特許拒絶査定不服審判
2022-010281
フレキシブル・チップ・ケーブル・アセンブリ
- 審判番号
- 2022-010281
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-054951
- 請求日
- 2022年07月01日
- 審決日
- 2023年04月20日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】テクトロニクス・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】荒船 博司
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 濱本 禎広
- 分類
- P18 .572-Z (G01R) / P18 .121-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 54951「フレキシブル・チップ・ケーブル・アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017-173324〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月21日の特許出願(パリ条約による優先権主張、2016年3月18日、米国、2016年9月8日、米国)であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 3月24日付け :拒絶理由通知書
同年10月 6日 :意見書及び手続補正書の提出
令和4年 1月28日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 3月 1日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月 1日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年 8月26日 :前置報告書
同年10月14日 :上申書の提出
第2 令和4年7月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年7月1日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和4年7月1日にされた特許請求の範囲及び明細書についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
RF差動信号を受けるように構成された標準的な規格に基づくプローブ無線周波数(RF)コネクタと、
試験接続アセンブリと、
上記プローブRFコネクタと上記試験接続アセンブリとの間で上記RF差動信号を伝送するように構成された同軸ケーブルと
を具え、
該同軸ケーブルが、
上記RF差動信号を伝送するためのケーブルと、
該ケーブルの長さに沿って配置され、上記RF差動信号をコモン・モード干渉から絶縁するように構成された複数の磁気部品と
を有し、
上記磁気部品の夫々は、隣接する該磁気部品から隙間によって離れており、上記ケーブルが複数のエラストマ部品を更に有し、少なくとも1つの該エラストマ部品が上記隙間の夫々に配置されることによって上記ケーブルに柔軟性を与えるフレキシブル・チップ・ケーブル・アセンブリ。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
被試験デバイスに対して物理的に固定可能であると共に上記被試験デバイスからのRF差動信号を受けるように構成された標準的な規格に基づくコネクタを用いたプローブ無線周波数(RF)コネクタと、
試験測定装置又は該試験測定装置用の前処理装置に固定するための留め具を有するノーズ・コーン部を有する試験接続アセンブリと、
上記プローブRFコネクタと上記試験接続アセンブリとの間で上記RF差動信号を伝送するように構成された同軸ケーブルと
を具え、
上記試験接続アセンブリが、上記同軸ケーブルを上記試験測定装置又は上記前処理装置に電気的に結合するよう構成され、
上記同軸ケーブルが、
上記RF差動信号を伝送するためのケーブルと、
該ケーブルの長さに沿って配置され、上記RF差動信号をコモン・モード干渉から絶縁するように構成された複数の磁気部品と
を有し、
上記磁気部品の夫々は、隣接する該磁気部品から隙間によって離れており、上記ケーブルが複数のエラストマ部品を更に有し、少なくとも1つの該エラストマ部品が上記隙間の夫々に配置されることによって上記ケーブルに柔軟性を与えるフレキシブル・チップ・ケーブル・アセンブリ。」
2 本件補正の目的について
(1) 本件補正による請求項1についての補正の内容
本件補正による請求項1についての補正は、次のアからウまでの補正事項からなる。
ア 本件補正前の「プローブ無線周波数(RF)コネクタ」について、「被試験デバイスに対して物理的に固定可能であると共に上記被試験デバイスからの」RF差動信号を受ける「コネクタを用いた」ものであることを限定すること。
イ 本件補正前の「試験接続アセンブリ」について、「試験測定装置又は該試験測定装置用の前処理装置に固定するための留め具を有するノーズ・コーン部を有する」ものに限定すること。
ウ 本件補正前の「試験接続アセンブリ」について、「上記同軸ケーブルを上記試験測定装置又は上記前処理装置に電気的に結合するよう構成され[た]」ものであることを限定すること。
(2) 補正の目的要件の充足性についての当審の判断
ア(ア) 新たに特定された「ノーズ・コーン部」の作用・機能について検討すると、本願の明細書の段落【0031】には、次のように記載されている。
「 【0031】
試験接続アセンブリ600は、留め具633を有する円錐形状部(nose cone:ノーズ・コーン)635も有している。円錐形状部635は、アクセサリやホストに結合するように構成され、留め具633によって適所に保持されるように構成されている。円錐形状部635は、プローブが使用されている間にユーザが電流と接触するのを防止することによって、安全機能を提供する。円錐形状部635は、プラスチック、ゴム又は他の非導電性材料のような安全目的に適した任意の非導電性材料で作ることができる。留め具633は、使用中に円錐形状部635を定位置に保持するように構成されている。ねじ切りが付いたねじが示されているが、任意の適切な留め具が留め具633として使用されてもよい。」
(イ) 前記記載を参酌すると、「ノーズ・コーン部」は、「プローブが使用されている間にユーザが電流と接触するのを防止することによって、安全機能を提供する」ものであるところ、本件補正前の請求項1に記載された発明については、「プローブが使用されている間にユーザが電流と接触するのを防止することによって、安全機能を提供する」ことは、発明が解決しようとする課題とはしていない。
(ウ) したがって、本件補正後の請求項1に記載される発明は、本件補正前の請求項1に記載された発明と解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
(エ) よって、本件補正による請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)には該当しない。
イ 本件補正による請求項1についての補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
ウ したがって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項各号において列挙するいずれをも目的とするものに該当せず、同項の規定に適合しない。
3 独立特許要件について
前記2において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しないものの、以下、仮に特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当したとして、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献等
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された米国特許出願公開第2008/0012591号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(日本語訳は当審による。また、下線は当審において付した。以下同様である。)
「[0002] The present invention relates to probe measurement systems for testing integrated circuits and other microelectronic devices and, more particularly, probe measurement systems utilizing differential signals to test circuits and devices.」
(日本語訳:本発明は、集積回路及び他のマイクロ電子デバイスを試験するためのプローブ測定システムに関し、より詳細には、回路及びデバイスを試験するために差動信号を利用するプローブ測定システムに関する。)
「[0007] ICs are typically characterized “on-wafer” by applying a test instrument generated signal to the test structure and measuring the response of the test structure to the signal. Referring to FIG. 2, at higher frequencies, on-wafer characterization is commonly performed with a network analyzer 100. A network analyzer comprises a source 102 of an AC signal, often a radio frequency (RF) signal, that is used to stimulate the DUT 30 of a test structure.(後略)」
(日本語訳:ICは、典型的には、試験装置によって生成された信号を試験構造に印加し、信号に対する試験構造の応答を測定することによって、「オンウェハ」で評価される。図2を参照すると、より高い周波数では、オンウェハ特性評価は、一般に、ネットワークアナライザ100を用いて実行される。ネットワークアナライザは、試験体であるDUT30を刺激するために使用されるAC信号(しばしば無線周波数(RF)信号である。)のソース102を含む。(後略))
「
[図:0001402320000001.jpg]
」
「[0033] Referring FIGS. 3 and 4, the probe 200 with integral balun comprises a support block 202 which is suitably constructed for connection to a movable probe supporting member 204 of a probe station. For example, the support block includes an aperture 206 for engagement by a snugly fitting alignment pin 208 that projects vertically from the probe supporting member. In addition, the support block includes a pair of countersunk apertures 210 to accept a pair of fastening screws 212 arranged to engage threaded holes in the probe supporting member and secure the probe to the probe supporting member.」
(日本語訳:図3及び図4を参照すると、一体型バランを有するプローブ200は、プローブステーションの可動プローブ支持部材204に接続するために適切に構成された支持ブロック202を備える。例えば、支持ブロックは、プローブ支持部材から垂直に突出するぴったりと嵌合する位置合わせピン208による係合のための開口206を含む。さらに、支持ブロックは、プローブ支持部材のねじ穴に係合してプローブをプローブ支持部材に固定するように配置された一対の締結ねじ212を受け入れる一対の皿穴開口210を含む。)
「
[図:0001402320000002.jpg]
」
「
[図:0001402320000003.jpg]
」
「[0034] The probe includes an input port 214 which, in the embodiment depicted, comprises spark-plug type, K-connector. This connector enables the external connection of an ordinary coaxial cable permitting a well shielded high frequency transmission channel to be established between the probe and the network analyzer or other test instrumentation. If desired, other types of connectors can be used, such as a 2.4 mm. connector, a 1.85 mm. connector or a 1 mm. connector.」
(日本語訳:プローブは、図示の実施形態においては、スパークプラグタイプのKコネクタを備える入力ポート214を含む。このコネクタは、通常の同軸ケーブルの外部接続を可能にし、良好にシールドされた高周波伝送チャネルが、プローブとネットワークアナライザ又は他の試験機器との間に確立されることを可能にする。所望により、2.4mmコネクタ、1.85mmコネクタ又は1mmコネクタなどの他のタイプのコネクタを使用することができる。)
「[0035] In the depicted embodiment, a semi-rigid coaxial cable 216 is connected at its rearward end to the K-connector comprising the port of the probe.(後略)」
(日本語訳:図示の実施形態では、半剛性同軸ケーブル216は、その後方端部で、プローブのポートを備えるKコネクタに接続される。(後略))
「[0037] The probe head 240 may be one of the many types of probe heads that have been developed for probing integrated circuits and other microelectronic devices. Godshalk et al., U.S. Pat. No. 5,506,515; Burr et al., U.S. Pat. No. 5,565,788; and Gleason et al., U.S. Pat. No. 6,815,963; assigned to Cascade Microtech Inc. and incorporated herein by reference, disclose a number of probe heads that may be utilized with the probe with integral balun. In a preferred embodiment, the probe 200 includes a microstrip style probe head comprising a dielectric sheet 242 having generally planar upper and lower surfaces that is affixed to the forward end of the coaxial cable. The underside of the cable is cut away to form a shelf 244, and the dielectric sheet is affixed to the shelf. Alternatively, the dielectric sheet may be supported by an upwardly facing shelf cut away from the cable or the end of the cable without a shelf. The dielectric sheet may comprise a flexible membrane or a plate of a more rigid dielectric material.」
(日本語訳:プローブヘッド240は、集積回路及び他のマイクロ電子デバイスをプロービングするために開発された多くのタイプのプローブヘッドのうちの一つであり得る。Godshalkらの米国特許第5,506,515号;Burrらの米国特許第5,565,788号及びGleasonらの米国特許第6,815,963号(Cascade Microtech Inc.に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる。)は、一体型バランを有するプローブと共に利用され得るいくつかのプローブヘッドを開示している。好ましい実施形態においては、プローブ200は、同軸ケーブルの前端に取り付けられたほぼ平坦な上面及び下面を有する誘電体シート242を含むマイクロストリップ型プローブヘッドを含む。ケーブルの下側は、シェルフ244を形成するために切り取られ、誘電体シートはシェルフに取り付けられる。あるいは、誘電体シートは、ケーブルから切り取られた上向きのシェルフ又はシェルフのないケーブルの端部によって支持されてもよい。誘電体シートは、可撓性膜又はより剛性の誘電体材料のプレートを含むことができる。)
「
[図:0001402320000004.jpg]
」
「
[図:0001402320000005.jpg]
」
「[0041] An integral balun 260 comprising a sleeve of magnetically permeable material substantially encircles a length of the outer surface of the outside conductor 218 of the coaxial cable 216 connecting the probe tip 250 and the probe's port 214.(後略)」
(日本語訳:磁気透過性材料のスリーブを構成する一体型バラン260は、プローブ先端250とプローブのポート214とを接続する同軸ケーブル216の外側導体218の外面の長さを実質的に取り囲む。(後略))
「[0043] The magnetically permeable sleeve balun 260 comprises a plurality of magnetically permeable tubes or beads 262 arranged end-to-end along a length of the coaxial cable 216. The beads typically comprise ferrite toroids that substantially encircle the outer surface of the coaxial cable but the beads may comprise one or more non-continuous sections arranged around the circumference of the cable. Ferrites are typically ceramic ferromagnetic materials. The ingredients are mixed, fired, crushed or milled, and pressed or extruded and fired to form their final shape. Ferrites may comprise rare earth, such as cobalt, but the most common ferrites comprise about 50% iron oxide. The balance of the materials determines the grade of the final ferrite and commonly comprises a mixture of manganese or nickel and zinc or zinc-oxide. The magnetic permeability of ferrites is variable by varying the composition and the method of making of the ferrite.(後略)」
(日本語訳:透磁性スリーブバラン260は、同軸ケーブル216の長さに沿って端から端まで配置された複数の透磁性チューブ又はビーズ262を備える。ビーズは、典型的には、同軸ケーブルの外面を実質的に取り囲むフェライト環状体を含むが、ビーズは、ケーブルの円周の周りに配置された一つ又は複数の非連続セクションを含むことができる。フェライトは、典型的には、セラミック強磁性材料である。成分を混合し、焼成し、破砕又は粉砕し、プレス又は押し出し、焼成して、それらの最終形状を形成する。フェライトは、コバルトなどの希土類を含むことができるが、最も一般的なフェライトは、約50%の酸化鉄を含む。材料のバランスが、最終的なフェライトのグレードを決定し、一般にマンガン又はニッケルと亜鉛又は酸化亜鉛との混合物を含む。フェライトの透磁率は、フェライトの組成及び製造方法を変えることによって可変である。(後略))
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)の引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「回路及びデバイスを試験するために差動信号を利用するプローブ測定システムのプローブ200であって、([0002]、[0033])
オンウェハ特性評価が、ネットワークアナライザ100を用いて実行され、
ネットワークアナライザは、試験体であるDUT30を刺激するために使用される無線周波数(RF)信号のソース102を含み、([0007])
同軸ケーブルの前端に取り付けられたほぼ平坦な上面及び下面を有する誘電体シート242を含むマイクロストリップ型プローブヘッドと、([0037])
通常の同軸ケーブルの外部接続を可能にし、良好にシールドされた高周波伝送チャネルが、プローブとネットワークアナライザの間に確立されることを可能にする、スパークプラグタイプのKコネクタを備える入力ポート214と、([0034])
プローブ先端250とプローブのポート214を接続する半剛性同軸ケーブル216と、([0035]、[0041])
同軸ケーブル216の外側導体218の外面の長さを実質的に取り囲む磁気透過性材料のスリーブを構成する一体型バラン260を含み、([0041])
透磁性スリーブバラン260は、同軸ケーブル216の長さに沿って端から端まで配置された複数のビーズ262を備え、ビーズは、同軸ケーブルの外面を実質的に取り囲むフェライト環状体を含む、([0043])
プローブ200。」
イ 周知技術1の認定
(ア) 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された実願平2-126102号(実開平4―82814号)のマイクロフィルム(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
「本考案は、一対の磁性体コア片から成り、その接合面を互いに接合したとき、該一対の磁性体コア片間に信号線挿入孔が形成される磁性体コアを信号線挿通孔を有するケース内に収納保持した電磁波障害除去フィルタに関する。」(1ページ18行~2ページ2行)
「以下本考案の実施例を図面につき説明する。
第1図乃至第3図は本考案の一実施例を示す。
同図において、11,12,…15は各々磁性体コアユニットで、この例えば5個の磁性体コアユニット11,12…15がフィルタの磁性体コアを構成する。各磁性体コアユニット11,12,…15は一対の磁性体コア片(11a,11b)(12a,12b)…(15a,15b)から成っている。各対の磁性体コア片(11a,11b)…は各々接合面を有し、接合したとき信号線挿通孔が形成される凹部2を有している。31、32…35は各々ケースユニットで、この例えば5個のケースユニット31、32…35がフィルタのケースを構成する。各ケースユニット31、32…35はヒンジ10によって開閉自在に連結された一対のケース部材(31a,31b),(32a、32b)…(35a,35b)から成り、5個のケース部材31a,32a,…35aと5個のケース部材31b,32b…35bはそれぞれケース部材と一体で小径の円弧状連結部材4で連結されている。このケース部材(31a,31b),…(35a、35b)及び連結部材4は樹脂製で且つ柔軟であって、連結部材4のところで自由に曲げることができる。」(4ページ17行~6ページ1行)
「
[図:0001402320000006.jpg]
」
(イ) 引用文献7の記載事項
当審において新たに引用する、本願の優先日より前に発行された実願昭57-107204号(実開昭59―12059号)のマイクロフィルム(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている(なお、本審決においては、審査段階及び前置審査も含めて、引用文献の参照番号を統一して用いるために、「引用文献7」の参照番号を用いた。)。
「本考案はオシロスコープ、スペクトラムアナライザ等の計測器のための測定用のプローブの改良に関するものである。
本考案の目的は輻射、誘導ノイズによる影響を低減した測定用のプローブを提供することである。」(1ページ下から5行目~2ページ1行)
「本考案は同軸ケーブル自体にフエライトコアを内蔵せしめたもので、第2図及び第3図は同軸ケーブルの外側の絶縁被覆(1)と編組シールド線(2)との間にフエライトコア(3)を挿着したものである。図中(5)は芯線、(6)は絶縁層である。」(2ページ17行~3ページ2行)
「第4図及び第5図は本考案の他の例を示すもので、フエライトコア(3)間に可撓性を具備した絶縁物(4)例えば合成ゴム、シリコンゴム、プラスチツク等を介在させたものである。
このように可撓性のある絶縁物(4)をフエライトコア(3)間に介在せしめると、フエライトコアだけの場合に比してケーブル自体の可撓性が良くなり曲げ易くなる。」(3ページ11~18行)
「
[図:0001402320000007.jpg]
」
「
[図:0001402320000008.jpg]
」
(ウ) 周知技術1の認定
前記(ア)及び(イ)において引用文献5、7の記載を摘記して例示したように、次の技術事項は、周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。
[周知技術1]
「ケーブルの長さに沿って磁性体を配置する場合に、隣接する磁性体の隙間に柔軟性のある樹脂材料を配置して可撓性を与えること。」
ウ 周知技術2の認定
(ア) 引用文献6の記載事項
当審において新たに引用する、本願の優先日より前に発行された特表2009-536742号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、電流プローブに関し、特に、オシロスコープと共に用いて、電流の流れる導体からの電流信号を取込むための電流プローブ・システムに関する。」
「【0004】
導体を流れる電流を測定するためには、電流プローブは導体と直列に結合されなければならない。これは、回路基板上の回路配線のような基板に固定された電流の流れる導体のときには難しいことがわかる。回路配線中を流れる電流を測定する一般的な手順では、配線を切って、ある長さの導線を切った配線間に半田付けする。この導線を電流プローブのトランス内の開口に通せば、導線はトランスの一次巻線として働く。他の手順としては、配線中に切れ目(Gap)を設けた回路基板を製造し、切れ目の両側に四角いピンを差し込む。回路基板の通常の試験の間、四角いピンに導体ジャンパが結合される。電流測定が必要なときは、ジャンパが外され、四角いピンの間に、ある長さの導線が結合される。前述と同様にして、導線が電流プローブのトランスの一次巻線として使用される。
」
「【0012】
図1は、電流の流れる導体からの電流信号を取込むオシロスコープ12と共に使用する電流プローブ・システムの斜視図である。電流プローブ・システム10には電流プローブ16があり、これはプローブ本体18と、その中に配置される電流検出回路を有する。電流検出回路は、プローブ本体18の一端部に配置される第1及び第2導電コンタクトと電気的に結合される。アダプタ20は、選択的にプローブ本体16に装着される。アダプタ20にはハウジング22があり、これから第1及び第2導電リード線24及び26が伸びている。プローブ本体18の他端部から伸びているのは、導電ケーブル28であり、これは電流検出回路からの出力信号をオシロスコープ12に結合すると共に、電源を電流プローブに供給する。導電ケーブル28は、好ましくは、電流プローブ制御ボックス30に結合され、これがオシロスコープ12の多数の入力信号チャンネル32の1つに結合される。各入力信号チャンネル32には、レセプタクル(receptacle)インターフェース34があり、各インターフェースには導電コンタクトと同軸信号ジャックがある。電流プローブ制御ボックス30には、レセプタクル・インターフェース34とかみ合うプラグ・インターフェース36があり、これにはレセプタクル・インターフェース34の対応する電気コンタクト及び同軸信号ジャックと連結する電気コンタクト及び同軸信号ジャックがある。インターフェース34及び36は、電流プローブ16及びオシロスコープ12間における通信機能の提供に加えて、電流プローブ16に電源を供給する。インターフェース34及び36は、電流プローブ16及びオシロスコープ12間の信号経路も提供する。
【0013】
多様な形式の電気コンタクト38、40が、電流プローブ・アダプタ20の第1及び第2導電リード線24及び26に供給されるが、これについて以下で詳しく説明する。電気コンタクトは、回路基板46などの上に形成された回路配線のような電流の流れる導体上に取り付けられた多数の電気コネクタ42、44の1つに電気的に結合するように作られる。電気コネクタ42、44は、電流の流れる導体にある非導電性の切れ目48を跨いで、電流の流れる導体上に配置される。電気コネクタ42には、非導電性の切れ目48の両側に取り付けられた四角いピン50があり、これらが電流の流れる導体14に電気的に結合される。電流プローブ・アダプタ20が電流の流れる導体に結合されていないときは、電気ジャンパ52が非導電性の切れ目48を横切って電流信号を結合するために四角いピン50に配置される。電気コネクタ44は、同軸レセプタクル54であり、後述する同軸プラグとかみ合う。コンタクト・パッド56を、電流の流れる導体上の非導電性の切れ目48の両側に形成しても良い。取り外し可能な導電薄片(foil:フォイル)58がコンタクト・パッドに保持され、非導電性の切れ目48を横切って電流信号を結合する。電流プローブ・アダプタ20が電流の流れる導体に結合されるときは、導電薄片は電流の流れる導体から除かれる。
【0014】
図2は、電流プローブ・システム10用のアダプタ20の代表的な例を示す。電流プローブ16のプローブ本体18には、ほぼ矩形の前部60があり、これはプローブ本体18の外側から凹んでいる。好ましい実施形態では、前部60にレセプタクル62があり、これには電流プローブ16の第1及び第2導電コンタクトを形成するコンタクトの配列がある。コンタクト配列の一部分が第1導電コンタクトを形成し、コンタクト配列の他の部分が第2導電コンタクトを形成する。突き出た前部60に配置されたラッチ部品64によって、プローブ本体の前部60とかみ合い保持される。解放レバー66がプローブ本体18上に配置され、第1から第2位置に動かすと、アダプタ・ハウジング22からラッチ部品64を解放する。
【0015】
アダプタ20のハウジング22には開口68があり、ここから第1及び第2導電リード線24及び26を含むケーブル70が伸びる。導電リード線24及び26夫々の一端部は、電流の流れる導体上の電気コネクタ42、44又はコンタクト・パッド56の1つを介して電流の流れる導体14と結合するために、電気コンタクト38、40で構成される。1つの構成としては、これら電気コネクタが、導電リード線24、26に取り付けられる導電ソケット72である。導電ソケット72は、電流の流れる導体中の非導電性の切れ目48の両側にある四角いピン50とかみ合う。他の構成としては、電気コンタクト38、40が導電リード線24、26から伸びる導電線74である。導電線74は、リード線の端部でも良いし、又は非導電性の切れ目48の両側上の電流の流れる導体のコンタクト・パッド56に保持されるコンタクト・パッドとして形成しても良い。更に別の構成では、導電リード線24、26が、電流の流れる導体中の非導電性の切れ目48に跨って取り付けられる同軸レセプタクル54とかみ合う同軸プラグ76に結合される。」
「【図1】
[図:0001402320000009.jpg]
」
「【図2】
[図:0001402320000010.jpg]
」
(イ) 周知技術2の認定
前記(ア)において引用文献6の記載を摘記して例示したように、次の技術事項は、周知技術(以下「周知技術2」という。)であると認められる。
[周知技術2]
「電流の流れる導体からの電流信号を取込むための電流プローブ・システムのプローブヘッドであって、試験対象の結合部とかみ合う電気コネクタである導電ソケットを有するプローブヘッド」
エ 引用文献8記載の技術事項の認定
(ア) 引用文献8の記載事項
当審において新たに引用する、本願の優先日より前に発行された特開平7-211367号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高出力の端子を覆い感電事故を防止する安全カバーに関する。」
「【0008】
【実施例】図1は、本発明の安全カバー40の一好適実施例及び安全カバー40を装着する電圧/電流出力装置100の前面部110の分解斜視図を示している。安全カバーは、例えば前面70、側面72及び74、上面76、下面78並びに後面80で構成される六面体(直方体や立方体)である。出力端子(雄のBNCコネクタ)は、前面部110に穴112、114及び116に夫々嵌合され、内側にねじが切ってあるナットで締め付けて固定される。この図では、代表して雄のBNCコネクタ10及びナット10’のみを示している。雄のBNCコネクタ10は、装置100の筐体内の回路基板102、104等に接続される。
【0009】ねじ切り穴115の先には小型スイッチ120があり、前面部110に固定される。小型スイッチ120は、板ばねで構成しても良い。安全カバー40を装着する際には、従来例と同様につまみ50の付いた軸の先端にあるピン52をねじ切り穴115に通し、つまみ50を回してねじ切り穴115とねじ山54を螺合させて使用する。この装着手段によって安全カバー40は、前面部110に装着される。小型スイッチ120等は、装置100の筐体内の回路基板102及び104に接続されるとともに固定され、出力端子10等の出力のオン及びオフの切り換えを制御する。」
「【図1】
[図:0001402320000011.jpg]
」
(イ) 引用文献8記載の技術事項の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると,引用文献8には次の技術事項(以下「引用文献8記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献8記載の技術事項]
「端子を覆い感電事故を防止する安全カバーであって、装着手段によって装置の前面部に装着される安全カバー。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本件補正発明の欄に記載した次の本件補正発明の構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
DUT30 被試験デバイス
ネットワークアナライザ100 試験測定装置
同軸ケーブル216 ケーブル
フェライト環状体 磁気部品
(イ) 引用発明の「プローブ200」は「半剛性同軸ケーブル216」及び「マイクロストリップ型プローブヘッド」からなる先端部(チップ)を備えるものであるから、「フレキシブル・チップ・ケーブル・アセンブリ」の発明である本件補正発明と「プローブ200」の発明である引用発明は、「フレキシブル・チップ・ケーブル・アセンブリ」の発明である点において一致する。
(ウ)a 引用発明において「ネットワークアナライザは、試験体であるDUT30を刺激するために使用される無線周波数(RF)信号のソース102を含[む]」ものであるから、引用発明で利用される「差動信号」がRF差動信号であり、また「マイクロストリップ型プローブヘッド」が受ける信号もRF差動信号であることは明らかである。
b 引用発明の「マイクロストリップ型プローブヘッド」と、本件補正発明の「コネクタ」は、「被試験体に電気的に接続して、その出力信号を受けるプローブヘッド」である点で共通する。
c そうすると、引用発明の「マイクロストリップ型プローブヘッド」と、本件補正発明の「被試験デバイスに対して物理的に固定可能であると共に上記被試験デバイスからのRF差動信号を受けるように構成された標準的な規格に基づくコネクタを用いたプローブ無線周波数(RF)コネクタ」は、「被試験デバイスからのRF差動信号を受けるように構成された無線周波数(RF)プローブヘッド」である点で共通する。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、「被試験デバイスからのRF差動信号を受けるように構成された無線周波数(RF)プローブヘッド」を備える点において共通する。
(エ)a 引用発明の「通常の同軸ケーブルの外部接続を可能にし、良好にシールドされた高周波伝送チャネルが、プローブとネットワークアナライザの間に確立されることを可能にする、スパークプラグタイプのKコネクタを備える入力ポート214」と、本件補正発明の「試験測定装置又は該試験測定装置用の前処理装置に固定するための留め具を有するノーズ・コーン部を有する試験接続アセンブリ」は、「試験接続アセンブリ」である点で共通する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「試験接続アセンブリ」を備える点において共通する。
(オ)a 前記(ウ)aを踏まえると、引用発明の「同軸ケーブル216」の伝送する信号がRF作動差動信号であることは明らかである。
b 上記a並びに前記(ウ)c及び(エ)aを踏まえると、本件補正発明と引用発明は「上記無線周波数(RF)プローブヘッドと上記試験接続アセンブリとの間で上記RF差動信号を伝送するように構成された同軸ケーブル」を有する点で共通する。
(カ)a 前記(エ)aを踏まえると、引用発明において「スパークプラグタイプのKコネクタを備える入力ポート214」が、「通常の同軸ケーブルの外部接続を可能にし、良好にシールドされた高周波伝送チャネルが、プローブとネットワークアナライザの間に確立されることを可能にする」ことは、本件補正発明において「上記試験接続アセンブリが、上記同軸ケーブルを上記試験測定装置に電気的に結合するよう構成され[る]」ことに相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「上記試験接続アセンブリが、上記同軸ケーブルを上記試験測定装置又は上記前処理装置に電気的に結合するよう構成され[ている]」点において一致する。
(キ)a 前記(ウ)aを踏まえると、引用発明の「同軸ケーブル216」の伝送する信号がRF差動信号であることは明らかであるから、引用発明の同軸ケーブルは、「上記RF差動信号を伝送するためのケーブル」であるといえる。
b 引用発明の「同軸ケーブル216」の伝送する信号がRF差動信号であることから、引用発明において「同軸ケーブル216の外側導体218の外面の長さを実質的に取り囲む磁気透過性材料のスリーブを構成する一体型バラン260」の「フェライト環状体」が、当該RF作動信号をコモン・モード干渉から絶縁する機能を有することは明らかである。
c そうすると、本件補正発明と引用発明は次の点で一致する。
「上記同軸ケーブルが、
上記RF差動信号を伝送するためのケーブルと、
該ケーブルの長さに沿って配置され、上記RF差動信号をコモン・モード干渉から絶縁するように構成された複数の磁気部品とを有[する]」点。
イ 一致点及び相違点の認定
上記アの対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違する。
(ア) 一致点
「被試験デバイスからのRF差動信号を受けるように構成された無線周波数(RF)プローブヘッドと、
試験接続アセンブリと、
上記無線周波数(RF)プローブヘッドと上記試験接続アセンブリとの間で上記RF差動信号を伝送するように構成された同軸ケーブルと
を具え、
上記試験接続アセンブリが、上記同軸ケーブルを上記試験測定装置又は上記前処理装置に電気的に結合するよう構成され、
上記同軸ケーブルが、
上記RF差動信号を伝送するためのケーブルと、
該ケーブルの長さに沿って配置され、上記RF差動信号をコモン・モード干渉から絶縁するように構成された複数の磁気部品と
を有する
フレキシブル・チップ・ケーブル・アセンブリ」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
ケーブルの長さに沿って配置され、上記RF差動信号をコモン・モード干渉から絶縁するように構成された複数の磁気部品が、
本件補正発明においては、「上記磁気部品の夫々は、隣接する該磁気部品から隙間によって離れており、上記ケーブルが複数のエラストマ部品を更に有し、少なくとも1つの該エラストマ部品が上記隙間の夫々に配置されることによって上記ケーブルに柔軟性を与える」のに対して、
引用発明においては、「フェライト環状体」の隙間にはエラストマ部品が配置されていない点。
b 相違点2
無線周波数(RF)プローブヘッドが、
本件補正発明においては、「被試験デバイスに対して物理的に固定可能である」、「標準的な規格に基づくコネクタを用いた」ものであるのに対して、
引用発明においては、「同軸ケーブルの前端に取り付けられたほぼ平坦な上面及び下面を有する誘電体シート242を含むマイクロストリップ型プローブヘッド」である点。
c 相違点3
試験接続アセンブリが、本件補正発明においては、「試験測定装置又は該試験測定装置用の前処理装置に固定するための留め具を有するノーズ・コーン部を有する」のに対して、
引用発明においては、当該構成を有しない「スパークプラグタイプのKコネクタを備える入力ポート214」である点。
(4) 判断
ア 相違点について
(ア) 相違点1について
a 前記(2)イ(ウ)で周知技術1として認定したように、次の技術は周知技術である。
「ケーブルの長さに沿って磁性体を配置する場合に、隣接する磁性体の隙間に柔軟性のある樹脂材料を配置して可撓性を与えること。」
b 引用発明においても、同軸ケーブルを可撓性として取り回しの容易性を向上させることは自明の課題であるから、周知技術1を採用して前記相違点1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(イ) 相違点2について
a 電気的な結合を行う際に「物理的に固定可能である」「コネクタ」を用いることは、特に例を示すまでもなく一般的な手法であって、引用発明にこれを採用することは、結合対象の構成に合わせて「標準的な規格に基づくコネクタ」を選択することも含め、設計事項の範囲内のものといえる。
b(a) 仮にそうでないとしても、前記(2)ウ(イ)で周知技術2として認定したように、次の技術は周知技術である。
「電流の流れる導体からの電流信号を取込むための電流プローブ・システムのプローブヘッドであって、試験対象の結合部とかみ合う電気コネクタである導電ソケットを有するプローブヘッド」
(b) したがって、試験対象の信号入出力部構造に合わせて、周知技術2のプローブヘッドを採用することは、標準的な規格に基づくコネクタを選択することを含め、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であるから、引用発明に周知技術2を採用して前記相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
なお、周知技術2のプローブヘッドは「対象の結合部とかみ合う」構成を含むものであり、「被試験デバイスに対して物理的に固定可能である」という機能を有することは明らかである。
(ウ) 相違点3について
a 前記(2)エ(イ)で認定したように、引用文献8には次の技術事項が記載されている。
「端子を覆い感電事故を防止する安全カバーであって、装着手段によって装置の前面部に装着される安全カバー。」
b 引用発明の同軸ケーブルとネットワークアナライザの接続部構造においても、試験対象の入出力レベルによって、感電事故防止の必要があることは自明であるから、引用発明に引用文献8記載の技術事項を採用することは、当業者が容易になし得たものである。またその際に安全カバーの形状をどのようなものとするかは、接続部周辺の環境や使用形態に応じて適宜選択されるべき設計事項の範囲内といえる。
c したがって、引用発明に引用文献8記載の技術事項を採用して前記相違点3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(エ) 総合評価
以上検討のとおり、相違点1から相違点3は、いずれも当業者が容易に想到し得たものである。
また、相違点1から相違点3までを総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1、2及び引用文献8に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
イ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
審判請求書において、請求人は概略次のように主張している。
引用文献1は、その図3及び4を参照すると、差動信号プローブ200を開示し、これは、周囲が一体型バラン(integralbalun)260で囲まれた同軸ケーブ260を有し、その先端には、プローブ・ヘッド240があって、ウェハ又は基板50上のプローブ・パッド32に接触させることが示されている。更に、同軸ケーブ260は、フレキシブルであることも記載されている。しかし、プローブ・ヘッド240をプローブ・パッド32に単に接触させているだけであって、これらの間を固定させて、ユーザがプローブ・ヘッド240を所望の位置に保持する等の操作をすること無く、高い周波数であっても、安定して測定しようとする技術的思想は全く開示していない。むしろ逆に、段落0036に「The forward end of the coaxial cable remains freely Suspended and, in this condition, serves as a movable support for a probe head 240 of the probe.(参考訳:同軸ケーブルの前端は、自由状態で吊り下げられており、この状態で、プローブのプローブ・ヘッド240の可動をサポートする)」とあって、同軸ケーブ260が、フレキシブルであることを利用して、プローブ・ヘッド240の位置を自由に変更可能としようとするものであることが開示されている。
即ち、引用文献1は、そのようなプローブ・ヘッドの位置を固定させないで、測定する箇所を自由に変更できるようにして、所望の箇所の測定を順次素早く行うことを可能にするための発明である。
一方、引用文献2及び3に開示される発明は、被試験デバイス上にコネクタを設けて、コネクタを使って接続する場所を固定させる発明であって、引用文献1に開示される発明は、引用文献2及び3に開示される発明を組み合わせようという動機付けが、全く無い。よって、本願発明に関して、引用文献1に開示される発明に、引用文献2又は3に開示される発明を組み合わせるという動機付は全くなく、引用文献5に、挿通される信号線をコモンモード干渉から遮蔽する複数の磁気部品の間に樹脂製の部品を設けることが開示されているとしても、これらを組み合わせれば、容易との理由には、根拠がない。
(イ) 請求人の主張についての検討
請求人は、引用発明が、プローブヘッドの位置を固定させないで、測定する箇所を自由に変更できるようにして、所望の箇所の測定を順次素早く行うことを可能にするための発明であって、コネクタを採用する動機が全く無いと主張している。
しかしながら、機器の試験中(電気信号の入出力中)にプローブヘッドを移動させることは技術常識から見てあり得ないことであるから、引用文献1で述べられているプローブヘッドの可動性というものは、試験の前後における移動を指しているものであることは明らかであって、プローブヘッドにコネクタ構造を採用することを妨げる理由とはなり得ない。これは例えば、前記周知技術2の認定で例示した引用文献6の電流プローブ・システムが、プローブヘッドにコネクタ構造を採用しながら、オシロスコープ12との接続が細い導電ケーブル28のみからなり(図1を参照)、移動自在な構成を実現していることからも明らかといえる。
そして、前記ア(イ)において詳述したように、引用発明にコネクタ構造を採用することは設計事項の範囲内のものであるし、仮にそうでないとしても、周知技術2のプローブヘッドを採用することは、標準的な規格に基づくコネクタを選択することを含め、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項である。
したがって、請求人の前記主張は採用することができない。
(5) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否のまとめ
前記2において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に適合しないから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
また、前記3において検討したとおり、仮に本件補正が特許法17条の2第5項第2号を目的とするものに該当したとしても、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年10月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)の本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に係る拒絶の理由2(進歩性)の概略は、次のとおりである。
本願の請求項1~3に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明、及び、下記の引用文献2~5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.米国特許出願公開第2008/0012591号明細書
引用文献2.特開2004-227948号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2010-153082号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開昭59-23259号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.実願平2-126102号(実開平4-82814号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
3 引用文献に記載された事項等
前記引用文献1、5には、それぞれ、前記第2の3(2)ア、イにおいて認定したとおりの引用発明及び周知技術1が記載されていると認められる。
4 対比
本願発明は、前記第2の2(1)アからウに示した限定を省いたものである。
そうすると、前記第2の3(3)アの対比分析における検討結果も踏まえて、本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明の相違点は、前記第2の3(3)イ(ア)に示した相違点1及び次に示す相違点2’のとおりであり、両者はその余の点で一致する。
[相違点2’]
無線周波数(RF)プローブヘッドが、
本願発明においては「標準的な規格に基づくコネクタを用いた」ものであるのに対して、引用発明においては、「同軸ケーブルの前端に取り付けられたほぼ平坦な上面及び下面を有する誘電体シート242を含むマイクロストリップ型プローブヘッド」である点。
5 判断
(1) 相違点1について
前記第2の3(4)ア(ア)において説示した判断を踏まえると、前記相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(2) 相違点2’について
ア 電気的な結合を行う際に「コネクタ」を用いることは、特に例を示すまでもなく一般的な手法であって、引用発明にこれを採用することは、結合対象の構成に合わせて「標準的な規格に基づくコネクタ」を選択することも含め、設計事項の範囲内のものといえる。
イ(ア) 仮にそうでないとしても、前記第2の3(2)ウ(イ)で周知技術2として認定したように、次の技術は周知技術である。
「電流の流れる導体からの電流信号を取込むための電流プローブ・システムのプローブヘッドであって、試験対象の結合部とかみ合う電気コネクタである導電ソケットを有するプローブヘッド」
(イ)したがって、試験対象の信号入出力部構造に合わせて、周知技術2のプローブヘッドを採用することは、標準的な規格に基づくコネクタを選択することを含め、当業者が通常行う設計変更の範囲内の事項であり、格別のものではない。
(3) 総合評価
相違点1及び相違点2’を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして、引用発明、及び周知技術1、2からは予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-010281