特許拒絶査定不服審判
2024-000506
回転検出装置
- 審判番号
- 2024-000506
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-019854
- 請求日
- 2024年01月12日
- 審決日
- 2025年03月19日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社プロテリアル
- 審判長/審判官
- 審判長 道祖土 新吾
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 小島 寛史
- 分類
- P18 .121-Z (G01D) / P18 .575-Z (G01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 19854「回転検出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月30日出願公開、特開2021-124460〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年2月7日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 2月27日付け :拒絶理由通知書
同年 4月21日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 6月19日付け :拒絶理由通知書(最後)
同年 8月23日 :意見書及び手続補正書の提出
同年10月19日付け :補正の却下の決定
同日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月24日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 1月12日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和6年1月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月12日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年1月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであって、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲(令和5年4月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲)の請求項1~3の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~3の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1~3
「【請求項1】
回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材と、
前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、
前記センサ部は、
前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部と、前記検出部から延出された接続端子と、を有する磁気センサと、
前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、
前記磁気検出素子は、前記検出部の板厚方向に対して垂直な方向の磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなり、
前記センサ部は、前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材の軸方向端面に臨むように設けられており、
前記接続端子に接続される中心導体と当該中心導体の外周を覆う絶縁体とを有する電線と、前記電線を覆うシースと、を有し、端部が前記ハウジング部に覆われているケーブルを更に備え、
前記ケーブルは、前記ハウジング部から前記回転軸方向に延出している、
回転検出装置。
【請求項2】
前記接続端子は、屈曲部を有さず直線状に設けられている、
請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記接続端子の延出方向である長さ方向及び板厚方向に垂直な幅方向に並ぶように配置された複数の前記磁気検出素子を有し、
前記センサ部は、前記被検出部材の径方向に対して前記検出部の板厚方向が一致するように設けられている、
請求項1または2に記載の回転検出装置。」
(2) 本件補正後の請求項1~3
「【請求項1】
回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている円環状の被検出部材と、
前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、
前記センサ部は、
前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部と、前記検出部から延出された接続端子と、を有する磁気センサと、
前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、
前記磁気検出素子は、前記検出部の板厚方向に対して垂直な方向の磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなり、
前記センサ部は、前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材の軸方向端面に臨むように設けられており、
前記接続端子に接続される中心導体と当該中心導体の外周を覆う絶縁体とを有する電線と、前記電線を覆うシースと、を有し、端部が前記ハウジング部に覆われているケーブルを更に備え、
前記ケーブルは、前記ハウジング部から前記回転軸方向に延出しており、
前記ハウジング部の前記軸方向端面と対向する部分の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄い、
回転検出装置。
【請求項2】
前記接続端子は、屈曲部を有さず直線状に設けられている、
請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記接続端子の延出方向である長さ方向及び板厚方向に垂直な幅方向に並ぶように配置された複数の前記磁気検出素子を有し、
前記センサ部は、前記被検出部材の径方向に対して前記検出部の板厚方向が一致するように設けられている、
請求項1または2に記載の回転検出装置。」
2 本件補正の目的について
事案に鑑み、請求項1を引用する請求項3についての補正の目的について、以下検討する。
(1) 本件補正による請求項1を引用する請求項3についての補正は、次のア~イに示す補正事項で構成される。
ア 本件補正前の請求項1に記載されていた「被検出部材」を「円環状」であるものに限定すること。
イ 本件補正前の請求項1に記載されていた「ハウジング部」について、その「前記軸方向端面と対向する部分の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄い」ものに限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1を引用する請求項3に記載された発明と、本件補正後の請求項1を引用する請求項3に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1及び請求項1を引用する請求項3に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1及び請求項1を引用する請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、本件補正後の請求項1及び請求項3の記載をまとめ、本件補正発明の構成を便宜上次のように構成Xと構成A及び構成B1~B7に分説する。また、参考図として、本願の【図1】及び【図3】を符号の説明と併せ掲載する。
<本件補正発明の分説>
(構成A) 回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている円環状の被検出部材と、
(構成B1) 前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、
(構成B2) 前記センサ部は、
前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部と、前記検出部から延出された接続端子と、を有する磁気センサと、
前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、
前記磁気検出素子は、前記検出部の板厚方向に対して垂直な方向の磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなり、
(構成B3) 前記センサ部は、前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材の軸方向端面に臨むように設けられており、
(構成B4) 前記接続端子に接続される中心導体と当該中心導体の外周を覆う絶縁体とを有する電線と、前記電線を覆うシースと、を有し、端部が前記ハウジング部に覆われているケーブルを更に備え、
前記ケーブルは、前記ハウジング部から前記回転軸方向に延出しており、
(構成B5) 前記ハウジング部の前記軸方向端面と対向する部分の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄く、
(構成B6) 前記検出部は、前記接続端子の延出方向である長さ方向及び板厚方向に垂直な幅方向に並ぶように配置された複数の前記磁気検出素子を有し、
(構成B7) 前記センサ部は、前記被検出部材の径方向に対して前記検出部の板厚方向が一致するように設けられている、
(構成X) 回転検出装置。
<参考図(【図1】)>
[図:0001423117000001.jpg]
<参考図(【図3】)>
[図:0001423117000002.jpg]
【符号の説明】
1…回転検出装置
2…被検出部材
3…センサ部
4…磁気センサ
40…検出部
40a…樹脂モールド
40b…磁界の検出位置
41…接続端子
42…容量素子保護部
5…ハウジング部
52…樹脂モールド部
6…ケーブル
イ 課題・作用効果に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、本件補正発明の技術上の意義の概略を理解するために、発明が解決しようとする課題及び作用効果に関連する記載等を一部抜粋すると、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輪の軸受ユニットに用いられ、車輪と共に回転する回転部材の回転速度を検出する回転検出装置が知られている。回転検出装置では、回転部材に取り付けた環状の磁石(被検出部材という)による磁界の変化を、センサ部に設けられた磁気センサで検出することにより、回転部材の回転速度を検出する。
【0003】
一般に、磁気センサは、被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部と、検出部から延出された接続端子と、を有している。従来の回転検出装置では、被検出部材の軸方向端面に対して、検出部の一方の面が対向するように(すなわち、検出部の板厚方向に検出部と被検出部材の軸方向端面とが対向するように)センサ部を配置している(例えば、特許文献1参照)。検出精度を向上するため、被検出部材と検出部間の距離はなるべく短く設定されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-184094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、磁気検出素子として磁気抵抗効果素子(MR素子)が広く用いられおり、またMR素子の感度は大きく向上してきている。このような感度の高いMR素子を磁気検出素子として用いた場合、従来通り、被検出部材の軸方向端面に対して、検出部の一方の面が対向するようにセンサ部を配置すると、磁気検出素子が被検出部材に近づき過ぎて、磁気検出位置での磁束密度変化が大きくなり過ぎ、磁気検出素子の抵抗値変化が飽和して検出精度が低下してしまうおそれが生じる。
【0006】
この課題を解決するために、例えば、センサ部内で被検出部材から遠い位置に検出部を設けることが考えられるが、この場合、センサ部が大型化してしまうおそれがある。また、センサ部自体を被検出部材から遠ざけることも考えられるが、センサ部の設置スペースが狭い場合には対応できないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、感度の高いMR素子を磁気検出素子として用いた場合であっても検出精度の低下を抑制でき、かつセンサ部の小型化が可能な回転検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材と、前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、前記センサ部は、前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む板状の検出部と、前記検出部から延出された接続端子と、を有する磁気センサと、前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、前記磁気検出素子は、前記検出部の板厚方向に対して垂直な方向の磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなり、前記センサ部は、前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材の軸方向端面に臨むように設けられている、回転検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、感度の高いMR素子を磁気検出素子として用いた場合であっても検出精度の低下を抑制でき、かつセンサ部の小型化が可能な回転検出装置を提供できる。」
(2) 各引用文献の記載事項並びに引用発明及び技術常識の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2002-340613号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。以下同様である。)
段落【0014】~【0018】、【図1】、【図2】
「【0014】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)本発明の一実施形態が適用された車輪速度センサ1の全体構成を図1に示す。また、図1に示す車輪速度センサ1の模式図を図2(a)、(b)に示す。図1に示すように、本車輪速度センサ1は、タイヤの回転軸2の回転に連動して回転される着磁ロータ3に対向するように配置され、着磁ロータ3の回転による磁気変化をMRE(磁気抵抗効果)素子で検出すると共に、MRE素子からの検出信号を信号処理回路部で解析することで、着磁ロータ3のN極及びS極の変化に対応した方形波電流を出力するようになっている。そして、このような車輪速度センサ1に、後述するタイヤの回転方向検出機能やレーシング防止機能を備えた構成としている。
【0015】この車輪速度センサ1の出力形式は、図3(a)に示すような2端子定電流出力型であり、ロータの回転方向に基づいて、図3(b)に示すような電流を出力する。そして、外部回路では、この電流を抵抗4で電圧に変換し、1V又は1.9Vをしきい値とする2つのコンパレータ5、6によって、回転数検出信号と回転方向検出信号に分離するようになっている。
【0016】このような本車輪速度センサ1は、具体的には図2(a)、(b)のように構成される。図2(a)に示すように、車輪速度センサ1は、MRE素子からなる素子回路用IC7と信号処理回路部が形成された処理回路用IC8とを備えて構成されている。これら各IC7、8は樹脂9によってモールド化され、樹脂9から+端子10と-端子11、さらには調整端子12および測定端子13が引き出された構成とされている。これにより、樹脂モールド部が構成されている。そして、このように構成された樹脂モールド部が、図2(b)に示すようにハウジング14内に収容されることで、車輪速度センサ1が構成され、+端子10と-端子11のみがハウジング14の外部に露出し、調整端子12および測定端子13がハウジング14の外部に露出しない状態となっている。
【0017】ここで、調整端子12とは、MRE素子からの信号に存在するオフセット等の誤差項を調整するために用いられる端子をいう。例えば2つのMRE素子からの出力によって回転数検出および回転方向検出を行なう場合、図4(a)に示すように、MRE素子からの検出信号(もしくはこれを増幅した信号)A、Bを所定のしきい値A、Bでスレッショルドすることになるが、しきい値A、Bが検出信号A、Bの中央に無い場合(図4(b))は、中央に有る場合(図4(c))と比べ、2値化信号の波形がずれてしまう。特に、着磁ロータ3と車輪速度センサ1との間隔が広くなり、検出信号の振幅が小さくなると、2値化そのものができなくなる。調整端子12は、このような波形ズレを打ち消すべく、上記誤差項を見込んでしきい値A、Bを設定するために用いられる。なお、この調整端子12を用いた具体的なしきい値調整方法については後述する。
【0018】また、測定端子13とは、車輪速度センサ1に備えられる信号処理回路内の各場所における電圧(電流)が所望値であるか否かを確認するための端子である。この測定端子13を用いた具体的な電圧確認方法についても後述する。」
「【図1】
[図:0001423117000003.jpg]
」
「【図2】
[図:0001423117000004.jpg]
」
(イ) 引用文献1からの認定事項
a 認定事項1
引用文献1の段落【0014】の記載を踏まえると、引用文献1の【図1】から、「着磁ロータ3」が「タイヤの回転軸2」に取り付けられ、「タイヤの回転軸2」を中心とした周方向に沿って、軸方向端面に複数の磁極が設けられている円環状の部材であることが読み取れる。
b 認定事項2
引用文献1の段落【0016】の記載を踏まえると、引用文献1の【図2】(b)から、「+端子10と-端子11」が引き出される側と反対側の端部に「MRE素子からなる素子回路用IC7」が配置されることが読み取れる。
(ウ) 引用発明の認定
a 前記(ア)の引用文献1の記載事項、及び前記(イ)の認定事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
[引用発明]
「タイヤの回転軸2の回転に連動して回転される着磁ロータ3と、着磁ロータ3に対向するように配置され、着磁ロータ3の回転による磁気変化をMRE(磁気抵抗効果)素子で検出する車輪速度センサ1であって、(【0014】)
着磁ロータ3はタイヤの回転軸2に取り付けられ、タイヤの回転軸2を中心とした周方向に沿って、軸方向端面に複数の磁極が設けられている円環状の部材であり、(前記認定事項1)
車輪速度センサ1は、MRE素子からなる素子回路用IC7と信号処理回路部が形成された処理回路用IC8とを備えて構成され、(【0016】)
これら各IC7、8は樹脂9によってモールド化され、樹脂9から+端子10と-端子11が引き出された構成とされ、樹脂モールド部が、ハウジング14内に収容され、(【0016】)
+端子10と-端子11が引き出される側と反対側の端部に、MRE素子からなる素子回路用IC7が配置される、(前記認定事項2)
着磁ロータ3及び車輪速度センサ1。」
イ 引用文献2の記載事項及び技術事項の認定
(ア) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2019-90789号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 段落【0014】~【0020】、【図1】~【図3】
「【0014】
(第1実施形態)
先ず、図1~図5に基づき、着磁ロータ及び回転検出装置の概略構成について説明する。図3は、図1の一部、具体的には回転検出装置の周辺を拡大した図である。拡大図である図3では、便宜上、着磁ロータを直線状に示している。図3では、便宜上、封止樹脂体を省略している。図4に示す回路構成については、特開2017-9411号公報の記載を援用することができる。
【0015】
図1~図3に示すように、着磁ロータ10は、固定対象である回転体とともに回転する。着磁ロータ10は、たとえば車両において、エンジンのクランクシャフト、車軸などの回転体に固定される。着磁ロータ10は、着磁面10mを有している。本実施形態では、着磁ロータ10が平面略円環の板状をなしており、図2に示すように、着磁ロータ10において回転軸に直交する外周端面(側面)が着磁面10mとされている。図3に示すように、着磁面10mでは、着磁ピッチλ、着磁周期αで、N極10nとS極10sが回転方向に交互に着磁されている。なお、着磁周期α=2×λである。
【0016】
回転検出装置20は、着磁ロータ10の回転状態を検出する。回転検出装置20は、着磁ロータ10とともに、回転検出システムを構成する。回転検出装置20は、所定の間隙(ギャップ)を有して着磁面10mに対向配置されている。回転検出装置20は、センサチップ21と、バイアス磁石22と、回路チップ23と、リードフレーム24と、封止樹脂体25を備えている。
【0017】
リードフレーム24は、板厚方向がZ1-Z2方向と略平行となるように配置されている。センサチップ21及び回路チップ23は、リードフレーム24のアイランド24aにおける同じ一面に固定されている。バイアス磁石22は、アイランド24aの一面とは反対の面に固定されている。センサチップ21は、ボンディングワイヤ26を介して回路チップ23と電気的に接続されている。回路チップ23は、ボンディングワイヤ26を介して、リードフレーム24の端子24b~24dと電気的に接続されている。端子24bはグランド(GND)用の端子であり、アイランド24aに連なっている。端子24cは電源(Vcc)用の端子であり、端子24dは出力(Vout)用の端子である。
【0018】
封止樹脂体25は、センサチップ21、バイアス磁石22、回路チップ23、及びアイランド24aを含むリードフレーム24の一部を一体的に封止している。封止樹脂体25は、たとえばエポキシ系樹脂を用いて形成されている。封止樹脂体25は、たとえばトランスファモールド法により成形されている。端子24b~24dは、Y2方向に延設されて、封止樹脂体25から外部に突出している。
【0019】
センサチップ21は、着磁ロータ10の回転にともなって抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子210が形成された半導体チップである。センサチップ21は、図3に示すように、着磁面10mに直交する検出面21dを有している。この検出面21dに、複数の磁気抵抗効果素子210が形成されている。磁気抵抗効果素子210としては、異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)、トンネル型磁気抵抗効果素子(TMR素子)、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)などを採用することができる。センサチップ21は平面略矩形の板状をなしており、リードフレーム24に対向する下面とは反対の上面が、検出面21dとされている。
【0020】
センサチップ21は、磁気抵抗効果素子210として、第1素子211、第2素子212、第3素子213、第4素子214、及び第5素子215を有している。第1素子211、第2素子212、第3素子213、第4素子214、及び第5素子215は、磁気抵抗効果素子210が直列接続されてなるハーフブリッジ回路として構成されている。第1素子211、第2素子212、第3素子213、第4素子214、及び第5素子215のそれぞれは、一対の磁気抵抗効果素子210がハの字状に配置されてなる。」
「【図1】
[図:0001423117000005.jpg]
」
「【図2】
[図:0001423117000006.jpg]
」
「【図3】
[図:0001423117000007.jpg]
」
b 段落【0035】~【0037】、【図6】
「【0035】
次に、図3、図6~図27に基づき、磁気抵抗効果素子210及びバイアス磁石22の配置の詳細について説明する。図6、図8、図11、図16、図20に示す着磁ロータ10は、図3に対応している。たとえば図6において、X2方向の回転が正転、X1方向の回転が逆転を示す。本実施形態では、磁気ベクトルの角度を、反時計方向を正方向として示す。また、素子に作用する磁気ベクトルは、バイアス磁界のほうがロータ磁界よりも大きいものとする。なお、バイアス磁界の磁気ベクトルは、ロータ磁界を含む他の磁界の影響を受けない状態を示しており、合成磁界の磁気ベクトルが、ロータ磁界の影響を受けた状態を示している。
【0036】
(バイアス磁界の磁気ベクトルの角度と信号の位相との関係)
先ず、図6~図15に基づき、素子に作用するバイアス磁界の磁気ベクトルの角度と信号の位相との関係について説明する。以下では、たとえば図6に示すように、着磁の1周期において、N極10nの磁極中心を回転位置P1とし、N極10n及びS極10sの境界を回転位置P2とする。また、S極10sの磁極中心を回転位置P3とし、S極10s及びN極10nの境界を回転位置P4とする。正転の場合、着磁ロータ10における素子との対向位置は、P1→P2→P3→P4の順に変化する。図8~図15では、素子として第1素子211を例に説明する。また、磁気ベクトルの角度の基準位置をX1軸とする。
【0037】
図示しない素子に作用する着磁ロータ10の磁気ベクトルの向きは、図6に示すように、回転位置P1のときに、Y1-Y2方向に略平行であって着磁面10mから離れる方向、すなわちY2方向となる。回転位置P3では、回転位置P1とは逆方向、すなわちY1方向となる。回転位置P2,P4では、X方向に略平行であって、互いに逆方向となる。具体的には、回転位置P2のときにX1方向となり、回転位置P4のときにX2方向となる。したがって、ロータ磁界の磁気ベクトルは、図7に示すように、着磁1周期の間に360°回転する。」
「【図6】
[図:0001423117000008.jpg]
」
c 段落【0121】、【図32】
「【0121】
着磁ロータ10において、回転軸に直交する外周端面(側面)が着磁面10mとされ、この着磁面10mに回転検出装置20が対向配置される例を示したが、これに限定されない。図32に示す変形例のように、外周端面ではなく、円環面の一方を着磁面10mとし、この着磁面10mに回転検出装置20を対向配置してもよい。」
「【図32】
[図:0001423117000009.jpg]
」
(イ) 引用文献2からの認定事項
a 認定事項1
引用文献2の段落【0018】~【0020】の記載を踏まえると、引用文献2の【図2】、【図3】から、「回転検出装置20」が板状であり、「端子24b~端子24d」の突出方向及び板厚方向に対して垂直な方向に並ぶように、第1素子211及び第2素子212が配置されていることが読み取れる。
b 認定事項2
引用文献2の段落【0121】に記載されている【図32】の変形例が、段落【0014】~【0020】に記載されている第1実施形態に適用できるものであることは明らかである。
c 引用文献2の段落【0035】~【0037】の記載を踏まえると、引用文献2の【図6】から、「素子に作用する着磁ロータ10の磁気ベクトルの向き」(すなわち、素子が検出する磁界の向き)が「回転検出装置20」の板厚方向に対して垂直な方向であることが読み取れる。
d 引用文献2の段落【0121】の記載を踏まえると、引用文献2の【図32】から、端子24b~24dの延出側と反対側の端部である「回転検出装置20」の先端部が「着磁ロータ10」の軸方向端面に臨むように設けられている構成が読み取れる。
e 引用文献2の段落【0121】の記載を踏まえると、引用文献2の【図32】から、「回転検出装置20」の板厚方向が「着磁ロータ10」の径方向と一致し、また「回転検出装置20」の板厚が「着磁ロータ10」の幅よりも薄い構成が読み取れる。
(ウ) 引用文献2技術事項の認定
前記(ア)に摘記した引用文献2の記載、及び前記(イ)の認定事項から、次の事項は本願出願前に公知であったと認められる(以下「引用文献2技術事項」という。)。
[引用文献2技術事項]
「車軸などの回転体に固定され、固定対象である回転体とともに回転する着磁ロータ10の回転状態を検出する板状の回転検出装置20であって、センサチップ21と、バイアス磁石22と、回路チップ23と、リードフレーム24と、封止樹脂体25を備え、
リードフレーム24の端子24b~24dは延設されて、封止樹脂体25から外部に突出し、
センサチップ21は、着磁ロータ10の回転にともなって抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子210が形成された半導体チップであり、複数の磁気抵抗効果素子210が形成され、センサチップ21は平面略矩形の板状をなしており、
端子24b~端子24dの突出方向及び板厚方向に対して垂直な方向に並ぶように、第1素子211及び第2素子212が配置され、
素子に作用する着磁ロータ10の磁気ベクトルの向き(すなわち、素子が検出する磁界の向き)が回転検出装置20の板厚方向に対して垂直な方向であり、
端子24b~24dの延出側と反対側の端部である回転検出装置20の先端部が着磁ロータ10の軸方向端面に臨むように設けられており、
回転検出装置20の板厚方向が着磁ロータ10の径方向と一致し、また回転検出装置20の板厚が着磁ロータ10の幅よりも薄い
回転検出装置20。」
ウ 引用文献4の記載事項及び技術事項の認定
(ア) 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2019-138877号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
a 段落【0015】~【0026】、【図1】~【図3】
「【0015】
(構成)
図1を参照すると、本実施形態に係る回転検出装置1は、車両に搭載される車輪速センサであって、車輪とともに回転する回転体Rに対向配置されることで回転体Rの回転状態を検出するように構成されている。回転検出装置1は、モールド成形部2と、センサ本体部3と、信号ケーブル4とを備えている。以下、各図を参照しつつ、回転検出装置1における各部の構成について説明する。
【0016】
モールド成形部2は、センサ本体部3と信号ケーブル4とを金型にセットしてポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂材料を注型するインサート成型によって形成されている。センサ本体部3は、モールド成形部2の軸方向における先端部から、軸方向に突設されている。信号ケーブル4は、モールド成形部2の軸方向における基端部から、モールド成形部2の外側に向かって延設されている。
【0017】
図2は、図1におけるモールド成形部2を形成する前の、センサ本体部3および信号ケーブル4の外観を示す。センサ本体部3の構成の詳細については後述する。
【0018】
図1および図2を参照すると、センサ本体部3の軸方向における先端側の部分は、X軸方向寸法よりもY軸方向寸法の方が短い略四角柱状の外形形状を有している。このため、軸方向(すなわちZ軸方向)と直交するY軸方向を、以下「厚さ方向」と称する。また、軸方向と直交し且つ厚さ方向と直交する方向(すなわちX軸方向)を、以下「幅方向」と称する。
【0019】
図1および図2の記載から明らかなように、信号ケーブル4の、センサ本体部3に最近接する末端部は、モールド成形部2の内部にて軸方向に延設されている。また、本実施形態においては、信号ケーブル4における、モールド成形部2から外部に突出する部分は、幅方向に延設されている。
【0020】
信号ケーブル4は、第一信号ケーブル4aと、第二信号ケーブル4bと、シース4cとを有している。第一信号ケーブル4aおよび第二信号ケーブル4bは、銅等の良導体金属製の不図示の心線の周囲を塩化ビニル等の絶縁表皮層で覆うことによって形成されている。シース4cは、第一信号ケーブル4aと第二信号ケーブル4bとを覆う外部絶縁体であって、塩化ビニル等によって形成されている。
【0021】
信号ケーブル4の末端部およびセンサ本体部3は、被覆部5によって覆われている。図3は、信号ケーブル4の末端部およびセンサ本体部3を被覆部5によって覆う前の状態を示す。なお、図示の煩雑化を回避するため、図3等においては、信号ケーブル4におけるシース4cの図示は省略されている。
【0022】
図2および図3を参照すると、本実施形態においては、被覆部5は、熱収縮チューブ5aによって形成されている。すなわち、被覆部5は、一次組立体6の周囲を熱収縮チューブ5aによって覆った後に、加熱により熱収縮チューブ5aを熱収縮させることによって形成されている。
【0023】
図3を参照すると、一次組立体6は、センサ本体部3に被覆部5を設ける前の仮組体であって、内部にセンサ素子7を有している。センサ素子7は、信号ケーブル4の末端部と結合することで、信号ケーブル4と電気接続されている。
【0024】
センサ素子7は、図1に示された回転体Rの回転状態に対応した検出信号を出力するように設けられている。具体的には、センサ素子7は、パッケージ部7dと、第一端子部7eと、第二端子部7fとを有している。
【0025】
パッケージ部7dは、センサ素子7の軸方向における先端部に設けられている。パッケージ部7dの内部には、不図示の周知のホールICが封止されている。第一端子部7eおよび第二端子部7fは、上記のホールICと電気接続されたリードフレームの一部であって、パッケージ部7dから軸方向における基端側に向かって、中心軸線Cに沿って延設されている。第一端子部7eには、第一信号ケーブル4aが電気接続されている。第二端子部7fには、第二信号ケーブル4bが電気接続されている。
【0026】
一次組立体6は、信号ケーブル4とセンサ素子7との結合体に保持部材10を装着することによって形成されている。保持部材10は、信号ケーブル4の末端部およびセンサ素子7を内側に保持するように構成されている。すなわち、被覆部5は、保持部材10の周囲を覆うように設けられている。」
「【図1】
[図:0001423117000010.jpg]
」
「【図2】
[図:0001423117000011.jpg]
」
「【図3】
[図:0001423117000012.jpg]
」
b 段落【0075】~【0076】
「【0075】
モールド成形部2の外形形状を含む、回転検出装置1の外形形状は、上記実施形態あるいは図面に示された具体的態様に限定されない。すなわち、例えば、信号ケーブル4における、モールド成形部2から外部に突出する部分は、厚さ方向に延設され得る。あるいは、信号ケーブル4における、モールド成形部2から外部に突出する部分は、中心軸線Cに沿って延設され得る。
【0076】
センサ素子7は、ホールセンサ素子に限定されない。すなわち、例えば、センサ素子7として、磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子、等が用いられ得る。」
(イ) 引用文献4技術事項の認定
前記(ア)に摘記した引用文献4の記載から、次の事項は本願出願前に公知であったと認められる(以下「引用文献4技術事項」という。)。
[引用文献4技術事項]
「車両に搭載される車輪速センサであって、車輪とともに回転する回転体Rに対向配置されることで回転体Rの回転状態を検出するように構成されている回転検出装置1が備える信号ケーブル4であって、
信号ケーブル4は、第一信号ケーブル4aと、第二信号ケーブル4bと、シース4cとを有し、第一信号ケーブル4aおよび第二信号ケーブル4bは、銅等の良導体金属製の心線の周囲を塩化ビニル等の絶縁表皮層で覆うことによって形成され、シース4cは、第一信号ケーブル4aと第二信号ケーブル4bとを覆う外部絶縁体であって、信号ケーブル4の末端部およびセンサ本体部3は、被覆部5によって覆われており、
センサ素子7は、第一端子部7eと、第二端子部7fとを有し、第一端子部7eには、第一信号ケーブル4aが電気接続され、第二端子部7fには、第二信号ケーブル4bが電気接続され、
保持部材10は、信号ケーブル4の末端部およびセンサ素子7を内側に保持するように構成され、
外部に突出する部分は、中心軸線Cに沿って延設される
信号ケーブル4。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成X(回転検出装置)の観点
本願明細書の段落【0002】に「従来、例えば車輪の軸受ユニットに用いられ、車輪と共に回転する回転部材の回転速度を検出する回転検出装置が知られている。」と記載されていることを踏まえると、本件補正発明の「回転検出装置」が「車輪と共に回転する回転部材の回転速度を検出する」装置を含むものであることは明らかである。
そうすると、引用発明の「車輪速度センサ1」及び「着磁ロータ3」の組合せは、本件補正発明の「回転検出装置」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「回転検出装置」の発明である点において一致する。
(イ) 構成A(被検出部材)の観点
引用発明の「タイヤの回転軸2に取り付けられ、タイヤの回転軸2を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている円環状の部材であ[る]」「タイヤの回転軸2の回転に連動して回転される着磁ロータ3」は、本件補正発明の「回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている円環状の被検出部材」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている円環状の被検出部材」を有する発明である点において一致する。
(ウ) 構成B1~B9(センサ部)の観点
a 構成B1(配置)
引用発明の「車輪速度センサ1」は「着磁ロータ3の回転による磁気変化をMRE(磁気抵抗効果)素子で検出する」ものであるから、「着磁ロータ3の回転」に伴って回転しない何らかの部材に取り付け固定されていることは明らかといえる。
そうすると、引用発明の「着磁ロータ3に対向するように配置され[る]」「車輪速度センサ1」は、本件補正発明の「前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部」に相当する。
b 構成B2(磁気センサ)
引用発明の「車輪速度センサ1は、MRE素子からなる素子回路用IC7と信号処理回路部が形成された処理回路用IC8とを備えて構成され、これら各IC7、8は樹脂9によってモールド化され、樹脂9から+端子10と-端子11が引き出された構成とされ、樹脂モールド部が、ハウジング14内に収容され[る]」ものであり、これは本件補正発明の構成B2と「前記センサ部は、前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む」「検出部と、前記検出部から延出された接続端子と、を有する磁気センサと、前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、」「前記磁気検出素子は、」「磁界を検出する磁気抵抗効果素子からな[る]」点において共通し、一方、検出部が「板状」であって「板厚方向に対して垂直な方向」の磁界を検出するものである点で相違する。
c 構成B3(配置)
構成B3の「前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材の軸方向端面に臨む」との特定は、単に、前記「端部」近傍のいずれかの部分が「前記被検出部材の軸方向端面に臨む」ことを特定しているものとも解釈し得るが、請求項3に記載された構成B7の「前記センサ部は、前記被検出部材の径方向に対して前記検出部の板厚方向が一致するように設けられている」との特定と併せ読めば、ここでいう「先端部」とは「前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部」であって、かつ前記「板厚方向」に垂直な方向に位置する端部を指すものと認められる。
一方で、引用発明において「車輪速度センサ1」は「着磁ロータ3に対向するように配置され、」「+端子10と-端子11が引き出される側と反対側の端部に、MRE素子からなる素子回路用IC7が配置される」ものであって、このうち「MRE素子からなる素子回路用IC7」側の端部が検出対象に臨むように配置されてはいるものの、「車輪速度センサ1」の端部のうち「+端子10と-端子11が引き出される側と反対側の端部」であって、前記「車輪速度センサ1」の板厚方向に垂直な方向に位置する先端部が、検出対象の軸方向端面に臨んでいるかは不明である。
そうすると、本件補正発明と引用発明は「前記センサ部は、前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、検出対象の軸方向端面に臨むように設けられ[る]」点で相違する。
d 構成B4(ケーブル)
引用発明において、「+端子10と-端子11」の出力信号を伝達する部材の具体的な構成は明示されていない。
そうすると、本件補正発明と引用発明は「前記接続端子に接続される中心導体と当該中心導体の外周を覆う絶縁体とを有する電線と、前記電線を覆うシースと、を有し、端部が前記ハウジング部に覆われているケーブルを更に備え、前記ケーブルは、前記ハウジング部から前記回転軸方向に延出して[いる]」点で相違する。
e 構成B5(厚さ)
引用発明において、「ハウジング部14」と「着磁ロータ3」の厚さ関係について具体的な構成は明示されていない。
そうすると、本件補正発明と引用発明は「前記ハウジング部の前記軸方向端面と対向する部分の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄[い]」点で相違する。
f 構成B6(素子数)
引用発明において、「MRE(磁気抵抗効果)素子」の個数及び配置方向について具体的な構成は明示されていない。
そうすると、本件補正発明と引用発明は「前記検出部は、前記接続端子の延出方向である長さ方向及び板厚方向に垂直な幅方向に並ぶように配置された複数の前記磁気検出素子を有[する]」点で相違する。
g 構成B7(配置)
引用発明において、「車輪速度センサ1」と「着磁ロータ3」の配置方向について具体的な構成は明示されていない。
そうすると、本件補正発明と引用発明は「前記センサ部は、前記被検出部材の径方向に対して前記検出部の板厚方向が一致するように設けられている」点で相違する。
h 構成B1~B7の観点のまとめ
以上の構成B1~B7の観点の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、以下(a)の一致点において一致し、後記(b)の相違点において相違する。
(a) 構成B1~B7の観点における一致点
「前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、
前記センサ部は、
前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部と、前記検出部から延出された接続端子と、を有する磁気センサと、
前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、
前記磁気検出素子は、磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなる」点。
(b) 構成B1~B7の観点における相違点
i 本件補正発明は、センサ部の検出部について、「板状」であって「前記接続端子の延出方向である長さ方向及び板厚方向に垂直な幅方向に並ぶように配置された複数の前記磁気検出素子を有し、」「前記検出部の板厚方向に対して垂直な方向」の磁界を検出するものであり、「前記センサ部は、前記被検出部材の径方向に対して前記検出部の板厚方向が一致するように設けられ」て、「前記ハウジング部の前記軸方向端面と対向する部分の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄く」なるように設けられているとの限定があるのに対して、引用発明はかかる限定が無い点。
ii 本件補正発明は、「前記センサ部は、前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材の軸方向端面に臨むように設けられて[いる]」のに対し、引用発明はかかる限定が無い点。
iii 本件補正発明は、「前記接続端子に接続される中心導体と当該中心導体の外周を覆う絶縁体とを有する電線と、前記電線を覆うシースと、を有し、端部が前記ハウジング部に覆われているケーブルを更に備え、前記ケーブルは、前記ハウジング部から前記回転軸方向に延出して[いる]」のに対して、引用発明はかかる限定が無い点。
イ 一致点及び相違点の認定
前記アの対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違する。
(ア) 一致点
「回転部材に取り付けられており、前記回転部材の回転軸を中心とした周方向に沿って複数の磁極が設けられている円環状の被検出部材と、
前記回転部材の回転に伴って回転しない固定部材に取り付けられており、前記被検出部材と対向して配置されているセンサ部と、を備え、
前記センサ部は、
前記被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む検出部と、前記検出部から延出された接続端子と、を有する磁気センサと、
前記磁気センサを被覆するように設けられたハウジング部と、を有し、
前記磁気検出素子は、磁界を検出する磁気抵抗効果素子からなる、
回転検出装置。」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明は、センサ部の検出部について、「板状」であって「前記接続端子の延出方向である長さ方向及び板厚方向に垂直な幅方向に並ぶように配置された複数の前記磁気検出素子を有し、」「前記検出部の板厚方向に対して垂直な方向」の磁界を検出するものであり、「前記センサ部は、前記被検出部材の径方向に対して前記検出部の板厚方向が一致するように設けられ」て、「前記ハウジング部の前記軸方向端面と対向する部分の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄く」なるように設けられ、「前記センサ部は、前記磁気センサの前記検出部における前記接続端子の延出側と反対側の端部である先端部が、前記被検出部材の軸方向端面に臨むように設けられているとの限定があるのに対して、引用発明はかかる限定が無い点。
b 相違点2
本件補正発明は、「前記接続端子に接続される中心導体と当該中心導体の外周を覆う絶縁体とを有する電線と、前記電線を覆うシースと、を有し、端部が前記ハウジング部に覆われているケーブルを更に備え、前記ケーブルは、前記ハウジング部から前記回転軸方向に延出して[いる]」との限定があるのに対して、引用発明はかかる限定が無い点。
(4) 判断
ア 相違点1について
前記(2)イ(ウ)において引用文献2技術事項として認定したとおり、以下の技術事項は、本願出願前に公知であった。
「車軸などの回転体に固定され、固定対象である回転体とともに回転する着磁ロータ10の回転状態を検出する板状の回転検出装置20であって、センサチップ21と、バイアス磁石22と、回路チップ23と、リードフレーム24と、封止樹脂体25を備え、
リードフレーム24の端子24b~24dは延設されて、封止樹脂体25から外部に突出し、
センサチップ21は、着磁ロータ10の回転にともなって抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子210が形成された半導体チップであり、複数の磁気抵抗効果素子210が形成され、センサチップ21は平面略矩形の板状をなしており、
端子24b~端子24dの突出方向及び板厚方向に対して垂直な方向に並ぶように、第1素子211及び第2素子212が配置され、
素子に作用する着磁ロータ10の磁気ベクトルの向き(すなわち、素子が検出する磁界の向き)が回転検出装置20の板厚方向に対して垂直な方向であり、
端子24b~24dの延出側と反対側の端部である回転検出装置20の先端部が着磁ロータ10の軸方向端面に臨むように設けられており、
回転検出装置20の板厚方向が着磁ロータ10の径方向と一致し、また回転検出装置20の板厚が着磁ロータ10の幅よりも薄い
回転検出装置20。」
そうすると、同様に回転部材の回転検出装置に関する発明である引用発明において、車輪速度センサとして引用文献2技術事項の回転検出装置20を採用して前記相違点1に係る構成とすることは、当業者にとっては容易になし得るものにすぎない。
イ 相違点2について
前記(2)ウ(イ)において引用文献4技術事項として認定したとおり、以下の技術事項は、本願出願前に公知であった。
「車両に搭載される車輪速センサであって、車輪とともに回転する回転体Rに対向配置されることで回転体Rの回転状態を検出するように構成されている回転検出装置1が備える信号ケーブル4であって、
信号ケーブル4は、第一信号ケーブル4aと、第二信号ケーブル4bと、シース4cとを有し、第一信号ケーブル4aおよび第二信号ケーブル4bは、銅等の良導体金属製の心線の周囲を塩化ビニル等の絶縁表皮層で覆うことによって形成され、シース4cは、第一信号ケーブル4aと第二信号ケーブル4bとを覆う外部絶縁体であって、信号ケーブル4の末端部およびセンサ本体部3は、被覆部5によって覆われており、
センサ素子7は、第一端子部7eと、第二端子部7fとを有し、第一端子部7eには、第一信号ケーブル4aが電気接続され、第二端子部7fには、第二信号ケーブル4bが電気接続され、
保持部材10は、信号ケーブル4の末端部およびセンサ素子7を内側に保持するように構成され、
外部に突出する部分は、中心軸線Cに沿って延設される
信号ケーブル4。」
そうすると、同様に回転部材の回転検出装置に関する発明である引用発明において、センサ部に接続されるケーブルとして引用文献4技術事項の信号ケーブル4を採用して前記相違点2に係る構成とすることは、当業者にとっては容易になし得るものにすぎない。
ウ 前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において前記相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献2技術事項、及び引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、当業者にとって予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項、及び引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 請求人の主張について
ア 請求人の主張内容
審判請求書において、請求人は、以下の主張をしている。
本願の請求項1に係る発明は、引用文献1~5には何ら記載されていない、
「前記ハウジング部の前記軸方向端面と対向する部分の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄い、」という発明特定事項Aを有している。
特に、引用文献1(図1)においては、車輪速度センサ1が着磁ロータ3の軸方向端面と対向しているか定かではないとともに、仮にこれらが対向していたとしても車輪速度センサ1の(着磁ロータ3の)軸方向端面と対向する部分の厚さと着磁ロータ3の径方向の幅との関係が定かではない。
本件補正発明は、引用文献1~5には何ら記載されていない発明特定事項Aを有することにより、
「ハウジング部の(被検出部材の)軸方向端面と対向する部分を(被検出部材の)軸方向端面と対向させることで、磁気センサの検出部を(被検出部材の)軸方向端面に容易に対向させることが可能である」
という顕著で有利な効果を奏する。
以上より、本件補正発明、引用文献1~5には何ら記載されていない発明特定事項Aを有するとともに、当該発明特定事項Aに基づく顕著で有利な効果を奏するので、引用文献1~5に基づき容易に発明できたものではなく、進歩性を有する発明であると思料する。
イ 請求人の主張についての検討
前記(4)アにおいて検討したように、引用発明において、車輪速度センサとして引用文献2技術事項の回転検出装置20を採用することは、当業者にとっては容易になし得るものであるから、前記請求人の主張は、採用できない。
(6) 補正の却下の決定の理由のむすび
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2において却下したので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和5年4月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1を引用する請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)の本件補正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に係る拒絶の理由2の概要は、次のとおりである。
本願発明は、引用文献1、引用文献2及び引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献に記載された事項等
前記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(ウ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
4 対比・判断
(1) 本願発明は、本件補正発明において、次のア~イの限定を省いたものである(前記第2の2(1)参照)。
ア 本件補正前の請求項1に記載されていた「被検出部材」を「円環状」であるものに限定すること。
イ 本件補正前の請求項1に記載されていた「ハウジング部」について、その「前記軸方向端面と対向する部分の厚さは、前記被検出部材の径方向の幅よりも薄い」ものに限定すること。
(2) そうすると、前記第2の3(3)での対比検討を踏まえれば、本願発明は引用発明、引用文献2技術事項、及び引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもある。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は引用発明、引用文献2技術事項、及び引用文献4技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-000506