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特許拒絶査定不服審判

2022-009760

間接的表面清浄化装置および方法

審判番号
2022-009760
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-180356
請求日
2022年06月24日
審決日
2023年06月30日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ブルーカー ナノ インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】田中 伸一郎
  • 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【請求人代理人】須田 洋之
  • 【請求人代理人】倉澤 伊知郎
  • 【請求人代理人】山本 泰史
  • 【請求人代理人】鈴木 博子
  • 【請求人代理人】渡邊 誠
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 松川 直樹
  • 審判官 波多江 進
分類
P18 .121-Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F) / P18 .561-Z (G03F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-180356号「間接的表面清浄化装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年1月28日出願公開、特開2021-9418号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)3月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)3月12日 米国)を国際出願日とする特願2017-548098号の一部を令和2年10月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年11月27日 :手続補正書の提出 令和3年 8月23日付け:拒絶理由通知書 令和4年 1月28日 :意見書の提出 令和4年 2月17日付け:拒絶査定 令和4年 6月24日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和4年 9月30日 :手続補正書(審判請求書)の提出 令和5年 1月18日 :上申書の提出 第2 令和4年6月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年6月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、本件補正前の請求項8における 「少なくとも1つのフォトマスクの光学特性を向上させる方法を含むウェーハ製造方法であって、 電磁放射線を前記少なくとも1つのフォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記少なくとも1つのフォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、 前記少なくとも1つのフォトマスク上への前記電磁放射線に応答して、前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップと、 前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更するステップと、 前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第1の特徴部の位置の変更により、前記少なくとも1つのフォトマスクの前記光学特性が改善された後で、前記少なくとも1つのフォトマスクを使用してウェーハ印刷プロセスを実行するステップと、を含む、方法。」の記載を、 本件補正後の請求項8における 「少なくとも1つのフォトマスクの光学特性を向上させる方法を含むウェーハ製造方法であって、 9μmよりも長く、11.5μm以下の波長の電磁放射線を前記少なくとも1つのフォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記少なくとも1つのフォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、 前記少なくとも1つのフォトマスク上への前記電磁放射線に応答して、前記少なくとも1つのフォトマスクをアニールし、前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御するように前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップと、 前記少なくとも1つのフォトマスク中の制御された前記材質変化の量により、前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更するステップと、 前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第1の特徴部の位置の変更により、前記少なくとも1つのフォトマスクの前記光学特性が改善された後で、前記少なくとも1つのフォトマスクを使用してウェーハ印刷プロセスを実行するステップと、を含む、方法。」の記載に補正する事項を含むものである(下線は補正箇所を示すものであって、当審が付した。)。 2 本件補正の新規事項の追加の有無 上記1によれば、本件補正は、本件補正前の請求項8における、「前記フォトマスクの方へ方向付け」られるとともに「前記少なくとも1つのフォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し」ている「前記電磁放射線」の波長について、この波長が「9μmよりも長く、11.5μm以下の波長」であることを特定するという技術的事項(以下「本件補正事項」という。)を含むところ、以下のとおり、本件補正事項に係る補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 (1)本願当初明細書等に記載された技術的事項 ア 本願当初明細書等には、本件補正事項について以下の記載がある。なお、本願の明細書及び図面の記載は、【0115】を除き、本願当初明細書等の記載から変更されていない。 「【請求項1】 フォトマスクの性能特性を向上させる方法であって、前記フォトマスク上には少なくとも1つの特徴部が設けられ、前記少なくとも1つの特徴部は、関連した設計上の存在場所を有し、前記少なくとも1つの特徴部の存在場所と前記関連の設計上の存在場所との間の距離が前記少なくとも1つの特徴部の位置の誤差を生み出し、前記方法は、 電磁放射線を前記フォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、 前記フォトマスク上への前記電磁放射線の入射による前記フォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップを含み、 前記フォトマスク中の前記熱エネルギーの増加の前記発生の結果として前記位置誤差を減少させるステップを含む、方法。」 「【請求項4】 前記レーザ波長は、8マイクロメートルを超える、請求項1記載の方法。 【請求項5】 前記フォトマスクは、石英フォトマスクであり、前記電磁放射線波長は、約9マイクロメートルである、請求項1記載の方法。」 「【請求項11】 フォトマスクの光学特性を向上させる方法であって、 電磁放射線を前記フォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記フォトマスク上には部分吸収性薄膜が設けられ、前記電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、 前記フォトマスク上に入射した前記電磁放射線に応答して前記フォトマスク中に熱エネルギーの増加を発生させるステップを含み、 前記フォトマスク上の第2の特徴部に対する前記フォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更するステップを含む、方法。」 「【請求項16】 フォトマスクの光学特性を向上させる方法であって、 電磁放射線を前記フォトマスク上に設けられた部分吸収性薄膜の方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記薄膜の高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、 前記薄膜上に入射した前記電磁放射線に応答して前記薄膜中の熱エネルギー増加を発生させるステップを含み、 前記フォトマスク上の第2の特徴部に対する前記フォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更するステップを含む、方法。」 「【0011】 少なくとも上述の説明を考慮する際、フォトマスク製造プロセス前、フォトマスク製造プロセス中、フォトマスク製造プロセス後の処理によってフォトマスクのオーバーレイを向上させることができるプロセスを開発することが有利である。 【0012】 加うるに、製造中における使用によって生じる変化を回復させるためにフォトマスクのオーバーレイを向上させることができるプロセスを開発することが有利である。 【0013】 加うるに、利用性、性能、ライフタイム(寿命)または他の使用の観点を高めるフォトマスクのオーバーレイを変更する新規な方法および/または装置を開発することが有利である。 【0014】 加うるに、表面損傷の恐れを減少させた状態で利用性、性能、ライフタイムまたは他の使用の観点を高めるフォトマスクのオーバーレイを改良する新規なレーザを利用した方法および/または装置を開発することが有利である。 【0015】 加うるに、フォトマスクのオーバーレイを改良する方法および/または装置をフォトマスク作製、ウェーハ作製、および/または補修プロセスに組み込むことが有利である。 【0016】 加うるに、フォトマスク表面上の部分的吸収膜の局所的または全域的熱的改良によってフォトマスクのオーバーレイを改善する方法および/または装置を開発することが有利である。 【0017】 加うるに、熱を利用した表面汚染の除去を生じさせるとともに、表面損傷の恐れを減少させた状態で利用性、性能、ライフタイム、または他の使用の観点を高めもするオーバーレイを改良するためにフォトマスクの熱的改良を行う新規なレーザを利用した方法および/または装置を開発することが有利である。」 「【0030】 本発明の諸観点は、フォトマスク上の特徴部の位置を変更する装置および方法を提供する。図1Aは、部分吸収性材料または物質の外部から生じさせる熱励起の略図である。図1Aに示されているように、励起装置100は、エネルギービーム2を部分的または完全に透過させる基板4の表面上に設けられた吸収性薄膜3上に方向付けるよう構成されるとともに配置された外部エネルギー源1を有する。本発明の一観点による励起方法は、外部エネルギー源1によって発生したエネルギービーム2による基板上の吸収性薄膜3の直接的励起を含むのが良い。基板4は、フォトマスクであるのが良くまたはフォトマスク組立体の一部分を構成するのが良く、「基板」という用語と「フォトマスク」という用語は、別段の指定がなければ、本明細書全体を通じて区別なく使用できる。」 「【0033】 エネルギービーム2と吸収性薄膜3または基板4の相互作用により、吸収性薄膜3、基板4、またはこれらの組み合わせの熱励起を生じさせることができる。本発明の一観点によれば、エネルギービーム2と吸収性薄膜3の相互作用の結果として、吸収性薄膜3の材料の熱エネルギーの増加が生じ、それにより吸収性薄膜3の材料の温度の上昇を引き起こすことができる。・・・(後略)・・・」 「【0036】 本発明の一観点によれば、材料の1つまたは2つ以上の特性を変更して材料特性を変えるとともに/あるいは標的材料を利用したデバイスの性能またはライフタイム(寿命)に影響を及ぼす方法が提供される。非限定的な実施例では、基板上の特徴部の位置を変更する方法が提供される。フォトマスク4上の吸収性薄膜3の場合、この方法は、製造中の使用、清浄化(クリーニング)プロセス、またはフォトマスクに加えられた外力(例えば、フォトマスク4へのペリクルの取り付け)によってずらされた吸収性薄膜3中の特徴部の位置を動かすことによってフォトマスク4の使用可能なライフタイムを延ばすことができる。・・・(後略)・・・」 「【0038】 吸収性薄膜3および基板4は、多くの種々の材料から作製できまたは多くの種々の材料を含むことができる。・・・(後略)・・・」 「【0041】 本発明の諸観点によれば、本方法は、吸収性薄膜3の強い吸収度と実質的に一致したレーザ波長を選択するステップと、吸収性薄膜3の所望の改造を生じさせるようレーザエネルギーおよびパルス幅を設定するステップとを含む。幾つかの場合において、基板4の吸収度の増大により、低いレーザエネルギーをプロセスのために用いることができ、したがって、レーザビーム2が基板4の表面に入射しまたはこれから反射されているときにレーザビーム2と相互作用する場合のある隣接の材料に対する損傷の恐れを減少させることができる。 【0042】 本発明の他の諸観点によれば、基板4によって高度に吸収されるエネルギービーム2の波長を選択し、このことは、基板の大部分が除去された薄膜吸収体を有する場合に有益であると言える。さらにまた、基板4の強吸収帯の近くのエネルギービーム2の波長を選択することにより、薄膜吸収体3と基板4との熱的差または温度差を減少させることができ、それにより吸収性薄膜3と基板4との熱膨張率の差を減少させることができる。多数のレーザビーム波長および/またはレーザビームエネルギーが多数の薄膜吸収体または2種類以上の材料から成る基板が用いられる場合に使用されるのが良い。例えば多数のレーザ源もしくは単一のチューナブルレーザ源またはこれら両方を利用することによって多数の波長を生じさせることができる。各レーザ源の内部または外部に位置する制御部および/またはデバイスを用いて各レーザ源の出力エネルギーの制御を行うことによって多数のエネルギーを用いることができる。」 「【0050】 レーザビームパラメータの制御は、フォトマスクのオーバーレイ調節に関連した観点において特に望ましい場合がある。例えば、波長選択が典型的なフォトマスクの物理的構造の故に非常に望ましい。幾つかの場合、フォトマスク組立体102は、石英基板4を有し、この基板4の臨界表面上には薄膜吸収体3または部分吸収性膜3が施されている(図1Aおよび図1B参照)。吸収性薄膜3が金属膜の場合、代表的には、生じさせることができるレーザ波長の大部分について相当大きな吸収係数が存在するであろう。しかしながら、部分吸収性膜の場合、これらの膜が純粋な金属のフィルムとは異なり、それほど吸収しない波長領域が存在する場合がある。しかしながら、石英基板4の場合、基板が相当大きな吸収率を有するとともにレーザ源が一般的に利用できる制限された波長範囲が存在する場合がある。・・・(後略)・・・」 「【0064】 加うるに、生じる材料変化が比較的一定である場合、基板表面上の多数の離隔された領域(図9A)を処理することによって平均材質変化を制御することができる。この場合、処理領域13相互間の間隔および/または未処理領域に対する処理領域の密度を用いると、材質変化プロセスの相対量を制御することができる。 【0065】 代表的な方法の特定の実施例は、レーザ励起を用いたフォトマスク基板4上の吸収性薄膜3の1つまたは2つ以上の特性の変化をさせて吸収性薄膜3の特徴部をずらすことである。例えば、吸収性薄膜3がモリブデンシリコンオキシニトライド(MowSixOyNz)膜であるフォトマスク4では(なお、モリブデンシリコンオキシニトライドでは、MoSiと略称される場合がある)、オーバーレイ中のずれは、MoSi膜中の熱的材料特性の変化に起因している場合がある。材質変化としては、薄膜吸収体3材料の酸化、アニーリング、脱水、または高密度化が挙げられるが、これらには限定されない。フォトマスクの熱的損傷レベルを検討すると、最も低い熱的損傷点は、代表的には、ベース石英基板に関する融解/リフロー点、すなわち、約華氏2912度(1600℃)であろう。MoSi膜の正確な材料特性に応じて、材質変化(例えば、アニーリング)は、石英基板4のリフロー点よりもかなり低い温度で生じる場合がある。したがって、材質変化のための温度がフォトマスク基板材料の損傷レベルを下回った状態で起こる場合のある潜在的なプロセスが存在する。 【0066】 上述したように、基板材料の相対吸収率は、材料吸収特性の潜在的な差のために一般的に考慮される。MoSi膜によって高度に吸収される波長を選択することが望ましい場合がある。図2は、MoSi部分吸収性フォトマスク膜に関する吸収率曲線の略図である。この実施例では、主要な吸収は、0.3μm波長未満か9μm波長超かのいずれかで起こる。これより短い波長は、特に望ましい波長範囲にはなく、その理由は、これら波長が空気によって通常相当に吸収されるからであり、しかもこれら波長が高い光子エネルギーを有し、したがって多光子プロセスを生じさせる可能性が多分にあるからである。 【0067】 1μmから1000μmまでの赤外範囲内の波長を選択することは、DUVについて好ましい場合があり、というのは、長い波長が多光子プロセスおよびエンバイロンメンタル吸収の潜在的可能性を減少させるからである。MoSi膜の場合、9μm超、例えば11.5μm吸収ピーク近傍の波長を選択することが本発明の諸観点に従って特に望ましく、それにより、代表的には、高いエンバイロンメンタル吸収なしでMoSi膜中に高い吸収率が生じる。本発明の一観点によれば、「11.5μm吸収ピーク近傍」という表現は、10.5μmから12.5μmまでの範囲にある波長を意味し、ただし、赤外範囲内にある他の波長は、許容可能である場合がある。この範囲内の波長を選択することにより、材質変化を生じさせるのに必要なエネルギーを低くすることによって本発明の使用中、システムへの全熱エネルギーまたは熱入力を最小限に抑えることができる。 【0068】 また、上述したように、石英基板の吸収率の検討もまた行われるのが良い。フォトマスクに用いられる石英基板は、深赤外(DUV)波長範囲において高い透過率を有するよう特別に設計されるのが良い(図3参照)。これは、代表的には、極めて低いレベルの不純物を含む合成融解石英(シリカ)基板を用いることによって達成される。本発明の諸観点によれば、MoSiに相当大きな吸収率を有するとともに石英基板中に低い吸収率を有することが有利である場合がある。図3に示されているように、例示の石英基板に関する吸収率は、MoSiフィルム吸収率ピークの近傍に11.5μmの相当大きな吸収率を備えてはいない。したがって、11.5μm近傍の波長で処理すると、MoSi中の熱エネルギー蓄積が石英よりも優先的に生じ、それにより、薄膜吸収体3なしで基板の諸領域中の熱蓄積を最小限に抑えることによって本発明の使用中、システムへの全熱入力を最小限に抑えることができる。 【0069】 変形例として、フォトマスク4の石英基板によって高度に吸収される波長を選択してフォトマスク4の表面の全ての領域が所望の処理温度に達するようにすることが有利な場合がある。石英と薄膜吸収体層の熱的性質を比較検討すると、これら物質相互間の熱伝達が石英から吸収体層に優先的に生じることが予測できる。これが起こる場合がある理由は、石英が比較的低い熱拡散率を有するとともに薄膜吸収体膜が代表的には、金属成分を含み、したがって高い熱拡散率を有するからである。この実施形態は、薄膜吸収体とフォトマスク基板との温度差が重要である場合に有利なことがある。例えば、吸収性薄膜3と基板4との熱膨張率の差により、これら材料の一方または両方の損傷が生じる場合のあることが考えられる。また、様々な物質膨張率を有することにより薄膜吸収体3と基板4との結合が弱体化する場合があり、しかも分離または離層が生じる場合がある。薄膜吸収体と基板との熱平衡状態が有益である場合、長いパルス幅の使用もまた、プロセス温度に達しているときの材料相互間の熱伝達(例えば、熱伝導)に十分な時間を達成する上で有利であると言える。 【0070】 石英がプロセス波長で相当大きな吸収率を有するプロセス波長で動作することが有利である場合がある理由は、熱エネルギーフローまたは熱伝達が吸収性薄膜3に対して優先的であり、しかも暴露領域全体が所望のプロセス温度に達することができるからである。これら基板に関する主要な吸収率は、一般に、0.2μm未満の波長か8μmを超える波長かのいずれかで起こる。短い波長は、特に望ましくない場合があり、というのは、かかる波長は、空気によって相当大きく吸収される場合があるからであり、しかもこれら波長が高い光子エネルギーを有し、したがって多光子プロセスを生じさせる可能性が多分にあるからである。上述したように、約1μmから約1000μmまでの赤外線領域に含まれる波長は、DUVと比較して好ましい場合があり、その理由は、長い波長が多光子プロセスおよびエンバイロンメンタル吸収の潜在的可能性を減少させるからである。 【0071】 8μmを超える波長、例えば9μm石英吸収率近傍の波長を選択することは、本発明の諸観点によれば特に望ましいと言え、これにより、高いエンバイロンメンタル吸収なしで石英基板中に高い吸収率を生じさせることができる。本発明の一観点によれば、「9μm吸収率ピーク近傍」という表現は、8μmから10μmまでの範囲にある波長を意味し、ただし、石英領域に含まれる他の波長が許容可能である場合がある。この波長はまた、部分吸収性膜コーティング(すなわち、MoSi)を有するフォトマスクに関して利点を奏することができる。図2に示されているように、例示のMoSi材料は、11.5μmのところのピークと比較して9μm近傍に減少した状態の吸収率を有し、したがって、外部エネルギー源1からのエネルギービーム2によって直接生じる熱エネルギーの減少または温度増加を呈する。・・・(後略)・・・ 【0072】 フォトマスクの形式もまた、オーバーレイ是正のための波長を選択する際に考慮されるのが良い。例えば、ダークフィールドマスクを用いる場合、薄膜中に高度に吸収される波長を選択することが好ましい場合がある。オーバーレイ改良を薄膜の改造によって最適に得ることができ、というのは、表面の大部分が薄膜で覆われているからである。クリアフィールドマスクを用いる場合、基板によって高度に吸収される波長を選択することが好ましい場合がある。オーバーレイ改良は、基板表面の改造によって最適に得ることができ、その理由は、表面の大部分が薄膜で覆われていないからである。いずれの場合においても、薄膜を有するフォトマスクの領域および薄膜を備えていないフォトマスクの領域中に同様な熱的改造をもたらすことが好ましい場合があり、その結果、この改造は、マスク表面全体にわたって予想できる。」 「【0085】 MoSiを利用した部分吸収性フォトマスクの実施例に加えて、開示したプロセスの諸観点はまた、完全吸収性フォトマスク、薄膜吸収体のない(石英だけ)の光フォトマスク、および例えば極紫外(EUV)およびナノインプリントリソグラフィ(nano-imprint lithography:NIL)のために用いられる次世代フォトマスクについて利点を奏することができる。薄膜吸収体なしの光フォトマスクは、ベース石英基板中に直接エッチングされる特徴部を有する。ナノインプリントリソグラフィマスクは、基板中に作製される特徴部を更に有し、代表的には、かかるマスクは、薄膜を備えない。・・・(後略)・・・」 ・図2 [図:0001404197000001.jpg] ・図3 [図:0001404197000002.jpg] イ 本件補正事項は、その内容からみて、「フォトマスク」とその方へ方向付けられた「電磁放射線」の「波長」に関するところ、上記アによれば、本願当初明細書等には、そのような本件補正事項に関して次の技術的事項が記載されていると認められる。 (ア)「フォトマスク」、つまり、「基板」の方へ方向付けられた電磁放射線(以下「基板方向電磁放射線」という。)の波長は、「基板」の高吸収係数と実質的に一致した波長(以下「基板高吸収波長」という。)に該当する。 すなわち、フォトマスクの方へ方向付けられた電磁放射線の波長は、フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長であるところ(請求項1・請求項11・【0042】)、「フォトマスク」という用語は「基板」という用語と別段の指定がなければ区別なく使用できるとされている(【0030】)ことから、上記のとおり認定できる。 (イ)フォトマスクは、その上に部分吸収性薄膜を設けた部分吸収性フォトマスクのほかに、完全吸収性フォトマスクでもよく、さらに、薄膜吸収体なしの光フォトマスクやナノインプリントグラフィフォトマスクであってもよい。薄膜吸収体なしの光フォトマスクは、ベース石英基板中に直接エッチングされる特徴部を有している。ナノインプリントグラフィフォトマスクは、基板中に作製される特徴部を更に有しており、代表的には、薄膜を備えない。(【0085】) (ウ)「基板」は、多くの種々の材料から作製できまたは多くの種々の材料を含むことができる(【0038】)が、「基板」の材料として典型的に想定されているものは「石英」である(【0050】・【0065】・【0068】・【0070】・【0071】)。 (エ)「石英」の基板に関する主要な吸収率は、一般に、0.2μm未満の波長か8μmを超える波長かのいずれかで起こる(【0070】)。そして、8μmを超える波長、例えば、9μmを吸収率のピークとする、8μmから10μmまでの範囲である9μm吸収率ピーク近傍が、「石英」の基板に対して高い吸収率を生じさせることができる波長範囲である(【0071】・図3)。 (オ)基板方向電磁放射線の波長は、8マイクロメートルを超えるものであってよく(請求項4)、これにより、多光子プロセスおよびエンバイロンメンタル吸収の潜在的可能性を減少させることができる(【0070】)。また、当該基板方向電磁放射線の波長は、基板として石英を用いた場合、例えば9μm石英吸収率近傍の波長を選択すると、高いエンバイロンメンタル吸収なしで石英基板中に高い吸収率を生じさせることができる(【0071】)。 (カ)基板方向電磁放射線の波長が基板高吸収波長に該当することの技術的意味は、基板方向電磁放射線と基板の相互作用の結果として、基板の材料の熱エネルギーの増加が生じ、それにより、基板上の特徴部の位置を変更することにある(請求項1・請求項11・【0033】・【0036】・【0069】)。そして、そのことにより。フォトマスク製造プロセス前、フォトマスク製造プロセス中、フォトマスク製造プロセス後の処理によってフォトマスクのオーバーレイを向上させることができるプロセスを開発するといった課題(【0011】~【0017】)を解決することができる。 (キ)電磁放射線を「部分吸収性薄膜」の方へ方向付ける場合、当該電磁放射線(以下「薄膜方向電磁放射線」という。)は、「部分吸収性薄膜」の高吸収係数と実質的に一致した波長を有している(請求項16・【0030】・【0041】)。そして、「部分吸収性薄膜」としてMoSi膜を用いる場合、9μm超、例えば11.5μm吸収ピーク近傍の波長、つまり、10.5μmから12.5μmまでの範囲にある波長を選択することが、特に望ましい(【0066】・【0067】・図2)。その際、「基板」が「石英」基板であるならば、11.5μm近傍の波長で処理すると、「石英」の吸収率は11.5μmの相当大きな吸収率を備えていないことから、MoSi中の熱エネルギー蓄積が石英よりも優先的に生じ、それにより、部分吸収性薄膜なしで基板の諸領域中の熱蓄積を最小限に抑えることによって、システムへの全熱入力を最小限に抑えることができる(【0068】)。 (2)判断 ア 本件補正事項は、冒頭で説示したとおり、「前記フォトマスクの方へ方向付け」られるとともに「前記少なくとも1つのフォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し」ている「前記電磁放射線」の波長について、この波長が「9μmよりも長く、11.5μm以下の波長」であることを特定するものである。そして、上記に含まれる「フォトマスク」の文言は「基板」と同じ意味であると解される(本件補正後の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件補正後明細書等」という。)の【0030】。なお、当該段落は本願当初明細書等の記載から変更されていない。)。 そうすると、本件補正事項は、結局、「基板」の方へ方向付けられる電磁放射線(基板方向電磁放射線)の波長が、「基板」の高吸収係数と実質的に一致した波長(基板高吸収波長)に該当することのみならず、それが、「9μmよりも長く、11.5μm以下」(以下「本件波長数値範囲」という。)に属する波長であることを明らかにするものであるといえる。 イ そこで、基板方向電磁放射線の波長が、基板高吸収波長に該当し、かつ、本件波長数値範囲に属する波長であることが、本願当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないといえるか否かについて検討する。 本件補正事項に係る本件数値波長範囲は「9μmよりも長く、11.5μm以下」とされているところ、「よりも長く」という文言に照らせば、本件補正事項に係る技術的事項においては、基板方向電磁放射線の波長が、基板高吸収波長に該当する一方で、「9μm」をあえて除外したものであることが明らかである。 これに対し、本願当初明細書等には、上記(1)イの認定によれば、「9μm超」という波長に係る文言が、薄膜方向電磁放射線の波長として、つまり、電磁放射線を部分吸収性薄膜の方へ方向付ける場合における上記波長として記載されている(同(キ))ものの、基板方向電磁放射線の波長としては、せいぜい、多光子プロセスおよびエンバイロンメンタル吸収の潜在的可能性を減少させるという観点、及び、基板として石英を用いた場合に主要吸収率を示すという観点から、8μm超の波長、例えば9μmを選択することが記載されている(同(オ))にとどまる。のみならず、「基板」として典型的に想定されている「石英」については、基板方向電磁放射線につき、9μmを吸収率のピークとする8μmから10μmまでの範囲である9μm吸収率ピーク近傍の波長のものとすることが、課題解決との関係において望ましいとされている(同(エ)及び(カ))。 このように、本願当初明細書等においては、基板方向電磁放射線の波長について、基板高吸収波長に該当する一方で9μmをあえて除外することは明記されておらず、むしろ、基板として典型的に想定されている石英では当該9μmがいわゆるベストモードとされているのであるから、本願当初明細書等における特に望ましい基板方向電磁放射線の波長とされる「8μmを超える波長、例えば9μm石英吸収率近傍の波長」(【0071】)といった表現に接した当業者が、上記のとおりベストモードの「9μm」をあえて除外し、それよりも長い波長を選択することを読み取れる根拠となる技術常識があれば格別、そうであるとはいえない以上、本件補正事項に係る技術的事項が、本願当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないとは言い難い。 ウ これに対し、請求人は、本件補正事項に係る技術的事項が本願当初明細書等の【0064】~【0067】等に記載されている旨主張するが、上記(1)イ(キ)で認定したとおり、これらの段落には、電磁放射線を部分吸収性薄膜の方へ方向付ける場合の薄膜方向電磁放射線の波長として「9μm超」が記載されているにとどまり、基板方向電磁放射線の波長としての記載は存在しない。 エ したがって、本件補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。 3 独立特許要件充足性 上記2において説示したように、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に、本願当初明細書等における特に望ましい基板方向電磁放射線の波長とされる「8μmを超える波長、例えば9μm石英吸収率近傍の波長」(【0071】)といった表現に接した当業者が、ベストモードの9μmをあえて除外し、それよりも長い波長を選択することを読み取れる根拠となる技術常識が存在するならば、本件補正が上記規定を満たすと判断する余地がある。 しかしながら、そのような技術常識が存在する場合であっても、以下のとおり、本件補正は、独立特許要件を充足しない。 (1)本件補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項8に記載された発明を特定するために必要な事項である「電磁放射線」、「熱エネルギー増加を発生させるステップ」及び「前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更するステップ」について、上記1において付した下線のとおりの限定を付加する補正を含むものであって、本件補正前の請求項8に記載された発明と本件補正後の請求項8に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項8に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、項を改めて検討する。 (2)引用文献の記載 ア 引用文献1について (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-222355号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審が付した。以下同じ。) 「【請求項16】 リソグラフィ装置を使用するデバイス製造方法であって、 前記リソグラフィ装置において、マスクの特性を、前記マスク上のスポットに選択的に入射するように第1の放射ビームを誘導することによって、局所的に変更することと、 第2の放射ビームを前記マスク上に誘導することと、 前記マスクによってパターン付けされた前記第2の放射ビームを基板上に投影することと、 を含む、 方法。」 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 [0001] 本発明は、リソグラフィ装置、デバイス製造方法およびマスクを補正する方法に関する。」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 [0004] 従来のリソグラフィ装置では、マスクまたはレチクルは、マスクブランクと呼ばれるクォーツシートを含み、その上で、結像されるパターンがクロム層内に形成される。クォーツは、露光放射に対して実質的に透明であるのに対して、クロム層は実質的に不透明である。マスクパターンはさらに、それ自体は結像しないがレジスト内に形成されたパターンを様々な方法で改善する光近接効果補正(OPC)フィーチャ、すなわちセリフといった非結像フィーチャを含みうる。・・・(後略)・・・」 「【0009】 [0009] 例えばマスクの製造後にマスクへの補正を行うことができる改良された方法を提供することが望ましい。」 「【0014】 [0020] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。リソグラフィ装置は、 [0021]-放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射、またはEUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、 [0022]-パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続されたサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと、 [0023]-基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、 [0024]-パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を含む。」 「【0037】 [0047] 図3は、通常マスクブランクと呼ばれ、典型的にはクロム層CR内であるが、その上にまたはその中にパターンCR(通例は実質的に不透明)が形成される、実質的に透過的な基板BLを含む透過型マスクMA(パターニングデバイスの一例として)を示す。・・・(後略)・・・」 「【0038】 [0048] 上述したように、マスクを通る放射の透過率を調節するために、マスクブランクのバルク材料内に容積内シェーディング要素を書き込むために超高速フェムト秒レーザを使用することが提案されている。この手法は、フィールド内のCD均一性誤差を補正するためには使用することができるが、他の問題は補正しない。例えばパターン歪み、具体的にはフィーチャの位置、および/または、マスク歪みを補正することが望ましい。マスク歪みには、マスクのクランピング、ペリクルPLの取り付け、および/または投影システムによって引き起こされる歪みが含まれうる。」 「【0039】 [0049] 本発明の一実施形態では、マスク補正デバイス100が、マスクレベルにおいて、リソグラフィ装置内に設けられる。・・・(途中省略)・・・マスク補正デバイス100は、マスクパターンを補正するために、強力放射ビームをマスクブランクBLおよび/またはパターンCR(例えばパターンが部分的にまたは実質的に透過的である場所)に誘導し、それによりその特性を局所的に変更する。・・・(後略)・・・」 「【0040】 [0050] 本発明の一実施形態では、マスク補正デバイスは、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節するために、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更する。マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更できる。ヒステリシスに起因して、マスクブランクおよび/またはパターンは、それが最初に有していた形状と全く同じ形状には戻らない。・・・(後略)・・・」 「【0041】 [0051] 図4に、本発明の一実施形態による方法が示される。まず、マスクは、マスクテーブル上にロードされ、マスクテーブルにクランプされる(ステップS1)。クランプは、微細位置制御のためと、高加速時にマスクを抑えるように使用されうるが、場合によりマスクに歪みをもたらすことがある。クランプは、例えば機械式クランプ、真空式クランプ、または静電式クランプであってよい。次に、マスクパターンが測定されて歪みがあるか否かが判定される(ステップS2)。・・・(途中省略)・・・一実施形態では、マスクパターンの歪みは、オーバーレイマーカーを測定すること、および/または、アライメントマーカーの相対位置を測定することによって特徴付けられる。一実施形態では、補正されるべき歪みの判定は、2ステッププロセスである。1つのステップでは、マスク上の例えばアライメントマーカーまたはオーバーレイマーカーといったフィーチャの位置が、マスク上で直接測定される。別のステップでは、投影システムによって投影された例えばアライメントマーカーまたはオーバーレイマーカーといったフィーチャのイメージの位置が、基板レベルにおいて測定される。・・・(後略)・・・」 「【0042】 [0052] ステップS3では、マスク測定の結果を使用して、例えば倍率といったリソグラフィ装置の関連の制御を調節して、フィールド全体およびフィールド間補正を行う。平行して(または連続して)、マスク補正デバイスを使用して、任意の必要なまたは望ましいフィールド内補正を行う(ステップS4)。すべての補正が行われた後、生産基板(production substrate)が露光される(ステップS5)。リソグラフィ装置内でマスク補正を行うことによって、マスククランプによって引き起こされるマスク歪み、および/または、投影システムによって導入される歪みの影響が考慮される。・・・(後略)・・・」 「【0043】 [0053] 図5に、マスク補正デバイス100の詳細が説明される。その出力が第1のレンズ103によってコリメートされるビームエキスパンダ101が、マスク補正デバイス100とは別個でありうる、例えば高出力フェムト秒パルスレーザである放射源101によって照明される。・・・(後略)・・・」 「【0047】 [0057] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった、マイクロスケールまたはさらにはナノスケールの特徴を有するコンポーネントの製造における他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者には当然のことであるがそのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。・・・(後略)・・・」 「【0048】 [0058] 本明細書において使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長またはおよそこれらの値の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。」 ・図3及び4は次のものである。 [図:0001404197000003.jpg] [図:0001404197000004.jpg] (イ)引用文献1の請求項16に記載された方法は、マスクの製造後にマスクへの補正を行うことに関するものである(【0009】)ことから、当業者は、当該方法が「マスク」それ自体の材料に特徴がないものであることを理解できるといえる。そうすると、当業者は、当該方法に用いられる「マスク」として何を用いるかについて、従来のリソグラフィ装置において用いられるとされる「マスクブランクと呼ばれるクォーツシート」を含む「マスク」(【0004】)が典型的に想定されていることを理解できるといえる。 (ウ)図1の放射ビームBは、基板Wへの投影用のものであって、DUV放射であってよい(【0014】)ことから、引用文献1の請求項16に記載された方法における「第2の放射ビーム」は、DUV放射ビームであってよいと認められる。 (エ)上記(ア)~(ウ)から、引用文献1には、請求項16に記載されたデバイス製造方法であって、第1の放射ビームを、「前記マスクブランクおよび/またはパターン(パターンが部分的にまたは実質的に透過的である場所)に誘導」する(【0039】)もののうち、「前記マスクブランク」に誘導するものについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある(以下同じ)。 「リソグラフィ装置を使用するデバイス製造方法であって、 前記リソグラフィ装置において、マスクの特性を、前記マスク上のスポットに選択的に入射するように第1の放射ビームを誘導することによって、局所的に変更することと、 第2の放射ビームを前記マスク上に誘導することと、 前記マスクによってパターン付けされた前記第2の放射ビームを基板上に投影することと、を含み、(請求項16) 第2の放射ビームは、DUV放射ビームであり、(上記(ウ)) 前記マスクは、マスクブランクと呼ばれる実質的に透明な基板を含む透過型マスクであり、(【0037】) マスクブランクはクォーツシートからなるものであって、(上記(イ)) マスクブランクは、その上にパターンが形成されるものであり、(【0037】) パターン歪み、具体的にはフィーチャの位置、および/または、マスク歪みを補正するものであり、マスク歪みには、マスクのクランピング、ペリクルPLの取り付け、および/または投影システムによって引き起こされる歪みが含まれうるものであり、(【0038】) リソグラフィ装置内に設けられたマスク補正デバイスは、マスクパターンを補正するために、第1の放射ビーム(強力放射ビーム)を前記マスクブランクに誘導し、それによりその特性を局所的に変更するものであって、(【0039】) 前記マスク補正デバイスは、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節するために、マスクブランクおよび/またはパターンの形状を局所的に変更するものであって、マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更でき、ヒステリシスに起因して、マスクブランクおよび/またはパターンは、それが最初に有していた形状と全く同じ形状には戻らないものであり、(【0040】) 前記マスク補正デバイスを使用した補正を含むすべての補正が行われた後、生産基板が露光される、(【0042】) 方法。」 イ 引用文献2について (ア)同じく原査定に引用され、優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特表2010-536064号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「【請求項1】 フォトマスクの有効耐用年数を増加させる方法であって、 位相遅延損失を有する部分吸収薄膜が配置されたフォトマスク基板に、該フォトマスク基板の高吸光係数と実質的に一致する波長を有する電磁放射線を差し向ける段階と、 前記フォトマスク基板に温度上昇を発生させる段階と、 前記位相遅延損失の少なくとも一部分を回復させる段階と、 を含むことを特徴とする方法。」 「【請求項4】 レーザの前記波長は、8マイクロメートルよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記基板は、石英であり、前記電磁放射線波長は、約9マイクロメートルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。」 「【0035】 これも上述のように、石英基板の吸収度も考慮することができる。フォトマスクに使用される石英基板は、特に、深紫外(DUV)波長範囲において高い透過度を有するように通常設計される(図3)。これは、極めて低レベルの不純物を有する合成的に形成された基板を用いることによって通常達成される。本発明のある一定の実施形態により、MoSi内に有意な吸収度を有し、かつ石英基板内により低い吸収度を有することが有利とすることができる。図3に示すように、例示的な石英基板は、MoSi膜の吸収ピークで有意な吸収度を持たない。従って、11.5μmで処理すれば、MoSi内の熱蓄積が石英に優先して行われることが可能である。部分吸収体を持たない基板の区域における熱蓄積を最小にすることにより、これは、本発明の使用中のシステムへの熱投入量を最小にすることができると考えられる。 ・図3は次のものである。」 「【0038】 例えば、9μm付近の石英吸収である8μmよりも長い波長を選択することは、本発明のある一定の実施形態に従えば特に好ましい。これは、高い環境吸収なしに石英基板内に高い吸収性を典型的に引き起こす。この波長は、部分吸収膜コーティング(すなわち、MoSi)を有するフォトマスクに対して利点も提供する。図2に示すように、この実施例のMoSi材料は、9μm付近で減少した吸収度を有し、従って、エネルギ源によって直接生成される温度上昇は小さい。一般的に、一定のフルエンスで到達した膜材料温度は、石英の高い吸収度及び石英と比較した部分吸収体のより高い熱拡散率のために、石英に関するものと類似するはずである。部分吸収膜がこの波長範囲において比較的高い吸光係数を有したとしても、期待される熱拡散率の利点のために、これが真であることも予想される。この範囲の他の波長の選択は、エネルギ源の直接吸収によって生じた材料内の相対熱蓄積を変化させることにより、全体の熱的均一性を改善することが可能である。」 【図3】 [図:0001404197000005.jpg] (イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「フォトマスクに使用される石英基板は、特に、深紫外(DUV)波長範囲において高い透過度を有するように通常設計されるところ(【0035】)、9μm付近の石英吸収である8μmよりも長い波長を選択することは、高い環境吸収なしに石英基板内に高い吸収性を典型的に引き起こすこと(【0038】)。」 (3)対比・判断 ア 本件補正発明と引用発明との対比 (ア)引用発明の「デバイス製造方法」について 対比を行うに先立ち、引用発明の「デバイス製造方法」について整理すると、その認定によれば、当該「デバイス製造方法」は、マスクの特性を局所的に変更した後に、当該変更後のマスクによってパターン付けされた第2の放射ビームを基板上に投影するものである。しかるに、これを具体的にいえば、(i)第1の放射ビーム(強力放射ビーム)をマスクブランクに誘導すること、(ii)上記(i)により、マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更でき、ヒステリシスに起因して、マスクブランクおよび/またはパターンは、それが最初に有していた形状と全く同じ形状には戻らないこと、(iii)上記(ii)の現象が生じた結果、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節することができ、そのような調節をもってマスク補正デバイスを使用した補正とされていること、(iv)上記(iii)を含むすべての補正が行われた後、DUV放射ビームである第2の放射ビームによって、生産基板が露光されること、であるといえる。 そして、(v)マスクは、クォーツシートからなるマスクブランクとマスクパターン(パターン)からなっており、パターンがマスクブランク上に形成されている。 以上をも踏まえて、本件補正発明と引用発明との対比を行う。 (イ)本件補正発明の「少なくとも1つのフォトマスクの光学特性を向上させる方法を含むウェーハ製造方法であって、」との発明特定事項について a 本件補正発明の「フォトマスク」は、「基板」と区別なく使用できるものである(本件補正後の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願明細書等」という。)の【0030】)から、引用発明の「マスクブランク」がこれに相当する。 b 引用発明の「デバイス製造方法」は、「リソグラフィ装置を使用する」ものであって、「生産基板が露光される」ステップを含むところ、当該「生産基板」に係る「基板」は「ウェーハ」と同じ意味である(引用文献1の【0047】)から、当該「デバイス製造方法」は、本件補正発明の「ウェーハ製造方法」に相当する。 c 引用発明の「デバイス製造方法」は、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節することができ、そのような調節をもってマスク補正デバイスを使用した補正とされているものである(上記(ア)(iii))から、本件補正発明でいう「少なくとも1つのフォトマスクの光学特性を向上させる」ものといえる。 d よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。 (ウ)本件補正発明の「9μmよりも長く、11.5μm以下の波長の電磁放射線を前記少なくとも1つのフォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記少なくとも1つのフォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し」ているとの発明特定事項について a 引用発明の「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)」は、「放射」及び「ビーム」という用語があらゆる種類の電磁放射を包含している(引用文献1の【0048】)ことから、本件補正発明の「電磁放射線」に相当する。 b 引用発明は、第1の放射ビーム(強力放射ビーム)をマスクブランクに誘導する(上記(ア)(i))ものであるから、本件補正発明でいう「電磁放射線を前記少なくとも1つのフォトマスクの方へ方向付けるステップ」を含むといえる。 c よって、本件補正発明と引用発明とは、「電磁放射線を前記少なくとも1つのフォトマスクの方へ方向付けるステップを含」んでいる点で一致するが、電磁放射線の波長が、本件補正発明では、「9μmよりも長く、11.5μm以下」(本件波長数値範囲)の波長、かつ、「前記少なくとも1つのフォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長」(基板高吸収波長)であるのに対し、引用発明では、それが不明である。 (エ)本件補正発明の「前記少なくとも1つのフォトマスク上への前記電磁放射線に応答して、前記少なくとも1つのフォトマスクをアニールし、前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御するように前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップ」との発明特定事項について a 引用発明は、第1の放射ビーム(強力放射ビーム)をマスクブランクに誘導したことにより、マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を引き起こすことによって変更できるものである(上記(ア)(i)及び(ii))ところ、「熱膨張」を引き起こすためには、当然に、熱エネルギーを要することに照らせば、引用発明は、本件補正発明でいう「前記少なくとも1つのフォトマスク上への前記電磁放射線に応答して」「前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップ」を備えているといえる。そして、引用発明は、上記のとおり、マスクブランクおよび/またはパターンの形状が熱膨張によって変更できるものであることから、引用発明においては、第1の放射ビーム(強力放射ビーム)が誘導されることになるマスクブランク(本件補正発明の「フォトマスク」に相当。)が、「アニール」されるといえるかはさておき、加熱されるといえる。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記少なくとも1つのフォトマスク上への前記電磁放射線に応答して、前記少なくとも1つのフォトマスクを」加熱し、「前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップ」を備える点で一致する。 b 引用発明は、第1の放射ビーム(強力放射ビーム)をマスクブランクに誘導することにより、マスクブランクおよび/またはパターンの形状が熱膨張を引き起こすことによって変更されるとともにヒステリシスに起因して最初に有していた形状と全く同じ形状には戻らない(上記(ア)(i)及び(ii))ことから、引用発明においては、マスクブランクおよび/またはパターンの形状につき、「最初に有していた形状」と、熱膨張を経て元に戻らない形状との間に差が存在していることになるところ、そのような差が存在する以上、マスクブランクの密度等が少なくとも変化しているといえる。しかるに、このようなマスクブランクおよび/またはパターンにおける、「最初に有していた形状」から、熱膨張を経た後ヒステリシスに起因して生じるところの元に戻らない形状への変化は、上記のとおり、マスクブランクの密度等の変化を伴うことから、当該変化は、本件補正発明の「前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化」に相当し、上記の「最初に有していた形状」と熱膨張を経てそれが元に戻らない形状との間の差が、本件補正発明の「前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の差」に相当する。 そして、引用発明では、上記の差を生じさせることをもって、マスク補正デバイスを使用した補正とされている(上記(ア)(iii))のであるから、上記aのとおり引用発明が備えているといえる「前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップ」は、本件補正発明でいう「前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御するように」なされているといえる。 c よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記少なくとも1つのフォトマスク上への前記電磁放射線に応答して、前記少なくとも1つのフォトマスクを」加熱「し、前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御するように前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップ」を備える点で一致するが、加熱に係る処理が、本件補正発明は「アニール」であるのに対し、引用発明はそういえるのか不明である。 (オ)本件補正発明の「前記少なくとも1つのフォトマスク中の制御された前記材質変化の量により、前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更するステップ」との発明特定事項について a 引用発明の「パターンの要素または要素の一部」は、本件補正発明の「特徴部」に相当する。そして、引用発明のパターンはマスクブランク上に形成されている(上記(ア)(v))から、引用発明では、本件補正発明でいう「特徴部」が「少なくとも1つのフォトマスク上」にあることになる。 b 引用発明は、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節することができる(上記(ア)(iii))ことから、本件補正発明でいう「前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更する」ものといえる。 そして、上記(エ)のとおり、引用発明は、本件補正発明でいう「前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップ」を「前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御するように」行っているのであるから、引用発明では、本件補正発明でいう上記「前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更する」ことを、「前記少なくとも1つのフォトマスク中の制御された前記材質変化の量により」行っているといえる。 c よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。 (カ)本件補正発明の「前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第1の特徴部の位置の変更により、前記少なくとも1つのフォトマスクの前記光学特性が改善された後で、前記少なくとも1つのフォトマスクを使用してウェーハ印刷プロセスを実行するステップ」との特定事項について a 引用発明は、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節することができ、そのような調節をもってマスク補正デバイスを使用した補正とされている(上記(ア)(iii))ことから、上記(オ)bにも照らせば、引用発明は、本件補正発明でいう「前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第1の特徴部の位置の変更により、前記少なくとも1つのフォトマスクの前記光学特性が改善され」るものといえる。 b 引用発明は、すべての補正が行われた後、生産基板が露光される(上記(ア)(iv))ことから、本件補正発明でいう上記の「改善」の後で、「前記少なくとも1つのフォトマスクを使用してウェーハ印刷プロセスを実行する」ものといえる。 c よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。 イ 一致点及び相違点の認定 上記アによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「少なくとも1つのフォトマスクの光学特性を向上させる方法を含むウェーハ製造方法であって、 電磁放射線を前記少なくとも1つのフォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、 前記少なくとも1つのフォトマスク上への前記電磁放射線に応答して、前記少なくとも1つのフォトマスクを加熱し、前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御するように前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップと、 前記少なくとも1つのフォトマスク中の制御された前記材質変化の量により、前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更するステップと、 前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の前記第1の特徴部の位置の変更により、前記少なくとも1つのフォトマスクの前記光学特性が改善された後で、前記少なくとも1つのフォトマスクを使用してウェーハ印刷プロセスを実行するステップと、を含む、方法。」 【相違点1】 「電磁放射線」が、本件補正発明では、「9μmよりも長く、11.5μm以下」(本件波長数値範囲)の波長であって、「少なくとも1つのフォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長」(基板高吸収波長)であるのに対し、引用発明では、第1の放射ビーム(強力放射ビーム)につき、それをマスクブランクに誘導すると、マスクブランクおよび/またはパターンの形状が、熱膨張を引き起こすことによって変更でき、ヒステリシスに起因して、マスクブランクおよび/またはパターンは、それが最初に有していた形状と全く同じ形状には戻らないものであるが、その波長は不明である点。 【相違点2】 「前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御するように前記少なくとも1つのフォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップ」における「前記少なくとも1つのフォトマスク」への加熱に係る処理について、本件補正発明では、「アニール」であるのに対し、引用発明では、第1の放射ビーム(強力放射ビーム)をマスクブランクに誘導すると、マスクブランクおよび/またはパターンの形状が、熱膨張を引き起こすことによって変更でき、ヒステリシスに起因して、マスクブランクおよび/またはパターンは、それが最初に有していた形状と全く同じ形状には戻らないものであるものの、その際になされた加熱に係る処理が、アニールといえるか不明である点。 ウ 判断 (ア)相違点1について a 引用発明は、上記ア(ア)のとおり、マスクの特性を局所的に変更した後に、当該変更後のマスクによってパターン付けされた第2の放射ビームを基板上に投影するものであるところ、マスクの特性を局所的に変更するためのビームが「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)」であり、当該変更後のマスクによってパターン付けされて基板上に投影されるビームが「第2の放射ビーム」である。そして、「第2の放射ビーム」は、DUV放射ビームである一方、「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)」の波長は特定されていない。 そのため、当業者であれば、引用発明を実施するに当たり、「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)」の波長を設定しようとするところ、当該「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)」は、マスクブランクに誘導して、それによりその特性を局所的に変更するものであって、マスクブランクおよび/またはパターンの形状は、熱膨張を経て変更できるものであることから、その波長としては、マスクブランクを構成するクォーツシートによく吸収される波長を選択することが通常である。 b 他方、引用文献2には、上記(2)イ(イ)で認定したとおり、フォトマスクに使用される石英基板は、特に、深紫外(DUV)波長範囲において高い透過度を有するように通常設計されるところ、「9μm付近の石英吸収である8μmよりも長い波長」を選択することは、高い環境吸収なしに石英基板内に高い吸収性を典型的に引き起こすという技術的事項が記載されている。 c このように、引用発明1に接した当業者であれば、「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)」の波長として、マスクブランクを構成するクォーツシートによく吸収される波長を選択することが通常であるところ、その具体的な波長として、引用文献2に記載されている「9μm付近の石英吸収である8μmよりも長い波長」を選択することは、適宜なし得たことである。 d 次に、上記cの「9μm付近の石英吸収である8μmよりも長い波長」としてより具体的にどの波長にするかについてみると、まず、相違点1に係る本件補正発明の構成の「少なくとも1つのフォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長」(基板高吸収波長)にすることは、上記の説示に照らし、当然のことである。 そして、本項(「3 独立特許要件充足性」の項)の冒頭で説示したとおり、独立特許要件充足性の判断においては、本願当初明細書等における特に望ましい基板方向電磁放射線の波長とされる「8μmを超える波長、例えば9μm石英吸収率近傍の波長」(【0071】)といった表現に接した当業者が、ベストモードの9μmをあえて除外し、それよりも長い波長を選択することを読み取れる根拠となる技術常識が存在すると仮定されている。また、その仮定をさておくとしても、「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)」として、石英吸収の最大波長である「9μm」に完全に合致したものを用意するのは困難であるという現実も存在するといえる。このように、存在が仮定された技術常識のほか、現実的な問題にも照らせば、引用発明1の「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)」の波長として、相違点1に係る本件補正発明の「9μmよりも長く、11.5μm以下」(本件波長数値範囲)の波長を具体的に選択することも、当業者が適宜なし得たことといえる。 e 以上のとおり、引用発明1から出発した当業者は、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、相違点1に係る本件補正発明の構成に容易に至るといえる。 (イ)相違点2について a 引用発明は、第1の放射ビーム(強力放射ビーム)をマスクブランクに誘導すると、マスクブランクおよび/またはパターンの形状が、熱膨張を引き起こすことによって変更でき、ヒステリシスに起因して、マスクブランクおよび/またはパターンは、それが最初に有していた形状と全く同じ形状には戻らないものであることから、上記ア(エ)aで説示したとおり、本件補正発明でいう「アニール」されるといえるかはさておき、加熱されるといえる。 b そこで、引用発明の「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)をマスクブランクに誘導する」ことをもって、フォトマスクが本件補正発明でいう「アニール」されるに至るかについてみるべく、本件補正発明の「アニール」の意味について検討すると、本件補正発明には、「アニール」により「フォトマスク中の材質変化」が生じることが特定されている。そして、本件補正後明細書等には、熱を利用した材質の変化について、「組成の変化(例えば、脱水、酸化)、表面変化(例えば、モルフォロジー、粗さ)、または材料特性の変化(例えば、アニーリング、高密度化)が挙げられるがこれらには限定されない。代替的にまたは追加的に、熱を利用した材質変化は、フォトマスクの光学的性能特性の変化であっても良い。」(【0036】)と記載されている。本件補正発明は、このような「アニール」をフォトマスクに対して行うことによって、「フォトマスク中の材質変化の量を制御する」ものであり、さらに、このような材質変化の量によって、「前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更」している。 他方、上記イの一致点の認定にも照らせば、引用発明においては、「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)を前記マスクブランクに誘導する」ことによって、前記少なくとも1つのフォトマスクを加熱し、前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御しており、このような材質変化の量によって、前記少なくとも1つのフォトマスク上の第2の特徴部に対する前記少なくとも1つのフォトマスク上の第1の特徴部の位置を変更しているといえる。 このように、本件補正発明のフォトマスクに対する「アニール」と引用発明の「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)を前記マスクブランクに誘導する」こととは、これにより生じる現象に特段の差異を見いだせないことから、引用発明の「第1の放射ビーム(強力放射ビーム)を前記マスクブランクに誘導する」ことは、本件補正発明でいう「アニール」を生じさせるものといってよい。よって、相違点2は、実質的ではない。 c また、仮に、そのようにいうことができないとしても、本件補正発明の「アニール」は、所定の波長の電磁放射線を少なくとも1つのフォトマスクの方へ方向付けることによって行っているものであるところ、当該電磁放射線の照射のさせ方(強度や照射時間等)は、当業者が引用発明を実施するに当たり当然に設定するものである。そして、このような設定行為を通じて、結果として、本件補正発明でいうフォトマスクに対する「アニール」に係る構成に至ることは、当業者が適宜なし得たことといえる。 d 以上のとおり、相違点2は実質的ではないし、仮にそうでないとしても、引用発明から出発した当業者は、相違点2に係る本件補正発明の構成に容易に至るといえる。 エ 本件補正発明の奏する効果について 上記各相違点を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ 請求人の主張について 請求人は、以下のとおり主張するが、いずれも失当である。 (ア)請求人は、本件補正発明が引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない旨主張し、その根拠として、フォトマスク(基板)中に材質変化を起こさせるための有利な波長について、本件補正発明には、本件波長数値範囲であることが特定されている一方、引用文献1及び2には、いずれも記載も示唆もないことを挙げる。 しかしながら、上記ウ(ア)で説示したとおりである。 (イ)さらに、請求人は、引用文献1及び2には、電磁放射線の照射により、フォトマスク上の実際の特徴部の位置を設計上の特徴部の位置に近づけることは何ら記載されていない旨主張するが、上記ア(ア)(iii)のとおり、引用発明は、パターンの要素または要素の一部の位置を微細に調節することができ、そのような調節をもってマスク補正デバイスを使用した補正とされているのであるから、引用発明においても、フォトマスク上の実際の特徴部の位置を設計上の特徴部の位置に近づけるものであることは、明らかである。 カ 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 4 本件補正についてのむすび 上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、本件補正が特許法第17条の2第3項の規定を満たしているとしても、上記3のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しているから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年11月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1に、本件補正前の請求項8として記載されたとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は、優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2並びにその記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]3で検討した本件補正発明から、「9μmよりも長く、11.5μm以下の波長の」、「前記フォトマスクをアニールし、前記少なくとも1つのフォトマスク中の材質変化の量を制御するように」、及び、「前記少なくとも1つのフォトマスク中の制御された前記材質変化の量により」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3(3)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-009760

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