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特許拒絶査定不服審判

2022-012453

電磁放射線を反射する構造体、電磁放射線を反射する構造体を備えた衣類、このような電磁放射線を反射する構造体の使用法並びにユーザを検出するためのシステム

審判番号
2022-012453
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-534977外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月09日
審決日
2024年01月17日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (G01S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-534977「電磁放射線を反射する構造体、電磁放射線を反射する構造体を備えた衣類、このような電磁放射線を反射する構造体の使用法並びにユーザを検出するためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月18日国際公開、WO2019/137779、令和3年4月15日国内公表、特表2021-510197〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成30年12月20日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張2018年1月10日、ドイツ)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和2年 8月18日 :翻訳文の提出
令和3年 6月18日付け:拒絶理由通知書
同年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 4月14日付け:拒絶査定

(同月19日 :原査定の謄本の送達)

同年 8月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出

同年10月 6日 :前置報告書

令和5年 5月31日付け:拒絶理由通知書
同年11月28日 :意見書、手続補正書の提出

なお、令和5年5月31日付けで当審において通知した拒絶理由を、以下「当審拒絶理由」といい、これに対して、同年11月28日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。

第2 本願発明

本願の請求項1~14に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」などという。また、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和5年11月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ユーザのボディの一箇所に取り付けられた、電磁放射線を反射する構造体(120)であって、前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの前記箇所における前記構造体(120)の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大されるようになっている形式のものにおいて、
前記電磁放射線を反射する構造体(120)の材料が、次のいずれかの特徴を有する電磁放射線を反射する構造体(120)、
- 100S/mを下回る導電率、100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率
続きを表示(全34行)
- 100S/mを下回る導電率、1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の表面が1000mm2より大きい。
【請求項2】
前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、80%から100%までの間の面充填率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の表面が2000mm2より大きいことを特徴とする、請求項1記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項3】
前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、40%から80%までの間の面充填率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の表面が4000mm2よりも大きいことを特徴とする、請求項1記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項4】
前記電磁放射線を反射する構造体(120)が100%より小さい面充填率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の導電性部分間の最小間隔が、1.95mmよりも小さいことを特徴とする、請求項1記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項5】
前記電磁放射線を反射する構造体(120)のレーダ断面積が1dBm2よりも大きいかまたは1dBm2と同じであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項6】
前記電磁放射線を反射する構造体(120)が取り付けられている、ユーザのボディの箇所が腕または足であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項7】
前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、打ち抜き成形、流し込み成形、刺繍および/またはプリントされていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項8】
前記電磁放射線を反射する構造体(120)が製織品(113)に取り付けられているか、若しくは製織品(113)の中に組み込まれていること、または前記電磁放射線を反射する構造体(120)が製織品(113)であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項9】
前記製織品が、綿、プラスチックおよび/または金属を有していることを特徴とする、請求項8記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項10】
前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、さらに、信号を反射するために構成され、かつ取り付けられたトランスポンダを有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項11】
前記トランスポンダが、RFIDラベルとしてまたはRFIDタグとして構成されていることを特徴とする、請求項10記載の電磁放射線を反射する構造体(120)。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の電磁放射線を反射する構造体(120)を有する衣類(100)。
【請求項13】
ユーザのボディの一箇所における電磁放射線を反射する構造体(120)の使用法であって、前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの前記箇所における前記構造体(120)の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大される使用法において、
前記電磁放射線を反射する構造体(120)の材料が、次のいずれかの特徴を有する使用法、
- 100S/mを下回る導電率、100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率、
- 100S/mを下回る導電率、1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の表面が1000mm2より大きい。
【請求項14】
通常の運動を行うユーザを検出するためのシステムであって、前記システムが、レーダ信号を送受信するためのレーダ送受信機を有しており、前記レーダ送受信機は、該レーダ送受信機が、電磁放射線を反射する構造体によって反射されたレーダ信号内でマイクロドップラー成分の変化を検出できるように構成されかつ取り付けられており、前記電磁放射線を反射する構造体が、請求項1から11までのいずれか1項記載の電磁放射線を反射する構造体である、ユーザを検出するためのシステム。」

第3 当審拒絶理由

当審拒絶理由のうち、理由1(実施可能要件)の概略は、次のとおりである。

この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

記

1 理由1(実施可能要件)について

(1)ア 請求項1に係る発明では、次の事項が特定されている(以下、「特定事項A」という。)。

「前記電磁放射線を反射する構造体(120)の材料が、次のいずれかの特徴を有する電磁放射線を反射する構造体(120)、
- 100S/mを下回る導電率、100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率
- 100S/mを下回る導電率、1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の表面が1000mm2より大きい。」

しかし、発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識を参酌しても、前記特定事項Aによる材料を特定することは、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を必要とするものであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

イ すなわち、本願の発明の詳細な説明において、電磁放射線を反射する構造体の材料として具体的に示されるものは、実施例において、

「図1は、手102の近くの腕につけられる衣類100を示す。衣類100は袖110を有している。第1の領域112で、袖は、従来技術で公知であるように、一般的な製織品または一般的な布地130を有している。第2の領域114で、袖は、ワイヤメッシュの形の電磁放射線を反射する構造体120を有している。この場合、ワイヤメッシュは一般的な布地の中に組み込まれている。第2の領域114は、第1の領域112よりも、袖110の端部の近くにある。ワイヤは0.2mmの直径を有していて、互いに波長の半分の間隔を保っている。レーダ断面積は5dBm2である。ワイヤ122の材料は、6.3・107S/mの導電率を有する銅である。選択的にシルバーまたはその他の非常に良好な導体が使用されてよい。」(【0066】)

と記載されるのみである。この銅やシルバーは、発明の詳細な説明の段落【0023】~【0024】に

「【0023】
電磁放射線を反射する構造体の材料が100S/mより大きい導電率を有している場合、相対誘電率および相対透磁率は自由に選択されてよい。何故ならば、導電率は、相対誘電率および相対透磁率に対して反射率を支配するからである。
【0024】
これは、電磁放射線を反射する構造体の反射材料が良好な導電率を有している場合である。この場合、この材料は好適には銅またはシルバーである。」

と記載される材料に対応するもので、100S/mより大きい導電率を有するものであり、「100S/mを下回る導電率」を有することを特定する前記特定事項Aに該当する材料ではない。

ウ 前記特定事項Aに関しては、発明の詳細な説明の段落【0025】~【0028】に

「【0025】
電磁放射線を反射する構造体の材料が、100S/mより小さい導電率を有している場合、つまり導電率が小さい場合、材料の反射率は、導電率に対して誘電率および/または透磁率によって支配される。この場合、電磁放射線を反射する構造体の材料はペーストまたはインクであれば、好適である。
【0026】
導電率が100S/mより小さい場合のために、2つのケースが区別される:相対透磁率が100から105までの間にある場合、相対誘電率は1から14までの間である。
【0027】
相対透磁率が1から100までの間にある場合、相対誘電率は7から14までの間である。
【0028】
電磁放射線を反射する構造体の表面は1000mm2より大きい。」

と記載されるのみであり、ここに記載されるような材料が具体的にどのようなものであるかの記載は無い。

エ ここで、請求項1に係る発明は、物の発明であるところ、物の発明について実施することができるとは、その物を作れるように記載されていることが必要であり、その物を作るための材料などを具体的に特定する必要がある。

しかし、前記発明の詳細な説明の段落【0025】~【0028】の記載から、その材料などが具体的にどのようなものかを特定することはできない。

「導電率が100S/mより小さい」との記載から、その材料は、金属などの良導体ではなく、絶縁体であることが考えられるが、そのような材料として、さらに前記特定事項Aに記載されるような相対透磁率及び相対誘電率の条件を満足するような材料がどのようなものであるか、技術常識を踏まえても特定することができない。

仮に、前記特定事項Aを満足するような材料が特定できたとしても、本願発明は、「ユーザのボディの一箇所に取り付けられた、電磁放射線を反射する構造体(120)であって、前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの前記箇所における前記構造体(120)の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大されるようになっている形式のもの」であるところ、前記特定事項Aを満足するような材料による構造体全てが「ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの前記箇所における前記構造体(120)の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大されるようになっている形式」のものとなることが技術常識であるとまではいえない。

(2) 審判請求人は、審判請求書において、「本願発明者は、構造体の導電率が所定値より低い場合であっても、構造体の相対透磁率と相対誘電率との関係によって、周波数に依存しない光学的な範囲においてマイクロドップラー効果がより大きくなる場合を導き出しております(明細書段落0019―0022等)。つまり、本願発明者は、所定の導電率を下回る場合であっても相対透磁率が所定以上であれば所定の電磁放射線反射率を達成できること、また所定の導電率を下回りかつ相対透磁率が所定以下であっても、相対誘電率と構造体の表面積を特定することによって所定の電磁放射線反射率を達成できることを自然法則を利用して発明しております。」と主張する。

しかしながら、当該記載を参照しても、前記特定事項Aを満足するような材料などがどのようなものであるかが特定できるものではない。

(3) そうすると、本願の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明の物を作るために、当業者に期待しうる程度を超えた試行錯誤を要するものである。

上記のことは、請求項1に係る発明と同様の限定を有する請求項2~14に係る発明にも該当する。

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

第4 意見書における請求人の主張

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請求人は、当審拒絶理由の理由1に対して、意見書において、以下の主張をしている。

導電率が100S/mである材料として、以下の具体例を提出します(提出物件1参照)。3ページ目の抵抗率0.1mOhm・cmを導電率に変換すると100S/mとなります。

これより導電率を上げる場合には、明細書中に記載されているシルバーや銅を混ぜることにより、またこれより導電率を下げる場合には、パウダー状のセラミックやポリマー剤などを混ぜることにより使用が可能となります。ただしここで紹介する材料は段落0025記載のペーストの一例であり、本願発明がこの材料の活用時にのみ限定されるものではありません。

また、相対誘電率が請求項1記載の範囲にある材料の例として、資料を提出します(提出物件2)。

多くのプラスティックが請求項1の範囲にあることが理解できると思われます。

また材料を混合する際のルールとして、誘電率の等方性媒質(em)、体積分率(vm)、等を考慮する必要がありますが、技術論文において、具体的な方法はすでに多く発表されております(提出物件3)。

相対透磁率においても同様のプロセスを考慮した上で、所定範囲の相対透磁率を有する構造体を作成し評価することは可能であります。

相対投透磁率が請求項1記載の範囲にある材料の例として、資料を提出します(提出物件4)。

第5 当合議体の判断

1 本願発明1から本願発明14に共通する技術事項

(1) 他の請求項を引用しない、いわゆる、独立形式の請求項に対応する本願発明1及び本願発明13は、それぞれ、次のア及びイに示す技術事項を発明特定事項としている。

ア 本願発明1

(ア) 「前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの前記箇所における前記構造体(120)の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大されるようになっている形式のもの」

(イ) 「前記電磁放射線を反射する構造体(120)の材料が、次のいずれかの特徴を有する電磁放射線を反射する構造体(120)、
- 100S/mを下回る導電率、100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率
- 100S/mを下回る導電率、1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の表面が1000mm2より大きい。」

イ 本願発明13

(ア) 「前記電磁放射線を反射する構造体(120)が、ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの前記箇所における前記構造体(120)の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大される使用法」

(イ) 「前記電磁放射線を反射する構造体(120)の材料が、次のいずれかの特徴を有する使用法、
- 100S/mを下回る導電率、100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率、
- 100S/mを下回る導電率、1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の表面が1000mm2より大きい。」

(2) そして、本願の請求項2~12及び14は、いずれも本願の請求項1の記載を、直接又は間接的に引用している。

(3) したがって、本願発明1~14はいずれも次の技術事項ア及びイを備えるものである。

技術事項ア:「電磁放射線を反射する構造体(120)が、ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの前記箇所における前記構造体(120)の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大されるものであること。」
技術事項イ:「電磁放射線を反射する構造体(120)の材料が、次のいずれかの特徴を有すること。

- 100S/mを下回る導電率、100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率

- 100S/mを下回る導電率、1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率を有しており、前記電磁放射線を反射する構造体(120)の表面が1000mm2より大きい。」

(4) 以下、上記(3)の点について、検討する。

2 発明の詳細な説明に記載された事項

本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体によるものである。

(1) 【0001】

「【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射線を反射する構造体、このような電磁放射線を反射する構造体を備えた衣類、電磁放射線を反射する構造体の使用法、並びにユーザを検出するためのシステムに関する。」

(2) 【0002】~【0009】

「【背景技術】
【0002】
最近では、自動車レーダまたはオートモービルレーダとも呼ばれる自動車用のレーダが装備された乗用車が広く普及している。オートモービルレーダは、車両から見た、他の車両、障害物または他の物体に対するそれぞれの間隔および方向を測定する。さらに、オートモービルレーダは、車線変更時または制動時に事故を避けるために運転者を支援する。また、オートモービルレーダは、危険時に運転者に警告を発するために、または、自動車に取り付けられた、例えば安全ベルト若しくはエアバッグ等の機器若しくはシステムを制御するために使用される。
【0003】
続きを表示(全17行)
ヨーロッパ新車評価プログラム(英語:European New Car Assessment Programme、 Euro NCAP)は、様々な自動車型式によるクラッシュテストを実施し、装備された安全システムの安全性を評価する、ヨーロッパの交通局、オートモービルクラブおよび保険協会の団体である。
【0004】
この場合、1つの側面は、事故の際に歩行者をより適切に保護しようとする歩行者保護である。この場合、フロント部分が歩行者にとってどの程度の怪我の危険性を成すかが評価される。ここでは、どのようにして歩行者がより効果的な保護を得ることができるかの様々な試みがなされる。
【0005】
一方では、これは、例えば事故の際に自動的に数センチメートル持ち上がり、それによってより多くの変形スペースを提供するボンネットである。その他の技術は、例えば衝突の際に歩行者に向かって作動し外方に開く、フロント領域用のエアバッグである。最近では、歩行者検知のための非常ブレーキアシストの評価のためのテストも存在する。
【0006】
衝突時における歩行者の怪我の程度に重要な影響を及ぼす1つの要因は、衝突の時点での車両速度である。ますます多くの車両製造業者が、歩行者との衝突の前に車両の速度を著しく減速させるかまたは最良のケースでは車両を停止させるようにするシステムを提供している。
【0007】
歩行者検知のための前記非常ブレーキアシストは、カメラシステムによってまたはレーダシステムによって実現され得る。最近では、自動車レーダシステムはいっそう高性能になっている。レーダによる歩行者検知は、目下の研究対象である。この場合、大きな問題は、動くユーザを動かない対象物と区別することである。動かない対象物とは異なり、歩行者または自転車に乗る人によって反射されたレーダ周波数スペクトルは、腕および手の動きに由来する、時間に関係する独特なドップラー偏移を有している。これに関連する効果はマイクロドップラー効果と呼ばれ、これに関連する、相応の相対的な周波数分布の構成は、マイクロドップラーシグネチャまたはマイクロドップラー成分と呼ばれる。
【0008】
レーダで検知可能な、より大きい対象物の構造体の機械的な振動または回転は、微細動作と呼ばれる。
【0009】
レーダ機器が電磁信号をターゲットまたは対象物に送信すると、信号はターゲットと相互に影響し合い、レーダ機器に戻ってくる。戻ってきた信号の特性変化は、ターゲットの特性を反映する。ターゲットが動くと、反射された信号の周波数はドップラー効果に基づいて偏移せしめられる。このようなドップラー周波数偏移は、移動するターゲットの半径方向速度を決定するために利用され得る。ターゲットまたはターゲットのなんらかの構造体が、ターゲットの並進運動に対して追加的に半径方向で振動するかまたは回転すると、戻ってきた信号の周波数変調を生ぜしめ、この周波数変調が、ターゲットのドップラー周波数を中心として側波帯を生ぜしめる。この変調が、マイクロドップラー効果と呼ばれる。マイクロドップラー効果は、振動または回転する構造体とターゲット体との間の相互作用の特徴とみなされてよい。」

(3) 【0010】~【0052】

「【発明の概要】
【0010】
電磁放射線を反射する構造体は、この構造体に当たる電磁放射線を反射して、ユーザのレーダ断面積を増大する。ユーザとは、ここでは人間または動物、特に道路使用者、例えば歩行者、自転車に乗る人または道路に関与する動物等のことであると解釈されてよい。道路とは、道路交通、鉄道輸送、ロジスティック輸送(自動化された搬送システム)または水上輸送および航空運輸であると解釈されてよい。ユーザとは、このような電磁放射線を反射する構造体を使用できる物体または対象物、例えば完成されたドローンおよびロボットであると解釈されてもよい。
【0011】
続きを表示(全94行)
ユーザのレーダ断面積を増大するために、電磁放射線を反射する構造体をユーザのボディに取り付ける必要がある。レーダ断面積を増大することによって、好適な形式で、ユーザはレーダでより容易に検知され得る。
【0012】
レーダ断面積は一般的に多くの要因に依存している。レーダ断面積の分析的な決定は、単純なボディにおいてのみ可能である。レーダ断面積は、ボディ形状および波長に対するボディの構造寸法の比に依存する。対象物のレーダ断面積は、観察された対象物と同じ強さの反射を生ぜしめる、完全に反射する球の横断面として規定されている。寸法が波長よりも少なくとも10倍大きい対象物の場合、レーダ断面積は周波数に依存しない。相応の範囲が、周波数に依存しない光学的な範囲と呼ばれる。本発明はこの範囲内で展開する。
【0013】
レーダ断面積の単位は平方メートルである。レーダ断面積の典型的な値は、昆虫用の10-5m2から大きい船舶用の106m2までの間である。次にセンチメートル波レーダ用の典型的な値を列挙する:昆虫:0.00001m2、鳥:0.01m2、迷彩技術が施された飛行機:<0.1m2、対空ミサイル:≒0.1m2、人間:1m2、小型戦闘機:2~3m2、大型戦闘機:5~6m2、貨物輸送機:100m2まで、1.5mのエッジ長さを有するコーナリフレクタ:≒20000m、沿岸用動力船(55m長さ):300~4000m2、フリゲート艦(103m長さ):5000~100000m2、コンテナ船(212m長さ):10000~80000m2である。
【0014】
レーダ断面積のこのような大きいスパンに基づいて、しばしば、基準値σref=1m2を有する対数目盛が使用される。この場合、次の式が当てはまる:
【数1】
[図:0001411703000001.jpg]
【0015】
従って、1m2のレーダ断面積に0dBsm=0dBm2の対数目盛の値が相当し、0.01m2のレーダ断面積に-20dBm2の対数目盛の値が相当する。4cmの直径を有する球は例えば1.54dBm2のレーダ断面積を有している。
【0016】
レーダとは、特に自動車に取り付けられたレーダ機器のことであると解釈されてよい。しかしながらここでは、レーダの概念とは、他のすべてのレーダシステム、例えば鉄道輸送に使用されたレーダシステムのことであると解釈されてもよい。
【0017】
電磁放射線を反射する構造体は、ユーザのボディの一箇所に取り付けられており、この場合、ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの箇所における構造体の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大されるようになっている。既に上記で説明したように、これは、強く、つまりレーダ機器に対して相対的に大きい振幅で移動するボディの箇所である。このような特徴によって好適な形式で、電磁放射線を反射する構造体のマイクロドップラー効果が特に大きくなり、それにより、電磁放射線を反射する構造体がボディに取り付けられているユーザが、レーダで容易に検知され得るようになる。
【0018】
電磁放射線を反射する構造体の反射率は、所定の値より大きくなければならない。この所定の値は小さすぎてはならない。電磁放射線を反射する構造体は反射率を有しているべきであるので、電磁放射線を反射する構造体はレーダで良好に検知され得る。これは特に、電磁放射線を反射する構造体のレーダ断面積が、道路使用者のレーダ断面積または道路交通内で移動する対象物例えば自動車のレーダ断面積よりも大きい場合である。しかしながらこれはまた、電磁放射線を反射する構造体が、他の道路使用者または道路交通内で移動する他の対象物よりも大きいマイクロドップラー効果を有している場合でもある。
【0019】
平面としての境界面にぶつかる平らな電磁波の反射率は、フレネルの方程式から得られるか、または材料特性に基づいて境界面に反射された電磁波と入射した電磁波との間の関係を提供する式から得られる。境界面における第1の材料は、εr1=εrges1=1の相対誘電率、μr1=1の透磁率、およびκ1=0の導電率を有する空気である。境界面における第2の材料は、相対誘電率εr2>1、透磁率μr2≧1、およびκ2≧0Sの導電率を有している。複素相対全誘電率εrges2は、次の式から得られる。
【数2】
[図:0001411703000002.jpg]
この式中、ω=2πfは角振動数、fはレーダの周波数、ε0は真空の誘電率である。
【0020】
従って、フレネルの方程式の反射率のための複雑な式は次のように単純化される。
【数3】
[図:0001411703000003.jpg]
【0021】
反射係数は、反射された電界ベクトルと入射した電界ベクトルとの比と同じである。この場合、偏光が入射および出射平面に対して平行であれば、RPが反射率であり、偏光が入射および出射平面に対して直角であれば、RSが反射率である。
【0022】
このことから、反射率は、レーダの偏光平面および、この偏光平面内で反射された形の状態に依存することが分かる。上記の例としての幾何学形状のうちの1つのレーダ後方散乱断面は、一般的に、正確な材料特性による数値的なシミュレーションまたは測定によってのみ行うことができる。
【0023】
電磁放射線を反射する構造体の材料が100S/mより大きい導電率を有している場合、相対誘電率および相対透磁率は自由に選択されてよい。何故ならば、導電率は、相対誘電率および相対透磁率に対して反射率を支配するからである。
【0024】
これは、電磁放射線を反射する構造体の反射材料が良好な導電率を有している場合である。この場合、この材料は好適には銅またはシルバーである。
【0025】
電磁放射線を反射する構造体の材料が、100S/mより小さい導電率を有している場合、つまり導電率が小さい場合、材料の反射率は、導電率に対して誘電率および/または透磁率によって支配される。この場合、電磁放射線を反射する構造体の材料はペーストまたはインクであれば、好適である。
【0026】
導電率が100S/mより小さい場合のために、2つのケースが区別される:相対透磁率が100から105までの間にある場合、相対誘電率は1から14までの間である。
【0027】
相対透磁率が1から100までの間にある場合、相対誘電率は7から14までの間である。
【0028】
電磁放射線を反射する構造体の表面は1000mm2より大きい。
【0029】
好適な実施例によれば、電磁放射線を反射する構造体が、80%から100%までの間の面充填率を有しており、電磁放射線を反射する構造体の表面が2000mm2より大きい。面充填率は、電磁放射線を反射する構造体の表面に対する、電磁放射線を反射する材料で満たされた構造体の表面の比として規定されている。好適には、電磁放射線を反射する構造体は、2次元の表面を有している。この場合、電磁放射線を反射する構造体の表面は、2次元の表面の2つの側面の一方の表面として規定されている。この特徴は、電磁放射線を反射する構造体のために、全表面を基準にして好適には百分率で僅かな材料を必要とするだけである、という利点を有している。
【0030】
80%乃至100%の面充填率を有する面において、材料特性を補正するために、1m2を超えるレーダ断面積を有する構造体のための面は上記材料組み合わせのうちの1つにより最大で倍増されなければならない。
【0031】
さらに好適な実施例によれば、電磁放射線を反射する構造体が、40%から80%までの間の面充填率を有しており、電磁放射線を反射する構造体の表面が4000mm2よりも大きい。この特徴は、電磁放射線を反射する構造体のための、全表面を基準にして百分率で僅かな材料を必要とするだけである、という利点を有している。
【0032】
概ね0%乃至80%の範囲内の面充填率の補正において、やはり1m2より多いレーダ断面積を得るために、面充填率をそれぞれ半分にするために面を倍増させる必要がある。
【0033】
さらに別の好適な実施例によれば、電磁放射線を反射する構造体が100%より小さい面充填率を有しており、電磁放射線を反射する構造体の導電性部分間の最小間隔が、1.95mmよりも小さい。この特徴は、著しく少ない材料を使用することができ、それにも拘わらず最大のまたは非常に高い反射率を得ることができる、という利点を有している。
【0034】
1.95mmの値は、76.5GHzの周波数のための使用されたレーダ放射線の半分の波長に相当する。これは物理的に、構造体が、波長の半分よりも小さい開口を有している場合に、電磁放射線が開口を通ることができず、従って反射される、というように解釈されてよい。
【0035】
好適な実施例によれば、電磁放射線を反射する構造体のレーダ断面積が0dBm2よりも大きいかまたは0dBm2と同じである。好適には、電磁放射線を反射する構造体のレーダ断面積は、0.5dBm2よりも大きいかまたは0.5dBm2と同じであり、特に好適には1dBm2よりも大きいかまたは1dBm2と同じである。ユーザのレーダ断面積は、通常は、時間的におよび角度位置に依存して大きく変動し、0.1から1dBm2までの間である。好適には、電磁放射線を反射する構造体のレーダ断面積は、ユーザの最大レーダ断面積よりも大きい。このような特徴によって、好適な形式で、電磁放射線を反射する構造体をボディに備えた当該ユーザのレーダ断面積は、少なくとも倍増されるようになり、これにより、当該ユーザはレーダでより簡単に、特により早期にかつ確実に検知され得る。
【0036】
レーダ断面積の増大は、少なくとも1つのマイクロドップラー成分の増大によって行われる。少なくとも1つのマイクロドップラー成分の増大によって、好適な形式で、道路交通内で通常の動きをするユーザがより簡単にレーダ信号で検知され得る。これは、マイクロドップラーシグネチャが増大されたからである。
【0037】
この場合、少なくとも1つのマイクロドップラーシグネチャは、特に他の対象物のマイクロドップラーシグネチャによって発生され得る相応の信号ベースよりも大きい。これによって、少なくとも1つのマイクロドップラーシグネチャは好適な形式で信号ベースと区別され得る。
【0038】
好適には、マイクロドップラー効果は、ユーザのボディにおける最大マイクロドップラー効果の70%よりも大きい。ユーザのボディにおける最大マイクロドップラー効果は、レーダ機器に対して相対的に見て最大振幅で動く箇所である。このような特徴によって、好適な形式で、マイクロドップラー成分は特に強く増大されるようになる。これはやはり、ユーザがレーダ信号でより簡単に分類され得る効果を有している。
【0039】
1実施例によれば、電気構造体が取り付けられた、ユーザのボディの箇所が腕または脚部である。好適には、この箇所は、手または足の近くである。道路交通内で通常の動きをするユーザは、通常は足の動きおよび/または腕の動きによる平均的な速度に対して比較的大きい速度差を有している。この場合、歩行者は、通常は自転車に乗る人よりも大きい腕の動きを有している。電磁放射線を反射する構造体を腕または足に取り付けることによって、好適な形式でマイクロドップラー効果が増大される。
【0040】
1実施例によれば、電磁放射線を反射する構造体は、少なくとも1つの次元に沿って周期的である。このことは、電磁放射線を反射する構造体が、反射されたレーダ信号でより良好に検知され得る、という利点を有している。何故ならば、周期的な構造のすべてのベースエレメントの、反射されかつ重畳された出力は、周期的でない構造におけるよりも大きいからである。特に好適には、電磁放射線を反射する構造体の周期は、レーダの平均的な自由空間波長の半分である。レーダの周波数は、好適には76から81GHzまでの間、特に好適には76から77GHzまでの間である。76.5GHzの周波数において、平均的な自由空間波長は3.9mmである。
【0041】
好適には、電磁放射線を反射する構造体は2つの次元に沿って周期的である。このことは、レーダ信号の検知可能性がさらに高くなるという利点を有している。この場合、電磁放射線を反射する構造体は、レーダ機器のそれぞれの空間方向から検出され得る。さらに、電磁放射線を反射する構造体は、すべての運動経過に亘って運動方向とは無関係に検出され得る。
【0042】
周期的な構造を有する、電磁放射線を反射する構造体は、好適には例えば周波数選択性表面であるかまたは、例えばDNG,AMC等の金属材料であってよい。周波数選択性表面(英語:frequency selective surface、FSS)とは、特に数GHzまでの無線周波数範囲内の電磁放射線を、周波数に応じて反射する面であると解釈される。この場合、FSSコーティングは、例えば同時にすべての送信器の受信を妨げることなしに、強い送信器による障害を抑制するために、個別の周波数をカットすることができる。同調可能なレーダは、例えばFSS反射パターンを用いて飛行物体を識別することができる。略語DNGは、NIMs(英語:negative-index metamaterials)としても公知である、二重否定メタマテリアル(英語:double negative metamaterials)である。DNGにおいては、誘電率もまた磁気的な透磁率も負であり、これは、例えば完璧なレンズまたは隠れ蓑のように、反直感的な結論を伴う負の屈折率を生ぜしめる。
【0043】
電磁放射線を反射する構造体は、一般的に3次元的である。好適には、電磁放射線を反射する構造体は2次元的である。この場合、トポロジー的な次元概念に基づいており、それによれば、球の表面は2次元である。従って、このような、2次元的な、電磁放射線を反射する構造体は、フラットまたは平らであってよいが、同様に袖の形を有していてよい。2次元的な、電磁放射線を反射する構造体は、この電磁放射線を反射する構造体が、製織品、布地若しくは衣類の中に良好に組み込まれるか、またはこれらに良好に固定され得る、という利点を有している。何故ならば、製織品、布地または衣類は、同様に2次元的だからである。
【0044】
好適には、電磁放射線を反射する構造体は、製織品または衣類の表面に、打ち抜き成形、流し込み成形、刺繍および/またはプリントされている。これらの製造法は、広く普及しているので、経済的に実施することができる。
【0045】
別の実施例によれば、電磁放射線を反射する構造体が、製織品に取り付けられているか、または製織品の中に組み込まれている。このことは、このような製織品が、一般的な製織品よりも良好にレーダで検知され得ると同時に、製織品の構造は殆ど変化しないか全く変化しない、という利点を有している。
【0046】
さらに別の実施例によれば、電磁放射線を反射する構造体が製織品である。このことは、製織品自体が電磁放射線を反射する、という利点を有している。この場合、電磁放射線を反射する構造体は、予め製織品または衣類の中に組み込まれる必要はなく、それ自体が既に製織品である。
【0047】
この場合、繊維または製織品の構成部分自体が電磁放射線を反射する構造体である。
【0048】
好適には、製織品は、布地または衣類の部分である。このことは、布地または衣類がレーダでより良好に検知され得ると同時に、布地または衣類をつけている人が、布地または衣類における変化に殆ど気づかないか気づいたとしても最小限だけである、という利点を有している。
【0049】
別の実施例によれば、製織品は、布地に若しくは布地の表面に、または衣類に若しくは衣類の表面に取り付けられているかまたは固定されている。これに関連する利点は既に上述されている。
【0050】
好適には、製織品または構造体は、綿、プラスチック、導電性のコーティングによって被覆されたプラスチックおよび/または金属を有している。この場合、綿、プラスチック、導電性のコーティングによって被覆されたプラスチックまたは金属は、好適には繊維またはワイヤとして構成されている。このような組み合わせによって、好適な形式で、電磁放射線を反射する構造体を有する製織品が製造され得る。
【0051】
別の実施例によれば、構造体または製織品が繊維を有しており、この場合、少なくとも1つの繊維が、プラスチック、導電性のコーティングによって被覆されたプラスチック、金属および/または綿より成るリストのうちの少なくとも2つの材料を有している。
【0052】
別の実施例によれば、電磁放射線を反射する構造体または製織品が、金属または導電性のコーティングによって被覆されたプラスチックを有している。これら2つの素材は、電磁放射線を反射する構造体の部分であってよい。」

(4) 【0065】~【0073】、【図4】

「【発明を実施するための形態】
【0065】
図面に記載された本発明の実施例を以下に詳しく説明する。
【0066】
続きを表示(全19行)
図1は、手102の近くの腕につけられる衣類100を示す。衣類100は袖110を有している。第1の領域112で、袖は、従来技術で公知であるように、一般的な製織品または一般的な布地130を有している。第2の領域114で、袖は、ワイヤメッシュの形の電磁放射線を反射する構造体120を有している。この場合、ワイヤメッシュは一般的な布地の中に組み込まれている。第2の領域114は、第1の領域112よりも、袖110の端部の近くにある。ワイヤは0.2mmの直径を有していて、互いに波長の半分の間隔を保っている。レーダ断面積は5dBm2である。ワイヤ122の材料は、6.3・107S/mの導電率を有する銅である。選択的にシルバーまたはその他の非常に良好な導体が使用されてよい。
【0067】
図2は、図1に示された衣類100と類似する衣類100を示す。衣類100は、やはり第1の領域112および第2の領域114を備えた袖110を有している。袖110の第2の領域114は、同様に電磁放射線を反射する構造体120を有しているが、この構造体120は、図1の実施例とは異なり、環状のワイヤ122を有しており、この環状のワイヤ122は相互に接触していない。ワイヤ122は0.5mmの幅を有していて、これは符号123で示されており、ワイヤ122の互いの間隔は同様に0.5mmであって、これは符号124で示されている。第2の領域114の円直径は100mmであり、従ってワイヤ122の円周はπ×100mmであり、概ね314mmである。このようなワイヤ122の配置構成が一般的な布地の中に組み込まれている。第2の領域114の表面は、半分が導電性構造体つまりワイヤ122で覆われていて、半分が非導電性構造体つまり一般的な布地で覆われているので、この場合、面充填率は50%である。ワイヤ122の材料は、6.3・107S/mの導電率を有する銅である。数学的なシミュレーションによれば、このような構造体のレーダ断面積は0.8dBm2よりも大きいことが判明した。
【0068】
図3は、図1に示した衣類100と類似する衣類100を示す。衣類100は同様に、第1の領域112および第2の領域114を備えた袖110を有している。袖110の第2の領域114はやはり、電磁放射線を反射する構造体120を有しているが、この構造体120は、図1または図2の実施例とは異なり、互いに接続されていない多数の導体部材126を有しており、これらの導体部材126は、第2の領域114の表面の50%を覆っている。第2の領域114の表面のその他の50%は、非導体、例えば一般的な布地を有している。
【0069】
導体部材126は、符号123で示された0.5mmの幅を有していて、導体部材126の腕の方向に沿った間隔はやはり0.5mmであって、これは符号124で示されている。
【0070】
導体部材126は、腕の方向に対して直角に連続していないので、この場合、面充填率は50%より小さく、37.5%である。導体部材126の材料は銅である。数学的なシミュレーションによれば、このような構造体のレーダ断面積は0.1dBm2よりも大きいことが判明した。
【0071】
図4は、布地130にプリントされた電磁放射線を反射する構造体120を示す。図4の電磁放射線を反射する構造体120は、図1、図2または図3の実施例において、そこに示された電磁放射線を反射する構造体120の代わりに使用されてよい。
【0072】
図5は、金属製織品の形の電磁放射線を反射する構造体120を示す。金属製織品は2次元的であって、2つの次元に沿って、隣接し合う金属ワイヤの間で同じ間隔を有している。図5に示した電磁放射線を反射する構造体120は、図1、図2または図3の電磁放射線を反射する構造体120の代わりに使用することができる。
【0073】
図6は、布地130に蛇行状に刺繍された電磁放射線を反射する構造体120を示す。図5の電磁放射線を反射する構造体120は、図1、図2または図3の電磁放射線を反射する構造体120の代わりに使用することができる。」

【図4】

「
[図:0001411703000004.jpg]
」

3 当合議体の判断

(1) 技術事項アについて

ア 技術事項アは、「電磁放射線を反射する構造体(120)」が、「ユーザの通常の運動時に当該ユーザのボディの前記箇所における前記構造体(120)の取り付けに基づいてマイクロドップラー効果を発生し、それによりユーザのレーダ断面積が増大されるものであること。」である。

イ 技術事項アにおける「マイクロドップラー効果」については、発明の詳細な説明の【0007】に「動かない対象物とは異なり、歩行者または自転車に乗る人によって反射されたレーダ周波数スペクトルは、腕および手の動きに由来する、時間に関係する独特なドップラー偏移を有している。これに関連する効果はマイクロドップラー効果と呼ばれ、これに関連する、相応の相対的な周波数分布の構成は、マイクロドップラーシグネチャまたはマイクロドップラー成分と呼ばれる。」と説明されている。

ウ また、発明の詳細な説明の【0036】~【0039】には、マイクロドップラー成分の増大によってレーダ断面積の増大が行われること、電磁放射線を反射する構造体をユーザの腕または足に取り付けることによってマイクロドップラー効果が増大されることが記載されている。

(2) 技術事項イについて

ア 技術事項イは、「電磁放射線を反射する構造体(120)」の「材料」の「特徴」に関するものである。

この材料の特徴について、発明の詳細な説明の記載を見ると、以下のとおりである。

イ 発明の詳細な説明【0019】-【0022】には、「平面としての境界面にぶつかる平らな電磁波の反射率は、フレネルの方程式から得られるか、または材料特性に基づいて境界面に反射された電磁波と入射した電磁波との間の関係を提供する式から得られる」こと(【0019】)、フレネルの方程式の反射率のための複雑な式は【数3】のように単純化されること(【0020】)、「レーダ後方散乱断面は、一般的に、正確な材料特性による数値的なシミュレーションまたは測定によってのみ行うことができる」こと(【0022】)が記載されている。しかし、これらの記載は、材料の特徴が特定された場合の反射率の式を示し、また、レーダ後方散乱断面が、一般的に、正確な材料特性による数値的なシミュレーションまたは測定によってのみ行うことができることを示すものにすぎず、具体的な材料を示すものではない。

ウ(ア) 発明の詳細な説明【0023】-【0024】には、「電磁放射線を反射する構造体の材料が100S/mより大きい導電率を有している場合」として、「この場合、この材料は好適には銅またはシルバーである」と記載されている。

しかし、この例は「材料が100S/mより大きい導電率を有している場合」であるから、技術事項イの「100S/mを下回る導電率」に該当しない。

(イ) 発明の詳細な説明【0065】-【0073】には「本発明の実施例」が記載されており、このうち【0066】には「銅」及び「シルバーまたはその他の非常に良好な導体」が、【0067】には「銅」が、【0068】には「導体部材126」が、【0070】には「銅」が、【0072】には「金属ワイヤ」が、それぞれ示されている。

しかし、これらの材料は、金属であり、その導電率は大きいから、技術事項イの「100S/mを下回る導電率」に該当しないことは明らかである。

(ウ) 発明の詳細な説明【0042】には、「周期的な構造を有する、電磁放射線を反射する構造体は、好適には例えば周波数選択性表面であるかまたは、例えばDNG,AMC等の金属材料であってよい。」と記載されているが、当該記載の材料も「金属材料」であるから、技術事項イの「100S/mを下回る導電率」に該当しないことは明らかである。

エ(ア) 発明の詳細な説明【0025】には、「電磁放射線を反射する構造体の材料が、100S/mより小さい導電率を有している場合、つまり導電率が小さい場合、材料の反射率は、導電率に対して誘電率および/または透磁率によって支配される。この場合、電磁放射線を反射する構造体の材料はペーストまたはインクであれば、好適である。」と記載されており、技術事項イの「100S/mを下回る導電率」の場合、材料は「ペーストまたはインク」であれば好適であることが示されている。

しかし、「ペーストまたはインク」が、具体的にどのような素材、組成の「ペーストまたはインク」であるのかは、記載されていない。

また、「ペーストまたはインク」の相対透磁率や相対誘電率については記載されておらず、「ペーストまたはインク」が、技術事項イの「100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率」及び「1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率」に該当するのかも、不明である。

(イ) 発明の詳細な説明【0046】~【0050】には、「電磁放射線を反射する構造体が製織品である」こと、「好適には、製織品または構造体は、綿、プラスチック、導電性のコーティングによって被覆されたプラスチックおよび/または金属を有している」ことが記載されており、構造体の材料として、「綿、プラスチック」が示されている。

しかし、「綿、プラスチック」の相対透磁率や相対誘電率については記載されていない。また、全ての「綿、プラスチック」が、技術事項イの「100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率」及び「1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率」に該当するのかも、不明である。

(ウ) 発明の詳細な説明【0065】-【0073】に記載された「本発明の実施例」のうち、【0071】には「図4は、布地130にプリントされた電磁放射線を反射する構造体120を示す」と記載されている。

しかし、当該記載は「布地130にプリント」できるような材料を示すまでであり、そのような材料が具体的にどのようなものであるのか、またその素材、組成について明らかとするものではない。

オ(ア) 本願発明1~12及び14は、物の発明であるところ、物の発明について実施することができるとは、その物を作れるように記載されていることが必要であり、その物を作るための材料などを具体的に特定する必要がある。

また、本願発明13は、物の使用方法の発明であるところ、物の使用方法の発明について実施することができるとは、その物を使用できるように記載されていることが必要である。

(イ) しかし、前記イ~エのとおり、発明の詳細な説明には、技術事項イを満たす材料が具体的にどのようなものであるのか、記載されていない。

(ウ) 技術事項イの「導電率が100S/mより小さい」との記載から、その材料は、金属などの良導体ではないと考えられる。

ここで、相対透磁率及び相対誘電率は、物質固有の値であり、ある物質の相対透磁率及び相対誘電率はその物質ごとに測定、調査などすることにより特定する必要がある。

そうすると、材料が金属などの良導体ではないものであるとしても、技術事項イに記載されるような相対透磁率及び相対誘電率の条件を満足するような材料がどのようなものであるか、直ちに特定できるものではない。

(エ) さらに、前記(1)で説示したとおり、技術事項アの「マイクロドップラー効果」に関しての説明は発明の詳細な説明に記載されているものの、マイクロドップラー効果を有するどのような材料が技術事項イを満たす材料としてあるのか、また、技術事項イを満たす材料であれば必ずマイクロドップラー効果を有するのかについては、発明の詳細な説明に記載されていない。

カ そうすると、本願の発明の詳細な説明は、本願発明1~12及び14の物を作るために、また、本願発明13で使用される物を特定するために、当業者に期待しうる程度を超えた試行錯誤を要するものである。

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

(3) 意見書における請求人の主張について

ア 導電率が100S/mである材料について

(ア) 請求人は、意見書において、導電率が100S/mである材料の具体例として、提出物件1を示し、その3ページ目の抵抗率0.1mOhm・cmを導電率に変換すると100S/mとなること、導電率を下げる場合には、パウダー状のセラミックやポリマー剤などを混ぜることにより使用が可能となることを主張する。

(イ) ここで、提出物件1を見ると、次の記載がある。(邦訳は当合議体にて作成した。以下同様。)

a 「
[図:0001411703000005.jpg]
(技術データシート DELO
DELOデュアルボンド(R) IC343
変性ポリカルバミン酸誘導体|1K|光固定性/熱硬化性)」(第1ページ第1-3行)
b 「Spezifischer elektrischer Widerstand 0,11 mOhm・cm
DELO-Norm 29 / 100°C / 10min
(比抵抗 0.11 mOhm・cm
DELO規格 29 / 100°C / 10分)」(第3ページ第14-15行)

(ウ) 上記(イ)bの「比抵抗 0.11 mOhm・cm」を、導電率に換算すると、導電率=1/比抵抗であるから、1/(0.11 mOhm・cm)=91S/mとなる。

この「91S/m」は、技術事項イの「100S/mを下回る導電率」を満足するものである。

しかし、この提出物件1に示される材料の相対透磁率及び相対誘電率については不明であり、これらの値が技術事項イを満足するものであるかも不明である。

(エ) 請求人は、意見書において、この材料が「段落0025記載のペーストの一例」であることもいうが、「ペースト」の材料として技術事項イの「100S/mを下回る導電率」を満足するものがあることがわかるまでであり、ペーストが、技術事項イの相対透磁率及び相対誘電率を満足することについては不明である。

イ 相対誘電率の材料の例について

(ア) 請求人は、意見書において、相対誘電率が請求項1記載の範囲にある材料の例として、提出物件2を示し、多くのプラスティックが請求項1の範囲にあることを主張する。

(イ) ここで、提出物件2を見ると、次の記載がある。

a 「Relative permittivity
The relative permittivity (in older texts, dielectric constant) is the permittivity of a material expressed as a ratio with the electric permittivity of a vacuum. A dielectric is an insulating material, and the dielectric constant of an insulator measures the ability of the insulator to store electric energy in an electrical field.
Permittivity is a material's property that affects the Coulomb force between two point charges in the material. Relative permittivity is the factor by which the electric field between the charges is decreased relative to vacuum.
Likewise, relative permittivity is the ratio of the capacitance of a capacitor using that material as a dielectric, compared with a similar capacitor that has vacuum as its dielectric. Relative permittivity is also commonly known as the dielectric constant, a term still used but deprecated by standards organizations in engineering[15] as well as in chemistry.[16]
(比誘電率
比誘電率(古い文献では誘電率)とは、真空の誘電率との比で表される物質の誘電率のこと。誘電体とは絶縁体のことで、絶縁体の誘電率は、絶縁体が電界中で電気エネルギーを蓄える能力を測定する。
誘電率は、物質中の2つの点電荷間のクーロン力に影響を与える物質の特性である。比誘電率は、電荷間の電界が真空に比べて減少する係数である。
同様に、比誘電率は、誘電体としてその材料を使用したコンデンサの静電容量と、誘電体として真空を使用した同様のコンデンサの静電容量の比である。比誘電率は一般に誘電率とも呼ばれ、工学[15]や化学[16]の標準化団体では、この用語はまだ使われているが、非推奨となっている。)」(第1ページ第3-14行)
b 「Relative permittivities of some materials at room temperature under 1 kHz
[図:0001411703000006.jpg]
[図:0001411703000007.jpg]
(室温、1kHzにおけるいくつかの材料の比誘電率
続きを表示(全50行)
材料 εr
真空 1(定義による)
空気 1.00058986±0.00000050 (STP、900kHzにて),[1]
PTFE/テフロン 2.1
ポリエチレン/XLPE 2.25
ポリイミド 3.4
ポリプロピレン 2.2-2.36
ポリスチレン 2.4-2.7
二硫化炭素 2.6
BoPET 3.1[2]
紙、印刷 1.4[3] (200 kHz)
電気活性ポリマー 2-12
マイカ 3-6[2]
二酸化ケイ素 3.9[4]
サファイア 8.9~11.1(異方性)[5]
コンクリート 4.5
パイレックス(ガラス) 4.7 (3.7-10)
ネオプレン 6.7[2]
天然ゴム 7
ダイヤモンド 5.5-10
塩 3-15
メラミン樹脂 7.2-8.4[6]
グラファイト 10-15
シリコーンゴム 2.9-4[7]
シリコン 11.68
GaAs 12.4[8]
窒化ケイ素 7~8(多結晶、1MHz)[9][10]
アンモニア 26, 22, 20, 17 (-80, -40, 0, +20°C)
メタノール 30
エチレングリコール 37
フルフラール 42.0
グリセロール 41.2, 47, 42.5 (0, 20, 25°C)
水 87.9, 80.2, 55.5 (0, 20, 100 °C)[11] 可視光: 1.77
フッ化水素酸 175, 134, 111, 83.6 (-73, -42, -27, 0 °C),
ヒドラジン 52.0 (20°C)、
ホルムアミド 84.0 (20°C)
硫酸 84-100 (20-25°C)
過酸化水素 128水溶液-60 (-30-25°C)
青酸 158.0-2.3 (0-21°C)
二酸化チタン 86-173
チタン酸ストロンチウム 310
チタン酸バリウムストロンチウム 500
チタン酸バリウム[12] 1200-10,000 (20-120°C)
チタン酸ジルコン酸鉛 500-6000
共役ポリマー 1.8-6最高100,000[13]
チタン酸銅カルシウム >250000[14])」(第2ページ右側-第3ページ右上の表)

(ウ) 上記(イ)bの比誘電率(相対誘電率と同義である)の数値を見ると、テフロン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリプロピレン及びポリスチレンは2~3程度、ネオプレン、天然ゴムは6~7程度、メラミン樹脂は7.2~8.4、シリコーンゴムは2.9~4、共役ポリマーは1.8~6最高1000000であることがわかる。

このことからすると、次のことがいえる。

a テフロン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ネオプレン、天然ゴム、メラミン樹脂、シリコーンゴム及び共役ポリマーは、技術事項イの「100S/mを下回る導電率、100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率」のうち、「1から14までの間の相対誘電率」を満たす。

b メラミン樹脂及び共役ポリマーは、技術事項イの「100S/mを下回る導電率、1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率」のうち、「7から14までの間の相対誘電率」を満たす。

しかし、これらの物質の相対透磁率及び導電率については不明であり、これらの値が技術事項イを満足するものであるかも不明である。

(エ) さらに、前記(ウ)で示した物質は、提出物件1に示される材料とは異なるものであり、提出物件1に示される材料の相対誘電率の値が、技術事項イを満足するものであるとはいえない。

ウ 材料を混合する際のルールについて

(ア) 請求人は、意見書において、材料を混合する際のルールとして、誘電率の等方性媒質(em)、体積分率(vm)、等を考慮する必要があるが、提出物件3を示して、具体的な方法はすでに多く発表されていると主張する。

(イ) ここで、提出物件3を見ると、次の記載がある。

a 「The electrical resistivity and relative permittivity of binary powder mixtures
(二元混合粉末の電気抵抗率と比誘電率)」(第1ページ第4-5行の表題)
b 「Abstract
Effective electrical resistivities and static relative permittivities of binary powder mixtures were measured and compared to theoretical equations given by Generalized Mixture Rule (GMR). The measured values for mixtures were influenced by the resistivity and permittivity of the pure component materials, the particle sizes and by the sticking between the different particles. According to the Random Model (RM), the effective resistivity and relative permittivity of any randomly packed mixture material can be calculated from the component resistivities and relative permittivities, respectively, and their concentrations. It was shown that RM gave good predictions for both quantities for powders if the particle sizes of the component materials were almost the same. However, this was not the case when large NaCl particles were mixed with fine sugar particles. When these mixtures were prepared, finer, more numerous sugar particles coated the larger NaCl particles, and the mixtures were not random but closer to the series configuration. Effect of particle size was studied briefly by mixing very fine NaCl particles with sugar of similar size. With these mixtures, results predicted by RM were obtained.
(概要
二元混合粉末の有効電気抵抗率および静的比誘電率を測定し、一般化混合則(GMR)で与えられる理論式と比較した。混合物の測定値は、純粋な構成材料の比抵抗と誘電率、粒子径、異なる粒子間の付着に影響された。ランダムモデル(RM)によれば、ランダムに充填された混合材料の実効比抵抗と比誘電率は、それぞれ成分の比抵抗と比誘電率、およびそれらの濃度から計算することができます。RMは、構成材料の粒子径がほぼ同じであれば、粉末の両量について良好な予測を与えることが示された。しかし、大きなNaCl粒子と微細な砂糖粒子を混合した場合には、このようなことは起こらなかった。このような混合物を調製した場合、より微細で多数の砂糖粒子がより大きなNaCl粒子を被覆し、混合物はランダムではなく直列配置に近づいた。粒径の影響は、非常に細かいNaCl粒子と同程度の粒径の砂糖を混合することで簡単に調べた。これらの混合物では、RMによって予測された結果が得られた。)」(第1ページAbstractの項)

(ウ) 上記(イ)で摘記した記載からすると、提出物件3には、ランダムモデル(RM)によれば、ランダムに充填された混合材料の実効比抵抗と比誘電率は、それぞれ成分の比抵抗と比誘電率、およびそれらの濃度から計算することができるが、大きなNaCl粒子と微細な砂糖粒子を混合した場合には、RMによる予測ができなかったため、粒径の影響を、非常に細かいNaCl粒子と同程度の粒径の砂糖を混合することで簡単に調べたことが示されている。

このことからすると、混合材料の実効比抵抗と比誘電率はRMで必ずしも求められないこと、また、提出物件3に示されるのはNaCl粒子と砂糖粒子の場合であることがわかる。

そうすると、提出物件3を踏まえても、混合物において、相対透磁率や相対誘電率がどうなるかを一般にいうことはできない。

そして、提出物件3は、技術事項イを満足するような材料を示すものでもない。

エ 相対透磁率の材料の例について

(ア) 請求人は、意見書において、相対透磁率が請求項1記載の範囲にある材料の例として、提出物件4を示す。

(イ) ここで、提出物件4を見ると、次の記載がある。

a 「Permeability(electromagnetism)
In electromagnetism, permeability is the measure of magnetization produced in a material in response to an applied magnetic field. Permeability is typically represented by the (italicized) Greek letter μ. It is the ratio of the magnetic induction B to the magnetizing field H as a function of the field H in a material. The term was coined by William Thomson, 1st Baron Kelvin in 1872,[1] and used alongside permittivity by Oliver Heaviside in 1885. The reciprocal of permeability is magnetic reluctivity.
In SI units, permeability is measured in henries per meter (H/m), or equivalently in newtons per ampere squared (N/A2). The permeability constant μ0, also known as the magnetic constant or the permeability of free space, is the proportionality between magnetic induction and magnetizing force when forming a magnetic field in a classical vacuum.
A closely related property of materials is magnetic susceptibility, which is a dimensionless proportionality factor that indicates the degree of magnetization of a material in response to an applied magnetic field.
(透磁率(電磁気学)
電磁気学では、透磁率は印加された磁場に反応して材料に生じる磁化の尺度である。透磁率は一般的にギリシャ文字のμで表され、物質中の磁場Hの関数として、磁場Hに対する磁気誘導Bの比である。この用語は、1872年に初代ケルビン男爵ウィリアム・トムソンによって作られ[1]、1885年にはオリバー・ヘイヴィサイドによって誘電率と並んで使われた。透磁率の逆数は磁気抵抗率である。
SI単位では、透磁率はヘンリー毎メートル(H/m)、または同等にニュートン毎アンペア2乗(N/A2)で測定される。透磁率定数μ0は、磁気定数または自由空間の透磁率としても知られ、古典的な真空中で磁場を形成するときの磁気誘導と磁化力の間の比例関係である。
磁化率は、印加された磁場に対する物質の磁化の程度を示す無次元の比例係数である。)」(第1ページ第3-16行)
b 「Magnetic susceptibility and permeability data for selected materials
[図:0001411703000008.jpg]
[図:0001411703000009.jpg]
(特定材料の帯磁率と透磁率データ
続きを表示(全45行)
媒体 比透磁率、最大値、μ/μ0
真空 1,正確に[6]
メトグラス 2714A (焼鈍) 1000000[7]
鉄(99.95%純鉄を水素中で焼鈍) 200000[8]
パーマロイ 100000[9]
ナノパーム 80000[10]
ミューメタル 50000[11]
ミューメタル 20000[12]
コバルト-鉄(高透磁率ストリップ材) 18000[13]
鉄(純度99.8%) 5000[8]
電気鋼 4000[14]
フェライト系ステンレス鋼(焼鈍) 1000 - 1800[15]
マルテンサイト系ステンレス鋼(焼鈍) 750 - 950[15]
フェライト(マンガン・亜鉛) 350 - 20 000[16]
フェライト(ニッケル・亜鉛) 10 - 2300[17]
フェライト(マグネシウム・マンガン・亜鉛) 350 - 500[18]
フェライト(コバルト・ニッケル・亜鉛) 40 - 125[19]
Mo-Fe-Ni粉末化合物(モリパーマロイ粉末, MPP) 14 - 550[20]
ニッケル鉄粉化合物 14 - 160[21]
Al-Si-Fe粉末化合物(センダスト) 14 - 160[22]
鉄粉化合物 14 - 100[24]
ケイ素鉄粉化合物 19 - 90[25][26]
カルボニル鉄粉化合物 4 - 35[27]
炭素鋼 100[12]
ニッケル 100[12] - 600
マルテンサイト系ステンレス鋼(硬化) 40 - 95[15]
オーステナイト系ステンレス鋼 1.003 - 1.05[15][28][note 1]
ネオジム磁石 1.05[29]
白金 1.000265
アルミニウム 1.000022
木材 1.00000043[30]
空気 1.00000037[31]
コンクリート(乾燥) 1[32]
水素 1.0000000
テフロン 1.0000
サファイア 0.99999976
銅 0.999994
水 0.999992
ビスマス 0.999834
熱分解炭素 0.9996
超伝導体 0)」(第4ページ-第5ページの表。ただし、邦訳において、表中の比透磁率の数値のみ示した。)

(ウ) 上記(イ)bの比透磁率(相対透磁率と同義である)の数値を見ると、その多くは無機物のものであり、有機物としては木材及びテフロンが示されるのみであるが、そのいずれも比透磁率は1程度であることがわかる。

このことからすると、次のことがいえる。

a 提出物件4には、技術事項イの「100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率」のうち、「100から105までの間の相対透磁率」となる無機物以外のものを示していない。

b 木材及びテフロンは、技術事項イの「1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率」のうち、「1から100までの間の相対透磁率」を満たす。

そして、木材の相対透磁率及び導電率については不明である。

また、テフロンについては、前記イ(ウ)で示したとおり、テフロンの比誘電率は2.1であり、テフロンの相対透磁率及び相対誘電率は、技術事項イの「100から105までの間の相対透磁率、および1から14までの間の相対誘電率」又は「1から100までの間の相対透磁率、および7から14までの間の相対誘電率」のいずれかを満足するものではない。また、テフロンの導電率については不明である。

(エ) さらに、前記(ウ)で示した物質は、提出物件1に示される材料とは異なるものであり、提出物件1に示される材料の相対透磁率の値が、技術事項イを満足するものであるとはいえない。

オ 以上ア~エに示したことによれば、請求人の意見書の主張によっても、技術事項イを満足するような材料が具体的にどのようなものであるか、特定することはできない。

第6 むすび

以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明1~14について、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

したがって、本願は、本願発明1~14について、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-012453

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