特許拒絶査定不服審判
2022-011560
環境監視システムおよび環境監視プログラムおよび環境監視記録媒体および環境監視装置
- 審判番号
- 2022-011560
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-205271
- 請求日
- 2022年07月26日
- 審決日
- 2024年03月06日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】環境リサーチ株式会社
- 【請求人代理人】友野 英三
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 田辺 正樹
- 分類
- P18 .57 -WZ (G01D) / P18 .575-WZ (G01D) / P18 .121-WZ (G01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-205271号「環境監視システムおよび環境監視プログラムおよび環境監視記録媒体および環境監視装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年6月17日出願公開、特開2021-92385号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月10日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 3月18日付け:拒絶理由通知
同年 4月 5日 :先の出願に基づく優先権主張取下書
同年 7月26日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月27日付け:拒絶理由通知
令和4年 2月 3日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月20日付け:拒絶査定
(同月26日 :拒絶査定の謄本の送達)
同年 7月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 5月12日付け:拒絶理由通知書
同年 7月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月19日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年12月25日 :意見書、手続補正書の提出
なお、令和5年10月19日付けで当審において通知した拒絶理由を、以下「当審拒絶理由」という。
第2 令和5年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月25日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和5年12月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前(令和5年7月18日に提出された手続補正書により補正された後)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
室内または屋外の作業環境を監視する作業環境常時監視システムであって、
-作業者が作業を行う環境の状態を判定する指標となる情報である環境情報および調査対象についての状態情報をリアルタイムで測定するセンサと、前記センサによって測定された前記環境情報および前記状態情報をリアルタイムで送信する通信手段とを有する環境監視装置と、
-前記環境監視装置と離間して設けられ、前記環境監視装置からリアルタイムで送信された前記環境情報および前記状態情報を記憶し、前記環境情報および前記状態情報の値の変化と前記環境情報および前記状態情報の値の閾値の超えることとを演算することによって前記状態情報を「快適、不適」、「適合、不適合」、「健全、注意、異常」、「漏洩発生、漏洩無し」のうちの少なくともいずれかの状態情報に分類し、かかる演算結果を保存するサーバ装置と、
-前記サーバ装置に保存された前記演算結果を受信しうる外部通知装置と
を有し、前記作業環境をリアルタイムで監視する作業環境常時監視システムであり、
前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味することを検知する手段をさらに備えることを特徴とする作業環境常時監視システム。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
室内または屋外の作業環境を監視する作業環境常時監視システムであって、
-作業者が作業を行う環境の状態を判定する指標となる情報である環境情報および調査対象についての状態情報をリアルタイムで測定するセンサと、前記センサによって測定された前記環境情報および前記状態情報をリアルタイムで送信する通信手段とを有する環境監視装置と、
-前記環境監視装置と離間して設けられ、前記環境監視装置からリアルタイムで送信された前記環境情報および前記状態情報を記憶し、前記環境情報および前記状態情報の値の変化と前記環境情報および前記状態情報の値の閾値の超えることとを演算することによって前記状態情報を「快適、不適」、「適合、不適合」、「健全、注意、異常」、「漏洩発生、漏洩無し」のうちの少なくともいずれかの状態情報に分類し、かかる演算結果を保存するサーバ装置と、
-前記サーバ装置に保存された前記演算結果を受信しうる外部通知装置と
を有し、前記作業環境をリアルタイムで監視する作業環境常時監視システムであり、
作業環境で働く労働者が有害な因子にどの程度さらされているのかを把握するために、前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化を検知し将来の状態情報を予測する手段をさらに備えることを特徴とする作業環境常時監視システム。」
2 本件補正の目的についての当審の判断
本件補正は、請求項1について、次の補正事項を含むものである。
<補正事項>
本件補正前の
「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味することを検知する手段をさらに備えること」
という記載を、本件補正後には、
「作業環境で働く労働者が有害な因子にどの程度さらされているのかを把握するために、前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化を検知し将来の状態情報を予測する手段をさらに備えること」
に変更すること。
(1) 発明特定事項の限定について
上記補正事項は、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味することを検知する手段」を削除して、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化を検知し将来の状態情報を予測する手段」を新たに追加するものであり、本件補正前の発明特定事項を限定するものであるとはいえない。
なお、上記補正事項は、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味すること」を「検知する手段」を、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化」を「検知し将来の状態情報を予測する手段」とするものであるところ、両者は「検知」する対象が異なり、また「検知」と「予測」は、別の動作・処理であるから、上記補正事項は、本件補正前の「検知する手段」を限定するものであるとはいえない。
(2) 解決しようとする課題の同一性について
本件補正前の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題には、「早急に対策が必要となる何らかの事態」の「発生」に備えるという課題が含まれるところ、「早急に対策が必要となる何らかの事態」には、「作業環境で働く労働者が有害な因子にどの程度さらされているのか」という人的要素に関連しない事態が含まれているから(「作業環境で働く労働者」の人体には影響がなくとも、「作業環境」自体には影響するため「早急に対策が必要となる」「事態」を想定することは可能である)、本件補正の前後において、発明の解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
(3) 小括
前記(1)及び(2)を踏まえると、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、特許法17条の2第5項1号、3号又は4号に規定するいずれを目的としたものに該当しないことも明らかである。
以上より、本件補正は、特許法17条の2第5項各号に規定するいずれを目的としたものにも該当しない補正であり、同項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正が、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると仮に認めたとしても、以下に詳述するとおり、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるとの結論に変わりはない。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものである。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由において引用された文献である、特開2001-325682号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。以下同様である。
a 段落【0001】~【0004】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、環境の振動、騒音、水位、水質などを計測し、計測結果を遠隔地の管理端末で閲覧可能に収集する環境監視システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、建設現場などでは、建設作業が周囲の環境にどのような影響を与えるかを監視、調査するために、建設現場の周囲の環境における振動、騒音、(地下)水位、(排水)水質などを計測装置によって計測し、コンピュータなどの管理端末で計測データを集計したり、グラフ化したりするなどしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技術では、計測装置が設置される建設現場と、管理端末が設置される管理地とが離れている場合、リアルタイムでデータ分析を行うことが難しいという問題があった。また、管理端末により集計し、グラフ化した情報は、インターネットやイントラネットを介してアクセスしてきた端末のWebブラウザにより閲覧できるように、Webサーバ上に登録されていた。しかしながら、従来技術では、管理端末とWebサーバとは別体であったため、登録作業、管理作業が煩雑になるという問題があった。
【0004】この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、計測値の登録作業、管理作業を軽減することができるとともに、端末によりリアルタイムで閲覧することができる環境監視システムを提供することを目的とする。」
b 段落【0011】~【0014】、【図1】、【図3】
「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
A.実施形態の構成
図1は、本発明の実施形態による全体の構成を示すブロック図である。図において、騒音計1は、環境の騒音をマイクロフォンなどにより計測し、直流電圧で変換器3に供給する。振動計2は、環境の振動をピックアップなどにより計測し、デシベル値(dB値)を±10Vの電圧に変換して変換器3に供給する。なお、計測装置としては、図示する騒音計1や振動計2以外に、(地下)水位、(排水)水質を計測する計測装置を加えてもよい。また、計測装置としては、計測値を電圧信号(アナログ)で出力できる機能を有するもので、例えば、電圧出力範囲が±10Vであればよい。
【0012】変換器3は、上記騒音計1、振動計2からの計測値ASをデジタルデータDDに変換し、環境監視装置4に供給する。図3に示すように、該変換器3において、計測装置が出力するアナログ電圧をサンプリングする計測データ取得時間間隔Tは、最小1秒間隔から任意に設定可能となっている。なお、変換器3に所定のプログラムを組み込むことにより、最小時間間隔以下でも、測定値を取り込むことが可能である。
【0013】環境監視装置4は、上記変換器3からのデジタルデータDDを出力特性に応じて予め設定された「変換式」により、計測単位のデータへ変換した後、グラフ化して、アクセスしてきた端末のWebブラウザにより閲覧できるように、HTMLまたはXMLなどのマークアップ言語によりWebページを自動作成するようになっている。また、環境監視装置4は、上記計測値が予め設定された管理値を超えたことを感知すると、ネットワーク5を介して、管理者のメールアドレスに警報メール(計測値、グラフを含む)を自動的に送信する。これにより、後述する端末6に加えて、その他の図示しない携帯端末、携帯電話、PHSなどにより、警報メールを受信することが可能となり、管理者に対して緊急呼び出しを行うことができる。なお、上述したグラフ、警報メールの内容は、定型化されており、コンピュータ、携帯端末、携帯電話、PHSなどの各種機器に対して送信可能となっている。また、環境監視装置4は、周知のソフトウェアにより容易に編集可能とするために、計測値をCSV形式で、一定時間間隔(例えば、10分間隔)で内蔵されたFTPサーバに蓄積する。
【0014】端末6は、管理者や技術スタッフなどのユーザにより用いられ、ネットワーク5に接続可能な機能を備え、HTMLまたはXMLなどのマークアップ言語により記述されたWebページを閲覧するためのWebブラウザを用いることができるようになっている。端末6は、ネットワーク5を介して上記環境監視装置4にアクセスし、Webブラウザにより計測値や、グラフをリアルタイムで閲覧するようになっている。このように、端末4では、Webブラウザだけで全て操作することができ、端末には特別なソフトウェアは不要である。また、端末4(当審注:図1及び前後の記載から「端末6」の誤記であることは明らかである。)は、環境監視装置4に内蔵されているFTPサーバに保存されたCSV形式の測定値をダウンロードし、所定のデータ処理ソフトウェアにより、測定値を加工して報告書などを作成することも可能となっている。」
「【図1】
[図:0001409599000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001409599000002.jpg]
」
c 段落【0015】~【0018】、【図2】
「【0015】次に、図2は、上述した環境監視装置4の詳細な構成を示すブロック図である。インターフェース10は、変換器3からのデジタルデータDDを受信し、計測値変換部11へ供給する。本実施形態では、上記インターフェース10として、シリアルインターフェースや汎用インターフェースを用いている。特に、シリアルインターフェースとしては、RS232C×2ポートを備え、このうち、1ポートは、RS232/422/485に設定可能となっている。また、汎用インターフェースは、絶縁入出力を各2点備え、モジュール単位(4点、8点)で任意に増設することが可能となっており、これにより、計測点数も増設可能である。
【0016】計測値変換部11は、デジタルデータDDを出力特性に応じて予め設定された「変換式」により、計測単位のデータMDへ変換する。例えば、騒音であれば、デジベルへ変換することになる。メモリ12は、上記測定単位のデータMDを順次記憶していく。グラフ作成部13は、メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出してグラフ化し、WWWサーバ14へ供給する。該グラフ作成部13は、例えば、Javaアプレットにより構成される。WWWサーバ14は、上記グラフ化されたデータを、アクセスしてきた端末のWebブラウザにより閲覧できるように、HTMLまたはXMLなどのマークアップ言語によりWebページを自動作成する。Webページには、計測値がリアルタイムでグラフ化される。
【0017】次に、異常監視部15は、メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出して予め設定された警報設定値16と比較し、上記データMDが警報設定値16を超えたことを感知すると、その旨をメール送信部17に通知する。メール送信部17は、管理者のメールアドレス宛に警報メール(計測値、グラフを含む)を自動的に作成し、後述するインターフェースを介して送信する。次に、データ転送部18は、メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出してCSV形式に変換し、一定時間間隔(例えば、10分間隔)でFTPサーバ19に転送する。FTPサーバ19は、一定時間間隔で転送されてくるCSV形式のデータを所定の時間分(例えば、1時間)毎に1つのファイルとして保存する。
【0018】次に、LANインターフェース20は、ネットワーク5に接続するためのイーサネット(登録商標)インターフェース(例えば、10/100BASE-Tなど)である。上述したWWWサーバ14、FTPサーバ19およびメール送信部17は、LANインターフェース20を介して、ネットワーク5に接続される。また、インターフェース21には、モデム22、携帯電話/PHS23、無線LAN24などが接続されている。これは、計測地点がインターネット/イントラネットなどのネットワーク5に接続できない環境にある場合に、端末6が公衆回線、携帯電話、無線LANによりWWWサーバ14やFTPサーバ19に接続するために用いられる。また、この場合、メール送信部17で作成された警報メールも該インターフェース21を介したリモートアクセスを用いて送信されることになる。このように、環境監視装置4は、リモートアクセスサーバ機能を有しており、LANインターフェース20による接続、インターフェース21によるPPP接続の両方で同時に接続可能となっている。」
「【図2】
[図:0001409599000003.jpg]
」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「環境の振動、騒音、水位、水質などを計測し、計測結果を遠隔地の管理端末で閲覧可能に収集する環境監視システムであって、(【0001】)
建設現場などにおいて、建設作業が周囲の環境にどのような影響を与えるかを監視、調査するためのものであって、(【0002】)
端末によりリアルタイムで閲覧することができるものであり、(【0004】)
環境の騒音をマイクロフォンなどにより計測し、直流電圧で変換器3に供給する騒音計1と、環境の振動をピックアップなどにより計測し、デシベル値(dB値)を±10Vの電圧に変換して変換器3に供給する振動計2を備えており、(【0011】)
変換器3は、上記騒音計1、振動計2からの計測値ASをデジタルデータDDに変換し、環境監視装置4に供給するものであり、
該変換器3において、計測装置が出力するアナログ電圧をサンプリングする計測データ取得時間間隔Tは、最小1秒間隔から任意に設定可能となっており、変換器3に所定のプログラムを組み込むことにより、最小時間間隔以下でも、測定値を取り込むことが可能であり、(【0012】)
環境監視装置4の構成として、
変換器3からのデジタルデータDDを受信し、計測値変換部11へ供給するインターフェース10と、(【0015】)
デジタルデータDDを出力特性に応じて予め設定された「変換式」により、計測単位のデータMDへ変換する計測値変換部11と、
上記測定単位のデータMDを順次記憶するメモリ12と、
メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出してグラフ化し、WWWサーバ14へ供給するグラフ作成部13と、
上記グラフ化されたデータを、アクセスしてきた端末のWebブラウザにより閲覧できるように、HTMLまたはXMLなどのマークアップ言語によりWebページを自動作成するWWWサーバ14であり、Webページには、計測値がリアルタイムでグラフ化されるWWWサーバ14と、(【0016】)
メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出して予め設定された警報設定値16と比較し、上記データMDが警報設定値16を超えたことを感知すると、その旨をメール送信部17に通知する異常監視部15と、
管理者のメールアドレス宛に警報メール(計測値、グラフを含む)を自動的に作成し、インターフェースを介して送信するメール送信部17と、
メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出してCSV形式に変換し、一定時間間隔(例えば、10分間隔)でFTPサーバ19に転送するデータ転送部18と、
一定時間間隔で転送されてくるCSV形式のデータを所定の時間分(例えば、1時間)毎に1つのファイルとして保存するFTPサーバ19と、を有し、(【0017】)
端末6は、管理者や技術スタッフなどのユーザにより用いられ、ネットワーク5に接続可能な機能を備え、HTMLまたはXMLなどのマークアップ言語により記述されたWebページを閲覧するためのWebブラウザを用いることができるようになっており、
端末6は、ネットワーク5を介して上記環境監視装置4にアクセスし、Webブラウザにより計測値や、グラフをリアルタイムで閲覧するようになっており、
端末6は、環境監視装置4に内蔵されているFTPサーバに保存されたCSV形式の測定値をダウンロードし、所定のデータ処理ソフトウェアにより、測定値を加工して報告書などを作成することも可能となっている、(【0014】)
環境監視システム。」
イ 引用文献19、20、21に記載された事項と技術常識1、2の認定
(ア) 引用文献19に記載された事項
当審拒絶理由において引用された文献である、山田伸志「騒音・振動・低周波音の複合影響」騒音制御、Vol.22、No.5、1998年、239~242頁(以下「引用文献19」という。)には、次の事項が記載されている。
「2. 騒音と振動の複合影響
音の発生原因の多くは物体の振動であり,振動と騒音は同時に発生していることが多い。しかし,音に対する人間の感度が良いために,多くは騒音のみが検知されている。しかし,重量物が運動すると騒音と同時に振動が知覚され,その複合影響を検討する必要がある。騒音と振動の影響を考える場合,振動が騒音に及ぼす影響を知りたい場合と,騒音が振動に及ぼす影響を知りたい場合,あるいはその総合的影響を知りたい場合で,被験者に対する言葉による指示が異なる。振動による騒音への影響が知りたい場合は,「振動がある場合と無い場合とで,騒音のうるささがどう違うか」を判定させる。
筆者は通常の可聴音と振動の複合影響については実験を行っていないが,いくつかの研究が行われており,その研究状況を文献から紹介する。
徳山1)の研究では,騒音の大きさの判断は,振動があることによっても影響を受けない。不快感は振動よりも騒音に強く影響される。日常生活を想定した実験では,騒音と振動の複合によって,不快感が増強することも有り得る。結論としては,とりあえず,騒音,振動は独立に評価しても差し支えない。」(239頁右欄1~22行)
(イ) 引用文献20に記載された事項
当審拒絶理由において引用された文献である、徳山久雄「騒音と振動の複合入力による感覚反応」騒音制御、Vol.6、No.3、1982年、157~161頁(以下「引用文献20」という。)には、次の事項が記載されている。
「図-9および図-10は騒音と振動を同時に暴露した場合の,騒音のうるささおよび振動の強さと総合的不快感(複合と表示)の関係を示したものである。
これらから,複合不快感には騒音のうるささが強く関与していることがわかり,振動の感覚が弱い範囲では複合不快感に影響を与えず,強く感じるようになると不快感として現われるとみられる。このことは騒音のうるささの判断と振動の強さの判断の精度の相違を示唆している。騒音と振動のどちらがじゃまか2),またはどちらを低くしたいか3)等を調べることにより,両刺激の等価値を求めることも可能である。」(160頁左欄最終行~同頁右欄11行)
「図-9
[図:0001409599000004.jpg]
」
「図-10
[図:0001409599000005.jpg]
」
(ウ) 引用文献21に記載された事項
当審拒絶理由において引用された文献である、横島潤紀、田村明弘「新幹線鉄道の騒音と振動による複合被害感」日本音響学会誌62巻9号、2006年、645~653頁(以下「引用文献21」という。)には、次の事項が記載されている。
「5. 騒音と振動による複合被害感
既往の研究の多くは,社会調査から得られた指標を直接用いて,騒音や振動に対する住民反応の構造を探ってきた。しかし,複雑に込み入った現象である住民反応は直接的には観測できないものである。このような現象を理解することを目的とし,社会科学系の分野では,直接的に観測できない現象を構成概念として,その存在を仮定することがある。構成概念自体は直接観測することはできないが,因果関係があり直接的に観測できる変数により,間接的にではあるが観測することが可能となる。このような構成概念を潜在変数として導入し,変数間の階層的な因果関係を同定する手法として共分散構造分析がある。騒音や振動に対する住民反応の評価構造に関する研究において,この共分散構造分析を用いた事例は数少なく,筆者ら[18],森原ら[19]が報告を行っている程度である。本報では,前節までの結果から戸建住宅を対象として,騒音と振動による「複合被害感」を構成概念として導入し,複合被害感のモデルを作成した。このモデルに共分散構造分析を適用することにより,騒音と振動それぞれの暴露量から複合被害感への影響度を明らかにすることを試みた。」(650頁右欄下から6行~651頁左欄下から4行)
「このことから,本モデルでは,騒音と振動それぞれの暴露量が大きい場合には,生活影響に対する反応は生起し易く,複合被害感も強くなる。そして,この複合被害感を直接的に観測できる騒音被害感,振動被害感も強くなることを示している。すなわち,騒音暴露量が同じレベルでも,振動暴露量が大きい場合には,騒音被害感に対する反応がより厳しくなることを意味している。振動被害感についても同様に説明可能である。」(651頁右欄下から11~3行)
(エ) 技術常識1、2の認定
前記(ア)~(ウ)に摘記した事項に例示されるように、次の二つの技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」及び「技術常識2」という。)。
[技術常識1]
「騒音と振動が同時に知覚される場合、騒音と振動の複合的影響を検討して、不快感や被害感という指標により影響の度合いを評価すること。」
[技術常識2]
「騒音と振動の影響を考える際には、振動が騒音に及ぼす影響を知りたい場合、騒音が振動に及ぼす影響を知りたい場合、あるいはその総合的影響を知りたい場合の三つの場合が考えられること。」
ウ 引用文献22に記載された事項と周知技術1の認定
(ア) 引用文献22に記載された事項
当審拒絶理由において引用された文献である、特許第4683671号公報(以下「引用文献22」という。)には、次の事項が記載されている。
a 段落【0020】~【0024】、【図1】
「(本実施の形態に係る環境監視システムの概要)
【0020】
図1を用いて、本実施の形態に係る環境監視システム100の概要について説明する。図1は、環境監視システム100の概要を説明するための図である。図1で示すように、環境監視システム100は、各地に設置した測定局A、B、Cなどにおいて大気・気象・水質などの環境に関するデータ362を計測し、当該計測データ362をサーバ装置300にて分析・調査を行うシステムである。
【0021】
ここで、測定局A、B、Cには、計測対象となる環境情報に応じて1台以上の計測機器200が備えられる。また、計測機器200は、各種計測データを収集する際、自身の稼働状態を示す機器状態パラメータ364を記録する。機器状態パラメータ364とは、例えば、温度、気圧、流量などである。
【0022】
各測定局A、B、Cにおける計測データ362及び機器状態パラメータ364は、通信ネットワークを介してサーバ装置300へ送信される。そして、サーバ装置300は、受信した計測データ362に基づき計測データ362が正常であるか否かを判定すると共に、受信した機器状態パラメータ364に基づき計測機器200の動作状態が正常であるか否かを判定する。計測データ362及び機器状態パラメータ364に基づく判定処理は、予め用意された所定の基準と比較する形態で自動的に実行される。
【0023】
上記の判定処理において、計測データ362又は機器200の動作状態に異常があると判定された場合、サーバ装置300は、通信ネットワークを介して監視担当者が有する端末400へ、その旨を通知する。これにより、監視担当者は、特定の計測機器200において異常が発生したことを知ることができ、必要が有れば、該当する測定局へ赴き対処することができる。
【0024】
また、サーバ装置300は、異常があると判定された計測機器200に対し通信ネットワークを介して、機器の校正、制御パラメータの更新、機器の初期化などの実行指示を通知する。一方で、実行指示を受けた計測機器200は、当該実行指示に従った制御を行い、自機のメンテナンスを行う。これにより、異常が有ると判定された計測機器200は、遠隔地にあるサーバ装置300からの操作によって、通常動作への復帰が可能となる。」
「【図1】
[図:0001409599000006.jpg]
」
b 段落【0026】、【図2】
「【0026】
(本実施の形態に係る環境監視システムの動作原理)
図2乃至8を用いて、本実施の形態に係る環境監視システム100の動作原理を説明する。図2は、環境監視システム100の機能ブロック図である。図2で示すように、環境監視システム100は、計測機器200、サーバ装置300、端末400を有し、計測機器200、サーバ装置300、端末400はそれぞれ通信ネットワークを介して接続される。」
「【図2】
[図:0001409599000007.jpg]
」
(イ) 周知技術1の認定
前記(ア)に摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
[周知技術1]
「計測機器、サーバ装置、端末を有し、計測機器、サーバ装置、端末はそれぞれ通信ネットワークを介して接続される環境監視システムにおいて、計測機器からみて、サーバ装置を遠隔地に配置すること。」(段落【0024】、【0026】を参照)
エ 引用文献24、25に記載された事項と周知技術7の認定
(ア) 引用文献24に記載された事項
当審拒絶理由において引用された文献である、特開平9-119854号公報(以下「引用文献24」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0008】
【発明の実施の形態】
-第1の実施の形態-
図1を用いて第1の実施の形態を説明する。図5と同一の箇所には同一符号を付して相違点を主に説明する。8Aはチャンバ1内に設けられたセンサ群で、チャンバ1内の温度、湿度、気圧、振動を、それぞれ温度センサ81A、湿度センサ82A、気圧センサ83A、振動センサ84Aで測定し、その測定結果は測定装置2の制御装置3に入力される。温度センサ81A、湿度センサ82A、気圧センサ83Aは測定部7の近傍に設置し、振動センサ84Aは加速度計を使用して被測定物の基板が搭載される不図示のステージに設置する。8Bはチャンバ1外部に設けられたセンサ群で、チャンバ1外部の温度、湿度、気圧、振動を、それぞれ同様に温度センサ81B、湿度センサ82B、気圧センサ83B、振動センサ84Bで測定し、その測定結果は制御装置3に入力される。温度センサ81B、湿度センサ82B、気圧センサ83Bは、チャンバ1外部の適当な位置に設置し、加速度計である振動センサ84Bはチャンバ1が置かれているクリーンルームの床に設置する。
【0009】制御装置3には、チャンバ1内部の設置環境仕様とチャンバ1外部の設置環境仕様の両方が設定されており、どちらかの仕様あるいは両方の仕様を満足しない場合を設置環境仕様の異常と判断する。設置環境仕様としては、各環境項目において静的な仕様である絶対値と、動的な仕様である変化率とが規定されている。静的な絶対値による規定とは、例えば温度において、チャンバ1内の温度が35゜Cを超えた場合は異常であるとする場合、この35゜Cの規定が静的な絶対値としての規定である。また、動的な仕様の変化率とは、同様に温度において、単位時間あたりの温度変化、例えば1分間あたりの温度変化が2゜C以上あった場合を異常とする場合、この2゜C/分が動的な変化率としての規定である。チャンバ1内部およびチャンバ1外部の各設置環境仕様は、実験および経験値により最適な値が設定される。」
「【図1】
[図:0001409599000008.jpg]
」
(イ) 引用文献25に記載された事項
当審拒絶理由において引用された文献である、特開2003-328774号公報(以下「引用文献25」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0021】図1は第1の実施の形態の説明に適用されるガスタービンコンパートメント内監視システムの概略構成を示す図である。
【0022】当該ガスタービンコンパートメント2内には内設物1が設けられている。この内設物1としては、例えばガスタービン空気圧縮機、燃焼器、タービン等が例示でき、また燃料供給系統配管には燃焼器に燃料を供給する燃料配管が例示できる。
【0023】そして、ガスタービンコンパートメント2は、ガスタービン本体からの放射熱やガスタービン運転により発生する騒音等を遮蔽している。
【0024】また、ガスタービンコンパートメント2内には、複数の状態量計測装置3が複数設置されて、燃料ガスや酸素及びその生成物である一酸化炭素や二酸化炭素等のガス濃度が計測できるようになっている。
【0025】状態量計測装置3からの信号は、図示しない演算器に入力し、当該演算器でガスタービンコンパートメント2内のガス濃度分布や濃度分布変化率が演算されることによりガス漏位置を特定するようになっている。
【0026】なお、当該ガス漏位置の特定を高精度、かつ、効率的に行うために、状態量計測装置3の設置場所や設置間隔等は予め計画されていることは言うまでもない。
【0027】演算器による、ガスタービンコンパートメント2内のガス濃度分布やガス濃度変化率から、ガス漏位置を特定する方法としては、以下の方法が可能である。
【0028】第1の方法としては、複数の状態量計測装置3から信号に基づき3次元空間でのガス濃度分布を求め、その内で最もガス濃度が高い位置を最高ガス濃度点とする。
【0029】次に、最高ガス濃度点に隣接する複数の計測点における計測データのうち、この最高ガス濃度点に最も近いガス濃度を示す計測点を求めて隣接最高ガス濃度点とする。
【0030】これにより最高ガス濃度点と隣接最高ガス濃度点との間に、ガス漏位置があることが特定できる。
【0031】また、第2の方法としては、各計測点でのガス濃度の時間変化率を算出してガス濃度変化率とし、当該ガス濃度変化率が最も大きい値の計測点を最大ガス濃度変化率点とする。」
「【0042】なお、ガス漏れの場合には、燃料ガス、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素等の種々のガス漏れを監視するため、各種類のガスについてこのような監視、ガス漏位置の特定が行われ、また振動、騒音、温度についても同様にして異常発生位置の特定が行われる。」
「【図1】
[図:0001409599000009.jpg]
」
(ウ) 周知技術7の認定
前記(ア)及び(イ)に摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術7」という。)。
[周知技術7]
「監視システムのセンサが計測した振動や騒音等の状態量の単位時間当たりの変化に基づいて、監視対象の異常を検知すること。」
オ 引用文献26に記載された事項と周知技術8の認定
(ア) 引用文献26に記載された事項
この審決において新たに引用する文献である、特開2002-6046号公報(以下「引用文献26」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は放射線測定装置及び方法に関し、特に線量率及び積算線量を演算する個人線量計に関する。
【0002】
【従来の技術】個人線量計は、原子力発電所、核燃料処理施設、放射線取扱施設などにおいて、各作業者の被ばく管理のために各作業者に携帯される。具体的には、個人線量計が各作業者の胸ポケット(男性の場合)もしくは腹部(女性の場合)に装着され、その状態で線量率や積算線量が計測される。個人線量計の中には、線量率や積算線量が一定値以上になった場合にアラームを出力したり振動を発生させるものがある。そのような報知がなされると、作業者は線量計の表示部に表示される線量率や積算線量を確認した上で、作業区域から退避する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の個人線量計においては、あとどのくらいで積算線量の上限に到達するのかの情報までは提供されていない。よって、緊急作業時などにおいて、どのタイミングで退避を行えばよいかを把握できないという面がある。この問題は、他の放射線測定装置においても同様に指摘され、すなわち、線量率変化の予測とその予測に基づく動作を行う装置は実現されていない。
【0004】本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、線量率の変化の予測に基づいて報知を行える放射線測定装置及び方法を提供することにある。」
「【0020】図1及び図2には、本発明に係る放射線測定方法の好適な実施形態が示されており、図1及び図2は本発明に係る方法の原理を説明するための図である。
【0021】図1に示すグラフの横軸は時間軸であって、その縦軸は線量率を表している。T0は現在の時刻を表している。その現在の時刻に至るまでの線量率の変化が曲線(実線)100,102,104によって表されている。ちなみに、各曲線は例示である。
【0022】本発明に係る方法によれば、現在から一定の時間遡った過去の一連の線量率が参照され、その線量率の変動傾向を判定することによって、将来の線量率の変動傾向が推定される。ちなみに、図1において参照される線量率の時間範囲がWで示されている。もちろん、この時間範囲Wは固定設定されているものであってもよいが、所定の条件、例えば線量率の大きさなどに応じて可変設定されるようにしてもよい。また、線量率変化が急峻になった時点106などを自動判定し、それ以降の線量率を参照するようにしてもよい。
【0023】例えば曲線100で示されるような線量率の変動傾向がある場合、本実施形態に係る方法によれば、その上昇傾向にある曲線100がそのまま外挿される。これは符号100Aで示されている。一方、曲線102で示されるように、線量率の変動傾向がおよそ平坦であれば、現在の線量率の値がそのまま将来の線量率であるとして推定される。それが符号102Aで示されている。また、曲線104が下降変動傾向を示している場合、本実施形態においては、そのまま曲線は外挿されず、現在の線量率の値がそのまま将来の線量率であるものとみなされている。それが符号104で示されている。このような推定を行うのは、多少の予測誤差があったとしても被ばく管理の安全性をより高めるためである。
【0024】ちなみに、線量率の変動傾向の分類は、例えば期間Wにわたって曲線の傾きの平均値を求め、さらにその平均値をあらかじめ設定された分類区分に当てはめることにより実現することができる。もちろん、他の手法を利用して変動傾向の判定を行ってもよい。」
「【図1】
[図:0001409599000010.jpg]
」
(イ) 周知技術8の認定
前記(ア)に摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術8」という)。
[周知技術8]
「作業環境における作業者の人体にとって有害な因子を測定し、測定値の変動傾向に基づいて当該有害因子の将来予測をすること。」
(3) 対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)a 引用発明は、「建設現場などにおいて、建設作業が周囲の環境にどのような影響を与えるかを監視、調査するためのもの」であるところ、「周囲の環境」も含めた「建設作業」が行われる「建設現場」の環境は、本件補正発明の「室内または屋外の作業環境」に相当する。
よって、引用発明も、室内または屋外の作業環境を監視しているといえる。
b また、引用発明は、「計測結果を遠隔地の管理端末で閲覧可能に収集」し、「端末によりリアルタイムで閲覧することができるもの」であるから、常時監視しているといえる。
よって、引用発明の「環境監視システム」は、本件補正発明の「作業環境常時監視システム」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、「室内または屋外の作業環境を監視する作業環境常時監視システム」という点で一致する。
(イ)a 引用発明の「振動計2」が「計測」する「環境の振動」は、本件補正発明の「作業者が作業を行う環境の状態を判定する指標となる情報である環境情報」に相当する。
また、引用発明の「騒音計1」が「計測」する「環境の騒音」は、本件補正発明の「調査対象についての状態情報」に相当する。
ここで、引用発明の「騒音計1、振動計2からの計測値ASをデジタルデータDDに変換」する「変換器3」では、「計測装置が出力するアナログ電圧をサンプリングする計測データ取得時間間隔Tは、最小1秒間隔から任意に設定可能となっており、変換器3に所定のプログラムを組み込むことにより、最小時間間隔以下でも、測定値を取り込むことが可能」であるから、引用発明の「振動計2」及び「騒音計1」はいずれもリアルタイムで測定するセンサであるといえる。
そうすると、引用発明の「振動計2」及び「騒音計1」は、本件補正発明の「作業者が作業を行う環境の状態を判定する指標となる情報である環境情報および調査対象についての状態情報をリアルタイムで測定するセンサ」に相当する。
b 引用発明の「変換器3」は、「上記騒音計1、振動計2からの計測値ASをデジタルデータDDに変換し、環境監視装置4に供給するもの」であるところ、前記aの検討結果、及び、「WWWサーバ14」において「計測値がリアルタイムでグラフ化される」ことを踏まえると、引用発明の「変換器3」は、デジタルデータDDに変換された測定値をリアルタイムで送信していることは明らかであるから、本件補正発明の「前記センサによって測定された前記環境情報および前記状態情報をリアルタイムで送信する通信手段」に相当する。
c 前記a及びbの検討結果を踏まえると、引用発明の「振動計2」及び「騒音計1」並びに「変換器3」は、本件補正発明の「環境監視装置」に相当する。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、「作業者が作業を行う環境の状態を判定する指標となる情報である環境情報および調査対象についての状態情報をリアルタイムで測定するセンサと、前記センサによって測定された前記環境情報および前記状態情報をリアルタイムで送信する通信手段とを有する環境監視装置」を有する点で一致する。
(ウ)a 引用発明の「環境監視装置4」は、「WWWサーバ14」及び「FTPサーバ19」を備えているから、本件補正発明の「サーバ装置」に相当する。
b 引用発明の「環境監視装置4」では、「インターフェース10」が「受信」した「変換器3からのデジタルデータDD」を、「計測値変換部11」が「計測単位のデータMDへ変換」し、「メモリ12」が「上記測定単位のデータMDを順次記憶する」から、この「メモリ12」が「上記測定単位のデータMDを順次記憶する」ことは、本件補正発明の「前記環境監視装置からリアルタイムで送信された前記環境情報および前記状態情報を記憶」することに相当する。
c 引用発明では、「グラフ作成部13」が「メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出してグラフ化」しているところ、「所定のタイミングでデータMDを順次読み出して」行う「グラフ化」の内容としては、測定値の時系列変化を示すものが通常想定されるから、測定値の変化を演算しているといえる。
そして、引用発明では、「WWWサーバ14」が「上記グラフ化されたデータ」を「Webブラウザにより閲覧できるように」しているから、「グラフ化されたデータ」は「WWWサーバ14」に保存されているといえる。
d 引用発明では、「異常監視部15」が「メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出して予め設定された警報設定値16と比較」しているところ、これは、測定値が閾値を超えるかどうかを演算しているといえる。
そして、引用発明では、「異常監視部15」が「上記データMDが警報設定値16を超えたことを感知すると、その旨をメール送信部17に通知する」から、警報設定値16との比較結果を保存しているといえる。
e 前記a~dの検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記環境監視装置からリアルタイムで送信された前記環境情報および前記状態情報を記憶し、測定値の変化と測定値の閾値の超えることとを演算し、かかる演算結果を保存するサーバ装置」を有する点で共通する。
(エ) 引用発明では、「メール送信部17」が「管理者のメールアドレス宛に警報メール(計測値、グラフを含む)を自動的に作成し、インターフェースを介して送信」しており、「管理者や技術スタッフなどのユーザにより用いられ」る「端末6」は、「ネットワーク5を介して上記環境監視装置4にアクセスし、Webブラウザにより計測値や、グラフをリアルタイムで閲覧するようになって」いるから、引用発明の「端末6」は、本件補正発明の「前記サーバ装置に保存された前記演算結果を受信しうる外部通知装置」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記サーバ装置に保存された前記演算結果を受信しうる外部通知装置」を有する点で一致する。
(オ) 引用発明では、「端末6」において「ネットワーク5を介して上記環境監視装置4にアクセスし、Webブラウザにより計測値や、グラフをリアルタイムで閲覧するようになって」いるから、「周囲の環境」も含めた「建設作業」が行われる「建設現場」の環境をリアルタイムで監視しているといえる。
よって、本件補正発明と引用発明は、「前記作業環境をリアルタイムで監視する」点で一致する。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、以下の(イ)に示す相違点1~3において相違する。
(ア) 一致点
「 室内または屋外の作業環境を監視する作業環境常時監視システムであって、
-作業者が作業を行う環境の状態を判定する指標となる情報である環境情報および調査対象についての状態情報をリアルタイムで測定するセンサと、前記センサによって測定された前記環境情報および前記状態情報をリアルタイムで送信する通信手段とを有する環境監視装置と、
-前記環境監視装置からリアルタイムで送信された前記環境情報および前記状態情報を記憶し、測定値の変化と測定値の閾値の超えることとを演算し、かかる演算結果を保存するサーバ装置と、
-前記サーバ装置に保存された前記演算結果を受信しうる外部通知装置と
を有し、前記作業環境をリアルタイムで監視する、作業環境常時監視システム。」
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明では、「サーバ装置」が「前記環境監視装置と離間して設けられ」ているのに対して、引用発明では、「環境監視装置4」が「振動計2」及び「騒音計1」並びに「変換器3」から離間して設けられているか明らかではない点。
b 相違点2
本件補正発明では、「前記環境情報および前記状態情報の値の変化と前記環境情報および前記状態情報の値の閾値の超えることとを演算することによって前記状態情報を「快適、不適」、「適合、不適合」、「健全、注意、異常」、「漏洩発生、漏洩無し」のうちの少なくともいずれかの状態情報に分類し」ているのに対して、引用発明では、「環境の振動」と「環境の騒音」についての演算結果を併用することによって「環境の騒音」を分類していない点。
c 相違点3
本件補正発明では、「作業環境で働く労働者が有害な因子にどの程度さらされているのかを把握するために、前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化を検知し将来の状態情報を予測する手段をさらに備える」のに対して、引用発明では、そのような手段を備えていない点。
ウ 判断
(ア) 相違点1の判断
前記相違点1について検討する。
a 「計測機器、サーバ装置、端末を有し、計測機器、サーバ装置、端末はそれぞれ通信ネットワークを介して接続される環境監視システムにおいて、計測機器からみて、サーバ装置を遠隔地に配置すること」は、当業者にとって周知技術である(前記周知技術1を参照)。
b 前記周知技術1に倣って、引用発明において、「振動計2」及び「騒音計1」並びに「変換器3」(本件補正発明の「環境監視装置」に相当)からみて、「環境監視装置4」(本件補正発明の「サーバ装置」に相当)を遠隔地に配置することは、当業者が適宜なし得たものにすぎず、本件補正発明のごとく「サーバ装置」が「前記環境監視装置と離間して設けられ」るように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点2の判断
前記相違点2について検討する。
a 「騒音と振動が同時に知覚される場合、騒音と振動の影響を複合的に検討して、不快感や被害感という指標により影響の度合いを評価すること」は、当業者にとって技術常識である(前記技術常識1を参照)。
b 引用発明では、「環境の振動」と「環境の騒音」が同時に「計測」されるのであるから、上記技術常識1をわきまえた当業者ならば、両者の影響を複合的に検討するために、「環境の振動」と「環境の騒音」の演算結果(グラフ化した結果及び警報設定値16との比較結果)を併用して、不快感や被害感という指標(「快適、不適」等の分類)により影響の度合いを分類評価することは、容易に想到し得たことである。
c その際、「騒音と振動の影響を考える際には、振動が騒音に及ぼす影響を知りたい場合、騒音が振動に及ぼす影響を知りたい場合、あるいはその総合的影響を知りたい場合の三つの場合が考えられること」は、当業者にとって技術常識であるから(前記技術常識2を参照)、振動が騒音に及ぼす影響を知りたい場合(すなわち、主たる調査対象は「騒音」であり、「振動」は副次的な要素にすぎない場合)を想定して、「騒音」(「状態情報」に相当)の影響の度合いを不快感や被害感という指標(「分類」された「状態情報」に相当)によって分類評価するように構成することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
(ウ) 相違点3について
a 引用発明では、「グラフ作成部13」が「メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出してグラフ化」しているところ、「所定のタイミングでデータMDを順次読み出して」行う「グラフ化」の内容としては、測定値の時系列変化を示すものが通常想定されるから、測定値の変化を演算しているといえる。
b ここで、「作業環境における作業者の人体にとって有害な因子を測定し、測定値の変動傾向に基づいて当該有害因子の将来予測をすること」は、当業者にとって周知技術であるから(前記周知技術8を参照)、引用発明における測定値の変化が、作業環境で働く労働者にとってどの程度有害な因子となるのかを把握するために、測定値の変動傾向に基づいて将来の環境の騒音を予測することは、当業者が容易に想到し得たことである。
c その際、測定値の変化として「単位時間当たりの変化」に着目して、将来を予測することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
(エ) 総合評価
前記相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、引用発明、周知技術1、8及び技術常識1、2から当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1、8及び技術常識1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 令和5年12月25日に提出された意見書の主張の概要
a 本件補正の目的について
請求項1の前記補正事項のうち、「であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味すること」を削除した部分については、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするもの)、すなわち前回補正によって内的付加した点が「新規事項を追加するものである」と認定された点を是正すべく前回補正によって付け加える前の記載に戻すことで、拒絶理由として指摘された原因を解消することを目的とするものである。
また、「作業環境で働く労働者が有害な因子にどの程度さらされているのかを把握するために、…し将来の状態情報を予測する手段を」と補正した部分については、「検知する手段」にさらに内的付加を加えること、すなわち限定的減縮を目的とするものである。
b 独立特許要件(進歩性欠如)について
引用文献1には、作業員(労働者)が有害な因子にさらされる点を改善するために(まず)把握する、という思想はなく、そもそも、作業員のための作業環境の問題点に着眼した問題意識がない。
すなわち、建設作業が周囲の環境に影響を一定程度与えることは知られている事実であるところ、この場合に、「周囲の環境に与える影響」とは、一般に、建設作業現場の近隣に所在する住宅や職場等にいる人間が音や振動、におい等、建設作業が進行するにつれてそれまでの社会状況と異なる状況が生じ、これを物理的性状にて計測し、一定程度のものを(準)公害として排除したり是正を促したりするためのものであるのに対して、本願では、当該(建設)作業に当たる作業者自体の健康被害に着眼し、当該作業員がさらされる作業環境の時間変化を計測し、健康被害にあう前にそれを未然に防ぐことを主眼とした発明である。
したがって両者は、「一定の物理量を計測する」という手段を採用するに至った課題の着眼が異なり、さらに、建設作業現場とその周囲とでは、厳密に現場の内、外との違いがあるから、物理量計測の厳密な場所も異なる。
したがって、本件補正後の請求項1に係る「作業環境で働く労働者が有害な因子にどの程度さらされているのかを把握するために、前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化を検知し将来の状態情報を予測する手段」は、引用文献1には開示も示唆もされているとはいえない。
また、上記手段は、引用文献19~22、24~25にも開示も示唆もされていない。
(イ) 請求人の主張に対する当審の判断
a 本件補正の目的について
当審拒絶理由は、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味することを検知する手段をさらに備えること」という発明特定事項に不明瞭な点があることを指摘するものではないから(後記第3の2を参照)、前記補正事項のうち、「であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味すること」を削除することは、明りょうでない記載の釈明を目的とすることに該当しない。
また、「検知」と「予測」は、別の動作・処理であるから、前記補正事項の「手段」が、「検知」することに加えて「予測」することもできるとすることは、いわゆる内的付加に当たらない。よって、限定的減縮を目的とするものにも該当しない。
b 独立特許要件(進歩性欠如)について
引用発明は、「建設現場などにおいて、建設作業が周囲の環境にどのような影響を与えるかを監視、調査するためのもの」であるから、建設現場の周囲環境に与える影響を監視することが第一義的な目的であるとしても、建設作業において生じる振動や騒音が、建設作業に従事する作業員の人体に悪影響を及ぼすことは自明であって、引用発明が、作業員の人体への影響を全く考慮せずに建設現場の周囲環境への影響のみに着目して監視するものであるとするのは適当ではないし、少なくとも建設現場の作業員のための作業環境の問題点を併せて監視することを排除する理由は無いというべきである。
したがって、引用発明において、前記周知技術8を採用して、前記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
c 前記a及びbを踏まえると、意見書における請求人の主張はいずれも採用することはできない。
オ 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~20に係る発明は、令和5年7月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるものである。
2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、次のとおりである。
(1) 理由1(新規事項の追加)
令和5年7月18日付け手続補正書でした補正は、下記に示すとおり、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
記
上記補正により、請求項1において、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味することを検知する手段をさらに備えること」という発明特定事項が追加された。
しかしながら、当該発明特定事項を追加する補正はいわゆる新規事項を追加するものであるから、この補正は特許法17条の2第3項の規定に違反するものである。
(2) 理由2(進歩性欠如)
本願発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1 :特開2001-325682号公報
引用文献19:山田伸志「騒音・振動・低周波音の複合影響」騒音制御、Vol.22、No.5、1998年、239~242頁(技術常識を示す文献)
引用文献20:徳山久雄「騒音と振動の複合入力による感覚反応」騒音制御、Vol.6、No.3、1982年、157~161頁(技術常識を示す文献)
引用文献21:横島潤紀、田村明弘「新幹線鉄道の騒音と振動による複合被害感」日本音響学会誌62巻9号、2006年、645~653頁(技術常識を示す文献)
引用文献22:特許第4683671号公報(周知技術を示す文献)
引用文献24:特開平9-119854号公報(周知技術を示す文献)
引用文献25:特開2003-328774号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、技術常識1、2は、前記第2の3(2)イ(エ)において認定したとおりである。
さらに、周知技術1、7は、前記第2の3(2)ウ(イ)、エ(ウ)において認定したとおりである。
4 新規事項の追加に係る当審の判断
令和5年7月18日付け手続補正書でした補正により、請求項1において、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味することを検知する手段をさらに備えること」という発明特定事項が追加された。
しかしながら、以下に詳述するとおり、当該発明特定事項を追加する補正はいわゆる新規事項を追加するものであるから、この補正は特許法17条の2第3項の規定に違反するものである。
(1) 当初明細書等の記載
当初明細書等には以下の記載がある。下線は当審において付した。
「【請求項7】
前記環境情報および/または状態情報の単位時間当たりの変化を検知することを特徴とする請求項1に記載の環境監視システム。」
「【0025】
次に、本発明の第7の態様は、第1の態様の環境監視システムであって、前記環境情報および/または状態情報の単位時間当たりの変化を検知することを特徴としてもよい。」
「【0123】
また、環境監視システムは、環境監視装置102が取得する調査対象の状態情報が単位時間当たりに変化したこと、環境監視装置102に備えられたセンサ112である温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、粉じんセンサ、気流センサ、マイクロフォン、加速度センサ、照度センサ、ガスセンサ、差圧センサの内少なくともいずれか一つの稼働状態および/または稼働状態が変化したこと、電源部電圧が変化したこと、電源部電流が変化したことのうち少なくともいずれか一つの情報を、データ通信網400を介してサーバ記憶装置200に送る。
【0124】
ここで、単位時間当たりの変化は、センサからの情報を元に、演算機能を有するサーバ記憶装置が算出するが、環境監視装置の内部でこれらを算出するようにしてもよい。
【0125】
具体的に単位時間当たりの変化の例としては、単位時間(例えば1分)当たりの粉じんセンサの測定値が大幅に上昇する場合があげられる。
【0126】
このような場合は、何らかの新たな粉じん発生源が出現した、作業による発じん量が急激に増加したなどの事態が発生したことを意味しており、早急に対策が必要となることを示している。」
(2) 当審の判断
ア 前記(1)において摘記した事項を踏まえると、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味することを検知する手段」は、当初明細書等に直接的な記載はなく、また、当初明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。
イ すなわち、【請求項7】、【0025】及び【0123】~【0124】などには、環境情報および/または状態情報の単位時間当たりの変化を検知することは記載されているものの、「早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味すること」を検知することまでは記載されていない。
例えば【0124】には、「センサからの情報を元に」「単位時間当たりの変化」が「演算機能を有するサーバ記憶装置」や「環境監視装置の内部」において「算出」されることが記載されているものの、当該「単位時間当たりの変化」が「早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味する」ものであるとして「検知する手段」までは記載されていない。
ウ この点に関し、【0125】~【0126】の記載は、「単位時間(例えば1分)当たりの粉じんセンサの測定値が大幅に上昇する場合」を、「何らかの新たな粉じん発生源が出現した、作業による発じん量が急激に増加したなどの事態が発生した」と意味付けしているにすぎず、そのように意味付けされた事態の発生を「検知する手段」までを開示するものではない。
エ また、【0126】の記載は、「単位時間(例えば1分)当たりの粉じんセンサの測定値が大幅に上昇する場合」のみを開示するのであって、「粉じんセンサ」以外のセンサの測定値が大幅に上昇する場合にまで拡張できるとはいえない。
オ そうすると、令和5年7月18日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえないから、いわゆる新規事項を追加するものである。
5 進歩性欠如に係る当審の判断
(1) 対比
前記第2の3(3)アの対比における検討結果も踏まえて、本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明は、次の相違点1’~3’において相違し、その余の点で一致する。
ア 相違点1’
本願発明では、「サーバ装置」が「前記環境監視装置と離間して設けられ」ているのに対して、引用発明では、「環境監視装置4」が「振動計2」及び「騒音計1」並びに「変換器3」から離間して設けられているか明らかではない点。
イ 相違点2’
本願発明では、「前記環境情報および前記状態情報の値の変化と前記環境情報および前記状態情報の値の閾値の超えることとを演算することによって前記状態情報を「快適、不適」、「適合、不適合」、「健全、注意、異常」、「漏洩発生、漏洩無し」のうちの少なくともいずれかの状態情報に分類し」ているのに対して、引用発明では、「環境の振動」と「環境の騒音」についての演算結果を併用することによって「環境の騒音」を分類していない点。
ウ 相違点3’
本願発明では、「前記環境情報および前記状態情報の単位時間当たりの変化であって早急に対策が必要となる何らかの事態が発生したことを意味することを検知する手段をさらに備える」のに対して、引用発明では、そのような手段を備えていない点。
イ 相違点の判断
(ア) 相違点1’及び相違点2’について
前記第2の3(3)ウ(ア)及び(イ)において説示した相違点1及び相違点2の判断の理由が同様に当てはまる。
(イ) 相違点3’について
a 引用発明では、「グラフ作成部13」が「メモリ12から所定のタイミングでデータMDを順次読み出してグラフ化」しているところ、「所定のタイミングでデータMDを順次読み出して」行う「グラフ化」の内容としては、測定値の時系列変化を示すものが通常想定されるから、測定値の変化を演算しているといえる。
b ここで、「監視システムのセンサが計測した振動や騒音等の状態量の単位時間当たりの変化に基づいて、監視対象の異常を検知すること」は、当業者にとって周知技術であるから(前記周知技術7を参照)、引用発明において、前記周知技術7に倣って、「計測」された「環境の振動」と「環境の騒音」の単位時間当たりの変化に基づいて、「建設現場」における異常事態を検知することは、当業者が容易に想到し得たことである。
c そして、「建設現場」において発生する異常事態としては、早急に対策が必要となる事態も想定し得るから、そのような事態が発生したことを意味することを検知する手段を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
ウ 小括
前記相違点1’~3’を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果としては、引用発明、周知技術1、7及び技術常識1、2から当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
よって、本願発明は、引用発明、周知技術1、7及び技術常識1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、令和5年7月18日付け手続補正書でした補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-011560