2022-011064
自律車両ナビゲーションのための疎な地図
- 審判番号
- 2022-011064
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-036233外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月15日
- 審決日
- 2023年04月25日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】モービルアイ ビジョン テクノロジーズ リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G08G) / P18 .55 -WY (G08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
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本願は、2016年(平成28年)2月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年2月10日(US)アメリカ合衆国、2015年5月20日(US)アメリカ合衆国、2015年6月4日(US)アメリカ合衆国、2015年6月19日(US)アメリカ合衆国、2015年7月15日(US)アメリカ合衆国、2015年9月9日(US)アメリカ合衆国、2015年9月17日(US)アメリカ合衆国、2015年12月1日(US)アメリカ合衆国、2015年12月1日(US)アメリカ合衆国、2015年12月15日(US)アメリカ合衆国、2015年12月18日(US)アメリカ合衆国、2015年12月21日(US)アメリカ合衆国、2015年12月21日(US)アメリカ合衆国、2015年12月21日(US)アメリカ合衆国、2015年12月22日(US)アメリカ合衆国、2016年1月5日(US)アメリカ合衆国、2016年1月5日(US)アメリカ合衆国、2016年1月5日(US)アメリカ合衆国、2016年1月5日(US)アメリカ合衆国、2016年1月11日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2017-542097号の一部を令和2年3月3日に新たな特許出願としたものであって、令和3年5月18日付け(発送日:同年5月25日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和3年10月15日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年3月8日付け(発送日:同年3月15日)で拒絶査定がされた。これに対し、令和4年7月15日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求と同時に手続補正書が提出されたものである。その後令和4年9月12日付けで前置報告がなされ、これに対して令和4年12月2日に請求人より上申書が提出された。
第2 本願発明について
1 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1-6に係る発明(以下「本願発明1-6」という。)は、令和4年7月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】サーバーシステムであって、プロセッサと、命令を含むメモリと、を備え、続きを表示(全23行)前記命令により前記プロセッサに、複数の車両から撮影された画像から道路セグメントに沿った陸標の識別を取得することであって、前記陸標には交通標識が含まれ、前記陸標の識別が、前記交通標識に対応する陸標のカテゴリの識別と前記交通標識の種類の識別を含み、前記陸標を既存のマップと融合して、前記識別された交通標識を追加して更新されたマップを作成することであって、前記既存のマップが、前記道路セグメントのレーンに対応する三次元多項式を含み、前記交通標識は前記既存のマップには含まれていないことと、自律運転で使用するために、更新されたマップを複数の車両に配信することであって、前記更新されたマップには前記交通標識の表現が含まれており、前記更新されたマップは、前記交通標識の表現に基づいて、前記複数の車両が前記三次元多項式に対する自分の位置を特定することを可能にすること、を実行させるサーバーシステム。【請求項2】前記陸標の識別はニューラルネットワークを使用して実行される、請求項1に記載のサーバーシステム。【請求項3】データを含むコンピュータプログラムであって、前記データがプロセッサベースのサーバーシステムで使用されると、前記プロセッサベースのサーバーシステムに、複数の車両から撮影された画像から道路セグメントに沿った陸標の識別を取得することであって、前記陸標には交通標識が含まれ、前記陸標の識別が、前記交通標識に対応する陸標のカテゴリの識別と前記交通標識の種類の識別を含み、前記陸標を既存のマップと融合して、前記識別された交通標識を追加して更新されたマップを作成することであって、前記既存のマップが、前記道路セグメントのレーンに対応する三次元多項式を含み、前記交通標識は前記既存のマップには含まれていないことと、自律運転で使用するために、更新されたマップを複数の車両に配信することであって、前記更新されたマップには前記交通標識の表現が含まれており、前記更新されたマップは、前記交通標識の表現に基づいて、前記複数の車両が前記三次元多項式に対する自分の位置を特定することを可能にすること、を含む動作を実行させる命令を実行させる、コンピュータプログラム。【請求項4】前記陸標を識別するための命令には、前記陸標を識別するためのニューラルネットワークを実装する命令が含まれる、請求項3に記載のコンピュータプログラム。【請求項5】複数の車両から撮影された画像から道路セグメントに沿った陸標の識別を取得する段階であって、前記陸標には交通標識が含まれ、前記陸標の識別が、前記交通標識に対応する陸標のカテゴリの識別と前記交通標識の種類の識別を含まれる段階と、前記陸標を既存のマップと融合して、前記識別された交通標識を追加して更新されたマップを作成する段階であって、前記既存のマップが、前記道路セグメントのレーンに対応する三次元多項式を含み、前記交通標識は前記既存のマップには含まれていない段階と、自律運転で使用するために、更新されたマップを複数の車両に配信する段階であって、前記更新されたマップには前記交通標識の表現が含まれており、前記更新されたマップは、前記交通標識の表現に基づいて、前記複数の車両が前記三次元多項式に対する自分の位置を特定することを可能にする段階と、を備える方法。【請求項6】前記陸標の識別はニューラルネットワークを使用して実行される、請求項5に記載の方法。」
なお、本願発明1、3及び5に記載された「前記更新されたマップは、前記交通標識の表現に基づいて、前記複数の車両が前記三次元多項式に対する自分の位置を特定することを可能にする」なる事項は、願書に最初に添付された明細書(以下、「出願当初明細書」という。)の段落【0253】に記載される「幾つかの実施形態では、目標軌道は、車両が走行する際にとるべき理想経路を表し得る。目標軌道は、例えば、走行レーンの概ね中央に配置し得る。他の場合、目標軌道は、道路セグメントに対して他の場所に配置し得る。例えば、目標軌道は、道路の中心、道路の縁部、又はレーンの縁部等に概ね一致し得る。」なる事項、段落【0257】に記載される「図9Aに示されるように、レーン900は、多項式(例えば、一次、二次、三次、又は任意の適する次数の多項式)を使用して表現し得る。」なる事項及び段落【0486】に記載される「認識済み陸標が、捕捉画像において識別されると、認識済み陸標の所定の特徴を使用して、ナビゲーションにおいてホスト車両を支援し得る。例えば、幾つかの実施形態では、認識済み陸標を使用して、ホスト車両の現在位置を特定し得る。幾つかの場合、ホスト車両の現在位置は、疎なデータモデル800からの目標軌道に対して特定し得る。」なる事項からみて、出願当初明細書に記載されていた事項の範囲内の事項であると認められる。
2 拒絶査定の理由
拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1、3、5
・引用文献 1-2、4
・請求項 2、4、6
・引用文献 1-4
<引用文献一覧>
1.特開2005-315644号公報
2.特開2002-243469号公報
3.特開2014-163814号公報
4.特開2013-069278号公報(周知技術を示す文献)
3 当審の判断
(1)本願発明1について
ア 引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0001】この発明は、地図データの高精度化を図る地図補正システムと、地図補正システムによる補正後の地図データを利用する事故報知システム、車両制御システム、車両誘導システム及びマンナビシステムに関するものである。」
(イ)「【0053】以上で明らかなように、この実施の形態10によれば、サーバ装置5のデータ補正部14により位置データが補正されている高精度な地図データを参照して、現在位置検出部42により高精度に検出された車両の現在位置から目的地に至るまで車両を誘導するように構成したので、肉眼では道路を確認することができない状況化で使用される除雪車などの自動運転を実現することができる効果を奏する。」
(ウ)「【0056】また、道路標識をGISに書きこむこともできる。即ち、予め、あらゆる種類の道路標識の画像と道路標識のIDとを対応させてデータベースとして計算機に登録しておき、PAS測位時に、道路標識の近くでGPSを搭載した車を止めてステレオカメラで写真を撮り、PAS測位で得られた車の位置と、車から道路標識までの2次元の方向と距離から道路標識の2次元の位置を算出し、こうして得られた道路標識の情報(2次元の位置と道路標識の写真)を収集し、データベースの道路標識の画像を適宜拡大縮小した上で道路標識の写真と照合することで、最も近い道路標識のIDをデータベースから取りだし、当該道路標識のIDをデータをGIS上の測位した位置に追加する。これにより、GIS上に道路標識が追加された状態でカーナビなどの画面上で表示できるので、運転者に便宜を与えることができる。」
(エ)上記(ウ)に記載された、車を止めて撮られた写真を用いて最も近い道路標識のIDをデータベースから取りだすこと、当該道路標識のIDのデータをGIS上の測位した位置に追加すること、GIS上に道路標識が追加された状態でカーナビなどの画面上で表示できるようにすること、及び補正された高精度な地図データを参照して自動運転を実現すること、に係る作業は、サーバ装置5を含むシステムにおいて実行されていることは明らかである。そして、サーバ装置5を含むシステムは、プロセッサと、命令を含むメモリと、を備え、命令により作業を実行させるとの技術常識を踏まえれば、前記命令により前記プロセッサに上記作業を実行させていることは明らかである。
上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
<引用発明>
「サーバ装置5を含むシステムであって、プロセッサと、命令を含むメモリと、を備え、前記命令により前記プロセッサに、車を止めて撮られた写真から最も近い道路標識のIDをデータベースから取りだすこと、当該道路標識のIDのデータをGIS上の測位した位置に追加すること、GIS上に道路標識が追加された状態でカーナビなどの画面上で表示できるようにすること、補正された高精度な地図データを参照して自動運転を実現することと、を実行させるサーバ装置5を含むシステム。」
イ 引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、車両走行中に周辺地図の表示や施設案内等を行うナビゲーション装置、および所定のネットワークに設置された地図配信サーバ等の地図データベースの内容更新を行う地図データベース更新システムに関する。」
(イ)「【0038】道路標識に関する更新情報の作成(ステップ101)カメラ4から画像データが出力されると、道路標識認識部20は、道路標識テンプレートを用いて道路標識の種別およびその相対位置を認識する処理を行う。相対位置の認識結果が得られると、絶対位置計算部24は、この相対位置とナビゲーション動作処理部12から出力される自車位置に基づいて道路標識の絶対位置を計算する。道路標識照合部26は、道路標識の種別の認識結果と道路標識の絶対位置の計算結果を取得し、その内容を地図情報格納部10に格納された地図情報に含まれる内容と照合して両者の差異を検出し、道路標識に関する更新情報を作成する。」
上記記載を総合すると、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「所定のネットワークに設置された地図配信サーバ等の地図データベースの内容更新を行う地図データベース更新システムにおいて、道路標識の種別の認識結果と道路標識の絶対位置の計算結果を取得し、道路標識に関する更新情報を作成すること。」
ウ 引用文献4
周知技術を示す文献である引用文献4には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0019】本発明の実施例においては、交通標識の識別を効率よく行うために、体系中の交通標識の効率的且つ合理的な組織化が必要となる。本発明の実施例には、「特徴ツリー」の組織形式が用いられている。本発明の実施例における交通標識検知方法は、さらに、標準交通標識を外部輪郭の色特徴に応じて大類(large class)に分類し、大類下に、標準交通標識を外部輪郭の形状特徴に応じて小類(small class)に分類し、小類下に、標準交通標識を内部輪郭の形状特徴に応じて子類(sub class)に分類することにより、標準交通標識の特徴ツリーを構築する交通標識特徴ツリー構築ステップを有してもよい。【0020】もちろん、該交通標識特徴ツリー構築ステップは、構築した特徴ツリーを識別ステップS400の前に提供することさえできれば、交通標識検知方法の前述の他のステップと並行に行われてもよい。例えば、交通標識特徴ツリー構築ステップは、オフラインで行われてもよく、例えば、交通標識検知方法の他のステップの実行前に、準備動作として行うことができる。続きを表示(全12行)【0021】各国の交通標識体系において、交通標識は、標準の色や形状を有し、例えば、三角形、円形、矩形等の外部形状と、内部形状を有している。設計により、これらの交通標識にユニークな特徴を与え、道路シーンにおいて、運転手による識別及び理解を容易にするために、周囲環境とのコントラス比をできるだけ高くしている。【0022】これらの特徴は、異なる層に分解され、図4に示された特徴ツリーが構築される。図4は、本発明の実施例における特徴による交通標識の分類からなる特徴ツリーである。図4において、ある国の交通標識体系を例にすると、第1の層における主な特徴は、「色」であり、ここでは交通標識の外輪郭色を指している。交通標識は、赤色標識と、青色標識と、黄色標識の3つのグループに分けられ、各色により、特定の意味が表されている。例えば、赤色は、通常、警告や禁止情報を表す。第1の層の異なる種別を「大類」と称することができる。【0023】第2の層における主な特徴は、「外部形状」であり、異なる色で表される大類は、異なる外部形状特徴を有する。例えば、赤色交通標識に関し、あり得る外部形状として、円形、三角系、六角形があり、青色交通標識に関し、あり得る外部形状として、矩形と円形標識のみある。これにより、交通標識の色が決められると、あり得る外部形状も、それに応じてある範囲内に決められる。この特徴により、交通標識の検知及び識別範囲を限定することができる。第2の層の異なる種別は、「小類」と称することができる。【0024】第3の層における主な特徴は、「内部形状」である。各交通標識の内部の輪郭の数に応じて、交通標識をさらに異なるグループに分けることができる。例えば、「単一輪郭グループ」は、ある交通標識の内部に輪郭が1つあることを表す。このように類推すると、「二輪郭グループ」、「三輪郭グループ」等があり得る。ここで構築された特徴ツリーは、以降の検知及び識別工程に用いられ、プログレッシブ形式の操作が可能になり、検索範囲を逐次縮小し、正確な位置決めを行うことにより、効率向上が実現可能になる。第3の層の異なる種別を「子類」と称することができる。図4には、1国の体系における交通標識及び子類の全てが並べられていないが、当業者は、前述の記載から、1国の交通標識体系における全ての交通標識は、基本的に前述の原則による分類が可能で、各交通標識は、いずれもある子類の中に位置決められることが理解できる。」
上記記載を総合すると、引用文献4には、以下の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。
「交通標識検知方法において、標準交通標識を外部輪郭の色特徴に応じて大類に分類し、大類下に、標準交通標識を外部輪郭の形状特徴に応じて小類に分類し、小類下に、標準交通標識を内部輪郭の形状特徴に応じて子類に分類すること。」
エ 引用文献5
令和4年9月12日付けの前置報告書で新たに引用された特開平11-265441号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0016】これらの端点の座標を識別するデータに加えて、直線以外の道路部分は2つ(またはそれ以上)のパラメータの位置を使用して表現される。これらのパラメータは、直線以外の地理特色の形状を生成するために計算可能関数によって使用される。図示の実施例では、計算可能関数はベジェ曲線であり、格納されるパラメータはベジェ曲線を生成するための制御点である。図5には、制御点CP(m)(1) 及びCP(m)(2) が示されており、後述するように、これらは地理データベース内の直線以外の道路部分52C1の形状の表現に使用される。これらの制御点は、スプライン曲線の三次スプラインサブファミリのサブセットであるベジェ曲線を使用することによって決定される。代替実施例では、他のスプライン曲線ファミリを含む湾曲したベクトルを定義する他の多項式を使用することができる。【0017】スプライン曲線、特にベジェ曲線を使用すると、湾曲道路部分のような直線以外の地図特色は、所望の程度の精度で地理特色の形状に一致する曲線を生成するように係数が決定された多項式によって表現される。ベジェ曲線の特性は、それらがそれらの2つの端点と、2つの付加的な制御点によって限定されることである。図5に破線で示すように、これらの制御点は、端点における曲線の接線に沿って位置している。ベジェ曲線は、S字曲線、円弧、放物線形状を近似し、また直線でさえも近似する。多項式曲線を点シリーズに適合させるための標準技術を使用して、地理データベース内の曲線への直線セグメント近似に使用される形状点の特定シリーズに対して、最良適合ベジェ曲線を与える制御点座標を見出すことができる。」
上記記載を総合すると、引用文献5には、以下の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。
「三次スプラインの多項式曲線を使用して地理データベース内の直線以外の道路部分を表現すること。」
オ 引用文献6
令和4年9月12日付けの前置報告書で新たに引用された特開2015-004814号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0073】従来の地図生成には、折れ線、円弧スプライン、クロソイドスプライン、3次スプラインなどといったいくつかの曲線表現が用いられてきた。関連する研究のほとんどは、1つの曲線表現を用いて、特定の側方境界を有する、明確に定義された車道をモデル化することに焦点を合わせているが、実際には、分岐レーンと呼ぶ、車両ナビゲーションについての別の種類の走行レーンが存在する。典型的な分岐レーンは、交差点を通過する経路、及び分岐地点/合流地点の前後のレーン変更のための経路を含む。これらの走行レーンは、実際には、曲線表現について異なる要件を有する。というのは、これらの走行レーンは普通、車両が従うべき特定の交通規則を伴うからである。したがって、本実施の形態では、明確に定義された非分岐レーンをモデル化するのに、クロソイドスプラインを使用し、分岐レーンのモデル化には3次スプラインを用いる。【0074】<分岐レーンモデル>クロソイドとは、弧の長さの関数としての一定の曲率変化を有するスプラインである。本実施の形態において非分岐レーンモデルにクロソイドを選択するのは、これがレーン境界を構築するための道路設計において広く使用されているからである。本実施の形態では、走行レーンのパラメータベクトルを、l(t)={x(t),y(t),φ(t),C0(t),C1(t),W(t)}として定義する。式中、[x(t),y(t)]及びφ(t)は、それぞれ、レーン中心点の位置及び向き(接線方向)である。C0(t)はレーンの曲率であり、C1(t)は曲率の変化率である。W(t)はレーン幅である。理想的なクロソイドスプラインは超越関数であり、線適合には不都合である。したがって本実施の形態では、3次多項式であるクロソイドのテイラー級数表現を使用して、非分岐の走行レーンの中心線を次式として記述する。」
上記記載を総合すると、引用文献6には、以下の事項(以下「引用文献6記載事項」という。)が記載されている。
「3次多項式を使用して、地図上の走行レーンの中心線を記述すること。」
カ 引用文献7
令和4年9月12日付けの前置報告書で新たに引用された米国特許出願公開第2014/0244125号明細書(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「[0045] The path curves in a geographic database may be generated from two-dimensional link geometry. The link geometry includes line segments that connect a series of points. In one example, map data in the geographic database includes paths only in the form of straight line segments. The links are used to fit a path curve by estimating the link geometry may be polynomials, spline curves, b-spline curves, bezier curves, clothoids, or other parametric or non-parametric curve types. The path curve may be two-dimensional (e.g., latitude and longitude), three-dimensional (e.g., latitude, longitude, and height) or have another number of dimensions.」
(当審仮訳:地理データベース内の道路曲線は、2 次元の接続ジオメトリから生成される場合がある。接続ジオメトリには、一連のポイントを接続する線分が含まれる。一例では、地理データベース内の地図データは、直線セグメントの形の経路のみを含む。リンクは、多項式、スプラインカーブ、B-スプライン カーブ、ベジェ カーブ、クロソイド、またはその他のパラメトリックまたはノンパラメトリック曲線タイプである可能性がある接続ジオメトリを用いて道路曲線を表現するために使用される。道路曲線は、2 次元 (緯度と経度など)、3 次元 (緯度、経度、高さなど) の場合もあれば、別の数の次元を持つ場合もある。)
上記記載を総合すると、引用文献7には、以下の事項(以下「引用文献7記載事項」という。)が記載されている。
「3次元のスプラインを用いて地理データベース内の道路曲線を表現すること。」
キ 引用文献8
令和4年9月12日付けの前置報告書で新たに引用された特開2011-118889号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0005】本発明による車線逸脱防止方法は、ビデオイメージャから、車両の前方の道路の画像を受け取るステップと、画像内に、道路上の路面標識に対応する1つ以上の路面標識を検出するステップと、次いで、検出された路面標識の外側の画像領域に対応する道路の運転しやすさの評価を決定するために、その画像領域の特性を分析するステップと、検出された路面標識に基づいて、路面標識に相対的に、車両の道路上の横方向のオフセットを検出するステップとを含んでいる。警告信号は、横方向のオフセットおよび評価の関数として生成される。」
(イ)「【0008】本発明は、ビデオ画像に基づく道路特性分析、車線検出、および車線逸脱防止の方法および装置を提供するものである。この装置の一実施形態においては、道路面上に直線部およびダッシュ部を含んでいる車線区分線を見出すために、自動車に搭載されたビデオカメラの前方の道路の画像を用いる装置である。車線区分線に相対的に測定された、道路上のビデオカメラ(車両)の位置を再現するために、画像中に見出された車線区分線の位置が、ビデオカメラの幾何学的配置情報と組み合わされる。再現されたビデオカメラの位置情報が、自動車の運転者の運転を支援するために用いられる。【0009】ビデオカメラからの、実質的にリアルタイムの一連の画像フレームを用いることによって、この装置は、さらに車線区分線に加えて、道路上の他の図形および物体を検出する。道路境界の位置特定情報、および道路の特性分析が、道路境界に相対的な横方向位置(オフセット)の検出に用いられる。この装置は、例えば車線逸脱警告アプローチにおいて自動車の運転を助け、道路を進んでいく自動車をガイドするために、車道上の車両位置および道路特性に関する実質的にリアルタイムの情報を導き出す。」
(ウ)「【0013】この例においては、コントローラ5は、車線境界検出装置6、車線逸脱検出装置9、カメラ較正モジュール10、警告モジュール11、および曲率測定モジュール12を備えている。車線境界検出装置6は、道路特性分析によって画像3を処理し、道路4上の実際の路面標識8L、8Rをそれぞれ表わす路面標識画像フィーチャ7L、7Rの位置を、画像3内に追跡する。車線境界検出装置6は、画像3において、道路表面からの反射光像を検出し、路面標識画像フィーチャ7Lおよび7Rの検出への影響を減らす(抑制する)反射光像検出モジュール6aを備えている。ビデオカメラ1に相対的に、路面標識8Lは道路の左側を表わしており、路面標識8Rは道路の右側を表わしている。路面標識画像フィーチャ7Lおよび7Rの位置およびヨー角(ビデオカメラ1の位置に相対的な)のデータが、車線境界検出装置6から車線逸脱検出装置9に供給される。車線境界検出装置6によって検出された車線区分線または道路境界に関する情報を用いて、曲率測定モジュール12は道路の曲率を測定し、その情報を、車線逸脱検出装置9に供給する。車線逸脱検出装置9は、さらに、車両2から速度情報を受け取り、また較正データを受け取る(カメラ較正モジュール10から供給することができる)。車線逸脱検出装置9は、路面標識8L、8Rに相対的に車両2の位置を特定するために、車両速度、車線区分線の位置、曲率情報、およびヨー角情報を、定期的に受け取ることが好ましい。路面標識8L、8Rには、車線区分線、道路境界などを含ませることができる。」
上記記載を総合すると、引用文献8には、以下の事項(以下「引用文献8記載事項」という。)が記載されている。
「自動車の運転者の運転の支援のために、路面標識を検出し、路面標識と相対的な車両の横方向の位置を特定すること。」
オ 本願発明1と引用発明の対比・判断
(ア)対比
引用発明の「サーバ装置5を含むシステム」は、その構成、機能又は技術的意義からみて本願発明1の「サーバーシステム」に相当し、以下同様に「車」は「車両」に、「道路標識」は「交通標識」に、「道路標識のID」は「交通標識の種類」に、「GIS」は「既存のマップ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「車を止めて撮られた写真」は、本願発明1の「車両から撮影された画像」に相当し、同様に「最も近い道路標識のIDをデータベースから取りだすこと」は「前記交通標識の種類の識別」に、「当該道路標識のIDのデータをGIS上の測位した位置に追加すること」は「前記陸標を既存のマップと融合して、前記識別された交通標識を追加して更新されたマップを作成すること」に、「GIS上に道路標識が追加された状態でカーナビなどの画面上で表示できるようにすること」は「前記更新されたマップには前記交通標識の表現が含まれて」いることに、それぞれ相当する。
さらに、引用発明の「道路標識」は、標識等を上位概念化した本願発明1の「道路セグメントに沿った陸標」のカテゴリの一つであることは明らかであるから本願発明1の「道路セグメントに沿った陸標」にも相当する。そして、引用発明の「最も近い道路標識のIDをデータベースから取りだすこと」は、本願発明の「道路セグメントに沿った陸標の識別を取得することであって、前記陸標には交通標識が含まれ、前記陸標の識別が、前記交通標識の種類の識別を含」むことにも相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ以下のとおりである。
<一致点>
「サーバーシステムであって、プロセッサと、命令を含むメモリと、を備え、前記命令により前記プロセッサに、車両から撮影された画像から道路セグメントに沿った陸標の識別を取得することであって、前記陸標には交通標識が含まれ、前記陸標の識別が、前記交通標識の種類の識別を含み、前記陸標を既存のマップと融合して、前記識別された交通標識を追加して更新されたマップを作成すること、前記更新されたマップには前記交通標識の表現が含まれていること、を実行させるサーバーシステム。」
<相違点1>
画像を撮影する車両について、本願発明1は「複数の車両」であるのに対して、引用発明は一つの車両か複数の車両か不明である点。
<相違点2>
陸表の識別について、本願発明1は「前記交通標識に対応する陸標のカテゴリの識別」を含むのに対して、引用発明は道路標識以外の陸表を識別することは含まれていない点。
<相違点3>
更新されたマップを作成することについて、本願発明1は「前記既存のマップが、前記道路セグメントのレーンに対応する三次元多項式を含み、前記交通標識は前記既存のマップには含まれていないこと」と特定されているのに対しいて、引用発明はそのような特定がない点。
<相違点4>
本願発明1は「自律運転で使用するために、更新されたマップを複数の車両に配信する」のに対して、引用発明は「補正された高精度な地図データを参照して自動運転を実現する」ものであるが、地図データが配信されているどうか不明である点。
<相違点5>
本願発明1は「前記更新されたマップは、前記交通標識の表現に基づいて、前記複数の車両が前記三次元多項式に対する自分の位置を特定することを可能にする」ものであるのに対して、引用発明は「GIS上に道路標識が追加された状態でカーナビなどの画面上で表示できるようにする」ものである点。
(イ)当審の判断
事案に鑑み、上記相違点5について検討する。
引用文献2記載事項及び引用文献4記載事項は、上記イ及びウのとおりであるから、仮に上記相違点2又は相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を記載又は示唆するものであったとしても、相違点5に係る本願発明1の発明特定事項を記載又は示唆するものではないから、引用発明に引用文献2記載事項及び引用文献4記載事項を適用しても、相違点5に係る本願発明1の発明特定事項にはならない。
そして、前置報告において新たに引用された引用文献5ないし引用文献8の引用発明への適用についても念のために検討すると、引用文献5ないし引用文献7は、上記エないしカにおいて指摘したとおり、地図上の道路セグメントのレーンに関し、三次元多項式を対応させて表現する開示するのみであって、相違点5に係る本願発明1の発明特定事項をすべて記載又は示唆するものではないから、引用発明に引用文献5ないし引用文献7の記載事項を適用しても、相違点5に係る本願発明1の発明特定事項にはならない。
また、上記キにおいて指摘したとおり引用文献8記載事項は「路面標識と相対的な車両の横方向の位置を特定する」ものである。他方、相違点5に係る本願発明1の発明特定事項における「前記三次元多項式に対する自分の位置」とは、「既存のマップ」に含まれる「道路セグメントのレーン」「に対する自分の位置」である。言い換えれば、マップ上の道路セグメントの縦方向の車両の絶対的な位置である。してみれば、相違点5に係る本願発明1の発明特定事項と引用文献8記載事項とは、自分の位置を特定するという点では一致しているが、自分の位置が路面標識と相対的な位置かマップ上の絶対的な位置かという点及び横方向の位置か縦方向の位置かという点で相違している。
よって、引用文献8記載事項は、相違点5に係る本願発明1の発明特定事項を記載又は示唆するものではないから、引用発明に引用文献8記載事項を適用しても、相違点5に係る本願発明1の発明特定事項にはならない。
さらに、路面標識と相対的な位置をマップ上の絶対的な位置に変更すること及び横方向位置を縦方向位置に変更することが当業者にとって容易であったとする他の証拠もない。
以上のとおり、引用文献2、4及び8はいずれも相違点5に係る本願発明1の発明特定事項を記載又は示唆するものでないから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は引用文献1、2及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本願発明1は引用文献1、2及び4に記載された発明並びに前置報告で引用された引用文献5ないし8に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用するものである。本願発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それを引用する本願発明2も引用文献1、2及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、さらに、本願発明1は引用文献1、2及び4に記載された発明並びに前置報告で引用された引用文献5ないし8に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本願発明3-6について
本願発明3及び4は、サーバーシステムの発明である本願発明1及び2をコンピュータプログラムの発明としたものである。また、本願発明5及び6は、同じく本願発明1及び2を方法の発明としたものである。
よって、上記(1)及び(2)と同様の理由により、本願発明3-6は引用文献1、2及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本願発明1は引用文献1、2及び4に記載された発明並びに前置報告で引用された引用文献5ないし8に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)小括
したがって、本願発明1-6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
第3 まとめ
以上のとおり、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する
審決本文(J-PlatPat)
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2022-011064