2022-011902
液浸冷却装置
- 審判番号
- 2022-011902
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-134947外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月02日
- 審決日
- 2023年10月24日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和2年8月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
令和5年7月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「電気電子機器と、フッ素系絶縁性冷媒と、前記フッ素系絶縁性冷媒を貯留する冷媒槽(但し、水が貯留された冷媒槽を除く)と、を備え、前記電気電子機器が、前記フッ素系絶縁性冷媒内に部分的に浸され、前記フッ素系絶縁性冷媒の沸点が50~60℃であり、前記フッ素系絶縁性冷媒が、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含有する、液浸冷却装置(但し、水冷ジャケットと、冷却水を冷却する冷却装置と、前記冷却装置が冷却した冷却水を配管を介して前記水冷ジャケットへ送出するポンプとを含むものを除く)。」
第3 拒絶の理由
令和5年6月6日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりのものである。
本願請求項1,2に係る発明は、以下の引用文献1~4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第4 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「【発明の効果】【0007】本発明によれば、発熱性電子部品が絶縁性冷却液中に浸され、発熱性電子部品の熱が絶縁性冷却液によって直接奪われるため、従来と異なり冷却の際の熱抵抗が極めて低く、効率の良い冷却ができる。また、発熱性電子部品全体がほぼ均一に冷却されるため、発熱分布を均一にし、熱応力の発生を防止でき、ひいては、電子回路装置の信頼性の向上に寄与することができる。さらに、電気自動車などのインバータ装置を構成するパワートランジスタの冷却に用いる場合にあっては、従来と異なり、外気温度が高く、車両用空調装置の冷却液温度が高い場合であっても、それとは無関係に、パワートランジスタを確実に冷却でき、ジャンクション温度を上限値以下に保つことができるという効果を奏するものである。」
「【0009】以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。最初に、第1の構成例における冷却装置について、図1を参照しつつ説明する。続きを表示(全26行)本発明の実施の形態における冷却装置は、全体外観形状が直方体状に形成された収納ケース2を有しており、かかる収納ケース2に発熱性電子部品としてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)1が後述するように絶縁性冷却液としてのハイドロフルオロエーテル(以下「HFE」と称する)6に浸漬されて収納されたものとなっている。・・・(中略)・・・【0013】収納ケース2内には、その内部の空間の体積の大凡7~8割程度を占めるように絶縁性冷却液としてのHFE6が充填されており、残余の空間は、冷却液非充填空間7となっており、ヒートシンク3のフィン3aは、この冷却液非充填空間7に位置するようになっている。この冷却液非充填空間7は、大気圧よりも低い気圧、例えば、大凡0.7気圧前後に設定するのが好適である。これは、後述するようにHFE6が気化した場合に冷却液非充填空間7の圧が上昇するため、その上昇分程度を予め低い気圧にしておき、上昇した際にほぼ大気圧程度とするためである。【0014】HFE6は、例えば、この種の同様な冷媒として用いられるフロリナート(登録商標)と比較すると、単位重量当たりの蒸発潜熱は凡そ1.5倍あり、しかも、オゾン破壊係数はゼロで、地球温暖化係数もフロリナート(登録商標)に比して低く、地球環境に対して十分配慮された物質であるので、絶縁性冷却液としては極めて好適である。また、絶縁性冷却液の絶縁耐力としては、体積抵抗率で108Ω・cm以上あることが望ましいが、HFE6の体積抵抗率は、大凡2×1011Ω・cm程あり、十分な絶縁耐力が確保できる点で有効である。【0015】そして、HFE6は、IGBT1のジャンクション温度の上限値よりも低い温度に沸点を有するものが好適である。例えば、ジャンクション温度の上限値が150℃である場合、HFE6は、130℃前後に沸点を有するものを選択するのが好適である。【0016】次に、かかる構成における冷却作用について説明する。IGBT1の動作に伴う発熱によってHFE6の温度が徐々に上昇し、その温度がHFE6の温沸点付近になるとHFE6は徐々に気化し始め、沸点ではHFE6が沸騰し、大量に気化することとなる。それにより、IGBT1の熱が奪われるため、ジャンクション温度の上昇が抑圧されることとなる。【0017】また、上述の気化によって冷却液非充填空間7は、HFE6が気化した気体に満たされることとなるが、フィン3a近傍の気体はフィン3a内部を冷却液4が流通せしめられているため冷却され、液化し、再びHFE6となってIGBT1の冷却に供されることとなる。なお、図1において符号8はHFE6が沸騰し気化する際に生ずる気泡を示し、符号9は、気体から再び液化した際の滴を示している。上述の第1の構成例における冷却状態は、HFE6を沸騰させ、その際に生ずるHFE6の気化によってIGBT1の冷却が行われることから、”気相冷却”と称することができるものである。【0018】次に、第2の構成例について、図2を参照しつつ説明する。なお、第1の構成例と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。この第2の構成例は、先の第1の構成例における気相冷却に対して、いわば液相冷却が行われるよう構成されたものである。すなわち、この第2の構成例において、HFE6は、収納ケース2の空間をほぼ埋め尽くされるように充填され、冷却液非充填空間7は、大凡収納ケース2内の全空間の1割に満たない程度となっている。換言すれば、この第2の構成例にあっては、フィン3aの大部分がHFE6に浸るように、HFE6が充填されたものとなっている。」
「【0019】・・・(中略)・・・なお、本発明の実施の形態における冷却装置においては、冷却対象を、ハイブリット車や電気自動車におけるインバータ装置に用いられるIGBTとしたが、勿論、これに限定される必要はなく、他の発熱性電子部品、例えば、サイリスタや電力用トランジスタ等にも同様に適用できるものである。さらに、冷却液4についても、必ずしも、エンジンの冷却用水等を流用する場合に限定される必要はなく、専用の冷却液を流通せしめる構成としても勿論良いものである。」
「【図1】[図:0001405333000001.jpg]」
(2)上記(1)において、段落【0009】~【0017】に記載されている「第1の構成例」の「冷却装置」により、段落【0007】に記載されている効果が得られるものと解される。
この点を考慮すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「収納ケース2に発熱性電子部品が絶縁性冷却液としてのHFE6に浸漬されて収納され、収納ケース2内には、その内部の空間の体積の大凡7~8割程度を占めるように絶縁性冷却液としてのHFE6が充填されており、残余の空間は、冷却液非充填空間7となっており、ヒートシンク3のフィン3aは、この冷却液非充填空間7に位置するようになっており、冷却状態は、HFE6を沸騰させ、その際に生ずるHFE6の気化によってIGBT1の冷却が行われることから、”気相冷却”と称することができるものであり、発熱性電子部品が絶縁性冷却液中に浸され、発熱性電子部品の熱が絶縁性冷却液によって直接奪われるため、従来と異なり冷却の際の熱抵抗が極めて低く、効率の良い冷却ができ、また、発熱性電子部品全体がほぼ均一に冷却されるため、発熱分布を均一にし、熱応力の発生を防止でき、ひいては、電子回路装置の信頼性の向上に寄与することができる、冷却装置。」
2 周知技術
(1)周知技術1
ア 当審拒絶理由にて引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0016】ヒートパイプなどの熱交換器に封入した作動媒体の蒸発潜熱を利用して半導体素子や電子機器等を冷却する沸騰冷却型の熱交換器が知られている。」
「【0075】本発明の熱伝達媒体は、特定のフッ素化エーテルのいずれかを少なくとも1つ以上含むことを特徴としている。具体的に、1,1,2,2-テトラフルオロ-1-メトキシエタン、2-メトキシ-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、・・・(中略)・・・1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル・・・(中略)・・・を挙げることができる。これらの化合物は単体もしくは2種以上の混合物として使用することができる。」
「【0101】本発明の熱伝達作動媒体は、不燃性かつ環境への負荷が小さく、熱サイクル特性に優れている。そのため、発電システム等に利用される有機ランキンサイクル用作動媒体、蒸気圧縮式冷凍サイクル(ヒートポンプ)システム用作動媒体、吸収式ヒートポンプ、ヒートパイプ等の媒体や、冷却システムまたはヒートポンプシステムのサイクル洗浄用洗浄剤、金属洗浄剤、フラックス洗浄剤、希釈溶剤、発泡剤、エアゾール等」
「【0127】<ヒートパイプ>ヒートパイプとは、パイプ状の容器の一端を蒸発部とし、他端を凝縮部として熱を伝える伝熱素子である。原理としては、パイプの一端が温められると、そこで作動媒体が蒸発して熱を吸収する。次いで、蒸発した気体はパイプの中を拡散し、低温部となる他端で潜熱を放出し凝縮する。作動媒体(液体)は重力や毛管力で再びパイプの高温部となる一端へ戻り高温部から低温部へ熱が輸送される。また、本発明の作動媒体は、ヒートパイプと同様な原理の二相密閉型熱サイフォン装置等の潜熱輸送用システムにも適用可能である。また、ヒートパイプにおける作動液を循環させる駆動力は、重力または毛管力に限定されず、ポンプなどの機械仕事を用いてもよい。【0128】<沸騰冷却器>沸騰冷却器とは、内部に作動媒体が充填された耐圧性を有する密閉容器であり、容器の一端を半導体などの被冷却物と接している部分を蒸発部とし、他端を空気または水などの被加熱流体と接している部分を凝縮部として、熱を伝える熱交換器である。原理としては、沸騰冷却器と接している高温熱源から沸騰冷却器の蒸発部に熱が加えられると沸騰冷却器内部の作動液が蒸発して熱を吸収する。次いで、蒸発した気体は沸騰冷却器の中を拡散し、被加熱流体へと放熱する凝縮部で凝縮潜熱を放出し液体へ戻る。作動媒体(液体)は重力や毛管力で再び蒸発部へ戻り高温部から低温部へ熱が輸送される。沸騰冷却器における作動液を循環させる駆動力は、重力または毛管力に限定されず、ポンプなどの機械仕事を用いてもよい。」
「【0200】[実施例11]外径16mm、肉厚1.0mm、長さ800mmのパイプ状のSUS316製コンテナによって形成された沸騰冷却器のコンテナ内に2-メトキシ-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンを作動媒体として30mL封入した。」
イ 当審拒絶理由にて引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、2-メトキシ-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFE-356mmz)を主成分として含む沸騰冷却器用媒体及びその使用方法に関する。」
「【0017】沸騰冷却器は、耐圧性の密閉容器などの内部に貯留する作動媒体(液)が、発熱体の熱を受けて沸騰する受熱部と、この受熱部で沸騰した作動媒体(蒸気)の熱を外部に放出する放熱部とを有する冷却システムである。原理としては、作動媒体の沸騰及び凝縮による相変化で冷却効果を発現する(後述の実施例1~3参照)。なお、本発明おいて、沸騰冷却器における作動液を循環させる駆動力は、重力または毛管力を利用する方式、ポンプなどの機械仕事を用いる方式など、特に限定されるものではない。【0018】次に、HFE-356mmzについて説明する。【0019】<HFE-356mmz>HFE-356mmzは、分子内にエーテル酸素を含み、水酸基ラジカルとの反応性が高いため、オゾン破壊係数(ODP)や地球温暖化係数(GWP)が極めて小さく環境負荷が小さい。また、HFE-356mmzは微燃性又は難燃性であり、毒性がない。なお、HFE-356mmzの沸点は、大気圧下において50℃、大気寿命は2.0ヶ月(The Journal of Physical Chemistry A 2005,109,4766-4711)、地球温暖化係数(GWP)は、25(Environmental Science & Technology 2008,42,1301-1307)である。」
「【0035】本発明の作動媒体は、液体の蒸発潜熱を利用するヒートパイプなどの冷却システムに広く適用でき、例えば、半導体や電子機器等の冷却器などに利用でき、中でも特に、ハイブリッド車や電気自動車等の車両に搭載されたPCU(パワーコントロールユニット)用冷却器の作動媒体として好適に利用できる。」
ウ 当審拒絶理由にて引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。
「本発明はさらに、式CaFbH2a+2-bOc[式中、a=3~6であり、b=1~14でありそしてc=1または2である]のヒドロフルオロエーテルもしくはフルオロエーテル、式CdFeH2d+2-e[式中、d=4~6でありそしてe=1~14である]の非環式ヒドロフルオロカーボンもしくはフルオロカーボン、式CmFnH2m-n[式中、m=4~6でありそしてn=1~12である]の環式ヒドロフルオロカーボンもしくはフルオロカーボン、式CrFsH2r+1-sOH[式中、r=4~6でありそしてs=1~13である]のフルオロアルコール、またはペルフルオロ-n-メチルモルホリンは、エーロゾル推進剤、クリーニング剤、熱転移媒体、気体状誘電体、消火剤、例えばポリオレフィン類およびポリウレタン類の如き重合体用の膨張剤として、並びに動力サイクル作動流体として用いることができるという発見にも関する。」(20頁15~25行)
「本発明は遠心圧縮冷蔵装置における使用のための冷媒としての、式CaFbH2a+2-bOc[式中、a=3~6であり、b=1~14でありそしてc=1または2である]のヒドロフルオロエーテルもしくはフルオロエーテル、式CdFeH2d+2-e[式中、d=4~6でありそしてe=1~14である]の非環式ヒドロフルオロカーボンもしくはフルオロカーボン、式CmFnH2m-n[式中、m=4~6でありそしてn=1~12である]の環式ヒドロフルオロカーボンもしくはフルオロカーボン、式CrFsH2r+1-sOH[式中、r=4~6でありそしてs=1~13である]のフルオロアルコール、またはペルフルオロ-n-メチルモルホリンの使用に関する。これらの化合物の例には下記のものが包含される:1.1-(ジフルオロメトキシ)-1,1,2-トリフルオロエタン(CHF2OCF2CH2F、245caEαβ、沸点=40℃)、・・・(中略)・・・9.1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-3-メトキシプロパン(CH3OCF2CHFCF3、356mecEγδ、沸点=56.0℃)、10.1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパン((CF3)2CHOCH3、356mmzEβγ、沸点=50.0℃)」(21頁1行~22頁4行)
エ 上記ア~ウの記載について、例えば上記(1)の引用文献1における段落【0014】の記載が示すように、HFEが絶縁性を有することは技術常識であることを考慮すると、
「沸点が50~60℃であり、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含有するフッ素系絶縁性冷媒を、電気電子機器の冷却に用いること」
は周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
(2)周知技術2
ア 国際公開第2018/224908号には、図面とともに次の事項が記載されている。
「In some embodiments, the present disclosure may be directed to an immersion cooling system that includes the above-discussed hydrofluoroolefin-containing working fluids. The immersion cooling systems may be single-phase or two-phase immersion cooling systems.In some embodiments, the immersion cooling systems may operate as two-phase vaporization-condensation cooling systems for cooling one or more heat generating components. As shown in FIG. 1, in some embodiments, a two-phase immersion cooling system 10 may include a housing 10 having an interior space 15. Within a lower volume 15A of interior space 15, a liquid phase 20 of a hydrofluoroolefin-containing working fluid having an upper liquid surface 20A (i.e., the topmost level of the liquid phase 20) may be disposed. The interior space 15 may also include an upper volume 15B extending from the liquid surface 20A up to an upper portion 10A of the housing 10.In some embodiments, a heat generating component 25 may be disposed within the interior space 15 such that it is at least partially immersed (and up to fully immersed) in the liquid phase 20 of the working fluid. That is, while heat generating component 25 is illustrated as being only partially submerged below the upper liquid surface 20A, in some embodiments, the heat generating component 25 may be fully submerged below the liquid surface 20A. In some embodiments, the heat generating components may include one or more electronic devices, such as computing servers.」(9頁12~30行)
(当審訳: いくつかの実施形態では、本開示は、上述のハイドロフルオロオレフィン含有作動流体を含む浸漬冷却システムを対象とし得る。浸漬冷却システムは、単相又は二相浸漬冷却システムであり得る。
いくつかの実施形態では、浸漬冷却システムは、1つ以上の熱発生構成要素を冷却するための二相気化凝縮冷却システムとして動作し得る。図1に示すように、いくつかの実施形態では、二相浸漬冷却システム10は、内部空間15を有するハウジング10を含み得る。内部空間15の下部体積15A内に、上部液体表面20A(すなわち、液相20の最上部レベル)を有するハイドロフルオロオレフィン含有作動流体の液相20が配置され得る。内部空間15はまた、液体表面20Aからハウジング10の上部10Aまで延びる上部体積15Bを含み得る。
いくつかの実施形態では、熱発生構成要素25は、作動流体の液相20に少なくとも部分的に浸漬される(及び完全に浸漬されるまで)ように、内部空間15内に配置されてもよい。すなわち、熱発生構成要素25は上部液体表面20Aの下方に部分的にのみ沈められているように図示されているが、いくつかの実施形態では、熱発生構成要素25は、液体表面20Aの下に完全に沈められてもよい。いくつかの実施形態では、熱発生構成要素は、コンピューティングサーバなどの1つ以上の電子デバイスを含み得る。)
(図1)「
[図:0001405333000002.jpg]
」
イ 米国特許出願公開第2020/0132388号明細書には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0018] Please refer to FIG. 1 to FIG. 2, FIG. 1 is an exploded cross-sectional view of a cooling device and a heat source according to one embodiment of the present disclosure, and FIG. 2 is a cross-sectional view of the cooling device when the heat source is disposed in the cooling device.[0019] This embodiment provides a cooling device 10a (e.g., an immersion cooling device) configured to cool a heat source 20 (e.g., a server). The cooling device 10a includes a tank 100a, a cover 200a and a cooling liquid 300a. The tank 100a includes a bottom surface 110a, a tank inlet 120a and a tank outlet 130a. As shown in the figure, the tank 100a may be placed on a platform P (e.g., a table) in a way that the bottom surface 110a of the tank 100a faces the platform P. The cover 200a is disposed on the tank 100a. In this embodiment and some embodiments of the present disclosure, the cover 200a and the bottom surface 110a are respectively located at two opposite sides of the tank 100a, but the disclosure is not limited thereto. In some other embodiments, the cover and the bottom surface may be located adjacent to each other. In this embodiment, the cover 200a and the tank 100a form a space S therebetween. The space S is configured to accommodate the heat source 20. The cooling liquid 300a is located in the space S. In this embodiment and some embodiments of the present disclosure, a liquid level 310a of the cooling liquid 300a is located farther away from the bottom surface 110a of the tank 100a than the heat source 20, and the heat source 20 is completely immersed in the cooling liquid 300a, but the disclosure is not limited thereto. In some other embodiments, as long as heat generated by the heat source is able to be transferred to the cooling liquid, the heat source may be partially immersed in the cooling liquid. In this embodiment and some embodiments of the present disclosure, the cooling liquid 300a is volatile, non-conductive and low boiling liquid, such as refrigerant, but the disclosure is not limited thereto. In some other embodiments, the cooling liquid may be pure water or liquid fluoride. In this embodiment, when a signal of a wire of the heat source 20 contacting the cooling liquid 300a is 1 kHz, a permittivity of the cooling liquid 300a is close to 1. In this embodiment and some embodiments of the present disclosure, the permittivity of the cooling liquid 300a is approximately 1.8. In this embodiment, when the heat source 20 and the cooling liquid 300a are both accommodated in the space S, heat generated by the heat source 20 is absorbed by the cooling liquid 300a so as to cause the cooling liquid 300a to evaporate into vapor form (e.g., vapor 320a shown in FIG. 2), and the vapor 320a may be discharged out of the space S via the tank outlet 130a, thereby dissipating the heat. Therefore, there would not be too much vapor 320a remaining in the space S, such that less of the vapor 320a would escape from the opening for receiving the cover 200a when the cover is removed.」
(当審訳: [0018] 図1から図2を参照されたい。図1は、本発明の一実施形態による冷却装置及び熱源の断面図であり、図2は、熱源が冷却装置内に配置されたときの冷却装置の断面図である。
[0019] この実施形態は、熱源20(例えば、サーバ)を冷却する冷却装置10a(例えば、浸漬冷却装置)を提供する。冷却装置10aは、タンク100a、カバー200a及び冷却液300aを含む。タンク100aは、底面110a、タンク入口120a及びタンク出口130aを含む。同図に示すように、タンク100aは、タンク100aの底面110aがプラットホームPに対向するように、プラットフォームP(例えば、テーブル)上に配置されてもよい。カバー200aが、タンク100a上に配置される。この実施形態及び本開示のいくつかの実施形態では、カバー200a及び底面110aはそれぞれ、タンク100aの2つの対向する面に配置されているが、本開示はそれに限定されるものではない。いくつかの他の実施形態では、カバー及び底面が互いに隣接して配置されてもよい。この実施形態では、カバー200a及びタンク100aは、それらの間に空間Sを形成する。空間Sは、熱源20を収容するように構成される。冷却液300aは、空間S内に置かれる。この実施形態及び本開示のいくつかの実施形態では、冷却液300aの液面310aが、熱源20よりタンク100aの底面110aから遠い位置に設けられており、熱源20が冷却液300aに完全に浸漬されているが、本開示はそれに限定されるものではない。いくつかの他の実施形態では、熱源で発生した熱を冷却液に伝えることができるのであれば、熱源は部分的に冷却液に浸漬してもよい。この実施形態及び本開示のいくつかの実施形態において、冷却液300は、冷媒等の、揮発性、非導電性及び低沸点の液体であるが、本開示はそれに限定されるものではない。いくつかの他の実施形態では、冷却液は、純水またはフッ化物であり得る。この実施態様において、冷却液300aに接する熱源20のワイヤの信号が1kHzであるとき、冷却液300aの誘電率は1に近い。この実施形態及び本開示のいくつかの実施形態において、冷却液300aの誘電率は約1.8である。この実施形態では、熱源20と冷却液300aは、空間Sに収容されると、熱源20により発生した熱が冷却液300aで吸収されることにより、冷却液300aが蒸気の形態(例えば、図2に示す蒸気320a)とされ、そして、蒸気320aがタンク出口130aを介して空間Sの外に排出され得、これにより、熱が放散される。それ故、空間S内に残留している蒸気320aが過剰には存在しなくなり、カバーを取り外したときに、カバー200aを受容するための開口部から出る蒸気320aが減少する。)
(図2)「
[図:0001405333000003.jpg]
」
ウ 上記ア、イの記載は、いずれも、
「液浸冷却装置において、熱源が冷媒内に部分的に浸されてもよく、完全に浸されてもよいこと」
との技術的事項を開示しているといえるものであり、当該技術的事項は周知技術(以下「周知技術2」という。)である。
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「発熱性電子部品」は、本願発明の「電気電子機器」に相当する。
(2)引用発明の「絶縁性冷却液としてのHFE6」は、本願発明の「フッ素系絶縁性冷媒」に相当する。
(3)引用発明は、「収納ケース2に発熱性電子部品が絶縁性冷却液としてのHFE6に浸漬されて収納される」ものであるから、「収納ケース2」は、冷媒としての「HFE6」を貯留する槽であるといえる一方、水が貯留されるものではない。
この点について、上記(2)を踏まえると、引用発明の「発熱性電子部品が絶縁性冷却液としてのHFE6に浸漬されて収納される」「収納ケース2」は、本願発明の「前記フッ素系絶縁性冷媒を貯留する冷媒槽(但し、水が貯留された冷媒槽を除く)」に相当する。
(4)上記(1)、(2)を踏まえると、引用発明の「発熱性電子部品が絶縁性冷却液としてのHFE6に浸漬され」ことと、本願発明の
「前記電気電子機器が、前記フッ素系絶縁性冷媒内に部分的に浸され」る
こととは、
「前記電気電子機器が、前記フッ素系絶縁性冷媒内に浸され」る
ことである点で一致する。
(5)引用発明の「冷却装置」は、「発熱性電子部品」と、「HFE6」と、「収納ケース2」とを備える、液浸の冷却装置であるといえる一方で、水冷ジャケットと、冷却水を冷却する冷却装置と、前記冷却装置が冷却した冷却水を配管を介して前記水冷ジャケットへ送出するポンプとを含むものではないことが明らかである。
そうすると、引用発明の「冷却装置」は、後述する相違点を除き、本願発明の「液浸冷却装置(但し、水冷ジャケットと、冷却水を冷却する冷却装置と、前記冷却装置が冷却した冷却水を配管を介して前記水冷ジャケットへ送出するポンプとを含むものを除く)」に相当する。
2 上記1から、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
「電気電子機器と、フッ素系絶縁性冷媒と、前記フッ素系絶縁性冷媒を貯留する冷媒槽(但し、水が貯留された冷媒槽を除く)と、を備え、前記電気電子機器が、前記フッ素系絶縁性冷媒内に浸される、液浸冷却装置(但し、水冷ジャケットと、冷却水を冷却する冷却装置と、前記冷却装置が冷却した冷却水を配管を介して前記水冷ジャケットへ送出するポンプとを含むものを除く)。」
3 また、本願発明と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明の「前記電気電子機器」は、「前記フッ素系絶縁性冷媒内に部分的に浸され」るのに対して、引用発明の「発熱性電子部品」は、「HFE6に浸漬され」るものの、「浸漬」が「部分的に」なされることが特定されるものではない点。
(相違点2)
本願発明の「フッ素系絶縁性冷媒」は、「沸点が50~60℃であり」、かつ「1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含有する」のに対して、引用発明の「HFE6」は、沸点が「50~60℃」であることが特定されるものではなく、そのような成分を含有することが特定されるものでもない点。
第6 当審の判断
以下、相違点1、2について検討する。
1 相違点1について
上記第4の2(2)ウの周知技術2、すなわち「液浸冷却装置において、熱源が冷媒内に部分的に浸されてもよく、完全に浸されてもよいこと」において、「熱源」の温度特性等に応じて、適切な冷却が可能な範囲で、「浸される」ことが「部分的に」行われる場合及び「完全に」行われる場合のうちのいずれかの態様が選択可能であることは、当業者には明らかである。
また、冷媒の使用量を極力減らすことは、冷却装置における一般的な技術課題である。
そうすると、引用発明において、「発熱性電子部品」の温度特性等を考慮の上、周知技術2のうち、「液浸冷却装置において、熱源が冷媒内に部分的に浸され」る態様を適用して、「発熱性電子部品」が、「HFE6」に「部分的に」「浸漬され」るものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
2 相違点2について
上記第4の2(1)エのとおり、「沸点が50~60℃であり、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含有するフッ素系絶縁性冷媒を、電気電子機器の冷却に用いること」は周知技術(周知技術1)である。
一方、引用文献1の段落【0015】には、「HFE6は、IGBT1のジャンクション温度の上限値よりも低い温度に沸点を有するものが好適である。」との記載があり、また、段落【0019】には、「冷却装置」の「冷却対象」を「IGBT」ではなく「他の発熱性電子部品」にも同様に適用できる旨の記載があり、これらの記載によれば、引用発明における「絶縁性冷却液」は、その沸点が、冷却対象とする「発熱性電子部品」の温度特性に適合するように設定されるものである。
そうすると、引用発明において、「絶縁性冷却液」として、特定の「発熱性電子部品」の温度特性に適合するように、周知技術1に係るフッ素系絶縁性冷媒を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
3 作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術(周知技術1、2)から当業者が容易に予測し得る程度のものにすぎない。
4 請求人の主張について
請求人は令和5年7月27日提出の意見書において、引用文献1の記載(「発明の効果」欄の記載(段落【0007】)、段落【0013】、【0017】、【0018】の各記載)について、発熱性電子部品がHFE中に完全に浸されていることが理解できるとした上で、このような引用文献1に記載された発明を引用発明とする前提において、当業者が仮に引用文献2~4(周知技術文献)の記載を参酌したとしても、引用文献1から、電気電子機器がフッ素系絶縁性冷媒内に部分的に浸されている構成を必須とする本願発明は容易に想到し得ないことは明らかである旨、主張している。
しかしながら、請求人が指摘する引用文献1の記載を考慮しても、引用発明において、「発熱性電子部品」が「HFE6」に完全に浸されていることが、所期の作用効果を得るために必須であるとまではいえない。
そうすると、周知技術2のうちの「液浸冷却装置において、熱源が冷媒内に部分的に浸され」る態様を引用発明に適用することに、阻害要因があるとは認められない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
5 小括
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-011902