターンの検知であることと何ら矛盾は生じないから、請求人の主張1は、前記2において示した判断を左右するものではない。
イ 請求人の主張2に対する当審の判断
前記1(3)イにおいて説示したとおり、引用発明の「読取ヘッドのハウジング10」の代わりに、「スケール12」と「センサ15」とを収容する密封部材を備えるようにし、読取ヘッドを相対的可動部11に取り付けるための取り付け部材を「保護ハウジングの外部の取り付けブロック」として構成した場合には、「LED62」の発光色を目視で確認できる位置としては、当該密封部材又は当該取り付けブロックのいずれかが考えられるから、「視覚出力装置」が「前記取り付けブロックまたは前記保護ハウジングに提供される」ことは、当業者にとって自明な選択肢を規定したにすぎない。
よって、請求人の主張2は採用できない。
第7 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術1及び引用文献3技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-012833