特許拒絶査定不服審判
2022-012360
運転支援情報を提示する車両照明装置
- 審判番号
- 2022-012360
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-033254
- 請求日
- 2022年08月08日
- 審決日
- 2023年07月11日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヴァレオ ビジョン
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】堀田 幸裕
- 【請求人代理人】三並 大悟
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 中村 則夫
- 審判官 小岩 智明
- 分類
- P18 .121-Z (B60Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-33254号「運転支援情報を提示する車両照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年9月7日出願公開、特開2017-154732号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)2月24日(パリ条約による優先権主張2016年2月26日、フランス(FR))の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 6月13日 :翻訳文提出書の提出
令和 2年11月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 4月 6日: 意見書、手続補正書の提出
令和 3年 7月 7日付け:拒絶理由通知書
令和 3年12月 7日: 意見書、手続補正書の提出
令和 4年 4月 1日付け:拒絶査定
令和 4年 8月 8日: 審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年11月16日: 上申書の提出
第2 令和4年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年8月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(なお、下線は補正箇所を示すため当審が付与したものである。)
「【請求項1】
車両(1)の照明装置であって、第1の照度によって規定される第1の光ビーム(6)を形成するように配置され、前記車両(1)の前方の道路シーン(5)のための少なくとも1つの照明手段(4)と、第2の照度によって規定される第2の光ビーム(10)を生成するための装置(7)であって、前記第2の光ビーム(10)を前記第1の光ビーム(6)上に重ねるように構成される装置(7)と、を備え、
前記第1の照度および前記第2の照度の総和が前記第1の照度よりも大きく、かつ前記第2の光ビーム(10)が運転支援情報(9)を形成し、
前記第1の光ビーム(6)は規制対応しているロービーム又は規制対応しているハイビームであり、かつ前記第2の光ビーム(10)の前記第2の照度が、前記第1の光ビーム(6)の前記第1の照度より強い、照明装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の令和3年12月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
車両(1)の照明装置であって、第1の照度によって規定される第1の光ビーム(6)を形成するように配置され、前記車両(1)の前方の道路シーン(5)のための少なくとも1つの照明手段(4)と、第2の照度によって規定される第2の光ビーム(10)を生成するための装置(7)であって、前記第2の光ビーム(10)を前記第1の光ビーム(6)上に重ねるように構成される装置(7)と、を備え、
前記第1の照度および前記第2の照度の総和が前記第1の照度よりも大きく、かつ前記第2の光ビーム(10)が運転支援情報(9)を形成し、
前記第1の光ビーム(6)は規制対応しており、かつ前記第2の光ビーム(10)の前記第2の照度が、前記第1の光ビーム(6)の前記第1の照度より強い、照明装置。」
2 補正の適否
2-1 補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の光ビーム(6)」について、「規制対応しているロービーム又は規制対応しているハイビームであ」るとの限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
2-2 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載されたとおりのものである。
2-3 独立特許要件
(1)引用文献の記載事項等
(1-1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示され、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に国内で頒布された特開2014-7093号公報には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【請求項1】
光を投光する投光装置に用いられる光源装置であって、
2次元状に配置され、個別に光量の制御が可能な複数の発光素子部と、
前記複数の発光素子部から出射した光が照射されるとともに、光を拡散させた状態で出射する光拡散部材と、
を備え、
前記発光素子部の各々から出射した光の中心軸と前記光拡散部材との複数の交点は、2次元状に配置され、
前記複数の発光素子部が個別に光量の制御が行われることによって、前記光拡散部材のうちの光を出射する出射領域の発光形状と、前記出射領域の発光サイズと、前記出射領域から出射する光の強度分布との少なくとも1つが変更されることを特徴とする光源装置。」
(イ)「【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記光拡散部材から出射した光を投光する投光部材と、
を備えることを特徴とする投光装置。」
(ウ)「【請求項12】
車両用の前照灯に用いられることを特徴とする請求項10または11に記載の投光装置。」
(エ)「【請求項14】
前記発光素子部への通電を個別に制御する制御部を備え、
前記制御部は、運転者によるロービーム点灯操作またはハイビーム点灯操作に基づいて、前記発光素子部への通電を制御することを特徴とする請求項12または13に記載の投光装置。」
(オ)「【請求項20】
前記発光素子部への通電を個別に制御する制御部を備え、
前記制御部は、自車両を目的地まで経路案内するナビゲーション装置からの信号に基づいて、前記自車両が進むべき方向を示す図形が運転者により視認されるように、前記発光素子部への通電を制御することを特徴とする請求項12~19のいずれか1項に記載の投光装置。」
(カ)「【0039】
本発明の第1実施形態による投光装置1は、例えば自動車(車両)の前方を照明する前照灯(灯具)として用いられるものである。投光装置1は図1に示すように、光源装置10と、光源装置10が取り付けられる取付部材20と、光源装置10から出射した光を利用して所定の方向に光を投光する投光部材30と、投光装置1を制御する制御部40とを備える。」
(キ)「【0061】
この投光装置1では、投光装置1を点灯/消灯するための主スイッチが運転者によりオンされると、制御部40により、図8の2点鎖線Lで囲ったレーザ素子部11bが選択的に通電されて駆動される。このとき、図9に示した出射領域Sから光が出射する。出射領域Sから出射した光は反射部材31および凸レンズ32により投光される。そして、投光装置1の25m前方の投光パターンPは図10に示すようになり、ロービーム用の投光パターンPが得られる。」
(ク)「【0063】
なお、日本などの左側通行の国では自動車のロービームは図11に示すように、右上部分を切り欠いたような投光パターンPが要求される。カットオフラインM1およびM2では、対向車の運転者にグレア光を与えないように、明暗が急峻に切り替わることが必要である。また、カットオフラインM1およびM2の交点であるエルボー点E近傍の領域R1(自動車の真正面の領域)の光度が最も高くなり、領域R1から離れるにしたがって光度が低くなる。すなわち、領域R1、R2およびR3の順に光度が低くなる。
【0064】
次に、ロービームとハイビームとを切り替えるための切替スイッチが運転者により操作され、ロービームからハイビームに切り替えられると、制御部40により、図12の2点鎖線Lで囲ったレーザ素子部11bが選択的に通電されて駆動される。このとき、図13に示した出射領域Sから光が出射する。そして、投光パターンPは図14に示すようになり、ハイビーム用の投光パターンPが得られる。」
(ケ)「【0129】
(第8実施形態)
この第8実施形態では、図41~図46を参照して、上記第2~第7実施形態と異なり、自車両100が進むべき方向を示す図形を投光する場合について説明する。
【0130】
本発明の第8実施形態による投光装置1では、制御部40は、自車両100を目的地まで経路案内するナビゲーション装置60(図43参照)にも接続されている。制御部40は、ナビゲーション装置60からの信号に基づいて、自車両100が進むべき方向を示す図形(例えば矢印)が運転者により視認されるように、レーザ素子部11bへの通電を制御する機能を有する。
【0131】
この投光装置1では、投光装置1を点灯/消灯するための主スイッチが運転者によりオンされると、制御部40により、図41の2点鎖線Lで囲ったレーザ素子部11bが通電されて駆動される。これにより、図42に示した出射領域Sから光が出射する。このとき、投光パターンPは図43に示すようになる。
【0132】
そして、自車両100が例えば右折すべき位置に近づくと、ナビゲーション装置60から信号が制御部40に送信される。これにより、制御部40により、図44の2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部11bへの通電量が多くされるとともに、2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部11bが点滅駆動される。そして、図45で示した出射領域Saから出射する光の強度が高くなるとともに、出射領域Saから出射する光が点滅する。これにより、図46に示すように、自車両100が進むべき方向を示す図形(図46のハッチング領域)が投光パターンPと重なって投光され、その図形が運転者により視認される。なお、点滅の周期は、上記第7実施形態と同様である。
【0133】
その後、自車両100が右折すると、制御部40は元の光量の制御に戻り、図43に示した投光パターンPに戻る。
【0134】
なお、第8実施形態のその他の構造および動作は、上記第2実施形態と同様である。
【0135】
本実施形態では、上記のように、制御部40は、ナビゲーション装置60からの信号に基づいて、自車両100が進むべき方向を示す図形が運転者により視認されるように、レーザ素子部11bへの通電を制御する。これにより、運転者は、ナビゲーション装置60の表示部を見ることなく、ナビゲーション情報を得ることができる。
【0136】
また、自車両100が進むべき方向を示す図形を表示するためのレーザ素子部11b(図44の2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部11b)を点滅駆動させることによって、その図形がより視認されやすくなる。これにより、運転者はその図形に、より気付きやすくなるので、より効果的である。
【0137】
第8実施形態のその他の効果は、上記第2実施形態と同様である。」
(コ)「【0157】
また、第8実施形態では、2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部への通電量を多くし、かつ、そのレーザ素子部を点滅駆動した例について示したが、本発明はこれに限らない。2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部の通電量を多くするだけでもよいし、2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部を点滅駆動するだけでもよい。」
(サ)【図1】
[図:0001404250000001.jpg]
(シ)【図10】
[図:0001404250000002.jpg]
(ス)【図11】
[図:0001404250000003.jpg]
(セ)【図14】
[図:0001404250000004.jpg]
(ソ)【図41】
[図:0001404250000005.jpg]
(タ)【図42】
[図:0001404250000006.jpg]
(チ)【図43】
[図:0001404250000007.jpg]
(ツ)【図44】
[図:0001404250000008.jpg]
(テ)【図45】
[図:0001404250000009.jpg]
(ト)【図46】
[図:0001404250000010.jpg]
イ 引用文献1の記載事項からの認定事項
上記アの記載事項(ア)~(ト)より、以下の事項が認定できる。
(ア)上記ア(エ)で示したように、請求項14には、投光装置が「前記発光素子部への通電を個別に制御する制御部を備え、前記制御部は、運転者によるロービーム点灯操作またはハイビーム点灯操作に基づいて、前記発光素子部への通電を制御する」ものであることが記載されている。このことに、上記ア(キ)の「・・・そして、投光装置1の25m前方の投光パターンPは図10に示すようになり、ロービーム用の投光パターンPが得られる。」(【0061】)との記載、及び、上記ア(ク)の「・・・そして、投光パターンPは図14に示すようになり、ハイビーム用の投光パターンPが得られる。」(【0064】)との記載を踏まえると、投光装置は、「発光素子部への通電を個別に制御する制御部40を備え、前記制御部40は、運転者によるロービーム点灯操作またはハイビーム点灯操作に基づいて、ロービーム用またはハイビーム用の投光パターンPが得られるように、発光素子部11bへの通電を制御する」ものであることが認定できる。
(イ)上記ア(オ)で示したように、請求項20には、投光装置の制御部について「前記発光素子部への通電を個別に制御する制御部を備え、前記制御部は、自車両を目的地まで経路案内するナビゲーション装置からの信号に基づいて、前記自車両が進むべき方向を示す図形が運転者により視認されるように、前記発光素子部への通電を制御する」ものであることが記載されている。また、上記ア(ケ)に示したように、段落【0131】には、制御部について、「この投光装置1では、投光装置1を点灯/消灯するための主スイッチが運転者によりオンされると、制御部40により、図41の2点鎖線Lで囲ったレーザ素子部11bが通電されて駆動される。これにより、図42に示した出射領域Sから光が出射する。このとき、投光パターンPは図43に示すようになる。」と記載されている。さらに、上記ア(ケ)の「図44の2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部11bへの通電量が多くされる」、「図45で示した出射領域Saから出射する光の強度が高くなる」、及び、「出射領域Saから出射する光が点滅する。これにより、図46に示すように、自車両100が進むべき方向を示す図形(図46のハッチング領域)が投光パターンPと重なって投光され、その図形が運転者により視認される」(【0132】)との記載は、「投光パターンPと重なって投光され」るところの「自車両100が進むべき方向を示す図形」が「投光パターンP」よりも光の強度が高いことを示唆しているから、これらを総合すると、投光装置の「制御部40」は、「自車両100を目的地まで経路案内するナビゲーション装置60からの信号に基づいて、投光パターンPよりも光の強度が高いとともに出射する光が点滅する、前記自車両100が進むべき方向を示す図形を、投光パターンPと重なって投光するように発光素子部11bへの通電を制御する」ものであることが認定できる。
ウ 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、上記ア(カ)に示されるように、車両用の前照灯に用いられる投光装置1に係る発明が記載されており、これに上記ア、イの記載事項や認定事項を踏まえると、次の発明(以下「引用発明」という。)を認定することができる。
<引用発明>
「車両用の前照灯に用いられる投光装置1であって、
2次元状に配置され、個別に光量の制御が可能な複数の発光素子部11bと、前記複数の発光素子部11bから出射した光が照射されるとともに、光を拡散させた状態で出射する光拡散部材と、を備え、前記発光素子部11bの各々から出射した光の中心軸と前記光拡散部材との複数の交点は、2次元状に配置され、前記複数の発光素子部11bが個別に光量の制御が行われることによって、前記光拡散部材のうちの光を出射する出射領域の発光形状と、前記出射領域の発光サイズと、前記出射領域から出射する光の強度分布との少なくとも1つが変更される光源装置10と、
前記光拡散部材から出射した光を投光する投光部材30と、
前記発光素子部11bへの通電を個別に制御する制御部40を備え、
前記制御部40は、運転者によるロービーム点灯操作またはハイビーム点灯操作に基づいて、ロービーム用またはハイビーム用の投光パターンPが得られるように、前記発光素子部11bへの通電を制御し、
また、前記制御部40は、自車両100を目的地まで経路案内するナビゲーション装置60からの信号に基づいて、投光パターンPよりも光の強度が高いとともに出射する光が点滅する、前記自車両100が進むべき方向を示す図形を、投光パターンPと重なって投光するように前記発光素子部11bへの通電を制御する、車両用の前照灯に用いられる投光装置1。」
(1-2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す引用文献7として提示され、本願の優先日前に国内で頒布された特開2013-232390号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、高い演色性を有し、かつ、任意の投光パターンを実現することが可能な発光装置、投光器、および車両用前照灯に関する。」
(イ)「【0115】
ARコート及びHRコートを施すことにより、光学ロスを低減することができる。本実施の形態では高出力のレーザを用いるため、ARコートおよびHRコートを施さなければ、光学ロス分は熱となり光学素子が歪むといった問題が生じる。また、車両用投光器の場合、レーザ光の照射位置およびスポットサイズを任意に変化させるが、法規制によって定められたヘッドランプの投光パターンに応じ、発光部4に形成するレーザ光の光分布(時間平均した際の光分布)は、法規制に応じたパターンを形成するための同一光分布であることが多い。つまり、各光学素子は一様にレーザ光に曝されるわけではなく特定の領域のみが常に高いレーザ出力の高い領域に曝されることとなる。そのため、ARコートおよびHRコートを施していなければ、その領域の劣化が生じるといった問題が生じる。」
(2)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下の相当関係が認められる。
ア 後者の「車両用の前照灯に用いられる投光装置1」は、前者の「車両の照明装置」に相当する。
イ 後者の「前記制御部40は、運転者によるロービーム点灯操作またはハイビーム点灯操作に基づいて、ロービーム用またはハイビーム用の投光パターンPが得られるように、前記発光素子部11bへの通電を制御」するとの構成に基づけば、後者の「投光パターンP」は、「制御部40」により「発光素子部11bへの通電を制御」されて投光されるものであって、「制御部40」により規定される照度で投光されるものといえるから、前者の「第1の照度によって規定される第1の光ビーム」に相当する。
ウ 後者の「自車両100」は、前者の「車両」に相当する。
エ 後者の「光源装置10」は、道路シーンに向けて「光を出射する」ことは明らかである。そうすると、後者の「光源装置10」と「投光部材30」と「制御部40」とを合わせたものは、前者の「第1の照度によって規定される第1の光ビームを形成するように配置され、前記車両の前方の道路シーンのための少なくとも1つの照明手段」に相当する。
オ 後者の「投光パターンPよりも光の強度が高いとともに出射する光が点滅する、前記自車両100が進むべき方向を示す図形」は、「制御部40」により照度が規定され、かつ「投光パターンP」とは異なる照度で投光されるものといえるから、前者の「第2の照度によって規定される第2の光ビーム(10)」に相当する。
カ 請求項1を引用する請求項7では、「前記照明手段(4)と、前記第2の光ビーム(10)を生成するための前記装置(7)とが、前記第1の光ビーム(6)および前記第2の光ビーム(10)を生成する少なくとも1つの同じ光源(12)を共有する」ことが特定されているから、前者は「照明手段(4)」と「装置(7)」とが1つの同じ光源である構成を含むものである。
そうすると、後者の「光源装置10」と「投光部材30」と「制御部40」とを合わせたものは、前者の「第2の照度によって規定される第2の光ビームを生成するための装置であって、前記第2の光ビームを前記第1の光ビーム上に重ねるように構成される装置」にも相当する。
キ 「自車両100が進むべき方向を示す図形」は点滅するものであり照度は0ではないから、「投光パターンP」の照度および「自車両100が進むべき方向を示す図形」の照度の総和は、「投光パターンP」の照度よりも大きいものである。
また、本願明細書の段落【0012】の「「運転支援情報」は、運転者の注意を引く任意の種類の情報を網羅することを理解されたい。例えば、本情報は、特に、例えば車両が走行する道路の歩道を強調することにより、安全、危険に関するか、あるいは速度もしくは方向などの運転と関連のある情報に関してもよい。」との記載や、段落【0035】の「運転支援情報9は、例えば、車両の速度、信号情報、あるいは車両1の運転者を誘導する情報に関する。」との記載を踏まえると、前者の「運転支援情報」には、速度や方向など運転と関連のある情報や、車両の運転者を誘導する情報が含まれるから、後者の「自車両100が進むべき方向を示す図形」は、前者の「運転支援情報」に相当する。
そうすると、後者の「前記自車両100が進むべき方向を示す図形を」、「投光するように前記発光素子部11bへの通電を制御する」構成は、前者の「前記第1の照度および前記第2の照度の総和が前記第1の照度よりも大きく、かつ前記第2の光ビームが運転支援情報を形成し」との構成に相当する。
ク 後者の「運転者によるロービーム点灯操作またはハイビーム点灯操作に基づいて、ロービーム用またはハイビーム用の投光パターンPが得られる」との構成と、前者の「前記第1の光ビームは規制対応しているロービーム又は規制対応しているハイビームであり」との構成とは、「前記第1の光ビームはロービーム又はハイビームであり」との構成で共通する。
以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、 次の一致点及び相違点を有するものと認められる。
<一致点>
「車両の照明装置であって、第1の照度によって規定される第1の光ビームを形成するように配置され、前記車両の前方の道路シーンのための少なくとも1つの照明手段と、第2の照度によって規定される第2の光ビームを生成するための装置であって、前記第2の光ビームを前記第1の光ビーム上に重ねるように構成される装置と、を備え、
前記第1の照度および前記第2の照度の総和が前記第1の照度よりも大きく、かつ前記第2の光ビームが運転支援情報を形成し、
前記第1の光ビームはロービーム又はハイビームである照明装置。」
<相違点1>
「第1の光ビーム」の「ロービーム又はハイビーム」について、本件補正発明が、「規制対応している」ものであるのに対し、引用発明は、「規制対応している」ことが特定されていない点。
<相違点2>
「第2の光ビームの第2の照度」について、本件補正発明が、「第1の光ビームの第1の照度より強い」のに対し、引用発明は、「投光パターンPよりも光の強度が高いとともに出射する光が点滅する」ものである点。
(3)判断
上記相違点1、2について検討する。
ア 相違点1について
上記(1-1)のア(ク)で示したように、引用文献1には「日本などの左側通行の国では自動車のロービームは図11に示すように、右上部分を切り欠いたような投光パターンPが要求される。」(【0063】)と記載されており、これより、引用発明に限らず,車両の照明装置において「投光パターン」を国の規制に対応させることは、当然の要請であることが理解できる。そして、上記(1-2)で示した引用文献2には、「車両用投光器の場合、レーザ光の照射位置およびスポットサイズを任意に変化させるが、法規制によって定められたヘッドランプの投光パターンに応じ、発光部4に形成するレーザ光の光分布(時間平均した際の光分布)は、法規制に応じたパターンを形成するための同一光分布であることが多い」(【0115】)と、より具体的にヘッドランプの投光パターンを法規制によって定めることが記載されているところ、当該規制対応の構成は従来周知(以下「周知技術」という。)であったものと認められる。
したがって、上記要請のもと,引用発明において上記周知技術を適用し上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
上記(1-1)のイ(イ)で示したように、引用発明においても、「自車両100が進むべき方向を示す図形」は、実質的に「投光パターンPよりも光の強度が高い」ものといえるから、相違点2は実質的な相違点ではない。
仮に、引用発明において「点滅」することが相違点であったとしても、上記(1-1)のア(コ)で示したように、引用文献1には、「また、第8実施形態では、2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部への通電量を多くし、かつ、そのレーザ素子部を点滅駆動した例について示したが、本発明はこれに限らない。2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部の通電量を多くするだけでもよいし、2点鎖線Laで囲ったレーザ素子部を点滅駆動するだけでもよい。」(【0157】)と、「自車両100が進むべき方向を示す図形」の照度を、点滅させることなく、「投光パターンP」の照度より強くすることが示唆されている。
したがって、上記「点滅」が相違点であったとしても、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ウ そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。
(4)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年12月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載」に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
<理由2(特許法第29条第2項について)>
本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献7に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、上記引用文献1、7は、上記「第2 2 2-3(1)」に示す引用文献1、2である。
3 当審の判断
本願発明は、上記「第2 1(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載」に記載されたとおりのものであり、本件補正発明から、「第1の光ビーム」について、「規制対応しているロービーム又は規制対応しているハイビームであ」るとの事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項の全てを含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 2 2-3(3)」に示したように、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-012360