特許拒絶査定不服審判
2022-008441
非常に低い抵抗材料で形成された、電気的デバイス、機械的デバイス、コンピュータデバイス、および/または、他のデバイス
- 審判番号
- 2022-008441
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-038972
- 請求日
- 2022年06月02日
- 審決日
- 2023年04月24日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アンバチュア インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】浜田 治雄
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 小田 浩
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P18 .536-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 38972「非常に低い抵抗材料で形成された、電気的デバイス、機械的デバイス、コンピュータデバイス、および/または、他のデバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月29日出願公開、特開2019-145800〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)3月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月30日 米国)を国際出願日とする出願である特願2014-502854号の一部を平成29年5月24日に新たな出願とした特願2017-103000号の一部を平成31年3月4日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 6月 8日付け 拒絶理由通知書
令和2年12月10日 意見書、手続補正書の提出
令和3年 4月 7日付け 拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和3年10月 8日 意見書、手続補正書の提出
令和4年 1月27日付け 令和3年10月8日にされた手続補正につ
いての補正の却下の決定、拒絶査定(以下
、「原査定」という。)
令和4年 6月 2日 審判請求書、手続補正書(以下、この手続
補正書による手続補正を「本件補正」とい
う。)の提出
第2 本願発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~20は、以下のとおりである。(以下、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明を、それぞれ「本願発明1」~「本願発明20」という。また、本願発明1~20を、まとめて「本願発明」という。)
「【請求項1】
改変されたELR材料を含む第1のELR導体と、
改変されたELR材料を含む第2のELR導体と、
第1のELR導体と第2のELR導体との間に配置されたバリア材料と、
ここで、修飾ELR材料は、面および結晶構造を有するELR材料の第1の層を含み、
ここで、面は、結晶構造のb面に平行であり、
修飾材料の第2の層は、第1の層の面に結合されており、
改質されたELR材料は、ELR材料単独のものよりも改善された動作特性を有する、ELR材料であるジョセフソン接合。
【請求項2】
前記バリア材料が絶縁材料を含む、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項3】
前記バリア材料が導電性材料を含む、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項4】
前記バリア材料が導電性金属を含む、請求項3に記載のジョセフソン接合。
【請求項5】
前記バリア材料が半導体材料を含む、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項6】
前記バリア材料がELR材料を含む、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項7】
前記第1のELR導体および前記第2のELR導体はそれぞれ、修正されたELR材料から形成されたELRワイヤを含む、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項8】
前記第1のELR導体および前記第2のELR導体はそれぞれ、改変されたELR材料から形成されたELRナノワイヤを含む、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項9】
前記第1のELR導体および前記第2のELR導体はそれぞれ、修正されたELR材料から形成されたELRトレースを含む、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項10】
前記修飾されたELR材料は、150を超える温度でELR状態で動作する、請求項1に記載のジョセフソン接合。
【請求項11】
ジョセフソン接合であって、
150Kを超える臨界温度を有する改変ELR材料を含む第1のELR導体と、
改変されたELR材料を含む第2のELR導体と、
第1のELR導体と第2のELR導体との間に配置されたバリア材料とを備え、
ここで、修飾ELR材料は、面および結晶構造を有するELR材料の第1の層を含み、ここで、面は、結晶構造のb面に平行であり、修飾材料の第2の層は、第1の層の面に結合されているELR材料のジェセフソン接合。
【請求項12】
前記バリア材料が絶縁材料を含む、請求項11に記載のジョセフソン接合。
【請求項13】
バリア材料が導電性材料を含む、請求項11に記載のジョセフソン接合。
【請求項14】
バリア材料が導電性金属を含む、請求項13に記載のジョセフソン接合。
【請求項15】
バリア材料が半導体材料を含む、請求項11に記載のジョセフソン接合。
【請求項16】
バリア材料がELR材料を含む、請求項11に記載のジョセフソン接合。
【請求項17】
前記第1のELR導体および前記第2のELR導体はそれぞれ、修正されたELR材料から形成されたELRワイヤを含む、請求項11に記載のジョセフソン接合。
【請求項18】
前記第1のELR導体および前記第2のELR導体はそれぞれ、修飾されたELR材料から形成されたELRナノワイヤを含む、請求項11に記載のジョセフソン接合。
【請求項19】
前記第1のELR導体および前記第2のELR導体はそれぞれ、修正されたELR材料から形成されたELRトレースを含む、請求項11に記載のジョセフソン接合。
【請求項20】
複数のジョセフソン接合を含む回路であって、
この複数のジョセフ接合のそれぞれは、
臨界温度が150Kを超える修飾ELR材料を含む第1のELR導体と、
修飾ELR材料を含む第2のELR導体と、
バリアを含み、
前記第1のELR導体と前記第2のELR導体との間に配置された材料であって、
改質ELR材料は、面および結晶構造を有するELR材料の第1の層を含み、
この面は結晶構造のb面に平行であり、ELR材料の第1層の面に結合された改質材料の第2層を備えるジョセフソン接合を含む回路。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
(実施可能要件)本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明1をジョセフソン接合として使用できることが説明されていると認めることはできない。
加えて、本願発明2~9は、本願の請求項1の記載を引用するジョセフソン接合の発明であり、本願発明10は、本願の請求項1に記載されたジョセフソン接合を利用した回路の発明であるから、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明2~10を使用できることが説明されていると認めることはできない。
したがって、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件については、明細書の発明の詳細な説明が、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、特許請求の範囲に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているかを判断すべきである。
以下、判断する。
1 本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載
本願明細書の発明の詳細な説明及び図面(以下、「本願明細書等」という。)には、次の記載がある。(下線は当審により付加した。以下、同じ。)
(1)本願発明の課題や解決手段に関連した記載として、次の記載がある。
「【0003】
従来の超伝導エレメントを使用して動作する、電気的デバイス、機械的デバイス、コンピュータデバイス、および/または他のデバイスは、超伝導状態における超伝導エレメントを維持するために高価な冷却システムに依存するなどの様々な欠点に苦しんでいる。例えば、従来の超電導コンデンサは、電流を最小抵抗またはゼロ抵抗で輸送する能力を有する、さまざまな成分の高温超伝導(HTS)材料を利用している。しかしながら、HTS材料は、非常に低い動作温度(例えば、120K未満の温度)を必要とし、通常は、液体窒素ベースの冷却システムなどの高価なシステムを使用して、そのような動作温度までコンポーネントを冷却することにより実現される。このような冷却システムは、実施コストを増大させ、広範な商用使用および民生用使用、および/または、これらの材料を用いるコンデンサへの適用を妨げる。現在のHTSベースのデバイスでは、これらの問題および他の問題が存在する。」
「【0005】
変更された、開口された、積層された、および/または、それ以外の、新しい非常に低い抵抗(ELR)材料で形成された1つまたは複数のコンポーネントを含む、電気的デバイス、機械的デバイス、コンピュータデバイス、および/または他のデバイス、コンポーネント、システム、および/または、装置が記載される。ELR材料は、通常は現在の高温超伝導体(HTS)に関連付けられる温度よりも高い温度での電流に対する非常に低い抵抗を提供し、とりわけ、高温度におけるデバイスの動作特性を向上させる。」
(2)改変されたELR材料及びELR状態の定義に関連した記載として、次の記載がある。
「【0011】
本説明のために、非常に低い抵抗("ELR")材料は、HTS材料、完全に導電する材料(例えば、完全導体)、および非常に低い抵抗を有する他の導電性材料を含む超伝導材料を含み得るが、これだけに限定されるものではない。本明細書に記載されるように、これらのELR材料は、変更されたELR材料、開口されたELR材料および/または新しいELR材料、ELR膜及び/又は他のELR成分材料(例えば、ナノワイヤ、ワイヤ、テープなど)を形成するために使用することができるものとして記載される。これらのELR材料は、電子に対して非常に低い抵抗を示す、及び/又は、150K以上の温度などの高温で、環境圧力または標準圧力で、極めて高い電子のコンダクタンスを示す。本章では、とりわけ、本ELR材料の構造と動作特性を説明する。」
「【0013】
本説明のために、ELR材料の動作特性、および/または、本発明の様々な実施例は、ELR状態におけるELR材料の抵抗(例えば、超伝導体、超電導状態に関する)、ELR状態に対するELR材料の転移温度、ELR状態におけるELR材料の電荷を伝播する容量、ELRの材料の1つまたはそれ以上の磁気特性、ELR材料の一つまたはそれ以上の機械的性質、および/または、ELR材の材料、他の動作特性を含むことができるが、これらに限定されるものではない。さらに、本説明のために、改良された動作特性は、高温でのELR状態(例えば、超電導状態を含む)における動作、その同じ温度(またはより高い温度)で増加した電荷伝播容量での動作を含むことができる。
【0014】
この説明のために、"非常に低い抵抗"は、超伝導材料タイプIIの超伝導状態での磁束流抵抗の大きさと同じような抵抗であり、一般に、0Ω-cmから293Kでの実質的に純粋な銅の抵抗率の50分の1(1/50)の範囲の抵抗率で表現することができる。例えば、本明細書で使用されるような、実質的に純粋な銅は99.999%の銅である。本発明の様々な実施例では、ELR材料の部分は0Ω・cmから3.36x10-8Ω-cmの範囲の抵抗率を有する。
【0015】
一般的に理解されるように、転移温度は、ELR材料が非常に低い抵抗で"動作する"又は、非常に低い抵抗を示す(又は示し始める)温度、および/または、ELR材料と関連する他の現象を示す温度である。非常に低い温度で動作するとき、このELR材料は、ELR状態にあると呼ばれる。転移温度より高い温度で、ELR材料は、非常に低い抵抗を示さなくなり、ELR材料は、非ELR状態又は通常の状態にあると呼ばれる。換言すれば、転移温度は、ELR材料が非ELR状態とELR状態との間で変化する温度である。理解されるように、いくつかのELR材料に対して転移温度は、非ELR状態とELR状態との間でELR材料が変化する温度範囲とすることができる。また、理解されるように、ELR材料は、転移温度のヒステリシスを持ち、ELR材料が温かいときの転移温度とELR材料が冷たいときの転移温度とを有する。」
(3)ELR材料の結晶構造と動作特定に関連する記載として、次の記載がある。
「【0021】
図2を参照すると、公知のELR材料の従来の理解では、抵抗現象を担うものとして複数の開口原子250によって、結晶構造100内に形成された開口210を認めることができなかった。(例えば、開口が単一の単位セル400の描写において容易に明らかではない図4が参照される。)ある意味では、開口原子250は、開口210の周りの離散的な原子的"境界"または"境界"を形成すると考えることができる。本発明のいくつかの実施例では、本発明のいくつかの実施例及び図2に示すように、開口210は、結晶構造230の第1の部分220と第2の部分100の間に現れるが、本発明のいくつかの実施例では、開口210は種々の他の結晶構造の他の部分に現れるかもしれない。開口210は図2において、単純な"球体"としての原子の記載に基づいて示されており、そのような開口は、開口250を含む結晶構造100中の種々の原子に関連する電子密度(図示せず)とその形状に関連することが理解される。
【0022】
本発明の種々の態様によれば、開口210は、結晶構造100を通る電荷の伝播を促進し、開口210が結晶構造100を通る電荷の伝播を促進するとき、ELR材料はELR状態で動作する。この説明のために、(それぞれの形態に沿って)"伝播する"および/または"伝播を促進する"とは、一般に、"伝導する"、および/または"伝導を促進する"、およびその各形態、および、"輸送"、および/または"輸送を促進する、"、およびその各形態、および、"ガイドする"、および/または"ガイドを促進する"、およびその各形態、および/または、"運ぶ"、"容易に運ぶ""、およびその各形態を指す。この説明のために、電荷は、正電荷又は負電荷、および/または、そのような電荷のペアまたは他の組み合わせを含むことができ、さらに、そのような電荷は、1つまたは複数の粒子の形態で、または、1つまたは複数の波または波束の形態で結晶構造100を通って伝播する。
【0023】
本発明のいくつかの実施例では、結晶構造100を通る電荷の伝播は、導波路に類似する方法であってもよい。本発明のいくつかの実施例では、開口210は、結晶構造100を通過する電荷を伝播する導波路であってもよい。導波路とその操作は、一般的によく理解されている。特に、導波管の内部を取り囲む壁は、開口210の周りの開口原子250の境界または外辺部と対応することができる。導波路とその操作に関連する一態様は、その断面である。原子レベルで、開口210および/またはその断面は、ELR材料の温度変化で実質的に変更することができる。例えば、本発明のいくつかの実施例では、ELR材料の温度変化は、開口210の変化を引き起こすことができる。その変化は、次に、ELR材料をELR状態から非ELR状態へ遷移させるかもしれない。例えば、ELR材料の温度が上昇すると、開口210は、結晶構造100を通過する電荷の伝播を制限し又は妨げ、対応するELR材料は、ELR状態から非ELR状態へ遷移するかもしれない。同様に、例えば、ELR材料の温度が低下すると、開口210は、結晶構造100を通過する電荷の伝播を容易にし(制限又は妨害するのとは対照的に)、対応するELR材料は、非ELR状態からELR状態へ遷移するかもしれない。」
「【0037】
本発明の様々な実施例によれば、種々の公知のELR材料の結晶構造は、公知のELR材料および/または変更されていないELR材料に対して、改善された動作特性で動作するように変更することができる。理解されるように、本発明のいくつかの実施例では、改善された動作特性は、例えば、結晶構造100の上に、材料の原子が第1の部分220と第2の部分230の間に一つまたは複数の結合を形成することによって、開口210を橋渡しするように材料を積層することによって実現することができる。結晶構造100の上に材料を積層する変更例は、種々の実験による試験結果と関連して以下でさらに詳細に記載される。
【0038】
図10は、第2視点から見たときの本発明の様々な実施例の変更されたELR材料1060の変更された結晶構造1010を示す図である。図11は、第1の視点から見たときの本発明の様々な実施例の変更されたELR材料1060の変更された結晶構造1010示す。ELR材料360(例えば、図3などに示される)は、変更されたELR材料1060を形成するために変更される。変更する材料1020は、図11に示すように、変更されたELR材料1060の変更された結晶構造1010を形成するように、ELR材料360の結晶構造300の原子(図3)と結合する。図示されるように、変更する材料1020は、第1の部分320と第2の部分330との間の隙間を橋渡し、それによって、とりわけ、特に、開口310の領域における変更された結晶構造1010の振動特性を変化させる。そうすることで、変更する材料1020は、高い温度で開口310を維持する。したがって、本発明のいくつかの実施例では、変更する材料1020は、結晶構造300中の適切な原子と適合して結合するように選択される。
【0039】
本発明のいくつかの実施例及び図10に示されているように、変更する材料1020は、b-平面(例えば、"a-c"面)に平行である結晶構造300の表面に結合する。変更する材料1020が"a-c"面と結合する実施例では、a軸の方向に延びる開口310とa平面に横たわる断面が維持される。そのような実施例では、電荷キャリアは、a軸の方向に開口310を通過して流れる。
【0040】
本発明のいくつかの実施例において、変更する材料1020は、a平面(例えば、"b-c"面)に平行である結晶構造300の表面と結合する。変更する材料1020が"b-c"面と結合するような実施例では、b軸の方向に延びる開口310とb平面に横たわる断面が維持される。そのような実施例では、電荷キャリアは、b軸の方向に開口310を通過して流れる。
【0041】
本発明の種々の実施例では、変更する材料1020を有するELR材料360の特定の面に積層することを含む(すなわち、ELR材料360の特定の表面を変更する材料1020で変更すること)。この説明から理解されるように、ELR材料360の"表面を変更すること"への言及は、最終的に、ELR材料360の一つまたは複数の単位セル400の面(場合によっては一面以上)を変更することを含む。すなわち、変更する材料1020は、実際にELR材料360の単位セル400内の原子に結合する。
【0042】
たとえば、a平面に平行なELR材料360の表面を変更することは、単位セル400の"b-c"面を変更することを含む。同様に、b-平面に平行なELR材料360の表面を変更することは、単位セル400の"a-c"面を変更することを含む。本発明のいくつかの実施例では、変更する材料1020は、c軸に平行な平面に対して実質的に平行であるELR材料360の表面に結合される。この説明のために、c軸に平行な平面は、一般にab平面と呼ばれ、理解されるように、a面およびb面を含む。理解されるように、ab面に平行なELR材料の表面360は、単位セル400の"a-c"面と"b-c"面の混合物から形成される。変更する材料1020がab面に平行な表面と結合するような実施例では、a軸の方向に延びる開口310とb軸方向に延びる開口310が維持される。
【0043】
本発明のいくつかの実施例において、変更する材料102は導電性材料であってもよい。本発明のいくつかの実施例では、変更する材料102は、高い酸素親和性材料であるかもしれない。(すなわち、酸素と容易に結合する材料)("酸素結合材料")。本発明のいくつかの実施例では、変更する材料1020は、酸素と容易に結合する導電性材料("酸素結合導電材料")であってもよい。このような酸素結合導電材料は、クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタンを含むが、それだけには限定されない。このような酸素結合導電材料は、ロジウムまたはベリリウムもまた含むことができるが、それだけには限定されない。他の変更する材料は、ガリウム又はセレンを含むことができる。他の変更する材料は、銀を含んでもよい。さらに他の変更する材料を用いることもできる。
【0044】
本発明のいくつかの実施例では、変更する材料1020の酸化物は、ELR材料360を変更する材料1020で変更するときの様々な操作の間に形成するかもしれない。したがって、本発明のいくつかの実施例では、変更する材料1020は、変更する材料1020の実質的に純粋な形態および/または変更する材料1020の種々の酸化物をを含むことができる。換言すれば、本発明のいくつかの実施例では、ELR材料360は、変更する材料1020および/または変更する材料1020の種々の酸化物を含む。一例として、本発明のいくつかの実施例では、変更する材料1020は、クロム及び/又は酸化クロムを(CrxOy)を含んでもよいが、それに限定されるものではない。
【0045】
本発明のいくつかの実施例では、ELR材料360は、YBCOであり、変更する材料1020は、酸素結合導電材料であってもよい。本発明のいくつかの実施例では、ELR材料360は、YBCOであり、変更する材料1020は、クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、またはベリリウムを含む群から選択されるが、これらに限定されない。本発明の実施例では、ELR材料360は、YBCOであり、変更する材料1020は、クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、及びベリリウムからなる群から選択され得る。本発明のいくつかの実施例では、ELR材料360は、YBCOであり、変更する材料1020は他の変更する材料であってもよい。」
(4)変更されたELR材料の試験結果に関する記載として、次の記載がある。
「【0051】
図14A-14Gは、上記記載されたようにして得られた試験結果1400を示す。試験試験結果1400は温度の関数(K)として変更したELR素材1060の抵抗のプロットを含んでいる。より具体的には、試験試験結果1400は、変更されたELR素材1060であり、変更する材料1020はクロムであり、ELR材料360はYBCOである。図14Aは、変更されたELR材料1060の抵抗が測定された温度の全範囲、すなわち、84K~286Kである試験結果1400を含んでいる。より詳細に示すために、試験結果1400は、様々な温度範囲に分割されて図示されている。図14Bは、240K~280Kまでの温度範囲内の試験結果1400を示し、図14Cは、21K~250Kまでの温度範囲内の試験結果1400を示し、図14Dは、180K~220Kまでの温度範囲内の試験結果1400を示し、図14Eは、150K~190Kまでの温度範囲内の試験結果1400を示し、図14Fは、120K~160Kまでの温度範囲内の試験結果1400を示し、図14Gは、84.5K~124.5Kまでの温度範囲内の試験結果1400を示している。
【0052】
試験結果1400は、変更されたELR材料1060の様々な部分がELR材料360に比べて、より高い温度においてELR状態で動作することを示している。6つの試料の分析試験が行われた。各試料分析試験では、変更されたELR材料1060はゆっくりと約286Kから83Kまで冷却された。冷却しながら、DCオフセットおよび/または熱電対効果の影響を低減するために、電流源は、デルタモードの構成で+60nAと-60nAの電流を流した。一定の時間間隔で、変更されたELR材1060の電圧を電圧計で測定した。各試料分析試験では、電圧測定の時系列は、512点の高速フーリエ変換("FFT")を用いてフィルタ処理された。フィルタリ処理されたデータのうちFFTの最も低い44の周波数はデータから除外され、残りのデータは時間領域に戻された。各試料分析試験でフィルタ処理されたデータは、その後、試験結果1400を生成するために統合された。
より具体的には、6つの試料の分析試験のすべての抵抗の測定は、"ビニング"と呼ばれる方法で温度範囲(例えば、80K~80.25K、80.25K~80.50K、80.5K~80.75K、等)の系列に整理された。次に、各温度範囲の平均抵抗測定を求めるために各温度範囲で測定された抵抗測定は、平均化された。これらの平均抵抗測定により試験結果1400が得られた。
【0053】
試験結果1400は、温度に対する抵抗のプロットである種々の離散ステップ1410を含んでおり、各離散ステップ1410は、比較的狭い温度範囲での抵抗の急激な変化を示している。各離散ステップ1410では、変更されたELR材料1060の離散部分は、各温度でそのような部分の電荷伝播容量に電荷を伝播し始める。非常に小さなスケールで、変更されているELR材360の表面は、完全に平滑ではないので、ELR材料360の表面に露出された開口310は、通常は、変更されたELR材1060試料の全幅または全長にわたって延びていない。したがって、本発明のいくつかの実施例では、変更する材料1020は、ELR材料360の表面全体を覆い、開口310の間で電荷を運ぶ導体として作用することができる。
【0054】
試験結果1400の詳細を説明する前に、ELR材料360と変更する材料1020の様々な特性を説明する。これらの材料の抵抗対温度("R-T")の個別のプロファイルは、一般によく知られている。これらの材料の個々のR-Tプロファイルは、試験結果1400に見られる離散ステップ1410と同様の特徴を含むとは考えられない。実際、ELR材料360の変更されていない試料と変更する材料1020は、同じであり、しばしば同一の試験方法と測定装置でそれぞれ試験された。各例では、ELR材料360の変更されていない試料のR-Tプロファイルと変更する材料のRTプロファイルは、単独では離散ステップ1410と同様の機能を含んでいなかった。従って、離散ステップ1410は、変更する材料1020と変更するELR材料360の結果であり、温度上昇時に開口310を維持し、それによって、変更する材料1060が、本発明の様々な実施例の高い温度において、ELR状態のままでいられることが可能となる。
【0055】
各離散ステップ1410では、変更されたELR材料1060内の開口310の様々な開口が、各開口310の電荷伝播容量に電荷の伝播を開始する。電圧計で測定した結果、各電荷伝播開口310は、変更されたELR材料1060の試料を通過する見かけの電圧が少しだけ低下する、短絡として現れる。見かけの電圧は、開口310の追加の開口が電荷の伝播を開始すると、変更されたELR材料1060の試料温度がELR材料360の転移温度(すなわち、変更していないELR材料がYBCOの場合の転移温度は、約90Kである)に達するまで低下し続ける。
【0056】
試験結果1400は、変更されたELR材料1060内の開口310が、約97K、100K、103K、113K、126K、140K、146K、179K、183.5K、200.5K、237.5K、および250Kで、電荷を伝播することを示している。理解されるように、変更されたELR材料1060内の開口310は、全温度範囲内の他の温度で電荷を伝播することができる。
【0057】
試験結果1400は、離散ステップ1410として識別されていない比較的狭い温度範囲での抵抗の比較的急激な変化を含んでいる。これらの他の変化のいくつかは、試験(例えば、FFT、フィルタリング、等)中に得られる測定値に使用されるデータ処理技術からのアーティファクトであるかもしれない。これらの他の変化のいくつかは、様々な温度で開口310に影響を与える変更された結晶構造1010中の共振周波数に起因する抵抗の変化であるかもしれない。これらの他の変化のいくつかは、追加の離散ステップ1410であるかもしれない。また、270~274Kの温度範囲における抵抗の変化は、変更されたELR材1060中に存在する水と関連付けられる可能性があり、この水の一部は変更されたELR材料1060の試料調製中に導入された可能性がある。
【0058】
変更する材料1020はELR材料360の転移温度以上の温度でよく伝導するの対して、ELR材料360は通常は伝導しないという点で、試験結果1400は、離散ステップ1410に加えて、ELR材料360のR-Tプロファイルと異なっている。
【0059】
図15は、ELR材料360と変更する材料1020の試料に対する追加の試験結果1500を示している。より具体的には、試験結果1500では、変更する材料1020は、クロムであり、ELR材料360はYBCOである。試験結果1500では、ELR材料360の試料は、a-平面又はb-平面に平行な結晶構造300の面を露出させるために、上述した様々な技術を用いて調製された。試験結果1500は、変更されたELR材料1060にロックインアンプとK6221電流源を用いて24.0Hzで10nAの電流を流して得られた。試験結果1500は、温度の関数(K)として、変更されたELR材料1060の抵抗のプロットを含んでいる。図15は、変更されたELR材料1060の抵抗が温度の全範囲、すなわち80K~275Kで測定された試験結果1500を含む。試験結果1500は、変更されたELR材料1060の様々な部分がELR材料360より高い温度でELR状態で動作することを示している。5つの試料の分析試験は、変更されたELR材料1060の試料でなされた。各試料分析試験では、変更されたELR材料1060の試料をゆっくりと80Kから275Kまで加熱した。加熱しながら、変更されたELR材料1060の試料の電圧が一定の時間間隔で測定され、抵抗は、電流源から算出された。各試料分析試験では、抵抗測定値の時系列は、1024ポイントのFFTを用いてフィルタ処理した。しかし、すべてのFFTから最も低い15の周波数がデータから除去され、フィルタ処理された抵抗測定値は、時間領域に戻された。各試料分析試験でフィルタ処理された抵抗測定値は、試験結果1500を生成するために上記説明したビニングプロセスを用いて統合された。次に、各温度範囲での抵抗測定値は、各温度範囲での平均抵抗測定値を得るために一緒に平均化された。これらの平均抵抗測定値は、試験結果1500を形成する。
【0060】
試験結果1500は、抵抗対温度プロットにおいて、種々の離散ステップ1510を含む。各離散ステップ1510は、図14A~図14Gで説明した離散ステップ1410と類似する、比較的狭い温度範囲で抵抗が比較的急激に変化することを示しいる。各離散ステップ1510では、変更されたELR材料1060の離散部分は、各温度での離散部分の電荷伝播容量に電荷を伝播する。
【0061】
試験結果1500は、変更されたELR材料1060内の開口310が約120K、145K、175K、225K、および250Kで電荷を伝播することを示している。変更されたELR材料1060内の開口310は、理解されるように、全温度範囲内の他の温度で、電荷を伝播するかもしれない。
【0062】
図16-20は、ELR材料360および各種変更する材料1020の試料に対する追加の試験結果を示す。これらの追加の試験結果では、ELR材料360の試料は、結晶構造300の表面をa面またはb面、またはa面またはb面のいくつかの組み合わせに対して実質的に平行となるように露出させ、これらの露出面上に変更する材料が積層されるように、上述した様々な技術を用いて調製された。これらの変更された各試料は、ゆっくりと約300Kから80Kまで冷却された。以下に説明するように、加温しながら、電流源は、電流を変更された試料にデルタモード設定で印加した。一定時間毎に、変更された試料の電圧を測定した。各試料の分析試験では、電圧測定の時系列は、FFTを用いて周波数領域で最低の周波数を除去するフィルタ処理し、フィルタ処理された測定値は、時間領域に戻された。保持された周波数の数は、一般に、各データ・セットで異なる。各試験からフィルタ処理されたデータは、その後、ビニングされ、一緒に平均化されて図16-21に示す試験結果を生成した。
【0063】
図16は、温度の関数(K)として、変更されたELR材料1060の抵抗のプロットを含む試験結果1600を示す。試験結果1600では、変更する材料1020はバナジウムであり、ELR材料360はYBCOである。試験結果1600は、20nA電流源を使用し、1024ポイントのFFTを行い、12個の最低周波数が除去された全ての情報を用いる11回の試験で得られた。試験結果1600は、変更されたELR材料1060の様々な部分がELR材料360よりもより高い温度においてELR状態で動作することを示している。試験結果1600は、図14A-14Gで説明したのと同様に、抵抗-温度プロットにおいて種々の離散ステップ1610を含む。試験結果1600は、変更されたELR材料1060内の開口310が約267K、257K、243K、232K、および219Kで電荷を伝播することを示している。変更されたELR材料1060内の開口310は、他の温度で電荷を伝播するかもしれない。
【0064】
図17は、温度の関数(K)として、変更されたELR材料1060の抵抗のプロットを含む試験結果1700を示す。試験結果1700では、変更する材料1020は、ビスマスでありELR材料360はYBCOである。試験結果1700は、400nAの電流源を使用し、1024ポイントのFFTを行い、12個の最低周波数が除去された全ての情報を用いる5回の試験で得られた。試験結果1700は、変更されたELR材料1060の様々な部分がELR材料360よりも高い温度においてELR状態で動作することを示している。試験結果1700は、図14A-14Gで説明したのと同様に、抵抗-温度プロットにおいて種々の離散ステップ1710を含む。試験結果1700は、変更されたELR材料1060内の開口310が約262K、235K、200K、172K、および141Kで電荷を伝播することを示している。変更されたELR材料1060内の開口310は、他の温度で電荷を伝播するかもしれない。
【0065】
図18は、温度の関数(K)として、変更されたELR材料1060の抵抗のプロットを含む試験結果1800を示す。試験結果1800では、変更する材料1020は銅であり、ELR材料360はYBCOである。試験結果1800は、200nAの電流源を使用し、1024ポイントFFTを行い、12個の最低周波数が除去された全ての情報を用いる5回の試験で得られた。試験結果1800は、変更されたELR材料1060の様々な部分がELR材料360よりもより高い温度においてELR状態で動作することを示している。試験結果1800は、図14A-14Gで説明したのと同様に、抵抗-温度プロットにおいて種々の離散ステップ1810を含む。試験結果1800は、変更されたELR材料1060内の開口310が約268K、256K、247K、235K、および223Kで電荷を伝播することを示している。変更されたELR材料1060内の開口310は、他の温度で電荷を伝播するかもしれない。
【0066】
図19は、温度の関数(K)として、変更されたELR材料1060の抵抗のプロットを含む試験結果1900を示す。試験結果1900では、変更する材料1020はコバルトであり、ELR材料360はYBCOである。試験結果1900は、420nA電流源を使用し、1024ポイントのFFTを行い、12個の最低周波数が除去された全ての情報を用いる11回の試験で得られた。試験結果1900は、変更されたELR材料1060の様々な部分がELR材料360よりもより高い温度においてELR状態で動作することを示している。試験結果1900は、図14A-14Gで説明したのと同様に、抵抗-温度プロットにおいて種々の離散ステップ1910を含む。試験結果1900は、変更されたELR材料1060内の開口310が約265K、236K、205K、174K、および143Kで電荷を伝播することを示している。変更されたELR材料1060内の開口310は、他の温度で電荷を伝播するかもしれない。
【0067】
図20は、温度の関数(K)として、変更されたELR材料1060の抵抗のプロットを含む試験結果2000を示す。試験結果2000では、変更する材料1020はチタンであり、ELR材料360はYBCOである。試験結果2000は、100nA電流源を使用し、512ポイントのFFTを行い、11個の最低周波数が除去された全ての情報を用いる11回の試験で得られた。試験結果2000は、変更されたELR材料1060の様々な部分がELR材料360よりもより高い温度においてELR状態で動作することを示している。試験結果2000は、図14A-14Gで説明したのと同様に、抵抗-温度プロットにおいて種々の離散ステップ2010を含む。試験結果2000は、変更されたELR材料1060内の開口310が約266K、242K、および217Kで電荷を伝播することを示している。変更されたELR材料1060内の開口310は、他の温度で電荷を伝播するかもしれない。
【0068】
図21A~21Bは、温度の関数(K)として、変更されたELR材料1060の抵抗のプロットを含む試験結果2100を示す。試験結果2100では、変更する材料1020はクロムであり、ELR材料360はYBCOである。図21Aは、変更されたELR材料1060の抵抗が測定された温度の全範囲、すなわち80K~270Kにわたる試験結果2100を含む。さらに詳しく説明するために、試験結果2100は、図21Bに示すように、150K~250Kの温度範囲で拡大された。試験結果2100は、図16~20で説明したのと同様の方法で得られた。具体的には、試験結果2100は300nAの電流源を使用して25回の試験で得られた。これらの試験データは、64サイドポイントと4次多項式を用いて、Savitzy-Golayで平滑化された。試験結果2100は、変更されたELR材料1060の様々な部分がELR材料360(ここでは、BSSCO)よりも高い温度でELR状態として動作することを示している。試験結果2100は、図14A-14Gで説明したのと同様に、抵抗-温度プロットにおいて種々の離散ステップ2110を含む。試験結果2100は、変更されたELR材料1060内の開口310が約184Kと214Kで電荷を伝播することを示している。変更されたELR材料1060内の開口310は、他の温度で電荷を伝播するかもしれない。」
「【0073】
上述した種々の試験結果は、とりわけ、開口310上の変更する材料1020の影響が互いに近接する関係で変化すること示している図14の試験結果1400は、本発明の種々の実施例を支持している。具体的には、試験結果1400中の各離散ステップ1410は、変更されたELR材料1060によって運ばれた電荷の変化に対応する。なぜなら、特定の層2310中の開口310(より適切には、図示のように隣接する層間で形成された開口310)は、そのような開口310の電荷伝播容量に電荷を伝播するからである。変更する材料1020により近い層2310中の開口310は、より高い温度の離散ステップに1410に対応するが、変更する材料1020からより遠い層2310中の開口310は、より低い温度の離散ステップ1410に対応する。離散ステップ1410は、変更する材料1020に所与の相対距離の開口310(すなわち、層2310Aと層2310B間の開口310A)が特定の温度で電荷を伝播し、すぐに最大電荷伝播容量に達する、という意味で"離散"である。別の離散ステップ1410は、変更する材料1020からより離れた距離の開口310(すなわち、層2310Bと層2310Cの間の開口310B)がより離れた距離の結果として、より低い温度で電荷を伝播し、開口310に対する変更する材料1020の影響を軽減するときに、達成される。各離散ステップ1410は、変更する材料1020からの距離に基づいて電荷を運び始める開口310の別の組に対応する。しかしながら変更する材料1020は、ある距離において、いくつかの開口310に高い温度で電荷を運ばせるような十分な影響を開口310に及ぼすことができないので、それ故に、そのような開口310は、ELR材料360の温度と一致する温度で電荷を伝播する。」
上記の試験結果を示す図14A、15~21Bとして、以下の図面が示されている。図14A、15、21A、21Bは、ELR材料がYBCO、変更する材料がクロムの場合の試験結果である。
「【図14A】
[図:0001422775000001.jpg]
」
「【図15】
[図:0001422775000002.jpg]
」
「【図21A】
[図:0001422775000003.jpg]
」
「【図21B】
[図:0001422775000004.jpg]
」
図16は、ELR材料がYBCO、変更する材料がバナジウムの場合の試験結果である。
「【図16】
[図:0001422775000005.jpg]
」
図17は、ELR材料がYBCO、変更する材料がビスマスの場合の試験結果である。
「【図17】
[図:0001422775000006.jpg]
」
図18は、ELR材料がYBCO、変更する材料が銅の場合の試験結果である。
「【図18】
[図:0001422775000007.jpg]
」
図19は、ELR材料がYBCO、変更する材料がコバルトの場合の試験結果である。
「【図19】
[図:0001422775000008.jpg]
」
図20は、ELR材料がYBCO、変更する材料がチタンの場合の試験結果である。
「【図20】
[図:0001422775000009.jpg]
」
(5)「変更する材料」に関連する記載として、次の記載がある。
「【0119】
いくつかの実施例では、ELR材料に変更する成分を適用することは、ELR材料の結晶構造内の1つまたはそれ以上の酸素原子をELR材料内に移動させ、ELR材料の結晶構造を引っ張る酸素濃度勾配を形成するかもしれない。いくつかの実施例では、クロムなどの変更する成分は、ELR材内の酸素原子の"ゲッター"として作用し、それによって、酸素原子を変更する成分に向かって移動させ、次に、ELR材料の結晶構造内または、その一部の領域を引っ張るかもしれない。」
「【0121】
本発明のいくつかの実施例では、組成物の種々の領域または部分にある歪みは、ELR材料の動作特性(例えば、動作温度、電流容量など)を向上させるように、ELR材の結晶構造中の開口に影響を与える。
【0122】
結晶構造を有する材料の変更は、その材料が期待される温度よりも高い温度で材料に電流を流すように、非常に低い抵抗のような低い抵抗を示すさせることができる。いくつかの実施例では、変更は、上述したように、適切な表面上に変更する材料の層を付けるまたは形成する工程を含むことができる。変更する材料が付けられた、または形成された層は、歪みを発生させるか、あるいは材料の結晶構造を作る原子、および/または、結合の一部またはすべてに力をかけることができる。この力または歪みは、材料が低い抵抗又は非常に低い抵抗なのような異なる抵抗特性を示すように、この材料を変更するかもしれない。すなわち、材料内で力や歪みが発生すると、材料は、材料内の特定の場所、および/または、特定の領域で、酸素拡散勾配を発生させる、および/または、維持させる、および/または、材料の結晶構造を、ねじれさせる、歪ませる、開かせる、閉じさせる、硬くする、または、1つの場所から別の場所に電子の輸送を容易にする材料内の開口の幾何学的配置を維持するまたは変更するなど、配向および/または幾何学的配置を維持するか変更するかもしれない。」
「【0126】
いくつかの実施例では、種々の組成物は、ELR材料の適切な表面上に付けられた、または形成された、1つまたはそれ以上の変更する材料を含む。図1-Zは、ELR材料110(本明細書では変更されていないELR材料110と呼ぶ)とELR材料110の表面に付けられた変更する材料120を有する、変更されたELR材料の組成物100(本明細書では変更されたELR材料100と呼ぶ)を示している。」
「【0129】
いくつかの実施例では、変更する材料120は、例えば、クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、またはベリリウムなどの金属、または金属などの金属酸化物であってもよい。いくつかの実施例では、変更する材料120は、ELR材料110内に歪みを与えることができる、高い酸素親和性のある材料、"ゲッター"材料、ELR材料110の格子定数と異なる1つまたはそれ以上の格子定数を有する材料(別のELR材料を含む)であるかもしれない。例えば、いくつかの実施例では、変更する材料120は、ELR材料110内に歪みを引き起こすために、容易に酸素と結合する、酸素を引きつける、または、酸素を捕まえる材料、または、酸素含有量および/またはELR材料内の酸素分布を変更する強い酸素親和性を有するかもしれない。いくつかの実施例では、変更する材料120は、ELR材110内に歪みを引き起こすために、ELR材料110の格子定数と一致しない1つまたはそれ以上の格子定数を有するかもしれない。」
「【0137】
説明したように、組成物400は、同じELR材料の(例えば、REBCO)の異なる形態または変異体の複数の層を含み、これらの同じELR材料の異なる形態はELR材料の1つまたはそれ以上に歪みを引き起こすかもしれない。例えば、層間の酸素含有量を変える(例えば、YBCO中のOsとO7との間の酸素化学量論/分率を変化させる)と、層内のELR材料の結晶構造の結合を歪ませる、層間の格子不整合を引き起こすかもしれない。また、例えば、層間のELR材料の結晶配向を変える(例えば、ELR材料の一つの層はa軸配向を有し、別の層は、b軸配向性を有する)と、層間の格子不整合を引き起こし、それにより同じような歪みを引き起こすかもしれない。」
「【0140】
別のELR材料またはELR材料の異なる形態の層で形成されている組成物300、400、500を生成すると、本発明の様々な実施例を、種々のREBCO材料の間の格子不整合(例えば、YBCOとNBCO)、または、類似の格子定数(例えば、BSCCOなど)を有する他の材料に利用して、ELR材料の層の種々の層に応力をかける/歪ませることを可能にする。いくつかの実施例では、追加された歪みは、ELR材料の結晶構造中の開口の周りのフォノン周波数、および/または、分布及び/又は、振幅を変更し、ELR材料の抵抗の低下を可能にし、より高い温度においてELR状態で動作するなどの改良された動作特性およびその他の利点を可能にするが、これらに限定されるものではない。」
(6)本願発明のジョセフソン接合に関連する記載として、次の記載がある。
「【0220】
図46A-A~図46H-Aは、本発明の1つまたはそれ以上の実施例に係る様々なジョセフソン接合4600を示す(図46A-Aではジョセフソン接合4600Aとして、図46B-Aではジョセフソン接合4600Bとして、図46C-Aではジョセフソン接合4600Cとして、図46D-Aではジョセフソン接合4600Dとして、図46E-Aではジョセフソン接合4600Eとして、図46F-Aでジョセフソン接合4600Fとして、図46G-Aではジョセフソン接合4600Gとして、図46H-Aではジョセフソン接合4600Hとして記載される)。図46A-Aは、バリア4610によって分離された二つのELR導体4620を含むジョセフソン接合4600Aを示す。本発明のいくつかの実施例では、各ELR導体4620は、本発明の様々な実施例係る、改善された動作特性で動作するELR材料を含む。例えば、本発明のいくつかの実施例では、各ELR導体4620は、改善された動作特性を持つ変更されたELR材料1060を含み、本発明のいくつかの実施例では、各ELR導体4620は、改善された動作特性を持つ新しいELR材料を含む。本発明のいくつかの実施例では、各ELR導体4620は、本発明の様々な実施例に係るナノワイヤセグメント4110を備える。
【0221】
本発明のいくつかの実施例では、バリア4610は、ELR導体4620の間に配置され、ELR導体4620に電気的に結合されている絶縁材料を含む。これらの実施例では、バリア4610は、非常に薄く、通常は30オングストローム以下であることが理解される。本発明のいくつかの実施例では、バリア4610は、ELR導体4620との間に配置された導電性金属などの導電性材料を含む。本発明のいくつかの実施例では、バリア4610は、ELR導体4620との間に配置された強磁性金属などの導電性材料を含む。これらの実施例では、バリア4610は、絶縁材料よりも厚くてよく、通常は、数ミクロンの厚さを有することが理解される。本発明のいくつかの実施例では、バリア4610は、ELR導体4620との間に配置された、導電性金属などの半導電性材料を含む。本発明のいくつかの実施例では、バリア4610は、ELR導体4620の材料と異なるELR材料などの、他の材料(すなわち、異なる化学組成、異なる結晶構造、異なる結晶構造の配向、異なる位相、異なる粒界、異なる臨界電流、異なる臨界温度を有するなどの意味で異なる)を含むが、これらに限定されるものではない。本発明のいくつかの実施例では、バリア4610は、ELR導体4620の材料と同じELR材料を含むが、1つまたはそれ以上の機械的な態様が異なっている(すなわち、ELR導体4620の厚さと異なるELR材料の厚さ、ELR導体4620の幅と異なるELR導体4620の幅、または他の機械的な相違)。いくつかの実施例では、バリア4610は、ELR導体4620との間に形成された、部分的なまたは完全な空隙を含む。これらの実施例では、バリア4610は、空気または他の気体で満たされた空隙を含むことができる。ELR導体4620が変更されたELR材料1020を含む本発明のいくつかの実施例では、バリア4610は、変更されていないELR材料360を含んでもよい。
【0222】
従来のジョセフソン接合の一般的な種類は、超伝導体-絶縁体-超伝導体("SIS")、超伝導体-通常導体-超伝導体("SNS")、超伝導体-鉄強磁性金属超伝導体("SFS")、超伝導体-絶縁体-通常導体-絶縁体-超伝導体("SINIS")、超伝導体-絶縁体-通常導体-超伝導体("SINS"),超電導体-コンストリクション-超伝導体("SCS")などを含む。図46I-Aは、トンネル接合(SIS)、点接触、Daydemブリッジ(SCS)、サンドイッチ接合、種々の厚さのブリッジ、およびイオン注入ブリッジ(左から右、上から下)を含むジョセフソン接合のさまざまな例を示すが、これらに限定されるものではない。図46J-Aは、ステップエッジSNS接合、ステップエッジ粒界接合、ランプエッジ接合部、両結晶粒界接合(左から右、上から下)を含むジョセフソン接合の他の例を示すが、これらに限定されるものではない。本発明の様々な実施例によれば、上記の種類のジョセフソン接合のいずれかは、従来のジョセフソン接合の超伝導材料の代わりに、上述のような改良されたELR材料を用いて構成することができる。
【0223】
一般的に言えば、ジョセフソン接合4600は、いわゆるジョセフソン効果を示す。ここでは、ELR状態でELR導体4620を通って流れる電流もまた、非常に低い抵抗状態でELR導体4620の間の接合部を横切って流れることができる。ジョセフソン接合は、例えば、バリア4610を備えてもよい。バリア4610に流れる電流は、ジョセフソン電流と呼ばれる。臨界電流に達するまで、ジョセフソン電流は、非常に低い抵抗でバリア4610を通って流れることができる。しかし、バリア4610の臨界電流を超えると、電圧がバリア4610を横切って現れ、次に、この電圧は、さらに臨界電流を低減し、それによって、バリア4610を横切る大きな電圧を生成する。ジョセフソン効果は、理解されるように、様々な回路におけるジョセフソン接合4600で利用されてもよい。」
「【0226】
図46C-Aおよび図46D-Aは、いわゆる"ワイヤ構成"のジョセフソン接合4600を示す。図46C-Aは、本発明の様々な実施例に係る改善された動作特性を示す変更されたELR材料を含むELR導体4620を含むジョセフソン接合4600Cを示す。図46C-Aに示すように、本発明のいくつかの実施例では、ジョセフソン接合4600Cの各ELR導体4620は、ELR材料3110上に積層された変更する材料2720を含む変更されたELR材料を含む。本発明のいくつかの実施例では、変更されたELR材は、基板2420上に積層されてもよい(すなわち、ELR材料は、基板2420上に積層される)。ELR導体4620は、理解されるように、変更されたELR材料の他の形態を含んでもよい。図示のように、バリア4610は、ELR導体4620の間に配置され電気的にELR導体4620と結合されている。」
2 本願発明の技術的意義について
上記第2の特許請求の範囲の記載、及び上記1の本願明細書等の記載によれば、本願発明の技術的意義は、次のとおりである。
(1)本願発明は、非常に低い抵抗(ELR)材料で形成された一つ又は複数のコンポーネントを含むジョセフソン接合又はジョセフソン接合を含む回路の発明である。(【0005】)
(2)従来の超伝導エレメントを使用して動作するデバイスにおいては、電流を最小抵抗又はゼロ抵抗で輸送する能力を有する様々な成分の高温超伝導(HTS)材料が利用されてきたが、HTS材料は非常に低い動作温度(例えば、120K未満の温度)を必要とし、通常は、液体窒素ベースの冷却システム等の高価なシステムを使用して上記のような動作温度までコンポーネントを冷却する必要があるため、実施コストを増大するなどの問題があった。(【0003】)
(3)本願発明は、「第1のELR導体」及び「第2のELR導体」に、従来のHTS材料に関連付けられる転移温度より高い温度において非常に低い抵抗を提供する、「面及び結晶構造を有するELR材料の第1の層」を含む「改変されたELR材料」と、「第1の層」の面に結合する「修飾材料の第2の層」とからなる構成(以下、「本願層構造」という。)とし、これらの間に「バリア材料」を配置して、「ジョセフソン接合」又は「ジョセフソン接合を含む回路」を構成することにより、上記の課題を解決しようとするものである。(【0005】、【0011】、【0013】~【0015】)
3 技術常識について
(1)周知例1:「量子工学ハンドブック」、株式会社 朝倉書店、1999年11月20日、191-192頁
上記周知例1には次の記載がある。
「ところがある種の物質をある温度(臨界温度Tc)以下に冷やすと、抵抗値がゼロとなる。これが超伝導(あるいは超電導)である。」(191頁5行~6行)
上記記載から、
「ある種の物質をある温度(臨界温度)以下に冷やしたときに、抵抗値がゼロとなることを「超伝導」又は「超電導」という。」(以下、「技術常識1」という。)
ことは、技術常識である。
(2)周知例2:「岩波 理化学辞典 第5版」、株式会社岩波書店、1998年2月20日、661-662頁
上記周知例2には次の記載がある。
「ジョゼフソン効果 [Josephson effect] 2つの超伝導体が薄い絶縁膜でへだてられるなど弱く結合されているとき、電子対がトンネル効果*でその結合部を通過する現象.トンネル電流は2つの超伝導体の巨視的波動関数の位相差により決まる(直流ジョゼフソン効果、dc Josephson effect).超伝導体のエネルギーギャップ、障壁のトンネル抵抗などできまる一定値より小さい直流電流では、絶縁膜の両側の間には電圧は発生しない.電圧Vがかかるときには交流電流が生じ、その周波数は2eV/hである(交流ジョゼフソン効果、ac Josephson effect).」(661頁右欄下から1行~662頁左欄10行)
「ジョゼフソン接合 [Josephson junction] 2つの超伝導体を弱く結合し、ジョゼフソン効果*が生じるようにしたもの.ジョゼフソン効果を応用した回路素子として使われる.2枚の超伝導薄膜で2nm程度の厚さの絶縁膜を挟んだ接合型、超伝導膜の一部に幅1μm程度あるいはそれ以下のくびれを入れたマイクロブリッジ型、超伝導体の鋭い針先をもう1つの超伝導体に軽く接触させた点接触型がある.」(662頁左欄16行~23行)
また、超伝導状態になるためには、超伝導状態となる材料を「臨界温度」以下に冷やす必要があることは、上記技術常識1から明らかである。
そうすると、上記記載から、
「2つの超伝導体を弱く結合したときに、電子対がトンネル効果によってその結合部を通過する現象を「ジョセフソン効果」といい、ジョセフソン効果が生じるように2つの超伝導体を薄い絶縁膜で隔てるなどして弱く結合するようにしたものを「ジョセフソン接合」という。」(以下、「技術常識2」という。)
ことは、技術常識である。
4 検討
(1)上記2(3)のとおり、本願発明は、本願層構造をとる「第1のELR導体」及び「第2のELR導体」の間に「バリア材料」を配置して「ジョセフソン接合」又は「ジョセフソン接合を含む回路」を構成する発明であるから、上記技術常識2を踏まえると、本願発明においては、(ア)「第1のELR導体」及び「第2のELR導体」がいずれも超伝導状態、すなわち抵抗値がゼロの状態にあり、かつ、(イ)「バリア材料」にジョセフソン効果による電流が流れていることとなる。
そうすると、本願明細書等の記載が実施可能要件を満たすというためには、本願明細書等に上記(ア)及び(イ)の各事項が記載されている必要がある。
(2)そこで、本願明細書等に上記(ア)の事項が記載されているか否かについて検討すると、本願明細書等には、本願発明の実施例として、本願層構造における「改変されたELR材料」としてYBCOを、「修飾材料」としてクロム、バナジウム、ビスマス、銅、コバルト又はチタンを用いて本願層構造とした導体が記載されており、これらの導体につき、様々な温度における抵抗値を測定した試験結果が記載されている(【0051】~「0068】、図14A~21B)。そして、これらの試験結果について、「改変されたELR材料」の様々な部分が「ELR材料」より高い温度において「ELR状態」(本願明細書等において、「ELR状態」とは、ELR材料が非常に低い温度で動作する状態をいい、超伝導状態を含むものとされている(【0013】、【0015】)。)で動作することが示されている旨が記載されている(【0052】、【0059】、【0063】~【0068】)。
しかしながら、図14A~21Bは、いずれも上記の各試験結果を抵抗-温度曲線で示したグラフであるところ、抵抗値の下限値がゼロとされておらず、各実施例における導体の抵抗値がゼロとなったことを読み取ることはできない。そうすると、これらの記載において、上記の各実施例における導体の抵抗値がゼロであること、すなわち本願発明の「第1のELR導体」及び「第2のELR導体」が超伝導状態にあることを示す試験結果等は記載されていない。
以上によれば、本願明細書等に上記(ア)の事項が記載されているものとはいえない。
(3)また、本願明細書等に上記(イ)の事項が記載されているか否かについて検討すると、本願明細書等には、本願発明における「ジョセフソン接合」の構造に関する記載(【0220】~【0222】、【0226】)があるほか、本願発明の「バリア材料」に「ジョセフソン電流」が流れる旨が記載されている(【0223】)。
しかしながら、本願明細書等には、本願発明の「第1のELR導体」及び「第2のELR導体」の間に配置された「バリア材料」にジョセフソン電流が流れることを示す試験結果等は記載されていない。かえって、上記(2)で検討したとおり、本願明細書等には、「第1のELR導体」及び「第2のELR導体」が超伝導状態にあることが記載されているものとはいえないことからすれば、上記【0223】には、超伝導状態にはない導体の間に配置されたバリア材料にジョセフソン効果が発現するという、前記3(2)の技術常識2に反する現象が生じる旨が記載されていることとなる。そうすると、本願明細書等において、このような現象が生じ得ることを裏付ける試験結果等が記載されていなければ、当業者は、本願発明を実施することができると認識するものではないというべきであるところ、本願明細書等にはそのような記載は存在しない。
以上によれば、本願明細書等には上記(イ)の事項が記載されているものとはいえない。
(4)以上のとおり、本願明細書等には、上記(ア)及び(イ)の各事項が記載されているものとはいえないから、本願明細書等の記載が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤を要することなく、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものとはいえない。
したがって、本願明細書等の記載は、実施可能要件を満たすものではない。
5 請求人の主張について
請求人は、令和4年7月21日に提出された手続補正書により補正された審判請求書において、
「(2-1)実施可能要件について
本願の請求項1に対して、拒絶理由通知では、課題を解決する手段について、段落0219~0232、図46-A~図46H-Aについて、ジョセフソン効果の発現がなされていないと認定されています。
一方、本願の明細書の図14A-14Gに変更されたELR素材の試験結果が記載されております。明細書に記載の通り、より高い温度においてELR状態で動作するものであり、すなわち、非常に低い抵抗であることは示されております。そのことは当業者であれば十分実施可能な程度に記載されているものであります。すなわち、本願の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号の規定には該当しないものと思料致します。」
旨主張する。
上記主張について検討すると、「非常に低い抵抗」に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、「非常に低い抵抗は、超伝導材料タイプIIの超伝導状態での磁束流抵抗の大きさと同じような抵抗であり、一般に、0Ω?cmから293Kでの実質的に純粋な銅の抵抗率の50分の1(1/50)の範囲の抵抗率で表現することができる。例えば、本明細書で使用されるような、実質的に純粋な銅は99.999%の銅である。本発明の様々な実施例では、ELR材料の部分は0Ω・cmから3.36x10-8Ω?cmの範囲の抵抗率を有する。」(【0014】)と記載されている。
この記載によると「非常に低い抵抗」とは、「改変されたELR材料」が上記の範囲内の抵抗率において動作することを意味するものといえるが、図14A~14Gには、いずれも導体の抵抗値が記載されているに過ぎず、抵抗率は記載されていないことから、図14A~14Gに、「改変されたELR材料」が「非常に低い抵抗」、すなわち「ELR状態」で動作することを示しているとはいえない。
加えて、上記4(2)で示したように、図14A~14Gには、導体の抵抗値がゼロとなったことを読み取ることはできないから、これらの記載から、本願発明の「第1のELR導体」及び「第2のELR導体」が超伝導状態にあることを示す試験結果であるということはできない。
そうすると、請求人の上記主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、本願発明の構成により上記第4の2(2)で示した本願課題を解決できることを当業者が認識できる程度に明確かつ十分に説明したものではないから、本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-008441